1:2016/12/01(木)00:19:20 GZx
彡(゚)(゚)「おかしいでホンマ・・・・・・ワイは大垣城の見学に来てたんや・・・・」
彡(゚)(゚)「周りの景色がおかしいと思ったら・・・・・・・・」
彡(゚)(゚)「なんなんやここは。意味がわからへん・・・・・・」
2:2016/12/01(木)00:20:27 GZx
2016年12月 大垣城
(´・ω・`)「お兄ちゃん、寄り道もほどほどにね。僕らは京都の大会に参加するんだから。電車の時間がそろそろ・・・・・・」
彡(゚)(゚)「わーっとるわい。あと5分見たらここを出るで。」
彡(゚)(゚)(ワイは軍事史ライター、恩慈英 やきう。

今回原ちゃんと、京都で開かれる軟式野球大会に出場する。その道中、ちょいとチームの皆と別れてこうして寄り道をしとるんや。


どうしてもこの城を見たくってな・・・・・・)
4:2016/12/01(木)00:21:54 GZx
彡(゚)(゚)「よっしゃ見るべきもんは見た!!待たせたな!!」
(´・ω・`)「うん!!行こう!!」


大通りを北に歩けば大垣駅である


城の外へ出る二人。

次の瞬間、稲光のようなまばゆい閃光が二人を包む・・・・・・が、それも2秒程度のことで、すぐに視界は戻った。


何だったんだ今のは・・・・・・落雷?
7:2016/12/01(木)00:23:20 GZx
(´・ω・`)「・・・・・・あれ・・・・・おかしいな?」
彡(゚)(゚)「こんなにさびれとったか・・・・・ってか自然の林そのままやないか」
(´・ω・`)「道をまちがえたわけじゃないよね・・・・・」
彡(゚)(゚)「まったく違う土地みたいや・・・・・・」

困惑しながらも、なにかに誘われるようにその林の中の獣道を二人は進む。
彡(゚)(゚)「おかしいと思わんか?」
(´・ω・`)「いまさらおかしいって言われてもねえ・・・・・」
彡(゚)(゚)「・・・・・空き缶や空き袋みたいなゴミがない。
車の轍も、電線もない・・・・・文明のにおいが全くしないんや!!」


(´・ω・`)「!?マジかよ・・・・・・・・!」


彡(゚)(゚)「いったいここは・・・・・・・・」






不意に、二人のそばの茂みが動く
8:2016/12/01(木)00:24:18 GZx
10数名の男が、わらわらと飛び出してきた。


そして男たちは皆、戦国時代の甲冑を身にまとい、槍や刀を握っていた


彡(゚)(゚)「ファッ!!??」



一体何なんだ、映画のロケかイベントか・・・・・・?


とにかく・・・・・
10:2016/12/01(木)00:25:42 GZx
「うぬら治部の手のものか!?」

彡(゚)(゚)「はあ!?」

「面妖な奴、斬ってしまえい!!」

一人の武士の長槍がしなり、恩慈英の脳天へと振り下ろされる。



コンマ数秒のうちに、恩慈英は即断した。


彡(゚)(゚)(この殺気・・・・・・ホンモノや!!)


反射神経が瞬時に総動員され、間一髪で致命的一撃を躱す!


「ぬうう!!小癪な!!」


一気に三人の鎧武者が、恩慈英と原住に斬りかかる!
12:2016/12/01(木)00:26:13 9wQ
クレしんの映画かな?
15:2016/12/01(木)00:27:13 GZx
次の瞬間、金属の棒が横薙ぎに振るわれた


鎧武者たちは槍や刀を跳ね飛ばされ、後方に吹き飛ばされる。


恩慈英がバットケースから金属バットを抜きはらい、フルスイングしたのだ!


しかも恩慈英は178センチの長身。

襲い来る男性たちの平均身長は160センチに満たない。
つまりこの場では恩慈英は並外れた巨漢戦士なのであった。



2度目のフルスイングで更に別の3人が吹き飛ばされる。
恩慈英の後ろから斬りかかった一人が、原住の投げた石を顔面に喰らい昏倒する。
なんとか撃退できるか・・・・・・



そう思った矢先に、30名近い兵士が殺到してくるのが見えた。
「斬れ!斬り捨てい!!」

彡(゚)(゚)(クッソ!新手か!なんとか暴れて逃げるしかないで!)



それにしても・・・・やはりこの世界は・・・この時代は・・・・
17:2016/12/01(木)00:28:19 GZx
バットを握りしめ、背中合わせに立ち恩慈英と原住は見よう見まねの構えを取る。

(´・ω・`)「く、来るなら来やがれ!」

彡(゚)(゚)「草野球の1番と4番打者をなめんなや!!」


2人を警戒しつつも、武士たちは包囲の輪を狭めてくる。

彡(゚)(゚)(くーワイはここで・・・・・いや!!死なんでワイは!!)




バットのグリップに力を込めたとき、甲高い声が響いた
21:2016/12/01(木)00:29:22 GZx
「かかれえ!かかれえ!!」


十数名の騎馬武者隊。


その中心には・・・・・190センチを超える巨躯の男


長大な大身の槍を、風車のように振り回す。
恩慈英を取り囲んでいた武士たちは、露骨に動揺した。
数名が一撃で消し飛ばされるのを見て、完全に戦意喪失する。


「ひいいいいいっ、退けい!退けい!!」

蜘蛛の子を散らして退散する男たち。
22:2016/12/01(木)00:30:17 GZx
巨躯の男は、馬上から恩慈英らに声をかける。

「おぬしらは異人か?」

彡(゚)(゚)「い、いえ、日本人・・・・・日の本の者です。助けて頂きありがとうございます。」


「珍妙不可思議な出で立ちであるな。この世のものではないかのようだ。名はなんと申す?」
25:2016/12/01(木)00:31:44 GZx
彡(゚)(゚)「恩慈英 やきう と申します。こちらは原住 民男。


私自身なにが起きたのかよくわからず混乱しておるのですが、どうも未来・・
・・数百年先の世からここへ飛ばされてきたようで・・・・・・・」


「ほう、面白きことを申すな・・・・。」


「左近様、このような世迷言を申すもの、敵の乱破やもしれませぬぞ。
この場にて斬り・・・・・・」


側近らしき武士の進言を、左近と呼ばれた男はさえぎる。


「まあ待て。それを如何にして証明するか?」
26:2016/12/01(木)00:32:54 GZx
恩慈英は、ポケットからスマートフォンを取り出す。


そして、シャッター音。


彡(゚)(゚)「こちらをご覧ください。」


!!!

「これは・・・・左近様のお姿が!」



「一瞬にして鏡のごとく・・・・・・・・・・なんという奇怪な力だ」
27:2016/12/01(木)00:34:14 GZx
彡(゚)(゚)(よっしゃダメ押ししとくか)
恩慈英はさらに、スマホ内に保存していた動画を流す



「!!!????人が中に、なんという・・・・・・・・!!」
28:2016/12/01(木)00:36:34 ojI
29:2016/12/01(木)00:37:10 GZx
彡(゚)(゚)「このからくりは人や物の姿や動きを写し取り、後から見ることができるものです。


れっきとした精緻なからくりによるもので、けして怪しい妖術などではありません。」


左近は唸った。


「・・・・・・わしは島左近清興と申すもの。どうかわが主に会ってくれぬか。」


彡(゚)(゚)「は・・・・・はあ・・・・・・」
(´・ω・`)(まじかよ・・・・・島左近ってあの・・・・・・・・本当に僕らタイムスリップしてしまったのか)

西暦1600年9月14日 かの関ヶ原の戦いの前哨戦 杭瀬川の戦いの直後であった。
32:2016/12/01(木)00:39:15 GZx
大垣城

城内はいわゆる西軍の将兵で溢れかえっていた。

「此度の戦、このままでは敗ける、と申すか・・・・・・」

島左近の主君 西軍の実質総大将 石田治部少輔三成である。


彡(゚)(゚)「はい」


左近同様、スマートフォンの機能を見せつけられ、すくなくとも恩慈英たちが只者ではないということは理解したようであるが・・・・・・・
「たしかに総大将毛利輝元殿の合力は間に合わぬが、それでも内府家康のそれを上回る兵数を我らは有しておる。

そうやすやすと敗れるとは思えぬ」
35:2016/12/01(木)00:41:49 GZx
彡(゚)(゚)「ですが、その兵力が十分に機能しないとしたら?」

「内応・・・・・か」

左近がつぶやく。

「金吾だな?」

そう言った頭巾姿の武将は三成の盟友 大谷刑部吉継であった。

彡(゚)(゚)「はい。小早川秀秋様です」

「この刑部も風聞は耳にしておる。実際の戦さ場では彼奴の万一の内応に備えた手勢を用意するつもりでおる。」

彡(゚)(゚)「はい。実際刑部様の手勢は小早川勢を一旦は押し返します。
しかし小早川勢のみならず脇坂、小川、朽木、赤座の4隊も寝返った為、刑部様の部隊は崩壊します・・・・・・」

「なんと・・・・・いずれも太閤様に恩義ある者たちばかり・・・・それが・・・・・」
吉継は絶句した。
36:2016/12/01(木)00:43:51 GZx
彡(゚)(゚)「そのほかにも、内応している方はおわします。治部様にお願いしたいのですが、個別に治部様刑部様立会いのもと、
御目通り願いたい方が幾人かいらっしゃいます・・・・・・・」

「う、うむ、申してみよ」


三成も吉継も、恩慈英の話にただただ圧倒されるばかりであった。
38:2016/12/01(木)00:45:41 GZx
数時間後・・・・・再び恩慈英と三成、吉継の会談。

彡(゚)(゚)「では改めて。必勝の軍略を献策させていただきます。」


恩慈英は大きな半紙を広げ、そこに両軍の配置を書き出す。

そして事細かに説明を始めた。


彡(゚)(゚)「小早川様も当初は日和見の態度をとり続けます。つまりその間にわが西軍優勢の事実を見せつければ、
こちらの味方となり内府の本陣に突入してくれる可能性が大となります。


これが一つの基本方針となります。



もうひとつ、南宮山の・・・・・」


恩慈英の説明は続いた。
40:2016/12/01(木)00:46:53 GZx
そして同日夜、石田三成は西軍の主力を率い、大垣城を進発し関ケ原へむかうこととなる。

彡(゚)(゚)「成り行きで西軍の帷幕に加わることになっちまったで・・・・・・」

(´・ω・`)「大丈夫かな?お兄ちゃんの策通りにうまくいくかな・・・・・」

彡(゚)(゚)「わからん。

正直、合戦のキーマンすべてに会えたわけやないし。話せた武将もどれだけワイらのことを信じてくれてるか・・・・・

まあ歴史の波を、どれだけ撥ね退けられるか、やな。

こうしてこの時代に飛ばされてきたのには、なにか意味があるはずや。」
41:2016/12/01(木)00:48:29 GZx
一方、三成の本隊。

「とにかくこの一戦、勝たねばならぬ。秀頼公を内府めの専横から護るためにも、

太閤様の恩義に報いるためにも・・・・・・しかし・・・・・」

「殿、ご安心召されよ。先の世を知る恩慈英殿が我らが帷幕に加わりしは正に天の配剤。打てるべき手はすべて打ちました故、必ずや勝てまする。」

「恩慈英なる者、どこまで信じてよいものか・・・・・・」

「あの奇怪なからくり。そして我らしか知らぬはずのわが方の内情を事細かに存じておったことからしても、信じざるを得ますまい。」

「うむ・・・・・・かの者を連れてきたお主を信じるとしよう。」


「この左近は殿の義を信じて戦いまする。安んじてお任せあれ。」
56:2016/12/01(木)23:53:00 GZx
15日未明 西軍は関ヶ原へと到着。順次展開を開始する。
三成は笹尾山に本陣を構え、諸将もそれぞれの配置へと布陣する
その陣容は笹尾山から南に延びて天満山にいたり、中山道をはさんで松尾山に結び、さらに東に回って南宮山方面へと展開する。


桃配山方面から進出してくるであろう徳川家康の東軍を半包囲する、いわゆる鶴翼の陣である。

その総兵力は8万にも達した。
57:2016/12/01(木)23:53:48 GZx
一方東軍は・・・・・
西軍が大垣を進発した動きに呼応し、中山道を西に進んだ。
関ヶ原に至るころには斥候の報告で西軍のおおよその動きを把握し、行軍を停止して陣地展開を開始した。
家康は桃配山に本陣を定める。



決戦の時は、刻一刻と迫っていた。
58:2016/12/01(木)23:56:14 GZx
15日 早朝 桃配山

「三成は鶴翼の陣ですな・・・兵数を恃んだというところでありましょうか」
本多正純の言葉に、内大臣徳川家康は微笑みつつ頷く。
「ふむ・・・・・その兵数がすべて治部の思い通りに動けば、我らは負けるであろうがの」
「ですが、その内実は・・・・・・・」
「左様、鶴の翼はすでに折れて居る。」
「我らの優位は動きませぬな。天下へ向け、ご運が開ける日となりましょう。」
「だが油断はならぬ。戦とは思う様にいかぬものよ。」

東軍の前には濃霧が立ち込めていた。
59:2016/12/01(木)23:58:29 GZx
午前7時 視界が開けぬ中、東軍徳川隊先鋒の井伊直政が視察と称し、数十騎を率いて最前線に進出。


そのまま西軍めがけて突撃を開始した
60:2016/12/02(金)00:04:17 sr8
「井伊隊が抜け駆け・・・・・!?」

「おのれ先手の我らを差し置いて!!」

先鋒一番手の福島正則の側近たちが色めき立つ。

「こちらも遅れを取るな!鉄砲隊!!前方の敵方へ撃ちかけよ!」

正則の号令一下、麾下の鉄砲足軽800人余が一斉射撃を開始する。

(とはいえ福島正則自身は、あえて抜け駆けしてでも徳川本隊が主導して動かなければならない事情を
一応は理解してもいたのだが)

その銃声をきっかけに、各戦線で本格的に戦闘が開始された。
61:2016/12/02(金)00:07:16 sr8
笹尾山の三成の本隊には、大将首を狙う黒田長政、細川忠興らの諸隊が殺到した。

「敵、一万以上がわが陣へ向け寄せてきます!!」

物見の報告に、三成は表情と身体をこわばらせた。
62:2016/12/02(金)00:10:18 sr8
「鉄砲隊前へ!撃ちかけよ!」


島左近が号令する。

木柵、空堀で動きが止まった東軍将兵へ、三成隊の一斉射撃が浴びせられる。


バタバタと倒れる東軍兵士たち、しかし東軍はひるむことなく押し寄せてくる。


「大筒をもてい!・・・・・はなて!!」

左近の指示に、数門の大砲が咆哮する。

「ぐあああああああああああ!?」



大坂城から三成が運び出させた、いわば秘密兵器。


いわゆる散弾を用いたそれは、突入してきた東軍に甚大な損害を与えた。
63:2016/12/02(金)00:11:22 sr8
「ぐぬうう・・・小癪な、一旦退いて立てなおせい!!」

黒田長政は歯ぎしりしつつもそう命じた。

東軍 福島正則VS西軍 宇喜多秀家

「一気に突き崩せ!総寄せじゃ!!」


猛将宇喜多が吠える。


麾下の明石掃部らの指揮のもと、鉄砲隊、槍隊、騎馬隊が巧妙に連携し、福島隊を引き寄せたうえで叩き、押し戻した上で突き崩した。
初動は押し気味だった福島隊は、宇喜多勢の猛反撃に大きく後退する羽目になる。


「ええい情けなし!儂に続け!!怖気るものは斬り捨てるぞ!!」


福島正則は怒り、自ら前線に繰り出し将兵を叱咤し反攻を命ずる。



かくて宇喜多対福島の戦線は一進一退を繰り返すこととなる。
64:2016/12/02(金)00:13:44 sr8
一方黒田隊である。

「岩手山の麓から回り込む。治部の横腹を突くのじゃ!!」

選りすぐった一隊で、三成隊の側面から射撃を加えるべく、黒田隊は小丘を登った。



笹尾山本陣



彡(゚)(゚)「そろそろ来る頃や。黒田隊の射撃で、三成隊は左近殿が負傷するなど大きなダメージを受ける」

(´・ω・`)「で、でも・・・・・・・・」


彡(゚)(゚)「せや!すでに手は打ってあるで!」
65:2016/12/02(金)00:15:41 sr8
黒田隊は驚愕した
「敵じゃ!!横槍が・・・・・・!」
「なに!?どこの紋だ!?」
「丸に十文字!!」


「うったくっど!!(叩くぞ!!)島津の戦ぶりを見せてやれい!!」


島津義弘であった。
精強をもって鳴る島津兵1500人の側面攻撃に、黒田隊は大混乱に陥った。
67:2016/12/02(金)00:19:49 sr8
彡(゚)(゚)(よかったで・・・・義弘殿が動いてくれて・・・・・・昨夜三成殿がワイのアドバイス通り辞を低くして頼み込んだのが功を奏した!)

