1: 2017/04/30(日) 21:05:53.005 ID:uNEp/0UR0
 
-タプリスの新居-


タプリス(この春からようやく、下界への修業の許可が降りまして)

タプリス(今後わたしの拠点となる、こちらのアパートへの引っ越しが完了しました!)

タプリス(ここから、先輩たちのいる高校への通学)

タプリス(そして、先輩たちとの生活)

タプリス(全てが楽しみで仕方ありません)


タプリス(と、その前に……)

タプリス(この積まれたダンボールの山をどうにかしないと、ですね)

タプリス「よいしょっと」ゴトッ


 ドンッ

タプリス(ん? 何の音でしょう?)

タプリス(あ、もしかして、お隣さんでしょうか)

タプリス(いけないいけない、わたしとしたことが)

タプリス(お隣さんに、挨拶に行くのを忘れていました)

タプリス(たしか、このダンボールに、実家から持ってきた天界饅頭が……)

5: 2017/04/30(日) 21:09:17.715 ID:uNEp/0UR0
 
-隣の部屋の前-


 ピンポーン


タプリス(わたし角部屋ですし、先程の音はこの部屋のはず……)

女の声『はい』

タプリス「あ、わたし、隣に引っ越してきた千咲と申します」

女の声『ああ、ちょっと待ってくださいね』


 ガチャ

女「どうも」

タプリス「っ……こ、こんにちは」

タプリス(ひっ……、に、睨まれてます?)

タプリス「と、隣に引っ越してきた千咲といいます。こ、これからよろしくお願いします」

タプリス「これ、つまらないものですが、どうぞ……」

女「ああ、ご丁寧にどうも」

タプリス「それでは、わたしはこれで……」

女「まあよろしくね」

タプリス「は、はい」

 バタンッ


タプリス(はぁ……緊張しました)

タプリス(怖そうな外見とは裏腹に、そんなに悪い人ではなさそうでよかったです)

14: 2017/04/30(日) 21:12:09.373 ID:uNEp/0UR0
 
-その日の夜-


タプリス(はぁ、今日は疲れました。そろそろ寝ましょうか)

タプリス(ダンボールの整理もほとんど終わりましたし)

タプリス(明日は、近所を散策してみましょう)

タプリス(あ、そのまま、天真先輩の家まで行って、挨拶も兼ねてお掃除でもしましょうかね)

タプリス(えへへ、先輩の家にこんなにすぐ行けるなんて、嬉しいです)


 ドンッ ガチャ ガタンッ

タプリス(ん? お隣さん?)

タプリス(何か、掃除でもしているんでしょうか)


 ガタッ ガタッ ガタンッ

タプリス(結構すごい音ですね……、でも、今日のわたしの引っ越しも)

タプリス(このくらい聞こえていたんでしょうか)

タプリス(だとすると、かなり迷惑だったかもしれません……)

タプリス(先程お会いした時に、謝っておけばよかったです)

タプリス(でもまあ、今度お会いしたときでいいですかね)


 ドンッ ガチャ ガタンッ

タプリス(う……)

タプリス(ね、眠れません……)

15: 2017/04/30(日) 21:15:33.074 ID:uNEp/0UR0
 
-翌日-


 ピピピピピッ


タプリス(う、もう朝ですか……)

タプリス(少し寝不足ですが……起きないと)

タプリス(あ、天気は……気持ちのよいくらいの快晴です)

タプリス(そうだ、ごはんを食べたら、お洗濯しちゃいましょう)


 ――

 ウィィィン ゴトゴトゴト

タプリス(さ、三十分かかってようやく、洗濯機をスタートできました……)

タプリス(でもこれが終わったら、あとは干すだけなんて)

タプリス(すごい文明の利器ですね)


 ドンッ

タプリス(お、お隣さんから?)

