6: 2011/01/28(金) 12:58:34.02 ID:8GLTt4XH0
こんにちは。中野梓です。
いきなりですが、今、私にはとある重大な計画があります。

ガチャ

紬「あら、梓ちゃん一人?」

梓「は、はい。今日は皆さんまだ来ないみたいで」

紬「そういえばみんな用事があるとか言ってたような…」

そうでしょう。他の先輩がたに用事があるのを確認した上で
二人っきりになれるタイミングを計りましたので。

8: 2011/01/28(金) 13:00:36.95 ID:8GLTt4XH0
紬「せっかくだからお茶飲んでいく?」

梓「はい!いただきます!」

紬「ふふ。じゃあちょっと待っててね~」


琴吹紬先輩。通称ムギ先輩。
軽音部のキーボード担当。作曲もできちゃいます。

おっとりぽわぽわで、優しくてとっても綺麗で
しっかりしてるのに、すごく子供っぽいところもあって。
いつも抱きついてくる唯先輩と並んで、軽音部のマスコット的な人、とでも言いましょうか。
とても皆に愛されています。当然私もその中の一人。

9: 2011/01/28(金) 13:04:11.79 ID:8GLTt4XH0
紬「はい。おまたせ。熱いから気をつけてね」

梓「ありがとうございます!」

紬「あらあら。なんだか今日の梓ちゃんは元気いっぱいね」

梓「へ!? そ、そうでしょうか?」

多分緊張してるだけだと思います。
そう、これからしようとしてることを考えれば緊張しないわけがありません。
こんなこと、今までなかったし……ましてや相手が先輩で、……女の子なんだもん。

いや、これはそう言うのじゃなくって、うん。
もっと単純な、普通の女子高生がするようなこと。
憂や純とだって、よくしていること。何も緊張することないよ。

11: 2011/01/28(金) 13:05:45.22 ID:8GLTt4XH0
そう言い聞かせないと、心臓が破裂しそう。
それはきっと、その行為に特別な気持ちがこもってるから。…だと思う。

それを、はっきりさせなきゃいけないから。だから。

梓「あ、あの!ムギ先輩!」

紬「はい?なにかしら?」

梓「え~と、あの、その~」

紬「??」

梓(ええい。もう! やれるよ私!今言わないでどうするの!?)

梓(そのためにこうやって二人っきりになったのに!)

紬「梓ちゃん?」

12: 2011/01/28(金) 13:07:41.43 ID:8GLTt4XH0
梓「あのですね!!」

紬「は、はい!」

梓「今度の休みの日、お暇ですか!?」

紬「え?……うん。特に予定はないわよ」

梓「じ、じゃあ……」



梓「その、もしよかったら……二人で、遊びに行きませんか?」

13: 2011/01/28(金) 13:10:39.56 ID:8GLTt4XH0
―――― すうじつまえ ――――

梓「はぁ~……」

純「どうしたの、梓。朝からため息なんかついちゃって」

梓「ん~……。なんでもない~」

憂「なんか最近元気ないように見えるけど……ほんとに大丈夫?」

梓「うん。体調悪いとかじゃないから……ありがとね」

純「ハイテンションでいろとは言わないけどさ~」

純「なんかそんな風にしてるのも、梓らしくないよ」

梓「私らしいって何さ~…」

15: 2011/01/28(金) 13:12:36.14 ID:8GLTt4XH0
純「ああ!もう!なんか調子狂うなぁ」

憂「純ちゃんたら…」

朝っぱらからダウナーな私を心配してくれる仲良し二人組。
純粋に嬉しい。こんな友達を持った私は幸せものだろう。

人付き合いが上手い方ではないのは分かってる。
そんな私ともここまで仲良くしてくれるんだ。ほんと、二人には感謝してる。
恥ずかしいから面と向かっては言えないけど……

でも、そんな二人にさえ、今の私が沈んでいるその理由を明かすのはためらわれる。

純「あー!分かったかもー!」

梓「なによもう。いきなり大声出して……」

純「梓さー」

16: 2011/01/28(金) 13:14:42.28 ID:8GLTt4XH0
純「好きな人でもできたんでしょ!?」


なんでこのモップはこう変なところで妙に鋭いのか……


純「…今心のなかで私のこと馬鹿にしたでしょ!?」

梓「……してないよ」(嘘だけど)

憂「まあまあ純ちゃん落ち着いて」

憂「でもでも、そうなの?梓ちゃん!?」

梓「なんで憂はちょっと嬉しそうなのよ……」

17: 2011/01/28(金) 13:16:41.71 ID:8GLTt4XH0
憂「いや~、なんか今までそういう話したことなかったな~って思って」

梓「憂がそういう話に興味あるのも…ちょっと意外かも」

憂「え~そうかな~?」

純「お姉ちゃん一筋って感じだもんねー」

憂「それはそうなんだけど」

梓・純(否定はしないんだ)

