1: 2013/05/04(土) 20:05:28.51 ID:3401sQcg0

真、千早「お鍋を作る」の続きになります。



真「おっはようございまーす!」

千早「おはよう、真。久しぶりね」

真「あれ、今日は他に誰もいないの?小鳥さんもいないけど」

千早「先ほど慌てて外へ行ったわ。すぐに帰ってくるとは言ってたけど」

真「そうなんだ。相変わらず小鳥さんはそそっかしいなぁ」

千早「それよりも、真は今日はオフじゃなかったかしら?」

真「うん。でも今日来ないとまたずっと千早に会えないと思って」

千早「そうね。今日会うのもかれこれ一週間ぶりだもの」

真「やよいが復帰したら途端にみんな忙しくなるなんて。これもやよいパワーなのかな」

千早「ええ、高槻さんの可愛さのおかげね」

千早「たk」

真「千早、まだ朝だから大声で叫ぶのはやめとこう」



https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367665528

2: 2013/05/04(土) 20:11:00.77 ID:3401sQcg0

千早「それで……今日はどうしたのかしら?」

真「実は千早にお願いがあって」

千早「引き受けましょう」

真「ボクなにも言ってないんだけど」

千早「前にも言ったと思うけど、真のことなら分かるわ」

真「一方的な以心伝心だよ……」

千早「本当にそうかしら」


3: 2013/05/04(土) 20:16:15.37 ID:3401sQcg0

千早「それで……今日は何を作るのかしら?」

真「クッキーを作るよ。前回はやっぱり失敗してたみたいだしね」

千早「あの後レシピ本を読んだら、確かに間違いだらけだったわね」

真「でも、今のボクと千早なら、絶対に成功できると思うんだ」

千早「ええ……クッキーリベンジね」

真「それに」

真「今日は失敗できないからね」


4: 2013/05/04(土) 20:26:08.51 ID:3401sQcg0

真「材料はボクが用意したよ」

千早「小麦粉、卵、砂糖、牛乳に……これはオレンジジュースかしら?」

真「伊織から貰ったんだ。P○Mジュース」

千早「不思議ね。まったく伏字になっていない気がするわ」

真「今回のクッキーは、牛乳の半分をこのジュースにしてみるよ」

千早「少しくらいのアレンジなら大きな被害は出そうにないわね」

真「ジュースは甘いから、砂糖も少なめにするよ」

千早「ちなみにそれで作った事はあるのかしら?」

真「え、ないよ?」

千早「えー」


5: 2013/05/04(土) 20:33:07.67 ID:3401sQcg0

真「さっそく作ろう」

千早「バターを溶かすわね。今回はきちんと湯煎するわ」

真「ボクはその間に小麦粉をふるいにかけるよ」

千早「そういえば……最近、真のプロフィールに料理が趣味って書いてあったわね」

真「あれ、そうなの?」

千早「ええ」

真「えへへ、これでまた一歩女の子らしさが伝わるといいな」

千早「きっとプロデューサーが更新したのね」

真「ちなみに千早も趣味に料理って書かれてあったの?」

千早「見てないけど……」

真「じゃあ春香は?」

千早「載ってなかったけど……愛してるわ」


6: 2013/05/04(土) 20:39:43.08 ID:3401sQcg0

千早「気づいたんだけど……この砂糖は少し黄色い気がするわね。ザラメかしら?」

真「違うよ、和三盆っていう砂糖なんだ」

千早「和三盆?」

真「よく知らないけど、美味しい砂糖みたいだよ」

千早「今日の真はいつもよりも力が入ってるわね」

真「本気でおいしいものを作るからには、材料から揃えようと思って」

千早「ふふ……それでは大丈夫そうだからバターと混ぜるわね」

真「はい、卵黄と小麦粉」

千早「ありがとう。残った卵白はどうするのかしら?」

真「折角だし、メレンゲのクッキーも合わせて作るよ」


7: 2013/05/04(土) 20:48:05.08 ID:3401sQcg0

貴音「真、千早、おはようございます」

真「貴音さん、おはよう」

千早「おはようございます」

貴音「二人とも、少しよろしいでしょうか?」

千早「なんでしょうか?」

貴音「実は小麦粉とお塩を少し分けていただきたいと」

