5: 2011/06/04(土) 21:54:14.51 ID:ncbs5oEn0
まどか「マミさんにも言われたし、いっそ素敵な彼氏が欲しいとかお願いしちゃえって」

まどか「素敵な彼氏……」

まどか「欲しいなあ……」

さやか「まあ急ぐことはないんじゃない?そんなのでほんとに契約したら怒られるって」

まどか「けど、とりあえず何よりも恋がしたいの!」

さやか「はあ?」

まどか「さやかちゃんはいいよねえ、上条くんがいるし」

さやか「なななっ!?」カァアッ

まどか「彼氏欲しいなあ……」

トトト...

ほむら「……」

9: 2011/06/04(土) 21:58:55.68 ID:ncbs5oEn0

恋がしたい、恋がしたい、恋がしたい。
私だって中学二年生で、それなりに年頃の恋に恋する乙女だったりするのだから。
だから恋がしたい、彼氏が欲しいと公言していたし、好きな人が欲しかった。

というより、「好き」と言ってくれる人が傍にいてほしかったのかも知れない。

だから、私はほむらちゃんに呼び出されて告白されたとき、ひどく吃驚して、
女の子だよ?と混乱して、でもそれ以上に「好き」だと言われた喜びが大きかった。

それでつい、頷いてしまったのだ。

まどか「……私でよかったら」

―――――
 ―――――

11: 2011/06/04(土) 22:04:23.56 ID:ncbs5oEn0
ほむらちゃんと、いわゆる“恋人同士”になってから数日経った。
最近では、二人きりで帰れるようになっていた。
けれど、やっぱり会話は中々弾んでくれない。友達だったときのほうが、ちゃんと
会話できていたような気さえする。

まどか「……」

ほむら「……」

会話を振ろうにも、ほむらちゃんはちゃんと答えてくれないのだ。
それがなぜなのか、私はわからなくてよけいに不安になる。

もしかして嫌われちゃったのかな、とか。
別れようって言われたらどうしよう、とか。

まどか「……あ」

突然、ほむらちゃんが立ち止まった。
いつもの別れ道まで来ていた。

15: 2011/06/04(土) 22:11:28.61 ID:ncbs5oEn0
ほむら「……それじゃ」

そういえば、最近ちゃんと目さえ合わせていない気がして。
私はつい、ほむらちゃんの腕を掴んで引きとめた。

ほむら「……」カアァッ

まどか「ふえ?ほむらちゃん……?」

日が暮れかかって暗くなり始めていたのに気付いてしまうほど、ほむらちゃんは
顔を真っ赤に染めた。
それを見て、私は慌てて手を離す。

まどか「あ、ご、ごめん……」

よくわからずに謝ると、ほむらちゃんは「ううん」とか細い声で首を振った。

18: 2011/06/04(土) 22:19:43.45 ID:ncbs5oEn0
まどか「……」

ほむら「……」

何となく、普段よりも近い距離のまま、私たちは黙り込んだ。
そういえば、付き合うってなんだろう。恋がしたい、そう思っていたけれど。
ほむらちゃんは素敵な彼氏でもなんでもなく、これじゃあまるでただの友達だ。

そんなことを考えていると、不意にほむらちゃんの手が。
私の頬に、添えられて。

まどか「……ほむら、ちゃん?」

――これって、まさか。
ほむらちゃんに、キス、される……?私の大事な大事なファーストキス。

どんっ

ほむら「……まどか」

まどか「……ご、ごめん」

ファーストキス。
そう思うと、なぜか私の身体は勝手にほむらちゃんを拒んでいた。

19: 2011/06/04(土) 22:24:31.10 ID:ncbs5oEn0
だって、私たち恋人同士だよ?
キスするくらい、普通なのに……どうして私。

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「……まだ、早かったわね」

まどか「そ、そんなこと……!」

慌てて首を振る。
だって、ほむらちゃんとキスするのが嫌だったわけじゃない。
きっと、心の準備が出来ていなかっただけなのだ。だからもう一度――

ほむら「……無理、しなくていいから」

まどか「……無理なんて」

ほむら「……ごめんなさい」

まどか「ほ、ほむらちゃんが謝ることないよ!」

24: 2011/06/04(土) 23:06:01.74 ID:ncbs5oEn0
もう、日は完全に沈んでしまっていた。
ほむらちゃんは、私から一歩、離れてしまった。そのまま、私に背を向ける。

まどか「ほ、ほむらちゃん!」

何度引き止めたって、何度呼び止めたって。
どうしようっていうわけでもなく、何ができるわけでもないのに。

ほむら「……」

ほむらちゃんはもう、振り向いてさえくれない。
だけど私は、「またあした!」と。少し大きめの声で、言ってみる。
ほむらちゃんは小さく頷いてくれた。

ほっとした。まだほむらちゃんの隣にいられることに。

―――――
 ―――――

26: 2011/06/04(土) 23:10:55.59 ID:ncbs5oEn0
まどか「付き合うってなんなんだろう」

翌日、私はさやかちゃんの席を陣取り呟いていた。
私に席をとられたさやかちゃんが、前の席に勝手に腰を下ろしながら「いきなり何さ」と
驚いたように私を見る。

まどか「……付き合っても、何をすればいいのかわかんないよ」

さやか「まあそりゃあねえ。あたしらまだ中学生なんだし。ていうかあんた、相手もいないくせに
    何言ってんのよ」

さやかちゃんや仁美ちゃんにはまだ、ほむらちゃんのことは話していなかった。
なんと言えばいいのかわからなかったのだ、ほむらちゃんのこと。
彼氏……ではさすがにないし、恋人っていうのは気恥ずかしい。