憂「でも、やっぱり恋のお話は興味あるよ」

憂「他ならぬ梓ちゃんのだし。ね?」

純「たしかに!あの梓がね~。ニヤニヤ」

梓「ニヤニヤ言うな。それにそんなんじゃ……」

18: 2011/01/28(金) 13:18:56.97 ID:8GLTt4XH0
……でも、はっきりと否定もできなくて。

ここ数日、寝ても覚めても思い浮かぶのはムギ先輩のことばかりで。

ムギ先輩のことばっかり考えてる。
キッカケはなんだったのか、なんて考えてたのも随分前のことのような気がする。
要するに分からなかったわけだけど。

この気持がなんなのか、今の私ははっきりとした答えを出せていない。
だけど、たぶん。そうなんじゃないかって、思っていることはある。
でも、勘違いかもしれない。いや、はっきり認められないだけなのかな。

考えれば考えるほどわからなくなってきて
はじめはちょっと浮き足立ってた私も、今はこんな風に沈んでばっかりだ。

19: 2011/01/28(金) 13:21:33.28 ID:8GLTt4XH0
だから……ひょっとしたら、何か分かるんじゃないかと思って。
変わるんじゃないかと思って。


梓「……もし、そうだって言ったら?どうする?」


純「うゎお!ホントに!?」

憂「梓ちゃんおめでと~!」

梓「何がおめでたいのよー。…付き合ったりしたわけじゃないっって」

純「でもさ!好きな人できたのはホントなんでしょ?」

20: 2011/01/28(金) 13:23:01.42 ID:8GLTt4XH0
梓「よく分かんないんだよ。実際」

純「はい?どゆこと?」

梓「……その人のこと、すっごい気になるんだけど」

梓「ず~っと考えてるんだけど。でも、それが好きって気持ちなのかどうか」

梓「ハッキリとしなくて、さ」

梓「はぁ~……」

純(こんな物憂げな表情でそんなこと言われてもな~…)

憂(これはどう見ても恋だと思うんだけど…)

21: 2011/01/28(金) 13:24:55.52 ID:8GLTt4XH0
純(あ、やっぱり憂もそう思う?)

憂(うんうん。きっとそうだよ!)

純(ほんと、思ったよりも食いつきがいいね…)



純「……よし!じゃあ私がいい案を授けてあげよう!」

梓「なんか純が自信満々だと逆に不安なのはなんで…」

純「今日の梓さりげにひどいよね。私泣くよ?」

梓「はいはいごめんねー」

純「ひどいよね!?」

22: 2011/01/28(金) 13:26:44.76 ID:8GLTt4XH0
梓「それで……どうしたらいいの?」

純「ふっふっふ。聞いて驚くなかれ」

梓「大丈夫。多分驚かないから」

純「あー、なんかイラつくわ」

憂「もう、梓ちゃん!」

梓「ごめんごめん。ちゃんと聞くから」

純「もう!……じゃあ、気をとりなおして。ズバリ言うけど」



純「デートしなさい!」

24: 2011/01/28(金) 13:28:30.51 ID:8GLTt4XH0
…………

梓「は、はいいいぃ!?」

純「あ、驚いた」

憂「驚いたね。すっごく」


梓「え!なんで!?どっからデート出てきたの!?」

純「まあまあ落ち着きなよ梓」

梓「これが落ち着いていられるか~!」

憂「まあまあまあまあまあまあ」

純(6回…)

25: 2011/01/28(金) 13:30:35.34 ID:8GLTt4XH0
純「ただ思いつきで言ってるわけじゃないって」

梓「…ほんとに?」

純「ほんとほんと。まあ聞きなさいよ」


純「要するに二人っきりで遊びにでも行きなさいってこと」

純「梓、多分その人と二人っきりになったこととかほとんど無いんじゃない?」

梓「まあ、たしかに。全くないわけじゃないけど…‥」

純「でしょ? で、たぶんお互いのことについてしっかり話したこととかもないでしょ?」

梓「…なんかこうも当てられると悔しいけど、おっしゃるとおりです」

27: 2011/01/28(金) 13:33:34.62 ID:8GLTt4XH0
純「だからデート。ふたりだけでいろんなとこ行って。いろんなことして。いろんな話して」