真「たくさん用意してありますので好きなだけ持っていってください!」

貴音「感謝致します」


8: 2013/05/04(土) 20:54:23.32 ID:3401sQcg0

真「貴音さんも何か作るの?」

貴音「はい、うどんを作ろうかと」

真「うどん?」

貴音「先日、千早に頼まれてあらゆるうどんを食しました」

貴音「真、美味でした」

貴音「そこで、響にも是非同じ感動を共有したいと思い、作ろうと決心したのです」

真「同じものを買ってくるんじゃダメなの?」

貴音「どのお店に行っても売り切れのままでした」

真「それって……」

貴音「はい、つい箸が進んでしまいました」


9: 2013/05/04(土) 21:02:19.70 ID:3401sQcg0

千早「真、このジュースはどれくらい入れればいいのかしら?」

真「うーん……とりあえずちょっとずつ入れてみようか」つるっどばー

真「あ」

千早「……」

真「……」

千早「い、入れすぎじゃないかしら……」

真「そ、そうかも……ここに牛乳も入れたらホットケーキ行きだね」

千早「とりあえず材料を継ぎ足しましょう」

真「そ、そうだね……とりあえず小麦粉を……あれ、ない?」

貴音「二人とも、どうかしましたか?」どばっさーーこねこね

真「」

千早「」


10: 2013/05/04(土) 21:09:27.04 ID:3401sQcg0

真「(もうあれは塩を足したあとだ……)」チラッ

千早「(ええ、あれを入れたら前回の二の舞ね……)」チラッ

真「(小麦粉はもう無い……どうしたらいいかな?)」チラッ

千早「(牛乳は……私が飲むわ)」チラッ

真「(いつも飲んでるの?)」チラッ

千早「(可能性がある限り、私は諦めないわ)」チラッ

真「(千早はすごいね……)」チラッ

貴音「千早と真はすでに心で会話ができる関係なのですね」

真「えっ?」


11: 2013/05/04(土) 21:14:21.74 ID:3401sQcg0

千早「バニラエッセンスを入れて混ぜましょう」

真「予想外の展開だけど……案外、こっちの方がおいしいかもしれないよね」しゃかしゃか

千早「そっちのメレンゲの方はどうかしら?」

真「少し時間かかりそうかもしれないけど大丈夫」しゃかしゃか

千早「疲れたら交代するわ」

真「うん、ありがとう」しゃかしゃか


12: 2013/05/04(土) 21:18:32.96 ID:3401sQcg0

真「千早、訊きたいことがあるんだけどいい?」しゃかしゃか

千早「なにかしら?」

真「千早はプロデューサーのこと、どう想う?」しゃかしゃか

千早「……善い人よ」

真「だよね。ごめん、変なこと訊いちゃって」しゃかしゃか

千早「真は……このクッキーをどうするのかしら?」

真「プロデューサーに渡すよ」しゃかしゃか

千早「そう……」

真「本当はボク一人で作ったほうが良かったかもしれないんだけど」しゃかしゃか

真「千早と一緒なら、緊張せずに作れると思ったんだ」しゃかしゃか

千早「そう……私で良ければいつでも手伝うわ」

真「ありがとう」しゃかしゃか


13: 2013/05/04(土) 21:24:56.67 ID:3401sQcg0

真「メレンゲができたからこれを袋に入れて絞っていくよ」

千早「こっちはもう少しよ」

真「形は簡単に丸くしてみたよ」

千早「これもプロデューサーにあげるのかしら?」

真「ううん。これはみんなの分かな、いつもお世話になってることで」

千早「オフの日に来て作ってくれたって知ると、きっと喜んでくれるわね」

真「そうなら嬉しいかn」

貴音「ひびきぃぃぃぃ」

千早真「!?」


14: 2013/05/04(土) 21:29:53.15 ID:3401sQcg0

貴音「ひびきっ!ひびきっ!」

真「」

千早「」

貴音「ひびきっ♪ひびきっ♪」

真「た、た、貴音さんが壊れた」

千早「なぜ我那覇さんの名前を叫びながらうどんを練ってるのかしら」

真「もしかしたら……千早の春香的なやつ?」

千早「私の春香的なやつ?」

真「うん、よく愛情を入れるとかで叫んでるよね。今日はやってないけど」

千早「なんてこと……忘れていたわ」

真「え、やっぱりやるの?」

千早「春香、愛してるわーー」

貴音「ひびきーーー」

