1: 2011/09/18(日) 16:17:15.00 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父!人間拾った」

青「捨ててこい。」

赤「嫌じゃ。」

青「そんなん一体どうするつもりじゃ?」

赤「育てて食う。」

5: 2011/09/18(日) 16:18:52.83 ID:iuDXAJ+q0

青「ならんならん。肉は臭いし食えたもんじゃないわ。」

赤「なら、おっ父にはやらん。わしが食う。」

青「第一育つのが遅いぞ。育てるまでに食わせる分を自分で食べたほうがマシじゃ。」

赤「なら、わしが餌をとってくる。」

青「頭がいいからすぐ逃げるぞ。」

赤「なら、足だけ今食う。それなら逃げられん。」

青「そんなことしたら育たん。今すぐ死ぬぞ。」

赤「それは困った。」

6: 2011/09/18(日) 16:20:41.59 ID:4hQzCtB/0
これは国語の教科書にのる

7: 2011/09/18(日) 16:21:28.09 ID:iuDXAJ+q0

青「どっから拾って来たんじゃ?この辺には人間の集落なぞないじゃろう。」

赤「滝の前に落ちとったぞ。寝とったからつかまえるのは簡単じゃった。」

青「そりゃ落ちて気ぃ失ってただけじゃな。あちこち怪我しとる。」

赤「そうか。なら、こいつはマヌケじゃな。」

青「とりあえずヨモギでも巻いて戻してこい。ここで気が付いたら面倒じゃ。」

赤「なにが面倒なんじゃ?」

青「ここを覚えられたら、大勢で追い出しに来るにきまっとる。」

赤「なんと、それは嫌だの。」

10: 2011/09/18(日) 16:23:45.92 ID:iuDXAJ+q0

赤「戻してきたぞ。」

青「娘っ子がなんちゅうカッコしとる?毛皮はどうした?」

赤「寒いかもしれんから、マヌケにかけておいた。」

青「余計なことを。次に鹿が獲れるまで藁を巻いとけ。」

赤「あれはチクチクするから嫌じゃ。」

青「明日獲りに行くから辛抱せい。お前が余計なことするからじゃ。」

13: 2011/09/18(日) 16:25:27.64 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父!昨日のマヌケがまた居たぞ。」

