1:2019/12/22(日) 21:06:10 ID:xZlJxlZo
――食。即ち生きること。


古来、”食”と"生"とは切っても切り離すことのできない関係にありました。
しかし、現代ではその関係性が薄れつつあります。
何故ならば、現代は”飽食”の時代とも呼ばれ、食糧難とは程遠い世界が(少なくとも日本国では)形成されています。(飽食に関する現代日本の問題点に関しては多々ありますが、ここでは触れない事とします。)

”飽食”になるとどうでしょうか。食に飽きた人々は、そこに新鮮さと楽しみを見出す事にしました。
らぁめんはその代表とも言うべき存在。高塩分、高カ口リーを欲しいままにするだけでは飽き足らず。栄養素の偏りも著しい。
元来の観点で言えば、健康的な"生"を遠ざけるらぁめんは”食”とは呼ぶべきではありません。

しかし、逆説的にらぁめんは稀有な概念へと昇華しました。
”食”の喜びを追求し、追究し続ける。”食”を究めたが故に、”食”とかけ離れる概念へと変貌を遂げた。純粋なる喜び・幸福・快楽。その凝集した概念へと、です。
なればこそ、そのスープは命の源となり、モヤシが芽吹き、麺は照り輝くのです。


――らぁめん。即ち生きる意味を探求すること。

記 四条貴音
2:2019/12/22(日) 21:07:15 ID:xZlJxlZo
響「なんてエッセイ書いてんだ、貴音ェ……」

P「意外と好評なんだよな。反響も大きいみたいだぞ」

響「脂カスみたいな文章なんだけど……何がウケてるの?」

貴音「脂も増せば、山となるのですよ。響」モワァ

響「くっっさ!!! ニンニク臭!!!」ブンブン

響「今から営業行くんじゃないのか!? 何考えてんだよ貴音ェ!」

貴音「寧ろそれが先方の要望でして……誠、困ったものです」ツヤツヤ ウットリ

響「……」ヒクヒク

P「ああ、営業先のクライアントっつうか、案件が二郎系ラーメンイベントなんだよ」

響「……最近アイドル業からどんどん遠のいてってるけど、いいの?」

P「多様性多様性っ。ダイバーシティだぞ~、響」
3:2019/12/22(日) 21:07:47 ID:xZlJxlZo
響「……別にいいけど、我が家はニンニク多様性は認めないぞ。ニンニク臭い状態でウチの敷居は跨がせないから」

