1: 2012/01/20(金) 19:34:54.64 ID:9x//76lD0

理屈などをすっとばして、今日もほむらの家に居座る概念鹿目まどか。
ほむらは手に持った本をしまいながら、今日も神様の相手をする決意を固めた。

「まどか、何を言ってるのかしら」

「何ってガサ入れ、家宅捜査だよほむらちゃん。私は概念として、そして一人の魔法少女として、ほむらちゃんの自室をガサ入れする必要があるんだよ」

「要するに暇なのね」

今日もクールな転校生、暁美ほむらは鋭い。

「ほむらちゃんに奪われたまどパン、全て回収しないと…」

「取ってないし、何かと私を変態キャラにするのはやめてくれないかしら」

「とか言って『このタンスはまどパンスペースよ、グフフ』とかやってるんでしょこの変態!近寄らないで!!」

「話を聞いて頂戴」

2: 2012/01/20(金) 19:36:41.32 ID:9x//76lD0

とりあえず場をまとめる。

「でもほむらちゃんの部屋って実はボロくて狭いよね」ガサゴソ

「失礼ね…。でもちゃんとあるものは揃ってるし、気にしてないわ。住めば都よ」

「まだ若い瑞々しい女子中学生が一人暮らし…妄想が捗るね、ほむらちゃん!」

「何の話よ…ってまどか、そこはっ!」

「これは……日記帳?ほむらちゃん、日記つけてたんだ」

「……ええ。貴女を救う間にね。日記というよりも、記録帳に近いかしら」

「ふーん……」ペラペラ

4: 2012/01/20(金) 19:37:45.36 ID:9x//76lD0

「!こ、これは…!」

「な、何かしら。そんな大した事書いてない筈だけど…何か書いてあったかしら?」

「『○月×日晴れ。またまどかを救えなかった。何がいけなかったんだろう。今度こそ必ず貴女を救ってみせる。必ずだ』」

「………」

「……ほむらちゃん、私のためにずっと戦ってくれたんだよね。…本当にありがとう」

「……いいのよ。その、結局私は貴女を救えなかった訳だし…」

「うん……」

少しの沈黙。
だがそこに気まずい空気は無く、むしろ居心地のよさすらほむらは感じていた。

7: 2012/01/20(金) 19:39:51.70 ID:9x//76lD0

「あれ、これまだ続きがあるね」

「ちょっ。まどかもうやめ」

ペラペラ
しかし気付いてしまったまど神様の手はもう止まる事を知らない。

「『○月○日曇り。今日のまどか。水溜まりに突っ込んで水濡れになってしまった。可愛い』」

ペラペラ

「『○月△日。今日のまどか。自室で宿題をするまどか。寝顔とポニテが可愛いかった』」

ペラペラ

「『○月□日。今日のまどか。トイレで用を足すまどか。可愛い』」

ビリビリ

「『○月?日。今日のまどか。お風呂でプロポーションを気にするまどか。可愛い』」

ビリビリビリビリ

「私の繰り返した一ヶ月があああああああ!?!?」

「どういうことかな、ほむらちゃん」

思わずほむらの胸ぐらを掴むまどか。
後ろからは火のようなオーラが見えるが、これも概念の成せる技なのだろうか。

8: 2012/01/20(金) 19:40:32.61 ID:HOruEs9g0
ほむほむって親どうしてんの?

