1: 2011/02/12(土) 02:20:28.06 ID:UHEKicpV0
律「何やってんの婆さん?」

老婆「………」

律「こんな路地裏でフリマやってても誰も来ないぜ?」

老婆「………」

あたしが下校途中にたまたま見つけた路地裏にフリーマーケットを開く占い師のような白髪の老婆。

しかも品物は一つだけかよ。
『あらかじめ日記 売ります』と立て札がありその隣に本が一冊置かれてあるだけだ。

律「こんなんじゃ商売にならないだろ」

老婆「………」

2: 2011/02/12(土) 02:24:40.08
まさかストーリーランドじゃないだろと思ったらその通りだった

4: 2011/02/12(土) 02:34:13.21 ID:UHEKicpV0
律「(喋んないなーこの婆さん)」

律「この売ってる『あらかじめ日記』って何?」

老婆「あらかじめという意味でございます」

律「うお、しゃべった!」

老婆「………」

律「あ、それで…つまりどういう意味?」

老婆「それはお買いになった方だけが解るのでございます」

律「えー…何円?」

7: 2011/02/12(土) 02:39:04.53 ID:UHEKicpV0
老婆「50円でございます」

律「50円って。そんなに安くていいのかよ?」

老婆「高いか安いかは、お客様のお考え次第でございます」

律「(気味悪いババァ。ま、五十円ならいっか)」

律「買うよ」チャリン

老婆「お買い上げありがとうございます」

この日からあたしの運命は狂い始めたんだと思う。

いい意味で。

8: 2011/02/12(土) 02:45:22.89 ID:UHEKicpV0
―律の家


律「つい買っちまったけどこれ何に使うんだ?」

律「日記なんてつけたくねーし…」

律「けど、この『あらかじめ』ってのが気になるぞ」

律「そもそもどういう意味だったったっけ。辞書、辞書と」

ペラペラッ

・あらかじめ
―前もって何かをしておくこと。

律「…直訳すると前もって日記」

律「えーと、つまり前もって書いた日記が本当になるってか?」

律「へー。すげぇな、未来が思い通りってことか」

律「寝よっと」パチッ

10: 2011/02/12(土) 02:48:21.61
律が老後に澪と再開する話かと思ったらストーリーランドだった

11: 2011/02/12(土) 02:50:32.49 ID:UHEKicpV0
―次の日

教師「えー、で、この公式をうんたらかんたら」

律「(授業だりぃーなー。何か暇潰しできるモンねーかなー)」

律「…あ」

律「(そういや昨日変な婆さんからヘンテコな日記帳買ったんだった)」ゴソゴソ

律「(あった。どうせ何もないだろうけど暇つぶし程度にはなんだろ)」

律「(何て書こうかなー…まずは澪のことでいいか)」

カキカキ

●月▲日■曜日
今日、授業中にあたしのクラスメイトの秋山澪が急に立ち上がって寒いギャグをかました。

14: 2011/02/12(土) 02:54:09.09 ID:UHEKicpV0
律「ブッ…クククッ」プルプル

ホントにやったらどんだけ面白かったんだろ、と思ったその時…

澪「……」ガタッ

教師「ん?どうしました秋山さん?」

澪「あ、アルミ缶の上にあるミカンっ!!!」


・・・・・・・・・・・。


唯「み、澪ちゃん…」

律「」

16: 2011/02/12(土) 02:58:51.24 ID:UHEKicpV0
澪「…はっ!?」

ざわ…ざわ……と教室がざわめき出した。

和「ちょっ、どうしたの澪?」

紬「澪…ちゃん?」

教師「秋山さん、どこか具合が悪いのですか?」

澪「え?え?あのっ?」

澪「あ…あっ…そのっ」カァァァ


澪「うわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁん!!」ダダダッ

18: 2011/02/12(土) 03:06:16.09 ID:UHEKicpV0
唯「あっ、どこ行くの澪ちゃん!?」

律「はは。偶然だよな?」

偶然?いや、待てって。
澪があんなことするわけが無いって昔からの付き合いのあたしが一番分かってるハズだ。

律「…まさか」ゾクッ


唯「…ってことがあったんだよ」

梓「信じられませんよ。澪先輩がそんなことするなんて」

紬「本当なの。私も見たから」

いつもの放課後。そこに澪の姿は無い。
あたしはと言うとムギのお菓子にも手が出ず日記のことばかり考えていた。

20: 2011/02/12(土) 03:12:21.71 ID:UHEKicpV0
唯「りっちゃん何か知ってる?」

律「…へ?」

梓「へ?じゃないですよ。話し聞いてました?」

律「あ、ごめん。聞いてなかった」

梓「澪先輩のことです!」

紬「りっちゃんいつも澪ちゃんと登下校してるから…朝から様子がおかしかったとか無い?」

律「し、知らない」

唯「りっちゃんも知らないんならもうお手上げかー」

結局今日はそのまま帰ることになってしまった。

21: 2011/02/12(土) 03:19:20.20 ID:UHEKicpV0
梓「私と唯先輩はこっちですから」

唯「じゃあね。りっちゃん、ムギちゃん」

紬「またね、みんな」

律「おう」

唯と梓、ムギ、あたしは別々の方向へ帰って行く。
本来ならあたしは澪と一緒なんだけど…。

さわちゃんの話によると澪は早退してしまったらしい。

何でも澪は「身体が勝手に動いた」と言っていたとか。

23: 2011/02/12(土) 03:26:33.06 ID:UHEKicpV0
―公園

律「この日記…いや、偶然だ。やっぱり」

ベンチに座って例の日記を出した。

律「澪もそういう気分だったんだ。そうだな、きっと!」

子供A「パスパス!」

子供B「こっちにも!」

丁度、公園の中央で複数のガキどもがサッカーをしているのが目に入った。

律「……ためしてみるか」カキカキ

26: 2011/02/12(土) 03:38:23.24 ID:UHEKicpV0
●月▲日■曜日
今日、授業中にあたしのクラスメイトの秋山澪が急に立ち上がって寒いギャグをかました。

夕方、ベンチに座っていると足元にボールが転がってきた。
あたしが滑り台に向かってボールを蹴ると、滑り台は跡形も無く粉砕した。

律「これなら…」

ポーンポン

子供A「おねえちゃんボールとってー!」

書き終ると同時に本当にボールが転がってきた。

律「(どうする…蹴るk)」ドキドキ

考えるよりも身体が勝手に動き、滑り台に向かってボールを蹴ってしまう。

子供A「ああっ、どこにとばして…」

28: 2011/02/12(土) 03:45:58.44 ID:UHEKicpV0
その瞬間。

ドンガラガッシャンと幾数もの鉄の塊がぶつかり合い崩れ落ち砂になっていくのを見た。

律「」

子供A「」

子供B「」

子供C「」

子供D「」

子供E「」

29: 2011/02/12(土) 03:47:09.98 ID:UHEKicpV0
気付いたら全力疾走。

律「はーっ、はーっ!何だよ、あれ!」

律「そ、そうだ。あの滑り台の建てつけが…

悪かったっても女の蹴ったサッカーボール程度であそこまで壊れるわけが無いだろ」

律「まさか…信じられねーけど。これ本物?」

手に握る日記に若干の恐怖を覚えつつも好奇心も無くは無い。

そしてあたしは再びあの路地裏へと脚を運んだ。

30: 2011/02/12(土) 03:51:15.79 ID:UHEKicpV0
律「よー、婆さん。えらいもん売ってくれたな」

老婆「……」

律「あぁ?」ジッ

よく見るとまた何か売ってる。

律「…何、これ。ゴム手袋?」

『スーパーな手袋 売ります』

律「ただの手袋じゃん。どの辺がスーパー?」

老婆「お買い上げになるのですか?」

32: 2011/02/12(土) 03:56:07.76 ID:UHEKicpV0
これまた嘘っぽいガタクタだけどあの日記の効力は本物?だった。

律「まだ買うとは言ってないだろ。それよりあの日記のこと…」

老婆「左様でございますか。お客様は他にもいらっしゃるので」

遠まわしに「今買わないと無くなるぞ」って言ってんだろこのババァ。

律「今度は幾らだよ?」

老婆「500円でございます」

財布から硬貨を一枚取り出し婆さんに渡す。

老婆「お買い上げありがとうございます」


33: 2011/02/12(土) 04:02:48.11 ID:UHEKicpV0
律の家―


律「何でまたいらんもん買ってんだよあたし…」

律「スーパーな手袋ってスーパーで買って意味だったんじゃないか?」

買った後にとてつもなく後悔した。しかも日記のこと聞きそびれたし。
今なら通販にハマる梓の気持ちが分からなくもないな。

律「そういや今日の放課後から何にも飲んでないぞ。何か飲も」

そういやペッドボトルの蓋はゴム手袋使えば簡単に開くらしい…憂ちゃんが言ってた。

律「…ペッドボトルの蓋とか簡単に開けるのに使えそうだな」

律「てなわけで装着~」ギュッ

ポケットから出し、腕に手袋をした後ペッドボトルの蓋と腹を指で摘む。

35: 2011/02/12(土) 04:09:17.07 ID:UHEKicpV0
そんでちょっと力を入れただけだ。
いや本当にちょっとだけだぞ?

そんだけだけどペッドボトルは、ものの見事に破裂した。

聡「なになに?!何の音?」

破裂音を聞いた弟がこちらへ来た。

聡「うわ、姉ちゃんビショビショじゃん!」

律「タオル…取ってきてくれ」

なるほど。
スーパーってこういう意味のスーパーなのか。


40: 2011/02/12(土) 04:20:03.64 ID:UHEKicpV0
―翌日の朝

登校途中、いつもの道を変えて違う道から進む。
手にはもちろんスーパーな手袋をつけている。

律「さーて…何かいいのは、と」

律「!」

DQN1「マジだりぃーなガッコー」

DQN2「サボりてー」

DQN3「今日ゲーセン行かね?」

使ってもよさそうな物を探していると、コンビニの入口の前にたむろっている不良が三人。

爺「……」

明らかにコンビニに用がある通行人の邪魔になっている。

41: 2011/02/12(土) 04:23:25.85 ID:UHEKicpV0
律「…おし」ギュッ

スタスタスタ

律「おいお前ら!」

DQN1「あぁ?」

DQN2「何だこのちっこいの?」

律「そんなとこに居たら人様の迷惑だろ!隅っこ行けよ」

DQN3「何言ってだお嬢ちゃん?早く帰ってママのオッパイでも吸ってなさい」

DQN1、2「ぎゃははは!」

律「へぇー」ガシッ

43: 2011/02/12(土) 04:25:37.86 ID:UHEKicpV0
決めた。まずはコイツからだな。

DQN3「お、やる気?」

とりあえずあたしを馬鹿にした奴の胸倉を掴む。

律「おら!」

そんでそのままグイッ、と片手で持ちあげる。

DQN3「うおわ!(このアマなんつーパワーだよ…っ!)」

DQN2「おいてめ、離せ!」

律「うお!」ブンッ

DQN2「ぎゃふ!」

44: 2011/02/12(土) 04:29:11.08 ID:UHEKicpV0
殴りかかってきたもう一人の不良を開いていた右手で薙ぎ払う。

だけのつもりだったが、キリモミ回転しながら5m先まで飛んで行ってしまった。

DQN1「うぐぐ…」ガクガク

最後の一人はもう完全に戦意喪失してるみたいだな。足震えてるし。

DQN3「ぐ、ぐるじい、はなじでくれ」ピクピク

律「うん。分かった」ブンッ

DQN1「うわっ!」ガゴッ

急に仲間を投げられ、受け止めきれずに後ろへ倒れるビビりくん。

50: 2011/02/12(土) 10:11:01.09 ID:UHEKicpV0
律「帰ってママのオッOイでも吸ってろよな」ビシッ

DQN1「は、はい!吸わせていただきます!」

そう言うとそいつはさっきあたしに殴られて気を失ってる男と、胸倉を掴まれてた男を背負い去って行った。

律「(すげぇ…この手袋すげぇ!)」

パチパチパチパチ!!

律「ん?」

いつの間にかあたしを取り巻くようにしてギャラリーができていたらしい。

周りの老若男女があたしに拍手を送っていた。

51: 2011/02/12(土) 10:16:50.22 ID:UHEKicpV0
男「姉ちゃん強いねー!」

女「カッコいいよー!」

爺「ありがとう。助かりました」

律「はは…」

いやあんたら助けるためじゃ無かったんだけどさ。

でもこういうのって、何か気分いーなー!


澪「……」

律「ん?」クルッ

そこの門から誰かが今誰か見てた様な…。

52: 2011/02/12(土) 10:26:29.80 ID:UHEKicpV0
律「おーっす!」ガラッ

唯「おはようりっちゃん」

紬「おはよう」

和「…今日澪は一緒じゃないの?」

律「あ!」

やっべ、迎えに行くのすっかり忘れてた。

和「でも昨日あんなことがあったぐらいだから…」

律「(あたしのせいなんですけどね)」

53: 2011/02/12(土) 10:31:33.00 ID:UHEKicpV0
唯「うーん」

でもどうすっかなぁ。
日記使って無理やり来させるンも悪くないけど。

律「そんなことさせる必要ねーんだ」

紬「え?」

律「ああ、こっちの話」スタスタ

律「ぷっ、変なりっちゃん」

話を切り上げ席に着き日記帳を机の上に出す。

律「よし」カキカキ

●月▲日■曜日
校舎のメンテナンスとやらで今日は朝礼だけで学校が終わった。

54: 2011/02/12(土) 10:38:15.40 ID:UHEKicpV0
律「これで実現するはず…」

唯「何書いてるのー?」ヒョコッ

律「わわっ!」バタン

唯「どしたの?そんなに驚いて」

律「な、何でもない!」

唯「ははーん」ニヤリ

…悪寒。

唯「さては極秘事項でも書いてますなりっちゃん隊長」

何だ、ビビらせんなよな。

55: 2011/02/12(土) 10:45:12.80 ID:UHEKicpV0
ガラッ

さわ子「おはようみんな」

丁度その時さわちゃんが教室にやってくる。

さわ子「早く席についてー!今日は大事なお知らせがあるから」

来た…!

さわ子「あら。今日は澪ちゃん休みなのね…まぁいいわ」

さわ子「今日は校舎のメンテナンスで、みんなこの後すぐに下校になるの」

律「おっしゃ来たーーーっ!!」ガタン

あたしが席を立った瞬間にどっ、と笑いが巻き起こる。

56: 2011/02/12(土) 10:50:31.76 ID:UHEKicpV0
唯「あははは!りっちゃん喜びすぎだよー」

和「律…」

やべ、ちょっと調子に乗り過ぎた。

さわ子「りっちゃん。喜ぶのは後でね」

律「…はーい」ストン


唯「今日の部活どうする?」

律「いや、だから校舎のメンテだから無いだろ」

紬「帰りにお茶でもして帰らない?」

57: 2011/02/12(土) 10:54:24.72 ID:UHEKicpV0
和「いいわね。それ」

唯「あ!じゃああずにゃん達も呼んでこようよ」

律「悪ぃ、あたしはパスだわ」

唯「えーなんでなんでー?」

律「澪ん家行ってくるわ」

紬「あ…じゃあお大事にって伝えてくれる?」

律「おう。んじゃな」

とりあえず昨日のことはあたしが原因なんだし…。

59: 2011/02/12(土) 11:02:30.76 ID:UHEKicpV0
―澪の家

律「みーおー!」ピンポーン

澪「はーい、どちら様で…」ガチャ

律「おっす」

澪「えっ?お前、何でこんな時間から!?」

律「はは、何か今日学校が中止になってさ!」

澪「…まぁいいよ。上がって」

家え上がり、澪の部屋へと行く。

律「何でお前学校休んだんだ?元気そうなんだけど」

60: 2011/02/12(土) 11:11:29.24 ID:UHEKicpV0
澪「…本当に分からないか?」

律「ごめん分かるわ」

澪「あんな…あんなことをしてしまうなんて…もう学校に行けない…」

律「なーに言ってんだよ。パンモロしたことに比べたら」

澪「あれはあくまで『事故』だっただろ!今回のは『故意』だ!」

いや、故意ってかあたしのせいなんだけどさ……なんて口が裂けても言えない。

澪「本当にどうしてあんなことをしたのか自分に疑問だよ」

律「は…は」

まずい…このままじゃこの先澪の人生を壊しかねないぞ。

61: 2011/02/12(土) 11:18:08.40 ID:UHEKicpV0
澪「そう言えば律…」

律「ふぇい!?」ドキッ

澪「お前今日、コンビニの前で不良と喧嘩してただろ」

そっちか。ビビったじゃねーか。

律「おま!見てたのかよ…」

まさか見られてるとは思わなんだ。しかも親友に。

律「…チクるか?」

澪「そんなことしないよ!ただお前…強かったんだなぁって」

62: 2011/02/12(土) 11:24:10.28 ID:UHEKicpV0
律「そうだぞ。あたしは実はすっげぇ強いんだぜ」

ドーグに頼った嘘の強さだけどな。

律「だからお前のこと馬鹿にする奴がいたら守ってやるからさ、学校来いよ」

単なる自業自得だけどな。

澪「…考えとくよ」

少し話した後、澪の家から出た。

そんで自販機でジュースを買い飲みつつ独り言を言った。

律「ぷはーっ!…あらかじめ『澪は明日から学校に来るようになる』って書いててよかったよ」

63: 2011/02/12(土) 11:26:08.96 ID:UHEKicpV0
不思議な道具に魅せられたあたしの常識は

恐らくこの辺から消えていった。

64: 2011/02/12(土) 11:31:00.08 ID:UHEKicpV0
一度家に帰り、着替えてからあの路地裏へと向かう。

律「おいす婆さん」

老婆「……」

律「何かもっと面白いモン売って無いの?」

老婆「……」スッ

『熱線銃 売ります』

これはタイトルからしてやばいぞ…。

67: 2011/02/12(土) 11:34:12.41 ID:UHEKicpV0
律「でも本物かよ?えらい軽いし」ヒョイッ

老婆「3000円でございます」

律「3000か…キツイな」

老婆「高いか安いかは」

律「ヨアセルフって言いてんだろ。ほら」

婆さんにヒデヲを三枚手渡す。

老婆「お買い上げありがとうございます」

72: 2011/02/12(土) 11:40:56.85 ID:UHEKicpV0
買った熱線銃を手に、あたしはそのまま街に繰り出した。

律「さぁて。どこに向けてぶっ放すか」

気付くと物騒な事を言ってしまっていた。
しかしあらかじめ『今日は死者は出なかった』『外であたしの姿を目撃されなかった』と書いておいたのだ。

だから大丈夫だろ…多分。

律「でも何か実験できるよーな物は無いんかなー」

律「…あの停車してある駐車場辺りがいいかな」

目標は駐車場に停車されてある車。勿論、人は乗っていない状態だ。

そして誰にも見つからないように隠れながら銃口を向ける。
この時のあたしは高揚感と効果を見てみたいしてみたいと言う気持ちに駆られていた。

律「いっくよーん!」

馬鹿みたいな声で何の躊躇も無くグッとトリガーを引いた。

74: 2011/02/12(土) 11:46:29.78 ID:UHEKicpV0
解き放たれた熱線は次々と車を貫通していき、最後には大爆発が起こった。
炎は駐車場全体を包み込み、ガソリンに引火して炎はより一層空高く燃え上がった。

