1: 2009/05/14(木) 01:10:39.54 ID:jV91RZGP0
新兵「やってしまった・・・」

新兵「やってしまったぞ・・・」

新兵「やばい・・・・」

新兵「・・・・・・」

新兵「・・・・どうしよう」

3: 2009/05/14(木) 01:15:13.38 ID:jV91RZGP0
新兵は

手元の紙を見た


新兵「はぁ・・・・」

新兵「この書類出さなきゃいけないのか」

新兵「しかもあれを書かなきゃいけないんだよね」


眉を潜める


新兵「どうしよう・・・・・」

新兵「気が進まない・・・・」

5: 2009/05/14(木) 01:20:00.88 ID:jV91RZGP0


とある町の一般人でしかなかった私は

長年の勉強の甲斐あってか

遂に『国構』という機関の軍試験に合格し

今現在私は

その機関内にいます


そしてさきほど

ある方からある書類を記入して出してくださいと言われました


それが今手元にある物で

6: 2009/05/14(木) 01:24:35.73 ID:jV91RZGP0
私の試験時、この機関の試験は三つの考査で成り立っていました

筆記 実技 実演

実演とは実際の任務をこなす事で

その三つを全て合格して、初めてこの機関の兵隊となれます


ちなみにもう一つ


この機関の試験は、複数人のチームを組んで行う事ができます

というより普通は

知り合いなり仲間なりの複数人でチームを組んで試験を受ける方が大抵だそうです


事実、私もそうでした

7: 2009/05/14(木) 01:29:17.63 ID:jV91RZGP0
そう


新兵「えっと・・・今までの経歴はっと・・・」

新兵「・・・・ロクな仕事してないな俺」


私も

自分含め“4人”でチームを組んで試験を受けました


新兵「メンバーの名前・・・・・・」

新兵「・・・・・」


しかし私は

8: 2009/05/14(木) 01:31:41.10 ID:jV91RZGP0
新兵「・・・・・あんな事がなければ」

新兵「皆で話し合えたのに・・・・・」


たった“1人”で

書類を書く作業を行っています


ただっぴろいこの部屋で

9: 2009/05/14(木) 01:34:22.13 ID:jV91RZGP0
新兵「・・・・・みんな」

新兵「みんなどこに行っちゃったんだよ・・・・・」

新兵「俺を置いて・・・・」













話は

入軍試験時に遡る

10: 2009/05/14(木) 01:38:19.76 ID:jV91RZGP0
入軍試験時 第三 実演


試験官「今ここにいる君達は」

試験官「第一第二を見事通過した、いわば最も軍に近い人間達だ」

試験官「この第三試験も無事通過してくれると信じている」


試験官「さて、無駄話もここまでにして」


試験官「それではさっそく」

試験官「第三試験の概要を説明しよう」

11: 2009/05/14(木) 01:43:26.05 ID:jV91RZGP0
新兵「ここまで来たら、あとは合格するしかねーな」

兵1「もちろん」

兵2「だな」

兵3「まぁ、この第三試験は軽い確認みたいなもんだろ」


俺のチームの4人共全員

筆記実技を無事通過し、残るはこの実演試験のみ


これを合格してさえしまえば

晴れて俺達は軍の新兵になる

12: 2009/05/14(木) 01:46:18.65 ID:jV91RZGP0
試験官「第三試験、実演の試験内容及び任務内容は『町の調査』」

試験官「それ故このような遠い町まで来てもらった」

試験官「あと、今回は筆記実技の時とは違い」

試験官「チーム内での協力も可とする」

試験官「個々が行う任務はこれから紙を配る」

試験官「その内容を頼りに、是非全力を尽くしてくれ」

試験官「再集合はここに3時間後」

試験官「それまでに任務を完了させ、尚且つここに着いていれば合格とする」

13: 2009/05/14(木) 01:50:23.55 ID:jV91RZGP0
『町中の自然調査だってさ』
『なにそれ・・・』


新兵「・・・なんか結構簡単そうな感じっぽいね」

兵1「俺達もそうだといいな」

兵2「俺らの任務はっと・・・・」


ペラ


新兵「・・・・どう?」

兵2「・・・・・・・」

兵3「なんだ?」

15: 2009/05/14(木) 01:54:39.29 ID:jV91RZGP0
兵2「・・・・意識調査だってさ」

新兵「意識調査?」

兵2「簡単に言うと、町に対する人々の感想的なのを」

兵2「聞いて調べて来いって事らしいけど」


兵1「・・・・ほらな」

兵1「やっぱり軽い確認程度なんだって」

新兵「・・・・学校の宿題レベルじゃないか」


兵3「いやでも分からんぞ」

兵3「もしかしたら、町の住人がみんな冷たいとか」

兵1「まさか」

16: 2009/05/14(木) 01:57:23.45 ID:jV91RZGP0
町の住人「・・・っていうところかしらねぇ」

新兵「ご協力ありがとうございました」

町の住人「いえいえ、お疲れ様です」


ガチャ

俺達は店を出た


新兵「・・・・・・」

新兵「・・・・余裕だ」

兵1「思った以上に確認程度だなこりゃ」

17: 2009/05/14(木) 02:01:13.21 ID:jV91RZGP0
紙に書かれていたのは、町の住人の意識調査


そして俺達は

なんら問題なく数十分で、任務を終えた


新兵「これで・・・・おkだよな?」

兵2「ああ、多分・・・」


試験官に手渡された紙の空欄に

調査結果を記す


兵1「じゃああとはこれを指揮官の所に持ってけば・・・・・」

兵3「合格・・・・?」

新兵「実感沸かねえな」

20: 2009/05/14(木) 02:04:20.96 ID:jV91RZGP0
合格・・・・・合格・・・・・・


俺達はきっと

あの時心臓が恐ろしく高鳴っていただろう

同時に

今までの試験との難易度の違いに

心に余裕を持たされ

恐ろしく油断をしていただろう

そう、きっとそうだ

だからこそ俺は今



孤独な1人

23: 2009/05/14(木) 02:07:24.25 ID:jV91RZGP0
全ての発端は

彼の一言


新兵「じゃあもうさっさと集合場所に向かおう」

新兵「予定時間より早くなるのはなんら問題ないだろ」

兵2「そうだな」

兵2「紙を失くしたりなんかしたら大変だからな」

兵1「・・・・・なぁなぁ」

新兵「ん?どした?」

兵1「ちょっと提案があんだけどさ」

兵1「・・・・せっかくこんな遠い町まで来たんだぜ?」

25: 2009/05/14(木) 02:09:09.58 ID:jV91RZGP0
兵1「ちょっとくらいさ」



















兵1「散策でもしようぜ?」

26: 2009/05/14(木) 02:12:16.11 ID:jV91RZGP0
兵1「まだ2時間以上はあるんだろ?」

兵1「だったら少しくらい大丈夫だろって」

新兵「何言ってんだ」

新兵「観光なんか何時だってできるだろうが」

兵2「でもよく考えると次この町に来れるかも分からないし・・・」

兵3「確かに少しくらいなら・・・・・」

新兵「お前らまで・・・・・」


新兵「・・・・・・」

新兵「・・・・・・分かったよ、でも少しだけだぞ」

27: 2009/05/14(木) 02:16:11.60 ID:jV91RZGP0
結局多数決に負けて俺は妥協し

町中を少しだけ見て回る事にした


兵1「こう見回してみると」

兵1「俺達のいた町とは随分違うよなぁ」


しかし、改めて眺めてみると

実に整備された町だと分かる


兵2「俺達の町は特別だったんだろうよ」

新兵「・・・・その話はやめろ」

兵3「忘れないように喋らないようにって決めたろうが」

兵1「悪い悪い」

28: 2009/05/14(木) 02:20:06.47 ID:jV91RZGP0
そんな雑談を繰り返し

歩き始めて数十分

俺達・・・・いや、俺は


兵1「この壁画綺麗だなぁ・・・・」

兵2「凄いねこれ」

新兵「俺にはよく分からん・・・・・・・」


町の、ある場所の壁に描いてあった壁画

その裏に


何かがあるのを見つけた

29: 2009/05/14(木) 02:24:07.38 ID:jV91RZGP0
新兵「・・・・ちょっとこれ見てくれよ」


新兵が見つけたのは


兵1「・・・・・穴?」


地面にぽっかり開いた、穴


兵1「なんだこれ」

新兵「分からん、後ろに回ってみたらあった」

兵3「あれじゃない?」

兵3「工事ミスとかなにかで穴開けちゃったとか」

兵3「ほら、きっとそれで隠れるように壁画があるんだよ」

新兵「なるほど」

30: 2009/05/14(木) 02:26:42.05 ID:jV91RZGP0
穴の中の先は

暗くてよく見えない


