1: 2017/05/23(火) 21:02:35.043 ID:W2Xtt50t0
 
-放課後 学校の校庭-


タプリス「はぁ……」

タプリス(今日も一日、授業についていくのが大変でした)

タプリス(帰ったら復習しないと……って、明日の予習もですね)

タプリス(下界での生活は、なかなか大変です……)


 パサッ

タプリス(ん? 目の前に何か落ちて……)スッ

タプリス(これは、ピンク色のノート? 誰かの落とし物でしょうか)

タプリス(表紙には、YURINOTEって書いてますけど)


 ペラペラッ

タプリス(ざっと見た感じ、中のページには……何も書かれていませんね)

タプリス(これじゃあ、誰の持ち物かわかりません)

タプリス(とりあえずは……明日、学校で職員室に届けましょうか)



-その日の夜 タプリスの家-


タプリス「ふぅ……これで、予習も終わりっと」

タプリス「そういえば、今日、拾ったノート」


 ペラペラッ

タプリス「あ、やっぱり。表紙の裏に何か書かれてます」

タプリス「なになに、このノートに……」

タプリス「二人の女の子の名前を書くと……百合百合する?」

2: 2017/05/23(火) 21:04:12.931 ID:W2Xtt50t0
 
タプリス「百合百合って、なんでしょうか……」


 スゥゥッ

百合神『それは、女の子同士が、いちゃいちゃラブラブするってことさ』

タプリス「うわあぁぁぁぁっ!! あ、あなた! だ、誰ですか!?」

タプリス「ど、どどどどうして、わたしの部屋に!? それに、あなた浮いて……」

百合神『僕の名前は百合神、そのノートに、とり憑いていた者さ』

タプリス「とり憑いていた……者?」

百合神『そして、そのノートの所有者に君が選ばれたんだ、おめでとう』

タプリス「は、はぁ……わたしが、ですか」

百合神『これから君には、僕の野望のため、いろいろ働いてもらうよ』

タプリス「そ、そんなこと、突然、言われても……」

タプリス「それに野望ってなんですか……?」


百合神『僕の野望はね、この世の中を、百合少女で満たすことさ!』

タプリス「百合……少女?」

百合神『そう、百合少女。女の子同士で仲良くしている少女たちのことだよ』

タプリス「あの……わたし、このノートを拾いたくて拾ったわけじゃなくて……」

タプリス「拒否権って……ないんですかね」

百合神『ないね』

タプリス「うぅ……そ、それで、ノートに名前を書くと百合百合するって」

タプリス「イマイチ、よくわからないんですけど……」

百合神『それじゃあ明日、君の知り合いで試してみようか』

タプリス「試す……?」

百合神『それがたぶん、一番よくわかるんじゃないかな』

3: 2017/05/23(火) 21:05:40.694 ID:W2Xtt50t0
 
-翌日の朝 住宅街-


タプリス「あの……」

百合神『なんだい』

タプリス「個性的なお姿の百合神さんと一緒に外を歩くと」

タプリス「少しだけ、恥ずかしいです……」

百合神『ああ、それなら平気さ。僕の姿や声は、ノートに触れた者しか認識されない』

タプリス「そ、そうなんですね……」


犬「わんわんっ!」

タプリス「い、犬にすごく吠えられてますけど!」

百合神『こいつはまさか……、そうだ、ちょうどいい』

百合神『僕の手足になる存在も欲しかったからね』

タプリス「えっ、何を言って……」


百合神『そぉい!』

 バシッ

犬「……きゃいん!」

タプリス「な、何をしたんですか!?」

犬「……」

百合神『こいつに、僕の使い魔になってもらうのさ』

タプリス「つ、使い魔?」

犬『……』ムクッ

タプリス「あ、起き上がって……」

犬『ふぅ……また、畜生の体かい』

タプリス「犬が喋ったぁぁぁぁっ!?」

4: 2017/05/23(火) 21:07:11.840 ID:W2Xtt50t0
 
百合神『まぁよろしく頼むよ、犬』

犬『わかったよ、百合神』

タプリス「はぁ……もう何がなんだか……」


百合神『それで、君の知り合いというのはどこだい』

タプリス「えっと……あ、いました!」


ガヴリール「――」

ヴィーネ「――」


百合神『なるほど、二人で登校中って、わけだ』

タプリス「そ、そうですね……」

