1: 2009/02/18(水) 21:31:16.03 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「ちょっと……魔王が女の子なんて聞いてないわよ!?」

魔王  「それはこっちのセリフだ。我が玉座まで辿り着いた勇者が女とは……」

女勇者「しかもあなたまだ全然幼いじゃない!」

魔王  「……見た目はどうでもいい」

女勇者「……気にしてた?」

魔王  「……少し。
     いや、どうでもいい。戦わないのか、デカ乳め」

女勇者「ち、違うわよ!これは胸当てが豪華なのよ!
     別にオーダメイドじゃないけどね!」

魔王  「……気にしてたか?」

女勇者「……。
     あのね、街を歩くとねっとりした男の視線が突き刺さるのよ……」


魔王・女勇者「「……」」


魔王  「でも、お前は綺麗だと思うぞ」
女勇者「わ、私も魔王って可愛いと思う!」


側近  「あのー、お二人とも戦闘は…?そんなフォローどうでもいいですから……」

3: 2009/02/18(水) 21:32:33.77 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「っていうか魔王の持っている杖、大きすぎない?身長に不釣合い……」

魔王 「由緒正しい魔王専用武器だ、どの武器よりも扱いやすい」

女勇者「振り回してみて」

魔王 「これはそんな風に扱うものではない」

女勇者「……」

魔王 「そんな風に扱うものではない……」

女勇者「……そう」


側近 「あー、やっぱり先代の武器を無理に使ってたんだ……新しく注文しないと」

6: 2009/02/18(水) 21:34:30.83 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「お前こそ、女にしてその大剣はないだろう
    よほど鍛えないと振り上げることすら適うまい……」

女勇者「……そうよ、お陰様でね」

魔王 「渋い顔だな」

女勇者「……昔、好きだった人に抱きついたら
     ……万力抱擁、って言われたわ……」

魔王 「……万力並みに締め上げるな」

女勇者「き、緊張してたのよ!」


側近 「何で二人で傷をさらけ出しているんだっ!ていうか
    私は突っ込み役なのかっ!ていうか……」

8: 2009/02/18(水) 21:37:37.83 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「ところでさ、こうして話ができるならお願いしたいんだけど」

魔王 「何だ?」

女勇者「魔物で世界を侵略しないでくれない?」

魔王 「私にはそんな気はないぞ」

女勇者「え、本当?」

魔王 「人間を襲っているのは低級な奴らだろう?
    あいつらは頭悪いから命令なんてできないぞ、スライムとか」

女勇者「あ、言われてみれば…」

魔王 「言うなれば獣だ、魔力の差で刃向かっては来ないがな」


側近 「普通に和んでる……殺しちゃってもいいのに……」

10: 2009/02/18(水) 21:41:14.56 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「とりあえず、武器を下ろさない?構えを取るの疲れたんだけど」

魔王 「…そうだな、側近。女勇者に椅子を用意しろ」


側近 「はい、只今(すっかりお客様だ……)」スッ


女勇者「えっ!?今いきなり床から椅子が出てきたんだけど!?」

魔王 「側近はそういう小さく便利な魔法が得意だ」

女勇者「おぉ。なんと奥深い魔法の世界っ……他に側近さんは何が出来るの?」

魔王 「ポットのお茶を覚まさない程度に暖め続ける炎
どのメイドよりも持続力が長い」

女勇者「あ、それいいね♪」

魔王 「ちょうどいい。側近、茶を用意しろ」

側近 「はい……。
    (他にもまだあるのに。書類を一気に分類する魔法とか……
     とか……グスン)」

19: 2009/02/18(水) 21:46:18.47 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「さて、魔物の話だったか」

女勇者「うん、本当に侵略する気はないの?」

魔王 「中には徒党を組んで人間を殺そうとする奴らもいるだろうが……。
     私は関知していない、城内の者も手を出さなかっただろう」

女勇者「そうなの?え、でもあなた達は人を食べるんでしょ?
    そこは見過ごせないんだけど?」

魔王 「例えるとサメだ。サメは人を食うが好んで食うわけじゃない。
    人間とビーフシチューが一緒に置かれてたら、私は間違いなくシチューだな」

女勇者「あー、最近寒いもんね……。
    ……想像したらお腹が空いてきた」

魔王 「……夕食なら用意されてるだろうが、食べるか?」

女勇者「いいの?やった、ここまで辿り着くまでずっと干し肉だったからさ。
    温かい食事が恋しかったの!」

魔王 「この城は大陸でも特に険しい地帯だからな」

女勇者「そうそう!辛かったなー……。
    他にも色々と話を聞きたいし、厄介になるね♪」


側近「毒を盛り込まれるとか疑わないんでしょうか、この勇者は……」

25: 2009/02/18(水) 21:52:04.21 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「それにしてもさ、お酒とか料理とか誰が作ってくれてるの?」

魔王 「コックは人間で、連れて来た。食事関係は一任させてる」

女勇者「……誘拐?」

魔王 「心配するな、訳ありで追われてた料理人を連れてきたから無理矢理ではない」

女勇者「それを聞いて安心。でも、そのコックの人逃げ出さないの?
    一応、周りは見た目怖い魔物達ばかりなんだし……」

魔王 「いや、私が直に僕になれと言ったら目を輝かせていたぞ
    帰り際、後ろからフヒフヒとした笑い声が聞こえたが」




女勇者「あぁ、口リコンなんだ……」

魔王 「口リコンとはなんだ?」

女勇者「まぁ、おいおい教えるわ」


側近 「そんなこと聞いてないぞ、コックの野郎め」

28: 2009/02/18(水) 21:57:23.97 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「んー、口リコンコック……」

魔王 「何を気にしているかは知らないが良い料理人だぞ。
    この前は特大フランクフルトをこっそりとくれた。
    食すときの正しい作法も教わったぞ。

    出来るだけ喉奥まで方張り、口元をべとべとにしながら食べること
    なかなか噛み切れなくてな、何度もえづいてしまったが行儀悪く食べるのもいいもんだ」


側近 「ちょっとコック、――してくる」

フ、フヒ、スミ、スミマセン モウシマセン ガゾウケシマス ドウガケシマス ギャアアアアアアアァァァ

29: 2009/02/18(水) 22:00:30.82 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「お前はよく質問するな」

女勇者「え、だって今まで誰も知らなかった魔族の生態が次々と明かされてるんだよ?
    しかも魔王が結構話せる口なんて面白いじゃない」

魔王 「ふむ、悪い気はせんな。いくらでも私の言葉を聞くがよい」

女勇者「OK、魔王ちゃん!」

魔王 「ちゃんづけとは…・・・まぁよい、飲め」


側近 「魔王様……。話し相手が欲しかったのかな
    ……私がいるのに……グスン」

34: 2009/02/18(水) 22:07:16.15 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「こんなに誰かと話したり飲んだりしたのは初めてだ」