兵1「・・・・・よし、入ってみるか」

兵2「え、まじで?」

新兵「おいおい・・・・」


何を言ってるんだこいつは


新兵「どこに繋がってるかも分からん上に」

新兵「中がどうなってるのかも分からないんだぞ」

31: 2009/05/14(木) 02:29:58.49 ID:jV91RZGP0
兵1「大丈夫だって」

兵1「多分傾斜が斜めになってるから落下死とかはしねえよ」

兵2「そういう問題じゃないと思うけど」


兵3「どっちにせよ行くなら早く行こうぜ」

新兵「うあ、肩を掴むんじゃねえ」

兵1「いえーい決定ー」


兵2「・・・・緊張の糸が完全に切れてるな」


既に試験の事が頭から離れつつあった俺達は

吸い込まれるかのように

穴の中に入っていった

32: 2009/05/14(木) 02:33:38.00 ID:jV91RZGP0
穴の中


兵1「結構長い滑り台だったな」

新兵「おい、どうやって帰るんだよ」

新兵「・・・・おまけに真っ暗だしよ」

兵1「どうしようね」


兵2「なぁ新兵、紙持っといてくれ」

兵2「俺の服ポケットねえんだよ」

新兵「あいあい」

兵3「う~ん・・・・・」

兵3「しかし本当に何も見えん・・・・」

33: 2009/05/14(木) 02:37:19.27 ID:jV91RZGP0
穴の中は真っ暗

おまけに空気もよどんでいる


足元には水の感触もあり

もうなんていうか


新兵「・・・・気持ち悪い」

兵1「俺はこういう雰囲気好きだけど」

兵3「俺も俺も」

新兵「はは・・・そうですか」

34: 2009/05/14(木) 02:42:07.79 ID:jV91RZGP0
手探りで歩いて

いくらか経った頃


新兵「んん」

兵1「どうした?」

新兵「今少しだけ風が流れなかったか?」

兵2「俺も思った」


ヒュ~


微かに風が流れているのを感じた

35: 2009/05/14(木) 02:44:36.68 ID:jV91RZGP0
兵1「あ、ほんとだ」

兵3「じゃあもうそろそろ外に出るって事か?」

兵1「短いトンネルだなおい」


新兵「・・・・んん」

新兵「待て」



新兵「それ以外の音も何か聞こえるぞ」


兵1「?」

兵2「どんな音?」

37: 2009/05/14(木) 02:48:35.28 ID:jV91RZGP0
新兵「いや・・・・なんていうか・・・・」


バチャバチャ


新兵「水がはねる音っていうか」

兵2「俺も今聞こえた」

兵3「・・・聞こえるか?」


バチャバチャバチャ


兵1「あ、聞こえた」

兵3「なんだ?魚が跳ねてるのかな」

38: 2009/05/14(木) 02:52:03.24 ID:jV91RZGP0
新兵「こんな汚いであろう浅い水に魚がすめるわけが・・・」

兵2「じゃああれじゃね?」


バチャバチャバチャバチャ


兵2「誰かが歩いて水が跳ねてる音だろ」

兵1「こんなとこを?」

新兵「工事のおっさんが注意しに来たんじゃないか」

兵3「それまずくねーか」

兵1「大丈夫だろ、間違って迷ったって言えば」

新兵「・・・っていうかさ」


バチャバチャバチャバチャバチャ


新兵「段々音大きくなってないか」

39: 2009/05/14(木) 02:56:06.27 ID:jV91RZGP0
水音は

どんどん大きくなっていく


新兵「・・・・誰か近づいてきてるのかな」

新兵「しかも一人や二人じゃないっぽい」


兵1「どういうこった?そんなに大掛かりな工事なのか?」

兵2「それかもしくは、別の事情があるとか」

兵1「別の事情?」

兵2「例えば、ここらへんは危険とか」

兵3「まじかよ」

新兵「まぁなんにせよ」

新兵「声をかけて説明すれば真っ暗でも気づいてくれるだろう」

40: 2009/05/14(木) 02:59:06.27 ID:jV91RZGP0
遂に水音は

4人の目の前で止まった


兵1「・・・・今目の前にいるのかな?」

兵2「暗くて分からん」

兵1「あのーすいません、実は俺達迷ってしまったんですけど・・・」


返事は無かったが

代わりに



金属音が聞こえた

41: 2009/05/14(木) 03:02:12.61 ID:jV91RZGP0
カチャ


兵2「・・・今度は何の音だ?」

兵1「俺もよく分から」



ズドン



ビチャ



新兵「・・・・・・・」


新兵「・・・・・ん?」

42: 2009/05/14(木) 03:05:36.65 ID:jV91RZGP0
カチャ


ズドン


カチャ


ズドン


カチャ


ズドン


カチャ







ズドン

43: 2009/05/14(木) 03:08:15.78 ID:jV91RZGP0
まず最初に


変な金属音がした


その次に


花火みたいな大きな音が聞こえた


交互に何回か聞こえた


そして


その後に

45: 2009/05/14(木) 03:09:28.16 ID:jV91RZGP0
俺の顔に生暖かい何かの液体が付いた時



















理解した

47: 2009/05/14(木) 03:12:41.59 ID:jV91RZGP0


まさか・・・・・

撃たれた・・・・・・?


さっきの水音の主達に・・・・


銃で撃たれた・・・・・・?



新兵「・・・・・・げろ」

新兵「全員逃げろ!全速力だ!」

新兵「ひたすら逃げるんだ!」



無意識の内に叫ぶ俺

48: 2009/05/14(木) 03:16:29.57 ID:jV91RZGP0
新兵「おい!聞いてんのかよ!」

新兵「返事くらいしろ!」


誰一人からも

反応がない


新兵「嘘だろ・・・・・」

新兵「まさか全員・・・・・」


カチャ

バチャバチャ


新兵「・・・・・くそっ」

50: 2009/05/14(木) 03:20:35.70 ID:jV91RZGP0
何度叫んでも


他の奴らからの反応はなく


叫び声と水音が地下道内をこだました


俺は


見えない背後を


何度も振り返りながらも




がむしゃらに突っ走った

51: 2009/05/14(木) 03:23:24.61 ID:jV91RZGP0
集合場所


指揮官「あと5分か・・・・」

指揮官「てっきり全員なんなく通過すると思ってたんだがな」

指揮官「4人もまだ来てないとは」


ザワザワ


指揮官「おい、うるさいぞそこ!」


『指揮官・・・・・』

『そ、それが・・・・』


指揮官「なんだ?」

52: 2009/05/14(木) 03:26:19.01 ID:jV91RZGP0
指揮官は見た


『彼が・・・・・・』

『ここに倒れてて・・・・』


隊員の肩に腕を乗せ

足を引きずっている


指揮官「・・・・・・」

指揮官「・・・どういうことだそれは」



血まみれの男を

55: 2009/05/14(木) 03:30:08.45 ID:jV91RZGP0
あの後仲間がどうなったかを知らない


ただ自分が逃げるのに必死で

気づいたら外に出てて

俺は町の小さな病院に運ばれていた


後で他の人に聞いた話だと

俺は返り血まみれではあったが

怪我自体はさほど大したことは無く

むしろ脳のショックが大きかったせいで倒れたらしく

二日間ほど町の病院で寝続けだったそうだ

57: 2009/05/14(木) 03:33:52.54 ID:jV91RZGP0


町の病院 病室


新兵「どういう事ですか・・・」

新兵「これからすぐ本部に帰るって・・・・」


問題は

まだ続いた


指揮官「言ったとおりそのまんまの意味だ」

指揮官「試験は終了した」

指揮官「これから本部で入軍式も行わなくてはならない」

指揮官「つまり、ここに何時までも留まる訳にはいかない」


新兵「ちょ・・・ちょっと待ってください!」

新兵「それじゃあ俺の仲間は見捨てるって言うんですか・・・・」

59: 2009/05/14(木) 03:36:57.90 ID:jV91RZGP0
指揮官「別にそういう訳ではない」


指揮官「君が寝ていた二日間」

指揮官「全員に協力してもらい、機関期限を延ばしてまで捜索をした」

指揮官「本人どころか何も見つからなかったがな」


新兵「二日・・・・・」

新兵「俺はそんなに寝ていたのですか・・・・」


指揮官「その通りだ」

指揮官「そして報告がもう一つ」

60: 2009/05/14(木) 03:40:07.21 ID:jV91RZGP0
指揮官「おめでとう、君は無事試験を通過した」

指揮官「無事かどうかは分からないが」


指揮官「君が着ていた服に、あの依頼書が入っていた」

指揮官「内容も一応こなせていたので」

指揮官「君は合格ということにした」


新兵(そういえばあの紙・・・・)

新兵(あいつの代わりに持ってたんだっけ・・・)

