1: HAM ◆HAM.ElLAGo 2018/08/14(火) 21:18:26 ID:C8TOX.xU
【水】

少女「あー、今日も暑いなあ」

ロボ「そうデスね」

少女「そうですね、って、あんたは別に暑くないでしょ」

ロボ「気温30度、湿度74%、アスファルト付近48度、デス」

少女「……」

ロボ「熱中症の危険がありマスので、十分な休息と水分補給をお勧めしマス」

少女「水分ね……」

少女「水分は貴重、貴重……」

2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 21:28:27 ID:C8TOX.xU

少女「Heyポンコ、ここから最も近い水分補給地点」

ロボ「ここから、ゼロ、メートル地点デス」

少女「は? ゼロ?」

ロボ「ご主人の背負っているリュックサックから、水の気配を感じマス」

少女「それ水筒じゃん! こないだ補給したやつじゃん!」

少女「ていうか『気配を感じます』ってなに!? あんたロボじゃん! 第6感ないだろ!」

ロボ「レーダーが反応していることを『気配』と表現してみマシタ」

少女「そんな人間らしくしなくていいから!」

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 21:39:03 ID:C8TOX.xU

少女「あーもう、じゃあポンコ、ここから二番目に近い水分補給地点」

ロボ「ここからまっすぐ約4キロメートル地点、給水塔がありマス」

少女「それは素人が入っても水が出せる施設?」

ロボ「……データが不足していマス」

少女「行ってみないとわからない、ってこと?」

ロボ「そうデス」

少女「水は貴重、貴重、補給しとくか」

少女「まあ、4キロ程度なら1時間で行けるでしょ」

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 21:52:06 ID:C8TOX.xU

ロボ「一般的な人間だと、4キロメートルを歩くのに約1時間かかりマス」

ロボ「ご主人の足の長さだと4キロメートルを歩くのに約1時間8分かかる計算デス」

少女「は!? なに!? わたしの足が短いって!?」

ロボ「一般的な人間の体格と比較した場合……」

少女「こらぁ! さっきの暴言は看過できないわよ!」

ロボ「女性ですので体力面でも……」

少女「言い訳すんな! 誰の足が短いって!?」コンコンコン

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 22:07:31 ID:C8TOX.xU

……

ロボ「見えマシタ。給水塔、目的地周辺デス」

少女「あれかー、大きいね」

ロボ「音声案内を終了しマス」

ロボ「ふぅ……」

少女「今溜息つかなかった!?」

ロボ「ハテ」

少女「その聞き返し方も人間っぽい!!」

ロボ「失礼な。ワタシはロボットデス」

少女「いちいち嘘くさいのよ!!」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 22:22:49 ID:C8TOX.xU

ロボ「鍵がかかっていマスね」

少女「旧式の南京錠じゃん。これくらいなら……」

ジジッ

カラン

少女「ほら、焼き切れた」

ロボ「バーナーなんて持っていたんデスね、ご主人」

少女「燃料が少ないからあんまり使えないけどね」

ロボ「ワタシもできマスよ、そのくらい」

ジジッ

少女「対抗すんな」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 22:33:57 ID:C8TOX.xU

ゴウンゴウン

ロボ「これで、近隣の水道から水が出るはずデス」

少女「簡単ね」

ロボ「ただ、水質が飲料水として問題ないかどうかがわかりません」

少女「あ、そっか。古いかもしれないのか」

ロボ「調べてみましょう」

少女「ほいほい」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 22:46:59 ID:C8TOX.xU

少女「んん……この蛇口固い……」

ロボ「代わりましょう」

ロボ「ふんっ」ゴキッ

ロボ「外れましたね」ジョボジョボ

少女「ロボットもかけ声とか出すんだ……」

ロボ「ああ、見てクダサイこのきれいな水! 冷たい水!」

少女「問題は飲めるかどうかでしょう?」

ロボ「水質に問題ありません! ほらほら! 好きなだけ飲んで好きなだけ水筒に入れてクダサイ!」

少女「なんでロボットがテンション上げてんのよ……」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/14(火) 22:58:10 ID:C8TOX.xU

ロボ「これでしばらく安心デスね」

少女「そうね」

ロボ「熱中症対策には塩分補給も重要デスよ」

少女「塩分ね……そろそろどっかの食品庫を拠点にしたいわね」

少女「ポンコ、ここから一番近い塩分補給地点」

ロボ「ここから、ゼロ、メートル地点デス」

少女「おい」

ロボ「ご主人の背負っているリュックサックから、塩の気配を感じマス」

少女「それわたしの塩分補給タブレットだっつーの!!」

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 21:10:24 ID:NNVk1nGc

【宿泊地】

少女「今日はどこで寝ようかしらねえ」

少女「たまには毛布じゃなくて、柔らかいベッドで寝たいぞ、と」

ロボ「ポーン」

少女「おお、どうしたの」

ロボ「付近のホテル情報をダウンロードしマシタ」

少女「へえ、便利な機能」

ロボ「ここから徒歩10分、ホテルプラスチック」

少女「プラスチック?」

ロボ「豊富なアメニティで、一泊なんと7900円!」

少女「おい」

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 21:19:45 ID:NNVk1nGc

少女「今やお金とか機械以外に使えないから」

少女「ホテルで誰が受け取るのよ料金を」

ロボ「候補その2、駅近、ホテルニュー七瀬」

ロボ「駅からのアクセスが便利! 徒歩1分!」

少女「おい」

少女「誰が電車を動かすのよ誰が」

ロボ「候補その3!」

少女「聞いてよ」

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 21:32:06 ID:NNVk1nGc

ロボ「夕焼けサンサンホテル」

少女「名前っ」

ロボ「スタッフの対応がクソ」

少女「クソなんかい!」

ロボ「しかしそれを補って余りある豪勢な朝食バイキングは圧巻!」

少女「誰が出すねん!! コックもおらんわ!!」

少女「……おっといけない、つい汚い言葉が」

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 21:46:16 ID:NNVk1nGc

ロボ「候補その4!」

少女「まだあるんかい」

ロボ「ホテルぷりぷりプリンセス」

少女「また名前ふざけてる!」

ロボ「夜景がきれい」

少女「知らないわよ!」

ロボ「受付が美人」

少女「そのレビュー私情入りすぎ!!」

ロボ「隣室の喘ぎ声がうるさかったので☆1つデス」

少女「ただの苦情やんけ!!」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 21:53:25 ID:NNVk1nGc

ロボ「……」

少女「駄目ね、興奮すると関西弁が出るクセ、直さないと」

ロボ「関西に住んでいたのデスか?」

少女「小さいころね」

ロボ「関西弁にも対応して応答できマスよ?」

少女「いいのよ、落ち着いて話せば関西弁は出ないから」

ロボ「ではなぜ今日は……」

少女「あんたがボケ倒すからでしょーが!」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 22:00:59 ID:NNVk1nGc

ロボ「で、どのホテルにしマスか?」

少女「ベッドが柔らかいところ!!」

ロボ「なるほど……検索しマス……」

ロボ「さっきの中だと、ベッドの評価が高いのは『ぷりプリ』デスね」

少女「略すな!! なんかいかがわしい!!」

ロボ「で、どうしマスか?」

少女「もういいわよそこで!」

ロボ「では『ぷりプリ』までご案内しマース」

少女「え、あれ、もしかしてそういうホテルなの、それ……」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/15(水) 23:25:01 ID:11I/x7Ds
少女終末旅行的な世界観ね
軽妙なノリがいいね

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/16(木) 22:27:58 ID:/6MfCGrQ

【ネタバレ】

ロボ「そこで男はこう言ったそうデス」

ロボ「ここを通りたきゃ俺に倒されてからにしな、と」

少女「倒されたら通れないじゃん……」

ロボ「よくあるセリフのパロディデスね」

少女「なるほど、面白かったわ」

少女「便利ね、たくさんの情報にアクセスできるってのは」

ロボ「この世の情報はすべてワタシからアクセスできマスからね」

ロボ「知らないことはないのデス」

少女「はは、全知だ」

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/16(木) 22:35:44 ID:/6MfCGrQ

ロボ「こんな話もありマスよ。かの有名なスターウォーズep12からの引用デスが……」

少女「え、待って待って! 12まだわたし見てないから!」

ロボ「主人公の年金・未払いウォーカーが……」

少女「いないからそんなキャラ! ファンタジーで年金の話すんな!」

ロボ「ご主人はネタバレは嫌いなタイプデスか」

少女「うん、だめ」

ロボ「では大事なところだけ伏せて話しましょう」

ロボ「腰痛を患ったヨーダが……」

少女「いやいやいや! 見てない映画のストーリーまだ聞きたくないから!」

少女「1ミリたりとも話すな!」

少女「ていうかヨーダ出てんの!? ep12で!? は!?」

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/16(木) 22:43:18 ID:/6MfCGrQ

ロボ「ではご主人がすでに知っている物語の話なら問題ないデスね」

少女「そうね、昔話とかなら今更ネタバレも気にならないし」

ロボ「そういえば桃太郎のep7の結末デスが……」

少女「待って待って!! 桃太郎なんてep1しか知らないけど!?」

ロボ「おや、2から7は見てないデスか」

少女「存在してたことも知らないよ!」

ロボ「ep4でダークサイドに堕ちた桃太郎を犬が叱咤するシーンは感涙ものデスのに」

少女「なんか混ざってないそれ!? スターウォーズに引っ張られてない!?」

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/16(木) 22:53:27 ID:/6MfCGrQ

ロボ「『あなたは必ず騙される』という謳い文句を見ると絶対騙されたくなくなりマスよね」

少女「わかる」

ロボ「『二度読みたくなる』という小説も、意地でも一度しか読みたくないデスよね」

少女「わかる」

ロボ「『衝撃のラスト15分!』と言われると、直前でいったん止めて展開を予想しまくりマスよね」

少女「劇場でその手は使えないから!」

少女「……ていうかあんた本当にロボット?」

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/16(木) 23:00:35 ID:/6MfCGrQ

ロボ「しかし世の中にはネタバレを是とする人もいるのデスよ」

ロボ「びっくりしたくないから先に結末から読んでおく、といったような」

少女「え、そんな人もいるの?」

ロボ「推理小説では犯人を指摘するくだりを先に読んでおいてから事件編を読むそうデスよ」

少女「えー、わたしには考えられないなー」

ロボ「ワタシも理解できません」

少女「あんた、ロボットよね?」

ロボ「ええ、実は人間でした、なんてオチはありませんのでご安心クダサイ」

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/16(木) 23:06:55 ID:/6MfCGrQ

ロボ「特に衝撃のオチもどんでん返しもブラックな結末もありません」

少女「はあ」

ロボ「ワタシが人間に対し反逆を起こしたり、ご主人を嬲り殺したりするシーンもありません」

少女「はあ?」

ロボ「ご主人がワタシを破壊して高笑いするシーンもございません」

少女「え?」

ロボ「『二人の旅はこれからも続きマス』といった感じの終わり方をしマス」

少女「あ、なに、この話してんの?」

少女「わたしメタいの嫌いなんだけど!」

ロボ「では、今日はこの辺で失礼しマス」

少女「わたしメタいの嫌いなんですけどー!!」

30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/17(金) 21:02:37 ID:nlmf2lQE

