282: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:40:24 ID:BlhIJ9pQ

【ぼく勉】うるか 「あたし、がんばるからね。成幸」

283: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:41:27 ID:BlhIJ9pQ
………………夏休み後半 武元家

うるか 「………………」

ガリガリガリガリ……

うるか 「……ふー。つかれたー」

うるか (長文読解は本当に苦手だなぁ。見てるだけで頭がガンガンしてくるし)

うるか (でも、今日だけでかなり進んだし、理解も深まった気がする)

うるか 「……えへへ、成幸、褒めてくれるかなぁ」

ポワンポワンポワン…………


『うるか、よくやったな』

『偉いぞ。これはご褒美だよ』

『……ふふ、可愛い奴め』

『なんだ? もっと欲しいのか?』

『じゃあ、この続きは家に帰ってからだな』

『覚悟しておけよ、うるか』

284: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:42:12 ID:BlhIJ9pQ
…………ポワンポワンポワン

うるか 「……なんてね! なんてね! なんてね!!」

うるか 「………………」

うるか 「……もう少しがんばったら、もっと褒めてくれるかな」

うるか (すごく眠い、けど……)

うるか (夏の大会も終わったし、国体までまだ時間もあるし……)

うるか (いまのうちに、できるだけがんばらないとだよね)

うるか 「よし、もう一題だけ、がんばろう!」

ピロリン♪

285: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:42:43 ID:BlhIJ9pQ
うるか 「ん? メール? ……!?」

うるか (成幸から!?)


『夜中に悪い』

『お願いしたいことがあるんだ』

『今度の週末、ちょっと付き合ってくれないか?』


うるか 「へ……?」

うるか 「………………」

うるか 「……えええぇええええええ!!??」

286: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:43:41 ID:BlhIJ9pQ
………………週末 駅前


―――― 『突然わるい。チビどもがプールに行きたいって言い出してさ』

―――― 『折良く母さんが職場で市営プールの優待券をもらってきて』

―――― 『母さんは仕事があるし、水希は部活があるし、俺しか一緒に行ってやれないんだけど』

―――― 『俺、泳げないだろ? もしものとき、チビたちを助けられないからさ』

―――― 『もしうるかが大丈夫なら、一日俺とチビたちに付き合ってくれないか?』

―――― 『泳ぎのスペシャリストのうるかがいれば、俺としては安心できるんだけど……』


うるか 「………………」

うるか (……好きな男子にそんな風にお願いされたら、断れるわけないじゃんねえ)

うるか (っていうか、まぁ、弟妹くんたちはいるにしても、渡りに舟っていうか……)

うるか (カタチはどうであれ、成幸とプールデートってことに変わりはないわけで……)

287: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:44:28 ID:BlhIJ9pQ
うるか (海っちと川っちにお願いして、水着選び手伝ってもらったし……)

うるか (な、成幸、この水着見てどう思うかな)

うるか (かわいいとか、きれいとか、え……ええ、えっちとか、思ってくれるかな……)

うるか (なんてねなんてねなんてね!! 何考えてるんだろ、あたし……)


  「あ! おねーちゃんだー!」  「おねーちゃんだー!」


タタタタタ……

ポフッポフッ

うるか 「んあ? おお、弟妹クンズじゃないかー」 ギュッ

和樹 「今日はよろしくな、おねーちゃん!」

葉月 「よろしくね!」

うるか 「うん、よろしくね!」

うるか (ち、小さい成幸を見てるみたいで、カワイイよぅ……)

288: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:45:05 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「い、いきなり走り出すなよ、お前ら……」

うるか 「あ、成幸。どしたん? フラフラだけど」

成幸 「和樹と葉月が急に走り出すから、追いかけたらな……」

うるか 「運動不足すぎだよー。まったくもー」

成幸 「面目ない……」

うるか (……はぅ~~~~~~~。フラフラな成幸もかわいいよぅ……)

成幸 「待たせて悪かったな。来てくれてありがとう。助かるよ、うるか」

うるか 「う、うん。気にしなくて良いよ。あたしも(成幸と)市営プール行きたかったし」

和樹 「ねーねー、早く早くー」  葉月 「プールいこー! 兄ちゃん、おねーちゃん!」

グイグイ

成幸 「わ、わかったから、引っ張るなよ」

成幸 「悪いな、うるか。今日一日こんな感じになるけど……」

うるか 「全然オッケー! 楽しそうだし問題ないよ!」

うるか 「さ、おチビちゃんたち、プールにレッツゴー!」

和樹&葉月 「「ゴー!」」

289: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:45:57 ID:BlhIJ9pQ
………………電車内

