1: 2011/10/14(金) 04:04:30.91 ID:nDu7l1k60
―――中学校

教師「じゃあ、本日はここまで」

「きりーつ、れい」

教師「来週は小テストするからな」

「まじかよー」

「おっし、終わった!!部活行こうぜ!」

少年「あ、うん」

魔法少女「―――おわったぁ」

「ねえねえ、帰りクレープ食べていかない?」

魔法少女「お。いいね、いこいこ♪」

3: 2011/10/14(金) 04:07:32.15 ID:nDu7l1k60
―――通学路

「じゃあねー」

魔法少女「うん!」

魔法少女「……はぁ」


―――自宅

魔法少女「ただいまー」

帽子「おかえり」

魔法少女「あ、また勝手に部屋の中でふわふわと」

帽子「帽子掛けに収まる俺様じゃねーよ」

魔法少女「別にいいけど……ふぅ」

帽子「おし。じゃあ、今日も行くか」

魔法少女「はいはい。夜にね」

帽子「なんだ、嫌そうだな」

魔法少女「……別に」

4: 2011/10/14(金) 04:11:24.31 ID:nDu7l1k60
―――夜 工場跡

帽子「ここだな」

魔法少女「貴方のダウジングは役に立たないんだけどね」

帽子「んだと!?」

魔法少女「ほらほら。行くよ」

帽子「はん!!」


―――屋上

魔法少女「……よし。魔法陣、描けたよ」

帽子「おっしゃ、やれ!!」

魔法少女「はぁぁぁ……!!」

帽子「おぉぉ!!いいぞ!!魔力が上昇してきた……!!」

魔法少女「―――あ」

帽子「ちっ!ここも違ったか……。一体、どこにあるんだろうな……魔王の墓場は」

魔法少女「……はぁ」

5: 2011/10/14(金) 04:15:47.23 ID:nDu7l1k60
―――自宅

魔法少女「……よっ」

帽子「まーた、帽子掛けにひっかけるのかよ。俺様を誰だと思ってるんだ?」

魔法少女「うっさいなぁ」

帽子「早く魔王を復活させねーか」

魔法少女「だから、探してあげてるじゃない。魔王が眠ってる場所を」

帽子「ったく。これだから半人前は嫌いなんだよ」

魔法少女「む……」

帽子「あーあ、魔王の血が混ざってるからって期待しすぎたかもなぁ」

魔法少女「じゃあ、他の子を当たれば?」

帽子「おいおい、拗ねんなよ。冗談だろ」

魔法少女「……ふん。お風呂はいろ」

帽子(―――契約を結んでからもう3ヵ月か……)

帽子(早いとこアイツに復活させてもらわないとな……)

6: 2011/10/14(金) 04:19:47.63 ID:nDu7l1k60
―――翌日 中学校

魔法少女(はぁ……毎夜毎夜、あの子を被っては遠出するの辛いなぁ)

魔法少女「ふわぁぁ」

「おっはよ」

魔法少女「あ、おはー」

「ねえねえ」

魔法少女「なに?」

「彼氏、できちゃった」

魔法少女「マジ!?」

「えへへー」

魔法少女「どこのだれ?!」

「ん?ほら、剣道部の……」

魔法少女「ああ、前から言ってたね」

「うちの剣道部ってカッコいい人おおいからねー」

魔法少女(はぁ……私も普通の恋がしたないぁ……魔王探ししている間は無理なんだろうけど……)

7: 2011/10/14(金) 04:23:36.58 ID:nDu7l1k60
―――昼休み

「パン買ってくるから、ちょっと待っててくれ」

少年「うん」

魔法少女「食堂にでもいこっかなぁ……お金、あったかな?」

少年「あ……」

魔法少女「500円……くそ……パンにしよ」

少年「あの」

魔法少女「ん?」

少年「ハンカチ、落ちたよ?」

魔法少女「ああ、ありがと」

少年「はい」

魔法少女「どうも……はぁ……」

少年「……?」

少年(なんだろう、元気ないな……)

魔法少女(魔法少女なのに昼飯すら満足に食えないってどういうことなの……)

9: 2011/10/14(金) 04:26:10.27 ID:nDu7l1k60
―――放課後

「ねえ、ちょっと」

魔法少女「ん?」

「剣道部、見に行かない?」

魔法少女「えー?」

「行こうよ、ね?」

魔法少女「まあ、少しだけなら……」

「おっしゃー!」

魔法少女「何が目的なの?」

「そんなの一つしかないでしょ?」

魔法少女「ああ、男漁りか……」

「言い方が悪いよ!!」

少年「――よっと」

「あ、先に道場行っててくれ」

少年「わかった」

10: 2011/10/14(金) 04:29:57.10 ID:nDu7l1k60
―――剣道場

「やぁーー!!!」

「めぇぇぇん!!」

魔法少女(仮面で良く見えないなぁ……)

少年「やぁぁぁぁ!!!!」

パァァン!!!

魔法少女(おぉ……良い音)

少年「……ふぅ」

魔法少女「あ、あの子……」

「あ、うちのクラスの……普段は童顔だけど、このときはなんかかっこよくみえるよねー。私の好みじゃないけど」

魔法少女「うん……そだね」

先輩「ふう……今日も女の子が見に来ているな」

少年「先輩って本当に人気ですね」

先輩「まあ、な」

少年「強いしかっこいいし……僕とは違いますね」

12: 2011/10/14(金) 04:33:06.03 ID:nDu7l1k60
「きゃー、やっぱりキャプテンがかっこいいー!!」

魔法少女「……そうかな?」

「そうだよ!」

先輩「ふん……」

「あ、キャプテン、顧問が呼んでますよ」

先輩「わかった」

少年「よし……行こう」

魔法少女「―――私、帰るね」

「えー?」

魔法少女「用事あるから」

「うん、わかった」

少年「―――あ」

少年(あの人も来てたんだ……やっぱり先輩を……)

「隙あり!!めぇぇぇん!!」

少年「うわ!?」

14: 2011/10/14(金) 04:37:56.80 ID:nDu7l1k60
―――自宅

帽子「おつかれ」

魔法少女「はいはい」

帽子「今日は少し遠くなるぞ」

魔法少女「……うん」

帽子「なんだよ?」

魔法少女「いや……もう疲れたっていうか……」

帽子「おいおい……契約するときは「なにそれ?!面白そう!!」っていってたじゃねーか」

魔法少女「だって、魔法少女のイメージが違うんだもん」

帽子「イメージ?」

魔法少女「もっとリリカルでマジカルに御町内の平和を守ると思ってたのに、実際は魔王のお墓を探すだけの地味な作業だけだし……」

帽子「魔法少女の役割はちゃんと伝えただろ?」

魔法少女「古代に封印された魔王を復活させるため、でしょ?でもさぁ……」

帽子「魔王の力……つまり魔力を有した人間にしか復活させることができない。お前しかいないんだよ」

魔法少女「はぁ……」

16: 2011/10/14(金) 04:43:38.78 ID:nDu7l1k60
帽子「いいじゃねーか。魔王が復活した暁には、お前の望みが叶うんだぞ?」

魔法少女「それはそうだけど……」

帽子「がんばれよ。明るい未来のためにな」

魔法少女「……今が真っ暗闇なんですけど」

帽子「しらねーよ」

魔法少女「もっと魔法で色んなことができると思ってたのに」

帽子「たとえば?」

魔法少女「ケーキを出せたり、空を飛べたり」

帽子「ぶわっはっはっはっは!!」

魔法少女「笑うな!!引き裂くぞ!!」

帽子「ファンシーな魔法少女を期待してたのか。そりゃ残念だな」

魔法少女「詐欺師め」

帽子「俺はお前の中にある魔力を使えるようにしてやるとしか言ってないぞ?」

魔法少女「それが詐欺師だって言ってるの!!その魔力は魔王を甦らせる鍵なだけだって説明してよ!!」

帽子「ぶわっはっはっは」

17: 2011/10/14(金) 04:47:36.69 ID:nDu7l1k60
魔法少女「時代が時代なら……こう、持て囃されたんだろうけど……」

帽子「そうだな。魔王の力を有した人間は決まって大貴族だったからな」

魔法少女「生まれる時代を間違えたわけね……」

帽子「そうでもない。魔王が蘇ればまた貴族になれる」

魔法少女「ホントに?」

帽子「勿論だ」

魔法少女「……」

帽子「だから、頑張れよ」

魔法少女「……はいはい」

帽子「よし、じゃあ出かける準備をしろい」

魔法少女「今から?」

帽子「おうよ」

魔法少女「仕方ないなぁ……遠いんだっけ?」

帽子「ああ」

魔法少女「……また明日は寝不足かな……」

18: 2011/10/14(金) 04:51:22.08 ID:nDu7l1k60
―――夜 駅前

「んじゃーな」

少年「うん、また明日」

少年(今日は結構ハードだったなぁ……まあ、試合も近いし……)

魔法少女「……」

少年(あ、あの子……)

魔法少女「……」

少年「変な帽子被ってるけど……間違いない」

少年(こんな時間に電車に乗ってどこにいくんだろう……?)


