1:2018/08/23(木) 16:26:03.664 ID:pjRdODSBD.net
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    佐々木基教(41) 僧侶

    【俗物坊主】

    ホーッホッホッホ……。」
2:2018/08/23(木) 16:28:24.962 ID:pjRdODSBD.net
テロップ「山梨県、ある地方都市――」

とある葬儀場。黒い喪服を着た遺族や参列者たちがパイプ椅子に座っている。

大型の祭壇を前に、坊主頭をした住職がお経を唱えている。彼はがっちりした身体で太っちょの中年男性だ。

テロップ「佐々木基教(41) 蓮陣寺住職」

基教「●▲■★◆●、○△□☆▽◎」


読経を終え、一同を前に法話を行う基教。しかし、集まっている人たちは白けきった表情で基教を見ている。


街の郊外にある寺。門には「蓮陣寺」の文字がある。

寺の掲示板には「どんな人にも 優しく振る舞い どんな人にも 温かい気持ちで 接しよう」とある。

寺の中。住職の基教が、妻に対し罵声を浴びせた上に殴る蹴るの暴力を振るっている。

基教「もうお前とは離婚だ!!寺から出ていけ!!」

鬼のような形相で怒鳴り声を浴びせる基教に対し、妻は脅えきった顔になっている。
3:2018/08/23(木) 16:31:03.854 ID:pjRdODSBD.net
テロップ「東京――」

夜、あるキャバクラ。僧衣を着た基教が、キャバ嬢たちに囲まれている。

基教「蓮陣寺は山梨県にあるから、最近は寺を訪れる観光客も増えているんだよ!」
   「何もかも富士山の世界遺産登録のおかげだ!ガハハハハ!!」

キャバ嬢たち「へえー、そうなんだぁ」「すごーい」

キャバクラにいる客たちは、異様な目つきで遠くにいる基教を眺めている。

客A「うわ、坊さんがこんなところに来ているのかよ……」

キャバ嬢A「この人は、意外とお金を持ってるんだってさ」

客B「こんな下品な坊主初めて見た……。宗教に関わる人間とは思えんな」

キャバ嬢B「でも、彼のような人がいるから夜のお店が回っているんだよねぇ」

キャバ嬢に囲まれている基教を、遠くの席から喪黒福造が見つめている。

喪黒「…………」


キャバクラを出て、夜の歓楽街を歩く基教。基教の側に喪黒が寄ってくる。
5:2018/08/23(木) 16:33:23.824 ID:pjRdODSBD.net
喪黒「これは、これは……」

基教「一体何のおつもりです、あなた?」

喪黒「実はさっき、お店であなたを見たんですよ。お、キャバクラにお坊さんがいるなぁと」

基教「それがどうしたんですか?私はですね、檀家のお布施をこうやって派手に使うことで……」
   「社会に還元しているんですよ。私のような人間がいるから、日本の経済は回っているんです」

喪黒「ごもっともです。僧侶の肉食妻帯も飲酒も、日本では認められているのですから……」

基教「その通り。だから……。僧侶が夜の街で遊ぶのも、ある意味、修行の一つと思えばいいんですよ」
   「僧侶の私が訪れたおかげで、さっきのお店は何かの御利益がもたらされるかもしれませんよ!」
   「ガハハハハ!!」

喪黒「お坊さんにしては、なかなか破天荒で豪快なお方ですなぁ。気に入りました……」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

基教「……ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」

基教「いやぁ……。面白そうな人だな、あなた!じゃあ、ちょっくら話し相手でもしてやりますか!」
6:2018/08/23(木) 16:35:39.841 ID:pjRdODSBD.net
BAR「魔の巣」。喪黒と基教が席に腰掛けている。

喪黒「そうですか……。佐々木さんは山梨県のお寺のご住職なのですか……」

基教「ええ。私はちょっとした規模の寺の住職だから、金はそれなりにありますよ」
   「檀家のお布施は多いし、マンションの経営もしているし、株もいくつか持っていますからね」
   「坊主というのは、コツさえ掴めば儲かるんですよ!!」

喪黒「あなたは大したお人です。それに、お坊さんのお金儲けは別に悪いことではありませんよ」
   「最近の日本は仏教離れが進んでいますから、葬式の収入だけでは寺はやっていけません」
   「生き残りのためには、僧侶も経済や経営の知識を持つことが必要なんですよ。佐々木さんのようにね」