【じゃんけん】

少女「じゃーんけーん、ぽん!」グー

ロボ「……」パー

少女「んがー! 勝てない!」

ロボ「これでも反射神経は人間の数倍デスので」

少女「くそー、悔しい!」

少女「…………………………」

少女「じゃんけんぽんっ!!」チョキ

ロボ「……」グー

少女「んがー!」

ロボ「不意打ちにも対応しマス」

31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/17(金) 21:08:43 ID:nlmf2lQE

少女「あ、そうだ、大阪じゃんけんしよ、大阪じゃんけん」

ロボ「はい?」

少女「負けたら勝ちね! はい! じゃんけんぽんっ!!」パー

ロボ「!」チョキ

少女「はいわたしの勝ちー! やったー!」

ロボ「ワタシが勝ったから、ご主人の勝ち、ということデスか」

少女「そうそう! 不本意だけどこれでわたしの勝ち!」

32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/17(金) 21:17:02 ID:nlmf2lQE

ロボ「しかしご主人が勝った、ということは、必然的にワタシの負けデスね」

少女「ええ、そうね」

ロボ「ということは、ワタシの勝ちということでは?」

少女「!?」

ロボ「しかしそうなると、今度はご主人が負けなので、またご主人が勝ちということに……」

少女「やめてやめて、わけわかんなくなるから!」

ロボ「ワタシたちは永久に勝ち負けが行ったり来たりし続けるのでは?」

少女「そんなややこしいルールじゃないから!」

33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/17(金) 21:26:22 ID:nlmf2lQE

ロボ「やはりじゃんけんは普通のルールが一番わかりやすくていいデスね」

少女「……そうね」

ロボ「ではあらためて」

少女「……」

少女「じゃん、けん、ぽんっ!」グー

ロボ「……」パー

少女「……」

ロボ「では次の休憩地点まで荷物をお持ちクダサイ」

少女「……わかったわよー!! くそー!!」

36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 20:00:28 ID:4Iys0HX6

【犬】

ロボ「むむっ、前方約200メートル付近に生体反応がありマス!」

少女「!? え、そういうのすごいSFっぽい!!」

ロボ「近づいて来マス!」

少女「え、怖い怖い! ゾンビとかじゃないでしょうね!」

ロボ「生体反応なので、ちゃんと生きた生命体のはずデス」

少女「宇宙人とかじゃないでしょうね!」

ロボ「タイトルに答えが」

少女「メタいのやめんか!」

37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 20:22:39 ID:4Iys0HX6

犬「くんくん」

ロボ「犬デスね」

少女「予想通りすぎる!」

犬「わっふ」

ロボ「よく生き延びていましたね、この世界で」

少女「エサとかどうしてるんだろ」

犬「くぅん……」スリスリ

少女「可愛すぎる」

ロボ「エサをあげたくなりマスねえ」

38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 20:29:54 ID:4Iys0HX6

少女「エサって言っても、今は味の濃い缶詰しかないのよねえ」

ロボ「さすがに塩分がきつ過ぎるかと思いマス」

犬「くんくん」ペロペロ

少女「おーよしよし、すごい人馴れしてる犬ねえ」

ロボ「首輪をしているから飼い犬だったんでしょうね」

少女「飼い主はいなくなっちゃったのかなあ」

ロボ「こんな世の中デスしね」

少女「ねー」

39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 20:37:18 ID:4Iys0HX6

少女「あ、一緒に旅する?」

少女「そうしたらエサを見つけられるかもよ? 長持ちするパンとか固形フードとか」

ロボ「それは無理でしょう」

少女「なんで?」

ロボ「この犬は、飼い主を待っているようデス」

少女「あ……」

犬「わふん」

ロボ「この近辺でしか生活をしていないようデス」

少女「そっか……そうだよね……」

40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 20:53:24 ID:4Iys0HX6

少女「水とかエサは大丈夫かな……」

ロボ「あまり衰弱している感じではありませんし、自力でなんとかしているのでしょう」

少女「そっか……」

少女「じゃあ、せっかくの出会いだし、ちょっとだけお土産を貰っていこう」

ジャキン

ロボ「!? ご主人、そのハサミをどうするのデスか!?」

少女「ふふふ……」

ロボ「そ、そんな猟奇的なシーンを入れるのデスか!? こんなほのぼのしたところで!?」

少女「なに言ってんのよあんたは」

チョキン

41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 21:02:42 ID:4Iys0HX6

ロボ「夏毛……」

少女「そ、暑そうだし、ちょっとトリミングをね」

少女「で、この毛をちょちょいとまとめて……」

ロボ「筆デスね」

少女「違うわよ! ストラップにしてお守りにするのよ!」

ロボ「狩った獲物の一部を持ち歩くサイコキラーにも見えマスね」

少女「発想が怖い!!」

ロボ「ドクロでネックレスを作るような感じデスね」

少女「一緒にすんな!!」

犬「くぅうん……」

42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/22(水) 21:10:27 ID:4Iys0HX6

ロボ「野生動物ではなく、明らかに飼われていた動物は初めて見ましたね」

少女「そうね……強く生きてほしいわね……」

ロボ「飼い主を健気に待っている忠犬でしたね」

少女「うーん」

ロボ「どうしました?」

少女「わかってる気がするんだよね、あの犬」

少女「わかってて、それでも待ってる、そんな気がする」

ロボ「それは……ワタシのようなロボットには理解しがたい感情デスね」

少女「そうかも」

46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 21:10:19 ID:WH3hSSYU

【球場】

ロボ「このまま進むと広大な球場に突き当たりマスね」

少女「球場?」

ロボ「野球などをするためのスタジアムデス」

少女「あー野球かあ、あんまりよく知らないけど」

ロボ「行ってみマスか?」

少女「うーん、野生動物の住みかになってない?」

ロボ「大丈夫デス。生体反応は付近を飛ぶ鳥くらいのものデス」

少女「じゃあ、まあ、行ってみよっか」

47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 21:22:34 ID:WH3hSSYU

ロボ「広いデスね、なんでもできそうデス」

少女「わー、誰もいなーい」

ロボ「収容人数10500人、この辺りではかなり大きい部類に入るのではいかと思いマス」

少女「1万人も入るんだ……満員で野球やったら気持ちいいだろうなあ……」

ロボ「やりましょうか、野球」

少女「え」

ロボ「ワタシの腕は150キロの速球と120キロのカーブが投げられるよう設計されていマス」

少女「む、無駄に高スペック……」

48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 21:32:35 ID:WH3hSSYU

少女「150キロって、プロ級だよね?」

ロボ「そうデスね、プロでも投げられる人は少ないデス」

少女「え、わたし完全なる素人だけど、パーフェクト・シロートだけど、150キロを打たせるの?」

ロボ「ご主人は意外と運動神経がいいので、練習すれば可能かと思いマス」

少女「意外って言うな」

ロボ「間違っても頭には当てませんのでご安心クダサイ」

少女「頭『には』!? 体には当たるの!?」

49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 21:39:15 ID:WH3hSSYU

ビュン!

少女「ひぃー!!」

ロボ「腰が引けていマスよご主人!!」

ビュン!

少女「ぎえー!!」

ロボ「目をつぶっていては打てるものも打てませんよご主人!!」

ビュン!

少女「お助けぇえー!!」スタコラ

ロボ「あ! そのボックスから出たら反則デスよご主人!!」

少女「知らんわ!!」

50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 21:53:14 ID:WH3hSSYU

少女「あのね、わたし、初心者。アイアム・ルーキー」

少女「ばりばりの素人、完璧な素人、パーフェクト・シロートなの」

少女「バットなんか初めて握ったし」

ロボ「おや、他のモノなら握ったことがあるかのような言い方デスね」

少女「茶化すなー!」

ロボ「わかりました、では150キロは無理なようなので、120キロのカーブを」

少女「それ曲がるやつでしょ!? 打てるか!!」

ロボ「大丈夫デス、さっきより30キロも遅くなりマスよ」

少女「わたしにとってはどっちもスポーツカーだっつの!!」

51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 22:20:29 ID:WH3hSSYU

少女「ていっ」シュン

ロボ「おお、なかなか筋がいい」パシッ

ギュンッ!

少女「ぎえー!」

ロボ「しかしキャッチングはまだまだデスね」

少女「手ぇちぎれるわ!」

ロボ「キャッチボールの機能を搭載しておいてもらえればよかったのデスが……」

少女「もう! 融通の利かないハイスペックね!」

52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 22:30:56 ID:WH3hSSYU

ロボ「人数が必要なスポーツというものは、もはや失われた文明と呼べそうデスね」

少女「伝えていく人がいなければ、なくなってしまうでしょうね……」

ロボ「ワタシはいつでも情報にアクセスできマスが」

少女「でもわたしが死んだら、あんたは誰に伝えるのよ」

ロボ「……」

少女「襲来した宇宙人とキャッチボールでもする?」

ロボ「150キロの速球でギタギタにしてやりマスよ」

少女「宇宙人も逃げてくかもね」

53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/23(木) 22:39:08 ID:WH3hSSYU