魔法少女「(電車で10駅って相当ね)」

帽子「(ま、いいじゃねーの)」

魔法少女「(私のことも考えで今度からは場所を選んでくれない?)」

帽子「(これでも考えてるほうだぞ?)」

魔法少女「(県外はやめてよね、絶対に)」

19: 2011/10/14(金) 04:55:29.21 ID:nDu7l1k60
―――国立グラウンド

魔法少女「―――はぁぁ!!」

帽子「おぉ……いいぞ!いいぞ!!」

魔法少女「……ふぅ。ダメみたい」

帽子「そうか……ここもハズレか」

魔法少女「はぁ……さ、帰りましょ」

帽子「魔王はどこにいるんだろうなぁ」

魔法少女「早く楽にしてよ……ふわぁぁぁ」

帽子「ふむ……」

魔法少女(眠い)

帽子(このまま地道に行っていけば大丈夫だろう)

帽子(この時代には邪魔者は存在していないようだしな)

20: 2011/10/14(金) 04:58:30.78 ID:nDu7l1k60
―――翌朝 中学校

魔法少女「……ふわぁぁ」

「おっはよ。眠そうだね」

魔法少女「まぁね」

「おっす」

少年「おはよう」

「筋肉痛になってね?」

少年「あはは、もう体中がバキバキだよ」

魔法少女「……」

少年(どこに行ってた訊いたら流石に怒りそう)

少年(気になるけど踏み込まないほうがいいよね)

魔法少女(あ、宿題やってないや)

21: 2011/10/14(金) 05:04:38.92 ID:nDu7l1k60
―――昼休み

「でさぁ」

魔法少女「うんうん」

少年「……」

「おい」

少年「あ、え?」

「お前、どこ見てたんだよ?」

少年「どこって……」

「もしかして……アイツのことが?」

少年「そ、そんなんじゃないって!?」

「あやしいなぁ……」

少年「ホントだってば!!」

魔法少女「……なんだろう?」

「どうかした?」

魔法少女「ううん。後ろの男子がなんか言ってるかなぁって思って」

23: 2011/10/14(金) 05:08:02.23 ID:nDu7l1k60
「狙ってるんじゃないの?」

魔法少女「まっさかー」

「でも、あの子って顔は可愛いんだよね」

「背が低いから彼氏には向かないけどね」

魔法少女「ふーん」

「でも、剣道してるときの彼は結構かっこいいんだよ?」

「へえ、そうなんだ」

魔法少女(まあ、確かに)

「普段があんなだからギャップで補正がかかってるのかもしれないけど」

「それあるかも」

魔法少女「……」


「こっくちゃえよー」

少年「もうやめろよ!!」

24: 2011/10/14(金) 05:12:37.50 ID:nDu7l1k60
―――放課後 剣道場

先輩「せぇぇぇぇい!!!!」

少年「あぅ!?」

「一本!!」

先輩「―――ふう、まだまだだな」

少年「はぁ……はぁ……ありがとうございました」

先輩「もっと精進するのだな」

少年「はい」

「きゃー!!せんぱーい!!」

先輩「ふん……今日も外野がうるさいな……少し黙らせてくるとしよう」

「あ、こっち来た!!」

魔法少女「……」

先輩「―――すまない。少し静かにしてもらえないか?」

魔法少女「あ、すいません」

先輩「ん……君は……?」

25: 2011/10/14(金) 05:16:29.34 ID:nDu7l1k60
魔法少女「……はい?」

先輩「そうか……よかろう」

魔法少女「は?」

先輩「部活動が終わるまで待っていてくれ」

魔法少女「何の話ですか?」

先輩「帰りは駅前の喫茶店でゆっくり話そう」

魔法少女「どういう意味です?」

先輩「では」

魔法少女「あ、ちょ……!?」

「ぶー……いいなぁ」

魔法少女「なにが?」

「先輩にデート誘われて……」

魔法少女「……デートって……」

「この幸せ者め!!うりうり!!」

魔法少女「はぁ?」

26: 2011/10/14(金) 05:20:47.73 ID:nDu7l1k60
先輩「ふぅ……人気者は辛いな」

少年「あの……あの子はなんて?」

先輩「ん?ああ、俺とデートがしたいらしい」

少年(あ……やっぱりそうなんだ)

先輩「どうした?あの子に気があるのか?―――悪いな」

少年「いえいえ!!同じクラスってだけですから」

先輩「そうか」

少年「ええ」

少年(背も高いし、強いし……僕じゃ敵わないな)

先輩「では、続きをやろうか」

少年「あ、はい!お願いします!!」

先輩「お前は筋がいい。俺には及ばないだろうが、きっといい選手になる」

少年「は、はい!!ありがとうございます!!」

27: 2011/10/14(金) 05:26:19.15 ID:nDu7l1k60
魔法少女「……かえろ」

「え!?先輩はどうするの!?」

魔法少女「……知らないよ」

「待ってた方がいいって」

魔法少女「いや……」

「彼氏いないんでしょ?」

魔法少女「いないけど」

「なら、いいじゃない」

魔法少女「……」


先輩「―――よし。今日はここまでにしよう」

「「ありがとうございましたー!!」」

少年「したっ!!」

先輩「では、俺は人を待たせているのでね」

「いいなー。先輩、マジもててるな」

少年「うん、そうだね」

30: 2011/10/14(金) 05:38:22.08 ID:nDu7l1k60
先輩「―――待たせたね」

魔法少女「……いえ」

先輩「じゃあ、行こうか」

魔法少女「……」

少年「……」

「あ、あの子、マジでかわいいじゃん」

「いいなー」

「もう俺たちには夢も希望もないな」

少年「あはは……」


魔法少女「……」

先輩「緊張しなくてもいいよ?」

魔法少女「……あ、はい」

魔法少女(ま、今日ぐらいサボってもいいよね)

31: 2011/10/14(金) 05:46:09.62 ID:nDu7l1k60
少年「はぁ……」

「おーい、早くしろよ!」

少年「あ、ちょっと待って!!」

少年「えっと……よし」

少年「おまたせー!」

「おせーぞ」

少年「ごめん」


「―――ん?誰の鞄だ?」

「それ、あいつのじゃね?」

「忘れていったのか。ドジだな」

「すぐに戻ってくるだろ。置いとこうぜ」

「そうだな」

34: 2011/10/14(金) 05:49:40.56 ID:nDu7l1k60
―――駅前 喫茶店

先輩「へえ、彼氏いないんだ」

魔法少女「ええ……」

先輩「もったいない。可愛いのに」

魔法少女「え……そ、そうですか?」

先輩「ああ」

魔法少女「……」

先輩「ふふ、照れている顔も可愛いよ?」

魔法少女(ダメだ……やっぱりこの人とは合わない)

先輩(お持ち帰りできそうだな)

先輩「すまない。お手洗いに」

魔法少女「あ、はい」

魔法少女(どうしよう……そろそろ帰らないとアイツが怒りそう……)

魔法少女(今のうちに帰っちゃおうかなぁ)

