1:2020/01/24(金) 19:17:30.206 ID:4tMIXH5V0.net
薬剤師「胃腸のお薬、二週間分お出しします。食後にお飲み下さい」

青年「ありがとうございます」

薬剤師「ところで、あなた……ふむ、適性がありそうだ」

青年「適性?」

薬剤師「ジュラシック医薬品はいかがですか?」

青年「え? 聞き間違いかな……ジェネリック?」

薬剤師「ジュラシックです」

青年「は?」
5:2020/01/24(金) 19:20:56.200 ID:4tMIXH5V0.net
薬剤師「もしも現代に恐竜がいたら、ロマンがあるとは思いませんか」

青年「ロマンというよりパニックになりそうですけど」

薬剤師「そこで私は独自にこの薬を開発したんです。名づけてジュラシック医薬品!」

薬剤師「これを飲めば、少しの間ティラノサウルスになることができるのです!」

青年「は……?」

薬剤師「ただし、適性のある人じゃなきゃ飲んでも効果ないですし、そんな人なかなかいないですけど」

薬剤師「あなたならきっと大丈夫!」

薬剤師「おっと、ティラノサウルスはジュラ紀ではなく白亜紀の恐竜だなどと突っ込まないで下さいよ」

青年「いや、もっと突っ込みたいことが一杯あるんですが」

薬剤師「副作用はないですし、もし興味があったら飲んでみて下さい。あ、くれぐれも屋外で」

青年「はぁ……」
6:2020/01/24(金) 19:23:44
青年(ついつい貰ってしまった……)

青年(ティラノサウルスになれる薬か……バカバカしい)

青年(だけどちょっとだけ気になる……飲んでみるか)パクッ

青年「……」

青年「別になんともならないな」

青年(この薬はビタミン剤かなにかで、きっとあれは僕をからかうための作り話だったんだ)

青年(人間が恐竜になれるわけが――)

青年「う゛!?」
7:2020/01/24(金) 19:26:31
青年「なんだこりゃ……体が……!」メキメキ…

青年「う、うおおおおおお……」

メキメキ… ミシミシ… メリメリ…

ティラノサウルス「ギャオオオオオオオンッ!」

ティラノサウルス「これは……!」

ティラノサウルス「どうしよう、本当にティラノサウルスになっちゃったよぉぉぉぉぉ!」
8:2020/01/24(金) 19:29:23.980 ID:4tMIXH5V0.net
会社員「なんだありゃ……!」

主婦「キャーッ!」

ティラノサウルス「あ……!」

「恐竜だーっ!」

「ママーッ!」

「助けてくれーっ!」

ティラノサウルス(どうしよう、どこか隠れないと……)ズシンズシン
10:2020/01/24(金) 19:32:09.893 ID:4tMIXH5V0.net
ワーワー!

ティラノサウルスダヨアレ!

ドコイッタ!?



ティラノサウルス(なんとかビルとビルの間に隠れられた……)

ティラノサウルス(“少しの間”っていってたし、元に戻れるまでこのままじっとしてよう……)
11:2020/01/24(金) 19:37:28.213 ID:4tMIXH5V0.net
次の日――

―学校―

青年「おは……」

女「おはよー!」ダダダッ

青年「わっ!」

女「ねえ、ニュース見た? 昨日この近くにティラノサウルスが現れたって!」

青年「ああ、あれ……」

女「現代にティラノサウルスがいるなんて夢みたい!」

女「他にもブラキオサウルスとかスピノサウルスとかアロサウルスとか出てこないかなー」

青年「アハハ……」

青年(さすが恐竜マニア、大喜びしてるよ)
12:2020/01/24(金) 19:40:51.104 ID:4tMIXH5V0.net
眼鏡「ふん、恐竜なんかいるわけないよ」

女「だけど動画撮ってる人もいたのよ?」

眼鏡「誰かの作り物だって」

女「あんな大きいのを? どうやって?」

眼鏡「なにかトリックがあるのさ」

女「ねえどう思う?」

青年「え、僕? うーん、そうだなぁ……」

青年「もし現代に恐竜がいたらロマンがあるな、とは思うよね」

女「でしょでしょ!」
13:2020/01/24(金) 19:43:16.802 ID:4tMIXH5V0.net
女「よーし私、今日学校終わったら、恐竜探しまくってやるんだから!」