まどか「あはは……でも、キスされそうになったら、だよ?」

さやか「はあ?」

27: 2011/06/04(土) 23:15:00.90 ID:ncbs5oEn0

まどか「キスされそうになって、でもまだ付き合いたてで、キスする前にすることとか
    ある気がして……」

さやか「ちょっと待って意味わかんない」

まどか「……だからその、キスはまだちょっと、だから。それ以外で、付き合ってる人同士が
    することってあるのかな」

さやか「それってB以上!?」

まどか「B?」

さやか「あ、いや違うか。何でもない」

さやかちゃんがぱたぱた首を振り、よくわからない単語を打ち消した。
深くは聞かない方がいい気がして、私はさやかちゃんの答えを待つ。

さやか「えーっと、付き合ってる同士ですること?キス以外で?そりゃあもうデートとかじゃん」

まどか「デート!」

さやか「そ、デート」

29: 2011/06/04(土) 23:17:57.02 ID:ncbs5oEn0
そういえば、そんなイベントもあったような。
そういうときよく、女の子は手作り弁当を持っていくんだっけ。
あぁ、でも私の場合ほむらちゃんも女の子だ。

さやか「デートで定番の場所行ってさ、お化け屋敷とかだったらきゃーって叫んでぎゅってしてー、
    そんで海辺で散歩とか!さりげなく手とか繋いだりしてさあ!……と、まあそんな感じ?」

32: 2011/06/04(土) 23:22:03.32 ID:ncbs5oEn0
まどか「手、繋ぐか……」

それなら私とほむらちゃんでも出来そうだ。
それにデート――
どうして今まで思いつかなかったんだろうと思うほど初歩的なこと。

まどか「……にしても、さやかちゃんってロマンチストだよね」

さやか「うっ」

デート、デート、デート。
頭の中で三度繰り返す。普段私たちは、教室ではあまり話していない。
おまけに昨日のこともあるから少しほむらちゃんと話しづらいけど、今日の放課後、
ほむらちゃんに次の休日の予定を聞いてみよう。

33: 2011/06/04(土) 23:24:53.74 ID:ncbs5oEn0

放課後。
私は掃除で遅れてしまい、ほむらちゃんとの待ち合わせ場所まで走っていた。
いつも私たちは、ほむらちゃんがあまり誰かに見付かりたくないからと言って
裏門で待ち合わせていた。そこは、大きな桜の木が一本堂々と立っていて、私と
ほむらちゃんが恋人同士になったところでもある。

まどか「ほむらちゃん、まだ待ってるかなあ」

はあはあと息を切らせ、私は急ぐ。
――と。
目印の桜の木の下、二つの人影があった。

ほむらちゃんと、もう一人――

私はつい、反射的に校舎の影に身を隠した。
ここからの距離なら声は聞こえないはずなのに、もう一人の声が聞こえてしまう。
よほど大きな声なのだろう。背の高い、男子生徒。

34: 2011/06/04(土) 23:29:19.34 ID:ncbs5oEn0
「どうして俺と付き合えねえんだよ!?」

まどか「!」

付き合う……?
どうやら私は、ほむらちゃんへの告白の場面にいるらしかった。
胸の奥がざわざわとざわめく。

ほむらちゃんの反応は……。
そっと顔を出そうとしたとき、木の枝を踏みつけてぽきっと音が鳴ってしまった。

はっとしたように男子生徒とほむらちゃんが私のほうに顔を向けた。
男子生徒は同じクラスの人だった。

「鹿目……」

まどか「あ……はは、えっとー」

「っ!じゃあな暁美!」

ほむら「……」

まどか「行っちゃった」

男子生徒は顔を真っ赤にしてどこかへと行ってしまった。
ほむらちゃんがそれを何も言わずに見送る。

39: 2011/06/04(土) 23:40:06.15 ID:ncbs5oEn0
まどか「……いいの、かな?」

ほむら「構わないわ」

まどか「……そっか」

帰りましょう。
ほむらちゃんがそう言って、歩き出す。私もその後に続いた。
一瞬ほむらちゃんが何か期待したような顔をしたように見えた。
けれどそれが何なのかわからずに、私は何も言えなかった。

突然、ほむらちゃんが立ち止まって振り向いた。
真剣な目。

ほむら「……嫌なとこ、見せちゃってごめんなさい」

まどか「へ!?う、ううん!?」

ほむら「でも私……その、大丈夫、だから」

まどか「……あ、う、うん」

ほむらちゃんが何を言いたいのか、私にはよく理解できなくて。
曖昧な返事。
それでもほむらちゃんは満足したように再び歩き出す。

90: 2011/06/05(日) 20:51:52.01 ID:pLffm+4o0
私もほむらちゃんの後に着いて行くけれど、何となく、ほむらちゃんが遠くのように思えた。
けれど、だからこそ私はもっとほむらちゃんに近付かなくっちゃいけないんだ。
そう思い、思い切って私はほむらちゃんに言った。

まどか「あのね、ほむらちゃん。次の日曜日って暇かな?」

ほむら「……次の、日曜日」

ほむらちゃんの歩くスピードが少し衰える。
私の言葉を、ゆっくりと繰り返すとほむらちゃんはさっきよりも早足になった。

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……暇よ」

まどか「本当!?」

ほむら「えぇ……」

遠慮がちにも聞こえる、ほむらちゃんの返事。
それでも私は嬉しくって、ついほむらちゃんの隣に並ぶと「ありがとう!」と
笑いかけた。ほむらちゃんは顔を逸らしながら、「私こそ」と小さく言った。