少女「また球場を見かけたら、遊びましょ」

ロボ「了解デス」

少女「あんたはゆるいボールを投げられるようにしときなさいよ」

ロボ「精進しマス」

ロボ「ご主人も150キロを打ち返せるように」

少女「ならないわよ!」

55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 20:30:45 ID:RY0QF5c2

【充電】

ロボ「ご主人、ここから先、予備電力が生きている地域が少ないようデス」

少女「……そっか」

少女「十分充電してから進もっか」

ロボ「ええ、そうしていただけるとありがたいデス」

少女「Heyポンコ、ここから最も近い充電できる施設は?」

ロボ「……」

ロボ「後方500メートル、大型商業施設デス」

少女「昨日泊まったとこか……」

少女「仕方ない、戻ろう」

56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 20:43:27 ID:RY0QF5c2

ロボ「ご面倒おかけしマス」

少女「いいのよ、わたしも話し相手がいないとつまんないしね」

ロボ「フル充電まで、11時間、デス」

少女「出発は明日にするかあ」

ロボ「すみません」

少女「謝んなくていいってば」

少女「さて、と」

少女「あんたが充電している間、なにしてよっかなあ」

ロボ「なにか今後の生活に便利なもの、ないデスかね」

少女「探しに行ってみるか」

57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 20:50:20 ID:RY0QF5c2

ロボ「動物などには十分ご注意クダサイ」

少女「わーかってるってば」

少女「バーナーもあるし、ナイフとかもあるし」

ロボ「いざというときは大声をあげてクダサイね。コードを引っこ抜いてでも駆けつけマスから」

少女「あはは、ありがと」

ロボ「ていうか昨日ご主人が寝ている間に充電しておきべきでしたよね」

少女「ほんまそれ」

58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 21:01:26 ID:RY0QF5c2

少女「さーてと、食料は今のところ十分あるし、サバイバル用品とかかなー」

少女「これより軽くていっぱい入るリュックとかあったら便利なんだけど」

少女「あ、それより服か」

少女「身軽で丈夫で可愛い服探してみよ」

少女「♪」

少女「……ん?」

少女「!?」

少女「きゃ、ぎゃああああああああああああああ!!!!」

59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 21:18:31 ID:RY0QF5c2

ロボ「む、あれはご主人の叫び声!?」

ロボ「すぐ駆けつけなくては!!」

グイグイ

ロボ「む、コードに手が……届かない……」

ロボ「む、むむ」

グイグイ

ロボ「む、これ以上は腕が取れマス……」

グイグイ

60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 21:26:01 ID:RY0QF5c2

……

ロボ「ご、ご主人、無事デスか……」ゼエゼエ

少女「遅いわ!!」

ロボ「なにがあったんデスか……」

少女「なにがあったかはこの際どうでもいいでしょ!!」

ロボ「そういう訳には……」

クマ「……」

ロボ「!?」

少女「……」モジモジ

ロボ「なるほど、このクマの剥製にビビって叫び声をあげたのデスね」

少女「言わなくていいし!!」

61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 21:33:27 ID:RY0QF5c2

ロボ「で、なにか収穫はありましたか?」

少女「あ、そうそう。どうこれ、ポケットいっぱい、身軽、しかも可愛い」

ロボ「おお、新しい服デスね」

ロボ「よくお似合いデス」

少女「あれ、そういうおべっかも言えるんだ」

ロボ「はい、プログラムされていマス」

少女「ぐぬぬ、それはそれでちょっと悔しいな」

ロボ「よく、お似合い、デス」

少女「繰り返すな! 嬉しくなくなった!」

62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 21:45:35 ID:RY0QF5c2

カチャカチャ

ロボ「これは?」

少女「あんたのためのカバン」

少女「これもポケットが多くていいでしょう?」

少女「ほら、こうやってカラビナで固定すれば……」

カチャン

ロボ「おお、ワタシもカバンが持てる、と」

少女「そ」

63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/24(金) 21:52:50 ID:RY0QF5c2

ロボ「……つまりワタシも重い物が持てる、と」

少女「そ、わたし一人で水とか缶詰全部持つのは、やっぱり重いからね」

ロボ「……なるほど」

少女「さ、今日は休養!」

少女「明日は勢いよく出発するからね! しっかりフル充電しなさいよ!」

ロボ「了解デス」

66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 21:25:29 ID:Be.Sxozg

【CDプレイヤー】

少女「あの店はなあに?」

ロボ「あれデスか」

ロボ「あれはCDショップデスね」

少女「CD?」

ロボ「音楽を記録する媒体デス」

ロボ「今はもうほとんど見ることはありませんが、今もああいった店が残っているのデスね」

67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 21:33:23 ID:Be.Sxozg

少女「わー、いろんな種類があるのね」

少女「これが全部音楽?」

ロボ「そうデスね、なかなか素晴らしい品揃えかと思いマス」

少女「あ、これなんか見たことあるかも」

ロボ「有名なロックバンドのデビューアルバムデスね」

少女「あ、こっちのも」

ロボ「世界的有名なポップアーティストのものデス」

少女「これ全部聴いていいの!?」

ロボ「時間が足りないかと」

68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 21:39:50 ID:Be.Sxozg

少女「ね、音楽っていうならさ、これどうやって聴けばいいの?」

ロボ「そうデスね、こういった店なら再生する装置があると思いマスが……」

少女「どんなの? 探そう!」

ロボ「そうデスね、これくらいの小さな端末と、あとはスピーカーかイヤホンがあれば……」

少女「なるほど」

ガサガサ

ロボ「ワタシも探しましょうかね」

少女「レーダー機能は?」

ロボ「小さな機械ひとつを見つけるといった作業には不向きデス」

少女「そっか」

69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 21:55:09 ID:Be.Sxozg

ロボ「ワレ発見セリ!」

少女「おお、早い! ていうかなにそのかけ声」

ロボ「こちらにCDを入れてクダサイ」

少女「どれでもいいの?」

ロボ「今一番聴きたいのをどうぞ」

少女「じゃあー、これ!」

カチャン

パタン

ロボ「で、こちらのボタンを押してクダサイ」

少女「これね」ピッ

70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 22:07:20 ID:Be.Sxozg

~♪

少女「わ、大きな音」

ロボ「このスピーカーは小さいけれど、とてもいいものデス」

~♪

少女「あ……」ポロッ

ロボ「どうしました?」

少女「……わかんない」

ロボ「……」

少女「なんで泣いてるんだろ、わたし」

ロボ「……音楽には、人を感動させるなにかがあるのデスね、きっと」

71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 22:22:33 ID:Be.Sxozg

少女「これを歌った人がいて、これを作った人がいるんだ」

ロボ「そうデスね」

少女「でももう、その人はきっといないんだ」

ロボ「……そうデスね」

少女「……これ、持って行きたいな」

少女「CD、いっぱい、持てるだけ」

ロボ「はい、何枚でも持って行きましょう」

ロボ「ここに埋もれさせておくのはもったいないデスからね」

72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 22:36:47 ID:Be.Sxozg

少女「わたし、音楽って、ほとんど興味なかった」

少女「どこかで流れているのを、ただ漠然と耳にしていただけだった」

ロボ「……」

少女「だけど、違うんだね」

少女「人が作ったものなんだ」

少女「だから知らない歌でも、心が揺さぶられたんだね」

ロボ「そうデスね、音楽というのは大昔から人類の表現活動でしたから」

ロボ「人が人の心を動かすために作られてきたのデスから」

73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 22:49:05 ID:Be.Sxozg

少女「あんたは音楽作ったりできないの?」

ロボ「ワタシが作ることのできる音楽は、誰かが作った音楽のリミックスデス」

少女「?」

ロボ「オリジナルは、作れない、ということデス」

少女「コピーってこと? アレンジ?」

ロボ「まあ、そういう感じデスね」

少女「わたしは音楽作れたりしないかな?」

ロボ「ギターを練習してみては?」

少女「あ、それいいかも」

74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/08/27(月) 23:06:02 ID:Be.Sxozg

少女「んん、んん、あーあーあーあーあー♪」

ロボ「全部外れていマス」

少女「マジで!?」

少女「ら、らーらーらーらーらー♪」

ロボ「ひどいデス」

少女「!?」

ロボ「ご主人がミュージシャンでなくて本当に良かったと思いマス」

少女「んがー!! 失礼な!!」

79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 21:17:10 ID:aAVj/YoM

【やきとり】

ロボ「ポーン」

ロボ「上空40メートル付近を鳥が飛んでいマス」

少女「珍しくもないでしょ」

ロボ「ご主人、『肉』を食べたくはないデスか」

少女「え」

ロボ「超久しぶりの動物の『肉』を食べたくはないデスか」

少女「たたた食べたい!! 食べたい!!」

ロボ「そうでしょうそうでしょう」

80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 21:26:49 ID:aAVj/YoM

少女「た、食べられるの? ていうかあんなの捕まえられるの?」

ロボ「ご主人、そこにちょうどいい感じの『ワラ』がありマスね」

少女「え、ええ」

ロボ「それをワタシにかぶせてクダサイ」

少女「え、えっと」

ロボ「ほら! 鳥が逃げる前に早く!」

少女「わ、わかったわよ」

81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 21:43:10 ID:aAVj/YoM

ロボ「はい、いい感じデス」

ロボ「それではご主人、少し離れて隠れていてクダサイ」

ロボ「鳥が警戒してはいけませんから」

少女「りょ、了解」コソコソ

……

ロボ「……」ジーッ

少女「……」

ロボ「……」ジーッ

少女「……」

鳥「チュンチュン」バササ

ロボ「!」

少女「!」

82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 21:54:35 ID:aAVj/YoM

ロボ「……」ジーッ

鳥「……」バサバサ

少女「あれって、かかしのつもりかしら」

ロボ「……」ジーッ

少女「かかしってそもそも人を模して鳥が寄り付かなくするためのものじゃなかったかしら」

ロボ「……」ジーッ

少女「あれ、なんか本末転倒? ん?」

少女「かかしに化けたロボットに鳥が寄ってくるってどういう状況?」

ロボ「……」ジーッ

鳥「チュチュン」バサバサ

少女「の、乗った!! え、マジで!? あの鳥アホなの!?」

83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 22:04:12 ID:aAVj/YoM

ロボ「バカめ!!」ジュッ

鳥「!!」コロリ

少女「びびびビーム出た!! 目からビーム出た!!」

少女「そんな必殺技持ってたの!?」

ロボ「ご主人、もう出てきてもいいデスよ」

少女「え、すごい! あんたすごい!」

ロボ「きっちり脳だけ狙いましたので、身体はきれいに残ってマスよ」

少女「なかなかにエグい狩り方!!」

84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 22:25:16 ID:aAVj/YoM

ロボ「ではワタシが映像を映しつつ鳥のさばき方を教えマスので頑張ってさばいてください」

少女「う、うん」

ロボ「まず首を切って血を抜いてから、腸を抜きマス」

ロボ「鳥のおしりの毛をむしり、肛門まわりを切り取りマス」

少女「いきなりハードル高くない!?」

ロボ「生きるためには自我を殺すのデス! さあ! 可哀想などと思っていてはいけませんよ!」

少女「ひぃぃぃ」

85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 22:35:35 ID:aAVj/YoM

……

ロボ「上出来デスね」

少女「手が疲れた……」ゼエゼエ

ロボ「どうしマス? すぐ食べマスか?」

少女「もちろん!」

ロボ「調理はどのように?」

少女「塩胡椒で焼く! それ以外ない! それ以上はない!」

少女「あ、バターも使っちゃう! 贅沢に!」

ロボ「ええ、最もシンプルで最も贅沢な食べ方デスね」

86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 22:43:42 ID:aAVj/YoM

少女「命に感謝して……」

少女「いただきます!」パン

ロボ「……」

少女「あふっ! うま! え、なにこれうっま!」

ロボ「……」

少女「肉うまい! 最高! あはは! うっま!」

ロボ「考えてみれば、不思議な話デスよね」

少女「え?」

ロボ「人間だけが、他の動物を食べるときに『感謝』をしマス」

87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 22:54:19 ID:aAVj/YoM

少女「他の動物はしないの?」

ロボ「必要以上に殺さなかったりはしマスが、命に感謝することはありませんね」

少女「ふうん、そっか」

少女「そういえば『いただきます』に該当する英語はないって、聞いたことあるけど」

ロボ「ええ、その文化も、他国からすると少し珍しいようデス」

少女「子どもの頃からそういうのが当たり前になってるからなあ……」

少女「たぶん何食べても『いただきます』って言うよ、わたし」

ロボ「ええ、いつも言っていましたね」

ロボ「でも今日はいつもよりも、より感謝しているように見えたものデスから」

少女「あはは、まあわかりやすく『命』だったからね」

88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/03(月) 23:04:09 ID:aAVj/YoM