律「うひゃーー……」

いつの間にか尻もちをついていた。

周りが急に慌ただしくなり、サイレンの音が聞こえてくる。
紅蓮の炎は未だに高くうねっている状態である。

律「ここにいると危ないな」

あたしはニヤケ顔を押さえつつ、その場を離れた

77: 2011/02/12(土) 11:50:35.22 ID:UHEKicpV0
―律の家

テレビ「ただいま入った速報です。●●街の駐車場で突然大炎上するという事故が―」

聡「うげっ、これって近くじゃん」

律「蒲焼三太郎うめぇ」ムシャムシャ

テレビ「幸い死者は無しと言う事です。警察は原因の追及と―」

世間があたしの為にざわめき始めるという優越感。

しかも日記帳のおかげで捕まることは無いし手袋で喧嘩は無敵。

それにこの銃一つあれば軍隊でも壊滅させることができる。

律「くくくくく…ふぁーっはははは!完璧だ!」

聡「…?」

79: 2011/02/12(土) 11:54:10.52 ID:UHEKicpV0
>>76
タイムふろしき無いっす…

80: 2011/02/12(土) 11:55:57.52 ID:UHEKicpV0
それからと言うもの、あたしは日記帳を使い親の仕事を成功させ金を増やし

手袋を使って不良狩りを始め、街のヤンキー達のカリスマ的存在になり(知人に知られないように前髪下ろしフードで)

銃を使い死者が出ない程度に世間を騒がせていた。

そうしてだんだん使っていくう内に道具の欠点も分かってきた。

あらかじめ日記はあくまで「あらかじめ書いておいたことを現実にする」だ。

つまり突然の事柄には対処できない。

スーパー手袋は当然だがその場に無いとどうしようもない。

熱線銃は…言わずもがな。

82: 2011/02/12(土) 12:03:56.13 ID:UHEKicpV0
ある日の夜、ついに最悪のことが起こった。

律「今日ドコ行く?」チャラチャラ

男A「最近オープンしたバーとかどっすか?」

男B「今日は俺の奢りっす。律さん限定で」

男C「俺にも奢ってくれよーん」

澪「…あれ?」

クラブに入る階段でたむろっているとジーっと見てくる女が一人。

85: 2011/02/12(土) 12:07:46.48 ID:UHEKicpV0
男A「何かあいつ俺らのこと見て無いっすか?」

律「あぁ?……ゲッ!」

何でこんな所にいるんだよ、澪!

澪「…」ジーッ

律「(見んな見んな!こっち見んな!)」

澪「…律?」

律「あ?律って誰だよ俺は男だぜ?」(裏声)

我ながらの自分の演技は完璧だと思った。

澪「あっ…すいません!人違いでした」

律「(アブねー)」

男C「何言ってるんすか律さん?」

87: 2011/02/12(土) 12:28:32.68 ID:UHEKicpV0

律「この馬鹿!」バキッ

男C「あでっ!」

澪「やっぱり律なんだな!?」

律「…ちっ」パサッ

もう無理かと思い、フードを下ろす。

澪「何やってんだよ……学校にも来ないと思ったら」

律「あんなとこ行く必要ねーだろ。あたしもう一生遊んで暮らせんだから」

澪「放課後ティータイムはどうするんだ?」

律「…知らねぇよ」

新たな居場所を得たあたしに部活のことなんて頭に無かった。

89: 2011/02/12(土) 12:33:55.27 ID:UHEKicpV0
澪「お前が作った部活だろ!」

律「忘れたな」

澪「無理やり私を誘ったのも律だ…」

律「あっそ」

男A「この女何言ってんすか?」

律「さぁ?頭イカれてんだろ」

澪「…っ!」

律「大体お前何しに来てんだよ。こんなトコまで」

93: 2011/02/12(土) 12:39:08.50 ID:UHEKicpV0
澪「みんなお前のこと心配してるんだぞ…唯も紬も梓も和もさわ子先生も」

澪「家に行ったら聡に泣きながら『姉ちゃんを元に戻して』って言われもした」

律「そいつは御苦労なこったな」

そう言った時、あたしは澪に掴みかかられた。

澪「お前は一体みんなを何だと!」

律「あー、そういうのいいから」グッ

澪「うっ!」

胸倉を掴んでいた手首を掴むと澪は苦痛に顔を歪める。

離してやると涙を流しながら手をさすっている。

94: 2011/02/12(土) 12:43:04.13 ID:UHEKicpV0
澪「うっ…うぅ」

律「泣くぐらいなら最初から向かってくんなよ」

男B「やばいっす律さん。そろそろ人が…」

周りを見る、澪が大声を出していたせいか人の視線を集めていた。

律「見せモンじゃねーんだよ!」

こっちを見ていた奴らは顔を背け、再び歩き出す。

律「もうあたし帰るわ…今日はバー行く気分になんねー」

男A「お、お疲れっす」

95: 2011/02/12(土) 12:55:25.55 ID:UHEKicpV0
澪「私のこと守ってくれるって…そう言ってたじゃないかっ!」

律「…言ってねーし」

泣き叫ぶ澪を放って歩き出した。


そうしてしばらく歩いていると見知った顔に出会う。

律「…ん」

老婆「……」

変だな。このババァいつもは路地裏にいるのに。

律「よう、婆さん。まだやってんのかよ」

96: 2011/02/12(土) 12:58:12.60 ID:UHEKicpV0
老婆「……」

律「今度はどんなオモシログッズを売ってくれんだ?」

『独裁スイッチ 売ります』

律「何だよこれ。ちっさ…」

老婆「30万円でございます」

律「えらく破格だな」

昔のあたしなら到底手の及ばない価格だったが今のあたしは違う。

大金持ちの娘なんだ。

98: 2011/02/12(土) 13:03:04.92 ID:UHEKicpV0
律「カードでいいか?」

老婆「現金のみとなっております」

律「…分かったよ。ちょっとATMで下してくるから」

老婆「……」

全速力でコンビニに向かい、ATMで金を下ろし戻ってきた。

律「はぁっ、はぁっ」タッタッ

よし、婆さんまだ居るな。

99: 2011/02/12(土) 13:08:05.48 ID:UHEKicpV0
律「ほら!三十万!」バッ

老婆「お買い上げありがとうございます」

律「三十万もしたんだから、そりゃ今までを凌駕する力なんだろうな」

老婆「それはお使いに…」

律「あー分かってるから、もうそれ以上言わなくていい」

買った小さな機械をポケットに入れ、家へと戻る。

日記で親を出世させてからという物、両親は海外を飛び回り家には帰ってこなくなった。

聡「お帰り…姉ちゃん」

律「ただいま」

聡「今日、澪さんが来たよ」

100: 2011/02/12(土) 13:12:12.78 ID:UHEKicpV0
律「…あっそ」

聡「すげぇ心配してたよ」

律「そうか」

聡の言葉を聞き流し部屋へ戻ろうとする。

聡「そうかって…姉ちゃん最近おかしいよ!急に学校に行かなくなるし夜は出ていくし!」

律「あたしの勝手じゃねーか。それとも何か文句あんのか?」

聡「大ありだって!今の姉ちゃんは姉ちゃんじゃない!」

律「……」

何を血迷ったのか、あたしはポケットへと手を伸ばし例の機械を取り出す。

101: 2011/02/12(土) 13:15:29.98 ID:UHEKicpV0
聡「何だよ、それ…」

指にグッと力を入れ機会のボタンを押した瞬間―


目の前に居た弟が消えた。

跡形も無く綺麗さっぱりと。


律「…え?」

何が起こったんだ今?

律「どこ行ったんだあいつ?」

突然のことで頭が混乱したあたしは、そのままソファーに倒れ込んだ。

104: 2011/02/12(土) 13:23:16.28 ID:UHEKicpV0
いつの間にか眠っていたらしい。
起きると、そこは家の居間が目に入ってきた。

律「だる…」

時間は8時。本来ならもう用意しないと遅刻してしまいそうな時間。

だが学校へ行かなくなったあたしには関係のない話だ。

律「…あれ」

窓を見るとハンガーに聡の中学の制服が掛かりっぱなしだった。

アイツも今日学校を休んだのか…まぁ別にいいけど。

律「居るんなら、たまにゃ朝飯ぐらい作ってやるか」

気だるい身体を起こして台所へ向かった。

106: 2011/02/12(土) 13:28:23.14 ID:UHEKicpV0
自分で言うのも何だが、中々旨そうなオムライスが出来た。

律「聡ー!起きろ、姉ちゃんがオムライス作ってやったんだぞー!」

返事は無し、と。

律「ったく、自分で起きてこいっての」

仕方ないから階段を上がり聡の部屋の前まで来る。

律「起きろー!」ドンドンドン

再び返事無し。

律「おい、入るからな!」ガチャ

109: 2011/02/12(土) 13:33:38.90 ID:UHEKicpV0
律「…居ないのか」

どうやら早朝から出て行っているらしい。

それが遊びに行ってるか病院か何かかは知らないけど…

律「あいつちゃんと学校に連絡したんだろうな?」

念の為、聡の中学に電話を入れてみる。

教師A『はい、●●中学の教師Aです』ガチャ

律「すいません。私、田井中聡の姉ですが…」

教師「たい…なか…さとし?」

律「はい」

教師「ちょっと待っててくださいね(聞いたこともないな)」

110: 2011/02/12(土) 13:39:23.97 ID:UHEKicpV0
そう言い、電話は保留になる。

律「何だ?アイツ中学じゃ教師にすら顔覚えられてないのか?」

小馬鹿にしつつ保留が終わるのを待つ。

教師A『もしもし』ガチャ

律「はいはい」

教師A『すみませんが、我が校にそのような生徒は在籍しておりませんでした』

……は?

律「おい冗談だろ?だって聡の制服も鞄も…」

教師A『他の学校とお間違いじゃないでしょうか?』

115: 2011/02/12(土) 13:53:25.31 ID:UHEKicpV0
律「はぁ!?何意味分かんねーこと」

ポケットに手を突っ込むと何かに手が当たった。

出して見るとそれは小さな機械だった。

律「……あ」

忘れていた。

教師A『もう一度お確かめになってかけてみてください。それでは』ガチャッ

ツー ツー ツー

あたしが聡を消したんだった。この独裁スイッチで。

律「いや、まだ決めつけるには早い

116: 2011/02/12(土) 13:59:45.37 ID:UHEKicpV0
携帯を取り出し澪にかける。

プルルル

澪『…律か?』ガチャッ

律「ああ」

澪『何だ?学校に来る気にでもなったのか』

律「抜かせ」

澪『じゃあ何の要件だ!』

律「そう怒んなって。聡のことなんだが…」

澪『聡?』

律「昨日会ったんだろ?」

澪『お前の横にいた男達の一人か?』

117: 2011/02/12(土) 14:05:58.47 ID:UHEKicpV0
律「そりゃ仕返しか?」

澪『いや、お前の質問に答えてるだけだが…』

律「聡だよ、聡!あたしの弟の!」

澪『お前はずっと一人っ子だっただろ!』

律「もう何言ってんだよお前!真面目に聞いてるんだよこっちは!」

澪『律……まさか麻薬でもやってるんじゃ』

あ、ダメだわ。

もうこれ以上はダメだと思い電話を切る。

澪『お、おい律!今からそっち行くから家にいr』ブツッ

119: 2011/02/12(土) 14:19:40.50 ID:UHEKicpV0
これではっきりした。

人物の消滅どころか、こりゃ存在の消失だ。

消した人に関する関係者の記憶も無くなる。

こりゃまさに完全犯罪、神の不在証明だな。

律「はは…本当に消しちまったんだ…たった一人の弟を」

もう乾いた笑いしか出てこねぇや。

何のやる気も起きなくなってソファーに横たわる。

律「待てよ…あらかじめ日記に『そんなことは無かった』って書けば」

120: 2011/02/12(土) 14:25:04.71 ID:UHEKicpV0
●月▲日■曜日
昨日、聡が消えたがそんなことは無かった。


これで聡が…

戻ってこなかった。

律「な、何で?この日記は現実を歪めることができる筈だろ!?」

律「現実…?」

あくまで現実を歪めるんであって

独裁スイッチのような同じ非現実を歪めることはできないってことかよ…。

いよいよ絶望感に苛まれていた時、ピンポーンとインターホンが鳴った。

律「……」

122: 2011/02/12(土) 14:33:59.32 ID:UHEKicpV0
扉を開けると汗をかいた幼馴染が手を膝につき立っていた。

澪「はーっ…はーっ!」

律「走ってきたのかよ?」

澪「気が気でならなかったんだよ…お前が心配で」

律「余計な御世話だ」

澪「お前が変なことばかりいい出すからだよ!」

律「あたしは変じゃない!変なのはお前らだ!」

澪「落ち着いてよく聞け律!お前は小さいころから一人っ子だった!」

律「お前の記憶が忘れてるだけで本当は違うんだよ!」


123: 2011/02/12(土) 14:38:48.16 ID:UHEKicpV0
澪「じゃあ、確固な証拠を見せてやる!」

律「お、おい!」

澪は勝手にあたしの家に上がり、棚からアルバムを取り出し始めた。

律「何やってんだよ澪!」

澪「…あった!この写真」

律「はぁ?」

澪「見ろ。小学校の時、私の家族と律の家族が一緒に遊園地に行った時の写真だ」ペラ

律「……!」

受け取って見るとあたしとあたしの母と父、澪と澪の母さん父さんが映っていて

聡の姿は無かった。

125: 2011/02/12(土) 14:43:39.19 ID:UHEKicpV0
あたしの記憶だと、確かにこの時聡も居た。絶対に居た。

澪「これで分かっただろ?」

律「…」

澪「きっとお前は、ストレスか何かで幻覚を見てるんだ」

律「…う」

澪「一人で背負い込むなよ。私が力になるからさ」

律「違う」

澪「え?」

律「間違ってるのはお前らだ」

ポケットから再びあのスイッチを取り出す。

130: 2011/02/12(土) 14:52:15.30 ID:UHEKicpV0
律「消えろ」

澪「り…

そしてスイッチ一つで秋山澪と言う人間の存在が地球上から消滅した。

律「……」

律「……くくく」

律「っははははは!消しちまった!!」バッ

あたしは完全に気が狂っていた。

独裁スイッチポケットにしまい、スーパー手袋はめ熱線銃を持って外へと出る。

さて、まずは何処からこの世界を破壊していいものやら。

131: 2011/02/12(土) 14:57:52.83 ID:UHEKicpV0
律「くくくく…」

ドス黒い笑みを浮かべながら住宅街を歩く。

子供「ねー、あのお姉ちゃんすごく顔が怖いよ」

親「しっ!」

十秒後。

あたしの眼前に広がったのは赤い返り血が広がったひび割れたアスファルトだった。

近所の奴らが音を聞きつけて家から出てくる。

おばさん「ひ、人殺し!!」

おじさん「誰か警察を!」

律「アァ…」スッ

今度は銃口を家屋に向け、トリガーを引いた。

134: 2011/02/12(土) 15:02:27.14 ID:UHEKicpV0
――

テレビ「速報です」

テレビ「現在、●●で一人の少女が危険な武器を持ち街中で暴れているという情報が入ってきました」

テレビ「倒壊したビルや家屋は100に上り、死者は1000名を超えたとの情報です」

テレビ「軍隊やSWATの要請も…」

135: 2011/02/12(土) 15:04:03.80 ID:UHEKicpV0
テレビ「あっ!新たな速報です。少女は自分のこめかみに銃を打ち自害したとの報告が…」

144: 2011/02/12(土) 15:12:30.70 ID:UHEKicpV0

律「どわぁっ!!」

急に頭に冷たい感触がした。

目の前には漆黒の闇が広がっている。

老婆「………」

律「…あれ?生きてる?」

確かに自分の頭打ち抜いた筈だけど。

老婆「いらっしゃいませ」

律「婆さん?」

身体を起こして確認すると、此処は昨日婆さんから独裁スイッチを買った場所だった。

146: 2011/02/12(土) 15:17:35.85 ID:UHEKicpV0
律「夜…なのか」

公園の街頭に光が付いているだけで、辺りは暗い。

それにあたしが破壊した街も元通りになっている。

携帯を出して日付を確認する。

律「一日前に戻ってる…!」

正確には独裁スイッチを買った瞬間。

確かに自分のポケットにはその『独裁スイッチ』がしまわれていた。

律「あれ?夢…だったのか?」

あんなに生々しい夢が本当にあるだろうか…

まだ自分を打ち抜いた感触も残っている。

150: 2011/02/12(土) 15:29:10.90 ID:UHEKicpV0
老婆「当店はこれで店じまいとさせていただきます」

そう言うと老婆は立ちあがった。

老婆「ありがとうございました」

あたしに怪しい笑みをして、品物を置く木の台を置いたまま老婆は闇へと消えていった。

律「……」

とにかく、家に帰ろう。


律「ただいまー」

聡「お帰り…姉ちゃん」

まだスイッチを使う前なので聡もいた。

分かっていたが、なんとなく安心する。

152: 2011/02/12(土) 15:33:08.49 ID:UHEKicpV0
聡「今日、澪さんが来たよ」

「あっそ」と言いかけた所で止まる。

確かこの会話前も…デジャヴか?