純「相手のことがもっとよくわかるし。自分をもっと知ってもらえるし」

純「そのおかげで分かる新しい一面とかも、きっとあると思うんだ」

純「なにより相手と一緒にいるときの自分の気持ちともしっかり向き合えるし」

純「そうすればきっと、分かるんじゃないかな?梓自身の気持ちがさ」



純「要はさ、もっとお互いのこと知るのが必要なんじゃないかな」

純「そこまで思ってるのに気持ちが固まらないってのは、それが足りないからかなー、と」

純「そこで手っ取り早いのがデートってわけ」

28: 2011/01/28(金) 13:35:59.01 ID:8GLTt4XH0
梓「……」

憂「……」

純「え、なに?どうしたの?ふたりとも黙っちゃって…?」



梓「純すごい」

憂「純ちゃんすごいね」

純「へ?」

梓「なんかすごい真面目なこと言ってる。色々考えてるんだね」

憂「すごいよ~。私ちょっと感動しちゃった」

純「え?あれ?そう/// なんか照れるな~」

29: 2011/01/28(金) 13:38:05.07 ID:8GLTt4XH0
梓「モップなんて思ってごめんなさい」

純「いまさらかい。もうアドバイスしないぞあずにゃん」

梓「だからごめんって。…でさ、物は相談なんだけど」

純「はいはい。もうここまで言ったしなんでも聞きますよ」



梓「当然ながら、私、デートとかしたことないんだけど」

純「そこかー。まあ無さそうだもんね」

梓「それ怒っていいとこ?」

純「さっきの仕返しだ。まあそれは置いといて」

純「普段私たちと遊んでんじゃん。あんな感じでいいんだよ」

31: 2011/01/28(金) 13:40:01.42 ID:8GLTt4XH0
梓「実はさ…」

純「ん?なんだい子猫ちゃん?」

梓「ごめん。イラッとする。謝るからやめて」

純「あははは!いやいや、こっちこそごめんね。 それで?」



梓「私たちが遊びにいく時ってさ…」

梓「私から何かしたいって言ったことあんまりないんだよね」

憂「えーそうかなー?」

純「こないだ憂の家に泊まった時とかいろいろ言ってたじゃん」

梓「あの時は…ちょっと、まあ色々あってね」

32: 2011/01/28(金) 13:42:49.29 ID:8GLTt4XH0
純「うーん。でもそう言われてみるとたしかにそんな気もする」

梓「というわけで、デートともなると尚更なんだけど」

梓「プランなんて分かんないわけですよ」

憂「今まで私たちと行ったことある所とかは?」

梓「うーん。それでいいのかなー?」



純「もう、それじゃあもう一つ私が助け舟を出してあげよう!」

梓「なんか純がすごい頼もしく見える」

純「いつもそれくらいの眼差しを向けてくれてもいいのよ!」

梓「そういう所が良くないんだって…」

33: 2011/01/28(金) 13:44:36.36 ID:8GLTt4XH0
純「梓パソコン持ってたよね。はいこれ」

梓「アドレス?どっかのホームページの?」

純「そ。ここに行って、自分の名前と相手の名前を入れるとね」

純「なんと驚き!デートプランを自動で考えてくれるって寸法よ!」

梓「うわ、胡散臭」

純「えー。でも結構しっかりとしたプラン出してくれるって最近評判なんだよ」

梓「ほんとかな~…」

純「ありきたりなとこだけじゃなくて、意外なコースも出てきたりして」

純「そこがまた刺激があるとか、マンネリ打破!とかで人気なんだ」

梓「普通のところがいいんだけどな」

35: 2011/01/28(金) 13:48:01.39 ID:8GLTt4XH0
梓「まあ…自分じゃ決められそうもないし、やってみようかな」

純「でしょでしょ!やってみなって」

梓「…なんか遊んでない?私で」

純「何をおっしゃる。これも梓を思ってだよ」



憂「そういえばさ」

梓・純「?」

憂「いつの間にかデートしてみようって話で進んでたけど、大丈夫なの」

梓「……うん。まあ」

梓「私一人で考えてても、どうにもなりそうにないし」

36: 2011/01/28(金) 13:49:55.16 ID:8GLTt4XH0
梓「思い切ってやってみるよ」

純「おっ!なんか吹っ切れたみたいだね。よかったよかった」

憂「よかったね~!」

梓「ありがとね。二人とも」

憂「私は何もしてないから」

梓「いや、話聞いてもらっただけでも気が晴れたからさ」

純「まあ何かあったらこの純様に任せておきなさいって!」

梓「このモップには憂の爪の垢でも飲ませたい」

37: 2011/01/28(金) 13:51:29.70 ID:8GLTt4XH0
純「なんだとー!!」

梓「冗談冗談。純にも感謝してるって」

純「もうちょっと敬意を表してほしいなぁ!」

純「…ま、あれだ。元気になったみたいで何より」



梓「…ほんと。ありがとね」

純「いいっていいって」

憂「梓ちゃんが元気ないと、私たちも寂しいし」

38: 2011/01/28(金) 13:53:07.70 ID:8GLTt4XH0
純「ところでさー」

梓「?」

純「その相手ってどんな人なの!?」

梓「え!?いやーそれはー…」

純「ここまできて誤魔化さないでよー」

憂「私も聞きたいな~」

梓「憂まで!?」

39: 2011/01/28(金) 13:54:21.23 ID:8GLTt4XH0
梓「それは…ごめん。ちょっと今は」

憂「うん。梓ちゃんが言いたくないなら、無理には聞かないよ」

梓「ありがと憂」

純「ま、そこまで突っ込むのも野暮ってもんか」

梓「ごめんね純」



梓「話せる時が来たら、ちゃんと話すから」

純「期待しないで待ってるよー」

憂「うまくいくといいね~」

梓「……うん。頑張ってみる」

40: 2011/01/28(金) 13:56:26.22 ID:8GLTt4XH0
―――― ある夜の中野邸 ――――

梓「さて……純の教えてくれたサイトでも見てみよっか」

こんな大事なことを人(ですらないのかもしれないけど)に頼るってのも
われながら情けないと思いつつも、やっぱり一人で思いつくこともないわけで

梓「このサイトだよね」

梓「デートメーカー? ベタな名前…」

梓「まあいいや。さっそくやってみよう」



梓「どっちの名前先にしたらいいのかな?」

梓「…いやいや、ここは先輩をお先にしなければ」

梓「えっと…琴吹紬…中野梓…っと」

41: 2011/01/28(金) 13:58:15.45 ID:8GLTt4XH0
『デートメーカーの結果』

10:00 倉庫街で待ち合わせ
12:00 ステーキ屋で食事
15:00 バトミントンで二人の仲が急接近
19:00 中野梓が策におぼれ始める
LA:ST そして…三本締めをしてさようなら

