55: 2012/03/24(土) 05:27:08.77 ID:8Gllp2T6O
美希「ハニー! お仕事終わったのー!」

P「あぁ、美希か。お疲れさま」

美希「あのね、ミキ今度のCMにも使ってもらえるかも知れないの!」

P「ん? 誰かに聞いたのか?」

美希「収録現場に、あのマスカラ作ってる会社のだいひょーとりしまりやく?
   の人が来てて、ミキのことたくさん誉めてくれたの」

P「そりゃ凄いな」

27: 2012/03/24(土) 01:24:02.24 ID:5DdZRvj2O
興奮してきた

56: 2012/03/24(土) 05:31:03.46 ID:8Gllp2T6O
美希「それで、『次のCMも必ずお願いします』って!」

P「そうか。さすが天下のアイドル星井美希だ」

美希「えへへ、ミキえらい? ミキ、きらきらしてる?」

P「してるしてる。
  最近は一段とな」

美希「全部ハニーのおかげなの!
   もっとハニーがミキのこと誉めてくれたら、
   誉められた分だけ次も頑張れると思うな?」

57: 2012/03/24(土) 05:37:19.79 ID:8Gllp2T6O
P「そうだな。
  ここの所は結構ハードなスケジュールも元気にこなしてくれてるし、
  いろんな現場の人から美希の頑張りは良く聞いてる。
  俺が一番嬉しいのは、そんな風に美希達が現場のスタッフや、
  スポンサーの人に誉められてるのを聞くことなんだ。
  良くやったな、美希。俺も嬉しいぞ」

美希「じゃあ、えへへ……ミキ、ご褒美、欲しいな?」

58: 2012/03/24(土) 05:42:47.43 ID:8Gllp2T6O
P「ご褒美、か。
  まぁ一応リクエストは聞いてやろう。あんまり無茶は言うなよ?」

美希「簡単なの!
   あのね……ちょっと立って、後ろ向いてくれる?」

P「ん? こうか?」

美希「いいよ! そのまま、しばらくじっとしててね!」

P「あぁ。でも、一体何を」

美希「えいっ!」ムギュー

P「お、おい、美希」

59: 2012/03/24(土) 05:45:05.75 ID:8Gllp2T6O
美希「ハニーの背中、あったかいの……」スリスリ

P「やれやれ……」

美希「ミキ、次のお仕事も頑張るから。
   それで、いっぱいいろんな人から誉めてもらって、
   ハニーに喜んでもらうから。
   それから、ハニーにいっぱい誉めてもらうから……」

P「わかったわかった、その時はまたいっぱい誉めてやるよ」

美希「ハニー、大好きなの!」

61: 2012/03/24(土) 05:50:54.93 ID:8Gllp2T6O
美希「じゃあね、ハニー!
   また明日なのー」フリフリ

P「あぁ、また明日な」



……バタン。



P「全く美希のやつ、最近どんどん甘えん坊になってる気がするな……」

響「……お疲れさま、プロデューサー」

P「おぉ、響もお疲れさん。
  今日の収録はどうだった?」

62: 2012/03/24(土) 05:54:40.13 ID:8Gllp2T6O
響「……自分としてはよくやれたと思うけど、どうかな」

P「響がそう言うなら大丈夫だろう。
  お前も良くやってくれてるよ」

響「うん。自分、完璧だからな」

P「ははは。
  ほんとに、同じAランクアイドルでも美希と違って全然手が掛からないからな。
  俺としても、やりやすくてありがたいよ」

響「……うん」

64: 2012/03/24(土) 05:59:06.10 ID:8Gllp2T6O
P「まぁでも、あれだ。
  たまには何かちょっとぐらいのわがままなら聞いてやれるぞ?
  美希を引き合いに出すわけじゃないが、
  ちょっと響はストイック過ぎるように思えるんだが」

響「そうかな?
  別に自分は平気だけど……」

P「それならいいんだがな。
  でも、ほんとに何もないか?」

響「――――うん。今のところは」

65: 2012/03/24(土) 06:03:15.25 ID:8Gllp2T6O
P「そうか?
  別に無理にとは言わないが」

響「……何か思い付いたら、その時に相談してもいいか?」

P「あぁ、もちろんだ」

響「じゃあ、そうする。
  ……自分もそろそろ帰るぞ」

P「気を付けてな。また明日」

響「ばいばい、プロデューサー」フリフリ



……バタン。



響「……」

66: 2012/03/24(土) 06:08:42.64 ID:8Gllp2T6O
響(ほんとは、美希みたいに、プロデューサーにたくさんなでて欲しい。
  頑張ったなって、抱きしめてほしいぞ。

  ……でも、自分、家に色んな動物が居るから……
  きっと、どんなにお風呂に入っても、美希みたいに、
  良い匂いにはなれないんだ。
  それで、もしプロデューサーに変な匂いだって思われたら……

  ……それに……)

67: 2012/03/24(土) 06:12:39.93 ID:8Gllp2T6O
響「プロデューサーから、美希の匂いがしたら……
  ……きっと、自分、すっごく惨めな気持ちになっちゃうから……」



響「……」



響「……良いんだ、ちゃんと気にしてもらえるだけで。
  それで、自分はもう、満足なんだぞ、プロデューサー」



響「……」



響「……はぁ……」

70: 2012/03/24(土) 06:19:01.51 ID:8Gllp2T6O
響「……あ」



 『あなたの髪に、あの人を振り向かせる香りを――――』



響「美希のCMしてるシャンプー……

  ……うぅん、やめとこう。
  気にしないって、決めたんだ。
  自分は、自分のお仕事をしてれば……振り向いてもらえなくたって……

  ……」

72: 2012/03/24(土) 06:26:20.91 ID:8Gllp2T6O
響「……え? 美希と競演?」

P「あぁ、例のシャンプーのCMな。
  美希のオファーは決まってたんだが、
  せっかくだから他のアイドルも勧めたら、お前が指名されたわけだ」

響「そう、なのか。
  で、でも、自分そんな、美希みたいに出来るかどうか……」

P「なんだ、らしくないな?」

響「……」

73: 2012/03/24(土) 06:32:35.73 ID:8Gllp2T6O
P「俺は良い人選だと思うんだけどな。
  ほら、響、こんなに髪の毛綺麗だし」スッ

響「――――やっ」パシッ

P「お、おっと」

響「……あ、……ご、ごめん、プロデューサー!」

P「い、……いや、俺の方こそごめんな?
  不用意に触ろうとして、嫌だったよな?
  つい美希によくやるクセで、……すまん……」

響「――――……」

74: 2012/03/24(土) 06:37:14.03 ID:8Gllp2T6O
P「ほんとにすまなかった。
  もうしないから、許してくれ……」

響「……ちょっと驚いただけだから、別に怒ってるわけじゃないぞ、自分」

P「そうなのか?
  いや、でも、……とにかく、ごめんな、響。
  もし、嫌じゃなかったら、CMの件、考えておいてくれ」

響「……うん」

P「じゃあ、俺は美希を迎えに行ってくるから」

76: 2012/03/24(土) 06:40:43.20 ID:8Gllp2T6O
響「……気を付けて、いってらっしゃい」

P「あぁ」



……バタン。……



響「……違うんだ。プロデューサー。
  プロデューサーになでられるのは全然嫌なんかじゃないんだ。
  ただ、……ただ、プロデューサーに、変な匂いだって思われるのが……