律「澪が心配してきれくれたんだろ?」

聡「…うん」

律「あたしの所にも来たよ」

聡「え?」

律「今までごめんな。独りぼっちにさせて」

ワシワシと聡の頭を撫でる。

聡「は、はぁ!?ぜ、全然さびしくなんか、なかったし!」

律「はは、無理すんなって」

154: 2011/02/12(土) 15:39:01.94 ID:UHEKicpV0
今思えばあの独裁スイッチと言うのは…

自分勝手な者に正しい選択をさせる為の道具だったんだろうと思う。

だから今度は道を間違えずに済んだ。


聡は疲れていたのかそのまま眠ってしまった。

毛布を掛けてやってからあたしは自分の部屋に行く。

律「……」

机の上には
「あらかじめ日記」「スーパー手袋」「熱線銃」「独裁スイッチ」。

恐らくこれほどのレア商品に出会えることはもう無いだろう。

律「でも、けじめってやっぱ大切だよな」

あたしは日記帳を開きこう書き込んだ・

157: 2011/02/12(土) 15:41:18.72 ID:UHEKicpV0
●月▲日■曜日
あたしは●月▲日■曜日に老婆と会って不思議な商品を買っていたことは


すべて夢の中のできごとだった。

158: 2011/02/12(土) 15:43:19.19
これでなんとかなるのか?wwwwwwwww

161: 2011/02/12(土) 15:45:12.28 ID:UHEKicpV0
突然ゴツン、と頭に衝撃が走る。

律「いでっ!な、何だ?」

澪「何だじゃないだろ!いつまで眠ってるんだ!」

紬「澪ちゃん、起こしちゃ可哀そうよ」

澪「ムギは甘いんだ!」

律「ここは…」

梓「まだ寝ぼけてるんですか?部室ですよ部室」

唯「りっちゃんよく寝てたねー。こっちま眠くなりそうだったよ」

162: 2011/02/12(土) 15:49:01.36 ID:UHEKicpV0
律「今何月の何日?」

澪「おい、本気でボケたのか…?」

唯「えーとね、●月▲日だよ」

つまり…あたしが下校途中にあの老婆に会った日。

ポケットに手を入れてみてもあのスイッチは無い。

鞄を確認して見ても日記帳は無かった。

律「本当にこれで終わったのか?」

梓「まだ終わってません!これからですよ!」

166: 2011/02/12(土) 15:56:14.84 ID:UHEKicpV0
一通り練習した後、下校する。

唯達と別れてその後、澪とも別れた後あの場所へと向かってみた。

全てが始まったあの路地裏だ。

律「……」

当然そこに老婆の姿は無い。

律「……」

恐らく一生忘れないだろうと思っていた老婆のことは

何故か次の日からは完全に忘れ去ってしまっていた。

167: 2011/02/12(土) 16:02:35.81 ID:UHEKicpV0
「あらかじめ日記」完

168: 2011/02/12(土) 16:03:16.85
乙!
不思議な老婆とか、懐かしかったよ

169: 2011/02/12(土) 16:05:35.73
マジで乙

184: 2011/02/12(土) 16:27:57.18 ID:UHEKicpV0
今日もムギちゃんのお菓子美味しかったな。
毎回思うんだけどあのお菓子の名産地って何処なんだろ?


ガッ

唯「いたっ!」

ボーっと歩いていたせいか私は何かに引っかかり背中から転がった。

唯「あいたた…あ、ギー太!」

ケースに入れていたおかげで傷はないみたいだった。

唯「よかったーギー太…ひぃぃっ!」

老婆「………」

気付くと怖そうなお婆さんがこちらをじっと見ていた。

185: 2011/02/12(土) 16:34:26.84 ID:UHEKicpV0
唯「あ、あの、その、何でか知りませんがすいません!」

老婆「………」

あれ?怒られない?

唯「…今の内に」ソーッ

あれ、何だろこれ。

お婆さんの前には『おちる1000円札 売ります』と書かれた札の横に1000円札が置いてあった。

唯「1000円…売ります?」

老婆「………」

唯「ねーねーお婆さん、何でお金を売ってるの?」

186: 2011/02/12(土) 16:40:20.83 ID:UHEKicpV0
老婆「それはお買いになっただけが分かるのでございます」

唯「何だよケチ~」ブー

老婆「お客様は他にもいらっしゃるので」

唯「…値段はどのくらいなの?」

老婆「1000円でございます」

唯「1000円?1000円を1000円って…」

老婆「……」

黙ってないで何とか言ってほしいよ…。

187: 2011/02/12(土) 16:47:07.05 ID:UHEKicpV0
唯「ちょっと待って、1000円なら…」

なんとなくお婆さんの気迫に圧されて買うことになっちゃった。

老婆「お買い上げありがとうございます」

でも得した訳でもなく損したわけでもないからいいのかな?

唯「はっ!まさか偽札かも…」

唯「そこのコンビニで確かめてみよ」


ピンポンピンポン

店員「いらしゃいませー」

唯「あの、肉まん五つください」

189: 2011/02/12(土) 16:49:01.26
そんなに食べたらご飯食べられなくなるよ

191: 2011/02/12(土) 16:52:34.01 ID:UHEKicpV0

お財布から交換した千円を出そうとする。

この時、千円札が光ったような気がしたんだけど気のせいかな。

店員「あ、本日限定で肉まんお一つ十円となっております」

唯「…ほぇ?」

我ながら間抜けな声が出てしまった。

いつものことだけど…。

店員「肉まん五つで50円になります」

唯「あ、はい」

千円札を直し、代わりに50円玉を取って渡す。

店員「ありがとうございましたー」

194: 2011/02/12(土) 17:00:09.60 ID:UHEKicpV0
唯「えへへ。おいしい」パクパク

普段は五百円なのにすごく得しちゃった。

唯「でもあのコンビニずっと使ってるけど限定なんてあったかな?」

唯「うーん…」

唯「ま、肉まんおいしいからどうでもいいや」


家に帰ると憂がご飯を作って待ってた。

唯「ういー、今日不思議なお婆さんにあったよ!」

憂「不思議なお婆さん?」

195: 2011/02/12(土) 17:04:39.67 ID:UHEKicpV0
唯「うん。1000円札を1000円で売るお婆さん」

憂「お姉ちゃん…それって詐欺じゃ」

あ、そう言えば結局使わないまま終わっちゃったんだ。

憂「どこで売ってたのそのお婆さん」

唯「道端」

憂「なおさら危ないよ!」

唯「大丈夫だよ、きっと。お婆さんだし」

憂「…お姉ちゃぁん」

何でか分かんないけど呆れられた。

197: 2011/02/12(土) 17:17:27.11 ID:UHEKicpV0
―次の日


唯「うーん…」

今日は休日。

私は平沢チキン(ぬいぐるみ)を買ったお店のを見ていた。

唯「このエイリアンのぬいぐるみ欲しいなぁ…999円か」

今手持ちは1000円とちょっと…多分、買えるよね。

唯「と言う事でデパートへ行って参ります!」

憂「いきなりどうしたの?」

唯「それじゃ憂、お留守番よろしくね!」

バタン

憂「ちょっ、お姉ちゃぁぁん!」

199: 2011/02/12(土) 17:27:29.12 ID:UHEKicpV0
唯「相変わらず無駄に広いなぁ」

目標のデパートに到着。
洋服とか欲しい物が増えそうだったけど、まずはぬいぐるみ店に行くことにした。


唯「おぉ…!」

ぬいぐるみ店に着くと真っ先にエイリアンのぬいぐるみがある所へ入る。
だけどこのエイリアンコーナーにはなぜか私だけしかいなかった。

唯「人気ないのかな?こんなに可愛いのに…」

にあったエイリアンのぬいぐるみを一つ取ってレジへ。

唯「これください」

お財布から千円を出し店員さんに預けようとしたら断られた。

店員「その人形、人気無いので処分が決まってるんです。だから無料でお持ち帰ってください」

202: 2011/02/12(土) 17:33:35.43
この千円札欲しい

203: 2011/02/12(土) 17:34:14.71 ID:UHEKicpV0
唯「えっ。でもには近日入荷したばかりだって…」

店員「そうなんですが誰も買ってくれませんからね。気持ち悪いのでお客様は10円でも嫌と」

唯「なら、私が沢山買って持って帰ってもいいんですか?」キラキラ

店員「処分に困っておりましたので…ど、どうぞ(こんなゲテモノ人形を?)」

10円って言うもんだから合計十体も買っちゃったよ。

そう言えば、またあの千円を出したら安くなったよね。

『落ちる1000円』って値段が落ちるってことなのかな?

206: 2011/02/12(土) 17:44:44.30 ID:UHEKicpV0
唯「…ようし」

試しに13アイスクリームに行ってみようっと。

夢にまで見たあのアイスが食べられるかも…

唯「すいませーん。ビッグサイズのトリプルデリシャスアイスくださーい!」

例の千円を差し出す。

その時パンパーン、とクラッカーの音がした。

店員「おめでとうございます。あなたは1300人目のお客様でございます」

唯「…え?」

店員「13と付く番数のお客様には特別に13円での御奉仕となっております」

眉毛の太い店員さんはそう言って本当に13円でアイスをくれた。

223: 2011/02/12(土) 20:21:46.93 ID:UHEKicpV0
唯「おいしい」ペロペロ

間違いないよ。
これはきっとどんな物も安くする魔法のお金なんだ。

唯「あのお婆さんはきっと神様の使いか何かなのかな」

これさえあれば大金持ちだよ!

唯「あ、この服可愛い」

最初は半信半疑だったけど、びっくり!

どんなに買っても10円とか20円なんだからね。

唯「憂にも可愛い服買ってあげよっと」

224: 2011/02/12(土) 20:26:34.73 ID:UHEKicpV0
唯「ちょっと買いすぎたかな…」

両手には持ち切れないほどの紙袋。

唯「タクシーで帰ろ」

タクシーだと楽ちんだね。
あっと言う間についちゃった。

唯「ただいまー!」ドサドサ

憂「あ、おかえ――」

台詞が私の両手に見た紙袋を見た瞬間途切れた。

憂「お姉ちゃん…どうしたのこの紙袋の山」

225: 2011/02/12(土) 20:34:05.65 ID:UHEKicpV0
唯「買ってきたんだよ。デパートで」

憂「ぬいぐるみだけじゃなかったの?お金は?」

唯「全部払ったよ」

憂「そんなお金どこに…」

唯「むふふ。ちょっとね~」

紙袋から憂のために買ってきた服を出す。

唯「はいこれ」

憂「あ、可愛い」

226: 2011/02/12(土) 20:40:46.16 ID:UHEKicpV0
唯「いつもお世話になってるお礼だよ」

憂「ありがとうお姉ちゃん。とっても嬉しいけど…」

未だに憂の顔は下がり眉になっている。

私ってそんなに信用ないかな。

唯「大丈夫だって!何にも心配しなくていいよ」

憂「そこまでいうなら…」

唯「うむうむ」

唯「(次からはもうちょっと自重しよ)」

227: 2011/02/12(土) 20:48:51.91 ID:UHEKicpV0
―週明けの放課後

梓「…あっ、唯先輩ギターメンテナンスしたんですね」

澪「本当だ。綺麗になってるし弦も張り替えれてるな」

唯「わざわざ専門店のトコに持ってったからね!」フン

紬「言ってくれたらウチでできたんだけど…専門店なら高かったでしょ?」

唯「えへへ、そうでもないよ」

律「……うーん」

みんながギー太を見ている中、りっちゃんだけが私を見ていた。

唯「どしたの、りっちゃん?」

律「何か…お前からあたしと同じ匂いがする…」

229: 2011/02/12(土) 20:53:03.43 ID:UHEKicpV0
唯「そうかな?」クンクン

律「そこは敢えてツッコまんぞ」

澪「何言ってんだお前は」

律「いや、あたしも何ってんのか分かんねーんだけど…」

今日のりっちゃんは何か変な感じだ。

律「まぁ、とにかく唯。何事もほどほどにな」

梓「何事って何のことですか?」

律「うーん…何だろ」

231: 2011/02/12(土) 21:04:06.60 ID:UHEKicpV0
りっちゃんはどうも何かが腑に落ちない様子みたい。
それから今日も練習もせずにお菓子だけ食べて解散した。

その日の帰り道。

唯「あ、お婆ちゃん」

この前の道端にひっそりと座るお婆ちゃんを見つけた。

唯「この前はありがとー。おかげでギー太も綺麗になったよ」

老婆「………」

唯「あれ、また何か売ってるの?」

『おちる扇子 売ります』

唯「今度は扇子?」

234: 2011/02/12(土) 21:12:36.59 ID:UHEKicpV0
唯「今度はどんな効果があるんだろ…」

老婆「100円でございます」

唯「100円かぁ…」

多分このお婆さんに不思議な千円使っても効果が無い気がする。

素直に払っとこ。

唯「100円なら普通に払えるしね」

老婆「お買い上げありがとうございます」


237: 2011/02/12(土) 21:16:35.14 ID:UHEKicpV0
唯「この扇子は一体何が落ちるんだろ…」

扇げばいいのかな?

唯「なら…そーればったばった!」


・・・・・。


唯「…何も起こらない」

唯「でも100円だしいっか。普通に使えば」

憂「お姉ちゃんご飯でき……だ、誰!?」

唯「え?お姉ちゃんだよ、憂」

憂「その声……お姉ちゃんなの?(こんなにキリッとした顔じゃないよね?)」

240: 2011/02/12(土) 21:24:35.06 ID:UHEKicpV0
唯「もう何言ってんのー?『誰』はひどいよ憂」

憂「だ、だって!そんなにキリッとした顔じゃなかったよお姉ちゃん」

唯「はい?」

憂「もうっとこう、ふにゅっとした感じだったじゃん。目も垂れ目だったし」

さっきから憂は何言ってるんだろ。

憂「きっと鏡見てみれば分かるよ」

唯「鏡なら机の中にあるよ」ゴソゴソ

机の中から鏡を取り出して自分の顔を見る。

唯「か、かっこ唯…」

242: 2011/02/12(土) 21:31:53.62 ID:UHEKicpV0
―翌日

律「誰だお前は」

唯「第一声が酷いよ、りっちゃん」

紬「その声、唯ちゃん!?」

和「ホントに唯…なの?昔の面影すら無くなってるわね」

澪「何か大人っぽくなったな」

律「ちっがーう!唯はこんな色気ある顔じゃねーだろ、もっとこうアホ丸出しの…」

和「分かるわ。常にポケーとしている顔ね」

私の顔ってそういう風に見られてたんだ…。

244: 2011/02/12(土) 21:40:48.37 ID:UHEKicpV0
唯「…あ」

お昼休みに食べようとお弁当忘れちゃったことに気付いた。

唯「ちょっと売店に行ってくるよ」

律「何だ、弁当忘れたのか?」

紬「買わなくても、分けてあげるよ」

唯「大丈夫だよ。そんなにお金かからないから」

魔法の千円札があるからね。


そんなわけでいつもはあんまり使わない売店へ。

245: 2011/02/12(土) 21:46:03.65 ID:UHEKicpV0
そんなわけでいつもはあんまり使わない売店へ。

唯「へー、結構種類豊富なんだ」

うーん、何にしようかな。
どれもおいしそう…いっそ全部買っちゃおうか。

キャッ キャッ

何だか、えらく周りが騒がしくなった。

唯「何だろ…何かのイベント?」

アッ、コッチムイタヨ!

キャーーッ!