真「貴音さんもあっちの人だったかぁ」


15: 2013/05/04(土) 21:34:19.82 ID:3401sQcg0

千早「は・る・か!」

貴音「ひ・び・き!」

千早「は・る・か♪」

貴音「ひ・び・き♪」

千早「は・る・か!ぃぇぃ」

貴音「ひ・び・き!ぃぇぃ」

千早「はるか!」

貴音「ひびき!」

千早「は・る・か!」

貴音「ひ・び・き!」

小鳥「ごめんなさいね、ちょっと静かにして」

真「ご、ごめんなさい」

千早「はるかぁ……」

貴音「ひびきぃ……」


17: 2013/05/04(土) 21:41:12.98 ID:3401sQcg0

千早「クッキーの生地ができたわ。あとは麺棒で生地を伸ばしていきましょう」

真「ぺったんこになるまでやるね」

千早「くっ……」

真「どうかした、千早?」

千早「……なんでもないわ」

真「陶芸やったからか、こういうの結構得意になっちゃったなぁ」

千早「真は飲み込みが早いわね」

真「よし、これで真ッ平らになったよ」

千早「くっ……」


18: 2013/05/04(土) 21:46:35.57 ID:3401sQcg0

真「あとは型に取るだけだね。あ、先にメレンゲクッキーは焼いておくね」

千早「型はあるのかしら?」

真「ボクが持って来てるから大丈夫だよ」

千早「ありがとう。星型とハート型の二つね」

真「千早はどっち使う?」

千早「半々で使っていきましょう」

真「多く作りすぎちゃったかな……結構な数作れそう」

千早「ええ……」


20: 2013/05/04(土) 21:51:37.72 ID:3401sQcg0

真「じゃあ焼いていくよ」

千早「ええ……」

真「ちょっと味はドキドキだけど、それ以外は順調だったね」

千早「ええ……」

真「千早?」

千早「真、一つだけ訊いてもいいかしら?」

真「うん」

千早「プロデューサーには……渡すだけ、なの?」

真「……ボクの気持ちも一緒に渡すつもりだよ」

千早「そう……」

真「ごめんね、千早」

真「春香がプロデューサーのことを好きなのは知ってるよ」

真「でも、ボクも春香には負けないくらい好きなんだ」

真「いくら千早の頼みでも、やめるなんてことはできないよ」

千早「……」


21: 2013/05/04(土) 21:57:32.20 ID:3401sQcg0

千早「さっき質問のこと……私はプロデューサーのことを善い人って言ったわ」

真「うん……違うの?」

千早「……もしかすると私はプロデューサーのことが嫌いなのかもしれない」

真「どうして?」

千早「……私の好きな人を傷つけてしまうかもしれないからよ」

真「プロデューサーが?」

千早「私はみんながプロデューサーのことを好きなのを知ってるわ。律子や音無さんも含めて」

真「そう……だね」


22: 2013/05/04(土) 22:02:09.27 ID:3401sQcg0

千早「初めは春香が一緒になれば良いと思ってた」

千早「春香が一番好きなプロデューサーと結ばれれば、それが一番良いことだって信じてた」

千早「でも、真の一生懸命な姿を見ていると……誰も選ばれない今が一番いいんじゃないかって思えてきたの」

真「千早……」

千早「大切な絆が一つのきっかけで簡単に壊れることを、私は知っているわ」

千早「私は春香が、真が……みんなが好きだから……今のままが一番いい」

真「千早……それは違うよ」


23: 2013/05/04(土) 22:07:28.16 ID:3401sQcg0

真「ボクたちの絆は、そう簡単に壊れたりなんてしないよ」

真「ボクだってみんなが好きだよ」

真「たとえば、プロデューサーがボク以外の人を選んでも、ボクはその相手を祝福したい思う」

真「一番好きな人が選んだ人なら……それって素敵な人に違いないから」

真「ボクだけじゃない。みんなもきっと同じように考えてくれてると思うよ」

真「もちろん、ボクが選ばれたらそれが一番なんだけどね」


24: 2013/05/04(土) 22:16:08.58 ID:3401sQcg0

貴音「千早、わたくしからも少しよろしいでしょうか」

貴音「悩むことは大切なことです。しかし、そこから目を背けてはなりません」

貴音「今の千早はただ恐れているだけでしかありません」