和樹 「プール、プール♪」 葉月 「プール、プール♪」

うるか 「ふたりとも楽しそうだねぇ。プールが本当に嬉しいんだ」

和樹 「うん! 市営プールってなかなか行けないからね!」

葉月 「スライダー乗れるかなぁ……楽しみ……」

成幸 「……この前話しただろ? うち、親父がいないからさ」 コソッ

成幸 「和樹も葉月も、プールってあんまり行ったことがないんだよ」

うるか 「ああ、そっか……」

グッ

うるか 「じゃあ、今日は目一杯楽しませてあげなくちゃね!」

成幸 「……ああ。ありがとな、うるか」

うるか 「うん!」

290: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:46:48 ID:BlhIJ9pQ
………………市営プール 入り口

成幸 「じゃあ、葉月の着替え、頼むな」

成幸 「たぶん俺たちの方が先に着替え終わってると思うから、入り口付近で待ってるから」

うるか 「うん、わかった! じゃあ行こうか、葉月ちゃん」

葉月 「うん!」


………………更衣室

うるか 「お着替えひとりでできる?」

葉月 「うん、大丈夫よ! うんしょ、うんしょ……」

ヌギヌギ……

うるか (大丈夫そうかな。じゃあ、あたしも早く着替えて、と……)

うるか 「………………」

ドキドキドキドキ……

うるか (普段、競泳水着しか着てないから、こういう水着を自分が着るんだって思うと……)

うるか (やっぱりちょっと緊張するな……)

291: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:48:22 ID:BlhIJ9pQ
葉月 「おねーちゃん?」

うるか 「へ……? あ、ごめんごめん、お姉ちゃんもすぐ着替えるね」

うるか (でも、海っちと川っちに付き合ってもらったし……)

うるか (成幸に見せるため、成幸にみせるため、成幸に見てもらうため……)

スルスルスル…………

うるか 「ん……。ん?」

うるか (……しまった。普段、競泳水着しか着ないから、想定してなかったけど、)

うるか (背中のヒモを結ぶタイプの水着、む、結ぶの、ちょっと難しい……)

うるか (試着の時は川っちに結んでもらったから気づかなかったけど……)

うるか (まずい)

葉月 「? おねーちゃん、ひも、うまく結べないの?」

葉月 「結んであげようか?」

うるか 「本当に? じゃあお願いしようかな……」

292: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:48:58 ID:BlhIJ9pQ
キュッキュッ……ムギュッ

葉月 「結べたわよ~」

うるか 「ありがとう、葉月ちゃん」

葉月 「………………」

フムフムフム……

うるか 「葉月ちゃん?」

葉月 「おっぱいもおしりも大きくて、日焼けも健康的ね。体力もあるし……」

葉月 「兄ちゃんが料理も上手って言ってたし、すごく理想的なお嫁さんだわ」

うるか 「へ? へ? へ?」

葉月 「おねーちゃん、兄ちゃんのお嫁に来ない?」

うるか 「なっ、なななな、何を言ってるのかなー!?」

うるか 「ほ、ほら、成幸も和樹くんも待ってるだろうし、行くよ、葉月ちゃん」

葉月 「はーい」

うるか (成幸のお嫁さん……) カァアアア…… (望むところだけど、まだ早いよぅ……///)

293: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:49:46 ID:BlhIJ9pQ
………………

うるか 「おーい、成幸ー、和樹くーん」

葉月 「兄ちゃーん」

成幸 「お、着替え終わったのか。意外と早かったな……って……」

成幸 「!?」

うるか 「成幸……? どしたん? 目逸らしちゃって……」

うるか (こ、これは、間違いない……!)

うるか (効いてる!!)

