1: 2008/11/19(水) 18:31:50.10 ID:4O+rExSGO
奴隷「あ…あの…」

商人「ん?どうしたの?」

奴隷「私、やっぱり売られてしまうんでしょうか…」

商人「うん、とびっきり良い値段で売ってあげるよ」

奴隷「そうですか…」
はたらく魔王さま!(21) (電撃コミックス)
6: 2008/11/19(水) 18:34:45.19 ID:4O+rExSGO
商人「売れないなぁ…」

奴隷「すいません…」

商人「こんなに可愛いのに何でだろうね」

奴隷「か…可愛い?」

商人「うん、とっても可愛いよ。あっ、そうだ。
新しい服を買ってあげよう。きっとすぐに買い手が見つかるよ」

奴隷(…可愛い)

10: 2008/11/19(水) 18:38:06.23 ID:GlIlucFGO
400円で買うわ

11: 2008/11/19(水) 18:38:11.02 ID:4O+rExSGO
商人「うん、とっても似合ってるよ」

奴隷「あ…ありがとうございます」

商人「お礼なんていいよ。
君を売るために創意工夫してるだけなんだから」

奴隷「はぁ…」

商人「それにしてもここまで可愛いと奴隷階級だってのが嘘みたいだね。
もしかして元は貴族のお嬢様とか?」

奴隷「………」

12: 2008/11/19(水) 18:42:24.20 ID:4O+rExSGO
商人「え?もしかして本当にそうなの?
だとしたらかなりのレアモノだよ。
さすが僕だ。貴族のお嬢様を掘り当てただなんてさ」

奴隷「あ…あの…」

商人「どうしましたお嬢様?」

奴隷「わ…私…貴族様なんかじゃありません…
ただの貧しい家の生まれなんです…」

商人「……え?そうなの?」

奴隷「…すいません」

商人「あ…いいよ…勝手に僕が先走っちゃっただけだし…」

奴隷「すいません…ただの奴隷で本当にすいません…」

18: 2008/11/19(水) 18:47:25.18 ID:4O+rExSGO
商人「…はぁ、今日も売れなかった」

奴隷「あの…何人かはお客様が来ていましたよね?」

商人「ああ、あいつらは駄目だな」

奴隷「なんでですか?」

商人「あいつらはただ単に君で商売をしたいだけなんだよ」

奴隷「…商売?商人さんみたいに私を売るんですか?」

商人「ちょっと違うけどね。
僕としては商品を大切にしてくれる人に売りたいんだよ」

奴隷「…商人さん」

商人「それにさ、なんだよあのはした金。
あんな額で買おうだなんて商人を馬鹿にしてるとしか思えないよ」

奴隷「………商人さん」

24: 2008/11/19(水) 18:51:16.90 ID:4O+rExSGO
奴隷「………」グゥー

商人「お腹減ったの?」

奴隷「あ、いえ、大丈夫です。
空腹にはなれてますから」

商人「駄目だよ。商品には常に最高の状態でいてもらわないとね。
ちゃんと栄養のあるもの食べてもらうよ」

奴隷「ありがとうございます」

商人「だから、お礼はいらないんだって」

27: 2008/11/19(水) 18:56:48.56 ID:4O+rExSGO
奴隷「商人さんには本当に感謝しています」

商人「なんで?うらまれる覚えはあっても、
感謝されることをした覚えはないんだけど」

奴隷「商人さんは、空腹で、
死にそうになっていた私を助けていただいただけでなく、
こんな綺麗なお洋服まで着させていただいて…
それだけじゃありません。いくら感謝しても足りないくらいです」