ロボ「さ、食べ終わったら内臓の処理デスよご主人!」

少女「え」

ロボ「パテにしておけば少しは日持ちしマスから」

少女「わ、わたし内臓系はちょっと苦手なんだけどなあ、なんて……」

ロボ「なにを言っているのデス! 残さず食べてこそ『命への感謝』デスよ!」

少女「ううう」

ロボ「好き嫌いもお残しもダメデスよ!」

少女「お母さんかあんたは……」

94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 20:35:41 ID:BUiGIVRQ

【オイル】

ロボ「なんだかのどかデスねえ」

少女「そうね、風も爽やかだし」

少女「ピクニック日和だわ」

ギシィ

ロボ「!?」

少女「て、敵襲!?」

ロボ「どこに敵なんかいるんデスか」

少女「索敵しなさいよ! レーダーで!!」

ロボ「いえ、周りになにも怪しげなものは……」

ギギギィィィイ

少女「ぎゃあああ!! なんの音!? 敵!?」

95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 20:46:32 ID:BUiGIVRQ

ロボ「ワタシの関節が錆びついた音でした」

少女「紛らわしいのよ!!」

ロボ「こんな音が鳴るんデスね、ワタシ」

ギシギシィイ

少女「いやっ! 耳障り!」

ロボ「油をささないといけませんね」

少女「そうね、でも油なんかあったっけ?」

96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 20:56:51 ID:BUiGIVRQ

ロボ「あの、ご主人、それは」

少女「ん? 油」

ロボ「いえそれ、ゴマ油デスよね? いつも持ち歩いている調味料セットの」

少女「油には違いないでしょ?」

ロボ「ワタシ、常に中華っぽい香ばしいにおいを漂わせることになりマスよ」

少女「ああそれ、ある意味、拷問かも」

ロボ「デスのでお勧めしませんが……」

少女「まあまあ、物は試しってことで」

ヌルリン

97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 21:09:29 ID:BUiGIVRQ

少女「どう?」

ロボ「なんだかムズムズしマス」

ゴリゴリ

少女「音も微妙」

ロボ「なんだか余計に噛み合わせが悪くなった気がしマス」

ギチギチチチ

少女「ちゃんとしたの、探すか」

ロボ「あの、その前にこのゴマ油をふき取ってクダサイ」

少女「ポンコ、この辺で車用品かロボット用品を調達できる場所を検索して」

ロボ「あの、その前にこのゴマ油を」

98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 21:20:13 ID:BUiGIVRQ

少女「中華が食べたくなったなあ」

ロボ「完全にゴマ油のせいデスね」

少女「缶詰適当に開けて、ゴマ油で炒めてみよっか」

ロボ「そうデスねえ、ご主人のお好きなように」

少女「なによ、返事が適当じゃない?」

ロボ「ワタシ、ゴマ油の匂いで悪酔いしてきました」

少女「え、ロボットって酔うの!?」

少女「いやその前にゴマ油の匂いで酔うことってあるの!?」

少女「え、ていうかあんた匂い感知機能あるの!?」

ロボ「全部YESデスね」

少女「ツッコミが追い付かんわ!!」

99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 21:36:08 ID:BUiGIVRQ

ガチャガチャ

少女「あ、これ、使えそうなオイル」

ロボ「いいデスね」

ロボ「これならしばらく持ちそうデスし」

少女「あと古いタオルとか手ぬぐいも欲しいよね」

ガサガサ

ロボ「新しい方が良いのでは?」

少女「古い方が、あんたの体の汚れをうまく取れるのよ」

ロボ「なるほど……」

100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/04(火) 21:43:36 ID:BUiGIVRQ

キュッキュッ

少女「ふう」

ロボ「すみません、ご主人」

少女「なにが?」

ロボ「メンテナンスをしていただいて」

キュッキュッ

少女「いいのよ、楽しいから」

ロボ「申し訳ないので、今度ワタシがご主人の体を洗いマスよ」

少女「いやそれはいい」

ロボ「遠慮しなくていいデスよ」カチャカチャ

少女「あんたの腕、痛そうだからマジでいい」

104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 17:04:33 ID:eXLVEpCY

【病院】

ロボ「ポーン」

少女「ん……なに?」ムニャムニャ

ロボ「生体反応がありマス」

少女「ん……?」ネムネム

ロボ「同フロア、150メートルほど先デス」

少女「え? 動物!? 人!?」

ロボ「人型デス」

105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 17:13:57 ID:eXLVEpCY

少女「昼間は誰もいなかったのに……」

ロボ「近づいては来ていません」

少女「寝込みを襲おうとか思ってるのかな?」

ロボ「なんだか佇んでいるだけのように見えマス」

少女「食料とか持ってたり、あ、いい補給場所を知ってたりしないかな?」

ロボ「近づいてみマスか?」

少女「んー、怖がらせても悪いし、ちょっと明るくして待ってようか」

ロボ「了解デス」

106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 17:26:04 ID:eXLVEpCY

少女「……」

ロボ「少しずつ近づいてきていマス」

少女「平常心、平常心」

少女「驚かさないようにしたげないと、ね」

ロボ「近いデス」

少女「……」ドキドキ

ロボ「ポーン」

ロボ「……目の前に、いマス」

少女「え? なにが?」

ロボ「人型の、生体反応が」

少女「……」

少女「っぎゃあああああああああああああ!!!!」

107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 17:36:08 ID:eXLVEpCY

少女「え!? なに!? なにもいないんだけど!? 怖いんだけど!?」

ロボ「目の前にいマスよ」

少女「やめろ!」

ロボ「じっと佇んでいマスよ」

少女「うわああああああ!! いないいない!! なにもいない!!」

ロボ「ご主人には見えないのデスか?」

少女「見えてたまるか!!」

108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 17:50:08 ID:eXLVEpCY

ロボ「ポーン」

ロボ「生体反応が増えました」

少女「やめろぉ!!」

ロボ「近づいてきマス」

少女「来んなぁあ!!」ブンブン

ロボ「ポーンポーンポーン」

ロボ「あ、また増えましたね」

少女「もういや!! ミュート!! あんた黙って!!」

ロボ「ミュート命令を受け付けました」

109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 18:01:45 ID:eXLVEpCY

少女「……」ビクビク

ロボ「……」

少女「……」ビクビク

ロボ「……」

少女「怖いんだけど!? 黙られると余計怖いんだけど!?」

ロボ「……」

少女「で、出よう。ここで泊まるのはもうやめとこう」

ロボ「……」

少女「ぽ、ポンコ、ついといで」

ロボ「……」ウィーン

110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 18:11:45 ID:eXLVEpCY

少女「……野宿も怖いな……でもしかたないよね……」

ロボ「……」ウィーン

少女「で、できるだけ広いとこで……」

ロボ「……」

少女「明るくして寝よう……そうしよう……」

ロボ「……」

少女「いっそ寝ないほうが怖くないかも……」

ロボ「……」

少女「ポンコ、離れないでね」

ロボ「……」

111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 18:23:44 ID:eXLVEpCY

……

少女「ふはっ!」ガバッ

ロボ「……」

少女「あ、朝か、何事もなかったかな?」

ロボ「……」

少女「あ、ポンコ、ありがとう。添い寝してくれてたんだね」

ロボ「……」

少女「そっか、ミュートしてたんだっけ」

少女「ミュート解除!」

ロボ「ミュート解除命令を受け付けました」

112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 18:39:06 ID:eXLVEpCY

ロボ「ご主人が命令したからじゃないデスか!!」

少女「うおっ、ごめんて」

ロボ「え、ここが一番安全だと思いマスが……」

ロボ「え、そちらもたくさん人がいマスよ? 大丈夫デスか?」

少女「え、なになに、いきなりなに喋ってるの?」

ロボ「え、ここで寝るのデスか? 余計危ないデスよ?」

少女「もしかしてミュートしてた間の分、今喋ってるの!?」

113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 18:50:41 ID:eXLVEpCY

ロボ「囲まれていマス」

少女「!?」

ロボ「囲まれていマス」

ロボ「囲まれていマス」

ロボ「囲まれていマス、危険デス」

少女「うわあああああああああああああ!!!!」ガタガタ

115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/08(土) 21:50:15 ID:N2crnrv.
突然のホラー

118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 21:26:06 ID:4QbhdcI6

【運動テスト】

ロボ「このまままっすぐ進むと学校がありマスね」

少女「小学校?」

ロボ「そうデス」

少女「運動場ある?」

ロボ「ありマスね」

少女「よっし、ちょっと運動してこっか」

少女「校舎で泊まるのも面白そうだし」

ロボ「病院で寝るのは無理で、夜の学校は怖くないんデスか?」

少女「……やっぱ泊まるのはやめとこう」

119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 21:37:08 ID:4QbhdcI6

ロボ「どんな運動がしたいデスか?」

少女「んー、ちゃんとした運動なんて、野球以来だしなあ……」

少女「運動不足だし、なんでもいいや」

ロボ「では、せっかくなので色々運動テストをしましょうか」

少女「げ、テスト?」

ロボ「ご主人の体力を測ってあげマスよ」

少女「ううう、自信ないなあ」

120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 21:45:26 ID:4QbhdcI6

ロボ「まずは50メートル走デス」

少女「んああああああっ!!」

ピッ

ロボ「8秒89デス」

少女「っはあ、はあ、それってどれくらい?」

ロボ「ド平均デスね」

少女「ド平均て」

121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 21:58:33 ID:4QbhdcI6

ロボ「続いてハンドボール投げデス」

少女「これ、投げ、にくいっ!」

ビュン

ボムッ

ロボ「9メートル23デスね」

少女「ふふふ、これはなかなか……」

ロボ「平均値まで5メートルほど足りませんね」

少女「マジか!!」

ロボ「もっと上を目指して投げるといいデスよ」

少女「難しいなあ……」

122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 22:19:20 ID:4QbhdcI6

ロボ「長座体前屈デス」

少女「むむむぅ」

グググ

ロボ「おお、これはなかなかの記録デス」

ロボ「52.8センチデス」

少女「それってどのくらい?」

ロボ「全国平均プラス5センチといったところデス」

少女「やった!」

ロボ「足の短さが有利に働きましたね、ご主人」

少女「壊したろかお前」

123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 22:34:19 ID:4QbhdcI6

ロボ「反復横跳びデス」

少女「はあっはあっ」シュタシュタ

ロボ「あと少しデスよ!」

少女「ひぃ、しんどい……」シュタシュタ

ピッ

ロボ「41回デスね」

少女「ふう、ふう」

ロボ「平均値まであと7回ほどデスね」

少女「げげ、全然足らないじゃん」

ロボ「重心が低いから有利かと思われたのデスが……」

少女「ほんま壊すぞお前」

124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 22:44:13 ID:4QbhdcI6

ロボ「まあ人類が滅んだ今、平均値なんて意味のない数値デスけどね」

少女「……まあね」

ロボ「むしろ今、ご主人の数値が全国平均と言っても過言ではないのでは!?」

少女「……確かに」

ロボ「データを書き換えておきましょうか」

少女「そんなこともできるの?」

ロボ「ほぼワタシしかアクセスしない情報デスが」

少女「意味ないじゃん、わたしの個人記録として残しといてよ」

ロボ「了解デス」

125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/11(火) 23:00:09 ID:4QbhdcI6