青「帰っとらんかったんか。犬は連れとらんかったか?」

赤「犬はおらん。おったらにおいで分かるはずじゃ。わしは犬が好かんからの。」

青「ほうか、ならいいが。帰っとらんという事は、わしらを探しておるのかの?」

赤「なんでじゃ?」

青「わしが知るわけなかろうが。」

14: 2011/09/18(日) 16:30:15.00 ID:iuDXAJ+q0

青「お前は隠れとれ。わしは焚き火を消してくる。もう遅いかもしらんがな。」

男『出てこい!』

赤「遅かったようじゃの。」

青「やれやれ、また立ち退くことになるのかの。」

赤「わしのせいか?」

青「さあな。とにかくお前は出てくるでないぞ。」

15: 2011/09/18(日) 16:34:28.68 ID:iuDXAJ+q0

青「一体なんの用じゃ?騒々しいぞ。」

男「あ!い、い・・・」

青「さっきの威勢はどうした?怯えておるのか?」

男「うるさい!妹を返せ!」

青「はあ?お前の妹なぞ知らんぞ?」

男「嘘をつくな!トヨを・・・く、食ったのか!?」

青「わしらは人間なぞ食わんわ。」

男「わしら?・・・な、仲間が居るのか?」

青「お前には関係の無い事だ。」

18: 2011/09/18(日) 16:41:05.78 ID:iuDXAJ+q0

青「それともお前を食ってやろうか?」

男「あ・・・ヒッ!」

赤「なんと!食ってもいいのか!?」

青「あ、こら!出てくるなと言うとろうが!」

男「トヨ?・・・いや、似ているが違う・・・」

19: 2011/09/18(日) 16:46:18.26 ID:iuDXAJ+q0

青「それで?わしの娘がお前の妹に似ておっただと?」

男「ああ、5日前から姿が見えん、本当に食っていないのだな?」

赤「おっ父は人間はまずいから食わんのだと。」

男「不味いと知っているという事は・・・」

青「今は食わんが、食ったことはあるぞ。」

男「俺も・・・食うつもりか?」

青「食わぬというに。」

赤「わしは食ってみたいぞ。」

22: 2011/09/18(日) 16:56:01.56 ID:iuDXAJ+q0

青「なんでこんな山奥まで来た?わしがさらったと思ったのか?」

男「他に誰がおる!?」

青「誰と言われてもな、人間の里に知り合いなどおらん。」

男「トヨ・・・」

青「わしらが住んでおる事は知っておったのか?」

男「確かめた者はおらんが、昔から猟師の間で噂はある。」

赤「そんな噂を信じて崖から落ちたのか。マヌケマヌケ。」

26: 2011/09/18(日) 17:02:14.70 ID:iuDXAJ+q0

男「くっ・・・!だが、三日三晩さまよってこの毛皮を見つけた。これで確信した。」

青「ほれ見ろ。お前がしたことが仇になっとるぞ。」

赤「めんぼくない。」

青「とにかくそれは返せ。こいつのじゃ。」

赤「おー!チクチクはもういやじゃしの。」

男「そうはいかん!」

青「ぁん?」

男「あ・・・う・・・か、返す。」

28: 2011/09/18(日) 17:11:09.19 ID:iuDXAJ+q0

男「本当に妹は知らんのか・・・?」

青「くどいぞ。」

赤「くどいくどい。」

男「他に仲間は居ないのか?」

青「この辺りにはおらんし。おったとしても教えんわ。」

30: 2011/09/18(日) 17:20:41.67 ID:iuDXAJ+q0

男「なら妹は・・・どこへ行ったというのだ・・・」

青「どこぞの男とかけ落ちでもしたんじゃろ。」

男「妹は目が見えぬ。喘息もある。遠出なぞ無理だ。」

赤「かけ落ちとは何ぞ?」

青「家族の他の者は何か言うておらんのか?」

男「家族は死んだ。妹しかおらん。今は親戚の家に世話になってる。」

青「同じ事じゃ、一緒に住んどる者は何か見てなかったのか?」

男「うちは貧しい・・・妹以外は皆畑に出ていた。戻ってきたら消えておったと・・・」

31: 2011/09/18(日) 17:27:29.12 ID:iuDXAJ+q0

男「邪魔をした。もう一度村の周りを探してみる。」

青「このまま帰れると思うてか?」

男「お、俺をどうするつもりだ・・・?」

赤「どうするつもりだ?」

青「さて・・・どうしたもんかの?」

赤「どうしたもんか?」

35: 2011/09/18(日) 17:36:25.68 ID:iuDXAJ+q0

青「ここへは一人で来たのだな?」

男「そうだ。」

青「ならば、お前以外は誰も知らん。そうだな?」

男「そうだ。」

青「・・・ここであった事は誰にも言うな。お前も忘れろ。」

男「・・・出来ん。と言ったら?」

青「とって食う。」

38: 2011/09/18(日) 17:47:38.60 ID:iuDXAJ+q0

男「・・・わかった。ひとつ教えてくれ。」

青「何度も言うが、お前の妹なぞ知らん。」

男「そうじゃない、俺が起きた時、傷の手当てがしてあった。お前たちなのか?」

赤「おお!わしだ!わしわし。」

青「それも知らん。見逃してやるからはよう去れ。」

39: 2011/09/18(日) 17:54:33.65 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父、叔父貴が来たぞ。」

青「なんじゃと?珍しい。」

黒「よぉ兄弟、息災かえ?」

青「兄者、良くここが分かったの。」

黒「竹細工でトラハジキ作れるんはお前くらいのもんじゃ。」

青「それでわしがこの山におると?」

黒「罠を見つけて、後は煮焚きのにおいをたどっての。」

41: 2011/09/18(日) 18:05:19.93 ID:iuDXAJ+q0

赤「で、その人間はどうしたのじゃ?食うのか?」

娘「あの・・・」

黒「ソレの事は後で話す。だが、僅かに別の人間のにおいがするの?」

青「ああ、前に迷い込んだマヌケがおってな。それでじゃろ。」

黒「では、また食うようになったのか?」

赤「食ってはおらんぞ。」

44: 2011/09/18(日) 18:17:31.62 ID:iuDXAJ+q0

黒「なんと、そのまま帰らせただと?面倒なことになるぞ。」

青「まあ、大丈夫じゃろう・・・で、ソレの事を聞いても良いか?」

黒「ああ、実はの、先日食った人間が連れておって・・・」

青「旅の衆を襲ったのか!?その方が面倒になるではないか。もし、噂が立ったりすれば・・・」

黒「なに、心配はいらんよ。そいつは人買いだったでの。」

青「なら心配するものもおらんな。」

46: 2011/09/18(日) 18:24:57.04 ID:iuDXAJ+q0

赤「こいつを食わなかったのは何でじゃ?」

黒「わしももう歳かの、一人食ったら腹いっぱいでの。」

娘「・・・・・」

黒「それに、お前に似ておったからの。何だか食う気にならなんだ。」

青「言われてみれば似ておるかの。ハテ、目が開かぬようじゃが?」

黒「帰れと言っても見えねば道が分からぬだろうし、わしが人里近くまで送るわけにもいかん。」

48: 2011/09/18(日) 18:30:44.46 ID:iuDXAJ+q0

黒「わしもそろそろどこかに腰を据えようと思っておったから、こいつに家事でもさせようかと。」

青「ま、目が見えねば枷もいらんであろ。しかし、やれやれ・・・情が移ったか。」

黒「お前にゃ言われとうないが、まあそういう事だの。」

赤「叔父貴もう旅がらすやめるのか?」

黒「そうじゃ。それで、ここらで住めそうな場所を聞こうと思っての。」


晩飯食ってくる。スレ残ってたら続ける。

60: 2011/09/18(日) 18:54:36.21 ID:iuDXAJ+q0

青「あいにくここらには無いの。前に住んどった処は猟師が出入りするようになったしの。」

赤「お前ずいぶん白いな。」

娘「え?」

青「向こうの山ならまだ誰も住んどらんハズだが。」

赤「これは何ぞ?」

娘「櫛・・・髪を梳かす道具です。」

黒「山越えになるか。わしはともかくアレには難儀じゃな。」

61: 2011/09/18(日) 19:01:53.51 ID:iuDXAJ+q0

黒「いざとなったら抱えて渡るが、雲行きがよくないの。」

青「夕方からは天気も崩れてきそうだの。」

赤「これは鏡か?全然研がれておらんの。随分くもっとる。」

娘「私には・・・必要ないものですから。」

青「まあ、急ぐこともないのであろ?しばらくは泊まっていくがいい。」

黒「おう、そのつもりじゃ。なので酒を持ってきたぞ。」

青「知っておったさ。だから泊めるのじゃ。」

赤「叔父貴泊まるのか!?じゃあ、またおっ母の話を聞かしてくれ!」

65: 2011/09/18(日) 19:08:49.33 ID:iuDXAJ+q0

娘「どうかしたのですか?」

赤「おっ父も叔父貴も酔っぱらって寝てしもうた。」

娘「・・・はい。」

赤「のう人間、ウタとはなんじゃ?」

娘「歌・・・ですか?いろいろありますが・・・」

赤「わしのおっ母はウタというのが上手かったらしい。さっき叔父貴が教えてくれた。」

娘「♪~・・・・」

赤「?」

娘「♪~・・♪♪~・・・」

赤「おお、おお、それがウタか!?」

67: 2011/09/18(日) 19:16:37.32 ID:iuDXAJ+q0

赤「教えてくれぬか?いや、わしにも出来るか?」

娘「じゃあ、一緒に歌いましょう。」

赤「真似をすればいいのかや?」

娘「♪~・・・・」

赤「@¥×・・・」

娘「♪~・・♪♪~・・・」

赤「△?・・#・・・」

69: 2011/09/18(日) 19:20:28.09 ID:iuDXAJ+q0

黒「やれやれ、2~3日のつもりが、長居してしもうたの。」

青「なに、構わぬよ。あやつの伽にもなっておったしの。」

赤「じゃあの!歌は毎日練習するぞ!そうじゃ、これをやろう。川で拾った翡翠じゃ。」

娘「あ、ありがとう。」

青「では気をつけての。」

71: 2011/09/18(日) 19:30:13.53 ID:iuDXAJ+q0

黒「どうした?もう疲れたのか?」

娘「・・・すこし。」

黒「休める場所が見つかるまで抱えてやるか?」

娘「結構です。」

黒「なんじゃ?まだわしが恐ろしいか?」

娘「・・・いいえ。」

73: 2011/09/18(日) 19:38:17.60 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父!わしにも櫛を作ってくれ!」

青「なんじゃ色気づきおってからに。」

赤「あの人間は持っておったに、ダメか?」

青「作ってやらん。」

赤「ちえ、おっ父なぞ嫌いじゃ!」

青「教えてやるから自分で作れ。」

赤「おお!やっぱりおっ父は好きじゃ!」

74: 2011/09/18(日) 19:44:59.76 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父、マヌケがまた来たぞ。」