成幸 「い、いや、なんでも、ない……ことも、ない、けど……」

成幸 「い、いつもの水着じゃないから、びっくりして……。いや、当たり前か、あはは……」

和樹 「兄ちゃん?」  葉月 「顔真っ赤ね。大丈夫?」

成幸 「だ、大丈夫だよ。さ、混雑する前に、ビニールシート敷いて場所取りしに行くぞ」

294: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:50:23 ID:BlhIJ9pQ
成幸 (び、ビキニ、っていうのかな、ああいう水着……)

成幸 (先輩の水着姿はこの前見たけど……うるかのこういう水着姿って、なんていうか……)


―――― 『ほー 緒方や武元くらいないと物足りないってか?』


成幸 (なまじ中学の頃から知ってるだけに、余計になまめかしいというか……)

成幸 (やっぱり、先輩より肉付きがよくて、大きいというか……)

成幸 (!? って俺は何を考えてるんだ!? 和樹と葉月のために一日潰してくれてるうるかに、)

成幸 (俺はなんてヨコシマでひどいことを考えてるんだ……!)

うるか 「……成幸? 大丈夫?」

成幸 「お、おう、大丈夫大丈夫。な、何も問題ないぞ。水着似合ってるぞ、うるか。可愛いぞ。きれいだ」

うるか 「ふぇっ……!?」

成幸 「……!?」

成幸 (勢いよく口から勝手に言葉が飛び出したー!)

成幸 (場合によってはセクハラになりかねん! 早く訂正を……!)

295: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:50:56 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「い、いや、その……今のは……――」

うるか 「――嬉しい」

成幸 「え?」

うるか 「すごく嬉しいよ、成幸。ありがと……」

成幸 「あ、ああ。ど、どういたし、まして……」

うるか 「えへへ……///」

うるか (……がんばってこの水着にしてよかった~~~! 海っち川っちありがとー!!)

葉月 「ねぇねぇ」 コソッ

和樹 「ああ」

葉月 「うるかおねーちゃんは、嫁の最有力候補、と……」 メモメモ

和樹 「ぜってー兄ちゃんのこと好きだぜ、あれ」

葉月 「問題は、それでも気づかない兄ちゃんの鈍さなのよね~」

296: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:52:54 ID:BlhIJ9pQ
………………子ども用プール

パシャパシャパシャ

和樹 「冷たくてきもちーなー!」

葉月 「えへへ、お風呂よりひろわー!」

うるか (まだふたりとも小さいもんね。子どもプールくらいしか入れないよね)

成幸 「悪いな、うるか。泳げるお前にはフラストレーションがたまるかもしれないけど……」

うるか 「ううん、全然。むしろ、泳ぐことも勉強も忘れられてボーッとしてられるよ」

うるか 「にひひ。それに、成幸じゃこの浅いプールでも溺れちゃうかもしれないしね」

成幸 「ああ。その可能性は十分にあると思う」 ゴクリ

うるか (じ、冗談のつもりだったんだけどな……)

葉月 「兄ちゃん、兄ちゃん」

成幸 「うん?」

バシャッ

成幸 「ぶわっ……、み、水……?」

297: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:53:49 ID:BlhIJ9pQ
和樹 「えへへ、兄ちゃん、スキありだぜ!」

成幸 「お前たち~~、やったなー!」

葉月 「きゃー、兄ちゃんが追いかけてくるわー!」

バシャバシャ……キャッキャッ……

うるか 「………………」

クスッ

うるか 「……楽しそう。あたしまで楽しい気分になってくるよ」

うるか 「こちらこそ、一緒に来させてくれてありがとう、だよ」


―――― 『……ちょうど武元に出会った頃 中学の入学式の数日前だったかな』

―――― 『親父が死んだんだ』


うるか 「………………」

うるか (ああやって、お父さんの代わりみたいなことを、ずっとしてきたんだよね)

298: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:54:44 ID:BlhIJ9pQ
うるか (……成幸はすごいなぁ。なんか、すごく申し訳ない気持ちになってきたよ)

うるか (あたし、成幸と一緒にプールに行けるって、浮かれて、はしゃいで……)

うるか (あたしは、学校も水泳も、好きに選ばせてもらって……)

うるか (がんばれることだけがんばって、今までフツーに生きてきたんだ)

うるか (そんな間もずっと、きっと、成幸はこうやって……)

うるか (誰かのためにがんばってきたんだろうな)

うるか (それに引き換え、あたしは……――)