眼鏡「見つかるわけない……時間の無駄だよ」

級友「さすが恐竜マニア!」

女子「家に恐竜のフィギュアいっぱい飾ってる筋金入りだもんね」

女「もし写真撮れたら、みんなにも見せるからね!」

青年「と、撮れるといいね!」

女「うん!」
15:2020/01/24(金) 19:47:07.957 ID:4tMIXH5V0.net
TV

キャスター『住宅街でティラノサウルスが目撃されたとのことですが……』

専門家『おそらく、大型爬虫類の見間違いでしょう。恐竜は絶滅したんですから……』

学者『いいえ、恐竜はいまぁす!』

学者『長年私の唱えてきた“恐竜生存説”がついに実証される時が来たのです』

学者『私はどんなことをしても、ティラノサウルスを捕まえてみせる!』

学者『私が今までどれだけ界隈でバカにされてきたことか……! クックック、ついに見返す時が……!』

キャスター『はい、ここでいったんCMでーす!』



青年(すごい騒ぎになっちゃったな……)

青年(女さんには悪いけど、もうあのジュラシック医薬品は飲まないでおこう……)
16:2020/01/24(金) 19:50:18
翌日――

―学校―

女「……」ズーン

青年「どうしたの?」

女「昨日、真夜中まで探したのに、ティラノサウルスは影も形もなかったわ……」

青年(それはそうだ。あれは僕なんだから)

眼鏡「ふん、だからいったろう? 恐竜なんかいるわけないって」

女「……」ズーン
17:2020/01/24(金) 19:53:12
女「……」ズーン

青年(今日一日、ずっとこんな具合だったな……)

青年「……そんなにティラノサウルスに会いたい?」

女「会いたい! ティラノサウルスっていえば……恐竜の王様なんだから!」

青年「じゃあさ、今夜……9時頃、近所の公園に行ってごらん」

青年「もしかしたら……会えるかもしれない」

女「どうして?」

青年「いいから。行くか行かないかは、君次第だ」

女「……?」
20:2020/01/24(金) 19:57:20.768 ID:4tMIXH5V0.net
夜――

―公園―

女「……」キョロキョロ

女「ティラノサウルスー、いるなら出てきてー」



青年(僕の言葉を信じて、来てくれたみたいだ)

青年(よーし……)パクッ

メキメキ…
21:2020/01/24(金) 20:00:11.157 ID:4tMIXH5V0.net
ティラノサウルス「ギャォォォォォン! ギャァァァァァス!」

女「えっ、ティラノ!?」

女「キャーッ、夢みたい! ウソでしょ! すごい!」

女「写真撮らなきゃ!」パシャパシャパシャ

ティラノサウルス(えっ、あっ……)

ティラノサウルス(ポーズ取っちゃえ)クイッ

女「うわっ、いいポーズ!」

ティラノサウルス(こんなに喜んでくれて……やってよかった……)
22:2020/01/24(金) 20:02:14.631 ID:p+C2PTddr.net
サービスいいなw
23:2020/01/24(金) 20:03:02.997 ID:4tMIXH5V0.net
女「いなくなっちゃった……」

青年「どうだった? ティラノサウルスには会えた?」

女「あ、ホントに会えたよ! ティラノサウルス! 超ラッキー!」

青年「それはよかった。だけど……このこと、内緒にしといてくれないかな?」

女「どうして?」

青年「だって……えぇと、恐竜も住みにくくなっちゃうと思うし……」

女「うん、分かった。マスコミやドラえもんの恐竜ハンターみたいなのが押し寄せてきても困るし!」

青年「ありがとう」
24:2020/01/24(金) 20:06:38
―学校―

眼鏡「どうだった? ティラノサウルスには会えたかい?」

女「ううん、ダメだった。やっぱり恐竜は絶滅しちゃったんだよ」

眼鏡「ほらね……恐竜なんかいるわけないんだ」

級友「だけど、やけにあっさり主張を覆したな……」

女「そりゃ間違ってたらすぐ訂正しないと。傷が大きくなるだけだし。ね?」チラッ

青年「う、うん。そうだね」

青年(本当は会えたのに、僕のいうとおりにしてくれた……)
25:2020/01/24(金) 20:09:21
夜――

ティラノサウルス「ギャオオオオオン!」

女「キャーッ! また会えちゃった!」



青年「どう? 今日も現れた?」

女「うん、今日も出たよ、ティラノサウルス! かっこよかったー!」

青年(いい笑顔だ……)

青年(僕はこの笑顔が見たくて、ティラノサウルスになってるのかもしれないな)
26:2020/01/24(金) 20:12:59
―家―

青年(ここんとこ、毎晩のようにティラノサウルスになってる……)

青年(薬剤師のいうとおり、特に副作用もないようだ)

青年(ティラノサウルスになってる限り、彼女はずっと喜んでくれるけど)

青年(このままでいいのだろうか?)