少女「そういえばあんたが言ってる『全国平均』ってなんの数値だったの?」

ロボ「人類が滅ぶ前の女子中学生平均デス」

少女「中学生全体?」

ロボ「いえ、中3、15歳女子の平均デス」

少女「わたし今年14歳なんだけど」

ロボ「……」

少女「前にもあんたに年教えた気がするんだけど」

ロボ「……」

ロボ「大健闘デスね、ご主人!!」

少女「こーのポンコツ!!」

127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/12(水) 02:34:49 ID:a3A20tpo
うーんこれはポンコツ

129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:08:37 ID:75bfG952

【洗濯】

ロボ「このまま進むと、川デス」

少女「そうなの?」

ロボ「川幅は約40メートル」

ロボ「橋を渡るには少し迂回しないといけません」

少女「んー、そっかあ」

ロボ「迂回しマスか?」

少女「あ、ちょっと待って、ポンコ」

少女「河原はある? 川に降りられるような場所は」

ロボ「ありそうデスね」

130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:19:23 ID:75bfG952

少女「よっしゃ、じゃあそのまま進もう!」

ロボ「渡る気デスか、ご主人」

ロボ「ワタシは防水機能がありマスが、長時間の水泳は自信がありません」

少女「違うって、洗濯すんのよ洗濯!!」

少女「洗ってない服がたまってるからね」

ロボ「なるほど」

ロボ「確かに最近、少しくさいデスもんね、ご主人」

少女「オブラートに包め!!」

131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:28:05 ID:75bfG952

ロボ「ああ、これは広いデスね」

少女「おー! 最高の河原だね!」

少女「いわゆる賽の河原だね!」ダダダッ

ロボ「あ、いきなり走ると危な……」

少女「あーっ!!」コケッ

ロボ「……いデスよ……」

少女「……」

ロボ「だ、大丈夫デスか!?」

132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:47:35 ID:75bfG952

少女「……」

ロボ「すごいテンションが落ちましたね」

少女「……」

ロボ「さ、さあ、洗濯しましょう! 洗濯!」

少女「……する」

ロボ「まずはなにを洗いマスか!? 下着デスか!? タオルデスか!?」

少女「全部……」

ロボ「はい?」

少女「全部洗うっ!! くそー!!」

133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 21:56:32 ID:75bfG952

少女「おーりゃあああああああああ!!」

バシャーン

ロボ「なんと豪快な」

少女「洗剤! 投入! 水質汚染なんて知るもんかあー!!」

ザバザバァ

ロボ「いきなりテンションがMAXになりましたね」

少女「今着てるやつもいっちまえー!!」

スポポン

バシャーン

ロボ「……」

134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 22:19:51 ID:75bfG952

ロボ「ワタシは干すための枝などを拾ってきマス」

少女「よろしく!」ゴシゴシ

ロボ「ご主人、洗濯のあとなにを着るつもりなんでしょうかね」

ガサガサ

ロボ「人目がないとはいえ、ワタシが間近にいるのに……」

ガサガサ

ロボ「いい年してすっぽんぽんとは、恐れ入りマス」

ロボ「……」

ロボ「ワタシ、独り言なんて言うタイプだったかな……」

ロボ「あ、賽の河原に対するツッコミをする機会を失ってしまいました……」

135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 22:32:39 ID:75bfG952

……

少女「やばい、着るものがない」

ロボ「今頃気づいたのデスか」

少女「なんで止めてくれなかったの!?」

ロボ「ちょっと時間が足りませんでしたので」

少女「Heyポンコ、わたしに似合うシャレオツな服を出してちょうだい」

ロボ「ワタシの能力の限界を超えていマス」

ロボ「あとシャレオツは止めたほうがよろしいかと」

ロボ「あ、それから賽の……」

少女「え、なに、サイがなんて?」

ロボ「……なんでもないデス」

136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/17(月) 22:46:41 ID:75bfG952

少女「ポンコ、暖かい布」

ロボ「ワタシのカバンに予備がございマス」

少女「わお、準備がいいわね」

ロボ「ご主人が入れたものデスよ」

ガサガサ

少女「……くさい」

ロボ「デスね」

少女「洗濯は二日に分けた方がいいわね」

ロボ「学習しましたね」

140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 22:14:05 ID:2C.ukcBI

【容量】

少女「ねえポンコ、あんたロボットの割に『忘れる』ことが多くない?」

ロボ「そうでしょうか」

少女「人間らしさを持っていると言えば聞こえはいいけど……」

ロボ「そのように作られた覚えはありませんね」

少女「でしょ?」

少女「……『作られた覚えはない』ってのもロボットらしさがないけど……」

141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 22:23:50 ID:2C.ukcBI

少女「あんたのスペックってどんな感じなの?」

少女「電気で動いてるのはわかってるんだけど……」

ロボ「胸のところを開けてみてクダサイ」

少女「え、ここ開くの!?」

バコン

少女「結構雑に開いたけど!? 大丈夫!? こんなに簡単に開いて」

ロボ「彫られている文字があるはずデス」

少女「えーっと」

142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 22:38:41 ID:2C.ukcBI

少女「“うすのろカーティス”」

ロボ「悪口デスね」

ロボ「ていうか落書きデスね、それ」

少女「直接言えない人がここに書いたのかな?」

ロボ「他には?」

少女「“無能なお役人”」

ロボ「またそれも落書きデスね」

143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 22:54:29 ID:2C.ukcBI

少女「“くたばれ、ビッチ、ニーナ”」

少女「“この給料ではパンツさえ買えない”」

少女「“隕石がこのビルに落ちてくれるのは一体いつだ”」

少女「“上司の家に強盗が入りますように”」

少女「技術者の苦悩が現れているわね」

ロボ「ワタシの中、そんなに落書きだらけなんデスか!?」

144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 23:05:07 ID:2C.ukcBI

少女「あった、記憶チップ」

少女「容量は、えっと、え、1テラバイト!?」

ロボ「1テラバイト!?」

少女「これじゃあ1年くらいしか持たないんじゃない!?」

ロボ「い、い、い、1テラバイト!?」

少女「自分のことでなんでそんなに驚いてんのよ」

少女「まあ、『テラ』なんて久しぶりに聞いたけど」

ロボ「旧時代の容量デスね」

少女「そりゃ色々忘れるわけだ」

145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 23:21:49 ID:2C.ukcBI

ロボ「もっとたくさん記憶できるチップを入れたいデスね」

少女「むう、どこを探すか」

ロボ「ワタシのいた工場の倉庫に、きっとあると思いマスが……」

少女「でもそこに今から戻るのは、ちょっとなあ」

ロボ「デスよね」

少女「よし、目的を果たした後、そこに戻ろう」

少女「それを1年以内に終わらせよう」

ロボ「……なるほど」

少女「それまで、あんまり古いデータを消さないようにしてよね」

ロボ「……善処しマス」

146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/23(日) 23:32:51 ID:2C.ukcBI

少女「落書き、消しといてあげるね」

ゴシゴシ

ロボ「ありがとうございマス……」

少女「この技術者たちがいなかったらあんたは生まれてこなかったと思うと、ちょっと心苦しいけど」

少女「あ、せっかくだから落書き足しとこう」

キュッキュッ

ロボ「あ! なに書いてるんデスか!?」

少女「なーいしょ」

ロボ「ご主人! ひどいデスよ!」

“最高の相棒 ポンコツのポンコ”

151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 21:24:00 ID:hqBD7oKU

【世界の終わり】

少女「ねえ、世界には、わたしたち以外の人もいるのかな?」

ロボ「いると思われマス」

少女「でも、まだ誰にも会えてないよね?」

ロボ「ワタシのサーチ範囲に入ってもらえれば、きっと感知してみせマスのに……」

少女「病院でのバグを除けば、わたし以外の人を感知することはなかったのよね?」

ロボ「あれはバグではないと思うのデスが……」

少女「あれはバグなの! そういうことにしておくの!!」

152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 21:32:12 ID:hqBD7oKU

少女「でも、どのみちこんなに人類が減ったのなら、それはもう『人類滅亡』よね?」

ロボ「……その言葉の定義をするのは難しいデスね」

少女「ゼロでなくても、限りなくゼロに近いじゃない?」

少女「今宇宙人が襲来したら、滅亡後だと結論付けるでしょう?」

少女「まさかそこらの野生生物がこの文明を築いたとは思わないでしょう?」

ロボ「ワタシたちロボットの星だと思うかもしれませんよ」

少女「あ、そっか、動いてるロボットもいるか」

153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 21:45:11 ID:hqBD7oKU

ロボ「しかしワタシたちは、基本的には人間の命令を必要としマスからね」

ロボ「エネルギーがあっても、その場でじっとしていることが多いかと思いマス」

少女「それはそれで怖いな」

ロボ「話しかけた宇宙人を主人だと認識するかもしれません」

少女「子ガモか!」

ロボ「今まで見かけた中にも、実は意識のあったロボットがいたかもしれませんね」

少女「それは……気づかなかったな」

154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 21:54:14 ID:hqBD7oKU

ロボ「ワタシはご主人に起動してもらえて幸せデスよ」

少女「……そう」

ロボ「倉庫で眠り続けるだけの鉄屑になっていたかもしれないのデスから」

少女「……ほかにも何体かいたよね……」

ロボ「ええ」

少女「彼らも起こしてあげたらよかったのかな……」

ロボ「しかしワタシみたいなモノを何体もゾロゾロ連れて歩くわけにはいかないでしょう?」

少女「どんな大名行列だ」

ロボ「宇宙人が来ても蹴散らせそうデスけどね」

少女「こんな世界で宇宙戦争をする気はないよ!?」

ロボ「ま、大丈夫デス、彼らは目覚めなければ、目覚めていないことにすら気づけないのデスから」

少女「……それって悲しいね」

155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 22:05:22 ID:hqBD7oKU

ロボ「あのとき、どうしてワタシを起こしてくれたのデス?」

少女「……自分一人で、心細かったから」

少女「……それに、なんだか、優しそうなフォルムだったから」

ロボ「……製作者に感謝デスね」

少女「あのときの判断、間違ってなかったなーって思うよ」

少女「あんたときどきポンコツだけど、あんたがいなかったら、わたしなんてとっくに野垂れ死んでる」

ロボ「そんなことは……」

少女「ない? ほんとに?」

ロボ「……あるかもしれないデスね」

少女「でしょ」

156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 22:26:08 ID:hqBD7oKU

ロボ「しかし、ワタシたちがこうして生きている限り、『世界の終わり』は来ないのデスよ」

少女「え? どうして? すでに終わりすぎるほど終わっちゃってない?」

ロボ「ご主人の世界がまだしっかり残っているじゃないデスか」

ロボ「人は少ないかもしれないデスが、ご主人がいるじゃないデスか」

ロボ「『世界』を構成するために、それで十分デスよ」

少女「……そっか」

ロボ「デスので、できるだけ長生きしてクダサイね、ご主人」

少女「……がんばろ」

157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 22:43:20 ID:hqBD7oKU

少女「でもわたしが死んじゃったら、ポンコはどうなるの?」

ロボ「そんな未来の話は、ご主人が死んでからでいいじゃないデスか」

少女「死んだら話せるか!」

ロボ「そうデスね、きっとご主人の墓前で動かなくなるまで墓守をしマス」

少女「……そっか」

ロボ「デスからご主人は、心置きなくご自分の人生を、ご自分の『世界』を全うしてクダサイ」

少女「……ありがと」

ロボ「まあ、あっさり心変わりして声をかけてくれた宇宙人にホイホイついていくかもしれませんが」

少女「子ガモか!」

159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/09/30(日) 23:40:17 ID:ctYQqPSs
終末世界なのに不思議と悲壮感がないよね