彡(゚)(゚)(あなた方島津はこのまま戦闘に参加せねば、合戦終盤に敵中に孤立することになります。その時の凄まじい敵中突破は後世語り草にはなりますが、
甥の豊久殿はじめ多くの犠牲を払うこととなります。いずれ語り継がれる武勇を示すなら、合戦の重要な局面でお示しくださいませ・・・・・

・・・ワイからはそう伝えたんや)

島津隊の凄まじい突撃に、黒田隊は瞬く間に横腹を食い破られつつあった。
68:2016/12/02(金)00:23:10 sr8
「よし!この機を逃すな!我らも吶喊するぞ!」

島左近が長槍を握り、左右の将士らを叱咤する。おおっと吠える左近隊将士達。


左近隊は黒田隊、細川隊の間に猛然と突入した。


「かかれえ!!かかれえ!!」


島津、島左近の両隊に分断されかけた黒田、細川隊は大きく算を乱し、じりじりと後退し始めた。
69:2016/12/02(金)00:26:26 sr8
桃配山 東軍本陣。

「お味方の右翼が崩れつつありまする!」

使番の報告に家康は爪を噛んだ。

「古田、織田、金森、生駒の四隊を後詰に送れい!」

後方の予備兵力4隊が動き、東軍右翼に生じかけた間隙を修復する。

攻勢終末点に達しかけた島津、島の両部隊は、東軍を射撃等で牽制しつつ一旦後退した。
70:2016/12/02(金)00:31:37 sr8
「島津勢をあのように用いるとは、治部らしからぬ妙手よのう。」

家康の言葉に、汗を拭いながら本多正純が答える。

「島左近の策でしょうか・・・・・いずれにせよ切れ者の軍師がおるようですな・・・・・」

「これは急がねばならぬかもしれんの。松尾山に向け狼煙をあげい!」


霧はすっかり晴れ、午前10時になろうとしていた。
71:2016/12/02(金)00:32:54 sr8
松尾山


「桃配山より狼煙でございまする!」

物見より報告を受ける金吾中納言・・・・・小早川秀秋は、逡巡と焦燥の真っただ中にいた。

「そろそろ動かれたほうがよいのでは?金吾殿。」


家康より目付として派遣されている軍監、奥平貞治である。


拳に力を籠める若き大将。


「心得て・・・・・おる。いますこし待たれよ・・・・・・・・」


その目は若干泳いでいた。


「天満山よりも狼煙があがっております!石田治部殿から・・・・・」


「あ、ああ・・・・・・・・」



秀秋麾下の1万5000の兵力は、いまだその向かうべき相手を定められずにいた。
80:2016/12/02(金)23:52:29 sr8
笹尾山 西軍本陣

「ぐっ・・・・・・ここまで優勢な様を見せても動かぬか小早川・・・・・・」


三成は焦りを隠し切れない。



彡(゚)(゚)「もうひと押しといったところでしょう。あとは彼らが動いてくれれば・・・・・」
81:2016/12/02(金)23:53:36 sr8
南宮山である。


「前方の吉川隊に申し伝えい!手筈通り先陣を切るか、あるいは我らに道を譲るか、どちらかにせよと!
これでは我らが参戦できぬ!」

「そ、それが吉川民部少輔様、これから兵に弁当を食わせるなどと申されておりまして・・・・・」


「なにィ!!」


若き大将毛利秀元は苛立ちを隠せなかった。


(ぐぬぬ・・・・あの恩慈英なる奇怪な者が申しておったことが誠であったということか。

広家伯父が内府に内通を・・・・・)

では、我らはどうすればよい・・・・・・?
83:2016/12/02(金)23:59:25 sr8
藤川台 大谷吉継陣

大谷隊は寡兵ながら、東軍藤堂高虎、京極高知勢を相手に善戦していた。

「藤堂勢騎馬隊寄せてきます!」

「鉄砲隊、弓隊前へ、撃ちかけよ!」

「藤堂隊後退!!」

「よし!両翼より騎馬隊かかれい!!」


吉継は輿の上から矢継ぎ早に指令を下し、「百万の兵を与えて戦ぶりを見たい」

と太閤秀吉をして言わしめた戦巧者ぶりをいかんなく発揮した。
84:2016/12/03(土)00:01:59 EqL
とはいえ、敵の陣容は重厚である。


これだけの猛者たちを手懐け猟犬のごとく戦場に展開させ、のみならず西軍内部にすら内通者を作る・・・・・


内府家康公の政戦両略における辣腕ぶりには今更ながら舌を巻く思いである。
85:2016/12/03(土)00:04:06 EqL
正直、わが盟友三成では役者不足の感は否めない。きわめて潔癖で優秀な官僚ではあっても、

海道一の弓取り家康と大戦をするだけの将器はない。彼の腹心島左近も痛感していることであろう。

じゃが、それでも・・・・・・・・
儂は三成との友誼に殉ずる道を選んだ。儂が業病に冒されても変わらぬ友誼を結んでくれた三成の義に・・・・・・・


(あとは松尾山と南宮山がどう動くかじゃ・・・・戦局を変えるには・・・・・・)
86:2016/12/03(土)00:09:28 EqL
午前11時

南宮山


吉川広家隊が動かないからといって、なにも毛利本隊まで停滞することはない。
さっさとサボタージュしている広家を踏み越えて進撃すれば良いではないか。


当然そう考えるところであるが、秀元を縛っていたのは当時の武家の慣習「先手備えの権限」であった。

先手の大将に与えられた裁量権は大きく、総大将たる大名主君であってもこれを尊重しなければならない。

先手の部隊を差し越して進撃した場合は「抜け駆け」と見なされ、同士討ちに発展してもおかしくない禁忌とされていた。
87:2016/12/03(土)00:10:35 EqL
(しかし・・・・・広家伯父が内府に内通しておるとなれば話は別じゃ・・・
・・・・吉川勢を迂回してでも攻め手にでるべきなのでは・・・・・・・・)


秀元も小早川秀秋同様、巨大な逡巡の渦の中にいた。
89:2016/12/03(土)00:21:57 EqL
彡(゚)(゚)「左近様、お話が・・・・・・」

「うむ、言わずともわかっておる。」

彡(゚)(゚)「ご無理をさせて申し訳ありませぬ・・・・・・・」


「なんの、この命、すでに殿の義にささげておる。」
90:2016/12/03(土)00:22:36 EqL
そして・・・・・・

前線近くに運び出された大砲が再度咆哮し、東軍兵士がなぎ倒される。


島左近部隊は、再び黒田、細川両隊に向け突撃を敢行した。
91:2016/12/03(土)00:26:20 EqL
そしてそれに呼応し、一時防戦に徹していた島津隊、宇喜多隊、大谷隊も猛然と一転攻勢。

各所の戦線において東軍を押し始めた。


「むう!?ここにきて総寄せか・・・・・・・」


家康は床几より腰を浮かせかけた。


正純も首をかしげる。


「解せませぬな、無理押しで一時攻勢にでたとて長続きはしないでしょうに」



「何を考えて居る・・・・・治部・・・・・・・・」
92:2016/12/03(土)00:29:11 EqL
彡(゚)(゚)「これは賭けや。この攻勢は30分・・・・・いや15分しか持たん」


(´・ω・`)「その間に、こちらの優位をアピールしなきゃいけないんだね。」


彡(゚)(゚)「せや!小早川、毛利の決断の背中を押すんや!」

「押しまくれ!突きまくれ!一人十殺の覚悟で攻めまくれい!!」


島左近が叱咤する。
将士達も奮い立ち、凄まじい形相と気迫で槍を突き、走りながら鉄砲を放ち、弓を放った。
93:2016/12/03(土)00:32:14 EqL
この突撃をもろに喰らったのは東軍田中吉政隊であった。


「死兵じゃな、あれは・・・・・・・」


馬上で吉政は戦慄した。


島隊の将士達はみな死を恐れず吶喊してくる。末端の兵に至るまで、三成の義に殉ずるという死生観が徹底されているのであろう。


「ここは無理に防ごうとせず、自然に任せ退くべきじゃ」


歴戦の将である吉政は、こういう狂乱の軍勢にまともに付き合う愚を知っていた。


逃れてくる自分の兵を叱咤もせず、自軍が後退するに任せた。
94:2016/12/03(土)00:34:25 EqL
彡(゚)(゚)「ワイも戦うで!!無益な殺生は好かんけどな!!」

刃引きをした長槍を、馬上から振り回し、次々と東軍兵をなぎ倒す恩慈英。

(´・ω・`)「僕もだ!!くらえ!!これでも強肩外野手として鳴らしてるんだ!!」


原住は投石で、恩慈英の背後から的確に東軍兵士の急所を狙う。
95:2016/12/03(土)00:36:06 710
やきうのお兄ちゃんも戦うんか(驚愕)
96:2016/12/03(土)00:38:44 EqL
西軍 宇喜多秀家隊
「ここが先途ぞ!!斬って斬って斬りまくれい!!」

秀家もまた、すさまじい気迫で前線にて自ら槍を振るい、将士達を奮い立たせていた。


福島正則麾下の鉄砲隊が阻止射撃に入ろうとするが、宇喜多騎馬隊の突入を押しとどめられず次々と打ち倒されていく。
97:2016/12/03(土)00:39:31 EqL
じわり、じわりと東軍は押されつつあった。


戦線の場所によっては、所属の違う将士が入り乱れひしめきあい、指揮系統が混乱し、

追い立てられた鶏の群れのように収拾がつかなくなっているエリアもあった。



その様は、松尾山、南宮山からもはっきり望見できた。
98:2016/12/03(土)00:41:09 EqL
松尾山


「もはや一刻の猶予もなりませぬぞ!」

奥平の督促に、ようやく小早川は床几から立ち上がる。


「しゅ、出陣じゃ、三成方を攻めるぞ!先鋒に申し伝えい!」



使番が麓へ駆け降りる。


しかし、10数分後にもたらされた報告は・・・・・・



「先鋒平岡頼勝様より言伝であります!先手を進むる潮合はわれらに任せ置るべし!と・・・・・・・・・」


「な・・・・・・・!」

つまりは前線指揮官たちも迷っているのだ。どちらが有利か、どちらに与するべきか・・・・・・。

「う・・・・・・ぐ・・・・・・」
ふたたび逡巡の渦に引き戻されてしまう秀秋。
105:2016/12/04(日)00:08:13 iL1
桃配山



「治部め・・・・・・」


がりがりと爪を噛む家康。
動揺が配下に伝わる、とたしなめるべき正純も、顔面蒼白のまま突っ立っているのみである。
106:2016/12/04(日)00:09:26 iL1
家康以下東軍首脳が恐れているのは、今の西軍の意外な善戦、およびわが方の劣勢を見て、
事前に抱き込んでいたはずの南宮山の毛利、松尾山の小早川らが変心し、
この本営めがけなだれ込んでこないかということである。


そうなれば、東軍は、徳川はほろびる。


それを救うのは、松尾山の小早川勢が手筈通り裏切り出動し、西軍の側面を突いてくれることであった。
が、松尾山は動かない。
107:2016/12/04(日)00:10:33 iL1
狂熱的なまでの攻勢に出ていた西軍。しかし、その勢いも失速しつつあった。

彡(゚)(゚)「くっ・・・・・・そろそろ限界か・・・・・・」


各所で西軍兵士の足が止まり、東軍の射撃になぎ倒され、槍兵の突撃に押されつつあった。
109:2016/12/04(日)00:12:23 iL1
だが・・・・・・・


「まだだ!まだ終わらぬよ!島津の戦ぶりを見せるときじゃあ!!」


島津義弘の甥、豊久である。そしてそれに率いられた剽悍な島津兵・・・・・・・・



その中央突破力は未だ健在であった。



黒田長政の軍勢は先刻島津勢に蹂躙された恐怖感もあってか萎縮し、押され気味であった。


彡(゚)(゚)「ありがたいで!さすがは島津や・・・・・・・」
110:2016/12/04(日)00:17:30 iL1
そして・・・・・・・正午にならんとするとき・・・・・


南宮山


「我らだけで動くぞ!者ども下山の準備を致せ!」


毛利秀元が、ついに決断したのである。



「広家伯父の腹案は分からぬが、豊家そしてわが毛利安泰のためには我らが動かねばなるまい!


広家隊を迂回し、内府本陣の後方を衝く!」
112:2016/12/04(日)00:28:27 iL1
桃配山

「南宮山に動きが・・・・・毛利が動き始めておりまする!」
「吉川隊を迂回し麓に下りつつあり!!」
「安国寺、長曾我部勢も追従の模様!」


家康はがばっと後方を振り返る。

ここにきて・・・・・・・恐れていたことが・・・・・・。


家康周囲の馬廻達もざわめく。

「上様・・・・・!」


正純の声も震えていた。
113:2016/12/04(日)00:36:31 iL1
「うろたえるでない!!」

家康が一喝した。


「池田、浅野らが後背の抑えとしておる!すぐさま我ら本陣が危ううなるわけではない!
こちらはこちらで、わが陣を前に押し出して治部の本陣を崩していけばよいだけのことじゃ!!」
114:2016/12/04(日)00:37:44 iL1
とは言ったものの・・・・・・・

「後方を顧みるな!前のみを見て突き進むのじゃ!」


黒田長政が、福島正則がそう叱咤するが、


「南宮山の毛利が動き後背を突いてくる」


この凶報はたちまち東軍戦線に広まり兵士たちを狼狽させた。
露骨に隊列が乱れる
115:2016/12/04(日)00:39:19 iL1
むろん島左近も、島津も、大谷吉継も宇喜多も、この機を逃すはずがない。


「総寄せじゃ!!この勢いで内府の本陣までをも突き崩すぞ!!」


彡(゚)(゚)(よっしゃ!歴史の一角をついに動かしたで!勝てる!!)


島津勢がもっとも突出する形で、西軍は全戦線において再び東軍を圧し始めた。



今度は無理押しではなく、明らかな優勢であった。
117:2016/12/04(日)00:45:42 iL1
桃配山の家康は、もはや苛立ちを隠そうともしない。

床几から立ち上がり、地べたを蹴りつける

「金吾じゃ!あの小せがれめ・・・・・・・・・・」


松尾山のほうへ、怒りの眼光を向ける。


「儂と治部を天秤にかけておるのだ・・・・・・小童が!!」

おそらく意外なまでの西軍の善戦に、惑い始めているのであろう。


あるいは智慧者ぶって、自分がこの大戦の賽の目を振るような気分になっているのやもしれぬ。

小せがれが・・・・・賢しらに・・・・・・・
118:2016/12/04(日)00:47:07 iL1
怒りと苛立ちの中、家康は使番を呼びつけた。

「甲州(黒田長政)に申し伝えい!そちが調略した筈の金吾がまだ動かぬとはどういう訳か!とな!」

「かしこまって候!」


使番は馬の腹を蹴り駆けだした。
119:2016/12/04(日)00:48:38 iL1
黒田長政陣中に馬を乗りいれた使番は、開口一番


「甲州殿!金吾中納言の内応の件、手抜かりはなかりしか!?」


馬から降りようともせず、家康の苛立ちがそのまま乗移った態でわめいた。


ただでさえ目の前の劣勢に苛立っていた長政は、この無礼極まる口上に逆上した。


「知るかたわけ!わが調略はあくまで戦の前の話!この期に及んでは我の分別は槍働きのみにあり!

いまさら我に金吾の動向について難詰されてもどうにもならぬわ!!」
121:2016/12/04(日)00:51:35 iL1
使番は憤激しながらも踵を返し、本陣に戻ると長政の口上をそのまま家康に伝えた。


「ふ・・・・甲州の申す通りだ。」


・・・・・家康は冷静さを取り戻していたようである。そして命令を下す。


「源兵衛をよべい!」


鉄砲頭 布施源兵衛を呼んで何を?