梓「……なにこれ?」

意味分かんない。特に最後のほうが。

梓「内容もかなりハチャメチャだけど」

梓「こんだけ計画立てといて最終的に策に溺れてどうすんのよ……」

梓「しかも三本締めって」

ほんとにこれで行けと?

43: 2011/01/28(金) 14:00:52.27 ID:8GLTt4XH0
梓「うーん。でも…」

よくよく考えてみると、前半は悪くないかもしれない

ムギ先輩は2時間サスペンスとかが好きみたいだ。
となれば倉庫街とか興味ありそう。絶対行ったことないだろうし。

私?当然行ったこと無い。正直不安です。
でも、ふと。いつも自分の知らないものに目を輝かせる先輩を思い出した。

……まず間違い無く未知の領域であるここなら、外さない気がする。

ステーキは……琴吹家の食事と比べたら私の行けるところなんて
比べるのもおこがましいんだろう。
でも、普通に憧れてる先輩なら、庶民が行くようなお店でも喜んでくれそうだ。
念の為、決してムギ先輩を悪く言っているわけではないので。

ふと、合宿のバーベキューではしゃぐ先輩の姿を思い出した。

…存外いいのかもしれない。

44: 2011/01/28(金) 14:03:30.79 ID:8GLTt4XH0
バトミントン。これは普通に喜んでもらえそう。
このプランで一番マトモだと言ってもいいかもしれない。
またまた、ふと。私が入部したばかりの時に歓迎会と称してピクニックに行った時を思い出す。

はしゃぐ先輩がそこにいます。

これは喜んでもらえそうだ!


梓「あれ?案外行けるんじゃないの?これ」

梓「…そうだよ!いけるいける!」

梓「よーし!これでいこう!」

すっかりやる気になってしまった。

深夜のテンションって怖いです。

46: 2011/01/28(金) 14:05:27.62 ID:8GLTt4XH0
―――― 時間は戻りまして ――――

紬「梓ちゃんと二人で?」

梓「は、はい!」

確認するってことは、やっぱり……二人は嫌なのかな?
他の先輩方と一緒じゃなきゃ、ダメなのかな……

紬「まあまあまあまあまあまあ!」

紬「いいわね!行きましょ!」

梓「え?い、いいんですか!?」

紬「あら、誘ってきたのは梓ちゃんよ?」

梓「そ、そうですね。ありがとうございます!」

なんか、変に緊張してたのが馬鹿みたいだ。

47: 2011/01/28(金) 14:08:58.09 ID:8GLTt4XH0
紬「ふふ。梓ちゃんとデートなんて。楽しみね~!」

梓「で、ででデートなんて、そんな」

紬「あれ?二人っきりで遊びにいくんだもん。デートでしょ?」

そんな簡単に言わないでください。私、すっごい緊張したんですよ。

……まあでも、こんなところもこの人らしい。
きっと、もっと軽い気持ちで言ってるんだろうけど。それでも今はいい。
なんだかこっちも気が楽になったかも。

梓「…はい!デートですね」

紬「うん!」

ここまで来たら、私も腹をくくらないと。

49: 2011/01/28(金) 14:10:25.24 ID:8GLTt4XH0
紬「それで、どこに行くのかしら?」

梓「それなんですけど、私にエスコートさせてもらえませんか?」

紬「まあまあ!」

梓「どうでしょうか?」

紬「ぜひお願いするわ! 楽しみ~!」

こんなに喜んでもらえるなんて。それだけで、私も嬉しい。

梓「それじゃ、10時にここに来てもらえますか」

紬「ここって…」

51: 2011/01/28(金) 14:11:49.40 ID:8GLTt4XH0
梓「いわゆる倉庫街です。大丈夫です。周囲の治安はいいらしいので」

紬「まあまあまあまあ…」

神妙な顔つきだ。

…やっぱりまずかったの!!?
よくよく考えればやっぱりおかしいもん!私おかしいよ!?