9: 2012/01/20(金) 19:41:50.05 ID:9x//76lD0
――――――

「ほむらちゃん、大丈夫…?」

「ええ…。怒りのあまり筋肉バスター決められそうになった時は死ぬかと思ったけど……」

「ティヒヒ!ごめんね?」

天使のような笑顔でまどかは頭をコツン☆と叩く。
どこまでが計算された行動なのかわからないところが、彼女の恐ろしさと言えよう。

その行動にほむらが若干の悪寒を感じたその直後だった。
窓から一つの光球が入り込んでくる。まどかはそれを見て何かを思い出したように言った。

「あーさやかちゃん。ごめん忘れてたよ」

「それ美樹さやかなの!?」

流石のクール転校生、暁美ほむらも驚きである。

10: 2012/01/20(金) 19:42:46.70 ID:9x//76lD0

「ちょっと、美樹さやか!」

「んー何さ転校生、しばらく見ない内に大きくなったねえ。……胸の方は一向に変わらないけど」プークスクス

「そこは今関係ないでしょう!というか貴方が小さくなってるのよ!」

さやかのサイズは、どこぞのねんどろいどサイズくらいまで小さくなっていた。

「ほむらちゃん、驚かせちゃったみたいだね」

「まどか…これは一体どういうことかしら」

まどかはしばらくどう説明したものか悩む。
なにせ彼女は概念で、さやかはその理に導かれたもの。
きっと一個人には計り知れないような事情が、そこにはあるのだ。

やがて、彼女の口が開いた。

「持ち運びに便利だったから」

「えらく省略したわね」

普段から鍛えられているほむらは、もはやこの程度では驚かない

12: 2012/01/20(金) 19:44:01.02 ID:9x//76lD0

「でも美樹さやか、貴女はいいの?そんな姿になって」

「いやいやむしろ便利だよ。今ならQBの気持ちがわかるね」

「そ、そうなの…」

「恭介の家に忍び込んでパンツ盗んだり恭介が体育でいない間に制服の匂い嗅いだり恭介が仁美とイチャコラしてる隙に真上から胡椒振り撒いたり」

「まどかもだけど貴女もよっぽどね」

円環の理に引かれただけあって、さやかにも素質があったのかもしれない。

「なんだよ転校生、人の事言えないくせにー」アハハ

「だから私を変態キャラにするのは……まあいいか。貴女も本当に変わらないわね」

「そっちもね、元気そうで安心したよ」

アハハ ウフフ

「むー……」

15: 2012/01/20(金) 19:45:20.80 ID:9x//76lD0

「ほむらちゃんとさやかちゃん、これ以上くっつくの禁止!!」プクー

「え……何故かしら。何かいけなかった?」

「駄目も駄目、絶対禁止だよ!こういう展開になると必ず私がかませになるか空気嫁になるかがお約束なんだから!」

「まどか…。言っている意味はよくわからないけど、ごめんなさい。放置させちゃったわね」

「そうだよ!後少しでハイパーまどかアローで見滝原を火の海にしそうだったよ!」

「やめてくれないかしら」

18: 2012/01/20(金) 19:46:15.89 ID:9x//76lD0

そして更に場を改める

「そういえばここに向かう途中、マミさんに会ったよ」

「マミさん!そういえばしばらく会ってないなあ」ガサゴソ

「何か話したの?」

「うん、伝言預かってる。……『ふ、親愛なる時間転移者(クロノス)暁美ほむら、そして円環の慈愛神…鹿目まどか。久しぶりね。貴女達の活躍には私も感嘆の意を評しているわ。まさにそれは闇夜に咲く一閃の銃弾(ティロ・フィナーレ)…』」

「相変わらずそうで安心したわ」

「むしろ何かこう病気的なのが悪化してるね……」

見滝原に君臨する一凛の華とは、彼女のことだ。
最近の趣味はQBに感情を芽生えさせるため、あらゆる手を尽くす事だとかなんとか。

19: 2012/01/20(金) 19:47:29.03 ID:9x//76lD0

「でもマミさん、以前より更に素敵になったよね!私やっぱり憧れちゃうなあ」

「ふ、ふん。あんなののどこがいいのかしら。巴マミなんかより私のが役に立つわ」

「へぇ……」

まどかはジロジロと嫌らしい目付きでほむらを品定めする。

「な、何かしら」

「じゃあさ、ほむらちゃんはどんな所がマミさんより役に立つ…いや、魅力的だと思うの?」

「!それ、は……」


ガチャン
「あーほむらー。冷蔵庫のハム食べていい?」

20: 2012/01/20(金) 19:48:33.91 ID:9x//76lD0

「まず……私の方がお姉さんっぽいわ!」

「ふむふむ」

「そして文武両道、才色兼備……。おまけに一途ときたわ。まどかのためだけにずっと戦って来たんだもの。加えて一人暮らしで家事がこなせるポイントも見過ごせないわね。あと真実を知って突然やってくる転校生というのもポイント高いんじゃないかしら。それから……」