タプリス(もしかして、洗濯機の音がうるさかったでしょうか)

タプリス(でもそんなに早い時間でもないですし……)

タプリス(洗い終わるまでは……ど、どうしようも)


 ドンッ ドンッ

タプリス(ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさいっ……)

16: 2017/04/30(日) 21:18:49.019 ID:uNEp/0UR0
 
-数日後 ヴィーネの家-


ヴィーネ「いらっしゃいタプちゃん、さ、入って入って」

タプリス「急にお邪魔してすみません、月乃瀬先輩」

ヴィーネ「ううん。タプちゃんなら、いつでも大歓迎よ」

タプリス「あ、ありがとうございます」


ヴィーネ「引っ越しの方は、順調に終わった?」

タプリス「はい、なんとか無事に終わりました……」

ヴィーネ「それはよかった。春から同じ高校に通うのね……今から楽しみ」

タプリス「はい! わたしもです!」

ヴィーネ「何か下界での生活で困ったことがあったら、いつでも言ってね」

ヴィーネ「先輩として、いつでも相談にのるから」

タプリス「月乃瀬先輩……あ、ありがとうございますっ」

ヴィーネ「かわいい後輩のためだもの、何でもしちゃうわ」


タプリス「あ……でしたら、その……」

タプリス「早速ですみませんが、相談ごとが……」

17: 2017/04/30(日) 21:21:33.493 ID:uNEp/0UR0
 
ヴィーネ「お隣に迷惑をかけないようにするには、どうすればいいか、ね」

タプリス「はい、わたしの部屋からの音がお隣さんに聞こえてしまって」

タプリス「ご迷惑をかけているのではないかと思いまして」

ヴィーネ「タプちゃんのことだから、何か故意に音を立てたり」

ヴィーネ「叫んだりしているわけではないのよね?」

タプリス「そ、それはもちろんです!」

タプリス「わたしの気のせいなら良いのですが」

タプリス「こちらがカーテンを閉めたり、洗濯機をスタートさせたりしますと」

タプリス「あちらから、壁を叩く音が聞こえるんです」

ヴィーネ「そうなの……でも、それって生活音よね」

タプリス「生活音?」


ヴィーネ「日常生活を送る上で、どうしても発生してしまう音のことよ」

ヴィーネ「そういうのはお互い様だから、ある程度は許容しないといけないけど……」

タプリス「月乃瀬先輩は、そういう経験ってありますか?」

ヴィーネ「たしかに聞こえることはあるけど、露骨に壁ドンはされたことはないわね」

タプリス「そうですか……」

ヴィーネ「まぁ、まだ引っ越して日も浅いし、もう少し時間が経ったら」

ヴィーネ「お隣も慣れてくるかもしれないわね」

タプリス「だといいのですが……わたしも少し気をつけてみます」

ヴィーネ「けど、あまり萎縮しすぎないようにね」

タプリス「は、はい、ありがとうございます」

19: 2017/04/30(日) 21:24:35.215 ID:uNEp/0UR0
 
-その日の晩 タプリスの家-


タプリス(月乃瀬先輩は、あのように言ってくれましたが)

タプリス(これから少なくても数年は、ここに住むことになるんです)

タプリス(お隣さんと良い関係を築くためにも)

タプリス(わたしがいろいろ気をつけないとダメですよね)


タプリス「ふわぁ……」

タプリス(でも……今日はもう寝ましょうか)


――

 『ぎゃはははははっ!』

 ドンドンドンッ ガチャガチャ

タプリス「ふぇっ……な、何事ですか!?」

 『ばっかみたいっ!』

 『でしょしょ!!』

 ドタンッドタンッドタンッ

タプリス(お、お隣さん? お客さんが来ているんでしょうか)

タプリス(今は……、あ、夜中の2時ですか)

タプリス(ふふっ、なんだか楽しそうです)

タプリス(わたしも家にお客さんを呼ぶことも今後あるでしょうし)

タプリス(これは仕方ありませんよね)


 『わはははははっ!』

 ドンッ ガチャ ダンッ

タプリス(うぅ……目が冴えてしまいました)