唯「……」

全身を突き刺すような視線を感じる。

249: 2011/02/12(土) 21:53:56.66 ID:UHEKicpV0
純「嘘…あれ、ホントに唯先輩!?」

憂「うん」

梓「雰囲気がガラリと変わってる…」

純「何だかカッコよくなったね」

憂「最初は思わず誰かと思っちゃったよ」

純「うーん…何か、イイよね」

梓「(中身まで変わってなければいいけど)」

254: 2011/02/12(土) 22:01:29.87 ID:UHEKicpV0
―放課後

唯「あずにゃーん!」

梓「(あ、やっぱ中身までは変わって無いんだ)」ヒラリ

いつものように抱きつこうとしたらかわされた。

唯「ぶー、何でよけるの?」

梓「何かその…恥ずかしいじゃないですか…」

唯「え、今更?」

梓「唯先輩がカッコよくなったからですよ!」

紬「昨日までの可愛い唯ちゃんとは正反対ね」

律「何だろ…この親近感」ジーッ

りっちゃんは私にまだ何か腑に落ちないことがあるみたい。

257: 2011/02/12(土) 22:14:46.89 ID:UHEKicpV0
帰り道にあのお婆さんが出没する所に来た。

まだよく分かって無いから、あの扇子の効果を詳しく聞いてみよ。

唯「ここにまた居そうなんだけど…今日は居ないのかな?」

老婆「いらっしゃいませ」

唯「ひゃぁぁっ!」

道理で見つからなかったんだ。

だってお婆さんは真後ろにいたんだから。

唯「脅かさないでよお婆ちゃん」

老婆「………」

259: 2011/02/12(土) 22:22:32.80 ID:UHEKicpV0
唯「あの扇子って結局どういうこと効果があったの?」

老婆「それはお使いになったお客様のみ分かるのでございます」

唯「使ったら、何だか私の雰囲気とか顔つきが変わっちゃったんだ」

老婆「つまりそういうことでございます」

唯「それ答えになってないよ…」

老婆「……」コトッ

『おちる香水 売ります』

唯「……」

今度はこれを販売するつもりなのかな?

260: 2011/02/12(土) 22:33:00.77 ID:UHEKicpV0
老婆「500円でございます」

…やっぱり売る気満々だったんだね。

唯「買っていいのかな?りっちゃんも『ほどほどにしとけ』って言ってたし」

老婆「左様ですか。お客様は他にもいらっしゃるので」

唯「あ、買います!買います!」


唯「ついつい買っちまったぜ…へへ…」

カッコつけてみるものの、自分を殴りたくなった。

唯「結局扇子のことも聞けないままかー」

唯「最初はお金…次は扇子で…今度は香水かぁ」

一体何が落ちるんだろ?

262: 2011/02/12(土) 22:39:02.89 ID:UHEKicpV0
唯「うん、いい匂い」シュッシュッ

憂にもかがせてあげよっと。

唯「うーいー。この香水、いい匂いだよ」

憂「香水?お姉ちゃんまた変なの…を…」

突然ガシャーン!と持っていた皿を落とす憂。

唯「わわっ、早く片付けなきゃ」

憂「…」

ほうきを取ろうと思ったらいきなり憂に強い力で掴まれた。

唯「痛っ!どうしたの、憂?」

266: 2011/02/12(土) 22:44:08.20 ID:UHEKicpV0
憂「好き!」

唯「…は?」

憂「好きだよお姉ちゃん!」ガバッ

強い力引っ張られ、抱きしめられた。

唯「わ、分かった。お姉ちゃんも憂大好きだよ…でもお皿の破片をまず片付けようね」

憂「好き好き大好き!お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁん好き!」

いつものように好きって言ってくれる憂だけど…

今日のは「好き」は普通じゃないと思った。

唯「まさか…おちる香水って」

271: 2011/02/12(土) 22:50:55.24 ID:UHEKicpV0
唯「ちょ、ちょっと一回離して、ね?」

憂「もう二度と離さないからね!お姉ちゃん!」

ダメだ…とりつくシマも無い。

唯「ごめん憂!」バッ

憂「あっ!」

憂を無理やり引きはがし、家から逃げ出す。

憂「どこ行くの!?お姉ちゃぁぁぁぁん!」

唯「(どことなく狂気すら感じる…)」

効果が切れるまで公園の土管の中でじっとしてよう。

274: 2011/02/12(土) 22:55:32.89 ID:UHEKicpV0
男A「おい、見ろよあの娘…」

男B「おほっ」ジュルリ


女A「…可愛い」

女B「…カッコいい」


オタクA「むふーむふー!」

オタクB「まるで二次元…!」ジロジロ

唯「……」

さっきから行く先行く先いやらしい視線を感じる。

277: 2011/02/12(土) 23:00:15.03 ID:UHEKicpV0
男A「ねーねー!お嬢ちゃん!」

唯「(無視…無視)」

男B「待ってよ。つれないな」ガシッ

唯「は、離してください…」

男A「近くで見りゃ更にイイ女じゃん」

男B「ここでやっちまっていいかな?」

唯「だ、誰…か!」

周りの人々もみんなこの男の人たちと同じ視線をしていた。

278: 2011/02/12(土) 23:02:44.07
わっふる!わっふる!

280: 2011/02/12(土) 23:05:31.97 ID:UHEKicpV0


こうなったら、自分の身は自分で守るしかない。


唯「えいっ!」プシュプシュッ

男B「どわっ!」

持っていたおちる香水を掴んでいた男の人の目に向かって吹きかける。

唯「(今だ!)」タッ

私は力が緩んだすきに全力疾走で逃げ出した。

オタクA「に、に、逃げたんだな!」

オタクB「おいますよA氏!」




282: 2011/02/12(土) 23:08:17.51 ID:UHEKicpV0
――

男B「くっそ…あの女!」フラフラ

男A「大丈夫か?」

男B「ああ、すまない」

男A「……」

男B「早くあの女追うぞ」

男A「待て。もうあの娘はいい」

男B「は?お前何言ってんだ?」

男A「お前さえいれば…それでいい」

男B「」

ウワァァァァッァァァッ!

283: 2011/02/12(土) 23:09:11.33
アッー!

285: 2011/02/12(土) 23:09:55.22
うわぁ・・・これはひどいですね(迫真)

289: 2011/02/12(土) 23:14:34.63 ID:UHEKicpV0
唯「はぁ…はぁ…っ!」タッタッ

オタクA「ま、ま、待つんだな!」

おっさん「好きだ!やらせてくれーっ!」

後ろからは複数の人たちが追いかけてくる。

もう脚が痛いし随分と走っている。

でも止まれば……うう、考えたくない。

唯「はぁ…はぁ…もうやだーっ!」タッタッ

マッチョA「おいアンタ、好きだ!」

マッチョB「あ、俺も好きだ!」

唯「ま、また増えた!」

290: 2011/02/12(土) 23:14:40.23
アッー!

292: 2011/02/12(土) 23:22:29.12 ID:UHEKicpV0
唯「もうダメ…脚が…ヘトヘトだよ」

オタクB「対象の動きが止まりました!」

これ以上は走れない…終わった。

おっさん「追い詰めたよ~ウサギちゅわ~ん」

マッチョA「そんじゃあ…」

マッチョB「俺達と朝まで…」

マッチョC「フットワークだ!」

唯「こ、来ないで…!」

293: 2011/02/12(土) 23:23:19.40
マッチョだけなんか違うwww

294: 2011/02/12(土) 23:28:54.29 ID:UHEKicpV0
グイッ

唯「えっ、うわっ!?」

突然前髪の長い、フードをかぶった人に塀と塀の隙間から引っ張られた。

オタクA「ま、待つんだな!」

ガゴッ

オタクA「!?」

太ったオタクさんが入ろうとするも、塀に挟まっちゃった。

オタクB「何やってるんですかA氏!」

マッチョA「早く引っこ抜け!」

オタクA「やめて!ち、ちぎれるんだな!」

300: 2011/02/12(土) 23:41:43.24 ID:UHEKicpV0
?「ここまで来りゃ一安心かな」

唯「……」

男の子みたいだけどフードをかぶってる上に前髪が内外から顔は見えない。

けれど身長は私よりも低い。

唯「あの、ありがとうございました」

?「いいって。気にすんなよ唯」

唯「あれ?何で私の名前知ってるの?」

律「そいつはな、ほら!」パサッ

唯「りっちゃん!…何で鼻栓してるの?」

306: 2011/02/12(土) 23:51:58.71 ID:UHEKicpV0
律「そこかよ」

呆れるりっちゃん。

律「お前のしてる香水は、多分匂いを嗅いだ人を狂わせる魔性の道具だ」

唯「え?おちる香水のこと、知ってるの?」

律「結構前から薄々感づいてたんだ…お前があの婆さんのトコに行ってるって」

律「んで、今日お前をつけてったらその香水買ってたしな」

唯「じゃありっちゃんもあのお婆ちゃんのとこに?」

律「いや、知らないし喋ったこともねぇけど…何か身体覚えてたって言うかさ」

まさか、りっちゃんが「どうも腑に落ちない」みたいなこと言ってたのはことことだったの?

307: 2011/02/12(土) 23:58:08.36
これは面白いな、懐かしいし最高だ

309: 2011/02/12(土) 23:58:47.34
鼻栓とれねーかな

311: 2011/02/13(日) 00:01:07.11 ID:Z2l7N6+q0
律「とにかくあの婆さんには絶対関わっちゃいけねー!」

唯「わわ分かった!」

りっちゃんに強くいわれうなずく。

律「とりあえずあたしの家で香水を落とそう。家には嗅いじゃった憂ちゃんが居るんだろ?」

唯「何で分かったの?」

律「そうでもしないとお前が外に出てくる理由ないじゃん?」

唯「おお。探偵みたい…」

そこからは誰にもみつからないようにりっちゃんの家へと向かった。

312: 2011/02/13(日) 00:08:18.50 ID:Z2l7N6+q0
りっちゃんの家のお風呂を借りてると、りっちゃんが外から話しかけてきた。

律「なぁ、唯。聞いてくれ」

唯「ん?なになに?」

律「あたしさぁ、前に変な夢見たんだよね」

唯「夢?」

律「放課後ティータイムの中で、いっちばん最初に老婆にあったのはあたしだったって夢だ」

唯「あのお婆ちゃんに?」

律「おう。最初は便利だなぐらいの気持ちで婆さんから道具買ってたんだけど…

だんだん学校に行かなくなっていってさ、最後にはその道具で聡や澪、唯もみんな殺してしまう夢だ」

316: 2011/02/13(日) 00:14:25.90 ID:Z2l7N6+q0
唯「…怖いね」

律「今でも思うんだ。あれは本当に夢だったのかってさ」

唯「その、りっちゃんに道具を売ってたお婆ちゃんって」

律「ああ。お前に今道具を売ってる婆さんそっくりだ」

唯「私、みんなを殺したくなんかないよ…」

律「今のお前は一人じゃないだろ?あたしがいるんだから安心しろって!」

唯「そ、そうだね。こっちにはりっちゃんが居るんだもんね!」

律「(夢の中のあたしも協力してくれる仲間が居れば…何かが変わってたのかもな)」

319: 2011/02/13(日) 00:21:59.39 ID:Z2l7N6+q0
唯「今日は本当にありがとね」

律「気にすんなって。困ったことがあったらいつでも言えよ?」

唯「分かりました!りっちゃん隊員!」

律「そんじゃ、気を付けて帰れよ」


家に戻る道を歩いていると……居た。

老婆「……」

唯「…今日は何も売って無いんだね」

売ってたとしても買う気はもう無いんだけどね。

老婆「……」

323: 2011/02/13(日) 00:32:20.02 ID:Z2l7N6+q0
この会話が終われば、多分もう二度と話すことも無い。

会話と言ってもほとんど私だけだったけど。

唯「さようなら」

背を向けて歩き出そうとすると、唐突に声をかけられる。

老婆「道具を上手く使うか下手に使うかは…お客様次第。幸せを得るには代償も大きいのです」

唯「えっ?……あれ」

振り返ると既に老婆は消えていた。


最後の忠告は一体なんだったんだろ…。

325: 2011/02/13(日) 00:37:00.14 ID:Z2l7N6+q0
自分の家の玄関の前に立って深呼吸をする。

唯「…よし!」

ガチャッ

唯「ただいまー!」

憂「あ、お帰りお姉ちゃん。何処行ってたの?」

憂はあくまで普通だった。

唯「えへへ…ちょっとりっちゃんのとこに用事があって」

憂「上着、かけておいてあげるね」

唯「ありがとー、憂」

326: 2011/02/13(日) 00:42:10.52 ID:Z2l7N6+q0
唯「じゃあ手洗ってくるねー」タッタッ

憂「うん。よいしょ…上着をハンガーにと」

ズシッ

憂「ん?ポケットに何か入ってる…」ゴソゴソ

憂「あ、これお姉ちゃんの香水かな?すごくいい香り」

憂「ほんのちょっとだけなら…いいかな」

シュッシュッ

唯「手洗ってきたよー!ご~は~…ん……」

憂「あ、ごはんだね。分かった。それとこの香水ちょっとだけ借りたよ」

唯「やっぱりごはんはいいや」

憂「……え?」

328: 2011/02/13(日) 00:44:15.54
おぉっと!