紬「サスペンスドラマでよく出てくるようなあの倉庫街よね!?」

紬「一度行ってみたかったの~!!」

すいません大丈夫みたいでした

52: 2011/01/28(金) 14:13:44.85 ID:8GLTt4XH0
―――― とうじつ! ――――

梓「あっ…ムギ先輩!」

紬「あら梓ちゃん。おはよう。早いわね」

梓「おはようございます! …まだ時間前なのに」

紬「楽しみでつい早く来ちゃった♪」

そう言ってもらえるのはすごく嬉しいけど。
でも、私だって結構早く来たのに、待たせちゃったな……

梓「ごめんなさい。お待たせしてしまって」

紬「いいのいいの。私がしたくてしたことだし」

紬「それに梓ちゃんだって遅れたわけじゃないのよ?」

梓「それはそうですけど……」

53: 2011/01/28(金) 14:15:23.38 ID:8GLTt4XH0
紬「ほら!そんな顔しないの」

梓「わっ…」

優しく頭を撫でてくれる。あったかい手。すごく気持ちいい

紬「いいじゃない。それだけ一緒にいられる時間が増えたんだし」

紬「ね?だから気にしないで。せっかくのデートが台なしよ」

梓「は、はい!」

梓「あの…ありがとうございます」

そう言うと、先輩は優しく微笑んでくれた。

54: 2011/01/28(金) 14:17:26.35 ID:8GLTt4XH0
改めてムギ先輩と向き合う。
柔らかなイメージにぴったりな、清楚で落ち着いた衣装がとても良く似合っている。
オーラがあるとても言えばいいのか、どこから見ても良家のお嬢様だ。
実際そうなんだけど。

……この少し寂れた倉庫街にはかなり不釣合いのような気がする。
さっきから、少しばかり道行く人達の奇異の視線が痛い。

紬「さぁ梓ちゃん?今日はどこへ連れていってくれるのかしら?」

梓「えっと……」

梓(やばい!そういえばお昼までの予定が白紙だよ!)

梓(あの大雑把な予定だけでいける気になってたー!)

梓(わたしのバカー―!!)

55: 2011/01/28(金) 14:18:58.64 ID:8GLTt4XH0
紬「…ねぇ、もしお昼まで予定がないなら、少しここらへんを散歩しない?」

梓「え、はい! …実は昼食まで具体的な予定がなかったので」

梓「先輩がそうしたいなら、私はぜひ」

紬「やった! 一回こういう所をゆっくり歩いてみたかったの」

気を使ってくれたのかな? きっとそうなんだろう。
早速へましてしまった自分が情けない。

でも、当の先輩はそんなことを微塵も感じさせないくらいはしゃいでいる。
ううん。実際気になどしていないんだ。
きっと。それくらいおおらかな人だから。

56: 2011/01/28(金) 14:20:31.14 ID:8GLTt4XH0
この人はいつもそう。

さりげなく。けれども決して間違わず。
魔法のように場を取り持ってしまう。

それに私たち軽音部がどれだけ支えられてきたか。
言ったところで、きっとこの人はさらっとかわしてしまうのだろうけど。

紬「梓ちゃーん!おいてっちゃうよー!」

梓「…はーい。今行きますー!」

57: 2011/01/28(金) 14:22:08.37 ID:8GLTt4XH0
―――― おひるです ――――

紬「あら、おいしい!」

梓「そうですか? ムギ先輩の口にあうか心配だったんですけど」

紬「高級料理じゃないと口に合わない人間に見えたかしら?」

梓「あ!いえ!そういう意味じゃないんです!ごめんなさい!!」

紬「冗談よ。そんなに謝らないで。こっちこそごめんなさい」


紬「緊張しちゃって。変にかっこつけようとするもんじゃないね」

梓「いえ。 ……緊張、ですか?」

紬「こんな可愛い子と一緒にお食事ですもの」

梓「か、かわいいって…私、ですか?」

紬「? 他に誰が?」

58: 2011/01/28(金) 14:24:51.24 ID:8GLTt4XH0
真顔で返さないでください。顔が熱いです。特に耳とか。

紬「素敵なカップルに見られてるかしらね~」

せいぜい仲の良い兄弟でしょう。私じゃ、あなたには釣合いませんよ。

なんて言おうとしたけど、さらに顔が火照ったのでやめておいた。
ムギ先輩も何だか嬉しそうだし。



紬「でもね。美味しいものは美味しいのよ」

紬「高級フルコースでも、マックスバーガーのセットでも、駄菓子屋さんのお菓子でも」

紬「私はみんな大好きよ?」

この人が言うと全く嫌味に聞こえないのは本当に凄いと思う。
きっと、本当にそう思っているって、ちゃんと分かるからなんだろう。
人徳ってやつなのかな?