基教「そうですよ!!私にはその方面での知識や才能があったんですよ!他の寺の住職と違って!」
   「寺の経営が苦しいというのは、無能な連中のたわごとでしかありませんから!ガハハハハ!!」

喪黒「お金には恵まれ、女の人にもモテモテ……。佐々木さんの人生は一見うまくいっているように見えます」
   「ですが、そうやって何もかもが満たされてくると……。むしろ虚しさを感じるのが人間という生き物……」
   「だから、おそらく……。あなたの心にもスキマがおありのはずでしょうなぁ……」

基教「ああ……。言われてみればそうかもしれませんね……。確かに、今の私には心に虚しさがありますよ」
   「こうやって酒を飲み、女遊びを繰り返してはきたものの……。最近ではそれらに飽き始めているんです」

喪黒「でしょう!?遊びで好きなことを繰り返し続けると、人間、飽きが訪れるものなんですよ」

基教「ですがねぇ……。本能のまま、思う存分生きるのが私には似合っているんです!!」
   「だから、私はこれからも思うままに生きるつもりです!!とはいえ、最近は豪遊に飽きている……」
7:2018/08/23(木) 16:40:32.608 ID:pjRdODSBD.net
喪黒「だったら佐々木さん……。今までとは一味違った形で豪遊をしてみませんか!?」

基教「面白そうですね、それ……。その『今までとは一味違った形』というものを、ぜひ教えてくださいよ!!」


テロップ「数日後。東京、銀座――」

夜の銀座の街を歩く喪黒と基教。基教は一張羅のスーツを着ている。

喪黒「ご住職さんには、東京の高級なお店を一度ご覧になっていただきたいです」

基教「わくわくしますね……。こういう店ってのはテレビドラマでしか見たことがなかったもので……」

高級なバーの中に入る喪黒と基教。2人を、気品のある女性ホステスたちが次々と出迎える。

ホステスたちが来ている着物・ドレス・スーツは。値段が高くて質がよさそうだ。

喪黒と基教はソファーに座り、ホステスたちに囲まれている。基教は笑顔を浮かべていたが……。

基教「あ、あそこの席にいるのは……。確か……、あの……」

基教が指をさした席のほうに、議員バッジを付けた初老の男性がホステスと一緒に座っている。
8:2018/08/23(木) 16:43:08.189 ID:pjRdODSBD.net
ホステス「そうですよ。あのお方は、与党の幹事長や大臣を務めた大物政治家です」
     「何しろこの店は、有名な人たちが割とよく利用していますからね」
     「国会議員だけでなく、財界人、元華族、芸能人、スポーツ選手、著名な芸術家や文化人などなど……」

基教「じゃ、じゃあ……。私たちがいるバーは……、有力者御用達の店だったのか……」

喪黒「佐々木さん、そう緊張しないでください。リラックス、リラックス……。今晩はゆっくり楽しみましょうよ」

笑顔のホステスたちと喪黒。それに対し、基教は顔から血の気が引き、さっきまでの威勢の良さが消えていく。


銀座のバーを出る喪黒と基教。2人は再び夜の街を歩く。基教はどうやら意気消沈しているようだ。

喪黒「ご住職さん。楽しめましたか!?」

基教「いやぁ、それが……。喪黒さんのご厚意はありがたいんですけど……」

喪黒「おや、どうなさいました?」

基教「さっきのバーは有力者御用達の店じゃないですか。しかも、店の中に大物政治家や大企業社長までいて……」
   「店や客の高級そうな雰囲気に飲み込まれた私は……、すっかり引け目を感じて萎縮してしまったんですよ」
   「自分が惨めで情けない存在に見えて……、恥ずかしくてたまらなくなりました……」

喪黒「いつもの佐々木さんらしくありませんなぁ……。ドンマイ、ドンマイ。もう少し景気よくいきましょうよ!」

基教「そ、そうですよね……。こんなことで、へこたれるわけにはいきませんよ!」
9:2018/08/23(木) 16:45:18.166 ID:pjRdODSBD.net
テロップ「2週間後――」

高速道路を走るベンツ。基教が運転するベンツに喪黒が載っている。

喪黒「立派で乗り心地のいい車ですなぁ。ご住職さん」

基教「どうです?随分高かったんですよ、これ!」

喪黒「人の趣味はそれぞれです。だから、お坊さんが高級車を乗り回すのは別に悪いことではありませんよ」

基教「その通りですよ!こうやって、いい車を見せびらかすことは……」
   「檀家の人たちに、僧侶の威厳を見せつけることでもありますからね!ガハハハハ!!」


テロップ「翌日。京都府、京都市――」

観光地や神社仏閣の中を歩く喪黒と基教。基教はいつも通り僧衣を着ている。

喪黒「銀座の高級バーと違って、ここならご住職さんも雰囲気に圧倒されずに済みますよ」

基教「なるほど……。考えましたね、喪黒さん。寺の多い京都の街で豪遊をするのなら……」
   「僧侶の私にとってもホームグラウンドのような感覚で臨めるでしょうから……」