青「忘れろと言うたにの。」

赤「今度は食い物もなしで山に入ったようじゃ。」

青「何度も来られると困るんだがの。」

赤「なんでじゃ?」

青「短い間に何度も行き来すると道ができるじゃろ。あいつ以外も来るようになる。」

赤「そうか。人間に見つかったら引っ越しじゃもんの。」

76: 2011/09/18(日) 19:49:56.74 ID:iuDXAJ+q0

男「たのもう・・・」

青「ここの事は忘れろと言ったはずだが?」

男「すまぬ。」

赤「今日は何しに来たんじゃ?」

男「今日は・・・頼みがあって来た。」

77: 2011/09/18(日) 19:53:31.56 ID:iuDXAJ+q0

男「俺をここに住まわせてはくれないか?」

青「いきなり何を言うとる?」

男「村を捨てて来た。もうあそこには戻れん。」

青「そんなことわしらの知ったことではない。」

男「俺が戻ったら急に羽振りが良くなってた。おかしいと思って問い詰めたら・・・妹を人買いに出したと。」

赤「おっ父、もしかすると叔父貴の・・・」

青「お前はだまっとれ。いいな?」

80: 2011/09/18(日) 20:02:07.45 ID:iuDXAJ+q0

男「家のもんはみんな殺してきた。そいで騒ぎを聞いて集まって来た奴らから逃げて来た。」

青「お前にどんな理由があろうがわしらに関係なかろう。」

男「じゃあ、せめてこの山に住むことを許してくれ。迷惑はかけない。」

青「それなら構わんが。絶対に山から出ないと約束できるか?」

男「なぜだ?」

青「できるのか、できんのか!?」

男「・・・約束する。」

83: 2011/09/18(日) 20:07:50.06 ID:iuDXAJ+q0

青「麓近くに前住んどったほら穴がある。そこにでも住むがいい。」

赤「あそこは時たま猟師が来るぞ?」

青「こいつは人間じゃ。猟師に見つかっても騒ぎにはならん。」

赤「む。喋ってしもうた。黙らねばならぬに・・・」

青「わしの目は1里先だろうと見える。約束をたがえるなよ。」

男「肝に銘じる。」

青「それから、しばらくの間ここへは近付くな。お前の通った跡は目立ちすぎる。」

男「そうだったのか、すまない。」

86: 2011/09/18(日) 20:14:54.10 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父、叔父貴じゃ。」