正純ら側近たちが訝しむ。
122:2016/12/04(日)00:53:24 iL1
「源兵衛、参上仕りました!」

百戦錬磨の古強者に、家康は驚くべき指令を下した。

「松尾山・・・・・・金吾の、小早川の陣に鉄砲を撃ちかけよ!」


源兵衛は一瞬目をむいた、が、すぐに平伏して承知仕りました、と返し、踵を返して馬に飛び乗った。
124:2016/12/04(日)00:54:35 iL1
賭けだな・・・・・これは・・・・・・

正純は内心でひとりごちた。

金吾が家康の強い意向をこれで汲み、裏切り出動してくれればよいが、逆上してわが徳川本陣に吶喊してくる可能性とてあるのだ。


現在の西軍優勢の現状を見れば、十分可能性のあることである。
125:2016/12/04(日)00:55:14 iL1
吉と出るか、凶とでるか・・・・・・


「山頂の小早川陣の旗指物が見えよう、あれをめがけ撃ちかけい!」


源兵衛の号令一下、数十丁の火縄銃が一斉に放たれた。
126:2016/12/04(日)00:56:21 iL1
松尾山。


「火縄が・・・・・・あれは内府家康公の陣からのものと思われまする!」

「う・・・・ああ・・・・・」

小早川秀秋は瞼をしぱしぱさせた。


「ごらんなされ金吾殿、内府はお怒りでござる!ご決断なされい!」


奥平の、もはや恫喝にも近い督促。


秀秋は震えながら立ち上がり、前へ・・・・・・ではなく後方にしつらえた小屋に逃げ込むように足早へ入っていった。


中で酒でもあおっているのだろうか。明らかな現実逃避であった。

うつけが!と奥平は内心で毒づいた。

毛利隊の先鋒が、浅野隊と交戦を始めたとの報せが入ったのは30分程経ってからである。


だが・・・・・それでも、金吾中納言秀秋は動かなかった。
137:2016/12/05(月)00:26:35 lkw
東軍の悪夢は続いていた。

麓に降りた西軍毛利秀元ら2万余の兵力は東軍浅野幸長、池田輝政らの1万余の軍勢と激突した。



桃配山


「後背の毛利勢寄せてきます!!」
「お味方劣勢の模様!!」
「ご、後詰を送られますか!?このままでは後ろからわが陣が・・・・・」
正純の問いに、家康は黙したまま答えない。



何かを覚悟し切った、静かな表情であった。
138:2016/12/05(月)00:28:21 lkw
「殿!」


大柄な武将が進み出た。


百戦錬磨の忠勇の士、本多平八郎忠勝である。


「今こそ陣を前に進ませ候え!治部少の息の根を止めん!!」


名槍蜻蛉切を握りしめつつ、そう主君に進言する忠勝。


「平八郎の言やよし!」


家康は大きくうなずいた。



この手つかずの旗本3万を後背の抑えに分派したり、丸ごと反転させたりするのは悪手。自軍のパニック状態を助長するだけだ。
今考えるべきは、後背に迫りくる毛利勢を鉄の意思で無視し、ひたすらに本隊を前進させ、黒田福島らの有力部隊と合力し、戦線そのものを修復しつつ一息に笹尾山の三成本陣の撃砕を目指すことである。
それしか、現状で戦の潮目を東軍に引き戻す方策はない。


家康は乗馬し、周囲を旗本が固める。
140:2016/12/05(月)00:32:05 lkw
笹尾山


「内府の本陣に動きあり!わが方へ前進・・・・寄せてきます」



三成の拳に力が入る。


「これは好機ぞ!内府め自ら首を差し出しに来るとは!!者ども励め!!老賊の首を刎ねん!!」


だが・・・・・・・
141:2016/12/05(月)00:33:48 lkw
「内府御自ら馬を進められておるぞ!うぬら死力を尽くせ!」

「海道一の弓取りに我らの手並みを見せん!!」


黒田、福島ら東軍の猛将たちにとって、徳川家康の存在は格別の軍事的カリスマであった。


その御仁が勇敢にも自らを死地に晒しつつある。


奮い立たぬわけにはいかなかった。


東軍将兵たちは津波のような西軍の攻勢を必死の形相でしのぎ、場所によっては押し返しさえしていた。

彡(゚)(゚)(くっ・・・・さすがは家康。しかし時間の問題や、

毛利隊が浅野池田隊を突破して、徳川本隊に追い付けば・・・・・・・)
142:2016/12/05(月)00:37:48 lkw
南宮山 吉川広家陣


老獪な政治手腕で毛利本家を支えてきた広家。

しかしこの時ばかりは頭を抱えていた。


なんたることを・・・・・秀元の若造が、暴走しおって・・・・・・・


かれの若い正義感、使命感を甘く見ていたか・・・

・・やはり直接、内府に内応する旨をよくよく当人にも伝えおくべきであったか・・・・・・・・・。


(たれかが何かを吹き込んだのやもしれぬ。一体・・・・・いや、それよりも目の前の状況じゃ)
143:2016/12/05(月)00:39:14 lkw
これにより西軍が大戦に勝ったところで、わが当主輝元に天下の仕置きをするだけの器量はない。

結局戦乱は収まらず、最悪毛利が滅びる可能性すらある。

そして東軍が勝った場合、我らは取り潰しの危機に見舞われる・・・・・・・。


だからこそ、内府家康公という当代の英傑に天下と毛利家の命運を託すつもりでいたのだが・・・・・・・。

それを回避するためには・・・・・やむをえん!
広家はすさまじい決断を下した。
「山を下るぞ!!」

「はっ・・・・内府の本陣を衝くのでありますか?」
側近の問いに広家は声高らかに応じた。


・・・・・・・・・・!!!!???
144:2016/12/05(月)00:42:47 lkw
「後方よりお味方・・・・・吉川勢です」

報告を受けた秀元は安堵した。


広家伯父も、参戦してくれたか。これで内府の後背を衝けば戦は決まる。


「安国寺様の手勢と合流の模様。」

「後詰としていてくだされば心強い!!」
146:2016/12/05(月)00:48:31 lkw
安国寺恵瓊の2千弱の軍勢に、吉川勢3千が100メートル程にまで接近したとき。



鉄砲の一斉射撃が行われた。


吉川勢が、安国寺勢に、である。


!!!!
147:2016/12/05(月)00:49:33 lkw
「吉川勢が、火縄を・・・・・!」


「まさか!?寝返りか!!??」


秀元は狼狽した。



「広家伯父が・・・・・・裏切りを・・・・・・・・そこまで内府に・・・・・」


その混乱は毛利勢全体に波及した。


後方から徳川勢を脅かしていたはずの彼らが、露骨に動揺し、隊列が乱れ、進撃が鈍った。
149:2016/12/05(月)00:54:20 lkw
徳川本営


「吉川隊が安国寺隊に・・・・・・」


報告を受け、家康は口元を緩ませた。


(広家め、後日の申し開きの為に暴挙にも近い手を打ったか。苦し紛れではあるが間違ってはおらぬ)

そう、事前の約束を反故にして秀元らが暴走してしまった点に関しては、

自分たちが彼らに直接槍を入れることで落とし前をつける。


広家の毛利家保存のための苦肉の策であった。

彡(゚)(゚)(アカン・・・・・・まさか吉川がそこまでの挙に出るとは・・

・・毛利勢も身内には抗戦できずに萎縮してしまっている)



すでに池田、浅野勢に毛利らは押し返されつつあった。
151:2016/12/05(月)00:58:27 lkw
秀元の戦意は急速に萎んだ。もともと戦に出るときはいつも広家の差配に従うだけだった青年である。

西軍優勢の熱気にあてられひとたびは自ら決断をしたように見えても、

最後まで自我を通して毛利家の命運を切り開く覚悟までは出来ていなかった。


この後毛利らの軍勢は、池田、浅野勢に追い立てられるように

(吉川とは互いに本格的な交戦はためらい、奇妙にもつれあうようにしながら)戦場を離脱していくこととなる


そして・・・・・・・
152:2016/12/05(月)00:59:17 lkw
松尾山

小早川秀秋の逡巡、そして彼自身にしかわからぬ黒い情念の渦は、ある方向に収斂されつつあった。
153:2016/12/05(月)01:00:42 lkw
(おれが筑前三十万石から越前十五万石にあやうく減封されそうになったのは、ひとえに治部少の讒言によるものだという・・・

・・・その治部は関白の地位を見返りにおれに味方せよというが・・・

・・かつて関白の座にあったあの秀次兄も、最期は惨めなものであった。それが豊臣という家だ・・・・・



豊臣家の安泰などというが、おれにそれを後生大事に守る義理は・・・・・)







決めた。
154:2016/12/05(月)01:02:10 lkw
秀秋は使番たちを呼び寄せる。


「こ、これより我らは山を下る。し、仔細あって内府家康公にお味方する!攻めるは石田方大谷刑部の陣じゃ!!」



使番たちに、命令に異を唱えることはゆるされない。



直ちに踵を返し、小早川の各隊へと散っていった。
155:2016/12/05(月)01:06:18 NYd
結局こうなっちまうんか
156:2016/12/05(月)01:06:48 lkw
部将のひとり、松野重元はこの命令を是とせず、「秀頼公に弓は引けぬ」と独断で戦線を離脱した。


が、それ以外の諸隊長たちは秀秋の命令を受け取るや、ただちに麾下の兵馬に号令し、砂塵を舞わせつつ、松尾山を駆け下った。
157:2016/12/05(月)01:07:59 lkw
藤川台


「松尾山に動きが・・・・・小早川がわが陣に!!」


悲鳴にも近い馬廻達の報告に、大谷刑部吉継はしずかにうなづいた。


(われらが雄図は潰えたり・・・・・・・しかし三成だけは護ってやらねばならぬ)


すでに覚悟を決めていた吉継は、矢継ぎ早に指令をくだす。
158:2016/12/05(月)01:09:26 lkw
麾下の先鋒指揮官 戸田勝成 平塚為広らは、事前に因果を含められていた通り、

温存していた予備軍数百名を反転させ秀秋の軍勢にぶつけた。

それを吉継が、輿の上から大音声で叱咤した。


「おのれ金吾中納言!人面獣心なるものよ!裏切り者を誅せ!!けして生かし置くな!!

雑兵には目もくれず、ただただ小僧一人を地獄の底に突き落とすべし!!」


御意!!

大谷隊の将士達は鬼と化した。

「卑怯者め!!」
「裏切り者が!!」
「それ死ねやああああ!!」

圧倒的優位で襲い掛かったはずの小早川勢が、この死兵と化した大谷勢に圧倒されることとなる。
一段、また一段と陣を崩され、乱戦の中で徳川方からの目付奥平貞治が戦死することとなる。



ついに松尾山の麓まで押し返される小早川勢。
159:2016/12/05(月)01:10:41 lkw
「何たる無様な!!」


呆れたのは家康であった。


小早川隊の叛逆出撃時、膝を叩いて喜んだのもつかの間。

かれらは大谷勢に数的優位など何もないかのように押し返されているではないか。


これではならじ・・・・・・
家康は一人の使番を走らせた。




10分後、東軍藤堂高虎の陣より、旗指物が振られた。
160:2016/12/05(月)01:12:19 lkw
それに呼応し、大谷隊の脇を固めていたはずの脇坂安治 小川祐忠、

朽木元綱、赤座直保が槍先を翻して大谷隊の側面に襲い掛かった。


「脇坂、小川らまでもが・・・・・おのれ!!」


それに対応しうる大谷隊の余剰兵力は・・・・・






あった。


ぐわっと轟音が響き、火柱とともに無数の鉄片が、豪雨となって新たな裏切り者たちに浴びせられた。

「三成が一門、わしの陣に回してくれた大筒じゃ。これならば・・・・・・・」

これならば、もうしばし時を稼いでやれる。




馬防柵と土塁の組み合わせで、脇坂らからは見えないように埋伏させていた秘密兵器は、

数十名の鉄砲足軽とともに頑強な防御拠点となった。
161:2016/12/05(月)01:13:12 lkw
松尾山


周囲に侍るものも少なくなった本陣で、小早川は酒をあおっていた。




「うはははあははははははははははははは!!
殺せ殺せ!敵も味方も、豊臣も徳川も、みな滅んでしまえい!!
ひゃーはははははははははははははは」
162:2016/12/05(月)01:13:59 lkw
大谷隊の、奇蹟的な勇戦にも終焉の時が近づいていた。

藤堂、京極隊が正面から、側面から脇坂ら4隊と、ようやく態勢を立て直した小早川勢。

これら大軍が数的優位に任せて予備兵力を次々繰り出し、堤に押し寄せる濁流のごとく大谷隊を圧迫し、ついに一重しかない防御線が破断した。
163:2016/12/05(月)01:14:54 lkw
「とのさま・・・・」


近習の湯浅五助が、盲目の吉継に報告する。


「ここまでであるな・・・・・・・・」


瞑目する吉継。

「お腹を召されるのでありますか!?」
「ならば我らもお供いたします!」
「金吾の首を冥土の手土産に!!」


近習、馬廻り達は最期の突撃を熱望し、吉継の逃げ延びよという命にも耳を貸さない。
165:2016/12/05(月)01:17:17 lkw
「ならば、めいめいが死に花を咲かせるがよい。じゃがわしは盲目故、ぬしらの折角の死に戦が見られぬ。

どうか一人ひとり名乗りを上げてから駆けてくれぬか」




「太田加羅助!!お先に失礼仕る!」
「鳥谷敬之助!!必ずや金吾と刺し違えて見せまする!!」
「新井亮乃新!!ご奉公半ばに逝くことを御許しを!!」


みな熱い涙を流しながら、一礼して敵陣へと斬りこんでいく。

かれらが皆駈け去った後、吉継は輿から降りた。

「わが病み崩れた首を、ゆめゆめ敵に渡すでないぞ」



介錯をつとめる湯浅にそう伝えると、一息に吉継は腹を切った。
172:2016/12/06(火)00:02:57 wIR
小早川の裏切り、大谷隊の壊滅の報は瞬く間に西軍諸隊へと伝わった。
当然動揺が広がり、小西行長などは旗を巻いて早々に敗走してしまった。
西南戦線では、このため奮戦してきた宇喜多秀家隊が孤軍となり、数倍の敵に包囲されつつあった。
173:2016/12/06(火)00:04:12 wIR
秀家は、崩れゆく自軍を叱咤しつつ、怒りの炎に満ちた両眼で松尾山を睨み据えた。


「金吾めえええええ!!かくなる上はおれ自らが槍の錆にしてくれるわ!!」


そう叫んで小早川陣めがけ特攻しようとする秀家を、明石掃部らが必死に制止する。


「御大将の身で、それはあまりにも粗忽!」


「止めるな掃部!!この戦は敗けじゃ!!太閤殿下のご恩に報いる道はもはや玉砕のみ・・・・・!」


「まだ大坂に秀頼公がおられまする!どうかそのお命を秀頼さまのお行く末の御為に・・・・・・!!」



護衛に数十騎をつけ、掃部らは秀家を無理やりに戦線から離脱させた。
175:2016/12/06(火)00:06:14 wIR
そして、笹尾山である。

彡(゚)(゚)(吉川のまさかの暴挙で毛利が戦線離脱、そして小早川が史実通り裏切り・・・

・・・歴史の波には結局勝てないのか・・・・・・・・

いや!!まだ逆転のチャンスはある!!

吉継殿が稼いでくれた時間を最大限に生かすで!!)
176:2016/12/06(火)00:08:11 wIR
「吉継が・・・・・・われらが・・・・・・負け・・・・・・・・・」


呆然と立ち尽くす三成。



「まだ機はありまする!そうであろう!?恩慈英どの!!」



左近の言葉に恩慈英が強くうなずく。



彡(゚)(゚)「はい!最後の賭けとして、石田隊精鋭による突撃を行いまする!


そして三成様、あなたには確実に逃げ延びて大坂まで辿り着いて頂かねばなりませぬ!!」


そう、なにがなんでも歴史に逆らう!

そのための力戦突撃である。

「判った・・・・・武運を祈る。わしはなんとしても落ち延び再起を図ることとする!」


三成は大きくうなずき、具足を脱ぎ捨て、わずかな供回りすらも断り、

本陣後方の笹尾山の山中へと独り消えていった。
177:2016/12/06(火)00:09:51 wIR
「命が惜しいものは落ち延びよ。」


左近はそう言ったが、麾下の将士たちはことごとくが突撃に加わることを志願した。

「ふ・・・・・・みな物好きなことよ


では参るぞ!!狙うは家康が首ただ一つじゃ!!」



応!!!


島左近を先頭に、蒲生頼郷、舞兵庫ら2000名あまりの勇士が続いた。
179:2016/12/06(火)00:14:04 wIR
家康本営

「戦の帰趨は決しましたな。」


崩壊していく西軍を前に、本多正純がそう語り掛ける。



「いや・・・・・まだ少数ながら精兵が残っておる。治部の子飼いどもが・・・・・・・」



家康は馬の手綱を握る手に力を込めた。
180:2016/12/06(火)00:15:42 wIR
視界を埋め尽くさんばかりの東軍、しかしその前方から、迫りくる砂塵の嵐があった。


「かかれえ!!!かかれえええ!!!!」



左近の咆哮が、東軍兵士には死神の宣告のごとく響いた。



生き残った兵士の多くは、この左近の大音声が耳から離れず、後々まで夢に見ては跳ね起きたという。

細川忠興隊は一撃で粉砕され、ついで生駒隊も蹴散らされた。
井伊直政、松平定吉隊が島左近隊に噛みつき、家康本隊への直撃をなんとしても阻止せんとする。
181:2016/12/06(火)00:18:02 wIR
一方、島津義弘隊である。


「矢の陣をとれい!」


すでに激戦の中、彼らは1000人を切るまでに討ち減らされていたが、なお戦意は盛んであった。



「最後に島津の退き口、満天下に知らしめるど!!」

彼らもまた、黒田長政隊の中に猛然と突き入った。


「ぬうう薩摩の死に下手どもが!なんとしても阻止せい!!」


黒田勢も必死の形相で応戦する、が、朝鮮戦役で数十倍の敵を撃破し武名を東アジアに轟かせた

島津兵の戦闘力は、戦国史上にもまれなものであった。


完全に分断された黒田勢。その将兵にぬぐいがたいトラウマを植え付けることとなる。
182:2016/12/06(火)00:20:57 wIR
家康本陣
「上様、なにとぞ後方にお下がりを、万にひとつきゃつらの槍がここに届くことあらば・・・・・・」


正純の言葉に、しかし家康はかぶりを振った。


「ここでよい。わしは動かぬ」


敵の突撃に逃げたという風聞が広まれば、たといこの戦に勝ったとしても、徳川の武名で天下を束ねることが困難になる。


いまは武門の棟梁、徳川家康という個人のカリスマ性が、豊臣恩顧の猛将たちを心服させ、従えている。
裏を返せば徳川家の権勢はまだ、それだけ脆いということだ。
ゆえに、退かぬ。
ここまでほぼ戦線に参加してこなかった虎の子の旗本3万。
それをもって敵の最後の攻勢を防ぐ!
183:2016/12/06(火)00:36:47 wIR
「平八郎!!」

「ははっ!!」


忠勇無双の豪将が、蜻蛉切を振り立てつつ前線へと駆けて行った。



彡(゚)(゚)「うおおおおおお!!」
(´・ω・`) 「くらえええええ!!」

勇戦する島左近勢は、ついに徳川本隊まで400メートルの距離へと迫った。
彡(゚)(゚)「よっしゃ!!家康を討つ!!突入や!!」
恩慈英がそう叫んだ時、目の前に槍の柄が突き出される
彡(゚)(゚)「ファッ!?左近様!?」

「おぬしらはここまでじゃ。落ちられよ。
ここで命を削ってよい男たちではない。
その膨大なる先の世の叡智を、なにとぞ三成様、そして豊家の為に・・・・・!!」

彡(゚)(゚)「し、しかし・・・・・・・」
(´・ω・`)「左近様が・・・・・それでは・・・・・・・」

「ならぬ!!」

左近の有無を言わせぬ口調、そしてその威に打たれた恩慈英と原住。
ふたりは唇を噛みつつ頷いた。

「・・・・・ご武運を!!」

2人は馬を返し、混乱する戦場を突っ切り伊吹山方面へと駆けて行った。


そして、島左近隊である
すでに左近自身の肉体には数発の銃弾がめり込み、刀傷も数え切れぬほどであったが、それでも死力を振り絞り、大身の槍を旋回させ、徳川の旗本兵をなぎ倒しつつ果てしなく疾駆した。
麾下の将士達も、そこかしこで敵をねじ伏せ、斬り倒し、あるいは刺し違え、前へ前へと突き進んだ。
187:2016/12/07(水)00:07:43 M80
そこへ・・・・・・・


「おおっ!島左近殿とお見受けいたすが!?」


大柄な騎馬武者が立ちはだかる。


「うむ。貴殿は内府の将、本多忠勝殿か!?」


「いかにも。ここで相まみえるとはまさに天の配剤。いざ尋常に立ち会われたし。」



蜻蛉切を構える忠勝。
188:2016/12/07(水)00:08:55 M80
「はははははは!これだからいくさは面白い!!!」


左近も呼応しすさまじい速度で槍をしならせる。


受け止める忠勝。その直後、返礼の一撃!


