1: 2011/09/08(木) 22:53:33.81 ID:3HGltRPP0
これは、巴マミがまどかたちと会う以前のこと。
QBとマミ、二人だけが知っている小さな思い出のお話。



放課後の帰り道

マミ「今日のシフォンはよくできたわね」

女生徒A「マミのおかげだよ。
やっぱりまだ一人じゃうまく焼けないや」

マミ「ふふふ。少しずつよ」

女生徒A「ねえ、マミ。
私のお嫁さんになってー!」

マミ「うーん、同性では難しいわねぇ」

女生徒A「じゃ、法律を変えるところからとりかかるわ!」

マミ「頼もしいわね、A。
あっ……!」

3: 2011/09/08(木) 22:56:09.41 ID:3HGltRPP0
女生徒A「どうしたの?」

マミ「ごめんなさい、学校に忘れ物しちゃった。
先に帰ってて」

女生徒A「う、うん。
気をつけてね。また明日ねー」

マミ「Aもね。またー」

タタタ

QB「気がついていたかい」

マミ「ええ、魔女の気配。
この路地裏一体が結界に覆われてる!」

QB「あそこに猫を抱いた女の子がいるよ」

マミ「ええい、女の子から離れなさい!」

5: 2011/09/08(木) 22:58:02.27 ID:3HGltRPP0
バァン

マミ「結界が晴れる……」

QB「まだ弱い魔女だったみたいだ。
もう逃げたよ」

マミ「女の子も無事みたい。
気絶していてくれて助かったわ。
変身を見られたらやっかいなことになるものね。
あら、猫は?」

QB「どこにいったんだろうね。
無事なのは確認したし、
とりあえず、この子を運ぼうか」

女の子「スゥスゥ」

マミ「そうね」


そのとき物陰に佇む気配が一つ

猫「ミョーン」

青年「おいで、シ工口。
あの子、不思議な子だったね。
また、会えるといいな」

6: 2011/09/08(木) 23:02:00.37 ID:3HGltRPP0
ある日の放課後

女生徒A「でさ、マミってばラブレターに気づかずに靴履いちゃったのよ」

女生徒B「あっはっは。マミっぽーい。
でも、私達のマミに手を出そう男子なんかそんなもんでいいのよ」

女生徒C「自分の口で告白できない男子なんかに渡せないもんね」

マミ「もう、私はそんなに大した人じゃないわよ」

ABC『えー!』

マミ「えー、ってもう。
あっ……!」

7: 2011/09/08(木) 23:07:11.91 ID:3HGltRPP0
女生徒A「その顔、また忘れ物したのね。
行ってらっしゃい。気をつけてね」

マミ「ごめんなさい、最近物忘れが酷くて」

女生徒C「大丈夫だよっ。
マミがボケても私達が養ってあげる!」

マミ「ええ、そのときはお願いするわ。
みんなは先に行ってて。
また明日ね!」

ABC『ばいばーい』

タタタタ

QB「この間の魔女だろう。
少しは力をつけてきたようだ。
先の公園にいるよ」

マミ「ええ……ここね!
男の人が!」

9: 2011/09/08(木) 23:12:01.40 ID:3HGltRPP0
青年「なんだ、ここは!
こいつらはなんなんだっ!」

魔女「Ich bin geehrt und lebend.
Ist dies ein Verbrechen?」

マミ「消えなさい!!」

ダァンダンダァン

魔女「Ich hange von Einsamkeit ab.
Dies ist eine Person」

青年「キ、君は……」

マミ「あなたは隠れて!」

ダンダンダン!

10: 2011/09/08(木) 23:17:18.29 ID:3HGltRPP0
魔女「Das Gefuhl wurde verfeinert
Die Einsamkeit wird nicht verfeinert」

マミ「これで、終わりよ。ええいい!」

ダァーーン!