黒「よう兄弟。住処が決まったのでな。知らせに来た。」

青「ほお、それは良かった。」

赤「今日は一人だの。」

黒「連れてこようかとも思ったがの、ちと困っておる。それの相談もしたくての。」

89: 2011/09/18(日) 20:18:51.56 ID:iuDXAJ+q0

黒「股から血が出てな。具合が悪そうなのじゃ。死ぬのかの?」

赤「なんじゃと!?おっ父、なんとかしてやれんか?」

青「ああ、案ずることはない。それは月の物じゃて。本人は何と言うておる?」

赤「ツキ?」

黒「わからんと言うておった。こんなことは初めてじゃと。」

青「ほうか。それはな、子供が産めるようになった証じゃ。人間なら家族で祝いを催すが・・・」

赤「おっ父はもの知りじゃのう。」

青「じきにお前にも来るようになるぞ。祝ったりはせんがの。」

赤「なんと!」

92: 2011/09/18(日) 20:22:42.19 ID:iuDXAJ+q0

黒「で、どうすれば治るのじゃ?」

青「放っておけば良いじゃろ。日が経てば自然と収まるものよ。」

黒「ならばしばらくは様子を見るかの。」

青「じゃが、これからは毎月それの繰り返しじゃ。本人にも教えておくと良いの。」

赤「おっ父もそうなのか?」

青「阿呆。なるのは女だけじゃ。」

94: 2011/09/18(日) 20:29:19.67 ID:iuDXAJ+q0

赤「マヌケの事はいいのかの?」

青「おお、そうじゃそうじゃ。」

黒「前に来たという人間か?」

青「左様、兄者はあの娘を人買いからさらったのだの?」

黒「そうじゃの。さらったのか助け出したのか妙な具合だがの。」

青「そのマヌケはあの娘の兄で、妹を探して山に入ったらしくての。」

96: 2011/09/18(日) 20:37:04.52 ID:iuDXAJ+q0

黒「わしはお前ほど頭がようない。すまんがわからんわ。」

青「言い方が悪かったの。そのマヌケは妹が見当たらなくなったから、わしがさらったと早とちりして山に来た。」

赤「そんでわしらが追い返したんじゃ。」

黒「ほうほう。」

青「本当は妹は人買いに売られたからいなくなったわけじゃ。」

黒「その妹というのがあの娘なのだな?」

青「マヌケが言うには、妹はこいつに似ておって、目が見えぬと。おそらく間違いあるまい。」

98: 2011/09/18(日) 20:43:18.73 ID:iuDXAJ+q0

青「それからもう一つ。そのマヌケは今はこの山に住んでおる。」

黒「自分の山に人間を住まわせておるのか?お前のもの好きは底がないの。」

青「妹を売られたことに腹を立て、家のものを皆殺しにして逃げて来たんだと。」

黒「いやはやなんとものう。わしらより人間の方がよっぽどえげつないではないか。」

青「どうするかの?会わせてみるかえ?」

黒「会わせてやりたい・・・の間違いではないのかの?」

青「まあ、そうとも言うかの。よし、マヌケを呼んでこい。」

赤「おお!心得たぞ!」

103: 2011/09/18(日) 20:48:31.77 ID:iuDXAJ+q0

赤「・・・というわけじゃ。おっ父と叔父貴が呼んでおるからついて来やれ。」

男「その話、本当なのか?」

赤「わからぬよ、お前が会ってみんことにはな。お前の妹の顔はお前しか知らんのじゃ。」

男「そうだな。わかったすぐに行こう。」

赤「まてまて、そっちはダメじゃ。また草が踏み倒される。こっちから登って行くぞ。」

男「こんなところ登れるはずがないだろう?」

赤「だらしないの。ならわしが抱えてやるわな。」

108: 2011/09/18(日) 20:53:33.34 ID:iuDXAJ+q0

赤「すまんの・・・おっ父や叔父貴のようにはいかなんだ。もうちっとわしに丈があればの。」

男「俺を片手で持ちあげるだけでもすごいとは思うが・・・イテテ」

赤「だが釣り合いがとれん。両手で抱えたら登るのに使う手が無くなるしの。」

男「やっぱりあっちから行った方が・・・」

赤「そうじゃ!お前、わしにおぶされ。抱えられんなら背負えばいいんじゃ。」

男「こ・・・これでいいか?」

赤「ぬほほ・・・なにやらこそばゆいの。」

129: 2011/09/18(日) 21:12:33.02 ID:iuDXAJ+q0

赤「♪~・・・♪~♪~・・・」

男「その歌は・・・」

赤「おお!歌がわかるのか?なら、お前も習うと良いぞ。」

男「俺は歌は不得手なんだ。その代わりにこれを吹いている。」

赤「なんじゃそれは?竹ではないのか?」

男「これは笛というものだ。こうすると音が出る。」

「♪-・・・♪-♪-・・・」

赤「なんと!」

136: 2011/09/18(日) 21:18:39.18 ID:iuDXAJ+q0

赤「ぐぎぎ・・・全く音が出ぬ。頭がくらくらしてきたぞ。」

男「一朝一夕では無理だろう。壊す前に返してくれ。」

赤「うぬぬ・・・返す。」

男「ん?こっちじゃないのか?」

赤「そっちは嫌じゃ。通りとうない。」

男「ああ、ヒイラギか・・・意外と言えば意外だな。こんなものが怖いとは。」

赤「怖くなぞないわ!嫌いなだけじゃ!ほれ、はよう来い。」

143: 2011/09/18(日) 21:24:37.59 ID:iuDXAJ+q0

赤「おっ父!待たせた!連れて来たぞ。」

黒「ほう、こやつがそのマヌケか。」

赤「そうじゃ、そのマヌケじゃ!」

男「は、始め・・・まして・・・?」

青「言うまでも無いが、そいつはわしの山の者じゃ。勝手に食ってくれるなよ。」

黒「心得ておるよ。一応は客人としての扱いはする。だが、この山の外で会った時は・・・」

青「それは言ってある。山から出るな。とな。」

146: 2011/09/18(日) 21:27:50.99 ID:iuDXAJ+q0

青「では行ってくるがいい。お前は場所を覚えてわしに教えろ。」

赤「おっ父は行かんのか?」

青「人間の足にあわせれば往復に何日かかかるじゃろ。その間ここを留守には出来ん。」

赤「うむー。いたしかたないの。」

黒「そうじゃ、この辺りで塩は採れんか?わしらには毒じゃが、人間の食事には必要らしいでの。」

青「尾根づたいに行けば魚の棲まぬ湖がある。そこらを掘れば岩塩が出るであろ。」

黒「ふむ。ちと寄り道になるが、近いもんじゃな。」

赤「どうやって運ぶのじゃ?」

黒「こやつが持てばよかろう。」

148: 2011/09/18(日) 21:36:06.93 ID:iuDXAJ+q0

黒「のう、人間。家の者を殺してきたというのは本当か?」

男「・・・本当です。」

黒「わしが聞いた話では、お前が祝言を挙げるための元手が必要で身売りしたと。」

男「そんな馬鹿な。」

黒「重荷になっていた自分でも、兄に報いることができたのだと。」

赤「祝言とはなんじゃ?」

黒「夫婦になることじゃ。」

赤「メオト?おっ父とおっ母になる約束か!」

男「俺にそんな話が来ていたことなどない。そうか、あいつら・・・妹を騙して売ったんだ。」

153: 2011/09/18(日) 21:46:04.39 ID:iuDXAJ+q0