青年(このまま彼女を騙し続けて……いいのだろうか?)
27:2020/01/24(金) 20:16:28.475 ID:4tMIXH5V0.net
―公園―

ティラノサウルス「ギャァァァァァス!」ズシンズシン

女「キャーッ!」パシャパシャッ

女「今日もいっぱいいい写真が撮れた! 永久保存しちゃう!」

ティラノサウルス(よかった……)

女「どうもありがとう!」

ティラノサウルス「ギャオ!」

女「それじゃ……」
28:2020/01/24(金) 20:19:41.970 ID:4tMIXH5V0.net
女「また明日、学校でねー!」

ティラノサウルス「うん!」

女「……やっぱり」

ティラノサウルス「……あ」

女「青年君だよね?」

ティラノサウルス「あ、いや、これは、その……」

女「時間と場所を指定したのは青年君だし、青年君とティラノサウルスが同時に現れたことないし」

女「いくら私でも気づくって!」

ティラノサウルス「だよね……。ごめん、全部話すよ」
29:2020/01/24(金) 20:22:22.540 ID:4tMIXH5V0.net
女「ジュラシック医薬品……そういうことだったんだ」

ティラノサウルス「ごめん……」

女「ううん、だって私を喜ばせるためにやってくれたんでしょ?」

女「だけど、もうやらない方がいいよ。薬ってどんな副作用があるか分からないし」

ティラノサウルス「うん……」

女「今までありがと!」

ティラノサウルス「女さん……」

ティラノサウルス(気にしてない風を装ってるけど、彼女の顔はどこか寂しげだった)
30:2020/01/24(金) 20:23:33.856 ID:p+C2PTddr.net
ええ子や
31:2020/01/24(金) 20:25:30.946 ID:4tMIXH5V0.net
女「バイバーイ!」

ティラノサウルス「バイバイ……」





学者「……見たぞ。まさかこんな公園にティラノサウルスがいるとはな」

学者「しかもあの女……ティラノサウルスを完全に手なずけている!」

学者「ということは……クックック……」
32:2020/01/24(金) 20:28:31.581 ID:4tMIXH5V0.net
次の日――

スタスタ…

女「じゃあ、薬はもう残り少ないんだ」

青年「うん、だからどっちにしろもうすぐティラノサウルスにはなれなくなってたんだよ」

女「よーし、今日は今までのお礼に、私の恐竜コレクション見せてあげる!」

青年「え、いいの?」

女「うん、パキケファロサウルスについて熱く語ってあげる!」

青年(パキケ……? 聞いたことないな)
33:2020/01/24(金) 20:31:34
学者「クックック……」

二人「!」

青年(この人、たしかテレビに出てた……)

女「あっ、あなたはたしか“恐竜生存説”を唱えてる……なにかご用ですか?」

青年(やっぱり知ってるんだ)

学者「君……私とともに来い」ガシッ

女「きゃっ!」

青年「いきなり何をするんですか!」

学者「私は見たのさ……。君が夜の公園で、ティラノサウルスと仲良くしてるのをね」

青年(見てたのか……!)
34:2020/01/24(金) 20:35:37
学者「きっと君には恐竜と意思疎通できる不思議な力があるんだろう!?」

学者「君が力を貸してくれれば、私の“恐竜生存説”は必ず立証される!」

学者「私をバカにしてきた者どもを見返すことができるんだ!」

学者「さいわい私の研究所はすぐ近くにある……さあ、早く来い!」グイッ

女「は、はなして……!」

青年「待って下さい!」

学者「んん? 君如きに用はないんだが……」

青年「ティラノサウルスが見たいんでしょう? だったら見せてあげますよ」

女「ダ、ダメ! こんなところじゃ大騒ぎになっちゃう!」

青年「いいんだ。よぉく見てて下さいよ」パクッ

学者「薬を飲んだ……?」
35:2020/01/24(金) 20:38:28.215 ID:4tMIXH5V0.net
青年「……」

青年「……?」

青年(あれ? ティラノサウルスにならない……?)

