1: 2012/10/06(土) 20:36:30.52 ID:75Qo5fgX0
森を出て、ハイラル中を駆け回って、戦ってきた。
たくさんの人々の期待と希望を背負って、剣を振るってきた。


でも、デクの樹サマ、サリア、ゼルダ……みんな。

そして、僕をここまで導いてくれたナビィ。





――――ごめん、僕、負けちゃったよ。

6: 2012/10/06(土) 20:39:00.70 ID:75Qo5fgX0
僕は、森でコキリ族として育った。永遠に大人になることのない種族。

本当はハイリア人なのに、コキリ族として生きることになった時点で、全ては壊れ始めていたのかもしれない。


コキリのみんなには妖精がいたけれど、僕のところにだけは来なかった。
少し寂しかったし、そのことで蔑まれたりすることもあった。
それでも仲良くしてくれる友達がいないわけではなかったし、年相応にやんちゃして遊んだものだった。

9: 2012/10/06(土) 20:44:04.27 ID:75Qo5fgX0
そこはかとなく感じていた違和感。
相棒がいない僕は、他のみんなとは何かが違うのではないだろうか。

サリアは僕以上にそのことを感じ取っていた。
それでも、僕等は友達だと言ってくれた。

やがて妖精のナビィが現れた。これで僕も一人前のコキリ族だと思いたかったけれど、
心には、何か引っかかる物が残っていた。

11: 2012/10/06(土) 20:49:10.29 ID:75Qo5fgX0
デクの樹サマが枯れてしまった時は悲しかった。
あまりにも突然の出来事だった。

コキリのみんなも、戸惑いを隠せない様子だった。
ミドに、デクの樹サマが枯れてしまったことを僕の所為にされた事には腹が立ったけれど、彼も不安だったのだろう。


森を守ってくれていた大切な存在が、いなくなってしまったのだから。

15: 2012/10/06(土) 20:54:09.40 ID:75Qo5fgX0
どこまでも続く大空、両手を広げても測れない程広々とした草原。
地平線を見たのは生まれて初めてだった。

もしかしたら赤ん坊の時には見ていたのかもしれないけれど、
物心付いた時には既に森の中だったから。


あの頃は、ただ純粋に……本当に純粋に、それからの冒険に胸を高鳴らせていた。
森という檻を抜け出した気分だった。
怪鳥ケポラ・ゲボラと、相棒のナビィが僕を導いてくれた。

17: 2012/10/06(土) 20:59:14.33 ID:75Qo5fgX0
大人という存在を見たのも、城下町に着いた時が初めてだった。
外の世界は、見たことのないモノばかりだった。
緑の衣を纏わない人々、石造りの建物、和気藹々とした市場。

「Hey! このツタ、登れそうだよ!」

城に忍び込むのも、とてもドキドキした。
緊張で心臓の音が耳の裏まで響くほど激しく鳴っていたのに、楽しかった。

中庭らしき場所まで忍び込むと、一人の女の子が窓から城の中を覗いていた。

「リンク……不思議……なんだか懐かしい響き」

どのような巡り合わせだったのだろうか。
ゼルダ姫とは、ずっと昔、どこかで会ったことがあるような気がした。

19: 2012/10/06(土) 21:05:09.99 ID:75Qo5fgX0
平原や城下町も、僕にとっては非常に見慣れない光景ではあったが、
デスマウンテンはさらに異様だった。
森育ちのため、それまで見ない日は無かった植物が、ほとんど生えていなかったのだから。

生えているのはバクダン花くらいだった。
最初に抜いてしまった時は、爆風に巻き込まれて死ぬかと思った。


ダルニアは、初対面では嫌な大人だと思ってしまったけど、
サリアの歌を好きになってくれたから、酷い人じゃないんだなと思った。

ゴロン族は飢餓に怯えていて、とても直視できる状態じゃなかった。

「僕が、きっとドドンゴを倒してみせます!」

火を吐いたり、爆発したりする魔物がたくさんいたり、
触れると動く石像があったりして怖かったけど、勇気を振り絞って戦った。

21: 2012/10/06(土) 21:10:05.06 ID:75Qo5fgX0
ゾーラ側の上流へ向かう時は、何度も何度も流されて大変だった。
溺死しそうになる度に、ナビィが僕を引っ張り上げてくれた。