女勇者「部下でも何でも誘えばいいじゃない」

魔王 「対等な相手という意味だ」

女勇者「あぁー、王様だものね」

魔王 「一応、違う世界の魔王にもコンタクトは取れるんだがな」

女勇者「へぇ、そんな魔法もあるんだ」

魔王 「不安定だからどんな魔王が来るか分らんのが難点だ
    この前はマーラとか言う力任せの魔王が現れてな」

女勇者「格好よかった?」

魔王 「トラウマになりそうだったぞ」

女勇者「?」


側近 「……やはり男はいらない。うん、いらない」

39: 2009/02/18(水) 22:15:57.59 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「だからな……我々の魔法はそちらに、人間の技術は我々に……
    という技術移転は難しいのだ……」

女勇者「いや、でもさ……何も最初からあきらめないでもいいでしょ……
    こうして私達一緒に飲んでるんだし……」

魔王 「お前は特別……何となく気があっただけだ
    人間はな……いつだったか、人間の王が我々に攻め込んだから……」

女勇者「何百年前の話よ……それを言うんだったら……」


側近 (あー、すっかりできあがってる。飲み屋のぐだぐだトークだよ)


魔王 「――あぁ側近、気持ち悪かったら帰って寝ててもよいぞ」

女勇者「えー、側近さん行っちゃうの?一気飲み勝負が効いた?」

魔王 「仕方が無かろう、場所の変更だ。酒蔵で直接飲むぞ」

女勇者「おぉっ、豪快だね!何処までも付き合うよ!」


側近 「はい」(もう突っ込む気力も無い……)

41: 2009/02/18(水) 22:25:09.45 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「……」ジー

女勇者「どうかした?じっと見つめちゃって?」

魔王 「……てい」ムニ

女勇者「ひゃうっ!?」

魔王 「柔らかいし大きい……何なのだこの胸は……」ムニムニ

女勇者「す、すぐに大きくなるよっ。だから、ね、突付かないで?」

魔王 「私はもう成体だ、ずっとこのままの姿だろう」


女勇者「……」

魔王 「……」ムニムニムニ

女勇者「あぁそんな後無体なっー、くすぐっ、たいっー」


側近 「うーん、魔王様……。くれぐれも、くれぐれも私以外の人に甘えないでください……」

    ――甘えられたこと無いけど。グス、頭痛いし寝よう……」

45: 2009/02/18(水) 22:33:49.26 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「はぁはぁ……」

魔王 「どうした、そんなに顔を真っ赤にして?」

女勇者「誰かさんが私の胸を弄くり続けてね……」

魔王 「ふふ、それは災難だったな」

女勇者「でもね、何で私が抵抗してなかったと思う?」

魔王 「酔って力が出なかったからじゃないのか?」

女勇者「自分のターンでじっくり復讐しようと思ったの、だっ!」



魔王 「……こら、離せ。いつの間に後ろに回りこんだ。胸を触るな、くすぐ、ぅ、

    待て、いいから待て、ぁ、落ち着くんだ。これからが本番、だと、ふざけるな

    私は笑わ、な、くっ、う、わははははは!・・・…やめっ、たすけっ!!ヤッ・・・…」

50: 2009/02/18(水) 22:38:20.29 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「はぁはぁ……」

女勇者「いやー、女の子同士なのにちょっとどきどきしちゃったよ」

魔王 「なんて危険な奴なんだ……」

女勇者「あー、熱くなっちゃった……」

魔王 「……私もだ」








魔王 「次はよく冷えた日本酒だな」
女勇者「そ れ だ」

57: 2009/02/18(水) 22:46:40.98 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「あ、これも美味しい……♪」

魔王 「その名も魔王だ」

女勇者「自分の名前?」

魔王 「ま、そんなものだ」

女勇者「あぁー……良い気分……♪~♪~」

魔王 「その歌は何だ?」

女勇者「あ、私の母校の校歌。ちょっと懐かしくなってね」

魔王 「ふむ、私は学校に行ったことが無いからな……面白いか?」

女勇者「面白いよー!魔王ちゃんを案内したいぐらい!」

魔王 「今度、お忍びで行ってみるか……
    魔族にとって歌は詠唱の一部になってしまうからな」

女勇者「じゃあ向こうですることは、歌を覚えるって感じかな」

魔王 「うむ、どうせなら何か楽器も習いたいところだな」

女勇者「ありだねー、お忍びのときは私の妹ってことにすれば大丈夫っ!」

魔王 「うむ、楽しみだ」

64: 2009/02/18(水) 22:54:13.29 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「そうすると、こちらもどこかへ案内しないとフェアじゃないな」

女勇者「ん、そう?」

魔王 「……空からの風景なんてどうだ?」

女勇者「飛べるのっ!?」

魔王 「人、一人ぐらいなら問題ないだろう。
    あぁ心配しなくても上空でも耐えられるよう守護呪文をかけてやる」

女勇者「これは楽しみっ!絶対約束だよっ!」

69: 2009/02/18(水) 22:59:16.49 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「うー、これも飲みきっちゃった……」

魔王 「私も大概おかしいが、お前も飲める女だな……」

女勇者「ここのお酒が美味しすぎるせいだね」

魔王 「よし、秘蔵のやつを片っ端から試してみるか」

女勇者「最後までお付き合いしまっす、えへへ!」

71: 2009/02/18(水) 23:06:18.06 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「――流石に飲みすぎたな、もう目ぼしい酒は大体試したぞ……」

女勇者「魔王ちゃんの城のワインセラーは、広大だね……」

魔王 「まだ上段の棚には手を付けてないと思うが、おっと」ヨロッ

女勇者「っと、危ない。ナイスキャッチだね、へへ」

魔王 「むー……すまんな」

女勇者「……さっきも思ったけど魔王ちゃんってすっごい綺麗な黒髪だね」

魔王 「密かな自慢だ」

女勇者「~っ、今の表情とセリフ!可愛い!もっとぎゅっとしちゃう!」

魔王 「お、おい……苦しいぞ。こら、離せ」

77: 2009/02/18(水) 23:14:25.23 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「いやぁ~本当ラブリーだよ、魔王ちゃん……」

魔王 「離せと言っているだろう……胸で息がしにくい」

女勇者「あ、ごめんごめん。もう無駄にでかくてさ……」

魔王 「……すまん、しかし本当に女勇者は綺麗だと思う
    完璧なスタイルだ、羨ましいぞ…」

女勇者「…私は魔王ちゃんみたいに可愛くなりたかったな……。
    剣なんて上手くなければ勇者にもならないで済んだのに……」

魔王 「……。
     …………」ギュ

女勇者「ま、魔王ちゃん?」

魔王 「人を抱きしめるなんて初めてだ
    魔王としても前代未聞だ、感謝しろ」

女勇者「はは、それは光栄だね……暖かいよ♪」

82: 2009/02/18(水) 23:25:26.35 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「魔王ちゃん、顔が近いよ」