93: 2011/06/05(日) 20:58:05.35 ID:pLffm+4o0
翌日から、私の毎日は少し忙しくなった。
来るべき日曜日のために、家に帰るとパパに料理を教えてもらった。
デートといったらやっぱり手作りお弁当。絶対に自分で作ったものじゃなきゃ、
私は嫌だった。

知久「まさか彼氏でも出来たのかな?」

まどか「えへへ」

料理を教えて欲しいと言ったとき、パパの冗談めかした質問。
私は笑って誤魔化した。

気持ちが弾んでいた。たぶん、ほむらちゃんと一緒に出かけられることが嬉しかった。
けれど、その裏で何だか違う気もしていた。
だってこの気持ちは、小学校の時の遠足の前夜のようにただうきうきしているだけで。
何かが、足りない気がしていたのもまた事実。

それが例えば何なのか、と言われればちゃんと説明できないのだろうけど。
今まで私は彼氏なんていなかったし(ほむらちゃんは彼氏というには違うけど)
誰かを好きになったことなんてなかったから。

95: 2011/06/05(日) 21:05:38.68 ID:pLffm+4o0
頭を捻っていても仕方は無いとわかっているけれど。
だから私は、出来るだけ何も考えないように日曜日を待った。

それでも一度だけ、たぶん上条くんに恋してるさやかちゃんに聞いたことがある。
「好きってどんな感じだろうね?」と。
さやかちゃんは、わたわたと可愛く慌てながらも「その人のためなら何でも出来ちゃうとか、
そんな感じじゃないかな」と答えてくれた。
少女漫画でよくあるドキドキだってきっとそうなんだろうけど、本当に誰かに恋してるさやかちゃんの
言っていることが私には新鮮で、「そっか」と納得させた。
だからさやかちゃんみたいな子は優しいんだなと。

そんなふうにして一週間を過ごした私。
そして、日曜日。

ほむらちゃんとのデートの日だった。

96: 2011/06/05(日) 21:11:37.26 ID:pLffm+4o0
朝から早起きしてお弁当を完成させた私は、はたと気付いた。
金曜日の放課後、一緒に帰ったときに待ち合わせは家の近くの公園で。
そうは決めたけど。

まどか「……」

どこに行くか決めていなかった。
なんて今更。そうは思うけど、そういえば私はほむらちゃんの家に電話したこともないし、
今から電話したって遅いことはわかっているから、落ち着かない気分で待ち合わせの時間まで
時計と睨めっこした。

そして、待ち合わせの時間ちょうど15分前に私は家を出た。
身嗜みはもちろんきちんとして。
空は少し曇り模様だった。

――――― ――

待ち合わせの時間まで、後5分。
それなのに、ほむらちゃんはもうそこにいた。落ち着かなさげに辺りを見回している。

101: 2011/06/05(日) 21:23:15.57 ID:pLffm+4o0
私はほむらちゃんに駆け寄りながら手を振った。

まどか「ほむらちゃーん!」

ほむら「……まどか」

私に気付き、ほっとしたようにほむらちゃんが私に手を振り返してくれた。
これもよくあるデートの一こま。
そう思うと少し嬉しくなる。私たちちゃんと付き合ってるのかなと。

まどか「待ったかな?」

ほむら「……今来たところだから」

まどか「そっか……ふふっ」

ほむら「まどか?」

まどか「ううん、何でもない!」

突然笑い出した私に、ほむらちゃんが不思議そうに首を傾げる。
けれど仕方無い、ほむらちゃんの答え方が想像していたとおりだったのだから。

103: 2011/06/05(日) 22:04:57.90 ID:pLffm+4o0
ほむら「……」

まどか「大丈夫、変なことじゃないよ!」

不安そうなほむらちゃんの表情に慌ててそう言うと、ほむらちゃんは「そう」と
今度は嬉しそうな顔をしてくれた。

まどか「あ、それでねほむらちゃん」

ほむら「なに?」

まどか「凄く言いにくいんだけど……」

ほむら「……えぇ」

まどか「……どこに行くかとか、決まってなかったよね」

そっとほむらちゃんの様子を伺う。
ほむらちゃんの表情は、少し拍子抜けしたようなものだった。

105: 2011/06/05(日) 22:08:17.30 ID:pLffm+4o0
ほむら「そんなこと?」

まどか「え、うん……そんなことだけど」

頷くと、今度はほむらちゃんが小さく笑い出した。
肩が小刻みに震えている。控えめな笑い方。
魔法少女のほむらちゃんはかっこいいけど、ほんとは凄く可愛い子なんだな、と思う。

まどか「ほむらちゃん、どこか行きたいところある?」

ほむらちゃんの笑いに釣られ、私も笑ってしまう。
それでもそう息をする合間に訊ねると、ほむらちゃんが目許を拭って首を振った。
涙が出るほど笑うことでもないと思うのに……。

ほむら「私は……」

まどか「うん」

ほむら「……まどかと一緒なら、どこでもいいわ」

106: 2011/06/05(日) 22:20:21.90 ID:pLffm+4o0
相変わらず、ほむらちゃんはそういう言葉を私の顔を見て言ってくれない。
顔を背けられてしまう。真正面から言われたら、きっと私だってドキドキしちゃうはず……。

あれ?
でも、それじゃあまるで私はほむらちゃんといるとドキドキしないみたいだ。
けれど思い出してみると確かにそう。ほむらちゃんと一緒にいて楽しいとは思うけど、
さやかちゃんの言うように何かしたいとは思わないし、ドキドキもしない。

