1:2017/05/12(金) 21:02:21.025 ID:icxTLxPr0.net
-ガヴリールの家-



タプリス「天真先輩、最近痩せました?」


ガヴリール「そうか? そんなに変わってないと思うけど」

タプリス「それに顔色も悪いですし、頬も少しだけ、こけてきたような……」

ガヴリール「そういや、このところ体重計に全くのってないな」

ガヴリール「前にのったのは……学校の身体測定だったか」

タプリス「な、何ヶ月前の話ですか……」


タプリス(はぁ、わたしは毎晩のるたびに、びくびくしてるのに)

タプリス(さすが先輩というか、なんというか……)


タプリス「ちょっとのってみましょう」

ガヴリール「え、いいよ、めんどい」

タプリス「お試し、お試しですからっ、ね?」


ガヴリール「はぁ、しょうがないな……」
2:2017/05/12(金) 21:04:50.271 ID:icxTLxPr0.net
タプリス「……」パクパク

ガヴリール「あれ、少し落ちてるか」

タプリス「す、少しどころじゃありませんよ!」

タプリス「この体重計、壊れてませんよね?」

ガヴリール「たぶん。そうだ、お前ものってみたら?」

タプリス「な、なるほど、それでわかりますね……」


 スッ

タプリス「……うっ、正常みたいです」

ガヴリール「へぇ、お前と今、10キロ以上も違うのか」

タプリス「や、やめてくださいぃ」

タプリス「そんな風に言ったら、わたしが重すぎみたいじゃないですか……」

ガヴリール「身長差もあるし、こんなもんじゃないの?」

タプリス「いやいやいや……先輩が痩せ過ぎなんですって」

ガヴリール「そうかぁ?」

タプリス「先輩、運動なんてほとんどしていないのに……」

タプリス「ごはん、ちゃんと食べてます?」

ガヴリール「あー、最近ネトゲのイベントで忙しかったから」

ガヴリール「ちょっと食べてなかった時が、あったかもしれない」

タプリス「……ちょっとって、どれくらいです?」


ガヴリール「そうだな……3日くらい?」
3:2017/05/12(金) 21:06:53.365 ID:icxTLxPr0.net
タプリス「はぁ!? な、何やってるんですか先輩! 死んじゃいますよ!」

