1: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:34:24.95 ID:9hRw6FZC0
小鳥「『結婚なんかしないほうがいいさ』と考えるんだ」

小鳥「そうすればほら、いくらでも自分の趣味に時間と資金をつぎ込めるし?」

小鳥「誰からも拘束されないって素敵よね?」

小鳥「そう!だって私は、翼を広げて大空を自由に舞う鳥だもの!」

小鳥「……」


小鳥「あれ?私、負け犬じゃね?」


https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370784864

2: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:38:24.35 ID:9hRw6FZC0
結婚したら負け。そう考えていた時期が私にもありました。

女はいつでも自由に恋したい、なんてね。ははは……。


ああ、どうせ彼氏いない歴=年齢だよ。

恋愛?なにそれ甘いの?甘いのか!?甘いんだなチクショー!!


もういいんだ、そろそろ現実を直視しよう、私。

「まだ20代だから」なんて言い訳できる時間はもう残り僅か。

そりゃうちの親だって、いきおくれの三十路の娘なんていたら、恥しくて世間様に顔向けできないだろうさ。


でもね、だからってね……。


小鳥「お見合い、かぁ……」

3: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:42:47.57 ID:9hRw6FZC0
お相手は私より三つ年上、一流企業勤務のエリートサラリーマン。

弱小芸能プロダクション勤務の私とは、年収の桁がひとつ違う。

特別イケメンではないけど、誠実で優しそうな好青年って感じの人。


ま、お見合い写真なんて、そういうのを選んで使うものよね。

どんな人かなんて、実際に会ってみなければわからない。

それはお互い様だけど。

たかが写真の何枚かで、自分のことをわかったみたいに思われたくないのは、私だってそう。


まあね、今日だってせっかくのオフに、一人寂しくウィンドウショッピングですよ。

友達はみんな、休日となれば恋人恋人、旦那旦那、子供子供子供……。

ああ、そうだろうさ。私だってそうするよ。

相手がいればな。


……。

ははは、今ウィンドウにすごい顔した人が映ってたよ。怖い怖い。


……。

はぁ……。

4: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:46:00.63 ID:9hRw6FZC0
けっして悪い話じゃないんだけどね。

遅くなればなるほど、選り好みなんてできなくなるだろうし。


だからって、私にだって相手の希望ぐらいはあるんだから!

仕事熱心で、不器用だけど思いやりがあって、いざというときにすごく頼もしくて、

笑顔が素敵で、まわりのみんなから慕われてて……。

ちょっと年下の……


「あれ?音無さん?」


そう、こんな…………え?

5: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:48:55.83 ID:9hRw6FZC0
小鳥「プロデューサーさん?」


これなんて運命?

なんて言えたらいいんだけど、私も彼も活動半径は似たようなものなのよね。

だから、にやけてる場合じゃないのよ、私。


P「今日はお買い物ですか?」

小鳥「え、ええ。特に何か目的があるわけでもないんですけど」

P「見るだけならタダですからね」

小鳥「そういうのはデリカシーが足りませんよ?」

P「はは、すいません」

小鳥「ふふ」


いつものプロデューサーさんだ。

なにげないやりとりだけど、私にとってはかけがえのないひと時……。

彼がどう思っているかは知らないけど。

6: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:52:08.91 ID:9hRw6FZC0
プロデューサーさん、今日はオフじゃなかったわよね?

いつものスーツにビジネスバッグだし。


小鳥「プロデューサーさんはお仕事中、ですよね?」

P「ええ、そうなんですが……」

小鳥「?」

P「営業出るついでに、ちょっとサボりです」

小鳥「え?……ええ!?」


サボり?プロデューサーさんが?

あの律子さんですら呆れさせる仕事人間のプロデューサーさんが?

私じゃないわよね?うん、私は今日オフだっての。


P「律子には内緒でお願いしますね?」

小鳥「そ、それはもちろん」

P「ははは、どうも……」


私だって、プロデューサーさんのおかげで何度も律子さんのお説教を免れてるもの。

そんな野暮なことはしませんよ。


でもね、そんな浮かない顔してたら……。

これでも、私だって年上なんですからね!