  ……

  ……プロデューサー……」

77: 2012/03/24(土) 06:48:34.43 ID:8Gllp2T6O
美希「響、今日はよろしくなの!」

響「うん。よろしくな、美希」

P「もう説明があったと思うが、今回は二種類のシャンプーのCMだ。
  美希のはこないだのと同じで、響の方は新商品だな」

美希「美希も新しいやつがよかったのにー」

P「まぁそう言うな。
  新商品の方は、落ち着いたツヤと海のイメージだから、
  響の方がぴったりなんだよ」

78: 2012/03/24(土) 06:52:18.91 ID:8Gllp2T6O
美希「むー……それなら仕方ないの」

響「で、でも、自分ちょっとシャンプーのCMなんてよくわからないから、
  美希に色々教えて欲しいぞ」

美希「教えるって言っても、ミキは普通に家のお風呂でシャンプーしてるときと
   あんまり変わらないかなー。うーん、強いて言えば……」

響「言えば……?」

81: 2012/03/24(土) 06:56:35.15 ID:8Gllp2T6O
美希「ミキ、シャンプーの匂いって好きだから、
   あわあわーってなるだけで、楽しくなっちゃうんだよね。
   自分がどんどん可愛くなる感じ、って言うか」

響「……」

美希「だから、とにかく、シャンプーを楽しむようにすればいいと思うな!」

P「今回は特に香りが大事なコンセプトだしな」

美希「まぁ美希はハニーの匂いが一番好きだけどね!」

82: 2012/03/24(土) 07:00:41.57 ID:8Gllp2T6O
P「またお前はそう言うことを……」

美希「だってほんとなんだもーん」

響「……プロデューサーは、シャンプーの匂い、好きなのか?」

P「そうだな、うん、人並みには。
  と言うか、嫌いなやつはなかなか居ないと思うけど」

美希「よく言う『女の子っぽい匂い』だよね」

P「そうそう。不思議と安心すると言うかなんと言うか」

83: 2012/03/24(土) 07:04:36.49 ID:8Gllp2T6O
美希「美希の匂いだったら、好きなだけ嗅いで良いよ?」

P「変態か俺は。
  それにわざわざそんなことしなくても、近くに居たら普通に香ってくるよ」

響「――――え?」

P「ん? まぁ、こう、すぐ横をすれ違った時とかにな」

響「……そ……そう、なのか……」

P・美希「「?」」

響「……」

85: 2012/03/24(土) 07:09:36.53 ID:8Gllp2T6O
  「765プロさん、そろそろ準備お願いしまーす!」

P「あ、はーい!
  まぁそう言うことで、あとは頼んだぞ」

美希「えー! ハニー帰っちゃうの?」

P「お前ら二人とも収録で服脱ぐだろ。
  俺が居ていいのか?」

美希「ミキは全然いいよ?」

P「はぁ……お前はともかく、……響がだな。
  俺がいたら嫌だろ? 響」

87: 2012/03/24(土) 07:13:51.75 ID:8Gllp2T6O
響「さ、……さすがに恥ずかしいぞ……」

P「と言うわけで、俺はもう行くからな。
  二人とも、頑張れよ」

美希「ちぇー。はーいなのー」

響「……」

美希「あーあ。
   せっかく美希の入浴シーンでハニーを骨抜きにしようと思ったのに」

響「……美希はいつも良い匂いがするよな」

88: 2012/03/24(土) 07:18:47.47 ID:8Gllp2T6O
美希「最近は、一日に絶対二回はお風呂入ってるからねー」

響「……そうなんだ」

美希「乙女のたしなみなの。
   そう言う響は……」クンクン

響「あっ、や、やだぞっ!」

美希「……うん、響らしい、良い匂いがするの」

響「……私……らしい……?」

美希「そうだよ。響らしい匂い」

響「そ、それっつどう言う――――」

90: 2012/03/24(土) 07:20:55.98 ID:8Gllp2T6O
 「星井さん、我那覇さん、スタンバイお願いしまーす!」



美希「あっ、もう行かなきゃ!
   響も急いで!」

響「え? あ、う、うん」







響(自分の匂いって……やっぱり、変、なんだな……)

139: 2012/03/24(土) 14:08:49.01 ID:8Gllp2T6O
P「ほー、良く撮れてるじゃないか」

美希「思ったより健康的な感じでちょっと拍子抜けなの」

響「自分はこれでも充分恥ずかしいぞー……」

P「最近は色々うるさいからな。
  しかし、そうは言ってもやっぱりドキッとするものはあると思うが」

美希「えへへ、そうかな?
   ほらほら、実物もよく見るの!」ファサッ

P「おー、良い匂いだ」

142: 2012/03/24(土) 14:15:30.12 ID:8Gllp2T6O
響「……自分、ちょっと疲れたから、ちょっと控え室に戻ってるぞ」

P「ん? 響、大丈夫か?」

響「へーき。なんくるないさー」

P「……なら、良いんだけど、無理はするなよ」

響「うん。わかってるぞ、プロデューサー」

P「もうじき出発するからな」

響「はーい」

P「……」

143: 2012/03/24(土) 14:20:32.15 ID:8Gllp2T6O
P「……なぁ美希、今日の撮影、響の様子どうだった?」

美希「響? うーん……ちょっと恥ずかしがってたぐらいで、
   別に普通だったと思うけど……慣れない撮影で緊張したんじゃないかな。
   シャンプーとか化粧品のCM、初めてなんだよね?」

P「そうだと良いんだが……
  あぁ、それと、……」ナデナデ

144: 2012/03/24(土) 14:24:17.84 ID:8Gllp2T6O
美希「ん……あれっ、今日は言わなくてもなでなでしてくれたの!
   ハニーもついにミキの魅力に」

P「普通さ、いきなり男に髪の毛触られたら嫌だよな?」

美希「そりゃそうなの」

P「だよなー……」

美希「でも、例えばミキとか、事務所のみんななら基本的に
   ハニーのなでなではいつでも歓迎だと思うな」

145: 2012/03/24(土) 14:27:48.56 ID:8Gllp2T6O
P「みんな、って……千早とか、響もか?」

美希「うん。千早さんは照れて嫌がるかもしれないけど。
   ……響? 響は素直に喜ぶんじゃないの?」

P「そう……だったら良かったんだが」

美希「?」








響「……いいなぁ、美希は……」

148: 2012/03/24(土) 14:33:16.12 ID:8Gllp2T6O
響(でも……やっぱり美希みたいに、プロデューサーに甘えるのは……
  自分、どんなにお風呂に入っても、変な匂いだし……
  きっと、べたべたくっついたら、プロデューサーに嫌われちゃうんだぞ……

