1:2020/03/19(Thu) 18:01:20
とあるドラッグストア。

男「マスクありませんか?」

店員「いやー、お客さんツイてますよ!」

男「え」

店員「実は最後の一個が残ってましてね」

男「ホントかい? やったーっ!」

男(俺がマスクを欲するのは、もちろん自分のためなんかではない)

男(家で待つ、可愛い一人娘のためなのだ!)

男(これで娘を新型コロナウイルスから守れる!)
2:2020/03/19(Thu) 18:04:34
男(さて、家に帰るか)

町民A「へっへっへ、いいもん持ってんじゃねえか」

町民B「おっさん、そのマスク俺らにくれよ」

町民C「でなきゃ、ウイルスでなく、俺らに頃されることになっちまうぜぇ?」

男「……」

男「悪いが……お前たちなどに譲るつもりはない」

町民A「だったら……氏ぬしかねぇなァ!!!」
3:2020/03/19(Thu) 18:07:15
町民A「氏ねッ!」シュッ

男(ナイフか……)ガシッ

すかさず、腕を取り――

ボキィッ!

ヘシ折る。

町民A「ぎぃやぁぁぁぁぁ!」

町民B「く、くそっ!」バチバチッ

男「ふん」バキッ!

スタンガンをかわし、右ストレートでノックアウト。
4:2020/03/19(Thu) 18:10:07
町民C「うおおおおおおっ!」

メリケンサックをつけて殴りかかるも――

グシャァッ!

アッパーで顎を粉砕される。

町民C「あうう……」ドサッ

男「悪いが、オーソドックスな武器じゃ俺は殺(と)れんよ」
6:2020/03/19(Thu) 18:11:52
TUEEEEE!
7:2020/03/19(Thu) 18:13:39
男「……」スタスタ

会社員「おや、あなたが持っているのは……マスクですね?」

男「それが何か?」

会社員「私は毎日満員電車で通勤していましてね。マスクは必需品なのです」

会社員「なにしろ、マスク無しで咳などしようものなら、袋叩きにされてしまいますからねえ」

男「事情は察するが、マスクは渡せん」

会社員「そうですか……ならば私の名刺を受け取ってもらいましょうッ!」

シュババッ!
8:2020/03/19(木) 18:15:10.206 ID:XmyfNdqv0.net
デッドラ2かよ
9:2020/03/19(木) 18:16:45.138 ID:6JKyrMLS0.net
会社員の投げた名刺は、電柱を切断した。

男「な……ッ!」

会社員「名刺とは“命刺”……本来、相手の命を絶つ道具なのです」チャッ

会社員「マスクはあなたの命を奪ってから頂くッ!」

ビュババババババッ

男「ちいっ!」

会社員「いつまで避けられますかねえ!?」ビュババババババッ

雨あられと名刺を投げつける。

会社員「袋小路です! もう避けられませんよォ!」シュッ
10:2020/03/19(Thu) 18:19:05
男「避けられないのなら――」

パシッ!

男「キャッチすればいい!」

会社員「なにっ!?」

一瞬の動揺。このスキを見逃す男ではなかった。

ザンッ!

会社員「が……ッ!」ブシュゥゥゥゥゥゥ…

男「あんたの名刺で頸動脈を切断した。致命傷ではないが、しばらく動けないはずだ」

会社員「ぐおぉっ……!」
11:2020/03/19(Thu) 18:21:44
会社員「しかし……危機が去ったわけでは……ありませんよ……」

男「……」

会社員「そのマスクを持っている限り……あなたは狙われ続ける……!」

男「分かってるよ」

男「だが、俺はマスクを守り切る! 娘のために!」

会社員「ふふ……いい目をしている……。あなたなら、やれる、かも……」ガクッ
12:2020/03/19(Thu) 18:24:23
ブロロロロ…

男(タクシーだ)

男(タクシーなら、安全に家まで帰れるかも……)

男「ヘイ、タクシー!」サッ

ブロロロロロロロ…

男「お、気づいてくれたみたいだ」

ブオオオオオオオオオオオオッ!!!

男「突っ込んでくるッ!」
13:2020/03/19(Thu) 18:27:18
シュゥゥゥ…

運転手「よくかわしたな……」

男「何しやがる! 乗車拒否よりタチ悪いぞ!」

運転手「むろん、そのマスクを手に入れるためだ」

運転手「貴様にはこのタクシーのサビになってもらう!」

男「轢(や)れるもんなら……やってみろ!」

運転手「ではマスクをかけて勝負だ!」
14:2020/03/19(Thu) 18:30:16
ブオオオオオオオオオオッ!!!