7: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:55:38.24 ID:9hRw6FZC0
小鳥「なにかあったんですか?」

P「いえ……」

小鳥「私には言えないようなことですか?」

P「……」

小鳥「同じ職場の先輩として、少しは頼ってくれてもいいじゃないですか」


そう、職場の先輩と後輩、事務員とアイドルプロデューサー。

たまに昼食をご一緒したり、仕事上がりに飲み行ったりする、それなりに仲のいい同僚が私と彼の関係。


P「ふぅ……音無さんには勝てませんね。話しますよ」

小鳥「ふふ、はじめからそうやって素直になればいいんです」

P「そうですね。音無さんに嘘はつけませんから」

小鳥「え?」


どういう意味?

私に嘘をつくとバチでもあたるのかしら?

貴音ちゃんなら、ありえなくもないけど。


P「立ち話もなんですから、そこのカフェにでも入りましょう」

小鳥「は、はい」

8: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 22:58:21.86 ID:9hRw6FZC0
 ── カフェ ──


小鳥「それで、いったいなにが?」

P「実は……明日、見合いをすることになりまして……」

小鳥「え……?」


お見合い?プロデューサーさんが?

なにそれ、むしろこっちが相談したいことなんですけど。


小鳥「あ、明日ですか?」

P「ええ」

小鳥「そんな急な」

P「?」

小鳥「あ、いえ……」


近日中にお見合いを控えた二人。

実は彼のお相手が私で、私のお相手が彼……なんて素敵なサプライズがあったらよかったんだけど。

残念ながら、私のお見合いは来週の話。

つまり、明日プロデューサーさんとお見合いするのは私じゃない。


ああ、聞かなきゃよかったかも。

9: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:01:16.49 ID:9hRw6FZC0
小鳥「お相手の方は……?」

P「うちの親父の知り合いの娘さんで、俺より一つ下だそうです」


と、年の頃はお似合いね。

いくつも年上の私じゃ分が悪いかも……。


小鳥「き、綺麗な人なんですか?」

P「そうですね。さすがにうちのみんなってほどではないですが」

小鳥「それはまあ、アイドルと比べられたら」


それは私にも言えることですけどね。

おまけに、若さでは惨敗。

ははは、清々しいぐらいに勝算ありませんよ。


でも、悩んでるってことは、乗り気じゃない?


小鳥「断れないんですか?」

P「断ろうと思えば、まあ」

小鳥「だったら……」

P「なんというか……身内の事情があるんです」


あ、最初言いにくそうにしてたのって……。

触れられたくないところに触れちゃったわけよね、これって。

なにやってるんだろ、私……。

10: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:03:43.97 ID:9hRw6FZC0
小鳥「あの……言いにくいことだったら」

P「母が……」

小鳥「え?」

P「母がここ何年か病気を患っていて、たぶんもう長くはないと」

小鳥「……」

P「今まで好きなように生きてきた親不孝者ですから」

P「せめて生きてるうちに嫁さんをもらって、孫の顔を見せてやるぐらいは、と……」

小鳥「そう、ですか……」

P「すいません、こんな話。聞かされても迷惑ですよね」

小鳥「そんなこと……!」

小鳥「でも、それだったら、その……お見合いじゃなくても」

P「お相手のご両親が、母の病気の件でお世話になった人なんです」

小鳥「あ……」


それじゃ、この人はきっと断れない。

人の縁を大切にしている人だから。

お見合いをしたら、多分そのまま……。

11: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:06:34.79 ID:9hRw6FZC0
私と彼は、同じ悩みじゃなかった。

私のお見合いなんて、断ろうと思えば簡単に断れる。

でも、断ったとしても、彼はもう誰かの……?


ああ、ほんとに聞かなければよかった……。


P「音無さん」

小鳥「は、はい」

P「これからデートしませんか?」

小鳥「は、はい?」

P「デートですよ、デート」

小鳥「で、デートというと、二人でお出かけしたりする、あの……?」

P「そのデートです」


そんなもの都市伝説だと思ってましたよ。

いやぁ、まさかこうして自分が誘われる日が来るとは……。

しかも……しかもプロデューサーさんに!

えへへ……///


じゃなくて!

12: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:09:44.32 ID:9hRw6FZC0
小鳥「今、仕事中ですよね?」

P「今の状態じゃ、ちょっと仕事になりそうにありませんね」

小鳥「みんなほうは大丈夫なんですか?」

P「ええ。今日はもう外回りだけですから」

小鳥「明日はお見合いなのに……」

P「今日はまだ義理立てする必要はないでしょ」

小鳥「それに、ええと……」

P「はい」

小鳥「私なんかで……」

P「怒りますよ?」

小鳥「え?」


あれ?怒ってはいないと思うけど……ちょっと悲しそう。

そんな顔しないでください……。

13: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:11:42.79 ID:9hRw6FZC0
P「音無さんだからデートに誘ったんです」

P「付き合ってくれるんですか、くれないんですか?」

小鳥「は、はい!ご一緒します」

P「よかった。じゃあ、早速いきましょうか」


あ、手を差し出されて……。

これって、やっぱりそういうことよね?