新兵「そう・・・ですか・・・・」


指揮官「どうした、嬉しくなさそうだな」

61: 2009/05/14(木) 03:43:30.76 ID:jV91RZGP0
新兵「そりゃあ・・・・・」

新兵「こんな事になってなかったら嬉しいですよ・・・・」


指揮官「だろうな」


指揮官「まぁしかし」

指揮官「これで十分すぎるほど分かっただろう」









指揮官「軍に入る事が、どういう事か」

62: 2009/05/14(木) 03:47:44.29 ID:jV91RZGP0
指揮官「軍には、見捨てるという選択肢が常にあるという事」

指揮官「任務中の油断が、何を招くのか」

指揮官「取り返しのつかない失態を犯した時の、その感情」

指揮官「私も状況こそよく掴めてはいないが」


指揮官「こんな思いを二度としたくないと思うのなら」

指揮官「行動は考えてすることだな」


そう言い残し

彼は病室から出て行った


新兵「・・・・・・」

63: 2009/05/14(木) 03:51:58.58 ID:jV91RZGP0
新兵「きついなぁ指揮官は・・・・」


その指揮官が出て行くのと同時に

我慢していたのだろうか


新兵「・・・・うぐっ、ぐひっ」


突然泣いた


新兵「くぞう・・・・・ぢくじょう・・・・」

新兵「なんでごんな事に・・・・・・」


なぜか


泣いた

64: 2009/05/14(木) 03:55:07.06 ID:jV91RZGP0
数時間後また指揮官がやってきては

突然「もう大丈夫だろう」などという理不尽な事を言われ

無理矢理、本部へ帰る用の大型車に詰め込まれた


もしかしたら指揮官は

泣くのを我慢していた俺を考慮してくれたのだろうか


ちなみに車の中に入った時に

少しばかり回りの視線が気になったが

俺は軽い会釈だけして席に着いた

66: 2009/05/14(木) 03:57:58.31 ID:jV91RZGP0
俺の隣の席は


















三席空いていた

67: 2009/05/14(木) 04:01:19.60 ID:jV91RZGP0
本部に帰って来た俺達を

色んな人達が出迎えてくれた

きっと彼らは軍の人達で

合格のお祝いをかねて出迎えをしにきたのだろう


皆は笑って喜んでいた

中には胴上げしたり踊ったりする者もいて

みんな楽しそうに騒いでいた



その光景を眺めていた俺は

きっと怖い顔をしていた

68: 2009/05/14(木) 04:05:05.03 ID:jV91RZGP0
軍中庭 入軍式


全員壇上に体を向け

整列した


総統「私は軍内で総統の立ち位置にいる者だ、よろしく」

総統「そして」


総統「改めて言おう、おめでとう」


総統「これからは世の為軍の為人の為に」

総統「諸君らのより一層の成長を期待したい」

69: 2009/05/14(木) 04:08:18.01 ID:jV91RZGP0
総統「・・・・では、話はこれで以上」

総統「各自決められた寮へ向かってくれ」

総統「分からない者は、管理の人間に聞くといい」


総統「なお、本格的な任務の開始は少し先となる」

総統「それまでに準備を整えてきて欲しい」



総統「それでは解散とする」

70: 2009/05/14(木) 04:12:32.21 ID:jV91RZGP0
軍内


管理「新兵さんの階級は三級となっておりますね」

管理「三級の方の寮はあちらになります」

新兵「あ、ありがとうございます・・・」

管理「ちなみに」

管理「こちらの情報ですと、4人のチームを組んでなさっている」

管理「という話なのですが・・・」

管理「なので、部屋も4人用の広めの場所を・・・・」


新兵「・・・・・・」


新兵「・・・そのままで結構ですよ」

71: 2009/05/14(木) 04:17:27.36 ID:jV91RZGP0
寮 部屋前


管理「ここになっております」

新兵「呼び方は部屋でいいんですか?」

管理「はい、私達も普通にそう呼んでいます」

管理「あ、あとですね」

管理「部屋の中の机の上に書類がありますので」

管理「内容を書き添えた後提出していただけると有難いです」

新兵「はい」

新兵「了解しました」

72: 2009/05/14(木) 04:18:34.08 ID:jV91RZGP0
ここまでが




俺の昔話で










ここからが




私の今のお話

75: 2009/05/14(木) 04:22:07.94 ID:jV91RZGP0
部屋内


新兵「あと抜けているところは・・・・・」

新兵「俺の名前・・・・・・・」


そうだ

もう自分の事を俺なんて言うのはやめよう


新兵「・・・よし」

新兵「書類全部埋まったぞ」


これからは

私は心を入れ替えよう

76: 2009/05/14(木) 04:25:57.80 ID:jV91RZGP0
一人で使うには

広すぎる部屋の中


書類を目の前にして

私は誓う


もうあんな事になるのはごめんだ

これからは

決して心を揺らがせない

そんな軍の人間になろう

そうしていつか

私がそうなれたなら



もう一度行こう、あの町に

77: 2009/05/14(木) 04:27:54.94 ID:jV91RZGP0
そう独り言を呟くと

新兵は、書類を提出しに部屋を出た


彼が思っている以上に早く

















あの町に行く機会が出来るとも知らずに

78: 2009/05/14(木) 04:31:09.38 ID:jV91RZGP0
同刻 総統室


特級兵1「珍しいですね」

特級兵1「総統直々のお呼び出しというのは」

特級兵2「でもなぜわざわざ・・・・?」

特級兵2「緊急でもなさそうですし・・・」


総統「まぁまぁ」


総統「とりあえず落ち着いてこれを見てくれたまえよ」

79: 2009/05/14(木) 04:35:08.05 ID:jV91RZGP0
『国構』

国間を制定する機関で『国構』

世界中の町や村、国の調査を活動の主とした

いわば世界規模の調査隊

唯一どの場所でも武装が認められ

それ故に

もちろん軍と呼ばれているからでもあるが

調査だけの仕事が回ってくるわけではなく

中には殲滅や捜索なんていう

危険な仕事もこなす機関でもある

80: 2009/05/14(木) 04:39:09.74 ID:jV91RZGP0
そしてこの『国構』には

特別な階級制度が存在する


特級兵1「・・・・・なるほど」

特級兵1「確かにこれは一級以下に任せられる内容の任務ではないですね」


総統「情報の確実性には少し自信を欠くのだが」

総統「万が一の事も考えて、君達特級の人間に任せようと思ってね」


特級兵2「でも・・・まさかあいつが・・・・」


それは『級制』と呼ばれる制度

82: 2009/05/14(木) 04:43:27.37 ID:jV91RZGP0
この機関の人間は

雑務を除けば、大きく6つの階級に分けられる


一級から五級までの兵と

特級の兵


総統、指揮官も特級の分類に含まれ

特級になれるのは機関内でも極僅か

当然、

危険な任務は特級に回されやすく


今回の場合も、それに添っている

83: 2009/05/14(木) 04:48:17.31 ID:jV91RZGP0
特級兵1「・・・危険人物の捜索、ですか」


総統「軍の北東方向先に小さな森があるんだが」

総統「そこでその人物を見かけたとの報告があった」

総統「詳しくはそこに書いてあるから、説明するより読んだ方が早いだろう」


特級兵2「しかし」

特級兵2「この情報はどこから?」


総統「簡単に言えば、近くの村民の目撃情報だな」


特級兵2「なるほど」


総統「それでは頼むよ、お二人さん」

84: 2009/05/14(木) 04:52:09.97 ID:jV91RZGP0

2人は

一礼後、総統室を後にした


総統「・・・・・・」

総統「さて書記官」

書記官「は、なんでしょうか」

総統「彼らは」



総統「・・・・・どう動くんだろうね」

86: 2009/05/14(木) 04:57:11.44 ID:jV91RZGP0
軍北東の森


情報によるとこの森は

四季を問わず常に木々が緑色をしているという

有名且つ少々特異な森らしい


特級兵1「面積自体はなさそうだが」

特級兵1「こう緑が深いと捜索も大変だな」

特級兵2「ですね」

特級兵1「てかよくその村民も見つけられたなぁ」

特級兵2「あ、そういえば奥の方で見つけたって書いてありますね」

特級兵1「先に言え先に」

87: 2009/05/14(木) 05:01:12.37 ID:jV91RZGP0
軍北東の森 奥


特級兵1「ここらへんか?」

特級兵2「これによると、そうっぽいですね」

特級兵2「ちなみにその村民は木こりだそうですよ」

特級兵1「なるほど、それでこんな奥に」

特級兵1「・・・・っていうか」


2人は、周りを見回す


特級兵1「・・・かなり大変だぞこんな視界の悪い中で探すの」

特級兵2「ですね」

88: 2009/05/14(木) 05:05:07.20 ID:jV91RZGP0
特級兵2「わざわざ同じ事を二回言ってしまうほど大変って事ですね」

特級兵1「からかうんじゃないよまったく」

特級兵2「それよりどうやって探します?」

特級兵2「とてもじゃないけど捜索は大変・・・ってこれ言うの三回目ですねふふ」


特級兵1「程ほどにしとこうな」

特級兵1「そもそもその心配は無い」


特級兵1「これがあるからな」

特級兵2「・・・・おお?」

89: 2009/05/14(木) 05:09:07.87 ID:jV91RZGP0
特級兵1は

謎の機械を取り出した


何かで例えるなら

パソコンにアンテナが付いたような物を


特級兵2「・・・・なんですかそれ」

特級兵1「対人間探索反物レーダー」

特級兵1「ごめん正式名称忘れた」

特級兵2「でしょうね、なんか難しそうな名前っぽいですもん」

90: 2009/05/14(木) 05:14:55.97 ID:jV91RZGP0
特級兵1「ともかくこの機械はあれだ」


特級兵1「一定範囲内に存在する人間を探知できるというやつだ」

特級兵1「正確には、人間程度の大きさの生体反応がある生物を探知する」


特級兵2「なるほど」


特級兵1「もちろん木や建物もレーダーが貫通するから」

特級兵1「何かが邪魔で探知しないという事も無い」


特級兵2「素晴らしいですね」

91: 2009/05/14(木) 05:20:08.78 ID:jV91RZGP0
起動させてから数時間


特級兵1「・・・・・・」

特級兵2「・・・・何も反応しませんね」


レーダーは

何の反応も示さない


特級兵2「という事はこの周りには人がいないって事ですかね?」

特級兵1「・・・・・・」


機械を見つめる二人


特級兵1「・・・・・おかしいな」

92: 2009/05/14(木) 05:26:22.85 ID:jV91RZGP0
特級兵2「機械の調子が、ですか?」

特級兵1「違うそうじゃない」

特級兵1「・・・このレーダーはお前が思っている以上に探索範囲が広いんだが」

特級兵2「ん?どういう?」

特級兵1「つまり」

特級兵1「森の中だけじゃなくて、森の外まで探知できるくらい高性能なんだこの機械は」

特級兵1「で、だ」



特級兵1「・・・森の外にすら人の反応が無い」

特級兵2「??」

103: 2009/05/14(木) 13:38:04.11 ID:jV91RZGP0


特級兵1「その村民は木こりなんだろ?」

特級兵1「なら当然、森の近くに村や町があってもおかしくないはずだ」

特級兵1「だがこの森の中は勿論、森の外の周りにすら人がいない」

特級兵1「おまけに人が集まっていればそれだけレーダーに反応しやすくなるんだから」

特級兵1「外にまで何の反応も無いのは変だな」


特級兵2「・・・・それじゃあ」

特級兵2「この情報はガセ、って事ですか?」


特級兵1「・・・・・・」


特級兵1「それだけならまだマシだ」

104: 2009/05/14(木) 13:42:34.57 ID:jV91RZGP0
特級兵1「不自然すぎる」

特級兵1「総統直々のお達しなのに」

特級兵1「この確実性の無さ」


特級兵2「うーん・・・」

特級兵1「なのにわざわざ特級の人間をよこすなんて明らかにおかしい」

特級兵2「でもじゃあなんで・・・」

特級兵1「それはまだなんとも言えんが」



特級兵1「とりあえず本部に戻るべきだろう」

105: 2009/05/14(木) 13:46:34.27 ID:jV91RZGP0
(おかしい・・・)

(おかしすぎる・・・・)


特級兵1は機械の電源を切り

2人は森の外に出た


(どういうことなんだ・・・)

(一体・・・・)