59: 2011/01/28(金) 14:26:31.01 ID:8GLTt4XH0
紬「それに……」

紬「食事ってね、誰かと一緒に取るだけでも、ずっと美味しくなるものなのよ」

そう言った先輩は、ほんの少しだけだけど、悲しそうで。

お嬢様だと、両親が忙しくて一緒に食事をすることがない。
私たちが考えるような、お決まりの展開が頭を過ぎる。

やっぱり、そういう事もあるのかな。

紬「……梓ちゃんは優しいね」

梓「…どうしたんですか、いきなり」

60: 2011/01/28(金) 14:28:12.92 ID:8GLTt4XH0
紬「ずっと一人ってわけじゃないから。本当に、少ない機会だけど」

紬「それでも両親は、私と一緒にいる時間をすっごく大事にしてくれるから」

紬「これは、子供のわがままなの」

すぐに顔に出してしまうのは私の悪い癖だ。
この先輩は、そう言うのにとっても敏感なのに。

それなのに、こんなふうに気丈に振舞うんだもん。

梓「これからも」

紬「?」

梓「これからも、たまに二人で食事に来ましょう」

梓「ムギ先輩が行ったことないようなお店、たくさん紹介します!」

61: 2011/01/28(金) 14:29:44.87 ID:8GLTt4XH0
紬「…うん!約束ね!」

わたしでも、その寂しさを。
すこしでも、感じさせないようにできるかな?
そうできたなら、素敵だな。


梓「…それにしても、ムギ先輩」

紬「なにかしら~」

梓「結構食べますね。お腹すいてたんですか?」

紬「」


あ、これやばい。やばいやばいやばい!


紬「…これが、ふつうなの…」

63: 2011/01/28(金) 14:31:03.68 ID:8GLTt4XH0
梓「あ、えと、高校生は成長期真っ只中ですから!」

梓「それくらい食べるの普通ですよ!」

紬「梓ちゃんは私の半分くらいしか食べてない……」


梓「ほら、私こんなちびっこだし!貧相な身体ですから!」

梓「ムギ先輩スタイルいいし! 維持するにはそれくらいじゃないと!」


紬「澪ちゃんのほうが身長高いし、スタイルもいいのに…」

紬「体重ほとんど変わらないのよ…!?」

梓「え、えと、それは…」

66: 2011/01/28(金) 14:34:12.43 ID:8GLTt4XH0
ちなみに、ムギ先輩のキーボードは重さ約17キロです。
ほぼ毎日それを持って通学してます。筋肉は脂肪より重いです。

どう考えてもこのせいですね。筋肉質なんでしょう。
筋肉ついてる人は新陳代謝も高いですから。

でもそれを言ったらさらにドツボにはまりそうなので、黙ってました。
筋肉付いてるんだね!なんて言われて嬉しい女の子なんてそうそういません。

それに誰がどう言おうと、ムギ先輩がスタイルいいのは事実ですし。
私から見れば羨ましいことこの上ありません。

まあ。その後しばらくの間、体重の悩みを延々と聞かされましたが。
でも、私は全然苦じゃなかったし。
ムギ先輩も、心なしか、どこか嬉しそうに見えました。

68: 2011/01/28(金) 14:36:30.97 ID:8GLTt4XH0
―――― こうえん ――――

梓「いきますよー!」

紬「どんとこいでーす!」

ぽーん!

紬「…っっと、それ!」

ぽーん!

梓「なんの。それ!」

ぽーん!

紬「…!!そこね!」

ビュン!

梓「あっ!! …やられました」

紬「ふふ。また勝ちね!」

69: 2011/01/28(金) 14:38:59.21 ID:8GLTt4XH0
ムギ先輩はちょっと運動苦手って言うイメージがあったんですが以外にも強いです。
いや、私が弱いだけなんでしょうか?

はい。今公園でバトミントンしてます。
適度に広くて小奇麗にしてあるのに、休日でもあんまり人もいなくて。いいところです。
私たちがちょっとはしゃいじゃっても、全然大丈夫。

梓「もう一回行きましょう!」

紬「いいわよ~!」

そういえば、予定ではここで二人の仲が急接近するらしいです。
でも、バトミントンでどうやって急接近?よくわからない。

……まあ、こうやって小さい子供みたいにはしゃいでるだけでも。
十分ふたりの距離は縮まったような。そんな気がする。

70: 2011/01/28(金) 14:40:58.55 ID:8GLTt4XH0
私なんかは特に、あまり親しくない人の前でこんなにはしゃぐこともない。
ムギ先輩もなんというか、しっかりと場をわきまえる人だけど。

でもはしゃぐときはこんな感じで。自然と相手に気を遣わさないようにできる人なんだ。
すごいなぁ。私には真似できそうにない。

本当に無邪気にはしゃいでる先輩は、とっても輝いてて、可愛らしかった。



梓「あっ…」

やばっ!ぼーっとしてたら真上に上げちゃった。

紬「おおおお!」

梓「…って!えええ!」

71: 2011/01/28(金) 14:43:13.56 ID:8GLTt4XH0
ムギ先輩シャトルしか見てない。
つまりすごい勢いで私に突っ込んできてます。

あー。交通事故とかの時、景色が流れるのがゆっくりに見える。
って言うけど、きっとこんな感じなんだろうなー。


『どん』っていうより『むにゅ』っとか『もふっ』って感じでした。
なにがって、そりゃ……ぶつかった時ですよ。ええ。
当然そのままの勢いで、押し倒される形になったわけで。

梓「いったた……」

紬「ごめんなさい!大丈夫!?」

梓「はい、なんとか……」

その、押し倒されてること以外は。
おもに理性的な意味で。

72: 2011/01/28(金) 14:45:38.93 ID:8GLTt4XH0
紬「でも、顔真っ赤よ。どこか打ったんじゃ…!?」

梓「いえ、ほんとに大丈夫ですから!」

ドキドキしてるだけですから。
ああ!近い!近いです。いい匂いします!これはやばいです!