顔面すれすれに左近は防ぐ。


互いの肉体を中心とした、ふたつの暴風が荒れ狂い、激突した。


周囲の将士達は、手出しをしない、できなかった。




下手に近づけば巻き添えで消し飛ばされかねない。
凄絶な一騎打ちとなった。
190:2016/12/07(水)00:11:57 M80
そして、島津隊である。


黒田隊を突破した後、あわよくば内府の本営をと桃配山方面に突き進んだが、行く手に福島、藤堂隊が立ちはだかった。


島津義弘は、馬を止めた。


「豊久!」


「は!叔父上!」

「もうここらでよか。去ぬるぞ!!」

「ははッ!!」

島津隊は一気に旋回し、猛然と南下し烏頭坂方面から戦線離脱を図った。

この後、いわゆるステガマリ戦法を駆使しつつ、多くの将士を失いつつも島津義久、豊久は脱出に成功する。
192:2016/12/07(水)00:16:27 M80
島左近と本多忠勝の激闘は佳境にさしかかっていた。

たがいに数か所に新たな傷を負い、得物にも所々綻びが生じていたが、それでも打合いの激しさは衰えない。


(さすがは花実兼備の勇士平八郎・・・・・)


(なんとすさまじき金剛力よ、これが鬼左近か・・・・・・・)
194:2016/12/07(水)00:19:57 M80
互角と見えた闘いは、しかし左近の方が僅かに上回りつつあった。




そして・・・・・


左近渾身の一撃が、忠勝の蜻蛉切をへし折った。

!!!!












「御覚悟!!」




左近がとどめの一撃を繰り出した瞬間




幾重にも銃声が響く。




左近の胸板に鉛玉が十数発めり込み、ごばっと彼は吐血した。
そのまま馬からずり落ち、島左近清興は斃れ伏した。
196:2016/12/07(水)00:25:35 M80
死を覚悟していた忠勝は愕然とした。


がばっとふりかえり、松平隊の鉄砲足軽達が左近を狙撃したのだと理解すると、

忠勝は槍の柄を地面に叩きつけた!



「うぬらなんということをしてくれたのだ!!武門のならいをなんと心得るか!!」



鉄砲足軽達に殴りかからんばかりの勢いの忠勝を、松平忠吉自らが進み出て窘める。

「源平合戦の昔ならばいざしらず、徳川家の先手大将のお一人の身で一騎打ちなどとあまりに軽率。

お立場をわきまえられよ・・・・・・」

歯ぎしりした忠勝。


せめて左近の亡骸を弔おうと振り返るが、すでに敵味方が入り乱れひしめき合い、

踏みにじられ蹴り飛ばされたのかどこにも見当たらない。

左近隊の他の将士達も、四方八方から東軍の大軍に揉みつぶされ、勇戦空しく討ち取られていった。


これがこの天下分け目の大戦の、組織的戦闘の終焉であった。
197:2016/12/07(水)00:29:26 M80

伊吹山中


彡(゚)(゚)「うぐぐ・・・・まさかここで腹痛めるとは・・・・・」


(´・ω・`)「お兄ちゃん、野糞もほどほどにね・・・・・・追手が迫ってるかもしてないし・・・・・」


彡(゚)(゚)「そ、それは多分平気や。東軍は勝ったとはいえ、史実より相当ダメージを受けとる。

落ち武者狩りには直ぐには力を入れられんはずや・・・

・・・うーいてえええ・・・・・・(ブリブリブリブリブリブリ・・・・・)」
199:2016/12/07(水)00:33:51 M80
藤川台


残敵掃討の報告をうけつつ、家康はここに陣所を定めた。


近習から差し出された握り飯を頬張る。


「上様・・・・・・・・」


恐る恐るといった態で正純が進み出、家康に耳打ちした。

「お味方の被害でありますが・・・・・・・・」

家康の表情が一瞬こわばる。


「そこまでとは・・・・・・」


「紙一重の勝利でございました。あと半時、金吾が動くのが遅れておれば・・・・・・」


「わしの首がなかったやもしれぬな・・・・・・・
それにしても毛利の一時の変心といい、金吾の件といい、三成がこれほど短期間に調略をするとは・・

・・ちと侮っておったわ。」

「兵を多く損じた豊臣恩顧の大名たちへの手当もよくよくお考えになりませんと・・・・」


「三成方の大名どもへの仕置きも少々考えねばならんな・・・・・・

とはいえ三成だけは捕縛し斬らねばならん。」


「・・・・・・むろん手は打っております。」
204:2016/12/08(木)00:24:48 AWp
宇喜多勢の残兵達とともに、山中を進む恩慈英たち。


彡(゚)(゚)「出すもん出したら腹が減ったで・・・・・なんか食えそうなもんないか・・・・・お!この草とか・・・・・・」


(´・ω・`)「お兄ちゃんあんま変なもん食わないでよ・・・・・・」

彡(゚)(゚)(それにしても返す返す無念や・・・・・タイムスリップしてから本戦まであまりにも時間がなく、事前工作が不徹底だったことが悔やまれるで・・・・・


小早川の豊家への怨念の度合いを甘く見ていたのもある・・・・・・


まあ、まだ希望はあるが・・・・・・・・・)
205:2016/12/08(木)00:25:57 AWp
・・・・・・・・・!?




殺気・・・・・・・!

目の前に飛んできた物体を、瞬間的に抜刀し払い落とす恩慈英。

なんやこれ・・・・・・手裏剣!?
206:2016/12/08(木)00:27:49 AWp
「い、伊賀者じゃ!!」

誰かが叫んだ。


十数名の人影が音もなく飛び出し、次々と宇喜多残兵が斬り倒されていく


彡(゚)(゚)「ファッ!?忍者か!!」



(´・ω・`)「ま、まさか服部半蔵・・・・・!?」

「ほう、よくぞ儂の名を!?伊賀の半蔵なり。」


忍び頭らしい一人の男。両目はどす黒い殺気に満ちていた。


「異形の者が治部少に侍っておるとの噂があったがうぬらか!?本来は治部少の探索が主命であるが、

うぬらの首でも手土産としては十分!覚悟いたせ!!」

一気に三人の伊賀者が、恩慈英に斬りかかる。
208:2016/12/08(木)00:30:28 AWp
一人目は刀を合わせた瞬間、怪力に任せて突き飛ばし、二人目は手首を刀ごと、

三人目は太ももの筋を寸断し地に這わせた。


彡(゚)(゚)(アカンしかし囲まれた!頃しのプロ集団は防ぎきれん!!)


刀を構えなおすが、どこまで凌げるか・・・・・・。



すでに周りの宇喜多兵はあらかた討たれてしまっている。
210:2016/12/08(木)00:32:45 AWp
彡(゚)(゚)(あ、あきらめんでワイは・・・・・)


いっそ半蔵を一息に狙ってやろうかと思ったとき。


包囲の輪が崩れた。


「伊賀の下忍どもめ!!」


大柄な武者が突進し、左右に敵を斬り倒す



「ム!!??貴様は・・・・・・!!」

彡(゚)(゚)「宇喜多様!!」


「恩慈英殿!!ご無事であったか!!」



宇喜多と馬廻りの猛者たちが、伊賀者と激しく斬り合う。
211:2016/12/08(木)00:35:26 AWp
「くっ!退けい!!」


半蔵は歯ぎしりしつつ、手下をまとめ遁走した。


彡(゚)(゚)「た、助かりました!!」


(´・ω・`)「宇喜多様もご無事でなによりです!!」

「なんとか首は繋がっておる。貴殿らも大坂を!?」


彡(゚)(゚)「はい。治部様を追って・・・・・」

「大坂に入りさえすれば、総大将安芸中納言様(毛利輝元)らと合力出来る・・・・」


彡(゚)(゚)「ええ、うまくすれば秀頼公を正式に擁立し、

内府を逆賊として成敗する流れに持っていけまする・・・・・・」

一行は険しい山道を、一筋の希望に縋りつつ突き進んだ。
212:2016/12/08(木)00:49:03 AWp
4日後 大坂城


彡(゚)(゚)「ついに、辿り着いたで・・・・・」
(´・ω・`)「はえ~すっごいおっきい」

東アジア最大の城塞。



此れに籠ることができれば、徳川の大軍といえども陥落させるのは容易ではない。
それどころか豊臣秀頼が鎮座する巨城を前にしては、豊臣恩顧の東軍大名が寝返ってくれる可能性すらある。



歴史が変わる・・・・・・・その可能性はまだまだ残されている。

「恩慈英殿、先に入城されている治部殿より使いだ。早速爾後の事を談判したき故、二の丸に入られたしとのことだ・・・・・・」
宇喜多の表情も明るかった。
216:2016/12/08(木)01:06:11 byW
これってただただ大阪の陣に関ヶ原の時の武将が少しいるだけじゃ・・・
219:2016/12/09(金)00:17:39 zKH
大坂城 二の丸

一室で三成を待つ一行。



彡(゚)(゚)(おそらくは三成殿もかなり考えておいでだろうが・・・・

まずは城内の兵力、兵糧の把握
そして秀頼公の名で諸侯に発する檄文も検討せなあかんな・・・・・・



情勢が動く前に、先手先手で家康包囲網を作っていくべきや・・・・・・・
秀頼公、ってか淀殿にお会いできれば・・・・・・)
220:2016/12/09(金)00:23:33 zKH
襖が動いた。


!!!????


彡(゚)(゚)「ファッ!?あなたは・・・・・・・・」






吉川広家!!??
222:2016/12/09(金)00:32:35 zKH
同時に武装した足軽達が数十人乱入し、恩慈英らを包囲する!

「何の真似だ!?我らをたれと心得るか!!秀頼公の・・・・・」


宇喜多が猛然と抗議するが、武器の類は入城の際預けてしまっている。



「これはこれは、関が原で奮戦なさった宇喜多中納言どのですな・・・・」



広家はどこかサディスティックな笑みを浮かべていた。
223:2016/12/09(金)00:34:21 zKH
「・・・・・・・われらを内府に売るつもりか」


広家は口元を歪めたまま答えない。

当然、三成の身柄も拘束されているのであろう。
226:2016/12/09(金)00:49:12 zKH
彡(゚)(゚)「広家殿!あなたはうまく立ち回って内府に取り入ったつもりなのかもしれませんが、

毛利家は大減封の憂き目に遭うのですよ!!」



「・・・・・ほう、だが、取り潰しよりはましだ。
これからの世は、内府家康公に盾突いては生きてはゆけぬ。
わしは毛利本家のためのみに動いておる。輝元様も同じ考えじゃ。
ぬしらはこのまま二条城に移送いたす。治部少、恵瓊らとともにな」
227:2016/12/09(金)00:58:01 zKH
・・・・・翌日

宇喜多、恩慈英らは、互いに縄目を受けた状態で、石田三成と再会する。
三成の頬はげっそりと削げ落ち、顔色も青ざめていたが、目の光は失われていなかった。

兵士に促され、裸馬に乗せられそうになったとき

三成の目がくわっと開いた
228:2016/12/09(金)01:05:34 zKH
本丸へ向け、三成は渾身の大音声で叫んだ。

「秀頼公に申し上げまする!!!

内府家康がいかに甘言を弄そうとも、どうか御信じになりませぬよう!!

どうかよき天下の総帥となられますよう!!!

家康は敵!家康は敵でござる!!!なにとぞ・・・・・・・」



それ以降は周囲の兵士に羽交い絞めにされ、言葉にならなかった。
230:2016/12/09(金)01:21:18 zKH
大坂城 本丸


「かあさま、みつなりがわたしをよんでいます」

豊臣秀頼であった。当年7歳。

「いえやすがてき・・・・・いえやすはあのじいのことですか?」

当惑する秀頼を母親である茶々・・・・・淀君が抱きすくめた。


「おお秀頼どの。そなたはなにも気にすることはないのですよ。城の外でなにが起ころうと
誰が何をしようと・・・・・・・・下のものどもにまかせておけばよいのです。
天下のあるじは太閤様の血を引くそなたであることには変わり有りませぬ。」


母親の腕の中で、それでもこの決して暗愚ではない子供は釈然としない表情を浮かべていた。
231:2016/12/09(金)01:34:30 zKH
数日のうちに、西軍諸将の処断が決定されていった。
石田三成、安国寺恵瓊、小西行長は斬首。


宇喜多秀家は、縁戚の前田利長らの嘆願等もあり助命はされ、八丈島に配流となった。


恩慈英は「先の世を見通す」という噂に関し一時取り調べられたが、

当人が「三成の気を引くためにでっち上げた嘘」と言い放ったためそれ以上は追及されず、宇喜多の配下という扱いを受け、

これまた八丈島に原住ともども配流となった。
232:2016/12/09(金)01:42:32 zKH
そして10月1日

京 六条河原

石田三成は斬首されようとしていた。



「あの世で太閤殿下にお褒め頂く、それのみが楽しみじゃ!はははははははははは!!!」

刀が振り下ろされる。


(頼むぞ、豊臣家を・・・・・・恩慈英殿!!!)

その思念を最後に、ばさりと、彼の命は断たれた


享年41

辞世は「筑摩江や 芦間に灯す かがり火と ともに消えゆく 我が身なりけり」。首は三条河原に晒された後、

生前親交のあった春屋宗園・沢庵宗彭に引き取られ、京都大徳寺の三玄院に葬られた。
237:2016/12/10(土)00:16:07 Svx
西暦1614年 (慶長19年)

紀州九度山


「やはり、東西は手切れと相成りましたか・・・・・・」


40代後半・・・・という実年齢にしては若々しいこの家のあるじは、大坂からの使者にそう言った。
238:2016/12/10(土)00:17:07 Svx
「左様、駿府の老人はあれこれと難癖をつけ、わが豊家を脅かす大軍を年内にも起こさんとしておる。

ゆえに智勇に名高き貴殿に是非合力いただきたくお願いに参上した次第・・・・・」


使者・・・・・米村権右衛門は、豊臣家重臣大野治長(修理)の家老である。
239:2016/12/10(土)00:24:31 Svx
「若年のころ故太閤殿下に近侍し奉って以来、豊家には多大なる恩顧がありまする。

全力を賭して右大臣秀頼公に馳走仕らん。そうお伝えくだされ。」


「おおっ!!かたじけない!!右府様もお悦びになりましょう!!」


米村は平伏した。


「・・・・・ただし、条件、と申すとおこがましゅうなりますが、あらかじめ念を押したき事がございまする」
240:2016/12/10(土)00:27:45 Svx
「は、念をとは・・・・・?」

「実際に戦となりし時、わたしに采配を一任してくれるかということであります」

「采配を・・・・でござるか・・・・・・」

「いや、わたしでなくともよいのです。たれか戦になれた、
ふさわしき将器をもった御仁がおられれば・・・・・その将に一括して戦の差配を預けて頂きたい。

いろいろな方々があれやこれやと口を出され、
たれがそもそも大将かわからぬような混乱を招いては話になりませぬ。

おそらく・・・・いや確実に寄せ集めの牢人中心で天下の大軍を相手にすることになりましょうから、

これは勝つための第一要件となります。


よくよくこのことを大野様、いや右大臣様にもお判り頂きますよう。」
241:2016/12/10(土)00:33:02 Svx
「う、うむ・・・・・たしかに・・・・・なるほど」

米村もこの男の懸念する本質的問題に気付いたようである。

しかし・・・・・・難しい。

あの方がおわすかぎりは・・・・・・・・・

そのことは、この真田左衛門佐信繁(本稿では以降あえて、幸村と呼称することにする)
も十分すぎるほど承知しているだろうが・・・・・・
244:2016/12/10(土)00:41:32 Svx
大坂城 本丸


「なぜ逢えぬのです・・・・・・?」

青年はそう母親に問いかけた。

「なぜ、と申すか!あの女は江戸の回し者であるぞ!」

「おせんはわたくしの妻であります。妻に逢うのに母上の許しがいるのでありますか?」

「ならぬならぬ!あの女は人質じゃ!豊臣家、天下のあるじたるそなたが気安う逢うてよい相手ではない!」
245:2016/12/10(土)00:44:53 Svx
きょうは、日が悪い・・・・・・

かるく唇を噛みつつ、豊臣秀頼は内心でひとりごちた。

母、淀殿のいわばヒステリー。 それがきょうは悪い方向に針が振れてしまっている。

母にとっての現世は、亡き父太閤秀吉の黄金時代の残照と、自らがかつての覇王信長の姪であるという矜持。

そしてその血を引く自分への盲愛。

それのみで構成されているのだ。

現実のこの日ノ本は、江戸と駿府を中心に廻り、

ここ大坂は忘れ去られるだけならまだしも、排除の対象にすらなりつつある。

狭い世界に引き篭もっている自分にも其の位は判る・・

・・・母はそれから目と耳をふさぎ続けているのであろうか。

そういう思いと同時に、母親を一喝して自我を通すだけの胆力すらない自身の繊弱さを呪う秀頼であった。
246:2016/12/10(土)00:49:13 x64
うーん、これは毒親!w
247:2016/12/10(土)00:50:26 Svx
駿府城

「大御所様。なにも御自らが出陣なさることはありますまい。こたびの戦は

この秀忠が差配いたしますゆえ・・・・・なにとぞお任せを」


30代半ばになる息子の言葉に、徳川家康はかぶりをふった。
248:2016/12/10(土)00:52:02 Svx
「大樹(秀忠)はそう申すが、やはりおせんや、婿の秀頼がかわいいのではないか?

