1:2018/09/10(月) 21:50:15.578 ID:fiiIJvp50.net
男「ただいまー、はい弁当箱。ごちそうさま」

母「うちは貧しいからあまり大したオカズも入れられないけど、全部食べてくれてありがとう」

男「……」

母「私の取り柄といえば、お弁当作りぐらいだから……」

男「あのさ……お母さん」

母「なに?」

男「弁当……もう作ってくれなくていいから」

母「えっ……!?」
3:2018/09/10(月) 21:55:09.731 ID:fiiIJvp50.net
母「どうして……どうしてなの?」

男「……」

母「……分かったわ。明日からもうお母さん、お弁当作らない」

男(ごめんよ……お母さん)

男(なにしろ毎日毎日、あんなことが学校で起こってたら――)



…………

……
2:2018/09/10(月) 21:52:53.795 ID:KbTrLbhBr.net
(´;ω;`)
4:2018/09/10(月) 21:58:43.045 ID:FaeoBc860.net
悲しくないので頼むよ…
6:2018/09/10(月) 22:00:06.437 ID:fiiIJvp50.net
数時間前……

―学校―

キーンコーンカーンコーン…

男(やっと午前の授業終わりだ、弁当食べよう)

不良「おっ!」

DQN「ヒャハハ!」

男「!」

不良「今日もママのお弁当でちゅかぁ~!?」

男「ううっ……」

DQN「オラ、さっさと開けや!」

男「分かったよ……」パカッ
7:2018/09/10(月) 22:03:16.286 ID:fiiIJvp50.net
男(ご飯、トンカツにキャベツ、卵焼きにタコさんウィンナーも……)

男(今日の弁当もおいしそうだ……)

不良「こ、このトンカツはァ~~~~~!?」

DQN「す、すげえ……!」

男「!?」ビクッ

不良「見るだけでサクサク感が伝わってきやがる! なんてトンカツだァ!」

DQN「たまらねえや! まさに職人芸だぜェ!」ジュルリ…
8:2018/09/10(月) 22:04:47.182 ID:3TdZ9obX0.net
どんな展開だよ
9:2018/09/10(月) 22:05:13.868 ID:fiiIJvp50.net
不良「ありがとよ……」

不良「このトンカツ見たら、他校との抗争にも“勝てる”気がしてきたぜ!」

不良「いくぞっ!」

DQN「おうっ! いつまでも奴らを俺らの縄張りでのさばらせちゃならねえ!」

ダダダダダッ



男(行っちゃった……)
11:2018/09/10(月) 22:09:02.753 ID:fiiIJvp50.net
女委員長「男君!」

男「あっ、委員長!」

女委員長「今日もお弁当なの!? まったく……お弁当の匂いがこっちまで届いてきたわ!」

男「ご、ごめん」

女委員長「まったく……いい匂いすぎて……た、たまらないわぁ……」トローン…

男「い、委員長……?」
13:2018/09/10(月) 22:11:45.707 ID:fiiIJvp50.net
女委員長「ほええ……ほああ……」

女委員長「ああ……たまらないわ……ああっ……」

男「あの……」

女委員長「ハッ! ……まったく、また私を狂わせて!」

女委員長「ホント、あなたって魔性の男ね!」

男「どうも……」
14:2018/09/10(月) 22:13:41.925 ID:fiiIJvp50.net
女委員長「今日という今日は、このお弁当を没収してあげるわ!」サッ

男「あっ!」

女委員長「……」クンクン

女委員長「あぁん……らめえ……。手に取ったら、ますます……意識が……」

女委員長「今日も……私の負けね……」ドサッ

男「ああっ、委員長!」
15:2018/09/10(月) 22:17:20.602 ID:fiiIJvp50.net
メンヘラ娘「今日こそこのカッターナイフで手首を切るわよぉ~」

メンヘラ娘「ハッ!」

メンヘラ娘「そのお弁当ォォォォォ!!!」スタタタタッ

男「ど、どうしたの?」

メンヘラ娘「このキャベツの千切り……なんて美しいの」ウルッ…

男(いきなり泣き始めた……!)
16:2018/09/10(月) 22:20:08.100 ID:fiiIJvp50.net
メンヘラ娘「これよ! 刃物ってのはこういう風に使うものなのよ!」

メンヘラ娘「あたし、リストカットやめるわ! 刃物に失礼だものぉ!」

男「……えーと、うん、ボクもリストカットはよくないと思うよ」

男「手首を切っても死なないとはいうけど、万が一ってこともあるしね」

メンヘラ娘「あなたって優しいのね……ありがとほぉ~~~~~!!!」ドバァァァァァ

男(大した励まししてないのに、こんなに泣かれても……)
17:2018/09/10(月) 22:21:45.395 ID:YtJ5mE/yr.net
ていうか励ましてねえw
18:2018/09/10(月) 22:24:38.926 ID:fiiIJvp50.net
金髪「フッ……」ファサッ

男(クラス一のイケメンである金髪君!)