小鳥「あの……」

P「デートですからね」


そう、デートですからね!

手ぐらい繋ぎますよね、なんたってデートなんですから!

プロデューサーさんと……///


 ギュッ

小鳥「はい……よろしくお願いします///」

14: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:15:58.40 ID:9hRw6FZC0
 ── デート後 夜 ──


それから二人でショッピングをして、臨海公園までちょっと遠出をして、

観覧車に乗ったり、手……手をつないだまま夕焼けの海を眺めたり///

最後に素敵なイタリアンのお店で食事をして……美味しかったです、はい!

舞い上がってて、味なんかわからなかったけどね!


この時間が永遠に続いて欲しい……たぶん生まれて初めてそう思った。

こんな幸せを知らなかったなんて、可哀想な昨日までの私……。

でも、2X歳事務員の私に永遠なんて訪れない。


今、私の自宅の最寄駅……。

ここで夢の時間は終了。

明日になれば、彼は……。


小鳥「今日は……デートに誘ってくれてありがとうございました」ペコッ

小鳥「すごく楽しかったです!」

P「こちらこそ。音無さんが一緒に居てくれて……嬉しかったです」

小鳥「は、はい///」

15: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:18:31.91 ID:9hRw6FZC0
P「今日のお礼に、なにかプレゼントでもできればよかったんですけど」

小鳥「だ、ダメですよ!明日お見合いするのに、そんな……」


そういえば、私のほうのお見合いの話は結局できなかったなぁ。

いまさら言い出すタイミングもないし。

言わなくていいよね?たぶん、断るし……。


小鳥「ほんとは今日のデートだって、お相手の女性に失礼なんですからね?」


素直になれ、私。

言いたいことは、そんなことじゃないでしょ?


P「私服の音無さんが、とても可愛らしくて魅力的だったから……」

P「ということじゃダメですか?」

小鳥「」


はい?なに言ってるのこの人?

可愛らしくて魅力的で申し訳ございませんでしたね!

って、あれ?

あれれ??


小鳥「ぁ……ぅ……///」

P「今日が終わらなければよかった……」

16: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:21:19.41 ID:9hRw6FZC0
あ……。

もしかして、プロデューサーさんも私と同じ気持ち?

あと一歩踏み出せば、まだ夢の時間を続けられる?


P「さすがにそろそろ事務所に戻らないと……」

小鳥「あ……そ、そうですね」


なにやってんの、私。

今まさに私の人生最大のフラグが立つかどうかでしょ?

今立てなくて、いつ立てるの!


P「くれぐれも律子には」

小鳥「ええ、内緒ですね」

P「こんな時間までほっつき歩いてたら、どっちにしてもどやされるかな」

小鳥「……」


「行かないでください」「私のそばにいてください」

そう言うだけなのに。それだけでいいのに。


どうして言葉が出ないの?

17: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:24:29.64 ID:9hRw6FZC0
P「それじゃ……明日俺はオフだから明後日ですね」

小鳥「はい、また明後日に……」

P「おやすみなさい」

小鳥「おやすみなさい……」


プロデューサーさん、行っちゃう……。

行っちゃった……。


どうして?

私と同じ気持ちじゃないんですか?

私の勘違いなんですか?

なんで、なにも言ってくれないんですか!


バカ……プロデューサーさんのバカ!

勝手にお見合いして結婚しちゃえ、バカ!


……。

私の、バカ……。

18: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:33:56.01 ID:9hRw6FZC0
 ── 翌日 765プロ事務所 ──


小鳥「……」

律子「……」

小鳥「はぁ……」

律子「あの……小鳥さん?」

小鳥「はい……?」

律子「なにかありました?」

小鳥「なにか……?なにもありませんよ……ええ、なにも」

小鳥「ふぅ……」

律子「……」

律子「まあ、手は動いてるようだから、別にいいんですけど……」

小鳥「不思議ですよね、座ってるだけで手が勝手に動くんだから……うふふ」

律子「やっぱりなにかあったでしょ?」

小鳥「なにかあったら……あそこでなにかあったら……」

小鳥「むしろ今、浮かれて仕事が手につかなかったかも……うふふ」

律子「……」

律子「プロデューサーですか?」

小鳥「そうですよぉ。プロデューサーさんですよぉ」

律子「……」

小鳥「うぇ……」グスッ

小鳥「律子さぁん……ひぐっ」ポロポロ

律子「はいはい、いい大人なのにしょうがない人たちですね」ナデナデ

律子「なにがあったんですか?」

20: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:37:06.83 ID:9hRw6FZC0
─────

───



律子「ほう、仕事中にデートですか?ほほう?」


あ、律子さんにばらしちゃった!テヘペロ

お説教タイムにはお供しますから、許してくださいね!


