1:2016/06/30(木) 00:05:34.883 ID:jQ9pqVuM0.net
駅前――



チラシ配り「お願いしまーす」

チラシ配り「よろしくお願いしまーす」




友人「お、チラシ配りやってる。ああいうバイトって、時給どんぐらいなんだろーな?」

友人「単純で楽そうに見えるけど立ち仕事だし案外大変かも……って、聞いてるか?」

男「……」

男「俺さ……」

男「チラシ配ってる人にいつもスルーされるんだよな」
2:2016/06/30(木) 00:06:21.123 ID:BKgRe8YP0.net
存在感がない
3:2016/06/30(木) 00:09:07.386 ID:jQ9pqVuM0.net
友人「スルー?」

男「近くを通りがかっても、チラシをもらえないんだよ」

友人「別によくね? スルーされたって」

友人「むしろ、『いりません』って断る手間が省けていいじゃん。お得じゃん」

男「いや……よくない!」

友人「なんで? そんなにチラシ欲しいのかよ。どうせゴミになるだけだぜ?」

男「チラシが欲しいってわけじゃないんだけど……なんつーか、迫害されてる気分になるんだよな」

友人「迫害って……んな大げさな」

男「いや、この気持ちは実際やられてみなきゃ絶対分かんねーよ」
4:2016/06/30(木) 00:10:39.245 ID:uCFU4ksO0.net
花粉症俺
ティッシュ配り「ティッシュどうぞー^^」
俺「できればたくさんください」
6:2016/06/30(木) 00:12:09.637 ID:jQ9pqVuM0.net
男「今から俺、あのチラシ配りの近くに寄ってくる」

男「絶対スルーされるから、よく見てろよ」

友人「お、おう」

友人(あのチラシ配り、男にもチラシ配ってたし、少なくとも女向け商品のチラシでしたってオチはないはず)

友人(どうなることやら……)
7:2016/06/30(木) 00:14:06.704 ID:jQ9pqVuM0.net
男「……」スタスタ

チラシ配り「……」





友人(チラシ配りの『射程圏内』に入ったッ!)
8:2016/06/30(木) 00:17:11.720 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「……」

男「……」スタスタ



男「――な?」

友人「ホントだ! スルーされてた! あっちも絶対お前に気づいてたのに!」

男「ったく、いつもこうなんだぜ、俺」

友人「こんなことあるんだなぁ、不思議なもんだ」
9:2016/06/30(木) 00:19:07.743 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「……」チラッ


男「!」


チラシ配り「……」ニヤッ


男「!!!」
12:2016/06/30(木) 00:22:17.530 ID:jQ9pqVuM0.net
男「見たか!?」

友人「え、なにを?」

男「今あいつ……露骨に俺を見て笑いやがった!」

友人「え、マジで」

男「許せねェ~! こいつはマジ許せねぇよなァ~!」

男「だったら今度はこっちも露骨に手を差し出してやる! それならさすがにスルーできねえだろ!」
14:2016/06/30(木) 00:26:59.899 ID:jQ9pqVuM0.net
男「……」スタスタ

男「……」サッ

チラシ配り「……」

男「……」スタスタ



男「――見てた?」

友人「あいつ、お前が手を伸ばしたのに、完全にスルーしてたな……」

友人「たしかにここまでくると、一種の『いじめ』にも見えなくもないな」

男「くっそォ~~~~~ッ!」

男「だったらァ……あの野郎から『チラシ』をムリヤリ『奪って』やるぜェーッ!」
16:2016/06/30(木) 00:29:34.763 ID:jQ9pqVuM0.net
男「行くぜッ!」ダッ



チラシ配り「……」

男「もらったァァァァァッ!!!」グオオッ

シュンッ!

男「消えたッ!?」
17:2016/06/30(木) 00:33:09.193 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「……」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



男「こ、こいつッ! いつの間に俺の『後ろ』へッ!?」

チラシ配り「……」クイックイッ

男「ヤ……ヤロォォォ―――――ッ!!!」
18:2016/06/30(木) 00:36:59.150 ID:jQ9pqVuM0.net
男「オラァッ!」ブオッ

チラシ配り「……」シュンッ

男「ダリャアッ!」ブオンッ

チラシ配り「……」シュンッ

男「くそっ、ダラァッ!」ブオッ

チラシ配り「……」シュンッ





友人「あのチラシ配り……なんて『フットワーク』だッ! あいつ、完全に翻弄されているッ!」
19:2016/06/30(木) 00:41:01.650 ID:jQ9pqVuM0.net
男「ハァ、ハァ、ハァ……くそっ!」

チラシ配り「オレって優しいからよォ~……今のうちに『忠告』しとくぜェ~……」

男「!」

チラシ配り「てめーは一生かかっても、オレからチラシを奪うこたぁできねーよ」

男「ンだと、コラァ!」
20:2016/06/30(木) 00:44:41.798 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「てめーの動きはよォ、『スロー』すぎんだよォ~~~~~」

男「なにィ!?」

チラシ配り「いっとくがオレは『100メートル11秒』の俊足だ……『反復横跳び』も自信がある」

男(俺は……高校時代『14秒』だった……今はもっと遅くなってるはず……!)