城攻めをするのもためらわれるであろう。

ゆえにわしが代わって泥をかぶろうかと思っておるのだが。」

「め、めっそうもない。」
もともと、自身の凡庸、繊細という評判にコンプレックスを抱いている秀忠はむきになった。

「この秀忠、あすにも馬をすすめ大坂城をせめほろぼしてごらんにいれましょう!


娘とは縁がなかったものと思っておりまする!」


「ふむ・・・・・その覚悟があるなら、諸大名を大いに叱咤して出馬するがよい。

わしも後方から補佐する故・・・・・」
249:2016/12/10(土)00:53:24 Svx
家康の、ひとつの誘導であった。

今後、秀忠の治世になることを考えれば

「寛容な家康、武断派の秀忠」の印象を諸大名や世間に植え付けておく必要がある。


そのうえで、自らの目の黒いうちに豊家をほろぼす。

秀忠があの信康のような器量人であれば、こんな気苦労をすることはないのだが・・・・・
かすかな苦々しさを、家康は感じていた。
250:2016/12/10(土)01:00:23 Svx
京の相国寺本山

ここに「祐夢先生」と子供たちに慕われている男がいた。
251:2016/12/10(土)01:02:17 Svx
寺子屋で少年少女たちを教えている男は、かつては大名であった。


元の名を長曾我部盛親という。


「関が原では、わしは愚かであった」
そういう鬱屈した思いを、かれはこの十数年間抱えていた。

吉川広家の寝返りに動揺し、流されるようにして戦場を離脱してしまったことである。

あのときは若く、老臣たちの一言一句に戸惑い、ついに家康本営への単独突撃を決断しきれなかった。
254:2016/12/10(土)01:06:08 Svx
「じゃが、こたびこそは・・・・・・・・男子として智勇を尽くさん!!」

東西手切れとなった今、恩顧ある太閤殿下の遺児、秀頼公に馳走し奉る機が訪れた!

京都所司代の監視を巧みにかいくぐり、彼もまた大坂を目指す・・・・・。
258:2016/12/10(土)01:15:00 Svx
10月11日 家康は駿府を出立し、京都をまずは目指した。


江戸をのちに出立する秀忠の軍勢とあわせると総兵力20万の大軍である。



十数年ぶりの大戦に家康はいつになく若やいだ。そう側近は記している。
260:2016/12/10(土)01:16:41 Svx
同時期、大坂城には大量の牢人が入城しつつあった。
兵数自体は10万にも達しつつあったが、その内実は玉石混淆であった。



金に釣られた者。

武芸者、兵法家として名を上げんとするもの。

御家再興の執念に燃えるもの。

キリシタンの信心の自由を守るために戦うもの。

純粋に豊家大事を願う者。

様々な者の思いを包含し、とにかく大坂城は徳川の大軍を迎え撃たんとしていた。
274:2016/12/11(日)00:49:41 S3T
大坂城

牢人の中から主たるものを集めての軍議が、秀頼を前にして行われていた。



「籠城?籠城してどこからか援軍の来るアテがあるのですかな?」



大野治長にそう問うたのは、後藤又兵衛基次であった。
275:2016/12/11(日)00:50:55 S3T
「浅野、福島、毛利・・・・・豊臣恩顧の大名たちに檄を飛ばして居る。いずれ・・・・・」

まだそんなことをいっているのか、という表情を又兵衛は浮かべた。

「いきなり籠城、という選択はいかがなものかと・・・・・・

城外にてまずは一戦し、わが方の武威を示してからでも遅くはありますまい」

そう発言したのは真田幸村である。
276:2016/12/11(日)00:53:40 S3T
「城外で戦う・・・・・なんぞ策はおありなのか」

治長の問いに、幸村は大戦略を披歴した。

「まずは右府さまにご出馬願い、大本営を山城国の天王山におきまする。」

「な・・・・・・・」


「そのうえで、京を制圧。宇治瀬田川を守りの線として家康の西進をふせぎ、西国大名と関東の連絡線を断つのです。」
277:2016/12/11(日)00:57:36 S3T
分断したうえで関東方を各個撃破し、おおいに豊臣家の武威をしめさば、西国大名は雪崩をうってこちらに味方するであろう。
ゆくゆくは日ノ本秋津洲の西半分を豊家が支配することにも繋がる。

幸村はそう言った。
278:2016/12/11(日)00:59:16 S3T
秀頼の目にも光がこもる。



「おお、さすがは左衛門佐どの。この又兵衛も同感でござる。
さればそれがしが先陣を・・・・・・・・」










「なりませぬ!!」
279:2016/12/11(日)01:01:47 S3T
それまで黙っていた淀殿が喚きだした


「右大臣家を戦場に出すことなど、相成りませぬ!!」



「母上、わたくしは・・・・・・・・」

「ならぬならぬ!もしそなたが城を開けて居る間に、家康の内応者が・・・・・
あの女の取り巻きどもが・・・・・城を乗っ取ってしまったらいかがするのです・・・・」

「いや、それは・・・・・・・」
「太閤殿下が精魂込めて作り上げたこのお城を信じなされ。出てはならぬ!そうであろう!?修理!」



「さ、さようでございますな、おのおの方も、ここは籠城一択ということでひとつ・・・・・・・」

又兵衛は無言で首を振り、幸村は無表情でうつむいた。


ただひとり、明石全登が、なにかを決意した目で秀頼を見やった
281:2016/12/11(日)01:15:53 S3T
翌日、大坂城内でではあるが、秀頼の閲兵を牢人たちは仰ぐこととなった。


さすがに、兵馬がひしめく中には淀殿は出てこられない。


閲兵が手じまいとなる間際に、明石が馬上の秀頼に向けかしずく。

「右府様。なにとぞ今後のご采配にお役立ていただけるよう、それがしなりに纏めさせていただいた、
兵法書を、何とぞお目同士いただきたく・・・・・・・」

「うむ・・・・・・後学のため、目を通すとしよう」
純粋な知的好奇心もあったのだろう、秀頼は自ら手を伸ばし、その書物を受け取った。

大野治長が咎めるような表情を浮かべそれを検閲しようとしたが、秀頼はさっさと懐にしまい込んでしまい、
それ以上の詮議はできなかった。
282:2016/12/11(日)01:21:56 S3T
その夜・・・・・・・・


居室で明石の書に目を通す、秀頼の手は震えていた

(400年先の世から来た男・・・・・・・?
三成が逢っておったのか・・・・・・

このままでは豊家は滅亡・・・・・・・

籠城の末和議、しかし堀が悉く埋められる!?


夏に関東と再戦しそこで・・・・・・・・


な、何者なのだ、恩慈英 やきうとは・・・・・・・・・・・)

むさぼるように書を読みふける秀頼。
288:2016/12/12(月)00:28:21 PTa
後の世に言う、大坂冬の陣が開戦した


大坂方は大野治長が主導し、当初城の西方の博労淵、野田・福島等に突出して砦を築こうとした。


これには真田、後藤が、防衛線の密度が薄くなると反対した。


それでも大野は我を通そうとしたが、ここで(驚くべきことに)秀頼も
真田らの進言に賛意を示したため、結局西方の防衛線は大きく下げられることなった。
289:2016/12/12(月)00:36:58 PTa
幕府軍は大兵力を以って四方から攻め立てたが、さすがに天下の巨城は一筋縄ではいかなかった。


ことに南方を固めた真田幸村は、独自に建造した真田丸なる砦に、前田、井伊、松平らの大軍をたくみに引き寄せては撃破し、
大いに武名を高めた。
290:2016/12/12(月)00:43:21 PTa
業を煮やした家康は、心理的に大坂方を揺さぶろうと画策。

備前島に設置したイギリス製カルバリン砲4門に、本丸御殿への砲撃を命じた。
291:2016/12/12(月)00:50:08 PTa
その一発が、淀殿の御殿を直撃。







犠牲者は・・・・・・・皆無であった



秀頼自らが徳川方の砲撃を予言し、淀殿や侍女たちを奥の間へと予め避難させていたのである。
(これには牢人諸将も驚いた)



また塙団右衛門に備前島を夜襲させ、砲台の無力化には至らなかったものの一時砲撃を妨害することに成功もしている。
292:2016/12/12(月)00:52:17 amO
じわじわと歴史を変えとるな
293:2016/12/12(月)00:56:40 PTa
また後藤又兵衛、長曾我部盛親、明石全登、木村重成らは、頻繁に城外に出ては
ゲリラ的な夜襲を仕掛け、徳川方に出血を強いた。
294:2016/12/12(月)01:12:48 PTa
伊豆諸島 八丈島

彡(゚)(゚)「うおっ!またホームランや!!さすがですな宇喜多殿!」

(´・ω・`)「すごい、僕結構本気で投げたのに・・・・・」


秀家は手製のバットを振り回し、上機嫌であった。

「なかなか面白き遊びよのう、野球とは・・・・・・・

おぬしらの世ではこの遊びで武勇を競ったり、金を得たりしておるのか・・・・・

ここまでの指南、礼を言うぞ。」


彡(゚)(゚)「いえいえ、宇喜多様には武芸を御指南いただいてますし、そのお礼です。」

「さて、その武を再び生かせる時がくるかの・・・・・・・」
彡(゚)(゚)「大坂の陣がうまく推移すれば・・・・・・かなり徳川に痛手を与えることができるはずです。

それでも結局は和議となり、御城の堀は埋められてしまうでしょうが・・・・・・」

「夏には間に合わせねばならんな」

彡(゚)(゚)「もちろんです。計画は十分練っております。その機がくれば・・・・・」
298:2016/12/13(火)00:10:53 H8c
大坂方は、?史実”より頑強に抵抗し、いくさはついに年を越し慶長20年を迎えた。

徳川方も兵糧等の不安を抱え、家康もひそかに和議を考えてはいたが、あくまで
こちらの主導での優位な交渉にこだわり、心理作戦として執拗な砲撃と、深夜に鬨の声を
あげさせたりと大坂方へ揺さぶりをかけ続けた。


これには淀殿が情緒不安定となり、大野治長にしつこく講和をねだるようになる。
299:2016/12/13(火)00:25:10 H8c
秀頼と、牢人諸将は講和には反対したが、淀殿や大蔵卿局、それに大野治長の意思はこの段階では無視できなかった。



1月末、豊臣方は和議交渉に臨むこととなる。

徳川方からは家康の秘書的存在であった側室阿茶の局、豊臣方からは淀殿の妹 常高院が交渉に当たることとなる。
300:2016/12/13(火)00:35:56 H8c
「では、御城の堀を埋め立てよというわけですね・・・・・・・

それならば右府様の御身と所領も安堵されると・・・・・」

「ええ、大御所様は牢人たちの責も問うことはないと仰せです・・・・・・」

安堵のため息を漏らす常高院。


これで、姉も右大臣家も戦火から救われる・・・・・・・・
301:2016/12/13(火)00:54:20 H8c
大坂城 南方



徳川の大軍を一手に引き受け、猛威を振るった真田丸も、二の丸、三の丸同様、
破却の対象となっていた。



「あるじ」であった真田幸村が静かな表情で、その作業を見守っている。

「これで手じまいとはいかぬじゃろうのう・・・・・・・」
又兵衛の言葉に、幸村はうなずく

「何月と経たぬうちに、駿府の老人は難癖をつけて兵を再び動かしてくるでしょう。

御城がこうなった今、つぎのいくさは・・・・・・」

「光明は、秀頼公がご自身の御言葉で、牢人衆をこのまま召し抱えたいと仰ってることだな」

「ええ・・・・・上様は情勢がよく見えておられます。
こう申してはなんですが、われら牢人衆が入城してから、急速に、将器らしきものが芽生えつつあるように
みえます・・・・・・」

「なんとしても、我らの手で盛り立ててまいりたい。そう思わせるものを確かにお持ちだな。」

ふたりのうしろでは、明石全登がキリシタンとしての祈りを捧げていた。
302:2016/12/13(火)01:13:07 H8c
家康は駿府へ、秀忠は伏見へと戻り、城の包囲はいったん解かれた。

が、すぐに情勢は暗転する。


幕府は大坂方の堀の掘り返しや、京や伏見への放火の風聞など不審な動きがあるとして、
大坂方に牢人の解雇か豊臣家の移封を要求する。

4月1日、家康は畿内の諸大名に大坂から脱出しようとする浪人を捕縛すること、小笠原秀政に伏見城の守備に向かうことを命じた。

4月4日、家康は徳川義直の婚儀のためとして駿府を出発、名古屋に向かった。翌5日に大野治長の使者が来て豊臣家の移封は辞したいと申し出ると、

常高院を通じて「其の儀に於いては是非なき仕合せ」と答え、4月6日および7日に諸大名に鳥羽・伏見に集結するよう命じた




先回の戦で消耗し、また兵糧の補給も潤沢とはいかなかったとはいえ、15万の大軍である。


豊臣方は、逃亡する牢人もおり、7万5千ほどに兵力が減っていた。
ただし、その士気は高い。

おそらくは戦国の終焉となる合戦、乞食のようにのたれ死ぬよりも、後世に
語り継がれるほど華々しく戦い死を飾りたい。

そういう者たちだけが残っていた
303:2016/12/13(火)01:23:36 H8c
八丈島


「みな神妙に刑に服しておるだろうな。」

巡察の代官が、船に乗り数十名の兵とともに上陸してきていた。


彡(゚)(゚)「へい、御役目ご苦労様です」
(´・ω・`)「じ、じつは、御耳に入れたき議がございまして・・・・・・」

「む?なにがあった?」

彡(゚)(゚)「それは・・・・・・・」





「こういうことじゃ!」

後方から宇喜多秀家がつかみかかり、代官を羽交い絞めにして脇差を奪って首に突き付けた。
306:2016/12/13(火)01:30:57 H8c
「何をするか!!」
「代官様を離せ下郎!!」

周囲の兵士たちが抜刀した。










彡(゚)(゚)あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )



「!!**‘‘‘&%$#”!@@***!!!????」

悶絶する兵士たち。
307:2016/12/13(火)01:34:08 lDk
ファーwwwwwwwwwww
308:2016/12/13(火)01:35:43 H8c
彡(゚)(゚)「いまや!!船に向かってはしるで!!」
(´・ω・`)「うん!!」
「この坂を下りればすぐ桟橋じゃ!!」


悪臭に耐えて、何人かの兵が追いすがってくる

とうに人質たる代官は放り出している、宇喜多が反転して応戦しようとした。
309:2016/12/13(火)01:39:56 IhD
ええ…
310:2016/12/13(火)01:46:57 H8c
大柄な受刑者の一人が飛び込んできて、兵たちの前に立ちはだかった

「誰だ貴様は!!???」

「どうも米倉でーすwwww」



凄まじい筋肉が躍動し、瞬時にして兵士たちはなぎ倒された


(´・ω・`)「あなたは・・・・・たしかキリシタンの・・・・・」
彡(゚)(゚)「一緒に逃げるで!!」

「仕方ないね」


4人は船に飛び乗り、水夫を金(代官から奪った)と脅迫で何とか説き伏せ出航させた
311:2016/12/13(火)01:55:54 H8c
大坂城


豊臣秀頼、大野治長 淀殿は

牢人諸将とともに軍議を開いていた

「右府さま、なにとぞここは戦をせぬよう・・・・・・・
駿府の老人も悪いようにはせぬと申して居ること故・・・・・なんとか・・・・」


母親の言葉を初めて無視し、秀頼は声高らかに宣言した。

「故太閤殿下の恩義を忘れ、諸大名を誑かし天下をかすめ取ろうとする老賊家康を討つ!

事が相成らぬ時は私は太閤殿下のこの城を枕に討ち死にする覚悟である。

みなも命を賭してくれるか!?」



「おおおおおおおーッ!!!!!!」
312:2016/12/13(火)02:00:42 H8c
具体的決戦の戦術を議論しつつも、幸村は内心心もとなさを感じていた。

「所詮は寄せ集めの軍団。秀頼様の元で実戦を総指揮する大将格がいない・・・・

私にしても、後藤殿も明石殿も長曾我部殿も・・・・・・数千人単位の指揮にしか自信がない。

たれかふさわしき将器を持った方が・・・・・・・・。
313:2016/12/13(火)02:03:33 H8c
ん?