商人「君は馬鹿だなぁ…
僕は君を高い値段で売りたいだけなんだよ。
君を見つけたときも、
良い商品を見つけたくらいにしか思わなかったしね」

奴隷「…本当にそうなんですか?」

商人「本当にそうなんだよ」

31: 2008/11/19(水) 19:01:47.03 ID:4O+rExSGO
奴隷「こほっ…こほっ…」

商人「風邪かい?」

奴隷「あ、大丈夫です」

商人「今日はもう宿をとって休もうか」

奴隷「本当に大丈夫です。このくらい」

商人「はぁ…まったく君は…
商売ってものがわかってないねぇ…」

奴隷「はぁ…」

商人「じゃあ…例えば…
君は病気の牛と元気な牛どっちがほしい?」

奴隷「…どっちも欲しいです」

商人「…これだから貧乏人は」

44: 2008/11/19(水) 19:21:48.16 ID:4O+rExSGO
商人「そろそろ暗くなるころかな?
悪いけど今日は野宿になりそうだな」

奴隷「そうですか」

商人「僕としたことが…商人を野ざらしにしてしまうなんて…」

奴隷「全然かまいませんよ。なれてますから」

商人「そういうわけにはいかないんだ。
僕の商人としてのプライドが…」

盗賊「おい、お前商人だな」

商人「ん?はい、いかにも、そういうあなたはお客さんですか?」

46: 2008/11/19(水) 19:26:10.57 ID:4O+rExSGO
商人「何かご希望の品でもありますか?
無い場合は仕入れますけど」

盗賊「もってる物を全てもらおうか。
ああ、あとその女もおいてけ」

商人「お客さん、太っ腹ですねぇ、
いまお値段を計算しますから待ってて下さいね」

盗賊「俺は買うなんて言ってねえぞ」

商人「………は?」

48: 2008/11/19(水) 19:29:14.34 ID:4O+rExSGO
盗賊「おい、野郎ども」

手下A「へい頭」

手下B「なんでしょう?」

商人「もしかしてあなた達は夜盗かなんかでしょうか?」

盗賊「よくわかったな」

商人「つまり、客ではないんですね」

盗賊「当たり前じゃねえか阿呆」

ドカッ

手下A「へぶっ」

盗賊「な……」

49: 2008/11/19(水) 19:30:19.66 ID:Lg+reegJ0
商人は風来のシレンの店主だったようです

52: 2008/11/19(水) 19:34:01.71 ID:4O+rExSGO
商人「まったく…商人から商品を奪おうだなんて愚か者がまだいたとは…」

盗賊「な…なんだお前は…」

商人「商人だよ商人。
商人ってのはな、商品を自分の命にかえても守る職業なんだよ。
お前らごときに大切な商品奪われてたまるか」

盗賊「い…いけ!おまえら!」

手下B「わかりやした」チャキッ

商人「…なんだ?そのサビだらけの剣は。
僕が値段をつけたとしたらひのきの棒以下の値段だな」

53: 2008/11/19(水) 19:35:38.37 ID:VU3VMYns0
商人つええww

54: 2008/11/19(水) 19:38:41.10 ID:rAFOvm+rO
後の風来のシレンの店主である

56: 2008/11/19(水) 19:39:22.53 ID:4O+rExSGO
手下B「…う…あ…」バタッ

盗賊「な…全員やられただと…」

商人「ひのきの棒以下の武器に負けるわけないだろ。
それに引き換え、僕の武器は凄いぞ」

盗賊「武器ってそのわけのわからねぇもので…」

商人「かつて、魔王と呼ばれるものを倒した勇者一行に、
商人がいたといわれている…」

盗賊「…突然なにを」

商人「これはな、その商人が使っていたと言われる伝説の武…
いや、たしかに武器だな。商人にとってそろばんは立派な武器さ」

57: 2008/11/19(水) 19:40:44.81 ID:VU3VMYns0
トwwwルwwwネwwwコwwww

