1: 2012/01/29(日) 21:15:27.85 ID:4H3g0hL00
【狩人が住む町】

PART1 御曹司からの依頼


東京都 練馬区 ──ジャパン──

空き地──

スネ夫「ここが待ち合わせ場所だったな」

スネ夫「練馬区最高のテ口リスト、超A級スナイパー、ノビタ13、か……」

スネ夫「もうすぐ約束の14:00になるけど……」

スネ夫「本当に来るのだろうか」

3: 2012/01/29(日) 21:18:37.24 ID:4H3g0hL00
14:30になった。

スネ夫「……来ないな」

スネ夫「バカバカしい、帰るか」

タッタッタ

ノビタ13「はぁ、はぁ、はぁ。待った?」

スネ夫「遅いじゃないか! 完全に遅刻だよ!」

ノビタ13「ごめ~ん、昼寝してたら寝坊しちゃって」

スネ夫(本当に大丈夫なのか、こいつ……?)

4: 2012/01/29(日) 21:20:56.01 ID:4H3g0hL00
スネ夫「君がノビタ13……いや、デューク野比だね?」

ノビタ13「ぼくのこと知ってるの!? えへへ、なんだか照れるなぁ……」

ノビタ13「サインあげよっか?」

スネ夫「いや、いいよ(知らなかったら依頼なんかできないだろ……)」

ノビタ13「あ、ちなみに本名は野比のび太っていうんだ」

ノビタ13「時々間違えてのび犬って書いちゃうけど、アハハ」

スネ夫(もしかして、こいつ単なるアホなんじゃ……)

6: 2012/01/29(日) 21:24:04.51 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「用件を聞いてあげるよ!」

スネ夫「えぇと──」

ノビタ13「待った!」

スネ夫「え!?」

ノビタ13「そっちの土管を見たまま、しゃべってくれないと」

スネ夫「でもなんか、不自然じゃない? 土管を見たまましゃべるなんて……」

ノビタ13「イヤならいいんだよ、別に」プイッ

ノビタ13「君の依頼を受けないだけだから」

スネ夫「わ、分かったよ。いうとおりにするよ……」

7: 2012/01/29(日) 21:27:49.31 ID:4H3g0hL00
スネ夫「ぼくはこの通りルックスにも優れてて、お金持ちなんだ」

スネ夫「ぼくのパパは社長をやってるからね」

スネ夫「だからとても顔が広くてさ」

スネ夫「例えばこの間なんか、芸能プロダクションの社長との繋がりのおかげで」

スネ夫「伊藤つばさちゃんの誕生パーティーに招待されちゃったんだ」

スネ夫「しかも、特別席でだよ、特別席」

スネ夫「そしたら、つばさちゃんったらぼくの方を見て微笑んじゃって」

スネ夫「ぼくも、ついついつられて微笑み返しちゃったよ、ハハ」

スネ夫「いやぁ~ぼく、あの微笑みは一生忘れられないだろうね」

スネ夫「しかもその後、つばさちゃんからサインまでもらっちゃってさ」

スネ夫「あ、そうだ。ノビタ13、君にも見せてあげようか」

ノビタ13「ぐぅ……」ムニャムニャ

8: 2012/01/29(日) 21:30:49.11 ID:4H3g0hL00
スネ夫「おい、ノビタ13!」

ノビタ13「むにゃ?」パチッ

スネ夫「なんで寝てるんだよ! これから面白いとこなのに!」

ノビタ13「ごめんごめん、だって話が長いんだもん」

ノビタ13「自慢話はいいから、依頼だけ聞かせてよ」

ノビタ13「パーッと、パーッと」

スネ夫「ちぇっ、分かったよ」

スネ夫「じゃあターゲットから説明させてもらうよ」

9: 2012/01/29(日) 21:33:53.91 ID:4H3g0hL00
スネ夫「ぼくがやっつけてほしいのは、剛田武」

スネ夫「ジャイアンってあだ名で恐れられているガキ大将だ」

スネ夫「体は大きいし、乱暴だし、空手や柔道をかじったりもしている」

ノビタ13「だれがやっつけるの?」

スネ夫「君に決まってるだろ!」

ノビタ13「えぇ~っ、おっかないなぁ」

スネ夫(無視しよう)

スネ夫「──で、あいつは人のオモチャとかを借りるっていって、ぶんどるんだ」

スネ夫「あいつに取られたオモチャは絶対に返ってこない……」

ノビタ13「ひどいことするなぁ」

10: 2012/01/29(日) 21:37:46.65 ID:4H3g0hL00
スネ夫「昨日も、ぼくは新しく買った飛行機のラジコンを取られちゃったんだ」

ノビタ13「ありゃりゃ……」

スネ夫「だから、あいつをコテンパンにやっつけてほしいんだ!」

ノビタ13「で、報酬は?」

スネ夫「漫画10冊」

ノビタ13「オッケー。じゃあ、仕事が終わったら裏山の千年杉に振り込んでね」

スネ夫「分かったよ」

ノビタ13「あ、あとくれぐれもウソはついてないだろうね?」

ノビタ13「ぼく、依頼人のウソやインチキは許さないからね」

スネ夫「こんな目にあってるのに、ウソなんかつくはずないだろ!」

11: 2012/01/29(日) 21:41:49.81 ID:4H3g0hL00
PART2 青い“狸”


野比家──

ノビタ13「ドラえもぉ~ん!」

ドラえもん「ノビタ13、どうしたんだい?」

ノビタ13「さっき依頼を受けてきたんだけど」

ノビタ13「標的がものすごく強そうなやつでさぁ」

ノビタ13「なんか道具出してぇ~!」

ドラえもん「まったく、いつもいつも君はぼくを当てにして!」

ドラえもん「一人でできないなら、狙撃手(スナイパー)なんかやるな!」

ノビタ13「だってぇ~!」

12: 2012/01/29(日) 21:45:41.33 ID:4H3g0hL00
ドラえもん「今からでも遅くない。一人でできないなら、依頼を断ってきなよ」

ノビタ13「できないよ、みっともない!」

ノビタ13「ぼくは練馬区で一番のスナイパーなんだよ」

ノビタ13「だからこそぼくは、利用価値を認められてだれにも狙われずにいるわけ」

ノビタ13「もし依頼を断ったら、ぼくは練馬中から狙われちゃうよ」

ノビタ13「ドラえもんは、ぼくがCIAやMI6やモサドに狙われてもいいの!?」

ドラえもん「う~ん……」

ノビタ13「もしかしたら、ぼくの仲間である君や──」

ノビタ13「君の恋人ミイちゃん、妹ドラミちゃんにも危害が及ぶかも……」

13: 2012/01/29(日) 21:48:18.39 ID:4H3g0hL00
ドラえもん「う~ん……」

ドラえもん「しょうがないなぁ、分かったよ」

ノビタ13「やった!」

ドラえもん「えぇと……」モゾモゾ

ドラえもん「空気──」

ノビタ13「待った!」

ドラえもん「な、なんだい?」

ノビタ13「ポケットから手を出す時は、ゆっくりと出してくれなきゃ!」

ドラえもん「もう、めんどくさいなぁ」ソローリ

ドラえもん「空気ピストル~!」

14: 2012/01/29(日) 21:51:39.74 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「空気ピストル?」