21: 2017/04/30(日) 21:28:11.457 ID:uNEp/0UR0
 
-ラフィエルの家-


ラフィエル「タプちゃん、どうしたんですか? そんなに目の下に隈を作って」

タプリス「あはは、大丈夫です。ちょっと寝不足なだけですから」

ラフィエル「寝不足? 何かしているのですか?」

タプリス「い、いえ、もうすぐ学校が始まるので少し緊張しているといいますか」

タプリス「じきに良くなりますから!」

ラフィエル「本当に?」

タプリス「ほ、ほんとに大丈夫ですから。ほら、元気、元気です!」

ラフィエル「……タプちゃん」

タプリス「は、はい」

ラフィエル「それで、私を誤魔化せると思ったら、大間違いですよ」

タプリス「し、白羽先輩……?」


ラフィエル「ちゃんと話してください。相談に乗りますから」

タプリス「え、えと……」

ラフィエル「タプちゃん」

タプリス「わ、わかりました……」

23: 2017/04/30(日) 21:31:23.571 ID:uNEp/0UR0
 
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」

ラフィエル「もう一週間以上も、隣人が深夜に騒ぎ続けている……と」

タプリス「や、やっぱりお友達とお話するのは楽しいでしょうから」

タプリス「……し、仕方ありませんよ」

ラフィエル「眠れないほどの騒音を発生させ続けている時点で」

ラフィエル「仕方ないとは言い難いですね」


ラフィエル「タプちゃん、お家の管理会社の番号はわかりますか?」

タプリス「えっ、あ、はい。わかりますけど……」

ラフィエル「こういう問題は、個人間で解決しようとすると」

ラフィエル「さらにこじれてしまう可能性がありますからね」

ラフィエル「管理会社の方から、注意喚起をしてもらいましょう」

タプリス「で、でも、なんて言ったらいいか……」

ラフィエル「わかりました。では、私から電話してみますね」

タプリス「し、白羽先輩……」

ラフィエル「大丈夫ですよ、タプちゃん。安心してください」

26: 2017/04/30(日) 21:34:23.989 ID:uNEp/0UR0
 
 ピッ

ラフィエル「これで良いでしょう」

タプリス「あ、ありがとうございます、白羽先輩」

ラフィエル「これでも続くようなら、また相談に乗りますから」

タプリス「お手数おかけして、すみません……」

 ぎゅっ

タプリス「あっ……」

ラフィエル「……タプちゃんはですね、優しすぎるんです」

ラフィエル「それがあなたの良いところでもありますが」

タプリス「ごめんなさい……わたし、先輩にご迷惑を……」

ラフィエル「ほらまた。そうですね……では今晩は、ここに泊まってください」

タプリス「え、でも……」

ラフィエル「これは先輩命令です♪」

タプリス「あ、ありがとうございます……白羽先輩」


 ――

タプリス「すぅ……すぅ……」

ラフィエル「ふふっ、かわいい寝顔ですね」

ラフィエル「……」

ラフィエル(私の大切な後輩を、こんな目に合わせるなんて)

ラフィエル(少しお仕置きが必要みたいですね)

 ピッ

ラフィエル「あ、ガヴちゃんですか? 実はですね……」

29: 2017/04/30(日) 21:38:07.407 ID:uNEp/0UR0
 
-数日後 タプリスの家-


 ピンポンピンポンピンポーン


タプリス(あれ、どなたでしょう。先輩たちとの約束はなかったはずですが……)

タプリス「はい、少しお待ちくださいー」


 ガチャ

女「……」ピキピキ

タプリス「ひっ! お、お隣さん!?」

女「あんた、管理会社に連絡したでしょう?」

タプリス「へっ……あ、その……」

女「騒音がひどい、ですって? デタラメ言わないでよね!!」

タプリス「あのっ……そのっ……」

女「大体そんなこと言ったら、あんたの部屋の音だってうるさいじゃない!!」

タプリス「ご……ごめんなさい、ごめんなさいっ」

女「今度また同じようなこと、してみなさい!」

タプリス「……ッ」

女「ただじゃ済まさないから」ギロッ

 バタンッ


タプリス「……」ガクガク

タプリス(どうしようどうしようどうしよう……)