そして

来た車に乗り込み、本部に一度帰還する事にした

106: 2009/05/14(木) 13:50:33.86 ID:jV91RZGP0
特級兵1「・・・・一体」

特級兵1「どういう事ですかこれは」


総統室

中からは怒号が聞こえる


総統「落ち着いてくれ」

総統「許可無し所か上司に怒号だなんて」

総統「君らしくもないぞ」


特級兵1「御託はいいんですよ」

そう言い放つと同時に


バンッ

書類を机に叩き付けた

107: 2009/05/14(木) 13:55:33.61 ID:jV91RZGP0
特級兵1「単刀直入に言わせてもらいます」

特級兵1「なぜこの依頼を総統自ら」


特級兵2「おい・・・口が過ぎるって・・・・・」


特級兵1「捜索をしてみた上に」

特級兵1「本部に帰還する前に森の外を少し回ってもみましたが」

特級兵1「町村どころか人の影すら見当たりませんでしたよ」

特級兵1「この“村民”の詳細を詳しく聞きたいものですね」

特級兵1「そもそもあの深い緑の中で人の顔を判別できるのかも怪しいですしね」


特級兵2「おい!いい加減にしろよ!」


総統「・・・・・・」

108: 2009/05/14(木) 14:00:13.41 ID:jV91RZGP0
特級兵1「それに」

特級兵1「知名度の高い森にわざわざ逃げ込むなんて話もおかしい」


総統「・・・・・・・」


総統の顔が曇る


特級兵1「もしこんな重大なミスを犯しているのでしたら」

特級兵1「機関の管理体制を問わざるを得ません」


特級兵1「・・・もし別の考えをお持ちでこのような事を行ったのなら」

特級兵1「私はあなたに失望します」

109: 2009/05/14(木) 14:05:13.21 ID:jV91RZGP0
総統「・・・・・・・」



総統「・・・・さすがだよ」



総統「私が悪かった」











本当の事を話そう

110: 2009/05/14(木) 14:10:13.11 ID:jV91RZGP0
特級兵1「本当の事?今度は開き直りですか?」


総統「いや、そうではない」


特級兵1「では何の事なのでしょうか?」


特級兵2「だからその口調やめろって・・・・」

特級兵2「・・・・・・・」

特級兵2「・・・でも、俺もその本当の事とやらを聞きたいです」


総統「・・・・・ああ」

総統「これから本当の事を話させてもらうよ」

総統「謝罪もこめて」

111: 2009/05/14(木) 14:15:19.07 ID:jV91RZGP0
総統「じゃあまず、謝罪からさせてもらうよ」

総統「手間をかけさせて本当にすまない」

総統「だが、名目が必要だった」


特級兵1「・・・・・」

特級兵2「名目・・・・ですか?」


総統「そう」


総統「私が任務の依頼で君達を呼び出し」

総統「その任務の情報は外れに終わったという」

総統「そんな名目が」

113: 2009/05/14(木) 14:20:05.71 ID:jV91RZGP0
総統「私は安易に人材を呼べる立ち位置じゃなくてね」

総統「最初に君達を呼び出した時も、それなりの手続きを行った」

特級兵2「??」


特級兵1「・・・・要は」

特級兵1「私達が総統に呼ばれても不自然が無い理由を作りたかったって事ですか」


総統「その通りだ」

総統「ちなみにこの依頼は全部捏造、もちろん村民の話も」

総統「隣にいる書記官に内密にやってもらった」


書記官「どうも」


特級兵1「・・・・・・」

114: 2009/05/14(木) 14:26:09.85 ID:jV91RZGP0
総統「重要な任務があって、その情報が外れだという名目があれば」

総統「君達が私に呼び出された理由も2回も総統室に来る理由も

総統「皆それぞれに理解してくれるだろう」

総統「下手に怪しまれずに済む」


特級兵2「・・・・・でも」


特級兵2「それに何の意味が?」


特級兵1「なるほど」

特級兵1「・・・・・つまり」

115: 2009/05/14(木) 14:29:54.19 ID:jV91RZGP0
特級兵1「・・・・これからする話こそが」






特級兵1「本当の依頼、ってことですか」






特級兵2「本当の・・・・・」







特級兵2「依頼・・・・・?」

116: 2009/05/14(木) 14:34:21.50 ID:jV91RZGP0
総統「そう」

総統「これから私がする話は、ここにいる者だけにしか話さない話」

総統「だから誰にも怪しまれないような手筈を行った」


特級兵1「そして」

特級兵1「ここだけの秘密という事は、内部の人間にも知られてはいけないという事」

特級兵1「つまり、本題の依頼というのは・・・」



特級兵2「・・・・・・」


特級兵2「・・・・『内部調査』、ですか」

117: 2009/05/14(木) 14:39:17.30 ID:jV91RZGP0
一気に話し終えて疲れたのか

総統は一度席を立ち

大きく背伸びをした


総統「はぁ・・・・疲れた」


書記官「では」

書記官「続きは私の方から話をした方がよろしいでしょうか」


総統「ああ、悪いねお願い」


書記官「かしこまりました」

書記官「・・・それでは、さっそく続きを」

120: 2009/05/14(木) 14:44:29.37 ID:jV91RZGP0
書記官「お二人様、これを見ていただけますか?」


そう言うと書記官は

1枚の書類を取り出した

今度は、誰かの顔写真が貼ってある


特級兵1「顔付きか」

特級兵2「この人は?」


書記官「先の入軍試験で、新しく階級制三級に配属された者です」


特級兵2「いきなり三級配属・・・」

特級兵1「で?こいつがどうしたんだ?」

121: 2009/05/14(木) 14:48:31.13 ID:jV91RZGP0
書記官「この人材は少し変わっておりまして」

書記官「入軍試験の実演考査中に」


書記官「・・・お仲間を3人失っているのですよ」

書記官「そのまんまの意味で」


特級兵1「そんな馬鹿な」


特級兵1「今期の実演試験がそんな難しいなんて話も」

特級兵1「チームの中の一人だけが合格なんて話も聞いた事が無い」


書記官「ですから、“変わった人材”なのですよ」

123: 2009/05/14(木) 14:52:33.94 ID:jV91RZGP0
総統「なんでもそいつは」

総統「『町中の暗い地下道に迷い込んだ時、突如銃で襲われた』と言っていたらしい」


総統は喋り始めた


書記官「総統、もう大丈夫なのですか?」

総統「ああ平気だすまない」


総統「・・・そして」

総統「現地にいた指揮官達に他の新兵達にも協力してもらい調べさせた」

総統「しかし、地下道らしき物も彼の仲間も見当たらなかったどころか」

総統「それらしき手がかりも無かった」

124: 2009/05/14(木) 14:56:40.89 ID:jV91RZGP0
総統「彼の言っていることの裏づけが取れず」

総統「仲間の行方も分からず」


総統「しかし、それでも現実に彼は軍に合格している」


総統「これらの結果から」

総統「私達はある仮説を立てたのだよ」


特級兵1「仮説・・・・?」


総統「そう」

125: 2009/05/14(木) 14:59:23.79 ID:jV91RZGP0
総統「もしかしてこいつは」




















総統「“密偵”なのではないかと」

127: 2009/05/14(木) 15:04:15.58 ID:jV91RZGP0
特級兵2「スパイ、って事ですか」


総統「そう」

総統「『わざとあの町で事件に巻き込まれたように見せかけ』」

総統「『どこかの組織とのパイプ役に、一人だけ試験に合格させ軍に侵入』」

総統「『そして軍内の情報を他の仲間を通して秘密裏に漏洩させる』」


書記官「そしてそのパイプ役こそが」

書記官「この新兵ではないかと考えています」


特級兵1「ふむ」

128: 2009/05/14(木) 15:10:49.54 ID:jV91RZGP0
総統「軍内部の人間を買収するより遥かに簡単で確実で」

総統「且つ発覚しにくいという利点」

総統「それらを考えると」

総統「決してありえない可能性ではないと考えている」


書記官「少し想像に過ぎるお話でもありますが」

書記官「何か起こる前に改めて調査するのもありと判断いたしました」


総統「そう」

総統「そこで」



総統「君達に頼みたい事があるのだよ」

132: 2009/05/14(木) 15:17:13.39 ID:jV91RZGP0
特級兵1「いよいよ本題ですか」

特級兵2「・・・・というと?」


2人は首を傾げる


総統「実はこの新兵は今度」

総統「初任務を受ける予定なのだが」


総統「その任務を『合同任務』にしようと思う」


書記官「というより」

書記官「既にそうなっております」


特級兵1「・・・・・・・」

特級兵2「・・・・・・・」

133: 2009/05/14(木) 15:23:04.60 ID:jV91RZGP0
『合同任務』

級の違う2チームで部隊を組み

数少ない他階級との接触機会を作る為のシステム


特級兵2「・・・・・・・」

特級兵2「まさか・・・・」


特級兵2「その新兵と、その町に行けって言うんじゃ・・・・」


総統「安心してくれ」

総統「簡単な任務を取り付けておいたから」


特級兵1「そういう問題じゃないと思いますけれども」

134: 2009/05/14(木) 15:27:17.08 ID:jV91RZGP0
総統「考えたあらすじはこう」


総統「ある町で行方不明者が続出する事件が起きている」

総統「そこで我々に依頼が来た」

総統「その町は新兵君にも関わりの深い町という話も聞いているので」

総統「ここは君の知恵も借りる為に合同任務を提案させてもらった」


総統「という感じだ」


書記官「思いっきり人の傷口掘り返してはいますが」

特級兵2「その新兵さん可愛そう・・・・」

特級兵1「ひでえなおい」

137: 2009/05/14(木) 15:35:13.46 ID:jV91RZGP0
総統「まぁ本人もその町に再び行きたいと思っているだろう」

総統「彼の過去話を払拭するためにも」

総統「彼の疑いを晴らすためにも」

総統「都合の良い機会だと思うんだ」


総統「というわけで」

総統「是非ともお二人にお願いしたい」


書記官「だからもう決まっちゃってるんですけどね」


特級兵1、2「・・・・・・」

138: 2009/05/14(木) 15:38:06.65 ID:jV91RZGP0


特級兵2「・・・・分かりました」

特級兵2「行かせてもらいますよ」


特級兵1「決まっているのでは、仕方が無いですからね」


総統「やっと敬語に戻った」

総統「すまないな」

総統「それでは宜しく頼むよ」


特級兵1「そうだ、」

特級兵1「その新兵の本名は?」

139: 2009/05/14(木) 15:43:11.39 ID:jV91RZGP0
特級兵1「この書類にも新兵って書かれていますし」

特級兵2「どこにも書いて無いですね」


書記官「えっとですね・・・・」


書記官は手元に持っていたレポートらしき物をめくった

きっとあれには

軍内部の人間の情報がまとめられているのだろう












書記官「彼の名前は・・・・・・」

140: 2009/05/14(木) 15:48:27.05 ID:jV91RZGP0
総統室前


やばい

恐ろしく緊張している


ログ「ああ緊張する・・・・」

ログ「よりにもよって初任務が」



ログ「『合同任務』だなんて・・・・・」

ログ「しかも・・・・」


ログ「あの入軍式で見たあの総統直々に」

ログ「任務のお達しとは・・・」

141: 2009/05/14(木) 15:53:27.04 ID:jV91RZGP0
今日は私の

軍に入ってから初の任務の日

なので最初に私は

緊張と不安を抱えながら


任務を受注する受付管理に行ったのだが・・・・


ログ「・・・・・・」

ログ「・・・・入って・・・ないんですか?」

管理1「はい」

管理1「三級新兵のログさんの任務リストには」

管理1「何も入っていませんね」


ログ「あれれ・・・・・・」

142: 2009/05/14(木) 16:00:23.95 ID:jV91RZGP0
ログ「今日初任務の予定なのですが・・・・」

ログ「本当に入ってないんですか・・・?」


管理1「一応何度か確認もしてみましたが」

管理1「入っていませんね・・・・」

管理1「ミスや不具合もなさそうです」


ログ「えええ・・・・・」

ログ「何でだあ・・・・・・?」




ピーンポーンパーンポーン

143: 2009/05/14(木) 16:04:54.97 ID:jV91RZGP0
[軍内放送]

[三級官隊新規一般兵、ログさん]

[総統室にお越し下さい]


ログ「・・・・・・・」

管理1「・・・・・・・」

ログ「・・・・・今の」

管理1「・・・・あなたの事っぽいですね」

管理1「という事はもしかしたら」


管理1「初任務は『合同任務』かもしれません」

ログ「合同・・・・任務・・・?」

146: 2009/05/14(木) 16:10:51.21 ID:jV91RZGP0
管理1「他階級の方と一緒に任務を行う制度の事ですよ」


管理1「特級の方と一緒の任務の場合は稀に」

管理1「受付ではなくてこのような放送で呼び出す場合があるんです」


ログ「じゃあ私はもしかしたら・・・」


思わず身震いする


管理1「もしかしたら特級の方との合同任務かもしれませんね」


ログ「あわわわ・・・・・」

ログ「あばばば・・・・・」

147: 2009/05/14(木) 16:15:17.34 ID:jV91RZGP0
いきなり最初の初っ端で

軍内でも一握りしかいないという特級の人と

合同任務なんて


ログ「まだ正式な任務は初めてなんですけど私」

管理1「良い経験になりますよ」

ログ「どう考えても苦い思い出になると思いますけど」

管理1「それよりいいんですか?」

ログ「?」



管理1「・・・・・総統は凄く人を待つのが嫌いなんですよ」

ログ「すいませんすぐ行ってきます」

148: 2009/05/14(木) 16:20:32.44 ID:jV91RZGP0
そんな経緯を重ねて

私は今

総統室の前に立っている


ログ「落ち着け俺・・・じゃなくて私・・・・」

ログ「別に説教されるわけじゃないんだきっと・・・」

ログ「そう信じたい・・・・・」

ログ「でも合同任務もそれはそれで嫌だ・・・・」


扉の前でモジモジする私

何してんだ私は


ログ「・・・・・よし」

150: 2009/05/14(木) 16:25:32.23 ID:jV91RZGP0
ログ「行こう」

ログ「いつまでも待たせるわけにはいかないし」


手が汗で湿り

額からも汗が垂れ


息も少しばかり荒れている


ログ「・・・・・かなり動揺しとるな私は」

ログ「だが」





ログ「入るぞ」

153: 2009/05/14(木) 16:40:52.39 ID:jV91RZGP0

総統室


ログ「私この度三級官隊に配属されました」

ログ「新兵のログと申します!」

ログ「どうか宜しくお願い致します!」

ログ(こんな言葉遣いでいいのか・・・・・?)


