1 : 投稿日:2009/07/31(金) 00:20:58.46 ID:8U7yn2ex0 [1/39回(PC)]
コンピ研部長「やめてくれえ! それはコツコツ部費を貯めて買った最新型のパソコンなんだ! 返してくれえ!!」 

ハルヒ「うるさい!」ゲシィ! 

コンピ研部長「ぐはぁ!!」 

ハルヒ「ナンバー3桁の分際でこの私に対等な口聞いてんじゃないわよ!!」 

コンピ研部長「鬼! 悪魔ぁーーーー!!」
 

3 : 投稿日:2009/07/31(金) 00:29:25.11 ID:8U7yn2ex0 [2/39回(PC)]
 県立北高!! それは全国に40存在する『特殊能力養成学校』である!! 
 時代が『翔和』から『兵成』にかわるころ、このニッポンでは奇妙な能力を持つ少年少女、いわゆる『超能力者』が激増した!! 
 そんな『能力』の悪用・乱用を防ぐために、政府は『特殊学校』を設立、能力者の管理に動き出した! 

 結論! それにより、懸念されたあらゆる犯罪への能力乱用による大混乱は免れた!! 
 政府の迅速、かつ的確な対処が功を奏したというわけである! 

 だが! あるひとつの学校から! その平和は脆く崩れ去ろうとしていた!!
6 : 投稿日:2009/07/31(金) 00:41:49.05 ID:8U7yn2ex0 [3/39回(PC)]
 超能力などという奇想天外な力を、まだ精神的に未熟な少年少女が持てばどうなるか! 
 暴走する! それは実に簡単に想定しうる事態! 

 政府は既に対策を打っていた! 
 そんな事態を抑えるには力! 少年少女たちが持つ力を上回る力による抑制! それしかない!! 
 国はこんな状況を見据えてすでに『特殊能力を持ったプロフェッショナル』の育成を完了していたのである! 
 その先見性は讃えられるべきものといえよう!! 

 だが、そんな政府もこの事態は読めなかった! 
 県立北高に入学したあるひとりの少女が、能力戦のプロフェッショナルたる教師陣をコテンパンにしてしまったのである!! 
 さらに! 少女は宣言した!! 
 力あるものが全てを手にする、すなわち、完全な『弱肉強食』を学校のルールとすることを!! 

 学校の名は、『県立北高』――――!! 
 たったひとりの少女により、この学校は暗黒時代へと突入することになるのである―――――――
8 : 投稿日:2009/07/31(金) 00:48:09.25 ID:8U7yn2ex0 [4/39回(PC)]
 そして、事の発端となった『少女』の入学から一年――― 

 北高を覆うこの闇を打ち払うべく、あるひとりの少年がその学び舎に足を踏み入れようとしていた。 

古泉「ふむ…ここがあの『北高』ですか」 

 少年の名は古泉一樹―――特殊能力養成組織『機関』から派遣されてきたエージェントで、このとき若干16歳であった。
11 : 投稿日:2009/07/31(金) 00:53:08.53 ID:8U7yn2ex0 [5/39回(PC)]
古泉「さて、いよいよ足を踏み入れる前に情報を確認しておきましょうか」 

古泉「ある一人の少女が全ての教師を屈服させてしまったために、今この学校には校則というものは存在しない」 

古泉「変わりに存在するたった一つのルール……『自分より強いものへの絶対服従』」 

古泉「やれやれ……これではルールなんてあって無いようなものじゃないですか」
13 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:01:08.40 ID:8U7yn2ex0 [6/39回(PC)]
 『力こそ全て』―――北高ではその理念を忠実に遂行するために生徒達にナンバーが記されたバッジを振り分ける。 

 ナンバーは若い数字ほど強者を示し、逆に数字が大きくなるほど弱者ということになる。 

 普通の進学校における定期試験の順位が、ここでは戦闘力の順位に置き換わると考えてもらえばいい。 

 自分より上位のナンバーの者には決して逆らうことはできない。 

 すなわち、ナンバー1のバッジを持つものこそが、この学校の絶対権力者であり、今の事態を引き起こしている現況である。 

 事前に渡された資料に目を通した古泉はひとつ、ため息をついた。 

古泉「つまり、この学校の体制を変えるにはナンバー1になるのが一番手っ取り早いというわけですね」 

古泉「……争いはあまり好みではないのですが」
14 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:04:49.68 ID:8U7yn2ex0 [7/39回(PC)]
教師「今日から転入してきた古泉くんだ、皆仲良く……いや、お手柔らかにな」 

古泉「古泉です、よろしく」 

「ざわ…ざわ……」 

「随分やわそうなヤツが入ってきたもんだ」 

「やっぱり能力者なのかな?」 

「当然だろ。じゃなきゃこの学校に入れるはずがねー」 

「けっ、すぐにボコにして俺の手下にしてやるぜ」 

「ざわ…ざわ……」 

古泉「…やれやれ、先が思いやられますね」
15 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:09:37.43 ID:8U7yn2ex0 [8/39回(PC)]
クラスメイトA「よう、転校生。ひとつ忠告しておいてやるよ」 

古泉「なんでしょう?」 

クラスメイトA「この学校で長生きしたかったらな……『SOS団』には関わるな」 

古泉「…SOS団?」 

クラスメイトA「仏心からの忠告さ。この学校に来たからにはお前も何かしらの能力者なんだろうが……あいつらには勝てねえよ」 

古泉「心に留めておきましょう。ご忠告、痛み入ります」 

クラスメイトA「ふん、余裕綽々なツラしてやがる。ま、精々好きに死にな」 

古泉「SOS団……ね」
20 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:22:31.30 ID:8U7yn2ex0 [9/39回(PC)]
 古泉は学校内を見て回ることにした。 
 一応事前に『機関』より学校の図面を渡され、頭に入れてはいるが実際に見て回るとまた違って見えるものだ。 
 5分も歩かないうちに古泉は奇妙な違和感を覚える。 
 古泉の教室がある第4校舎、その二階。廊下を歩く生徒達の上履きの色がばらばらなのだ。 
 上履きの色は学年ごとに違う。 
 赤なら1年。黄色なら2年。青なら3年だ。 
 どうにも気になった古泉は廊下ですれ違った少年に聞いてみた。 

生徒A「ああ、北高はこの第4校舎に下位ナンバーの殆どが押し込められているからね。学年? 関係ないよそんなの(笑)」 

 少年の話によれば、残りの1,2,3校舎は以下のナンバーを所持する生徒達に占有されているらしい。 

 第3校舎  NO.6~10 
 第2校舎  NO.2~5 
 第1校舎  NO.1 

 下位ナンバーの生徒達は、第1~3までの校舎には立ち入ることもできないらしい。 
 なんともわかりやすいことだな、と古泉は思った。
21 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:27:35.02 ID:8U7yn2ex0 [10/39回(PC)]
古泉「つまり、第3校舎にいけば簡単に上位の人間に会えるわけですか」 

 古泉は早速第3校舎にその足を向けた。 
 古泉が持つバッジのナンバーは、現在この学校で最も低い293。 
 では、どうすればこのナンバーを上げることが出来るのか。 

 簡単だ。上位の者からバッジを奪えばいい。 

 それが、弱肉強食というものだ。 

古泉「まったく……本当にわかりやすい」 

 古泉は思わず零れるため息を隠すことが出来なかった。
22 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:32:56.61 ID:8U7yn2ex0 [11/39回(PC)]
 第4校舎から第3校舎に向かう途中、ちょうど外へ出たときだった。 

???「いやぁ~!! や、やめてくださぁい!!」 

???「ほら、大人しくしてくださいって!!」 

???「やめなよもう、みっともないよ」 

古泉「…これは放っておくわけにはいきませんね」 

 古泉は声のするほう、すなわち人気のない校舎裏へと向かった。
23 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:36:42.04 ID:8U7yn2ex0 [12/39回(PC)]
谷口「暴れても無駄ですよ! 大人しくしてれば優しくしますから!!」 

朝比奈「は、離してぇ!!」 

国木田「谷口、いくらもてないからってさ~そういう力任せなのはどうかと思うよ? いくらこの学校が何でもありのルールだからってさ」 

谷口「う、うるせえな! お前も見てないで手伝えよ! 友達だろ!?」 

朝比奈「だ、だれかぁ~!!」 

国木田「…友達やめたくなってきたよ僕」 

古泉「何をしているんです?」
24 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:44:22.12 ID:8U7yn2ex0 [13/39回(PC)]
谷口「あん、誰だてめえは?」 

国木田「ああ、谷口。彼が転入生だよ、多分。見たこと無い顔だもの」 

古泉「ええ、ご察しの通り。古泉一樹と申します」 

谷口「へえ……お前が……」 

朝比奈「た、助けてくださぁい!!」 

古泉「ええ、少々お待ちくださいね」 

谷口「余裕しゃくしゃくじゃねえか、気に入らねえ。おい、国木田やるぞ」 

国木田「やだよめんどくさい。大体僕朝比奈さんに何も手を出してないしね。君一人でやんなよ」 

谷口「ちぇ、友達がいのねえやつ。ま、いいけどよ」 

 谷口は朝比奈の手を放し、悠然と古泉の前に歩を進めた。 

谷口「俺一人で十分だしな」
26 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:50:17.86 ID:8U7yn2ex0 [14/39回(PC)]
古泉「おやおや、余裕綽々なのはそちらではないですか」 

谷口「おいおい、そりゃ当然だろうがよ。お前ナンバーいくつだ?」 

古泉「ふむ…293と書いてありますね」 

谷口「はっはっは!! 話にならねえ! 最下位なんじゃねえかよお前!!」 

古泉「いえ、これは……」 

国木田「谷口、彼は今日転入してきたばかりなんだから当たり前じゃないか馬鹿」 

谷口「う、うるせえ!! 知ってたっつうの!! わざとだわざと!!」 

朝比奈「あ、あうぅ~」オロオロ 

古泉(今の間にこの場を離れてくれるとありがたいんですがねえ)
28 : 投稿日:2009/07/31(金) 01:56:21.44 ID:8U7yn2ex0 [15/39回(PC)]
谷口「くそ! 馬鹿にしやがって!!」 

古泉「いえ、馬鹿にしたのは僕ではなくあなたの相方が……」 

国木田「相方だなんてやめてくれよ。甚だしく心外だ」 

古泉「これは失礼」 

谷口「やっろう!! もう頭来た! かかってきやがれ転入生!!」 

古泉「おや、先手を譲ってくださるので?」 

谷口「へっ、お前ごときの攻撃なんて屁でもねえって教えてやるよ」 

国木田「谷口~。君の悪い癖だよソレ。相手が一撃必殺系の能力だったらどうすんのさ。だから君は上位に上がれないんだよ」 

谷口「う、うるせえうるせえ!! おら、ぼさぼさしてんな転入生!!」 

古泉「ふむ、では遠慮なく」
32 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:05:45.53 ID:8U7yn2ex0 [16/39回(PC)]
 古泉の手のひらに赤い炎の塊のようなものが浮かび上がる。 
 不安定にゆらゆら揺らめいていたその炎は、凝縮し、やがては見事な球形となった。 
 言うなれば、それは赤いエネルギーの塊だった。 

谷口「なんだそりゃ!! それがお前の能力かよ! しょぼっ!!」 

 谷口は古泉の手のひらに浮かぶ、直径10センチほどの赤い球を指差して笑う。 
 自信の能力を鼻で笑われた古泉であったが、彼もまた、その顔には笑みを浮かべていた。 

古泉「では、お試しあれ」 

 古泉は生成した赤い塊を掴み、甲子園で力投するピッチャーよろしく大きく振りかぶり、そして――― 

古泉「ふんもっふ!!」 

 彼独特の奇妙な掛け声と共に放った! 
 放たれた赤い弾丸は真っ直ぐに谷口の顔面へと飛来する!! 

谷口「は、はや…!」 

 直撃!! 谷口は為すすべなく仰向けに倒れこんだ!!
33 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:12:56.77 ID:8U7yn2ex0 [17/39回(PC)]
国木田「あらら」 

古泉「これが僕の能力、『紅玉』-レッド・クリムゾン-。お味はいかがでしたでしょうか?」 

朝比奈「す、すごい……」 

古泉「ご無事ですか? 出来ればお名前を教えていただきたいものですが……」 

朝比奈「あ、みくる……朝比奈みくるです」 

古泉「可愛いお名前ですね。では行きましょうか。校舎まで送りますよ」 

国木田「ちょっと、勝ち誇るのは早いんじゃないかなぁ」 

古泉「!!」 

国木田「生憎、ピーチ姫をさらった大魔王クッパはファイアーボール一発じゃあ倒せないみたいだよ」 

谷口「……」
35 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:23:01.63 ID:8U7yn2ex0 [18/39回(PC)]
谷口「……ドラえもん」 

古泉「え?」 

谷口「ドラえもんってさあ、夢があるよなぁ。お前もそう思うだろ?」 

 谷口の真意が掴めない。古泉はただ警戒を強め、谷口の動きに目を見張る。 

谷口「あの道具欲しいなあ、あの道具欲しいなあ……そんなくだらねえことばっかり考えてたからかも知れねえなぁ」 

谷口「気付けば……こんな能力を身に着けちまったよ!!」 

 谷口の目の前に奇妙な物体が顕現する。 
 2秒の時をかけて現れたのは、一枚のドア。 

谷口「わかるよな? これがなにか……」 

 現れたドアに遮られ、古泉の方から谷口の姿は見えない。 
 だが、谷口の言葉から想像するに、あのドアの能力は―――!! 
 ドアが開かれる。だが、その先に谷口の姿は無い!! 

谷口「ばあ」 

 突然背後に現れた谷口の拳が古泉の顔面を打ちつけた!!
37 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:30:12.00 ID:8U7yn2ex0 [19/39回(PC)]
古泉「くっ…!」 

谷口「へえ、咄嗟に身をひねってダメージを最小限に抑えたか。おしいな、そのイケメンづらをへこませてやろうと思ったのによ」 

 古泉の背後には、何の気配も無く谷口が作り出したドアが現れていた。 
 ドアからドアへの瞬間移動! それが谷口の持つ能力!! 

古泉「ふんもっふ!!」 

 古泉も負けじと二撃目を放つ! だが!! 