なのに私はほむらちゃんと恋人同士。
ほむらちゃんが「好き」と伝えてくれたから。だから私はほむらちゃんと付き合ってる。
けど私は――私だって、ほむらちゃんが好きなはずだ。

無理矢理自分を納得させ、私は笑った。

まどか「えぇー、それじゃあ私も困っちゃうよー」

ほむら「……それなら、あまり人の多いところ以外」

107: 2011/06/05(日) 22:26:35.50 ID:pLffm+4o0
まどか「へ?」

ほむら「……人が多かったら、きっとまどかも辛いだろうから」

私が?辛い?
どうして……。
時々ほむらちゃんは、私にはよくわからないことを言うときがあった。
その度に私はどうしてと訊ねようとして、結局訊ねられない。訊ねたらいけない気がして。

まどか「あ、うん……そう、だよね」

ほむら「でも今日は曇り空だから、出かける人は少ないかもしれないわね」

ほむらちゃんはそう言ってはにかむ。
空を見上げると、朝よりもずっと雲が厚かった。
もうすぐ雨が降ってしまうかも知れない。

まどか「……うーん、どこか買物って言っても私、今お金ないんだよねえ」

ほむら「デパートを見て回るだけとか」

まどか「そ、それは……それはだめ!」

ほむら「……えぇ?」

108: 2011/06/05(日) 22:30:01.74 ID:pLffm+4o0
大きな私の拒絶の声に、ほむらちゃんが少し引いたように私を見た。
あぁ、だめだつい。
けれどせっかくお弁当を作ってきたのにデパートに行って食べるなんてことは
嫌だった。

まどか「あ、そうだ!」

ほむら「どこかいいとこでもあるの?」

まどか「そういうわけじゃないんだけど、もうそろそろお腹、空かない?」

ほむら「……まだ11時を回ったところだけど」

まどか「う、うん。そうなんだけど……私、お弁当作ってきたの」

ほむら「お弁当?」

109: 2011/06/05(日) 22:32:36.15 ID:pLffm+4o0
まどか「だからね、出来れば外で食べたいなって。ほむらちゃんと二人で」

“ほむらちゃんと二人で”を敢えて強調して私は言った。
食べてる間くらいなら、天気は持ってくれるはず。

ほむら「……作ったって、まどかが作ったお弁当?」

まどか「へへっ、そうなんだけど……」

少し照れ臭くなって言うと、ほむらちゃんは想像以上に嬉しそうな顔をして。
嬉しそうな声で「えぇ」と頷いてくれた。

148: 2011/06/06(月) 19:31:15.32 ID:KGN4ePTm0
この公園には屋根のある場所がない。
だから私たちは、とりあえず雨が降ってきてもある程度は防げそうな大きな木の下にある
青いベンチに腰掛けた。

まどか「うわあ、傾いちゃってる」

お弁当を広げると、持ち方が斜めだったせいか少しぐちゃぐちゃになっていた。
ほむらちゃんの分と私の分。
どちらも私のお気に入りのお弁当箱。

ほむら「ちょっとくらい傾いてたって気にしないわ」

まどか「ほんと?」

149: 2011/06/06(月) 19:33:21.35 ID:KGN4ePTm0
ほむらちゃんが当たり前だという風に頷いて、私の差し出したお箸を手に取った。
そのまま、受取ったままの手で私の作ったお弁当に手を伸ばす。
少し、緊張した。

ほむら「……卵焼き?」

まどか「あ、うん。形、崩れちゃったんだけど……」

朝は上手く綺麗な形に出来たのに、傾いていたせいか卵焼きの形は崩れてしまっていた。
ほむらちゃんはそれを摘むと、口に入れた。
ゆっくりと咀嚼する。

まどか「……どう、かな?」

151: 2011/06/06(月) 19:37:53.03 ID:KGN4ePTm0
初めて私がちゃんと作れるようになったのは卵焼きだった。
他のものは、確かに自分ひとりで作ったけれど微妙だと思う。
だからせめて卵焼きだけでもおいしく作りたかった。

けれど、朝は他のもので忙しくて卵焼きを味見していなかったことを思い出して、
ほむらちゃんが何か言う前に私も卵焼きを口に入れた。
甘い味ではなくって、辛い味が口の中に広がって。

塩と砂糖を間違えてしまったんだ。
なんて典型的な。
それよりも、一番の自信作がこれなのだからきっと他のものだって――

まどか「ほむらちゃん……」

ほむらちゃんは何も言わなかった。
ただ、全てを飲み込むととびっきりの笑顔を見せてくれた。

152: 2011/06/06(月) 19:41:07.33 ID:KGN4ePTm0
美味しいでもなく、不味いでもなく、慰めの言葉でもフォローの言葉でもなんでもなく、
ただ笑ってくれた。それも嫌味や皮肉じゃなくって優しい笑顔。
吃驚した。けれど、それ以上に嬉しくなった。

まどか「あのね、私調味料、間違っちゃったみたいで……」

だから、本当のことも言ってしまえた。
ほむらちゃんはもう一口、残ったものを口に入れると、小さな声で言ってくれる。

ほむら「……まどかの作ってくれたものは何でも美味しいから」

まどか「……そう、かな?」

こくっと。
確かにほむらちゃんが頷いてくれる。

ほむら「好きな子が自分のためだけに作ってくれたんなら、それって凄く、嬉しい」

157: 2011/06/06(月) 20:42:05.80 ID:KGN4ePTm0
好きな子。
久しぶりに面と向かって「好き」なんてこと言われた気がする。
たぶん、ほむらちゃんに告白されて以来。