魔王 「お前が近づけているんじゃないか? 」

女勇者「そうかもね」

魔王 「私にそんな趣味は無い」

女勇者「そんなってどんな? 」

魔王 「言わせるな」

女勇者「何で恥ずかしがるの? 言わないと顔がどんどん近づくよ? 」

魔王 「やっぱりお前からじゃないか」

女勇者「目をそらさないで、ほらこっち向いて」

魔王 「やはりお前は危険な奴だな」

女勇者「……自分でも意外なんだけど、結構、いけるかも……」

魔王 「やめろ、離せ。本当にまずい、私にも貞操というものが、だから近づくなと
     あれ? 」

女勇者「……すー……」

魔王 「寝たか……。        私をここまで焦らせたのはお前が初めてだ」

85: 2009/02/18(水) 23:29:59.99 ID:Sr5I4uRm0
魔王 「酒の相手が寝てしまった

     朝か、私も眠くなってきたな……寒い
    
     だからといって寝室まで戻る体力は無い
     女勇者もいる……

     あぁ、問題は解決しているじゃないか」

88: 2009/02/18(水) 23:34:31.01 ID:Sr5I4uRm0
側近 「うぅ…昨日のお酒がまだ残ってる…魔王様は…
     もしかしてまだワインセラーにいるのかな…
    
     こちらにいらっしゃいますか…って
     魔王様が女勇者を抱き枕にっ……!

     そりゃ地下だから寒いけどさ…
     いいのかね、恐怖の魔王様と希望の勇者が一緒に雑魚寝してるって…

     はぁ、とりあえず起こそう」

91: 2009/02/18(水) 23:38:27.64 ID:Sr5I4uRm0
脳内ストックはここまでです、これからは少し時間が掛かるかもしれません。
今、最後の展開が思いついたので途中で投げるのはやめようと思います。

>>83 GJ、有難うございます

95: 2009/02/18(水) 23:43:45.16 ID:Sr5I4uRm0
側近 「お二人ともー、朝ですよー。朝ごはんは…無理そうですね…」


女勇者「頭痛い…」

魔王 「二日酔い解消の魔法が欲しい…」

女勇者「毒消し草は…役に立たないんだよね…」

魔王 「とりあえずベッドだ…寝なおす…ここは床が固くてかなわん」

女勇者「あー、私も一緒に…」

魔王 「構わんぞ、来い…ふぁ…」


側近 「羨ましい…妬ましい…。はぁ…後で水を用意しておこう」

99: 2009/02/18(水) 23:50:38.46 ID:Sr5I4uRm0
女勇者「あー、パジャマが欲しい」

魔王 「あいにく、お前サイズの服はない
     側近では胸が足りんだろう」ヌギヌギ

女勇者「魔王ちゃんはベビードールかぁ」

魔王 「寝る時ぐらい、あんな黒くて重いローブは脱ぎたい」

女勇者「可愛いよ」

魔王 「知っている」

女勇者「とりあえず私も下着でいいや……ねむ」

104: 2009/02/19(木) 00:01:46.60 ID:UVXWqmIR0
魔王 「すー……」

女勇者「すー……」

コック「ハァハァ…
    魔王様の寝姿……深く酔っていらっしゃる今なら気づかれない……はぁはぁ

    あぁ…なんと神々しい……しかも女勇者の胸に甘えるようにうずくまって……うっ」

側近 「そこまでだ、変態」

コック「はっ、側近様!? 」

側近 「罰が足りなかったようだな
    料理の腕が悪かったら直ぐにでも始末したいところなのだが」

コック「す、すみません……でも、ひとついいですか? 」

側近 「何だ? 」

コック「ど、どうしてこんなに早く私に気づいたんですか? 」

側近 「……」

コック「まるで最初から魔王様の部屋にいたみたいでっ
    そ、それに側近様が手にしているのは魔王様の下着、私も狙ってたのにっ

    ど、どうなんですか? な、何で静かに魔法詠唱しているんですか?
    それは人間がくらうと命を落としかねないんですが?
    ギャァァァァァァッァァアァァアッァァァアl」

110: 2009/02/19(木) 00:15:32.18 ID:UVXWqmIR0
女勇者「…ん…今…何時…?」モゾモゾ

魔王 「…夕方だ、な…寝すぎた…
    何か騒がしかった気もするが…」

女勇者「今からじゃ帰れないなぁ…」

魔王 「もう一泊してもよいぞ…」

女勇者「すごい助かるー…はふぅ」

魔王 「いざとなったら転送魔法を使ってやる」

女勇者「魔法って便利ー…頂戴ー…」

魔王 「使いたくなったら私を呼べば良いだろう」

女勇者「それもそうかー、えへへ、ありがと…♪」


側近 「起きぬけまどろみトーク(甘々)だとっ…!?」

114: 2009/02/19(木) 00:22:34.65 ID:UVXWqmIR0
魔王 「少し仕事を片付けてくる…適当に過ごしているがいい」

女勇者「ん、お疲れ様。ちょっとお城を見せてもらおうかな」

魔王 「構わん。それでは行くぞ、側近」

側近 「はい!(やっとまともに会話に入れたよっ)」




側近 「あ、あれ?会話終了?早速仕事、っていうか無言?」

魔王 「何を言っているのだ、少しうるさいぞ」

側近 「失礼しました…」シクシク

121: 2009/02/19(木) 00:33:41.86 ID:UVXWqmIR0
女勇者「広いなぁ…豪華って訳じゃないけど…洗練っていうか。うん、良いお城だ…」


魔族1「お前が女勇者か?」

魔族2「見た目は普通だな」

女勇者「君達は?」

魔族1「魔王様直属の親衛隊だ」

魔族2「昨晩の宴会中には部屋の外で警護をしていた。気づかなかったようだがな」

女勇者「あ、ごめんね…えっと魔族1さんと魔族2さんね。うん、覚えた!」

魔族2「…よくも我らの魔王様と添い寝を…あまつさえ酔いに任せてニャンニャンしおって…」

魔族1「抑えろ、抑えるのだ・・・!」

女勇者「…あ、あのー…もしかして私達の会話って…」

魔族1・2「「最初から最後まで残さず聞こえてたわっ!」」

女勇者「うわっ…地味に恥ずかしい…!」


魔王 「ん…なにやら叫び声が…?」

124: 2009/02/19(木) 00:43:27.11 ID:UVXWqmIR0
魔族1「全く…魔王様の体をまさぐるなぞ…本来は万死に値するところだが…」

魔族2「魔王様本人がご機嫌だから許してやる…」

女勇者「はぁ…それはどうも…で、呼び止めて何の用?」


魔族1「昨日の話し振りを聞いてな、忠告をしにきた」

魔族2「人間と魔族、そう簡単には相容れないのは言うまでもない」

女勇者「…で?」

魔族1「お前のことだから人間の王を説得するとかなんとか考えてるのだろう。
    そんなことで人間と魔族が分かり合えるとでも?
    魔王様は人間に寛大だが、もちろん魔族の中でも派閥があってな
    人間なんて皆殺しにしてしまえという者も多い」