35: 2011/10/14(金) 05:52:37.98 ID:nDu7l1k60
―――自宅

帽子「おせえ……」

帽子「あのやろう……ついに放棄しやがったか!?」

帽子「ちっ……仕方ねえ……探してみるか」


―――通学路

少年「あ!?」

「どうした?」

少年「鞄忘れた」

「えー?なんだよそれ」

少年「取りに戻るよ。課題も入ってるし」

「御苦労さま」

少年「また明日!」

「おう」

36: 2011/10/14(金) 05:55:53.99 ID:nDu7l1k60
―――通学路

魔法少女「はぁ……逃げてきちゃった……早くかえろ」

帽子「おい!!!」

魔法少女「わぁ!?どうしたの!?というか、勝手に家を出たらやばいでしょ!?」

帽子「お前の帰りが遅いからだ!!ばかやろう!!!」

魔法少女「ご、ごめん」

帽子「ほら、いいから被れ」

魔法少女「はいはい」

帽子「今日はもう遅い。近場を攻めるぞ」

魔法少女「近場?」

帽子「こっちだ」

魔法少女「……こっちって」


少年「はぁ……はぁ……」

少年「校門、閉まってるかなぁ」

少年「急がないと」

37: 2011/10/14(金) 05:59:00.36 ID:nDu7l1k60
―――中学校

帽子「ここだ」

魔法少女「……マジ?」

帽子「いくぞ」

魔法少女「ちょ……勝手に入るのは不味いって!!」

帽子「ここは最後にしようと思ってたんだがな」

魔法少女「最後って……最後の候補だったの、この場所?」

帽子「あ、いや……まあ、そんなとこだ」

魔法少女「でも、鍵は閉まってるよ?」

帽子「―――てい」

ガチャン

魔法少女「……開いた」

帽子「ほら、とっとと行くぞ」


少年「―――ふう……あ、開いてた」

少年「良かった……お邪魔しまーす」

38: 2011/10/14(金) 06:02:52.84 ID:nDu7l1k60
―――剣道場

帽子「この辺がいいな」

魔法少女「んじゃ、魔法陣描くね」

帽子「おうよ」

魔法少女「ふんふーん♪」

帽子「魔法陣を描くのもなれてきたな」

魔法少女「まあね」

帽子「この分だと今月中には魔王の復活が望めるかもな」

魔法少女「そうなの?」

帽子「ああ……昔ならこんなに順調にはいかなかったからな」

魔法少女「なんで?」

帽子「魔王の復活は幾度となく失敗してきたんだよ」

魔法少女「魔法陣描くだけなのに?」

帽子「魔王の天敵をしらんのか?―――勇者だ」

魔法少女「勇者?」

41: 2011/10/14(金) 06:07:35.62 ID:nDu7l1k60
帽子「そう。魔王を絶対的な悪と考える野蛮な一族がいたのさ」

魔法少女「ふーん……で、その勇者ってもういないの?」

帽子「さあな。お前のように魔王の血を受け継いだ者がいるくらいだ。いるかもしれんが」

魔法少女「私みたいに薄くなりすぎて、力が残ってないとか?」

帽子「ああ、多分な」

魔法少女「そっか……ま、それなら邪魔される心配は―――」

少年「……」

帽子「うお!?誰だ!!?」

少年「ひっ!?」

魔法少女「馬鹿!!喋るな!!」

少年「あ……あの……なにして……るの?」

魔法少女「―――貴方こそ、何用?」

少年「えっと……忘れ物を取りに来たんだけど……」

魔法少女「……」

少年(なにしてるんだろう……なんか道場に変な模様を描いてたみたいだけど……)

42: 2011/10/14(金) 06:12:52.05 ID:nDu7l1k60
魔法少女「なら、忘れ物を取ってすぐに帰って」

少年「あの……ここでなにを?」

魔法少女「何でもない」

少年「でも……変な帽子もかぶってるし……」

魔法少女「……」

少年「ど、道場を汚すのは、流石に見過ごせない」

魔法少女「……そう。ごめんなさい。あとで消すから」

少年「ほ、ほんとうに?」

魔法少女「ええ」

少年「……あ、て、手伝おうか?」

魔法少女「結構だから。早く帰って」

少年「う、うん……」

帽子「(いいのか?あまり突き放すとかえって逆効果じゃないか?)」

魔法少女「(ならもっと突き放すだけ。黙秘権よ)」

帽子「(まあいいけど。ほら、はやく魔法陣を描け)」

43: 2011/10/14(金) 06:16:38.29 ID:nDu7l1k60
魔法少女「よし、描けた」

帽子「魔力を込めろ」

魔法少女「分かってるって」

少年「……」

魔法少女「なに?」

少年「あ。えと」

魔法少女「ふん。―――はぁぁぁぁ!!!」

少年(床の模様が光り始めた……!?)

帽子「よし……いいぞ」

魔法少女「―――あ」

帽子「ここもハズレか……よし。帰るぞ」

少年(模様が消えた……)

魔法少女「……」

少年「あ、あの!!」

魔法少女「……他言無用。いい?」

44: 2011/10/14(金) 06:21:07.08 ID:nDu7l1k60
少年「……何してたの?」

魔法少女「言う必要がないわ」

少年「じゃあ、なんで黙ってろって……」

魔法少女「……」

少年「手品の練習かなにか?」

魔法少女「うん」

少年「……わざわざ学校に忍び込んで?」

魔法少女「なによ。文句あるの?」

少年「……だって」

魔法少女「もういいでしょ、それじゃあね」

少年「あ……」

少年「―――道場を荒らしたわけじゃなさそうだけど」

少年「……よくわからないや」

45: 2011/10/14(金) 06:28:53.69 ID:nDu7l1k60
―――自宅

魔法少女「あー、びっくりした!!」

帽子「人に見られたのは初めてだな」

魔法少女「うん。……カエルになったりしないよね?」

帽子「ぶわっはっはっは!!」

魔法少女「笑うな!!こっちは割と真剣なの!!」

帽子「安心しろ。傍から見てもまさか魔法という結論には行きつかない」

魔法少女「ま、別に見られたところで向こうが止めに来るわけじゃないしね」

帽子「あの小僧が勇者だったら、また違っていたかもしれんがな」

魔法少女「……勇者」

帽子「だが、それはなさそうだ。あの小僧からは何も感じなかった」

魔法少女「私の時は感じたんだっけ?」

帽子「おうよ。ビンビンにな」

魔法少女「そう」

帽子「明日からは出来るだけ遅くならなようにしろよ?―――もう少しなんだからな」

47: 2011/10/14(金) 06:33:30.94 ID:nDu7l1k60
―――翌日 中学校

魔法少女「おはよー」

「おはよう」

少年「あ……」

魔法少女「……おはよ」

少年「あ、うん」

魔法少女「(ちゃんと黙っててよ?)」

少年「(う、うん……)」

魔法少女「ありがと」

少年「……」

「なんだ?今、なんか耳元で呟かれてなかった?」

少年「え……あ、ううん、気の所為だよ」

「そうかぁ……あやしいなぁ」

少年「本当だってば!!」

魔法少女「……」

48: 2011/10/14(金) 06:37:34.87 ID:nDu7l1k60
―――昼休み

先輩「―――少し良いだろうか?」

「あ……は、はい!!」

先輩「ここに……あ、居た。すまない」

少年「先輩!!おはようございます!!」

先輩「ああ。―――やあ」

魔法少女「あ……」

先輩「昨日はどうしたんだ?」

魔法少女「えっと……」

先輩「今日も一緒に帰ろう」

魔法少女「いや……用事が……」

先輩「俺とのデートよりも大事な用なのか?……ふん、それはありえないだろ」

魔法少女「……」

少年「あ……」

魔法少女「あの……えと」

50: 2011/10/14(金) 06:42:51.11 ID:nDu7l1k60
先輩「待っていてくれるな?」

魔法少女「……いや……ですから……」

先輩「彼氏、いないんだろ?」

魔法少女「そうですけど……」

少年(あ、いないんだ……)

先輩「ではな」

魔法少女「あ……はぁ……」

「ちょっとちょっとー!!あの先輩とデートってなによ?!」

「いいなー、羨ましい……」

魔法少女「でも……私はちょっと合わないっていうか……」

「なに贅沢いってんのよ!!」

「そーだ!そーだ!!あんなイケメンな人とデートできるなんて超ハッピーじゃん」

魔法少女「……う、うん」

少年(嫌……なのかな?)

51: 2011/10/14(金) 06:47:03.55 ID:nDu7l1k60
―――放課後

魔法少女(どうしよう……このまま逃げてもまたなんか言われそうだし……)

少年「あの……」

魔法少女「……なに?」

少年「えと……」

魔法少女「言わないからね?」

少年「あ、昨日のことじゃなくて……その……先輩とのデート、嫌なのかなって」

魔法少女「まあ、したいわけじゃない……かな」

少年「な、なら……僕から言ってあげようか?」

魔法少女「……見返りは?」

少年「いらないよ」

魔法少女「ふーん……」

少年「あ、余計なお世話なら……」

魔法少女「ねえ、じゃあ口裏合わせてくれない?」

少年「え……?」

52: 2011/10/14(金) 06:52:58.65 ID:nDu7l1k60
―――剣道場

先輩「どぉぉぉぉぉ!!!!」

「ぐぁ!!」

「一本!!!」

先輩「―――ふん」

「あ、ありがとうございました」

先輩「相手の足元ばかり見ていても勝負には勝てないぞ?」

「は、はい」

少年「先輩」

先輩「ん?どうかしたか?」

少年「えっと……お話が」

先輩「なんだ?」

魔法少女「どうも」

先輩「どういうことだ?」

魔法少女「私達、付き合ってるんです。だから、もう私を誘うのはやめてください」

53: 2011/10/14(金) 06:57:51.20 ID:nDu7l1k60
先輩「……そうか。了解した」

少年「あ、え……?」

魔法少女(意外とあっさり引き下がったわね)

先輩「それで、今日はデートするのか?」

少年「あ……えと」

魔法少女「……はい」

少年(えぇ!?)