ドラえもん「指にはめて“バン!”と叫ぶと、空気の塊が飛び出して相手を倒すんだ」

ノビタ13「ふぅ~ん……」

ドラえもん「あんまり嬉しそうじゃないね。君にピッタリの道具だと思うけど」

ノビタ13「もっとすごいのないの? アーマライトM16とか」

ドラえもん「あるわけないでしょ!」

ドラえもん「あったとしても、君じゃ使いこなせないよ、きっと」

ノビタ13「ちぇっ、じゃあ道具はそれでいいや」

ドラえもん「道具は、ってのはどういうこと?」

ノビタ13「音がさ、もう少しなんとかならない?」

15: 2012/01/29(日) 21:54:31.73 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「“バン!”じゃ幼稚すぎるじゃない」

ノビタ13「“ドキュゥーン”とか“ガゥーン”とかで撃ちたいんだけど」

ドラえもん「えぇ~……」

ノビタ13「頼むよ、ドラえもん」

ノビタ13「ぼくがスナイパーとしてもっと有名になれば」

ノビタ13「君にもドラ焼きをいっぱい買ってあげられるだろうし」

ドラえもん「………」ジュルリ

ドラえもん「分かったよ。未来デパートに改造してくれるよう頼んでくる」

ノビタ13「さっすが、ドラえもん!」

ドラえもんはタイムマシンで未来に向かった。

17: 2012/01/29(日) 21:58:48.33 ID:4H3g0hL00
PART3 親孝行


ノビタ13「ドラえもんが帰ってくるまでヒマだから」

ノビタ13「居間でテレビでも見てようかな」

野比家 居間──

玉子「ノビタ13、ちょっと肩を叩いてもらえる?」

ノビタ13(うぇ~……)

ノビタ13(でも仕事の前だし、たまには親孝行もいいかな)

ノビタ13「分かったよ、ママ」スッ

玉子「私の背後に立つんじゃありません!」

バキィッ!

ノビタ13「いたたぁ……! さすがは、ぼくのママだ……」

18: 2012/01/29(日) 22:01:32.22 ID:4H3g0hL00
PART4 “出来すぎる”情報屋


ドラえもん「はい、改造してもらってきたよ」

ノビタ13「ありがとう、ドラえもん!」

ドラえもん「さっそく標的のところにいくのかい?」

ノビタ13「いや……まずは情報を仕入れてこないとね」

ノビタ13「じゃ、行ってきまーす」

ドラえもん「頑張ってきなよ」

19: 2012/01/29(日) 22:06:57.38 ID:4H3g0hL00
出木杉家──

ノビタ13「こんにちは~」

出木杉「やぁ、ノビタ13じゃないか。どうしたの?」

ノビタ13「ちょっと教えてほしいことがあるんだ」

出木杉「教えてほしいこと?」

ノビタ13「ジャイアン、について教えて欲しいんだけど。ぼくの標的なんだ」

出木杉「………」

出木杉「……ここじゃ、まずいね」

出木杉「中に入ってくれ」

ノビタ13「おじゃましまぁ~す」

20: 2012/01/29(日) 22:08:48.96 ID:4H3g0hL00
パソコンを操作し、ジャイアンのデータを呼び出す出木杉。

ノビタ13「どんなやつなの?」

出木杉「恐ろしい相手だよ」カチャカチャ

出木杉「本名、剛田武。家は自営業で、家族構成は父母に妹が一人」

出木杉「あとペットに、ムクっていう犬がいる」

ノビタ13「ぼくも犬を飼いたいなぁ」

出木杉「趣味は色々あるけど、代表的なものは二つ」カチャカチャ

出木杉「一つは野球で、草野球チーム『ジャイアンズ』の監督兼ピッチャーをしている」

出木杉「チームの成績は、あまりよくないみたいだけどね」

21: 2012/01/29(日) 22:12:05.45 ID:4H3g0hL00
出木杉「もう一つは歌うことなんだけど、これがもっとよくない」カチャカチャ

出木杉「彼の歌唱力はNBC兵器(大量破壊兵器)にも匹敵すると」

出木杉「各国の情報機関から警戒されている」

出木杉「彼のリサイタルが第三次世界大戦の引き金になるのでは、と見る専門家もいる」

ノビタ13「ふぅ~ん」

出木杉「もちろん、基本的な武力も備わっていて」カチャカチャ

出木杉「その圧倒的な体格と腕力で、練馬区月見台の小学4年生を統率している」

出木杉「ノビタ13、この仕事はかつてない難易度になるだろう」

ノビタ13「えぇ~仕事断ろうかな、やっぱり……」

出木杉「……でも、弱点もある」カチャカチャ

22: 2012/01/29(日) 22:15:44.02 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「なぁんだ、それを最初からいってよ」

出木杉「彼の弱点は、母親なんだ」

ノビタ13「ママが弱点なの?」

出木杉「うん。さすがの彼も母親には頭が上がらないらしい」

出木杉「ぼくが持っている情報はこれぐらいかな。あとは君次第だ」

ノビタ13「ありがとう」

出木杉「明日の学級新聞を楽しみにしているよ」

ノビタ13「任せてよ」

ノビタ13は10円玉を出木杉の机に置くと、出木杉家をあとにした。

23: 2012/01/29(日) 22:17:34.05 ID:4H3g0hL00
PART5 仕事前の……


ノビタ13「武器も手に入れたし、情報も手に入れた」

ノビタ13「あとはジャイアンをやっつければ、めでたしめでたし、なんだけど……」

ノビタ13「やっぱりこのままじゃ物足りないよね」

ノビタ13「超A級スナイパーは女の子とムフフなことをしなくちゃ!」

ノビタ13「ぼくの相手にふさわしいのは、やっぱりしずちゃんだよなぁ」

ノビタ13「というわけで、しずちゃんのところに行こう!」

24: 2012/01/29(日) 22:20:48.03 ID:4H3g0hL00
源家──

しずか「あら、ノビタ13。どうしたの?」

ノビタ13「えへへ、お願いがあるんだけど」

しずか「なにかしら」

ノビタ13「二人でいっしょに作らない?」

ノビタ13「赤ちゃん」

バチン! ガリガリガリ! ベチン!

ノビタ13「せ、せめてスカートめくらせて」

ガンッ! バリバリバリ! ビタン!

