1:2017/04/17(月) 21:06:03.388 ID:7E7190dm0.net
城――

兵士「陛下、大変です!」

国王「どうしたのだ?」

兵士「隣国の軍勢が、我が国へ進撃を開始致しました!」

国王「な、なんだと!?」

兵士「すでに敵は国境まで迫っており、このまま侵入してくることは間違いないでしょう」

国王「おのれ……隣国め、ついに牙をむいたか!」
2:2017/04/17(月) 21:07:05.134 ID:MIKa9RYsr.net
ウホホホ?
3:2017/04/17(月) 21:09:04.347 ID:7E7190dm0.net
国王「将軍はどうしておる?」

兵士「軍を率いて、国境近くの砦で守りを固めております」

兵士「しかし、あの砦は守りに適しておりませんし、なにより隣国軍の方が兵力は上です」

兵士「いかに将軍が優れた武人でも、隣国軍を跳ね返すのは至難かと……」

国王「うむ……そうだな」

国王「将軍の勇猛さに知略が加わらなければ、この国は滅びることとなろう」

国王「こうなっては仕方あるまい」

国王「ゴリラ軍師殿のお力を借りるしかない!」
5:2017/04/17(月) 21:11:23.356 ID:7E7190dm0.net
兵士「ゴリラ軍師殿……まさかあの伝説の!?」

国王「そうだ、森の奥深くで暮らす、“森の賢者”とも称される伝説の軍師のことだ」

国王「先代王の時代から、あの方には何度も我が国の危機を救ってもらっている」

兵士「ならば私が森へ――」

国王「いや、ここは余自ら出向かねば失礼にあたろう」

国王「おぬしは砦に戻り、このことを将軍に伝えてくれ」

兵士「かしこまりました!」
7:2017/04/17(月) 21:13:18.333 ID:7E7190dm0.net
森――

国王「…………」

国王(たしか、このあたりに住まわれていたはずだが……)

国王「――いた!」

国王「ゴリラ軍師殿!」



ゴリラ軍師「ウホ?」
13:2017/04/17(月) 21:16:21.654 ID:7E7190dm0.net
国王「ゴリラ軍師殿、お久しぶりです」

ゴリラ軍師「ウッホッホ、ウホホホッ」

国王「実は我が国に、隣国が攻め寄せて参りました」

ゴリラ軍師「ウホホホッ」

国王「隣国軍を撃退するには、どうしてもあなたのお力が必要です」

ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホホ」

国王「どうか我が国をお救い下さい!」

ゴリラ軍師「ウホホッ!」
15:2017/04/17(月) 21:20:20.935 ID:7E7190dm0.net
砦――

斥候「敵軍は、まずは奇襲強襲に特化した少数部隊でこちらを攻撃する模様です」

斥候「しかし、その小部隊がどこにいるのか……まだ把握できておりません」


将軍「そうか……」

将軍(小部隊で先制攻撃を仕掛け、我らが崩れたところを本隊で一気に叩くつもりだな)

将軍(狙いは分かっていても、どこから攻撃が来るか読めなければ意味がない)

将軍(ゴリラ軍師殿はまだか……!)

兵士「将軍! ゴリラ軍師殿がやってきました!」

将軍「おおっ、丁重にお迎えしてくれ!」
18:2017/04/17(月) 21:23:42.681 ID:7E7190dm0.net
ゴリラ軍師「ウホホホホホ」

将軍(おおっ、なんと見事なゴリラなのだ。神々しさすら感じる)

将軍「あなたが伝説のゴリラ軍師殿ですか」

ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホホホホ」

将軍「私がこの軍の将です。あなたの知略で、我々を導いていただきたい!」

ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホウホ」

将軍「ではさっそく、ご相談したいことがございます」
20:2017/04/17(月) 21:26:19.839 ID:7E7190dm0.net
将軍「……というわけで、敵軍がこの砦の左右どちらかに潜んでいるようなのです」

ゴリラ軍師「ウホホ」

将軍「ゴリラ軍師殿は、どちらに潜んでいるとお考えになられますか?」

ゴリラ軍師「ウ」

将軍「右ですか!」

将軍「ようし、砦の右側に兵を出す! 敵の先行部隊を叩き潰すのだ!」

兵士「ははっ!」
22:2017/04/17(月) 21:27:54.266 ID:/CXVvssVd.net
>>20
ウは草
23:2017/04/17(月) 21:30:22.148 ID:7E7190dm0.net
敵陣地――