魔法少女(驚くな!!)

先輩「そうか……わかった」

少年「あの……先輩?」

先輩「ふん……」

魔法少女「……」

54: 2011/10/14(金) 07:01:09.15 ID:nDu7l1k60
―――夕方

先輩「―――今日はこれまで!!」

「「ありがとうございました!!」」

少年「したっ!!」

先輩「―――彼女が待っているぞ?」

少年「あ……」

魔法少女「……」

先輩「がんばれよ」

少年「は、はい……」

先輩「……」


少年「―――お、またせ」

魔法少女「……行きましょ」

少年「う、うん……でも、なんで待っててくれたの?」

魔法少女「恋人なんだから一緒に帰らないと不自然でしょ?」

少年「あ……うん」

55: 2011/10/14(金) 07:04:31.38 ID:nDu7l1k60
―――通学路

少年「あ、じゃあ、この辺で……」

魔法少女「―――待って」

少年「え……」

魔法少女「デート……するんでしょ?」

少年「えぇええ!?!」

魔法少女「……いやなの?」

少年「い、いやじゃないけど……」

魔法少女「じゃあ、こっち」

少年「あ、うん……」

魔法少女「……」


先輩「……」

58: 2011/10/14(金) 07:08:48.04 ID:nDu7l1k60
―――自宅前

魔法少女「……ここよ」

少年「ここって……」

魔法少女「私の家」

少年「えええ!?」

魔法少女「……いいから。黙ってついてきて」

少年「う、うん……」

魔法少女「……」

少年「どうかしたの?」

魔法少女「いえ……さ、行こ。お茶ぐらいは出してあげる」

少年「あ、ありがとう……」


先輩「……」

先輩(ここが彼女の家……ようだな)

先輩(付き合っているなど嘘かと思ったが……)

59: 2011/10/14(金) 07:13:55.24 ID:nDu7l1k60
魔法少女「ただいま」

帽子「よう!」

少年「……!?」

魔法少女「もう、いちいち浮遊しないで大人しくしててよ」

帽子「おい……その小僧は……!!」

少年「帽子が……浮いてる……喋ってる……!?」

魔法少女「ごめん。ちょっと事情があって」

帽子「事情ってなぁ……」

魔法少女「詳しく話す。ちょっと待ってて」

帽子「……」

少年「あの……」

帽子「……こっちだ」

少年「あ、はい」

60: 2011/10/14(金) 07:18:18.60 ID:nDu7l1k60
―――リビング

帽子「―――あいつか」

魔法少女「そ。ストーカーを巻くために仕方なく」

少年「先輩がつけてたなんて……」

帽子(これは……運が向いてきたな)

魔法少女「はい、お茶」

少年「ありがとう」

帽子「んで、俺様のこともこいつに説明しとけよ」

魔法少女「うん。そうね」

少年「えっと……なにがなにやら……」

魔法少女「詳細な歴史を話すと面倒だから、ここ3ヶ月の出来事を掻い摘んで話すね?」

少年「うん……分かった」

魔法少女「実は―――」

61: 2011/10/14(金) 07:23:11.18 ID:nDu7l1k60
―――3か月前 通学路

少女「はぁ……今度のテスト、自信ないなぁ」

帽子「よお」

少女「……え?」

帽子「下だ、下」

少女「下って……帽子だ……」

帽子「なあ」

少女「わぁぁぁ!!!!?」

帽子「そんなに驚くなよ」

少女「ぼ、帽子が……浮いて……」

帽子「そんなに珍しい形か?まあ、三角の帽子なんて小娘の年齢では被らないか」

少女「そういうことを言ってない!!」

帽子「じゃあ、なんだ?」

少女「ひ……いやぁぁぁぁ!!!」

帽子「あ、待て!!」

63: 2011/10/14(金) 07:29:44.26 ID:nDu7l1k60
―――自宅

少女「はぁ……はぁ……なんだったの……いまの……?」

帽子「―――逃げんなよ」

少女「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」

帽子「騒ぐな。帽子が喋って浮いてるのが怖いんだろうが、とりあえず落ちつけよ」

少女「お、落ち着けるわけないでしょ……!!」

帽子「安心しろ。別に取って食おうなんて考えてない」

少女「……ほ、ほんとに?」

帽子「どこをどうみても俺様は帽子だ。人間を食うだけのスペースはない」

少女「じゃ、じゃあ……何の用なの……?」

帽子「―――魔王の血を受け継ぐお前を探していたんだよ」

少女「魔王……?」

帽子「ああ……魔王を復活させてくれ。―――魔法少女となってな」

少女「……魔法少女……」

65: 2011/10/14(金) 07:38:15.98 ID:nDu7l1k60
少女「―――魔王って、悪い奴じゃないの?」

帽子「魔王は常に人間たちを導いてきた存在だ。悪ではない」

少女「そうなの?」

帽子「そりゃ人間の中には魔王と言う存在を疎んでいた奴もいただろうが、今日の世界があるのは魔王のおかげと言ってもいい」

少女「……まあ、帽子が喋ってる時点で魔王のことも信じられそうだけど」

帽子「だろ?」

少女「でも、今、魔王はいないよね?」

帽子「まあ、な。遥か昔に封印された」

少女「どうして?」

帽子「疎んでいた奴らの仕業だ」

少女「ふーん」

帽子「で、その魔王を復活させるためにお前の力を借りたい」

少女「今更だね。もっと昔でもよかったんじゃないの?」

帽子「……それは、あれだ。お前のような適格者が見つからんかったんだよ」

少女「へえ」

66: 2011/10/14(金) 07:44:19.32 ID:nDu7l1k60
帽子「なあ、お前の中に眠る魔力を俺様が目覚めさせてやるから、魔王復活に協力してくれ」