喪黒「京都で豪遊するとなれば、『これ』しかありませんよ。『これ』!」
10:2018/08/23(木) 16:47:26.093 ID:pjRdODSBD.net
夕方。ある高級料亭。座敷の席には喪黒と基教が座っている。

基教「舞妓を呼んでお座敷遊びですか……。私には初めての体験になりますね……」

喪黒「京都では、お坊さんも普通に舞妓遊びをやっていますよ」
   「ご住職さん、『自分は舞妓遊びができるまでに出世したんだ』と思ってください」

基教「分かりました。今回は、雰囲気に飲み込まれないように気をつけますよ」

両手を叩く喪黒。ふすまの戸が開き、きらびやかな着物を着た舞妓たちが室内に入ってくる。

優雅な踊りと三味線を披露する舞妓たち。音楽に合わせ、喪黒と基教は手拍子を打つ。

舞妓たちとすっかり遊びに興じる2人。

舞妓たち「とらとーらとーらとら。とらとーらとーらとら」


夜。あるホテル。ラウンジには、浴衣を着た喪黒と基教がいる。基教の表情はどことなく曇っている。

喪黒「どうです、楽しめましたか!?」

基教「まあ、その……。銀座の店にいた時に比べると、それなりに楽しめたんですけど……」

喪黒「おや、何かご不満でも?」
11:2018/08/23(木) 16:49:32.759 ID:pjRdODSBD.net
基教「喪黒さんには感謝していますよ。ですが……。ここは京都という街でしょう」
   「ほら、京都の人というのは……。京都以外の出身者に対して……」

喪黒「それは気のせいですよ」

基教「気のせいなんかじゃありません。私は女遊びを結構やっていますから……」
   「女性が私に心を許しているか、そうではないかを……。ある程度、見分けることができるんですよ」
   「さっきの舞妓たちの、あのよそよそしい態度……。まるで、私が田舎者だと馬鹿にされたような感じで……」
   「すっかり心が傷つきましたよ」

喪黒「京都はかつて、日本の都だった地です。だから、京都の人にもそれなりにプライドがあるんですよ」

基教「まあ、彼女たちはプロだから……。一応お仕事として芸や踊りや遊びをやってくれたんでしょうけど……」

喪黒「細かいことを気にせず、もっと気を大きく持ってくださいよ」

基教「そ、そうですよね……」


テロップ「1週間後。東京、秋葉原――」

電気街の中を歩く喪黒と基教。基教はラフな私服を着ている。

喪黒「秋葉原はオタクの聖地とされている街でもあります」

基教「いやぁ、それにしても独特な雰囲気の街ですね……。私、秋葉原を訪れるのは初めてなんですよ……」
12:2018/08/23(木) 16:51:35.219 ID:pjRdODSBD.net
喪黒「ご住職さん。メイド喫茶やアイドルカフェに入るというのはどうです?」
   「彼女たちは客に優しく接してくれますよ。だから、あなたも心に傷を負わずに済むはずです」

基教「なるほど……。あなたもいろいろ考えていますね」

あるメイド喫茶。喪黒と基教の席の前に、メイドが2人分のオムライスを持ってくる。

オムライスにはケチャップでハートマークが描かれている。

メイド「おいしくなーれ!萌え萌えキュン!」

夜。アイドルバー。ステージの上で歌を歌うアイドルたちを、客たちが眺めている。

店にいる客たちの中に、喪黒と基教が混じっている。

アイドルバーを出て、夜の秋葉原を歩く喪黒と基教。

喪黒「ご住職さん。アキバの街は楽しめましたか!?」

基教「まあ、一応楽しめたんですけどね……。でも、何というか……。その……」

喪黒「どうなさいました?」

基教「私はオタクではないですし、最近のサブカルチャーの知識には疎いんですよ」
   「だから……。店にいる客たちの中で、私と喪黒さんが浮いてしまったような感じがして……」