魔女「Ich verschwinde allein……」

青年「すごい……。
あんな大きな銃が現れて……」

マミ「ふう。大丈夫でしたか?」

青年「は、はい。
ありがとうございました。
あれ……景色が、戻っていく」

QB≪マミ、不思議だ。
この男は魔女の口付けもなく、自分で結界に入ったようだ≫

マミ≪そうね。
どうしてかしら≫

11: 2011/09/08(木) 23:22:32.68 ID:3HGltRPP0
青年「君は、不思議な力を持っているようだね」

マミ「ええ、ちょっと説明しづらいのですが……」

青年「構わないよ。
ただ、なんとなくはわかるよ。
そこの白い生き物と協力してこの街を守ってる、
それでいいだろう?」

QB「君は僕が見えるのかい?」

青年「あ、ああ。
見えるのはおかしいのかな」

QB≪マミ、これはイレギュラーだ。
申し訳ないけれど、彼と話がしたい。
ここは少し場所が悪いな。移ろう≫

12: 2011/09/08(木) 23:23:15.52 ID:3HGltRPP0

マミ「あの、よろしければ少しお話伺わせていただけるかしら」

青年「構わないよ。
じゃあ、そうだね。いい場所があるよ」

13: 2011/09/08(木) 23:25:56.47 ID:3HGltRPP0
パティスリー「le ambra」閉店中
店内

青年「ここは兄の店なんだ」

マミ「あ、私もよく利用させていただいていました。
でも、海外修行で今お休み中なんですってね」

青年「うん。その間僕が好きにさせてもらってるってわけ」

QB「さっそくだけど、なにがあったか聞かせてもらえるかい?」

青年「まず自己紹介するよ。
僕は香坂一矢(こうさかいっし)。
生まれたときから病気がちでね、
この間やっと医者がもう外出していいよって
言ってくれて、散歩していたのさ」

15: 2011/09/08(木) 23:29:59.42 ID:3HGltRPP0
QB「魔女の結界にはどうやって入ったんだい?」

一矢「君が助けてくれた猫がいただろう。
あのときはありがとう」

マミ「あのときの猫。
あなた……香坂さんの猫だったのね」

一矢「一矢でいいよ。
シ工口、おいで」

シ工口「ニャーン」

一矢「この子を探して散歩していたら胸騒ぎがしてね。
その方向にいったらあんな場所に出くわしたんだ」

QB「……さっきの話だけれど、
病気はもう大丈夫なのかい?」

一矢「勿論。
医者がもう気にすることは無い、って言ったんだ」

14: 2011/09/08(木) 23:29:34.71
オリキャラか?

支援

17: 2011/09/08(木) 23:33:12.90 ID:3HGltRPP0
>>14
香坂一矢はオリジナルです
支援サンクス


マミ「こうさ……。一矢さん。
あれはとっても危ないんです。
もし、また見つけたら近づかないで私に連絡してください。
私がいけなくても人をできるだけ遠ざけていただけると助かります」

一矢「正直なところ、あんまり女の子を危険に晒すようなことしたくないけど、
君はそれが使命のようだからね。
素直にそうするよ」

マミ「ええ、お願いするわ。
ところで、良い匂いするわね」

一矢「うん。
病院と自宅に篭って育ってきたからさ、
その間兄の影響で読んだ御菓子作りを試してみたくて。
初めてだから全然うまくできないけど」

マミ「私、御菓子作りって好きなんです。
調理部の部長をするぐらい。
いいな、こんなに広いところで御菓子作れて」

18: 2011/09/08(木) 23:37:29.49 ID:3HGltRPP0
一矢「よかったらここで部活してもいいよ。
兄にはどう使ってもいいって言われてるから」