まどか「えへへ、そっか」

つい嬉しくなって、口許が緩んでしまう。
大丈夫、私もちゃんとほむらちゃんのことが好き。きっとそう。そうに違いない。

158: 2011/06/06(月) 20:46:12.65 ID:KGN4ePTm0
卵焼きがなくなると、あとは形の悪い味なんて保証できたものじゃないおかずばかりが
残ってしまった。
けれどほむらちゃんはそれを全部ちゃんと食べてくれた。
「美味しい」と言いながら全部ちゃんと。確かに、卵焼き以外は全部成功したらしく
まずまずの出来だったから私はほっとした。

静かな時間。
けれど、きっといつもよりも濃い時間。
そんな時間をほむらちゃんと過ごせることに、私は感謝した。

デートでお弁当の定番である「あーん」もやってみた。
ほむらちゃんは最初は恥ずかしそうに頑なに黙っていたけど、最後は口を開けて
私のつまんだタコさんウインナーを受取ってくれた。
けど、これはやるほうもやられるほうも恥ずかしいんだということを学んでしまった。

次はさすがに出来ないかなあ。

160: 2011/06/06(月) 20:51:08.10 ID:KGN4ePTm0
そんなことを考えていると、お弁当はあっという間に空になってしまった。
ぱちん、とほむらちゃんが丁寧に手を合わせる。

ほむら「ごちそうさま」

まどか「へへっ、おそまつさま」

全部食べてくれてありがとね。
心の中で付け足す。普段ほむらちゃんが食べているお弁当の方が数倍も美味しいはずなのに、
私なんかが作ったあまり美味しくないものをちゃんと食べてくれる。
空になったお弁当を見るのは嬉しいことなんだなあ、とパパが空の弁当箱を持って帰るたびに
嬉しそうな顔をしている理由がわかった気がした。

『その人のためなら何でも出来ちゃうとか、 そんな感じじゃないかな』

不意に、さやかちゃんの言葉を思い出した。
私って、もしかしたら思っている以上にほむらちゃんに愛されちゃってるのかも知れない。

162: 2011/06/06(月) 20:55:59.53 ID:KGN4ePTm0
まどか「雨、降らなくて良かったね」

ほむら「そうね」

まどか「日ごろの行いがいいせいかな?」

ほむら「……きっとそうよ」

まどか「えぇ!?否定されずに頷いてくれたのほむらちゃんが初めてだよ!」

ほむら「そう?……だって、ほんとのことだから」

お弁当を元のように包んでくれながら、ほむらちゃんが言う。
真剣な表情。どうやら本当にそう思ってくれているらしかった。
実際、そんなことはないと自分でもわかっているから何だかくすぐったい。

まどか「そんなに褒めなくてもいいのにー」

ほむら「……好きな子のことは何でもよく見えちゃうものなの」

まどか「あ、そ、そっか」

何だか今日のほむらちゃんは、いつもよりも饒舌で、それから少し積極的だと思った。

164: 2011/06/06(月) 21:00:18.73 ID:KGN4ePTm0
いつもはこんなふうに何度も「好きな子」とか「好き」とかちゃんと言ってくれないのに。
さすがの私も、少し恥ずかしくなってきてしまう。
逆にほむらちゃんは平気なようで、涼しい顔をしている。

まどか「……あ」

今からどうしよっか。
そう声をかけようとしたときだった。ちょうどお弁当を包み終え、鞄に入れなおしたその瞬間。
冷たい雫が、私の頭に一粒。

雨が降ってきた。
まるで狙ったように。

まどか「……雨」

ほむら「……降ってきちゃったわね」

165: 2011/06/06(月) 21:05:09.68 ID:KGN4ePTm0
言っているうちに、雨の勢いは増していく。
通り雨だといいけど。
そんなことを思い木の下に逃げ込むも、大きく広げられた葉も最早役に立たなくなった
らしく雨粒を私たちの上に降らせてくる。

まどか「うわあ、これじゃあ意味ないや……」

ほむら「もう少し待って止みそうになかったら……」

まどか「止みそうになかったら?」

ほむら「……家に、来ない?」

167: 2011/06/06(月) 21:07:20.94 ID:KGN4ePTm0
少し緊張したようなほむらちゃんの声。
私は何も考えずにこくりと頷いた。
たぶんここからだと私の家に近いのだろうけど、今日はパパもママも出かけているはずだった。
私が出かけるから、タツヤと三人で買物に行くと言っていた気がする。

まどか「ほむらちゃんさえいいんなら……」

ほむら「誰も、いないから」

まどか「お母さんやお父さんも?」

ほむら「……えぇ」

まどか「それじゃあお邪魔させてもらう!雨、止みそうに無いし……」

170: 2011/06/06(月) 21:13:59.17 ID:KGN4ePTm0
ざあざあと降る雨は、もう私たちをすっかりびしょびしょに濡らしてしまっていた。
冷たいし、これじゃあお互い風邪を引いてしまう。
ぽた、ぽたと雫が垂れていく。

まどか「……」

そろそろ行っちゃおうか。
そう声をかけようとして、ほむらちゃんのほうに顔を向けた。

まどか「……っ」

つい、息を呑んでしまった。
雨に濡れたほむらちゃんの横顔が、何だかとても綺麗に見えて。
女の子なのにどきどきしてしまう。

あ、あれ?
でもこれは当たり前なんだよね?