黒「まあ、そんなところかのう。人違いという事もあるにはあるが・・・」

赤「ついたぞ。ここがおっ父が言っておった湖じゃ。」

黒「ホントに魚がおらんのじゃな。あちち!うかつに近寄らんほうがよさそうじゃの。」

赤「大げさじゃの。叔父貴もこれがだめなんか?わしは何ともないぞ。」

黒「うむー・・・そらお前、お前はまだ若いからじゃ。おい坊主、それを5貫ほど集めて持ってこい。」

男「坊主・・・?」

赤「叔父貴、こいつは坊主ではない。マヌケじゃ。」

男「・・・・・」

156: 2011/09/18(日) 21:54:05.03 ID:iuDXAJ+q0

黒「さて、もう日も傾いてきたし。この谷を渡ったら暖をとるかの。」

赤「わしらはいいとしてものう・・・」

男「うー・・・」

黒「なに、疲れとるのを差し引いても人間が渡れるとは思っとらんわ。」

赤「ではどうするのだ?」

黒「わしが向こうまで投げ渡す。」

赤「なんと!」

160: 2011/09/18(日) 21:59:39.67 ID:iuDXAJ+q0

黒「木の枝の中に投げ込むからの。下まで落ちる前に何かにしがみ付け。よいな?」

男「え?」

黒「よっ・・・と」

男「・・・・・え?」

黒「ヨイサー!」

男「えあ?おおおおおお!・・・ぉぉぉぉぉ・・・・!?」

163: 2011/09/18(日) 22:04:02.11 ID:iuDXAJ+q0

黒「さて、寝る前に腹ごしらえじゃ。燻製じゃが人間の口にはあわんかもの。」

赤「おお、豪勢じゃの!これは鹿か?山羊か?」

黒「羊じゃ・・・二本脚のな。」

男「ブッ!」

赤「そんなもんがおるんか?」

黒「まあ嘘じゃ。安心せい、鹿の肉じゃ。」


168: 2011/09/18(日) 22:07:18.13 ID:iuDXAJ+q0

赤「よし!笛じゃ!笛を吹くのじゃ!聴かせたもれ。」

黒「ほう、それは篠笛だの。心得があるのか?」

男「うん・・・まあ。」

黒「ならば存分にやれ。笛の音色はわしも好きだしの。」

「♪-・・・♪-♪-・・・」

赤「♪~・・・♪~♪~・・・」

170: 2011/09/18(日) 22:12:04.72 ID:iuDXAJ+q0

赤「Zzz・・・」

黒「寝てしまったか。のう、こいつは変わり者じゃ。そう思わんか?」

男「良く分からない・・・」

黒「まあそうか。人間はわしらのことなぞ良く知らんだろうしの。」

男「・・・・・」

黒「何にでも興味を持つし、何でも真似したがる、そのうちわしが教えられる立場になりそうじゃ。」

173: 2011/09/18(日) 22:17:18.36 ID:iuDXAJ+q0

黒「着いたぞ。ここがわしの住処だ。おおい!今戻ったぞ!」

娘「おかえりなさいませ。あら?」

黒「堅っ苦しいのう。もう少し気を抜かんかえ。まあいい、客じゃ。」

赤「わしじゃ、遊びにきたぞ!それと・・・」

男「よかった。無事だったんだな。」

娘「兄さん?」

177: 2011/09/18(日) 22:22:08.42 ID:iuDXAJ+q0

黒「変わりはないか?」

娘「はい。」

赤「月の物が来たそうじゃな。見せてみい。」

男「え?」

赤「良いではないか!良いではないか!」

娘「やめて!やめてください!」

赤「ならば交換条件だ。わしのも見せるから見せあいこじゃ・・・っと、お前は見えんのだの。」

黒「やめんか。積もる話もあろうし、まずは話をさせてやらんか。」

赤「おお、そうじゃの。」

180: 2011/09/18(日) 22:25:28.58 ID:iuDXAJ+q0

男「怖かったか?もう大丈夫だからな。」

娘「初めは色々と驚きましたが、今は平気です。それよりこんなことになってしまって・・・」

男「こんなこと?」

娘「いえ、その・・・人買いの人は食べられてしまって。でも私の代金は先に受け取っていますよね?」

男「あ、ああ・・・」

娘「祝言は無事に済みましたか?兄さんのためとは言え、こんなことでしか役に立てず・・・」

男「もう、いいんだ。」

娘「奥さんは優しい方ですか?おじさまやおばさまは元気にしていますか?」

男「・・・・・」

娘「兄さん?」

男「ああ、うん・・・みんな変わりないよ。みんなお前に感謝している。」

赤「なんと!」

182: 2011/09/18(日) 22:30:30.48 ID:iuDXAJ+q0

黒「おまえはちとわしとこっちに来い。」

赤「なんでじゃ?」

黒「ええから来るんじゃ。」

娘「遠かったでしょう。疲れてはいませんか?」

男「確かに疲れはあるが、お前に会うためだ。なんのことはない。」

娘「いけません、新しく一家の主になったのですから、自分の家を大事にしてください。」

男「そ、そうだったな。すまん。」

娘「でも、嬉しいです。本当に・・・」

黒「おーい、ちとこっち来て荷物を運ぶのを手伝ってくれいや。」

男「あ、はい。」

184: 2011/09/18(日) 22:36:16.09 ID:iuDXAJ+q0

男「なにを運べば・・・?」

黒「お前の力なぞアテにしてはおらん。ちと耳を貸せ。」

赤「なんで本当のことを言わんのじゃ?」

男「・・・言えるわけがない。あいつは売られても俺達の事を案じてくれていた。」

黒「そのようじゃの。」

男「俺は・・・俺は、それを全部壊して逃げて来たんだ。」

黒「わしらは嘘が下手じゃ。お前のことは『良く知らん』で通すから、自分で話を会わせるのだ。それで良いな?」

男「そうしてくれると、助かる・・・」

黒「お前もじゃぞ。」

赤「わしもか!」

189: 2011/09/18(日) 22:42:19.78 ID:iuDXAJ+q0

男「塩を持ってきたぞ。岩塩というらしい。すり潰して使うと良い。」

娘「兄さんは、どこで皆さんと知り合いになられたのですか?」

赤「良く知らん!」

男「薪を採りに山に入った時に・・・」

黒「会ったのがわしの兄弟で良かったの。他の者なら今頃食われとるぞ。」

赤「叔父貴でもか?」

黒「そうじゃろうの。まあ、これからはわしも人食いはやめることにするがの。」

娘「もうあの音は聞きたくないです・・・」

191: 2011/09/18(日) 22:48:35.38 ID:iuDXAJ+q0

娘「また・・・以前のように笛を吹いてはくれませんか?」

男「ああ、構わないよ。」

赤「おお!お前も笛好きか!わしもだ!」

「♪-・・・♪-♪-・・・」

娘「♪~・・・♪~♪~・・・」

赤「♪~・・・♪~♪~・・・」

194: 2011/09/18(日) 22:54:22.00 ID:iuDXAJ+q0

黒「Zzz・・・」

赤「ん?髪を梳いておるのかや?おお!そうじゃ。見よ!わしも作ったぞ!」

娘「・・・・はい?」

赤「・・・つまらん。お前はつまらんぞ。なして見えんのじゃ?」

娘「そう言われましても・・・」

赤「ホレ、おっ父にならってわしも櫛を作ったのじゃ。まあ、上手く使えんのだがの。」

娘「少しお借りします。それからもう少しこちらに・・・」

赤「おお!梳いてくれるのかや?」