少女「それって魔法が使えるようになるの?」

帽子「まあ、な」

少女「ふーん……それは確かにちょっと面白そう」

帽子「それに魔王が復活すれば、お前にも相応の恩恵が与えられる」

少女「例えば?」

帽子「……魔王の力で叶うことならなんでもだ」

少女「マジ!?」

帽子「ああ、約束する」

少女「難しいことじゃないの?」

帽子「魔王の墓場を探し、そこに魔法陣を描くだけだ」

少女「痛くない?」

帽子「ないない」

少女「じゃあ……やる」

帽子「―――よし。なら俺様と契約を結ぶぞ。魔王の子孫よ」

68: 2011/10/14(金) 07:49:11.09 ID:nDu7l1k60
魔法少女「―――というわけ」

少年「じゃあ、君は魔王を復活させるために道場に魔法陣を?」

魔法少女「そういうこと。まあ、あそこはハズレだったけど」

帽子「……」

少年「そうなんだ」

魔法少女「さて、納得できた?あまり言いふらさないでね?」

少年「こんな話、誰も信じてくれないよ」

魔法少女「それもそっか」

帽子「小僧」

少年「なに?」

帽子「そういうわけだから。もう俺様たちに関わるな」

少年「え……」

帽子「小僧に出来ることはなにもないからな」

少年「う、うん……」

魔法少女「さてと、あのストーカー先輩は帰ったかな?」

71: 2011/10/14(金) 07:54:48.86 ID:nDu7l1k60
帽子「―――まだ、居るみたいだな」

魔法少女「……もう」

少年「ど、どうするの?」

魔法少女「うーん……」

帽子「……俺様が脅してきてやるよ」

魔法少女「でも」

帽子「俺様が脅せば一発だ」

少年「うん……それがいいかも」

魔法少女「まあ、とりあえずこの場からあの人を離さないと、いつまでも帰れないもんね?」

少年「うん」

魔法少女「じゃあ、お願いできる?」

帽子「任せとけ!ちょっくら行ってくるぜ!!」

少年「……」

魔法少女「なに?」

少年「あ、ううん……」

72: 2011/10/14(金) 08:00:26.06 ID:nDu7l1k60
魔法少女「あ、お茶のおかわりいる?」

少年「あ、うん……」

魔法少女「―――はい、どうぞ」

少年「あの」

魔法少女「なに?」

少年「……帽子さんには関わるなって言われたけど……その……」

魔法少女「協力、したいの?」

少年「うん……」

魔法少女「どうして?」

少年「えっと……お、面白そうだから……」

魔法少女「はぁ……実際は地味な作業の連続なんだけどなぁ……昔に生まれてればそりゃもう、豪奢な毎日を送っていたんだろうけど」

少年「そうなの?」

魔法少女「日常は変わらない。浮いて喋る帽子がいるだけでね。本当に生まれる時代を間違え過ぎた……と思うの私」

少年「地味な作業でも……協力できることがあれば……協力したい」

魔法少女「……ふーん」

73: 2011/10/14(金) 08:05:38.91 ID:nDu7l1k60
魔法少女「でも、君にメリットなんてないよ?」

少年「あ……それは……」

魔法少女「ん?」

少年「うぅ……」

魔法少女「じゃあ、今晩8時に駅前ね?」

少年「え……いいの?」

魔法少女「二人で魔法陣を描いたほうが効率がいいしね」

少年「あ……はは……ありがとう」

魔法少女「ふふ、どういたしまして」

少年「じゃあ、えっと……よろしく」

魔法少女「うん♪」

帽子「―――ただいまっと!!」

魔法少女「おかえり」

帽子「なんだ?やけに嬉しそうだな?」

魔法少女「え?そうかな?」

74: 2011/10/14(金) 08:09:33.48 ID:nDu7l1k60
―――夜 駅前

帽子「おい。早く行こうぜ」

魔法少女「ちょっとまって」

帽子「なんだよ……?」

魔法少女「あ、きたきた。おーい」

帽子「な……!?」

少年「ごめん。待った?」

魔法少女「ううん。全然」

帽子「うぉーーい!!!!」

魔法少女「ちょ!黙って!!」

少年「そうですよ。通行人もいますから」

帽子「お前……なんでここに……!?」

少年「え……聞いてないんですか?」

帽子「何をだ!?」

魔法少女「新しい仲間なんだから、仲良くしてよね」

75: 2011/10/14(金) 08:15:55.27 ID:nDu7l1k60
―――神社

帽子「効率がいいって……お前なぁ」

魔法少女「その通りでしょ?―――さ、魔法陣描いちゃお」

少年「う、うん!」

帽子(ちっ……折角、運が向いてきたと思ったのに……まあ、いい。小僧ぐらいなら……)

魔法少女「それはこう……円を描くようにね」

少年「こ、こうかな?」

魔法少女「そうそう、うまいね」

少年「ありがとう……」

魔法少女「なんだか、楽しいね?」

少年「え?そうかな?」

魔法少女「二人で秘密の悪戯してるみたいで、ドキドキしない?」

少年「あ、うん……するかも」

魔法少女「ふふ、だよねー♪」

77: 2011/10/14(金) 08:21:23.61 ID:nDu7l1k60
少年「―――ふう。描けたよ」

魔法少女「ありがと……じゃあ、離れて」

少年「うん」

帽子「よおし、やれい」

魔法少女「はぁぁぁぁぁ!!!!」

少年(魔法陣が輝いてきた……)

帽子「ようし!!いいぞ!!」

魔法少女「―――あ」

帽子「ふむ」

少年「魔王のお墓じゃなかったの?」

魔法少女「みたい」

帽子「そうそうみつからねーよ」

魔法少女「あ、もう1か所いこうよ。いいよね?」

少年「あ、うん。僕は平気」

魔法少女「よーし、しゅっぱーつ♪」

79: 2011/10/14(金) 08:26:39.42 ID:nDu7l1k60
―――駐車場

帽子「―――ここもハズレだな」

魔法少女「はぁ……」

少年「あ、お茶飲む?」

魔法少女「持ってきてくれたの?」

少年「うん……もしかしたらいるかなって」

魔法少女「優しいんだね?」

少年「あ……えと……」

魔法少女「じゃ、遠慮なく……ごくごく……」

少年(やっぱり……可愛いなぁ……)

魔法少女「ふぅ……おいし♪」

少年「そういえばお墓の候補ってあと何か所あるんですか?」

帽子「残り10だ」

魔法少女「そうなんだ……意外と少ないね」

少年「二人でやればすぐに終わるね」

80: 2011/10/14(金) 08:31:30.90 ID:nDu7l1k60
帽子「そうだな……もうすぐだ」

魔法少女「それじゃあ、今日はこの辺で」

少年「あ、家まで送っていくよ」

魔法少女「え?いいよ、そんなことしなくても」

少年「ううん。送らせてほしい」

魔法少女「……ふーん。じゃあ、頼んじゃおっかなぁ♪」

少年「任せてよ」

魔法少女「でも、丸腰だとこう、イマイチ私のナイト様って感じがしないね。背が低いし、童顔だし」

少年「な……!?」

帽子「お前、辛辣だな」

魔法少女「そうだ。これから竹刀も持ってきてよ」

少年「竹刀を……?」

魔法少女「うん、それなら魔法少女を守る騎士みたいでしょ?ねー?」

少年「う、うん。わかった。今度からは竹刀も持ってくる」

魔法少女「ふふ、期待してるぞっ?」

82: 2011/10/14(金) 08:36:30.73 ID:nDu7l1k60
―――自宅前

魔法少女「ここまでありがとう」

少年「ううん。僕こそ無理矢理ついて行って、ごめん」

魔法少女「そんなことないよ。すごい助かったし」

少年「そ、それなら……嬉しいな」

魔法少女「……」

少年「な、なに?」

魔法少女「……ううん。別に」

帽子「出来れば関わって欲しくないが、まあ、またな小僧」

少年「はい」

魔法少女「じゃあ、また明日ね?」

少年「うん。おやすみ」

魔法少女「―――変な子」

帽子「変な帽子を被ったお前には言われたくないんじゃないか?」

魔法少女「うっさいな」

83: 2011/10/14(金) 08:39:08.12 ID:nDu7l1k60
―――翌日 中学校

少年「あ、おはよう」

「おーっす」

魔法少女「……」

少年「お、おはよう……」

魔法少女「……おはよ」

少年(あれ……なんか素っ気ない……)

魔法少女「……」

少年「……」

「なんだ?どうかしたのか?」

少年「い、いや、なんでもないよ」

「あやしいな」

少年「ほんとだって!!」

魔法少女「……」

84: 2011/10/14(金) 08:43:07.68 ID:nDu7l1k60
―――休み時間

「次、移動だっけか」

少年「みたい」

魔法少女「……」

少年「―――え?」

「はやくいこ」

魔法少女「うん」

少年(今、小さなメモを手渡してきた……)

少年(恥ずかしいからあまり話しかけてこないで……?)

少年「えっと……」

少年(あれ……僕ってやっぱり、そんなに好かれてないのかな?)

少年「はぁ……」

魔法少女「……」

魔法少女(朝、素っ気なくしちゃったこと……気にしてなきゃいいけど)

86: 2011/10/14(金) 08:46:18.36 ID:nDu7l1k60
―――放課後

少年(結局、今日は殆ど話してないや)

魔法少女「……」

少年「はぁ……部活いこ」

魔法少女「……ちょっと」

少年「え……?」

魔法少女「……今日、また8時に駅ね」

少年「あ、うん」

魔法少女「部活、がんばって」

少年「あ、ありがとう……」

「なんだなんだ!?」

「おいおい、アイツと急接近したのか?!」

少年「そ、そんなことないよ」

「いいなー!俺も彼女ほしーぜ!!」

少年「そんなんじゃないってば!!」

87: 2011/10/14(金) 08:50:37.87 ID:nDu7l1k60
―――剣道場

先輩「―――おし!次!!」

「きぇぇぇい!!!」

先輩「はぁぁ!!!」

パァァァン!!!

「何だ、今日のキャプテン、すげー気合い入ってるな」

「おお……なんかあったのかな?」

先輩「次!!」

少年「は、はい!!よろしくお願いします!!」

先輩「お前か……ふふ」

少年「……?」

先輩「―――俺が特別なのだ。お前ではない」

少年「何を……?」

先輩「いくぞぉぉぉぉぉ!!!!!」

少年「―――!?」

88: 2011/10/14(金) 08:54:33.39 ID:nDu7l1k60
―――夕方

少年「いつつ……」

「大丈夫か?」

少年「まだちょっと頭がジンジンしてる」

「今日のキャプテンすごかったよな」

「まあ、お前にだけ特別荒かった感じもあったけど」

少年「うん……」

少年(やっぱり、彼女とのことで恨まれてるのかも……)

少年(これからはあまり先輩とやりたくないなぁ)

「あ、これからゲーセンでもいかね?」

「お、いくいく」

少年「あ、ごめん。僕は用事があるから」

「彼女持ちはこれだからな……」

少年「違うってば!!」

89: 2011/10/14(金) 08:58:16.35 ID:nDu7l1k60
―――夜 駅前

魔法少女「……」

少年「おーい」

魔法少女「あ、おそーい」

少年「ごめん……でも、竹刀はちゃんともってきたから」

魔法少女「まあ、いいけど。私も今来たとこだし」

少年「な……」

魔法少女「でも、女の子を待たせたのには変わりないから、電車代おごってね?」

少年「うん」

魔法少女「……ちょっとは、抵抗してもいいと思うけど?」

少年「待たせたのは事実だから」

魔法少女「あんまり従順すぎるのも、どうかと思うけど?」

少年「そうかな?」

魔法少女「そうだよ」

帽子(なーんか甘い空気だな、おい)