百合神『じゃあ、そのノートを使ってごらんよ』

タプリス「で、でも……もし本当なら、少し怖いんですが……」

犬『それならまずは軽めに、手を繋ぐ、とかでも良いんじゃないかな』

百合神『ああ、それはいいね』

タプリス「わ、わかりました……書いてみます」


 カキカキカキ

タプリス「天真=ガヴリール=ホワイトと、月乃瀬=ヴィネット=エイプリルは」

タプリス「手を繋いで登校する、っと」

タプリス「これで、いいですかね」

百合神『問題ないと思うよ。さて、二人を観察してみようか』

5: 2017/05/23(火) 21:08:46.814 ID:W2Xtt50t0
 
ガヴリール「……ッ」

ヴィーネ「……ッ」


ガヴリール「ヴィーネ……、えっと、さ」

ヴィーネ「な、なに? ガヴ、どうしたの?」

ガヴリール「これからちょっと、変なこと……言っていいか?」

ヴィーネ「へ、変なことって?」

ガヴリール「別に、嫌だったら、笑ってくれてかまわないんだけど、さ」

ガヴリール「お前と、その……手、繋いでもいいか?」

ヴィーネ「ガヴと……手を?」

ガヴリール「……ダメ、か?」

ヴィーネ「う、ううん! 別にその……、嫌じゃ、ないから」

ガヴリール「そ、そうか……じゃあ、繋ぐぞ?」

ヴィーネ「よ、よろしく、お願いします……」


 ぎゅっ

ガヴリール「……」カァァ

ヴィーネ「……」カァァ


――

タプリス「……」パクパク

百合神『どうだい、ノートの力は本物だろう?』

タプリス「はい……なんだかすごく、甘酸っぱいものを見ることができました……」

タプリス「こちらまで、顔が赤くなってしまいます……」

犬『それは君にも、百合を愛する素質があるってことだね』

6: 2017/05/23(火) 21:10:10.906 ID:W2Xtt50t0
 
百合神『とは言っても、実はあまり、このノートのことが好きじゃなくてね』

タプリス「え、そうなんですか?」

百合神『なんでも思う通りの、百合が叶ってしまうっていうのも』

百合神『面白くないじゃないか』

タプリス「は、はぁ……」

犬『店に売ってる野菜よりも、自分で苦労して作った野菜の方が』

犬『美味しく感じるのと同じだね』

百合神『もちろん、お店のだって美味しいとは思うけど、ね』

タプリス「そ、そういうものなんですかね」

百合神『というわけで、これからは君が、僕の手となり足となって』

百合神『迷える百合少女を結ばせる、手伝いをしてもらうから』ニコッ

犬『今から楽しみだね』ニコッ

タプリス「はぁ……大変なことに、巻き込まれてしまいました」



-数日後 公園-


百合神『どこかに百合少女が落ちてないかなぁ』

タプリス「人を物のように、言わないでください……」

百合神『君の知り合いに、まだ女の子と付き合っていない女の子は、いないのかい?』

タプリス「いやいやいや……」

タプリス「普通に相手を女の子にしないでください……」


サターニャ「ちょっと! あんたまた、私のメロンパン、奪わせたでしょ!」

ラフィエル「あらあら、一体何のことでしょう?」ニコッ

7: 2017/05/23(火) 21:11:43.374 ID:W2Xtt50t0
 
タプリス「あれは……白羽先輩に、胡桃沢先輩ですね」

百合神『知り合いかい?』

タプリス「あ、はい。学校の先輩です」

百合神『ふーん』


サターニャ「どうしてこう、いつもいつも、私の邪魔ばっかりして!」

ラフィエル「邪魔なんてとんでもない。私はサターニャさんのためを思って……」

サターニャ「……それ、絶対ウソでしょ」

ラフィエル「うふふふ……」


百合神『……決めた』

タプリス「え?」

百合神『あの子たちにしよう』

タプリス「ま、まさか、あのお二人を、百合百合に?」

百合神『ああ』

タプリス「む、無理ですよ、それは……だって、あのお二人は……」

百合神『あの銀髪の子が、赤髪の子をよく弄っちゃってるから?』

タプリス「えっ、ど、どうしてそれを!?」

百合神『そんなの、見たらすぐにわかるさ。それに……』

百合神『あれは決して、嫌っているから、とかではなくて、むしろ……』

百合神『少なからず好意を持っている、と僕は思う』

犬『好きな子はついつい、いじめたくなっちゃう、あれだね』