  ……イヌ美たちのせいじゃなくて、自分が元々変な匂いなのかもな……
  美希は、別にあのシャンプーじゃなくてもいつも良い匂いだし……)

149: 2012/03/24(土) 14:38:49.41 ID:8Gllp2T6O
響(……あれ、気にしないって決めたはずなのに……なんか変だな、自分。

  それに……もし、自分が変な匂いじゃなくても、
  きっとプロデューサーには、あんな風に甘えられないし……
  ……大好き、なんて、言えるはずないぞ……

  ……うん、だから自分は、一生懸命お仕事して、
  それで、プロデューサーにちょっとだけ誉めてもらえたら……)

151: 2012/03/24(土) 14:42:22.69 ID:8Gllp2T6O
  『ハニー、大好きなの!』



響(……プロデューサーも、自分なんかより、
  美希みたいなきらきらしてる子の方が良いに決まってるぞ。
  自分なんかより……美希の方が……



  プロデューサーって、美希のこと、どう思ってるのかな……?)

153: 2012/03/24(土) 14:48:28.55 ID:8Gllp2T6O
P「じゃあ、二人ともお疲れさん。
  もう暗いから、気を付けて帰るんだぞ」

美希「また明日ね、ハニー!」

P「おう、また明日。
  響も、気を付けてな?」

響「うん。明日もよろしく、な」

P「あぁ。一緒に頑張ろう」





響(美希と比べて、この距離感が……ちょっとだけ寂しいんだぞ、プロデューサー)

154: 2012/03/24(土) 14:53:20.70 ID:8Gllp2T6O
響(やっぱり、こないだのこと、気にしてるのかな……
  でも、あれはいきなりプロデューサーが……
  うぅん、あんなことしたら、距離を置かれても当然だぞ。

  ……髪の毛、触られてても、変な匂いって思われただろうし、
  結局どっちにしても……同じかな。

  ……お仕事、頑張ろう。
  これ以上、プロデューサーに嫌われないために……)

157: 2012/03/24(土) 15:02:04.41 ID:8Gllp2T6O
美希「ハニー! ミキ、やったの!」

P「あぁ。ソロアルバム、初登場オリコン一位。
  千早は悔しがってたが、間違い無く美希の実力だよ。
  頑張ったな、美希」ナデナデ

美希「んーっ、もっと! もっと誉めてなの!」

P「も、もっとって」

美希「……ぎゅっとしてほしいな?」

P「バカ、そんなこと出来るわけないだろ」

159: 2012/03/24(土) 15:08:46.14 ID:8Gllp2T6O
美希「でもやっちゃうもんねー!」ギュウッ

P「こ、こら、離れないか。まだ話は……

  あー、響。
  響のソロアルバムも僅差の二位だ。ほんとにほとんど差は無いんだけどな。
  実質、同着一位と考えて良い。良くやったな」

響「うん。プロデューサーのおかげだぞ」




響(……でも、美希を無理やり引き離したりはしないんだよな)

160: 2012/03/24(土) 15:13:34.25 ID:8Gllp2T6O
美希「んー……えへへ……」スリスリ

P「二人とも、例のシャンプーのCMのタイアップが……おい、いい加減にしろ」

美希「だって嬉しいんだもん!
   美希とハニーの力が認められたんだよ? ハニーは嬉しくないの?」

P「嬉しいに決まってるだろ。
  俺のアイドルが同着一位なんて、夢みたいだ」

美希「だったら、今日ぐらいいいでしょ?」

161: 2012/03/24(土) 15:18:24.17 ID:8Gllp2T6O
P「あー、もう、わかったわかった。
  今だけだからな。ちゃんと話は聞いてろよ」

美希「やったぁ! んふー」ムギュウ



響(……ほらな)



P「で、あー、二人はこれから更に忙しくなると思う。
  お前たちの勢いに引っ張られて、春香や千早、雪歩なんかもかなり好調だ。
  だから、二人とはこれまで以上に密な連携を取りたいと思う」

162: 2012/03/24(土) 15:22:47.34 ID:8Gllp2T6O
響「密な連携?」

P「あぁ。
  何かちょっとでも気になることがあったら、
  なんでも遠慮無く俺に相談してくれ。
  可能な限り力になるようにする」

美希「じゃあじゃあ、例えばどーしても二人っきりで落ち着いてお話したいな……
   って美希がお願いしたら、どうなるの?」

P「……まぁ、考えてやる」

美希「ほんとに!?」

164: 2012/03/24(土) 15:27:36.62 ID:8Gllp2T6O
P「美希も響も、今は特に自分で思ってる以上にハードワークになってるんだ。
  知らないうちに疲れが溜まることもある。
  それで体調崩したりしたら元も子も無いからな」

美希「それって要するに、
   お仕事頑張ったらハニーとデート出来るってことだよね?」

P「デートじゃない。仕事の一環」

美希「どっちでもいいの! 約束だからね、ハニー!」

165: 2012/03/24(土) 15:32:01.52 ID:8Gllp2T6O
P「響も、何かあれば、遠慮しないで言うんだぞ」

響「うん、……そうする」

美希「ねぇねぇ、響はハニーとデートしたくないの?」

響「えっ……そんな、自分は別に……」

P「響はお前と違って、仕事に対してストイックなんだよ。
  ちょっとは見習え。
  ……まぁ、だからこそ美希より心配ではあるんだが」

166: 2012/03/24(土) 15:37:01.20 ID:8Gllp2T6O
美希「えー! ハニーはミキのこと心配じゃないの?」

P「何かあればすぐわかるって意味ではな」

美希「うー……貴音みたいなミステリアスさがほしくなってきたの……」

P「美希には似合わないな。
  いつも通り、美希は素直な方が良いよ」

美希「ハニーが良いなら、それで全然かまわないの!」ギュッ

響「あはは。……」

169: 2012/03/24(土) 15:41:00.83 ID:8Gllp2T6O
響(……プロデューサー、やっぱり、
  ちゃんと自分のことも考えてくれてるんだな。

  でも、……美希があんな感じだから、
  自分はあんまりプロデューサーに迷惑掛けないようにしようと思ってたのに、
  なんだか逆効果だったみたいだ……

  どうしよう……どうしたらいいのかな……

  わからないよ、……自分には。プロデューサー……)