  「――うるか」


うるか 「へっ……?」

バシャッ

うるか 「わひゃっ、冷たっ……」

299: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:55:16 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「何ボーッとしてるんだよ、らしくもない」

成幸 「一緒に遊ぼうぜ」

うるか 「………………」 クスッ 「……よーし、やったなー、成幸ぃー!」

うるか 「うるかちゃんに喧嘩をふっかけたこと、後悔させてやるぜー!」

バシャバシャバシャバシャ

成幸 「うおっ!? さ、さすがは武元うるか、すごい水量だ……!」

葉月 「兄ちゃん兄ちゃん、このままじゃ負けちゃうわ」

和樹 「よーし、じゃあおれは強い方につくぜー!」

成幸 「そこで裏切るのかお前は!?」

葉月 「じゃあわたしもうるかおねーちゃんにつくわ」

成幸 「葉月まで!?」

バッシャァアーーン

成幸 「ごふっ……!?」

ブクブクブク……

うるか 「……成幸!? 子ども用の浅いプールで本当に溺れてる!?」

300: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:55:47 ID:BlhIJ9pQ
………………木陰

成幸 「うぅ……やっぱり、水は苦手だ……」

うるか 「ご、ごめん、成幸。ちょっとやり過ぎちゃった……」

葉月 「気にしなくていいのよー、うるかおねーちゃん」

和樹 「逆に、どうやったらあんなに浅いプールで溺れられるのか知りたいぜ」

成幸 「まったく、面目ない……」

成幸 「すまん、うるか。俺は少しここで休んでるから、チビどもをお願いしてもいいか?」

うるか 「それはいいけど、成幸はひとりで大丈夫?」

成幸 「ああ、俺のことは気にしなくていい。悪いけど、頼めるか?」

うるか 「もちろん。そのために今日はここに来てるんだから」

うるか 「じゃ、葉月ちゃん、和樹くん、いこっか!」

和樹&葉月 「「うん!」」

301: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:56:38 ID:BlhIJ9pQ
………………

トコトコトコ……

葉月 「あのね、うるかおねーちゃん」

うるか 「うん?」

葉月 「兄ちゃんね、あんな風に情けなくて、弱っちいところもあるけど、」

葉月 「それでもね、すごく格好いいところもあるのよ」

葉月 「だから、ああいうところを見ても、幻滅しないでほしいな、って……」

うるか 「……うん。大丈夫。そんなのわかってるって」

うるか 「あたしは成幸と中学生の頃からの付き合いだからね」

うるか 「あたしだって、いつも成幸のお世話になってるんだから」

和樹 「……うむ」 コソッ

葉月 「これはもう、うるかおねーちゃんが嫁に来たら全部解決なんじゃないかしら」 コソッ

和樹 「あとは、水希姉ちゃんがどういう反応をするかだな」

和樹 「もしうるかおねーちゃんの方がお料理が上手だったりしたら、」

葉月 「荒れるわね。間違いなく」

302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:57:15 ID:BlhIJ9pQ
うるか 「……?」 (何をコソコソ話してるんだろう……?)

うるか 「ん? あっ……」


『浮き輪、レンタルできます』


うるか 「………………」

和樹 「おねーちゃん?」

うるか 「ねえ、和樹くん、葉月ちゃん、少しだけ深いプール、行ってみよっか」

葉月 「?」

うるか 「あ、おじさーん、子ども用の浮き輪ふたつ貸してー!」

303: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:58:50 ID:BlhIJ9pQ
………………流れるプール

葉月 「わ、わわ……」

和樹 「足がつかない……!」

うるか 「大丈夫だいじょーぶ。浮き輪があるから沈まないからね」

うるか 「それに、いざとなったらうるかお姉ちゃんがついてるよ」

葉月 「うん……」

プカプカプカ……

和樹 「すげぇ。プールが川みたいに流れてる……」

うるか (人がたくさんいるから、ぶつからないように気をつけないと……)

うるか (それに、万が一のこともあるから、絶対ふたりから目を離さないように……)

うるか (……きっと、成幸はずっと、こうやってこのふたりの面倒を見てきたんだろうな)

304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 00:59:30 ID:BlhIJ9pQ
葉月 「足つかなくても怖くないわね」