谷口「ほいっと」 

 再び谷口の目の前にドアが現れる。放たれたエネルギー弾はドアの中に吸い込まれ――― 

古泉「なっ!!」 

 再び古泉の背後から出現した!!
39 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:36:32.34 ID:8U7yn2ex0 [20/39回(PC)]
古泉「くっ……!」 

 自らのエネルギー弾に身を焼かれ、膝をつく古泉。 

谷口「おいおい、さっきまでの余裕はどこいった?」 

 対する谷口は古泉を悠然と見下ろしている。 
 古泉は戦慄を感じていた。 
 谷口の能力の厄介さ。そして、何よりもそのタフネスに。 
 古泉の紅玉は、まともに当たれば大の大人でも一撃で昏倒する威力があるのだ。 

古泉「参考までに聞いていいですか?」 

谷口「何だ?」 

古泉「あなたのナンバーはいくつなんです?」 

谷口「やだね。教えてやんねー。敵にそう易々と情報渡すほど俺はお人よしじゃないんでね」 

国木田「谷口のナンバーは10だよ」 

谷口「こらぁ!!!!」 

古泉「なるほど…道理で……」 

古泉(手強い!!!!)
40 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:41:53.50 ID:8U7yn2ex0 [21/39回(PC)]
 ― 谷口 ― 
バッジナンバー:10 

体力 A 
力  B 
スピード B 
精神 C 

能力名『WA・WA・WA』 
 空間と空間をつなぐドアを自由自在に操る。 
 要はドラえもんのどこでもドアである。
42 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:49:19.71 ID:8U7yn2ex0 [22/39回(PC)]
古泉「ふん!!」 

谷口「もうあたんねえよ!!」 

 再び出現したドアに吸い込まれる紅玉。 
 古泉は即座に後ろに振り返った。 

古泉「同じ手は2度食いません!!」 

谷口「生憎、同じ手じゃないんだよなあ」 

 振り返った古泉の目の前には何も無い。ただ、不安そうな朝比奈みくるが見えるだけだ。 

古泉「しま…!!」 

 直撃。ドアは古泉の目の前に現れていたのだ。古泉はむざむざ自分から背を向けていたのである。 

古泉「これは…想像以上に……」 

谷口「強いだろ?」 

古泉「ええ、厄介な能力です……」
47 : 投稿日:2009/07/31(金) 02:58:35.80 ID:8U7yn2ex0 [23/39回(PC)]
 気付けば、谷口の目の前には再びドアが現れていた。 
 既にドアは開かれている。だが、谷口の姿を確認することは出来ない。 
 ドアの中は、奇妙な…言うなれば絵の具を無茶苦茶に落とした水面のような、そんな空間になっていた。 
 だが、それは裏を返せば彼のほうからもこちらを確認することが出来ないということ。 

古泉「勝機!!」 

 古泉は駆け出した。まだ二つ目のドアが現れていない。 
 谷口はまだドアの向こう側にいるはずだ。 
 捕まえる! なんとしてでも!! 

古泉「…馬鹿な!?」 

 ドアの向こうに谷口の姿は無かった。そう思った矢先――― 

谷口「ばあ」 

 一枚目のドアの中から谷口が突如現れ、古泉に拳を振るった。 
 不意をつかれた上、古泉は予測が外れたことに戸惑い、固まっていた。 
 つまりは直撃!! もんどりうって古泉は倒れる。 

古泉「くっ…」 

 身を起こし、消えゆくドアを見て、古泉は一瞬で納得した。
52 : 投稿日:2009/07/31(金) 03:08:43.15 ID:8U7yn2ex0 [24/39回(PC)]
古泉「そういうことですか…」 

 ドアはきちんと二枚あった。古泉がいた位置からは見えぬ角度で二枚目を出現させ、一枚目とぴったり貼り付けていたのである。 

谷口「おいおい、手も足も出ねーのかぁ!?」 

 勝ち誇る谷口。古泉はただ言われるがままに押し黙っていた。 

 否―――思考していた!! 勝つための術を!! 

古泉(手段はある!) 

 そう! 谷口の能力、『WA・WA・WA』。極めてトリッキーで厄介な能力だが、弱点はある!! 
 それは――― 

古泉(能力の発動には必ず『入り口』と『出口』が必要なこと!!) 

 先ほどの攻防で古泉はそれを確認した! 一枚に見えたドアも、やはり二枚あったのだ!! 
 『入り口』と『出口』!! だが、裏を返せば『入り口』は『出口』で『出口』は『入り口』となる!! 
 すなわち! 出口となる二枚目のドアに攻撃を叩き込めば!! 
 それは入り口にいる谷口へと突き刺さるはずである! 
 問題は―――! 

古泉(二枚目のドアの出現位置がしぼれないこと、ですね) 

 そう、まさに変幻自在! それが谷口の能力『WA・WA・WA』の強みなのだ!!
56 : 投稿日:2009/07/31(金) 03:19:49.22 ID:8U7yn2ex0 [25/39回(PC)]
古泉「ま、やるしかありませんか!!」 

 古泉は再度谷口に紅玉を放つ。 
 現れる一枚目のドア。そして――― 

古泉(二枚目はどこだ!?) 

 全神経を集中して周囲を探る。現れた。ドアの位置は目の前―――! 
 チャンス! 否! 再び古泉はその足を止めざるをえなかった!! 
 ドアは―――あさっての方向を向いていた!! 

古泉「何を…!?」 

 ドアから飛び出した古泉の紅玉が校舎の外壁を直撃する! 
 ここに至り古泉も気付く! 谷口の狙いに!! 
 もうもうと立ちこもる土煙。古泉は完全に谷口の姿を見失っていた! 

谷口(もらった…!!) 

 谷口は煙に紛れ、古泉へと駆ける。その手に握るは今まで幾人もの血を吸ってきた警棒。 
 谷口はとどめの一撃を放とうとしていた。 

 だが―――!! 

古泉「……」 

谷口(やろう…こっちに気付いて!?)
57 : 投稿日:2009/07/31(金) 03:30:53.60 ID:8U7yn2ex0 [26/39回(PC)]
 古泉は捉えていた! 完全に死角から現れた谷口の姿を!! 

谷口「なん…で…」 

古泉「いやはや恐れ入りました。能力の厄介さもさることながら、それを使いこなすあなたの発想。 
   もう少しで僕も本気にならねばならないところでした」 

 谷口の一撃を悠々とかわし、古泉はその手を掴み取る。 

古泉「直はね、効くんですよ。直は」 

 古泉の手から、さながら電流が迸るように赤いエネルギーが弾け、谷口の体を駆け巡った。 

谷口「か…は……」 

古泉「いかにあなたがタフでもこれには耐え切れないでしょう。決着です」 

谷口「ま…だま……だ……!」 

 谷口は死力を振り絞り、古泉に掴みかかった! 
 これには古泉も呆れた! その異常なタフネスに!! 

谷口「旅は道連れ世は情けってなあ!!」 

 現れたのは一枚のドア! そう! 古泉と谷口、その足元に!! 
 二枚目は天高く空に! 校舎の屋上を超え、なお高みに!! 

谷口「逃げらんねーぜえーーーーー!!!!!」
62 : 投稿日:2009/07/31(金) 03:39:16.29 ID:8U7yn2ex0 [27/39回(PC)]
 谷口はしっかりと古泉の体を拘束していた。 
 ぼろぼろの体のどこからそんな力が出てくるのか、古泉はただ驚くばかりだ。 

古泉「このまま下に落ちればあなたもただではすみませんよ」 

谷口「死にゃしねえだろ。お前をクッションにすりゃあな!!」 

古泉「やれやれ……仕方ありませんね」 

 古泉の体から赤いエネルギーが迸る。それは古泉と谷口を包み込むように球を為した。 
 落下のスピードが突如緩む。いや、それどころではない。 
 浮いている。 

谷口「てめえ……!」 

 谷口の顔が歪んでいる。悔しさと、怒りに。 

谷口「遊んでやがったのか! 空を飛べるんならさっきの戦い、もっとやりようがあったはずだ!! なのに…てめえ!!!!」 

古泉「おやおや、これはあなたが言い出したんでしょう?」 

谷口「ああ!?」 

古泉「敵にそう易々と情報を渡すお人よしではありませんよ、僕は。どこで誰が見ているかわかりませんしね」
67 : 投稿日:2009/07/31(金) 03:52:58.29 ID:8U7yn2ex0 [28/39回(PC)]
谷口「こんのやろおぉぉぉおおお!!!!」 

古泉「それとですね、僕達を包んでいるこの球体なんですが、いわゆるバリアみたいなものなんです。 
   当然僕には無害ですが、他の者に対しては……」 

谷口「あんぎゃーーーー!!!!」 

古泉「こうなるわけです」 

谷口「……」プスプス… 

古泉「今度こそ気絶してくれたようですね。下までは降ろしてあげます。これは貸しということにしておきましょう」 

 下まで降りた古泉は、怪訝な顔で辺りを見まわす。 
 国木田と呼ばれていた少年と、朝比奈みくるの姿が見当たらなかったのだ。 
 代わりにいたのは一人の少女だった。 

???「こんにちは」 

古泉「こんにちは。すいませんがこの辺りで背が低くて少年のような男性と、亜麻色の髪の、あどけない少女のような女性を見ませんでしたか?」 

???「うん、知ってるよ。男の人はどこかへ逃げてった。女の人はこっちだよ」 

古泉「助かります」
72 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:01:30.30 ID:8U7yn2ex0 [29/39回(PC)]
 少女に連れられた先では、朝比奈みくるが体を縛られ、猿轡を噛まされて転がっていた。 

朝比奈「んーー!! んーーー!!」 

古泉「朝比奈さん、大丈夫です。すぐに外しますよ」 

 朝比奈みくるは首を振る。助けないでくれとでもいうのだろうか。 
 そうではない。朝比奈みくるには見えていた。 
 少女がかがみこんだ古泉めがけ、金属バットを振り上げている姿が。 

古泉「それで、振り下ろすんですか? そのバット」 

 ぴたりと少女の動きが止まる。朝比奈みくるはぱちくりと目を瞬かせる。 

???「どうしてわかった?」 

古泉「ふふふ、国木田さんでしょう? あなた」 

 少女は笑いながら振り上げていたバットを下ろした。 

国木田「凄いな。こんなにあっさりばれるなんて」 

古泉「まあ、状況が不自然すぎましたしね。国木田さんが本当に逃げたんなら朝比奈さんを縛り上げる必要性が感じられませんし」
73 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:04:20.47 ID:8U7yn2ex0 [30/39回(PC)]
古泉「何よりあなたの雰囲気、立ち振る舞い、微妙な口癖全てが国木田さんのものでした」 

国木田「怖いな。会って数分でそこまで把握されるなんて」 

古泉「人間観察が趣味みたいなものでして」 

国木田「悪趣味だね」 

古泉「僕もそう思います」 

国木田「ふふふ……」 

朝比奈(は、早く解いてぇ~~)
76 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:12:45.48 ID:8U7yn2ex0 [31/39回(PC)]
古泉「それで、どうします?」 

国木田「降参。もうやらないよ。僕の能力はさっきみたいに騙して奇襲する以外に戦いようがないからね。 
    『もうひとつの能力』の方も君には効かないみたいだし」 

古泉「?」 

国木田「ふふふ…ほら、谷口のバッジだ。勝者の特権。受け取りな。僕のナンバーは谷口より下だからね渡す必要性がないんだ」 

古泉「ありがとうございます」 

 国木田はいつの間に谷口から抜き取っていたのか、ナンバーが刻まれたバッジを古泉に向かって弾いた。 

国木田「それじゃ…ほら、谷口起きて。行くよ」 

谷口「んが…! おい引っ張るな、いてー! いてーって!!」 

古泉「もう目が覚めたんですか…? やれやれ、困ったものです」 

谷口「まったく! 転校生があんなに強いなんて聞いてないぜ! 話が違ぇよなまったくよーー!」 

国木田「うるさいな。騒ぐ元気があるならよりかからないで自分で歩きなよ」
78 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:19:15.20 ID:8U7yn2ex0 [32/39回(PC)]
― 国木田 ― 
バッジナンバー:11 

体力 C 
力  C 
スピード C 
精神 B+ 

能力名『両性艶貌』―プリティ・フェイス― 
自分の性別を自在に変更することが出来る。ただし、本人の本来の性別は男である。 
また、男女かかわらず精神B以下の者を自らの虜とする『魅惑―チャーム―』の能力を併せ持つ。 

※谷口の精神がCにもかかわらず谷口よりもナンバーが低いのは、単純にチャームを使いたくなかったから。
80 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:23:39.38 ID:8U7yn2ex0 [33/39回(PC)]
― 古泉 一樹 ― 
バッジナンバー:10 

体力 ??? 
力  ??? 
スピード ??? 
精神 A 

能力名 『紅玉』-レッド・クリムゾン- 
赤色のエネルギーを生み出し、それを駆使することで多様な攻撃手段を持つ。 
本人は固めてボール状にし、投球する使い方を気に入っているようである。 
隠された未知の能力アリ。
83 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:32:21.45 ID:8U7yn2ex0 [34/39回(PC)]
古泉「大丈夫ですか? 朝比奈さん」 

朝比奈「な、何とか…はふぅ、どうもありがとうございました!」 

古泉「いえいえ、僕もあなたに助けられたわけですし」 

 深々と、何度も頭を下げるみくるに古泉は笑顔で手を振ってみせる。 

古泉「さて、朝比奈さん。少し聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」 

朝比奈「は、はい!」 

古泉「どうしてあの二人に襲われていたのか…ではなく、どうしてあなたはあの時谷口さんが来る方向が分かったのですか?」 

朝比奈「……」 

 そう、谷口の『WA・WA・WA』により校舎の壁が破壊されたあの時。 
 古泉が見えぬはずの谷口を捉えられた訳が、この朝比奈みくるだったのだ。 

古泉「あの時、あなたは確かに僕に向かってこう言いました。『右からきます』と。あなたの位置からも谷口さんの姿を確認することは出来なかったはずです」 

朝比奈「それは……」 

古泉「あれが、あなたの能力なんですか?」 

朝比奈「……」 

朝比奈「はい」
84 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:40:18.13 ID:8U7yn2ex0 [35/39回(PC)]
朝比奈「私は未来が分かるんです」 

 古泉は思わずごくりと唾を飲んだ。それが本当なら、強力極まりない能力だったからだ。 
 だがそうするとあんな連中にからまれていたのが解せない。 
 そもそもからまれるという未来が分かっていたのなら、それを回避する手段はいくらでもあったはずだ。 