90: 2011/10/14(金) 09:03:07.27 ID:nDu7l1k60
―――公園

魔法少女「よいしょ……へえ、あの先輩が?」

少年「よっと……うん。そうなんだ。やっぱり怨まれてるのかも」

魔法少女「女々しい人なんだ……あ、そこもうちょい右」

少年「あ、うん。……でも、気持ちはわかるよ」

魔法少女「えー?」

少年「気になってる人を目の前で取られたようなものだから」

魔法少女「そんな経験があるの?」

少年「あ……えと……」

魔法少女「ま、そんなものかっと、よし、完成」

少年「今回こそ当たりだといいね」

魔法少女「うん!―――はぁぁぁぁぁ!!!」

少年「がんばって……」

魔法少女「―――あ」

帽子(あと9か……)

93: 2011/10/14(金) 09:09:34.05 ID:nDu7l1k60
少年「残念……」

魔法少女「はぁ……いつになったら私の願いが叶うんだろう」

少年「そういえば、願いってなんなの?」

魔法少女「え?ああ、大したことじゃないの」

少年「そうなの?あ、大金持ちになりたいとか?」

魔法少女「あはは、まあ、それも考えたけどね」

少年「違うんだ」

魔法少女「うん」

少年「へえ」

魔法少女「なによ?文句あるの?」

少年「ううん。なんか嬉しくて」

魔法少女「なにが?」

少年「君が即物的な願いを求めてないことが」

魔法少女「な、なによ、それ。まるで私を守銭奴かなんかだと思ってたの?」

少年「あはは、ごめん。気にしないで。さ、次のところに行こう」

94: 2011/10/14(金) 09:15:48.53 ID:nDu7l1k60
―――小学校 校庭

帽子「ここもダメだったな」

魔法少女「あと8ね。そろそろ当たっても良いと思うんだけど」

少年「運が悪いの?」

魔法少女「うっさいな!」

帽子「そういえば、明日は学校休みだろ?」

少年「うん。土曜日だし」

魔法少女「部活は?」

少年「あるよ、夕方まで」

魔法少女「なーんだ……」

帽子「じゃあ、明日で一気に終わらせちまおう」

魔法少女「うん、そだね。もういい加減、疲れたし」

少年「あ……えと……僕は……」

魔法少女「―――午後6時に駅前。いける?」

少年「う、うん!行くよ、絶対に!」

95: 2011/10/14(金) 09:21:15.64 ID:nDu7l1k60
―――自宅前

魔法少女「今日もありがとう。遅くまで付き合ってくれて」

少年「ううん。僕が協力したいだけだから」

魔法少女「そう……ふふ、二人だけの秘密ってなんかいいよね?」

少年「え……」

魔法少女「あれ?そんなに?」

少年「い、いや……き、きみとの秘密って考えると……なんか……えっと……う、うれしくて……」

魔法少女「な……バ、バカ……何言ってるのよ……」

少年「あ……ごめん」

魔法少女「あ、謝らなくてもいいけど……」

帽子「えー、良い雰囲気のところ悪いが、そろそろ小僧は帰った方がいいぞ?」

少年「あ、そ、そうですね!!えっと、じゃあ、また明日!!」

魔法少女「う、うん!!また、ね」

帽子(けっ……ガキの分際で色気づきやがって)

帽子(だが、いよいよだな……明日には魔王の力が……遂にここまできたぞ)

97: 2011/10/14(金) 09:26:42.25 ID:nDu7l1k60
―――翌日 自宅

帽子「おい、早く行こうぜ。小僧と合流するまえに半分以上は消化しときたんだからよ」

魔法少女「ねえ、赤いリボンと青いリボン、どっちがいいと思う?」

帽子「しらねーよ」

魔法少女「どうしよう……」

帽子「あのよお……あの小僧とデートでもする気か?」

魔法少女「……!?!?」

帽子「これは魔王復活の儀式であってだなぁ」

魔法少女「ちょっと!!べ、別にそういうんじゃないから!!」

帽子「ふーん」

魔法少女「いや、ほら、女の子がオシャレに気を使うのは当然じゃない?」

帽子「どうでもいいから早くしてくれ」

魔法少女「わ、わかってる……よし、こっちの赤いリボンにきーめた」

帽子「はやくしろ」

魔法少女「はいはい」

100: 2011/10/14(金) 09:31:01.51 ID:nDu7l1k60
―――剣道場

少年「はっ!やっ!」

顧問「もっと声をだしていけー!!」

「「はい!!」」

先輩「―――おい」

少年「え……あ、はい」

先輩「試合も近い。午後からは実戦形式の練習をする。相手になってくれるか?」

少年「僕でいいんですか?」

先輩「ああ。お前は将来のエースなんだからな」

少年「え……そ、そんなことは」

先輩「―――だが、俺には敵わない」

少年「は……?」

先輩「そのことを思い知らしてやろう」

少年「……」

101: 2011/10/14(金) 09:34:59.57 ID:nDu7l1k60
先輩「きぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!」

少年「ぐっ!?」

先輩「どうしたぁ!!踏み込みが足りないぞ!!」

少年「はぁぁぁぁ!!!!!」

先輩「甘い!!めぇぇぇん!!!!」

少年「―――しまっ!?」

「一本!!」

先輩「お前の悪い癖だ……相手の隙を見つけると大きく構えるのは」

少年「はい……ありがとうございました」

先輩「―――ところで、彼女とは上手くいっているのか?」

少年「え、ええ……」

先輩「そうか……ふふ……大切にしてやるんだぞ?」

少年「それは、はい」

先輩「守ってやれ……しっかりとな」

少年「……?」

102: 2011/10/14(金) 09:39:13.36 ID:nDu7l1k60
―――夕方 剣道場

先輩「本日はこれまで!!」

「「ありがとうございました!!」」

「はーつかれた……」

「早く帰ろうぜ」

先輩「あの、よろしいですか?」

顧問「ん?どうした?」

先輩「試合が近いのでここで自主練習をしたいのですが、よろしいですか?鍵もきちんと責任をもって閉めますので」

顧問「おお。構わないよ」

「流石、先輩だな」

「おお。俺には真似できねーよ」

少年(もう5時だ。急がないと)

少年「先に帰るね」

「またか……ふう。ごゆっくり」

103: 2011/10/14(金) 09:42:21.23 ID:nDu7l1k60
―――駅前

魔法少女「はぁ……」

少年「ごめん!!」

魔法少女「あ、ども」

少年「ど、どうしたの……元気ないね?」

魔法少女「はぁ……全滅した」

少年「ええ?まだ、魔王のお墓が見つかってないの?」

魔法少女「うん」

帽子「でも、残りは3だ」

少年「そうだよ。次はもう当たるよ」

魔法少女「だといいけど……。そうだ、部活お疲れ様。これ、食べる?」

少年「おにぎり……どうしたの?」

魔法少女「握った」

少年「君が?」

魔法少女「て、手は洗ったから、大丈夫だと思う」

104: 2011/10/14(金) 09:46:27.26 ID:nDu7l1k60
少年「あ……頂きます」

魔法少女「……ど、どう?」

少年(形は歪だし……塩もきいてない……)

少年「でも、おいしいよ?」

魔法少女「でも、ってなによ?」

少年「あ……」

魔法少女「言いたいことがあるならはっきりいってよ!」

少年「えっと……料理、苦手?」

魔法少女「……もんく、あるの?」

少年「ないけど」

魔法少女「なら早く食べて!!」

少年「は、はい!!」

魔法少女(ふんだ。次は絶対に心から美味しいって言わせてやる……!)