男「うわぁっ!」

男(なんという迫力! 名刺みたいに受け止めるってわけにはいかないな……)

運転手「ククク、このタクシーは重機以上のパワーとF1カー以上のスピードを併せ持つ、モンスターマシンなのだ!」

運転手「受けることはもちろん、かわし続けることも不可能ッ!」

ギャルルルルッ ギュルルルルッ

巧みなハンドルさばきで、男を追い詰めていく。

運転手「もらったァ! アクセル全開ッ!」グンッ

ブオオオオオオオオッ!!!

男(くっ……! やられる……!)
15:2020/03/19(Thu) 18:30:59
もうやだこの町
16:2020/03/19(Thu) 18:33:21
怖い街
17:2020/03/19(Thu) 18:33:25
男の脳裏に、愛娘との思い出が蘇る。



娘『お父さん、“将を射んと欲すればまず馬を射よ”ってよくいうけど……』

娘『いきなり将をやっちゃった方が早くない?』

男『ま、まあそうかもしれないね……』



男「……」

男(これだッ!)
19:2020/03/19(Thu) 18:36:39
男はあえて車を避けず、ボンネットに飛び乗った。

運転手「こ、こいつ!?」

男「“将を射んと欲すれば……いきなり将を射よ”!!!」

ガシャァンッ!!!

男の正拳突きが、ガラスを突き破って運転手を打ち抜いた。

運転手「ぐは……ッ!」

運転手「み、見事だ……!」

ブロロロロロ…

ドガシャァンッ!

男(派手に事故ったが、氏にはしないだろう。モンスターマシンだし)
21:2020/03/19(Thu) 18:39:11
主婦「あら、それはマスクね」

男「ええ、そうですが」

主婦「よく買えたわね~」

男「最後の一つがたまたま残っていたんですよ」

主婦「うちのマスクももうなくなりそうなの……譲って下さらない?」

男「それはできません」

主婦「ならば、あなたを料理してあげましょう!」バッ

男「……来いッ!」ババッ

戦いが始まる……。
22:2020/03/19(Thu) 18:42:44
主婦「あなた、“料理のさしすせそ”ってご存じ?」

男「もちろんだ。砂糖、塩、酢、醤油、味噌だろう?」

主婦「当たり。だけど、人間を料理する場合はそうじゃないの」

男「なに……?」

主婦「まずは……“サバ折り”!」ギュッ

男「ぐおおおっ……!?」メキメキ…
23:2020/03/19(Thu) 18:45:34
主婦「“シャイニングウィザード”!」

ガゴォッ!

主婦「“スープレックス”!」

ドゴォンッ!

主婦「“背負い投げ”ッ!」

ズドンッ!

主婦「ラストはぁ……“ソバット”よ!」ブオンッ

バキィッ!

男「ぐはぁぁぁっ!」ドザァッ
24:2020/03/19(Thu) 18:48:39
男「……」シーン

主婦「調理完了」

主婦「――む?」ピクッ

男「ぐっ……!」ヨロヨロ…

主婦「ぬうっ!? まだ息があるというのかッ!」

男「“料理のさしすせそ”……たしかに効いたが、五つも違う技をかけるからか」

男「それぞれの練度はそこまででもなかった」

男「さてはあんた……料理が下手なんじゃないか?」

主婦「ぬわぁんですってぇぇぇぇぇ!?」
25:2020/03/19(Thu) 18:51:28
主婦「ならば、“真の料理のさしすせそ”見せたるわァ!」ジャキンッ

よく研がれた出刃包丁を取り出す。

主婦「まずは……“刺す”!」ビュオッ

パキィンッ!

男は手刀で包丁を砕いた。

主婦「なにィィィィィ!?」

男「男の料理に包丁は不要……」
26:2020/03/19(Thu) 18:54:26
男「今度は俺の料理を見せてやろう……」

男「男の料理はいたってシンプルッ!」

男「味付けなんざ一切しない……渾身の生拳(なまこぶし)だァッ!」ギャルルルルッ

ゴッ!