梓「ほら!大丈夫ですから!」

勢い良く立ち上がります。なんとか無事をアピールしてこの状況を脱しないと!


紬「そう…?」

梓「はい。もうそれは!むしろ元気でてきました!」

紬「?? ふふっ。変な梓ちゃん」

この急接近は予想外でした。

73: 2011/01/28(金) 14:47:40.28 ID:8GLTt4XH0
――――――――

紬「今日は楽しかったわね~!」

梓「そう言っていただけると、私も嬉しいです」

あの後は、ゆっくりお喋りでも、というお互いの希望で休憩がてら喫茶店に。

お茶してお喋り、なんて。言葉にするといつもの部活と変わらないけれど。
それも今日は二人っきりっていう、ちょっとした特別。
普段は話さないようなお互いのことも、色々知れました。

好きなこと。嫌いなこと。今までのこと。これからのこと。
思ってた以上に、私たちはお互いのことを知らなくて。

でも、こうやって知っていくことができる。
それからもっと。知りたいと思う。

お互いのことを知るっていうのは、とっても大切な事だよね。
……あとで純にちゃんとお礼を言っておこう。

74: 2011/01/28(金) 14:49:01.54 ID:8GLTt4XH0
紬「梓ちゃんはとってもエスコート上手だったし」

梓「そんなことないです。初めっからムギ先輩に助けられましたし」

紬「なんのことかしらね~」

梓「……ふふ。ほんと、なんのことでしょうかね」



紬「でもほんとに楽しかったから」

紬「ありがとう。ね」

梓「いえ、こちらこそ。今日は付き合ってもらってありがとうございました」

紬「私が一緒に遊びたいから来たのよ?」

紬「だから梓ちゃんががお礼を言うことなんて無いの」

75: 2011/01/28(金) 14:52:15.95 ID:8GLTt4XH0
なんか今日はこんなのばっかりだなぁ。
はしゃいでる時はすっごく子供みたいなのに
こういう時はどうあってもかなわないくらいお姉さんだ。
ほんとに不思議な人。

梓「はい。わかりました」

梓「でも。言わせてください。ありがとうございます、って」

梓「私は、そういう風に出来てるので」

梓「そしたら。ムギ先輩は今みたいに、いいのよ。って言ってください」

梓「そういうの、駄目ですか?」

76: 2011/01/28(金) 14:53:37.34 ID:8GLTt4XH0
紬「何だか大人ね~」

梓「先輩にはかないません」



紬「そういうのも、素敵ね」

紬「じゃあ、そうしよっか。これからも」

梓「はい。そうしましょう。これからも」



そういえば、『策に溺れる』なんていうのがあったけど
結局それだけ分かんなかったな。

まあそんなのは無いほうがいいんだけど。
何でもかんでもその通りになるわけじゃないしね。

そう考えれば、なんだかんだでデタラメに見えたプランも
終わってみれば十分な成功だ。

78: 2011/01/28(金) 14:55:27.41 ID:8GLTt4XH0
…だったら、最後までやってやるです。
いろんな偶然や、巡り合わせに、感謝を込めて。

梓「ねえムギ先輩。三本締めしましょう!」

紬「…唐突ね。ここで?」

梓「はい!いまここで!」

紬「……ふふっ。今日の梓ちゃんは本当に面白いね」

紬「いいよ。やろっか!」

梓「ありがとうございます!」

ぱんぱんぱん。と乾いた音が響く。
街灯も灯りきった街中で三本締めなんてしてる私たちは
さぞかし奇妙なんだろう。でも、そんなことは気にならなかった。

どちらからでもなく、私たちは笑いあった。
こんなことも、この人と一緒なら、こんなに楽しい。

一緒に笑うあなたも、同じ気持だと。思ってもいいですよね?

79: 2011/01/28(金) 14:57:53.81 ID:8GLTt4XH0
紬「さて。じゃあ今日はこのへんでお開きかしら」

お腹もすいてきちゃったしね。なんて可愛らしく言う先輩。
そう、事前に話していた予定では、今日のデートはこれでおしまい。

用意されていたレールはここまで。
あとは、私が自分で何とかしなきゃ。

梓「まってください」

紬「?」

梓「最後に少しだけ。お話があるんです」

紬「……大事なお話ね」

梓「…もう。本当に先輩には頭が上がりませんね」

紬「いっつも見てるもの。それくらいは分かるわ」

梓「すごいですよ。きっと私には無理です」

80: 2011/01/28(金) 14:59:23.86 ID:8GLTt4XH0
不思議なくらい、落ち着いてた。
だって、もう気持ちははっきりしてるから。

勘違いじゃなかったよ。この気持ち。
ううん。きっとはじめから分かってたんだ。認められなかっただけで。
それはきっと、どうしたらいいか、分からなかったから。

でももう大丈夫、ちゃんと受け止められるよ。

お姉ちゃんみたいで、それなのに妹みたいで。
甘えさせてくれるのに、自分もどこか甘えたがりで。
すごく大人っぽい一面を見せた途端に、子供みたいにはしゃいだりする。

ほんとに、不思議な人だ。
そんなこの先輩が。好きなんだ。私。

だからね。どうすればいいのかも。もう分かるんだ。

ゆっくり息を、すって。はいて。…うん。大丈夫。
でも。何から話せばいいのかな?