「申し上げまする、ただいま大手門のほうであらたな仕官を希望する御仁が・・・・」

「牢人?その方ら七手組で受け入れをすればよかろう」

「そ、それがその御仁というのが・・・・・・・・・」
314:2016/12/13(火)02:07:37 H8c
「な、なりませぬ!!これより先は・・・・・・・・」

ふすまを開き、ずんずんと上座に進む男。
それはさっき、大手門に現れた男だった
「何者ぞ!!」
叫んだのは若き秀頼の忠臣、木村重成
しかし、彼の後ろの淀殿や治長、
いや、彼らだけでなく後藤や真田ですらその顔に驚きを浮かべ、
ただ呆然とその闖入者の顔を見ていた



「殿……」



明石全登がようやくといった感じで放った言葉に、


重成を初め、その場に居た武将達は皆、驚きの声をあげた








「宇喜多備前中納言八郎秀家、豊臣家の御危機を聞き、八丈島より 泳  い  で  参  っ  た  !!!」
318:2016/12/13(火)02:09:09 IhD
ふぁーwwwwwwwwwww
321:2016/12/14(水)00:20:38 cMq
5月5日 家康、秀忠は諸将とともに京を進発する。


「三日分の腰兵糧でよい」
と家康は全軍に伝えたとされる。


圧倒的優勢による余裕か、こんどこそ豊臣家を根切にするという覚悟か、あるいは両方であろうか。
323:2016/12/14(水)00:22:21 cMq
これに対し豊臣方は要衝堺を制圧する。


大野治房の率いる手勢は余勢をかって紀州に侵攻しようとするが、

秀頼に大老として軍権を委任された宇喜多秀家が厳命を下し、現状の線での防衛にとどめさせた。

これにより樫井周辺で起こるはずであった会戦は未発に終わっている。

324:2016/12/14(水)00:38:59 cMq
彡(゚)(゚)(さーて、こっからが本番やで・・・・・・・)
宇喜多の推挙と秀頼自らの意向により、正式に軍師格としてのポストに就いた恩慈英。


河内路から迫る徳川本軍12万迎撃のため、長曾我部盛親、木村重成らとともに恩慈英は出撃した。その数2万5千。
325:2016/12/14(水)00:40:15 cMq

彡(゚)(゚)「史実よりは多いとはいえ、寡兵には間違いない・・・・・・
しかし、大部隊の機動が鈍る湿地帯ならチャンスはあるで。
ワイは重成殿を補佐する。」



(´・ω・`)「僕は長曾我部殿に付くよ。武運を祈る!」
326:2016/12/14(水)00:46:42 cMq
萱振村周辺 幕府軍 藤堂高虎本営

若江方面に向かう豊臣方の動きを察知した藤堂軍

「大御所様より勝手に戦端をひらくなと・・・・・軍議どおり道明寺方面にこのまま向かう」


「殿、それは先刻までの話。いままさに情勢はうごきつつござる。


ここは見敵必戦でいくべきでありましょう」


麾下の藤堂良勝らがそう説くが、高虎はなお迷っていた。




歴戦の将ではあるのだが、彼は家康の機嫌を損ねることを恐れていた。
327:2016/12/14(水)01:04:18 cMq
が・・・・・結局決断する。

「萱振の敵先鋒を叩く!大御所様や将軍家の本営を狙うつもりかもしれん!!」




藤堂勢は長曾我部盛親勢に肉薄した。
328:2016/12/14(水)01:05:27 cMq
「まだじゃ、伏せたままこらえよ。」


長瀬川の堤の上で、盛親は兵を下馬させ、槍を構えて地に折り敷かせていた。

藤堂勢が射撃するが、応射はない。

「敵は鉄砲を持たぬようだ!一気に叩き潰せ!」
白兵戦を挑まんと藤堂勢が殺到したときに、いっきに盛親は一転攻勢を命じた。

堤を駆け下る勢いで槍が突き入れられ、カウンターパンチを喰らった態で藤堂勢は崩れた。


さらに左右から盛親の兵が伏兵として挟撃をかけてきたため、完全にかれらは壊乱することになる。


藤堂仁右衛門、勘解由ら名だたる将が次々と討ち取られ、ついに一部の盛親隊は藤堂軍本営に肉薄した。
329:2016/12/14(水)01:09:43 cMq
「あれなるは藤堂和泉守!それあれにかかれ!」



上山十兵衛という土佐武士が、騎乗して逃げる高虎を猛追する。


しかし・・・・・

「くっ、きゃつは奥州の駿馬、この駑馬では追い付けぬ・・・・・・」


取り逃がすか・・・・・・
330:2016/12/14(水)01:14:17 cMq
(´・ω・`)「僕におまかせを!」


「ぬ!?おぬし馬上から鉄砲を?しかしここからでは届かぬぞ!?」

(´・ω・`)「僕のは届くんだよなぁ・・・・・」

「な!?」



原住が持っていたのは、明石掃部を通じて堺の鉄砲鍛冶に(恩慈英の概略図をもとに)作らせていた原始的なライフル銃であった。

フリントロック方式の試作品でもある。



(´・ω・`)「内部のからくりで弾にらせん回転を与える!これにより射程は150間にも達しまする」



言いながら撃ちはなつ原住!

弾は見事に高虎の背中へと当たった。たまらず彼は落馬し、そこへ追い付いた上山が槍を突き入れる!

「藤堂和泉守高虎!討ち取ったり!!!!」


全軍に衝撃が走った。


関東方、初めての大名級(それも先鋒を有能にこなしうる)の戦死者である。
331:2016/12/14(水)01:33:35 cMq
余勢を駆って、長曾我部勢は藤堂勢右翼を突破し、井伊直孝部隊側面に突き入った。

口々に、「藤堂高虎戦死」の報を叫んで回る。
井伊隊も動揺し、若き勇将木村重成の正面攻撃に陣形を乱し、じりじりと押し込まれていく。

木村重成と盛親の軍勢に、井伊隊も蹂躙されたといっていい。


「このまま突き入るぞ!家康、秀忠の首級を上げるまでは!」
そう若獅子のごとく吠えた重成であったが、恩慈英が制止した。

彡(゚)(゚)「木村殿も将士達も疲れ切っておられます、敵にひとたび当たって痛撃を加えた
のちは兵を損じず撤退すべし。宇喜多大老の厳命でござる」

「う・・・・・うむ・・・・・」

木村隊、長曾我部隊はすみやかに兵を収容し、射撃等で井伊隊を牽制しつつ撤退した。

八尾、若江における戦いは、幕府軍先鋒井伊、藤堂隊が全軍の八割を戦死傷でうしなう大敗北を喫する結果となった。
332:2016/12/14(水)01:44:43 cMq
一方・・・・・・

大和口方面である。

こちらから侵攻してくるは水野勝成を先鋒とする5個軍団3万5千

一方現在、小松山に布陣する後藤又兵衛の先行部隊は7000人である
333:2016/12/14(水)01:55:08 cMq
(真田隊、毛利隊は恩慈英殿の言われる通り早めに進発したようだが・・・・・

それでもこの濃霧では行軍に難渋してしまうか。


敵が濃霧で気づかぬ今、麓の敵に仕掛けるしかないか。
後詰は必ずくると信じよう!)


又兵衛は攻撃開始を決断した!
338:2016/12/15(木)00:27:28 Q4T
幕府方 伊達政宗陣


「水野様より、敵は小松山に布陣、後詰に出られたしとの事です」

使番の報告に、政宗はうなずく。


「敵の先鋒は槍の又兵衛か。一筋縄ではいかぬな・・・・・・・」
339:2016/12/15(木)00:28:27 Q4T
はたして後藤又兵衛の部隊は、高所の利を生かし、水野勝成の軍勢を圧倒した。



山田外記、塙団右衛門の部隊が幕府方に突き入り、さんざんにかき回す。
340:2016/12/15(木)00:33:04 Q4T
「おのおの方!!お見知りおきを!!われこそは天下の猛将塙団右衛門なり!!がはははははははは!!!」

自分の名前を大書した旗指物を背負いつつ、団右衛門は左右に敵をなぎ倒した。

その様は、遠方の伊達政宗陣からも望見できた。

「言いふらし団右衛門か、勇気があるのか阿呆なのか・・・・・・・」
政宗は苦笑した。
敵ながらあっぱれな攻勢だが、そういつまでもつづくまい・・・・・。
341:2016/12/15(木)00:34:57 Q4T
小松山


「む、そろそろ潮時じゃ、山田と塙を引かせるぞ。」

又兵衛も彼らが攻勢終末点に達しつつあると判断していた。

合図の太鼓が鳴り又兵衛自ら手勢を率いて両隊の収容へ向かう。



山田はどうにか撤収した。
342:2016/12/15(木)00:41:14 Q4T
しかし塙団右衛門は・・・・・・・・
「がっははははははははははははははは!!!我の字引に後退の文字はなし・・・・・」



ねじが壊れたように単騎疾駆する団右衛門。
343:2016/12/15(木)00:47:07 Q4T
「いかん!!塙殿!!退きなされい!!!」


後藤らが声を枯らすが・・・・・・・


「たれも我を止められはせぬ!!!我こそは塙団右衛門!!
おぬしら末代まで語り継ぐがよい!!見よこの・・・・でがしゃらばァ!!!!???」



十数本の槍に突き立てられ、塙団右衛門直之は絶命した。
345:2016/12/15(木)00:49:52 Q4T
「残念だが当然の結果だ」


後藤はそうひとりごち、周辺を見渡した。


水野勝成、本多忠政ら幕府方が大兵力で小松山を包囲しつつあった。
346:2016/12/15(木)00:53:09 Q4T
これは・・・・あるいはここでわしは死ぬかもしれぬな。

そう思い、落ちたくば落ちよと士卒をかえりみて言ったが、たれひとりとして応じない。

「ならばこのまま山を下り、吶喊いたそうぞ」


後藤が槍の柄を握りなおしたとき。

銃声・・・・・それまでとは違う方角から・・・・が響いた。







あれは・・・・・・六文銭!!
348:2016/12/15(木)01:06:27 Q4T
真田幸村、毛利勝永、明石全登ら1万2000の後詰が到着、水野勝成隊の側面に喰らいつく!!

「又兵衛殿!!遅くなり申し訳もござらぬ!!」

言いながら、十文字槍を振るう幸村。

それに呼応し、後藤又兵衛隊は勇躍し、水野隊に突入する。


水野隊、松平隊は露骨に動揺し、崩れた。
349:2016/12/15(木)01:08:12 Q4T
「先鋒水野様より!真田毛利勢にお味方苦戦の模様!早急に後詰を・・・・・・」


「うむ、放ってはおけぬな」


政宗は出撃を命じた。


「小十郎!ゆけい!!」
「御意!!!」


片倉重綱である。


騎馬隊が一斉に前線へ向け駆ける。
350:2016/12/15(木)01:14:37 Q4T
真田陣・・・・


「伊達勢が寄せてきます!」


完全に崩れた水野、松平勢を押しのけるようにして、伊達の騎馬隊が突入してくる。


しかもあれは・・・・・


「伊達家ご自慢の騎馬鉄砲隊ですか・・・・・」




幾重にも銃声が響く。


この特殊な兵種は、それ自体を護るために槍騎兵を混在させ用いられる。
352:2016/12/15(木)01:20:44 Q4T
「伏せよ!!」

幸村は叫ぶ。

みな槍を地に置き、地に伏せる。

銃弾は容赦なく降り注ぎ、そこかしこで悲鳴が上がる。


「こらえよ!!ここは少しでも動こうものなら助からぬと心得よ!!」
353:2016/12/15(木)01:22:17 Q4T
そして、ようやく銃声がやむ。
「今じゃ!!一気に突き崩せ!!」
騎馬鉄砲隊は、一斉射撃が終わった直後は援護の槍騎兵ともども視界が硝煙で遮られてしまう。


幸村はそこに付け込んだのであった。


次々と人馬が突き伏せられ、伊達勢前衛が崩れる。


そこに真田方が今度は一斉射撃し、騎馬隊が突き入る。
伊達勢はずるずると押し返された。
355:2016/12/15(木)01:28:43 Q4T
「ぬう・・・・・・」
政宗は刀の柄に手をかけた。
これでは本営まで崩されかねぬ。
立て直そうにも水野、松平忠政らの兵とごったがえし陣形を整えることすらままならない。

真田だけでなく、毛利勝永、明石全登の軍勢も猛威を振るいそこかしこで幕府軍を蹴散らしていた。


「ここは腰を据え、国分村まで退くべし!」

政宗苦渋の決断であった。
356:2016/12/15(木)01:36:39 Q4T
半刻後、松平忠輝らの後詰を得て、倍以上の大兵力で寄せてくる幕府方。

しかし幸村は又兵衛、毛利、明石らと巧みに連携し、射撃と騎馬隊迂回と槍兵突撃等を駆使。

ときに敵の一部の部隊を突出させては騎馬隊鉄砲隊で叩く、一種の機動防御ともいうべき戦法をみせた。
これにより幕府軍は疲弊、再び国分村方面まで撤退することとなる。
357:2016/12/15(木)01:47:11 Q4T
先鋒大将水野勝成は、それでも大坂方追撃をあきらめきれなかったが、
各部隊から兵の損耗激しく戦闘続行不可との報告を受けると、采配を地に叩きつけて悔しがった。


「関東方百万を呼号するとも雖も、一人の男子もなく候!!」

幸村が大音声で発した挑発であった。

むろん幕府軍は怒ったが、前述の理由以外にも伏兵等の罠の可能性を考えざるを得ず、追撃は
断念せざるを得なかった。


この戦場でも、幕府方は1万に達する戦死傷者を出したのである。
358:2016/12/15(木)01:53:18 Q4T
意気揚々と大坂城方面に帰投する幸村達。

「恩慈英殿は、きょうは決戦にあらずとおおせある」
「うむ、この又兵衛も同じことを伺った。つまりはせまりくる徳川勢を漸減する策であると・・・・」
「敵を削り取った上で、明日の決戦に、というわけですね・・・・・」

又兵衛ら、牢人諸将の顔には、あきらかに命を捨て死をかざる以外の強い意志が浮かびつつあった。
364:2016/12/16(金)00:48:21 DdT
大坂城南方 平野郷

徳川家康は仮設の本営を築き、秀忠以下諸将を集めての軍議を開いた
365:2016/12/16(金)00:56:52 DdT
「さて・・・・・この体たらく、いかに申し開きする気かのう」


井伊直孝、水野勝成らは青ざめ、かすかに震えていた。


「大坂方の将領の首を二、三はとってくるかと思うたが、むなしく兵を損じ、のみならず藤堂和泉守を・・・・・
その方らに明日は先陣を申し渡すつもりであったのにこれでは陣立てを練り直さねばなるぬではないか・・・・・」
366:2016/12/16(金)01:04:02 DdT
諸将はみな、自身が叱責されているかのようにうつむき、押し黙ったままだ。


「ま、まあしかし大御所様、奴らが城の近傍に追い込まれたことは確かでありますし・・・

・・・我らの圧倒的優位は動きませぬ」

なんとか空気を修復しようとした秀忠。


しかし家康に睨まれる。


「このまま勝っても、上方の民の物笑いの種になるだけじゃと申して居る。

勝つか負けるかではない、如何によりよく勝つか、じゃ!」
367:2016/12/16(金)01:09:23 DdT
「御意・・・・・このまま明日決戦してもお味方勝利は動きませぬでしょうが・・・・・

より完璧を期すために少々仕込みをいたしておりますれば・・・・・・」

薄笑いとともに、そういったのは老臣、本多正信であった。
369:2016/12/16(金)01:14:41 DdT
大坂城

ここでも、決戦を明日に控え、最後の軍議が行われていた。

「ここはまず、右大臣家にご出馬願いたく候」
大老宇喜多秀家はあらためてそう上申した。
秀頼も強く頷く。
「むろん、わたしは馬を進めるつもりでおる。老賊どもをこの手で屠らん」

「ならぬならぬ!」

例によって淀殿である。
371:2016/12/16(金)01:20:45 DdT
「そなたが戦さ場に出たのをよいことに、たとえばそこにおる左衛門佐が刃を向けてきたらなんとする!?」

「おかみさま、それはあまりにも・・・・・・左衛門佐がどれほど豊家の為に心血を注いできたとお思いか」

宇喜多は抗議した。

が、淀殿は引かない。
「修理、見せてやるがよい」


大野治長が掲げた書状には、幸村の名で、家康に宛て寝返る旨が記されていた。
372:2016/12/16(金)01:29:04 DdT
「これはどう見ても偽書でござる!」

秀頼は声を荒げた。

宇喜多も淀殿に詰め寄らんばかりの勢いである。

「こんな見え透いた謀略を御信じあるか!それでは勝てるものも勝てませぬ。

右府様自ら戦うと仰せあるのです。なにとぞここは我らにお任せくださいますよう・・・・」

「駿府の老人は大和に国替えすれば秀頼殿の御身を安堵してくれると申して居るぞえ。

たれが寝返るかわからぬ中で、秀頼に危うい真似をさせるくらいならば、和議をすべきではあるまいか?」
374:2016/12/16(金)01:32:14 me3
うーんこの淀
375:2016/12/16(金)01:38:02 DdT
「それこそが家康めの詐術でござる!戦って血路を開く以外にお家の生き延びる道はござらぬ!

家康は明らかに豊家を滅ぼさんとしておるのですぞ!!」

宇喜多に続き、秀頼もたまりかねたように言った。

「母上!わたくしは宇喜多や左衛門佐らを信じ、戦うと決めておりまする。
これ以上は・・・・・・」

「ならぬ!!そなたは戦がしたいだけの牢人どもに焚きつけられておるだけじゃ!!