貴音「そんなっ。私の夕飯はどうなるのですっ!?」モワァ

響「らぁめんでも食べなよ……」

貴音「流石の私でも、三食らぁめんな訳ありません。らぁめん以外の食にも触れることで、より一層らぁめんが際立つのです」

響「自分の作る料理はラーメンの踏み台か?」ギロリ

P「しかもこの前、『らぁめんのとりぷるへっだぁとやらを完遂いたしました(恍惚)』って嬉々として報告してこなかったか?」

貴音「……」知らんぷり

響「……」
4:2019/12/22(日) 21:09:39 ID:xZlJxlZo
響「うがー!」プンプン

響「自分がニンニク嫌いなの知ってるだろ! 別に他人の好きな物は否定しないけど、配慮はして欲しいぞ」

貴音「なんと。それは初耳です」アゼン

貴音「――確かに、らぁめんを食べた後に家に帰ると、やけに嫌な顔をするなとは感じていたのですが」

響「さらっと自分ちを我が家扱いするな」
5:2019/12/22(日) 21:10:41 ID:xZlJxlZo
P「何でニンニク嫌いなんだ?」

響「だって臭いじゃん」

P「食べた後は確かに殺傷能力高まるけど、食う前はいい匂いだろ?」

響「そうだけど……嫌なものは嫌なの!」

響「ただでさえネットでは自分の事臭い臭い言われてるのに……ん?」

貴音「……」スッ

響「な、なに? そんなに近づいて怖いんだけど」ピクッ

貴音「」ガッ

響「んっ」バタバタ

貴音「ほぁぁぁぁぁ」モワァァァァ

響「あばばばばば」白目

響「」バタン
6:2019/12/22(日) 21:11:22 ID:xZlJxlZo
P「……何してんだ、貴音」

貴音「……本当に殺傷能力があるかどうか試したくて……」

P「あぁ……」
7:2019/12/22(日) 21:12:21 ID:xZlJxlZo
――昼、某所ラーメンイベント――

響「目が覚めたら地獄に居た」呆然

P「違うな。ここはニンニクの楽園だぞ?」

響「……」ムスッ


司会「――本日のゲストはなんと、話題筆頭! 知らない人はいないベストセラー『らぁめん道』の著者、四条貴音さんにお越しいただいております!」

ワーワー、ヒューヒュー、ザワザワ

響「自分その本知らないんだけど」

P「冬なのに真夏のような暑さだなここは」ヤレヤレ パタパタ

響「無視すんな」
8:2019/12/22(日) 21:12:54 ID:xZlJxlZo
貴音「ごきげんよう。四条貴音と申します。本日は皆さまとらぁめんの喜びを共有するべく参りました」ヨロシク

司会「はい、貴音さんありがとうございます。説明は不要かと存じますが、彼女は称号『ニンニク女王』のディフェンディングチャンピオン」

響「攻める奴がいないのに防衛もくそもねーだろ」

司会「彼女の前に敵はおらず、『永世ニンニク女王』が目前に迫っていることで有名です」

響「物理的に敵がいないだけだと思う」

P「おい。野次を飛ばすな、野次を。飛ばすのは汁だけにしとけ」

響「」ペッペッ

P「うわっやめっ」
9:2019/12/22(日) 21:13:37 ID:xZlJxlZo
貴音「司会殿、私の経歴など不要です。らぁめんの前では皆等しい存在。らぁめんは、経歴、性別、人種、思想をはじめとする全てのことを些末にしてしまう。なればこそ、らぁめんを通じて私たちは溶け合い、理解し合える。そう、ド乳化した濃厚スープのように。そして、湧き立つ湯気とにんにくの香りのように、高次元の存在へと昇り詰めるのです」

聴衆「」ウルウル、ジーン

響「何言ってんだアイツ」

P「……!」ハッ

P「その理論でいくと、ラーメンは間接乱交パーティだった……!?」ウォォ

響「神よ、このイかれた子羊を救い給へ」アーメン
10:2019/12/22(日) 21:14:17 ID:xZlJxlZo
司会「貴音様……!」ポロポロ

司会「すびばぜん……っ、感動で涙が止まらくて!」ズズズ

貴音「良いのです」スッ

司会「えっ?」

貴音「涙は流すべきなのです。何故なら、涙は塩辛い」

司会「……?」

貴音「塩分を身体から出せば、次のらぁめんが一層身に染みる」

貴音「そうそれは、塩分の先行投資」

響「??????」
11:2019/12/22(日) 21:14:49 ID:xZlJxlZo
貴音「すてぃーぶ・じょぶすもこう言っています。塩分と株価は、高ければ高いほど良いと。らぁめんは経済なのです」

響「微塵も言ってねぇ」

貴音「豚はトロトロが良い。しかし、損切はトロくてはいけません」

貴音「(肉)汁よく剛を制す。仕事その他もろもろのストレス源により受ける暴力も、トロトロの豚が私たちを救ってくれます」

貴音「らぁめんは私たちの聖書なのです」

響「……」スマホポチポチ

P「つっこみサボるなよ~」
13:2019/12/22(日) 21:16:50 ID:xZlJxlZo
司会「それではこの後はメインイベント、我らが神、四条貴音様による耐久次郎レースのほうへと参りたいと思います」

「「「ワアアアアアアァァァァァァ」」」

響「……自分、控室に戻っとくぞ」

P「おう」
12:2019/12/22(日) 21:16:05 ID:xZlJxlZo
――数時間後、控え室――

響「zzZ」

貴音「うっぷ……」

貴音「流石に食べ過ぎました……」パンパン

響「……うがっ」

響「あっ、お帰り」

貴音「あれ……響が2人います――」

貴音「」バタン

響「貴音!?」ダッ

響「しっかりしろ貴音!!」
14:2019/12/22(日) 21:20:09 ID:xZlJxlZo


――数時間後、控え室――

響「zzZ」

貴音「うっぷ……」

貴音「流石に食べ過ぎました……」パンパン

響「……うがっ」

響「あっ、お帰り」

貴音「あれ……響が2人います――」

貴音「」バタン

響「貴音!?」ダッ

響「しっかりしろ貴音!!」
15:2019/12/22(日) 21:21:00 ID:xZlJxlZo
貴音(朦朧とする視界は、らぁめんの湯気に包まれているような錯覚を与えてくれました)