貴音「逃げること、留まることはわたくし達には許されておりません」

貴音「どんなことにも最初の一歩を踏み出さねば終わってしまうのです」

貴音「わたくし達は、あの方と約束した通り、トップアイドルを目指しているのでしょう?」

真「プロデューサーはどんなことがあっても、ずっとボクたちを大切にしてくれるよ」

真「だから、嫌いになるなんてことは言わないでほしいな」


25: 2013/05/04(土) 22:24:02.99 ID:3401sQcg0

真「千早、クッキーできたよ」

千早「ええ……」

真「はい、半分こ」

真「春香に渡して、また元気をもらってきて」

千早「春香に……」

真「千早の元気がないと安心できないよ。それに、千早の泣き虫を叱るのは春香の方が良いし」

千早「ありがとう」

真「じゃあ……ボクは渡してくるね」

千早「真……頑張って……」

真「ありがとう、千早の応援は何よりのお守りになるよ」

貴音「御武運を」

真「貴音さんもありがとう」


26: 2013/05/04(土) 22:30:18.75 ID:3401sQcg0

会議室


真「プロデューサー!」

P「おはよう、真。あれ、今日休みじゃなかったか?」

真「はい!でもプロデューサーにお話したいことがあったので来ました!」

P「悩み事か?」

真「そうですね、でもそうじゃないです」

P「んーどういうことだ?」

真「プロデューサー、これ、受け取ってください」

P「クッキー、か。ありがとう、手作りか?」

真「はい!」

P「前に比べたら随分上達したよ。焼き色も良いし、星型にもちゃんとなってる」

真「これからのオーディションにも勝ち星を取れるように、星型にしてみました」

P「験担ぎか。なかなかいいアイディアだな。うん、おいしいよ。隠し味のオレンジがいいな」

真「それと……もう一つあります」


真「プロデューサー、あなたのことが好きです」


27: 2013/05/04(土) 22:34:35.48 ID:3401sQcg0

春香「千早ちゃん、おはよっ!」

千早「おはよう……春香、久しぶりね」

春香「うん、一週間ぶりくらいだよね」

春香「えっとその、相談したいことがあるんだけどいいかな?」

千早「ええ……」

春香「元気なさそうだけど大丈夫?」

千早「そんなことは……ないわ。それで相談したいことって?」

春香「プロデューサーさんのことなんだけど」

春香「先週のことなんだけど、プロデューサーさんに……えと、好きって告白されちゃった」

千早「っ!」


28: 2013/05/04(土) 22:40:36.65 ID:3401sQcg0

春香「すごく嬉しかった……でも、返事をする前に千早ちゃんに相談したかったんだ」

千早「まだ……返事をしていないの?」

春香「うん……」

千早「私は……私は……春香が好きよ」

千早「だから……春香が幸せになるのなら、応援するわ」

春香「ありがとう、千早ちゃん」

春香「最初は、すごく嬉しかったんだ」

春香「でも、考えてるうちに私なんかがプロデューサーさんと付き合うのっていいのかなって思っちゃって……」

千早「春香は誰よりも輝いているもの。『私なんか』なんて言葉は相応しくないわ」

千早「プロデューサーなら、春香をきっと大切に、幸せにしてくれると思うわ」


29: 2013/05/04(土) 22:44:50.06 ID:3401sQcg0

千早「プロデューサーは約束を守ってくれるから……春香を幸せにするという約束も必ず守ってくれるわよ」

春香「約束……」

春香「みんなは……私のこと、嫌いになっちゃうかな」

千早「プロデューサーが春香を選んだのなら、納得してくれるはずよ」

春香「……」

千早「真や四条さんも保証してくれてるわ」

春香「真と貴音さんも?」

千早「ええ。私も春香と同じ質問をしたから」

千早「だから、自信を持って、春香」


30: 2013/05/04(土) 22:48:49.55 ID:3401sQcg0

千早「あと……これ、今日、真と一緒に作ったの」

春香「クッキー……千早ちゃん、とっても上手になったね」

千早「いろいろ勉強した成果かしら」

春香「きちんと星型になってるね。前はちょっぴり大きかったけど」

春香「隠し味でオレンジが入ってるね」