31: 2017/04/30(日) 21:42:15.088 ID:uNEp/0UR0
 
タプリス(こ、これじゃ、先輩たちに相談できません……)

タプリス(だって、先輩たちに、迷惑をかけてしまいます)

タプリス「……」

タプリス(そうです、わたしが耐えていれば……)

タプリス(わたしが静かにしていれば……いいんです)


――

タプリス(抜き足差し足忍び足……部屋を歩く時は音を立てないように)

タプリス(ドアも、窓も、そーっと、そーっと……)

――

タプリス(洗濯機は使えませんから、手もみ洗いしましょうか)

タプリス(この方が洗濯物にも優しいですよね)

――

タプリス(シャワーは使わずに、お湯をためて使って)

タプリス(あ、これは、水道代の節約にもなりそうです)

――

タプリス(さて、今日もそろそろ寝ましょうか)


 『ぎゃはははははっ!』

 ドタンッドタンッドタンッ ガタッガタッ

タプリス(……がまんがまん)

35: 2017/04/30(日) 21:46:34.065 ID:uNEp/0UR0
 
-数日後 タプリスの家-


タプリス「……」フラフラ

タプリス(……あ、今日も良い天気ですね)

タプリス(お散歩にでも……行きましょうか)

タプリス(あ、あれ、足に力が……)ガクッ

 ドタンッ

タプリス(いたた、部屋の中で転んでしまうなんて……)

タプリス(いけない、大きな音……立ててしまいました……)

タプリス(お隣さんに怒られてしまいます……)


 ピンポーン

タプリス(ひっ、やっぱり今の音がうるさくてお隣さんが……)

タプリス(で、でもわたしがここにいるのはバレていますし)

タプリス(出ないと……)