ガヴリール「大丈夫だって、水分はちゃんと摂ってるし」

ガヴリール「サプリも一応飲んでるし」

タプリス「いやいやいや……そんなんじゃ絶対、体壊しちゃいます」

ガヴリール「心配症だな、お前は」

タプリス「そんな話を聞かされたら、誰だって思いますよ……」

ガヴリール「とにかく、だ。結果的に、お金の節約にもなってるし」

ガヴリール「健康にも全く問題は出てない。これで、話は終わり」

タプリス「は、はぁ……」



-ヴィーネの家-


タプリス「……というわけなんです」

ヴィーネ「最近、少し放置していたら、そんなことになってたのね」

タプリス「このままでは天真先輩が、骨と皮だけになっちゃいます……」

ヴィーネ「すぐにどうこう、ではないと思うけど……私に任せて?」

タプリス「な、何か方法があるんですか?」

ヴィーネ「要はね、たくさん食べさせればいいのよ。シンプルシンプル」

タプリス「でも、あのずぼらな天真先輩ですよ?」

ヴィーネ「私にいい考えがあるの」

タプリス「いい考え、ですか?」
5:2017/05/12(金) 21:08:34.191 ID:icxTLxPr0.net
-ガヴリールの家-


ヴィーネ「今日からしばらく、ここに泊まるわね」

ガヴリール「はぁ? お前なに言って……」

ヴィーネ「タプちゃんに相談されたのよ」

ヴィーネ「このままじゃ天真先輩が、ガリガリールになっちゃうーって」

ガヴリール「……絶対、お前が思いついただけだろ、それ」

ヴィーネ「というわけで、私の管理のもと、一日三食しっかり食べてもらうわ」

ガヴリール「えぇー、めんどい」

ヴィーネ「めんどいって何よ、ガヴは食べるだけでしょうが……」

ガヴリール「噛むのがめんどい、飲み込むのがめんどい」

ヴィーネ「これは重症ね……まぁ、いいわ。キッチン借りるから」


――

ガヴリール「あ、うまそうな匂い……」

ヴィーネ「今日のお昼は、チンジャオロースよ」

ガヴリール「ごくり……」

ヴィーネ「でも、ガヴは食べるのが面倒なんじゃなかったっけ」ニヤニヤ

ガヴリール「……いや、せっかくお前が作ってくれたんだからな」

ガヴリール「た、食べてやるよ」

ヴィーネ「ふふっ、素直でよろしい」
6:2017/05/12(金) 21:10:51.658 ID:icxTLxPr0.net
-数日後 ガヴリールの家-


タプリス「天真せんぱーい、肉まん買ってきましたー」

ガヴリール「おう、サンキュー」

タプリス「あ、なんだか少し顔色が良くなりました?」

ガヴリール「ん、そうか?」

ヴィーネ「今までが、悪すぎだったのよ……」

タプリス「それにしても、さすが月乃瀬先輩ですね!」

ガヴリール「……まぁ、こいつの料理はそこそこだからな」

ヴィーネ「あんだけ食べといて、どの口が言うか」

タプリス「あはは……、あ、この肉まんもどうぞどうぞ」

ガヴリール「ああ、もらうわ」モグモグ


タプリス「……ふふっ」

ガヴリール「ん、どうした?」

タプリス「い、いえ。こうやって、渡したものを」

タプリス「天真先輩に食べてもらえるのが、なんだか嬉しくて」

ヴィーネ「あー、それはわかる気がするわ」

ヴィーネ「なんというかガヴって、気持ちのいい食べ方してくれるから」

ヴィーネ「作る側としては、やりがいがあるというか、嬉しいのよね」

ガヴリール「そうかぁ? 普通だろ」


タプリス「まだまだたくさんありますから、いっぱい食べてくださいね」
7:2017/05/12(金) 21:12:29.222 ID:icxTLxPr0.net
-数週間後 ガヴリールの家-


タプリス「……天真先輩、最近、少しふっくらしました?」

ガヴリール「そうか? そんなに変わってないと思うけど」

タプリス「顔色は良いみたいですけど、頬が少しだけ……」

ガヴリール「そういや、前にお前と体重計にのったのが最後だったな」

ガヴリール「ちょっとのってみるか」

タプリス「えっ、あ、はい」


――

タプリス「……」パクパク

ガヴリール「少し増えてるか」

タプリス「いやいやいや……」

タプリス(わ、わたしよりも、重くなってるじゃないですか)