春香「ありがとう……えへへ、おいしいよ、千早ちゃん」


31: 2013/05/04(土) 22:55:01.75 ID:3401sQcg0

P「……ごめん」

P「真が魅力的じゃないとか、そういうんじゃないんだ。ただ……」

真「春香、ですよね?」

P「……ああ」

真「いつから好きになってたんですか?」

P「気づいたのは……先週くらいかな」

真「先週かぁ……一週間遅かったですね」

P「思い切って告白してみた。まあ春香からはまだ返事は貰えてないんだけどな」

P「でも……ごめん、真の気持ちには応えられない」

真「いえ、ありがとうございます。きちんとふってくれて」

真「もしかすると誤魔化されるんじゃないかって冷や冷やしてました」

P「……できないよ。俺はその真剣なところが好きだからな」


32: 2013/05/04(土) 22:59:28.93 ID:3401sQcg0

真「プロデューサーは酷いです。ふった直後に好きだなんて」

P「……プロデューサーだからな」

真「その、お願いがあります」

P「なんだ?」

真「もし春香と付き合うのなら、絶対に幸せにしてください。そうでないと……千早が悲しみます」

P「ああ、もちろんだ」

真「あと、ボクとの約束も……ちゃんと叶えてくれますよね?」

P「真をトップアイドルにしない限りは死ねない。約束は必ず守るよ」

真「ありがとうございます。これからもボクのプロデュース、お願いしますね!」


33: 2013/05/04(土) 23:03:17.98 ID:3401sQcg0

真「千早」

千早「真……」

真「うん……プロデューサーに、ふられちゃった」

千早「そう……」

真「折角応援してくれたけど、ごめんね」

千早「真は……頑張ったわ」

真「ううん……ダメだよ。本気で行けなかったんだから」

真「どうしてかな。どうしてこっちのクッキーを渡さなかったんだろう」

真「一番好きな人に渡すのならハートの方なのに……どうして渡せなかったんだろう」

真「大切なときに怖がっちゃうなんて、さっき千早のことを注意したばかりなのに」


34: 2013/05/04(土) 23:08:59.57 ID:3401sQcg0

真「ボクは……ボクは……」

千早「真……これを受け取ってもらえるかしら」

真「それって春香に渡す……」

千早「春香にはもう一つの方を渡したわ……どうしてかはわからなかったわ」

千早「でも、これは真に渡したかったんだと思うの」

千早「だから……私のハートを受け取ってもらえるかしら?」

真「本当にもらっていいの?」

千早「ええ、春香じゃなく、真に受け取って欲しいの」

真「うん……ありがとう、喜んで……もらうよ」

真「少しだけ……泣いても大丈夫かな?」

千早「ええ、ここに……そぱにいるから、好きなだけ泣いて」


35: 2013/05/04(土) 23:12:24.99 ID:3401sQcg0

春香「プロデューサーさん」

P「春香……か」

春香「この前の返事をしたいと思います」

P「場所を変えようか。プライベートな話だからな」

春香「いえ、ここでいいです」

小鳥「律子さん、プライベートな話ってなんでしょうね」

律子「小鳥さん、聞き耳を立てるなんて失礼ですよ」

小鳥「でも、目の前でこんなこと言われたら気になりませんか?」

律子「ニヤニヤしながら言わないでください」

小鳥「律子さんも興味はありますよね?」

律子「ノーコメントで」

P「二人とも、黙ってください」

小鳥「ぴょぉ……」

律子「はぃ……」

真「……」

千早「……」


36: 2013/05/04(土) 23:15:03.22 ID:3401sQcg0

春香「私、天海春香は、先週プロデューサーさんから付き合って欲しいと言われました」

律子「!!」

小鳥「ぴよっ!!」

春香「すごく嬉しかったです」

春香「プロデューサーさんが私のことをとっても想ってくれてると知って」

春香「だから……」

春香「だから……」

春香「…………」


春香「ごめんなさい、私はプロデューサーさんとはお付き合いできません」


37: 2013/05/04(土) 23:18:33.82 ID:3401sQcg0

真「春香、どうして!春香はプロデューサーのこと好きじゃないの!」

春香「さっき千早ちゃんと話して……だから思ったのかな」

