1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:49:00 ID:.1aH1kN2
シャロ「いらっしゃいませ♪」

シャロ「ご注文はお決まりですか?」

シャロ「少々お待ちくださいませ」

シャロ「おまたせしました。どうぞ召し上がれ」

シャロ「ありがとうございますー」

シャロ「またのご来店をお待ちしております」

シャロ「いらっしゃいませ」

2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:50:42 ID:.1aH1kN2
シャロ「……お疲れ様でした」

トボトボ

シャロ(ふぅ……やっとバイトが終わった)

シャロ(って言っても、家に帰ったら内職やらなきゃいけないし……)

シャロ(明日は学校休みだからバイトを3件掛け持ち……)

シャロ(毎日毎日バイトして……お金を稼いで……それでもすぐに生活費に消えていく)

シャロ(一向に生活は楽にならない……)

シャロ(私は何のために働いてるんだろう……)

シャロ「そんなの決まってるでしょ! 生きるためよ! 楽しく生きるため!」

シャロ「楽しく生きるためにはお金がいる……お金を手に入れるためにはバイトしなきゃいけない」

シャロ「でもいつまでたっても暮らしは楽にならない……初めはバイトするのも楽しかったけど、だんだん辛くなってきた」

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:51:43 ID:.1aH1kN2
シャロ「そうよ……お金」

シャロ「お金さえあれば……こんな生活送らなくて済むのに。もっと幸せになれるのに」

シャロ「もっとたくさんのお金が……欲しい」


シャロ(でも、今のバイトこなすだけでいっぱいいっぱいだし)

シャロ(手っ取り早く大金を手に入れるなんて簡単じゃないわよね)

シャロ「はぁぁ……」

シャロ「ん。あれは……」

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:52:27 ID:.1aH1kN2
【宝くじ売り場】

ざわ・・       

シャロ(宝くじ……行列ができてたからつい並んじゃった)

シャロ(どうせ当たりっこないって思って、今まで買ったことなかったけれど)

シャロ(も、ものは試しっていうか……案外、もしかしたらってことも)

シャロ「だめだめだめ」ブンブン

シャロ(宝くじなんて絶対当たりっこないんだから。買うだけムダよ。お金をドブに捨てるようなものよ)

シャロ(それに1枚300円もするのよ……。買ってる人たち見てると、みんな最低でも10枚セットで買ってるし)

シャロ(額にしたら……3000円!?)

シャロ(今月も厳しいのにその上3000円なんて出費したら……)

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:55:01 ID:.1aH1kN2
「この宝くじ売り場って前に1億円の高額当選出たらしいよ~」
「一等は7億だって! やっば当たったらどうしよ!」
「宝くじの販売は本日限りとなりまーす」
「これが最後の大チャンスですよ!!」
「買わなきゃ(使命感)」

シャロ(高額当選……一等7億……最後のチャンス……)

シャロ(そうよ。こんなふうにうじうじ悩んでお金を出し惜しみしてるからダメなのよ)

シャロ(金は天下の回りものっていうじゃない……お金は使う時はもっとど~んと使った方が流れもよくなって入ってくるはず)

シャロ(やってやるのよ、シャロ!)

「お客様、どうぞ」

シャロ「あ、ちょ、ちょっと待って」

「はい?」

シャロ「ちょっとお金おろしてきますから! すぐ戻りますから! 待っててください!」ダッ

「は、はあ……」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:56:30 ID:.1aH1kN2
シャロ「お、お待たせしました」ゼエゼエ

「はい、では改めて」

シャロ「は、はいっ」

「連番でお買い上げになりますか? それともバラになさいますか?」

シャロ(連番で買えば下一桁は0~9。下一桁で必ず1枚は当たるから、確実に300円は帰ってくる計算になる)

シャロ(けど、それじゃあだめよ! そういうふうにリスクと取らないで『確実に』とか言ってる時点で弱気すぎるわ)

シャロ「バラで、お願いします!」

「バラですね。では枚数は――」

バササッ

「!?」

シャロ「あ、有り金全部で! えっと……6000円あります! 20枚で!」

(有り金全部で6000円……)

シャロ「お願いします!!」

「か、かしこまりました」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:57:26 ID:.1aH1kN2
【シャロの家】

シャロ「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

シャロ「私のバカ! バカバカバカバカ――!!」

ジタバタ

シャロ「当たるわけないでしょ! 当たるわけないでしょ! 宝くじなんて!」

シャロ「それなのに……6000円……ほんとに有り金全部はたいて買っちゃった……しかもバラで」

シャロ「これでもし……全部ハズレくじだったら」

シャロ「6000円が……ゼロに……」

シャロ「ゼロに……」

シャロ「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


千夜「こんばんは。あら、どうしたのシャロちゃん? 大声出して」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:58:38 ID:.1aH1kN2
シャロ「ち、千夜ぁ!? どうしてここに」

千夜「ドアが開けっぱなしだったから。シャロちゃんこそどうしたの?」

シャロ「う、ううん! なんでも、何でもないのよ」

シャロ(つい周りに流されて有り金全部使って宝くじ買ったなんて言えるわけないでしょ、恥ずかしい!)