しずか「ノビタ13なんて、最低っ!」

ノビタ13「トホホ……」

25: 2012/01/29(日) 22:22:59.08 ID:4H3g0hL00
PART6 苦肉の策


野比家──

ノビタ13「ドラえもぉ~ん!」

ドラえもん「ノビタ13、ジャイアンをやっつけられたかい?」

ノビタ13「まだだよ」

ドラえもん「えっ、まだだったの」

ノビタ13「だってぇ~やっぱり仕事の前にムフフな場面がないと……」

ドラえもん「ムフフな場面、ねぇ」

ノビタ13「この際ぼくがムフフの当事者じゃなくてもいいよ」

ノビタ13「ムフフな場面作成マシーン、とかないの?」

ドラえもん「ないよ、そんなもの」

27: 2012/01/29(日) 22:26:28.73 ID:4H3g0hL00
ドラえもん「しょうがない、ぼくがやってあげよう」

ノビタ13「えっ!?」

ドラえもん「ぼくがミイちゃんと愛を語り合うから、それで我慢してよ」

ノビタ13「いいなぁ、ドラえもんばっかり」

ドラえもん「ぼくだって、イヤイヤやるんだ。君のためなんだぞ」

ノビタ13(ウソをつけ)

ドラえもん「ここじゃ恥ずかしいから、屋根の上でやるとしよう」

ノビタ13「でもロボットと猫のラブシーンなんて、面白いもんじゃないからね」

ノビタ13「長々やると、このSSの人気が落ちる」

ドラえもん「いいや、2レスほどやる!」

28: 2012/01/29(日) 22:29:57.77 ID:4H3g0hL00
屋根の上──

ドラえもんとミイは愛を語り合った。

ドラえもん「ミイちゃん、ぼくは世界で一番君を愛しているよ!」

ミイ「アオオ~~~ッ!」

ミイ「ミャ、ミャ、ミャ~~~ッ!」

ドラえもん「ミイちゃん。ぼくは君なしでは生きていけないよ!」

ドラえもん「君もぼくなしじゃ生きていけないだろ!?」

ミイ「ミャオ~ンッ!」

ミイ「オ、オ、オ~~~ッ!」

ドラえもん「ミイちゃんの魅力には小判どころか、どんな大金だってかなわない!」

ミイ「ミャオオ~~~ッ!」

29: 2012/01/29(日) 22:32:40.60 ID:4H3g0hL00
ミイ「ミャオ~ッ! ミャオ~ッ!」

ドラえもん「ミイちゃんっ! 愛してるよっ!」

ドラえもん「ぼくの君への愛は、とても四次元ポケットなんかには入りきらないよ!」

ミイ「ミャオオオオ~~~ッ!」

ミイ「オ、オ、オ~~~ッ!」

ドラえもん「ぼくのペタリハンドで、君とぼくの心をくっつけてみせる!」

ミイ「ミャ~~~ン!」

ミイ「ミャオ、オ、オ~~~ッ!」

ドラえもん「ぼくは君のためなら、地球だって破壊できるよ!」

ミイ「ミャオ~~~~~ンッ!」

31: 2012/01/29(日) 22:36:32.40 ID:4H3g0hL00
PART7 対決


町の道路──

ノビタ13(ドラえもんのやつ、うるさすぎだよ。近所から苦情が入ったじゃないか)

ノビタ13「でも出木杉に、ジャイアンの家の住所は教えてもらったし」

ノビタ13「ジャイアンのママにいいつけて、やっつけてもらえば解決だ」

ノビタ13「これで漫画10冊は頂きだ。よかった、よかっ──」

ノビタ13「!」

ノビタ13は目の前から歩いてくる人間が、ジャイアンだということに気づいた。

ノビタ13「ジャ、ジャイアン!」

ジャイアン「ん? なんだお前、なんか文句あんのか」

ノビタ13「い、いい天気だね」

ジャイアン「ちょうどいいや。俺、ムシャクシャしてたんだ」

ジャイアン「思いっきり殴らせろ!」

32: 2012/01/29(日) 22:40:28.74 ID:4H3g0hL00
ノビタ13(こうなったら予定変更、やるしかない!)

ノビタ13は、空気ピストルを構えた。

ノビタ13「バン!」

シ~ン…

ジャイアン「?」

ノビタ13「あ、あれ……?」

ノビタ13「バンッ! バンッ! バンッ!」

シ~ン…

ノビタ13「お、おかしいな」

ジャイアン「なんだそりゃ、こけおどしか?」

33: 2012/01/29(日) 22:42:32.15 ID:4H3g0hL00
ノビタ13『音がさ、もう少しなんとかならない?』

ドラえもん『分かったよ。未来デパートに改造してくれるよう頼んでくる』



ノビタ13(思い出した……。“バン!”じゃなくなったんだった……)

ノビタ13「ダダキューンッ!」

シ~ン…

ノビタ13「ズバドドーンッ!」

シ~ン…

ノビタ13(し、しまった。ぼく、どんな音にしてくれって頼んだっけ!?)

ジャイアン「そろそろこっちからいかせてもらうぜ」

34: 2012/01/29(日) 22:44:50.01 ID:4H3g0hL00
ジャイアン「うおおおっ!」ダダダッ

ノビタ13「ひっ! バババーンッ! ズババーンッ! チンカラホイッ!」

シ~ン…

ノビタ13「キーボウッ! フーコッ! リルルッ! バンホーッ! ピースケッ!」

シ~ン…

ジャイアン「うおりゃあっ!」ブオンッ

ドカバキボカッ! ボコバキメキッ! ズガドゴガスッ!

ノビタ13はギタギタのメタメタにされた。

ジャイアン「へっ、どんなもんだい」

ジャイアン「あースッキリした。帰るとすっか」

37: 2012/01/29(日) 22:47:31.52 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「ま、まだまだ……勝負はこれからだ!」ヨロッ…

ジャイアン「なんだと!?」

ボカドカドゴッ!

ジャイアン「はぁ、はぁ、まいったか」

ノビタ13「まだまだ……」ムクッ

ジャイアン「しつっこいぞ!」

ノビタ13「どうにかして君に勝たないと……」ガシッ

ノビタ13「依頼人から……漫画10冊を……」

ノビタ13「もらえないんだ!」

ジャイアン「知ったことか!」

ボカッ!

39: 2012/01/29(日) 22:50:41.26 ID:4H3g0hL00
ノビタ13はボロボロになってしまった。

ジャイアン「ぜぇ、ぜぇ。もういいだろ、諦めろ」

ノビタ13(ダ、ダメだ……やっぱり道具なしじゃかなわない……)

すると──

ジャイアン母「タケシ! あんたなにやってんだい!」

ジャイアン「ゲッ、母ちゃん!?」

ジャイアン母「あんたまた、よそのスナイパーをいじめて!」

ジャイアン「ちがうんだよ、これは……」

ジャイアン母「今日という今日は、許さないからね!」

ノビタ13(た、助かった……)