貴音「あぁ……もうダメです……」

貴音「棺には、にんにくをお供えしてくださいね……」

響「ステーキ感覚で火葬すんな」

ピーポーピーポーピーポー
16:2019/12/22(日) 21:21:43 ID:xZlJxlZo
――夕方、病院――

響「……」

P「……大丈夫かな」


医師「」ガチャ

響「先生!」ダッ

響「貴音は……貴音は大丈夫なんですか!?」

医師「ははは。安心してください。今は寝ていますが、彼女は至って健康ですよ」

響「いえ、絶対頭の病気なんでもっかい検査してください」

医師「ええぇ……」
17:2019/12/22(日) 21:22:13 ID:xZlJxlZo
医師「健康なんですが、食生活には気をつけてもらわねばなりません」

医師「昏睡の原因は異常な高血圧と高血糖です」

P(なんでさっきは『至って健康』なんて言ったんだコイツ)

医師「食生活を変えるためには、周りの方の協力があった方が良いでしょう。聞けば、四条さんは我那覇さんの家で食事のお世話になっているとか。大変ですが頼みますね?」

響「はい、断食させます」真顔

医師「……死なない程度にね」

医師「直に目覚めるでしょう。明日には退院できますよ」ハハッ

響「ずっと病院食を喰わせたいなぁ……」
18:2019/12/22(日) 21:23:05 ID:xZlJxlZo
――深夜、病室――

響「……っ」カクンッ

貴音「んっ……」モゾモゾ

響「んがっ」ハッ

響「……貴音! 目が覚めたのか?」バッ

貴音「ここは……? 私、倒れたのですね。夢かと思っていました」フゥ

響「どうせラーメン食べる夢でも見てたんだろ」ヤレヤレ

貴音「いえ。らぁめんを禁止される夢です。おかしいですよね。そんなことあるワケないのに」

響「あるぞ?」
19:2019/12/22(日) 21:23:50 ID:xZlJxlZo
貴音「えっ?」キョトン

響「だから、今後はラーメンを食べちゃ駄目ってお医者さんも言ってたぞ」

貴音「うふふ、まったく。響は詰まらない冗談しか言わないのですから。まるでふやけためn」

響「貴音、ラーメン、一切禁止」オワカリ?