コークスクリュー気味のパンチがヒット。

主婦「ぐおわぁぁぁ……ッ!」ドザァッ

男「はぁ、はぁ、はぁ……」

主婦「もっと腕を上げたら……また料理に付き合ってくれる?」

男「いいとも……。ただし、その時は食べる料理で頼むよ」
28:2020/03/19(Thu) 18:57:58
ジュルル… ジュルルル…

不気味な音とともに現れたのは……。

男「む……」

患者「よこせ……」ジュル…

男「なんだ、こいつ……」

患者「マスク……よこせぇ……」ジュルル…

男「こいつまさか……花粉症ッ!?」

患者「マスクよこせぇぇぇぇぇ!!!」ドバァァァァァッ

男「うわっ、涙と鼻水を――」
30:2020/03/19(Thu) 19:00:24
ジュワァァァァァ…

男「地面が……溶けた……!」

患者「ボクの涙や鼻水は、強い酸性でね……何でも溶かす」

男「なんだと……!?」

患者「しかも、免疫を操ることで、いくらでも放出できるんだッ!」

患者「ほら、もういっちょ!」ドバァァァァァッ

強酸の波が男を襲う。

男「くっ……!」バッ
31:2020/03/19(Thu) 19:03:18
患者「ええい、今度こそォ!」

男「だあっ!」バッ

患者「跳んだ!?」

男「花粉症なのは気の毒だが……マスクを渡すわけにはいかんッ!」

ドゴォッ!

脳天にエルボーを突き刺した。

患者「ぎゃぶあぁぁぁ……!」ベチャッ…
32:2020/03/19(Thu) 19:05:49
患者「あうう……マスクがないと……ボクは……」ジュルジュルジュル…

男「一つアドバイスしておこう」

患者「……?」

男「免疫を操れるなら、花粉症もコントロールできるのでは?」

患者「た、たしかに……」ガクッ
33:2020/03/19(Thu) 19:08:54
老人「ふぉふぉふぉ……」

男(おじいさんだ。さすがにこの人とはバトルにならないだろう)

老人「新型コロナは老人にとって恐ろしいウイルス……ここは黙ってマスクを譲って下さらんか」

男「残念ですが、譲れません。これは娘のものです」

老人「なるほど……」

老人「おぬしのような敬老精神を持ち合わせていないクソ若造は――」

老人「地獄に送ってくれるわ!」ボンッ!!!

男(筋肉が膨れ上がった!?)
35:2020/03/19(木) 19:12:27.175 ID:6JKyrMLS0.net
老人「カアアアアアッ!!!」

ドゴォンッ!!!

地面に直径10メートルほどのクレーターができる。

男「な……マジか!」

老人「こんなか弱い年寄りにマスクを譲らぬとは、なんたる非人情……」

老人「これだから最近の若者はッ! 万死……否、億死に値するぞよッ!」

ガゴォッ!!!

老人のラリアットで、男が数十メートル吹っ飛ぶ。
36:2020/03/19(Thu) 19:15:19
男(なんてパワーだ……! ガードしたのに……!)ビリビリ…

老人「覇ァァァァァッ!!!」

ボボボボボッ!!!

老人の猛ラッシュ。

丸太がマシンガンの弾になったようなド迫力。

男(一発でもまともに受けたら……意識を持ってかれる!)

老人「勢ァァァッ!!!」

ブオンッ!

男(あの体格で蹴りも放てるのか……!)
38:2020/03/19(Thu) 19:19:07
老人「トドメじゃああああああッ!!!」ドドドドドッ

男(だが、付け入るスキはある!)

男(このパワーをそっくりそのまま、爺さんにブチ込んでやるッ!)

老人の右ストレートをかわし――

メキィッ!

男は左拳を顔面の人中に打ち込んだ。

老人「ぐ……ほぁぁっ!」

巨大な老体が、地面に崩れ落ちた。

ズゥゥン…
40:2020/03/19(Thu) 19:21:52
老人「や、やるのう……。まさかカウンターとは……」

男「ミスってたら、俺の命がなかったですけどね……」

男「あいにく俺がお年寄りにあるのは……」

男「敬老精神ではなく、KO精神です!」

老人「ふぉふぉふぉ……日本の若造もまだまだ捨てたものではないということか……」
41:2020/03/19(木) 19:25:14.919 ID:6JKyrMLS0.net
男(あと少しで家だけど――)

医者「マスク……発見」

男「あなたは……お医者さん?」

医者「今は病院でもマスクが不足していてねえ……大人しく譲ってくれる気はないかね?」

医者「君とて医療崩壊を起こしたくはないだろう?」

男「俺のマスクは絶対やらん!」

医者「バカにつける薬はないようだ……ならばせめて楽にあの世に送ってやろうッ!」
42:2020/03/19(木) 19:28:56.100 ID:6JKyrMLS0.net
医者「ちゃっ!」シュッ

男「はっ!」ブオッ

医者「でやっ!」ブンッ

男「そこだっ!」バキィッ!