キングゾーラは、もう少し素早く移動できなかったのだろうか。
あの調子では日常生活もままならないだろうと、僕は子供ながらに思っていた。

そのキングゾーラの娘のルト姫も丸い体系なのだろうかと予想していたけれど、
それは見事に外れた。母親に似たのだろうか。

ルトにもお母さんがいないらしい。
僕と同じだ。
いや、その当時、僕は自分に母親がいたことさえ知らなかった。そんな発想も無かった。

22: 2012/10/06(土) 21:13:57.02 ID:75Qo5fgX0
虫や動物に両親がいることは元々知っていたけれど、
お父さんとお母さんという概念を、コキリ育ちの僕はなかなか理解できなかった。
もしかしたら、今でもまだ完全には理解できていないのかもしれない。

ジャブジャブ様のお腹の中を探索するのは、正直かなり苦しかった。
生々しい臭気が嗅覚を襲ったし、電流を放つモンスターには苦労させられた。

横に跳んで電流を避けながら、器用に狙いを定めてブーメランを投げた。
あんなことがよくできたなと思う。
キングドドンゴの動きは単純で、それほど苦戦しなかったけれど、
バリネードに対しては真面目に生命の危機を感じたんだ。


そういえば、運動だけは昔から妙に得意だったっけ。

25: 2012/10/06(土) 21:21:38.63 ID:75Qo5fgX0
えんげーじりんぐとは一体何なのか、理解できないままゾーラのサファイアを受け取った。
恋愛という概念自体、幼い僕にはよくわからなかった。


ミドがやけに僕に意地悪をしていたのも、あいつからサリアへの恋愛感情と、
そこから生じる僕への嫉妬心が原因だったのだろうと、七年経ってから気づいた。

28: 2012/10/06(土) 21:24:49.07 ID:75Qo5fgX0
魔物の命を奪うことは精神的に苦しかったけれど、
だからと言って相手を倒さなければ自分が殺されてしまう。
自分の身と、仲間を守るために、しばらくの安堵を手にするために、殺した。

体も心も完全に子供だった頃は、まだ殺しに快感を覚えることはなかった。
むしろ、デクの樹サマが死んでから、
死ぬということがトラウマにも近いものになっていた。

魔物はみんな苦手だけれど、動物に近い姿の魔物とはなおさら戦いたくなかった。
返り血が飛ぶから。

31: 2012/10/06(土) 21:28:00.17 ID:75Qo5fgX0
精霊石を全て集め終え、ゼルダの元へ戻ろうとしたが、一歩遅かった。
ガノンドロフは既にハイラル王を殺していた。

インパに連れられて去っていく、ゼルダの悲壮な表情が忘れられない。

ガノンドロフの攻撃を受け、僕は弾き飛ばされた。

あの時僕が死んでいたら、ハイラルはどうなっていただろう。
さらに悲惨な運命を辿ったのか、それとも、結果は何も変わらなかったのだろうか。

32: 2012/10/06(土) 21:31:16.80 ID:75Qo5fgX0
時の歌を吹き、マスターソードを抜いた。
意識が飛んだという認識はなかったけれど、僕は七年間眠っていたらしい。

「リンク、すごい! 大人になってるよ!」

(マスターソードの力で、コキリ族でも無理矢理大人にされたのだろうか?)
(それとも……)


僕が眠ったまま大人になってしまったことがとてつもなく重い罪であったと気づいたのは、随分後のことだった。

精神的に成長しないまま、肉体的な力だけが強くなってしまった。

34: 2012/10/06(土) 21:35:50.86 ID:75Qo5fgX0
城下町に出て、唖然とした。戦慄を覚えた。
あの陽気な、人気のあった広場が、リーデッドの棲み処となっていた。

(まさか、城下町の人々の成れの果て……?)


違う、人間じゃない。
ただの、ガノンドロフの配下の魔物だと、自分に何度も言い聞かせて、斬った。

35: 2012/10/06(土) 21:40:03.45 ID:75Qo5fgX0
森へ向かう前に、馬を借りにロンロン牧場に行った。
そこは、ガノンドロフに反抗せず従っていて、
ハイラルの中にはそのことを批判する人もいるかもしれない。

けれど、僕は賢い選択だと思った。
無駄な被害を避け、生き残れる確率の高い道なのだから。
戦える力があるならともかく、そうじゃなければ仕方のないことだ。

だからと言ってそのままにしていくわけにもいかなかった。
マロンのためにも、エポナのためにも、牧場を解放した。

マロンは、もうすっかり大人になっていた。
僕とは違って、心も。

37: 2012/10/06(土) 21:45:09.46 ID:75Qo5fgX0
(サリアを助けに行く前に、一度家に戻って荷物の整理をしよう)
(準備は整えておかないと、逆に助けられなくなるかもしれない)