170: 2012/03/24(土) 15:46:21.60 ID:8Gllp2T6O
~♪
   ~♪
 ~♪

響「プロデューサー、また美希からメールか?」

P「あぁ。
  まったく美希のやつ、早速権利をフル活用しやがって……」

響「……でも、プロデューサーもまんざらじゃなさそうだな?」

P「そう見えるか?
  まぁ、……楽しいことは否定しないよ。
  美希にも響にも、俺の方が元気をもらうことは多いからな」

171: 2012/03/24(土) 15:51:12.90 ID:8Gllp2T6O
響「え? 美希はわかるけど……自分も?」

P「あぁ。響が一生懸命仕事を頑張ってくれてるのを見てると、
  俺も頑張らないとなーって思うわけだ。
  それに、何というか……こんな言い方したら嫌かも知れないが、
  響の場合、こう、……ほんとに大丈夫かな、と。
  頑張りすぎてないかって、どうしても気になっちゃってな」

173: 2012/03/24(土) 15:54:56.73 ID:8Gllp2T6O
響「……自分は、大丈夫だぞ、プロデューサー」

P「うーん……実は、美希に『仕事は響の方をよく見てあげて』って言われてな」

響「……え?」

P「美希から見ても、やっぱりちょっと心配なんだと思うぞ。
  だから、しばらくは響と同じ現場に行くことが多いと思う」

響「……美希……」

174: 2012/03/24(土) 15:58:48.24 ID:8Gllp2T6O
P「もちろん、響が嫌じゃなかったら、だが」

響「そんなの!……嫌じゃないに、決まってるぞ」

P「ん、そうか。そりゃ良かった。
  じゃあ、これからも一緒に、ますます頑張って行こうな」

響「あぁ、自分、もっともっと頑張るぞ!」

~♪
   ~♪
 ~♪

P「……はぁ、人が大事な話をしてるときに……」

175: 2012/03/24(土) 16:02:08.84 ID:8Gllp2T6O
響「ひょっとして、その……デートのお誘い、ってやつか?」

P「んー、まぁ、さすがにもう大っぴらに出歩けたりはしないから、
  ちょっと喫茶店で話したりするぐらいだけどな。

  仕事は響とか、他の子をよく見とく代わりに、
  こう言う……デートは、こまめにしてくれ、ってさ」

響「――――……」

176: 2012/03/24(土) 16:07:39.55 ID:8Gllp2T6O
響(自分がうじうじ悩んでる間に、美希はどんどんプロデューサーと……
  ……自分がどんなにお仕事を頑張っても、素直で女の子らしい美希に、
  勝てるわけないって、最初からわかってたのに……

  万に一つなんて、なんの根拠もなくぼんやり考えてた自分が、余計に情けないぞ。
  そりゃ美希の方が……プロデューサーも、楽しそうだったし……)

179: 2012/03/24(土) 16:11:37.77 ID:8Gllp2T6O
響(……自分も、今より、もうちょっとだけ、素直になっても、良いかも知れない。
  せっかく、プロデューサーと一緒にお仕事することは増えたんだし、
  美希みたいには出来なくても、美希に勝てなくても、
  もうちょっとだけ、……プロデューサーに甘えても、良いかも知れない。

  それでもしプロデューサーに嫌われたら……そのときは、仕事が恋人、さー)

180: 2012/03/24(土) 16:17:41.68 ID:8Gllp2T6O
P「おはよう、響。
  こんな早くからすまないな。
  車の中で寝て良いぞ」

響「おはよう、プロデューサー。
  今日はスキー場で収録だよな」

P「あぁ、そうだ。
  このところ特に寒いから、風邪とかひかないように気を付けろよ」

響「うん。ほんと、今日は寒いな……」

P「……あれ、響、マフラーはどうしたんだ?」

181: 2012/03/24(土) 16:21:05.67 ID:8Gllp2T6O
響「あ、あぁ、朝あせって家を出たから、うっかり忘れちゃって……」

P「おいおい、首もと冷やしちゃだめだろ。
  ほら、これ巻いとけ」シュルッ

響「え?……えっと、……」

P「……あ、嫌なら、もちろん無理にとは言わないけどさ」






響(プロデューサーの、マフラー……)

182: 2012/03/24(土) 16:24:24.75 ID:8Gllp2T6O
響「い、嫌じゃないぞ!
  ただ、その、えっと……えっと、だな……」

P「ん? どうした?」

響「そのマフラー、自分に巻いて!……ほしいぞ、プロデューサーに……」

P「俺が響に、これを巻くのか?
  そりゃ別に構わないが……良いのか?」

響「……」コクン

P「そ、そうか。じゃあ、もうちょっとこっちに来てくれ」

184: 2012/03/24(土) 16:27:37.60 ID:8Gllp2T6O
P「よっと」シュルシュル

響「……っ」ギュッ

P「ははは。
  そんな思いっきり目をつむるぐらいなら、自分でやればいいじゃないか。
  ほら、巻けたぞ。変になってるところは、自分で直してくれ」

響「……」





響(プロデューサーの匂い……これが……
  ふわってして、優しくて……あったかい……)

190: 2012/03/24(土) 17:02:10.83 ID:8Gllp2T6O
響「ぷ、プロデューサー」

P「なんだ?」

響「えいっ」ギュッ

P「ちょっ、ひ、響?」

響「さ、寒いから! 自分寒いのは苦手だから、ちょっとだけ――――」

P「おいおい、だからって」


――――パッ


P「……も、もう良いのか? いや、聞き分けがよくて助かるが」

響「うん……もう、良いよ」

191: 2012/03/24(土) 17:05:39.73 ID:8Gllp2T6O
響「あ、出発の前にちょっとお手洗い行って来て良い?」

P「まだ少し時間に余裕はあるから、構わないぞ」

響「うん。なるべく急ぐから」



タッタッタッ……







響「プロデューサーから美希の匂いがするぞ……
  プロデューサーも自分も朝一番で来たのに、なんで……?
  なんで、なんで、なんで、……」ポロポロ

198: 2012/03/24(土) 17:20:28.45 ID:8Gllp2T6O
響「……なんで、って……そんなの、わかってるけどさ……
  そっか、そうだよな、美希とプロデューサーだもんな……

  ……うん、もうぐちゃぐちゃだ。
  頭の中も、お化粧も……

  でも、……暖かいなぁ……プロデューサーのマフラー……暖かいなぁ……」ポロポロ…

201: 2012/03/24(土) 17:26:02.39 ID:8Gllp2T6O
P「そろそろ出発するか」

響「うん。遅刻したら、早起きしたのが無駄になっちゃうもんな」

P「だな。
  暖房が効き始めるまで寒いけど、我慢してくれよ」

響「平気だぞ。……平気だ」キュッ

P「ん……どうかしたか、響?」

響「別に、なんでもないぞ。ちょっと寝ていい?」

P「あぁ、もちろん。着いたら起こすよ」

203: 2012/03/24(土) 17:30:08.30 ID:8Gllp2T6O
響(……このマフラーのせいで、プロデューサーと一緒に寝てるみたい……
  すごく、安心する匂い……気持ちいい……暖かい……