入るなり私は

大声で言った


総統「ああ、よろしく」

書記官「宜しくお願いします」

特級兵1、2「よろしく」


ログ(大丈夫そうだ・・・・)

154: 2009/05/14(木) 16:46:15.00 ID:jV91RZGP0
総統室に入った時

中には4人いた


一人は総統

もう一人は恐らく総統の付き人


つまり、残りの2人は


総統「こちらも紹介しよう」

総統「まず、隣にいるのが私の書記官」

書記官「改めて宜しくお願いします」


総統「そして」

155: 2009/05/14(木) 16:51:11.02 ID:jV91RZGP0
総統「話は管理から聞いているかもしれないが」

総統「そこにいる2人が」

総統「今回の君の『合同任務』のお相手」


総統「特級のお二人さんだ」


特級兵A「どうも」

特級兵B「どうか宜しくお願いします」


ログ「宜しくお願いいたします」

ログ(やっぱりこの2人は特級の人達か・・・・)

156: 2009/05/14(木) 16:56:17.76 ID:jV91RZGP0
総統「さて」

総統「『合同任務』自体についてはご存知かい?」


ログ「はい、大丈夫です」


総統「それは良かった」

総統「ならさっそく任務内容の説明に入ろう」

総統「それじゃあ書記官」


書記官「かしこまりました」

書記官「それでは、特級お二方と三級の新兵さんの」


書記官「今回の『合同任務』についてお話いたします」

157: 2009/05/14(木) 17:01:40.59 ID:jV91RZGP0
書記官「今回の任務は」

書記官「ある町での行方不明事件の調査、です」


ログ「と、言いますと・・・」


書記官「その町では最近」

書記官「突如人が行方不明になる、との情報が入っております」

書記官「そこであなた方お三方には」

書記官「その町で何が起きているのかを調べていただきたいのです」


特級兵1「そうかそうかなるほどなるほど」

特級兵2(・・・・不自然な演技だ)

158: 2009/05/14(木) 17:06:00.48 ID:jV91RZGP0
ログ「しかし・・・・」

ログ「なぜ新兵の私にいきなりこのような任務を・・・」


書記官「それは私達も凄く悩みました」

書記官「ですが」

書記官「あなたは新規から三級に配属されるほどの有能者」

書記官「ですから決して出来なくはない任務であると判断したというのと」


書記官「もう一つは」


書記官「この参考資料を見ていただければ分かります」

159: 2009/05/14(木) 17:11:06.36 ID:jV91RZGP0
私は

資料を手渡しで受け取った


そしてその資料には

見覚えのある風景が載っている


ログ「これは・・・・・・」


書記官「そうです」

書記官「その挿し絵の町及び、今回任務で行っていただく町は」



書記官「あなたが入軍試験時に行った」

書記官「その町なのですよ」

160: 2009/05/14(木) 17:15:26.47 ID:jV91RZGP0
あの日のことは


思い出すだけで吐き気がする


私がまだ


私を俺と呼んでいた頃の




忘れる事も思い出す事もしたくない


そんな思い出

161: 2009/05/14(木) 17:20:26.42 ID:jV91RZGP0
思わず唖然とした


ログ「そんな・・・・・」


総統「・・・正直君にはつらい任務かもしれないが」

総統「あの町に一度行った事のある実力者で」

総統「尚且つ手の空いてる者を探したら、君を見つけてね」


総統「これは色んな意味でのチャンスだと」

総統「私は思った」

163: 2009/05/14(木) 17:25:22.67 ID:jV91RZGP0



総統「新しい兵の実力を見れる」

総統「過去の払拭もできるかもしれない」

総統「さらに事件の解決も出来るかもしれない」


総統「これはいわば」

総統「君のための機会でもあるんだ」

総統「どうか引き受けてはくれないかな?」


ログ「私のための・・・・」


特級兵1(なんとも都合がいい話を)

特級兵2(ああ・・・可愛そうに・・・・)

164: 2009/05/14(木) 17:31:09.08 ID:jV91RZGP0
言葉を吐き出した時の

総統の表情


あの何かが胸に詰まっているような

にが苦しい表情


私のことを思ってそんな表情をしているのなら

当然



私も答えなければならないだろう

165: 2009/05/14(木) 17:34:03.40 ID:jV91RZGP0
すべき事は

ログ「・・・・・・」

考えるべき事は一つ

ログ「・・・・・やります」














ログ「その任務、喜んで努めさせていただきます」


私は笑顔でこう言った

179: 2009/05/14(木) 19:40:41.71 ID:jV91RZGP0

任務の参加が決まった私もとい私達は

さっそく向かう事になった

例の町に


総統「やっぱり頼んで正解だった」

総統「町や公共機関への通達は私の方からしておこう」

総統「それでは頼む」

書記官「いってらっしゃいませ」


特級兵1(・・・・なんだあの笑顔)

181: 2009/05/14(木) 19:46:39.83 ID:jV91RZGP0
数時間後 駅


ログ「今回は、汽車で向かうのですか?」


特級兵1「その町はある駅の近くだということで」

特級兵1「なぜかそう決まった」

特級兵2「なんででしょうね」

特級兵2「今回に限って」


特級兵1(・・・・総統曰く、汽車内で喋りあって仲良くなれとの事らしい)

特級兵2(・・・・そうでしたか)

182: 2009/05/14(木) 19:51:10.61 ID:jV91RZGP0
汽車内


ログ「結構居心地いいですね」


特級兵1「そうだな」

特級兵2「ですね」


特級兵1(・・・・・・)

特級兵2(・・・・・・)


特級兵1(・・・・どうしろってんだよ)

特級兵2(どうしましょうね)

183: 2009/05/14(木) 19:56:17.97 ID:jV91RZGP0
特級兵1「そういえば」

特級兵1「ログ君の生まれはどこ?」


ログ「生まれ・・・・ですか?」


特級兵1「そうそう、出身みたいな」

特級兵1「まさかいいところのお坊ちゃんだったりして?」

特級兵2(先輩ナイス質問です)


ログ「いえいえ」

ログ「私が生まれた町はそんな大層なものじゃありませんでした」

184: 2009/05/14(木) 20:00:31.32 ID:jV91RZGP0
ログ「私達の町は」

ログ「貧困の差が激しい町でありました」

ログ「泥棒や盗みはしょっちゅうで」

ログ「治安なんて無いに等しい物でした」

ログ「というか僕達も悪くしてる当人でありまして」

ログ「食料に困って家に盗み入ったりして」

ログ「そしてそれが」

ログ「この軍に入ろうと思ったきっかけでもありまして」

ログ「ペラペラ・・・・・」

ログ「ベラベラ・・・・・・」

185: 2009/05/14(木) 20:05:21.61 ID:jV91RZGP0
ログ「そんでもって・・・・・」

ログ「・・・ってあれ、どうやら着いたようですね」

ログ「時間が経つのって早いですね」


目的の駅に着くと同時に

彼の話は中断された


特級兵1(・・・・自覚が無いのか)

特級兵2(結局着くまでずーっと1人で喋ってましたね)

特級兵2(しかも内容がやけに重い)

186: 2009/05/14(木) 20:09:18.09 ID:jV91RZGP0
駅から歩いて数分


特級兵1「やっと着いたな」

特級兵2「ええ」


落ち着かないのか

彼はやけにキョロキョロしている


特級兵1「落ち着けログ君」

特級兵1「気持ちは分かるが、見た目に出してはいけない」


ログ「・・・・・はい」

188: 2009/05/14(木) 20:14:06.71 ID:jV91RZGP0
私達は遂に町に着いた


前とさほど変わらない町の景色

まぁ数日しか経ってないから当たり前なのだが


ログ「・・・・そうですよね」

ログ「ここからは心を入れ替えなくては」


服の襟を整える


特級兵1「・・・そうだな」

特級兵2「それではさっそく行きましょうか」

190: 2009/05/14(木) 20:19:15.63 ID:jV91RZGP0
町中


特級兵2「じゃあまずは」

特級兵2「君が言っていた壁画の裏にあった穴とやらを・・・」

特級兵1(おい!)