帽子「早く行こうぜ。時間が惜しいからな」

少年「んぐ……ふう、はい。急ぎましょう」

109: 2011/10/14(金) 10:10:02.66 ID:nDu7l1k60
―――路地裏

帽子「あと2だな」

魔法少女「はぁ……」

少年「えと……もう、2分の1だし、次は当たるって!」

魔法少女「なんか、当たんないような気がしてきた」

帽子(よしよし……良い調子だ)

少年「前向きに考えようよ」

魔法少女「そだね」

少年「はい、お茶」

魔法少女「ありがと。……ごくごく」

帽子「次の目的地は近い。急ぐぞ」

少年「はい」

魔法少女「ぷはぁ♪―――おし、元気でてきた!」

少年「普通の麦茶で?」

魔法少女「き、気分でしょ!?こういうのは!!」

111: 2011/10/14(金) 10:18:03.82 ID:nDu7l1k60
―――廃ビル

魔法少女「はぁぁぁぁ!!」

少年「お願い!!」

帽子(よし……残る封印は1つだ)

魔法少女「―――あ」

少年「えと……よーし、次で終わりだよ!!」

魔法少女「どこまでくじ運ないんだろね、私」

少年「でも、もう次は確実なんだし」

魔法少女「うん……ここまで本当にありがとう」

少年「そんな……僕は殆どなにもしてないよ」

魔法少女「それでも嬉しかったよ?」

少年「う、うん……僕も、君といれて……その、楽しかった」

魔法少女「そ、そうなんだ……」

少年「う、うん……」

帽子「おい。見つめ合ってんじゃねーよ。次いくぞ」

112: 2011/10/14(金) 10:21:43.63 ID:nDu7l1k60
―――中学校

魔法少女「あれ……ここは」

帽子「ここにはもう一つあるんだよ」

少年「そうなの?」

帽子「おうよ」

魔法少女「あのときに済ませてたらよかったじゃない」

帽子「小僧が来たからやめたんだよ」

魔法少女「あ、そっか」

少年「なんか、ごめん……」

魔法少女「あ、いや、責めたつもりはないからね?」

少年「う、うん」

帽子「校庭だ。いくぞ」

魔法少女「ついに……私の願いが叶うんだ……」

少年「頑張ろうね」

魔法少女「うん!」

116: 2011/10/14(金) 10:26:47.32 ID:nDu7l1k60
―――校庭

魔法少女「ねえ……」

少年「よっと……なに?」

魔法少女「あの……もし、良かったら、なんだけど……」

少年「うん」

魔法少女「貴方の願いも、頼んでみてもいいよ?」

少年「え……でも……」

魔法少女「ほ、ほら。お礼はしたいから」

少年「……ううん。いいよ」

魔法少女「え……」

少年「僕、この数日間はすごく楽しかったから……これ以上、なにか望んだらそれこそ魔王に殺されちゃうかもしれない」

魔法少女「そう……ふふ、やっぱり君って変だね?」

少年「そうかな……よっと、出来たよ!!」

魔法少女「よし!じゃあ、見ててね!!―――私、がんばるから!!」

帽子(来たぞ……ついに魔王が蘇る!!)

117: 2011/10/14(金) 10:31:23.56 ID:nDu7l1k60
魔法少女「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