  ……これが、もう、全部、美希のものなんだなぁ……
  自分なんか、こんなおこぼれをちょっとだけ貰えたら、ラッキーなんだな……

  良いんだ、それで……)

204: 2012/03/24(土) 17:33:48.63 ID:8Gllp2T6O
響(きっと、自分といるより、美希と居た方が、
  プロデューサーも良いだろうし……

  自分はやっぱり、プロデューサーにもう、迷惑を掛けないようにしよう。
  それで、二人を応援しよう……お仕事を一生懸命頑張って、
  プロデューサーが美希のお仕事も見てあげられるように、しよう。

  プロデューサーが幸せなら、自分も、それで……)

205: 2012/03/24(土) 17:37:15.19 ID:8Gllp2T6O
響(……わかってる。
  言い訳なんだ、これ。
  自分が美希みたいに、ちゃんと頑張らなかった、言い訳なんだ。
  ほんとは、悔しくて、羨ましくて、仕方ないんだ。

  これからはもう、美希がプロデューサーの、
  あの優しい言葉も、あの優しい暖かさも、あの優しい匂いも、
  好きなだけ全部、全部独り占めできるっていうのが)

206: 2012/03/24(土) 17:39:16.70 ID:8Gllp2T6O






響(……マフラーに、自分の変な匂いがついてたら、
  プロデューサー、自分のこと、嫌いになるかな……)








214: 2012/03/24(土) 18:15:33.80 ID:8Gllp2T6O
P「響、響。もうすぐ到着するぞ」ユサユサ

響「……うん。運転お疲れさま、プロデューサー」

P「響にはこれから頑張ってもらわないといけないけどな。
  よく寝れたか?」

響「かなり熟睡出来たぞ。
  プロデューサー、安全運転だったし、それに、……」

P「ん?」

響「……なんでもない。
  マフラー、返すね」

216: 2012/03/24(土) 18:20:17.53 ID:8Gllp2T6O
P「別に、まだ着けてて良いぞ。
  外は雪だからな、事務所よりずっと寒い」

響「……でも、プロデューサーが風邪引いちゃったら……」

P「バカ、そんなこと気にするなよ。俺は平気だ。
  さぁ、着いたぞ。……お、おっと、地面が凍ってるなこれ。
  響、ちょっとそのまま待ってろ」

響「え? う、うん」

217: 2012/03/24(土) 18:22:42.53 ID:8Gllp2T6O
ガチャッ、



P「ほら、こけないように気をつけて降りろよ」

響「……ありがとう、プロデューサー」



……ギュッ、



P「ここから少し歩くから、ゆっくり行こう」

響「……うん」

218: 2012/03/24(土) 18:29:27.09 ID:8Gllp2T6O
響(このまま手をつないで、どこか遠く、
  もっと寒いところに、逃げられたらな……なんて。
  こんなこと考えてたら、プロデューサーに怒られちゃうかな)


P「……それにしても、寒いな。道路も凍るわけだ」


響(……。
  ……。
  ……、……)

220: 2012/03/24(土) 18:32:25.93 ID:8Gllp2T6O
響(やっぱり、やめとこう。
  今こけるふりしてプロデューサーに抱き付いたりなんかしたら、
  きっと、もう二度と離れられなくなる。
  ……どんなに惨めな気持ちになっても。

  今は……これで、充分すぎるぐらいだよな)



ギュッ……



P「お、雪も降ってきたな」

響「……そうだな」

221: 2012/03/24(土) 18:40:18.74 ID:8Gllp2T6O
P「……おい響、どうしたんだ?
  泣いてるのか?」

響「……雪が、目に入った、だけだぞ」

P「そうか……? それなら良いんだが……ほんとに大丈夫か?」

響「なぁ、プロデューサー」

P「ん、どうした?」





響「……やっぱり、マフラー返すよ」

222: 2012/03/24(土) 18:43:18.83 ID:8Gllp2T6O
P「え? いや、寒いだろ?」

響「いいから。ほら、こっち向いてくれ」グイッ

P「わっ、ちょっ、わっぷ」

響「……うん、これでよし」

P「な、なんだよいきなり」

響「プロデューサー、そのマフラー、何の匂いがする?」

223: 2012/03/24(土) 18:45:57.94 ID:8Gllp2T6O
P「なんのって……」

響「プロデューサー」

P「……響の匂いが、するよ。ちょっとだけ」

響「変な匂い? 嫌な匂い?
  ……ごめんな、プロデューサー。マフラー、そんなにして」

P「いや、いやいや、なに言ってんだ。
  そんな変な匂いなんかしないぞ」

響「……プロデューサーは優しいな」

228: 2012/03/24(土) 19:00:07.82 ID:8Gllp2T6O
P「ほんとだって。
  全然嫌じゃないぞ。
  響は……そうだな、元気な匂いと言うか、お日様の匂いがする」

響「……」

P「色んなことを一生懸命頑張ってる、響の匂いだ。
  俺は好きだよ、これ。変な匂いなんかじゃない」




響「……プロデューサーの、ばか」

229: 2012/03/24(土) 19:03:45.32 ID:8Gllp2T6O
P「え?」

響「なんでもない。行こ?」ギュッ

P「お、おい、響」

響「自分も好きだぞ、プロデューサーの匂い。

  ……大好きだ」

230: 2012/03/24(土) 19:09:59.11 ID:8Gllp2T6O
 数年続いた我那覇響と星井美希のトップアイドル争いは、
 星井美希の電撃入籍によって終結する。

 当時は下世話な週刊誌に酷く煽られたりしていたが、
 我那覇響が急遽開いた記者会見で二人を必死に擁護すると、
 誹謗は幻に消えていった。

 そして今やその座を不動のものにした我那覇響は、
 しかし、時折、あの雪の降る日の出来事を思い出し、――――

232: 2012/03/24(土) 19:13:00.00 ID:8Gllp2T6O
ペラ…

響「あはは、赤ちゃんはお母さん似だ。
  よかったな、プロデューサー。

  ……マフラー、やっぱり、あのときに無理言ってもらっておけば、よかったかな」





END

234: 2012/03/24(土) 19:14:45.00 ID:Xc7grpFs0
ええー…

235: 2012/03/24(土) 19:15:39.94 ID:UU15/8qA0
切ない感じがまた良いですな


237: 2012/03/24(土) 19:15:54.78 ID:t/fqFB3F0
ルート分岐間違えたのだれや!!