ログ「・・・へ?」


特級兵2「あーいや」

特級兵2「まずは町の方々に話を聞いていきましょうか」

特級兵2(すまん・・・口が滑るところだった・・・)

191: 2009/05/14(木) 20:24:11.97 ID:jV91RZGP0
とある店


住人「さぁ・・・・そういう話は聞いたことがないわねぇ」

特級兵2「そうですか・・・・ありがとうございます」

特級兵1(ま、当然だわな)


三人は店を出る


ログ「という事は、あまり表ざたにはなってないって事なのでしょうか」


ログ「でも人がいなくなるなんて事件があったら」

ログ「絶対町中に広まると思うのですが・・・」

192: 2009/05/14(木) 20:29:23.04 ID:jV91RZGP0
特級兵1(さすがに鋭いな)

特級兵2「不思議ですねえ・・・・・」

特級兵2「もしかして当事者と関係者以外には広まらないようにしているんですかね」

特級兵2「となると聞き込みはするだけ無駄ですね」


ログ「なるほど・・・・」


特級兵2「やっぱりここは徒歩で」

特級兵2「地道に町中を探して回りましょうか」

特級兵2(そして偶然を装ってあの壁画の所へ・・・)


ログ「はい、わかりました」

193: 2009/05/14(木) 20:33:40.76 ID:jV91RZGP0
ログ「しかし人が多いですねえ」


人ごみを掻き分けながら

進む三人


特級兵1「今日はなにかの記念日らしいな」

特級兵1「商人やそれなりの立場のありそうな人間もいる」


特級兵2「ちょっと人が少ないところに行きましょうか」

特級兵2「例えばあっちの方とか・・・・」


ログ「はい、分かりました」

195: 2009/05/14(木) 20:38:18.93 ID:jV91RZGP0
特級兵1(これが彼の言っていた“壁画”という奴か)

特級兵1(・・・後ろに穴らしき物はねえな)


2の誘導の甲斐あってか

不自然なく

例の壁画の前まで来た


ログ「ここは・・・・」

特級兵2「どうしました?」


ログ「いえ、なんでもないです・・・」

197: 2009/05/14(木) 20:43:40.32 ID:jV91RZGP0
切ない表情で

壁を見つめる彼


ログ「・・・・・」


特級兵2(・・・やはり少し痛ましい姿ですね)

特級兵2(いくら彼自身の疑いのためとはいえ)


特級兵1(一応裏側も見てみたが、穴は無いな)

特級兵1(壁画自体にも変なところはなさそうだし)


特級兵2(ふむ・・・・)