喪黒「仕方ありませんよ。秋葉原はオタク文化の街なんですから……」
14:2018/08/23(木) 16:54:21.045 ID:pjRdODSBD.net
基教「そうですよ、それ!秋葉原は個性的すぎる街ですから……」
   「今回は楽しめたけど、結局、街や店の中に溶け込むことができなかったんです」
   「だから、私の心の中ではどこか虚しさもあるんですよ……」

喪黒「じゃあ、『魔の巣』でゆっくり話をしましょう」


BAR「魔の巣」。喪黒と基教が席に腰掛けている。

基教「私のために、ここまでしてくださって……。ありがとうございます……」

喪黒「でも、あなたはなぜか……。心がまだ満たされていませんよねぇ」

基教「ええ。そうです」

喪黒「目新しそうでありながら、もっと身近なもの……」
   「実現できたらいいなと思いながら、実現できそうにないもの……」
   「そういった夢を果たすことができれば、ご住職さんは本当に満足するでしょう」

基教「おそらく、そうかもしれませんよね……。でも、果たしてそんなものが……」

喪黒「ありますよ。例えば、あなたの好きなタイプの女性とデートをするなんてどうです?」

基教「それができればいいんですけどね……。ですが、私は今まで女遊びをやりすぎましたから……」
   「果たして新鮮味や楽しさを感じることができるかどうか……」

喪黒「大丈夫ですよ。ほら、ご住職さんはスケベビデオ鑑賞がご趣味ですよねぇ」
   「佐々木さんはコレクションも結構おありのはずですし、セクシー女優にもお詳しいはずです」
15:2018/08/23(木) 16:56:30.456 ID:pjRdODSBD.net
基教「ど、どうしてそれを……」

喪黒「東京のキャバクラで佐々木さんの姿を初めて目にした時、あなたとキャバ嬢との会話で知ったのですよ」

基教「そうですか……。いやぁ、あなたはなかなか恐ろしいお方だ……」

喪黒「何なら、ご住職さんが一番好きなセクシー女優とデートをするというのはどうです?私が彼女を紹介しますよ」


テロップ「さらに1週間後。山梨県、甲府市――」

夕方、甲府市歴史公園。スーツを着た基教が誰かと待ち合わせをしている。

喪黒が美人の女性を連れて、基教の前に現れる。彼女は水商売風のドレスを身にまとっている。

テロップ「桑原きらり(33) 元セクシー女優・キャバ嬢」

喪黒「どうです、ご住職さん。あなたが一番好きなセクシー女優を連れてきましたよ」

基教「ほ、本当にそんなことができるなんて……」

きらり「私は引退した後、甲府市でキャバ嬢として働いています」

基教「甲府市だと……。君も私と同じく、山梨県に住んでいたのか……」

喪黒「青い鳥というものは、案外、身近なところにいるんですよ。佐々木さん」

基教「喪黒さん、あなたのおかげで私はいい人生経験ができましたよ。本当に感謝してもしきれません」
16:2018/08/23(木) 16:59:13.848 ID:pjRdODSBD.net
喪黒「これは恐縮です。ですが、ご住職さん……。あなたには私と、約束していただきたいことがあります」
   「桑原きらりさんとは、あくまでもデートをする仲に留めておいてください」
   「本能のままに生き、豪遊を追及する今の生き方こそが……。あなたには似合っていますからね」

基教「わ、分かりました……。喪黒さん」

喪黒の元を離れ、甲府の市街地へ向かう基教ときらり。


その後も、基教ときらりは逢瀬を重ねる。一緒に映画を見る基教ときらり。デパートの中でショッピングをする基教ときらり。

劇場で歌舞伎を鑑賞する基教ときらり。高級レストランの中で、ワインで乾杯をする基教ときらり。

基教「俺が、女性に対してこんなに心を許したのは……。きらり、君が初めてだ……」


ある日。甲府市、舞鶴城公園。展望台にいる基教ときらり。2人はスーツを身にまとっている。

基教ときらりは甲府の街と富士山を眺める。きらりの手を握る基教。

基教「なあ、きらり……。俺と……。結婚してくれないか……」

きらり「ええ……。喜んで……」

展望台にいるのは基教ときらりの2人だけのように見えたが……。2人の後ろに喪黒が姿を現す。
17:2018/08/23(木) 17:04:11.185 ID:pjRdODSBD.net
喪黒「佐々木基教さん……。どうやらあなた……、私との約束を破ったようですね!」