マミ「で、でも……」

一矢「命を助けてくれたお礼だよ。
それとも、君の秘密を言いふらすって脅さないとだめかい?」

マミ「も、もう!
ええ、確かに好意に甘えさせてもらうわ。
魔女が現れたらここに連絡してくださいね」

一矢「僕の番号はこれ、ね」

マミ「近いうちに部員達と顔だしますね。
よろしくお願いいたします」

19: 2011/09/08(木) 23:38:57.86 ID:3HGltRPP0
ある日の早朝
マミホーム


pipipipipipipi

マミ「一矢さんから電話だわ。
もしもし?」

一矢「マミさん、
こんな朝早く申し訳ないけれど、
見滝原図書館付近で魔女を感じたんだ。
今、大丈夫かい?」

マミ「ええ、勿論。
それが私の仕事ですからっ」

20: 2011/09/08(木) 23:43:20.97 ID:3HGltRPP0
見滝原図書館



マミ「終わりよ!」

魔女「Lassen Sie ihn nicht in Ruhe……」

スタッ

マミ「さ、急いで学校にいかなきゃ」

一矢「マミさん、お疲れ様。
はい、紅茶を用意したよ」

マミ「ありがとう一矢さん。
あの……私、年下ですし、呼び捨てで結構ですよ」

一矢「そうかい?
遠慮なくそうさせてもらうね。
……おっと……」フラッ

マミ「危ないっ」

パッ

21: 2011/09/08(木) 23:45:59.48 ID:3HGltRPP0
一矢「あぁ……。
ありがとう」

マミ「一矢さん大丈夫ですか?」

一矢「いやなに、運動不足さ。
小さい頃から寝たきりだったしね、
朝の低血圧さ」

マミ「無理しないでくださいね。
こんな早朝から」

一矢「うん。でも、だからこそなんだ」

マミ「え?」

22: 2011/09/08(木) 23:47:10.96 ID:3HGltRPP0
一矢「君が守るこの見滝原の色々な姿を見たかったんだ。
深夜の静かな街並み。
空が白んでいく朝。
賑やかな昼の雑踏。
今はどんなに時間があっても足りない。
もっともっとここで僕は過ごしたいんだ」

マミ「確かに、ここは素敵な街。
皆が笑っているのをみると私もすごく嬉しくなります。
その中に一矢さんも入っているんですよ?
だから、病気が治っていても体力が戻るまでは少しずつ、ね」

一矢「そうだね。
気をつけるよ。
ごめん、急がないと遅刻しちゃうね。
マミ、またお店に寄ってね。
『パティスリー:le ambra』改め
『見滝原魔法少女事務所』でね」

マミ「ふふふ」

一矢「ははは」

23: 2011/09/08(木) 23:49:24.62 ID:3HGltRPP0
数週間後
日曜日/パティスリー「le ambra」閉店中
店内

一矢「どれ、おいしくできたかな」

マミ「いい香り!
一矢さん上手になりましたね!
才能あると思いますよ。
この間うかがったときも、部員達みんな褒めてました。
お兄さんと一緒にお仕事したらどうかしら」

一矢「才能はともかく、先生が素晴らしいからね。
仕事ができるまでになれたらいいな。
そうなれるよう、祈っておいてねマミ」

マミ「ええ。
盛り付け済ませて……今お茶入れますね」

24: 2011/09/08(木) 23:50:26.53 ID:3HGltRPP0
一矢「うん、ありがとうマミ。
なにか映画でも見ながらつまもうか。
兄のコレクションでDVDがなにかありそうだ。
QB君はなにかこだわりあるかい?」

QB「僕はいいよ。
マミが楽しめるのならばそれでいい」

一矢「この『エンジェルペイン』がよさそうだ。
イタリア映画なのに英語のタイトル?」

マミ「どんな内容なの?」

一矢「天使の女の子が魔法と武器を使って、
悪を懲らしめる話。
マミみたいじゃないか」

マミ「ふふふ。天使なんかじゃないわ。
ただの女の子よ。
一矢さん、準備できたわ。再生して」

26: 2011/09/08(木) 23:53:57.22 ID:3HGltRPP0
一矢「あ、これ字幕しかないや」

マミ「字幕でも構わないわ。
もう、食べたら帰らなきゃいけないし、
流しておきましょう」

一矢「そうだね……。
いただきます」

マミ「おいしいわ!
本当においしい!」

一矢「そう言って貰えると頑張った甲斐があるよ。
普段君には魔女退治で大変な目にあってもらっているから、
少しでも見合った喜びを、と思っていたから嬉しいよ」

QB「一矢、君もよくやっていると思う。
君の探知能力のおかげで、魔女退治が進む」

一矢「マミが好きなこの街を守る手伝いができるんだ。
僕のしているのは苦労じゃないさ。
できれば僕も魔法使いになりたいのだけどね」

QB「彼の能力は魔法少女とは別のものだったみたいだ。
僕も彼をマミの手伝いにしてあげたかったのだけど、残念だよ。
願いも叶えなきゃいけないし」

27: 2011/09/08(木) 23:55:44.91 ID:3HGltRPP0
マミ「いいの!
そんなの全然!
私、一緒に戦ってくれてるって思うだけで、
とても強くなれるの。
一矢さんが魔法使いになれるとして、なにをお願いする?」