千夜「あら、これ宝くじね。買ったの」

シャロ「隠すの忘れてたぁ!」


千夜「へぇ、それで買っちゃったのね」

シャロ「ええ、そうよ……笑いなさいよ……どうせ私がバカだったのよ」ぐすん

千夜「そんなことはないわ」

シャロ「え……」

千夜「宝くじって、もし当たったらどうしよう~とか、わくわくできて楽しいと思うわ」

千夜「よく言うでしょ。宝くじは夢を買ってるんだって。何だかそれって素敵じゃないかしら」

シャロ「……違うわ」

千夜「へ?」

シャロ「宝くじはお金が欲しいから買ってるの! お金がぁー!」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 20:59:49 ID:.1aH1kN2
千夜「シャロちゃん……」

シャロ「は、あ……ごめん。また大声出しちゃって」

千夜「ううん。シャロちゃん、凄いわね。夢じゃなくて、ちゃんとお金という現実を目指して宝くじを買っているのね」にこっ

シャロ「え。ま、まあ、そうだけど」テレ

千夜「でも、有り金全部使っちゃうのはどうかと思うわ~。もうちょっと現実みないとね」

シャロ「ぐっ。ちょっと、上げて落とすのやめてよね」

千夜「それで、食事代とか大丈夫なの?」

シャロ「ええ、多少は蓄えがあるから……。2週間後のお給料日まで何とか頑張るわ」

シャロ「とりあえずもうちょっと節約して、今夜はとりあえず水だけで過ごせば……」

千夜「だめよ、ちゃんと栄養取らなきゃ。今夜はうちにいらっしゃいな。一緒にお夕飯にしましょ」

シャロ「で、でも……」

千夜「それと。宝くじ、折角だから私も買いたいなって思うの」

シャロ「そうなの。でも、販売は今日までだし。もう時間的に宝くじ売り場も閉まってるわよ」

千夜「そうね。だから、シャロちゃんがよかったら……だけど」スッ

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:01:07 ID:.1aH1kN2
シャロ「え、何……お金? ひーふーみー……3000円?」

千夜「3000円分だけ、シャロちゃんから宝くじを買っちゃってもいいかしら?」

シャロ「それって」

千夜「3000円あれば、シャロちゃん2週間くらいは大丈夫でしょ?」

シャロ「え、ええ……。でも、いいの?」

千夜「私は夢を買ってみたいなって思うから。シャロちゃんから買ったら、何だかご利益ありそうだし」

シャロ「そ、そう?」

千夜「貧乏神だって神様には違いないわ!」

シャロ「あんた絶対バカにしてるでしょ!」

千夜「ふ、ふふ」

シャロ「ふ、あははっ」

シャロ「ありがと、千夜」

千夜「どういたしまして」

シャロ「えっと、3000円だから10枚ぶんよね。じゃあこの中から半分選んで――」

千夜「ううん、そのままシャロちゃんが一緒に預かっておいていいわ」

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:01:45 ID:.1aH1kN2
シャロ「え、何で?」

千夜「だって、抽選があるのはまだ先でしょ? うちにしまっておいたら宝くじを持っているのを忘れちゃうかもしれないし」

シャロ「そう? いや、千夜ならありうる……かもね」

千夜「シャロちゃんなら、お金に関わることならがめつく覚えてそうだし」

シャロ「ちょっと悪意を感じる言い方だけど……まあ、それもそうね。じゃあ、私が保管しておくわ」

千夜「お願いね。じゃあ、うちでごはん食べましょうか。行きましょ」

シャロ「ちょっと、まだ決めたわけじゃ……。……うん……ありがと、千夜」

千夜「宝くじが当たること願って、前祝いをしましょう。今夜はごちそうよ!」

シャロ「そんなとらぬ狸の皮算用は当たってからにしなさいよ~」

千夜「シャロちゃんはもし宝くじが当たったらどうするの?」

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:03:41 ID:.1aH1kN2
シャロ「そりゃ、まずこのボロ家を改修して、美味しいもの食べたり洋服買ったり、ティーセット買い替えたり陶芸展行ったりとか……千夜は?」