200: 2009/05/14(木) 21:00:14.61 ID:jV91RZGP0
少しの沈黙を破るように

言葉を切り出す


特級兵2「そろそろ行きましょうか」

特級兵2「今度はこっちを・・・」

特級兵1「また人ごみに入るのか」

特級兵2「仕方がないですよ」


特級兵2「ほら、ログ君も」

特級兵2「ぼーっと突っ立ってないで行きますよ」


ログ「・・・・・・・」

ログ「・・・はい」

201: 2009/05/14(木) 21:04:30.74 ID:jV91RZGP0
人ごみ内



特級兵1「うっへえ人多すぎる」

特級兵2「はぐれないようにしましょうね」

ログ「は・・はい分かりました」


特級兵1「うお」

特級兵1「なんか今ケツ触られた」

特級兵2「何馬鹿なことを言っているんですか」

特級兵2「ちなみにそれ私の手です」

特級兵1「お前かい」

202: 2009/05/14(木) 21:07:55.48 ID:jV91RZGP0
すれ違う

たくさんの人々の影

きっともう会うこともないであろう

見知らぬ人々

だが


そんな人たちの中に














見覚えのある顔を見つけた

203: 2009/05/14(木) 21:11:35.89 ID:jV91RZGP0
ログ「・・・・・・あ」

ログ「あああああ」


突然駆け出す彼


特級兵1「なっ・・・!」


当然の如く驚く2人


特級兵2「ちょっとログ君どこに行くんですか!」

特級兵2「単独行動は厳禁です!戻って下さい!」


特級兵1「くそ、人ごみが邪魔で・・・・・」

205: 2009/05/14(木) 21:15:23.72 ID:jV91RZGP0
今人ごみの先にいた人間


間違いない

あの顔は昔から見ていた


一緒にチームを組んで

試験を受けた同士



ログ「おい、兵1だろ?!」

ログ「俺だよログだよ!」


ログ「・・・おい聞いてんのか!」

207: 2009/05/14(木) 21:20:18.36 ID:jV91RZGP0
走りながら

俺は叫んだ


しかし兵1らしき人物は

俺から遠ざかるように逃げていく


ログ「すいません・・・通してください・・・」


ログ「おい!なんで逃げるんだよ!」

ログ「待てって言ってんだろ!」


私は必死に追いかけた

208: 2009/05/14(木) 21:26:01.17 ID:jV91RZGP0
町の外れ



特級兵1「なんとか人ごみから脱出したのはいいものの・・・」

特級兵2「彼を完全に見失っちゃいましたね・・・・」


ベンチに座り

肩を落とす2人


特級兵1「さて、どうするか」

特級兵2「どうしようもないですね」


特級兵2「とりあえずはぐれた時用に言っておいた」

特級兵2「集合場所で待っていましょうか」

210: 2009/05/14(木) 21:31:04.77 ID:jV91RZGP0
ログ「どこまで逃げるんだよ・・・・」


人ごみを抜けても

兵1は走るのをやめない


ログ「けどここで見失うわけには・・・・」


私も

足は止めない


ログ「はぁ・・・はぁ・・・・・」

211: 2009/05/14(木) 21:35:25.02 ID:jV91RZGP0
追いかけ続けてどれくらい経っただろうか

ある場所に着いた時ログは


足を止めた


ログ「・・・・・・」

ログ「ここは・・・・」


見覚えがあるぞここは

確かここは


ログ「・・・・私があの時」

213: 2009/05/14(木) 21:40:15.16 ID:jV91RZGP0
ログ「あの地下道から・・・・」

ログ「出た時の出口だ・・・・」


そうだ

間違いない


私達が襲われて必死に逃げて

その時


この小さな扉みたいのを開け出て

あの集合場所まで走ったんだ

216: 2009/05/14(木) 22:00:12.59 ID:jV91RZGP0
ログ「あいつもこの中に入っていったのか・・・・?」

ログ「あんな真っ暗な中に・・・・」


段々冷静になり始めた


ログ「それに」

ログ「あのお二方にも無断で来ちゃったし・・・・」

ログ「・・・・・・・」


ログ「どうしようか・・・」


ログ「戻るべきか」

ログ「進むべきか」

217: 2009/05/14(木) 22:05:15.74 ID:jV91RZGP0
集合場所



特級兵1「・・・・・・」


特級兵2「・・・・おかえりなさい」

特級兵2「ログ君」


ログ「勝手な行動をしてすいませんでした」


特級兵1「何があったかは知らんが」

特級兵1「行動は慎むように、な」


ログ「はい、以後気をつけます」

218: 2009/05/14(木) 22:10:13.34 ID:jV91RZGP0
特級兵2「さて、ログ君も戻ってきた事ですし」

特級兵2「改めて調査を開始しましょうか」

特級兵1「それもいいが」

特級兵1「その前に聞きたいことが一つあるな」


ログを睨む


ログ「本当にすいません・・・」

特級兵2「まぁまぁ」

特級兵2「彼も反省しているようですし・・・」


特級兵1「そうじゃない」

220: 2009/05/14(木) 22:13:48.41 ID:jV91RZGP0
特級兵1「お前」


















特級兵1「何者だよ」

221: 2009/05/14(木) 22:18:01.40 ID:jV91RZGP0
彼がここに戻ってきた時から

違和感があった


特級兵1「変装した人間が一番緊張する場面ってのは」

特級兵1「間違いなく最初に見知りに会うときなんだよ」

特級兵1「だから俺はいつも」

特級兵1「最初に会う時、再会する時はその様子を過敏に確認する」


特級兵1「現にさっきのお前は」

特級兵1「声も上ずっていたし、表情も固かった」


ログ「・・・・・・」

224: 2009/05/14(木) 22:23:08.25 ID:jV91RZGP0
地下道内


普通に考えれば本来は戻るべきなのだが

それだと完全に逃げられてしまうと思った私は


扉を開けて、進む事にした


ログ「・・・・やっぱりあの時と同じ」

ログ「真っ暗なままだ」


ログ「けどあの時とは違う」

ログ「一応こちらも武器がある」


腰の銃に触れる

227: 2009/05/14(木) 22:28:09.00 ID:jV91RZGP0
ログ「・・・・・ちっ」

ログ「くそが」


偽者は逃げ出した


特級兵2「追いかけますか?」

特級兵1「どうせ雇われだろうから放置でいい」

特級兵1「大した情報も持ってないさ」

特級兵1「それに少しばかり」


特級兵1「状況が分かってきた」


特級兵2「と、言いますと・・・?」

228: 2009/05/14(木) 22:32:34.52 ID:jV91RZGP0
特級兵1「ログ君が走っていった時に」

特級兵1「彼が誰かの名前を叫んでいるのが聞こえた」

特級兵2「そういえば何か言ってましたね」


特級兵1「・・・その名前の主が」

特級兵1「もしログ君のチームにいた奴の1人なら」


特級兵2「なら・・・?」


特級兵1「ある可能性が出てくる」

229: 2009/05/14(木) 22:36:54.75 ID:jV91RZGP0
特級兵1「つまり、そいつは死んでなどいなく」

特級兵1「死んだ振りをしてこの町に潜伏した」


特級兵1「そして俺達が人ごみに入り」

特級兵1「はぐれやすくした状況を作った上で」

特級兵1「ログ君だけにその姿を見せる」


特級兵1「そうすれば当然ログ君は」

特級兵1「そいつを追いかけ」


特級兵1「俺達の監視下から外れ1人になる」

230: 2009/05/14(木) 22:41:22.03 ID:jV91RZGP0
特級兵2「じゃあさっきの偽者は・・・・」

特級兵1「きっと時間稼ぎの為だろう」

特級兵1「まぁすぐに気づけたが」


特級兵2「!まさか・・・!」


特級兵1「そうだ」

特級兵1「多分全ての目的は」



特級兵1「ログ君を一人のまま、誘い出すため」

234: 2009/05/14(木) 23:00:07.56 ID:jV91RZGP0
その言葉を放つやいなや

2人は走り出した


特級兵2「・・・走ってばっかですね私達」

特級兵1「まったくだ」


特級兵2「・・・しかし目的は何なのでしょうね」

特級兵1「これはあくまで推測だが」


特級兵1「本当のスパイは」

特級兵1「ログ君を誘った」

特級兵1「あの4人の中の1人だけだったんじゃないかな」

235: 2009/05/14(木) 23:04:21.12 ID:jV91RZGP0
走り中


特級兵1「本来はあの地下道で」

特級兵1「ログ君を含めて邪魔な3人を殺し」

特級兵1「その1人だけが合格、軍に侵入する予定だった」


特級兵1「しかしログ君にだけは逃げられてしまい」

特級兵1「おまけにログ君自身が軍に合格してしまった」


特級兵1「怪しまれるのを恐れたそいつは」

特級兵1「せめてログ君だけは始末しようと考えた」


特級兵1「・・・・走りながら喋るのきついなゼェゼェ」

237: 2009/05/14(木) 23:09:07.70 ID:jV91RZGP0
この仮説には

なぜか説得力が感じられる


特級兵2「もしそうだったら」

特級兵2「まんまと私達はハメられたんですね」


特級兵1「ああ」

特級兵1「なぜ相手さんがこちらの行動を熟知しているかは知らんが」




特級兵1「・・・・とにもかくにも急がなければ」

239: 2009/05/14(木) 23:14:11.62 ID:jV91RZGP0
地下道内


ログ「今回はあの変な音もしないし」

ログ「今んとこ近くに物音もしない」

ログ「だけれども・・・・」


目のなれない暗闇


時間の経過も進んだ距離も

予想がつかない


ログ「どれくらい進んだか分からん・・・・」

240: 2009/05/14(木) 23:18:10.10 ID:jV91RZGP0

更に歩き続けた

というより足が止まらなかった


なぜ兵1が生きているのか

なぜ逃げるのか

他の奴らはどうなったのか


色んな考えが頭を巡り

混乱し



そんな事を考えているうちに

242: 2009/05/14(木) 23:22:11.16 ID:jV91RZGP0
ログ「先に・・・・・」

ログ「光が見える・・・・・・」


四角に何かが光っているのが見えた

きっと

扉から光が漏れているのだろう


ログ「あの扉の先に・・・・」

ログ「兵1がいるのか・・・・?」」


ログ「そもそもあの扉はどこに繋がっているんだ・・・」

243: 2009/05/14(木) 23:27:05.53 ID:jV91RZGP0
扉前に着いた


ログ「俺が入ってきた扉じゃないよな・・・」

ログ「デザインが少し違うし・・・・」


ゴクリ

唾を飲み込み


扉のノブに手をかける

ログ「・・・・この先に行けば」


全ての答えがあるのだろうか

244: 2009/05/14(木) 23:30:41.11 ID:jV91RZGP0
何度寝ても眠い・・・・


ガチャ


扉を開けた


その瞬間


目を開けられないほどの光が襲った


ログ「・・・・っく」

ログ「まぶしい・・・・」



目が慣れるまで時間がかかった

246: 2009/05/14(木) 23:38:27.84 ID:jV91RZGP0
慣れたログの目に

飛び込んできた光景


ログ「・・・なんだ」

ログ「なんだここは・・・・」


その光景は

地下道に繋がっているとは思えないほどの


ログ「なんで町の地下なんかに」

ログ「こんな大きい空間があるんだ?」


広大な光景

249: 2009/05/14(木) 23:42:48.06 ID:jV91RZGP0
恐ろしく広い空間

地下である事を忘れてしまいそうなくらいの

そう、まるで


秘密基地のような世界


ログ「広い・・・・」

ログ「でも・・・・」

ログ「何の為の空間なんだ・・・・」



『・・・組織のためのだよ』

284: 2009/05/15(金) 11:24:42.03 ID:l97PSJyY0

後ろから声がした

聞き覚えのある声が


ログ「その声・・・・・・」


懐かしい声

ずっと一緒だった声

もう聞けないと思っていた声


少し歪んだ声音


信じられない声色

287: 2009/05/15(金) 11:30:17.10 ID:l97PSJyY0
ログ「兵1、・・・・・か」


振り返った先には

予想通りの人物


兵1「・・・久しぶりだよ、ログ」


ログ「変わってないなお前」




兵1「・・・お前は少し変わったな」


兵1「大人っぽくなった」

289: 2009/05/15(金) 11:35:11.82 ID:l97PSJyY0
久しぶりの再会

だが

祝う気には到底ならない

兵1「お前のその疑いの目」

兵1「やっぱりある程度予想がついてんだろうな」

兵1「俺が一体どういう奴か」


ログ「・・・・・・」


兵1「まぁ事実その通りだから」

兵1「なんとも言えないんだけどね」

292: 2009/05/15(金) 11:40:08.03 ID:l97PSJyY0
ログ「他の2人はどうしたんだ?」

ログは問いかける

兵1「あいつらは実際に死んだよ、俺と違って」

兵1「あのチーム内で生きてるのは」


兵1「俺とお前だけ」

ログ「・・・・・・」


兵1「そして2人を殺したのは、この俺」

ログ「お前が・・・・・?」

兵1「それなりの目的があってね」

293: 2009/05/15(金) 11:45:11.49 ID:l97PSJyY0

ログ「目的・・・・」

兵1「そう」

兵1「本来、俺達にはそうなるはずのシナリオがあった」

兵1「お前が全てをぶち壊してくれたがな」


ログ「・・・“俺達”っていうのは」

ログ「お前が言った組織の奴らとお前自身の事か」

兵1「その通り」


兵1「そして、俺達の考えた計画はこう」

294: 2009/05/15(金) 11:49:55.24 ID:l97PSJyY0
兵1「まずあの地下道にお前らを誘い込み」

兵1「中でお前含めて3人を始末する」

兵1「そして俺だけが“何者かから逃れてきた唯一の生還者”として」

兵1「軍に侵入する、誰の邪魔も入らない一人チームになって」

兵1「まぁ実際の場合、それがお前になっちまったんだがな」


ログ「そうか・・・・」

ログ「だからお前あの時町を散策しようって・・・・」


兵1「ああ、誘い出すために」

兵1「わざわざ穴まで作って」

295: 2009/05/15(金) 11:54:49.00 ID:l97PSJyY0
ログ「ということは」

ログ「お前はどこかの組織のスパイ、って事なのか?」

兵1「その通りさ」

兵1「お前らは知らなかっただろうがな」


兵1「そうだ」

兵1「ちなみにもう一ついい情報があるぞ」

ログ「いい情報?」

兵1「実はお前」


兵1「・・・・あの2人にスパイの疑いをかけられているんだぜ?」

296: 2009/05/15(金) 11:59:20.62 ID:l97PSJyY0
ログ「あの2人って」

兵1「あの特級兵のお二人さんだよ」

ログ「なっ」


兵1「おかしいと思わなかったか?」

兵1「最初の任務でいきなり特級と合同を組むということも」

兵1「ましてやその任務先が、この町だなんて」

ログ「・・・・・・」


兵1「その答えは簡単」

兵1「町の調査ってのが嘘で、実際はお前自体の調査だから」

297: 2009/05/15(金) 12:04:28.20 ID:l97PSJyY0
違和感を覚える

なぜだ?

なぜこいつはそんな事を知っている?