一矢「そ、そうだねえ……」

マミ「どしたの?」

一矢「ちょっと恥ずかしい願い事でね。
でも、それはこの間叶ってしまったからなぁ」

マミ「恥ずかしいことってどんなことかしら」

一矢「これ以上はごめん。
でも、いつか話すよ。
ぼ、僕も魔法使いになりたかったなぁ!
『ファイヤー!』とか叫んでさ、物語の主人公みたいに。
ああ、勿論そんな生易しい戦いじゃないのは分かってるよ。
マミにはなにか技の名前みたいなのあるの?
この間の大砲撃つのみたいなの」

28: 2011/09/08(木) 23:57:46.89 ID:3HGltRPP0
マミ「考えたこともなかったわ。
でも、叫ぶのも恥ずかしいし……」

一矢「じゃあ、叫ばなくていいからなにか考えてあげるよ。
マミバーニング! とかマミスパーク! とか」

マミ「もう! 一矢さん!」

一矢「冗談だよ。
こう、とどめ! みたいな掛け声っぽい……」


DVD<「ティロ・フィナーレ!(字幕:とどめよ!)」


『!』

29: 2011/09/08(木) 23:58:32.13 ID:3HGltRPP0
一矢マミ『ティロ・フィナーレ!』

一矢「どういう意味なんだろう。
ちょっとPCで調べてみるね……。
『最後の一射』『最終射撃』」

マミ「最後の一矢……?」

一矢「違う違う。一射、だよ。
ラストショット、ってところだね」

マミ「うーん、せっかくだし、
名前だけ貰っておくわ。
でも、言わないわよ?」

一矢「うん。心で唱えるといいよ。
マミの必殺技は『ティロ・フィナーレ』だ!」

31: 2011/09/08(木) 23:59:36.96 ID:3HGltRPP0
某日


一矢≪QB君、これで聞こえているかな?≫

QB≪一矢かい≫

一矢≪そろそろ察しがついていると思うけれど、
このことはマミさんには内緒で頼むよ≫

QB≪なるほど。確かに言うべきではないだろうね。
一矢、君の事情はわかった。約束するよ。
ただ、無理はしないで欲しい。
マミを動揺させるべきではない≫

一矢≪僕の我侭だけれど、
しばらく見守っていてくれ≫

QB≪あまりよい未来は期待できないが、
気づかずにいた僕が悪い。
一矢、君の言うとおりにしよう≫

34: 2011/09/09(金) 00:05:56.89 ID:Hn5k6cYy0
数日後。
昼間/パティスリー「le ambra」閉店中
店内

一矢「……」

ピポパポ

pllll

一矢「もしもし。
あ、マミかい?
申し訳ないのだけど、兄が今日一時帰国するみたいなんだ。
うん、そう。
だから今日の部活はキャンセルさせてもらえないかな。
ごめんよ」

ガチャ

35: 2011/09/09(金) 00:09:21.39 ID:Hn5k6cYy0
QB「……そろそろかい」

一矢「ゴホッゴホッ。
そうだね……。
さすがに彼女に会うとボロが出そうだ。
そこの机の上に、手紙があるだろう。
彼女に渡して欲しい。
心配、かけたくないんだ」

QB「いずれにしても君が望むなら叶えよう。
けれど、彼女はとても動揺するだろうね」

一矢「……仕方が無い。
僕には……それだけの甲斐性がなかったんだ。
それに、魔法少女のマネジメントは君の仕事だろう?
どんな目論見が……あるか知らないけれど、
僕もマミもそれに抗う術はないんだ。
君を信じるしか……ない」

QB「……マミに手紙を渡す。
約束しよう。
だから、早くここを去るんだ。
マミが気づかないうちに」

一矢「そう……させてもらうよ」

36: 2011/09/09(金) 00:10:46.18 ID:Hn5k6cYy0
数日後。
日曜日/パティスリー「le ambra」閉店中
夕方/勝手口

マミ「一矢さーん? いないのかしら。
あら、QBじゃない」

QB「この手紙を一矢から預かってきたよ」

マミ「なにかしら」


手紙
[親愛なるマミへ。
兄の都合で急遽僕も海外へいくことになった。
君の言うとおり立派な菓子職人になれるよう祈っていておくれ。
いつ帰れるかはわからないけれど、
そのときはおいしい御菓子を御馳走するよ。
何も言わずに出発して本当にごめんね。
また会えるのを楽しみにしている。
さようなら。

香坂一矢]