ああ、自分の家はこれほどまでに小さかっただろうか。
天井は低く、ベッドも小さかった。

「ねえ、お兄さん、そこで何してるの?」

外から、女の子の声が聞こえた。

(魔物がいて危険だというのに、どうして外に出ているのだろう)

「そこ、リンクって子の家だよ。勝手に入らないで!」
「ああ、ご、ごめん……」
瞬間的に謝ってしまった。そこは、自分の家だったというのに。

いや、「大人の僕」の家ではない。
あくまで、「コキリ族で、ずっと子供のままのリンク」の家なんだ。

39: 2012/10/06(土) 21:51:18.03 ID:75Qo5fgX0
「危ないからはぐれんなって言ってるだろ!」
少し離れた所から、4人ほどコキリ族が駆けてきた。
手にはたくさんの木の実を持っていた。

(ああ、食料を採りに行っていたのか……)

その顔触れはどれも見慣れたものであったけれど、
誰一人、僕が誰であるかは気付いた者はいなかった。

5人を家まで送り届けている間に、森の様子を聞いた。
サリアは森の神殿へ向かい、ミドは彼女を追いかけて迷いの森へ入ったらしい。

40: 2012/10/06(土) 21:54:45.16 ID:75Qo5fgX0
ミドは森の途中で、誰も通すまいとしていた。
サリアを助けに行くと言っても、なかなか退こうとしない。

それは、無用な犠牲者を出さないための、サリアとの約束だった。
けれど、その時の僕は、コキリのみんなに自分が誰であるか気付いてもらえない事に激しいショックを受けていた。
ミドの言葉によって、その昔、何度もしつこく虐められていた時の記憶が蘇ってしまった。


サリアがいつも吹いていた歌を吹いてやっと通してくれたが、
荒みかかった精神が元に戻ることは無かった。

41: 2012/10/06(土) 21:57:02.95 ID:75Qo5fgX0
サリアを賢者として目覚めさせても、
僕を待ち受けていたのは絶望だけだった。

コキリ族から浮いていた僕をずっと支えてくれていた彼女とは、
もう二度と同じ世界では生きられない。

温もりが、消えてしまった。

45: 2012/10/06(土) 22:04:36.76 ID:75Qo5fgX0
デクの樹サマの子供から、真実を聞かされた。僕は、やはりコキリ族ではなかった。
ハイリア人だった。

僕のお父さんとお母さんは、一体どんな人だったんだろう。
僕は、元々どこで生まれたのだろう。

過去を知った後、自分の出生を調べようとしたけれど、何もわからなかった。


この世界のどこかに、僕と血の繋がった人はいるのだろうか。

46: 2012/10/06(土) 22:09:34.63 ID:75Qo5fgX0
デクの樹サマの子供との会話を終えて、
コキリのみんなとは何一つ言葉を交わさないまま森を出た。
誰とも話したくはなかった。

一人、女の子が駆け寄って来ていた。
サリアは誰とでも仲良くしていたけれど、その中でも最も仲が良かった女の子だった。
だから、よく僕とも話をしていた。

子供の頃の僕が最も好んで食べていた木の実を両腕に抱えていた気もする。
どんなつもりでその木の実を僕に渡そうとしていたのか、
今となってはもう確認のしようがない。

ただ適当に選んだのか、大人になった僕に、子供の頃の僕の面影が重なったのか。



結局、僕は振り返りもしなかった。

48: 2012/10/06(土) 22:15:33.94 ID:75Qo5fgX0
「ねえ、リンク……本当のこと言わなくて良いの?」
「…………どうでもいい」

炎の神殿での戦いは、とても厳しかった。
ゴロンの服を着ていても、熱は肌をピリピリと焼いた。
少しでも油断すれば、灼熱の炎に焼き尽くされてしまう。

その険しさは、肉体を炙ると同時に精神も焦がした。

荒んだ精神が、さらに荒れ果てていく。

50: 2012/10/06(土) 22:20:05.82 ID:75Qo5fgX0
「なあ、キョーダイ。やけにつらそうな顔してるじゃないかゴロ」
「もう、さ。帰る場所が無いんだよ」