 ガチャ

タプリス「は、はい……」

ガヴリール「よお」

38: 2017/04/30(日) 21:50:06.885 ID:uNEp/0UR0
 
タプリス「て、天真先輩? よ、よかったぁ……」

ガヴリール「ん? よかったって何だよ」

タプリス「それはその……」

ガヴリール「……それにお前、ひどい顔してるぞ」

タプリス「そ、そうでしょうか。げ、元気ですよ、わたしは」

ガヴリール「まあいいや。とりあえず、中に入るぞ」

タプリス「あ、はい……」


 スタスタスタッ

タプリス「あの、先輩、もう少し……」

ガヴリール「なんだ?」

タプリス「すみません、もう少しだけ、静かに歩いてもらっていいですか?」

ガヴリール「は? 普通だろ、何言ってるんだ」

タプリス「あ、あと、ごめんなさい」

タプリス「もう少しだけ、声を小さくしてもらえると……」

ガヴリール「どうして? 別に張り上げてるわけでもないでしょ」

タプリス「お、お隣さんに迷惑がかかりますから……」


ガヴリール「……」

39: 2017/04/30(日) 21:53:28.830 ID:uNEp/0UR0
 
タプリス「すみません、今、お茶お出ししますね」フラフラ

ガヴリール「……座れ」

タプリス「えっ」

ガヴリール「そんなのいいから、ここに座れって言ってるんだ」

タプリス「は、はい……」


 ぎゅぅ

タプリス「えっ、先輩……?」

ガヴリール「こんなにフラフラになるまで、我慢しやがって」

ガヴリール「もっと早く私に言えよ、バカ」

タプリス「が、我慢だなんて……わたしは……」

ガヴリール「だいたいの事情は把握してる」

タプリス「えっ……」

ガヴリール「私が来たからには、もう大丈夫だ」


ガヴリール「……」スタスタッ

タプリス「せ、先輩? 壁に向かって、何を……」


ガヴリール「すぅ……」

ガヴリール「この……ふっざけんじゃねーぞっ!!!!」ブンッ


 ドゴォッ
 

42: 2017/04/30(日) 21:56:51.324 ID:uNEp/0UR0
 
タプリス「なっ!? せ、先輩、駄目ですよ! そんな壁を蹴ったら!」


 ダダダッ ピンポンピンポンピンポーン

タプリス「ほ、ほら! お隣さんが怒ってまた……」

ガヴリール「来たか。タプリス、私が出るからお前はここにいろ」


 ガチャ

ガヴリール「はいはいっと」

女「ねえ、今の何の音よ! って、あんた誰。ここに住んでる子じゃないわね」

ガヴリール「ああ、私はあいつの学校の先輩だけど」

女「あっそう。で、あの子はどこ?」

ガヴリール「中にいるが、あんたには会わせない」

女「はぁ? 何言ってるのよ! いいからあの子を出しなさい!」

44: 2017/04/30(日) 21:59:58.158 ID:uNEp/0UR0
 
ガヴリール「さっきの音を立てたのは、私だとしても?」

女「な、なんですって?」

ガヴリール「それで、用件はなんすか」

女「し、静かにしろって、言いにきたのよ! 近所迷惑でしょ!!」

ガヴリール「なるほど……近所迷惑、ね」

女「そうよ! あんたからあの子にちゃんと言っておいて!」

ガヴリール「いいっすよ」

女「ふんっ、わかればいいのよ、わかれば!」

ガヴリール「ただし、条件がある」

女「えっ?」


ガヴリール「私と少し、ゲームをしないか」

46: 2017/04/30(日) 22:02:56.850 ID:uNEp/0UR0
 
女「は? ゲームですって?」

ガヴリール「ああ。私が勝ったら、あんたはそのまま引き下がる」

ガヴリール「そして、あんたが勝てば……」

ガヴリール「私たちは以降ずっと、静かに音も立てず、暮らしていく」

女「そんなの当たり前じゃない! やるメリットがないわ!」


ガヴリール「そうっすか、じゃあ……」

ガヴリール「もしあんたが勝ったら、私たちは何でも、あんたの言うことをきく」

ガヴリール「という条件付きだったらどう?」

女「な、なんですって……」

ガヴリール「私たちにできることなら、なんでもするよ」

48: 2017/04/30(日) 22:06:04.144 ID:uNEp/0UR0
 
女「そ、そう。じゃあ、とりあえずゲームの内容を教えなさいよ」

ガヴリール「理解が早くて助かるね。ゲーム自体は簡単だ」

ガヴリール「私たちがじゃんけんをして、私が五連勝したら私の勝ち」