昨日今日お城に入ってきたような連中の何が信じられるというのか・・・・・」
377:2016/12/16(金)01:46:42 DdT
「御信じになれないのであれば・・・・・・・・」

幸村が初めて口を開いた。

「あす、わたくしは生きて戻らぬことといたします。

家康の本営にひたすらに斬りこみ、かの老賊と刺し違えてごらんに入れまする。」

「左衛門佐・・・・・」
なにか言おうとする秀頼を、幸村は目で制した。


「この真田左衛門佐、秀頼公が御出馬くだされるのであれば、喜んでこの命差し出しまする。

恩慈英殿。わたくしを先鋒とした例の策をおのおの方に・・・・・・・」


彡(゚)(゚)「わ、わかりました・・・・・・・」

恩慈英は地図を広げる。


幸村の静かな気迫に抑えられてしまったのか、淀殿はそれきり押し黙ってしまった。
382:2016/12/17(土)01:28:46 25g
そして、5月7日である


幕府軍 家康は岡山南方の枚岡、秀忠は奈良街道沿いの岡山東方に陣を構えた。

先鋒は松平忠直、本多忠朝という譜代の将を基軸としている。
383:2016/12/17(土)01:31:07 25g
伊達政宗、松平忠輝 浅野長晟が左翼(ただ?史実”より伊達勢、忠輝勢は損耗してしまっているため、彼らは後方にさがっている)

中央軍は松平忠直らを中心に譜代の将を主たる陣容

右翼は前田利常、黒田長政、加藤嘉明を基軸に

昨日の前哨戦で痛撃を受けたとはいえ、13万超の大軍である
384:2016/12/17(土)01:42:30 25g
一方、大坂方も布陣を終えた


茶臼山に真田幸村 その東方に毛利勝永
両軍を先鋒とし、城内には七手組5000のみを残し、実働7万の兵力が茶臼山周辺に展開した。

戦闘総指揮はむろん、宇喜多秀家。


前線には馬防柵、空堀等で野戦築城を行い、数的不利を少しでも補う備えである。
387:2016/12/18(日)00:22:57 OpV
八丁目口南方 宇喜多秀家本営


彡(゚)(゚)「万全の布陣や・・・・・あとは・・・・・・」


あとは、秀頼の出馬を待つばかりである。
388:2016/12/18(日)00:35:27 OpV
甲冑姿もきらびやかに、秀頼が本丸から降りてきた。

周囲を黄母衣衆が固める。


「では、いざ参らん。」

彼は乗馬すべく、大股で歩き出した。
389:2016/12/18(日)00:40:29 OpV
淀殿の侍女二人が転がるように秀頼の前に出てきたのは、そのときである。

「おかみ様の仰せでございまする、一旦ご本丸までお戻りくださいますよう」

秀頼は眉をしかめた。

「これより戦というときに、なにを申すか。さがっておれ」
390:2016/12/18(日)00:44:22 OpV
ひとたびは秀頼は侍女を追い払った。

しかし、数分と経たぬうちに、また侍女はしつこくせまってきた。

「一大事をご相談申すべきことなり、とおおせです」


秀頼はついに折れ、本丸へと戻った。
391:2016/12/18(日)00:50:52 OpV
御殿に入るなり、淀殿は笑顔で秀頼を出迎えた。


「おお秀頼殿、家康よりあらたな言伝じゃ。なんと国替えせずともよいとの由。
牢人たちさえ追放すれば、御身を安堵するとのこと・・・・・・」
393:2016/12/18(日)00:54:43 OpV
「・・・・・・母上、もはや秀頼はごまかされませぬ。家康は我らを攻め滅ぼす気しかないのですぞ。
日ノ本中の兵馬をここに集めて、いまさら我らの身を安堵してくれるはずがございますまい」


秀頼は踵を返し、再び城外へと向かう。
394:2016/12/18(日)00:59:40 OpV
襖を開けた秀頼の前に十数名の兵士が立ちはだかる。


「なんのつもりじゃ?そこをのけ」


しかし、兵士たちはうごかない。

それどころか・・・・・

なんと秀頼に槍や刀をいっせいに突きつける。

・・・・・・・・・・!!!
395:2016/12/18(日)01:06:46 OpV
「母上!これは・・・・・・」

「ホホホ・・・・・・

よいか秀頼殿、もはや戦のことはお忘れなされ。

そなたには信長公、そして太閤殿下の高貴な血が流れておるのです。

ここ大坂で、貴人としての安らかなる生涯をまっとうするのです」

「な・・・・・・・」

「修理!右大臣家の命で、牢人どもに戦をやめよと伝えるのじゃ」

「御意」

大野治長は頷き、たちあがった。
396:2016/12/18(日)01:16:59 OpV
治長が回廊に出ようとしたとき。


秀頼を取り囲んでいた兵士の輪が崩れた。



「何奴!!」

そう叫んだ男が瞬時に斬り倒される。

「曲者じゃ!斬り捨てい!!」


治長は叫ぶ。


が・・・・乱入してきた精悍なる髭面の侍の剣技は尋常ではなかった、

瞬く間に兵士たち(七手組の一部とのち判明する)が斬り伏せられていく。


実戦経験のない、飾り物の親衛隊員では全く相手にならず、残った数名も恐慌を起こして逃げ去っていった。
398:2016/12/18(日)01:22:48 OpV
髭面の侍は秀頼に平伏した。

「恩慈英殿の命にて、秀頼公をお迎えに上がり申した。

小笠原道大と申しまする。

それがしが大本営へとご案内いたします。」

「うむ、痛み入る!よしなに頼むぞ。」

「ははっ!」
401:2016/12/18(日)01:30:57 OpV
「な、ならぬ、戦はならぬ・・・・・・!

和議じゃ和議・・・・・・・・

わらわが腹を痛めてそなたを生んだのは、戦場などという野蛮な場所に出すためではない

母の申すことが聞けぬのかえ・・・・」


淀殿は秀頼の足元にすがりつく。
402:2016/12/18(日)01:34:24 OpV
「母上・・・・・・・・」


秀頼は、おおきく息を吐きだした。










そして、次の瞬間。


秀頼は抜刀し、淀殿の首筋に袈裟懸けに振り下ろした

鮮血が噴き出す。
403:2016/12/18(日)01:37:14 OpV
「ああああああああああ!?ひでよ・・・・・なんと・・・いう・・・・・

わら・・・・わ・・・・・は・・・・」

10秒間ほど悲鳴とともにのたうち回り・・・・淀殿は血の海の中で絶命した。


愕然とする治長と小笠原。
404:2016/12/18(日)01:39:01 uR3
ファッ!?
405:2016/12/18(日)01:44:22 OpV
「母上・・・・・・・

不孝をお許しください。

わたくしと・・・・・・母上ご自身を・・

・・さまざまなるものから解き放つには、これしか・・・・・・」

太い涙を、秀頼は流していた。


悲鳴を聞きつけ、回廊を侍女たちが駆けてくる。

淀殿の間に入ろうとする彼女たちを、大野治長が必死で両手を広げ、押しとどめる。



「はいってはならぬ!!

おかみさまは、急な病で身罷られた!

よいか!おかみさまは急な病で身罷られた!!」
407:2016/12/18(日)01:52:24 OpV
半刻ののち・・・・・・・


八丁目口南方に秀吉以来の伝統となる金瓢箪の馬標がたかだかと掲げられた。


ついに豊臣秀頼が、大本営に着陣したのである。

幕府軍にはすくなからぬ動揺が広がった。


豊臣恩顧の大名の中には、歴史の針を巻き戻されたような思いがするものもいたであろう。


そして大坂方の士気は倍増した。
すでに勝ったかのように鬨の声が上がる。
409:2016/12/18(日)01:56:25 OpV
家康本陣


家康は苦虫を数匹かみつぶしていた。


(和議を持ち掛け揺さぶりをかけたつもりが・・・・・・いったい何があったのじゃ。

致し方なし、正面から決戦し、打ち破るほかあるまい。)



戦国史上最大にして最後の野戦の火ぶたが、今まさに切って落とされようとしていた。
417:2016/12/19(月)00:44:09 RTj
午前10時
「はなてええええええ!!」

幕府軍先鋒本多忠朝勢の突撃に対し毛利勝永の寄騎が発砲。

これが開戦の合図となった。
418:2016/12/19(月)00:46:00 RTj
「総寄せじゃあああ!一気に踏みつぶせ!!」

越前衆こと松平忠直の軍勢。かれらの突撃がとくに凄まじかった。

冬の陣では真田丸に打ちのめされ、今回の夏の陣では八尾、若江の戦いで突撃をためらってしまい、

みすみす藤堂井伊勢が壊滅するのを見頃しにしてしまった。

それを当然家康に激怒され、部署を取り上げられそうになったのを土下座して詫び、

真田幸村に相対する位置の危険な先鋒を志願したのである。
419:2016/12/19(月)00:47:40 RTj
家康本営

「忠直は死ぬつもりやもしれぬのう」

他人事のように家康は言った。

戦略的には、むしろそのほうが望ましいともいえる。


死兵と化して敵の精鋭をすりつぶしてくれれば、あとの展開が楽になる。


それに忠朝ともども譜代の将が先鋒で命をかければ、外様の厄介な連中に不必要に武功を立てさせずにすむ。

そういう思いで、家康はこの戦いを見守っていた。
420:2016/12/19(月)00:54:16 RTj
「とはいえ、戦そのものもまだ予断を許さぬ」

「真田あたりがなにか考えて居るやもですな・・・・・・・」


本多正純の言葉に、家康は頷いた。
421:2016/12/19(月)00:55:17 RTj
10万以上の軍勢の進撃はさすがに壮観であった。

秀頼の本営からは、それは津波のごとく押し寄せる絶望として映った。


すくなくとも秀頼の周囲の黄母衣衆らにとっては。

「防ぎ・・・・・きれるか」


秀頼の言葉に、小笠原は微笑みつつ応えた。

「まずは恩慈英殿の智嚢を御信じあれ。」
422:2016/12/19(月)00:59:33 RTj
幕府軍が大坂方前線の空堀をそこかしこで乗り越え、柵にとりついた時。


凄まじい爆発音が幾重にも響いた。

幕府軍陣内にいくつもの火柱が上がり、将兵が粉みじんに吹き飛ばされる。

彡(゚)(゚)「よっしゃ!成功や!!」

導火線を用いた、原始的な地雷であった。
423:2016/12/19(月)01:00:40 RTj
幕府軍は大恐慌に陥った。


彡(゚)(゚)「いまや!頼みます!!」

「かかれい!!」


宇喜多が号令する

柵の一部が開けられ、真田幸村、毛利勝永の2隊が猛然と駆けだす。
424:2016/12/19(月)01:01:40 RTj
毛利勝永の奮迅ぶりはすさまじかった。射撃と白兵突撃を繰り返し、本多忠朝の軍勢を瞬く間に壊乱させ、

ついには忠朝を討ち取ってしまった。

さらに榊原康勝、仙石忠政、諏訪忠澄の軍勢に突入し、彼らをこなごなに砕いた。

「我らは勝つ!我らは勝つ!!」


そう声を枯らしながら、勝永は槍を振るい突き進んだ。
427:2016/12/19(月)01:04:47 RTj
そして、真田幸村である。


「右大臣家に、我らがいくさをご覧に入れん!ここは接戦迫撃あるのみ!!」


赤備えの真田隊3000が、鬨の声とともに松平忠直隊に突き入った。

松平隊もまた、崩れに崩れた



「ひいいいいいい真田じゃ・・・・・・」
「い、いや、あれは鬼じゃ・・・・・・」
「にげ、にげろおおおおおお!!」
429:2016/12/19(月)01:12:45 RTj
そして・・・・・・


「浅野殿、裏切り!!」


凶報が幕府軍の間を駆け回った。

誤報であったのだが、これにより徳川の譜代衆と浅野勢が同士討ち寸前になるなどして
混乱に拍車がかかった。


もはや指揮、情報系統がズタズタになった幕府軍の只中を、幸村は吶喊していった。
432:2016/12/19(月)01:19:00 RTj
家康本営



「真田勢が、こちらに寄せてきます!!十段目までが破られたり!!」

「毛利勢も・・・・・お味方黒田勢苦戦の模様!!」


「大御所様!ここはあぶのうござる!早くお馬に・・・・・・」

正純の言葉に、家康は腰を浮かせかけた・・・・・が、腹を括ったように再度腰を下ろす。

「ここは動かぬ。」
434:2016/12/19(月)01:23:48 RTj
「かかれえ!!あれなるは家康の馬印!あれにかかれ!!」

幸村は吠える。

すでに彼らは家康の旗本衆にまで達していた。
その最後の防衛線も破られつつあった。
435:2016/12/19(月)01:27:18 RTj
「家康公、御覚悟!!」

幸村隊先鋒が家康本陣に肉薄したとき


立て続けに射撃音が響いた。
436:2016/12/19(月)01:30:25 RTj
次々と、真田幸村隊の将士が撃ち倒されていく。

尋常ならざる弾幕射撃であった。


家康が本陣傍に埋伏させていた千挺近い鉄砲隊が、側面からしたたかに真田隊を撃ちのめしたのである
438:2016/12/19(月)01:36:36 RTj
3度目の斉射で、ほとんどの真田兵が撃ち倒されたのを見て、家康は床几から立ち上がる。

「この戦の前から、豊臣の牢人どもが我らに勝つにはわしひとりの首を狙いに来るしかないことは判っておった。

こちらの混乱に乗じ、一点突破でこの本陣を衝くしかな・・・・・・・・


まさかまことにここまで来るとは、敵ながらあっぱれじゃ。」
439:2016/12/19(月)01:41:09 RTj
その時、折り重なっていた真田兵の死体の山が動いた。


十文字槍を握った武者が、他の兵士の死体を押しのけずいっと立ち上がる。

そしてあるじを失った馬の一頭に飛び乗り、徳川の本陣へと殺到した!
440:2016/12/19(月)01:48:01 RTj
人馬は一体となり、風を切って家康本陣へと乱入した!!

旗本たちの中には逃げ出す者もおり、わずかに向かっていったものも瞬時になぎ倒される


「徳川家康公はいずこぞ!!真田左衛門佐幸村 見参!!」







「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )

家康は尻餅をついてしまった
441:2016/12/19(月)01:51:06 fVv
ファッ!?
442:2016/12/19(月)01:52:08 a8R
これは本家本元wwwww
443:2016/12/19(月)01:55:15 RTj
「大御所様、早くお馬へ!!」

本多正純が必死で家康の体を顔をしかめつつも抱え上げ、馬に乗せる。

近習10数名にかろうじて守られ、駆けだす家康。

迫りくる幸村に、必死で旗本衆が斬りかかるがバタバタと斬り伏せられる。


家康の馬まで10メートル余りに迫ったとき、再び銃声が響いた。




落馬する幸村。
444:2016/12/19(月)02:01:15 RTj
倒れ伏した幸村を、おそるおそるといった態で十数名の足軽が囲む。


ひとりが槍を突き入れようとしたとき


十文字槍がうなりをあげて旋回した。

なぎ倒される足軽達。


死力を振り絞り、包囲を斬り破っていく幸村。
445:2016/12/19(月)02:07:19 RTj
全身に銃弾がめりこみ、もはや両足もいうことをきかない。

ぼやける視界の中に、小さくなっていく家康の背中が見えた。

のこる命の炎をすべて込め、幸村は十文字槍を投げた。




槍は主人の意思が乗移ったかのように大気を裂いて飛び、家康の肩口をかすめた!

鮮血が迸る・・・・・・・・・
446:2016/12/19(月)02:14:44 RTj
「大御所様!!」

近習が騒ぐのを、家康は手で制した。

「ぐっ・・・・・かすり傷じゃ!大事ない。

それより左衛門佐は・・・・・・・・・・」


徳川を最後まで苦しめ続けた男は、その仇敵の本陣近くで、静かに息絶えていた。



「この近くの集落でいったん傷の御手当など致しましょう。」

他の旗本も合流し、家康は本陣後方の民家に一時避難した。
447:2016/12/19(月)02:26:17 RTj
徳川秀忠本陣

「よし!ようやっと敵の攻勢をしのぎ切ったぞ!」


一時大坂方大野治房勢の猛攻に前田勢が崩され、旗本も崩れかけ大混乱に陥っていた
のであるが、敵は限界に達したかじわじわと後退していく。

そこへ父の本陣を脅かしていたあの真田幸村を討ち取ったとの報告が入り、秀忠本陣は活気づいた。

「このまま陣を立て直し次第総寄せじゃ!!今度は秀頼の本陣に我らが突き入る番じゃ!!」

父家康は不在だが、おれとて将軍家として武勲をあげることはできるのだ。
448:2016/12/19(月)02:29:18 RTj
大坂方は、各所で押されていた。

毛利勝永も家康本陣手前で失速、少なからぬ損害をうけつつも後退し本隊に合流。

しかしその主力部隊も、馬防柵や空堀を各所で突破されじわじわと後退し始めていた。
453:2016/12/20(火)00:23:24 efD
天王寺付近


この周辺まで、豊臣方中央軍は押し込まれていた。

「あれを破れば秀頼本陣じゃ!!」
「我らが一番槍をつける!」
「大将首はわしが!!」

前田、浅野、黒田、松平忠直、秀忠そして譜代衆。


幕府軍の実に9割、10万弱が大坂方、そして豊臣家に最後のとどめを刺すべく

砂塵を巻き上げ怒涛の如く押し寄せた
454:2016/12/20(火)00:24:20 efD
大坂方は、いまにも引きちぎられそうなぼろ布のようであった。

上空から見るとたわみ続ける逆Uの字に見えよう。


密集隊形で驀進してくる幕府軍の圧力が臨界点に達したら、中央突破及び本陣への直撃を許してしまうに違いない。

それはならじと、恩慈英、毛利勝永、木村重成が鬼の形相で前線にて槍を振るう。
456:2016/12/20(火)00:27:19 efD
「時間の問題じゃな、あとは・・・・・・」

黒田長政は、この「最後の大攻勢」の只中でひとりごちた。

「この総寄せには加わりつつも、あまり我らは出過ぎるべからず。」

特に譜代衆は先を争って敵本陣及び大坂城一番乗りを競っているようだが、

外様の我々が妙に張り切って軍功を立ててしまうと、駿府及び江戸に睨まれるだけでろくなことはない。関ヶ原の時とは違うのだ。

そうおもいつつも、総進撃そのものの大きな流れには、黒田勢も乗っていかざるを得ない。
457:2016/12/20(火)00:37:09 efD

・・・・・・・・・・



「それにしても、いささか密集し過ぎではないか?」


ふとそう思う。

なにかを見落としている・・・・・

そう胸騒ぎを感じたとき。
459:2016/12/20(火)00:38:18 efD
「後方に・・・・・・!!」


!!!!