娘「引っかかったり、痛かったら言ってください。」

198: 2011/09/18(日) 23:03:17.14 ID:iuDXAJ+q0

娘「奇麗な髪・・・なのでしょうね。指通りがいいのでわかります。」

赤「わしの髪はおっ母に似たのだそうじゃ。おっ父も叔父貴もモジャモジャだしの。」

娘「はい、おしまいです。」

赤「次はわしがやる!お前の髪を梳いてみたいぞ!」

娘「力任せにしてはダメですよ?」

200: 2011/09/18(日) 23:08:18.53 ID:iuDXAJ+q0

黒「朝ぞ。起きれ。」

赤「ふわ!?」

男「・・・・む。」

黒「どうする?今日も一晩泊っていくか?わしは構わんが。」

男「・・・・いや、帰ろう。」

赤「つまらんのう・・・じゃあわしも帰るしかあるまい。」

黒「そうか。まあ飯くらいは食っていけ。」

202: 2011/09/18(日) 23:12:37.95 ID:iuDXAJ+q0

娘「どうぞ、有り物ですが。あ、兄さんはこちらを。」

男「ん?」

赤「なんじゃ?贔屓か?ずるいぞな。」

娘「いえ、こっちは塩が入れてあります。」

赤「あれか。ならわしは大丈夫じゃ。少し分けい。」

黒「意地汚い事を言うでない。あ!こら!」

赤「おお!これはこれでなかなか!」

205: 2011/09/18(日) 23:18:52.54 ID:iuDXAJ+q0

赤「のう、叔父貴。わしの目を一つ、こいつにくれてやることはできんかの?」

黒「お前の頭には一体何が入っておるのかのう・・・」

赤「わしはおかしなことを言うたのか?」

黒「馬鹿にしておるのではないぞ。わしにはそんなこと思い付かんかったでな。」

赤「目は二つついとるが、ホレ!片方だけでも物は見えるぞ。」

黒「まあ、無理じゃ。」

赤「そうか。」

211: 2011/09/18(日) 23:25:02.63 ID:iuDXAJ+q0

黒「どれ、送って行ってやるかの。」

男「その・・・送らなくてもいいから、妹の傍にいてやってもらえないだろうか・・・」

黒「それは構わんが。道はわかるのか?」

男「・・・たぶん。」

赤「道ならわしが覚えとるぞ。」

黒「ほうか、んなら気をつけての。」

212: 2011/09/18(日) 23:31:00.74 ID:iuDXAJ+q0

黒「そうじゃ、帰る前にひとつ教えておいてやろう。」

男「?」

黒「わしらは比べごとをするのが好きじゃ。」

男「比べごと?」

黒「力比べ、駆け比べ、丈比べと色々じゃ。」

赤「おっ父と叔父貴は酒の飲み比べをやっておったの。」

黒「もし、他の者に会う事があったら、命乞いをするよりも勝負を挑んで勝つほうがいい。」

男「それに負けたら・・・?」

黒「まあ食われて終わりじゃな。しかし、勝負を受けた以上は勝者が絶対じゃ。相手が人間でもな。」

217: 2011/09/18(日) 23:35:53.30 ID:iuDXAJ+q0

黒「行ってしもうたぞ。もう手を振っても見えとらんじゃろう。」

娘「兄さんは、私に何か隠し事をしていましたね?」

黒「ほう。わかるのか。知りたいか?」

娘「はい。・・・ですが、兄さんが言いたくなかったのであれば聞きません。」

黒「まだまだわしにはお前らの考えがわからんわ。」

218: 2011/09/18(日) 23:40:42.85 ID:iuDXAJ+q0

赤「妹に会えてどうじゃ?嬉しかったか。」

男「ああ、うん。」

赤「それにしては浮かない顔をしておるの。」

男「お前の叔父貴は、妹を大事にしてくれるだろうか?」

赤「それはわからんの。食わんと言っておったし。役に立つ間は生かしておくのではないか?」

男「買われていくよりは、その方が幸せかもしれん・・・」

赤「しあわせ?なんじゃそれは。楽しいことか?」

男「幸せと言うのは・・・」

赤「どうした?教えられんか?」

男「嬉しい気持ちが続くことか?辛い事が少ないことか?・・・良く考えたら俺にもわからん。」

赤「なるほど!つまり、いいかげんなことだな!」

222: 2011/09/18(日) 23:49:25.23 ID:iuDXAJ+q0

赤「うむ、困ったぞ。わしは叔父貴のように遠くまで投げられん。」

男「いや、あれはもう勘弁してほしい。」

赤「よし。飛び越えるぞ。わしにおぶされ。」

男「大丈夫なのか?」

赤「お前は見ておらんかったであろ。来るときは叔父貴もわしも飛び越えたのじゃ。」

男「じゃあ、頼む。」

赤「しっかりつかまっておれよ!」

223: 2011/09/18(日) 23:55:06.01 ID:iuDXAJ+q0

赤「すまんの。お前の目方が増える事を考えておらなんだ。」

男「水が深くて助かったが・・・本当に死ぬかと思った。」

赤「おいマヌケ。火を炊け。濡れたものを乾かすぞ。」

男「お前もマヌケだ!このマヌケ!」

赤「なんと!」

233: 2011/09/19(月) 00:00:05.36 ID:rMQj8kBA0

赤「寒いぞ。もっと寄らんか。」

男「火にあたればいいだろう。俺だって寒いわ。」

赤「わからん奴じゃな。こうすればお互いに温かいであろ?」

男「いや・・・これはちょっと・・・」

赤「なんじゃ?わしが恐ろしいのか?噛みついたりせんからじっとしておれ。」

男「・・・意外と柔らかいんだな。」

赤「知らんのか?女は柔らかいものぞ!」

240: 2011/09/19(月) 00:05:28.68 ID:rMQj8kBA0

男「だいたい乾いたぞ。さっさと着てしまおう。」

赤「んん?お、そうか。ぽかぽかして寝ておったわ。」

男「おかげで背中がヨダレまみれだ。」

赤「今からよじ登るのは億劫じゃの。今夜はここで寝るとしよう。」

男「大丈夫なのか?こんなところで。」

赤「わしがおればの!仲間も地の利もなしに、自分より強いものを襲う獣はおらん。」

242: 2011/09/19(月) 00:11:38.45 ID:rMQj8kBA0

赤「おっ父!今戻ったぞ。」

青「戻ったか。どうじゃった?」

赤「いろいろと楽しかったぞ。今度案内するぞ。」

男「じゃあ、俺はここで・・・」

青「妹には会えたんか?確かめて来たか?」

赤「こいつはおかしいのだ。妹に本当のことを言わん。」

青「なんぞ思うところがあったのじゃろ。行方が知れただけでも果報というもんじゃ。」

244: 2011/09/19(月) 00:15:50.01 ID:rMQj8kBA0

赤「おっ父は幸せというものがわかるかや?」

青「難しい言葉を覚えて来たな。あのマヌケが言うとったのか?」

赤「そうじゃ、じゃが自分でもよくわからんのだと。」

青「まやかしじゃ。人にもよる。時にもよる。色々と意味を変えて皆を惑わすものだの。」

赤「やはりいいかげんなものなのじゃの。」

青「だがの、存在せんわけではない・・・ま、お前にゃわかるまいて。」

250: 2011/09/19(月) 00:21:17.86 ID:rMQj8kBA0
赤「おっ父!わしも血が出た!」――――
青「ほう。だが祝ってはやらんぞ。」――――