激しい攻防を繰り広げる。

ドカッ!

医者「ぐ……ッ!」

男(よし……イケる!)

男(今までの戦いを経て、俺は強くなっているんだッ!)
43:2020/03/19(木) 19:31:34.243 ID:6JKyrMLS0.net
男「あんたを倒して……娘にマスクを渡すッ!」

男「だあああああッ!」タタタタッ

医者「……」ニヤッ

チクッ

男「うっ!?」

男「な……なにをした!?」

医者「注射したのさ……」
44:2020/03/19(Thu) 19:34:28
医者「エボラ・天然痘・ノロ・狂犬病、その他諸々のウイルスをブレンドして作った最凶最悪のウイルス!」

男「混ぜすぎだろ……」

医者「むろん、即効性も抜群だ」

男「ぐ……!?」

男「ガハァァァァァッ!」ゲボォォォォォッ

大量に血を吐き出す。

医者「効いてる効いてる」

男(なんてウイルスだ……。ここまで、か……)
45:2020/03/19(木) 19:37:24.981 ID:6JKyrMLS0.net
医者「さて、マスクを頂いていくぞ」

男「ぐ……!」

男(情けない……ここまできて……たかがウイルス如きに負けるなんて……)

男(いや……負けてたまるか!)

男(俺は……娘に……マスクを届けるんだァァァァァッ!!!)

男「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」ガバッ

医者「な、なんだと……!? 立ち上がった……!?」
46:2020/03/19(木) 19:40:07.035 ID:6JKyrMLS0.net
男「はあああああああ……!!!」シュゥゥゥゥゥ…

医者「注入したはずのウイルスが……消滅している!」

医者「まさか……体内で抗体を作り出したというのか!?」

男「ああ……娘への愛があれば造作もないことだ!」

医者「く、くそう!」シュババババッ

メスを投げるが、もはや今の男には通用しない。

男「だりゃあああああッ!!!」



ドゴォンッ!!!



噴火のようなアッパーカットが炸裂した。
47:2020/03/19(木) 19:43:31.175 ID:6JKyrMLS0.net
医者「う、ぐ……!」

男「あんたのウイルス……たしかに恐ろしい性能だった……」

男「だが、それをいい方向に生かせば、あんたはもっとすごい医者になれるんじゃないか……?」

医者「その通りだ……」

医者「私はマスクに目がくらむあまり、なんということを……」

男(どうやら反省してくれそうだな)

男(あとは家に帰るだけ……)

ズドンッ!

男「うぐっ!?」
49:2020/03/19(Thu) 19:46:39
男「これは……銃弾……!?」

店員「クックック……」

男「あんたは……ドラッグストアの……! なんで……!?」

店員「すいませんねえ。やっぱり売るの惜しくなっちゃいましてね。取り返しに来たんですよ」

店員「そしたら、すでに弱り切ってくれていて、助かりましたよ」チャッ

銃口を額に向ける。

店員「恨むんなら、マスク不足の今の世を恨んで下さい……」

男「くうっ……!」
50:2020/03/19(Thu) 19:49:13
トンッ

店員「!」

店員「うっ……」ドサァッ

男「……!?」

男(店員が勝手に倒れた……!?)

娘「大丈夫? お父さん」

男「あ……」

娘「ふと外を見たら、ボロボロのお父さんが銃で撃たれかけてるんだもん。ビックリしたよ」

男「おおっ……!」

店員を倒したのは、娘の手刀であった。
51:2020/03/19(Thu) 19:52:16
娘「いったい何があったの?」

男「……」

男(今こそ、マスクを渡す時……!)

男「これを……お前に渡したかったんだ……」

娘「なにこれ? マスク?」

男「そう、だ……」

娘「えぇっと……別にいらないんだけど」

男「え」
52:2020/03/19(Thu) 19:55:25
娘「マスクはお母さんとたくさん手作りしたし、他の予防法も十分やってるし」

娘「あとはもう、天に任せるって感じ」

娘「ていうか、こんな血とホコリにまみれたマスク、不衛生すぎて使えないっての!」

男「トホホ、もうマスク探しはこりごりだよ~!」







おわり
53:2020/03/19(木) 20:01:25.023 ID:mfjBGDCmr.net

この町から感染者は絶対出ないと思う
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1584608480