160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/01(月) 00:09:53 ID:7AM7mcLk
子ガモか!って語呂がよくて好き
おつおつ

162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:10:36 ID:GURVyXE2

【誕生日】

ロボ「ご主人、誕生日がもうすぐデスよね」

少女「あ、そういえばそうだったな」

ロボ「ケーキは難しいデスが、なにかお祝いしましょう」

少女「んー、って言ってもなあ」

少女「祝ってる場合じゃない、というか」

ロボ「まあ、そうなんデスけど……」

163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:18:08 ID:GURVyXE2

少女「あ、そういやさ、あんたの誕生日は?」

少女「誕生日というか製造日というか、なんというか」

ロボ「ワタシの誕生日と言えるのは、ご主人に起動してもらった日がそうデス」

ロボ「なのでまだ0歳デス」

少女「あはは、なるほど」

少女「つまりまだあんたは赤ちゃんなわけか」

ロボ「ええ、日々成長中デス」

少女「ロボットって成長すんのか……」

164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:24:49 ID:GURVyXE2

ロボ「しかし日本には、生まれた日を1歳と数える風習もありました」

少女「え、そうだっけ」

ロボ「生まれて1歳、そして新年を迎えるたびに年を取る」

少女「はー、なるほど、なんか聞いたことある気がするぞ」

ロボ「そのシステムを利用すると、ワタシはすでに1歳デスね」

ロボ「そしてご主人はすでに15歳デス」

少女「うわあ、なんか変な感覚」

165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:36:12 ID:GURVyXE2

ロボ「ご主人、誕生日に欲しいものはないデスか?」

少女「え、世界平和とか?」

ロボ「即答の割に回答が重い!」

少女「充電不要で動く相棒ロボット!」

ロボ「心が痛い! 心はインプットされていませんけど!」

少女「ヘリと免許!」

ロボ「ワタシが運転した方がマシそうデス!」

少女「イケメンの彼氏!」

ロボ「それをプレゼントしてしまうとワタシがお邪魔虫に!」

166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:41:54 ID:GURVyXE2

少女「うそうそ、あんたがいればそれでいーの」

少女「それよりあんたこそ、1歳になったらお祝いしたげるからね」

ロボ「あ、ありがとうございマス」

少女「新しい名前とか、あげようか?」

ロボ「ワタシはポンコで満足していマスよ?」

少女「ポンコツが由来なのに?」

ロボ「ええ、ご主人に最初に頂いたものデスから」

167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:47:46 ID:GURVyXE2

少女「あ、じゃあ前に言ってた、容量の大きい記憶チップにしよう」

ロボ「ああ、それは嬉しいデスね」

少女「まあ、もともと探すつもりではあったけど」

ロボ「いえいえ、嬉しいデスよ」

ロボ「そのためにも、この旅を順調に終わらせたいデスね」

少女「うん、がんばろ!」

168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/07(日) 23:54:59 ID:GURVyXE2

……

ロボ「ご主人、そういえば今日はご主人の14歳の誕生日デスね」

少女「あ、そっか、今日か」

少女「すっかり忘れてたな」

ロボ「あちらのビルをご覧クダサイ」

少女「え?」

ロボ「ささやかながら、ワタシからのプレゼントデス」

『H A P P Y B I R T H D A Y』

少女「わ、すご、窓の明かりが……!?」

少女「ポンコ、これあんたがやったの?」

169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 00:00:37 ID:iDlh8QII

~HAPPY BIRTHDAY TO YOU♪~

~HAPPY BIRTHDAY TO YOU♪~

少女「え、この音楽はどこから?」

ロボ「この近辺のスピーカーのうち、生きているものを厳選しまして」

少女「いつの間にこんな準備を?」

ロボ「ご主人の目を盗みながら」

少女「あ、それで今日あっちこっち探索してたの?」

ロボ「ええ」

170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 00:09:51 ID:iDlh8QII

ロボ「お誕生日おめでとうございマス、ご主人」

ロボ「よい1年にしてクダサイ」

少女「あ、ありがとう、ポンコ、こんなサプライズ」

ロボ「こんな世の中デスから、あまり良いものは用意できませんが……」

少女「ううん、全然、すごい嬉しいよ」

ロボ「ちなみにこれの準備でエネルギーを大量に使ったので、早急に充電の必要がありマス」

少女「おバカ! うふふ」

172: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 10:13:12 ID:Pn6MQLrQ
おつ
ほっこりした
旅の目的ってなんなんだろう

174: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 22:18:10 ID:IQVNkp0I

【お風呂】

ロボ「ご主人、最近少しくさいデス」

少女「オブラートに包め!」

ロボ「ここしばらく野営が続いていマスからね」

少女「う、まあ、身体洗えてないから、ね」

ロボ「ワタシが調べましたところ、ガスも電気も不要のお風呂があるとか」

少女「え、ほんとに!?」

175: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 22:29:40 ID:IQVNkp0I

ロボ「まずドラム缶を用意しましょう」

少女「ドラム缶!? 気軽に用意できるもんじゃないよ!?」

ロボ「おそらく、この先の工業用廃棄場で入手できマス」

少女「それ油まみれじゃない!?」

ロボ「あとはコンクリートブロックと」

少女「こ、この先の工業用廃棄場で入手できそう!」

ロボ「すのこ用木材、燃料用木材」

少女「それも入手できそう!」

176: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 22:38:17 ID:IQVNkp0I

……

ロボ「揃うものデスね」

少女「で、えっと、どうすればいいの?」

ロボ「空気が通りやすいようにブロックを並べて、その上にドラム缶を乗せマス」

少女「え、腕力足りる?」

ロボ「インスタント・ユニットを装着しマス」

ガチャコン

少女「腕増えた!?」

ロボ「これで重い物もなんのその!」

ウイーン

177: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 22:51:24 ID:IQVNkp0I

ロボ「それから、すのこを丸く切りマス」

少女「あ、それならわたしでもできそう」

ギコギコ

ロボ「ワタシはその間に燃やすための木材を探してきマス」

少女「ふう、ふう」

ギコギコ

少女「あはは、なんか楽しい、こういうの」

ギコギコ

少女「あ、これ、切り落とした部分も燃やせるな」

ギコギコ

少女「あれ、『すのこ』ってそもそもなんだ?」

ギコギコ

178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 22:59:24 ID:IQVNkp0I

ロボ「では次は水を汲みましょう」

少女「それ結構大変そうだね」

少女「ていうか、この近場で水出るとこある?」

ロボ「リサーチ済みでございマス」

少女「お、さすが!」

ロボ「すでにホースの準備も万端デス」

少女「おおお、さすが!」

179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 23:09:23 ID:IQVNkp0I

ロボ「熱くなりすぎたときのために冷ます用の水も用意しておきましょう」

少女「お風呂の温度って、どれくらいがいいの?」

ロボ「40度から41度くらいが適温デスかね」

少女「そんな狭いの?」

ロボ「ワタシの指でしっかり測れマスから、大丈夫デスよ」

少女「へえ、便利」

ロボ「今ならなんと四本腕デスから、四か所同時に測れマス!」

少女「その機能いるかな……」

180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 23:20:50 ID:IQVNkp0I

ロボ「さあ、火を焚きマスよ!」

少女「おう!」

ゴォォォ

ロボ「さあ、この竹筒を吹くのデス!」

少女「おう!」

少女「ふーっ! ふーっ!」

ゴォォォォオオオ

少女「わ、すごい燃えるね!」

ロボ「その調子デスご主人!」

181: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 23:31:39 ID:IQVNkp0I

少女「どう? 温度」

ロボ「ばっちりデス」

少女「よ、よし、じゃあさっそく……」

少女「あれ、これ、どうやって入るの?」

ロボ「……」

少女「どこ触っても熱そうなんだけど」

ロボ「……」

少女「ポンコ?」

ロボ「入り方まで考えていませんでした」

少女「おい!」

182: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 23:38:23 ID:IQVNkp0I

ロボ「ワタシを踏み台にしてクダサイ」

少女「う、うん……」フミッ

ロボ「ふちは意外と熱くないので、そこを持って入ってクダサイ」

少女「あ、ほんとだ、お、おっとっと……」

ザブン

少女「うあー」

ロボ「どうデス?」

少女「さ、さいこおー」

183: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/22(月) 23:46:20 ID:IQVNkp0I