朝比奈「でも…好きなときに好きな未来を見れるわけじゃないの。むしろ、見れるのはホント時々で……」 

 本人の説明によると、危機感というか、「もうだめだ!」と思ったときにぱっと見えるらしい。 
 そういえばあの時も両手で顔を覆っていたな、と古泉は思い出していた。 

古泉「なるほど……そういうわけでしたか。しかし、よろしいのですか? そんなことを僕に話してしまって……」 

朝比奈「うん、大丈夫。私、古泉くんのこと信用していますから」 

古泉「それは光栄です」 

朝比奈「それでね」 

古泉「なんでしょう?」 

朝比奈「私、古泉くんにお願いしたいことがあるの」
86 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:48:21.80 ID:8U7yn2ex0 [36/39回(PC)]
朝比奈「古泉くん、私と一緒にこの学校を変えてくれませんか?」 

古泉「……」 

朝比奈「この学校は私みたいな弱い人間は、さっきみたいに虐げられても文句が言えません。力が全て。強いものが正しい。…そんなの絶対に間違ってると思うんです。 
    弱くたって、笑って過ごしていいじゃないですか! 強くないと笑えないって、そんなの絶対おかしい!!」 

古泉「朝比奈さん……」 

朝比奈「さっきみたいな事、この学校じゃ珍しくないんです。今まで、何人もの女の子がさっきの私みたいに……」 

古泉「!!」 

朝比奈「お願いです古泉くん。私に力を貸して下さい。私は弱くって、何の役にも立たないかもしれないけれど、精一杯頑張ります! だから…」 

 みくるはそういうと深々と頭を下げた。古泉の返事は無い。 
 みくるが恐る恐る顔を上げると―――そこには、白いハンカチが差し出されていた。
88 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:54:53.29 ID:8U7yn2ex0 [37/39回(PC)]
朝比奈「古泉くん……!」 

古泉「ええ、やりましょう朝比奈さん。一緒にこの学校を変えましょう!」 

 もとより、それが自分の任務だった。 
 だが、このいたいけな少女との出会いが、この件に対する彼のスタンスを変化させた。 
 彼女は自分に全てをゆだねてくれた。不完全な能力を包み隠さず話してくれたのがその証拠。 
 応えなくては男がすたるというものだ。 
 『機関』の古泉一樹ではなく、ただ個人の古泉一樹として、この学校を変えてやる。 

 決意も新たに、二人は共にNO.1を目指す―――!! 


古泉「ちなみに朝比奈さんのナンバーは何番なんですか?」 

朝比奈「123番です!」 

古泉「……頑張りましょうね!」 

朝比奈「はい!!」
89 : 投稿日:2009/07/31(金) 04:59:39.85 ID:8U7yn2ex0 [38/39回(PC)]
― 朝比奈 みくる ― 
所持バッジナンバー:123 

体力 E 
力  E 
スピード D 
精神 B 

能力名 『時の漂流者』-タイム・ロビンソン- 
数秒後に起こる未来を予知することが出来る。 
ただし、能力は任意に発動することは出来ず、自身が危機に瀕した時など、集中力が高まった時に偶発的に発動する。


121 : 投稿日:2009/07/31(金) 11:46:04.57 ID:/QnK8+/V0 [2/76回(PC)]
 第4校舎を二人の男女が歩いている。男は足音高らかに。女はその後に続き、粛々と。 
 その二人の放つプレッシャーに気圧されてのことか、二人の歩みに従って人の波が割れていく。 
 まるで海を割るモーゼだな、と男は呆れを含んだ瞳で生徒達を一瞥した。 

喜緑(ナンバー6)「聞いてますか? 生徒会長」 

生徒会長(ナンバー5)「ああ、なんだったっけ?」 

喜緑「ではもう一度報告致します。本日付けで転入してきた古泉一樹がナンバー10・谷口を下しました。現在ナンバー8と交戦中です」 

生徒会長「転校初日になんともご盛んなことだな。しかし久しぶりに来たが、相変わらずここの空気は最悪だな。負け犬の匂いで鼻が詰まりそうだ」 

喜緑「定期巡回も生徒会の重要な仕事ですよ」 

生徒会長「生徒会? お笑い種だな。何の決定権も持たぬ執行機関など」 

 生徒会長は苦々しくずれた眼鏡の位置を直した。
122 : 投稿日:2009/07/31(金) 11:53:41.38 ID:/QnK8+/V0 [3/76回(PC)]
喜緑「まあ、しょうがないでしょう。正直、ナンバー1~4の連中は化け物です。対抗出来る者は、世界を探してもいるかどうか……」 

生徒会長「ふん……!」 

 生徒会長は胸元からタバコを取り出すと、誰にはばかることなく咥えた。 

喜緑「だめですよ。生徒会長ともあろう方がこんな校舎のど真ん中で」 

生徒会長「知ったことか」 

 事実、生徒会長の行動を咎める者は一人もいない。 
 教師ですら、目を背けそそくさと立ち去るのが現状だ。 
 まったくもって下らんな。生徒会長は不健康な煙をため息混じりに盛大に吐き出した。 

生徒会長(転入生か……まあ、退屈しのぎにはなるか) 

生徒会長「転入生、第3校舎だったか?」 

喜緑「ええ」 

生徒会長「行くぞ。天に唾はく愚か者、その顔を確認しにな」
124 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:02:43.60 ID:/QnK8+/V0 [4/76回(PC)]
喜緑「駄目ですよ、まだ巡回が終わってません」 

生徒会長「……」 

 気勢を削がれた生徒会長はオールバック気味に纏めた髪をわしゃわしゃと掻き毟る。 

生徒会長「いいだろうがそんなもの別に。こういう何の意味も無い定例行事ってのが大嫌いなんだよ俺は」 

喜緑「意味がないこともないようですよ、ほら」 

 後ろにいた喜緑の方に向き直っていた生徒会長は、喜緑の指した方向に従い、前を向き直る。 
 そこには一人の男子生徒が立ちふさがっていた。 

生徒会長「何だお前は?」 

コンピ研部長「う、うう…!」 

喜緑「威圧しちゃ駄目ですよもう。きっと陳情にこられたんでしょう?」 

部長「そ、そうだ!!」
127 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:10:35.83 ID:/QnK8+/V0 [5/76回(PC)]
生徒会長「ふん、言ってみろ。想像はつくがな」 

部長「き、決まってるだろ! SOS団、あの無茶苦茶な連中を何とかしてくれよ! 最新型のパソコンは奪われるわ、連中には必要ない僕のバッジまで奪っていくわ、馬車馬のようにこき使われるわ… 
   このままじゃ僕達の高校生活はお先真っ暗なんだよ!!」 

生徒会長「知るか。そんなもの自分で何とかしろ」 

部長「な!? それじゃ、何のための生徒会なんだ!!」 

生徒会長「知るか。俺が聞きたいくらいなんだよそんなもん。消えろ」 

部長「く、くそぉ!!」 

 コンピ研部長は踵を返し、走り去っていった。彼の力量では生徒会長の前に立ち塞がることでさえ相当の勇気を必要としただろうに、何とも無残なものである。 

喜緑「冷たいですねえ」 

生徒会長「で? 誰だあれは」 

喜緑「コンピュータ研究部の部長さんですよ。各部の部長さんとは何回か顔合わせしたでしょう?」 

生徒会長「あいにく、ナンバー3桁のクズの顔なんて覚えちゃいられないんでな」 

喜緑「生徒会長という役職につくものとしては、甚だ問題ですねえ」
130 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:19:28.93 ID:/QnK8+/V0 [6/76回(PC)]
 所変わって、第3校舎――― 
 倒れた少年の学生服から、古泉はナンバーが刻まれたバッジを拾い上げる。 

古泉「ふう、さすがにナンバー8。強敵でしたね」 

朝比奈「でも、勝てました!! やっぱり古泉くんは凄いでず!!」 

古泉「いいえ、朝比奈さん。あなたのおかげですよ」 

 勝負を決めたのはまたもみくるの『時の漂流者』-タイム・ロビンソン-だった。 
 だが、今回の勝負はみくるを庇いながらの戦いになったため、そもそもみくるがいなければもっと楽に勝てたかもしれないがもちろん古泉はそんなこと言わない。 

古泉「あと7人……さすがにちょっときつくなってきましたね」 

朝比奈「大丈夫ですか? 今日はもうやめにして休憩したほうが……」 

古泉「いえ、あと一戦くらいはいけるでしょう」 

古泉(とはいえ…このままでは消耗が激しいのも事実。さすがにナンバー上位陣、一筋縄ではいきませんね) 

 その時、古泉に電流走る―――!! 
 圧倒的閃き――まさに天啓――――!!
133 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:25:10.06 ID:/QnK8+/V0 [7/76回(PC)]
古泉「朝比奈さん、第1校舎はナンバー1専用…確かこの学校ではそうなってるんですよね?」 

朝比奈「え、ええ……」 

古泉「じゃあ行きましょうか」 

朝比奈「ええ!? い、今からですか!?」 

 そう、何もご丁寧に一人ずつ相手する必要など無い。 
 現在の体制を作り上げた元凶。すなわちナンバー1。その一人を倒せばいいのだ。 
 何故こんな簡単なことに今まで気付かなかったのか。 

朝比奈「……多分、無理だと思います」 

古泉「何を言うんですか。勝てるかどうかなんて、やってみなければわからない」 

朝比奈「いえ、そうじゃなくて……」 

古泉「? とにかく、行ってみましょう」
136 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:35:03.51 ID:/QnK8+/V0 [8/76回(PC)]
 第1校舎――― 

古泉「誰もいませんね」 

朝比奈「そうなんです。普段ナンバー1はどこにいるかわからないんです」 

古泉「…成程、そういうことですか。確かに、ナンバー1だから第1校舎にいなければならないってことはありませんしね」 

朝比奈「噂では、上位ナンバー陣を全て倒したときに初めてナンバー1は姿を現すんだとか……」 

古泉「やれやれ……まるでRPGですね。地道にいくしかないわけですか」 

 第3校舎――― 

男「やれやれ、やっと見つけたか」 

古泉「…誰です?」 

 古泉の前に一人の男が立ち塞がっていた。 
 男は咥えていたタバコを一息吸い、吐き出す。煙の中で、男の眼鏡が鋭く輝いた。 
 その後ろでは、緑髪の少女が微笑を浮かべている。 

朝比奈「あ、あ、あ……」 

 みくるが怯えたような声を出した。
143 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:47:21.25 ID:/QnK8+/V0 [9/76回(PC)]
 みくるの姿に気付いた生徒会長は実に面白そうに笑みを浮かべた。 

男「後ろにいるのはSOS団のマスコット、朝比奈みくるじゃないか。くっくっく、転入生をたらしこんで下克上か?」 

朝比奈「そ、そんなんじゃ…!」 

男「いやいや、実に結構なことだ。責めているわけではない。むしろ褒めているんだ。何の対価も支払わずに縋るクズ共よりはよっぽどいい」 

古泉(SOS団…?) 

 古泉の脳裏にクラスメイトの忠告が蘇る。 
 『SOS団には気をつけろ』。 
 まさかこの朝比奈みくるがそのSOS団の一員だというのだろうか? 

朝比奈「古泉くん、私……!」 

古泉「大丈夫ですよ朝比奈さん。ただ、後でちゃんと話を聞かせてくださいね?」 

男「さて、自己紹介が遅れたな」 

 男はぷっ、とタバコを吐き出し、足でその火を消した。 

生徒会長「この学校の生徒会長だ、よろしくな」
145 : 投稿日:2009/07/31(金) 12:59:17.00 ID:/QnK8+/V0 [10/76回(PC)]
喜緑「そして私がその補佐を務めます、喜緑と申します」 

 生徒会長の後ろに控えていた少女は、踏みにじられたタバコを拾い上げ、汚れた床を布巾で拭った。 
 喜緑に礼の言葉も無く、生徒会長は2本目のタバコに火をつける。 

古泉「おやおや、生徒会長と言うわりにはマナーがなってないようで」 

生徒会長「好きでやってる仕事じゃないんでな。知ったことか」 

古泉「ちなみに、生徒会長さんのナンバーを伺っても?」 

生徒会長「5だ」 

 ナンバー5、つまりは第2校舎の住人。 
 第3校舎にいた連中とはレベルが違うということ。生徒会長の放つプレッシャーが古泉にそう予感させた。 

生徒会長「ちなみに後ろの喜緑は6だ。だが安心しな。二人がかりで襲ったりしねえよ」 

 生徒会長の口から煙が吐き出される。 

生徒会長「相手するのは俺一人だ。そっちは二人がかりで構わんぜ?」 

 生徒会長の姿が煙で曇る。 
 気付く。古泉、既に周囲に起こりつつあるある異変に―――! 
 いくらなんでも、煙りすぎではないか? 

古泉「しまっ…!」 

生徒会長「気付いたか。いい勘だ。だが、少し遅かったな」
147 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:10:10.38 ID:/QnK8+/V0 [11/76回(PC)]
 周囲をたゆたっていた煙が意思を持ったかのように古泉の体に絡みつく! 

古泉「くは…!」 

 既に古泉は一歩も動けぬ程に煙によって縛られていた!! 
 奇妙な感覚! 真綿で全身をくまなく縛られたような、怖気を伴う感覚だった! 