チラシ配り「ケケケ、理解したか? テメーがオレからチラシを奪うことは絶対に『不可能』だってことがよォーッ!」

男「ぬかせェーッ!!!」
21:2016/06/30(木) 00:48:34.850 ID:jQ9pqVuM0.net
男「うおおおおおおおおおッ!」ダッ

チラシ配り「どうぞ」サッ

男「待てコラァーッ!」ダッ

チラシ配り「よろしくお願いしまーす」サッ

男「くそォッ!」ダッ

チラシ配り「お願いしまーす」サッ





友人(あのチラシ配り……あいつの突撃を『闘牛士』みてーにかわしながら、他の通行人にチラシ配ってやがるッ!)
22:2016/06/30(木) 00:51:26.817 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「50枚……」サッサッサッ

チラシ配り「40枚……」サッサッサッ

チラシ配り「30枚……」サッサッサッ



友人(チラシが……みるみる減っていくッ!)

友人(さっきまでヤツの手には『ハードカバーの小説本』ぐらいのチラシがあったのに)

友人(今や『薄っぺらな大学ノート』ぐれーの厚さしか残っちゃいねェーッ!)
23:2016/06/30(木) 00:55:26.944 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「クーックックックッ! たとえるなら『ヒラリマント持ったドラえもん』っつゥー気分だぜ!」

チラシ配り「今や我が手に残ったチラシは『残り10枚』ッ!」

チラシ配り「こっからは一枚一枚数えながら配っていくかァ~! 年越しのカウントダウンするみてーによォー!」

男「ナメやがってェ~~~~~ッ!」

チラシ配り「残り9枚ッ! 8枚ッ! ななまァ~いッ! ろくまァ~~~~いッ!」

男「ちっ、ちくしょォ―――――ッ!」
24:2016/06/30(木) 00:58:19.595 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「ごまァ~~~~~いッ!」

チラシ配り「よんまァ~~~~~いッ!」

チラシ配り「さんんんまァ~~~~~~~いッ!」

チラシ配り「にまァァァ~~~~~~~~~いィッ!」

チラシ配り「ラスト一枚ッ! こいつを次通りがかったヤツに配って、バイト代もらって帰るとすっかァ!」

チラシ配り「帰りに『ガスト』あたりで『豪遊』するっつーのも悪くねェー!」ニィーッ
26:2016/06/30(木) 01:00:06.933 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「――ん?」



男「……」



チラシ配り(なんだ? なにボケッと突っ立ってやがる……フン、やっと諦めたか)
27:2016/06/30(木) 01:03:21.250 ID:jQ9pqVuM0.net
男「皆さァ~~~~~ん!!!」

チラシ配り「!?」

男「すぐ駅前から『避難』して下さいッ! 『爆弾』が爆発するぞォォォーッ!!!」

チラシ配り「ハッ!?」





ワァァッ!!!
28:2016/06/30(木) 01:07:14.341 ID:jQ9pqVuM0.net
「爆弾だってよ! 『テロ』だぜ、きっとッ!」

「マジでヤベェーじゃんかよォーッ!」

「逃げろォ~~~~~ッ!」

ワアァァ…… ワアァァ……



チラシ配り(コイツ……! 『存在しない爆弾』で騒ぎを起こして、通行人を『散らし』やがったッ!)





男「これで……お前がチラシを配れる相手は『俺しか』いなくなった……」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
29:2016/06/30(木) 01:10:14.236 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「テメエッ! 自分のしたこと分かってんのかッ!」

チラシ配り「こんなことしたら、警察に呼び出されンぞッ! ヘタすりゃ『逮捕』だってありえるッ!」

男「ああ、もちろんだ」

男「チラシと引き替えにムショ入りする『覚悟』なら……もうできてる」

チラシ配り(コイツッ! 見くびってたッ! ――なんて『精神力』だッ!)
31:2016/06/30(木) 01:14:11.564 ID:jQ9pqVuM0.net
男「さあ、大人しくそのチラシを渡しな……」ザッザッザッ