9: 2017/05/23(火) 21:13:10.718 ID:W2Xtt50t0
 
タプリス「そ、それは違うような……」

百合神『いや間違いないね、あとはそれをどうやって』

百合神『赤髪の子に伝えていくか、だけど』

百合神『それには少し、情報を集めないといけないね』

犬『百合神、ノートは使わないのかい?』

百合神『もちろんさ。さぁ、君にも少し働いてもらうよ』

タプリス「は、はぁ……わかりました」



-数週間後 タプリスの家-


百合神『基本的な情報は揃ったかな』

タプリス「仕方がないとはいえ、すごい罪悪感が……」

百合神『何を言う、二人の将来のためだよ?』

タプリス「本当にそうですかね……」


犬『百合神、ちょっとおかしなことが』

百合神『なんだい、おかしなことって』

犬『最近、街中でイチャイチャする女の子たちが急増しているみたいだ』

百合神『急増、ね。それは……おかしいな』

タプリス「え、別にあなたたちにとっては、良いことなのでは?」

百合神『それはそうだけど、短期間で急増するなんて』

百合神『不自然すぎるじゃないか』

タプリス「は、はぁ……」

タプリス(あなたたちの存在の方が、よほど不自然な気がしますけど……)

百合神『とりあえず、頭の片隅には置いておくよ』

11: 2017/05/23(火) 21:14:40.849 ID:W2Xtt50t0
 
-街中-


百合神『ついに、作戦を決行する時がきた』

犬『今日は二人で、食べ歩きのデートみたいだしね』

タプリス「デートって……ただ、白羽先輩が尾行してるだけな気がしますが……」

タプリス「とりあえず、お二人にバレませんように……」

百合神『お、二人が来たみたいだよ』


サターニャ「ほら、ラフィエル、あーん」

ラフィエル「ふふっ、ありがとうございます」パクッ


タプリス「な、ななななっ……」

百合神『これは……』

犬『いったい……』


サターニャ「おいしいかしら? ほら、口にクリームついてるわよ」

ラフィエル「んっ、サターニャさんに取って欲しいです」

サターニャ「仕方ないわね……」スッ

ラフィエル「うふふ、私のクリーム、どうするつもりですか?」

サターニャ「食べちゃうに決まってるでしょ?」パクッ


タプリス「……既に、お二人に何かしているんですか?」

百合神『いや、僕たちはまだ、何もしていない』

百合神『君こそ、ノートに何か書いたりしたのかい?』

タプリス「そ、そんなことしてませんよ!」

犬『じゃあ、いったいなぜ……』

13: 2017/05/23(火) 21:17:10.518 ID:W2Xtt50t0
 
グラサン「……」ニヤッ


百合神『あの、スキンヘッドのサングラスの男』

タプリス「あ、あれは……、わたしの学校の数学の先生です」

犬『同じ匂いを感じる』

タプリス「同じ匂いって、どういうことです?」

百合神『とりあえず、彼に接触してみよう。千咲くん、頼んだよ』

タプリス「えぇっ、わたしですか!? む、無理ですよ!」

百合神『仕方ないな……じゃあ、君の体を介して、僕が会話しよう』

タプリス「そ、そんなことできるんですか?」

百合神『君は、口パクだけしていてくれ』

タプリス「わ、わかりました……」


――

タプリス『先生、こんにちは』

グラサン「……千咲か。どうした」

タプリス『あのお二人のことが、気になるんですか?』

グラサン「……」ギロッ

タプリス「……ッ」ビクッ

タプリス(ひぃ、先生、怖いです……)

タプリス『お二人、お似合いですよね。まさにベストカップルって感じです』

グラサン「千咲、お前まさか……」

タプリス『ええ。ですが少し、急ぎすぎ、ではないでしょうか』

グラサン「……」

14: 2017/05/23(火) 21:19:48.814 ID:W2Xtt50t0
 
タプリス『物事には順序というものがあると、わたしは思います』

グラサン「……何が言いたい」

タプリス『今日はなんという偶然か、キスの日、ですよね』

タプリス『どちらが早く、あの二人にキスをさせることができるか』

タプリス『わたしと勝負をしませんか?』

タプリス『負けた方は、あの二人から、手を引く。それで、どうでしょう?』

タプリス(ゆ、百合神さん、なんてこと言ってるんですか……)