ガヴリール「あんたが一回でも勝てば、あんたの勝ち、それでどう?」

女「はぁ? そんなのアタシが勝つに決まってるでしょ!」

ガヴリール「で、やるんすか? やらないんすか?」

女「や、やるに決まってるじゃない!」


ガヴリール「ああ、そうだ。言い忘れてたけど……」

ガヴリール「このゲームは、ただのゲームじゃないんすよ」

女「は? どういう――」


ガヴリール「これはね……裁きのゲームだ」

50: 2017/04/30(日) 22:09:08.405 ID:uNEp/0UR0
 
女「さ、裁き……って、何よ」

ガヴリール「もしも、あんたが負けたら、それ相応の罰を受けてもらう」

女「な、なんですって……」

ガヴリール「ルールは先程伝えた通り。これが最終確認だ」

ガヴリール「やるか? やらないか?」

女「そ、そんな脅しに引っかかるわけないじゃない!」

女「ルールが変わらないんだったら、アタシのほうが絶対優勢!」

女「その勝負、受けて立つわ!」

ガヴリール「そうか」


女「それにあんた達、よく見たらそこそこ可愛いし」

女「くく、アタシの職場の夜のバイトとして、タダ働きさせてやる」

ガヴリール「……いいだろう、交渉成立だ」

51: 2017/04/30(日) 22:12:00.446 ID:uNEp/0UR0
 
女「アタシに負けて、やっぱり無しでしたってのは許さないわよ」

ガヴリール「ああ、もちろん」


タプリス「天真先輩! そ、そんな無茶苦茶な勝負……」

ガヴリール「お前は、来るなって言っただろ」

タプリス「で、でも……」

ガヴリール「私を誰だと思ってる、私を信じろ」


女「何ぶつくさ言ってるの。時間がもったいないから、さっさと始めるわよ」

女「くくっ、一発で終わらせてあげるわ。それじゃあ……」


女「じゃーんけーん――」

ガヴリール「じゃーんけーん――」

52: 2017/04/30(日) 22:14:50.648 ID:uNEp/0UR0
 
ガヴリール「……五連勝、私の勝ちだ」

女「う、嘘よ……信じられない……」

女「ありえないぃぃぃっ!」

女「イ、イカサマよ! こんなのイカサマに決まってる!!」

ガヴリール「往生際が悪いな。今日初めて会ったあんたに」

ガヴリール「そんなこと、できるわけないだろ」

女「アタシは認めない! 絶対認めないわ!」

ガヴリール「……勝敗は決した」


 ゴゴゴゴゴゴッ

女「な、なによこれ……か、体が動かな――」

ガヴリール「裁きのゲームに負けたあんたには、罰を受けてもらう」

女「ひっ!」

56: 2017/04/30(日) 22:18:21.959 ID:uNEp/0UR0
 
ガヴリール「裁きのルーレット、スタート」


 ドゥルルルルルルッ

ガヴリール「あんたが受ける罰は……これだ」

ガヴリール「ジャッジメント!」


 ダンッ

 『一週間、周りの音が大音量で頭に響いてくる』


ガヴリール「さあ、覚悟はいいか」ズイッ

女「いやっ! や、やめてぇ!」

ガヴリール「……神よ、彼の者に裁きを与えたまえ」


 ピカァァァッ ズドンッ

女「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

61: 2017/04/30(日) 22:21:24.057 ID:uNEp/0UR0
 
女「えっ? 無事? いったい、何が起こって……」


 ビュゥゥゥゥッ

女「ひっ、何これ!? 風!? 風の音なの!?」


 ブロロロロロッ

女「あがっ!? く、車の通り過ぎる音が……」

女「だめ、頭が割れる!! た、耐えられない!! へ、部屋に戻らないと!!」


 ダダダッ バタンッ

女『ひぎぃぃっ、ドアを閉める音がぁぁぁぁぁっ!!』

64: 2017/04/30(日) 22:23:51.609 ID:uNEp/0UR0
 
ガヴリール「やれやれ」

ガヴリール「……これに懲りたら、次の住人には少し気を使うんだな」

タプリス「え? つ、次の住人って……」

ガヴリール「ほら、さっさと始めるぞ」

タプリス「な、何をですか?」

ガヴリール「引っ越しの準備」

タプリス「え、ええっ!?」

ガヴリール「私の隣の部屋、ちょっと前に空いたから」

ガヴリール「そこに引っ越すぞ」


タプリス「で、でもでも、そんなお金、わたし……」