和樹 「うん! うるかおねーちゃんがいるもんな」

うるか 「にひひ、嬉しいこと言ってくれるじゃないのー」

うるか 「じゃあ、ちょっとだけスピードアップするよ。しっかり浮き輪につかまって」

和樹&葉月 「「?」」

うるか 「それー!」

葉月 「きゃーっ、すごい勢いだわー!」

和樹 「すげー! もっともっとー!」

うるか (ふたり同時に浮き輪を押すって、結構疲れるんだね……)

うるか (ん……少し前が空いた。これなら……)

うるか 「よーし、しっかりつかまってるんだよー!」

うるか 「少しだけ、このうるかちゃんの本気を見せてあげようかなー!」

ザブン……ビュン!!!

305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:00:24 ID:BlhIJ9pQ
葉月 「ひゃっ……!」

和樹 「うおー!? めちゃくちゃ速い!?」

うるか 「えへへ、そうだろうそうだろう? これがうるかちゃんの泳ぎの力だー!」

バシャバシャバシャ……

うるか (って言っても、顔は出したままだし、周りの迷惑になっちゃうからちょっと足動かしてるだけだけど)

うるか (でも、ふたりとも楽しそうでよかった……)

ハラリ……

うるか 「ん……?」

うるか 「!?」 (こ、このそこはかとない開放感は……)

うるか 「………………」

うるか (やっぱりトップスがない!? え、うそ……どこ……? 流された……!?)

葉月 「おねーちゃん?」 和樹 「どうかしたの?」

うるか 「う、ううん。なんでもないよ」

うるか (まずい! 浮き輪を持っていないとふたりが流されちゃう!)

うるか (胸を手で隠すこともできないし、肩まで水に浸かって誤魔化すしかない……)

306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:01:26 ID:BlhIJ9pQ
うるか (水着を探すどころの話じゃない。とりあえず、ふたりをプールサイドに上げて……)

うるか 「……ふたりとも、ちょっと一回、プールを上がろうか」

葉月 「? まだ入ったばっかりよ?」

和樹 「もう少し入ってたいなぁ……」

うるか 「うっ……」

うるか (……まぁ、そうだよね)

うるか 「………………」


―――― 『……この前話しただろ? うち、親父がいないからさ』

―――― 『和樹も葉月も、プールってあんまり行ったことがないんだよ』

―――― 『じゃあ、今日は目一杯楽しませてあげなくちゃね!』


うるか (……成幸にふたりをお願いされてるんだ。だったら、あたしは、)

うるか (水着の上がないくらいで、泣き言なんか言ってられないよ!)

307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:02:05 ID:BlhIJ9pQ
うるか 「よーし、じゃあもう何周かしちゃおうかー!」

うるか (回ってれば、きっと水着も見つかるだろうし……)

葉月 「わーい! するわするわー!」

和樹 「おねーちゃん、おねーちゃん、またバシャバシャって速いのやってよー!」

うるか 「よしきた。じゃあ、人がいなくなって、前が開けたら……それ!」

バシャバシャバシャ

葉月 「きゃー」 和樹 「わーい!」

うるか (大丈夫。大丈夫。水に肩まで浸かってれば、きっと誰にもバレない……)

うるか 「………………」

うるか (バレてない、よね……?)

308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:04:27 ID:BlhIJ9pQ
………………

葉月 「お水つめたーい」 ポー

和樹 「太陽あったかーい」 ポー

うるか (……しばらく流れるプールを周回したけど、ふたりとも疲れてきてる感じかな)

うるか 「そろそろプール上がろうか? ふたりとも疲れてるみたいだし」

葉月 「うん、上がるわ」  和樹 「ノドも乾いてきたしなー」

うるか 「……!?」

うるか (そうだ。このふたりはまだ小さな幼児だ)

うるか (幼児がノドの乾きを訴えるって、熱中症一歩手前だって救急救命※の講習で言ってたっけ……)

うるか (ど、どど、どうしよう。プールサイドにふたりを上げれば、当面の危険はないけど、)

うるか (このまま水分を取らせられなかったら、最悪、熱中症に……)

うるか (かといって、この人混みでふたりだけで成幸のところに行かせるわけにはいかないし……)


>>1の経験則ですが水泳部はソレ系の講習を受けることがままあります。

309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:06:09 ID:BlhIJ9pQ
うるか 「………………」