貴音「高菜らぁめん野菜増し?」

響「……」ピキピキ
20:2019/12/22(日) 21:24:35 ID:xZlJxlZo
P「貴音っ! 目を覚ましたのか!?」バァン

響「しーっ。病院ではお静かに、だぞ」

P「おっと、すまない」ペコ

P「貴音――」チラッ

貴音「……」チーン

P「――寝てるじゃないか」

響「そのまま目覚めないで欲しい」
21:2019/12/22(日) 21:25:39 ID:xZlJxlZo
――数日後、765プロ事務所――

春香「あ、貴音さん! おかえりなさい。身体の方はもう大丈夫なんですか?」

貴音「ええ、まこと健康体です。この度はどうもお騒がせしました」

響「健康体じゃないからね。今日から自分が食生活の管理するから」

春香「仲いいなぁ」

貴音「らぁめんは一日何回まで食べて良いのですか?」

響「ゼ・ロ」

貴音「またまた御冗談を」ハハハ

貴音「……えっ?」
22:2019/12/22(日) 21:26:17 ID:xZlJxlZo
――貴音がらぁめんを禁止されてから、1日後――

貴音「……お腹がすきました」

響「野菜を喰え。精進料理だけ喰え」

貴音「そんな殺生な。第一私は仏教徒ではありません」

響「? 何か信仰してたっけ?」

貴音「らぁめん教です」フンス

響「」ピキピキ
23:2019/12/22(日) 21:27:09 ID:xZlJxlZo
――2日後――

貴音「お、お腹がすきました」

響「さっき食べたばっかじゃん」

貴音「野菜炒め定食ですよ!?」

響「……うん。充分だぞ」

貴音「草なんぞおやつにもなりません」

響「そりゃご飯だからね」
24:2019/12/22(日) 21:27:49 ID:xZlJxlZo
――3日後――

貴音「らぁめん……」

響「……」
25:2019/12/22(日) 21:28:19 ID:xZlJxlZo
――4日後――

貴音「もう我慢の限界です……」

響「頑張れ~」
26:2019/12/22(日) 21:28:54 ID:xZlJxlZo
――5日後――

貴音「ア、アァ……」ゲッソリ

P「響、貴音のやつ流石に何か食わせてやれよ。日に日にやつれてるじゃないか。断食は酷だぞ?」

響「三食きっちり草食わせてるぞ」

P「貴音ェ……」
27:2019/12/22(日) 21:29:32 ID:xZlJxlZo
――6日後――

貴音「ふぅ」ツヤツヤ

響「――あっ、テメッ、ラーメン食ったな?」

貴音「果て? 麺妖な事を仰いますね」

響「見りゃ分かんだよ!!」オラッ

貴音「ひぃぃっ」
28:2019/12/22(日) 21:30:16 ID:xZlJxlZo
――11日後――

貴音「ア、アァ……」ゲッソリ

P「この光景どっかで見たな。デジャヴか?」

響「自分はほぼ毎日見てる」

貴音「響、らぁめんを作る許可を……」

響「あ? 駄目に決まってるぞ」ギロッ

貴音「ち、違います。食すためではありません。らぁめんに命を捧げ、共に生きると誓った身。食さずともらぁめんと共に在りたいのです」

響「……誰が食べるんだ?」

貴音「ゆくゆくはお店を開きたいと考えています。まずは響にお客になって欲しいのです」

響「アイドルが本業だからね? 覚えてる?」
29:2019/12/22(日) 21:31:11 ID:xZlJxlZo
――12日後――

貴音「ふぅ」ツヤツヤ

P「――あっ、貴音、ラーメン食ったな?」

貴音「いえ。私は食べてはおりません」

響「食べたのは自分だぞ」モワァ

P「……響から香ばしい匂いがする」クンクン

貴音「私はらぁめんをただただ拝みたい。それだけで良いのだと気づいてしまいました」

響「自分は改めてニンニクが嫌いだと思い知ったよ」モワァ
30:2019/12/22(日) 21:31:50 ID:xZlJxlZo
――響がラーメンを食わされてから、1日後――