331: 2011/02/13(日) 00:45:50.56 ID:Z2l7N6+q0
唯編終了…。
これで一応本編の流れは終了です、

律、唯編よりかなり短いけど他キャラの補完もできたらしたいです。

386: 2011/02/13(日) 13:29:51.72 ID:Z2l7N6+q0
梓「あの、みなさん練習は…」

律「ダイジョブダイジョブ、後でちゃんとやるって!」

そう言って昨日も一昨日もできなかったじゃん。

部長のくせに真っ先に練習をサボるとはどうしたものか。

紬「お茶入りましたよ~」

唯「わー、今日のお菓子何かな?」

澪「先に練習してからのが…」

澪先輩はは私と同じ考えなんだけど

律「食ってからでいいじゃんかよ、な」

387: 2011/02/13(日) 13:33:23.93 ID:Z2l7N6+q0
澪「…ったく。食べたらするからな」

この人はおしに弱いのだ。

だから「するからな」と言ってすることは85%ぐらいの割合で無い。


律「うっめぇー!」パクパク

唯「おいしいー!」ムシャムシャ

紬「あら。梓ちゃん食べないの?」

梓「…う」

目の前に差し出されたお菓子。
せっかくムギ先輩が出してくれたので、とつい食べてしまう。

私に先輩たちを叱咤できるぐらい気勢があれば…。

388: 2011/02/13(日) 13:38:13.20 ID:Z2l7N6+q0
律「お、そろそろ。下校時間だな」

梓「…今日も結局できなかったじゃないですか」

律「明日こそやるから、絶対」

そのセリフは何度も聞いた。

唯「今日のお菓子も美味しかったなー」

梓「はぁ…」

一時期はちゃんと練習するようになってたのに…。

梓「こんなんじゃダメだ…」

389: 2011/02/13(日) 13:43:12.67 ID:Z2l7N6+q0
諦めにも近い気持ちで家へと続く道を歩いていた時。

梓「あれ、こんな所に通路なんてあったっけ?」

普段通いなれた道なのに見憶えの無い通路を見つけた。

梓「(なんか出そうだけど…ちょっとだけ行ってみよ)」

通路の奥に行くほど暗くなっていき、まるで別世界みたい。

梓「暗いなぁ」

老婆「いらっしゃいませ」

梓「うわ!」ピタッ

うっ、そこに誰かいるのだろうか。

390: 2011/02/13(日) 13:49:36.66 ID:Z2l7N6+q0
ま、まさか幽霊…

梓「あ」

声の主は行き止まりの壁の前にはちょこんと座ったお婆さん。

梓「ふー…びっくりさせないでくださいお婆さん」

老婆「……」

梓「こんな暗いところで何やってるんですか?」

『かえすマスク 売ります』

立て札にはそう書かれていた。
売りますってことは商売人なんだろうか。

しかも「かえす」って何だろう。

梓「あの、ここでマスクなんて売ってもお客さん来ないと思いますよ」

392: 2011/02/13(日) 13:56:08.68 ID:Z2l7N6+q0
老婆「……」

だんまり決めこんでますねこのお婆さん。

梓「売るならせめてちゃんとパックしたものとか…」

あ、でもひょっとしたら家が貧乏だからこんなものしか売れないのかも。

格好もどことなくみずぼらしいし。

老婆「……」

梓「そのマスク、買います」

老婆「千円でございます」

394: 2011/02/13(日) 14:03:18.70 ID:Z2l7N6+q0
梓「え、えぇ!?」

流石にぼったくりもいいところだ。
コンビニに行けば十枚は買える値段だし。

梓「流石に高すぎなんじゃ」

老婆「高いか安いかはお客様の考え次第でございます」

梓「…買いますよ」

そんなにお金に困ってるのかと同情してつい買っちゃう私って…。

老婆「お買い上げありがとうございます」


395: 2011/02/13(日) 14:09:10.07 ID:Z2l7N6+q0
―梓の家

梓「かえすって言っても、どこからどう見ても普通のマスク」

伸ばしても引っ張っても何も無い。

梓「まぁいいや。最近風邪流行ってるし、明日つけていこ」

梓「千円もしたんだから使わないと損だし」

でも念の為着け心地確かめるために一度つけてみよ。

梓「…着け心地は普通」

母『梓ー!晩御飯できたわよー!』

396: 2011/02/13(日) 14:14:53.14 ID:Z2l7N6+q0
今から母の声がしたので、「はーい」と言おうとしたんだけど

梓「うるせぇババァ!テメェが持ってこいや!」

梓「(えっ!?)」

母『あ、あなたー!梓がグレた!』

次に私の口から出た言葉は言おうとした「違うよ!今のは間違い!」では無く

梓「んだとコラァ!殺すぞクソババァ!!」


結局、晩ご飯抜きになって両親から説教された。

後になって気付いたけど、このマスクはきっと言葉を「かえす」の意味だったんだ。
それだけじゃなく言葉使いまでもが荒くなっている。

梓「信じられないけど…これがあれば先輩達に練習をさせることができるかも」

398: 2011/02/13(日) 14:21:33.91 ID:Z2l7N6+q0
次の日の放課後。
音楽室に入る前、あのマスクをする。

梓「(うわ、緊張する)」

ドアノブに手をかけ、中へと入った。

梓「おっす」

梓「(おっすって…)」

唯「おっすあずにゃん!」

律「どうした梓。モノマネか?」

中には既に先輩たちが座ってお茶をしていた

400: 2011/02/13(日) 14:28:10.79 ID:Z2l7N6+q0
唯「あーずにゃん!」

いつものように唯先輩が抱きついてくる。

梓「汚ねぇツラ近づけんじゃねぇよ!息くせーんだよバカヤロー!」

唯「」

律「」

紬「…え?」

澪「…えぇ?」

402: 2011/02/13(日) 14:31:26.04 ID:Z2l7N6+q0
梓「だいたいテメーら揃いも揃ってティータイムなんかしやがってよぉ!」

梓「甘ったれてんじゃねぇよ!」

唯「あ、あず…にゃん?」

梓「そんなんだから上手くなんねーんだよカス共!」

言い終ると同時に静寂が流れる。

澪先輩なんかは涙目になりながら怯えている。

梓「(やりすぎちゃった…かも)」

406: 2011/02/13(日) 14:36:17.51 ID:Z2l7N6+q0
唯「ごめんなさいあずにゃん」

律「練習…すっか」

澪「」ガクブル

紬「(強気な梓ちゃん、怖いけどちょっといいかも)」

私の願望通り練習は行われた。

ただし、誰一人として明るい顔はしておらずに。

そうして暗い雰囲気のまま下校…。

410: 2011/02/13(日) 14:42:44.14 ID:Z2l7N6+q0
梓「明日どんな顔して先輩達に会おうかな…」

このマスク、気が強くなるのはいいけど余計な罵声まで付け加えちゃってるし。

梓「これは閉まっておこう…永遠に」

梓「あんな得体のしれないお婆さんから物を買ったのがいけなかったんだ」

やっぱり物を買うんなら通販にかぎる。

PCを起動させて大手の通販サイトへと繋げる。

梓「新しい商品は出てるかな、と」カチッ

梓「ん?『必ず貴女に幸福をもたらす幸せの鏡』…か」

明らかに胡散臭さ全開だった。

梓「でも値段はそんなに高く無い。いいや、買おうっと」カチッ

411: 2011/02/13(日) 14:48:53.32 ID:Z2l7N6+q0
翌朝。荷物は既に届いていた。
昨日注文したばかりなのにえらく早い。

梓「この近くだったのかな。でもそんなことより」

ダンボールから例の『幸福になれる鏡』を取り出す。

梓「普通の鏡。どの辺が幸せの鏡なんだろ」

ポトッ

梓「あ、何か落ちた…手紙?」

鏡を持ち上げてると挟まっていた一枚の手紙が落ちてきた。

412: 2011/02/13(日) 14:55:19.00 ID:Z2l7N6+q0
母「梓ー!急がないと遅刻するわよ」

梓「今行くー!」

鏡と手紙を鞄に入れて学校へと向かった。


教師「えー、語呂合わせは1192作ろう鎌倉幕府で~」

梓「……」

梓「(ばれないように…)」

授業中だけど、あの手紙の内容が気になってしまい読むことにした。


416: 2011/02/13(日) 15:17:51.27 ID:Z2l7N6+q0
手紙の内容はこう書かれたいた。

『この鏡を割ればお客様に幸福が訪れます。ただし割ったお客様の身近な誰かに悪いことがおきます
『他人を犠牲にしてでも幸せになりたい方は鏡をお割りください』

梓「うわ、うさんくさー」

教師「仕方ないだろ。教科書にそう書いてるんだから」

418: 2011/02/13(日) 15:25:16.09 ID:Z2l7N6+q0
放課後。

少し重い足取りで部室へと向かう。

梓「会いづらいなぁ…昨日あんなこと言った手前」

後輩なのに生意気なことばっか言っちゃったし。

ガチャッ

梓「こ、こんにちは」

唯「あずにゃん!」ガタッ

梓「(やば、怒られる!)」

420: 2011/02/13(日) 15:29:36.57 ID:Z2l7N6+q0
澪「よかった…来てくれて」

律「またお前が来なくなるかもって、みんな心配してたんだ」

紬「ごめんね。今日からはもっと真面目に取り組むわ」

私の思っていたことと正反対のことを言われた。

絶対怒られると思ったの逆に心配されていたらしい。

梓「いえ、私が悪いんです。皆さんに私の考えを押し付けてしまってすいませんでした」

唯「いいんだよそんなこと!あずにゃんが来てくれればそれで!」ギュー

422: 2011/02/13(日) 15:34:54.54 ID:Z2l7N6+q0
梓「くすぐったいですよ唯先輩」

私の心配など必要なかったんだ。
先輩たちの広い心のおかげですぐに仲直りができた。

今日はいい気持ちで寝られそう。

しかしこの後私の気持ちはどん底まで下がって行った。


梓「割れてる…」

家から帰って鞄を開けたらあの鏡が割れていた。

梓「べ、弁当箱にでも当たっちゃったのかな。もうちょっと注意してればよかった」

424: 2011/02/13(日) 15:44:44.30 ID:Z2l7N6+q0
テレビ「さぁ、今年もやって参りました!1年に1度のお楽しみプレゼントは~」

つけた番組から陽気な音楽が流れている。

テレビ「●●県▲▲市在住のペンネームAZU.Nさんに決定しました~っ!パチパチパチ!」

梓「」

●●県▲▲市は此処だけど…私はAZU.Nなんてペンネームでこのテレビに応募した覚えは無い。

プルルルルル

それと同時に電話がかかってくる。

梓「はい…」ガチャッ

425: 2011/02/13(日) 15:55:52.01 ID:Z2l7N6+q0
男『AZU.Nさんのご自宅ですか?』

梓「え?」

男『今年のお楽しみプレゼントの「世界一周の旅」がご当選いたしました』

そんな馬鹿な。応募すらしてないのに当選ってどういうこと?

梓「…あ」

そう言えば小学校の時は懸賞にハマって色んなとこにはがきを応募してたっけ。

でももう何年も前の話だ。

男『商品は近日中に発送させていただきますので。それではよい旅を~』ブツッ

428: 2011/02/13(日) 16:06:21.22 ID:Z2l7N6+q0
その時あの手紙の文章が頭をよぎる。

この鏡を割ればお客様に幸福が訪れます。ただし割ったお客様の身近な誰かに悪いことがおきます―
他人を犠牲にしてでも幸せになりたい方は鏡をお割りください―

梓「私の身近な人って…先輩達?それともお母さんお父さん?憂と純?」

いや、でも通販で買った胡散臭い鏡だし。

梓「この鏡、インチキ商品だよね。きっと」

そう自分で自分に言い聞かせておいた。
世界一周旅行とやらが当たったのも何かの偶然のはず。

429: 2011/02/13(日) 16:13:21.34 ID:Z2l7N6+q0
そして憂から唯先輩が入院したと聞かされたのは次の日の朝のことだった。


憂「照明がいきなり落ちてきたの…ガシャーンって。下敷きになったお姉ちゃん、全く動かなくなって…うぅ」グスッ

純「大丈夫だって。きっと唯先輩大丈夫だから、泣きやんで」

純が憂の頭を撫でてる間、私は口をあけてアホ面をしていただろう。

梓「鏡…」

純「ん?」

梓「ごめん憂、純。今日早退するね」

ふらふらと立ちあがりながら鞄を持った。

432: 2011/02/13(日) 16:22:22.98 ID:Z2l7N6+q0
梓「じゃあね」

純「ちょ、マジで?」

憂「梓ちゃん…?」

梓「先生には何か適当に言っておいて」

私は教室から逃げるようにして出た。
憂の泣き顔を見るたびに心が痛んだから。

梓「きっと私のせいだ…私が鏡を割ったから」

しかしこれだけでは終わらなかった。

434: 2011/02/13(日) 16:29:21.91 ID:Z2l7N6+q0
Bunsyaka♪

梓「…?」

携帯が鳴ったのでポケットから取る。

梓「お母さんからだ」

ピッ

梓「もしもし」

母『もしもし梓!?おお、お、落ちついて聞いてね?』

そっちが落ちつけ。

梓「何?」

436: 2011/02/13(日) 16:37:05.62 ID:Z2l7N6+q0
母『お父さんがギターで感電して意識を失ったのよ!』

梓「ええっ!」

小さい頃からお父さんがギターで感電するなんてことは一度も無かった。

母『とにかく、学校を早退してすぐに病院にk』

その時ドンッ、と電話越しに大きな音がした

梓「お母さん?」

ブツッ ツー ツー ツー

梓「…」ポロ

ガシャッ

手から携帯が滑り落ちる。

悪いことが起きるって、一人じゃなかったってこと?

440: 2011/02/13(日) 16:46:29.12 ID:Z2l7N6+q0

鞄から手紙を取り出しもう一度よく読む。

『この鏡を割ればお客様に幸福が訪れます。ただし割ったお客様の身近な誰かに悪いことがおきます』
『他人を犠牲にしてでも幸せになりたい方は鏡をお割りください』

よく目を凝らして見ると、最初は見えなかった手紙の隅に小さく追伸があった。

『P,S 幸福が大きければ大きいほど犠牲が大きいのも然りです』

世界一周旅行できる分の幸福って…一体どれだけの犠牲が。


考えただけで頭が狂いそうになる。


その日、お母さんもお父さんも帰ってこなかった。

443: 2011/02/13(日) 16:53:55.96 ID:Z2l7N6+q0
病院に行けば会えるのかも知れないけど怖くてどうしても行けなかった。

梓「……」ガタガタ

プルルルルル

ずっと電話が鳴り続けてたけど、耳を塞いで毛布の中で丸くなっていた。

きっともしかしたら唯先輩やお父さんお母さんの他にも

澪先輩や律先輩やムギ先輩、憂、純…さわ子先生までが酷い目にあってるかも知れない。

プルルルルルル

梓「(逃げたい逃げたいこれは夢これは夢これは夢)」

情けないけど現実逃避しなければ壊れてしまいそうだった。

444: 2011/02/13(日) 16:57:19.87 ID:Z2l7N6+q0
――


何日たっただろう。
私は電話線を引き抜き、カーテンを閉め切って家に閉じこもっていた。

当然、家に人が来てもずっと居留守をしていた。

梓「……」カチッ

あの日、●月13日から一度も見なかった携帯を開く。

445: 2011/02/13(日) 16:59:03.41 ID:Z2l7N6+q0
13日 憂
13日 純
13日 憂
13日 澪先輩
13日 律先輩
13日 ムギ先輩
13日 澪先輩
13日 ムギ先輩
13日 律先輩


梓「うわ…着信履歴がすごい」

当然、病院にいる両親と唯先輩からの着信は無い。

448: 2011/02/13(日) 17:01:47.77 ID:Z2l7N6+q0
14日 憂
14日 純
14日 純
14日 憂
14日 澪先輩
14日 ムギ先輩
14日 澪先輩
14日 ムギ先輩

梓「あれ…」

452: 2011/02/13(日) 17:03:55.62 ID:Z2l7N6+q0
15日 憂
15日 憂
15日 純
15日 澪先輩
15日 ムギ先輩
15日 ムギ先輩
15日 澪先輩


やっぱり。途中から律先輩の着信履歴が止んでる。

単に面倒になっただけか…それとも

梓「この後はどうなってるんだろ」

454: 2011/02/13(日) 17:05:56.45 ID:Z2l7N6+q0
16日 憂
16日 憂
16日 ムギ先輩
16日 ムギ先輩


梓「……」

ついに純と澪先輩の着信が止んだ。

457: 2011/02/13(日) 17:09:28.08 ID:Z2l7N6+q0
17日 憂
17日 憂


ムギ先輩の着信が全員止んで残るは憂のみとなった。

458: 2011/02/13(日) 17:11:34.00 ID:Z2l7N6+q0
そして


18日 着信はありません


最後の着信が止んでいた。

462: 2011/02/13(日) 17:15:31.32 ID:Z2l7N6+q0

――

男子高生A「あ、この家…」

男子高生B「ん?この『中野』って人の家がどうかしたのか?」

男子高生A「何でも、『絶対に家から出てこない』女が住んでるって話だぜ?」

男子高生B「へー、引きこもりかよ」

男子高生A「ただの引きこもりのがまだマシだって」

男子高生B「何で?」

男子高生A「朝昼晩ずっと『ゴメンナサイ、ゴメンナサイ』ってずっと呟いてんだとよ」

男子高生B[うえっ、気持ち悪いなそりゃ]


…ゴメンナサイ


男子高生A「…今何か言った?」

男子高生B「いや何も。それより早く行こうぜ、遅刻しちまう」

男子「お、おう」

464: 2011/02/13(日) 17:18:50.84 ID:Z2l7N6+q0
梓編、完。

後は澪とできればムギも。

466: 2011/02/13(日) 17:21:38.51
梓救いなしwww

513: 2011/02/13(日) 20:47:12.45 ID:Z2l7N6+q0
誰も居ない部室で一人、茶をすする。

澪「…不味い」

長椅子には松葉杖があり私の右脚には包帯がぐるぐる巻きにされていた。

澪「やっぱりムギのお茶が一番おいしい」

澪「早く元気になってくれないかな…みんな」


ある日を境に放課後ティータイムは崩壊していった

514: 2011/02/13(日) 20:49:36.63 ID:Z2l7N6+q0

唯は現在、頭に怪我をして入院中。
電話で「大丈夫だよ!」と言ってる分心配はないだろう。

梓はいきなり不登校になった。
最初は律、ムギ、憂ちゃんと鈴木さんに協力してもらい一緒に梓の携帯に頻繁にかけてみたんだが全く繋がらず。

律は帰り道で落盤事故に巻き込まれ意識不明の重体に…いつ回復するか目星はつかないそうだ。

ムギは突然、家庭の事情とやらで休学している。「学校に来る暇が無くなった」と。

憂ちゃんは姉と同じく照明で頭を怪我して入院。
病院生活は「お姉ちゃんと一緒だから寂しくない」らしいけど、あの家の照明を変えることをおススメする。

鈴木さんも大怪我で学校に来てないらしい…。


律が病院に搬送された次の日、私も階段から落ち右足を骨折した。
と言っても唯と律の見舞いに行った病院での出来事だったのは不幸中の幸いだった。

516: 2011/02/13(日) 20:54:29.96 ID:Z2l7N6+q0
結局私も入院することになったのだが処置が早かったおかげで少しのリハビリで退院できた。