千夜「そうねぇ。……まずは甘兎庵の2号店や3号店を建てて、新商品の開発のために使ったりして、ゆくゆくは甘兎全国展開なんてどうかしら?」

シャロ「何よそれ~。いったいいくらかかるのよ、夢を見過ぎじゃないの~?」

千夜「ええ。でもこうやって夢を見るから楽しいでしょ」

シャロ「まあ、そうかもしれないわね」

シャロ(誰かと一緒に夢を見るのは……本当に楽しいかも)

千夜「ふふふ」

シャロ「ふふっ」

あはははっ――

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:06:06 ID:.1aH1kN2
【一週間後】

シャロ「う・・そ・・」

シャロ「当たってる・・一等・・・・7億円・・・・・・」

シャロ「ななおくえん・・が・・・・あた・・」

シャロ「あ・・あたあた・・・あたあたたたたたあだだあばばばばばばばばッ!!?」

ゴロゴロゴロゴロ

シャロ(うそ、うそこれホントに!?)

シャロ(ホントに当たってる!? 私に……一等が……)

シャロ「も、もう一回確認を!」

シャロ「69組の114514番……合ってる……間違いない……当たってる!!」

シャロ「ぃやったあああああああああああ!! やった!! やったやった!!」

シャロ「ふいぃー!! ひゅぅー!! フォーッ!!」

シャロ「はっ……はぁ……はぁ……だ、ダメよ私、一旦落ち着きなさい。み、水を」

シャロ「ごくごくごく……ぷはぁ……。ふぅ……」

シャロ「ちょっと、落ち着いたわ」

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:06:41 ID:.1aH1kN2
シャロ「7億円……1億円の7倍……1000万なら70倍……1000円だったら……70万倍!?」ヒィィ

シャロ「て、天文学的すぎる……こんなの……こんなのって」

シャロ「……」むぎゅ

シャロ「ほっぺ、ねじったら普通に痛いわ……」

シャロ「夢じゃない……夢じゃないんだ」

シャロ(7億円……一生遊んで暮らせるお金)

シャロ「こ、こんなぼけーっとしている場合じゃあないわ!」ガタッ

シャロ「この7億円くじは大事に身に着けて……一刻も早く換金を!」

シャロ「えっと、でもどこに行けば? あ、そうだ銀行よね! くじに連絡先とかちゃんと書いてあるはず!」

シャロ「あれ、7億円ってげ、現金で渡してもらえるの!?」

シャロ「ってそんなわけないでしょ! 普通に銀行振り込みに決まっているわ!」

シャロ「通帳通帳、あった。あっでも7億円なんて高額ひとつの口座に振り込んでもらえるの!?」

シャロ「税金とかどうなのかしら!? ちゃんと全額もらえるの!?」

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:07:19 ID:.1aH1kN2
シャロ「ハァハァハァ……だめ、もうどうやっても落ち着けない……」

シャロ「と、とにかく……まずはちゃんと銀行に行って7億円を振り込んでもらわないと安心できないわ」

シャロ「行きましょう!」


【玄関先】

千夜「あら、シャロちゃんおでかけ?」

シャロ「ひっ!? あ、なんだ千夜か」ビクゥ

千夜「? どうしたの、そんなに驚いて」

シャロ「ななな何でもないのよ! 本当に全然何でもないから……それじゃまた!」タッ

千夜「シャロちゃん? ……行っちゃった」

千夜(どうしたのかしら)

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:08:16 ID:.1aH1kN2
シャロ(ぴょんぴょん銀行の木組みの街支店はこっちよね)

シャロ(歩いて15分ってとこかしら。早く、早く着きたい)スタスタスタスタ

リゼ「お、シャロじゃないか」

シャロ「リ、リゼ先輩!?」

リゼ「どうしたんだ、そんなに早歩きして? もしかして歩兵になるための速歩の訓練か? 私も付き合うぞ!」

シャロ(ど、どうしよう。リゼ先輩からのお誘いなんて……。リゼ先輩と一緒にお散歩! し、したい……)

シャロ(で、でもダメよ。今は宝くじを換金するのが最優先なんだから!)