ロボ「ドラム缶風呂の他に、『五右衛門風呂』という文化も昔はあったようデス」

ロボ「そちらは、ドラム缶ではなく木の桶のような形だそうデスが」

少女「五右衛門? なんか人の名前みたい」

ロボ「そうデス、五右衛門という人を処刑する釜茹での刑から名前が付いたそうデス」

少女「こわっ!!」

少女「え、これ処刑なの!?」

ロボ「お湯加減はいかがデスか?」

少女「こ、心なしか熱く感じるような……」

ロボ「もっと上げマスか?」

ゴォォォオオオオ

少女「や、やめて!」

187: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 21:36:04 ID:svA.Fbtw

【じゃがいも】

ロボ「おや珍しい、畑がありマスよ、ご主人」

少女「わ、広い畑!」

ロボ「人が世話をしなくても、それなりに育っていマスね」

少女「時々雨が降ってるからかな?」

ロボ「あの葉のかたちは、おそらくじゃがいもデスね」

少女「え、好き! じゃがいも好き!」

188: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 21:44:34 ID:svA.Fbtw

ロボ「この葉のかたちは、98%の確率でじゃがいも!」

ズボボボボッ

少女「お見事! ってかでか! 多!」

ロボ「ずいぶんここの土は栄養があったんデスかね」

少女「へえー、じゃがいもって、こんな風にできるんだ」

ロボ「見たことはなかったのデスか?」

少女「うん、畑の姿は知らなかったなー」

ロボ「さあ、せっかくですから食べましょう」

少女「おう!」

189: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 21:54:17 ID:svA.Fbtw

ロボ「まず半分に切りマス」

少女「ふむふむ」スパッ

ロボ「10センチほど土を掘り、半身を埋めマス」

少女「ふむふむ」ゴソゴソ

少女「ん?」

ロボ「あとは間引きをしながら、水をやれば半年後には立派な」

少女「気が長いわ! 今食べようよこれ!」

ロボ「失礼、これは栽培の方法でした」

少女「しっかりしろ!」

190: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 22:04:02 ID:svA.Fbtw

ロボ「では、ジャーマンポテトなどいかがでしょう」

少女「ほう、うまそうな名前」

ロボ「缶詰のソーセージを使うとパーフェクトな味ができマスが」

少女「うむむ、贅沢だけど久しぶりに使っちゃうか!」

ロボ「塩胡椒も必要デス」

少女「よしよし、久しぶりにちゃんとした料理だあ!」

191: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 22:15:16 ID:svA.Fbtw

ロボ「ちなみに『ジャーマン』は『ドイツ風』という意味デス」

少女「へえ、ドイツ料理なんだ?」

ロボ「しかしドイツには『ジャーマンポテト』は存在しません」

少女「……!?」

ロボ「他国が勝手に『ドイツ風肉じゃが』といった感じで名前を付けただけデスからね」

少女「あ、そっかそっか」

少女「『広島風お好み焼き』みたいなものか」

ロボ「その話題は戦争になりマスよ!」

少女「明石焼きを『出汁で食べるたこ焼き』と呼ぶような」

ロボ「その話題も危険デスよ!」

192: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 22:28:43 ID:svA.Fbtw

……

少女「うあー、美味しかった!」

少女「ごちそうさま!」

ロボ「ご主人、なかなか料理のセンスがありますね」

少女「ポンコの教え方が上手いのよ、きっと」

少女「さて、この残ったじゃがいも、どうしよう」

少女「まだまだたくさんあるけど、腐らせちゃうのもなあ」

ロボ「ご安心を! ご主人!」

ロボ「じゃがいもは実は、とても長持ちするのデス!」

少女「え、そうなの?」

193: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/04(日) 22:36:51 ID:svA.Fbtw

ロボ「まずは紙で包みマス」

少女「ふむふむ」ガサガサ

ロボ「そして黒い袋で包みマス」

少女「ふむふむ」ゴソゴソ

ロボ「そして私の頭で保管しマス」

パカッ

少女「え、そこ開くの!?」

ロボ「そうすればかなり持ちマスので、またそのうち調理しましょう」

少女「あんた頭の中空っぽだったの!? じゃがいもホルダーなの!?」

199: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 22:18:14 ID:ct3HKJdA

【情報の錯綜】

ロボ「ご主人、問題が発生しました」

少女「お、どうしたの?」

ロボ「ワタシがアクセスしている情報にバグが見つかったようデス」

少女「バグ?」

ロボ「ワタシではない誰かがアクセスしたことで、様々な問題が発生していマス」

少女「え、じゃあ、生きている誰かがいるってこと!?」

ロボ「まあ、そういう意味では良いニュースと言えるのデスが……」

200: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 22:30:16 ID:ct3HKJdA

少女「え、情報を操作して楽しんでいる人ってこと?」

ロボ「いえ、人為的なバグではなく、アクセスが雑だったために、過剰防衛反応をしてしまっているような感じデス」

少女「変なウイルスが入ったからめっちゃ熱出ちゃった、みたいな?」

ロボ「ええ、まあ、そういう感じデスね」

少女「じゃあ情報がおかしくなっちゃってるの?」

ロボ「ええ、現に今ワタシたちが歩いているこの場所は、『海』ということになっていマス」

少女「海!?」

201: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 22:43:24 ID:ct3HKJdA

ロボ「このまま歩くと遭難しマス」

少女「んー、まあ、大丈夫でしょ」

少女「ポンコのナビがなくても、まあなんとかなりそう」

ロボ「それはそれでちょっとショックデスが……」

少女「待ってて直るとも限らないんでしょ?」

ロボ「かかる時間はわかりませんが、元通りになるプログラムは必ず用意されているはずデスから、いずれは直ると思いマス」

少女「あ、そうなの」

少女「じゃあやみくもに進まず、適当にこの辺で時間をつぶしましょうか」

202: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 22:53:27 ID:ct3HKJdA

ビビーッ ビビーッ!!

ロボ「!?」

少女「!?」

ロボ「キンキュウ ジシンソクホウ デス!」

ロボ「スグニ ツクエノシタニ モグリコンデクダサイ!」

少女「机なんてないけど!?」

ロボ「ツヨイユレ ヲ カンソクシマシタ!」

少女「揺れてないけど!?」

ロボ「ザブトン デ アタマヲ マモリマショウ!!」

少女「座布団なんて持ってないけど!?」

203: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 23:03:35 ID:ct3HKJdA

ロボ「失礼、今のもバグのようデス」

少女「あんたが壊れたのかと思ったよ……」

ロボ「申し訳ないデス」

少女「まあ、そんな不具合はいつでも起こりうることだしさ」

少女「気軽に行こうよ」

ロボ「デスが、やはりこの状態でうろうろするのは……」

少女「大丈夫大丈夫、気にすんなー」

204: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 23:12:42 ID:ct3HKJdA

少女「あれ、向こうの方になんかいるぞ」

少女「サルかな?」

少女「結構群れを成してる感じだけど……危ないかな?」

ロボ「ワタシのサーチによると、あれらは20%の確率で『サル』デスね」

少女「ひっく! 残りの80%はなんの確率だ!」

ロボ「ワタシのアクセスした情報によると、『サル』の映像はこんな感じデス」

ピピッ

少女「え、なんか変な映像が混じってるぞ」

ピピッ

少女「これお笑い芸人の人じゃん、確かにサルっぽいけどさあ」

ピピッ

少女「これ戦国武将じゃん、サルの割合めっちゃ低いじゃん」

205: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 23:26:17 ID:ct3HKJdA

ロボ「という訳であれらは20%の確率で『サル』デスね」

少女「ほぼ100%だ! あれはサル! わたしはわかるぞ!」

ロボ「仮にサルだとすると、近づくのは危険デス」

少女「仮にってのが気になるけど、うん、やっぱそうだよね」

ロボ「死んだふりでやり過ごすのが効果的デス」

少女「それデマじゃん! ていうかクマ対策じゃん!」

ロボ「黒い服を着て暴れると逆効果デス」

ロボ「白い服を着てゆっくりと後ずさりをするのが効果的デス」

少女「それはハチ対策!!」

206: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 23:33:48 ID:ct3HKJdA

ロボ「とりあえずご主人は、どう進みたいデスか?」

少女「え、そりゃあまあ、ここまっすぐ行きたいけど……」

少女「向こうに大きな建物があるし、なにか旅に必要なものがある気がするから……」

ロボ「ではまっすぐ進みましょう」

ジュワッ!!

少女「ぎゃ!」

サル「キキーッ!! キキーッ!!」スタコラ

ロボ「強行突破デス、サルなど蹴散らしマス」

少女「ビーム出すなら先に言って!!」

207: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 23:44:52 ID:ct3HKJdA

ロボ「サル対策には、実は目からビームが一番効果的デス」

少女「大体なんでもそれで倒せそう……」

ロボ「ご主人の行く先を阻むものは、なんであろうと焼き尽くすのみデス」

少女「ポンコが危険な兵器っぽくなってる……」

少女「自我を持っちゃだめなタイプのロボットっぽい……」

ロボ「さあご主人、ワタシの自我が保たれているうちに進みましょう」

少女「いずれわたしも焼かれるっぽい……」

208: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/12(月) 23:55:07 ID:ct3HKJdA