ガヴリール「まぁ、ちょっとくらい体重あった方が」

ガヴリール「健康的でいいよな」

タプリス「あはは……、そ、そうですね」


タプリス「そういえば、月乃瀬先輩は、まだ泊まっているんです?」

ガヴリール「いや、もう帰ってる」

ガヴリール「時々ごはん作りに来てくれてるけど」

ガヴリール「最近は自分で買ったりして、食べてるな」

タプリス「そ、そうですか……」
8:2017/05/12(金) 21:13:36.114 ID:icxTLxPr0.net
-数日後 ガヴリールの家-


ガヴリール「あれ、スカートのファスナーが」

 ズッ ズズッ

ガヴリール「あ、上がらね……」

ガヴリール「……」

ガヴリール「まぁ、今日は学校行かなくていいか……」



-トイレ-


ガヴリール「ふぅ……」

ガヴリール「ん?」

ガヴリール「……太ももの隙間、こんなにピッチリだったっけ」

ガヴリール「まぁ、いいか……」



-お風呂場-


 シャァァァァ

ガヴリール「ん……あれ?」

ガヴリール「んんっ」

ガヴリール「あ、足に手が……届かね」

ガヴリール「ぐぬぬぬぬっ」

ガヴリール「はぁ……疲れた」
13:2017/05/12(金) 21:15:56.265 ID:icxTLxPr0.net
-数週間後 ガヴリールの家-


サターニャ「なはははっ、ガヴリール、何よその格好!」

ガヴリール「なんだよ」デプッ

サターニャ「くくっ、しばらく会わないうちに、随分と醜い姿になったじゃない」

ガヴリール「別に、私の勝手だろ」デプッ

サターニャ「そんなんじゃ、ガヴリールじゃなくて、デヴリールだわ! なはははっ!」

ガヴリール「……お前、死にたいのか?」デプッ

タプリス「て、天真先輩、おさえてくださいっ! 胡桃沢先輩も言いすぎですよ!」


ラフィエル「でも確かに、少し大きくなりすぎてしまった感じはしますね」

ラフィエル「そんなガヴちゃんもかわいいですが……」

ラフィエル「いったい何があったんですか?」

ヴィーネ「ごめんなさい、きっと私がたくさん食べさせすぎたせいで」

タプリス「わたしも隙あらば、食べ物をあげてましたから……同罪です」

ガヴリール「おいおい、人をペットみたいに言うなよ……」デプッ

ガヴリール「それに、私が食べたいから食べてるだけだ」デプッ

ラフィエル「ちなみに、一日どのくらい食べてるんですか?」


ガヴリール「そうだな……」デプッ
14:2017/05/12(金) 21:19:13.997 ID:icxTLxPr0.net
ヴィーネ「うわぁ……」

タプリス「わ、わたしの一週間分くらいかもしれません……」

ラフィエル「そうですかそうですかぁ」

サターニャ「ふ、ふんっ、私だってそのくらい食べられるわ!」

タプリス「いやいや、そこは張り合わなくても良いですから……」


ラフィエル「ですが、このままだと体が危ないですね」

ガヴリール「そうか? 大丈夫だろ」デプッ

ガヴリール「というか食べずにいたら怒られて、食べたら食べたで怒られて」デプッ

ガヴリール「私はどうすりゃいいんだよ」デプッ

ヴィーネ「極端すぎるのよ!」


ガヴリール「でも私は、今の生活を変える気はないからな」デプッ

ガヴリール「今更、食の楽しみを奪われたら、生きていけん」デプッ

タプリス「それじゃあ、運動を始めるとか、ですかね」

ガヴリール「めんどい」デプッ

ラフィエル「いいえ、タプちゃん」

ラフィエル「この状態で、最も効果がある方法を試しましょう」


タプリス「最も効果がある方法、ですか?」

ラフィエル「ええ、少々手荒ですが……」
16:2017/05/12(金) 21:22:16.141 ID:icxTLxPr0.net
ガシャン


ガヴリール「おい! なんだよ、この檻!」デプッ

ラフィエル「無駄ですよ、その檻は対天使用の特別製ですから」

ラフィエル「……こうなった以上、ガヴちゃんの自由を無理やり奪って」

ラフィエル「食事制限をするしかないんです」

ガヴリール「こ、これが天使のすることか! この悪魔め!」デプッ

ラフィエル「……これもガヴちゃんのためですから」

ガヴリール「な、何が私のためだ! 非人道的すぎるだろっ!」デプッ

ガヴリール「私が……私が何をしたっていうんだよ!」デプッ

ヴィーネ「ガヴ、ごめんなさいね、少しの辛抱だから……」

タプリス「天真先輩……ごめんなさい……」


ガヴリール「この裏切り者! お前ら、あれだけ私に食わせておいて」デプッ

ガヴリール「あまりに無責任すぎるだろっ!」デプッ

ヴィーネ「……ッ」

ラフィエル「彼女たちを責めるのはお門違いですよ、ガヴちゃん」

ラフィエル「恨むなら私だけを恨んでください」

ガヴリール「くそぅ……ちくしょう、ちくしょう……」デプッ


――

ラフィエル「あとは私に任せてください」

ヴィーネ「あ、ありがとうね、ラフィ。私だときっと、ガヴを甘やかしちゃうから」

タプリス「天真先輩をよろしくお願いします、白羽先輩」
17:2017/05/12(金) 21:25:46.805 ID:icxTLxPr0.net
-その日の晩 ガヴリールの家-