257: 2012/03/24(土) 19:54:35.25 ID:8Gllp2T6O
響「プロデューサー」

P「おぉ、なんだ響、もう帰ったんじゃなかったのか?
  みんな結構前に出て行っちゃったぞ」

響「あ、あのさ、……」

P「ん? 何か相談か?」

響「自分……こないだ、シャンプーのCMに出ただろ?」

P「あぁ、あれな。かなり評判が良いみたいじゃないか」

響「う、うん。それで、な……う、うぅ……あの……」

261: 2012/03/24(土) 19:59:16.26 ID:8Gllp2T6O
P「どうしたんだ、珍しく煮え切らないな」

響「……匂いを……」

P「え?」

響「じゃなくて、えっと……ほら、あの普段、よく美希にしてるみたいな……」

P「美希? なんのことだ?」

響「うぅー……プロデューサー! 手、だして! 手!」

P「うおっ、な、なんだいきなり」

響「いいから、早く!」

265: 2012/03/24(土) 20:05:58.53 ID:8Gllp2T6O
P「わ、わかったわかった。こうか?」スッ

響「もうちょっと上」

P「上?」ススッ

響「その辺。そこで掌を下に向けて、そのままな」

P「あぁ。
  それで、しゃがんでどうするつもりだ?」

響「えいっ」バッ


スカッ


響「あ、あれ?」

P「ほら、暴れるから書類落ちただろ」バサバサ

響「……」

266: 2012/03/24(土) 20:09:40.88 ID:8Gllp2T6O
響「そのままって言ったのに……」

P「それで、なんだったっけ。手?」

響「も、もういいっ!」フイッ

P「なんだそりゃ。
  ……ん、あ、なんか良い匂いがするな、響。
  あのシャンプー使ってみたのか?」

響「なっ、なっ、……」

P「これなら、あの人も振り向く、ってやつだな。ははは」

響「……プロデューサーの、ばか」

268: 2012/03/24(土) 20:13:44.56 ID:8Gllp2T6O
P「ところで、次は同じ会社のトリートメントのCMのオファーがあるんだが」

響「……自分でいいならやるぞ」

P「そうこなくっちゃな。
  響にぴったりの仕事だ。確か、海をイメージ商品でな」

響「へぇ、そうなのか。
  それはちょっと楽しみだぞ」

P「だろ?」

269: 2012/03/24(土) 20:18:17.81 ID:8Gllp2T6O
響「でも自分、そこまで髪の毛とか気にしてこなかったからよくわからないけど、
  自分なんかがやっていいのか? もっとこう、美希とか……」

P「なに言ってんだ。
  さっきも言ったけど、お前が適役だよ。
  髪の毛だってほら、さらさらだし」ナデナデ

響「あっ」

P「あ、嫌だったか?」

響「べ、べっ、べ、別に……」

270: 2012/03/24(土) 20:22:43.66 ID:8Gllp2T6O
P「さて、じゃあそろそろ帰るか」スッ

響「あっ……うん」

P「んー、ちょっと遅いけどなんか食べていくか?」

響「えっ、あ、うん、なんでも食べるぞ自分!」ガタッ

P「そんなに腹が減ってたのか」

272: 2012/03/24(土) 20:26:35.29 ID:8Gllp2T6O
P「おー、雪だなぁ。
  春分を過ぎても七回は積もるって言うが」

響「プロデューサーは、寒いのは好きか?」

P「んー、別に普通かな。
  暑いのも寒いのも苦手だ」

響「そっか。
  自分はこっちに来てから、結構寒いのも好きになってきたぞ」

P「へぇ。そりゃたくましいな」

273: 2012/03/24(土) 20:30:39.30 ID:8Gllp2T6O
響「前に雪がちょっとだけつもったときにさ」

P「うん」

響「雪だるまを作ってみたんだ。ちっちゃいやつだけど」

P「ほほう。響と雪だるまって、なんか結構新鮮な組み合わせだな」

響「でも、次の日からまた急に暖かくなっただろ?」

P「あぁ、確かそうだったかな」

276: 2012/03/24(土) 20:33:34.56 ID:8Gllp2T6O
響「そしたら、ベランダに置いてあった雪だるまがだんだん溶けて来ちゃって……」

P「まぁそう言うもんだしな。仕方無い」

響「……かわいそうだったから、冷凍庫に入れてあるんだ」

P「えっ、今も?」

響「うん」

P「マジかよ」

響「なんか、ほっとけなくて……」

P「ははは、響は優しいなぁ」

283: 2012/03/24(土) 21:01:18.19 ID:8Gllp2T6O
響「この雪が積もったら、仲間を作ってあげられるかな」

P「おいおい、冷凍庫が一杯になるぞ」

響「うぅ……だって……」

P「……まぁ俺も昔、同じことやって親に怒られたけどさ」

響「そうなのか?」

P「まだちっちゃかった時にな」

響「……ひょっとしてプロデューサーって、泥団子とか大切にするタイプ?」

P「正解」

286: 2012/03/24(土) 21:03:51.56 ID:8Gllp2T6O
響「それで、何食べよっか、プロデューサー」

P「俺も何でもいいんだけどな。
  あんまり高いものじゃなけりゃ」

響「うーん……今日はラーメンの気分な気がするぞ」

P「ラーメンか。いいな、それで行こう。
  実はこないだ結構うまい店を見つけてな」

響「貴音に教えてもらったのか?」

287: 2012/03/24(土) 21:06:00.09 ID:8Gllp2T6O
P「いやぁ、たまたま入った店だったよ。
  今度貴音を連れて行ってやろうと思ってたんだが、
  まずは響で事前調査だな」