兵1「もしお前じゃなくて俺が入ってたら」

兵1「俺も同じ様に疑われたかもしれないな」

兵1「そう考えると、失敗した事でかえって」


兵1「いい流れになりそうだ」


ログ「いい流れ・・・・?」

299: 2009/05/15(金) 12:09:25.55 ID:l97PSJyY0
兵1「例えばこういうのはどうだ?」


兵1「スパイのログは、町で俺が生きてる姿を見つけ」

兵1「追いかけて口封じの為に殺そうとする」

兵1「しかし俺が見事に返り討ちにし、お前は死んだという事にするんだ」


兵1「そうすれば俺は軍とお近づきになれる」

兵1「もしかしたらお前の代わりに」

兵1「俺を軍に誘ってくれるかもしれないな」


ログ「・・・辻褄は合うな」

兵1「そうだろう?」

300: 2009/05/15(金) 12:13:23.82 ID:l97PSJyY0
>>298サンクス


兵1の最後の言葉を合図に



カチャン

カチャン




2人は同時に銃を構えた


兵1「・・・やっぱ簡単には死んではくれないか」

ログ「当たり前だ」

301: 2009/05/15(金) 12:18:31.07 ID:l97PSJyY0
ログ「私は正直かなりむかついている」

ログ「スパイなんて事の為に昔からの仲間を殺すなんて」


ログ「俺は絶対にゆるさねぇ」

ログ「こんなただっ広い面白みのない部屋で死ぬ気もねえ」


兵1「言葉遣いが昔に戻ってきてるな」

兵1「それにむかついてるのは俺も同じだ」

兵1「そもそもここをただっ広い面白みのない部屋にしたのは」

兵1「お前なんだよ」

302: 2009/05/15(金) 12:23:28.62 ID:l97PSJyY0
ログ「なるほど」

ログ「本来ここは組織のアジトになる予定だったわけか」


兵1「ああそうだ」

兵1「だが俺の作戦が失敗に終わり、組織はここから撤退した」

兵1「だからここには何も残っていない」

兵1「お前のせいで全て台無しだ」



兵1「だが今・・・・ここに挽回のチャンスがある」

303: 2009/05/15(金) 12:27:23.93 ID:l97PSJyY0
次の瞬間


強い光が襲った


ログ「うっぐ・・・・」


ログ「なんだいきなり・・・・」


思わず腕で目を覆う



ログ「奴はどこだ・・・・」

304: 2009/05/15(金) 12:32:23.26 ID:l97PSJyY0
ズドン


ガキィン


強烈な金属音


ログ「なっ・・・・」


ログ「し、しまった・・・・・」



光が強すぎて


未だに何も見えない

306: 2009/05/15(金) 12:37:14.22 ID:l97PSJyY0
目が慣れて

ようやくログは目を開けた


兵1「・・・残念だったな」


だが

既に喉元には銃を突きつけられ


ログ「閃光弾にゴーグル・・・・」

ログ「用意周到だな」


ログの銃は手の中には無く

後ろに吹っ飛んでいた

307: 2009/05/15(金) 12:42:47.33 ID:l97PSJyY0
兵1「この閃光弾も耐光ゴーグルも」

兵1「組織がいざと言う時の為に用意した物だ」


ログ「・・・随分」

ログ「随分入れ込んでるなその組織とやらに」


兵1「当たり前だ」

兵1「スパイってのは恐ろしく報酬が高いからな」

兵1「少なくとも生活に困る事はないし」

兵1「ましてや遊びに使っても余るぐらい貰える」

308: 2009/05/15(金) 12:46:41.25 ID:l97PSJyY0
兵1「お前も覚えているだろう」

兵1「俺達の故郷・・・・」


兵1「あの最底辺の町を・・・・・」


ログ「・・・・・」

ログ「・・・ああ」


ログ「忘れられる訳がない」

ログ「俺達が軍に入るきっかけでもあるからな」

312: 2009/05/15(金) 13:00:41.38 ID:l97PSJyY0
十数年前  

つまり俺達がまだ一桁年齢の時


俺達の町で

町長の入れ代わりがあった


新しくなった町長は

まさに自分勝手自己中心の言葉の通り


町の金を上層の一部で

一箇所に掌握し始めた

315: 2009/05/15(金) 13:05:12.43 ID:l97PSJyY0
その後貧富の差が広まり


一般市民の俺達は

当然貧しい方に差を広げられ

段々人々はおかしくなり


思い返してみれば

盗み剥奪強盗は当たり前

人殺しも起こり得る



そんな最底辺の町になっていた

317: 2009/05/15(金) 13:10:45.40 ID:l97PSJyY0

兵1「俺はもう・・・あんなのはごめんだ・・・」

兵1「常にお腹をすかせ、苦しみながら」

兵1「金持ち達の娯楽を眺めて憧れる」


兵1「そんなのはもういやだ・・・」

兵1「例え俺はなんて言われようと」

兵1「第一に金を優先する」


ログ「・・・軍に普通に入るだけでも」

ログ「それなりの生活は出来ただろうに」

318: 2009/05/15(金) 13:15:30.34 ID:l97PSJyY0
兵1「こうは思わないのか?」

兵1「『今度は見下す立場になりたい』って」

兵1「たくさんの金があれば、それが出来る」


ログ「・・・それじゃああの町長と一緒じゃないか」

ログ「確かにそうなりたいとは思わなくも無いが」


ログ「あんな最低な町長になんかは」

ログ「一生なりたいとは思わないよ俺は」

319: 2009/05/15(金) 13:19:55.13 ID:l97PSJyY0
兵1は

笑みを浮かべた


兵1「お前は優しいな」

兵1「特に昔から俺達には特別優しかった」

兵1「・・・・けれどごめん」


カチャリ

引き金に指を添えた




兵1「俺は、優しくない」

321: 2009/05/15(金) 13:25:13.30 ID:l97PSJyY0
ログ「お前は昔から強情だったからな」


ログも笑う


兵1「・・・もう」

兵1「もう引き下がれない」

兵1「俺は戻る機会を逃してしまった」

兵1「先に謝っておくよ、ごめん」


兵1「あの2人にも」

兵1「あの世でお前から謝っておいてくれ」


兵1「サヨナラ、ログ」

324: 2009/05/15(金) 13:30:12.66 ID:l97PSJyY0
ズドン


















ガキィン

326: 2009/05/15(金) 13:35:13.54 ID:l97PSJyY0


兵1「・・・・・・」


空間を響き渡った

銃声と

金属がぶつかり合う音が


兵1「・・・・・・」

兵1「・・・かなりお早い到着ですね」

兵1「お二人さん」


兵1の見つめる先には


二つの影

328: 2009/05/15(金) 13:40:12.39 ID:l97PSJyY0


そのうちの1人は

銃を構えていた


特級兵1「・・・間に合ってよかったぜ」

特級兵2「大丈夫ですかログ君」


ログ「な・・・・」

ログ「なんでお二人がここに・・・」


特級兵1「いやぁ」

特級兵1「まさかあの壁画、動くようになってたなんてな」

特級兵1「気づくのに時間がかかったよ」



331: 2009/05/15(金) 13:45:16.05 ID:l97PSJyY0
特級兵2「調べたら中に穴があったので」

特級兵2「入って歩いてたら、ここに着いたわけです」


兵1「・・・偽者にすぐ気づき、この場所を特定した上に」

兵1「その位置から」

兵1「俺の銃を撃って弾くなんて」


兵1「さすがは特級の方ですね」


特級兵1「・・・・・」

特級兵2(なんで特級だって事を・・・)



332: 2009/05/15(金) 13:49:35.64 ID:l97PSJyY0

特級兵1「なんでそんな余裕があるかは分からんが」

特級兵1「お前はもう終わりだ」


特級兵1「本当は本部に連れてって尋問追及したい所だが」

特級兵1「まだどんな隠し玉を持ってるか分からんからな」


特級兵1「早急にここで死んでもらう」



兵1「・・・・・・」

334: 2009/05/15(金) 14:01:01.91 ID:l97PSJyY0
兵1「・・・・そんな目で見るなよ」

兵1「ログ」


ログ「・・・本当は止めたいんだけどな」

ログ「俺にはどうにも出来ない」


見つめ合う二人



ログ「どうやら俺達」


ログ「大分離れちゃったようだね」

335: 2009/05/15(金) 14:05:14.09 ID:l97PSJyY0
兵1「何言ってんだ?」

兵1「目の前にいるじゃないか」


ログ「そうじゃねえ」

ログ「立場的な話だよ」

ログ「せっかく良い事言ったのにぶち壊しじゃないか」


兵1「ああ、そっちか」

兵1「・・・・はは」


ログ「あっははははははははは」

兵1「あっはっはっははははは」

337: 2009/05/15(金) 14:10:13.99 ID:l97PSJyY0
響き渡る

二人の笑い声


特級兵1「・・・・・・」

特級兵2「・・・ここは、色んな音が響きますね」

特級兵1「まったくだよ」


特級兵1「・・・・・・」

特級兵1「・・・俺ともあろう者が」


特級兵1「撃つのにこんな躊躇いを覚えるなんて」

339: 2009/05/15(金) 14:15:19.50 ID:l97PSJyY0
手が震える


特級兵2「手が震えていますよ」

特級兵2「同情・・・ですか?」


特級兵1「さぁな」

特級兵1「ただ、なんでだろうか」


特級兵1「撃つのが少しばかり怖い」


特級兵2「・・・それは」

特級兵2「きっと、無理もない事です」

340: 2009/05/15(金) 14:19:48.39 ID:l97PSJyY0
様子を伺う


兵1「・・・そろそろか」


兵1「それじゃあログ」

兵1「サヨナラするのは俺のほうだったな」


ログ「まったくだ」

ログ「あの世でもお前が自分で謝っとけよ」


兵1「はは、了解した」


ログ「・・・俺もさ」

342: 2009/05/15(金) 14:24:50.47 ID:l97PSJyY0
ログ「俺もいつか」

ログ「いつかきっと死ぬだろうから」


ログ「その時は」

ログ「その時は、また4人で・・・・」


兵1「・・・・ああ」

兵1「待ってるよ、ずっと」

兵1「三人で肩を組みながら」



二人は握手した

343: 2009/05/15(金) 14:30:22.45 ID:l97PSJyY0
握手の直後


銃声がした


その音は、俺の横を通り抜け


彼の体を貫いた



俺の右手から


彼の右手が



落ちていった

344: 2009/05/15(金) 14:35:14.01 ID:l97PSJyY0
特級兵1「・・・・・言っとくが」


特級兵1「悲しんでる暇はねえぞ」

特級兵1「これから事後処理で大忙しだ」


特級兵1「分かったらさっさと来い」

特級兵1「まずは町の代表に事情を話さないとな」

特級兵1「それに総統にも連絡をいれなければ」


特級の二人は

出口に向かった

346: 2009/05/15(金) 14:39:22.49 ID:l97PSJyY0
彼を眺める


床に倒れている、彼を


ログ「・・・・・・」


ログ「・・・サヨナラ、兵1」



そんな言葉を言い残し


二人の後に続いて



ログは、出口に向かった

347: 2009/05/15(金) 14:44:36.72 ID:l97PSJyY0


それからが本当に大変だった


町の代表さんはパニくりまくっちゃって

話を終えるのに時間がかかったわ


初めての死体処理や書類整理には

いろんな意味で悶絶するわ


それらによって総統への連絡が遅くなり

何故か連絡した俺だけが総統に怒られるわ

349: 2009/05/15(金) 15:00:17.89 ID:l97PSJyY0
とにもかくにも散々ではあったが

夕刻前にはなんとか全部を終え


軍に帰還する事になった


ログ「・・・そういえば」

ログ「帰りも汽車でしたっけ」


特級兵1「そういえばそうだな」

特級兵2「これだと、汽車内で寝ちゃいそうですね」

特級兵2「もう疲れました・・・・」


ログ「私もです・・・・」


愚痴りながら3人は、駅に向かった

350: 2009/05/15(金) 15:04:03.83 ID:l97PSJyY0
総統室



総統[そうか、分かった]

総統[それでは帰ってきてくれたまえ]

プツン


書記官「・・・・あのお三方からの連絡ですか?」


総統「ああ」

総統「事情を全部事細かに説明してくれたよ」

総統「処理も一通り終えて、帰還するそうだ」


書記官「そうですか」

352: 2009/05/15(金) 15:08:46.76 ID:l97PSJyY0
書記官「それでは」

書記官「迎えの準備をした方がよさそうですね」


総統「そうだな」

総統「だが、その前にやる事がある」


書記官「やる事・・・・ですか?」


総統「ああ」

総統「薄々思ってはいたんだが」


総統「ようやく確信したよ」

354: 2009/05/15(金) 15:12:54.94 ID:l97PSJyY0
ガチャ


突如

総統室に複数の兵達が入ってきた


書記官「?彼らは?」


総統「彼らは私が頼んだ調査隊だよ」

総統「特別任務として、ある事を調査してもらった」


書記官「ある事とは・・・?」


総統「それはね」

355: 2009/05/15(金) 15:16:30.87 ID:l97PSJyY0
総統「君の身辺調査だよ」

総統「書記官」


書記官「な・・・?」


目を見開く書記官


書記官「それはどういう・・・・」


総統「実は君には前々から目をつけていたんだよ」

総統「色々と不自然なところがあったからね」

356: 2009/05/15(金) 15:20:24.98 ID:l97PSJyY0
総統「軍内の資料貸し出し記録を偽造したり」

総統「無断で軍の兵達の情報記録を持っていたり」


書記官「!」


総統「ばれていないと思ったら大間違いさ」

総統「それにさっきの連絡の話」

総統「どうやらこの事件を起こしたのは、ログ君のチームの子だったらしいが」

総統「その子は軍の人間しか知らないはずの情報を知っていたらしい」

総統「・・・一体それは」



総統「誰が教えたんだろうねぇ?」

357: 2009/05/15(金) 15:25:29.82 ID:l97PSJyY0
兵達は

書記官を拘束した


書記官「は、離せ・・・」


総統「連れて行って尋問しろ」

総統「特に“組織”とやらの事について」


「かしこまりました」


書記官は兵達に連れられ


総統室を出て行った

358: 2009/05/15(金) 15:29:17.27 ID:l97PSJyY0
総統「はぁ・・・」


静かになった部屋の中で

総統は


1人呟く


総統「・・・これからが大変だな」

総統「私も軍も」




総統「彼も」

359: 2009/05/15(金) 15:33:59.83 ID:l97PSJyY0
汽車内


特級兵1「・・・・・やっぱりな」

特級兵2「案の定寝ちゃいましたね」


特級兵2「ログ君」


ログは

席にもたれかかり

寝息をたてていた


特級兵1「しょうがないな」

特級兵1「初の任務がこれじゃあ疲れも溜まるよ」

特級兵2「そうですね」

361: 2009/05/15(金) 15:38:01.98 ID:l97PSJyY0
特級兵2「でも・・・・」

特級兵2「これからが大変ですよ?」

特級兵2「その組織とやらも、今回の件には目をつけたでしょうし」

特級兵2「ログ君もきっとその内組織に・・・・」


特級兵1「・・・・かもしれないな」

特級兵1「だが」


特級兵1「ログ君がどうなるかは」

特級兵1「俺達が決めることじゃない」

363: 2009/05/15(金) 16:01:08.31 ID:l97PSJyY0
特級兵1「彼のこれからは」

特級兵1「彼自身が決めること」

特級兵1「そして俺達は」


特級兵1「彼が迷わないように、後押しするだけさ」


特級兵2「・・・・そうですね」

特級兵2「彼ならきっと大丈夫でしょう」




特級兵2「まがりなりにも、『国構』の兵ですから」

364: 2009/05/15(金) 16:02:18.64 ID:l97PSJyY0
特級兵1「がんばれよ・・・・」


特級兵1「ログ・・・・」



彼の寝顔に向けて

たった一言







特級兵1は、そう呟いた


fin

367: 2009/05/15(金) 16:08:40.79
おつ
楽しかったぜ

370: 2009/05/15(金) 16:13:12.99
>>1乙!
面白かった

引用元: 新兵「やってしまった・・・」