58: 2008/11/19(水) 19:41:16.66 ID:awGroXQS0
トルネコさんパネェwwwwwwwww

60: 2008/11/19(水) 19:42:59.80 ID:4O+rExSGO
盗賊「くっ…」ガバッ

奴隷「きゃっ…」

商人「しまった…」

盗賊「動くなっ!この女がどうなってもいいのか?」

商人「…………」

盗賊「ははは、よっぽど大切な女みたいだな」

商人「……その汚い手を離せ、価値が下がる」

63: 2008/11/19(水) 19:46:20.58 ID:4O+rExSGO
盗賊「お…おい…近づくなって言ってんだろ!」

商人「少しでも怪我させてみろ……」

盗賊「こ、このナイフが見えないのか!」

商人「……ばらして売るぞ」

盗賊「ひ、ひぃぃいいいい!」

ドカッ

69: 2008/11/19(水) 19:49:44.96 ID:4O+rExSGO
商人「さて…じゃあ野宿の準備でもするかね」

奴隷「あ…あの…さっきの人達は?」

商人「捨てた」

奴隷「…捨てた?」

商人「いや、あんなの一文の価値にもなりそうもないからね」

奴隷「はぁ…」

商人「それに引き換え君は凄いよ。
同じ種類の商品とは思えないね」

72: 2008/11/19(水) 19:56:30.37 ID:4O+rExSGO
商人「ん?寒いの?」

奴隷「い…いえ…」ガクガクブルブル

ペタッ

商人「んー、熱は無いみたいだけど…
一応僕のぶんの布団もあげるね」

奴隷「い…いえ…」

商人「君に拒否権はないからね」

奴隷「ほ、本当に寒くなんてないんです!」

商人「じゃあどうして震えてるの?」

奴隷「その…安心したら急に震えが…」

商人「…まいったなぁ。
心に傷でもできたら価値が下がっちゃうじゃないか…」

75: 2008/11/19(水) 19:59:25.37 ID:4O+rExSGO
ナデナデ

商人「大丈夫だよ。君の安全は僕が守るから」

奴隷「………」

商人「僕が信用できないかい?」

奴隷「そ、そんなことありません!」

商人「そうかい?ところで震えはもう大丈夫かい?」

奴隷「あ…は…はい」

商人「ふふっ、良かった」

78: 2008/11/19(水) 20:07:34.95 ID:4O+rExSGO
商人「うーん…しかし、どうみても育ちの良さそうなお嬢様だよなぁ」

奴隷「あ…あの…」

商人「なんだい?」

奴隷「私がお嬢様のふりをしたら、
買い手が見つかるのではないでしょうか…」

商人「あーダメダメ」

奴隷「どうしてですか?」

商人「商品の偽装だなんて僕のプライドが許さない。それに」

奴隷「それに?」

商人「君はそこらの貴族の豚どもより、ずっと価値のある商品さ」

79: 2008/11/19(水) 20:10:43.10 ID:4O+rExSGO
奴隷「私のお値段ってどのくらいなのでしょうか?」

商人「んー、少なく見積もっても…」パチパチ

商人「これくらいかな?」

奴隷「あ…あの…」

商人「なに?」

奴隷「それっていくらなんですか?」

商人「あ…そろばんがわからないか、まずこれがね…」

81: 2008/11/19(水) 20:13:32.36 ID:4O+rExSGO
商人「わかった?そろばんはこうやって見るんだ」

奴隷「えっと…これが1だから…10、100………えぇ!?」

商人「どうしたの?」

奴隷「だってこんなお値段…」

商人「僕は目利きには自信があるからね。
これでも少ないくらいなんだよ」

84: 2008/11/19(水) 20:23:20.54 ID:4O+rExSGO
奴隷「こ…こんなお値段で私が売れるわけありません…」

商人「いいや、売れるね。これ以上は何があってもまけないよ」

奴隷(…こんなお値段じゃ絶対に売れないな)