41: 2012/01/29(日) 22:53:44.97 ID:4H3g0hL00
PART8 謀られた狩人


野比家──

ノビタ13「──とまぁ、危ないとこだったけど、依頼は達成できたよ」

ノビタ13「空気ピストルの発射音を忘れちゃった時は、もうダメかと思ったよ」

ドラえもん「まったく君らしいミスだね、ノビタ13」

ドラえもん「でもよかったじゃないか。仕事は成功したんだから」

ノビタ13「まあね」

ノビタ13「ついでにジャイアンがオモチャを奪ってることもいいつけて」

ノビタ13「依頼人のラジコンを取り戻して、返してやったしね」

ドラえもん「じゃあ、あとは裏山に振り込まれた漫画を取りに行くだけだね」

ノビタ13「うん、行ってくるよ」

ドラえもん「あ、ぼくにも読ませてよ」

ノビタ13「もちろんさ!」

43: 2012/01/29(日) 22:56:29.57 ID:4H3g0hL00
裏山 千年杉──

ノビタ13「ないっ!?」

ノビタ13「あれ!? ない、ないぞ! 漫画なんかどこにもないっ!」

ノビタ13「どういうことなんだ!?」

ノビタ13「まさか依頼人のやつ、ぼくにインチキを……」



野比家──

骨川家に電話をかけるノビタ13。

ノビタ13「どういうことだよ、これは!?」

スネ夫「依頼? 漫画10冊? なんのことかなぁ~?」

ノビタ13「君ってやつは!」

スネ夫「いいがかりは止めてくれないかな。じゃあね」ガチャン

ノビタ13「………」

44: 2012/01/29(日) 22:58:51.01 ID:4H3g0hL00
PART9 裏切りの代償


空き地──

スネ夫はノビタ13が取り戻したラジコン飛行機で遊んでいた。

ブゥ~~~ン

スネ夫「アハハ、愉快愉快」

スネ夫「ノビタ13、やっぱりおつむが足りてなかったな」

スネ夫「ジャイアンは痛い目にあって、ラジコンも取り戻せたってのに」

スネ夫「バカ正直に漫画10冊なんか払うわけないじゃんか、アハハ」

スネ夫「いやぁ、それにしてもぼくの操縦テクニックはすばらしいなぁ」

ザッ

ノビタ13が現れた。

46: 2012/01/29(日) 23:00:26.92 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「スネ夫、君はぼくのルールを破った……」

スネ夫「なんだよ、デューク野比。いや、もうノビタ13でいいか」

スネ夫「まさか、ぼくとケンカするってのかい?」

スネ夫(ぼくはジャイアンとこいつの対決をこっそり見てたけど)

スネ夫(はっきりいってメチャクチャ弱かった!)

スネ夫(なんでこんなやつが超A級スナイパーとかいわれてるんだか……)

スネ夫(こんな奴には、漫画1冊だって払うのが惜しいくらいさ)

ノビタ13「そのつもりだよ」

スネ夫「いいだろう。受けて立とうじゃないか」

スネ夫「でも、あのラジコンを着陸させるからちょっと待ってくれないかな」

ノビタ13「その必要はないよ」

47: 2012/01/29(日) 23:03:35.30 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「ガゥーン」

ビシッ!

ヒュ~~~…… ガシャン!

ノビタ13は空気ピストルで、ラジコン飛行機を撃ち落とした。

スネ夫「な!?」

スネ夫(ウソだろ!?)

スネ夫(100km/h近くで空中を飛んでるラジコンを、あっさり撃墜するなんて!)

スネ夫(しかも今日はかなり風が強いのに!)

スネ夫(こ、これが……ノビタ13!)

49: 2012/01/29(日) 23:05:27.16 ID:4H3g0hL00
スネ夫に空気ピストルの銃口を向けるノビタ13。

スネ夫「ま、待ってくれ! ちゃんと漫画10冊、いや20冊払うから!」

ノビタ13「いったはずだよね」

ノビタ13「ぼく、依頼人のウソやインチキは許さないって」

スネ夫「ヒィッ! た、助けてぇっ!」

ノビタ13「ドキュゥーン」





END <2012年1月作品>

50: 2012/01/29(日) 23:08:17.00 ID:LEol9SpG0
・・・終わりかな?


構成がきちんとゴルゴ13っぽくっていいわwwww

53: 2012/01/29(日) 23:10:36.87 ID:4H3g0hL00
【暴君の憂鬱】

PART1 兄と妹


東京都 練馬区 ──ジャパン──

剛田家──

ジャイアン「ジャイ子、どこに行くんだ!」

ジャイアン「兄ちゃんに行き先くらい教えろよ!」

ジャイアン「な、いいだろ! 行き先くらい!」

ジャイ子「んもう、お兄ちゃんには関係ないでしょ!」ダダッ

ジャイアン「あぁっ、ジャイ子!」

ジャイアン「くそぉ~! きっと、またあの茂手もて夫ってやつのとこだな!」

ジャイアン「ゆるせねぇ!」

54: 2012/01/29(日) 23:11:24.93 ID:cgEnpt0P0
まだ続くのかww
期待

56: 2012/01/29(日) 23:12:18.08 ID:4H3g0hL00
PART2 暴君の苛立ち


公園──

ジャイアンの妹ジャイ子には、茂手もて夫というボーイフレンドがいた。

二人とも漫画家を志しており、共同で同人誌を発行するほどの仲であった。

もて夫「やあ、ジャイ子君」

ジャイ子「ごめんなさい、お兄ちゃんを振り切るのに時間がかかって……」

もて夫「大丈夫、ぼくも来たばかりだよ」

もて夫「君のお兄さんはよっぽど君がかわいいみたいだね」

ジャイ子「ありがた迷惑よ、まったく」

57: 2012/01/29(日) 23:14:15.34 ID:4H3g0hL00
もて夫「ところで例の作品はもう完成しそうかい?」

ジャイ子「えぇ、バッチリよ! ネームはもて夫さんのチェックで完璧だし」

ジャイ子「下書きも終わったから、あとはペンを入れるだけ」

もて夫「あれは名作だよ」

もて夫「ネームを読んだだけで、あんなに感動したのは初めてだ」

もて夫「ぜひとも次の同人誌に載せて、もっとたくさんの人に読んでもらいたいね」

ジャイ子「ありがとう」

ジャイ子「次に会う時には、完成した原稿を持っていけると思うわ」

58: 2012/01/29(日) 23:16:51.15 ID:4H3g0hL00
ジャイアンは茂みに隠れ、二人をのぞいていた。

ジャイアン(おのれ、俺のかわいい妹とイチャイチャしやがって……)

ジャイアン(しかも、あれは名作だの、感動しただのと)

ジャイアン(俺が知らないことを話されると無性に腹が立ってくる……)

ジャイアン(今すぐ茂手をギッタギタにしてやりたいが)

ジャイアン(んなことしたら、ますますジャイ子に嫌われるしな……)

ジャイアン(こうなったら……)

59: 2012/01/29(日) 23:18:59.47 ID:4H3g0hL00
PART3 兄のプライド


空き地──

タッタッタ

ノビタ13「はぁ、はぁ、はぁ。ごめ~ん、待った?」

ジャイアン「遅いぞ、ノビタ13!」

ノビタ13「げぇっ! ジャ、ジャイアン!?」

ノビタ13(ま、まさかこないだの仕返しか……?)ビクビク

ジャイアン「今日はケンカじゃねえ。依頼をしに来たんだ」

ジャイアン「お前は練馬区最高のスナイパーだって聞いてるからな」

ノビタ13(ほっ、よかった……)