敵兵「申し上げます!」

敵兵「奇襲をかけるための先行部隊が反撃を喰らい、敗走いたしました!」

敵将軍「なに!?」

敵将軍「うむむ、奴らにあの部隊がどこにいるかを見抜く索敵能力があったとは……」

敵将軍「ならば次の手だ!」

敵将軍「奴らが立てこもる砦近くの平原に陣取るぞ!」
24:2017/04/17(月) 21:33:29.263 ID:7E7190dm0.net
砦――

兵士「将軍、敵軍が砦近くの平原にて陣を構えております!」

将軍「ふむう、ここは一戦交えて、隣国軍の出鼻をくじきたいところだが……」

兵士「となれば、我が軍の精鋭である騎兵隊を向かわせますか?」

将軍「それがもっともだ……と思うが、念のためゴリラ軍師殿に判断を仰いでみるか」

将軍「ゴリラ軍師殿、歩兵隊と騎兵隊、どちらを出撃させるべきですか?」

ゴリラ軍師「ホ」

将軍「歩兵ですか! ……分かりました、歩兵隊出撃!」
26:2017/04/17(月) 21:36:00.592 ID:/CXVvssVd.net
騎兵だったら何て言うつもりだったんだw
27:2017/04/17(月) 21:37:44.142 ID:7E7190dm0.net
ワァァァ……! ワァァァ……!


歩兵A「あいつら、平原に馬をひっかけるためのヒモを仕掛けてやがったぜ!」

歩兵B「騎兵隊が出撃してたら、危うく全滅するところだったな!」

歩兵C「さっすが、ゴリラ軍師様だ!」

歩兵A「ここは俺たち歩兵の晴れ舞台だ! 大暴れしてやろうぜ!」


ガキンッ! ザシュッ! キンッ! ザンッ! キィンッ!
28:2017/04/17(月) 21:40:34.723 ID:7E7190dm0.net
将軍「戦況は?」

兵士「我が軍が優勢です!」

兵士「しかし、兵力は敵の方が上ですので、油断はできません!」

将軍「もう一押し、が欲しいところだな」

将軍「ゴリラ軍師殿、ここで兵の士気をさらに上げたいのですが、どうすべきでしょうか?」

ゴリラ軍師「ウホホホホ」ボコボコボコ

将軍(胸を叩いている……なるほど!)

将軍「後方支援の者は、太鼓を叩いて最前線の兵士たちを鼓舞するのだ!」
29:2017/04/17(月) 21:44:20.727 ID:7E7190dm0.net
ドンドコドンドン! ドコドンドンドン! ドンドンドコドン!


ワァァァ……! ワァァァ……!



兵士「太鼓のおかげで、こちらがみるみる敵軍を追い詰めていきますよ!」

将軍「さすがゴリラ軍師殿だ」

将軍「今日のところはこれで攻撃をしのげた、と見てよさそうだな」


ゴリラ軍師「ウッホウッホ」ボコボコボコ
31:2017/04/17(月) 21:49:28.966 ID:7E7190dm0.net
砦――

ワイワイ…… ガヤガヤ……


将軍「戦いは明日も続く! 今日のところはゆっくり休んでくれ!」

兵士「将軍」

将軍「どうした?」

兵士「先ほどの戦いで、重要な情報を知っていそうな敵軍の兵士を捕虜にしたのですが……」

兵士「どんなに責め立てても何も吐かないのです」

将軍「気になるな……分かった、すぐに向かおう」
32:2017/04/17(月) 21:53:08.045 ID:7E7190dm0.net
捕虜「情報なんて何も知らん! くっ、殺せ!」

兵士「このとおり、口が堅いのです」

将軍「たしかにこいつは、何か重要な情報を持っていそうではあるな」

将軍「ゴリラ軍師殿、いかがいたしましょう?」

ゴリラ軍師「ホホ」

将軍「……頬を叩くんですね! その手があったか!」
33:2017/04/17(月) 21:57:12.016 ID:7E7190dm0.net
将軍「どっちの頬にすべきでしょう?」

ゴリラ軍師「ウホホ」

将軍「右頬ですね! 分かりました!」

将軍「知っていることがあるなら、全て吐いてしまえ!」ベチッ

捕虜「……わ、分かった! 右の頬を叩くのだけはやめてくれ!」

捕虜「全て吐く……全て吐くよ!」


兵士(さすがゴリラ軍師殿、捕虜の拷問もお手の物とは……)
34:2017/04/17(月) 21:58:16.760 ID:iUmKNjPmr.net
さすがゴリラ軍師だぜ!
35:2017/04/17(月) 21:59:22.181 ID:fqUsdrdl0.net
右の頬になにがあるんだよwww
36:2017/04/17(月) 22:01:23.474 ID:7E7190dm0.net
捕虜「実は……我が軍は夜襲作戦を立てている!」