澪「すごい泣いてたな私…今思うと恥ずかしい」

ガチャ

和「やっぱり居たのね、澪」

澪「和か。唯の見舞いはいいのか?」

和「この後行くから、何か伝言があればと思ってね」

澪「私も行きたいんだけどな…」

松葉杖が無ければ自由に動くこともできない。
階段の上り下りだけで汗だくになるのに。

517: 2011/02/13(日) 20:57:56.52 ID:Z2l7N6+q0
和「まずは脚を治すことを考えて」

澪「うん。ありがとな」

澪「そうだな…『部室で待ってるぞ』とでも言ってくれ」

和「分かった。確かに伝えておくわね」

澪「頼んだよ」

和「それじゃあ、私行くね」

澪「ああ、またな」

バタン

澪「じゃ、私も帰ろっかな」

松葉杖と鞄を持ち部室を後にする。

愛用のベースは荷物になるから持ってきてはいない。

518: 2011/02/13(日) 21:01:48.10 ID:Z2l7N6+q0
澪「(だいぶ松葉杖も使いこなせるようになったぞ)」カツン カツン

最初は学校を車で送り迎えしてもらっていたが、慣れてきてからは自分で行くことにした。

澪「いい運動にもなるしな…ん?」

反対側の歩道橋の階段の下に、木箱の前に座っているお婆さんが見えた。

澪「あの人、占い師かな」

占い師なら私達の今後でも占ってもらおうか。

そう思って信号を渡りお婆さんが居る階段の下へと行った。

519: 2011/02/13(日) 21:06:41.38 ID:Z2l7N6+q0
澪「あの、お婆さん占い師ですか?」

老婆「……いいえ」

澪「あ、すいません…間違えました」ペコリ

どうやら期待とは違ったようだ。

澪「?」

『人生やり直す時計 売ります』

頭を下げた視線の先、木箱の上にはカレンダー付きの腕時計が置いてあった。

澪「珍しいですねこの時腕時計」

520: 2011/02/13(日) 21:09:49.98 ID:Z2l7N6+q0
へー、カレンダー付きで目もりが24まであるんだな。

老婆「三千円になります」

澪「あ、別に買う気は…」

いや、でもこれだけの多機能付き腕時計で三千円って安いよな。

いつか腕時計買おうと思ってずっと買わないままだったしいい機会だ。

澪「やっぱり買います」

老婆「お買い上げありがとうございます」

523: 2011/02/13(日) 21:14:19.09 ID:Z2l7N6+q0
―澪の家


勉強を終え、暇になった私は歌詞の続きを作っていた。

みんながもう一度全員揃った時に演奏しようと思って書いている歌だ。

澪「とは言ったものの…中々いい歌詞が出来があがらないな」

自分で書いた歌詞にもう一度目を通す。

『人生がもしやり直せるのなら、今度はもう失敗などしない。運命を変えるのは私次第』

澪「…あ」

そう言えばあのお婆さんから買った時計の前に「人生やり直す」って書いてあったぞ。

澪「本気にしてるわけじゃないけど…もし本当に戻れるなら」

腕時計の時間とカレンダーのダイヤルを唯が怪我する前の日に合わせる。

澪「戻りたいな。あの日まで」

524: 2011/02/13(日) 21:19:13.00 ID:Z2l7N6+q0
――


気がつくと私は部室に居た。

澪「……え?」

右足も治ってる…松葉杖も無い。

ガチャッ

梓「こ、こんにちは」

澪「!?」

不登校だった梓が申し訳なさそうに部室へと入ってきた。

澪「あず…!」

唯「あずにゃん!」ガタッ

525: 2011/02/13(日) 21:24:12.09 ID:Z2l7N6+q0
律「またお前が来なくなるかもって、みんな心配してたんだ」

紬「ごめんね。今日からはもっと真面目に取り組むわ」

梓「いえ、私が悪いんです。皆さんに私の考えを押し付けてしまってすいませんでした」

唯「いいんだよそんなこと!あずにゃんが来てくれればそれで!」ギュー

梓「くすぐったいですよ唯先輩」

澪「…あ」

この光景は見覚えがある…。
確か梓が私達を罵倒した次の日の放課後だ。

526: 2011/02/13(日) 21:28:12.39 ID:Z2l7N6+q0
携帯を見るとやっぱり私がダイヤルをセットした日だった。

そう、この日を境にみんながバラバラになっていったんだ。

澪「信じられない…この腕時計の力なのか?」

どうやら腕時計を使う前の記憶は引き継がれているらしい。

紬「お茶入りましたー」

律「おっし。今日は食ったら練習するぞ!」

唯「おー!」

梓「はい!」

澪「……」

一見平和に見えるが私はこの後起こる全ての災いを知っている。

澪「(絶対に変えてやるんだ…この先の未来を)」

529: 2011/02/13(日) 21:32:13.51 ID:Z2l7N6+q0
しかしそうは決意したものの、簡単に変えることはできなかった。

唯は再び照明の餌食になり、梓は不登校に。そして分かっていたのに律の落盤事故で入院。

澪「間に合わなかった…」

唯には「照明を取り替えろ」と再三に忠告したが防げず。
梓には再び連絡とどかす。
律を呼びとめた時には、もう遅かった。

やっぱりこれは変えられない運命なのだろうか。

澪「次は私が骨を折る番か…」

またあの痛いのを味合わなければならないのか。いやだなー。

澪「待て…あの時私が右足を折ったのは見舞いに行ったからだ」

つまり『もし』行かなかったら?

531: 2011/02/13(日) 21:37:57.54 ID:Z2l7N6+q0
澪「痛ったああっ!!ぐぉぉぉ!!」

紬「だ、大丈夫澪ちゃん!?」

すると今度は学校の階段で骨を折ってしまった。

澪「(どうしても運命からは逃れられないと言う事か…)」

私は救急車に搬送されながら考えていた。

澪「(痛い…死ぬ…本当に死ぬ…どうにかこの痛みから抜け出す方法は)」

澪「!」

まさかと思い、腕時計のダイヤルをもう一度あの日にセットする。

534: 2011/02/13(日) 21:41:47.47 ID:Z2l7N6+q0
――


澪「……」

思った通り、右足の痛みが消え去った。

ガチャッ

梓「こ、こんにちは」

唯「あずにゃん!」ガタッ

律「またお前が来なくなるかもって、みんな心配してたんだ」

紬「ごめんね。今日からはもっと真面目に取り組むわ」

梓「いえ、私が悪いんです。皆さんに私の考えを押し付けてしまってすいませんでした」

唯「いいんだよそんなこと!あずにゃんが来てくれればそれで!」ギュー

梓「くすぐったいですよ唯先輩」

543: 2011/02/13(日) 22:12:40.21 ID:Z2l7N6+q0
戻ったはいいがどうすればいいんだ。
私達がバラバラになる運命は変えようが無いって自分自身で証明したじゃないか。

澪「いや…未来は無限大なんだ。変えられないなんてありえない」

律「何だいきなり。それ新しい歌詞か?」


それからは何度も救おうとし、何度も失敗した。
代償と言ってはアレだがそんな事を繰り返す内に少しずつ分かっていったことがある。

まず、唯が入院した時点でほぼ暗い未来は決まったようなものだ。
唯だけが入院して梓と律が救われるってことは無かった。

そしてどんな形であれ、必ず災難がやってくる。

546: 2011/02/13(日) 22:16:10.96 ID:Z2l7N6+q0
ここまで過去を繰り返しても回避不可能と来ると…もう呪いの領域だ。

誰かが私達に呪いをかけているのか、それとも私達の内の誰かが『不幸になる』物を持っているのかの二択。

そう、例えばこの不思議な腕時計を売ってくれた『老婆』から買った物とか…。

実際に私はお婆さんから買った腕時計で何度も時間旅行をしているわけだしな。ありえない話じゃない。

ベッドに横になり独り言を呟く。
因みに時間は私が一番最初に戻したあの日よりも一日前の夜だ。

澪「常識に考えて前者は無いとして…問題なのは後者か」

澪「誰がその『不幸になる』道具を持っているかなんだけど」

澪「怪しいのはいつも一番最初に怪我をする唯か急に不登校になる梓だな」

律とムギの線も捨てきれないが…憂ちゃんと鈴木さんもありえなくはない。

548: 2011/02/13(日) 22:18:16.46 ID:Z2l7N6+q0
澪「疲れた…」

いくら時間を永遠に巻き戻せても、精神的疲労までは戻せない。

澪「明日だ。明日で必ず終わらせてやる」




律「みおー、あっちにアイス屋あるから唯に買ってってやろうぜ!」

澪「でも唯…まだ安静にしてなくちゃ駄目なんだろ?」

律「それなら病室の冷蔵庫にでも閉まっておけばいいじゃん!」

澪「…んー、そうだな」

律「そんじゃレッツゴー!」タッ

549: 2011/02/13(日) 22:20:16.70 ID:Z2l7N6+q0
アイス屋へと駆け出す律。

澪「あ、待って…よ」

突然ピシッと私の前ににヒビが入った。

澪「!」

私は本能的にそのヒビから逃げた。

だけど、そのヒビはしだいに広がっていき律に近付いていく。

澪「逃げろ律っ!」

律「は?」

遅かった……律は何が起こったか分からないという表情で暗闇に落ちて行った。

550: 2011/02/13(日) 22:22:28.86 ID:Z2l7N6+q0


澪「りーーつーーっ!!」ガバッ

チュンチュンと雀の鳴き声が耳に入る。

澪「……夢?」

もう空はすっかり明るくなっている。

澪「最悪の目覚めだ…」

今日やることは

みんなの荷物の仲に変な物が無いか調べることだ。

でも何て言って見せてもらおうか…。

583: 2011/02/13(日) 23:33:29.23 ID:Z2l7N6+q0
教師「ここには、この公式を当てはめれば―」

澪「(もうすぐ放課後だ。このままじゃ、また…)」ボー

この分野はもう何度もやった。
もう頭に入りきっている授業なんて聞く気はさらさら無かった。

教師「何だ秋山。ボケーっとして、手が進んでないぞ」

澪「あ…すいません」

教師「風邪か?受験前に風邪なんてひくなよ」

風邪、か。

澪「…風邪?」

584: 2011/02/13(日) 23:36:34.44 ID:Z2l7N6+q0
梓がマスクをしてきた日のことを思い出す。

そう言えば最初見た時は風邪か何かひいたのかと勘違いしたんだ。

――


梓「だいたいテメーら揃いも揃ってティータイムなんかしやがってよぉ!」

梓「甘ったれてんじゃねぇよ!」

――

澪「(あの時は梓の迫力に驚いて何にも考えられなかったけど…)」

澪「(あの豹変ぶりは普通じゃなかった。けどマスクを外した翌日にはいつもの梓だった)」

586: 2011/02/13(日) 23:40:46.91 ID:Z2l7N6+q0
そうか。そう言うことだったのか。
何でもっと早く気付かなかったんだろう。

たとえ命令でも、あの真面目な梓があんな暴言を吐けるわけが無い。

様子がおかしかったのは、きっとあの変なマスクのせいだ。

もしあの不思議な老婆から売ってもらったものだとしたら…。

澪「(しかも梓だけが毎回必ず『不登校』になるってのも理由もひっかかってたんだ)」

澪「(あれだけの不幸を起こす道具って一体どんな凶悪なものなんだ…)」

教師「また手が止まってるぞ秋山」

589: 2011/02/13(日) 23:46:56.19 ID:Z2l7N6+q0
確かこの日、梓は最後に部室に来た筈だ。

澪「……」ジリッ

私は階段の陰に隠れて梓を待つ。

数分後トントン、と階段を上ってくる音が聞こえた。

澪「(来たか)」

梓「会いづらいなぁ…昨日あんなこと言った手前」

バッタリと出会う直前、私は梓の手をグイッと引っ張る。

梓「きゃ!」

澪「ちょっと来い」

590: 2011/02/13(日) 23:51:43.71 ID:Z2l7N6+q0
梓「み、澪先輩!?」

澪「話がある」グイグイ

強い力を入れた手で梓を開き教室まで引っ張る。

梓「痛っ、痛いです!」

ピシャリと締め切った後、力を込めていた手を梓から離す。

梓「やっぱり昨日こと…怒ってますよね」

澪「そんな話じゃない」

梓「え?」

澪「ちょっと信じられない話をしてやろうか?」

592: 2011/02/13(日) 23:55:35.22 ID:Z2l7N6+q0
澪「私はこれから起こることを全て知ってるんだ」

梓は何を言ってるんだ、と言う顔でこちらを見てくる。

梓「は、はぁ…そうですか」

澪「その顔、信じて無いな」

梓「…すいません」

澪「まぁ当然だな。私なら信じられない」

ますます意味が分からないと言う表情になる梓。

梓「で、話って何ですか?」

澪「ああ。お前最近変な買い物しなかったか?」

601: 2011/02/14(月) 00:05:49.83 ID:Jon2NtgJ0
梓「えっ」ドキッ

澪「例えば怪しいお婆さんから買った、とかさ」

梓「(何で…?あそこに居たのは私とあのお婆さんだけなのに)」

澪「どうした?」

梓「それは…」

澪「それは?」

梓「買い…ました」

やっぱりか。
あんな不思議な商品を売れるのはあのお婆さんぐらいしかいなさそうだしな。

他に居るとしてもこの辺じゃあの老婆以外いないだろう。

604: 2011/02/14(月) 00:14:55.40 ID:Jon2NtgJ0
澪「何を買ったんだ?」

梓「きっと言っても信じて貰えないと思いますけど…」

澪「信じる。信じるから言ってくれ」

どちらかと言うと何度も時間旅行をしてる私の存在の方が「信じられない」だ。

梓「…私が昨日、すごく暴言を吐いたの覚えてますよね」

澪「うん」

確かに昨日なんだがもうずっと遠くの日のことに感じる。

梓「それ、私がしてたマスクの力なんです。『かえすマスク』って言って」

澪「あの暴言の原因はそれか」

608: 2011/02/14(月) 00:21:26.29 ID:Jon2NtgJ0
梓「はい。本当にごめんなさい」

澪「梓のせいじゃないんだから、謝らないで」

しかし、あのマスクが不幸を呼び起こしたとはとても考えれない。

澪「他には何も買わなかったのか?」

梓「あのお婆さんから買ったのはマスクだけですけど…」

澪「マスクだけ?」

じゃあ、他に梓に何か不幸な物を売った奴がいるってことになる。

澪「お婆さんだけじゃなくて、他に何か買った物はない?」

梓「買ったものってだけじゃ多すぎますよ。具体的には?」

澪「…見るからに胡散臭い道具とか」

611: 2011/02/14(月) 00:28:39.71 ID:Jon2NtgJ0
梓「…あ」

何かに気付いたように梓が言った。

梓「これ、通販で買ったものなんですけど」

そう言いながら鞄から一つの鏡と手紙を取り出し、私に差し出した。

澪「…ちょっと小突いたぐらいで割れそうな鏡だな」

梓「多分あのお婆さんから買ったものじゃないんでインチキ商品ですよ」

次は手紙の方を見てみる。

澪「……!」

『この鏡を割ればお客様に幸福が訪れます。ただし割ったお客様の身近な誰かに悪いことがおきます』
『他人を犠牲にしてでも幸せになりたい方は鏡をお割りください』

『P,S 幸福が大きければ大きいほど犠牲が大きいのも然りです』

612: 2011/02/14(月) 00:35:51.45 ID:Jon2NtgJ0

この文章を読んでいるとどことなくあの老婆の顔が浮かんでくる。

澪「ただし割ったお客様の身近な誰かに悪いことがおきます…か」

恐らくあの日…梓は割ってしまったのだろう、この鏡を。

梓「澪先輩?」

だから私を含めて梓の身近な人々が不幸な目にあっていったのか。

梓「あのー?」

そしてその犠牲分だけ梓は幸福を手に入れたはずなんだろうけど…

鏡が本物と知れば真面目な梓にはプレッシャーが強すぎて不登校になってしまったのも納得ができる。

617: 2011/02/14(月) 00:42:19.52 ID:Jon2NtgJ0
梓「澪せんぱーい?」

澪「ごめん。気付けなくって」

梓「あの…何の話ですか?」

澪「私はこれから起こることが分かってるって言ったよな」

梓「え、それ冗談ですよね?」

澪「いいか。落ち着いて聞いてくれ」

これから起こることのあらましを全て話した。


梓「……」

澪「信じてくれ。それでみんなが助かるかもしれないんだ!