魔族2「あの方は全ての魔族に対して公平だから魔王となったのだ
    敵も味方もいない孤独な王だ」

女勇者「…」

127: 2009/02/19(木) 00:54:14.59 ID:UVXWqmIR0
魔族1「大体、人間と魔族を全面的に仲良くさせようという考え方が愚かだ」

女勇者「そんなのやってみなければわからないじゃない…」

魔族2「そういう問題ではない。」

魔族1「お前がやろうとしていることはただの大規模な思想統一だ。
     誰かを恨む自由も無い世界なんて吐き気がする」

女勇者「…」

魔族2「もう一度、よく考え直せ。お前ならもっと良い何かをおもいつくだろう。
    気を悪くしたかも知れないが我々は結構お前の事を気に入っているんだぞ?」

女勇者「…うん、ありがとう。

    そうだよね、昔からの敵方が良い奴だからって理由で世界がまとまったら苦労しない」

129: 2009/02/19(木) 01:02:52.08 ID:UVXWqmIR0
魔王 「これで書類は全部だな? 」

側近 「はい、お疲れ様でした。魔王様」

魔王 「うむ、すっかり夜だな……。
    女勇者は何処にいる? 」

側近 「今は中庭にいらっしゃいます、剣の稽古をしてらっしゃったようですね」

魔王 「わかった。下がってよいぞ、側近。
    女勇者に食事の時間だと知らせに行く」

側近 「はっ、失礼します(そんな仕事は私共にお任せしていただければ……)」

131: 2009/02/19(木) 01:10:20.26 ID:UVXWqmIR0
魔王 「そろそろ夕食の時間だ」

女勇者「ん、ありがとう」

魔王 「ここの夜は冷える、食事の前に湯でも浴びろ。
    汗が冷えてしまっただろう」

女勇者「何から何まで悪いねー」

魔王 「疲れたか?元気が無いぞ」

女勇者「ちょっと考え事」
魔王 「それなら私が先に湯を使わせてもらおう。 
     先に食事を済ませているがいい」

女勇者「……一緒に入る? 」

魔王 「何を言っているのだ
     別に構わんが……」

134: 2009/02/19(木) 01:17:58.17 ID:UVXWqmIR0
女勇者「何て広い浴室、豪華……」

魔王 「私はこういうリラックスするものに金を惜しまない性質だ」

女勇者「そういえば紅茶も美味しかった」

魔王 「ポケットマネーだがな」

女勇者「しっかりしてるんだね」

魔王 「ふむ、どうも心ここにあらずだな。
    洗ってやるから座れ」


側近 「なんと大胆な!」


女勇者「何で側近さんの声が」

魔王 「隣の部屋で控えておる。
    このような雑事はメイドに任せたいのだが頑なに退かん
    側近、今日は下がれ」


側近 「はい……(涙を飲むのに慣れてしまいそう……グス)」

136: 2009/02/19(木) 01:27:41.46 ID:UVXWqmIR0
魔王 「よっ……ほっ……」

女勇者「あー、気持ちいい。誰かに髪洗ってもらうのっていいねー」

魔王 「そうなのか? じゃあ次は私を頼む」

女勇者「任せといて、とびっきり気持ちよくさせてあげるから♪」

魔王 「余計なことはするなよ」

女勇者「そんな可愛いこと言わないで、手が滑っちゃうかもしれないよ」

魔王 「お前と話していると調子が狂うな……」

138: 2009/02/19(木) 01:38:07.91 ID:UVXWqmIR0
魔王 「確かに洗い方は普通だったが」

女勇者「はぁ、温かい……和む」

魔王 「湯船は広く使え、少し窮屈だ」

女勇者「まぁまぁ、後ろから抱きしめるぐらい良いじゃない
    遠慮なくもたれかかって良いんだよ、ふふ」

魔王 「まったく、角には気をつけろよ……ふぅ」

女勇者「そーそー、そんな感じ。私をベッドのように使って」

魔王 「うむ……」

女勇者「照れてるね」

魔王 「流石に素面の状態で、こんなに近い距離はな」

女勇者「ほっぺた突付いていい?」

魔王 「駄目だ、やめりょ」

女勇者「素早さは私の方が高かったかな♪」

140: 2009/02/19(木) 01:48:54.39 ID:UVXWqmIR0
魔王 「さて、風呂も食事も済んだわけだが……」

女勇者「美味しかったよー」

魔王 「今夜はちゃんと客間を用意させた
    だからベッドから退け」

女勇者「いやぁ人肌恋しくって」

魔王 「どうせずっと考え事しているんだろう? 
    じっくり一人で悩め」

女勇者「……それが魔王ちゃんの気の使い方なんだ。うん、今の私にはそれがいいかも」

魔王 「私に悪戯してばかりではまとまらないだろう」

女勇者「ありがとね、じゃあまた明日」

142: 2009/02/19(木) 01:55:44.25 ID:UVXWqmIR0
魔王 「また明日か……あいつはこれからどうするのだろうな?

     さて、側近」

側近 「ここに」

魔王 「今日はお前が私と一緒に寝ろ」

側近 「承知いたしま…えぇっ!?」

魔王 「あれだけ羨ましそうな視線を向けられれば私にでも分る
    まぁサービスみたいなものだ」

側近 「ま、魔王様……私は、私は……」

魔王 「泣き止んで、早く入って来い。
    何だか今日はベッドが冷たいんだ」

側近 「はい、只今!(これからもお慕い申し上げますっ…!)」


魔王 「あぁ、それとな。
    明日は早起きをするからよろしく頼む」

146: 2009/02/19(木) 02:08:29.59 ID:UVXWqmIR0
魔王 「側近」

側近 「は、はい!」

魔王 「息が荒い、何故か分からんが止めろ」

側近 「す、すみません」

魔王 「それと抱きしめすぎだ、きつい」

側近 「し、しかし激情が止められません」

魔王 「……もういい、仰向けになって左腕を横に伸ばせ」

側近 「え、かしこまりました、って」

魔王 「お前の腕を枕にする。動いて私を起こすなよ」

側近 「これはこれで、いいっ……!」

魔王 (もうしばらくは側近と寝るのを止めよう)