シャロ「す、すみません。今重要な任務を遂行中なんです! だからまた今度の機会に」

リゼ「重要な任務だと! なんだなんだ? 気になるな。よかったら私も手伝って――」

シャロ「あ、あ……えっと。す、すみませーんっ!」ダッ

リゼ「あ、シャロっ」

リゼ(どうしたんだ、急に逃げるように? そんなに重要な任務なのか。私にも話せないような極秘の任務……ますます気になる)

マヤ「おーい、リゼ」

メグ「リゼちゃん、こんにちは」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:08:53 ID:.1aH1kN2
シャロ「お、思わず逃げ出してしまったわ」

シャロ(よくよく考えてみれば、リゼ先輩と一緒に銀行に行ってもよかったんじゃ)

シャロ(別にリゼ先輩に宝くじが7億当たったって伝えても、そんなに問題は……)

シャロ(ううん、待って。壁に耳あり障子に目ありっていうじゃない。いつ、どこから私が7億円当たったっていう情報が外に漏れるかわからないわ)

シャロ(私が大金を持ってるってことが、万が一悪い人とかに知られて……ご、強盗とかに襲われたら)ガクガク

シャロ(……安易に人に教えちゃダメ。たとえリゼ先輩にでも……ごめんなさい、先輩)

シャロ(考えてみれば……私は今7億円の価値のある紙切れ一枚を抱えて、丸腰で外に出ているのよね)

シャロ「……」キョロキョロ

「あの女の子の金髪きれいだね」
「はぁはぁ……素晴らしい毛並みですね。きん! ぱつ!」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:09:29 ID:.1aH1kN2
【物陰】

千夜「シャロちゃんのあの挙動不審な様子。私、気になるわ」キラッ

リゼ「シャロには悪いが、尾行させてもらうぞ。これが我々のミッションだ」

マヤ「よくわかんないけど面白そう! やるぞー!」

メグ「おー」

【物陰】

青山「シャロさん、どうしたのでしょう。あんなにそわそわして」

青山「もう少し様子を見てみましょう」

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:10:05 ID:.1aH1kN2
シャロ(な、何か凄く周りからの視線を感じるわ……)ゾクッ

シャロ(も、もしかして私が7億円当たったこと……バレてる!?)

シャロ(私の当たりくじが狙われてる……)

シャロ(に、逃げなきゃ!!)

ダダダダダダッ

千夜「シャロちゃんがまた駆けだしたわ!」

リゼ「感づかれたか!?」

マヤ「すげえ速いぞ!」

メグ「まるで宝くじに高額当選した人が追手から逃げてるような速さだねー」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:11:07 ID:.1aH1kN2
【欄干のない橋】

シャロ(怪しい視線は感じなくなったわね。あとはこの橋を渡り切れば銀行はすぐ先)

シャロ(でも、油断はできないわ。風にでも吹かれて宝くじが飛ばされたら一大事。下は川なんだから)

ゴソゴソ

シャロ(今まで懐に入れてもってきたけど、ここはポーチの中にでもいれたほうがいいかな?)ゴソゴソ

シャロ「あら、あれって」



ココア「じー」

シャロ「ココア? 何してるの、こんな橋の上でしゃがみこんで」

ココア「あ、シャロちゃん。みてみて」

うさぎ「……」

シャロ「わ! 野良うさぎ?」

ココア「こんな橋の上にいたら危ないなぁ~って思って、安全なところに連れて行ってあげようかなって思って」

シャロ「ココア……優しいのね」

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:12:10 ID:.1aH1kN2
ココア「それとうさぎさんをモフモフしたくて!」キラッ

シャロ「どっちかというと後者ほうがメインでしょ絶対!」

うさぎ「……」

ココア「おいでおいで。端っこにいたら危ないよ。ほら、シャロちゃん」

シャロ「わ、私はうさぎ苦手だし……」


ビュオオオオッ(強風)


うさぎ「!?」

ココア「あ、危ないっ」

シャロ「ココアッ!!」

ぶら~ん

うさぎ「……」

ココア「よ、よかったあ……川に落ちる前に捕まえられて」ギギギ

シャロ「よくないわよ! 私があんたの手を掴めなかったらうさぎ諸共落っこちてたのよ!」ギギギ

ココア「う、うんごめんね! ありがとうシャロちゃん!」

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:12:57 ID:.1aH1kN2
シャロ「礼は後でいいからッ……は、やく上に……登って」

ココア「で、でもシャロちゃんの手も……うさぎさんも離せないし……力が」

シャロ「わ、私だって……引き上げたいけど……両手で掴んでるだけで精いっぱい……」ズルズル

シャロ(あ……だめ! 体が前のめりに……欄干がないから引っかかるものも何も……)ピラ

シャロ(あ、肩にかけていたポーチが揺れて! そういやファスナー閉めてなかった……! この中には……!)