グラサン「……同業者か」

グラサン「いいだろう、その勝負受けて立ってやる」ニヤッ

タプリス『ありがとうございます。わたし、負けませんから』

グラサン「くくっ……せいぜい楽しませてくれ」


――

タプリス「な、なんで宣戦布告してるんですか!」

タプリス「しかも、わたしを使うなんてひどいです」

タプリス「学校で会ったら、気まずいですよ……」

百合神『だって、せっかく進めていた計画を台無しにされたから……』

タプリス「子供ですか、もう!」

犬『でも、どうするんだい、百合神。あっちはもう、何かしらの手段で』

犬『二人に手を加えているみたいだけど』

百合神『しかたない、ここは一度リセットだ』

15: 2017/05/23(火) 21:22:24.336 ID:W2Xtt50t0
 
-公園のベンチ-


ラフィエル「サターニャさん、アイス買ってきましたよ」

サターニャ「ありがとう、ラフィエル」

ラフィエル「じゃあ、食べさせてあげますね♪」

ラフィエル「はい、あーん」

サターニャ「んむ。おいしいわ、とてもおいしい」

ラフィエル「本当ですか? よかったぁ」

サターニャ「でも、おいしいのは、あなたが食べさせてくれてるからね」ニコッ

ラフィエル「もうサターニャさんったら……」


――

タプリス「すごいバカップルっぷりですね」

タプリス「このままだと、すぐにキスとか始めてしまいそうです……」

犬『あれを混ぜてきたよ、百合神』

百合神『ありがとう、犬』

タプリス「え、混ぜてきたってなんですか?」

百合神『鎮静効果のある漢方をだね、あのアイスに混ぜてきたんだ』

百合神『それで一度、二人の状態をリセットさせてから、僕たちの計画に切り替える』

タプリス「な、なるほど……」

犬『それにしても、容赦なく食べ物に盛るなんて、さすがだね』

16: 2017/05/23(火) 21:24:48.594 ID:W2Xtt50t0
 
サターニャ「なんだか少し眠くなってきたわ」

ラフィエル「ふふっ、食べたら眠くなるだなんて」

ラフィエル「サターニャさん、小さなお子さんみたいです」

サターニャ「そうね……そうかも」

ラフィエル「私の膝で良ければ、お貸ししましょうか?」

サターニャ「ありがと、そうさせてもらうわ」


 ころんっ

サターニャ「あたたかくて、いい気持ち」

ラフィエル「ありがとうございます。ここは、サターニャさん専用ですから」

サターニャ「そう、じゃあ思い切り堪能しないとね、うりうり」

ラフィエル「ふふっ……もう、本当に子供なんですから」ナデナデ

サターニャ「あんたの前では、別にそれでもいいわよ」

ラフィエル「私も……、その方がいいです。だって……」

ラフィエル「こうやって、よしよしって、できますからね」ニコッ

サターニャ「それ、本当に落ち着く……」


――

タプリス「なんか、リセットどころか……」

タプリス「ますます、いちゃいちゃし始めてませんか?」

百合神『おかしいな、もう鎮静漢方が効いてきても、おかしくないはずなのに』

犬『たしかに、あのアイスを食べたはずなんだけど……』

17: 2017/05/23(火) 21:27:49.507 ID:W2Xtt50t0
 
百合神『まさか、あのサングラスの男、なにか先手を……』

犬『そんな、いつの間に……』

百合神『くそっ、次の手を、次の手を考えないと』

犬『このままじゃ負けてしまうよ』

タプリス「どうしたら……」


グラサン「……期待はずれだな」

タプリス「なっ、先生!?」

グラサン「千咲の実力がどんなものか、黙って様子を見ていたが」

グラサン「時間の無駄だったようだ」

グラサン「あれだけ意気揚々と、挑んできたのだから」

グラサン「もっと楽しませてくれると思っていたが」

グラサン「……正直、失望したぞ」

タプリス「……」

百合神『ぐぬぬぬ……』


グラサン「そこで指を咥えて、私の仕上げを見ているといい」スタスタスタ


百合神『何か……何か、手はないのか』

犬『あの男、仕上げって言ってたけど……』


タプリス「あ、先生が……何かしてますよ!」