金髪「やれやれ、君は相変わらずご飯なんて田舎くさいものを食べてるのかい?」

男「そうだけど……」

金髪「ぷっ……ハーッハッハッハッハッハ!」

金髪「やはり主食はパンに限るよ! なんたって……エレガントだからね!」

男「くっ……」
19:2018/09/10(月) 22:27:12.891 ID:OVElMozI0.net
立った米の美しさをしらんとは
20:2018/09/10(月) 22:27:13.468 ID:fiiIJvp50.net
金髪「しかし、君のお弁当に詰められたご飯……」

男「?」

金髪「なんって、美しいご飯なんだぁ! 米が……米が光ってるだよ!」

金髪「ううっ……田舎のおっかあを思い出すべ!」

金髪「ハッ! おっと……見苦しいところをお見せした……アディオス!」

男(そういや今は下宿してて、実家は米農家だっていってたなぁ……)
21:2018/09/10(月) 22:28:22.491 ID:YtJ5mE/yr.net
変人しかいねえ
23:2018/09/10(月) 22:30:13.999 ID:fiiIJvp50.net
男「……」モグモグ…

男(次はいよいよタコさんウィンナーを……)


美術娘「あーっ!!!」


男「!?」ビクッ

男(この子は美術部の……)

男「どうしたの?」
24:2018/09/10(月) 22:32:48.417 ID:fiiIJvp50.net
美術娘「このオクトパス・ウィンナー……」

男(オクトパスウィンナー……!?)

美術娘「なんて美しい……」

美術娘「これこそ究極の美……究極の芸術……!」

美術娘「今すぐルーヴル美術館に飾られてもおかしくない!」

男「そんなバカな……」

美術娘「ありがとう、おかげでいいモチーフが浮かんできたぁぁぁぁぁ!」

男(きっとタコの絵を描くんだろうな……)
26:2018/09/10(月) 22:36:36.020 ID:fiiIJvp50.net
教師「コラーッ!!!」

男「先生!?」

教師「貴様、その箸の持ち方……」

男「え、間違ってましたか? すみません……」

教師「正しすぎるゥゥゥゥゥ! なんって模範的なんだァァァァァ!」

男「!?」

教師「ぜひ……今日から私の代わりに教壇に立ってみないか!?」ガシッ

男「いえ、ボクはまだ生徒のままでいいです!」
28:2018/09/10(月) 22:40:07.169 ID:fiiIJvp50.net
男「ふぅ……ようやくひと段落だ」

男(いよいよ大好物の卵焼きを食べよう)パクッ

男「うん……甘くておいしい!」





校長「甘いな……」ザッ…
29:2018/09/10(月) 22:42:41.299 ID:fiiIJvp50.net
男「校長先生……!?」

校長「君は甘い……甘すぎるッ!」

男「申し訳ありません……」

校長「だが、その甘さは……貴重なものだ。決して忘れてはならぬ!」

校長「さらばだ!」バサァッ



男「なんだったんだ、一体……」
30:2018/09/10(月) 22:44:13.330 ID:E4VPW5OYp.net
うむ
31:2018/09/10(月) 22:46:55.160 ID:fiiIJvp50.net
ドタバタ… ドタバタ…

「弁当のいい匂いがするぞォ!」

「弁当見せてくれ! 食いかけでもいいから!」

「箱だけでも拝見させて下さい! お願いします!」


男(他の教室からもどんどん来た……!)


……

…………



男(弁当を食べるたびにこんな騒ぎがあっちゃ、ボクとしてもたまらないよ)

男(ごめんよ、お母さん……)
33:2018/09/10(月) 22:49:43.573 ID:fiiIJvp50.net
次の日――

男(今日はコンビニでおにぎりを買ってきたぞ)

男「いただきます」パクッ

男(味はお母さんの弁当に比べるとやっぱり物足りないけど……まあしょうがない)モグモグ…

不良「あれ、今日は弁当じゃねえのか」

男「うん、今日から昼食はコンビニで買うことにしたんだ」

不良「そ、そうか……」

DQN「悪かったな……邪魔したな……」

スタスタ…

男「……」
35:2018/09/10(月) 22:52:33.351 ID:fiiIJvp50.net
ドンヨリ…

女委員長「あの匂いを……もう嗅げないなんて……」

メンヘラ娘「リストカットしたくなってきちゃった……」

金髪「おっかあが……恋しいよう……」

美術娘「次の作品どうしよう……」

教師「教壇に立つ気力がなくなった……」

校長「世の中って甘くないよね……」



男(心なしか、というか露骨にみんな元気なくなってる……)

男(やっぱりお母さんの弁当は必要なのか……)
37:2018/09/10(月) 22:53:39.527 ID:KeMt3TEZr.net
どうした校長
38:2018/09/10(月) 22:57:34.989 ID:fiiIJvp50.net
男「――というわけなんだ!」

母「学校中が大騒ぎするから、私にお弁当を作るなっていったのね」

男「そうなんだ……」

男「弁当を食べる時あまり注目されたくないし、かといってみんなが元気ないのも……」

母「どっちも困るわねえ……うーん……」

母「そうだわ! だったら――」
39:2018/09/10(月) 22:59:39.432 ID:fiiIJvp50.net
学校近く――

母「いらっしゃいませ~」

母「おいしいお弁当はいかがですか~?」

「ください!」 「一個ちょうだい!」 「いい匂いだァ~!」

ワイワイ… ガヤガヤ…


男(お母さんが始めた弁当屋……大盛況だ)

男(お母さんは思う存分弁当を作れるし、みんなお母さんの弁当を食べられるし、一石二鳥だ)

男(いや……)

男(おかげでうちも貧乏を脱出できたから、一石三鳥……かな)

男(ボクの弁当もこれからはもっと豪華になりそうだ!)







おわり
41:2018/09/10(月) 23:01:42.346 ID:lGV26pkca.net
平和で馬鹿らしくてよかった
おつ
42:2018/09/10(月) 23:03:38.843 ID:VE+C9tvk0.net
いいはなしだった
43:2018/09/10(月) 23:03:49.766 ID:KeMt3TEZr.net

お袋の味は偉大
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1536583815