私はわけがわからなくなって、それから服が濡れている所為で透けて見えるほむらちゃんの白い肌にまた
声を漏らしそうになり慌てて目を逸らした。
目のやり場に困ってしまうというのはまさにこのことだ、なんて思った。

173: 2011/06/06(月) 21:23:55.36 ID:KGN4ePTm0
ほむら「……まどか」

まどか「へっ!?」

と、突然名前を呼ばれて私の声は裏返ってしまった。
妙に意識するとそうなってしまうらしい。

まどか「あ、ご、ごめん……どうかした?」

ほむら「……風邪、引いちゃうから」

まどか「そう、だよね」

ほむら「そろそろ行きましょう」

まどか「う、うん」

私の言いたかったことをほむらちゃんが言ってくれ、少しだけ弱まってくれた
雨の中、走り始めた。
思えば、私はほむらちゃんの家を知らなかった。だからほむらちゃんの少し後ろを
走るしかない。

180: 2011/06/06(月) 22:35:45.29 ID:FZuLcuZu0
雨のせいで、視界は最悪。
おまけに音も遮断されているようだった。不意に、不安になる。
聞こえるのはざあざあという雨だけで、周囲は暗い。

誰も、いないみたいに感じてしまう。

ついさっきまで隣にいた人が見えないと、
私は不安になってしまう性質なのかも知れない。
だから私は「ほむらちゃん」と、名前を呼んでみる。
返事は聞こえなかった。当たり前だ。私の声さえ届いているかわからないのに。

けれど。
手に、冷たい何かが触れてぐいっと手繰り寄せられた。
それがほむらちゃんの手だと気付くのに時間はかからなかった。

184: 2011/06/06(月) 22:48:30.43 ID:FZuLcuZu0
まどか「……」

ほむらちゃんの手は、私の手を温めてくれるほど温かくはなかった。
けれど、それでもベタなのかも知れないけど。その手は私の心を温めてくれるような
気がして、私はぎゅっとその手を握り返してみた。

雨の中、真っ暗な。
二人で手を繋いで走り抜ける。

何だかそれだけで、私は驚くくらいに不思議な気分になった。
今まで感じたことの無いような気持ち。
けれど、それが嫌だとは思わなかった。寧ろずっとずっと浸っていたいと思った。


185: 2011/06/06(月) 22:51:58.09 ID:FZuLcuZu0
ほむらちゃんの家は本当に誰もいないらしく、静かだった。
雨の音が遠くに聞こえる。
私は落ち着かない気分で、ほむらちゃんの家の固い椅子に座っていた。
濡れた身体が冷たかった。

ほむら「今、お風呂いれてきたから」

まどか「えっ、そんなことしなくてもいいのに」

ほむら「風邪、引いちゃう」

まどか「ほむらちゃんだって風邪引いちゃうよ」

ほむら「……はい、タオル」

私の言葉を無視して、ほむらちゃんは淡いピンク色の大きなタオルを渡してくれた。
甘い香りのするタオル。

186: 2011/06/06(月) 22:58:14.76 ID:FZuLcuZu0
ほむら「今もちゃんと拭いておいたほうがいいわ」

まどか「あ、うん……ほむらちゃんは」

ほむら「私は平気だから。それより何か飲む?」

まどか「……えっと」

ほむら「コーヒーしかないけど……」

まどか「じゃ、じゃあそれでいいや」

そういうと、ほむらちゃんは頷いて私に背を向けた。
タオルで身体から水分を拭き取りながら、私はほむらちゃんのほうをうまく
見ることが出来ずにきょろきょろ辺りを見回した。

187: 2011/06/06(月) 23:01:08.89 ID:FZuLcuZu0
ほむらちゃんの背中まで、変な感じに透けてしまっていたから。
長い髪が隠しているけれど、それがよけいに艶かしいような気がした。

どうしてか私は、いつもと立場が逆転しているようだった。
いつもよく話す私が、ここに来て何も話せなくなっている。
しかも急に。

たぶん、ほむらちゃんの濡れた姿を見たときから。
そういえば随分前にもこんなことがあった気がする。
確か、あれはさやかちゃんのとき。私は……一体どうしてしまったんだろう。

190: 2011/06/06(月) 23:05:20.49 ID:FZuLcuZu0

不思議な感じ。
もしかして、ヨクジョウしているのかな。
――ヨクジョウ、欲情。
つい最近、知ったばかりのその言葉。

私はほむらちゃんに欲情している。

そう思うと、今の私のこの感覚にも納得できた。
だけど。

「さやかちゃんにも」感じたことのある感覚。
ほむらちゃんだけじゃなくって、他の女の子にも。
私は、ほむらちゃんが好きだからこんなふうに思ってしまうわけじゃないのだろうか。