チラシ配り「ぐっ……!」

男「そうすりゃあ、『再起不能』程度で済ませてやっからよォー」ザッザッザッ

チラシ配り「おめー……正直いって、オレはテメーがここまでやるとは思ってなかったぜ……」

男「だったらどうするってんだァ~?」ザッザッザッ

チラシ配り「だったらよォ~~~~~」

男「?」

チラシ配り「オレも『覚悟』を決めるッ!」
32:2016/06/30(木) 01:17:38.123 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り「チラシ配りが絶対やっちゃいけない禁忌……禁じ手を使わせてもらうッ!」

男「なにィ~?」

チラシ配り「この『ラスト一枚のチラシ』を……向こうにある『ゴミ箱』に叩き込むッ!」ダッ

男「あああああ~~~~~ッ! 考えやがったなッ!」

男「待ちやがれッ!」タッタッタッ

チラシ配り「無駄だッ! 足はオレの方が速いッ!」タタタタタッ

男「ちっ、ちくしょォ―――――ッ!」タッタッタッ
33:2016/06/30(木) 01:21:23.976 ID:jQ9pqVuM0.net
チラシ配り(『ゴミ箱』まで……あと5メートルッ! 勝ったッ! 今日のアルバイト、完!)

「キミ……」

チラシ配り「はい?」

「そのチラシをくれないか?」

チラシ配り「ハッ! どうぞどうぞ! このチラシはあなたのような方にこそ相応しいチラシですから!」サッ

「こりゃどーも」

チラシ配り(ラッキィ~! チラシを捨てることなく消化できたッ! これなら罪悪感ゼロ! 『完全勝利』だッ!)
34:2016/06/30(木) 01:25:08.795 ID:jQ9pqVuM0.net
友人「たしかに『受け取った』よ……ありがとう……」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨



チラシ配り「ハッ! コイツは……たしかあいつと一緒にいた……!」

友人「あとはこのチラシを丸めてあいつに投げ渡せば……あいつの『勝利』ってわけだなァ~?」クシャクシャッ

チラシ配り「し、しまったッ! コイツ、チラシの『仲介役』になりやがったァーッ!」

友人「ほらよ! 受け取れッ!」ポイッ



男「サンキューッ!」パシッ



チラシ配り「あああああああああああ~~~~~ッ!」
35:2016/06/30(木) 01:27:44.528 ID:jQ9pqVuM0.net
男「やったぜッ! ついに『チラシ』を手に入れたッ!」

友人「フン……これが『チームプレイ』っつーやつよ。勉強になったかよォー、アルバイト君よォ~?」

チラシ配り「負けた……! 完全に敗北した……!」ガクッ





男「よぉ~~~~~し、さっそく『チラシ』の中身を改めさせてもらうぜ」ガサゴソ…

男「ん! こ、これはッ!」
36:2016/06/30(木) 01:31:49.593 ID:jQ9pqVuM0.net
≪薄毛が気になってるあなたへ! ぜひ当社の育毛剤を試してみませんか?≫



男「『育毛剤』のチラシじゃあねーか……」

チラシ配り「オレの見たとこ、おめーは薄毛どころかフッサフサだからな……」

チラシ配り「将来的にも多分、白くはなるかもしれねーがフサフサのままだろーし……」

チラシ配り「チラシが必要じゃあなさそーなヤツに、チラシを配るのはオレの『ポリシー』に反する……」

チラシ配り「だから配りたくなかったんだよ……」

男「そういうことだったのか……」

チラシ配り「ずっと『スルー』こいて、すまなかった……」

男「こっちこそ、迷惑かけたみてーですまねーな」
37:2016/06/30(木) 01:36:44.173 ID:jQ9pqVuM0.net
友人「……おい、ちょっと待て」

チラシ配り「え?」

友人「だったらさっきの『あなたのような方にこそ相応しいチラシ』っつーのはどーゆう意味だ、コラァッ!」

チラシ配り「ハッ!」

友人「このボゲェッ!!!」

ボゴォッ!

チラシ配り「ぶげェ―――――ッ!」



男…爆弾騒ぎを起こした件で警察署に呼び出されたが、さいわい厳重注意で済んだ。

友人…育毛剤の購入を本格的に検討する。

チラシ配り…この後、バイト代をもらってガストに向かった。







― 完 ―
38:2016/06/30(木) 01:37:12.428 ID:mO4Ej52P0.net
ワロタ
39:2016/06/30(木) 01:41:13.420 ID:5PLyO5k4r.net
乙ッ!
男「俺さ、チラシ配ってる人にいつもスルーされるんだよな」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1467212734