悲観的にならずにはいられなかった。
自分の境遇に酔っていたのかもしれない。

(ハイラルを救えば良いんだろ、救えば)

もはや、自暴自棄になっていた。

次第に、僕は魔物を虐殺するようになった。

51: 2012/10/06(土) 22:25:21.28 ID:75Qo5fgX0
「ねえ、リンク……」
「何だよ、気が散るだろ」
生々しい音を立て、魔物を斬り捨てていく。
「そんな殺し方、良くないよ……」
「何でだよ? 殺せばその分襲われる人も減るし、平和になるだろ?」
「そうじゃなくて……」

僕は、自分の力に心酔していた。
子供の時の様な、非力な身体ではなかったから。
力を使うのが、楽しかった。

「もっと急所を狙って、できるだけ苦しまずに倒す、とか……」
「どうせこいつらは人間を襲って楽しんでるんだろ? 魔物なんて、殺して当然じゃないか」
「でも、でも……」


僕は、ナビィの言葉にも、まともに耳を傾けようとはしなかった。

54: 2012/10/06(土) 22:29:54.20 ID:75Qo5fgX0
「今のリンクは、魔物を残酷に殺すことを、楽しんでるよ……?」
「っるせーな! 邪魔をするな!」
子供の時の気持ちなんて、忘れていた。
もしあの時に思い出せていたら、結果は変わっただろうか。

ダークリンクは、嫌な敵だった。
まるで、僕の汚い部分をそのまま写し取ったような奴だった。
「そんな……そんな風に笑ってんじゃねーよ! 俺の顔で!」

最初こそ苦戦したけれど、ヤケになって使ったディンの炎が偶然にもあいつの弱点だったようで、
酷く険しい戦いになったというわけではなかった。
でも、あいつは最期まで嫌な笑いを絶やさなかった。

いつの間にか、僕もあいつと同じ笑い方をするようになった。

55: 2012/10/06(土) 22:35:00.37 ID:75Qo5fgX0
「くくっははは!」
敵を殺していると、笑いが止まらなくなった。

魔物の屍が、僕が生きた証だった。

「俺の邪魔をする奴は全員殺してやる! っははははは!」

ナビィも、僕を恐れるようになった。
いつ僕を見捨ててもおかしくなかっただろうに、
最期まで傍にいてくれた事には感謝せざるを得ない。

57: 2012/10/06(土) 22:41:49.85 ID:75Qo5fgX0
「そなたは、変わってしまったゾラな」
ルトは、憐れむような目で僕を見ていた。

その時の僕には、ルトの気持ちが理解できなかった。

(助けに来てやったのに、何でそんな顔するんだよ……)

例え身体が大人になっても、精神は子供のままだった。
それどころか、無理に大人びようとして、歪んだ成長をしてしまっていた。

58: 2012/10/06(土) 22:44:40.97 ID:75Qo5fgX0
その後は、恐怖心を感じなくなった。
不気味な魔物が徘徊する井戸の底や、
一歩間違えば奈落の底に堕ち、罠で身体を切り刻まれる闇の神殿さえ、怖くなかった。

生命の危機の、ギリギリの線で生き抜いている感覚が心地良い。

そんな状態の僕を、シークやインパは嗜めようとしたが、
彼等も諦めた目で僕を見るようになった

59: 2012/10/06(土) 22:49:35.97 ID:75Qo5fgX0
「リンク……お願い、もうやめて……元に戻って……」

妖精でも泣くことはあるのだろうか、ナビィは時折泣きそうな声で僕にそう訴えた。
大抵、僕は無視するか冷たく返事をするだけだった。

僕は、自分が間違っているとは認めたくなかった。
最期になって、ようやく認めることができた
もう、手遅れだけれど。

身体が、動かない。

でも、まだ記憶は流れていく。

61: 2012/10/06(土) 22:52:21.71 ID:75Qo5fgX0
子供に戻った時は、少しだけ穢れが抜けたような気がした。
肉体年齢と精神年齢が一致しているのだから、子供の身体の方が心地良いのは当然だ。
大人の身体よりも腕力も体力もないから、少しもどかしかったけれど。

「リンク、血だらけだよ。少し……休もうよ……」

痛覚は麻痺していた。
ピリピリとした感覚はあっても、動けないほどの痛みは感じなかった。

「まだ……まだ、戦える」

ナビィが心配しているにも関わらず、剣を振るった。

(血が流れているのは、まだ俺が生きている証拠だ……!)