148: 2009/02/19(木) 02:12:46.08 ID:UVXWqmIR0
魔王 「おい、起きろ」

女勇者「……ふぇ?」

魔王 「おはよう。
    準備をしろ、私のローブを貸してやるから厚着をしてテラスまで来い」

女勇者「ん、おはよう……何かよく分からないけど起きる……」


魔王 「こちらの準備はできた、お前はどうだ?」

女勇者「うん、大丈夫。もしかして……」

魔王 「念願の空を拝ませてやろう」

150: 2009/02/19(木) 02:19:20.67 ID:UVXWqmIR0
女勇者「高い! すごい高いよ、魔王ちゃん!?」

魔王 「これぐらいでないと景色を楽しめないぞ
    気合入れて目を開けていろ」

女勇者「う、うん……」

魔王 「まぁ気絶しないだけ流石だ」

女勇者「け、結構、ぎりぎりだけどね……」

魔王 「あの山を過ぎたら空中で停止する。
    時刻もちょうど良いな」


女勇者「あ……」

魔王 「なかなかだろう。
    朝もやに包まれた街、遠くに見える海、真白い日を包む紫苑の色」

女勇者「綺麗……」

魔王 「気晴らしになったか?」

女勇者「うん……うんっ!ありがとね、魔王ちゃん!」

154: 2009/02/19(木) 02:27:52.12 ID:UVXWqmIR0
女勇者「よし、決めた! 」

魔王 「何か思いついたか」

女勇者「作りたいものが出来たの。街に帰って、王様と話して、また学校に通うよ
     ……それでね魔王ちゃんにも手伝って貰いたいことがあるんだけど」

魔王 「構わんぞ、どうせ時間はある」

女勇者「え、どうして?」

魔王 「宿敵である勇者を当然のように見逃したのだ
     貴族からの糾弾は免れんだろうて……魔王も解任だな
     やりたいことも出来たし丁度いい」

女勇者「……ごめんね、私のせいだ」

魔王 「まったくだ。
     お前が私に話をし始めたから、お前と一緒に酒を酌み交わしたから
     お前に抱きついてしまったから
 
     私が人間のことを知りたくなってしまった」

女勇者「おあいこだね」
魔王  「おあいこだな」

158: 2009/02/19(木) 02:35:04.19 ID:UVXWqmIR0
元勇者「ただいまー」

元魔王「おかえり、今日も疲れているな」

元勇者「まーねー、こんなに頭を使うようになるとは思わなかったよ
     肉体労働の方が数倍マシ」

元魔王「自分が作りたいと言ったのだろう?

     名前は……『飛行機』だったか」

元勇者「うん、魔族と協力すれば人も空を飛べると思うんだ。

     私は、魔族と人間が確かに手を取り合ったんだって言う前例を作りたい。
     誰が見ても明らかで分かりやすい形でね。

     あの日、魔王ちゃんに見せてもらった朝日を皆で見たい。
     今すぐに両者が分かり合えなくてもいい、時間を掛けてゆっくり歩み寄って欲しい。
     私の作った船に乗りながらね」

元魔王「だからと言ってスケールがでかすぎだ
    魔族からの協力者は増えているが難しいぞ」

元勇者「いや、まぁ確かに。半永久的に動かすとか考えてたのは浅はかでした…」

元魔王「そんなに空に感動したのか?」

元勇者「何百年経っても、空は変わらずにあると思ったんだ」

160: 2009/02/19(木) 02:41:23.19 ID:UVXWqmIR0
元勇者「そういう魔王ちゃん。歌は上手になった?」

元魔王「うむ、歌はいいな

     私は歌を残したい。人間も魔族も共に歌えるメロディだ
     歌の意味が忘れられても、言葉が残らなくても、歌い継がれる旋律を作りたい
     両者が共通して持っているものを後世に残したいのだ

     学校がこんなに楽しいとはな……人間の文化への探究心には感心する」

元勇者「角はちゃんと隠しているよね」

元魔王「結構大変だ、さっさと隠さないで済む時代になって欲しいぞ」

元勇者「……そういえばお城の方は大変そう?」


元魔王「いや、新魔王も結構元気にしているみたいだぞ。ほら」

元勇者「え?」

新魔王「魔王様ー、側近は、側近は寂しゅうございますー……」

fin

162: 2009/02/19(木) 02:42:47.01
乙!!!!!!

207: 2009/02/19(木) 11:21:41.27 ID:UVXWqmIR0
なんで残ってるんw読み返すと恥ずかしいなw

216: 2009/02/19(木) 13:05:20.21 ID:UVXWqmIR0
何だか保守されているみたいなので後日談を考えてみます

228: 2009/02/19(木) 14:14:06.99 ID:UVXWqmIR0

女勇者「早速、新魔王こと側近さんと飲んでいるわけですが」

魔王 「どうした」

女勇者「側近さん……そんなに私と魔王ちゃんの二人暮しが羨ましい? 」

側近 「それはもう!どれだけ私が妄想したシチュエーションだと思っているんですか!? 」

魔王 「本人を前にしていい度胸しているな、学校では問題なく過ごしているぞ」

女勇者「どうだかね~、魔王ちゃんも意外と抜けてるところがあるし♪」

魔王 「それは誤解だ。異文化への初接触は戸惑うもの、今はもう慣れた」

側近 「ち、ちなみにどのようなイベントが発生したのですか? 」

女勇者「お風呂作るときにね、火が弱くなっちゃったから竹筒で吹いといてーって言ったの
    しばらくしたらすすで顔を真っ黒にした魔王ちゃんが

    『魔法を使っていいか?加減がわからん、いきなり煙に襲われたぞ』
     
    って真顔で呟いたの。あれは笑ったなー」

側近 「何て尊大なドジっ娘ぶりっ……!」

232: 2009/02/19(木) 14:28:17.80 ID:UVXWqmIR0
魔王 「あまり私の恥ずかしい過去を晒すな」

女勇者「まぁまぁ側近さんへの近況報告も兼ねてっていうことで」

側近 「ま、まだまだ素晴らしいシチュエーションがあるのですか? 」

女勇者「いくらでもあるよー。この前の晩ご飯のときも

    『私も料理を覚えよう、いつまでも世話になってばかりではいられん』
    って言って私の横で料理を見てたのよ、結構近い距離でね。

    そこで玉ねぎですよ、カレーだったから。

    魔王ちゃん、目を真っ赤にしながら涙こらえて
     
    『我慢、我慢だ……しっかり、見ないと……』

    ってじっと耐えてたの、いやーもう可愛くて可愛くて」

魔王 「目が痛くならない方法を教わったのはカレーが完成した後だった」

側近 「その場面を想像しただけでお腹がいっぱいです」

女勇者「最高だったよ、切り終わった後に後ろ向いて目をぐしぐしこすってる姿……」

側近 「あぁもう羨ましいな! 」

魔王 「今日の酒は酔えそうにないな……いや逆に酔ったほうが気が楽か……」

235: 2009/02/19(木) 14:38:55.19 ID:UVXWqmIR0
側近 「魔王様が変わらず可愛いことに安心しました。
    女勇者さんへの嫉妬も強まる一方ですが」