 ギリッ ギリギリギリッ

ガヴリール「あがっ! あがががっ……」

ガヴリール「食べっ、食べ物……肉っ……!」

ガヴリール「ぐるじい……、食べたいっ……食べたいっ……」

ガヴリール「死ぬ……死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……」

ガヴリール「だずけで……だ、誰か、だれかっ……」


ガヴリール「……ッ!?」

ガヴリール「……そうだ」



- 一週間後 ガヴリールの家 -


ラフィエル「ガヴちゃん、今日の分の食事ですよ」

ラフィエル「昨日の分は……ちゃんと食べてますね、偉いです」

ガヴリール「……」

ラフィエル「それでは、失礼しますね」

 バタンッ


ラフィエル「……」

ラフィエル(おかしい……)

ラフィエル(既に、この生活を始めて、一週間が経ちました)

ラフィエル(そろそろ数字に出てきてもおかしくないはず)

ラフィエル(なのにどうして、何も変化が……)

ラフィエル(ま、まさか……)
18:2017/05/12(金) 21:28:08.603 ID:icxTLxPr0.net
-その日の深夜 ガヴリールの家-


 ギィ バタンッ


ガヴリール「……!? ヴィーネ!!」

 ガタンッガタンッ

ヴィーネ「……」

ガヴリール「早く! 早く早く早く!!」

ヴィーネ「……はい、これ今日の分」スッ

ガヴリール「あはっ、あはははっ、特盛り! さすがヴィーネ! お前は命の恩人だ!!」

 ぎゅっ

ヴィーネ「あっ……」

ガヴリール「愛してる!! 本当に愛してるぞ!! ヴィーネ!!」

ヴィーネ「……ッ」カァァ


 ガツガツガツ

ガヴリール「うまい……ぐすっ……うまいよぉ……」

ヴィーネ「よかった」ニコッ


ラフィエル「……よくありませんよ」

ヴィーネ「えっ!?」

ガヴリール「なっ!?」

ラフィエル「ヴィーネさん、勝手なことをされてしまっては困るんです」
19:2017/05/12(金) 21:31:09.957 ID:icxTLxPr0.net
ヴィーネ「だ、だって、こんなの! ガ、ガヴが死んじゃうから!」

ラフィエル「死にはしませんよ、ちゃんと私が管理しているんですから」

ラフィエル「でも、一番悪いのはガヴちゃんです」

ラフィエル「ヴィーネさんの優しさに付け込んで」

ラフィエル「大げさにメッセージでも送ったのでしょう」

ラフィエル「助けて、死ぬ、などのような」


ガヴリール「嘘じゃない! 本当に死にそうだったんだ!」

ガヴリール「だから、お、お前は、私を殺そうとしていたんだぞ!」

ラフィエル「万が一にでも、そういう気があったのなら……」

ラフィエル「私には、いつだって、実行することはできたはずです」

ガヴリール「だったら、私をなぶり殺そうとしてたんだ、お前は!」

ラフィエル「……ッ」


ガヴリール「どうせ、苦しんでいる私の姿を見て、裏で楽しんでたんだろう!」
21:2017/05/12(金) 21:33:32.977 ID:icxTLxPr0.net
ラフィエル「……本気で、言ってるんですか、ガヴちゃん」

ガヴリール「冗談なんか、言うはずないだろ!」

ラフィエル「……」

ヴィーネ「ガヴ……ラフィだって、あなたのことを思って……」


ラフィエル「……わかりました。もう終わりにしましょう」

 スッ チャリン

ラフィエル「それは、その檻の鍵です。これでガヴちゃんは自由ですよ」

ガヴリール「やった! ありがとう、ラフィエル!」

ガヴリール「お前はやっぱり、良い奴だな!」

ラフィエル「……」

ヴィーネ「ラフィ、ど、どうして……」

ラフィエル「いえ、気が変わっただけです。それでは、私は失礼しますね」

ガヴリール「おう、またな! おやすみ!」


ラフィエル「おやすみなさい、ガヴちゃん。良い夢を」ニコッ
22:2017/05/12(金) 21:36:12.206 ID:icxTLxPr0.net
ガツガツガツ