商人「なんで嬉しそうなんだい?」

奴隷「いえ…なんでもないです」


86: 2008/11/19(水) 20:26:37.42 ID:4O+rExSGO
奴隷「私が売れなかったらその後はどうなるんでしょうか?」

商人「売れないなんてことはないさ。
君は魅力的な商品だからね」

奴隷「も…もしもです…」

商人「そんなことないと思うけど…
まぁ、売れるまでは面倒みるよ」

奴隷「そうですか」

商人「だから、なんで嬉しそうなの?」

91: 2008/11/19(水) 20:38:13.38 ID:4O+rExSGO
男「安いですねぇ、街の商店よりずっと安いですよ」

商人「品質も保証しますよ」

男「決めました買います」


奴隷「さっきの人は何を買われていったのですか?」

商人「剣」

奴隷「そんなものを買うってことは兵士さんですか?」

商人「兵には武器は支給されるからね。
違うんじゃないかな?」

奴隷「じゃあ勇者様ですか?」

商人「はっはっは、もしかしたらそうかもね」

111: 2008/11/19(水) 21:47:32.41 ID:4O+rExSGO
商人「さて、仕入れにでもいくかな」

奴隷「仕入れですか?」

商人「まぁ、商品が無ければ商いなんてできないからね」

奴隷「はぁ…」

商人「君が売れればいいんだけど」

奴隷「…すいません」

商人「君が謝る必要はないんだよ。
僕の商人としての腕が悪いだけなんだから」

116: 2008/11/19(水) 21:53:41.65 ID:4O+rExSGO
男「いやぁ、いつきても安いですね」

商人「商品のあるべき値段で売ってるだけですから」

男「もう装備いっしきをここで揃えちゃいましたよ」

商人「ごひいきありがとうございます」


奴隷「あ…あの…」

商人「ん?」

奴隷「他の商品は安いのになんで私だけ高いんですか?」

商人「別に安いわけじゃないんだよ。
僕の鑑定眼で値段を決めているだけだから」

奴隷「でも…これ金ですよね?
これよりもずっと高いだなんて……」

商人「僕の目利きは間違ってないと思うけどなぁ」

121: 2008/11/19(水) 22:03:01.93 ID:4O+rExSGO
貴族「調教とかはしてないのかね?」

商人「はい、そのようなことはしておりません」

貴族「ふん、つまらん」



商人「…なにがつまらんだ。
調教なんかしても価値が下がるだけじゃないか。
やりたいだけなら商売女でも買え豚が…」

奴隷「商売女って何ですか?」

商人「えっと…女の商人だよ…」

128: 2008/11/19(水) 22:15:27.36 ID:4O+rExSGO
奴隷「あの…」

商人「どうしたのかな?」

奴隷「私…本当に何もしてないので、料理くらいはさせてもらえないでしょうか?」

商人「そんなのいいよ。君は商品なんだから」

奴隷「でも…でも…」

商人「…うーん、まぁ確かに料理くらいできたほうが商品価値も上がるし」

奴隷「が、頑張ります!」

131: 2008/11/19(水) 22:19:30.14 ID:4O+rExSGO
商人「あ…包丁気をつけてね。あと火も」

奴隷「大丈夫です」サクッ

商人「あーっ!?」

奴隷「ちょっと切っちゃっただけですから」

商人「ま、待っててね!今一番良い薬出すから」

奴隷「あ…あの…本当に大丈夫ですよ?」

商人「商品価値がぁ!商品価値がぁ!」アタフタ

138: 2008/11/19(水) 22:31:49.54 ID:4O+rExSGO
貴族「…で、生娘かね?」



商人「なーにーが、生娘かね?だよ。
そんなもんで価値観決めてんじゃねえよ。
だいたい何するか魂胆見え見えなんだよ。
誰がお前なんかに売るか」

奴隷「生娘って何ですか?」

奴隷「男性経験があるかどうかってこと」

奴隷「男性経験?どういう意味ですか?」

商人「…なるほど、値段にいろつけとかないとな」

148: 2008/11/19(水) 23:09:23.93 ID:4O+rExSGO
奴隷「竜の牙とかはどうやって仕入れてるんですか?」

商人「そりゃあ、竜から抜き取ってだよ」

奴隷「りゅ…竜ですか…」

商人「ああ、死んだ竜からだからね」

奴隷「なんだ…そうだったんですか」

商人「でも竜の墓場って寒くてあんまり行きたくないんだよね」

150: 2008/11/19(水) 23:13:31.24 ID:4O+rExSGO
奴隷「これって香水ですよね」

商人「うん」

奴隷「私もつけてみていいですか?」

商人「あーダメダメ、商品だから」

奴隷「すいません…忘れていました」

商人「香水なんてかけたら君の価値が下がっちゃうからね」

154: 2008/11/19(水) 23:24:32.58 ID:4O+rExSGO
商人「お客さん、お目が高いねぇ。
これはかの有名な魔王城より手に入れた伝説の武具ですよ」