ポンッ
まどかがほむらの肩を叩いた。
突然の事に驚くほむら。よく見るとまどかの目からは涙も窺える。

「もういい、もういいんだよほむらちゃん……」

「まどか……」

「例えマミさんより劣っていても、ほむらちゃんはほむらちゃんなんだよ。自分の今の姿にどんと、胸を張ればいい。……あー、ほむらちゃんには難しいこと言っちゃってるね、ごめんね」

「結構酷いわね、まどか」



「お、チーカマあるじゃん。やったね」モグモグ

21: 2012/01/20(金) 19:50:11.07 ID:9x//76lD0

「大体、それを言うなら一番の被害者は私なんだよほむらちゃん!」

「どういう事かしら」

「マミさんのように大きすぎず、かつほむらちゃんみたいに小さすぎない、至って普通の中学生サイズ…。これはつまり、特徴がないことを意味してるんだよほむらちゃん!!」

「わ、わかった!わかったから揺さぶらないで!」ガクガクガクガク

「はあ、はあ……」

「気持ちはわかるわ。要するにコンプレックスを持ってるのよね?」

「うん。私概念だけど……やっぱりスタイル良くなりたいんだよ……神様である前に、一人の少女だから」

「まどか……」

23: 2012/01/20(金) 19:51:34.83 ID:9x//76lD0

「なら、一緒にスタイル良くなりましょう?」

「グスッ……ほむらちゃん?」

「大丈夫よ、まどか。第二次成長が遅い子は大体、16くらいで発育しだすっていうじゃない。だから今から頑張れば…きっと大丈夫よ」

「ほむらちゃん…。私、私!」グスッ

「いいのよ何も言わなくて。私は貴女の最高の友達。いつだって無条件で…味方なのよ」ニコッ

「ほむら……ちゃん……」

「まどか……」

「マドカァー!」

「ホムラチャン!」

「マドカァー!」

「ホムラチャン!」

二人の掛け声が近所迷惑も無視して部屋に響き渡る。
お互いの友情を再確認した二人の表情は、とても晴れやかであった。

…………………

24: 2012/01/20(金) 19:53:43.04 ID:9x//76lD0

「でもまどかって神様だし自分の容姿くらい思うがままに変えれるよね」

「流石に空気読もうよ、さやかちゃん。そんなんだから上条くん盗られるんだよ」

「えへへ…」

「そこ照れるところじゃないよね?絶対おかしいよ」

「まどか……今の話は本当なのかしら?」ユラリ

「えっあっほむらちゃん……」

「私を、騙したの……?」

「えと、それはその、なんていうか……」

25: 2012/01/20(金) 19:54:18.14 ID:9x//76lD0

あまりの気迫に押されるまどか。
普段の主導権はまどかが握っているのだが、こういう時ばかりはそれも厳しい。

今、裁きの鉄槌が下される。

「………えへっ?☆」

「まどか、今日晩御飯抜き」

「いやだよおおおおおおおおおおおおおおお」

こうして暁美ほむらの受難は続いていくのでした


おわり

26: 2012/01/20(金) 19:54:40.74 ID:9x//76lD0
反省はしているが後悔はしていない

31: 2012/01/20(金) 19:58:09.37 ID:3lF078hQ0
乙だ

テンポいいし面白かったぞ

引用元: まど神「ほむらちゃん、ガサ入れだよ!」