朝比奈「ふええ! 気持ち悪いです~!!」 

古泉「煙を自在に操る能力……ですか」 

生徒会長「そう、それが俺の能力、『愛煙奇煙』-マルボロ-だ」 

 生徒会長は言いながら、既に3本目のタバコに火をつけていた。 

古泉「随分と健康に悪い能力ですね」 

生徒会長「ほう、余裕だな。その状況を打開する術があるのか? 既に指一本動かせないはずだが」 

古泉「ええ、指が動かずとも」 

 古泉の体から噴出した赤いエネルギーが、その体を拘束していた煙を吹き飛ばした。 

古泉「この通り、動かせるものがありまして」 

生徒会長「便利な能力だ」 

古泉「いえいえ、あなたほどでは」
151 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:20:54.00 ID:/QnK8+/V0 [12/76回(PC)]
 軽口を叩きながら、しかし古泉は焦っていた。 
 周囲を覆う煙、その全てが男の武器になるのだ。例えるなら、戦場で全方位から弓を射掛けられるようなものだ。 
 既に十分に煙を準備させてしまったのが不味かった。 
 事前に能力を知ってさえいれば、タバコに火をつける前に叩き伏せることも出来ただろうに。 

古泉(僕としたことが、事前の情報収集を怠るとは……) 

 後悔しても始まらない。 
 今はただ如何にして目の前の男を倒すかに思考を集中させる。 

古泉「とにかく、全力でいってみますか。朝比奈さん、離れていてください」 

生徒会長「来い、転入生」 

古泉「古泉一樹と申します。是非お見知りおきを」 

生徒会長「俺に勝てたら覚えてやるよ」 

古泉「おや、では是が非でも覚えていただかなくては」 

 谷口のように手加減して勝てる相手では無いだろう。 
 全力で行くしかなさそうだ。 

古泉「はっ!!」 

 全身から赤いオーラを漲らせ、古泉は地を蹴った!!
153 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:24:41.91 ID:/QnK8+/V0 [13/76回(PC)]
古泉「勝った……」 

生徒会長「やるじゃねえか…負けたぜ……」 

 古泉一樹、ギリギリの勝利であった。
166 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:31:14.09 ID:/QnK8+/V0 [14/76回(PC)]
古泉「さて…次はあなたですか?」 

 古泉は今までずっと静観していた少女、喜緑に向き直る。 
 だが、喜緑はフルフルと首を振った。 

喜緑「いいえ、止めておきます。会長に勝った方に私が勝てるはずありませんもの」 

 喜緑の言葉に、古泉は内心ほっと胸を撫で下ろしていた。 
 喜緑の能力は分からないが、今のスタミナで勝てるとは到底思えない。 
 今日はもう休息が必要だった。 

喜緑「それに、あなたには感謝しているんです」 

古泉「え?」 

喜緑「会長を倒してくれて、ありがとうございました」 

 喜緑の瞳には母親を感じさせるような慈愛が満ちている。 
 古泉は喜緑を見てそんな風に感じていた。 

喜緑「私ずっとこの人にいたずらしたかったんです。でも、この人の能力って厄介でしょ? だから、こんな風に弱るのを待っていたの」 

 気のせいだった。
170 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:42:17.61 ID:/QnK8+/V0 [15/76回(PC)]
 喜緑の緑の髪の毛がわさわさと動き出す。まるで一本一本に神経が通っているかのような動きだった。 

朝比奈「ひょ、ひょえぇ~気持ち悪いです~~」 

喜緑「あら、お褒めに預かり光栄ですわ」 

朝比奈「ほ、褒めてませぇん!!」 

 長さすら自在に変えて蠢く髪の毛は、生徒会長の体へと伸びていく。 

生徒会長「おい、喜緑、何すんだ、やめろ。くそ! 体が思うように動かん!!」 

喜緑「うふふふふ」 

生徒会長「やめろ! 近づくな!! おい、見てないで助けろお前ら!!」 

古泉「いえいえ、これも一種の愛情表現だと思えば」 

生徒会長「こ、古泉ぃ!!」 

古泉「おや、名前を覚えてくださったようで。どうもありがとうございます。でわ」 

生徒会長「こ、この人でなしが!! あ、やめろ、そんなとこ、やめて、やめて!!」 


生徒会長「アッーーーーーーーーー!!!!」
173 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:47:13.00 ID:/QnK8+/V0 [16/76回(PC)]
― 生徒会長 ― 
バッジナンバー:5 

体力 B 
力 B+ 
スピード B 
精神 A 

能力名 『愛煙奇煙』-マルボロ- 
煙を自在に操る能力。古泉にしたように相手を拘束することや、固めて殴りつけるなど、様々なことが出来る。 
実は自分の吐いた煙以外でも、煙なら何でも操れるというナンバー5にふさわしいチート能力だったのだがキングクリムゾン。 
コイツの戦いは最初から書く気無かった。いいよね、生徒会長だし。
177 : 投稿日:2009/07/31(金) 13:52:24.53 ID:/QnK8+/V0 [17/76回(PC)]
― 喜緑 江美里 ― 
バッジナンバー:6 

体力 C 
力 B 
スピード A 
精神 B 

能力名 『増えるわかめちゃん』 
自分の髪の毛を自在に操る能力。ぶっちゃけジョジョのラブ・デラックス。 
ただ、髪の毛へのダメージは本体にフィードバックしない。

196 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:10:52.18 ID:/QnK8+/V0 [20/76回(PC)]
古泉「今日はここまでにしましょう。流石に限界です」 

朝比奈「は、はい。古泉くん、あのう……」 

古泉「ええ、話してもらえますか? この学校の上位ナンバーを占めるというSOS団のことを」 

 それから、みくるはぽつりぽつりと話し始めた。 
 SOS団のリーダーに勧誘され、SOS団に入部した経緯。 
 それからの奇想天外な日々。 
 時に楽しそうに。時に寂しそうに。 

古泉「戦えますか? かつての仲間達と」 

朝比奈「戦います。もう、こんなルールは壊さなきゃいけないから」 

古泉「では……」 

朝比奈「はい、SOS団の能力を私が知っている限りお話します。…きっと、信じられないと思うけど」
200 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:17:30.81 ID:/QnK8+/V0 [21/76回(PC)]
古泉「なんとまあ……」 

 みくるからSOS団の面々の能力を聞いた古泉の第一声がそれだった。 

古泉「本当なんですかそれは?」 

朝比奈「本当なんです」 

 何てことだと古泉は頭を抱えた。 
 反則なんてものじゃない。正直、今のところ勝てる気がしなかった。 

古泉(まあ…何とか対策を練ってみますか。せめて、朝比奈さんの未来予知がコンスタントに出来るようになれば……) 

???「キャーーーー!!!!」 

朝比奈「今のは!?」 

古泉「女性の悲鳴!?」 

???「誰かーーー助けてなのねーーー!!!」 

古泉「行きましょう」 

 二人は声のしたほうへ駆け出した。 
 『これが、この学校の日常なんです』。 
 ぽつりと呟いたみくるの言葉が、やけに古泉の耳に張り付いていた。
204 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:26:10.93 ID:/QnK8+/V0 [22/76回(PC)]
阪中「こ、来ないでなのね!?」 

DQN1「へっへっへ。嫌なら力ずくで逃げ出すんだな」 

DQN2「そう、俺たちは力ずくでお前にチョメチョメする。それがこの学校のルールだろ?」 

阪中「ル、ルソー!!」 

 少女の叫びと共に、突然DQN達の前に犬が出現した。 
 だが、DQN1によりあっさりと蹴り飛ばされてしまう。 
 目の前の敵に抗うには、ルソーと呼ばれたその犬はあまりに小さく、脆かった。 

阪中「ああ! ルソー!!」 

DQN1「カッ! 終わりかよ!! しょべえ!!」 

DQN2「そんじゃ、いただきまーす」 

阪中「い、いやーーーー!!!!」 

???「おおっと!! ちょっと待つっさ!!!!」 

 突如響いた何者かの声! 誰だ!? DQNは慌てて辺りを見回した!!
205 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:31:33.72 ID:/QnK8+/V0 [23/76回(PC)]
 現れたのは奇妙なマスクを被った女生徒だった! 

???「正義の味方、鶴仮面参上!!」 

DQN1「鶴亀?」 

鶴仮面「つるかめん!!!!」 

 成程、言われて見れば少女の被るマスクの模様は鶴の顔に見えなくも無い。 

DQN2「それで、鶴仮面とやらが一体何の用だ?」 

鶴仮面「ふむ! さっき君たちは言ったね! 力尽くがこの学校のルールだと!! けっこうけっこう、確かにそのとおりっさ!! 
    だから私も力尽くでその子を助けさせてもらうよ!!」 

DQN1「くそが! やっちまえ!!」
207 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:37:47.21 ID:/QnK8+/V0 [24/76回(PC)]
古泉「こ、これは!?」 

朝比奈「……!!」 

 駆けつけた古泉たちの目に飛び込んできたのは、倒れ付す二人の男子生徒。 
 そして、奇妙なマスクを被った女生徒と、涙を浮かべてお礼の言葉を繰り返す女生徒だった。 

古泉(状況から推理するに、男子生徒に襲われていた方をマスクの方が助けたようですね) 

阪中「このご恩は一生忘れないのねーーー!!」 

鶴仮面「お礼はスモークチーズでお願いするにょろ!! …おや?」 

 マスクの少女が古泉とみくるの方に向き直る。 
 マスクの向こうで少女が息を飲むのがわかった。 

鶴仮面「み、みくる……」 

朝比奈「……」 

古泉「?」 

 ただならぬ雰囲気に古泉はただ首をかしげる。
210 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:43:56.76 ID:/QnK8+/V0 [25/76回(PC)]
朝比奈「またそうやって正義の味方を気取って…罪滅ぼしのつもりですか?」 

鶴仮面「……」 

朝比奈「私は、あなたを絶対に許さない…あなたはただの偽善者です!!」 

鶴仮面「!!」 

 マスクの上からでも、少女の顔が歪んだのがわかった。 

朝比奈「行きましょう古泉くん!!」 

古泉「あ、朝比奈さん!?」 

 古泉の手を無理やり引っ張り、みくるはその場を離れていく。 

鶴仮面「……やっぱり、許してはくれないんだね、みくる」 

 一人残された少女は苦笑を浮かべ、寂しそうに呟いた。 

鶴仮面「ま、それも当然…か」
213 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:49:44.24 ID:/QnK8+/V0 [26/76回(PC)]
古泉「お知り合いなんですか? 先ほどの方は」 

朝比奈「いいえ、知りませんあんな人」 

 もちろんそんなわけはないだろうが、古泉も深くは詮索しない。 
 誰にだって話したくないことのひとつやふたつはあるだろう。 
 ましてや、古泉とみくるは今日出会ったばかりなのである。 
 みくるの全てを教えてもらおうとすることは、あまりに傲慢であった。 

古泉「それでは、また明日」 

朝比奈「ええ、お休みなさい」 

 明日の集合場所と時間を決めて、二人は別れた。 
 いつのまにか西の空は夕焼けで赤く染まっていた。 

古泉「やれやれ、ヘビィな一日でした」 

 夕焼けに目を細め、古泉は一人、帰り道で呟く。 

古泉「明日はもっと大変なのでしょうね。困ったものです」 

 こうして古泉一樹の激動の転校初日は終わった。 
 そして、さらに激流となる二日目の朝がやってくる。
216 : 投稿日:2009/07/31(金) 15:54:57.49 ID:/QnK8+/V0 [27/76回(PC)]
 二日目!! 
 みくると合流した古泉は第2校舎へと向かう! 確固たる意志を持って、足取りに迷い無く!! 

 第2校舎の入り口には鍵がかかっている。 
 古泉は生徒会長からバッジと共に預かった鍵をドアに差し込んだ。 

古泉「行きますよ、朝比奈さん」 

朝比奈「はい!!」 

 入り口のドアが重く感じたのは怯えているからか。 
 古泉たちはいよいよ第2校舎へと足を踏み入れた。
219 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:02:36.99 ID:/QnK8+/V0 [28/76回(PC)]
 『文芸部室』と書かれたドアを開ける。 
 その中では一人の少女が黙々と本を読んでいた。 
 古泉はその少女の名を知っている。 

古泉「こんにちは―――長門有希さん」 

 古泉は、いよいよSOS団の一人、長門有希と接触した。 

朝比奈「お久しぶりです、長門さん」 

 恐る恐るみくるも声をかける。だが、長門は二人の声など聞こえていないとでもいうように、読んでいた本のページを捲った。 

古泉(戦闘の意志はなし…ですか。やれやれ、こういったやり方は性にあわないのですが……) 

 古泉は手のひらに赤いエネルギー球を作り出した。 

古泉(朝比奈さんから聞いたあなたの能力、まともにやっては勝ち目がありませんので) 

 先手必勝! 古泉はなんの躊躇いも無く無防備な長門へとエネルギー弾を投げつけた!!
222 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:07:48.81 ID:/QnK8+/V0 [29/76回(PC)]
 直撃! 轟音と共に校舎が揺れる! 
 手加減など欠片もない、全力の一撃だった。 
 だが―――!! 

長門「……」 

 長門は傷ひとつ負っていない。それどころか、最初の位置から1cmもずれてはいない。 
 古泉はごくりと唾を飲んだ。 

古泉「これが……長門さんの能力…!!」 

 パタン、と長門は読んでいた本にしおりを挟み、閉じた。 
 そして、ゆっくりと立ち上がり―――初めて古泉たちへ視線を向けた。 
 感情の無い、氷のような瞳。 

長門「古泉一樹を―――敵性と判断」 

 これまた何の感情も感じないような声で、短く呟いた。
227 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:18:39.93 ID:/QnK8+/V0 [30/76回(PC)]
朝比奈「古泉くん、きます!!」 

古泉「!?」 

 一瞬、瞬きほどのほんの一瞬で、長門はもう古泉の目の前に肉薄していた。 
 顔面に振るわれた一撃を、ギリギリで回避する。みくるの声がなければ直撃し、意識を刈り取られていただろう。 
 みくるのタイム・ロビンソンの早速の発動は古泉にとって嬉しい誤算ではあったが、同時に戦慄すべき事実であった。 
 タイム・ロビンソンの発動は、みくるが絶対的な危機感を覚えた証左に他ならない。 

古泉(最初の一撃で、これか! これがSOS団の…長門有希の力!!) 

 古泉はたまらず狭い文芸部室を飛び出し、廊下に転がり出る。 
 同時に戦慄、後悔! 昨晩綿密にシミュレートしたにもかかわらずこの愚行!! 
 長門有希相手に距離をとることは自殺行為!! 
 それは彼女に『演算』の時間を与えることになるためだ!! 

長門「         」 

 長門の口が高速で動いている。 

古泉「しまっ…!!」 

 遅かった。古泉の体は既に指一本動かせる状態ではなくなっていた。
228 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:24:49.98 ID:/QnK8+/V0 [31/76回(PC)]
長門「         」 

 連続で長門の口が動く。 

古泉「…冗談でしょう?」 

 槍。そう表現するのが一番適当だろうか。 
 切っ先が鋭く尖った鉄の棒。ただ、人を貫くためにあつらえられたかのような無骨な槍。 
 それがいくつも中空に現れ、古泉に狙いを定めていた。 

古泉「いくらなんでも、何でもありすぎるでしょう?」 

 口から思わず乾いた声が漏れる。 
 これが長門有希の能力―――『宇宙的情報操作』-コスモ・プロセッサ-
232 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:30:13.58 ID:/QnK8+/V0 [32/76回(PC)]
― 長門 有希 ― 

体力 C(A) 
力 C(A) 
スピード C(A) 
精神 C(A) 

能力名 『宇宙的情報操作』-コスモ・プロセッサ- 
長門有希が演算できる範囲であるなら、あらゆる事象を引き起こすことが出来る。 
引き起こそうとする事象が実現困難であるほど、演算にかかる時間が増していく。 
上記能力値の括弧は、情報操作で身体強化を行った際の能力値。
235 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:37:42.12 ID:/QnK8+/V0 [33/76回(PC)]
長門「おしまい」 

 長門は冷たく古泉を見据え呟いた。 

古泉「くっ!!」 

 古泉は襲い来る激痛を覚悟して歯を食いしばる。 
 古泉に向かって槍が今まさに飛来せんとするその刹那―――!! 