……そうだ。
こんな時にぴったりな歌を、私は知ってるんだ。
その歌ではね。この言葉から始めるんだ……

81: 2011/01/28(金) 15:00:29.35 ID:8GLTt4XH0
―――― またまたある日 ――――

梓「おっはよー」

憂「おはよ~梓ちゃん」

純「お~っす」



純「おー。その様子だと、上手く行ったみたいだね」

梓「……私ってそんなに分かりやすいのかな?」

純「うん。だいぶね!」

梓「気をつけよう…」

憂「でも梓ちゃんが元気になってよかったよ~」

梓「ありがとー憂」

82: 2011/01/28(金) 15:01:45.94 ID:8GLTt4XH0
純「私の言ったとおりだったでしょー!」

梓「うん」

純「…はれ?」

梓「ほんとに今回は純にお世話になった」

梓「ちゃんとお礼言わなきゃと思って」

梓「ありがとう」

純「そ、そう?…えへへ」

83: 2011/01/28(金) 15:02:47.38 ID:8GLTt4XH0
憂「あ~純ちゃん照れてる~」

純「なんか梓に素直にお礼言われるとねー。くすぐったい」

梓「もう、どーゆー意味よ?」

純「まあ、これからもなんかあったらこの純様に任せなさい」

梓「このボンバーはすぐにこうやって調子にのる…」

純「だれがボンバーだって!?」

憂「まあまあ…」

84: 2011/01/28(金) 15:03:56.36 ID:8GLTt4XH0
梓・純「……あははっ!」

憂「ふふっ」

純「まああれだ。元気になってなにより」

憂「ほんとだね。私も嬉しいよ」

梓「…ありがと。二人とも」

純「いいっていいって」

純「それよりさー!」

85: 2011/01/28(金) 15:05:15.02 ID:8GLTt4XH0
純「ねぇねぇ!相手の人、教えてよ!どんな人か」

梓「どーしようかなー?」

純「あーなによ。余裕こいちゃってー!」

純「私たち三人の協定を破って抜け駆けしたんだからいいじゃない!」

梓「いつそんな協定を結んだかわかりませーん」

純「まあ無いんだけどね!そんなの! でも聞きたいじゃん!」

梓「ほんとにこの子は……」

純「あ、今子供扱いしたよね。ねぇ?」

86: 2011/01/28(金) 15:06:06.36 ID:8GLTt4XH0
憂「私も聞きたいな~。もちろん、ムリならいいよ」

憂「話せる時で、ね」

梓「ほんとに憂は素晴らしい人だ」

純「無視した上にさりげなく非難しないでくださーい。泣きそうでーす」

そうだね。いつまでも黙っているつもりもなかったし
ここで話してしまおっか?

――「梓ちゃーん。なんか軽音部の先輩が来てるよー」

87: 2011/01/28(金) 15:07:35.36 ID:8GLTt4XH0
そうだ。約束してたっけ。お弁当、作ってきてくれるって。
朝来るのは予想外だったけど

恋人にお弁当作っていくの、夢だったの~。なんて。
すごく嬉しそうに言ってた。
それを思い出して、私も自然とにやけてしまう。

憂「あれ?紬さん」

純「紬先輩?」

紬「おはよう。二人とも」

紬「はい。梓ちゃん。お弁当」

梓「ありがとうございます。お昼に持ってきてくれても良かったのに…」

紬「いいのよ。梓ちゃんの顔見たかったし」

88: 2011/01/28(金) 15:09:39.15 ID:8GLTt4XH0
その言葉ひとつで、私の顔はふっと熱を帯びる。
こういう所では、やっぱりこの人にはかないそうもありません。

純「あのさー…聞いてもいい?」

梓「だめって言ったら?」

純「もう言ってるようなもんだけどねー」

そうなんだけどね。

あらあら、なんていってこの先輩はお姉さんの笑を浮かべてるし。
憂はわかってるよー。って言いたげに優しく微笑んでいて。
純は純で、ようやくかって感じで。
ちょっと呆れたように。それでも優しく笑ってて。

梓「うん。でも。ちゃんと言っておくね」

梓「私、ムギ先輩と付き合うことになりました!」


おしまい

89: 2011/01/28(金) 15:10:10.75
乙ういうい

90: 2011/01/28(金) 15:10:52.31
おしまい…だと…

92: 2011/01/28(金) 15:15:46.41 ID:8GLTt4XH0
読んでくださった人どうもありがとうございます。

ネタになったデートメーカーって言うのは実際にあります。もちろんお遊びのやつですけど。


引用元: 梓「デートメーカー?」