学者「なにがティラノサウルスを見せるだ。全然現れないじゃないか」

学者「やはり、カギを握ってるのは君の方らしいな」グイッ

女「やめてっ!」

青年「ちょ、ちょっと! なに考えてるんですか!」

学者「うるさい!」バチバチッ

青年「がっ!(スタンガン……!?)」

学者「さあ、私の研究所に招待しよう。なぁに、すぐ近くにあるから」

女「はなしてぇ!」

学者「いいか小僧、もし通報などしたらこの娘は頃してしまうからな!」バタンッ

青年「ま、待て……!」

ブロロロロロ…
36:2020/01/24(金) 20:41:50.374 ID:4tMIXH5V0.net
―薬局―

薬剤師「ティラノサウルスになれなくなった?」

青年「はい……今までずっとなれたのに……」

薬剤師「おそらく、耐性ができてしまったのかもしれませんね」

薬剤師「やはり、あのジュラシック医薬品は不完全だったか……うーん、残念」

青年「どうにかならないんですか!?」

青年「なんとか僕がティラノサウルスだったって証明して、彼女を助けないと……!」

薬剤師「んー……一つだけ方法があります」
37:2020/01/24(金) 20:44:29.532 ID:4tMIXH5V0.net
薬剤師「これです」

青年「これは……?」

薬剤師「この錠剤は“超ジュラシック医薬品”とでもいうべき薬品です」

薬剤師「ただしこれを飲んだら、もう人間には戻れないと思った方がいいでしょう」

薬剤師「どうしますか?」

青年「……」

青年「ください! 僕は彼女を無事助けられればそれでいいんです!」
38:2020/01/24(金) 20:47:54.857 ID:4tMIXH5V0.net
―研究所―

学者「さあ、ティラノサウルスを呼んでくれ!」

学者「きっと君はティラノサウルスを自在に呼ぶ術を持ってるんだろ? 私には分かってるんだ!」

学者「いいや、きっと他の恐竜だって呼べるはずだ! 間違いない!」

女「だから、なんのことだか……」

学者「しらばっくれる気かい? まぁいい、そっちがその気なら……」

学者「君を眠らせて、君の身体を外側から内側まで勝手に調べさせてもらうことにしよう」

学者「そうすれば、君の体からなにか恐竜に繋がるものを発見できるかもしれない」

学者「いいや、絶対発見できる! さっそく麻酔薬の用意だァ!」

女(目が血走ってる……。この人、常軌を逸してる……!)
39:2020/01/24(金) 20:50:22
青年(ここがあいつの研究所か……結構大きいな)

青年(よーし……さっきもらった超ジュラシック医薬品を……!)

青年「……」パクッ

青年「……」

青年「……」

青年「何も変わらないじゃないか!」

青年(どうしよう……。やっぱり警察に……)

青年(だけど彼女が中で何されてるか分からないし……このまま突入するしかない!)
41:2020/01/24(金) 20:54:21
青年(塀をよじ登って……高い……)ヨジヨジ

青年「よっと」バッ

ドーベルマン「ガルルルル……!」

青年(番犬!? こんなの飼ってるのか……!)

青年(襲いかかられたらひとたまりもない……逃げるか!?)

青年(いや、彼女を救うなら、もうためらってる暇はない!)

青年(僕は……ティラノサウルスだッ!!!)
42:2020/01/24(金) 20:56:56
青年「ギャァァァァァス!!!」

ドーベルマン「ガウッ!」ビクッ

青年「グオォォォォォォォォォォン!!!」

ドーベルマン「……!」

青年「ギャオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」

ドーベルマン「グルルルル……」ヘタ…

青年「伏せてくれた……ごめんよ、ありがとう!」
43:2020/01/24(金) 20:58:38
学者「さあ……注射をしよう」

学者「これを打ったら、おそらくもう正気には戻れないだろうけど、かまやしないだろう?」

学者「それで“恐竜生存説”を証明できるんだから……!」

女「やめて……やめてぇぇぇぇぇっ!」



ドンドンッ!



学者「……む?」

女「え!?」
44:2020/01/24(金) 21:01:20
バァンッ!

青年「ギャオオオオオッ!!!」

学者「な、なんだ!? こいつはさっきの――」

女「青年君!?」

青年「ギャァァァァァァァァス!!!」

学者「ひっ……!」

青年「女さんを……返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

青年「ギャオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!」

学者「うわああああああっ! 恐竜だぁぁぁぁぁっ!」
45:2020/01/24(金) 21:04:47
学者「ハハ……恐竜、怖い……。ティラノ、怖い……アハハ……」ピクピク



青年「もう大丈夫だよ」

女「ありがとう……!」

青年「さあ、約束通り、君の恐竜コレクションを見せて欲しいんだ」

女「うん!」

女「今の青年君は……ティラノサウルス並みに迫力があって……かっこよかったよ」ニコッ

青年(この笑顔はあの時と同じ――)

青年「そ、そうかなぁ? アハハ……」
46:2020/01/24(金) 21:07:30
女「さ、今日は夜まで恐竜を語っちゃうからねー!」

青年「勉強させてもらうよ!」



薬剤師(手助けに来ましたが、どうやら必要なかったようですね)

薬剤師(ちなみに、さっき渡した薬はただのビタミン剤です)

薬剤師(それにしても……現代にもあの青年という恐竜がいたと分かって、嬉しい限りですよ)







―おわり―
47:2020/01/24(金) 21:14:09.567 ID:8wGEQrDVr.net

青年はセイネンサウルスになれたか
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1579861050