朝比奈「ええーい!!」ポカーン! 

 みくるがバケツで長門の頭を殴っていた!! 
 コレには古泉もぽかんと口を開けた。だが、呆けてもいられない。 
 既に槍は古泉に向かって進撃を始めている!! 

古泉「…動く! これなら!!」 

 体はいつの間にか自由を取り戻していた。 
 古泉は身をかわし、『紅玉』-レッド・クリムゾン-で叩き伏せ、槍を全て捌ききる! 

朝比奈「わ、私だって、戦うってききき決めたんですから!!」 

長門「朝比奈…みくる……」ゴゴゴゴゴゴゴ! 

朝比奈「ひゃ、ひゃわあぁぁあああああ!!!!」
241 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:46:47.72 ID:/QnK8+/V0 [34/76回(PC)]
長門「          」 

朝比奈「あわわわわわ」 

古泉「させませんよ!!」 

長門「!!」 

朝比奈「古泉くん!!」 

古泉「最高のアシストでしたよ朝比奈さん!!」 

長門「くっ…」 

 今度は古泉が長門に肉薄する! 赤い炎を纏い繰り出された一撃を長門はかわす! 
 みくるに向かって詠唱を始めてしまっていたため、情報操作で古泉の一撃を無効化することが出来なかったのだ! 

古泉「成程、同時に二つの詠唱は行えないようですね。いい情報を得ました。ま、あまり関係のないことですが」 

 古泉は距離を取ろうとする長門にぴったり張り付いたまま笑って見せた。 

古泉「もう、詠唱の時間は与えませんよ?」
248 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:54:38.52 ID:/QnK8+/V0 [35/76回(PC)]
長門「あまり調子に乗らないほうがいい」 

古泉「そうでしょうか? どうやらあなたは身体能力はさほど高くないようだ。これなら僕でも十分渡り合えると思ったのですが」 

長門「それは先ほどまでの私の話。既に詠唱は完了した」 

古泉「!? いつの間に!!」 

長門「自身の能力強化なら一瞬」 

 長門の姿が目の前から消えた。少なくとも古泉にはそう見えた。 
 一瞬で古泉の背後に回りこんだ長門はその無防備な背中に一撃を叩き込む―――はずだった。 

長門「!?」 

 長門は目を疑った! 今度は長門の目の前から古泉の姿が消え去ったのだ!! 

古泉「いかがです?」 

 背後からの声。長門は咄嗟に振り返り古泉の一撃を受け止めた。 

古泉「おや? 調子に乗りすぎましたね。声をかけるべきではありませんでした」
254 : 投稿日:2009/07/31(金) 16:58:21.37 ID:/QnK8+/V0 [36/76回(PC)]
長門「…身体能力を強化した私と互角。信じがたい。常識的ではない」 

古泉「随分鍛えられたもので。しかし、常識的ではないとはあなた達が言っていい言葉ではないでしょう」 


― 古泉 一樹 ― 

体力 A 
力 A 
スピード A 
精神 A 

朝比奈「ふ、二人の動きが全然見えませ~ん!!」
264 : 投稿日:2009/07/31(金) 17:09:26.98 ID:/QnK8+/V0 [37/76回(PC)]
 距離を取りたい長門。距離を取らせるわけにはいかない古泉。目で追うことも出来ないみくる。 
 次第に無表情だった長門の顔に焦りの色が浮かび始めた。 

長門「くっ……」 

古泉「距離を取りさえすれば勝てると、そうお考えですか?」 

長門「……」 

古泉「あいにく、それは間違いです。距離を詰められた時点であなたの負けだったのですよ、長門さん」 

長門「どういう意味かわからない。確かに今の状況は私にとって好ましいものとは言えない。しかし、それであなたの勝ちとすることはあまりに早計」 

古泉「どうやら、あなたは僕と谷口さんの戦いを御覧にはなっていなかったようだ」 

 古泉のその言葉と同時に谷口を下したあの球体が長門もろとも古泉を包み込む! 
 そして、拒絶! 領域にいる異物『長門有希』に向かってバリアは容赦なくダメージを与える!! 

長門「く…!」 

 長門の顔が苦悶に歪む。如何にタフネスを情報操作で引き上げているとはいえ、そう長く耐えられるものではない! 

長門(これだけは…使いたくなかったけれど) 

 古泉は、自分を見つめる長門の表情に違和感を覚えた。 
 無表情にこちらを見つめる長門の顔に、哀れみのような感情を感じた気がしたのだ。
271 : 投稿日:2009/07/31(金) 17:24:21.55 ID:/QnK8+/V0 [38/76回(PC)]
朝比奈「長門さん、まさか!!」 

長門「身体能力改竄を全てスピードの強化に回す」 

古泉「逃がすか!!」 

 古泉は猛然と距離を取ろうとする長門に追いすがる。 
 だが、二人の距離はじりじりと開いていく。 
 長門の足は出血を始めていた。 

長門(やはり、肉体の限界を超えた身体強化は深刻なダメージを残す。長くは持たない) 

 古泉は焦っていた。これ以上距離を開いては駄目だ。長門に詠唱の時間を与えてしまう。 

長門「あっ」 

 ぐらり、と長門の体がよろめいた。限界を超えた肉体強化のツケがまわってきたのだ。 

古泉「勝機!」 

 古泉の右手にエネルギーが集中する。 
 全力全開の一撃が体勢を崩した長門に叩き込まれた。 

長門「か…は…」 

 長門の体が猛然と吹っ飛んでいく。 


 ―――長門は笑った。
280 : 投稿日:2009/07/31(金) 17:30:52.80 ID:/QnK8+/V0 [39/76回(PC)]
長門「ようやく、距離が取れた」 

 長門の言葉に、古泉も気付く。焦りが生んだ自らのミス。 
 吹き飛ばされた長門と古泉の間には大きく距離が開いていた。 

長門「この能力を発動するには4秒という、あなた相手には致命的な時間が必要」 

 古泉は駆けだす。 

長門「でも、これだけの距離があれば、間に合う。そのために私は防御を捨ててまで詠唱に入っていた」 

朝比奈「長門さん、駄目ぇ!!」 

 みくるの叫びも虚しく、古泉の決死のダッシュも虚しく。 

長門「古泉一樹の情報連結の解除を申請する」 

 『ソレ』は発動した。
285 : 投稿日:2009/07/31(金) 17:37:01.06 ID:/QnK8+/V0 [40/76回(PC)]
古泉「これは…!?」 

 古泉は驚愕する。自らの体が光の粒子となって虚空に消えゆこうとしていた。 

朝比奈「それが長門さんの切り札なんです! あと5秒以内に長門さんを倒さなくちゃ、古泉くんが消えちゃう!!」 

古泉「ご、5秒!?」 

 そんなこと、不可能だ。確かに長門さんは既に虫の息だが、それでも十分な戦闘力はまだ保有しているだろう。 
 発動後の5秒を凌ぐ自信があったからこそ、この能力を発動したのだ。 
 だが、考えている時間は無い。 
 こうやってぐずぐずしている間にも、自らの体は消えていく。 

古泉「くっ、そおぉぉぉぉおおおおお!!!!」 

 半ば心に絶望を抱いてのバンザイアタック。 
 それを迎え撃つ長門の顔に浮かんでいたのは――― 


 ―――『驚愕』だった。
293 : 投稿日:2009/07/31(金) 17:43:37.83 ID:/QnK8+/V0 [41/76回(PC)]
長門「どういうこと…?」 

 先ほどまで紡いでいた力が突然消失した。 
 そして、気付けば目の前にいる古泉一樹の情報連結は今まさに解除されようとしている。 
 長門にとって、それは不可解な現象だった。 
 なぜならば――― 

長門(―――私はまだ、『能力を発動していない』!!!!) 

古泉「うおおおおお!!!!」 

長門「しまっ……」 

 ほんの一瞬の茫然自失。それが致命的。 
 体を解けさせながらも自分に迫りくる古泉一樹。 
 その光景を最期に、長門の意識は闇に沈んだ。
298 : 投稿日:2009/07/31(金) 17:54:35.38 ID:/QnK8+/V0 [42/76回(PC)]
 情報連結が解除され、体を取り戻した古泉だったが、その顔は浮かなかった。 
 最後に自分を見た長門有希は、何故あんなに驚いていたのか。腑に落ちない。何かが引っ掛かる。 

朝比奈「古泉く~ん! 大丈夫ですかぁ~!!」 

 こちらに駆け寄ってくるみくるに笑顔で手を振ってみせる。 
 まあいい。とにかく勝ったのだ。 
 今は次の戦いに備え、体を休ませることが先決―――― 

???「ふぅーん、何をドタドタやってるのかと思ったら」 

 振りかえる。三階へと続く階段を、こちらに下りてくる女がいる。 

???「有希を倒すなんてね。やるじゃないあなた」 

朝比奈「あ…あ…あ…」 

 みくるも気付いた。その反応からみても、この女はやはり―――!! 

朝比奈「涼宮さん!!!!」 

ハルヒ「久しぶりねみくるちゃん」 
  
 SOS団団長、涼宮ハルヒ―――!! 
 その姿を認めたとき、古泉の背中には汗が噴き出していた。相対しただけでこんな気持ちになったのは生まれて初めてだった。 

古泉(僕はこの人に―――勝てるのか?)

336 : 投稿日:2009/07/31(金) 20:23:21.94 ID:/QnK8+/V0 [45/76回(PC)]
 VS涼宮ハルヒ――― 
 SOS団最強である彼女を目の前にして、古泉は半ば絶望的な気持ちであった。 
 彼女の能力がみくるから事前に説明された通りなら、こうして目の前に相対した時点でこちらの勝ち目は無い。 
 長門との戦い以上に、こちらからの奇襲というのが勝利の絶対条件だったのだ。 

ハルヒ「なによ、なーんか覇気がないわね。ホントにアンタ有希を倒したの?」 

古泉「それは買いかぶりというものです。僕が長門さんに勝てたのは偶然…運の賜物ですよ」 

ハルヒ「ラッキーパンチでSOS団団員たる有希がやられるわけないじゃない。食えない男ね」 

 軽口を叩きながら、古泉は必死で頭を回転させていた。 
 どうする―――どうやって勝つ!? 

ハルヒ「それにしてもみくるちゃん…こんなヤツを連れてくるなんて、本気でナンバー1になるつもりなのね」 

朝比奈「はい…本気です。私は、いえ、私達はこの学校を変えて見せます」 

ハルヒ「いい度胸ねみくるちゃん。団長への反逆罪は死刑よ。わかってるのかしら?」 

朝比奈「う、うう……!」 

 みくるは完全に気圧されていた。ハルヒの放つ得体の知れないプレッシャーに。
338 : 投稿日:2009/07/31(金) 20:28:50.11 ID:/QnK8+/V0 [46/76回(PC)]
古泉(どうする!? 今か、今行くべきか!?) 

 古泉は逡巡していた。ハルヒは今のところこちらに目を向けていない。 
 もう少し事の推移を見守れば、一撃で仕留めるチャンスが生まれるかもしれない。 
 だが逆にみくるに気を取られている今こそが最大のチャンスであるかもしれない。 
 どうする、どうする―――!! 

ハルヒ「なんか企んでるみたいだけど、無駄よ」 

 涼宮ハルヒは、そんな古泉の逡巡を嘲笑うかのように――― 

ハルヒ「我が能力……『閉鎖空間-クローズドワールド-』!!!!」 

 その最大最強の能力を発動した。
342 : 投稿日:2009/07/31(金) 20:38:59.01 ID:/QnK8+/V0 [47/76回(PC)]
 涼宮ハルヒを中心に世界が灰色に塗りつぶされていく。 

朝比奈「あわわわわ……『閉鎖空間』…私達、取り込まれちゃいましたぁ」 

古泉「くっ…!」 

ハルヒ「その様子だとみくるちゃんに聞いて私の能力は知ってるみたいね。そう、これが私の能力。私が作り出したこの世界の中では、私は神に等しい存在となる」 

古泉「はあ!!」 

 古泉はハルヒ目掛けてエネルギー弾を放つ。 
 猛然と飛来するソレを、ハルヒはクスクスと笑いながら見つめた。 

ハルヒ「―――こんなの、消えちゃえばいいのに」 

 まるでハルヒの言葉をなぞるように、エネルギー弾は突如その姿を消失させる。 

古泉「くぅ……」 

 わかってはいた。わかってはいたのだ。だが――― 

ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に、私に勝てるという人間がいたらかかってきなさい。以上!」 

 一体どうやって勝てというのだ。古泉は絶望的な気持ちのまま歌う様に宣言するハルヒを見つめていた。
348 : 投稿日:2009/07/31(金) 20:47:22.32 ID:/QnK8+/V0 [48/76回(PC)]
― 涼宮 ハルヒ ― 

体力 A 
力 A 
スピード A 
精神 A+ 

能力名 『閉鎖空間』-クローズドワールド- 
自身を中心に閉鎖空間とよばれる、ハルヒにとって何でもありな世界を作り上げる能力。 
思ったことがそのまま実現するため、長門の『宇宙的情報操作』-コスモ・プロセッサ-と異なり、事象を生み出すまでにタイムラグを要しない。 
また、その願望実現能力に制限は無い。が、願いはハルヒが心から願うものでなくては叶わない。 

その射程距離はハルヒの精神状態に大きく影響される。 
簡単に言えば、ハルヒが鬱屈した気分であればあるほど閉鎖空間は広がり、楽しければ楽しいほど空間は小さくなる。 
ハルヒが『メランコリー状態』になった時の射程距離は、町ひとつを多い尽くすほどとなる。
357 : 投稿日:2009/07/31(金) 20:57:19.64 ID:/QnK8+/V0 [49/76回(PC)]
 自身が生み出した灰色の空間を眺め、ハルヒは口を尖らせた。 

ハルヒ「こんなもんか。まあ今日はこんなことがあってちょっと楽しい気分だし、しょうがないか」 

 現在の閉鎖空間は学校全体を覆うほど。確かにハルヒの最大射程距離を考えれば小さなものだが、今ここで戦いを行うには十分すぎる。 

古泉「エネルギー弾が聞かないなら……!!」 

朝比奈「古泉くん、駄目!?」 

古泉「直接の打撃ならいかがです!?」 

 古泉は地を蹴り、その人間離れした身体能力でハルヒの背後に回りこむ。 

古泉「とった!!!!」 

 容赦なく涼宮ハルヒの意識を刈り取る一撃を放つ! 
 否! 長門にやられた時の様に古泉の体は指一本動かすことが出来なくなっていた!! 
 願ったのだ――ハルヒが、殴られたくないと!! 
 ならばその願いは叶う! 過程などどうでもいい、ただその結果だけが優先される!! 