18: 2017/05/23(火) 21:30:00.752 ID:W2Xtt50t0
 
グラサン「……これで下準備は、完了」カキカキカキ


犬『なっ!? あれは!』

百合神『YURINOTEじゃないか!』

タプリス「えっ? ノートって一冊だけじゃないんですか!?」

百合神『いや、百合神の数だけ、ノートはある』

百合神『おそらく、僕以外の百合神が、あの男にとり憑いているんだろう』

タプリス「そんな……それじゃあ、それを止めることなんて……」

百合神『くそっ、もっと早くに気づいていたら……』


――

サターニャ「ねぇ、それだけでいいの?」

ラフィエル「えっ?」

サターニャ「頭を撫でているだけでいいのって、聞いてるのよ」

ラフィエル「こうされるのは、お嫌ですか?」

サターニャ「嫌いじゃないし……むしろ好きだけど」

サターニャ「他にしたいこと、あるでしょ?」

ラフィエル「そうですね……ありますよ」

サターニャ「……早くしなさい」

ラフィエル「ふふっ、わかりました」スッ


――

犬『ああっ、もうダメだ! 二人が近づいて……』


グラサン「……これで、フィナーレだ」カキカキカキ

19: 2017/05/23(火) 21:32:22.380 ID:W2Xtt50t0
 
 ピタッ


サターニャ「……」

ラフィエル「……」


グラサン「なんだ? 二人の動きが止まって……」

グラサン「ど、どうして、キスをしない!? たしかにノートには書き込んだはず!」

グラサン「もう一度だ! もう一度書いて……」カキカキカキ


サターニャ「……すぅ、すぅ」

ラフィエル「ふふっ、サターニャさん。寝てしまいました」


グラサン「なぜ、何も起こらない……なぜだ!」


犬『いったい、何が起こって……』

百合神『僕にもわからない……なぜ、あそこまで距離の近づいた二人が』

百合神『途中でキスをするのを、やめてしまったのか』


グラサン「どうしてだ、なぜなんだ……」

タプリス「……先生」

グラサン「千咲、か?」

タプリス「無理やり、お二人にキスをさせるのは……」

タプリス「やはり、よくないことだと、わたしは思います」

グラサン「なっ!? 千咲! お前、何をした!?」

21: 2017/05/23(火) 21:34:49.253 ID:W2Xtt50t0
 
タプリス「わたしも実は、先生と同じノートを持ってるんです」

グラサン「な、なんだって!?」

タプリス「そして、わたしは……それに、書き込みました」


タプリス「胡桃沢=サタニキア=マクドウェルと、白羽=ラフィエル=エインズワースは」

タプリス「氏が二人を分かつまで、自然体でいる、と」

グラサン「なん、だと……?」

タプリス「わたしは、先生のノートへの記載の合間に、これを書いたんです」

タプリス「よって、お二人が生きている間は、わたしが書いたノートの効力が持続され」

タプリス「他のノートの命令は、一切効かなくなります」

グラサン「そんな……」ガクッ


百合神『す、すごいぞ、千咲くん!』

犬『素晴らしい機転だね』

タプリス「あはは……、咄嗟に思いついたのが、うまくいって良かったです」

百合神『そうだ、千咲くん。その男に、ノートをタッチしてくれないか』

タプリス「え? あ、はい、わかりました」スッ


百合神『これで、聞こえるかな』

グラサン「こいつが……お前の百合神か、千咲」

タプリス「は、はい……」

百合神『あなたに一つだけ、言いたいことがある』

グラサン「……」

22: 2017/05/23(火) 21:37:30.607 ID:W2Xtt50t0
 
百合神『あなたのやったことが、間違っているとは言わない』

百合神『ただ、あなたの行為が、彼女たちの心までも捻じ曲げてしまっている』

百合神『そのことだけは、知っていてほしいんだ』

グラサン「……わかっては、いた」

グラサン「ただ、目の前の欲望に、目がくらんでしまった。それだけだ」

百合神『そうか……では』

百合神『僕と千咲くんが、自然に彼女たちを導くところを見せてあげよう』

グラサン「えっ?」



-夕方 公園のベンチ-


サターニャ「すぅ……すぅ……」