191: 2011/06/06(月) 23:10:16.32 ID:FZuLcuZu0
ほむら「……まどか」

はっと、俯かせていた顔を上げた。
ほむらちゃんが立っていた。

まどか「あ……ほむらちゃん」

ほむら「温かいコーヒー、たぶん少しでも身体が温まるわ」

まどか「う、うん、ありがと」

受取る。
その手が震えた。

238: 2011/06/07(火) 20:35:30.70 ID:IgyD+KgW0

急に、恥ずかしくなってくる。
私は一体何を考えているんだろう、と。
渡されたコーヒーをまだ飲んでもいないのに、身体の芯がびりびりと熱かった。

このままじゃ絶対、変なことを考えてしまいそうで。
私はほむらちゃんと頑なに目を合わせない。

まどか「……」

ほむら「……まどか?」

そんな私の様子を、ほむらちゃんは心配そうな顔をしてみていた。
「どうしたの」
そう問いかけられる前に、私はがたっと音を立てて立ち上がった。

まどか「あ、えっと……」

カップを持っていたままだったから、コーヒーが少し、零れた。
それがほむらちゃんの指にかかってしまう。

239: 2011/06/07(火) 20:43:45.72 ID:IgyD+KgW0
ほむら「熱っ……」

まどか「ご、ごめん!」

私はわたわたすることしかできずに、痛いはずのほむらちゃんのほうが随分と
落ち着いていた。
大丈夫、と私を安心させるように優しい声で言ってくれる。

突然、その声に泣き出しそうになる。

まどか「……でも」

ほむら「これくらいの火傷、よくあることだから」

まどか「……ごめん」

俯いたときだった。
廊下の奥のほうから、呑気な『お風呂が沸きました』という声が響いてきた。

ほむら「……ゆっくり温まってきて」

私は、ただ黙って頷いた。
今ほむらちゃんと一緒にいたら、おかしくなってしまいそうだった。

240: 2011/06/07(火) 20:46:46.90 ID:IgyD+KgW0
――――― ――
熱いシャワー。熱い……頭の中。
一人になって、ほっとした。
ほっとしたと同時に、力が抜けてしまう。

私はただ座り込んで、シャワーのお湯を流し続ける。

242: 2011/06/07(火) 20:51:20.86 ID:IgyD+KgW0
いよいよ、私はわからなくなっていた。
だって、私がほむらちゃんと付き合っているのは、ほむらちゃんが好きだから。
そうでしょ?
自分に問いかける。けれどもう、「うん」と頷ける自信はなかった。

思い返してみると、ほむらちゃんに対する気持ちは友達に対するそれと何ら
変わりなかった。これが恋だとすれば――私は友達全員に恋してることになってしまう。

私は、恋に恋してるだけだった。
きっと、そうなんだろう。けれどこのおかしな欲情は――

私は、女の子なら誰でもいいっていうことなの?
私だって、女の子で……。けど、こんな気持ちになるのは女の子だけだし……。
頭の中でそんな考えが低回してゆく。

243: 2011/06/07(火) 20:55:10.36 ID:IgyD+KgW0
自分が、わからなかった。
私が、違う誰かに思えて仕方がなかった。

彼氏が欲しい。
確かに私はそう思っているし、だからほむらちゃんと付き合った。
けれど、よくよく考えてみれば私だっておかしいとはわかっていた。

相手も私も同性。
それが世間では忌み嫌われていることも、なんとなく知っていて。
だから無意識に、ほむらちゃんのことは誰にも話さなかったのかも知れない。

男の子なら、誰でも良かった。
女の子なら、誰でも良かった。

好きだと伝えてくれる人が、欲しかった。

でも、だったら私はほむらちゃんに恋してるわけじゃない。
じゃあ何度も好きと伝えてくれたほむらちゃんはどうなる――?
私が、ほむらちゃんと遊び半分な気持ちで付き合っていたと知ったらほむらちゃんは――

247: 2011/06/07(火) 21:26:51.15 ID:IgyD+KgW0
まどか「……」

キュッと音をさせ、蛇口を閉める。
ぽたりぽたりと水滴が落ちていく。外の雨は、まだきついようだった。

私の気持ちはまだ、完全に固まってくれなかった。

―――――
 ―――――

249: 2011/06/07(火) 21:29:53.31 ID:IgyD+KgW0
お風呂から上がると、濡れた私の服の変わりにほむらちゃんのものらしい服が
置いてあった。
ほかに着るものがなかった私は、それに袖を通した。

少し大きかった。上なんてぶかぶかだ。
ほむらちゃんの匂いに包まれて、私はよけいに気分が悪くなってしまう。

ごめんなさい、と謝るのがいいのか。
それともこのまま、何も知らない振りをしてほむらちゃんと一緒にいるべきなのか。

そんなことを考えていると、「まどか」と声がした。
洗面所のドア越しに、ほむらちゃんがいる。
それを意識すると、私の身体の奥底が、また熱くなっていくのを感じた。

271: 2011/06/08(水) 06:57:56.21 ID:zkBhpPTl0
まどか「……うん」

ほむら「まどかの服、乾かしてるから。帰りには着れると思うわ」

まどか「……ありがと」

小さくお礼の言葉。
私はドアに背を向け、着ているほむらちゃんの服の袖をいじった。
洗面所の大きな鏡が私のそんな様子を映している。

272: 2011/06/08(水) 07:04:11.03 ID:zkBhpPTl0
鏡の中の自分と目を合わせないように、私は俯いた。

ほむら「まどか」

まどか「……うんっと」

ほむら「……そっちで待ってる」

中々出てこない私を待っていたらしかった、ほむらちゃんは。
けれど、それでも出ない私に、そう言うとほむらちゃんがさっきいた場所へ
戻っていくらしい足音が聞こえて。

ほむらちゃんが、行ってしまう。

なんて勝手なんだろう、私は自分が最低だとわかっているのに。
ドアを開けると、「ほむらちゃん」
名前を呼ぶ。

273: 2011/06/08(水) 07:17:45.54 ID:zkBhpPTl0
ほむら「……」

背中が震えたように見えた。
ほむらちゃんは振り向くと、私を見た。

ほむら「……少し大きかったわね」

まどか「あ、うん……けど、大丈夫」

呼び止めたことを、後悔はしていない。
けれど、今更何をどう話したら良いかわからなくて、私は目を逸らしてしまう。
ほむらちゃんも、着替えてしまっているようだった。落ち着いた色の、ワンピース。