少年「魔王ってどんな姿をしてるんだろう……やっぱり、鬼のように強面なのかな?」

先輩「―――いいや。案外、帽子のような姿かもしれないよ?」

少年「!?」

先輩「やあ。自主練習をしていたら、校庭が気になってね」

少年「せ、んぱい?」

魔法少女「―――貴方は!?」

帽子「きたか……勇者殿」

少年「ゆうしゃ……?」

魔法少女「あ、あの人が……?」

先輩「約束だったからね……ふふ、俺自身も驚いているよ。まさか、勇者の血が流れているなんてね」

帽子「一目で分かった。お前が勇者であることはな……」

魔法少女「ちょっと……どういう……ぐぁ!?」

少年「どうしたの!?」

魔法少女「か、からだから……力が……ぬける……」

119: 2011/10/14(金) 10:37:10.44 ID:nDu7l1k60
帽子「ありがとうよ、小娘」

魔法少女「なんですって……!?」

帽子「この地に施された幾重もの封印を丁寧に解いてくれた」

少年「え……魔王のお墓じゃあ……」

帽子「ふん……魔王の墓などない。この地にあったのは魔王の力、そのもの」

魔法少女「……っ」

少年「大丈夫?!」

帽子「そして……ついに全ての力を俺様は取り戻したのだぁぁ!!!」

先輩「くくく……」

少年「……願いは?……彼女の願いは?!」

帽子「勇者殿……俺様が本来の姿に戻るのはもう少し時間がかかる……それまで俺様を被ってもらえないか?」

先輩「約束だぞ……この世を治めたとき、世界の半分とそこにいる魔王の末裔を俺の嫁にすること」

帽子「分かっている。好きにしろ……」

先輩「では、魔王を被らせてもらおう……勇者がな!!」

魔法少女「こ、こいつら……まさか……あのときに……」

122: 2011/10/14(金) 10:43:03.12 ID:nDu7l1k60
少年「……どういうことですか?」

先輩「君達の後を付けた日、魔王から全てを聞いた。そして、手を組まないかと持ち掛けられたのさ」

少年「……」

先輩「世界の半分をくれてやる。だから、協力してほしいとな」

魔法少女「協力って……」

先輩「勇者の血には魔王を封じ込める力があるらしい」

少年「それを使われないように……」

帽子「そういうことだ。時を経て、勇者の心も人間らしくなってくれて、俺様は嬉しいぜ」

先輩「ふふ……さて、魔王の末裔よ。俺のところにこい。良い思いをさせてやろう。……存分にな」

魔法少女「……」

帽子「魔王と勇者に愛でられてお前は幸せ者だぞ?くくく……」

魔法少女「わ、私は……」

少年「―――先輩、やめてください」

先輩「邪魔だ、ムシケラ」

少年「彼女、嫌がってます。それにもう誘わないでって彼女は貴方に言ったじゃないですか」

124: 2011/10/14(金) 10:50:16.02 ID:nDu7l1k60
魔法少女「ちょっと……」

先輩「ふん。騎士気取りか」

少年「……先輩。魔王に手を貸すのはやめてください」

先輩「竹刀を抜いたな?――それは、この場から逃げないという意志表示でいいのだな?」

少年「……」

先輩「ふん。良い目だ。いつになく鋭い。―――では俺も、この木刀で相手をしてやるぞ」

魔法少女「魔王……人間を導く気はあるの……?」

魔王「無論だ。―――俺様に逆らった人間は必ず殺す。それが魔王の導き方だ」

魔法少女「……外道ね」

少年「先輩……魔王はやはり封印すべきです」

先輩「桃源郷を約束してくれた魔王を封じるなど、誰がする?」

少年「先輩!!」

先輩「富と名声、そして美しい女も手に入る。それを拒む人間など愚かとは思わないのか?」

帽子「その通りだ、勇者殿」

少年「先輩……貴方の願いだけは……ここで潰えた方がいいと思います」

125: 2011/10/14(金) 10:55:51.69 ID:nDu7l1k60
先輩「さあ、こい。後ろの女を守りたければな」

少年「ぐ……!!」

魔法少女「大丈夫……あの帽子を被ったからってあの人が超人になるわけじゃない」

少年「ほ、ほんとに?」

魔法少女「うん……魔王はまだ完全に力を取り戻してないはずだし……それに勇者の潜在能力を引き出せば」

少年「自分が封印されるかもしれない」

魔法少女「だから……まだ。あの人は普通の人間のはず」

少年「……僕が帽子ごと叩けば何とかなるかな?」

魔法少女「分からない……でも、あの人を倒さないと、ダメだと思う」

少年「分かった……やってみるよ」

魔法少女「がんばって」

先輩「……さあ、どこからでもこい」

少年「……」

先輩「……」

少年「―――はぁぁぁぁ!!!!!」

127: 2011/10/14(金) 11:01:23.67 ID:nDu7l1k60
少年「はっ!!やっ!!」

先輩「いいぞ!いいぞ!!その気迫!その鬼気!!」

少年「ぐぅぅ!!」

先輩「ふふふふ……いつも思っていた。お前の剣は軽すぎるとな」

少年「……!!」

先輩「腕前は俺に引けを取らぬくせに、お前は常に俺の一歩後ろにいた」

少年「ぐぅぅ……!!」

先輩「こうして瀬戸際に立たされて、ようやくお前本来の力が見えた気がするぞ」

少年「ぎぃぃ……!!」

先輩「だが、まだ軽いな!!―――突きぃぃ!!!」

少年「―――ごふ!?」

魔法少女「あ!?」

先輩「―――立て。それで終わりではあるまい?」

少年「……先輩……」

先輩「本気のお前を倒してこそ、俺はエースになれるんだ。―――さあ、もう一度来い!!」

129: 2011/10/14(金) 11:06:13.47 ID:nDu7l1k60
少年「先輩……」

先輩「俺は勇者だ。卑怯な真似はせん。疲れたのなら待ってやろう」

少年「ふぅ……ふぅ……お願いします!!!」

先輩「いいぞ!!こい!!!」

少年「うわぁぁぁ!!!!」

先輩「ふふ……楽しい!!楽しいぞ!!」

少年「や!!はぁ!!!!」

先輩「―――どぉぉぉ!!!」

少年「―――ぐぉっ!?!」

先輩「……その程度か?」

少年「く、そ……」

魔法少女「……っ」

帽子「流石だ勇者殿。人間では相手にならんな」

先輩「ふん……この剣の才は勇者の血からきていたのかもしれんな。―――凡人の貴様ではどうあっても超えられないようだ」

少年「く……そぉ……!!」

131: 2011/10/14(金) 11:10:52.28 ID:nDu7l1k60
帽子「そろそろ俺様も本来の姿に戻れそうだ」

先輩「そうか……」

少年「はぁ……はぁ……」

魔法少女「もう……やめて……」

少年「……!?」

魔法少女「私、貴方達についていくから……だから……」

少年「ま、て……」

先輩「くくく……愛する者を守るために体を差し出すか」

魔法少女「は……い……」

先輩「だそうだ。残念だったな、騎士様?」

少年「……」

先輩「俺の指導を忘れていては、負けて当然だ」

少年「……!?」

先輩「さあ、こっちにこい」

魔法少女「……わかりました」

132: 2011/10/14(金) 11:12:33.02 ID:P/eavk0K0
先輩いいやつじゃん

134: 2011/10/14(金) 11:14:36.66 ID:nDu7l1k60
少年「―――まだ……です!!」

先輩「……ほぉ」

魔法少女「もうやめて!!」

少年「ごめん……君のためにも……先輩のためにも……ここは退けないんだ」

魔法少女「え……?」

先輩「……」

少年「もう一本……お願いします!!!」

先輩「よし。構えろ」

魔法少女「お願い!!もう―――」

少年「守るから……絶対に……信じて」

魔法少女「……っ」

少年「お願い」

魔法少女「……ま、まけたら……許さない……」

少年「ありがとう……。―――先輩!!お願いします!!!」

先輩「―――こい!!」

135: 2011/10/14(金) 11:18:51.85 ID:nDu7l1k60
帽子(もうそろそろだな……人間どもめ不毛な争いをしている間に俺様は……くくく)

少年「はぁぁ!!!やぁぁぁ!!!!」

先輩「攻撃一辺倒で俺を倒せると思っているのか!?」

少年「倒して……見せますよ!!!」

先輩「ふん!!」

少年「はっ!!!」

少年(相手の隙が見えても……大きく構えず……)

先輩「―――ずぁ!!!」

少年(最小限の動きで―――)

先輩(―――いつもと動きが違う?!)

少年「―――めぇぇぇぇん!!!!!」

パァァァァン!!!

帽子「―――ぐぁああ!!??」

先輩「―――ぬぉ!?」

少年「はぁ……はぁ……はぁ……い、一本、ですよね?」

137: 2011/10/14(金) 11:22:59.47 ID:nDu7l1k60
先輩「く……ふふ……まさか、面なしで頭を狙われるとは……」

魔法少女「やった……」

少年「先輩……」

先輩「魔王……これはまずい」

帽子「……そうだな」

先輩「勇者の力を引き出してくれ」

帽子「よかろう……このままでは俺様の身も危ないな」

先輩「ああ。勇者の力で完膚なきまでに滅ぼしてくよう」

少年「先輩!!」

魔法少女「どっちにしろ……ダメだったの……」

帽子「ぬぉぉぉ!!!―――よし、引きだしたぞ!!存分にやれ勇者殿!!」

先輩「ああ。存分にな……」

少年「く……」

魔法少女「逃げて!!」

先輩「―――魔王!!今一度、封印してくれる!!!」

138: 2011/10/14(金) 11:26:05.02 ID:OOJdscCs0
先輩イケメンすぎワロタ

140: 2011/10/14(金) 11:28:15.75 ID:nDu7l1k60
帽子「な……!?!?」

少年「先輩!?」

先輩「よく、俺を倒してくれたな……感謝するぞ。俺がお前に実力で負けなければ魔王が勇者の力を引き出してくれないと思ってな」

帽子「きさま!!やめろ!!!!」

魔法少女「あ……でも……協力してたんじゃあ……」

先輩「この計画を持ちかけられたときに、俺はこうすると決めていた」

少年「先輩……」

先輩「魔王と手を組む勇者など……俺は聞いたことがない」

帽子「やめろ!!やめてくれ!!何千と俺様は暗い世界を……もういやなんだぁぁ!!!」

先輩「知らんな。この世界をめちゃくちゃにしてくれるな。―――さらばだ、魔王」

帽子「いやだぁぁぁ」

先輩「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

魔王「――――あぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!」

先輩「―――ふう。これでいいのか?」

魔法少女「……多分……帽子からはなんの魔力も感じませんし……封印できたと思います」

141: 2011/10/14(金) 11:33:01.88 ID:nDu7l1k60
先輩「そうか……にしても不思議な経験をした」

少年「はは……僕も夢を見てた気がします」

少女「あ……」

少年「どうかしたの?」

少女「……魔力が抜けていった」

先輩「そうか……魔王が居なくなったために魔力も消えたのかもしれないな」

少年「はぁ……」

先輩「どうした?腰が抜けたか?」

少年「す、すいません……なんか力が……」

少女「もう情けないわね」

先輩「ほら、手を」

少女「はい」

少年「ありがとうございます……よっとと……」

先輩「おいおい、大丈夫か」

少女「家まで送ってあげるね?」

143: 2011/10/14(金) 11:37:43.18 ID:nDu7l1k60
―――少年宅前

少女「大丈夫?」

少年「うん」

先輩「時に魔王の末裔」

少女「あ、はい?」

先輩「今宵はもう遅い。こいつの家で世話になったらどうだ?明日は日曜日だし、問題はない」

少女「ええ!?!」

少年「あ、の……それは」

先輩「俺は先に家へ帰る。送ってはやれん」

少年「あ……はい……」

少女「あの……色々とありがとうございました」

先輩「いや。いい人生経験になった。それに、お前の実力を垣間見ることもできた。我が剣道部はまだまだ安泰だな」

少年「先輩……」

先輩「ではな」

少女「はい。ありがとうございました!!」

146: 2011/10/14(金) 11:42:55.74 ID:nDu7l1k60
―――少年宅 自室

少女「……」

少年「……」

少女「あの……」

少年「あ、え……?」

少女「えと……守ってくれて……ありがとう……その、かっこよかった」

少年「あ……うん……」

少女「……」

少年「あの……さ……」

少女「ん?」

少年「……あの……こ、これからも……ふ、二人で……色んなところに行きたいなぁって……思ってるんだけど……」

少女「あ……う、うん……わ、私も、同じこと……思ってた……」

少年「これからも守るから……本当の……恋人になってほしい……」

少女「……うん♪」

148: 2011/10/14(金) 11:45:36.50 ID:nDu7l1k60
―――週明け 中学校

少年「おはよう」

「おっす」

「昨日はお楽しみでした?」

少年「なんのこと?」

「お前の家からアイツが出てくるの目撃した人がいるんだぜ?」

少女「……?」

少年「はぁあぁ!?!」

「いいなー!俺もあんな子を自宅に泊めたいなー」

少年「それだれ!?」

「剣道部の先輩」

少年「……」

少女「なになにー?楽しい話?」

少年「いこう」

少女「え?どこに?」

151: 2011/10/14(金) 11:50:45.62 ID:nDu7l1k60
少年「先輩!!!」

先輩「どうした?」

少年「変な噂を流さないでくださいよ!!」

少女「変な噂?」

先輩「ふふ……どうだ……彼女をストーカーされて、怒り心頭か?」

少年「あ、当たり前です!!」

少女「ちょ……そんなはっきりと肯定しないでよ……」

先輩「くくく……その怒り、今日の練習試合まで取っておけ。また、お前の本気がみたいからな」

少年「な……!?」

先輩「ではな」

少女「ねえ、何の話?」

少年「……僕、絶対に君を守るよ」

少女「あ、うん……ありがと……ふふ……嬉しい」

少年「先輩……何を仕出かすか、全く分からない人だ……」

少女(なんだ……生まれてくる時代、間違えてなかったみたい。これからも私を守ってね、勇者様♪)
                                                               END

153: 2011/10/14(金) 11:51:56.81 ID:VKqntI+10
男にも面白い読み切りの少女漫画みたいだった

154: 2011/10/14(金) 11:55:32.03 ID:P/eavk0K0

158: 2011/10/14(金) 12:03:57.55 ID:nDu7l1k60
やべえ
少女の願い描き忘れてる

まあ、素敵な彼氏が欲しかったという願いなんで、察してくれた人も多いかも
みんな乙

159: 2011/10/14(金) 12:15:49.77 ID:ZWYGSruOO
>>158
即物的な願いワロタwww

引用元: 魔法少女「生まれる時代を間違えすぎた」