ガヴリール「あー、うまいうまい、うますぎるぅ」モグモグ

タプリス「あ、そうだ。天真先輩、良いものをあげましょうか」

ガヴリール「ん? 食べ物以外はいらんぞ」

タプリス「ええ。なんと、その食べ物が数倍おいしく感じられるようになるサプリです」

ガヴリール「えっ、そんなものがあるのか!」

タプリス「はい、体中の細胞を活性化することができる、とかなんとか」

ガヴリール「よくわからんけど、ありがとな、タプリス」ゴックン


 ガツガツガツ

ガヴリール「ほんとだ! 桁違いにうまくなった!」モグモグ

ガヴリール「もっとだ、もっとくれ、タプリス!」

タプリス「仕方ありませんね」

 ドバァ


ガヴリール「うまい! うまいうまいうまい!!」モグモグ

 ブヨッ

ガヴリール「ん?」

 ブヨブヨブヨッ

ガヴリール「なんか体が大きくなって……まぁいいか」モグモグ
23:2017/05/12(金) 21:38:44.040 ID:icxTLxPr0.net
ブヨブヨブヨブヨッ

 ビキビキッ ドゴォン


ガヴリール「なっ!? ア、アパートが、崩れて!?」

ガヴリール「で、でも……手が、口が止まらない!」モグモグ


ガヴリール「タプリス! か、体がどんどん大きくなっていくんだけど!」

タプリス「そうですね、でも良いじゃないですか」

ガヴリール「えっ?」

タプリス「おいしいものを、好きなだけ食べることができるんですから」

ガヴリール「そ、そうだけど、このままじゃ」モグモグ


 ドシンッ

ガヴリール「ぐえっ、お、おなかが苦しい……」モグモグ

ガヴリール「でも、食べるのをやめられない!!」モグモグ


 ブヨブヨブヨブヨブヨッ

ガヴリール「うげっ……だ、だめだっ、破裂しそう……」モグモグ

ガヴリール「タプリス! 助けっ、助けてくれぇ!」モグモグ

タプリス「それは……無理ですよ」

ガヴリール「ど、どうして!? どうしてだよ!!」モグモグ

タプリス「だってもう……天真先輩は、手遅れなんですから」ニコッ


ガヴリール「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」モグモグモグモグ


 ブヨブヨブヨブヨブヨッ パァンッ
25:2017/05/12(金) 21:41:09.191 ID:icxTLxPr0.net
-早朝 ガヴリールの家-


ガヴリール「うわぁぁぁぁぁっ!!」

ガヴリール「はぁ、はぁ……ゆ、夢?」

ガヴリール「よ、よかったぁ……な、なんて夢だよ……」

ガヴリール「でも、このまま食い続けたら……いつか、あんな風に?」

ガヴリール「いやいや……あり得ないだろ。ただの夢だ、夢なんだ」

ガヴリール「……」



-その日の昼 ガヴリールの家-


 ガツガツガツ


ガヴリール「あぁ、うまい! やっぱり檻に監禁とか頭おかしいよな!」モグモグ

ガヴリール「こうやって、食べられるうちに食べることが、一番幸せなんだ」

ガヴリール「……そ、そうに決まってる」


 ピンポーン

ガヴリール「……タプリスか、どうした?」モグモグ

タプリス「相変わらずの食べっぷりですね……」

ガヴリール「そうか? 普通だろ」

タプリス「それでですね。実は、天真先輩におすすめしたいものがありまして」

ガヴリール「え?」
26:2017/05/12(金) 21:43:54.247 ID:icxTLxPr0.net
タプリス「このお薬なんですけど……」

ガヴリール「なっ!?」

タプリス「先輩? ど、どうしました?」

ガヴリール「いらない! そんなものはいらない!」

タプリス「え、でも……」

ガヴリール「いらないって言ってるだろ! そんな怪しいもの!」

タプリス「あ、怪しいって……これ、薬局で買って……」

ガヴリール「いいから! もって帰ってくれ!! 早く!!」

タプリス「で、でも……」

ガヴリール「そんなもん、二度と持ってくるな!!」

タプリス「ごめっ……ごめんなさい……」

タプリス「わ、わかりました……わたし、帰りますね」


 バタンッ

タプリス(食べるのがやめられないなら、せめて……)

タプリス(胃薬で少しでも体への負担を軽くしてほしかったのに……)

タプリス(どうして、こんな……)

タプリス(こんなことになってしまったんでしょう……)