274: 2011/06/08(水) 07:20:51.11 ID:zkBhpPTl0
ほむら「……」

まどか「……」

私もほむらちゃんも、もう何も言わなかった。言えなかった。
お互い、思っていることは違うんだと思う。
けれどもしかしたら、考えていることは一緒なのかも知れなかった。
ほむらちゃんの様子が、そう思わせた。私が自分のいいように解釈してしまっただけ
なのかも知れないけど。

いいよね、と。
半分、自棄気味になっていた。

275: 2011/06/08(水) 07:25:14.54 ID:zkBhpPTl0
何より、ほむらちゃんの見慣れない姿が。
私の心を、頭を、理性を大きく掻き乱していた。

まどか「……ほむらちゃん」

一度、抵抗したはずのほむらちゃんの唇に触れるのは思ったよりも簡単だった。
ほむらちゃんの腕が、待っていたように私の背中にまわされる。
それがますます私をヒートアップさせて、何度もキスし続ける。

ほむら「まどか……っ」

その間に時折挟まれる吐息混じりに私を呼ぶ声。
胸の奥がぎゅっと絞られる。

300: 2011/06/08(水) 19:30:55.45 ID:MQO1ylFQ0
――――― ――
私たちは――私は、ほむらちゃんに誘われるまま固いベッドの上にいた。
私の下でほむらちゃんが、小さな喘ぎ声。
頭の奥も身体の奥も熱いまま、ほむらちゃんを掻き乱していく。

お互い、きっと初めて。
慣れない手つきで、探り合う。求め合う。
私を動かしているのは好きという気持ちでも何でもなく、ただの欲望。

けれど、止まらなかった。

ほむら「……んあっ、まど、か……っ」

止めて、くれなかった。
ほむらちゃんの首筋に這わせた舌。すっかり敏感になってしまったほむらちゃんの甘い悲鳴。

303: 2011/06/08(水) 19:50:59.87 ID:MQO1ylFQ0
露わになっている胸に触れ、軽い愛撫。
もっともっと、もう頭が爆発しちゃうくらいに熱くなってしまいたかった。

ほむら「ふぁ、……っん」

薄く開いた唇に、自分のそれを重ねる。深い深いキス。
ほむらちゃんの舌と私の舌が絡み合う。

「好き」と。
ほむらちゃんは何度も言った、こうしている間、何度も。

その度に私はもっともっと、ほむらちゃんの身体を傷つけるほどに愛撫することしか
出来なかった。
ごめんね、と心の中で呟きながら。

305: 2011/06/08(水) 20:18:39.46 ID:MQO1ylFQ0




――ごめんね。





ほむらちゃんの一際高い嬌声が。
ぷつり。
私の中で、全てが終わってしまったような音がした。

307: 2011/06/08(水) 20:44:38.88 ID:MQO1ylFQ0

私はあの後、ほむらちゃんと目も合わせられずに家に帰った。
放心したようなほむらちゃんを一人置いて。

本当は、ほむらちゃんだって気付いていたのかもしれない。
だから、何も言わなかった。
私が何も言わなくても、ほむらちゃんは何も言わなかった。

お互い、黙ったまま。
そのまま、何もなかったように私たちは別れた。

309: 2011/06/08(水) 20:50:05.81 ID:MQO1ylFQ0
学校では普段どおりの生活を続けた。
一緒に帰ったし、ちゃんと話したし、手も繋いだ。
けれど私にとってのほむらちゃんはもう、「恋人」ではなく「友達」だった。

私にとっては、ただの友達。
ほむらちゃんにとっては、大切な恋人。

それでも私が「付き合う」という行為をやめなかったのは、きっとほむらちゃんに対する罪悪感。
それから好きだと伝えてくれたほむらちゃんに対する感謝だけなのだろうと思う。

312: 2011/06/08(水) 20:54:53.34 ID:MQO1ylFQ0
ごめんね。
私は何度も心の中で繰り返す。

あなたの想いをちゃんと受け止められなくてごめん。
自分の気持ちがあなたにないこともあなたの気持ちもわかっているのにこんな関係を
ずるずると続けて。私は、ずるい。

けれど、あなたに嫌われるかと思うと何も、言い出せない。

だからごめんねを。
何度も何度も。

314: 2011/06/08(水) 21:01:05.21 ID:MQO1ylFQ0
拭えない痛みと、拭えない傷と、拭えない罪。
どうしてあの時、付き合ってしまったのだろう。
どうして軽い気持ちで「うん」なんて。

「素敵な彼氏が欲しい」

違う。私は素敵な恋人が欲しかった。
彼氏でも彼女でも、「好き」だと言ってくれる人が欲しかった。
けれど、自分が愛していない人の「好き」はただの無力。

ほむら「……まどか」

隣を歩くほむらちゃんの冷たい手。
私はそれを握りなおすと、安心させるように笑いかける。
ごめんね、をまた繰り返して。

316: 2011/06/08(水) 21:03:12.33 ID:MQO1ylFQ0
とりあえずここで終わっとく
長い間に渡りぼそぼそと書いてしまいすいませんでした

このままぐだぐだ続けるのもよくないだろうからすぱっと切るよ
続きはまた機会があれば

318: 2011/06/08(水) 21:04:07.00
こんなの絶対おかしいよ

322: 2011/06/08(水) 21:10:57.33
乙!
だけどこんな結末あんまりだよ…

323: 2011/06/08(水) 21:12:01.13
久々に甘酸っぱいのが見れた
ありがとう乙

引用元: まどか「素敵な彼氏が欲しい!」