男「え?…魔王城?」

商人「嘘じゃないですよ。
実際に僕がとってきたんですから」

男「…ちょっと試してみていいですか?」

商人「論より証拠ですね。どうぞ」

スパッ、ズドンッ

男「…すごい、岩が真っ二つに」

商人「お客さんのたち筋もなかなかですよ」



奴隷「あの人…本当に勇者様なんじゃないでしょうか?」

商人「それなら尚更良いじゃないか。
こんな最初のほうから伝説武具が手に入って大助かりだろうしさ」

187: 2008/11/20(木) 06:25:10.12 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「う…うーん…あ、おはようございます」

商人「おはよう、ぐっすり眠れた?」

奴隷「はい」

商人「うん、いいねぇ。
ぐっすり眠って健康にすくすく育つってね」

奴隷「が、がんばります」

商人「よし、じゃあ朝ご飯にしようか」

243: 2008/11/20(木) 18:31:52.98 ID:X1ZqHyFWO
商人「なんで君はそんなに生き生きしてるの?」

奴隷「はい?」

商人「普通奴隷とかいったら死んだ魚のような目をしてるものだよ。
いや、生き生きとしてて商品価値に貢献してて良いところなんだけどね」

奴隷「だ…だって…毎日が楽しいんです…」

商人「楽しい?」

奴隷「はい」

商人「…楽しいかぁ」

247: 2008/11/20(木) 18:36:38.53 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「なにを探してるんですか?」

商人「薬草、あと茸かな」

奴隷「茸ですか?」

商人「うん、食用とか薬になるものとか」

奴隷「そうなんですか」

商人「毒のあるものもあるから気をつけたほうがいいよ」

249: 2008/11/20(木) 18:48:32.51 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「これは食べれますか?」

商人「それは駄目、覚醒作用があるからね」

奴隷「覚醒?」

商人「加工したら簡単に麻薬ができちゃうんだ」

奴隷「は…はぁ…」

商人「まぁ、君は知らなくていいこと思うよ」

278: 2008/11/20(木) 22:02:18.45 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「商人さん、この瓶は何ですか?」

商人「お酒だよ。良いのが安く手に入ったんだよね」

奴隷「お酒ですか」

商人「ちょっと飲んでみるかい?
試飲用に貰ったのが少しのこってるんだけど」

奴隷「あ…いえ…私お酒飲んだことないんで」

商人「少量のお酒は健康にも良いからね。
少し飲んでみなよ」

奴隷「じゃあ少しだけ…」

30分後

奴隷「うー…ひっく…商人さぁん…」

商人「…一杯だけしか飲ませてないはずなんだけどなぁ」

279: 2008/11/20(木) 22:03:12.74 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「商人さぁん…商人さぁん…」

商人「大丈夫かい?気持ち悪いんなら吐いたほうが楽だよ」

奴隷「商人さん…本当にありがとうございます…」

商人「いや…だから、お礼はいいって。
僕は君を売りたいだけなんだから」

奴隷「…ぐすっ…う…うぇ…うぇえええ」

商人「ど、どうしたの?」

奴隷「ひっ、ひっく…私のこと売らないで下さい…うぇえええん」

商人「そういうわけには…」

奴隷「ぐすっ、えっぐ…嫌です…
ずっと商人さんと一緒にいたいです…嫌なんです…」

商人「…………」

奴隷「お料理だって…洗濯だってします…
お仕事だっておぼえます…だから…だから…えっぐ…」

商人「…今日はもう寝ようか」

281: 2008/11/20(木) 22:05:01.39 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「すー…すー…」

商人「僕としたことが…」

商人「…あやうく流されてしまうところだった」

商人「僕は商人だ。物を売るのが仕事だ」

商人「彼女は…商品なんだ…」

284: 2008/11/20(木) 22:16:45.20 ID:X1ZqHyFWO
商人「さぁ、起きて」

奴隷「う…うーん…」

商人「今日は街をまわってみようと思うんだけど」

奴隷「街を…ですか?お仕事でしょうか?」

商人「仕事ではないんだけどな」

奴隷「はぁ…」

285: 2008/11/20(木) 22:18:58.83 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「あ…あの…」