ハルヒ「いい動きね! さすが有希を倒しただけあるわ!! でもまだまだよ!! 吹き飛びなさい!!」 

古泉「がはぁ!!」 

 古泉の体は得体の知れない力によって吹き飛び、壁に叩きつけられた。
362 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:05:53.03 ID:/QnK8+/V0 [50/76回(PC)]
古泉「く…まだまだ!!」 

 古泉は駆け出す。ハルヒは歓喜した。 

ハルヒ「いいわ! その意気よ! もっと私を楽しませなさい!!」 

古泉「はあ!」 

 今度は体が動く! これなら届く! 
 だが振るった一撃はまたも空を切る。ハルヒがいない。 

朝比奈「上です!!」 

 みくるが頭を抱えながら悲痛な叫びをあげる! 
 みくるの言葉の通り、ハルヒは蝶のように宙を舞っていた! 

ハルヒ「遅い!!」 

 見上げた古泉の顔に向かってハルヒの両膝が振り下ろされる。 

古泉「させない!!」 

ハルヒ「え!? きゃあ!!」 

 古泉の体から噴き出した赤いエネルギーがハルヒを吹き飛ばした。
369 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:12:49.96 ID:/QnK8+/V0 [51/76回(PC)]
 だがハルヒは体勢を整え、軽やかに着地する。 

ハルヒ「あっぶな~い。やるわね、あなた…と、そういや名前なんていうの?」 

古泉「古泉一樹と申します。昨日この学校に転入してきました」 

ハルヒ「へえ~! 二日目でもうここまできたっていうの!? すごいわね、みくるちゃんが期待しちゃうのもわかるわ!」 

古泉(どの口が仰るのやら。今こうして僕はあなたに手も足も出ないというのに) 

ハルヒ「ねえ、あなた見所あるわ。SOS団に入らない?」 

古泉「大変魅力的な提案ですね」 

朝比奈「こ、古泉くん!?」 

古泉「僕がナンバー1になったあかつきには、その申し出を謹んでお受けしましょう」 

ハルヒ「くぅ~! ますます欲しい人材だわ!! 決めた! この勝負私が勝ったらあなたはSOS団副団長よ! はい決定!!」
380 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:20:54.38 ID:/QnK8+/V0 [52/76回(PC)]
ハルヒ「そうと決まれば、本気で行くわよ~~!!」 

古泉(大口叩いたはいいですが、まともにぶつかってはこちらの負けは自明の理。どうしましょうかね) 

 古泉は黙考していた。どんな時でも冷静に物事を考えることが出来るのはこの男の強みである。 

古泉(ん…これは……?) 

 古泉は気付いた。先ほどまでは校庭全体まで及んでいた閉鎖空間が、今は校庭の中ほどまでしか覆えていない。 
 ハルヒが高揚することで閉鎖空間の射程が縮まってきているのだ。 

古泉(とりあえず…この手で行くしかないようですね) 

ハルヒ「いっくわよー!!」 

 どうやらハルヒはこの戦いを楽しんでいるようだ。 
 ならば、彼女が満足し閉鎖空間を消失させるまで―――楽しませるしかない。 

古泉(なんとも過酷な接待ですね) 

 古泉は苦笑し、猛然と迫りくるハルヒの一撃を受け止めた。
388 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:28:27.26 ID:/QnK8+/V0 [53/76回(PC)]
ハルヒ「よっ、ほっ、とーーー!!」 

 ハルヒは閉鎖空間の能力に頼らず、今はただ単純に己の身体能力のみで古泉に襲い掛かる。 
 だが能力に頼らないガチンコ勝負でも、ハルヒの戦闘能力は抜きん出ていた。 
 何しろ『機関』によって戦闘訓練を受けた古泉とまったくの互角といえたのだから。 

ハルヒ「こらあ! ちょろちょろ逃げるなぁ!!」 

 ハルヒの叫びと同時に古泉の体がまた動かなくなる。 

古泉「そんな殺生な」 

 ハルヒの一撃が古泉に叩き込まれる一瞬、古泉は紅玉のエネルギーをその身に纏うことで防御力を引き上げた。 
 が、無防備でハルヒの一撃を食らうことには変わりない。 

ハルヒ「ちょいやーー!!!!」 

古泉「ぐう!!」 

 古泉は苦悶に顔を歪め、吹き飛んだ。
394 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:36:14.16 ID:/QnK8+/V0 [54/76回(PC)]
 あまりにも過酷な戦い。いや、それは戦いとすら呼べるものではなかった。 
 それは、猫がネズミをいたぶるのに似ていた。 
 そんな中で、古泉が今まで耐え切れたのはみくるの存在が大きかった。 
 ギリギリのところでみくるの『時の漂流者』-タイム・ロビンソン-が発動し、古泉は致命的な一撃をかわし続けてきたのである。 
 そんな状況に痺れを切らしたのは涼宮ハルヒだった。 

ハルヒ「もう! みくるちゃん邪魔!!」 

古泉「!! 朝比奈さん、逃げて!!」 

朝比奈「ひ、ひええ!!!!」 

 ハルヒがみくるをターゲットに変えたのだ。 

ハルヒ「えい!!」 

朝比奈「ひゃあ!!」 

ハルヒ「あら?」 

 だが、みくるが恐怖に身を屈めたことでハルヒの一撃は空を切り―― 

朝比奈「ふえ?」 

ハルヒ「おごっ!」 

 立ち上がったみくるの頭がハルヒの鳩尾を強打した。
403 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:44:22.62 ID:/QnK8+/V0 [55/76回(PC)]
ハルヒ「おごごごご…!」 

 余程いいところに当たったのか、ハルヒはしばらく立ち上がることが出来ない。 
 古泉はここで初めて時間的な余裕を得た。 
 これを機に、今までずっと考えてきたことを整理する。 

 涼宮ハルヒの能力は、彼女の精神状態に大きく左右される。 
 それは朝比奈みくるに事前に教えられていた。 
 退屈になれば強大になり、満足していれば弱くなる。 
 そう、よく考えればそれは―――とても悲しいことではあるまいか。 

古泉「あなたはこの世界に満足していないのですね?」 

ハルヒ「……」ピクッ 

古泉「というよりも絶望的に飽いている…こんな神がかり的な持っていながら。あるいは…それ故か」 

 ハルヒは黙して語らない。だが沈黙は時に言葉にするよりも雄弁にその者の心中を語る。
407 : 投稿日:2009/07/31(金) 21:56:21.41 ID:/QnK8+/V0 [56/76回(PC)]
古泉「朝比奈さんから色々話を聞いています。何でも入学したその日の自己紹介で、宇宙人を募ったのだとか」 

ハルヒ「…そうよ。この世界にいるヤツなんて下らないやつばかりだったわ。だから、宇宙人に会ってみたかった。 
    超能力者じゃ駄目だった。だから宇宙人ならこの退屈な世界を変えてくれると思ったの」 

 古泉の推測は当たっていた。ハルヒには心の隙間があった。 
 過去に何かあったのかもしれない。あるいは何でも可能にしてしまう能力を得て、人の浅ましさを知ってしまったのかもしれない。 
 いずれにせよ、16歳の少女が持つには余りに悲しい考えだ。 

古泉(最低だな…僕は) 

 古泉はそこを突く。現実に飽いている。裏を返せばそれは夢見る少女であることに他ならない。 
 駄目で元々。どうせまともに戦っては勝てぬ。 
 古泉は口を開いた。 

古泉「涼宮さん……宇宙人に会ってみたいですか?」 

ハルヒ「突然何を…?」 

古泉「実は…僕は宇宙人なんです」
411 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:04:37.22 ID:/QnK8+/V0 [57/76回(PC)]
 古泉は口に出して後悔した。 
 一体何を言ってるんだ僕は。やはり、あまりに勝ち目の無い戦いに気が動転していたのか。 
 以下、古泉が考えていた作戦を簡単に記す。 

1:古泉「実はぼく宇宙人なんです!」 
2:ハルヒ「嘘!? ホント!? 証拠は!?」 
3:古泉「正体を見せましょう。はあ!!」 
  →紅玉を二つ作って目に付ける 
4:ハルヒ「わあ! 宇宙人は本当にいたのね!!」 
  →涼宮さん大満足。閉鎖空間消失でハッピーエンド。 

古泉(馬鹿か僕は!!!!) 

 古泉は羞恥心で身悶えていた。一瞬でもこれでいけるかと考えた2秒前の自分を殺したかった。 

朝比奈「……」 

 みくるまで呆れたような視線を送っている。もう、ほんとに紅玉を飲み込んで死んでやろうかと古泉は思った。 
 ところがだ。 

ハルヒ「ホント!? 証拠は!?」 

古泉・朝比奈(く、食いついたーーーー!!!!) 

 奇跡的に作戦はフェーズ1からフェーズ2へと移行したのである。
414 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:14:29.84 ID:/QnK8+/V0 [58/76回(PC)]
 もう、ここまで来たらやるしかない。どんなに馬鹿らしくても、涼宮ハルヒが食いついてきた以上突っ走るだけだ。 

古泉「しょ、正体を見せましょう。目をつぶってくれますか?」 

 紅玉を作るところを見られるわけにはいかない。古泉はハルヒにそう促した。 

ハルヒ「う、うん!」ドキドキ 

 ハルヒは素直に目をつぶる。紅玉は二つ出来た。あとはこれを目の所に付けるだけだ。 

古泉(や、やりたくない!!!!) 

 古泉は煩悶していた。自分で考えたことではあったが、やはり実行に移すのは厳しいものがあった。 
 「何やってんの?」と蔑んだ目でこちらを見つめる涼宮ハルヒを想像するだけで身震いする。 
 どうする―――どうする――――!! 

朝比奈「こ、古泉くん」 

 脂汗を流し、葛藤を続ける古泉にみくるが声をかけてきた。 

古泉「何です?」 

朝比奈「あれ……」 

ハルヒ(まだかなまだかな…)ワクワク 

古泉(す、隙だらけだーーーー!!!!)
422 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:17:46.42 ID:/QnK8+/V0 [59/76回(PC)]
 古泉はそっと音を立てないようにハルヒの傍に歩み寄る。 
 目を瞑ったままのハルヒは一向に気付く気配が無い。 

古泉「……」 

朝比奈「……」 

 頷きあう古泉とみくる。そして――― 

ハルヒ(まだかなまだかなー) 

古泉「そい!!」 

ハルヒ「あふぅ!!」 

 古泉はハルヒの意識を刈り取ることに成功したのである!! 
 知力を駆使したこの上ない大勝利であった!!
425 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:24:24.33 ID:/QnK8+/V0 [60/76回(PC)]
ハルヒ「きゅう」 

朝比奈「い、いいんでしょうか?」 

古泉「まあ、当初の予定でも奇襲して能力を発動させる前に決着をつけるつもりでしたから、よかったんじゃないでしょうか」 

 失礼します、と一言断って、古泉はハルヒからバッジを奪い取った。 

古泉「やりましたね。これでこの学校に平和を取り戻すことが出来ますよ」 

朝比奈「……」 

 意気揚々と微笑む古泉に、みくるは首を振った。 

古泉「え?」 

 古泉はみくるが指差した先、ハルヒのバッジに目を落とす。 
 刻まれたナンバーは―――『2』だった。 

古泉「な―――!?」 

朝比奈「違うんです……ナンバー1は涼宮さんじゃない!!」
433 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:28:14.17 ID:/QnK8+/V0 [61/76回(PC)]
 古泉は戦慄していた。 
 その類まれな身体能力と完全無敵の特殊能力から、古泉はハルヒがナンバー1だと思い込んでいた。 

古泉「上がいるというんですか……涼宮さんよりも!!」 

 みくるは頷く。 

古泉「そんな……」 

 古泉が絶句したその時だった。 





 足音が聞こえた。
445 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:35:31.45 ID:/QnK8+/V0 [62/76回(PC)]
 カツーン――…… 

 カツーン――…… 

 廊下の向こうから、甲高い足音が響いてくる。 

???「へえ…ようやくハルにゃんをやっつけるような人が現れたんだね」 

 次第に足音は大きく、その人物の姿が鮮明になってくる。 
 みくるが唇をかみ締め、その人物を睨みつけている。 

???「そんな怖い顔をしないでおくれよみくる。悲しいっさ」 

 聞き覚えがある声だった。長い、艶やかな緑の髪が揺れる。 




鶴屋「初めまして古泉くん。私がこの学校のナンバー1、鶴屋さんだよ」
459 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:39:43.20 ID:/QnK8+/V0 [63/76回(PC)]
 考えてみれば当たり前の話だった。 

 件の少女が全ての教師を叩きのめし、学校に恐怖のルールを敷いたのは一年前。 

 今年一年の涼宮ハルヒがその少女であるはずが無かったのだ!! 