ノビタ13「用件を聞いてあげるよ!」

62: 2012/01/29(日) 23:20:49.79 ID:4H3g0hL00
ジャイアン「お前に撃って欲しいのは、原稿だ」

ジャイアン「次の日曜日、俺の妹ジャイ子が公園に漫画の原稿を持っていく」

ジャイアン「それを撃ってもらいたいんだよ」

ノビタ13「なんでそんなことを?」

ジャイアン「ジャイ子には茂手とかいうボーイフレンドがいて」

ジャイアン「いっつも、こっそり二人で会って楽しそうに話してやがる」

ジャイアン「どうにもこうにもムシャクシャがおさまらねえ」

ジャイアン「しかもジャイ子、今までは真っ先に俺に漫画を読ませてくれたのに」

ジャイアン「今回の漫画は読ませてくれねえんだよ」

ジャイアン「兄として……悔しいんだよ!」

64: 2012/01/29(日) 23:22:37.66 ID:4H3g0hL00
ジャイアン「だから完成した漫画の原稿を撃って、台無しにして」

ジャイアン「なんつーか、世の中そううまくいかねえってことを」

ジャイアン「ジャイ子と茂手に味わわせてやりてえんだ!」

ノビタ13(体は大きいくせに、考えることはみみっちいなあ……)

ノビタ13「依頼内容は分かったよ」

ノビタ13「で、報酬は?」

ジャイアン「これだよ」

ノビタ13「たったの10円!?」

ジャイアン「なんだよ、文句あるってのかよ!」

ノビタ13「いや、ないない! ないです!」

ジャイアン「いいか、10円も払ったんだ。ヘマしたらただじゃおかねえからな!」

ノビタ13「は、はいっ!」

ノビタ13(スナイパーをおどす依頼人なんてありえないよ、トホホ……)

66: 2012/01/29(日) 23:25:00.22 ID:4H3g0hL00
PART4 標的は“原稿”


野比家──

ノビタ13「今度の標的は漫画の原稿になっちゃった」

ドラえもん「あのジャイアンが、君に依頼してきたことも驚きだけど」

ドラえもん「そりゃまた変わった標的だね」

ノビタ13「でさぁ、空気ピストルじゃ原稿を吹き飛ばすだけじゃない」

ノビタ13「それじゃあ意味がないよね」

ノビタ13「ジャイアンは原稿を台無しにしろって依頼してきたんだから」

67: 2012/01/29(日) 23:27:05.77 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「だからさ、空気ピストルを空気じゃなくインクが出るようにできない?」

ノビタ13「原稿にインクをベットリつければ、台無しになるじゃない」

ドラえもん「空気ピストルならぬ、インクピストルか」

ドラえもん「なるほど、君にしては考えたね」

ノビタ13「君にしては、は余計だよ」

ドラえもん「さっそく未来デパートに行って改造してもらってくるよ」

ノビタ13「さすがドラえもんは頼りになるなぁ」

ドラえもん「今度うまい屋のドラ焼き、ごちそうしてよね」

ノビタ13「ちぇっ、抜け目ないんだから」

69: 2012/01/29(日) 23:29:25.75 ID:4H3g0hL00
PART5 公園の四人


次の日曜日になった。

公園──

ノビタ13はジャイアンから二人がいつも待ち合わせをする場所を聞いており、

近くの茂みでスタンバイをしていた。

ノビタ13「ここら辺でいいかな」



ドラえもん『インクピストルは、空気じゃなくインクが弾丸だから』

ドラえもん『弾は一発だけだ。ミスは許されないよ』



ノビタ13(ありがとう、ドラえもん)キリキリ…

ドラえもんの忠告を思い出しつつ、右手人差し指にインクピストルをはめる。

70: 2012/01/29(日) 23:30:33.24 ID:4H3g0hL00
一方、別の茂みにはジャイアンが隠れていた。

ジャイアン(まだジャイ子と茂手のヤロウは来てないようだな)

ジャイアン(ノビタ13、ヘマしやがったらぶっ飛ばしてやる!)

ジャイアン(──にしても、原稿がパーになったら、ジャイ子泣くだろうな……)

ジャイアン(俺のやってることは本当に正しいのか?)

ジャイアン(いやいや!)

ジャイアン(兄ちゃんをないがしろにしたんだ! これくらいしたって当然だ!)

ジャイアン(当然……なのか?)

ジャイアン(あっ、二人が来たっ!)

72: 2012/01/29(日) 23:32:41.76 ID:4H3g0hL00
もて夫「やあ、ジャイ子君」

ジャイ子「こんにちは、茂手さん」

もて夫「原稿は完成したかい?」

ジャイ子「ええ、この通りよ」ガサッ

もて夫「おお、すごい。バッチリじゃないか!」パラパラ

ジャイ子「うふふ、ありがとう」



ジャイアン(ふん、もうすぐその原稿はオジャンになるんだ……)

ジャイアン(お前たちのせいなんだからな!)

74: 2012/01/29(日) 23:34:35.10 ID:4H3g0hL00
PART6 インクの行方


もて夫「それにしても、君は本当にお兄さんを大事に思ってるんだね」ペラッ ペラッ

もて夫「お兄さんを題材にして、こんなすばらしい作品を描くなんて」ペラッ ペラッ

ジャイ子「お兄ちゃんはガサツで乱暴者だけど」

ジャイ子「優しいところもいっぱいあるの」

ジャイ子「照れ臭くて、お兄ちゃんにはまだ読ませてないんだけどね」

もて夫「今度、お兄さんにも読ませてあげるといい」

もて夫「絶対に喜ぶよ」

ジャイ子「うん……」



ジャイアン(な、なんだ、これは!?)

ジャイアン(どういうことなんだよ!?)

75: 2012/01/29(日) 23:36:50.14 ID:4H3g0hL00
ジャイアン(まさかジャイ子があんなに俺を思ってくれてたなんて……)

ジャイアン(茂手のやつも、俺が喜ぶだなんていってくれちゃって……)

ジャイアン「ハッ!」

ジャイアン(ま、まずい! ノビタ13への依頼を取り消さないと!)

ジャイアン(あの原稿が台無しになっちまう!)

ジャイアン(まずジャイ子たちにあの原稿を隠すように伝えなきゃ!)

ジャイアン「おい、ジャイ子──!」ガサッ

ジャイ子「え!?(なんでお兄ちゃんがここに!?)」



ノビタ13「………」

ノビタ13「ドキュゥーン」

ビシッ!

76: 2012/01/29(日) 23:39:26.36 ID:4H3g0hL00
ジャイ子「え!?」

もて夫「なにかが原稿に飛んできて……これは、黒インクだ!」

ジャイ子「そ、そんな……せっかくの原稿が……」

ジャイアン(間に合わなかった……!)

ジャイアン(俺のせいだ……!)

ジャイアン(ジャイ子、バカな兄ちゃんを許してくれぇ……!)