将軍「夜襲だと!?」

兵士「しかし、昼間に退却したばかりだというのに……」

捕虜「昼間、あっさりと撤退したのも戦略のうちなのさ」

捕虜「油断して砦で休んでるあんたらを、全滅させるためのな!」

将軍「…………!」

将軍(危ないところだった……)

将軍(捕虜からこの情報を聞き出せていなければ、この国の命運は尽きていた……)
38:2017/04/17(月) 22:04:14.988 ID:7E7190dm0.net
将軍「大至急、休んでいる者たちを守備につかせろ! 寝てる者は叩き起こせ!」

兵士「ははっ!」

将軍「しかし、これでもまだ敵軍が有利だろう」

将軍「なにか打つ手はないのか……」

ゴリラ軍師「ホウ」

将軍「砲!?」

将軍「そうか、この砦には大砲が一門だけある! あれを使えば……!」

将軍(ゴリラ軍師殿は、私以上に我が軍のことを把握しておられる……!)
42:2017/04/17(月) 22:09:01.834 ID:7E7190dm0.net
兵士「敵軍が夜の闇に紛れて、迫ってきております! かなりの数です!」

将軍「大砲の準備はまだか!?」

砲手「準備できました!」

将軍「よし!」

砲手「しかし、大砲の弾は貴重です。あまり乱発することはできません」

将軍「たしかに……何発撃つかは重要だな」

将軍「何発ぐらい撃つべきでしょうか?」

ゴリラ軍師「ホウホウホウ」

将軍「三発ですね!」
43:2017/04/17(月) 22:11:36.225 ID:7E7190dm0.net
将軍「よぉーし、敵軍をひきつけて、大砲を発射するんだ」

砲手「はいっ!」

将軍「一発目、発射!」

砲手「点火!」

ドゴォン!



ズガァァァァァンッ!!!
44:2017/04/17(月) 22:15:11.663 ID:7E7190dm0.net
敵隊長「なんだなんだ!? 今の轟音は!?」

敵兵「大砲です! 奴ら大砲を撃ってきました!」

敵隊長「夜襲が読まれていたというのか……! いったいどうして……!」


ドゴォォォォォンッ!!!


敵隊長「うわぁぁぁっ!」

敵兵「ひいいいっ!」


バゴォォォォォンッ!!!


敵兵「どんどん撃ってきますよ!」

敵隊長「く、くそっ! このまま連発されたらこっちが危ない! 撤退、撤退だぁっ!」
45:2017/04/17(月) 22:18:37.901 ID:7E7190dm0.net
兵士「夜襲を防ぐことに成功しました!」

将軍「ふう、どうにかなったな」

将軍「しかし、やけにあっさり撤退したものだな」

兵士「立て続けに三発の大砲を放ったことで、こちらが大量に大砲を持っていると勘違いしたもようです」

将軍「なるほど……またしてもゴリラ軍師殿の采配があたったというわけだ」

将軍「だが、まだ勝利が決まったわけではない」

将軍「日が昇れば、再び決戦になるだろう。それが文字通り、勝負を決める戦となる!」

兵士「ははっ!」

ゴリラ軍師「ウッホッホ」
47:2017/04/17(月) 22:23:43.912 ID:7E7190dm0.net
次の日――

兵士「敵軍が再び現れ、全軍で陣形を敷いております」

兵士「昨日のように罠を張っている様子もありません」

将軍「真っ向勝負というわけだな」

将軍「逆にいえば、向こうはそれだけ兵力に自信があるというわけだ……」

将軍(こちらはどういう陣形で臨むべきか……)
50:2017/04/17(月) 22:25:51.151 ID:7E7190dm0.net
将軍「ゴリラ軍師殿、これがいよいよ最後の激突となるでしょう」

ゴリラ軍師「ウホホッ」

将軍「さて……この決戦、我が軍はどういう陣形にすべきでしょう?」

ゴリラ軍師「ホォーゥオー!」

将軍「鳳凰の陣形……!」

将軍(我が国の古の名将が生み出したといわれる、伝説の陣形じゃないか!)
51:2017/04/17(月) 22:30:41.589 ID:/CXVvssVd.net
ゴリラ軍師、実は普通に話せるだろ?
53:2017/04/17(月) 22:31:10.995 ID:7E7190dm0.net
将軍「分かりました……」

将軍「私も将のはしくれ、鳳凰の陣形は知っております」

将軍「すぐさま兵士たちに鳳凰の陣形を取らせましょう!」

ゴリラ軍師「ウホホッ、ウホホホッ」ボコンボコン

将軍(おお……ゴリラ軍師殿が興奮しておられる。この戦……勝てる!)