ラフィエル「……無邪気な寝顔ですね」

ラフィエル「私はどうして、あなたに悪戯をしてしまうのでしょう」

ラフィエル「……」

ラフィエル「嘘……そんなのはもう、わかっているんです」

ラフィエル「……これから、わたしが行うことは、戯れです」

ラフィエル「いつもの、戯れ、ですから」

ラフィエル「そう、それに対して、あなたがどんな仕草を見せてくれるのか」

ラフィエル「わたしにはそれが、楽しみで仕方がないんです」スッ

23: 2017/05/23(火) 21:39:56.237 ID:W2Xtt50t0
 
サターニャ「……」パチッ

ラフィエル「えっ?」


 グイッ ドサッ

ラフィエル「サ、サターニャさん? お、起きて……」

サターニャ「知ってるでしょ。私が、負けず嫌いだって」グイッ

ラフィエル「えっ? えっ?」

サターニャ「あんたが、私に悪戯をするっていうんなら」

サターニャ「私だってあんたに悪戯してやるわ」

ラフィエル「え、えと、その……」

サターニャ「ほら、こっち向きなさい」

ラフィエル「あ、あの……えっと……」

サターニャ「……」


ラフィエル「~~~ッ!」カァァァ

サターニャ「……あんたも、そういう顔、するのね」

ラフィエル「な、ななっ……い、いくら、サターニャさんが負けず嫌いだからって」

ラフィエル「今、あなたが何をしたのか、わかってるんですか!?」

サターニャ「……当たり前でしょ」

ラフィエル「えっ?」

サターニャ「それに……他の誰にだって、こんなこと、しないわよ……」

ラフィエル「そ、それって……」

サターニャ「やられたらやり返す、目には目を歯には歯を、って言うでしょ」

ラフィエル「あ……」

サターニャ「ほら、早く……私にも」

ラフィエル「……はい」ニコッ

24: 2017/05/23(火) 21:43:24.567 ID:W2Xtt50t0
 
グラサン「師匠と呼ばせてください」

タプリス「えぇっ!?」

グラサン「私は今、猛烈に感動している。こんなにも素晴らしい百合があったなんて」

タプリス「は、はぁ……」

犬『本当だよ、君の実力は大したものだ』

百合神『これなら完全に、このYURINOTEを千咲くんに託せそうだ』

百合神『ぜひ、世の中の百合少女を導いてほしい』

タプリス「えっと……たぶん、使うことはないでしょうけど……」

タプリス「わかりました、受け取っておきます」


タプリス(これを初めて、校庭で拾った時は驚きましたけど)

タプリス(でもまぁ、使い方を誤らなければ、問題ないですよね)

タプリス(ああ、そうそう。あの時たしか、誰のノートかわからずに困りましたっけ)

タプリス(でしたら……)


百合神『ん? 千咲くん、ノートに何をしてるんだい』

タプリス「えっと、落としても大丈夫なように、自分の名前を書いてるんです」


百合神『あ』

犬『あ』

タプリス「え?」


 ドドドドドドッ


タプリス「な、なんですか、この地響きは!?」

25: 2017/05/23(火) 21:44:54.651 ID:W2Xtt50t0
 
ガヴリール「タプリスゥゥゥゥ!!」

ヴィーネ「タプちゃぁぁぁん!!」


 ぎゅぅぅぅ

タプリス「ぐえっ、せ、先輩たち!?」

ガヴリール「ああ、お前はほんとにかわいいなぁ」グイッ

ヴィーネ「ええ、タプちゃん、大好きよ」グイッ


タプリス「ぐるじい……いったい、何がどうなって……」

百合神『ノートに君の名前だけ書いて、対となる名前を書かないと、だね』

百合神『世界中の女性が、君に百合百合してしまうのさ!』

タプリス「そんな!?」


 ドドドドドドッ

タプリス「ひっ! 人がたくさん来ます! 逃げないとっ!」ダッ

ガヴリール「待て! 逃げるな、タプリス!」

ヴィーネ「逃さないわよ! タプちゃん!」


百合神『全世界の女性から愛される女の子というのも……』

犬『なかなか、オツだね』



タプリス「いやぁ、助けてくださぁぁぁぁいぃぃぃっ!!」




おしまい

27: 2017/05/23(火) 22:10:10.764

引用元: ガヴリール「千咲ちゃん、キスの日に先輩たちを導く」