商人「お腹すいてる?」

奴隷「え?あ…はい」

商人「じゃあ、どこかで食べていこうか」

286: 2008/11/20(木) 22:20:39.71 ID:X1ZqHyFWO
商人「美味しいかい?」

奴隷「あ…はい」

商人「そうか、それはよかった」

奴隷「………あの」

商人「他に食べたいものはないかい?」

奴隷「あ…いえ…」

289: 2008/11/20(木) 22:29:46.36 ID:X1ZqHyFWO
商人「露店商がこんなに…僕もうかうかしていられないな」

奴隷「綺麗なものがいっぱいですね」

商人「何か欲しいものがあるのかい?」

奴隷「あ、別に欲しいわけじゃ…」

商人「じゃあ僕が選ぶよ」

290: 2008/11/20(木) 22:31:28.90 ID:X1ZqHyFWO
商人「このペンダントなんてどうだい?」

奴隷「素敵だと思います」

商人「よしっ、じゃあこれに決めた」


露店商「まいどありー」

292: 2008/11/20(木) 22:33:55.48 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「ふっふふーん♪」

商人「ずいぶんとご機嫌だね」

奴隷「だって、商人さんから"プレゼント"として貰った初めての物ですから」

商人「ああー…確かにプレゼントはあげてなかったかな」

奴隷「絶対大切にしますからね」

298: 2008/11/20(木) 22:42:30.56 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「今日はありがとうございました」

商人「そうかい、楽しかった?」

奴隷「はい、とっても」

商人「そうか良かったね。
これからは何時でも好きなときにこれるんだもん」

奴隷「は…はい?」

商人「君の買い手が見つかったんだよ」

305: 2008/11/20(木) 22:45:36.68 ID:yMCMon/MO
うわぁぁぁぁあああ!!!!

311: 2008/11/20(木) 22:47:10.12 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「あ…あの…それって…」

商人「安心してよ、信頼できるお客さんだから」

奴隷「………」

商人「お得意様の貴族の人なんだけどさ、
早くにお子さんを亡くしたらしくて、
君の話をしたら是非会ってみたいって」

奴隷「………」

商人「そこからは僕の話術のたまものなんだけど、
君を養子にほしいとさ」

奴隷「………」

商人「いやぁ、ようやく君を売れたよ。本当によかった」

奴隷「…いままで…ありがとうございました」

商人「お礼はいらないって言ってるだろ」

318: 2008/11/20(木) 22:52:00.07 ID:X1ZqHyFWO
貴族「話で聞いたよりずっと素敵なお嬢さんじゃないか」

奥様「そうですねぇ」

奴隷「………」

商人「ほらほら笑顔笑顔、君の一番の魅力はその生き生きとした笑顔なんだから」

奴隷「は…はい…」

商人「では、僕はこれで…」

奴隷「まっ…」

商人「お幸せにね」

奴隷「………」

325: 2008/11/20(木) 22:55:35.20 ID:X1ZqHyFWO
貴族「さぁ、ここが今日から君の家だよ」

奴隷「はい…」

奥様「ふふ、緊張してるのかしら」

奴隷「……はい」


貴族「……なぁおまえ」

奥様「…はい」

336: 2008/11/20(木) 23:01:44.57 ID:X1ZqHyFWO
貴族「君がここの家の子になったのは事実なんだ。
もうあの商人の商品ではないんだよ」

奴隷「…はい」

貴族「うむ、ときにお前、我が家の家訓は何だったかな?」

奥様「可愛い子には旅をさせろです」

貴族「そうだな、我が家の子になってさっそくで悪いが、
旅に出てくれないかな?」

奴隷「た…旅?」

貴族「うむ、貴族たるもの世の中の情勢を知っていなければならない。
それも庶民の目の位置でだ」

奥様「目的地なんてのは別にないのよ。
自分の行きたいところを自分の足でいくの」

345: 2008/11/20(木) 23:06:17.21 ID:X1ZqHyFWO
貴族「さて、では早速準備を」

奴隷「だ、大丈夫です!」

貴族「そうだったな。
君の荷物はまだ開いてなかった」

奥様「ところで、全然関係ない話になりますけど、
あの商人のかたは今頃どこにいるのでしょうかね?」

貴族「たしか、今日街を出ると言ってだが」

奴隷「!?」

奥様「でも、今ならまだ追い付くかもしれませんね」

貴族「はっはっは、追い付いてどうするんだ」

奴隷「あ、あの…私、もう行きます!」

351: 2008/11/20(木) 23:08:21.58 ID:/tIat6VfO
いくらなんでもいい人過ぎるwwww

だがそこがいい!