 そして、真のナンバー1が遂に古泉の目の前に現れた。 

 『暴帝』鶴屋。この女こそが、一年前の伝説の少女その人である!!
472 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:49:08.30 ID:/QnK8+/V0 [64/76回(PC)]
 そのことを証明するように、鶴屋の胸元には『1』と刻まれたバッジが光っている。 
 奪ってみろ。狙ってみろと言わんばかりに。 

古泉「まさか、あなたがナンバー1だったとはね」 

鶴屋「おやぁ~? お姉さんと君は初対面のはずにょろよ?」 

古泉「本気でおっしゃってるんですか? あんな変装でごまかせるわけがないでしょう」 

鶴屋「あはは~! やっぱりバレバレかぁ~!!」 

 昨日阪中を助けていた鶴仮面。その正体が目の前にいる暴帝・鶴屋なのは明らかだった。 

古泉「――わかりませんね」 

鶴屋「何がだい?」 

古泉「この学校の『弱肉強食』のルールを定めたのはあなたでしょう? 当然、昨日のようなことが起こることなど簡単に予想できたはずだ。 
   もちろん、あなたがそんなこと知ったことではないという人間であったのなら疑問はありません。ですが、あなたは少女を助けている。解せませんね」 

鶴屋「そりゃあ、自分のせいで誰かがひどい目にあってるんなら、出来るだけ助けたいと思うにょろ」 

朝比奈「偽善者…!!」 

 鶴屋の言葉にみくるは罵りの言葉を吐き捨てた。
476 : 投稿日:2009/07/31(金) 22:58:28.86 ID:/QnK8+/V0 [65/76回(PC)]
古泉「それならルールそのものを取っ払ってしまえばいいではありませんか。このナンバー制度を取りやめ、学校にあるべき秩序を取り戻す。 
   それだけで、昨日のような事態は防げるんです」 

鶴屋「ふふん、それは出来ない相談っさね!!」 

古泉「どうして? あなたはどちらかというと善人であるように感じますが」 

鶴屋「それは君の買いかぶりっさ!! 私は善人なんかじゃないよ! いうなれば…そう、狂人かな!!」 

古泉「狂人?」 

鶴屋「狂ってるんだよ! 私はね古泉くん、戦うのが大好きなのさ!!」 

 鶴屋は楽しそうに続ける。 

鶴屋「だからこの学校に『無理やり』入学した! そして強い奴らと片っ端から戦っていったのさ! あの時は楽しかったにょろ…みくるにはその時に出会ったんだよね。 
   みくるをいじめてた奴らを私がやっつけたのが切欠で、友達になったのさ!!」 

朝比奈「あなたなんか友達じゃない!!!!」 

鶴屋「……でね、敵がいなくなっちゃったんだ。もう、私に戦いを挑もうなんて奴らはいなくなってしまってさ。私は気が狂いそうになった。誰でもいい。誰かと戦いたかった」
479 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:05:35.09 ID:/QnK8+/V0 [66/76回(PC)]
古泉「まさか、そんな下らない理由で?」 

鶴屋「そう! 一番になればなんでも好き放題というルールを定めた! いやあ群がってきたよ!! 人間の欲望って言うのは浅ましいねえ!!」 

朝比奈「あなたのその勝手な欲望で定めたルールのせいで、私がどれだけ……!!」 

鶴屋「許してもらおうなんて思ってないよみくる。ごめんなさいも言わない。むしろ逆だね。ありがとうみくる。古泉くんを私のところに連れてきてくれて」 

朝比奈「!! あなたはぁぁああ!!!!」 

古泉「…成程。仰るとおりですね。狂人ですよ、あなたは」 

鶴屋「でしょ? さあ、やろうよ。もうお姉さん我慢できないよ」 

 鶴屋の体に闘志が張り詰め始める。並の人間なら、それだけで逃げ出したくなるようなプレッシャー。 
 しかし古泉は引かない。みくも引かない。恐怖は怒りで薄められている。

486 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:14:55.89 ID:/QnK8+/V0 [68/76回(PC)]
古泉「朝比奈さん、彼女の能力はわかりますか?」 

朝比奈「ありません」 

古泉「え?」 

朝比奈「彼女に能力はありません。鶴屋さんは自身の純粋な戦闘力であの地位にいます」 

古泉「それはつまり、化け物ということですか」 

朝比奈「大丈夫、二人なら勝てます……きっと。頑張りましょう、古泉くん」 

古泉「ええ、これが最後です。ひとつ気合を入れましょうか」 

鶴屋「作戦会議は終わったかい?」 

 鶴屋が一歩前に進む。古泉の体から赤い炎が燃え上がった。 
 紅玉による限界を超えた肉体強化。今まで使わなかったのは、肉体への負担が大きすぎるからだ。 
 下手すればその反動だけで自滅しかねない。それでも、これを使わねば目の前の人間とは到底渡り合えない予感があった。 

鶴屋「いいねえ。じゃ、始めようか」 

 挨拶だとばかりに振るわれた鶴屋の拳。 
 あまりのテレフォンパンチに古泉は悠々とその一撃をかわす。 
 空を切った一撃はそのまま廊下の壁に突き刺さり――――校舎が割れた。
487 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:16:12.04 ID:/QnK8+/V0 [69/76回(PC)]
― 鶴屋さん ― 

体力 S 
力 S 
スピード S 
精神 S 

能力名 
なし
500 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:23:59.99 ID:/QnK8+/V0 [70/76回(PC)]
古泉「朝比奈さん!!」 

 古泉はみくるを抱き上げ、紅玉の能力で飛翔する。 
 二人はそのまま校庭に降り立ち、一瞬遅れて鶴屋も降りてくる。 

鶴屋「そうだよねえ。これくらいは切り抜けてくれなくちゃ困るにょろ」 

古泉「朝比奈さん、離れていてください」 

 古泉は朝比奈に離れているよう指示する。 
 確信した。あの化け物を前に、周りを気にして戦う余裕はない。 

朝比奈「いやです!」 

 だが、みくるは強くそれを拒否した。自分だって戦っている。戦っているんだ。 

古泉「……わかりました。巻き込まれないように十分に注意していてください」 

 古泉は自分の頭を軽く小突く。考えてみれば、さっきの発言は彼女に対して甚だしく失礼だった。
509 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:32:22.07 ID:/QnK8+/V0 [71/76回(PC)]
鶴屋「広くなって動きやすくなったにょろ~」 

 鬼が、迫る。 
 古泉は、決して鶴屋から目を逸らさなかった。 
 集中しろ。彼女は長門さんよりも、涼宮さんよりもきっと速い。 

朝比奈「こ…!」 

鶴屋「どこ見てるんだい?」 

 決して目を離してはいなかった。例え身体強化した長門有希のスピードでも捉える自信があった。 
 それでも彼女の動きを追えなかった。 

鶴屋「一撃で終わるってのはなしだよ?」 

 考えてしたことではなかった。反射的に、今まで幾多の修羅場をくぐった古泉の肉体が反応した。 
 作り出す。鶴屋と自分を覆うように。他者を拒絶する、紅玉のバリア。 

鶴屋「何それ?」 

 だが、鶴屋はまるで何事も無かったかのようにその拳を振りぬいた。 
 吹き飛んだ。紅玉で強化した体があっさりと。
510 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:33:44.20 ID:/QnK8+/V0 [72/76回(PC)]
☆ち・な・み・に☆ 

気絶してたハルヒと長門はちゃんと古泉が助けたよ!! 
描写はしてないけど、よいこの皆は行間を読んで想像してね!!
519 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:40:36.67 ID:/QnK8+/V0 [73/76回(PC)]
古泉「か…は……!」 

 重い、重すぎる一撃。 
 足りないのか。これではまだ。 
 ならば振り絞れ。体への反動など恐れるな。 
 どのみち、このままでは殺される。 

古泉「はぁぁ…!」 

鶴屋「楽しい! 楽しいねぇ!! 古泉くん、君は最高だよ!!」 

 笑いながら鶴屋は後ろを振り返る。そこには超スピードで古泉が回りこんできていた。 

古泉「く…!」 

 古泉の一撃は空を切る。カウンターで腹に膝を叩き込まれた。 

古泉「かは…!」 

 だが、先ほどよりも身体強度を高めた古泉は踏みとどまる。 

鶴屋「おお!?」 

古泉「はあ!!」 

 今度は古泉の一撃が鶴屋の体を吹き飛ばした!
523 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:46:18.96 ID:/QnK8+/V0 [74/76回(PC)]
「おい、見ろよ! 鶴屋だ! 鶴屋が戦ってる!!」 

「相手誰だよ!! 鶴屋に挑むやつなんて何年ぶりだ!?」 

国木田「みなよ谷口。古泉くんだ。凄いね、彼。とうとうたどり着いちゃったよ」 

谷口「けっ、どーでもいいよ。イケメンが活躍するのなんて見ても楽しかねーや」 

国木田「君ってやつは、まったく……」 

―――――― 

喜緑「会長。古泉くんが」 

生徒会長「大したもんだ。たどり着いたのかアイツ。……SOS団を倒したのか」 

喜緑「彼なら、この生徒会に意味を取り戻してくれるかもしれませんねえ」 

生徒会長「は、どうかな。過度な期待は後で辛くなるだけだと思うがな」 

喜緑「タバコは駄目ですよ。私、タバコの味嫌いなんです」 

生徒会長「…ち、わかったよ」
537 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:52:31.33 ID:/QnK8+/V0 [75/76回(PC)]
 その戦力差は絶望的だった。 

 一撃の重さが違う。手数が違う。スタミナが違う。何もかもが劣っている。 

 とっくに膝を折りたくなるようなダメージを重ねて、それでも古泉は戦っていた。 

 彼は一人ではなかった。共に戦っている朝比奈みくるの存在が、古泉の生命線だった。 

 みくるは頭を抑えながら鶴屋の動きを予知し続けている。声を枯らし、それを古泉に伝え続けている。 

 だからかわせた。だから当てれた。だから、あの化け物と互角に渡り合っていれる。 

 それだけではない。共に戦うみくるの姿が、折れそうな古泉の心を支えていた。 


 鶴屋は知っている。 
 みくるが古泉の支えとなっていることを。
543 : 投稿日:2009/07/31(金) 23:58:54.84 ID:/QnK8+/V0 [76/76回(PC)]
 だけど鶴屋はみくるを狙わない。 

 かつての友達だから? 

 違う。ただ単純に楽しいからだ。 

 みくるがいれば、古泉は倒れない。この闘争をまだまだ続けることが出来る。 

 もっとだ。もっと、もっと。 

 今この一時を生きる鶴屋にとっても、みくるの存在はありがたかったのだ。 

 親友を踏みつけてまでようやく手に入れたこの戦いを、少しでも長く楽しみたい。 

 それだけが、鶴屋の全てだ。
555 : 投稿日:2009/08/01(土) 00:06:41.43 ID:2kP6iJVz0 [1/22回(PC)]
 しかし――― 

古泉「く…は…」 

 限界が来た。精神力や根性ではどうにもならない、物理的な限界が。 
 遂に古泉の膝が折れる。うつ伏せに倒れそうになる体を、古泉は慌てて両手で支えた。 

朝比奈「古泉くん…ごほっ!」 

 みくるも限界だ。喉は潰れ、痛むのかずっと頭を抑えている。 
 対する鶴屋は立っていた。 

鶴屋「はっ…はっ…いやあ、息を切らしたなんて何年ぶりだろね! 最高だよ古泉くん、みくる! 二人は最高っさ!!」 

 無事ではない。対する鶴屋もダメージを負っておる。 
 だが、追撃する余力がもう二人には残っていない。
 

561 : 投稿日:2009/08/01(土) 00:16:39.49 ID:2kP6iJVz0 [2/22回(PC)]
古泉(出来るのは―――精々悪あがきくらいのものでしょうか) 

 古泉は残った全精力を振り絞って、その手のひらに紅玉を作り出す。 
 でかい。今までの野球ボールのようだったソレとは異なり、今はバスケットボールよりもなお大きい。 

鶴屋「へええ…」 

 鶴屋は笑う。邪魔すればいとも簡単に防げるだろう。 
 しかし鶴屋はそれをしない。悪あがきは彼女にとっても大歓迎なのだから。 

古泉「朝比奈さん、すいません。これが僕に残った最後の力です」 

 古泉はみくるに向かって弱々しく笑ってみせる。 

古泉「これが通じなければ、残念ながらもう打つ手がありません。なんとも不甲斐ないことです」 

 みくるはじっと古泉を見つめている。古泉はふいに笑みを消すと、そのまま頭を下げた。 

古泉「申し訳ありません」 

 約束を守れなかった。 
 その思いが、古泉の口からそんな言葉を吐き出させた。
580 : 投稿日:2009/08/01(土) 00:24:39.64 ID:2kP6iJVz0 [3/22回(PC)]
朝比奈「謝らないで」 

 凛とした、強い声。古泉は下げた顔を思わず上げていた。 
 みくるは微笑んでいる。 

朝比奈「通じます、きっと」 

 自信に満ちた声。 

朝比奈「古泉くんは本当の正義の味方なんだと思います。昨日出会った私なんかのお願いを聞いてくれて、今こんなにぼろぼろになるまで戦ってくれて……こんな優しい人、私今まで出会ったことがありませんでした」 

古泉「いや、そんな…僕はただ、自分の任務で……」 

朝比奈「知ってますか? 古泉くん」 

古泉「え?」 

朝比奈「正義は、必ず勝つんです」 


 ―――火が入った。もう動かなかったはずの足が動く。入らなかった力が漲る。 
 赤い炎がさらに手のひらに集中していく。最後の紅玉は、さらに大きくなっていく。 

古泉「最後です。行って来ます、朝比奈さん」 

朝比奈さん「おかえりを言わせてくださいね」 

 軽口を叩きあって、二人は笑った。
591 : 投稿日:2009/08/01(土) 00:33:13.13 ID:2kP6iJVz0 [4/22回(PC)]
鶴屋「さあ、最後の一手は決まったかな?」 

古泉「ええ、最後に盛大な花火を打ち上げるとしましょうか」 

鶴屋「おやおや祭りはもうおしまいかい?」 

古泉「祭りは必ず終わるものですよ、鶴屋さん。もう終わらせましょう。この馬鹿げた乱痴気騒ぎを」 

鶴屋「終わらせないよ。祭りは続く。私が続けていく」 

 二人は20メートル程の距離をとり、向かい合う。 
 鶴屋にとって、それは一瞬で詰めれる距離。 
 しかし鶴屋は待つ。古泉の最後の一撃を。 

鶴屋「さあ、見せてごらん!! 君の最後の瞬きを!!」 

古泉「ええ! 特とご覧あれ!! お代は見てのおかえりです!!」 

 振りかぶる。炎天下の甲子園で投げるピッチャーのように。 
 満身の力を込めて―――――!! 


古泉「ふん―――もっふ!!!!」
604 : 投稿日:2009/08/01(土) 00:44:13.24 ID:2kP6iJVz0 [5/22回(PC)]
 放たれた一撃! 古泉が今まで放ったどの一撃よりも速く!! 
 しかしそれは鶴屋にとって容易くかわすことが出来る速度にすぎない! 