がばっと振り返る長政。

あれは後藤又兵衛隊!?


いや、のみならず長曾我部盛親・・・・・

両側面からは明石全登、大野治房・・・・・・・・

そして正面からは宇喜多秀家、木村重成、毛利勝永が押し込んでくる・・・・・・






まさか・・・・・まさか・・・・・・・・
460:2016/12/20(火)00:39:32 efD
「かか、囲まれたアーッ!!」
「ば、ばかな・・・・・・・・・」
「我らの優勢ではなかったのか・・・・・・」




幕府軍は一挙にパニックに陥った。


中心部は押し合いへし合い、もはや進むも退くもままならぬ状況であった。
461:2016/12/20(火)00:40:57 efD
「い・・・・いかん!後ろを向くな!立ち止まるな!前へと突き進め!!でなくば囲みは破れぬ!!」

長政が、前田利常が、浅野長晟が声を枯らすが、幕府軍は地獄の窯で煮たてられたようにのたうち回った。
人間は、視界の外・・・・・側面や後方からの脅威に直面するとあまりにも脆い。
だからこそ、古今東西の軍事指揮官は包囲されることを忌避し、逆に攻め手としては包囲網を完成することを目指す。



「ば・・・・・ばかな、兵数が上回る我らが囲まれるだと・・・・・・」


秀忠はうめく。


「と、とにかくお味方の陣を立て直すことを考えませんと・・・・・」

老臣本多正信にとっても初めての窮地であった。
462:2016/12/20(火)00:42:22 efD
家康本営。

ようやく傷の手当てを終え、元の位置に本陣を戻した家康の目に、悪夢のような光景が映し出されていた。
「な・・・・・なんたることじゃ!!」
「ばかな・・・・・兵数が劣る側が包囲するなど・・

・・・古今東西そんな兵法は聞いたことがござらぬ・・・・・・・!!」


本多正純はそう言ったが、家康の脳裏にはかつて織田信長が侍らせていた宣教師から聞いた、

古の戦役の話が浮かんでいた。

(し、しかし古のそれを上回る規模で再現して見せるとは・・・・・・
幸村以外にどんな軍師がおるというのじゃ・・・・・・・)
463:2016/12/20(火)00:43:57 efD
もはや一方的虐殺であった。

極度に密集した幕府軍は、、まともに身動きもままならず、中央部では圧死するものが相次いだ。
それを免れたものも、四方八方から大坂方に突き立てられ、斬り伏せられ撃ち殺された。
浅野長晟、戦死。
前田利常も麾下の侍大将の多くを失い、自身も重傷を負った。

黒田長政は自らの隊のみでも脱出しようと自ら槍を振るい勇戦するが、

麾下の将兵のパニック状態を押さえることができず悪戦苦闘していた。





まさに阿鼻叫喚であった。
464:2016/12/20(火)00:46:00 efD

野戦史上最大級の包囲殲滅戦 成る!!



恩慈英は馬上で督戦しつつ、内心で大きく息をついた


彡(゚)(゚)(計算通りに・・・・いったで・・・・・なんとか・・・・・・。

毛利殿と・・・・そして幸村殿の命を懸けた突撃がなければ・・・


・・・・・感謝します!!)
466:2016/12/20(火)00:49:05 efD
そう、毛利勝永と真田幸村があれほど激しい突撃を仕掛けたからこそ、幕府軍はそれを大坂方最後の賭けと思い込み、
それが収束した後は勝敗が決したとばかり思い込んで功を競い合い半ば無秩序にこちらの懐に突撃、密集してくれた。


そして罠に気づきうる家康の本営が、幸村の突撃で一時マヒしていたこともきわめて大きい。

彡(゚)(゚)「これで・・・・・なんとか・・・・・・歴史を変えたで!

あとは・・・・・・」
467:2016/12/20(火)00:50:35 efD
半刻後

ようやく家康旗本と合流した伊達政宗らの部隊が、包囲網外周を打ち破り秀忠以下の友軍を救出、収容したが、

この時点で幕府方には7万を超える戦死傷者が出ていた。

惨敗であった。




家康は爪を噛み続けた。指先から血が出るのも構わずに。


「仕舞じゃ・・・・・・・

全軍に伝えい!若江まで陣を退く!!」
468:2016/12/20(火)00:51:57 efD
「関東方が・・・・・退いていきます!」

「お味方勝利!!お味方勝利!!」

「か・・・・勝ったでええええ!!!」



大坂方全軍は狂喜乱舞した。




「えい!えいっ!おおおおーーーーーッ!!!」
470:2016/12/20(火)01:00:41 efD
夕刻

大坂城 本丸



「みな大儀であった!生き残ったものも、そうでない者も・・・・・・!!
そなたたちがいなければ、わたしは炎の中で腹を斬っていたであろう。
すべての将士に、できうる限りの事で報いたく思う!」


豊臣秀頼は諸将に深々と頭を下げた。
471:2016/12/20(火)01:02:36 efD
「さてこれからですな、徳川との和議の行く末が・・・・・・」


又兵衛の言葉に、恩慈英が頷く。

彡(゚)(゚)「は。先刻徳川からの軍使が参りまして・・・・・・・

明後日正午に若江にて、大御所と秀頼公の直接談判にて今後の事を決めたいとの由・・・・・・」


「こちらから上様に出向けとな?それはちと・・・・・」


長曾我部の言葉に、秀頼が応じた。

「よい。天下静謐のためじゃ。わたしはどこへでも参ろうぞ。」
472:2016/12/20(火)01:10:29 efD
5月9日

彡(゚)(゚)「秀頼公の護衛は300人。又兵衛殿に指揮をお願いいたしたく・・・・・
むろん天王寺周辺にて、5万の主力軍を万一に備えさせておきます。」

「うむ。心得た。
朝廷から帝の使者が立会いとしてお見えになるとのこと故、

家康も今更妙な真似はできまいが・・・・・・・」


「又兵衛殿、わたくしもご一緒させていただきたい!」

木村重成が身を乗り出してきたのを、又兵衛は手で制した。


「よいよい、わしだけで十分。

そなたには身重の可愛い嫁御がおるではないか。

せっかくこの大戦を生き延びたのじゃ、そばにいてやれ」
重成は頬を赤らめ、又兵衛らは呵々と笑った。
473:2016/12/20(火)01:14:59 DBz
あっ・・・(察し)
474:2016/12/20(火)01:22:35 efD
若江 幕府軍仮設本営


「秀頼公は、大坂城を刻限通り進発したとの由」

本多正信の報告に、家康は茶をすする音で応えた。
475:2016/12/20(火)01:24:03 efD
「・・・・・ふむ、ところで、例の噂じゃが・・・・・・」

「大坂方に、?先の世”から来た男が軍師として侍っておるというものですな。

いやはやなんとも荒唐無稽な・・・・・・・」


「わしなりに、つねに戦に臨む前は万全を期してきたつもりじゃ。
兵数にせよ、事前の調略にせよ・・・・・・・


じゃが関ヶ原の時も、此度の戦も、つねにたれかに先回りをされているような感が否めなんだ・・・・・・

そうした超常の存在が居ると考えた方が、あきらめがつく・・・・・・」

家康は瞑目した。

「その男が本来いた世では、豊臣が滅び、徳川が天下一統、偃武をなしとげていたそうで・・・・・・・」

「ふむ・・・・・ならばこれから我らがすることは、世の命運をあるべき本来の形に戻すこと、と言えようのう」
478:2016/12/20(火)01:28:52 efD

天王寺口 豊臣本軍陣中

彡(゚)(゚)「米倉殿、その男は・・・・・・!?」

異人の宣教師、米倉ことビリー・ヘリントン。

彼の太い腕が、黄母衣衆の男の一人を押さえつけていた。




「こいつが伝書鳩を飛ばそうとしていたので。
捕まえて調べ上げたら・・・・・・・・・・・」

彡(゚)(゚)「くっ!!まさか・・・・・・・・」

「あの爺め!!」


毛利勝永が怒りの声を上げた。




彡(゚)(゚)「甘かった・・・・すぐに秀頼様の後を追うで!!」
479:2016/12/20(火)01:40:45 efD
若江西方、長瀬川付近


「まもなく家康の本営かと。上様、お疲れですかな?」

輿の中の秀頼に、馬上の又兵衛は声をかけた。


「疲れてはおらぬが暑いな。ふふ、わたしも馬で来るべきであった。」


「もうしばらくのご辛抱ですぞ。」

又兵衛は微笑んだ。
481:2016/12/20(火)01:45:59 efD
ふと、背中にぞくりとするものを感じた。

立て続く銃声。


又兵衛は馬から飛び降り、みずからのマントを秀頼の輿にかぶせた。
何枚もの鉄板を仕込んだそれは、十数発の弾丸を跳ね返す。
482:2016/12/20(火)01:52:35 efD
「おのれ!!」


周囲を見回すと、茂みの中から次々と忍び装束の男たちが飛び出してくる。


護衛は三分の一が撃ち倒され、あるいは斬り倒されていた。



伊賀者・・・・・・・



500人はいる。

「くくく・・・・・あくまで秀頼公は闇の手により葬り去る。
徳川家とはかかわりのないところでな。覚悟いたせい!!」






服部半蔵であった。
483:2016/12/20(火)01:53:40 efD
又兵衛はマントを脱ぎ捨て、秀頼の輿に被せる



「上様!けして外にはお出になりませぬよう!」


そして愛用の槍を構えた。

「これよりこの又兵衛は不動の砦なり。ともに冥府に逝きたきものよりかかって参れ!!」

数人の忍びが一斉に飛びかかってくるのを、一振りで又兵衛はケシ飛ばす。

その隣では、小笠原が豪剣を振るっていた。

その武勇は忍び達を寄せ付けない。
484:2016/12/20(火)01:55:09 efD
「おのれ・・・・・ならばこれをくらえい!」



半蔵以下数名の忍びが、短筒を再度放つ。

数発胸板に喰らった又兵衛、小笠原はよろめく。

他の護衛はことごとく斬られていた。

「ぐっ・・・・おおおおおおおおおおおお!!!」


まだわしのいのちは終われぬ。


又兵衛の槍が激しく旋回し、また数名の忍びが斬り倒された。



小笠原も血反吐を吐きながら、なおも敵を斬り倒す。
485:2016/12/20(火)01:56:32 efD
三度銃声が響いた。


小笠原はついに昏倒。



しかし又兵衛は斃れない。


「ぬおおおお、乞食・・・・・同然の儂を・・・・・・・拾うてくだされた上様に・・・・・・・」



伊賀忍群はあきらかに恐怖していた。



なんなんだこやつは・・・・・・・・・

「又兵衛ー!!!!」
輿の中で秀頼は叫ぶ。

四方八方から刀を突き立てられる又兵衛。

最後の生命力で、槍をしならせる。
みずからとどめを刺そうと進み出た半蔵の頬を槍先はかすめ、そしてその槍は地べたに落ちた。





後藤又兵衛基次、堂々屹立したままの最期であった。
487:2016/12/20(火)02:06:45 efD
「手こずらせおって!

輿をあけい!!秀頼公御覚悟!!!」
ぐわっと人影が飛び出した。

ひとりの忍びが、脳天を唐竹割にされ昏倒する。


豊臣秀頼自らが、刀を振るい立ち向かってきたのだ!!


「ぬううう!!小癪な!!」

「うおおおおお!!下郎ども!!!」


秀頼は身長190センチ以上の巨漢。
忍び達を体格面だけでは圧倒しているのである。
更にもう一人が、刀を弾き飛ばされる。
488:2016/12/20(火)02:07:51 efD
「ここでは死ねぬ。三成が、左衛門佐幸村が、又兵衛が小笠原が、命を賭してわたしに託してくれたものを護らねばならぬ!!


ここでは死ねん!!」

「人は死ねば土くれじゃ!託されるものなどなにもないわ!!死ねい!!」
489:2016/12/20(火)02:09:17 efD
短筒を再び構えなおした半蔵、引き金を引こうとしたとき。

その短筒が弾き飛ばされた!!


!!!!

(´・ω・`)「間に合った!!」


原住がフリントロック銃をぶっ放したのだ。


彡(゚)(゚)「秀頼公!!!ご無事でありますか!!」


恩慈英、毛利勝永が率いる精兵1000名が、怒りに燃え伊賀者を次々と蹴散らしていく。



ビリー・ヘリントンも巨大な棍棒を振り回し敵を圧倒した

「ヘイ構わん。頃すぞ!(主よ御許しを!)」
490:2016/12/20(火)02:11:44 efD
瞬く間に伊賀忍群は壊滅した。




「おのれ、おのれ・・・・・・・。」





半蔵は懐に手を入れ、筒状の物体を取り出した!!


彡(゚)(゚)「!!!!」

導火線に半蔵は火をつける。

「くくく・・・・・この上は皆もろとも爆砕するのみじゃ!!」



彡(゚)(゚)「うおおおおおおおおおお!!!!!」


恩慈英はすさまじい脚力で跳躍、半蔵の腕ごと爆薬を切り離すと、それを抱え目前の長瀬川へダイブした!






着水と爆発が同時であった。
492:2016/12/20(火)02:16:22 efD
若江 幕府軍本営。

「お、大御所様・・・・・・!」

正信が転がるように家康の前に進み出た。

「ひ、秀頼公一行が、御本陣近くに・・・・・・・」

「な・・・・・・・」

家康は茶碗を取り落とした。
493:2016/12/20(火)02:20:20 efD
ずいずいと家康の前に現れ出た秀頼。

かつて対面したときとは何もかもが違った。
ひとりの戦国武将としての威厳があった。


「家康殿。遅参については誠に申し訳ない。
じつは正体不明の賊に襲われておってのう。
よもや徳川の手の者ではあるまいな・・・・・・・」


鋭い眼光。

家康は明らかに気おされていた。
494:2016/12/20(火)02:26:25 efD
「じゃが、我らはあえて真相の詮議をせぬことにした。
徳川と豊臣は和議を結んだばかり。無用の火種は避けたい故。

家康殿が長年望んでおられた戦の無き世。それを創るに我らとしてもできうる限り協力したい。

むろん豊臣家の独立と自治を御認め頂く必要があるが・・・・・・・」


家康はただただ頷くことしかできなかった。

自分は大坂の牢人諸将や謎の軍師などではなく、この青年の器に負けたのではないか。

そんな深刻な疑問が、家康の胸中に去来した。
495:2016/12/20(火)02:40:33 efD
最終的に、和議の条件として

1)大坂城、摂津・河内・和泉の3か国に加え、紀州も割譲してもらうこと
(牢人たちへの恩賞という面での必要からであった)

2)以上の領域を日ノ本関西自治区とし、国内外の経済文化の流通の中心とする。
急速に鎖国へと傾斜する徳川幕府と対照的に、海外からの技術文化の導入を積極的に行うことで、
日ノ本の文化文明に多様性を持たせる。
むろん日ノ本本国との経済交流も活発に行う。
そして明石全登らの望み通り、信教の自由も保証されている。


恩慈英の構想をもとに、秀頼はそれを徳川幕府に認めさせたのである
496:2016/12/20(火)02:44:00 efD
川の激しい流れの中で、意識は混濁していた

彡(゚)(゚)(ワイはこのまま死ぬんか・・・・・豊臣家がどう時代に多様性を持たせるか見たかった・・・・)


ん!?


なぜか野球のグラウンドが、目の前に広がっていた。

しかもこれは・・・・・・・甲子園球場!?
498:2016/12/20(火)02:51:57 efD
白っぽいユニフォーム姿の投手が、青いハンカチで汗を拭っていた。



「僕は持っていると言われ続けてきた。

それはやっぱり仲間だ。現在はいなくなってしまったけど・・・・・・
辛くなったらいつも、僕は頭の中のこの景色に帰ってくる」


彡(゚)(゚)「は、はあ・・・・・・」

「君には今現在信頼すべき仲間がたくさんいる。まだ死んではいけないよ。

この頭の中の世界なら、僕にできないことはない。

いまから仲間のところに返してあげるよ。


もちろん来年こそ僕は25勝するつもりだ!!」

青年はそう言って、恩慈英の体を天高く放り投げた!!!!

彡(゚)(゚)「ほげええええええええええええええええええええええ!!!!」
499:2016/12/20(火)02:53:46 frN
あれは・・・・
500:2016/12/20(火)03:03:18 InP
あれは・・・早実のエース斎藤佑樹!?
501:2016/12/20(火)03:04:09 efD
大坂城下 真田丸球場


豊臣秀頼杯野球大会


彡(゚)(゚)「よっしゃ!一回戦コールド勝ち狙うで!」
(´・ω・`)「とはいえ油断は禁物だよ、相手には3番毛利勝永、四番宇喜多秀家だから・・・・」
彡(゚)(゚)「わーとるわい!それにしても関西自治区で野球が普及してよかったで。」
(´・ω・`)「この調子で日ノ本じゅうに、野球が普及できるといいね!!」

野球という、平和の象徴たる遊戯は、まだまだこの国に根付いたばかりである。




                               ~完~
503:2016/12/20(火)03:08:48 frN
乙でした!
508:2016/12/20(火)15:07:38 maB
又兵衛の最期涙不可避
引用元:http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1480519160