タプリス「……」

タプリス(もう、こうなったら、あの方法しか……)
27:2017/05/12(金) 21:46:20.653 ID:icxTLxPr0.net
-数日後 ガヴリールの家-


 ピンポーン


ガヴリール「ん、誰だ?」

タプリス「天真先輩……お邪魔します」

ガヴリール「またお前か。言っとくけど、薬は受け取らないぞ」

タプリス「えっと、違います、今日は……」

ガヴリール「ん……うしろに誰かいるのか?」


タプリス「さ、ガヴリールお姉ちゃんですよ」

ガヴリール「え?」


ハニエル「……」ジーッ

ガヴリール「なっ!? ハ、ハニエル!?」

ガヴリール「どうしてハニエルが下界に!? お前が連れてきたのか!?」

タプリス「はい、特別に許可をもらって、数時間だけ」

ガヴリール「な、なんてことを……」


ハニエル「……ガヴリール、おねえちゃんなの?」

ガヴリール「え? な、何言ってるんだ、ハニエル。そうに決まってるだろ?」

ガヴリール「まさかお姉ちゃんのこと、忘れてしまったなんて、言わないよな?」

ガヴリール「ほら、私がガヴリールお姉ちゃんだぞ」


ハニエル「……うそだ」
28:2017/05/12(金) 21:48:38.761 ID:icxTLxPr0.net
ハニエル「こんなひと、おねえちゃんじゃない」

ガヴリール「なっ!?」


ハニエル「ねぇ、タプリスおねえちゃん」クイクイ

タプリス「ど、どうしたの、ハニエルちゃん」

ハニエル「ガヴリールおねえちゃんは、どこにいったの?」

ガヴリール「……ッ」


タプリス「ガ、ガヴリールさんはね、ちょっと……」

タプリス「そう、遠くに。遠くに出かけてて……」

ハニエル「とおく? とおくって?」

タプリス「それは……」

ハニエル「それって、あうことができないってこと?」

ハニエル「だって、ガヴリールおねえちゃんに、あえるってきいたから」

ハニエル「ここまでやってきたのに……」

ハニエル「ねぇ、どうして? ぐすっ……どうしてあえないの?」ポロポロ

ハニエル「おねえちゃんに、あいたい……」

ハニエル「あいたいよぉっ……うぇぇぇぇん」

タプリス「……ッ」

 ぎゅぅ

タプリス「ごめんね、ハニエルちゃん。ぐすっ……本当に、ごめんね」

ハニエル「うぇぇぇぇん」


ガヴリール「……」
29:2017/05/12(金) 21:51:13.651 ID:icxTLxPr0.net
タプリス「……こんなに小さな子供を連れ出すなんて」

タプリス「卑怯だと罵ってくれて構いません」


タプリス「わたしたちは、天真先輩がどんなお姿をしていようとも」

タプリス「いろんな理由から、諦め、察して、目を瞑ることができます」


タプリス「……ですが、この子にとっては違うんです」

タプリス「ハニエルちゃんにとっては、一人の大切なお姉さんが」

タプリス「この世から消えてしまったんですよ」

ガヴリール「……ッ」


タプリス「わたしだって……、わたしだって、できれば……」

タプリス「以前の先輩に、戻って欲しい、です」

タプリス「今の生活を続けて、体を壊してしまったり」

タプリス「もし、万が一のことが起きてしまったら、その時は……」


タプリス「わたし、一生後悔して、自分を……責め続けてしまうから」

タプリス「どうしてあの時、力づくでも先輩を止めなかったんだろうって」

タプリス「自分のことを、許せなくなってしまうからっ」


タプリス「だから、お願いです、先輩……」

タプリス「そういう人たちもいるんだってこと、わかってください」

タプリス「お願い、ですからぁ」ポロポロ


ガヴリール「……」
30:2017/05/12(金) 21:53:50.683 ID:icxTLxPr0.net
ハニエル「タプリスおねえちゃん、なかないで?」ナデナデ