ガヴリール「ちょっと前に、株で臨時収入があったんだよ」

ガヴリール「それを使うから、心配するな」

タプリス「で、でも天真先輩に、そこまでしていただくのは……」

66: 2017/04/30(日) 22:26:35.500 ID:uNEp/0UR0
 
ガヴリール「今までお前には何度も、部屋の掃除してもらってるし」

ガヴリール「だからこれからも、たまに掃除してくれたら、それでいい」

タプリス「そ、そんな……釣り合いません……」

ガヴリール「……ああ、もう! 私にここまで言わすなよ」

タプリス「へっ?」

ガヴリール「心配だって言ってんの! お前が!」

ガヴリール「下界にはこういう理不尽なことが、たくさんあるんだ」

ガヴリール「今回はたまたま、気づけたから良かったけど」

ガヴリール「最悪のことだって、もしかしたら起きるかもしれない」

ガヴリール「だからお前には、私の目が届くところにだな」

ガヴリール「……いてほしいんだよ」

ガヴリール「こ、これで満足か」

タプリス「せ、先輩……ぐすっ……せんぱぁい……」

 ぎゅぅぅ

ガヴリール「おいおい、苦しいって」

タプリス「ごめんなさい、ごめんなさいぃ……」

ガヴリール「違うだろ」

タプリス「ふぇ……?」

ガヴリール「こういうときは」

タプリス「あ……え、えと……」


タプリス「ありがとう、ございます……先輩っ」

67: 2017/04/30(日) 22:29:07.994 ID:uNEp/0UR0
 
 ドタドタッ

 『ぎゃぁぁぁっ』


タプリス「せ、先輩。引越し準備とはいえ、あまり音を立てると」

タプリス「お隣さんが苦しんでますから……」

ガヴリール「別にいいだろ、罰なんだから」


タプリス「でも、本当にお金の件、よいのでしょうか……」

ガヴリール「なに、そこまで気にするなら……」

ガヴリール「お前の体で払ってくれてもいいぞ、げへへ」ワサワサ

タプリス「な、ななななな、何を言ってるんですか!?」

タプリス「ダメです! そういう、や、やらしいのは、まだ禁止です!」

ガヴリール「そんなに顔赤くするなよ、冗談に決まってるだろ」

70: 2017/04/30(日) 22:32:26.263 ID:uNEp/0UR0
 
 ピンポーン ガチャ

ラフィエル「タプちゃん、手伝いに来ましたよー」

ヴィーネ「ガヴだけだと頼りないからね」

ガヴリール「おいおい、ひどい言われようだな」

タプリス「先輩たち!? あ、ありがとうございます!」

サターニャ「なはっ! 力仕事なら、この大悪魔であるサタニキア様に任せなさい!」

ガヴリール「そういうのは業者に頼むからいいんだよ。お前は静かにしてろ」

サターニャ「何よ、ガヴリールのくせして! 私に指図するんじゃないわよ!」


 『いやぁぁぁぁっ』

タプリス「胡桃沢先輩、しーっ、しーっ!」

サターニャ「??」

71: 2017/04/30(日) 22:35:32.096 ID:uNEp/0UR0
 
-ガヴリールの家の隣 タプリスの新居-


タプリス(先輩たちに手助けしていただいたおかげで……)

タプリス(こうして無事に、引っ越しも終わりました)


タプリス「……」

タプリス(この壁の向こうに天真先輩がいる……)ピトッ

タプリス(それだけでわたしは……こんなにも安心することができます)

タプリス(本当に、本当にありがとうございました、先輩……)


タプリス(そして……おやすみなさい)

73: 2017/04/30(日) 22:37:34.180 ID:uNEp/0UR0
 
 『何やってんだよ!!』

 ガチャガチャガチャ


タプリス「……ッ」ビクッ


 『このふざけんなよ!! 支援ちゃんとしろ!!』

 ドンドンドンッ


タプリス「……」


 『あーっ!! タゲ散らすなよバカ! 全滅するだろ!!』

 ダンダンダンッ


タプリス「……」スタスタスタッ


タプリス「すぅ……」

タプリス「天真先輩のほうが……うるさいじゃないですかっ!!!!」ブンッ


 ドゴォッ



おしまい

76: 2017/04/30(日) 22:38:21.563

いいオチだ

78: 2017/04/30(日) 22:39:17.603
気を張らない分萎縮はしないだろうな

83: 2017/04/30(日) 23:33:25.483

引用元: ガヴリール「千咲ちゃん、隣の部屋からの騒音に苦悩する」