律子「まあ、あの人はいつも根を詰めすぎだから、たまに息抜きするぐらいは」

小鳥「え」

律子「でもデートはやりすぎです」

小鳥「ですよねー」


デート……。

うわ、なにこのスィートメモリー?///

本当にあったことよね?脳内デートじゃないわよね?

うん……///


律子「なにニヤニヤしてるんですか、気持ち悪い」

小鳥「ごめんなさい……」

律子「でも、そこまで盛り上がっておきながら、それ以上は何もなかった、と」

小鳥「はい……」


思い出させないでくださいよ……。

私の目と鼻の汗で、一張羅のスーツをドロドロにしてあげましょうか?

21: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:40:02.86 ID:9hRw6FZC0
律子「で、今日プロデューサー殿はお見合いですか……」

律子「まったく、あの人は……」

小鳥「律子さぁん……」グスッ

律子「ストップ!スーツが汚れる」


なんだとこの鬼!

冷血メガネ!


律子「たしか……小鳥さんもですよね?」

小鳥「なにがですか?」

律子「お見合いですよ」

小鳥「あ……」


そういえば、律子さんにだけはちらっと話したっけ。

自分のほうは、わりとマジで忘れてた。

できれば思い出したくなかった……。

22: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:43:29.62 ID:9hRw6FZC0
律子「小鳥さんは、それでいいんですか?」

小鳥「それは……」


イヤですよ、いいわけないでしょ。

自分でも驚くぐらい……彼のこと好きなんだから!

もう、どうしたってこの気持ちはごまかせない。


でもね、でも……。

律子さんだって、それでいいんですか?

あなたもたいがい素直じゃないですよね。


小鳥「そういう律子さんだって……」

律子「私には関係ありません!」


そうですか。じゃあ、そういうことにしておいてあげます。

あとから「やっぱ今のナシ」なんて言っても、聞いてあげませんからね!

23: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:46:23.52 ID:9hRw6FZC0
律子「そうはいっても、まさか今からお見合いの妨害に行くわけにも……」

小鳥「え?いいんですか?」

律子「ダメです!」

小鳥「ピヨォ……」

律子「そもそも、会場がどこかも知らないでしょ?」

小鳥「はい……」


まあ、プロデューサーさんに電話して、さりげなく場所を聞き出すとかは出来ると思うんですよ。

……律子さんなら。


律子「あ?」


こわっ!

いけないいけない、今の声に出てたかしら。


まあね、お見合い会場に乗り込んでぶち壊しにするなんて、普通にただの痛い人ですからね。

さすがに愛想つかされそうだし、やりませんよそんなことは。

24: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:50:26.42 ID:9hRw6FZC0
律子「いつまでもウジウジウジウジと、じれったい人たちですね……」


人たち?プロデューサーさんも?

ま、まだ彼が私のこと……す、すす好きかなんてわかりませんし!

わ、わかりませんよね?デートとかしたけど……///


律子「もう、スパッと告白して、はっきりさせればいいじゃないですか」

小鳥「それができれば、苦労は……」

律子「口答えしない!」

小鳥「ピヨッ……」


私はこの歳で彼氏いない歴=年齢ですよ?

そのへん察してくれてもいいじゃないですか。


だいたい!そんなこと、律子さんには言われたくないですね!

律子さんにだけは!

私の記録を更新しないように、せいぜい気をつけてくださいね!


律子「あ?」


ちょっ、勝手に声に出さないでよ、この口!

25: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:55:01.84 ID:9hRw6FZC0
 ── 翌日・朝 765プロ事務所 ──


昨日は結局なにも手につかなくて、たびたび律子さんからお小言を言われてた……と思う。

シラフでも記憶が飛ぶことなんてあるのね、あはは……。

家に帰ってから?

そっちはガチ記憶ないから、あはは……。


こんな私でも社会人ですから、どんなにボロボロだろうが仕事には来ますよ、ええ。

それに、まだお見合いがうまくいったとは限らないし。


そうよ!私をこんなに悩ませて!