・・・・・・・・・・

赤「おっ父!マヌケのところへ行ってくるぞ!」――――
青「お前はあやつが気にいっとるようだの。」――――

・・・・・・・・・・

赤「・・・叔父貴が来とるぞ。はよ起きれ、だらしのない・・・」――――
青「嫌われたもんじゃの・・・」――――

・・・・・・・・・・

赤「うるさいわい。お父には関係の無い事じゃ。」――――
青「子が育つのは嬉しくも・・・痛し痒しというところだの・・・」――――

252: 2011/09/19(月) 00:26:16.76 ID:rMQj8kBA0

赤「お父、毛皮がきつい。新しいのを作ってくれ。」――――
青「この前仕立てたばかりじゃのに。もうか?」――――

・・・・・・・・・・

赤「お父、叔父貴のところへ行こう。」――――
青「お前もそろそろ一人前じゃ、一人で行っても構わんのだぞ?」――――

・・・・・・・・・・

赤「♪~・・・♪~♪~・・・」――――
「♪-・・・♪-♪-・・・」――――

256: 2011/09/19(月) 00:30:34.13 ID:rMQj8kBA0

男「ここのところ毎日来ているな。」

赤「お前と一緒におると楽しいからな。迷惑か?」

男「いいや。むしろ感謝しているくらいだ。」

赤「なんじゃ?いきなりあらたまって。」

男「ずっと一人でいたら、もしお前という話し相手がいなかったら、俺はとっくに気が狂っていたと思う。」

赤「そうか、ならばこれからも感謝するがいい。」

260: 2011/09/19(月) 00:35:47.65 ID:rMQj8kBA0

青「この時分には珍しい長雨じゃの。こりゃあところどころ崩れるかもしれん。」

赤「叔父貴のところは大丈夫かの?」

青「兄者よりも心配な者が他におるじゃろう?」

赤「な、何を!?わしはただ・・・」

青「この雨じゃ、さすがに川には近付かんとは思うが、様子を見てこい。」

赤「お父がそういうなら仕方ないの。行ってくる。」

青「やれやれ・・・誰に似たのやらのぅ・・・」

264: 2011/09/19(月) 00:42:17.43 ID:rMQj8kBA0

赤「洞におらんと思ったら・・・何をやっとるんじゃ!?こら!しっかりせい!」

男「ガハ!ゲホッ・・・ゲホッ!・・・」

赤「わしが見つけなんだら死んどったぞ!?こんな大水に水浴びでもしようと思ったんか?」

男「・・・足をとられて・・・ゲホッ!」

赤「もういい!肩を貸してやる、はよう中に入れ!」

男「フヒュー・・・フヒュー・・・」

赤「ちょっと破くぞ。濡れた服が絡んで脱がせられん。」

268: 2011/09/19(月) 00:47:01.70 ID:rMQj8kBA0

赤「水はそんなに飲んでおらんな?全部吐き出したか?」

男「・・・・ああ、吐いた。」

赤「薪はあるが焚きつけが湿っとる。すぐには着かんな・・・」

男「うぅ・・・・はぁ、はぁ・・・」

赤「いかん、体が冷え切っとる・・・ええい、あれこれ考えとる場合か!」

274: 2011/09/19(月) 00:54:28.97 ID:rMQj8kBA0

男「あれ・・・助かったのか・・・?」

赤「む、起きたか。良かった良かった。」

男「顔がちか・・・お前!何を!?」

赤「こら!見るでない。目はずっと閉じておけ!」

男「すまん!」

赤「息苦しくはないか?重ければ少し身をずらすぞ。」

男「大丈夫だ・・・その・・・すまん。」

赤「まず礼を先に言わんか・・・まだ震えておるの。しばらくはこのままにしておれ。」

276: 2011/09/19(月) 01:00:37.48 ID:rMQj8kBA0

赤「なぜ濁流にもまれておった?」

男「笛を落としてしまって、拾おうとしたら足をとられて落ちてしまった。」

赤「マヌケが!笛どころか命まで落とすところだったのだぞ?」

男「吹いてやれなくなると、お前が悲しむと思った。本当にすまなかった。」

赤「わしのせいで死にかけたと?ふ、ふざけるでないわ・・・」

男「軽率だった・・・・・む?」

赤「泣いてなぞおらんからな!ゴミが入っただけじゃ!」

280: 2011/09/19(月) 01:05:48.36 ID:rMQj8kBA0

男「こんなザマで言う事じゃないかもしれんが、俺と一緒になってはくれないか?」

赤「一緒じゃと?」

男「所帯をもってはくれないか?」

赤「自分が何を言うておるのかわかっとるのか?」

男「やっぱり人間は人間と一緒になるべきと思うか?だが、俺はお前がいい。」

赤「他に人間がおらんから、わしで妥協するのではあるまいな?」

男「そう思うのか?」

赤「思っとらん。」

283: 2011/09/19(月) 01:12:26.48 ID:rMQj8kBA0

赤「雨が上がったら、一緒にお父の所へ行こう。」

男「許してくれるだろうか?」

赤「お父が恐ろしいか。」

男「親父殿は・・・怖いな。頼み事が事なだけに。」

赤「前に叔父貴が言うたことを覚えておるか?」

男「比べごとか・・・」

285: 2011/09/19(月) 01:19:55.45 ID:rMQj8kBA0

赤「お父、戻ったぞ。」

青「遅かったの。」

赤「死にかけておったから介抱しておった。」

男「この度は迷惑を・・・」

青「よせよせ、こいつが勝手にやったことじゃろうて。して、その神妙な顔は何事かの?」

男「俺はこいつと夫婦になりたいと思う。そこで親父殿に許しを頂きたい。」

青「わしが許すと思うてか?」

男「許しをもらえないのなら、親父殿に勝負を申し込む。」

青「比べごとを挑まれたとあっては受けぬわけにはいかんな。」

289: 2011/09/19(月) 01:23:12.07 ID:rMQj8kBA0

青「して、何を競うのじゃ?」

男「え?何をって?」

青「力比べに丈比べ、何でも良いぞ。知恵比べ以外なら何でもな。」

男「俺が決めてもいいのか?」

青「挑んできたのはお前であろう?もっとも、腕力や脚力では勝負になるまいがな。」

男「しばらく考えさせてはもらえないか?」

青「わしが娘を掛けておることを忘れるなよ。取るに足らん勝負なら・・・殺すぞ。」

赤「お父・・・」

青「明日までじゃ。明日まで時間をやる。ふさわしい勝負を考えてこい。」

293: 2011/09/19(月) 01:26:53.91 ID:rMQj8kBA0

赤「お父・・・わしはただ・・・」

青「お前は口をはさむでないぞ。わしとあの男の勝負じゃからの。」

赤「お父は勝ったらどうするつもりじゃ?」

青「山から出て行ってもらうとしようかの。」

赤「それはあんまりじゃ!」

青「じゃが、わしとてそのくらいの代償は乞わねば釣り合いが取れんわ。」

赤「あやつと離れるのは嫌なのじゃ。」

青「お前はあやつが負けるとしか思えんのか・・・」

296: 2011/09/19(月) 01:31:28.76 ID:rMQj8kBA0