将軍「全軍に今から私が指示するとおりに陣形を作れ、と伝えろ」

兵士「はっ!」
54:2017/04/17(月) 22:34:22.337 ID:7E7190dm0.net
ワァァァ……! ワァァァ……!


キィンッ! ドシュッ! ギンッ! ザシィッ! キィン!



兵士「隣国軍の方が数が多いにもかかわらず、我が軍が優勢です!」

将軍「さすがは鳳凰の陣形、といったところか」

将軍(伝説とはいえ、今では実用性がない陣形といわれていたが、そんなことはなかった)

将軍(ゴリラ軍師殿はそのことをちゃんと見抜かれていたのだな……)
55:2017/04/17(月) 22:37:15.234 ID:7E7190dm0.net
敵兵「我が軍が劣勢です!」

敵将軍「くっ、計算外だ! まさか奴らがこれほどの底力を持っていたとは……!」

敵将軍「こうなれば……最後の手だ!」

敵将軍「敵の将軍に二人きりで話し合いたい、と書状を送れ!」

敵兵「話し合い? そんなことをしてどうするおつもりですか?」

敵将軍「決まっているだろう?」ニヤ…
56:2017/04/17(月) 22:37:16.109 ID:q/fcZXni0.net
流石ゴリラ軍師
57:2017/04/17(月) 22:39:15.007 ID:/CXVvssVd.net
ゴリラ軍師が直接戦ったほうが強いと思う(
59:2017/04/17(月) 22:40:16.183 ID:7E7190dm0.net
敵将軍「やぁ、将軍」ニコニコ

将軍「…………」

敵将軍「このたびの戦、我が国が負けを認めよう」

敵将軍「侵略行為についても反省している」

敵将軍「というわけで、和平の条件について貴公と話し合いたい。さ、こちらへ来てくれ!」

将軍「……いかがでしょう?」

ゴリラ軍師「ウホ」

将軍「やはり嘘ですか」

敵将軍「なんで分かったの!?」
61:2017/04/17(月) 22:45:08.336 ID:7E7190dm0.net
敵将軍「ち、ちくしょう! のこのこ近づいてきたところを短剣で刺してやろうと思ったのに!」

将軍「この卑怯者がぁっ!」ブンッ


ザシュッ!


敵将軍「ぎゃはぁぁぁ……っ!」ドザッ
62:2017/04/17(月) 22:48:21.797 ID:7E7190dm0.net
敵隊長「将軍の騙し討ち作戦が失敗したぞ! 逃げろぉっ!」


ワァァァ……! ワァァァ……!





兵士「隣国軍が撤退していきます!」

将軍「うむ、この戦……我が軍の勝利だ!」


ワアァァァァァ……!
63:2017/04/17(月) 22:49:38.004 ID:NAmwef0Mr.net
勝どきをあげろおおおおおおおお
64:2017/04/17(月) 22:52:08.668 ID:7E7190dm0.net
将軍「隣国軍を撃退できたのは、全てあなたのおかげです」

将軍「ありがとう、ゴリラ軍師殿!」サッ

ゴリラ軍師「ウホホホッ」ガシッ

将軍「いだだだだだだだだっ!」ミシミシミシ…

ゴリラ軍師「ホッ」パッ

将軍「痛かった……!」

兵士「だ、大丈夫ですか!」

将軍(私も握力には自信があるのに、危うく握手した手を潰されるところだった……)

将軍(知略もパワーも備えた軍師……それがゴリラ軍師殿なのだな)
65:2017/04/17(月) 22:56:01.852 ID:7E7190dm0.net
城――

国王「ゴリラ軍師殿、我が国存亡の危機を救っていただき、本当に感謝しています」

国王「あなたのために山ほどの金銀財宝を用意しました。どうか森へお持ち帰り下さい」

ゴリラ軍師「ウホホホッ」パシッ

ゴリラ軍師「ウッホウッホウッホ」モグモグ…

国王「…………」

国王(金銀財宝には目もくれず、バナナ一本だけ持って森へ帰ってしまった……)

国王(なんと欲のないお方よ……)

国王(これからもどうか我が国の平和を守って欲しい……森の賢者、ゴリラ軍師!)





― 完 ―
68:2017/04/17(月) 23:02:30.690 ID:+BgKZwCur.net
とてもよかった
70:2017/04/17(月) 23:05:40.283 ID:SqXgDprJ0.net
ワロタ
72:2017/04/17(月) 23:11:53.962 ID:K7DOKYrx0.net
おもしろかった