もて夫「い、いや……これは──」

もて夫「完成している!」

もて夫「君がベタ塗りを忘れてた箇所に、黒インクが命中して……原稿が完成した!」

ジャイ子「ほ、本当だわ! なんて偶然なのかしら!」

ジャイアン「!?」

77: 2012/01/29(日) 23:42:26.57 ID:4H3g0hL00
PART7 暴君の涙


もて夫「すごい幸運だよ。突然飛んできたインクが、未完成の部分に偶然当たるなんて」

もて夫「もし他のところに命中してたら、原稿は台無しだった」

ジャイ子「よかったわ……」

ジャイ子「ところでお兄ちゃん!」キッ

ジャイ子「なんでこんなところにいるの!? ついてきてたのね!?」

ジャイアン「あ、いや、その……」

ジャイ子「まぁいいわ。せっかくだし、これ読ませてあげるから、感想聞かせて」サッ

ジャイアン「……いいのか?」

ジャイ子「当たり前でしょ。お兄ちゃんのために描いたんだから」

もて夫「ジャイ子君の力作です。ぜひ読んであげて下さい」

ジャイアン「あ、ありがとう……二人とも」ウルウル

78: 2012/01/29(日) 23:45:26.14 ID:4H3g0hL00
ジャイ子「ちょっとお兄ちゃん! 涙で原稿をぬらしちゃダメよ!」

ジャイアン「わ、分かってるよ……」ウッ ウッ

ジャイアン(ちぇっ、ノビタ13のやつ)

ジャイアン(原稿を台無しにしろっていったのに、依頼と違うことしやがって……)

ジャイアン「………」グスッ

ジャイアン(ありがとう、ノビタ13……!)

ジャイアン(心の友よ!)





END <2012年1月作品>

79: 2012/01/29(日) 23:48:49.17 ID:t400LnCo0
スナイパーなら女のヘアピンを撃ち落とす依頼があるってか

いい話だった

82: 2012/01/29(日) 23:50:26.59 ID:4H3g0hL00
【超長距離射撃】

PART1 意外な依頼主


東京都 練馬区 ──ジャパン──

野比家──

ノビタ13「ドラえもぉ~ん!」

ドラえもん「どうしたんだい? ノビタ13」

ノビタ13「家のポストに依頼状が入ってたんだ」

ノビタ13「とてもキレイで可愛い字なんだ。きっと女の子だよ」

ドラえもん「指定された待ち合わせ場所は?」

ノビタ13「空き地だって! さっそく行ってくるね!」タタタッ

ドラえもん「やれやれ……」

ドラえもん「いつも待ち合わせには遅刻するのに、こういう時は早いんだから……」

83: 2012/01/29(日) 23:52:55.73 ID:4H3g0hL00
空き地──

珍しく、待ち合わせ時間より早く到着するノビタ13。

ノビタ13「まだかな、まだかな~」ウキウキ

スタスタ

ノビタ13「あっ!」

空き地にやって来たのは──

ノビタ13「しずちゃん!」

しずか「こんにちは、ノビタ13」

しずか「あなたのスナイパーとしての腕を見込んで、依頼をしに来たの」

84: 2012/01/29(日) 23:54:37.20 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「どうぞどうぞ、遠慮なく話してちょうだい──じゃなかった」

ノビタ13「オホン」

ノビタ13「用件を聞いてあげるよ!」

しずか「じゃあ話すわね」

しずか「私、よくお風呂に入るでしょ?」

しずか「この一週間、お風呂に入っている時、妙な気配を感じるの」

しずか「もしかしたら、のぞかれてるのかも……」

ノビタ13「の、のぞきだって!?」

ノビタ13「くわしく話してくれるかな」

しずか「えぇ……窓の外にある庭に気配を感じたり、ガサゴソと変な音がしたり……」

しずか「でも窓を開けても、だれもいないの」

しずか「ここのところ、ずっとそうなのよ」

86: 2012/01/29(日) 23:57:36.93 ID:4H3g0hL00
ノビタ13「しずちゃんのお風呂をのぞくなんて、許せないっ!」

ノビタ13「のぞいていいのは、ぼくだけだっ!」

しずか「なにいってるのよっ!」

しずか「と、とにかく、ノビタ13にお願いしたいのは」

しずか「お風呂をのぞいている人がいるかどうかの調査と」

しずか「もしいたら、狙撃(スナイプ)してやっつけて欲しいのよ」

ノビタ13「分かったよ、しずちゃん。ぼくに任せて」

しずか「えぇと、依頼料は──」

ノビタ13「そんなもの、いらないよ」

ノビタ13「しずちゃんは、泥船に乗ったつもりでいるといいよ!」

しずか(泥船じゃなくて大船なんだけど……)

しずか(なんだか、今日のノビタ13はたのもしいわ)

87: 2012/01/29(日) 23:59:23.77 ID:4H3g0hL00
PART2 愛する人のため


野比家──

ドラえもん「依頼料もなしに引き受けちゃったのかい?」

ドラえもん「まったく君はお人好しというか、なんというか……」

ノビタ13「まぁ、いいじゃない」

ノビタ13「未来のお嫁さんからお金を取るなんて、みっともないしね」

ドラえもん「武器は例によって空気ピストルでいいとして……」

ドラえもん「犯人探しはどうするつもりなんだい?」

ノビタ13「決まってるじゃないか」

ノビタ13「ぼくがしずちゃんちの庭に隠れて、犯人をやっつけるんだよ!」

ドラえもん「ま、それしかないか」

88: 2012/01/30(月) 00:04:27.46 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13「今日のぼくは、いつもとは一味違うよ」

窓の外を指さすノビタ13。

ノビタ13「今のぼくなら、あそこを飛んでるスズメやツバメだって」

ノビタ13「楽々撃ち落とせると思うよ」

ドラえもん「おいおい、スズメや季節外れのツバメが可哀想だよ」

ノビタ13「もちろん、そんなことはしないけどね」

ノビタ13「とにかく、今回のターゲットは絶対にしとめてみせる!」メラメラ

ノビタ13「一週間もしずちゃんのお風呂をのぞくだなんて……許せない!」メラメラ

ドラえもん(燃えている……ノビタ13が燃えている!)

ドラえもん「じゃあ、さっそくしずちゃんの家に行こうか」

ノビタ13「そうだね」

ノビタ13「……いや待てよ?」

89: 2012/01/30(月) 00:06:43.27 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13「タイムマシンで一週間前に行って、犯人をやっつければ」

ノビタ13「それで済むんじゃないの?」

ドラえもん「ああ……たしかに」

ノビタ13「そうだよ。わざわざ一週間のぞかせておくことなんてないよ」

ノビタ13「ぼくのしずちゃんに手を出した罪は……」

ノビタ13「この空気ピストルで償わせてやる!」

ドラえもん(今日のノビタ13はやる気だ)

ドラえもん(いつもとは迫力が全然違うよ)

ドラえもん(このやる気が空回りしなきゃいいんだけど……)

91: 2012/01/30(月) 00:08:49.81 ID:Q6mgKP1m0
PART3 闇夜の敗北


ノビタ13は一週間前の夜にタイムスリップした。

源家 庭──

ノビタ13(しずちゃんはだいたいこのぐらいの時間にお風呂に入るっていってた)

ノビタ13(この茂みがちょうどいいや)ガサッ

ノビタ13(ここに隠れていれば、犯人にもしずちゃんにも見つからないはずだ)

ノビタ13(さあ犯人よ、出てこい!)