ロボ「おや、この辺りはマグマだまりデスね」

少女「あんたの地図どうなってんの!?」

ロボ「情報が混乱したままデス、このままだと非常に危険デス」

少女「うん、まあ、ポンコツ具合に拍車がかかってるから、ほんと早く直ってほしい」

ロボ「ご迷惑をおかけしマス」

少女「お? あの建物、なんちゃらロボティクスって書いてない?」

ロボ「あの建物は35%の確率でピラミッドデスね」

少女「なんでサルより確率高いねん!」

少女「とりあえず、あそこ目指すぞ!」

ロボ「了解デス」

212: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 22:31:18 ID:yMQCc81k

【再起動】

少女「すごい、この建物、やっぱりロボットの研究所っぽい」

ロボ「それもかなりの規模デスね」

少女「ポンコがいたところよりずっと先進的じゃない?」

ロボ「ええ、あそこはホコリまみれでしたしね」

少女「ここなら、ポンコに必要なパーツとか、記憶チップとか、ゲットできそう!」

ロボ「それに、宇宙人と戦うためのロボット軍団も集められそうデスね」

少女「そんな目的はない!!」

213: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 22:36:03 ID:yMQCc81k

ロボ「ここの電気設備なら、充電も早く済みそうデス」

少女「そういうもんなの?」

ロボ「おお、これも、これも、ワタシが必要としていたパーツデス!!」

ロボ「ここは宝の山デスね!!」

少女「うふふ、ポンコが久しぶりにテンションあがってる」

ロボ「ご主人、いくつもらっていいデスか!?」

少女「好きなだけもらいなよ」

ロボ「本当デスか!? これだけ高スペックのパーツがあれば、情報のバグを直すのも朝飯前デスよ!!」

少女「え、そうなの? それはいいじゃん!!」

214: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 22:42:51 ID:yMQCc81k

ロボ「えー、まず、このパーツをここにはめマス」

ロボ「それでここをつないで、ここを開けて、このスイッチを解除して……」

ロボ「これとこれを入れ替えて、ここのランプが緑になるまで充電して、それから……」

少女「ちょっとちょっと、ゆっくり教えてよ」

少女「覚えきれないし!」

少女「ていうか、本当にそれ合ってるよね? バグった情報じゃないよね?」

ロボ「ワタシの中にインプットされているワタシ自身の設計書に沿っているので、そこは大丈夫デス」

少女「あ、そう」

215: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 22:48:27 ID:yMQCc81k

ロボ「で、そこまでできたら、ワタシを再起動しマス」

少女「再起動?」

ロボ「ここのカバーを外して、この赤いボタンを5秒以上押しマス」

少女「ドクロマークになってるけど!? これ押したら爆発しない!? 大丈夫!?」

ロボ「ご安心クダサイ」

少女「安心できないデザインですけど!?」

ロボ「再起動から目覚めたとき、ワタシはニュータイプに生まれ変わっているのデス!!」

少女「記憶とか消えないよね!? 変なポンコにバージョンアップしてたらヤだよ!?」

ロボ「大丈夫デス、心を無にして一息にグッと押してクダサイね!!」

少女「怖い怖い怖い!!」

ロボ「では心を鬼にして……」

少女「余計気が重いわ!!」

216: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 22:55:29 ID:yMQCc81k

カチャカチャ

少女「えっと、これでいいんだよね……」

ロボ「ふふふ、パワーアップが楽しみデスねえ」

少女「さ、再起動するよ?」

ロボ「はい、どんとこいデス」

少女「うう……」

ロボ「心を無にして、グッと! 一息に!」

少女「うりゃあああ!!」グッ

……

ロボ「!」ガクン

少女「……」

ロボ「……」

217: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:08:59 ID:yMQCc81k

ロボ「メ゛―――!!!」

少女「ぎゃあ!!」

ロボ「オハヨウゴザイマス!! オハヨウゴザイマス!!」

少女「え、今の妙な叫び声は起動音なの?」

ロボ「ワタシの型番はR3L3-2097デス」

ロボ「ご主人の登録をしマスので、網膜スキャンをお願いしマス」

少女「ああ、そういえばポンコを最初に起動したときにも、そんなんあったなあ」

キューン……

ロボ「網膜スキャン完了」

218: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:17:44 ID:yMQCc81k

ロボ「続いて鼓膜のスキャンをお願いしマス」

少女「鼓膜!? 耳の中見せろってか!?」

ロボ「さらに横隔膜のスキャンをお願いしマス」

少女「横隔膜って肺のところでしょ!? 見せれるかあ!!」

ロボ「それから手術を待っている子どものために、角膜をクダサイ」

少女「あげられるか!!」

ロボ「べりっと」

少女「あーげーらーれーるーかー!!」

ロボ「冗談デス」

少女「チュートリアルからふざけるな!!」

ロボ「あと処女膜のチェックだけは、どうしてもお願いしマス」

少女「ここまで下ネタなしでやってきたのになんてこと言うんだ!!」

219: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:24:33 ID:yMQCc81k

ロボ「ではお名前、生年月日、その他ご主人の情報を入力してクダサイ」

少女「そうそう、ここに打ち込んだんだった」

ピッピッ

ロボ「スリーサイズもお願いしマス」

少女「入れるか!!」

少女「再起動してからあんたちょっとオヤジ臭いわよ!!」

ロボ「クレジットカードの暗証番号もお願いしマス」

少女「持ってるか!!」

ロボ「親指の指紋の登録もお願いしマス」

少女「いっ……!!」

少女「いるか、それはいるか……」

220: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:36:13 ID:yMQCc81k

ロボ「さて、ではご主人は、ワタシになにを望みマスか?」

少女「……」

少女「なにを……望むか……」

ロボ「ええ」

少女「……わたしの話し相手になってよ!」

ロボ「了解デス」

ピコン

ロボ「ご主人の登録を終わりマス」

少女「……最初も、たしか、そう言ったんだったなあ」

221: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:42:34 ID:yMQCc81k

ロボ「思えばご主人がワタシを最初に起動したとき、とても心細そうな顔をしていました」

少女「……うん」

ロボ「ワタシを相棒に選んでもらって、本当に感謝していマス」

少女「わたしの方こそ、感謝しかないよ」

ロボ「人は、一人で話し相手もいない状況だと、とても脳にストレスを感じるという話デスから」

少女「うん、一人は辛かったな」

ロボ「楽しく話したり、笑ったり、ツッコミをしたり、そういう会話がとても必要なのデスよ」

222: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:48:54 ID:yMQCc81k

少女「ねえ、あんたがボケたりポンコツだったりするのって、もしかしてわざとなの?」

ロボ「ももももも、もちろんプログラム通りデスよ?」

少女「あ、これ違うな」

ロボ「ご主人が退屈でボケたりしないように綿密に計画されたボケをかましているんデスよ?」

少女「綿密に計画されたボケって面白いのかな……」

ロボ「デスからご主人は安心してツッコんでくれればいいんデスよ?」

少女「う、うん」

ロボ「ワタシは、よい話し相手になれていましたか?」

少女「まあ、それはね、たしかに」

223: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/24(土) 23:56:01 ID:yMQCc81k

ロボ「さて、それでは情報のバグを取り除く作業に入りマス」

少女「あ、そういえばそんな目的もあったね」

ロボ「頑張りマスので、その間手を握っていてクダサイ」

少女「幼児か!!」

ロボ「上手くできたら褒めてクダサイ」

少女「幼児か!!」

ロボ「終わったら充電してクダサイ、26時間ほど」

少女「スペック落ちとるやんけ!!」

ロボ「……という感じで、これからもよろしくお願いしマス、ご主人」

少女「はいはい、うふふ」

228: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 21:17:45 ID:Zri80V5g

【二人は今日も旅をする】

ロボ「……目的地に到着しました」

少女「……ここ……見覚えある……気がする」

ロボ「……では」

少女「うん! ここだと思う! ついに見つけた!!」

ロボ「入ってみましょう」

少女「うん!」

229: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 21:32:40 ID:Zri80V5g

少女「あ、ここだ! だって絶対そうだよ! この景色、見覚えあるもん!!」

ロボ「では、ここに」

少女「うん、うちのご先祖様のお墓があるはず!」

ロボ「探しましょう」

……

少女「荒れてるね……」

ロボ「ええ、人の手が入らないと、こういったところはすぐに荒れてしまいマス」

少女「あとで掃除しようね」

ロボ「ええ、頑張ってクダサイ」

少女「手伝ってよ!!」

230: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 21:41:10 ID:Zri80V5g

少女「うちのお墓は……」

ロボ「あ、あれじゃないデスか? タージマハルみたいな形の」

少女「そんな目立つやつじゃない!!」

ロボ「じゃあ、あのマッチョの銅像のような」

少女「うちのご先祖にボディビルダーはいない!!」

少女「なんだこの墓地、変なのばっか!!」

ロボ「逆になんでこんな変な墓石を忘れてたんデスか?」

少女「……ほんとだね」

231: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 21:50:51 ID:Zri80V5g

少女「あった! これよこれ!」

ロボ「なんだ……ずいぶん普通デスね」

少女「普通であることに何の文句があるんだ!!」

ロボ「で、いくつもお墓を渡り歩いては、ようやく見つけたご先祖様のお墓デスが」

少女「うん」

ロボ「どうやって破壊しマス?」

少女「そんな目的で探してたわけじゃないっ!!」

ロボ「寝言でよく『この恨み末代まで呪ってやる』と言ってましたよ」

少女「わたしが暫定末代だよっ!!」

232: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:02:48 ID:Zri80V5g

少女「これを供えに来たのよ」

カチャリ

ロボ「これは……」

少女「お父さんの眼鏡と、お母さんのネックレス」

ロボ「……」

少女「死んだ、とは思いたくないけど、でもずっと探してたけどどこにもいなくて」

少女「だから、この場所に供養しに来たかったんだ」

ロボ「……心は、晴れマスか?」

少女「ううん、でも、ちょっと前進できるかな、って感じ」

233: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:15:47 ID:Zri80V5g

ロボ「幼い頃の記憶だけで、それでもたどり着けるものデスね」

少女「そりゃあ、ポンコのおかげよ」

少女「候補になりそうな墓地をたくさん探して、案内してくれたじゃない」

ロボ「何個も何個もハズレでしたけど……」

少女「でも、旅、楽しかったよ」

ロボ「そう言ってもらえると、ありがたいデスね」

少女「さあて、これから、どうしよっかな」

ロボ「……次の目的地を設定してクダサイ」

少女「んん、どうしよっかな」

234: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:23:02 ID:Zri80V5g

少女「ちょっと大変なことも多かったから、のんびりしたい気もするし」

ロボ「ではハワイでも行きましょうか」

少女「安易!! ていうか道中!! 大冒険になるわ!!」

ロボ「そろそろ宇宙人の襲来に備えてロボットの軍隊を作る計画を実行に移しマスか?」

少女「それ何回も却下したやつ!!」

ロボ「いっそこちらから攻め込みマスか?」

少女「それ宇宙の話してんの!? なんでそんなに宇宙人を気にしてるの!?」

ロボ「NASAにでも行けばサクッと宇宙まで行けそうじゃないデスか?」

少女「道中!! 絶対帰って来れんて!!」

235: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:30:25 ID:Zri80V5g

ロボ「のんびりしたいと言えば、定番はやっぱり温泉デスよね」

少女「前それで失敗したじゃん!! 管理されてない温泉、めっちゃ熱かったじゃん!!」

ロボ「あのときのご主人、真っ赤でゆでだこみたいで面白かったデスよね、ハハハ」

少女「なに笑ってんだコラァ!!」

ロボ「このやり取り、漫才みたいなんで動画にしてネットにアップしてみましょうか」

少女「誰が見るねん!!」

ロボ「それはほら、どこかにいる誰か、デスよ」

少女「っ」

ロボ「ワタシは大真面目デスよ」

少女「……それには賛同できない」

236: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:40:51 ID:Zri80V5g

少女「そうね、きっとどこかにいる、生き残ってる誰かに、会いに行こうか」

ロボ「ええ、それが良いと思いマス」

少女「のんびりね」

ロボ「ええ、これまでと同じペースで、デスね」

少女「じゃあポンコ、ここから一番近い、生き残りの人がいる場所へ」

ロボ「ここから、ゼロ、メートル地点デス」

少女「おい、お約束」

ロボ「ワタシの目の前に、この世で一番素敵な『ヒト』の気配がしマス」

少女「んー! もう! 許す! ポンコツ!!」



★おしまいデス★

237: HAM ◆HAM.ElLAGo 2018/12/03(月) 22:45:05 ID:Zri80V5g
これにて〆ですが、二人の旅はまだまだ続きます、多分


    ∧__∧
    ( ・ω・)   ありがとうございました
    ハ∨/^ヽ   またどこかで
   ノ::[三ノ :.、   http://hamham278.blog76.fc2.com/
   i)、_;|*く;  ノ
     |!: ::.".T~
     ハ、___|
"""~""""""~"""~"""~"

238: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:49:11 ID:kLV1nB6c
おつおつ
いい旅だった
これからもいい旅でありますように!

240: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:54:51 ID:z1Gtiln.
乙でした
悲壮感のない爽やかな終末でした

241: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/03(月) 22:58:14 ID:Zri80V5g
ちなみにSSの中で車とかの交通機関を使わないのは、
そこら中に持ち主不明の車が乗り捨てられていて邪魔だからです

242: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/12/04(火) 01:08:01 ID:3xRSZrAM
掛け合いが秀逸
こんな終末なら悪くない

引用元: 少女「ポンコツロボと旅をする」