354: 2008/11/20(木) 23:10:12.08 ID:X1ZqHyFWO
貴族「気をつけて行ってきなさい」

奥様「ここはあなたの家なんですからね。
いつでも帰っていらっしゃい」

奴隷「は、はいっ!…では行ってきます!
おっ、お父さん!お母さん!」



奥様「行ってしまいましたね」

貴族「心配することはないさ。
なんたって私達の娘なんだからな」

奥様「ふふふっ、それもそうですね」

362: 2008/11/20(木) 23:15:04.67 ID:X1ZqHyFWO
商人「さてと…この街ともおさらばだな…」

商人「なに、いつだって来ようと思えばこれるんだ…」

商人「いや、そもそも僕は何を考えてるんだ。
彼女はただの商品、そしてそれを売っただけの話だ」


奴隷「しょ、しょうにんさーん!」

商人「…幻聴まで聞こえてくる始末だ。まったく…」

奴隷「商人さーん!待って下さーい!」

商人「幻聴じゃ…ない?」

366: 2008/11/20(木) 23:17:06.46 ID:VkA5EZJU0
貴族はいったい何者・・・?

369: 2008/11/20(木) 23:18:49.21 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「はぁ…はぁ…やっと追い付きました…」

商人「な…なんで君が…君はあの家の子になったはずだろ」

奴隷「はい、私はあの家の子供です。
それは今も変わりません」

商人「じゃあなんで…」

奴隷「あの家の家訓を知ってますか?」

商人「い…いや…」

奴隷「かわいい子には旅をさせろ、らしいです」

374: 2008/11/20(木) 23:22:32.72 ID:X1ZqHyFWO
奴隷「貴族として、広い視野を身につけるため。
私は旅をしてるんです」

商人「あ…あの夫婦…」

奴隷「商人さんにお願いがあります」

商人「お…お願い?」

奴隷「お願いします!私を弟子にしてください!」

商人「なっ…」

奴隷「今まで、商人さんと一緒に行動してきて、
いろんなところをまわりました。
商人さんについて行けば、世界中をみてまわれると思うんです」

379: 2008/11/20(木) 23:25:48.42 ID:X1ZqHyFWO
商人「……もう君は商品じゃないんだよ」

奴隷「お願いします!」

商人「だから…もう今までみたいな特別扱いはしないからね」

奴隷「そ、それじゃあ!」

商人「ほらっ、ぼさっとしない。
今日中に隣町までいくんだからね」

奴隷「は…はいっ!」

385: 2008/11/20(木) 23:31:15.98 ID:X1ZqHyFWO
商人「弟子ってからには雑用はこなしてもらうよ」

奴隷「はい!」

商人「あと、僕のことは師匠て呼びなよ。弟子なんだから」

奴隷「はい!師匠!」


貴族「にしても、あの商人ずいぶんとそそっかしいな」

奥様「はい、代金を受け取るのを忘れるなんて」

貴族「まったく、それで娘さんを返して下さいなんて言われても、
絶対に返してやらないからな」

奥様「うふふっ、それはいったい、どういう意味なのかしらね」

390: 2008/11/20(木) 23:34:59.03 ID:X1ZqHyFWO
その後も、おかしな商人の師弟の珍道中は続きますが、それはまた別のお話。

これにて、商人と奴隷のお話は幕を閉じさせていただきます。

なんだか前回と幕引きが似てしまいましたがご勘弁を

では皆さんまた会う日まで



391: 2008/11/20(木) 23:35:23.25 ID:OYpc7qhV0
お疲れ様でした。
面白かったよ。

393: 2008/11/20(木) 23:36:04.09 ID:VkA5EZJU0
おつー

398: 2008/11/20(木) 23:36:41.35 ID:oPH0m+pe0
面白かった、おつ

引用元: 商人「奴隷ー、奴隷はいらんかねー」