響「お腹空いたな……」

貴音「らぁめんを頂きましょう。らぁめんは完全食なのです」

響「自分、絶対らぁめん教は信仰しないから。絶対にだぞ」

貴音「その減らず口がどこまで続くか見ものですね」アーハッハッハ

響「」ピキピキ
31:2019/12/22(日) 21:32:21 ID:xZlJxlZo
――2日後――

響「お、お腹いっぱいだぞ……」

貴音「まだ今日は1回しか食べてませんよ?」

響「何回食わせる気だ!?」

貴音「何度でも……です!」

響「炭水化物以外が欲しい……」

貴音「ほう、気づきましたか。モヤシの有用性に」

響「……」
32:2019/12/22(日) 21:33:01 ID:xZlJxlZo
――3日後――

響「もうらぁめんヤダ……」

貴音「……」
33:2019/12/22(日) 21:33:46 ID:xZlJxlZo
――4日後――

響「もう我慢の限界……」

貴音「ふぁいとです、響」
34:2019/12/22(日) 21:34:42 ID:xZlJxlZo
――5日後――

響「う、うぅ……」テカテカ

P「貴音、響に流石に野菜を食わせてやれよ。日に日に脂ぎって来てるじゃないか。偏食は毒だぞ?」

貴音「三食きっちりモヤシを食べております故」

P「……響ぃ……死ぬなよ」
35:2019/12/22(日) 21:35:20 ID:xZlJxlZo
――6日後――

響「ふぅ」ツヤツヤ

貴音「――あっ、響ッ! 作り置きのラーメンをいぬ美に食べさせましたね!?」

響「さぁ? 誰かが美味しく食べれば、粗末にはしてないから大丈夫だぞ!」

貴音「響に食べて欲しいのです!!」オラッ

響「ひぃぃっ」
36:2019/12/22(日) 21:36:28 ID:xZlJxlZo
――11日後――

響「う、うぅ……」テカテカ

P「この光景どっかで見たな。デジャヴか?」

貴音「最近は毎日こうですから」

響「貴音ぇ……ラーメン作るのやめて……」

貴音「駄目に決まっています」ギロッ

響「ち、違うんだぞ! ニンニクが! ニンニクが無理なんだ! 最近、『アイドルのくせに臭い』ってネットで悪口が止まらないんだぞ!」

貴音「元からです」

響「うがー! 無理無理無理無理」ダダダダッ

貴音「あっ、コラ! 響! 待つのです!」
37:2019/12/22(日) 21:37:26 ID:xZlJxlZo
――12日後――

響「ふぅ」ギラギラ

P「――あっ、響。何か今日は元気だな? ラーメンからは解放されたのか?」

貴音「いえ。らぁめん刑は継続中です」キリッ

P「自分で刑言うとるやん」

響「にんにくこそ世界」モワァ

P「響からヤバい匂いがする」ウワァ

響「自分は臭いのが大好きだ。匂いが無いのは個性が無いのと同じだからな」ウンウン

貴音「私は今宵ようやく真の意味で響と通じ合うことが出来ました」ウルウル

P「大丈夫かなぁウチの事務所」
38:2019/12/22(日) 21:40:41 ID:xZlJxlZo
――臭。即ち惹かれ合うこと。


古来、”臭い”と"魅力"とは切っても切り離すことのできない関係にあったんだぞ。
一般的に言われてるのは、遺伝子的に遠くて相性の合う人の臭いは不快に感じないという事。つまり、臭いによって性質を把握し、その違いから自分に必要な物を取捨選択していたんだ。
でも、現代ではその関係性が薄れつつある。臭い物に蓋をする世の中になってしまったからだぞ。現代は水と富に溢れ、毎日お風呂に入ることが当たり前になった。

”清潔”になるとどうなるか。清潔に慣れた人々は、臭いの強い物を忌み嫌いようになったんだぞ。つまり香水に代表されるような、所謂良い香り――偽りの香りだけを身に纏い、自分に嘘をついて生きているんだ。
でもそれで本当にいいのか。臭いはありのままの自分を映し出す鏡だ。偽りの自分を好きになってもらうことが本当に正しい事なのか。自分はそうは思わない。

これは食べ物にも当てはまる事だぞ。ポピュラーな物で例を挙げるとすればチーズや納豆。マイナーな物だとくさややドリアン、臭豆腐とかもあるぞ。臭いの個性が強いせいで好む人が分かれる食材たち。でも、ひとたびその臭いの相性が合えば、これ以上ない快感へと変貌する。
臭いだけじゃなくて味の個性が強いものでも例えるならば、牡蠣あたりだろうか。好きな人は凄く好きだし、嫌いな人は絶対食べたくないぐらいのレベルの食べ物だろう。

また、中でもにんにくは神に等しい存在なんだ。強烈な臭いは料理の香りをにんにく一色にマスクしてしまう。だがその料理は非常に食欲をそそるだけでなく、味を高め合うんだ。面白いよね? 極限まで高められた臭いの個性は他者を潰すのでなく、むしろ際立たせる。その神々しいコラボレーションを体感するためなら次の日の悪臭なんて些細な問題さ。自分レベルになると次の日のにんにく臭さえ愛しいよ。

これで”臭い”がどういう物か皆にも分かってもらえたと思うぞ。
無臭が正義とされる時代は既に過去となりつつある。海外では1週間着たTシャツを嗅ぎ合う合コンも存在しているくらいだからね。
臭いとは自分たちの人生をより良い物にするエッセンスなんだ。


――にんにく。即ち生きる快楽を追究すること。

記 我那覇響
39:2019/12/22(日) 21:41:42 ID:xZlJxlZo
春香「何このエッセイ。これ書いたの響ですよね?」

P「意外と好評なんだよな。反響も大きいみたいだぞ」

春香「最近なんか様子が変だと思ったら……一体全体なにがあったんですか?」

P「……知らない方が身のためだぞ」

春香「?」

おわり
引用元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1577016370/