37: 2011/09/09(金) 00:12:01.34 ID:Hn5k6cYy0
マミ「え……」

QB「……」

マミ「嘘、どうして」

QB「彼は……」

マミ「これからも一緒に戦おうって言ったのに……。
でも……仕方がないよね。
お兄さんのこと、きっとわけがあるのよね」

QB「マミ……」

マミ「みんなに謝らなきゃ。
来週の部活は学校に場所を移すって……。
さ、QB。家に帰りましょう」

QB「君は疑問に思わないのかい」

マミ「何って、ここに全部書いてあるじゃない」

QB「彼はいつ帰ってくると思う?」

マミ「さあ。
でも、迷惑になっちゃいけないし、
これ以上の詮索は無用よ」

スタスタスタ

38: 2011/09/09(金) 00:13:07.29 ID:Hn5k6cYy0
QB「マミ、そっちは家とは反対方向だ」

マミ「あら、そうだったかしら。
ふふふ、失敗ね」

スタスタスタ

QB「……」

マミ「なにしているのQB。
早く帰ってお夕飯の支度するわよ」

QB「彼は……」

マミ「……」

スタスタ……ピタ

QB「見滝原総合病院にいる」

マミ「!」

タッ

40: 2011/09/09(金) 00:14:07.07 ID:Hn5k6cYy0
QB「『巴マミのマネジメントは僕の役』……か。
これが正しい選択、とは言い難いな。
しかし、彼女の今後を考えれば、
正しく結末を見届ける方がいいのだろう」

41: 2011/09/09(金) 00:15:02.96 ID:Hn5k6cYy0
見滝原総合病院
5階「香坂一矢」病室。


一矢「窓の外は冷えるよ。
入ってきて」

マミ「ええ」

一矢「初めて会ったときも、
その服だったね」

マミ「そうね」

一矢「ひょっとしたら、さ。
なにかの奇跡で病気が治ったらって思ったんだけど、
やっぱりダメだったみたいだ」

マミ「……ごめんなさい」

一矢「なにを謝るの」

42: 2011/09/09(金) 00:16:59.39 ID:Hn5k6cYy0
マミ「私、魔女退治なんて浮かれてた。
魔法少女は街を守るなんて言ってたくせに、
あなたのこと気づけなかった。
あなたの苦しみを癒す魔法も力も無い。
ごめんなさい……本当にごめんなさい」

一矢「ダメだよ、マミ。
そこは怒るところだよ。
謝るのは僕のほうだ。
充実した想いのまま氏にたいと、
願って僕は自分の為に君を利用したんだよ?」

マミ「怒ってる、怒ってるわ!
何も言わないあなたに、
無力な自分に。
でも、もうどうにもならないじゃない!」

一矢「触れて、いいかい」

マミ「(コクン)」

43: 2011/09/09(金) 00:18:24.59 ID:Hn5k6cYy0
一矢「君の頬は暖かいね。
僕の手はこんなに冷たいのに……。
……こんなに幸せだったことは、始めてだ。
なにもままならない体で、
ただベッドに縛りつけられている日々に僕は絶望していた。
そして、医者から治らないから突然好きにしろといわれて、暴れたよ。
なにもかもめちゃくちゃにしたいと思った。
窓から見えるこの街が滅ぶことを何度も願った」

マミ「……」

一矢「以前僕が言った願いのこと覚えている?」

マミ「ええ、いつか話してくれるって言ってたわ」

一矢「僕の願いは
『天使に恋をする』ことだったんだ」

マミ「天使に……?」

一矢「小さい頃読んだ本にすごく綺麗な天使がでてきたんだ。
それ以来ずっと探していたんだ。
変だよね。
でも、その願いだけが僕の生きている実感だった……。
そして、あの日、シ工口を助けたのは天使だった。
君だよ、マミ」

マミ「え……」

45: 2011/09/09(金) 00:20:28.55 ID:Hn5k6cYy0
一矢「本当に驚いたよ。
なんて美しいのだろうと。
ねえ、マミ。
気づいていないかもしれないけれど、
君はその笑顔で僕の人生を一変させたんだよ?
憎しみのまま終わる僕の生を、
こんなに豊かに変えてしまった。
君の魔法は人を幸せにしたんだよ」