青「何比べをするか決まったかの?」

男「我慢比べを・・・受けてもらえるだろうか。」

青「ほほう。力では敵わんとみて我慢比べと来たか。面白そうじゃの。」

男「これならば、覚悟の程も証明できると思う。」

青「では、それをどうやって競う?」

男「生爪を剥がしていき、先に根を上げた方が負け。ではどうか?」

青「面白い。受けて立つぞ。」

302: 2011/09/19(月) 01:34:34.70 ID:rMQj8kBA0

青「だが、足を入れても20枚。どちらも耐え切ったとするならどうなる?」

男「引き分けにして、日を改めて別の勝負を挑みたい。」

青「良かろう。ただし、こいつの爪はお前が剥がすのだ。わしの代わりだ。よいな?」

赤「なんでわしが!?そ、そんなこと・・・」

青「わしの代わりと言うておる。わしがやれば指ごと引き抜いてしまうかもしらんぞ?」

赤「うう・・・引き受けた。」

青「そして、わしが勝ったら山から出て行ってもらう。以後、二度と山に入ってはならん。よいな?」

男「わかった。」

308: 2011/09/19(月) 01:38:31.05 ID:rMQj8kBA0

男「やってくれ。」

赤「いいんじゃな?剥がすぞ?・・・うーーーー・・・うぅ・・」

男「いあ!ぎっ!ふぅ・・・ふぅ・・・」

青「次はわしか・・・よう見とれよ。ぬぅ!・・・くっ!・・・どうじゃ。」

男「まだまだだ。さあ、次は人差し指を・・・」

赤「うむ・・・」

男「どうした?早くやってくれ。」

赤「いーーーーーっ・・・」

313: 2011/09/19(月) 01:41:24.55 ID:rMQj8kBA0

赤「い、嫌じゃ。もう無理じゃ。」

青「出来んというなら根を上げたと見なすぞ?」

男「待ってくれ!さあ早く!俺なら平気だ。」

赤「嫌なものは嫌じゃ!お前を傷つけてまで続けとうないわ!」

男「頼む!お前のために耐えているんだ!」

赤「出来んものは出来ん!」

青「勝負あり。じゃな。」

315: 2011/09/19(月) 01:44:22.12 ID:rMQj8kBA0

男「くっ・・・・!」

赤「いいんじゃ。お前が山を出るならわしも付いていく。そう決めた。」

男「だが、それでは・・・」

青「なにを言うておる?お前はわしの代わりじゃぞ。」

赤「?」

青「お前が根を上げたのだから、この勝負はわしの負けぞ?」

赤「なんと!」

324: 2011/09/19(月) 01:47:10.52 ID:rMQj8kBA0

赤「わしをたばかったのか!?」

青「何を言うか。お前こそ勝っても負けても損をせぬ算段をしておったではないか。」

赤「いや・・・あれは、咄嗟に思い付いただけで、お父と離れるのも嫌じゃぞ。」

青「ふん、それを聞けただけでも良しとするかの。」

赤「だが、こやつよりはお父と離れる方がマシじゃと思うただけじゃ。」

青「それは言わんほうが良かったの。」

332: 2011/09/19(月) 01:49:59.92 ID:rMQj8kBA0

青「とにかく、お前の覚悟はしかと見届けたつもりじゃ。」

男「じゃあ、許してもらえるのか?」

青「改めてこいつの事を頼むぞ・・・あー・・・その・・・」

赤「どうしたんじゃ?クソでも漏れそうか?」

青「む・・婿ど・・の?」

赤「なんじゃ、照れておったのか。」

青「うるさいわ。とにかく、今日はめでたい日じゃ。宴の用意じゃ。」

340: 2011/09/19(月) 01:54:35.92 ID:rMQj8kBA0

男「親父殿、正直なところ俺はまだまだ頼りなく見えると思う。」

青「まあ、そうだの。」

男「こいつに苦労もかけることもあると思う。」

青「仕方なかろうな。だが、度が過ぎるようならわしが殺す。」

赤「そんなことはわしがさせんがの。」

青「一気に立場が弱くなった気がするの・・・」

男「これからのことに全く不安が無いわけじゃないが、親父殿には・・・」

青「まどろっこしいのは好かんので言わせてもらうがの。お前らはたぶん大丈夫じゃ。」

342: 2011/09/19(月) 01:56:51.81 ID:rMQj8kBA0

青「根拠ならあるぞ。こいつの半分は人間じゃからの。」

赤「わしが?」

男「え?」

赤「どういう事じゃ?」

青「わしという前例があるのだ。今のお前らの関係はわしが既に通った道ぞ。」

赤「それはつまり・・・どういう事じゃ?」

青「お前の母親は人間だったという事じゃ。」

赤「なんと!」

346: 2011/09/19(月) 01:59:04.79 ID:rMQj8kBA0

赤「お母が人間?」

男「知らなかったのか?」

青「まあ無理もなかろ。まだ小さかったころに病に臥して死んでしもうたからの。」

男「だから人を食べるのをやめた・・・と?」

青「それもあるがの。こいつに人間の味を覚えさせとうなかった。それが一番の理由ぞ。」

赤「なぜ教えてくれんかったのじゃ!?」

青「聞かれんかったからの。」

348: 2011/09/19(月) 02:01:04.53 ID:rMQj8kBA0

青「動揺せん年頃になれば、聞かれずとも教えるつもりではおったがの。」

赤「わしのお母は人間か?などと、聞こうと思う機会なぞあるはずもなかろうが。」

青「だから今教えたではないか。」

赤「そうなのだが・・・納得いかん。」

青「とにかくめでたい席じゃ。飲め、それから食え。」

351: 2011/09/19(月) 02:02:34.47 ID:rMQj8kBA0

娘「♪~・・・♪~♪~・・・」

黒「どうした?今夜は子守唄ではないな。」

娘「ええ、笛の音が聞こえたような気がして。」

黒「合わせて歌っておるのか?わしには聞こえんが。」

娘「いいえ、本当に聞こえるわけではないのです。」

黒「お前は時々おかしなことを言うの。」

娘「それより、名前はまだ決まりませんか?」

361: 2011/09/19(月) 02:04:53.70 ID:rMQj8kBA0

赤「お父、明日は叔父貴のところに報告に行こうと思う。」

青「そうじゃの。それが良かろう。」

赤「義妹?いや叔母になるのか?とにかく先を越されっぱなしじゃからの。」

青「また妙なことを考えとるな。比べ好きはわしの血かの。」

赤「わしらは数で対抗しようと思うのじゃ。」

青「何の事を言うておる?」

赤「子供じゃよ。手始めに10人ほどこさえるか?」

男「なんと!」


――――――――――――――――――――おわり

364: 2011/09/19(月) 02:06:49.55 ID:AFHVBuhe0
乙でした おもしろかったよ

365: 2011/09/19(月) 02:06:56.47 ID:fkVBNP2P0
黒さん老いてもお盛んじゃのぅ

366: 2011/09/19(月) 02:07:11.26 ID:dOe00FE20
乙!

引用元: 「おっ父!人間拾った」・・・「捨ててこい。」