619: 2011/02/14(月) 00:52:21.76 ID:Jon2NtgJ0
梓「正直、信じられないです」

頼む…信じてくれ。

梓「でも澪先輩がそんな酷い作り話するって方がもっと信じられないです」

澪「…梓!」

梓「それに、まだ高校生活楽しみたいのにひきこもりなんて冗談じゃないです」

梓「みなさんに不幸が訪れるんならそんな鏡はいらないです」

澪「梓なら信じてくれると思ったよ」

梓「澪先輩の話す『私』は割ってしまったんですね」

澪「これだけ薄いガラスだ。ちょっと小突いただけでもヒビが入りそうなぐらいだ」

澪「だから、あっちの梓のせいじゃないよ」

622: 2011/02/14(月) 01:06:22.09 ID:Jon2NtgJ0
梓「…はい」

あの世界の梓は本当に可哀そうだった。

事故とは言え鏡を割ってしまい、幸福を掴む所か心が壊れてしまったのだろうから。

梓「ゴミ捨て場に捨ててきますね…この鏡」

澪「待て。それで他の誰かが割ってしまったら大変だ」

梓「じゃあ何処に?」

澪「金庫か何かを買ってそれを入れるんだ。それで鍵をしめて川に沈めよう」

梓「まぁ、その方が安全ですね」


この後割れない様に綿で鏡を包み、ホームセンターで安い金庫を一つ購入した。

623: 2011/02/14(月) 01:11:34.35 ID:Jon2NtgJ0
―河原

綿に包みこんだ鏡を金庫に入れ鍵をかける。

澪「これで全部終わる」

梓「私にはよく分かんないですが…御苦労さまでした」

ゆっくり手を離して鏡の入った金庫を川の中へと落としていった。

澪「あと…これももう必要ないな」

例の腕時計を外し川へ投げ捨てた。

これでようやく終わったんだ。

私の長い旅が。

629: 2011/02/14(月) 01:27:00.94 ID:Jon2NtgJ0
澪「……あれ」

どうやら机に突っ伏して眠っていたようだ。

机の上には書きかけの歌詞を書いたレポート用紙が散らばっていた。

澪「全部…夢?」

いや、違う。
腕にはあの腕時計がつけられていない。

人生をやり直す腕時計は私が捨てたんだ。

修正はしたんだから明日に唯はちゃんと学校に来てくれるはず。


…歌詞の続きを書こう

631: 2011/02/14(月) 01:40:51.27 ID:Jon2NtgJ0
唯「おはよー澪ちゃん!」

翌日、唯はちゃんと学校に来ていた。


梓「こんにちはー」

この日は必ず早退していた梓も部活に来た。


澪「やっと取り戻した…」


律「みーおー!この箱、いいもんが入ってるぞー」

律が怪しげな道具を持って歩みよってきた。

澪「何だ?」

律「開けてみな」

どうせロクなもんじゃないんだろうけど、とりあえず開けてみた。

634: 2011/02/14(月) 01:46:48.36 ID:Jon2NtgJ0
箱を開けるとお化けのような人形がビヨーンといきなり出てきた。

澪「……」

律「あれ?ビビんないの?」

ボカッ

律「あうっ!」

澪「お前は相変わらずだな」

幾千もの修羅場を乗り越えてきた私がそんなもので驚く訳無いだろう。

律「変だなぁ…あいついつもこれで尻もちついてたのに」

梓「……」ジッ

澪「(内緒だぞ)」

梓「(まかせてくださいです)」

636: 2011/02/14(月) 01:50:08.33 ID:Jon2NtgJ0
澪「そうそう、そう言えば新しい歌詞考えてきたんだ」

唯「えっ、見せて見せて~!」

紬「私も見たい!」

梓「あ、私もです」


律「もうこんなんじゃ駄目か…澪をアッと言わせれるような道具、帰りに買って帰ろ」

639: 2011/02/14(月) 01:55:00.86 ID:Jon2NtgJ0
澪編完です。
これでifの本編は終わりです。

ムギ編は機会があればまた。

717: 2011/02/15(火) 01:16:40.82 ID:0fEHXLHq0
店員「本当によろしいんですか?」

紬「ええ。最近このお店には迷惑かけてばかりだから」

総額だと恐らく30万相当の損害が出ているはずだ。

店員「分かりました。それでは、まずは店の裏の掃除をお願いできますか」

紬「はい」

ここは父の経営する会社の系列の音楽店。
私は今日から一週間このお店での手伝いを申し出た。

何故なら、ここには世話になりっぱなしだったので何かお礼ができないかと思いついた結果だ。

718: 2011/02/15(火) 01:17:55.98 ID:0fEHXLHq0
紬「ほうきととちりとりを持ってと…」

エプロンをして店の裏のドアから路地裏に出る。

紬「ようし、頑張ろ」

老婆「……」

紬「ん?…あれ、誰かいるんですか?」

横を見ると笑ったような顔をしたお婆さんが座っていた。

老婆「……」

紬「こんなとこに座ってたら風邪ひいてしまいますよ?」

719: 2011/02/15(火) 01:21:00.56 ID:0fEHXLHq0
老婆「……」

紬「あの。今からここでお掃除をするので、勝手ながら少しだけ移動しててもらえないでしょうか?」

老婆「……」

困ったことに無視をされてしまった。

紬「(どうしよう…。何とか言って退いてもらわないと)」

紬「あの!おねが…」

『聞けるブレスレット 売ります』

そう書かれた札の横にブレスレットが置いていた。

紬「…これ、御商売されているんですか?」

721: 2011/02/15(火) 01:23:00.36 ID:0fEHXLHq0
老婆「はい」

紬「(喋った!)」

老婆「……」

紬「この商品のお値段はどのくらいに?」

老婆「千円でございます」

千円ぐらいならいいかな。

紬「珍しそうなんで買いましょう」

紬「因みにこの『聞ける』って?」

老婆「それはお使いになった方だけが分かるのでございます」

722: 2011/02/15(火) 01:25:03.05 ID:0fEHXLHq0
変な言い回しをするお婆さんと思いつつ千円札を渡す。

老婆「お買い上げありがとうございました」

紬「あ、そうだった。お婆さん!」

顔を上げるとお婆さんはどこにも居なくなっていた。

紬「……疲れていたのかしら」

しかし『聞ける』ブレスレットは確かに私の手の中に握られている。

どういう意味での『聞ける』なんだろう。

723: 2011/02/15(火) 01:27:04.27 ID:0fEHXLHq0
答えは翌日、その買ったブレスレットをはめて学校に行った時に分かった。

通学路でサラリーマンの人とすれ違う。

サラリーマン『仕事だるいなー』

紬「…?」

今の独り言だったのかな?

すると今度はおじいさんとすれ違う。

おじいさん『いい天気じゃのう』

声をかけられたと思って返事を返す。

紬「はい。今日は一日晴れるそうですよ」

724: 2011/02/15(火) 01:29:04.39 ID:0fEHXLHq0
おじいさん「…はて?どうして私の考えたことがお分かりになったのじゃ?」

紬「えっ?今『いい天気』だっておっしゃってたから」

おじいさん「思いはしたが口には出しておらんぞ」

おじいさん「変なお嬢さんだ…ほっほっほ」

そのおじいさんは笑いながら去って行った。

紬「何だったんだろう。今の」

電車に乗ると、いつもは静かな電車が多くの声でにぎわっていた。

726: 2011/02/15(火) 01:30:44.20 ID:0fEHXLHq0
『学校休んで寝てたい』

『何やってんだよコイツ。これじゃずっとクリアできないじゃん』

『やっぱり怒ってるかなー怒ってるよなー』

『今日の会議はっと…』

『今日も帰りに居酒屋でパーっとやるかな』

紬「(みんな今日は随分と独り言が多いわ)」

駅から降り、学校に向かっている時に私とすれ違う人は全員独り言を言っていた。

紬「独り言言わなきゃいけない法律でもできたのかしら…」

728: 2011/02/15(火) 01:33:48.45 ID:0fEHXLHq0
学校の門に入ると、周りに居た生徒全員がみんな独り言を呟いていた。

女子『昨日ガラス割っちゃったけどバレてないよね?』

女子『誰にも見られてなかったし』

紬「……」

そんなことをわざわざこの場で言ってのけていいのかな?
もし先生か誰かが聞いてたりしたら怒られちゃうのに。

何かがおかしいと思いつつ教室へ入る。
話声がいつもの数倍に聞こえるのは気のせいでしょうか。

732: 2011/02/15(火) 02:04:10.48 ID:0fEHXLHq0
唯「あ、ムギちゃんおはよう」

私が入ってきたのを見つけた唯ちゃんが挨拶をしてくれる。

唯『今日はどんなお菓子を持ってきてくれたのかな』

紬「それは放課後までのお楽しみね」

唯「えっ」

紬「…どうかしたの?」

唯「い、いや、楽しみにしてるね」

唯『何で分かったんだろう。顔に出てたのかな』

734: 2011/02/15(火) 02:10:10.10 ID:0fEHXLHq0
紬「え?だって今、自分で…」

そう言った途端、唯ちゃんの顔が青ざめていくのが分かった。

唯「ごめんムギちゃん!私トイレ!」

紬「あっ!」

唯『何で何で?ムギちゃん読心術の達人だったの!?』

紬「読心術なんて習ったことすらないよ?」

いい終わる前に唯ちゃんは教室から出て行った。

紬「読心術って心を読むことって昔聞いたけど…」

心を読む?

736: 2011/02/15(火) 02:13:40.80 ID:0fEHXLHq0
――

おじいさん「…はて?どうして私の考えたことがお分かりになったのじゃ?」

おじいさん「思いはしたが口には出しておらんぞ」


女子『昨日ガラス割っちゃったけどバレてないよね?』

女子『誰にも見られてなかったし』


唯『何で分かったんだろう。顔に出てたのかな』

――

聞けるのブレスレットってひょっとして…心の声、つまり真実を聞けるブレスレットってこと?

737: 2011/02/15(火) 02:16:28.37 ID:0fEHXLHq0
何だか急に恐くなってきた。

紬「(もうこのブレスレットは取ろう)」

取ろうとしてみたものの取れなくなっていた。

紬「な、何で?」

どんなに強く引っ張っても取れない。

紬「(嘘…私、このままずっと人の心の声を聞きながら生きていかなきゃ駄目なの?)」

そんなの嫌だ。きっと精神が壊れてしまう。

741: 2011/02/15(火) 02:28:09.24 ID:0fEHXLHq0
私は来る日も来る日も耐え続けた。
聞きたくもない言葉を何度も聞きづけた。

耳を塞いでも聞こえてくる言葉にはもう、うんざりしていた。

しかし、ある日下校している途中私の運命は180度変わった。

『助けて…助けて…』
『暗い…おなか減った…』

紬「?」

助けを求める声。

その声を頼りに行くと声の主は行方不明で誘拐されていた子供達だった。

とあるアパートの一室で犯人が部屋を出て行った後、私はすぐさま琴吹家の使用人を呼び子供たちを保護した。

それからまもなくして犯人は捕まった。


警察署の表彰式において、このブレスレットの力が初めて役に立ったのだと気がついた。

743: 2011/02/15(火) 02:32:38.45 ID:0fEHXLHq0
それからはただ、耐えるだけの生活ではなくこの力を何かに生かせないかを考え実行に出た。


どんなポーカーフェイスでも相手の心を読めると言うのは大きい。

確かにあの時は絶望感しか無かったけれど、今は違う。

ギャンブルやトランプゲームで運だめしの物以外は全戦全勝。

スポーツのアドバイザーでは相手の動きが手に取るように分かるし。

スパイや犯罪者の検挙にも大きく援助できた。

喋れなくなった子たちへのボランティアも行った。

やがては動物の心さえも読めるようになっていった。

744: 2011/02/15(火) 02:36:24.20 ID:0fEHXLHq0
唯「あ、またムギちゃんの記事載ってるよ」

澪「ムギのお茶が飲みたいな…もう懐かしい味のように思える」

律「あいつのお菓子食べねーとやる気でねーよな」

梓「ムギ先輩のお茶とお菓子が私達の原動力だったんですね…」

――


紬「はーっくしょん!!」

うう、風邪かな…。


746: 2011/02/15(火) 02:39:21.73
ムギさんだけリア充になりすぎてワロタ

819: 2011/02/16(水) 23:40:44.76 ID:ff2a6lj10
純「あーあ、今月ピンチだなぁ」

私は中身の軽い財布を見つめながら言う。

憂「そんなにお金使っちゃったの?」

純「スーパーで季節限定のお菓子が発売されたからさ、ちょっと買いすぎちゃった」

梓「純って限定って言う言葉に弱いよね」

今日は休日と言う事で、喫茶店で梓と憂とお茶をしていた。

梓「もうちょっと節約すればいいのに」

純「それができれば苦労しないって」

820: 2011/02/16(水) 23:44:29.56 ID:ff2a6lj10
憂「そゃあ、今日のお茶代は私が出すよ」

憂が突然奢ってくれると言いだした。
今月ピンチの私としては嬉しいことだけども…

純「いや、いいっていいって!」

流石に自分で誘っておいて友達に自分の分を奢らせることになるの嫌だ。

憂「そうかな?遠慮しなくてもいいよ?」

純「遠慮がどうこうじゃなくて…別の問題というか」

しかし自分の財布のことを考えると甘美な誘惑にも思えてくる。

822: 2011/02/16(水) 23:49:23.26 ID:ff2a6lj10

梓「無理しないで貸してもらったら?」

純「うーん…」


純「ごちそうさまでした」

憂「いえいえ」

目の前の女神に深々と頭を下げる。

梓「はぁ…。純っていつか破産しそう」

純「そんな哀愁こもった目でみないでよ」

825: 2011/02/16(水) 23:54:14.05 ID:ff2a6lj10
憂「あはは」

笑ってはいるものの憂も若干、苦笑いになっている。

純「借りた分は来週絶対に返すね」

憂「お金なら返さなくても大丈夫だよ。勝手に出すって言ったのは私の方なんだしね」

純「大丈夫だって、アテはあるんだから」


純「とか見栄張って言っちゃったけど、アテなんてないんだよね…」

憂と梓とバイバイして帰路に着く途中でお金のことを考える。

三日前お母さんから貰ったおこずかいは使い果たしちゃったし、貰ってすぐに借りるわけにもいかない。

827: 2011/02/16(水) 23:58:14.76 ID:ff2a6lj10
純「あーあ、どっかにお金落ちて無いかな」

財布か何かが落ちて無いかと地面を見ながら歩く。
梓に見つかれば「恥ずかしい」とか「みじめ」とか言われそうだ。

その時、家と家の間にお婆さんが座っているのを見つけた。

老婆「」

純「(…何なんだろう、あのお婆さんは)」

老婆「……」

純「?」

よく見ると老婆の前には木箱が置いてあり、その上に立て札と黒く輝くホルダーに入った口紅が一つ置かれていた。

828: 2011/02/17(木) 00:01:44.66 ID:+8aRqX9d0
『おせじな口紅 売ります』

純「(おせじ?)」

老婆「……」

少し興味を持った私は老婆に近づいてみる。

老婆「いらっしゃいませ」

純「あ、ごめんなさい。私お客じゃないんです」

手持ちはせいぜい百円と数十円。
とてもじゃないが買えない。

純「これってお高いんですか?」

老婆「五十円でございます」

829: 2011/02/17(木) 00:06:42.47 ID:+8aRqX9d0

純「はぁ!?」

つい大声を張り上げてしまった。
いや、だってこれが五十円って…安物にしてももうちょっと高いよ普通は。

でも…綺麗だし傷も無い。

私もちょっとはおしゃれしてみようかな。

純「五十円ならいっか。買いますお婆さん」

老婆「お買い上げありがとうございます」

財布はさらに軽くなった。

831: 2011/02/17(木) 00:12:53.03 ID:+8aRqX9d0
休み明け、学校に行く前に早速その口紅をつけてみる。

純「…ちょっとは大人っぽくなったかな?」

お母さんに見せに行ってみよう

純「お母さん」

母「あら、純。どうしたのその口?」

純「お母さんって本当に美人だよねー」

突然思ってもいないことが勝手に口に出た。

母「え?そ、そう?」

833: 2011/02/17(木) 00:16:52.93 ID:+8aRqX9d0
純「私はこんな美人さんの娘で幸せだよ」

母「もう。冗談がすぎるわよ」

そう言いながら母の顔はデレデレしている。

しかし私はこんなことを言おうと思ったつもりは更々無い。

純「(どういうこと!?勝手に言わされてる…)」

純「もう私は世界一の幸せ者で…(以下略)だよお母さん!」


母「あはは…何だか気分がいいからお小遣いあげちゃおっかなー」

純「(え?マジ?ラッキー!)」

835: 2011/02/17(木) 00:20:58.92 ID:+8aRqX9d0
気を良くした母から今月分のお小遣いをもう一度貰う事ができた。

これで借りたお金を憂に返せるよ……よかった。

純「だけど…一体何でなんだろう?」

自分が意識しなくても口が勝手に話してしまった。

こんなことは今までに一度も無かった筈なんだけどね。

純「この口紅つけた時から…!」

まさか「おせじな口紅」って、おせじを言って人を喜ばせることのできる口紅ってこと?

836: 2011/02/17(木) 00:24:55.77 ID:+8aRqX9d0
純「(そんなものが存在するって言うのはすごいけど…でも何か微妙な力…)」

梓「どうしたの?ボケっと歩いてたら危ないよ」

そんな中、学校の登校途中で梓に出会った。

純「(梓か…)」

梓「純?」

純「梓ってさ、何かこう…守りたくなるよね」

梓「は?」

最初の反応は、まぁ当然かな。

838: 2011/02/17(木) 00:28:50.74 ID:+8aRqX9d0

純「だって凄く可愛いしさ。手だってこんなにちっちゃくても必死にギター頑張ってるんだもんね」

梓「え…可愛いって、そんな褒めても何もでないよ」

純「その梓を何で世間は認めてくれないんだろうか?私は理解に苦しむよ」

梓「そんな、そこまでのことじゃ…」ニヘラヘラ

随分と表情が緩くなってきた。

純「背の小さいのもいい味だしてるし(以下略)」ペラペラ


梓「えへへ…へへっへ」

純「(うわ、凄いニヤケ顔!)」

梓「もう、純ってばお世辞が上手いね」ニヘヘ

本当にお世辞なんだけどさ。

840: 2011/02/17(木) 00:36:39.63 ID:+8aRqX9d0
梓と話しているうちに教室へと到着。

純「おはすー」ガラッ

梓「おはよう」

憂「おはよう。梓ちゃん、純ちゃん」

出迎えてくれたのは憂。

あ、これは来るね。

純「うん、今日も綺麗だね憂は」

憂「ext!?」

843: 2011/02/17(木) 00:42:59.64 ID:+8aRqX9d0
いきなりの出来ごとに素っ頓狂な声を出す憂。

純「その髪その目その肌その口その鼻その耳…全てが美しいよ」

憂「…あ、ありがとう?」

純「憂に比べればモナリザなんて(以下略)」ペラペラ

純「宇宙すら(以下略)だね!」


憂「そ、その…あの…あううう」オロオロ

べた褒め攻撃に憂は耳まで真っ赤にしていた。

純「そう言えば忘れに無いうちにお金返しとくね」

財布を取り出そうとしたら憂に手を押さえられた。

879: 2011/02/17(木) 16:03:31.41 ID:+8aRqX9d0
憂「いいから!」

純「いや、でも」

憂「本当にいいから!」

純「…そう?なら、ありがと」

梓「……」ソワソワ

純「?」

梓「…!」

梓は目を合わせると目をそらす。
それにスカートの前で手を重ねてそわそわしている。

880: 2011/02/17(木) 16:07:22.80 ID:+8aRqX9d0
純「(なんか私も褒めてって顔してるね)」

純「どうしたの?」

梓「な、何でもないよ」

純「…」ニヤ

純「ペラペーラ」

――

梓「ふにゃあ…」ガクッ

純「ちょっ!?大丈夫?」

少しほめすぎたのか、足腰を崩し膝をつく梓。

881: 2011/02/17(木) 16:12:20.65 ID:+8aRqX9d0
純「大丈夫?」

梓「ほへ…」

駄目だこりゃ。完全に骨抜き状態になってる。

女子A「梓ちゃん大丈夫?顔真っ赤だよ?」

女子B「あ、本当だ」

クラスメイトの女の子が梓の様子がおかしいことに気付いた。


純「そう言えばさ、二人とも可愛いね」


それからというもの、私は人を褒めて褒めて褒めまくった。
するとびっくり、私は「学校で一番良い人」と言われるようになっていた。

それどころか顔を見ただけで挨拶もされたりもする。

882: 2011/02/17(木) 16:19:17.09 ID:+8aRqX9d0

純「(授業つまんないなー)」ポチポチポチ

教師「コラ、鈴木。授業中に携帯とは何事か」

純「あ、先生また男上げましたね。お嫁さんも幸せでしょうに(以下略)」

教師「ま、全く……ほどほどにな」

純「(ちょろいモンだよ)」

憂「純ちゃんって本当に人を喜ばすの上手いね」

純「まぁね」

884: 2011/02/17(木) 16:24:15.18 ID:+8aRqX9d0

律「なー梓、お前の友達の鈴木さんって人を褒めるのがすごい上手いんだろ?」

梓「純のことですか?」

律「そーそー、純ちゃん。クラスの奴から聞いたんだよ」

澪「ああ、あれって鈴木さんのことだったのか」

唯「純ちゃんがどうかしたのー?」

梓「あれは…正直堪りませんね」

律「そんなにか?!」

梓「こう、心の底から温まるって言うか…一度褒められるとヤミツキになってしまいますよ」

885: 2011/02/17(木) 16:29:23.91 ID:+8aRqX9d0
唯「へー。それじゃ、ちょっと行ってこようかな」

律「あたしも行く!」

梓「この時間じゃもう帰ってるんじゃないですか?」

律「ちぇ、なら明日で行こうぜ」

唯「うん」

澪「(ここ最近で急に有名になった鈴木さん。今まではこれと言った特徴は無かったはず)」

澪「(嫌な予感がする……この感じ前にも)」

886: 2011/02/17(木) 16:36:52.51 ID:+8aRqX9d0

澪「ちょっと出てくる、すぐ戻るから!」

律「え?鈴木さんもう帰ったんだろ?」

澪「別の要件だ!」タッタッタッ


唯「いっちゃったね」

律「何だあいつは」

紬「お茶入ったよー!」

888: 2011/02/17(木) 16:41:02.10 ID:+8aRqX9d0
その日の帰り道、私は重大な事に気付いた。

純「口紅がもう無くなりかけてる…」

今は既に口からふき取っているが、肝心の本体の方が無くなりかけていた。

無くなったらどうしよう…あのお婆さんの所に行けばまた買えるかな?