マミ「私……私……」

一矢「君との日々は楽しかった。
あんなに憎かった街が、
君が愛している街だと思うだけで、ずっと輝いて見えた。
ありがとう……」

マミ「そんな、私なにもしていない。
なにもできなかった……。
あなたの想いにも答えられない、
そんな……私です……」

一矢「十分すぎるぐらいだよ。
君がいるだけで僕のすべてが意味を持つ。
とたんに鮮やかになる。
とても、素敵な女性だよ。
……謝るのは、僕のほうだ。
本当にごめんよ。
お詫びしたいけれど、
でも、もう無理みたいだ」

46: 2011/09/09(金) 00:22:02.79 ID:Hn5k6cYy0
マミ「一矢さん!
ダメ、私を置いていかないで!
傍にいて!」

一矢「勿論今QB君と契約できるなら、
マミとずっと一緒にいたい、って願うさ。
ふふふ」

マミ「どうしたの、一矢さん」

一矢「笑ってくれないか。
泣いている君があまりに綺麗で、
嬉しくなってしまったんだ」

マミ「バカ……///」

一矢「それでいい。
僕と約束してくれないか。
ずっと笑っていると。
この先、つらいことがあっても、
君が笑っていると思えば僕は安らかにいける」

マミ「……スンッ……クッ……。
ええ、約束するわ。
……ッグスッ」

47: 2011/09/09(金) 00:23:16.08 ID:Hn5k6cYy0
一矢「僕の想いが叶わなくて
本当によかった。
きっと恋が実っていたら、
マミはそんな可憐には泣いてくれなかっただろうから。
つくづく僕は最後まで幸せな男だ」

マミ「一矢さん……」

一矢「君が天使ならば、僕の魂を持っていてくれるだろう。
もし、君が一人だと寂しく思うことがあるなら、
僕を思い出してほしい。
魂になっても、僕はそばにいる」

マミ「一緒、ずっと一緒よ!
一矢さん、私達……

48: 2011/09/09(金) 00:24:20.29 ID:Hn5k6cYy0
一矢「マミ、たくさんごめ……んよ。
そして、たくさ……んありがとう……
僕は、き、みが……
マミが……大好き……だ……」

パタ……

マミ「あ……あ……」

一矢「」

マミ「どうして!
どうしてなの!
どうしてみんな私を置いていくの!
一矢さん! 一矢さん!
私を一人にしないで!
私の傍にいて!
私、強い魔法少女なんかじゃない!
憧れるような天使なんかじゃない!
ただの、ただの、女の子よ!
あぁ、ああ! 一矢さん!」

50: 2011/09/09(金) 00:27:50.14 ID:Hn5k6cYy0
スッ

QB「彼の能力は氏期が近い人間に現れる、
勘のよさのようなものだったらしい。
だから、病気が治ったとしても、
君と魔女退治を続けることはできなかっただろう。
そもそも、ならば出会うこともなかったはずだ」

マミ「グッ、スンッ、ヒック……」

QB「マミ。
彼が君を天使と言っていたが、
僕にはどういうことかわからない。
ただ僕に言えるのは、
君は
誰よりも命を慈しみ、
誰よりも街を想い、
誰よりも人を幸福にしている。
僕が出会ってきた中で、
最高の魔法少女だということだ」

52: 2011/09/09(金) 00:30:03.46 ID:Hn5k6cYy0
マミ「……」

QB「君が不安定だと魔女退治に支障が出る。
けれど、幸いこのあたりに魔女の気配はないようだ。
……今は、存分に泣くといいよ。
次にあったときは彼の望み通り、
笑顔のマミだと僕は嬉しい。
では、マミ。
また明日」



スッ



マミ「……一矢さん!
……一矢さぁん!
わぁあああああああ!」

54: 2011/09/09(金) 00:31:28.83 ID:Hn5k6cYy0
『笑顔でいて』

胸に秘めた約束を携えて。
彼女は今日も街を駈ける。




QB「マミ、後ろだっ!」

マミ「そこね!
さあ、これで消えなさい!」

魔女「Ich gebe Vergismeinnicht……」

マミ「ティロ・フィナーレ!」




QB「君は最高の魔法少女だ」 end.

56: 2011/09/09(金) 00:33:52.74 ID:Hn5k6cYy0
以上で終了です
ご支援と、ご読了のほど、
心から感謝します

57: 2011/09/09(金) 00:34:18.41
乙乙

58: 2011/09/09(金) 00:34:21.46
すごくよかった、マミさんまじ天使

引用元: QB「マミ、君は最高の魔法使いだ」