 ―――鶴屋はかわさない! 受ける! 逃げて得た勝利になど何の価値も無い!! 

鶴屋「うおおおおりゃあああああああ!!!!!」 

 鶴屋は握り締めた拳を肥大した紅玉に打ち付けた! 

鶴屋「ぬ…! ぐぐぐ…!!」 

 押される―――鶴屋の体が球の勢いに押され、後方にずらされていく。 
 予感する。この一撃、食らえば自分が負けることを!! 
 鶴屋は踏みとどまり、さらに拳を紅玉に食い込ませていく! 
 紅玉に亀裂が入った。 

鶴屋「勝った、これで――――!!」 

 瞬間、鶴屋に怖気走る。振り向く。そこにいた人間は―――!! 

???「ようやくあなたの後ろを取れました。この未来にたどり着くまでに27回かかりましたよ、鶴屋さん」 

鶴屋「そんな、あんたは――!」 

 驚愕する鶴屋のわき腹に突き立つ刃。 
 そして―――紅玉は爆裂した。
620 : 投稿日:2009/08/01(土) 00:54:01.71 ID:2kP6iJVz0 [6/22回(PC)]
古泉「やったか……?」 

 最後の気力を振り絞り、煙が晴れるのを見届ける。 
 煙が徐々に晴れ―――そこに会ったのは倒れ付す鶴屋の姿だった。 

古泉「やった…!」 

朝比奈「古泉くん!!」 

 みくるが古泉の胸に飛び込んでくる。 
 思わず尻餅をつきそうになるのを必死でこらえた。ヒロインをその胸でしっかりと抱きしめてこそ男というものだ。 

古泉「終わりましたよ朝比奈さん。これで、僕がナンバー1になりました」 

朝比奈「うん、うん!!」 

古泉「これでこの学校の馬鹿げたルールを変えることが出来ます。皆が笑って過ごせる学園生活がやってくるんです」 

 古泉は想像する。強いも弱いも関係ない、真に平等な、本来あるべき学園生活。 
 ああ、それは何と素晴らしいことだろうか。
636 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:03:17.02 ID:2kP6iJVz0 [7/22回(PC)]
古泉「まずはこの馬鹿げた『弱肉強食』のルールを無くします。そうすればやってくるんです。強い者も、弱い者も手を取り合って笑える毎日が!」 

朝比奈「ううん、ルールはこのままでいいと思う」 

 ―――耳を疑った。何を言っているんだ朝比奈さん。それでは何も変わらないじゃないか。 

朝比奈「変わるよ。そこだけ変えるの。『弱いものが強いものを食らう強肉弱食』。そうやって初めて今まで虐げられてきた弱者は救われる」 

 ―――一緒だ。結局、誰かが笑って誰かが泣くその構図は変わらない。 

朝比奈「…やっぱり、古泉くんは『正義の味方』なんだね。あんな奴らまで救おうっていうんだ。 
    ごめんなさい。私には無理なの。私は、私を虐げてきた奴らを許せない」 

 キラリと光る刃が一閃された。 
 古泉はギリギリで振るわれたナイフを回避する。 
 脳裏に蘇る、誰かの言葉。 
 『SOS団に気をつけろ』。
654 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:11:39.59 ID:2kP6iJVz0 [8/22回(PC)]
朝比奈「ナンバー1のバッジは、私がもらいます」 

古泉「朝比奈さん…どうして!! どうして!!」 

朝比奈「…もうわかってるかもしれないけれど、私は虐められていたんです。不確定な未来予知なんて能力しか持たない私は、このルールの下じゃ格好の餌食だった。 
    まるで家畜のような扱いですよ。実際、牛女なんて呼ばれて、名前すら呼ばれていなかったんですけど」 

 みくるは笑っている。 
 さっきまであんなに魅力的だった微笑は、今はもう跡形も無く歪んでしまっていた。 

みくる「しまいには喋ることも許されなくなって、牛の鳴き声で喋ることしかできなくなりました。もぉー、もぉーって。上手でしょ? 鳴き真似」 

古泉「はっ…! はっ…!」 

 胸が締め付けられ、吐き気を催した。 
 湧き上がる悲しみを堪えることができなかった。 

 古泉はいつの間にか涙を流していた。
661 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:20:54.11 ID:2kP6iJVz0 [9/22回(PC)]
朝比奈「こんな私のために泣いてくれるんですね。ありがとう」 

古泉「朝比奈さん…あなたは…あなたは…!」 

朝比奈「慰めはいりません。私が欲しいのはバッジだけ」 

古泉「これは渡せません…渡すわけにはいかない!!」 

朝比奈「じゃあ、奪うだけです」 

 みくるは微塵も揺らがず言い切った。 

朝比奈「どうして、虐げられる家畜に過ぎなかった私がこんな大それたことを考えたと思います?」 

古泉「…?」 

朝比奈「目覚めたんです。新しい力に。『強い絶望などがきっかけで能力が進化したりすることもある』んですって。 
    本で調べてみてびっくりしちゃいましたぁ。それなら目覚めるはずだなあって、笑っちゃいましたよ」 

朝比奈「想像してみて古泉くん。家畜として飼われている牛さんや豚さんが、人間に反逆できる力を持ったらどうすると思う?」 

朝比奈「私とおんなじことをすると思うな」
668 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:29:11.38 ID:2kP6iJVz0 [10/22回(PC)]
古泉「あなたは…牛や豚なんかじゃない……人間だ!!!!」 

 古泉は涙を流し、叫ぶ。 

朝比奈「ありがとう。でもごめんなさい。私はもう止まれないの」 

古泉「止める! 僕が止めてみせる!!」 

 涙で頬を濡らしながら、自分を真っ直ぐに見据える古泉一樹。 
 突然、脳裏に懐かしい思い出が蘇ってきた。 
 それはなんてことのない思い出。 
 鶴屋と二人で肉まんを分け合って食べた思い出だった。 
 でも―――みくるは一瞬揺らいだ心を必死で押さえつける。 

朝比奈「古泉くん…私、ちょっとだけあなたのことが好きでした」 

古泉「え?」 

 そして―――みくるはその手で前髪をかきあげ、呟いた。 

朝比奈「『時の漂流者-タイム・ロビンソン-』」
670 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:31:20.34 ID:2kP6iJVz0 [11/22回(PC)]
古泉「やったか……?」 

 最後の気力を振り絞り、煙が晴れるのを見届ける。 
 煙が徐々に晴れ―――そこに会ったのは倒れ付す鶴屋の姿だった。 

古泉「やった…!」 

朝比奈「古泉くん!!」 

 みくるが古泉の胸に飛び込んでくる。 
 思わず尻餅をつきそうになるのを必死でこらえた。ヒロインをその胸でしっかりと抱きしめてこそ男というものだ。 

古泉「終わりましたよ朝比奈さん。これで、僕がナンバー1になりました」 

朝比奈「うん、うん!!」 

古泉「これでこの学校の馬鹿げたルールを変えることが出来ます。皆が笑って過ごせる学園生活がやってくるんです」 

 古泉は想像する。強いも弱いも関係ない、真に平等な、本来あるべき学園生活。 
 ああ、それは何と素晴らしいことだろうか。
675 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:35:30.76 ID:2kP6iJVz0 [12/22回(PC)]
古泉「まずはこの馬鹿げた『弱肉強食』のルールを無くします。そうすればやってくるんです。強い者も、弱い者も手を取り合って笑える毎日が!」 

朝比奈「ううん、ルールはこのままでいいと思う」 

 ―――耳を疑った。何を言っているんだ朝比奈さん。それでは何も変わらないじゃないか。 

朝比奈「変わるよ。そこだけ変えるの。『弱いものが強いものを食らう強肉弱食』。そうやって初めて今まで虐げられてきた弱者は救われる」 

 ―――一緒だ。結局、誰かが笑って誰かが泣くその構図は変わらない。 

朝比奈「…やっぱり、古泉くんは『正義の味方』なんだね。あんな奴らまで救おうっていうんだ。 
    ごめんなさい。私には無理なの。私は、私を虐げてきた奴らを許せない」 

 キラリと光る刃が一閃された。 
 古泉はギリギリで振るわれたナイフを回避する。 



朝比奈「そう…あなたはここで右によけた」 

 軌道を変えた朝比奈のナイフが古泉の胸へと吸い込まれる。 

古泉「え…?」 

朝比奈「さよなら…古泉くん」 

 ―――これが、『時の漂流者-タイム・ロビンソン-』の真の能力だった。
687 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:43:10.19 ID:2kP6iJVz0 [13/22回(PC)]
 今いる現在を基点とし、未来あるいは過去に移動する『時の漂流者-タイム・ロビンソン-』 

 その能力に目覚めてなお、みくるはトップになれなかった。 

 長門有希、涼宮ハルヒ、そして鶴屋。この三人にどうしても勝てなかった。 

 だから、探していた。 

 自分と共に、三人を倒しうる能力者を。 

朝比奈「私はあなたを利用していたの」 

古泉「そん……な…」 

 愕然とした面持ちで胸に刺さったナイフを見つめる古泉。 
 これで終わったとみくるは確信していた。 

 そのはずだった。
696 : 投稿日:2009/08/01(土) 01:49:58.90 ID:2kP6iJVz0 [14/22回(PC)]
 古泉の姿が赤くぼやける。同時に古泉の胸に刺さっていたナイフはその体をすり抜け、ぽとりと落ちた。 

朝比奈「何!? 何が起こっているの!? はっ!!」 

 朝比奈の脳裏に浮かぶ、かつて本で目にした一節。 
 『強い絶望がきっかけで、能力が進化することもありえる』。 

朝比奈「しまった! まさか!! この土壇場で!!」 

 死の際に来て古泉は目覚めた。 
 紅玉-レッド・クリムゾン-、その真の能力。 
 自分自身をエネルギーへと変化させる能力に!! 

朝比奈「くっ! 『時の漂流者』―――!!」 

 朝比奈はその両手を古泉に掴まれていた。 
 『時の漂流者-タイム・ロビンソン-』は―――発動しない。
708 : 投稿日:2009/08/01(土) 02:01:32.46 ID:2kP6iJVz0 [15/22回(PC)]
古泉「あなたが、何故こんなことをしたのか。そして何をしようとしているのかは分からない。だから、とりあえず両手を塞がせてもらいました」 

朝比奈「どうして…なんで知ってるの!? 『時の漂流者の発動には頭部に触れる必要があることを』!!」 

古泉「あなたは今まで、未来を予知した時には必ず何かしらの形で頭に触れていました。最初は頭痛をこらえているのかとも思いましたが、実に涼しい顔をしている時もありましたしね」 

朝比奈「そんな……そんなところまでずっと見てたっていうの?」 

古泉「人間観察が趣味のようなもので」 

 みくるはその場に崩れ落ちた。能力発動のタネがわれた以上、もう発動を許すような甘い男ではないことはみくるが一番よく知っていた。 

古泉「朝比奈さん…教えてください。どうしてあなたはこんな真似を……」 

朝比奈「理由…理由なんて…ただ一番になって、自分の好きに生きたかった。それだけですよ」 

古泉「朝比奈さん……」 

朝比奈「古泉くん、あなたなら出来るかもしれませんね。誰もかもが幸せに生きられる学園をつくること。でも、私にはあんな奴らが笑ってるのを見るなんて耐えられない。だから―――」 

古泉「朝比奈さん。やめてください。僕はあなたを撃ちたくはない」 

朝比奈「『時の―――』!!!!」 

古泉「朝比奈さん!!!!」
716 : 投稿日:2009/08/01(土) 02:07:04.65 ID:2kP6iJVz0 [16/22回(PC)]
 古泉は立ち尽くしていた。その足元には朝比奈みくるが倒れ付している。 

古泉「僕は……皆が笑って過ごせる学園にしたかっただけだ」 




 僕は―――あなたに笑っていて欲しかっただけだ。 




古泉「僕は…! 一体何のために……!!」 

 拳を血が出るほど強く握り締める。 
 全てが終わった後に残ったものは何も無い。 
 虚無感と虚脱感だけが残っただけだ。 

???「あ、あの……」
725 : 投稿日:2009/08/01(土) 02:17:17.23 ID:2kP6iJVz0 [17/22回(PC)]
 かけられた声に振り向く。 
 そこには見覚えのある少女が立っていた。 

阪中「あの、私、阪中っていうのね。それで、こっちがルソー」 

 阪中と名乗った少女はそう言ってその胸に抱いた小さな犬を顔で差した。 
 本物の犬ではない。これは彼女の能力によって生み出されたものだろう。 

古泉「…何か用ですか?」 

阪中「あのね、私お礼を言いにきたの」 

古泉「お礼?」 

阪中「私もルソーもとっても弱いのね。だから今までずっといじめられてきたの。でも、あなたが鶴屋さんを倒してくれた。これで、この学校はもう少しよくなると思うのね!」 

 少女はもじもじしながら続けた。 

阪中「だから、その――――ありがとう!!!!」 

古泉「―――!!」 

 少女の言葉がずっと押しとどめていた心の堰を破壊した。 
 古泉の目からとめどなく涙が零れ落ちる。 

古泉「うああああーーーー!!!!」 

阪中「ふわ! よし、よしよし。何かわからないけど、大丈夫なのねーー!!」
729 : 投稿日:2009/08/01(土) 02:21:10.50 ID:2kP6iJVz0 [18/22回(PC)]

 『県立北高』―――暴走したこの学校にたった二日で平和にした少年の名は新たな伝説として語り継がれる。 

 後に少年は学校立て直しのエキスパートとして活躍するのだが、それはまた別の話。 


 今はただ、少年は少女の胸を借りて泣き続けるのであった。
733 : 投稿日:2009/08/01(土) 02:24:07.36 ID:2kP6iJVz0 [19/22回(PC)]
― 朝比奈 みくる ― 

バッジナンバー:4 

能力名 『時の漂流者-タイム・ロビンソン-』(真) 
現在を起点に、過去か未来に移動する能力。回数に制限は無く、朝比奈みくるの精神力が持つ限り移動可能である。 
また自分だけでなく、『指定』した一人を共に移動させることも出来る。
739 : 投稿日:2009/08/01(土) 02:26:26.65 ID:2kP6iJVz0 [20/22回(PC)]
『文化祭映画第2弾 朝比奈みくるの復讐 企画会議』 

長門「…という脚本を書いてみた」 

ハルヒ「……いい」フルフル… 

キョン「よくねーよ!! また俺出てねぇしぃ!!!!」 


 おしまい
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1248967258/