うるか (こうなったらもう仕方ないよね)

うるか (恥ずかしいけど、ふたりの安全には代えられないモン)

うるか (あたしが恥ずかしい思いをする程度で済むなら、それでいい)

うるか (み、見られて減るもんじゃないし! べつに、いいし……)

葉月 「……おねーちゃん?」

うるか 「あっ……ご、ごめんごめん。じゃあ、行こうか……――」


  「――……そんな格好でどこ行くってんだよ、うるか」


うるか 「へ……? 成幸!?」

和樹 「兄ちゃん!」

成幸 「悪い。てっきり子ども用プールにいると思ってたから、探すのに手間取った」

成幸 「ずっとひとりでチビたちのお守りをさせて悪かったな」

成幸 「ほら、和樹、葉月。プールから上がるぞー!」

ザバァ

310: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:07:02 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「ほら、飲み物。ふたりとも、これ飲んでそこで少し待ってろよ」

葉月&和樹 「「はーい!!」」

成幸 「……ってことで、」

ザブン

成幸 「うおお……足がつくって分かってても、水流があるから少し怖いな……」

成幸 「っていうか、一度でも足を滑らせたら俺は溺れるからそこんとこよろしく」

うるか 「じゃあなんでプールに入ってきたの!?」

成幸 「……これに決まってるだろ」 コソッ

うるか 「これって……あ、あたしの水着!?」

成幸 「お、大きな声出すなよ。俺だって恥ずかしいんだから……」

成幸 「さっきお前たちを探してるときに、偶然排水溝にひっかかってるのを見かけたんだよ」

成幸 「お前の水着に見えたから、もしかして、と思って持ってきたんだ」

311: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:07:51 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「違ったら落とし物センターに届けようと思ってたけど……」

カァアアアア……

成幸 「その様子じゃ、本当にお前のみたいだな……」

うるか 「……!? な、成幸のえっち! こっち、見ないでよ……」

成幸 「見てねえよ。それより、早く受け取れよ、水着」

うるか 「う、うん……」

うるか 「ありがと、成幸……」

成幸 「いや……」 カァアアアア…… 「い、いいから、早くつけろよ」

うるか 「うん……」

スルスルスル……

うるか 「……ねえ、成幸」

成幸 「うん?」

うるか 「水の中だし、あんまり後ろで結ぶのも慣れてないからさ、」

うるか 「背中のヒモ、結んで?」

312: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:08:29 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「!? い、いや、それは、ちょっと……」

うるか 「……じゃあ水着つけないままプールから上がれって言うの?」

成幸 「わ、わかったよ! 結ぶよ!」

うるか 「ひゃうっ……」

うるか (な、成幸の手が、背中に……///)

成幸 「ん……こんな感じでいいのか……? こう、っと……」

うるか 「ひゃんっ」

成幸 「へ、変な声出すなよ!」

うるか 「だ、だって、成幸が背中をまさぐるから……」

成幸 「仕方ないだろ! 見ないようにして結んでるんだから!」

成幸 「……よし。これでいいだろ。大丈夫そうか?」

うるか 「……うん。大丈夫。ちゃんと結べたみたいだよ」

うるか 「……ありがと、成幸」

313: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:09:51 ID:BlhIJ9pQ
成幸 「……いや、礼を言うのはこっちだよ。うるか。それに、謝らないとな」

成幸 「お前ひとりにあのふたりの世話を押しつけるようになってしまって、本当にごめん。悪かった」

うるか 「い、いいよいいよ。あたしも楽しかったし、」

うるか 「それに、あたしが勝手に浮き輪を借りて、流れるプールに入ったのが悪かったし……」

うるか 「成幸に一言いってからにすればよかったね。ごめんね」

成幸 「いや……それは大丈夫だよ。お前が責任持ってふたりを見ててくれたからさ、」

和樹 「めちゃくちゃ楽しかったなー!」 葉月 「ねー! またおねーちゃんにバシャバシャしてもらいたいわねー!」

成幸 「あのふたりは、安全に楽しく遊ぶことができたんだろうしさ」

成幸 「それに、お前、あのふたりのために、水着の上がないままプールから上がろうとしただろ」

うるか 「そ、それは……だって、ふたりに水分を摂らせなきゃって思ったから……」

成幸 「そこまでやってくれてさ、文句なんか言うわけないだろ。だから、本当にありがとう」

成幸 「あのふたりのお姉ちゃん代わりをしてくれて、本当に、本当にありがとう、うるか」

うるか 「うっ……」 ドキッ 「そ、そんな、お礼なんかいいよ……。あたしも、楽しかったから……////」

うるか (うぅ……。嬉しいなぁ。成幸に……大好きな男の子に、ここまで言ってもらえるなんて……)