いつもの鈍感力を発揮して、相手を怒らせてこっぴどくふられてくればいいのよ!

いいザマだわ、ふふん!

でもね大丈夫。私に……け、結婚を申し込めばいいんです!

今なら、可哀想だからもらわれてあげますよ!


 ガチャッ

P「おはようございます」

小鳥「お、おはようございます!」


さ、さあ!決戦よ小鳥!

26: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/09(日) 23:57:50.38 ID:9hRw6FZC0
小鳥「き、昨日は、その……」

P「ええ、お見合い行ってきましたよ」

小鳥「え、ええ。それで……」

P「……」

小鳥「……」

P「たぶん……このままお受けすると思います」

小鳥「え……」


あれ……?

プロデューサーさんはふられて……でも、自分の気持ちに素直になって……。

結婚を申し込まれた私は、「仕方ないですね!」なんて照れ隠しで返して……。


違うんですか?

27: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:00:40.57 ID:aB2rNtQz0
小鳥「あ……お、おめでとうございます」

P「ありがとうございます……」


あは、あはは……。

ふられたの私のほうじゃない。

告白もしてないのに、ふられちゃった……。


小鳥「プロデューサーさんに先を越されちゃいましたね。あはは……」

P「はは、面目ない」

小鳥「……」

P「……」

小鳥「あ、ちょっと用事を思い出したので電話してきます……」

P「はい」


 ─────

小鳥「──あ、お母さん?……そう、お見合いの話」

小鳥「……うん、やっぱり受けるから……よろしくね」

28: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:04:30.45 ID:aB2rNtQz0
うん、まあこれでよかったのよ。

プロデューサーさんは一つ年下の可愛らしい奥様、私は三つ年上の優しそうな旦那様。

誰からも祝福される、お似合いのふた組じゃない。

姉さん女房なんて、いまどき流行らないわよね!


律子「小鳥さん?なにしてるんですか?」

小鳥「あ、律子さん……」

小鳥「おはようございます……」

律子「おはようございます」

小鳥「……」

律子「……」

小鳥「あの……」

律子「しばらく、屋上で風にでもあたってきてください」

小鳥「え?」

律子「その顔で事務所にいられても困りますよ」

小鳥「でも……」

律子「仕事は私がやっておきますから。ね?」

小鳥「はい、ありがとうございます……」


そんな顔って、どういうことですか?

心の汗が、ちょっと目と鼻から溢れてるだけじゃないですか。

失礼しちゃいますね!


ありがとう、律子さん……。

29: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:07:59.55 ID:aB2rNtQz0
 ── 数日後・夜 765プロ事務所 ──


律子「それじゃ、私は上がりますけど……大丈夫ですか、小鳥さん?」

小鳥「え?ええ……戸締りはしておきます」

律子「明日はお見合いですよね?あまり遅くならないように……」

小鳥「そうですね、なるべく早めに上がります……」

律子「……」

小鳥「……」

律子「お疲れさまでした」

小鳥「お疲れ様です……」

 ガチャッ

律子「まったくもう……」

 バタン


律子さんには悪いけど、今は一人で仕事してるほうが落ち着く。

趣味に没頭しようにも全然身が入らないんだもの。

仕事してるのが一番気が紛れるわよね。


ん?私のお見合い?ああ明日だっけ。

いやぁ、不名誉な記録も明日で終了かぁ。感慨深いわぁ……。

……。

30: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:10:43.72 ID:aB2rNtQz0
プロデューサーさんは、今日は珍しく早上がりしてた。

本人に直接聞くことなんてできないけど、律子さんがそれとなく探りを入れていたようで……。

今ごろ、例の彼女と会っているらしい。


やっぱり、そろそろあれよね。

正式に結婚を申し込んでもおかしくないわよね……。


どうぞお幸せに。

勘違い女は、別の幸せを見つけますよ。

せいぜい私のほうが幸せになってあげますからね。


大好きな、あなたなんかより……。


小鳥「ひぅっ……ぅ……」ポロポロ

31: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:13:32.57 ID:aB2rNtQz0
 ガチャッ

え?律子さん戻ってきた。

やだ、また泣いてるところなんか見られたら……。


P「音無さん……」

小鳥「え……」


うそ……プロデューサーさん?なんで?