魔王 「おかしなことを言うな、私の様に尊厳溢れる魔王なんてそうはいないぞ」

女勇者「んー、大分気安い関係になったからどうにも感じられない……」

魔王 「それは否めない、お前を姉と呼ぶのはまだ違和感が先に立ってしまうけれども」

側近 「そういう設定なんですか!? 」

魔王 「所謂、定番である世を忍ぶ仮の姿だ」

女勇者「側近さんが言うと変な意味に聞こえそうだけどね」

238: 2009/02/19(木) 14:56:20.82 ID:UVXWqmIR0
魔王 「とにかく私の出す高貴なオーラは止めようがないことは事実だ」

側近 「私としては、その言い切り方がすでに愛らしいのですが」

魔王 「黙れ、まだ魔力は衰えてないぞ
    
    まぁいい、聞け。先日、私は学園の生徒会長になった。
    人間の生活を始めて間もない私が選ばれるなど快挙と言っても過言ではないだろう」

女勇者「魔王ちゃん、頭いいからね。歴史とか政治は学者並みだもの」

魔王 「伊達に王はやってないぞ」

女勇者「私もやったなー会長、ちゃんと出来てる? 」

魔王 「問題ない。……壇上で話すのは少し辛いが。

    台が高くて顔が届かん、背伸びをしてなんとかといった所だ。
    なんとも見苦しいが、皆、私の話を笑顔で聞いていてくれる。

    慕われている証拠だな、ふふ」

側近 (マスコットキャラみたいなものですね……)
女勇者(学校も家も変わりないみたいね)

241: 2009/02/19(木) 15:11:14.45 ID:UVXWqmIR0
魔王 「そういえばこの前、両親のことを聞かれた。
    流石に返事に困ったぞ」

女勇者「大魔王で今は隠居してますとか言えないものね」

魔王 「仕方なく、側近を母親代わりにして話をでっち上げた」

側近 「わ、私をですか!? 」

魔王 「実質、私と一番長く接しているのはお前だろう。
    身の回りの世話も含めて」

側近 「私が、母親……。

    魔王様、一回『お母様』って私を読んでいただけませんか? 
    できれば少しセリフも加えて、上目遣いで」

魔王 「なにやら不穏な気が立ち込めているが……よかろう、酒の席だ。

    ……お母様、魔王はお母様の娘で幸せです。ずっと一緒にいてください」

側近 「……いける!これもいけるぞ!! 」



女勇者「演技、上手くなったね」

魔王 「学校では適度に猫を被っているからな」

244: 2009/02/19(木) 15:30:15.94 ID:UVXWqmIR0
魔王 「そういえばお前の話もよく聞くな」

女勇者「私? 何か変なことしたかな」

魔王 「お前がパーティーを組まないで冒険していた理由は感心したぞ」

女勇者「……剣術科の先生、黙ってて欲しかった」

魔王 「戦うのは一人で良い、他の人を危険に晒したくない
    強さが足りなかったら、足りるまで鍛え上げる
    限界が見えたら、頭と技で補う
    私が出来る全力で立ち向かいたい
 
    なかなか良いセリフだ、少し頭が足りないがな
    道理で、あんなに大きな剣を振り回せるわけだ」

女勇者「結局、勢いで旅に出ちゃったけどね。
    やっぱり一人旅は辛かったよ」

魔王 「まぁ飲め、次は側近が暮らしぶりを語ってくれるターンだ」

側近 「わ、私ですか。そんなに面白いことはありませんよ? 」

245: 2009/02/19(木) 15:42:56.18 ID:UVXWqmIR0
側近 「そうですね、最近は新魔王としての仕事が忙しくて」

女勇者「よく新魔王になれたよね、元は魔王ちゃんの側近なのに」

魔王 「私と共に貴族連中から爪弾きにされるかと思ったが」

側近 「それが……今、城で実務を行なえるのは私ぐらいしかいないんです
    魔王様の仕事を手伝っていたのは殆ど私でしたから」

女勇者「あぁ、派閥とか」

側近 「はい。

    そんなわけで他の強い魔族が王になっても
    私抜きでは何の仕事もできないと思います」

女勇者「……さりげなく側近さんって強いの?」

魔王 「推して考えろ、私の側近だぞ」

側近 「わ、た、し、の! なんと勿体無いお言葉! 」

魔王 「頭のネジは外れているようだが」

248: 2009/02/19(木) 16:02:55.42 ID:UVXWqmIR0
魔王 「そういえばコックはどうしている? 言葉もかけず城を出てきたからな」