ノビタ13(ぼくのしずちゃんに手を出したこと、後悔させてやる!)

ビシッ!

92: 2012/01/30(月) 00:08:51.78 ID:Yq1u/Iw/0
ああ原作パターン

94: 2012/01/30(月) 00:11:31.82 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13のこめかみに衝撃が走った。

ノビタ13(え……!?)

ノビタ13(な……ん、で……?)

ノビタ13(ぼく、が……や、られる、なん、て……)ドサッ

ノビタ13は茂みの中で気絶してしまった。

再び目覚めた時には、すでに時間は深夜になっていた。

ノビタ13「………」

ノビタ13「ぼくは、負けたのか……」

ノビタ13「しずちゃんを、守れなかった……」

はりきっていた分、ノビタ13のショックは大きかった。

95: 2012/01/30(月) 00:13:29.32 ID:Q6mgKP1m0
PART4 再起せよ!


現代に戻ったノビタ13。

野比家──

ドラえもん「どうだった?」

ノビタ13「……負けちゃったよ」

ドラえもん「な、なんだって!?」

ノビタ13「しずちゃんちの庭で見張ってたら、こめかみ辺りに攻撃を受けて」

ノビタ13「気絶しちゃってた……」

ドラえもん「ううむ。今回の犯人は、かなり恐ろしい相手のようだね」

ドラえもん「でも、超A級スナイパーだって負けることくらいあるさ!」

ドラえもん「気にするな!」

ノビタ13「うん……」

96: 2012/01/30(月) 00:14:52.70 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13「ぼくは諦めてなんかいないよ」

ドラえもん「えらい!」

ノビタ13「えへへ、いつものぼくだったら諦めてたかもしれないけど」

ノビタ13「しずちゃんのためだもん」

ノビタ13「一週間前がダメだったから、次は六日前に行くよ」

ドラえもん「よくいった!」

ドラえもん「負けるな、ノビタ13!」

ノビタ13「ありがとう、ドラえもん!」

97: 2012/01/30(月) 00:17:01.52 ID:Q6mgKP1m0
しかしその後──

~六日前~

ノビタ13「今日は出てこなかったな」

~五日前~

ノビタ13「今日も来なかった。おかしいなぁ……」

~四日前~

ノビタ13「う~ん、出てこなかった……」

~三日前~

ノビタ13「来ないなぁ……」

~二日前~

ノビタ13「おかしいなぁ、なんで来ないんだろう?」

~昨夜~

ノビタ13「結局現れなかったなぁ……」

しずかが風呂に入る時間、源家の庭にノビタ13を倒した敵が現れることはなかった。

98: 2012/01/30(月) 00:19:27.32 ID:Q6mgKP1m0
PART5 “敵”の正体


野比家──

ドラえもん「う~ん、不思議なこともあるもんだね」

ノビタ13「だろ? のぞきなんて、どこにもいなかったよ」

ドラえもん「しずちゃんの勘違いだったのかもしれないね」

ノビタ13「のぞきに関してはそうなのかもしれない」

ノビタ13「……でも、一つだけたしかなことがある」

ドラえもん「なに?」

ノビタ13「一週間前の夜、ぼくをやっつけた奴は絶対にいるってことだよ」

ドラえもん「そういえば、そうだったね」

ノビタ13「あいつはのぞきじゃないけど、やっつけなきゃ気が済まない」

ノビタ13「ぼくの超A級スナイパーとしてのプライドにかけて!」

99: 2012/01/30(月) 00:21:39.24 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13とドラえもんは、再び一週間前にタイムスリップした。

ただし場所は源家の庭ではない。

タイムマシンの出口の位置を調整し、上空からしずかの家を見張ることにした。

源家 上空──

ドラえもん「ここからなら、しずちゃんちをまんべんなく見渡せるよ」

ノビタ13「よぉ~し、出てこい!」

すると──

ノビタ13「ドラえもん、しずちゃんの庭になにかいる!」

ドラえもん「えっ、どこに!?(全然分からないや)」

ノビタ13「数々の狙撃(スナイプ)で鍛えたぼくの目はごまかせないよ」

ノビタ13「今日は強めに撃ってやる!」

ノビタ13「ドキュゥーン!」

ビシッ!

100: 2012/01/30(月) 00:24:28.51 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13「やった、やっつけた!」

ドラえもん「よし、さっそく敵の正体をたしかめにいこう!」

源家 庭──

ノビタ13がやっつけた相手は、茂みの中で倒れていた。

ノビタ13「たしかにこの中に倒れたはずだ。いったいだれなんだ……?」ガサゴソ

ノビタ13「………」

ノビタ13「これは、ぼくじゃないか!」

ドラえもん「な、なんだって!?」

ノビタ13「ど、どうなってるの!?」

ドラえもん「ぼくにいわれても……」

ガラッ

しずか「外にだれかいるの?」

ノビタ13「ま、まずい」

ドラえもん「逃げよう!」

二人は気絶しているノビタ13を茂みに隠し、現代に逃げ帰った。

102: 2012/01/30(月) 00:26:55.91 ID:Q6mgKP1m0
野比家──

ドラえもん「つまり、こういうことだったんだよ」

ドラえもん「最初、一週間前にタイムスリップした君をやっつけたのは──」

ドラえもん「君自身だったんだよ。さっきの上空からの狙撃がそれだ」

ドラえもん「君は君に撃たれて気絶してたんだ」

ノビタ13「ってことは、しずちゃんがこの一週間お風呂の外に感じた気配ってのは」

ドラえもん「きっと、君のことだろうね」

ドラえもん「一週間前の夜から、しずちゃんがお風呂に入りそうな時間には」

ドラえもん「君がしずちゃんちの庭に隠れてたんだから」

ノビタ13「なんだかややっこしいなあ」

ドラえもん「ま、こういうタイムパラドックスの話は深く考えない方がいい」

ドラえもん「本当にわけが分からなくなるから」

ノビタ13「それもそうだね」

ドラえもん「それにしても自分で自分を狙撃しちゃうだなんて、なんとも君らしいね」

ノビタ13「トホホ……」

104: 2012/01/30(月) 00:29:24.86 ID:Q6mgKP1m0
源家──

ノビタ13「──というわけだったんだ」

ノビタ13「ごめん、しずちゃん!」

しずか「………」

しずか「いいわよ。私のためにやってくれたことですもの」

しずか「むしろ、原因が分かってよかったわ。変な人とかじゃなかったし」

しずか「ありがとう、ノビタ13」

ノビタ13(しずちゃんは優しいなぁ……)

107: 2012/01/30(月) 00:31:49.01 ID:Q6mgKP1m0
PART6 事件は終わっていなかった


源家 風呂──

しずか「ルンルンル~ン♪」

しずか「今日からは外の気配を気にせずお風呂に入れるわ」

ガサ…… ゴソ……

しずか「!?」

しずか「ま、またこの音だわ!」

しずか(もうノビタ13は庭にはいないはずなのに、いったいどうして!?)