基教・きらり「も、喪黒さん……!!」

喪黒「ご住職さん。私はあなたに言ったはずです。桑原きらりさんとは、あくまでもデートをする仲に留めておけ……と」

基教「ええ、喪黒さんとはそう約束しましたよ。ですが……、私にもいろいろ心境の変化があったんです」
   「妻と離婚し、豪遊に飽き飽きしていた私の前に出会った天使のような存在……、それが彼女なんですよ!」
   「女遊びを繰り返していた私も……、彼女のおかげでようやく本当の『愛』というものを知りました!だから……」
   「これからは豪遊や女遊びをやめて、しっかりした家庭を持ち……。真面目に生きようと思ってるんです!!」

喪黒「佐々木さん。どうしても桑原きらりさんと結婚したいのですね!?」

基教「もちろんですよ!!今の私には、彼女なくしてこれからの生活はあり得ません!!」

喪黒「……分かりました。そこまでおっしゃるのなら、私はあなたたちの結婚を止めるつもりはありません」
   「ですが……、どのようなことになっても私は知りませんよ!!」

喪黒は基教ときらりに右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

基教「ギャアアアアアアアアア!!!」  きらり「キャアアアアアアアアア!!!」


とある仏前結婚式。僧衣を着た基教と、十二単を着たきらりが写真に収まる。
18:2018/08/23(木) 17:06:22.883 ID:pjRdODSBD.net
テロップ「1年後――」

檀家の人たちを前に、法話を行う基教。彼は1年前と違って非常に痩せ衰えている。

頬骨が浮かんだ基教の青白い顔は、まるで骸骨のようだ。心配そうな顔で基教を見つめる檀家の人たち。

檀家「ねぇ、ご住職さん。お身体は本当に大丈夫なんですか!?」

基教「心配いりませんよ!妻が健康に気を使った食事を作ってくれるおかげで、私は元気ですから……」
   「ダイエットできて、以前より引き締まった身体になったんですよ!ガハハハハ!!」


蓮陣寺。居間では、基教と知り合いの僧侶が座布団に座っている。

台所には、着物姿のきらりがいる。薬の封を開けるきらり。彼女は、誰かのお茶の中に粉薬を入れている。

きらりは、基教と僧侶の来客にお茶と茶菓子を置く。基教がお茶を飲み干してしばらくすると……。

基教「ううっ……」

基教は右手で頭を押さえ、頭痛に苦しみながらそのまま倒れる。そのまま意識を失う基教。


ある病院。病室の中。点滴を打たれ、ベッドに寝そべる痩せた基教。彼の隣には、見舞い客の僧侶たちがいる。
20:2018/08/23(木) 17:09:38.405 ID:pjRdODSBD.net
僧侶A「再婚をしてから、なぜか君は身体を壊している。あれほど健康だった君が……」

僧侶B「あの奥さんは君に一体何をしているんだ……。どうも、気になって仕方がない……」

基教「ああ、あいつか。きらりは俺をこの世で最も愛してくれる人間なんだ」
   「それに彼女には個性的で面白い友人が多いから、彼らと会うのは俺にとっても刺激的なんだよ……」

基教は僧侶たちに写真を見せる。写真には基教ときらりの他に、カタギとは思えない半グレの男たちが多く写っている。

僧侶C「こ、これは……!!なあ、君……。自分がどういう状況に置かれているか、理解しているのか!?」

基教「理解しているさ。俺は世界一の妻と出会うことのできた、世界一の幸せ者さ。ガハハハハ……」

診察室。基教の妻・きらりが、医者に札束を渡している。

きらり「夫の点滴に筋弛緩剤を入れてください。それと彼が死んだ後は……。死亡診断書に『心不全』と書いてください」


基教が入院している病院の前にいる喪黒。

喪黒「そもそも人間という生き物は……、金銭面や物質面が満たされた時、心のどこかに虚しさを感じてしまうものです」
   「それにです……。どんなに楽しい遊びや快楽であっても、幾度も重ねてやり過ぎてしまうと必ず飽きてしまいます」
   「欲求が満たされた先に、新しい形で楽しさや幸せを見つけることができてこそ、人間は生きがいを感じるものです」
   「ご住職さんはどうやら、新しい形での生きがいを見つけることができたようですねぇ。本人はさぞかし満足でしょう」
   「とはいえ、彼はこのまま……。自分がきらりさんに何をされているのかを知らずに氏んでいくのでしょうけど……」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―
22:2018/08/23(木) 17:16:57.134 ID:c94c6tSW0.net
おつ
23:2018/08/23(木) 17:21:17.431 ID:xO07cTVuK.net
ドンファン乙
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1535009163