響「むっ、自分も結構貴音に付き合ってラーメン食べてるから、
  きびしめに審査するぞ!」

P「もちろん、それを見越してのチョイスさ」

響「自信満々だなぁ。楽しみだぞ」

P「まぁ付いて来いって」

289: 2012/03/24(土) 21:12:19.46 ID:8Gllp2T6O
P「しかし、なんか冬の匂いってあるよな」

響「あぁ、冬の都会の匂いならわかるぞ。
  冷たい排気ガスの匂い」

P「それそれ。
  なんかちょっと切なくなるよな」

響「そうだな。自分はちょっと好きだけど」

P「変わってるな」

響「そうか?」

P「……あ、とんこつの匂い」グー

響「カレーっぽい匂いもするぞ」グゥ

291: 2012/03/24(土) 21:15:47.56 ID:8Gllp2T6O
P「さぁ、ここだ」

響「こんな路地裏にあるんだな」

P「名店っぽいだろ?」

響「いかにもにわかっぽいコメントだな」

P「実際にわかだし良いんだよ別に。
  俺はチャーシュー麺だ」

響「自分は普通の醤油ラーメンで」

P「ほほう、シンプルに行くのか」

響「まずは基本からだぞ」

293: 2012/03/24(土) 21:24:13.07 ID:8Gllp2T6O
響「ごちそーさまだぞ」

P「ごちそうさま。で、どうだった?」

響「うーん……思いの外公正な審査が難しいかも」

P「ん? どうしてだ?」

響「だって、元々かなりお腹減ってたし、それに……
  ……プロデューサーと……久し振りの……ご飯だったし……」

P「? 久し振りのなんだって?」

響「なっ、ななっ、なんでもないぞ!」

294: 2012/03/24(土) 21:29:41.16 ID:8Gllp2T6O
P「響、ガムいるか?」

響「うん」

P「はい」スッ

響「まさかのバブリシャスだぞ……」

P「冗談だ。キスミントをやろう。おい、冗談だってば。そんな引くなよ」

響「いつも持ち歩いてるのか?」

P「たまたま見かけたから買っただけだって。
  たまに噛むとうまいんだよこれ」

響「ふぅん……」

297: 2012/03/24(土) 21:38:11.43 ID:8Gllp2T6O
P「まぁそう言うわけで、また明日な」

響「うん。今日はラーメン、ありがとうな、プロデューサー」

P「気にするな。俺も久し振りに響と飯食えて楽しかったよ」

響「……」

P「ん? なんだ、忘れ物か?」

響「……なんでもないぞ。
  それじゃ、おやすみなさい、プロデューサー」

P「あぁ、おやすみ。寒いから暖かくして寝ろよ」

298: 2012/03/24(土) 21:48:36.72 ID:8Gllp2T6O
ガチャッ、


響「ただいま。
  元気か? 形はあんまり変わってないけど……ひょっとしたら、
  明日になったら仲間が出来るかも知れないぞ。どうなるかな。

  ……お前、ひょっとしたら、
  プロデューサーの作った雪だるまの生まれ変わりなのかも……なんて」


……パタン。


響「……ラーメン、美味しかったな」

303: 2012/03/24(土) 22:02:56.06 ID:8Gllp2T6O
P「おはよう、響」

響「プロデューサー、おはよう」

P「残念だったな」

響「え? 何が?」

P「雪、積もってなくて」

響「あぁ……まぁ、仕方ないさ。
  こんなに寒いなら積もってくれてもいいのに、とは思ったけど」

P「だよな。
  今日もよく冷える」

304: 2012/03/24(土) 22:06:18.79 ID:8Gllp2T6O
響「昨日、寝てるときに思ったんだけどさ」

P「うん」

響「多分、美希だったら、
  『雪だるまを南極あたりまで連れて行けば良い』とかって言いそうだよな」

P「あー、多分な。
  っつーかあいつなら本気でやりかねん」

響「あはは。
  でも、冷凍庫の中よりはずっと良い環境かもな……」

P「すっかり情が移ってるな」

305: 2012/03/24(土) 22:10:51.43 ID:8Gllp2T6O
P「それはさておき、今日の仕事は……撮影だな。雑誌の表紙とカットの」

響「うん、昨日確認したぞ。
  前と同じスタジオだよな?」

P「そうだ。俺は今回、別件で顔を出せないが……響なら一人で大丈夫だろう」

響「自分、完璧だからな!」

P「よーし、その意気だ。
  じゃあ早速で悪いが、そろそろ出発してくれ」

響「はーい」

309: 2012/03/24(土) 22:21:30.92 ID:8Gllp2T6O
響「はぁ……なんかいつもと違う感じの撮影だったから、
  ちょっとくたびれたな……」

P「響、お疲れさん」

響「あれっ、プロデューサー? なんで?
  今日は来れないんじゃなかったっけ?」

P「予定より早く用が済んだからな。
  こっちの撮影も気になってたし。
  ほら……なんと言うか、アーティスティックな感じだっただろ?」

311: 2012/03/24(土) 22:24:18.81 ID:8Gllp2T6O
響「う、うん。
  なんか、こんな服、いつの間に用意したんだ?
  って感じの衣装で撮影だったぞ……」

P「だろうな。
  で、どれどれ、出来映えの方は」

響「だっ、ダメだぞっ!」バッ

P「おいおい、そりゃないだろう。せっかく来たのに」

響「ダメだったらダメだ!
  恥ずかしいんだから!」

314: 2012/03/24(土) 22:39:42.96 ID:8Gllp2T6O
P「まぁ結局使うカットは事務所に届くんだけどな」

響「うわぁああああっ!
  これ使わないって言ってたのにぃ……」

P「ははは、盛大にこけてるな。
  その後の恥ずかしそうな表情も良い。
  文句なしの完璧だな」

響「そんなじっくり見ないでってば!」

P「こっちのはこんなキメ顔なのにな」

響「ううううぅ……」

322: 2012/03/24(土) 22:59:45.69 ID:8Gllp2T6O
P「いやぁ、響の魅力全開だ。眼福眼福」

響「ひどいぞプロデューサー……人を笑い者にして……」

P「何を言ってる。
  思わず笑顔になっちゃうんだから仕方ないだろ。
  ほら、こんな可愛いんだぞ? 笑うなって方が無理だ」

響「なっ、まっ、またそうやってからかってるんだぞ!」

323: 2012/03/24(土) 23:02:48.78 ID:8Gllp2T6O
P「だから違うって。
  ……しかしまぁ、あれだな」

響「こ……今度は何を言うつもりさー……」

P「やっぱり写真より、実物の方が可愛いもんだよな、うん」

響「……っ、……プロデューサーのばか……もう知らないんだぞ……」プイッ

P「ははは、照れるな照れるな」

325: 2012/03/24(土) 23:06:54.83 ID:8Gllp2T6O
響「雪山でロケ?」

P「雪山っていってもスキー場だけどな。
  子供と雪合戦して、おいしい鍋を食べて、温泉に入るってやつだ」

響「おおっ! なんかすごい役得だな!」

P「だろ?
  日帰りだからちょっとバタバタするけど、まぁそんな感じの仕事だよ」

響「スキー場かぁ、初めてだなぁ」

P「そうなのか。じゃあまぁ、楽しみにな」

326: 2012/03/24(土) 23:09:58.89 ID:8Gllp2T6O
響「へぇー、このホテルに行くのかぁ……
  ほんとにこんな一面ずっと雪なのかな……
  今度一回スキーとかスノーボードもやってみたいぞ。
  765プロのみんなで旅行とか出来ないかなぁ。
  それにしても、やっぱり寒そうだぞ……