108: 2012/01/30(月) 00:35:24.24 ID:Q6mgKP1m0
翌日、しずかは再びノビタ13とドラえもんを呼び出した。

空き地──

ノビタ13「なんだって!?」

しずか「えぇ……やっぱりまだ何かいるみたいなのよ」

ドラえもん「ノビタ13、さては君……」ジロッ

ノビタ13「昨日の夜は庭に行ってないってば!」

ノビタ13「そうだ、これからしずちゃんちに行ってみようよ」

ドラえもん「そうだね、なにか分かるかもしれない」

しずか「ごめんなさいね、ノビタ13、ドラちゃん」

110: 2012/01/30(月) 00:37:54.55 ID:Q6mgKP1m0
PART7 もう一人の犯人


源家 庭──

しずか「原因が分かればいいけど……」

ドラえもん「フフフ、この茂みは君が君にやっつけられた場所だよね」ガサ

ノビタ13「うるさいな!」

ノビタ13「……ん?」

ノビタ13「あ、あれは!」

ドラえもん「どうしたの?」

しずか「なにかあったの?」

ノビタ13「お風呂の換気口に……ツバメの巣がある!」

111: 2012/01/30(月) 00:39:47.63 ID:Q6mgKP1m0
しずか「本当だわ!」

ドラえもん「うわぁ~あれは分かりにくいね。気づかないわけだよ」

ドラえもん「しかも換気口にあるなら、ツバメが動いたらお風呂にも音が響くだろうし」

ドラえもん「そういえばこの間、季節外れのツバメが飛んでたしね」

ドラえもん「きっと、あのツバメだよ」

ノビタ13「いやぁ~やっぱりぼくってすごいね!」

ノビタ13「しずちゃん、あの巣をどうする? 狙撃(スナイプ)する?」

しずか「ツバメなら仕方ないわよ。壊すのも可哀想だし」

しずか「入浴中にガサゴソ音がするのはいい気分じゃないけど、我慢するわ」

ドラえもん「う~ん」

ドラえもん「でも本来今の季節には、ツバメは南に行っているはずなんだけど……」

ドラえもん「ちょっと話し合ってみようか」

ドラえもん「ほんやくコンニャク~!」

113: 2012/01/30(月) 00:42:40.41 ID:Q6mgKP1m0
まもなく換気口の巣に、ツバメが帰って来た。

ドラえもん『こんにちは、ツバメさん』

ツバメ『えっ、君たち、ぼくらの言葉が分かるのかい!?』

ドラえもん『まぁ、ちょっと道具を使ってね』

ドラえもん『ところで君は、どうして南に行ってないの?』

ツバメ『本当は仲間と南に向かうはずだったんだけど、寝坊して置いてかれたんだ』

ドラえもん「たしかに、どことなくノビタ13に顔が似ているツバメだ」

ノビタ13「うるさいな!」

ツバメ『……で、ここにちょうど一週間ぐらい前から住み始めてたんだ』

ツバメ『色々お騒がせしちゃったみたいで、本当にごめんなさい』

しずか『気にしないでいいのよ』

116: 2012/01/30(月) 00:44:39.11 ID:mj4yEmYH0
ツバメが伏線とは

117: 2012/01/30(月) 00:45:35.32 ID:Q6mgKP1m0
ツバメ『でもやっぱり寒いのは苦手だからね。仲間にも会いたいし』

ツバメ『今から南に飛び立つつもりなんだ』

ドラえもん『大丈夫かい?』

ツバメ『ちょっと自信ないけど……なんとか飛んでいってみせるよ』

ノビタ13「………」

ノビタ13「ドラえもん、空気ピストルを出してくれない?」

ドラえもん「まさか、あのツバメを撃つんじゃ……」

ノビタ13「そんなことしないよ」

ドラえもんはノビタ13に空気ピストルを手渡した。

ノビタ13『ツバメ君、ぼくが指にはめてるピストルの上に降りてきてくれる?』

ツバメ『……? こ、こうかい?』ストッ

しずか(いったい何をするつもりなのかしら)

118: 2012/01/30(月) 00:48:31.06 ID:Q6mgKP1m0
ノビタ13『ツバメ君、ぼくの数少ない特技の一つが射撃なんだ』

ノビタ13『標的は、南の仲間たちがいる場所。ツバメ君、君はぼくの弾丸だ』

ツバメ『───!』

ノビタ13『ぼく、これでも超A級スナイパーっていわれててね』

ノビタ13『狙った標的を外したことはない』

ノビタ13『必ず弾丸は標的にたどり着く』

ノビタ13『ぼくが合図をしたら、飛び立つんだ。準備はいいかい?』

ツバメ『いつでも!』

ノビタ13『ドキュゥーン』

バッ!

ノビタ13が口で銃声を発すると同時に、ツバメは空気ピストルの上から飛び立った。

119: 2012/01/30(月) 00:49:12.27 ID:9g3kQnt50
かっけえ
ドラえもん感もあってすげえ

121: 2012/01/30(月) 00:51:34.42 ID:Q6mgKP1m0
PART8 最高の報酬


飛び立ったツバメは見えなくなった。

しずか「ツバメさん、仲間たちに会えるといいわね」

ドラえもん「大丈夫だよ。彼はノビタ13の弾丸なんだもの。絶対にたどり着くよ」

ドラえもん「ノビタ13のスナイパー人生で、最も距離が長い射撃になるだろうね」

ドラえもん「──にしても、君も気の利いたおまじないをするじゃないか」

ノビタ13「ちょっとキザだったかなぁ、えへへ」

しずか「かっこよかったわよ。ノビタ13」

しずか「ねぇ、二人とも」

しずか「せっかく家に来てくれたんだし……」

しずか「これからクッキーを焼くから、一緒に食べない?」

ノビタ13「食べる食べる!」

ドラえもん「喜んで!」

125: 2012/01/30(月) 00:55:27.99 ID:Q6mgKP1m0
源家 しずかの部屋──

美味しそうに、クッキーをほおばる二人。

しずか「どうかしら? 報酬の代わり、といったら図々しいかもしれないけど……」

ノビタ13「最高の報酬だよ! ぼく、しずちゃんの専属スナイパーになろうかな!」

ドラえもん「だれかの専属になるのは、君の中のルールに反するんじゃないのかい?」

ノビタ13「それはそれ、これはこれ、だよ」

ドラえもん「まったく君ってやつは……」





END <2012年1月作品>

126: 2012/01/30(月) 00:55:49.11 ID:Q6mgKP1m0
以上で終わりです。

てんとう虫コミックス『ノビタ13 129巻 狩人が住む町』より、
表題作他2作品をSSとしてお送りいたしました。

どうもありがとうございました。

127: 2012/01/30(月) 00:55:55.51 ID:cQFOAJOv0
藤子F不二雄があの世から書き込んでるんや!きっとそうや!

129: 2012/01/30(月) 00:57:21.50 ID:cQFOAJOv0


面白かったー

引用元: ノビタ13「用件を聞いてあげるよ!」