ひらっ

シャロ(落ちる、宝くじが)

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:13:46 ID:.1aH1kN2
シャロ(掴まなきゃ。まだ間に合うわ)

シャロ(でも両手が。……手を離せば、まだ掴める)

シャロ(7億円が――)

ひらひら

ココア「シャロちゃん?」

うさぎ「……」

シャロ(ココアを手放せば、7億円が私のものに)

シャロ(ココアと7億円、どっちが大事なの――シャロ!!)

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:14:39 ID:.1aH1kN2
シャロ「そんなの」

シャロ「そんなのココアのほうが大事に決まってるわよ! ばかァ!!」

ココア「シャロちゃん!?」

シャロ「うぐぐぐ」ギギギ

ココア「な、何か紙切れみたいなのが川に落ちていったけど……あれって?」ギギギ

シャロ「あんなもの、もうただの紙切れよ。どんな大金よりも……ココアが、友達の命の方が大事に決まってるじゃない……」

ココア「大金……」

シャロ(ぐっ……踏ん張りが、もう限界……二人とも)ズルッ

ココア「あっ」

シャロ「落ちるぅぅぅー」

がしっ

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:15:13 ID:.1aH1kN2
シャロ「え……」

千夜「シャロちゃん、もう大丈夫よ」ぎゅ

リゼ「私たちに任せろ」ぎゅ

シャロ「千夜!」

ココア「リゼちゃんも!」

リゼ「みんな、手伝ってくれ!」

マヤ「イエッサー!」

メグ「いえっさー」

青山「いえっさ~」

リゼ「せーので引き揚げるぞ」

せーのっ!

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:15:48 ID:.1aH1kN2
――――
――

【ラビットハウス】

チノ「……と、こういう経緯があったんですね。シャロさん」

シャロ「ええ。今になって考えると、お金に目が眩んで……もうちょっとで人として道を踏み外しているところだった」

シャロ「私のようなお金に縁のない人間が、あんな大金を手にするべきじゃなかったのよ」

シャロ「実際に7億円を手にしてたら、いろんなことに神経使ったり、やらないでもいいことに手を出したりして」

シャロ「幸せな人生のために本当に大事なものを見失っていたかもしれない」

シャロ「それに気付かせてくれただけでも、いい経験になったわ」

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:16:24 ID:.1aH1kN2
千夜「でも、やっぱり7億円ほしかったんじゃない? 逃した魚は大きいわ」

シャロ「ちょっと! せっかくいい話にして自分を納得させようとしてるのにー!」

千夜「私に内緒で7億円を独り占めしようとしていたなんて……シャロちゃん、ひどいわ」うるうる

シャロ「ち、違うの! あのときは本当に他のことが考えられなくて、半分は千夜のだって忘れてたのよ! 本当に!」

千夜「ええ、判ってるわ。ちょっとからかってみただけ」

シャロ「もう千夜~!」

ココア「シャロちゃん、助けてくれてありがとね。私もシャロちゃんのこと、とっても大事だよ」ぎゅう

シャロ「ちょ、ココア。もう暑苦しいからやめてよ~」

28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:17:31 ID:.1aH1kN2
リゼ「7億円か。親父に頼めば現物を見せてあげるくらいのことはできそうだが……そうしたらシャロは喜ぶだろうな」

チノ「理性が吹き飛んで人の道を外してしまうのではないですか?」

ココア「チノちゃんもぎゅーしてあげるね」

チノ「結構です」

ココア「チノちゃんは私とお金、どっちが大事?」

チノ「そ、それは……」

ココア「ねぇ、どっち? どっちなのチノちゃんっ」

チノ「うるさいですね…」

青山「シャロさんの今回の体験は、私の次回作のテーマにさせてもらいますね」

シャロ「え、ちょっとなんだか恥ずかしいんですけど」

青山「そうですね……タイトルはどうしましょうか」

千夜「『宝くじで7億円当たったシャロちゃんの末路』なんてどうかしら?」

青山「それ、いいですね」

シャロ「パクリじゃないの! なんかすごい不穏そうだからやめてぇ!」

29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:18:16 ID:.1aH1kN2


おわれ

30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/18(金) 21:21:13 ID:.1aH1kN2
じっさい宝くじ当たったけど2等だからいうほど高額ではないうえに
そもそも当たったこと伝える相手なんか誰もいないんだよなぁ…

31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/19(土) 01:41:02 ID:6vd9JwSk

コレジャナイ感がすごい

32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/01/19(土) 13:15:00 ID:Crknq9pg
いい話だった

引用元: 千夜「宝くじで7億円当たったシャロちゃんの末路」