タプリス「ご、ごめんね、ハニエルちゃん。ありがとう」

タプリス「あまり時間はないですけど、この後、少し下界を案内してあげます」

タプリス「おいしい、お菓子もいっぱいあるんですよ」

タプリス「さ、行きましょうか」



ガヴリール「……1ヶ月だ」

タプリス「えっ?」

ガヴリール「ハニエル、よく聞け!!」

ガヴリール「お前のガヴリールお姉ちゃんはな! 1ヶ月後に必ず帰ってくる!!」

ガヴリール「絶対に絶対!! 帰ってくるから!!」

ガヴリール「絶対に、絶対に、絶対だ!!」

ハニエル「……ほ、ほんと?」

ガヴリール「ああ、約束だ! だから、家でいい子にして待っててくれ!!」

ハニエル「うんっ、わかった!」

タプリス「先輩……」


ガヴリール「すまなかったな、タプリス。おかげで目が覚めた」

ガヴリール「ハニエルのこと……よろしく頼む」

タプリス「そ、それは良いですけど、1ヶ月でなんて……」


ガヴリール「……絶対にやりきってみせる」
31:2017/05/12(金) 21:56:52.730 ID:icxTLxPr0.net
-その夜 ガヴリールの家-


 カチッ カチカチカチ

ガヴリール「うぉぉぉぉっ、マッハクリック!!」


 カタカタカタッ

ガヴリール「はぁぁぁぁぁっ、マッハタイピング!!」


ガヴリール(空腹なんて、我慢我慢我慢……)

ガヴリール(目の前の敵に集中しろ! 全て蹴散らしていけ!!)

ガヴリール(1ヶ月、絶対に戦い抜いてやる!!)



――

タプリス(こうして1ヶ月間、水だけで生活する)

タプリス(天真先輩の壮絶ネットゲームライフがスタートしました)


タプリス(空腹に負けそうになったら、水を飲みながら敵を倒し)

タプリス(空腹で眠れなくても、敵を倒し続けて)

タプリス(ゲーム内でついた二つ名は、鬼神、だったそうです)


タプリス(わたしも時々、様子を見には行きましたが)

タプリス(手を動かしていない時間は、なかったほどです)


タプリス(そうして、戦いに戦い続け、時は流れていき……)

タプリス(ついに、1ヶ月が経ちました)
32:2017/05/12(金) 21:59:28.417 ID:icxTLxPr0.net
-1ヶ月後 ガヴリールの家-


ラフィエル「これは、驚きました……」

ヴィーネ「ガヴ、すっかり元通りじゃない!」


ガヴリール「まぁ、私はやればできる子だからな」

タプリス「まさか本当に1ヶ月でやりきるなんて……」


ガヴリール「まぁその……なんだ。まず、ヴィーネ」

ヴィーネ「え、な、なに?」

ガヴリール「お前の優しさに甘えて、それを自分のいいように利用して」

ガヴリール「本当にすまなかった」

ガヴリール「これからも、時々でいいから、見捨てないでもらえると助かる」

ヴィーネ「ガヴ……、水臭いわよ。そんなの、気にしてないから」

ガヴリール「ありがとな、ヴィーネ」


ガヴリール「そして、ラフィエル」

ラフィエル「はい」ニコッ

ガヴリール「憎まれ役を買ってでも、私を気遣ってくれたこと」

ガヴリール「本当にありがたく思ってる」

ガヴリール「そして、お前への数々の暴言、許してほしい」

ラフィエル「平気ですよ、こうやって無事に丸く収まったんですから」

ラフィエル「それに、少しだけ面白かったですしね」

ガヴリール「あの、夢とかか?」

ラフィエル「うふふ、なんのことでしょう」
33:2017/05/12(金) 22:01:14.334 ID:icxTLxPr0.net
ガヴリール「最後に、タプリス」

タプリス「はいっ」

ガヴリール「私の体のこと、いつも心配してくれて、ありがとうな」

タプリス「いえいえ、そんな……」

ガヴリール「私、決めたよ」

タプリス「えっ? な、何をですか?」

ガヴリール「絶対に、お前よりも長生きしてやるってな」

タプリス「天真先輩……」

ガヴリール「そしたら、お前を悲しませることはないだろ?」

タプリス「……ぐすっ、はいっ」

タプリス「でも、わたしだって負けませんから」

ガヴリール「じゃあ、どっちが長生きできるか、勝負だな」

タプリス「ええ、受けて立ちます」ニコッ


――

タプリス「それとですね、今日はスペシャルゲストが来ているんです」

ガヴリール「ん?」


ハニエル「……」ジーッ


ガヴリール「ハ、ハニエル!?」
34:2017/05/12(金) 22:04:01.346 ID:icxTLxPr0.net
ガヴリール「あの……わ、私のこと……」