側近 「奴も出て行きましたよ、魔王様のいない城に意味はないって」

魔王 「なんと……私のカリスマも罪だな」

女勇者「……何かさ、嫌~な予感がするんだけど、その話っていつの話? 」

側近 「3ヶ月程前でしょうか」

女勇者「魔王ちゃんの城から、この街まで大体それぐらい……」

魔王 「ほう、そんなにかかるのか」

女勇者「加えて、向かいの大通りで新しいレストランがオープン間近」

側近 「……考えすぎですよ。
  
    考えすぎですけど戸締りを確認しときましょう」

魔王 「何の話だ? それよりも新しいレストランなら試しに行かないとな
    オープンしたら久々に外食しよう」

女勇者「そうだね、確認するのも大事だよね

    大事だから、魔王ちゃんも気をつけてね」

魔王 「一体、何に気をつけるのだ? 」

250: 2009/02/19(木) 16:13:55.17 ID:UVXWqmIR0
側近 「あ、お酒切れちゃいましたね」

魔王 「今日はペースを抑えているが、早いな」

女勇者「ふふ、こんなこともあろうかとっ!」ドン

魔王 「……どこから酒を出した」

女勇者「地下保管庫!ちょっとずつ買い溜めして隠しておいたのっ♪」

魔王 「ほほぅ、通りで毎月の家計簿に不明な点が多いわけだ」

女勇者「あっ、それは、まぁ気にしない方向で、ね? 」

魔王 「少しそこになおれ。折角、私が家事を手伝おうと家計簿を付け始めたというのに……」

女勇者「いや、その……ごめん」

魔王 「この前もお前という奴は……」クドクド


側近 「あれ?女勇者さんが怒られているのに羨ましいな。
    やけに二人の生活の香りが漂うな、悔しいな、あれ?」

254: 2009/02/19(木) 16:30:15.99 ID:UVXWqmIR0
側近 「そういえば生活費はどこから出しているんですか? 」

女勇者「私が狩りに出かけたりしてるんだ。
   
     薬草を取りに行ったりする簡単な仕事から、厄介な魔物の退治まで幅広く」

魔王 「たまに私も出かけるぞ、話の通じる魔物には退散を促している」

側近 「成る程、二人にはぴったりな職ですね」

女勇者「その合間に勉強したりするからなかなか大変よー」

魔王 「この前なんて風呂の中で寝ていたからな」

女勇者「それは言わない約束」

魔王 「交わした覚えは無いぞ」

女勇者「決まり文句よ」


側近 「そんな会話のやり取りも羨ましいっ……」

276: 2009/02/19(木) 19:20:03.09 ID:UVXWqmIR0
女勇者「しかし、すっかり魔族にも知り合いが多く出来たよ」

魔王 「私の口利きのお陰だな」

女勇者「でも会話できる種族とそうでない種族はなかなか見分けがつかないなぁ」

側近 「慣れれば顔でわかりますよ」

女勇者「だって伝説のクラーケンと船の上で酒盛りするとは思わなかったよ」

魔王 「またワインを樽で持って行ってやろう」

女勇者「酔って絡まってこられるのはもう勘弁だけどね……」

側近 「魔王様は大丈夫でしたか? 」

魔王 「……生憎、絡まるような凹凸が少ないものでな」

女勇者「あら~、嫉妬しちゃったかな? イカ相手に」

魔王 「いや、それはない」

278: 2009/02/19(木) 19:36:03.36 ID:UVXWqmIR0
側近 「酒の肴が欲しくなってきましたね、海産物系」

女勇者「そうだねー、イカ以外で」

魔王 「そうだな。取ってくるか? 
    すこし飛べば漁師さんのところまで直ぐだ」

側近 「今の時間で新鮮な魚って買えるんですか? 」

女勇者「魔王ちゃんが行けば問題ないと思うよ、漁師さんも魔王ちゃんのファンだから」

魔王 「まったく私の人気も留まるところを知らないな」

側近 「魔王様は街の人気者なんですか」

女勇者「街って言うより一部の偏った方々に? 」

側近 「この街は口リコンばかりか……」

女勇者「心配しないで、私がちゃんと守るから」

魔王 「だから口リコンとは何なのだ? 」

280: 2009/02/19(木) 19:47:30.60 ID:UVXWqmIR0
女勇者「じゃあばれない様にねー」

魔王 「うむ、すぐ帰ってくる」

側近 「しっかりと魔王様をお守りいたしますので」

魔王 「護衛はいらんというのに……」

女勇者「まぁまぁ。たまには側近さんと二人で出かけてらっしゃい
    私も何か作って待ってるから」

魔王 「仕方ない。行くぞ、側近」

側近 「はい!」



魔王 「……で、何故に空を飛ばせてくれないのだ? 」

側近 「私が長く魔王様と一緒にいたいからです」

魔王 「手を繋がれるほど暗い道でもないのだが」

側近 「私が繋ぎたいのです」

魔王 「今日は強引だな」

側近 「お酒のせいです、ええ、全部お酒のせいですから。あきらめてください」


282: 2009/02/19(木) 20:00:37.47 ID:UVXWqmIR0
側近 「魔王様……こちらの暮らしは楽しいですか? 」

魔王 「ああ、庶民として生活するのも悪くない
    王としての責務がないからな」

側近 「今まで、本当にお疲れ様でした」

魔王 「このような退陣の仕方をするとは思わなかったがな
    
    ……お前には、迷惑をかけた」

側近 「気になさらないで下さい、私は魔王様に仕えて幸せでした」

魔王 「今はどうだ」

側近 「今も幸せです、離したくありません」

魔王 「たまには私も城に遊びに行きたいが、立場的にな。
    
    だからお前がもっと遊びに来い、今度は私の手料理で迎えてやろう」

側近 「かしこまりました、魔王様。 ……とりあえず」

漁師 「ま、魔王ちゃん!こんな夜に俺を訪ねてくれるなんて!ウヒ!」

側近 「目の前の浮かれた奴に釘をさしておきます」

魔王 「何故だ、私を見てこんなに嬉しそうにしているぞ? 」

285: 2009/02/19(木) 20:09:53.10 ID:UVXWqmIR0
女勇者「お帰りー、遅かったね」

側近 「お陰様でらぶらぶな道のりでした…はふぅ」

魔王 「私は割りと真面目な話をしていたつもりなんだが」

女勇者「大体想像つくよ、ほら」

魔王 「おぉ熱燗か。悪い、ちょっと暖まってるぞ」

女勇者「任せといて、今お魚捌いちゃうから」

側近 「魔王様、お注ぎいたします。っとと」

魔王 「馬鹿者、口から迎えに行かなければならないではないか
    
     まったく……ん」

側近 「あぁ!魔王様がキスをするように口をんー、って!
     んー、って突き出している!! 」

女勇者「ギリギリまで注いだの、わざとでしょ」

側近 「当たり前です」

魔王 (一体、何なのだ)チュー

289: 2009/02/19(木) 20:24:31.44 ID:UVXWqmIR0
女勇者「それでは仕切りなおして乾杯! 」

側近 「女勇者さん、意外と料理上手いんですね
     刺身の切り口が綺麗」

女勇者「へへ、私に残された数少ない女の子スキルだよ」

魔王 「美味だ、ほら側近も遠慮せず食え」

側近 「も、もしかしてそれは私に食べさせてくれるというフラグですか!? 」

魔王 「今日は手が付けられんな。分かった分かった、ほら口を開けろ」

側近 「……はむ。

     最高に美味しいです!感激です! 」

魔王 「お前、絶対に味なんてどうでもよくなってるだろ」

女勇者「側近さんもまだまだね~、この状況で一番幸せなのはこれよっ!