「おーい!」

誰かに後ろから声をかけられる。

振り向くとその人は息咳きった澪先輩だった。

澪「はぁ…やっと追いついた」

純「どうしたんですか?そんなに息を切らして」

890: 2011/02/17(木) 16:47:11.49 ID:+8aRqX9d0
澪「いや、あのさ。近頃鈴木さんの名前よく聞くからね」

純「それはどうも」

澪「一体何があったのかなって」

心配されているのだろうか?
ベースの憧れの先輩に気にされることは嬉しいけど…。

澪「ここ最近で変わったこととか無かった?」

純「変わったこと?」

澪「何て言うのか…誰かに不思議な物を買わされたりさ」

「不思議な物」「買う」
このキーワードに一瞬ピクッとしてしまう。

897: 2011/02/17(木) 18:25:00.92 ID:+8aRqX9d0
純「無いですよ?でも、何でそんなこと?」

澪「あー、その…えーと…そう!」

何かを思いついたように言う澪先輩。

澪「ここ最近変な物を売りつけるお婆さんがこの町に出没するらしいんだ」

純「(お婆さん…!?)」

澪「(お。今、瞳孔が一瞬大きくなったな)」

純「そ、その人が何か?」

澪「何だか詐欺な商品ばかり売ってくるらしいんだよ。だから買っちゃだめだよって」

898: 2011/02/17(木) 18:27:02.99 ID:+8aRqX9d0
純「お気づかいどうも。でも学校抜け出してまで、わざわざ言いに来なくても…」

そんなことなら普通に明日言えばいいのに。

そもそも何で私にだけ?

澪「…もし仮に買って使ってしまっても、一度はまだいいかもしれない。けど次は絶対に買っちゃ駄目だよ」

純「(この人…口紅のこと知ってるの?)」

澪「(あの例のお婆さんが鈴木さんが有名になった道具を売ったとしたら…)」

純「(何か言ってごまかさなきゃ)」

澪「(鈴木さんの性格的にまた何かを買って…それで最終的に不幸にな目に)」

900: 2011/02/17(木) 18:30:44.20 ID:+8aRqX9d0
純「あ、私急いでるんで…」ザッ

私は話を切り上げてそそくさと立ち去ることにした。

澪「忠告はしたから…後は君しだいだよ」ボソッ

純「……」

最後に澪先輩が何か呟いた気がするけど…いいや。
気にせずに足を進めた。


そんなことよりあのお婆さんまだいるかな?


純「いた!」

この前の場所にあのお婆さんはいた。

901: 2011/02/17(木) 18:35:03.92 ID:+8aRqX9d0
純「あのさお婆さん、この前の口紅切れちゃったんだ。もう一個無いですか?」

老婆「あの商品はあれだけでございます」

純「そんなー…」

がっくりと頭を垂れたけど、木箱の上に今度は白いホルダーに入った口紅が目に付いた

純「あれ?あるじゃん」

老婆「それは『悪い口紅』でございます」

純「何でもいいよ、また不思議な力があるんでしょ?」

純「で、いくら?」

老婆「百円でございます」

903: 2011/02/17(木) 18:36:54.86 ID:+8aRqX9d0

純「買い…」

澪先輩に言われたことを思い出した。

「次は無いよ」的なことを言っていた気がするけど…関係ないよね。

純「…買います!」

どんな効果が期待できるんだろうなー?



翌日、学校の教室に行くと前に唯先輩と律先輩が立っていた。

唯「あ、純ちゃん来たよりっちゃん!」

律「おー、来た来た」

どうやら私を待っていたようだった。

904: 2011/02/17(木) 18:38:26.04 ID:+8aRqX9d0
何の用事だろう。

純「どうしたんですか?」

唯「純ちゃんに褒めてもらおーと思いまして!」ビシッ

律「さぁ、頼む!」

手をシュビッとあげる二人。
どうやら、私の噂を聞きつけてきたと言った様子だった。

純「(困ったな…今日はまだ口紅つけて無いんだよね)」

純「ちょっと待っててください」

トイレで口紅を塗ろうと思ってトイレへと走る。

澪「……」

階段の上から澪先輩が見ていたとは知らずに。

916: 2011/02/17(木) 22:00:31.45 ID:+8aRqX9d0
純「これでよし、と」キュッキュッ

トイレの鏡で口紅を塗りなおす。

と、丁度終わった時に梓が入ってきた。

梓「あ、純!」

純「ん?」

梓「純に言われた通りにサイドテールにしてみたんだ」

確かに目印のツインテールからサイドテールになっている。

梓「これ、似合ってるかな?」

純「ゴキブリからカブトムシに進化しただけだろ」

…え?今、私何て言ったっけ?

梓「…え?」

純「ゴキブリは人類の大敵だけどカブトムシは人気者じゃん。よかったね」

面白いぐらいに悪口が頭の中に思い浮かんでくる。

917: 2011/02/17(木) 22:04:29.26 ID:+8aRqX9d0
梓「そんなこと…純の言うとおりにしたらみんな褒めてくれたよ?」

純「そうだね、ゴキブリが羽化しただけだね」

梓「ゴキブリゴキブリって、さっきから聞いてれば酷いよ、純!」

純「酷いのはお前のツラだよ」

梓「っ!!純の馬鹿!」

怒った梓はサイドテールを振りほどき走って行った。

純「口ほどにも無い…」

言い終えてあの「悪い口紅」の意味が分かった。
これは「おだてる口紅」と相対的な関係にあるんだ。

しかし不思議と悪口を言った後の罪悪感が無い。


教室に戻るとまだ唯先輩と律先輩が待っていた。

唯「純ちゃーん!褒めてー!」

純「うわっ!近寄んな、ミルクくせぇ!」

唯「」

律「」

919: 2011/02/17(木) 22:09:35.95 ID:+8aRqX9d0
律「え?」

純「うおっ!目がっ目が!」

目を押さえうずくまるフリをする。

律「ど、どうした!?」

純「こっちにその眩しいデコを向けるなっ!」

律「そんなに眩しいワケあるかっ!」

純「ところでダメ部長さんってハゲ進行してきてますよね?」

律「誰がだ!」

唯「私ってそんなにミルクくさいかな?」クンクン

純「そりゃミルク超えてゲロの領域だわな」

唯「ゲロって…いくらなんでも酷いよ」

律「全くだよ!行こうぜ、唯」

唯先輩と律先輩は怒りながら帰って行った。
まぁ、当然だ。褒められようと思ってきたのに逆に悪口を言われたんだから。

921: 2011/02/17(木) 22:14:44.21 ID:+8aRqX9d0
その日を境に、私の評判は「良い人」から「悪い人」へと変わっていった。
でもこれはこれで楽しいかもしれない。

ある時は同級生に

純「死ねシスコン。お前は姉の奴隷か?」

憂「何で…そんなこと言うの?」

ある時は先輩に

純「お嬢様?笑わせんなよ、その沢庵な眉毛より大根足の方を先に優先しろよ」

紬「ひどい…」

ある時は先生に

純「やーい!やーい!彼氏できねーババーア!」

さわ子「……」ワナワナ

ある時は生徒会に

純「これが眼鏡猿。あなたにそっくりね、この図鑑に載ってるサル」

和「あら、そう。じゃあ私生徒会に行くね」

純「(くっ…和先輩スルースキルが半端じゃない)」

922: 2011/02/17(木) 22:16:37.58
わちゃんすげえwww

924: 2011/02/17(木) 22:21:28.76 ID:+8aRqX9d0
女子C「2年の鈴木さんってさー、悪口の帝王だよね」

女子D「あー、あの髪形ボンバーな子でしょ?」

女子C「もう信じらんないよ!一度口を開かせたら逃げない限り泣くまでやめないの!」

女子D「あっちのが悪いのに、どうやっても論破されちゃうんだよね」

澪「……」

――

純「くたばっちまえア~~~~メン♪」

澪「随分と自由にやってるようだけど…」

最近のお気に入りの歌を聞きながら歩いていると澪先輩に声をかけられた。

純「何ですかハゲの腰巾着さん?」

澪「何とでも言ってくれ」

純「え?アンタドM?マジひくわー…」

澪「…あんまり無茶やってると最後には痛い目見るよ?」ニッコリ

笑ってはいるものの、なぜか脳の奥から脊髄にかけて凍えるような笑みだった。

928: 2011/02/17(木) 22:26:42.74 ID:+8aRqX9d0
澪先輩ってもっと怖がりなキャラじゃなかったっけ?

純「そ、そんなんでビビると思ってんのかデブ!」

澪「言いたいことはそれだけだよ。じゃあね」

最後までクールに澪先輩は去って行った。

何だろう、何て言うかあの人は…地獄でも見てきたのだろうか?

純「最後には痛い目を見る、か」

純「…でももう今更だよ」

今日のところは口紅を落として帰ろう。

しかしそうもいかなかった。

女子A「おーす純ちゃーん」

女子B「ちょっと顔貸してくれないかなー?」

純「…くせぇ手でさわんなよ」

942: 2011/02/17(木) 23:48:42.50 ID:+8aRqX9d0
女子A「きゃはは、ほらほらどうしたのぉ~?」

女子B「大きな口叩いてた割にはこんなもん~?」

女子A「みんないつかあなたにギャフンと言わせようって言ってたんだよ?」

純「喋んなよ…息くせぇ」ゲホッ

好き放題やっていた報復はやはり来た。

あー、口ん中ドロドロだよもう。

女子A「口紅なんかつけちゃってさぁー」ゲシッ

純「そんなカスみたいな蹴り痛くねーし」

女子B「ふーん。じゃあもう、みんなに大きい口叩けないようにしてあげるよ」

女子Bが手を振り上げる。

私はゆっくりと目をつむった。
まぁ、澪先輩の忠告を無視した私が悪いんだけどね。

944: 2011/02/17(木) 23:52:04.34 ID:+8aRqX9d0
……。
……?。

いつまでたっても手が振り下りてこない。

純「(?)」パチッ

純「はっ!?」

夢じゃないかと目をこする。
目をあけると、そこには私に忠告をした黒く長い髪の女の人が居た。

女子B「み、澪先輩…?」

澪「何やってるのかな、君達?」

女子B「何って、仕返し…痛っ!」

澪先輩が女子Bの右手をギリリと音がしそうなほど掴んでいた。

女子A「な、何で澪先輩が純に肩入れするんですか!?」

女子B「先輩の友達だってこの子に…!」

澪「だからってこういうやり方が許されるわけじゃないぞ?」

女子A「そうですけど…」

澪「こんなことが見つかったら、進学だって危ないんじゃないか?」

947: 2011/02/17(木) 23:57:06.91 ID:+8aRqX9d0
女子A「そうですけど…」

澪「こんなことが見つかったら、進学だって危ないんじゃないか?」

女子A「でも!」

澪「まだやるって言うなら」ギリッ

女子B「あだだだっ!!」

女子B「わ、分かりました!澪先輩がそう言うならやめます!」

澪「そうか。…で、君は?」

女子「はひ、すいませんでしたっ!」

女子二人は逃げるように帰って行った。


澪「大丈夫?」

私の前に立つ元・憧れの先輩は手を差し出してくる。

純「何で来たんですか…?」

口紅は取れて、私の口調は元に戻っていた。

948: 2011/02/18(金) 00:05:20.55 ID:mBn52xUQ0
純「何で助けたんですか?最後には痛い目見るって言ってたのは澪先輩じゃないですか…」

純「そして私はそれを無視しました」

澪「見えないところでやられる分は、そりゃ自業自得さ」

澪「でも目の前でやられてちゃ助けないわけにもいかないよね?」

純「ほっといてればいいものの…」

大体澪先輩はこういう状況なら一目散に逃げ出す人のはずだし。

澪「そう言わないでよ。鈴木さんを助けることだけなんて、アレに比べたらどれだけ軽いことか…」

純「アレ?」

澪「ん?あ、ああ。気にしないでくれ」

この人は確実に私が出会った時の澪先輩じゃない。

梓が前に何か言っていたような気がしたが、確かにまるで別人のようだ。

953: 2011/02/18(金) 00:12:01.57 ID:mBn52xUQ0
純「きっつ…」

重い体を壁にもたり掛ける。

純「澪先輩」

澪「ん?」

純「どうして私が不思議なお婆さんからコレ買ったって分かったんですか?」

ポケットから例の口紅を取り出して澪先輩に見せる。

澪先輩は「やっぱりか」と言う顔で笑いながら眉尻を下げる。

澪「昔さ、君みたいな女の子が居たんだよ…」

純「私みたいな女の子?」

澪「うん。真面目な口調から急に横暴な口調に変わってしまった女の子だよ」

急に…変わった?

純「それって、まさかあのお婆さんの道具で?」

澪「よく分かったな」

純「だって…今の私そっくりじゃないですか、その女の子」

955: 2011/02/18(金) 00:23:00.64 ID:mBn52xUQ0
澪「そう。そしてその女の子は君と同じくまた不思議な商品を買った」

澪「ただ一つ、可哀そうなのは『不運』だったってことだな」

純「何がですか?」

澪「その子は君と違って買った商品を悪用したりしなかった…けど、運命ってのは残酷ものだよ」

しだいに澪先輩の顔がうつむいて言った。

澪「その女の子が最終的にどうなったか知りたい?」

純「…はい」

澪「周りの人間を全て巻き込んで、最後は自分が壊れた」

純「…」ゾクッ

私もひょっとしたらそうなってたかもしれないってこと?

純「でも何でそんなことどこで?」

澪「はは、聞いた話だよ」

それにしては妙にリアルな話だった…。

956: 2011/02/18(金) 00:30:51.25 ID:mBn52xUQ0
澪「じゃあ、私はそろそろ部室に行くよ」

純「…ありがとうございました」

澪「顔に傷は無いみたいだからいいけど、腕とか足は保健室で処置してもらった方がいいよ」

純「分かりました」

澪「それじゃ、またね」

帰っていく澪先輩の背中を見ながら思った。

私もこんな女性になりたいなぁ、と。


翌日、私は学校の人達に謝罪をした。
酷いことを言ってしまったことは勿論、自分の半生のためだ。

957: 2011/02/18(金) 00:38:42.87 ID:mBn52xUQ0
純「酷いこと言ってごめんなさい」ペコリ

憂「私は気にしてないから顔をあげて?ねっ?」

純「憂…ありがと。あと、梓にも」

梓の方を見ると、せっせと髪形をサイドテールにしていた。

梓「これ、似合う?」

純「……うん!」

道具に頼らず、今ならはっきりと自分の言葉が言える。

梓「いいよ、純の事許してあげる」

純「えへへ。ありがと梓」

こうして私は今までの「普通の日常」を取り戻すことができた。

大事なことを教えてくれた澪先輩に感謝してもしきれない。


――

澪「そうそう、昨日見た落語でいい歌詞が浮かんできそうになったんだ」

律「お前、最近ますます高校生離れしてきたよな?」

958: 2011/02/18(金) 00:40:13.45 ID:mBn52xUQ0
純編終わり。
あとは憂と和…。

入りきるかな?

962: 2011/02/18(金) 00:43:39.67 ID:mBn52xUQ0
多分、無理そうなので今度こそ完結します。

また機会があれば続きを投下します。

このスレを読んでくれた人たちに老婆の加護があらんことを。

967: 2011/02/18(金) 00:53:03.07
乙、超面白かったわ
また書いてくれ

970: 2011/02/18(金) 01:15:40.42
久々にストーリーランド見たくなってきた
でもこっからは澪が全員の救済者になりそうだなww
とりあえず乙

引用元: 律「探したよ婆さん!」