千早「私と……?」

春香「プロデューサーさんは、私達との約束を覚えてますか?」

P「あ……ああ。みんなをトップアイドルにする。それが約束だ」

春香「まだ誰もトップアイドルになれていないですよね。だから、独り占めは……できません」

P「春香、それが答えなのか?」

春香「はい……ごめんなさい」

春香「私じゃなくてもいいんです、千早ちゃんでも真でも、律子さんでも小鳥さんでも、誰でもいいんです」

春香「私達がトップアイドルになれたときに、プロデューサーさんが一番好きな人を、選んでほしいんです」


38: 2013/05/04(土) 23:21:17.03 ID:3401sQcg0

P「そうだった……な」

P「まだ春香たちの夢を叶えてもいないのにな」

P「みんなとの約束を、少しだけど軽く考えていたのかもしれない」

P「まだまだ考えが甘いな……アイドルをフォローする立場なのにな」

春香「そこが、プロデューサーさんのいいところですよ!」

P「嬉しいやら悲しいやら、だな……」

P「春香、みんながトップアイドルになったときに誰かを選ぶって話、約束してもいいか?」

春香「はい!」


39: 2013/05/04(土) 23:24:28.99 ID:3401sQcg0

定時


P「はぁ……」

律子「プロデューサー、今日はもう帰っていいですよ」

P「え?」

律子「仕事できないでしょう?」

P「はぁ……わかる?」

律子「真をふって、春香にふられたんですよね、今日」

P「あはははは……真のことも知ってたか」

律子「はい、小鳥さんから聞きました」

小鳥「私は真ちゃんからクッキーをもらったときに直接聞きました」

律子「今日早く帰ったくらいで何かあるわけではないですから、さっさと帰ってください」


40: 2013/05/04(土) 23:27:05.64 ID:3401sQcg0

P「はぁ……律子にも嫌われた?」

律子「ため息が鬱陶しいんですよ。あれからずっとため息しかしてないじゃないですか」

P「すまん……今日はもうなんかやっぱりダメだ」

小鳥「プロデューサーさん、雪歩ちゃんには気をつけてくださいね」

小鳥「真ちゃんをふったんですから、埋められる覚悟くらいはしておかないと」

P「雪歩には秘密でお願いします……覚悟はしていますけど」

P「今日はお言葉に甘えてお先に失礼します」

律子「お疲れ様でした」

小鳥「お疲れ様でした~」


41: 2013/05/04(土) 23:30:07.97 ID:3401sQcg0

小鳥「意外でしたね」

律子「なにがです?」

小鳥「春香ちゃんがプロデューサーさんをふるなんて、びっくりしました」

律子「そうですね……春香らしい理由でしたけど」

小鳥「これで律子さんにもチャンスはできたんじゃないですか?」

律子「ど、どういう意味ですか?」

小鳥「みんながトップアイドルになるってことは、まだまだ先のことです」

小鳥「その間にアピールすれば……ぐっ!」


42: 2013/05/04(土) 23:33:10.71 ID:3401sQcg0

律子「そういう小鳥さんはどうなんですか?」

小鳥「私は春香ちゃんの次に立候補します」

律子「なぜ春香の次に?」

小鳥「最初に春香ちゃんが選ばれたのなら、春香ちゃんが最初に行くべきかなと」

小鳥「それに、私は益々春香ちゃんことが好きになりましたし」

律子「あの時の春香は、本当に引き寄せられるものがありましたね」

小鳥「そうですね……ふられたとは言え、少しプロデューサーさんが羨ましかったですね」

律子「じゃあ私も春香の次に立候補ということで」

小鳥「えー」


43: 2013/05/04(土) 23:35:34.96 ID:3401sQcg0

真「ねえ春香」

春香「ん?」

真「あれで良かったの?」

春香「うん……きっと間違ってないと思う……」

春香「でも、ちょっぴり後悔してるかも、えへへ」

真「春香は強いね……ボクだったら、きっとすぐにOK出したよ」

春香「真、ごめんね。真もプロデューサーさんに……」

真「ううん。プロデューサーが春香のことが一番好きって言ったから、ボクも引き下がれたんだ」

真「その春香が、ボクたちの約束を一番に考えてくれたんだから……」

真「ありがとう、春香」