ハニエル「ガヴリールおねえちゃん!」

 ぎゅぅ

ガヴリール「わっとと! ハ、ハニエル、私のこと……わかるのか?」

ハニエル「えっ? そんなのあたりまえでしょ?」

ハニエル「どうしてそんなこときくの?」

ガヴリール「そうか……そうか、よかった……」

ハニエル「……? へんなおねえちゃん」

ガヴリール「遅くなって悪かったな、ハニエル。いい子にしてたか?」

ハニエル「うんっ! ずっと、いいこにしてたよ!」

ガヴリール「そうか、偉いぞ」ナデナデ


 ぎゅぅぅ

ハニエル「おねえちゃん?」

ガヴリール「……お姉ちゃん、もうどこにも行かないからな」

ハニエル「えへへ、ほんと? うれしいな」

タプリス「天真先輩……ぐすっ、よかったですね」

ガヴリール「ああ、こいつをここに連れてきてくれて、ありがとな」


ハニエル「それより、あの、にくだるまのおねーさんは、どこにいったの?」

ガヴリール「に、肉ダルマぁ?」

タプリス「ぷふっ、あはははっ」

ヴィーネ「おかしいっ、肉ダルマですって! 言い得て妙ね!」

ガヴリール「おいおい、勘弁してくれ……」


みんな「あははははははっ!」
35:2017/05/12(金) 22:06:46.019 ID:icxTLxPr0.net
バタンッ


サターニャ「ガヴリール! ようやくこの時が来たわ!」デプッ

ガヴリール「ん? お前、誰だ?」


サターニャ「は? 大悪魔のサタニキア様に決まってるじゃない!」デプッ

サターニャ「ついに、あんたが一日で食べてた量の……」

サターニャ「二倍を食べられるようになったわ!」デプッ


タプリス「あぁ、そういえば、何か張り合ってましたね……」

ヴィーネ「しばらく学校に来てないと思ったら……」


サターニャ「ふっふっふっ、いざ尋常に」

サターニャ「どっちがより多く食べることができるか、勝負よ!」デプッ

ガヴリール「……ああ、そういうの、もういいから」


サターニャ「な、なんですって!? というか、あんた、しぼんでない?」デプッ

ガヴリール「お前がでかくなったんだよ、ブターニャ」

ハニエル「あれれー、ちがう、にくだるまのおねーさんだ!」


サターニャ「な、なななななっ!!」デプッ
36:2017/05/12(金) 22:08:40.053 ID:icxTLxPr0.net
ゴゴゴゴゴッ


ラフィエル「サターニャ、さん?」

サターニャ「ひっ! な、何よ、ラフィエル!」デプッ

ラフィエル「サターニャさんに、そんな醜い姿は似合いません」

サターニャ「ひぇっ!!」デプッ

ラフィエル「覚悟して、くださいね♪」ニコッ



-河川敷-


 タッタッタッ チャリンチャリン
 
 ビシッビシッ


サターニャ「痛い! 痛いってば!」デプッ

ラフィエル「ほら、もっと速く走ってくださーい♪」


サターニャ「ひぃっ! ガ、ガヴリールのときと、全然扱いが違うじゃない!」デプッ

ラフィエル「これはですねぇ、愛ゆえの厳しさです! いわば、愛のムチです♪」


 ビシッビシッ

サターニャ「それ、ほんとのムチじゃないのよ!」デプッ

ラフィエル「ほらほら無駄口を叩かずに。夕日に向かって、レッツゴー♪」



サターニャ「もう、許してってばぁぁぁぁぁっ!!」デプッ



おしまい
38:2017/05/12(金) 22:20:37.422 ID:w8FZaf++p.net
分かる
ひと月水だけで過ごすと痩せるよな乙
40:2017/05/12(金) 22:49:52.576 ID:LHsp3GYu0.net
おつおつ
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1494590541