うるか (嬉しいなぁ……)

314: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:10:48 ID:BlhIJ9pQ
………………帰路 電車内

葉月 「………………」 zzzzz……

和樹 「………………」 zzzzz……

成幸 (嬉しそうな顔しちまってまぁ……)

成幸 (幸せそうな寝顔だ。まぁ、今日一日目一杯遊んだからな。眠くもなるよな)

成幸 「ふぁーあ、俺も眠いや……」

うるか 「……いいよ。寝ても」

成幸 「ん……?」

うるか 「あたし、水泳部で鍛えてるからさ。駅についたら起こしてあげる」

うるか 「だから、寝てなよ。成幸も慣れないプールで疲れたでしょ?」

成幸 「あー……」

成幸 「……じゃあ、お願いしてもいいか?」

うるか 「うん。あたしは気にせず、ゆっくり寝たらいいよ」

315: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:11:24 ID:BlhIJ9pQ
………………

成幸 「………………」 zzzz……

うるか 「……成幸?」 ボソッ 「寝ちゃった……? かな」

うるか (さ、さすがに人もいるし……恥ずかしいけど……)


―――― 『ちょっとしたゲームみたいな感じで……姉弟ごっこを少々……』


うるか 「……文乃っちが、お姉ちゃん役をやったなら、あたしだって」

うるか 「少しくらい、いいよね……」

ドキドキドキ……

うるか 「………………」

ナデナデナデ

うるか 「……いつもがんばってて偉いね、成幸」

うるか 「今くらいは、うるかお姉ちゃんに甘えても、いいんだよ……?」

ポフッ

うるか 「……うん。うるかお姉ちゃんの肩を貸してあげるから、ゆっくりおやすみ。成幸」

316: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:12:14 ID:BlhIJ9pQ
うるか 「………………」

うるか (……あたし、もっと勉強がんばらないと)

ゴソッ

うるか (あたしは、だって、成幸よりはるかに恵まれた環境にあるから)

うるか (あたしは、水泳だけがんばっていればいいなんて、そんなわけないんだ)

うるか (何もかもに一生懸命な成幸の隣に立つつもりなら、)

うるか (ううん。奥さんとして、成幸の傍にい続けるつもりなら、)

うるか (あたしは、もっともっとがんばらないと。甘えてなんかいられないんだ)

ペラッ……ペラッ……

うるか 「……待っててね、成幸」

うるか 「あたし、がんばるから」

うるか 「いつか、成幸の隣で、成幸のことを支えてあげられるように」

うるか 「あたし、がんばるからね。成幸」


おわり

317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:12:59 ID:BlhIJ9pQ
………………幕間

水希 「……!?」

ピキューン

水希 「……今、誰かがお兄ちゃんの奥さんになる決意を固めた気がする!」

花枝 「部活から帰ってきてすぐ何言ってんのあんた」

花枝 「あたしも仕事で疲れてるんだから勘弁してね」

水希 「……!?」

ピキューン

水希 「またひとり、お兄ちゃんの“お姉ちゃん”を自称する女が現れた気がする!」

花枝 「うんうん。お母さんはあんたの将来がただただ心配だわー」



おわり

318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/04(木) 01:16:35 ID:BlhIJ9pQ
>>1です。
読んでくださった方、ありがとうございます。

>>308の※は余計かとも思いましたが一応つけました。
物語をもう少し工夫できれば必要ないものだと思います。申し訳ないことです。

うるかさんの話も無事投下できたので、これでメインヒロインは一通り書いたかなと思います。
(理珠さんの話はやや関城さんに浸食されていたので微妙かもしれません)。
また思いついた話を書き上げられた順番で適当に投下していこうと思いますので、よろしくお願いします。

また折を見て投下します。見てくれたら嬉しいです。

引用元: 【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」