  ……あっ、そうだ!」ガタッ

328: 2012/03/24(土) 23:13:45.35 ID:8Gllp2T6O
P「響、響。もうすぐ到着するぞ」ユサユサ

響「う、うぅーん……もう着いたのか……ふぁーあ……」ゴシゴシ

P「見ろ、すっかり銀世界だぞ」

響「ん……うわっ、ほんとだ!」

P「雪焼けしないように日焼け止め塗っとかないとな」

329: 2012/03/24(土) 23:17:14.18 ID:8Gllp2T6O
響「プロデューサー! もう車から降りて良いかっ?」

P「おっと、こりゃ地面が凍ってるな。
  ちょっと待ってろ響」ガチャッ

響「早く早くっ! 早く外に出たいぞっ!」

P「そんなにはしゃいでたらこけるぞー。
  ほら、気をつけて降りろよ」スッ

響「あっ……うん、ありがとうな、プロデューサー」



ギュッ、

332: 2012/03/24(土) 23:21:54.63 ID:8Gllp2T6O
響「すごいな! ふわふわだぞ、ふわふわ!」ザクザク

P「新雪だな。昨日ちょっと降ってたんだろう。
  足元のは一旦溶けかかった雪だな」

響「ずっとこんなに雪があるのか……通りで……へくちょっ!」

P「お前マフラーはどうしたんだよ、寒いとこに行くなんてわかりきってただろ」

響「いや、朝寝坊しちゃってさ……それでうっかり」

334: 2012/03/24(土) 23:26:01.39 ID:8Gllp2T6O
P「まったく、はしゃぎすぎだっつーの。
  ほら、じっとしてろ」シュルッ

響「えっ、うわわっ」

P「帰ったら歌の仕事もあるんだから、喉元冷やしちゃいかんだろうが」クルクル

響「こ、これ……で、でも、プロデューサーの……」

P「安物のマフラーだが、無いよりずっと良いだろう。
  ……嫌だったか?」

響「そっ、そんなことないぞっ!」

336: 2012/03/24(土) 23:28:37.61 ID:8Gllp2T6O
P「じゃあ、しばらくそれで我慢してくれ」

響「……えへへ。暖かいぞ」

P「そうか、そりゃよかった」

響「……プロデューサーの匂い……」ボソッ

P「ん?」

響「あっ、いやっ、なっ、なんでもなっ」ツルッ

P「うわバカ、危ないぞっ」

337: 2012/03/24(土) 23:31:39.06 ID:8Gllp2T6O
P「じゃあ俺は、ちょっと用事を済ませてくるから」

響「わかったぞ。そんなに難しい仕事でもないし、
  楽しんでやるさー」

P「それが一番だ。頑張ってくれよ。
  ただし、無茶はしすぎないようにな」ナデナデ

響「も……もう、わかってるってば……」プイッ

340: 2012/03/24(土) 23:36:47.58 ID:8Gllp2T6O
響「さて、プロデューサーは……まだみたいだな。
  じゃあ、今のうちに……」ゴソゴソ



ザクッ、ザクッ、ザクッ、……



響「よし、この辺でいいかな」

パカッ

響「お、よかった、とけてないな。
  ほら、ここがお前の新しいおうちだぞ。
  冷凍庫よりずっと広いだろ? 南極ほどじゃないけどさ」

ザクッ、ザクッ、ギュッ、ギュッ、

345: 2012/03/24(土) 23:54:25.53 ID:8Gllp2T6O
響「……ほら、友達も作ったぞ。
  これで寂しくないな? ひとりぼっちじゃないもんな?
  仲良くしないとダメだぞ、二人とも。
  約束だからな」



P「おーい、響ー。
  そんなところで何やってるんだー?」

響「うっ、うわっ、プロデューサー!?
  い、今行くから待っててーっ」

P「あっ、こら、だから走るなって――――」

346: 2012/03/24(土) 23:57:23.91 ID:8Gllp2T6O
響「うわぁっ!」ツルッ

P「予想通りすぎる」ガシッ

響「……ぷ、プロデューサー……」

P「なんだよ、世話の焼けるアイドルだな」ギュッ

響「こ、これ、誰かに見られたら、その……」

P「それもそうだな」パッ

響「あっ……うぅ……そんなあっさり……ん?」

P「なんだ? どうかしたか?」

348: 2012/03/24(土) 23:59:18.93 ID:8Gllp2T6O
響「……」

P「響?」

響「……」ムギュッ

P「お、おいなにやってるんだ」

響「……」スンスン

P「響、こら、離れろって」

響「プロデューサーから美希の匂いがするぞ……」

P「なっ」

350: 2012/03/25(日) 00:02:19.12 ID:8Gllp2T6O
響「どういうことだ? なんで美希の匂いが……
  今日はプロデューサーと自分だけのお仕事じゃなかったのか……?」

P「い、いや、だからそれはだな……」

響「……」

P「……」

響「……」

P「……」

響「……」

P「いや、いつまで抱きついてるつもりだよ」





  「あーーーーっ!!」

351: 2012/03/25(日) 00:05:39.27 ID:lrxPC4BFO
美希「こらぁーっ!
   ハニーから離れるのーっ!」グイグイッ

響「うわぁっ! 美希!?」

P「あっ、おい、まだ出てくるなって言っただろ!」

美希「こんなの見過ごせるわけないの!
   でも……まさか響がここまで抜け目なかったなんて知らなかったの」

響「……えっ、あっ、そんな、べ、別に自分は……!」

353: 2012/03/25(日) 00:08:45.61 ID:lrxPC4BFO
響「って言うかなんで美希がこんなところにいるんだよっ!」

美希「響が抜け駆けしないようにと、ハニーが浮気しないように見張るためなの。
   まったく、みんな油断ならないの……こしたんたんってやつなの」

響「なにそれ? ラーメン?」

P「何もかも違うっての。

  あー、響、実はな……」

354: 2012/03/25(日) 00:13:35.36 ID:lrxPC4BFO
響「慰安旅行?」

P「そうだ。
  企画したは良いが、響だけどうしても予定が合わなくてな。
  だったらいっそ、ここにみんなを集めたら、ってことになったわけだ」

響「む……むちゃくちゃだぞ……」

P「社長と律子に言ってくれ」

美希「ちゃんと響の着替えも準備しといたから、今日の夜はみんなで女子会なの。
   ハニーも来る?」

P「やだよ。なんか怖い」

355: 2012/03/25(日) 00:17:37.25 ID:lrxPC4BFO
響「……なんかいきなりだけど、つまり、みんな来てるんだな?」

P「あぁ、上の部屋にいるぞ」

美希「響もはやく浴衣に着替えて、温泉に行くのっ!」グイッ

響「あっ、ちょ、美希っ、引っ張るなよーっ」

P「やれやれ、急に騒々しいな」

356: 2012/03/25(日) 00:22:17.43 ID:lrxPC4BFO
 響の家の冷凍庫から引っ越してきた小さな雪だるまと、
 その隣の、もうひとまわり小さな雪だるま。

 二つの雪だるまの首には、毛糸の小さなマフラーが一本巻かれていて、
 寄り添うようにして三人の後ろ姿を眺めていたと言う。







END

357: 2012/03/25(日) 00:23:05.40 ID:doKmX3hi0
あえてこの言葉を感謝とともに送ろう

乙であったと

362: 2012/03/25(日) 00:38:25.89 ID:JzHAx+3n0
乙である!

割とがちでありがとう

365: 2012/03/25(日) 00:51:09.79 ID:nD2hJd2E0
よかったぞ!お疲れ

引用元: 響「プロデューサーから美希の匂いがするぞ……」