1: 2016/12/21(水) 23:29:49.55 
社員「…ふぅ…」


社員「(ついに来た…大事な取引先候補との商談…!)」


社員「(今日、この契約さえ成功すれば俺は必ず会社から認められる…余りにも恥の多すぎた人生も挽回できる…が)」


資産家「…」


社員「(…流石一流の資産家…部屋もでかいしオーラもでかい…けど、やるしかない…!)」


資産家「…」


社員「…まず、わたくs」

資産家「秘書」

秘書「はい」


社員「…?」



資産家「…お客さん、お帰りだそうだ」


社員「…は!?」

2: 2016/12/21(水) 23:34:54.14 ID:KUEo/xRHO
社員「お、お言葉ではございますが、それは話にケリを付けたいときに上位に立つ人がドラマなどでよく用いる手段ですが…まだ何も言っていないのに…これは余りにも…」


秘書「…ボスの命令は絶対です、どうかお引き取りください」


社員「いや、待ってください!まだ会話すら交わしていないじゃないですか!投資家様!私が何か粗相を致してしまったのなら仰ってください、改めますので…」


資産家「いやいや、君は何も間違っておらんよ、むしろ一目見て強い向上心と熱意を感じた…君には好感が持てたよ」


社員「…ならなぜ…!」


ボス「…君ほどの男ならいずれわかるさ…」


社員「待ってください!納得がいきません…!待って…」


秘書「お引き取りを」


社員「…!失礼します…」

3: 2016/12/21(水) 23:35:51.46 ID:KUEo/xRHO
その後俺は契約の失敗により会社からこっぴどく怒られた。間一髪でクビは免れたが、社内の信用は大きく落ちた


何か言う前に断られたなんて言い訳、通じるわけがない。結果が全ての世界なのだから


けど俺は諦めなかった。あのお偉いさんの言った言葉の意味、あれを理解したかった。そうでもなけりゃ死んでも死にきれなかった。


だから俺は働いた。死に物狂いで結果を求めて走り回った。
そうして昇進を続ければいつかあいつの言葉の理由がわかる、そう信じて働き続けた


幸いなことに、あんな言葉を投げ掛けてくる奴はあの日以降現れなかった。気がつけば俺もすっかりオッサンと呼べる年になっていて、いつの間にか俺を慕う部下もたくさんできた


そして…

4: 2016/12/21(水) 23:36:49.35 ID:KUEo/xRHO
富豪「…」


トントン


執事「富豪様、鎌瀬(かませ)株式会社様の方が」


富豪「む、そんな時間か、通してやってくれ」


執事「はい」


バタンッ


社長「ふー…」


富豪「(あの日からはや数十年…会社は息子に任せ、今じゃあ俺が大富豪兼投資家…)」


社長「(そして、今日は俺という後ろ楯を求めに鎌瀬さんとこの社員がやってくる日…)」


社長「…ふっ、あの日を思い出す…今ならあんたの気持ちがよーくわかりますよ…」

5: 2016/12/21(水) 23:38:20.99 ID:KUEo/xRHO
トントンッ


富豪「(…人生、一度は言ってみたい言葉ってあるよな
…多分あの人もそうだったんだろう…)」


富豪「…開いてますよ」


ガチャッ


青年「失礼します。株式会社鎌瀬より来ました、青年と申します」


富豪「(…一目でわかる。こいつは俺よりでっかくなれる。…ここで成功して鎌瀬の重役になる程度じゃあまりに勿体なさすぎる位にはな)」


富豪「ま、座って」


青年「はい、失礼します」


富豪「(逸材ではある…が、若いな。挫折を知らねぇと見た
…挫折はな、早い方がずっと良いんだ。たっぷりリスタート出来るから)」


富豪「執事」
 

執事「はい」


富豪「(…俺は憧れの台詞を言える。こいつは叩かれて更に伸びる。なるほど、よく出来た一石二鳥だ)」


富豪「…お客さん、お帰りだそうだ」ニヤッ


終わり

9: 2016/12/22(木) 01:08:48.71 ID:9m1xwMML0
星バーーーローーの別の星に復讐する話思い出した

13: 2016/12/22(木) 17:20:35.40 ID:76ln0ntko
ショートショートとしていい話だと思う


引用元: 資産家「お帰りだそうだ」