44: 2013/05/04(土) 23:37:56.80 ID:3401sQcg0

春香「千早ちゃんのおかげだよ。直前までは受けるつもりだったもん」

千早「私じゃないわ。あれだけの決意は、春香がしたものよ」

春香「ううん。千早ちゃんの言葉と、このクッキーが勇気をくれたんだ」

千早「そう……春香の役に立てて嬉しいわ」

春香「あ、そういえば、オレンジの隠し味がもう少し利いたらもっと美味しくなるかも」

真「えっ?」

春香「ふぇ?」


45: 2013/05/04(土) 23:41:33.76 ID:3401sQcg0

千早「隠し味にしたつもりはないんだけど……」

真「うん……結構入れたよ。オレンジジュース」

春香「で、でもちょっと感じただけ……」

千早「一口もらってもいいかしら……」

春香「うん」

千早「……真」

真「どう?」

千早「特訓よ」

真「失敗してたんだ……」

春香「味見しないと……」


46: 2013/05/04(土) 23:46:04.20 ID:3401sQcg0

真「ところで、春香もクッキー作ってきてるよね?」

春香「え、えっ?」

真「久しぶりに春香からお菓子の香りがしたから」

春香「うっ……うん。実は久しぶりに作ったんだ……渡せなかったけど」

真「渡してきたらどう?まだ間に合うよ」

春香「でも、私プロデューサーさんに……」

真「千早はどう思う?」

千早「……良い考えね。そうするべきだわ」

真「春香はプロデューサーに好きって言ったの?」

春香「言ってない……かも」

真「ずるいよね。春香だって伝えるべきだよ」

春香「いいの……かな?」

千早「春香!」

真「頑張って!」

春香「私、行ってくる……!」

春香「千早ちゃん、あとでお家に行くね!」


47: 2013/05/04(土) 23:48:20.91 ID:3401sQcg0

千早「真……どうして?」

真「ボクも、千早みたいに一押しをしたくなった……っていうのはダメかな?」

千早「ううん……そんなことないわ」

真「はぁ……でも春香に全部持っていかれちゃった気がするなぁ」

千早「春香のああいうところが素敵だから」

真「でも、トップアイドルになってからってことは、ボクにもまだチャンスはあるってことだよね」

千早「そうね、私達全員にあるってことになるわね」

真「今度は……負けない」

千早「応援はするけど……春香は強いわ。真に春香のようなことができるかしら?」

真「ボクはボクらしくいくよ。春香の真似じゃダメだから」


48: 2013/05/04(土) 23:50:43.94 ID:3401sQcg0

千早「ところで……真の家はこっちだったかしら?」

真「今日は千早の家に泊まるよ?」

千早「そう、買い物をしてから帰りましょうか」

真「そうだね……っと。これ渡すの忘れてた」

千早「クッキー?」

真「千早からもらったからね。お返しだよ」

千早「ふふ……ありがとう」

千早「真」

真「なに?」

千早「好きよ」

真「ボクも好きだよ、千早」

千早「叫んでもいいかしら?」

真「……たまになら、いいよ」


49: 2013/05/04(土) 23:54:30.59 ID:3401sQcg0

P「はぁ……今日はいろいろと疲れた」

P「明日は気持ちを切り替えないとな……」

P「しかし……やっぱりふられるのは堪えるなぁ」

春香「プロデューサーーさーん!」

P「は、春香……先に帰ったんじゃないのか?」

春香「はい、でもプロデューサーさんに渡すものがあるのを忘れてました」

P「渡すもの?」

春香「真と一緒ですけど、クッキーです!」

P「はは……ありがとう」

春香「さっきは……ごめんなさい」

P「いいんだ。俺もちょっと気が早かったかなと思ってるんだ」

春香「違うんです、まだ、私の気持ちは伝えてませんでした」

春香「プロデューサーさんの気持ちだけ知ってるのはフェアじゃありませんから」

春香「その……ごめんなさい」ちゅっ

春香「私も、プロデューサーさんのことが一番大好きです」



おわり


50: 2013/05/04(土) 23:55:02.18
乙です

51: 2013/05/04(土) 23:57:07.93
いつの間にかすっかりいい話になってた
乙です

引用元: 千早・真「やっぱりお菓子を作る」