(こんなところで、止まってたまるかよ……!)

62: 2012/10/06(土) 22:57:09.67 ID:75Qo5fgX0
「なあ、ナビィ」
「どうしたの?」
「俺さぁ、ガノンドロフを倒したら、何処に行けば良いのかな?」

森に帰られないのなら、僕は一体何処に向かえば良いのか。

「……今は、ガノンドロフを倒すことだけを考えようよ」
帰る場所なんて、後から探せるんだから。
ナビィはそう言った。

「ハイラルの復興を手伝ったりで、忙しくなるだろうし、ね?」

国の復興を手伝うか、当てもなくさ迷うか。
きっと選択肢はその二つなのだろうと、漠然と考えていた。

「じゃあ、復興が終わったらどうすれば良いんだよ? その頃には、新しい居場所は見つかっているのかな」

自分が戦いに負けるなんてことは、何故だか考えないようにしていた。

73: 2012/10/06(土) 23:07:44.96 ID:75Qo5fgX0
ナボールには共感を覚えた。
一人でも強く生きている彼女の姿は、とても素晴らしいものとして映った。
僕にはナビィはいたけれど、実戦力となる仲間は一人もいなくて、
ずっと一人で戦い続けていたからだろうか。

「イイコト」って、一体何だったのだろう。
大人になった僕には、なんとなく予想はつくけれど、
ちゃんとした知識は無いから判断しきれない。


ああ、森の常識と外の世界の常識は全然違うから、その事でも苦労したな。
それでも、僕が生きるべき世界は、森の中ではなく外なのだと、旅をしている内に強く思った。

74: 2012/10/06(土) 23:08:36.67 ID:75Qo5fgX0
七年間眠らずに大人になっていたら、僕は壊れずに済んだのだろうか。
ちゃんと、みんなを救えることができていたのだろうか。

憔悴した精神状態のまま、ガノン城に乗り込んだ。

サリアが声をかけてくれたけれど、僕の心は動かなくなっていた。

温もりが欲しいと思いながら、自分から拒絶するようになっていたんだ。
コキリの森を出る時、ちゃんとあの子と会話をしておけば良かったとずっと思い続けていたのに、
荒れ果てた心は、心の中のそのような部分を切り捨てようとばかりしていた。

76: 2012/10/06(土) 23:10:04.58 ID:75Qo5fgX0
そして、僕は負けた。


ほぼ互角に戦っていたけれど、あと一歩届かなかった。
身体を穿たれた痛みを感じる。

(ああ、痛いって、こんな感覚だったっけ)

(こんなに、つらくて苦しいものだったっけ……)

地に倒れた。

視界が歪んでいく。

77: 2012/10/06(土) 23:11:02.45 ID:75Qo5fgX0
ゼルダの叫ぶ声が、

ナビィの、僕を呼ぶ声が、

ガノンの、嗤う声が、聞こえる。


でも、どうしてこんなに音が遠くで鳴っているのだろう。

78: 2012/10/06(土) 23:11:48.17 ID:75Qo5fgX0
ああ、光だ。
霞んだ目でも、こんなに眩い光は届くんだ。

今までの記憶が、映像のように次々と流れ、最期に光を見た。

やがて、意識は途切れた。


彼の人生には、一体どのような意味があったのだろうか。
彼が最期に見た光は、賢者達が魔王を封印しようと放った光だったが、
彼がその後のハイラルを知ることは無い。

80: 2012/10/06(土) 23:13:04.47 ID:75Qo5fgX0
助けて……

助けてください……

私は、お城の地下牢に捕らえられています。

私の名前はゼルダ。


6人の生贄が捧げられ、私が最後の一人……。



(この、声は…………)







97: 2012/10/06(土) 23:39:11.17 ID:r8Yz3TGr0

ガノンに勝った世界線の話しも読みたいな

98: 2012/10/06(土) 23:41:26.59 ID:iK44Ibux0
ハッピーエンドのほうが好きです


時岡はいろいろと妄想の余地があるよな

世界を救うためといって一方的に人生を奪われたリンク(コキリ族としての人生や封印された7年間とか)
ハイリア人の王家がはたして正義なのか(井戸とか闇の神殿を見てるといろいろありそうだし)
タイムスリップとかパラレルワールドの要素もあるからそういうのもネタにできそうだし

101: 2012/10/06(土) 23:44:50.37 ID:mumZx40D0

引用元: 時オカリンク「敗北した」