今ここにいるはずは……。


小鳥「どうして……」

P「音無さんと話をしたくてです」

小鳥「話すことなんて……」


そんなの、今更ですよ。

言ってほしいことは、なにも言ってくれないくせに。


小鳥「例の彼女と……会ってたんですよね?」

P「え?ああ、知ってましたか」

P「ええ、さっき会ってきました。会って、ちゃんと話をしてきました」

小鳥「話を……」

32: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:17:16.11 ID:aB2rNtQz0
「結婚を申し込んできました」ですか?

そんなことをわざわざ私に話すためにここに?


小鳥「ふざけないでください!」

小鳥「話をしてきた?だったら、なんで今こんなところのいるんですか!?」

P「聞いてください、音無さん」

小鳥「聞きたくありませんよ、そんなこと!」

P「聞いてください!」

小鳥「!」ビクッ


な、なんなんですか?

理不尽ですよ、そんなの。

私だって、言いたいことはいくらでも……!


P「やはりお付き合いはできないということで、お断りをしてきました」

小鳥「え……?」


今、プロデューサーさんなんて?

お断り?彼女に?

なんで……?

33: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:20:01.28 ID:aB2rNtQz0
P「俺には好きな人がいるから、あなたを幸せにすることはできない、ってね」

P「おかげでひっぱたかれましたよ、ははは」


よく見ると、左の頬がほんのり朱色……。

いい気味です……。


小鳥「ひどい人ですね」

P「まったくです。彼女だけじゃなく、好きな人にまでひどいことをしてしまった」

小鳥「それに、勝手な人です……」

P「勝手は承知の上ですよ」

小鳥「……」

P「律子から聞きました。音無さんも明日お見合いだって」


あのおせっかい焼きのツンデレメガネ……。

大きなお世話ですよ、まったく……。

34: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:22:53.41 ID:aB2rNtQz0
P「お見合い、お断りしてください」

小鳥「はい……?」

小鳥「ずいぶん勝手なことを言いますね?」

P「言ったでしょ、勝手は承知してます」

小鳥「じ、自分は若い女の子とお見合いしておいて、私には断れ、ですか?」

P「そうです、断ってください」


ひどい人、勝手な人……ずるい人。

わかってて言ってますよね、私の気持ち。

ほんとズルイ……。

35: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:25:17.93 ID:aB2rNtQz0
小鳥「断らなかったら、どうするんですか?」

P「考えてません。断ってもらいますから」

小鳥「……」

小鳥「ふふ……なんですそれ」

P「あ、やっと笑ってくれましたね」

小鳥「え?」

P「ここ何日か、全然笑ってくれなかったでしょ?」

小鳥「だ、誰のせいだと……!」

P「はい、俺のせいです。ごめんなさい」ペコッ

小鳥「あ、はい」

小鳥「まったくもう……ふふふ」

P「音無さんは……笑ってる方が素敵です」

小鳥「うぅ……///」

P「はは」

36: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:27:32.39 ID:aB2rNtQz0
小鳥「わかりました、お見合いは断ります」

P「はい!ありがとうございます!」

小鳥「好きな人がいるのにお見合いするなんて失礼なこと、私にはできませんから」

P「う……」

小鳥「うふふ」


ダメな私。

もう許しちゃってるんだもん。

でもね、しょうがないでしょ?

ひどくても勝手でもズルくても……大好きなんだから。

37: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:29:19.14 ID:aB2rNtQz0
小鳥「ご両親とか先方とか、怒らせたんじゃないですか?」

P「そうでしょうね」

P「でも、俺が頭を下げて済むことなら、いくらでも頭を下げますよ」

小鳥「……」


言うほど簡単なことじゃないのに……。

それでも、あなたはここに来てくれたんですね。

私のところに……。


P「音無さん……」

 ギュッ

38: ◆PQxO3wwU7c 2013/06/10(月) 00:33:21.51 ID:aB2rNtQz0
小鳥「違いますよね……?」

P「え?ああ……そうですね」

P「小鳥さん」

小鳥「はい……」

 ギュッ

P「好きです、小鳥さん」

小鳥「はい……私もあなたが好きです」

P「必ず幸せにします」

小鳥「はい、二人で必ず幸せに」


あなたと二人で幸せじゃないなんて考えられません。

そうですよね、プロデューサーさん!


P「結婚してください」

小鳥「はい、喜んで!」



おわり

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/10(月) 00:33:59.88
えんだああああああ

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/10(月) 00:34:11.70
おっつおっつ

ピヨちゃんは正妻ピヨ

引用元: 小鳥「逆に考えるんだ」