     魔王ちゃん、私の膝に座って、そうそう……で、はい。あ~ん」

側近 「何だその食べさせ方はー!私もやらせて下さい!」

女勇者「いやー、この抱き心地最高だわ」

魔王 「今日の私はおもちゃか、そうか」

290: 2009/02/19(木) 20:40:34.31 ID:UVXWqmIR0
女勇者「ごめんねー、魔王ちゃんが余りにも可愛らしくて」

側近 「面目ありません」

魔王 「まったく、ひょいひょいと私を持ち上げるな」

女勇者「でもスキンシップには慣れないと、学校でも皆可愛がってくれるでしょ? 」

魔王 「確かに、直接に触っては来ないが目はお前達と同じ目だ、危険だ」

側近 「ま、まさか男子からは変な真似をされていませんよね!? 」

魔王 「何が悲しくて子供と付き合わなければならないのだ、何もされてないぞ

    一人、私の頭を撫でようとした奴はいたが」

側近 「何だと」

魔王 「話は最後まで聞け。
  
    私の頭に手を載せようとした瞬間、見えないようにしていた角に刺さってな
    割と深く刺さっていて驚いてたぞ」

女勇者「ばれなかったの? 」

魔王 「一応、記憶は飛ばしておいた。そろそろ退院できるだろ」

女勇者「あぁ窓から落ちた男子の事件ってそれだったんだ」

295: 2009/02/19(木) 20:51:28.05 ID:UVXWqmIR0
側近 「しかし私達も飲んだくれていますね」

魔王 「仕方がなかろう、それが趣味なのだから」

女勇者「話も尽きないしねー」

魔王 「そうだ、お前はあまり話題になってないぞ女勇者」

女勇者「私はそんなに面白い人間じゃないから」

魔王 「そう逃げるな、ネタは大量に学校関係者から仕入れてある」

女勇者「回り込まれてしまった! 」

魔王 「お前のしてきたことは今でも語り継がれ『勇者の伝説』となっているぞ」

側近 「タイトルだけ見ればまともですね」

301: 2009/02/19(木) 21:03:05.96 ID:UVXWqmIR0
魔王 「まずはその1~、『在学中、最も女子からの告白を断った勇者』だ」

女勇者「私は、私はね、普通の恋愛がしたかっただけなのよ……」

側近 「まぁ割と納得で驚きはしませんね」

魔王 「いや、ひとつ面白いエピソードがある」

女勇者「いやー!やめて、それは私のトラウマなの!」

魔王 「バレンタインの日、憧れの先輩にチョコを用意してきた女勇者は女子に追われていた。

    校内中を駆け回り、偶然、窓の下に先輩を見かけた女勇者は迷わずダイブ、4階から。

    『先輩、私の気持ち受け取ってください!』
  
    僕にはとても受け止めきれないと返されたそうだ」

側近 「そりゃそんな豪快に渡されたらひきますね」

魔王 「ちなみにチョコは衝撃で割れていたそうだ」

側近 「オチまでばっちりですね」

女勇者「これがまだ一段階めか……厳しい戦いになりそうね……」

304: 2009/02/19(木) 21:22:59.56 ID:UVXWqmIR0
魔王 「続いてその2~、『常に戦闘を忘れない勇者』」

側近 「勇者としていいことじゃないでしょうか」

魔王 「当時、女勇者は回復呪文ばかりを覚えていた。
    一人旅には回復が必須、攻撃は剣で十分と。
    
    そうはいっても試験というものがある
    女勇者は一週間前から攻撃呪文を詰め込み始めた」

側近 「真面目じゃないですかー。
    どうしました女勇者さん?」

女勇者「先生、本当にごめんなさい。ごめんなさい……」

魔王 「それは歴史の授業だったそうだ
    居眠りをしてしまった女勇者は密かに近づく教師に気づかなかった
    
    『こらっ!』『っメラ!』

    反射的に答えてしまった女勇者、燃え盛る教師の髪の毛」

側近 「ははははっ」

魔王 「しかもここからが伝説なんだ。
    その教師に火傷はなかった、カツラだったんだ。

    『勇者は今まで誰もが知っている、しかし誰も触れられなかった相手を倒した』
    
    このニュースはその日のうちに学園を駆け巡り、教師は隠すことを止めたのであった」

309: 2009/02/19(木) 21:39:36.24 ID:UVXWqmIR0
女勇者「なんかもっといい話はないの……?そろそろ精神的に倒れそうなんだけど」

魔王 「ふむ、そうか? 少し待て今探す」ペラペラ

女勇者「因みに伝説はいくつまであるの……? って言うか探すって何?」

魔王 「ちょうど切りがいいように100にしたらしい、校内だけだが本になってるぞ」

側近 「さすが伝説の勇者様」

女勇者「笑いをこらえてるの、ねぇ。笑いなよ、殴るから」

側近 「ソンナコトナイデスヨ」

魔王 「っと、あったぞ。『一騎当千の勇者』とか『勇者ランチ』だな」

女勇者「あまりよくなさそうなんだけど……内容は? 」

魔王 「一騎当千は体育祭の模擬戦闘の話だな

    最初の対戦相手を予定の時間よりも10分以上早く撃破、急遽二戦目を用意

    あれよあれよと言う間に会場の男子殆どを切り伏せたという伝説だ」

女勇者「……だって、相手が弱かったんだもん」

魔王 「ちなみに勇者ランチはそこまで面白くない
    調理実習が思いのほか得意な女勇者に送られた言葉だ」

女勇者「あっそ……」

319: 2009/02/19(木) 21:58:56.49 ID:UVXWqmIR0
魔王 「女勇者のダメージがひどいのでここで駄目押しだ」

女勇者「悪魔だ、目の前に悪魔がいる……」

側近 「魔王ですよ」

魔王 「一際恥ずかしいといったらこの話、『歌劇も嗜む勇者』だ

    それは生徒会長に就任して間もない頃……」

女勇者「あー!中止、ストップ!!それだけは駄目!!」

側近 「最後まで聞きたいなっと、しばらく麻痺しててください」

女勇者「うー!」

324: 2009/02/19(木) 22:06:06.85 ID:UVXWqmIR0
魔王 「放課後、生徒会室で佇んでいた女勇者
    ふと昨日たまたま見学した演劇部の練習を思い出したのだろうか

    なんと歌いだした。最初はハミングから、やがてしっかりとした言葉へと。
   
    今は部屋に誰もいない夕方、どんどんと声は大きくなり振り付けも優雅になっていく。

    『あぁ私だって女の子らしく歌って踊れるんだわ、うふ』(想像上のセリフ)

側近 「でも、こうして伝説になっているってことは目撃者がいるんですよね? 」
 
魔王 「まぁ焦るな。その生徒会室は学園内では、ほぼ真ん中に位置する。
     ついでにグラウンドに面している大きな窓があるのが、みそだった。

    歌いきった女勇者を待っていたのは大勢の拍手。
    生徒会室の窓から見下ろすとそこには大観衆だが。
    
    ちょうどグラウンドでは体育系の部活動が盛況な時間だったそうだ」
    
側近 「……うわぁ」

魔王 「類まれな声量と満足した表情から一気に青ざめた女勇者
     いつまでも語り継がれることだろう」

側近 「女勇者さん、痛いです……女勇者さーん? 」

魔王 「返事がない、ただの屍のようだ」

328: 2009/02/19(木) 22:19:16.14 ID:UVXWqmIR0
魔王 「さて勇者は自分の過去に押しつぶされてしまったみたいだ」

側近 「人の黒歴史を勝手に暴くとは魔王様もひどいお方です」

女勇者「ふっ、でもこれで同じ攻撃は通用しないわよ……もう知られちゃったからね」

魔王 「『歌劇も嗜む勇者』」

女勇者「あぁぁぁぁっ!」

側近 「まだまだ効果は抜群ですね」

女勇者「もういいよっ!私はこの先、一生歌わないって決めたんだから!」

魔王 「それは困る。今、作曲しているのは二人用の歌なんだ」

女勇者「へ? 」

魔王 「私の初作品だ、記念すべき歌にお前がいないでどうする
   
    ……一緒に歌いたいぞ」

女勇者「……そ、それじゃあ仕方がないね。出来上がったら言って。
    私頑張って練習するから!」



側近 「え!?あれだけ弄くってこういう綺麗なオチなの!?
    寂しいんですけど、魔王様!」

335: 2009/02/19(木) 22:29:55.10 ID:UVXWqmIR0
ここで区切りとしたいと思います

引用元: 魔王・女勇者「「……え、女の子?」」