1: 2020/11/06(金) 07:49:45.954 ID:0f3jNQbma
少女「なんで毎日鍛えてるの?」

少年「そんなの決まってるだろ」

少年「強くなるためだ」

少女「腕立て伏せで強くなるの?」

少年「いつかねっ!」

少女「ふーん、くだらない。いつかっていつ?」

少年「さぁね、大人になるまでかな」

少女「そんなに長く待ってられないよ」

少年「……」

少年「君は目標とかないの」

少女「ないかな、だって努力したって報われるかわかんないじゃん」

少年「そうかな、筋肉は嘘つかないよ」

少女「でも、大人は嘘つくし」

少年「じゃあ、筋肉が足りないんだ」

少女「なにそれ…」

少年「嘘じゃない、筋肉は凄いんだよ、なんでも出来る」

少女「じゃあ私をここから連れ出してよ」

少年「もう少し筋肉がついたらね」

少女「…わかった」

~~1週間後

少年「ふっふっ!」

少女「今日は腹筋?」

少年「そうだよ、今日はいつもより調子がいいんだ!」

少女「へぇ、よかったね」

少年「君は?」

少女「いつも通りかな」

少年「そっか、じゃあ一緒に筋…」

少女「しないよ」

少年「…そっか」

2: 2020/11/06(金) 07:51:11.500 ID:0f3jNQbma
少女「そんなに筋トレして欲しいの?」

少年「いや、べつに」

少女「え、そうなの」

少年「したければすればいいし、したくないなら無理強いはしない」

少年「好きでやること以外に意味なんてないんだよ」

少女「どうかな、大人になるってきっと嫌なこともするって事じゃない?」

少年「だからこそ僕はしないんだ、したいこと以外は」

少年「やりたいことしかせずに、ずっと子供のまま。素敵な事だ」

少女「そうかなぁ、私は大人になりたいよ」

少年「へー、変わってるなぁ」

少女「君に言われたくないよ」

少年「大人になったとしてやりたいことあるの」

少女「…え?」

少年「大人でしか出来ないことってあるかな」

少女「うーん、お酒飲むとか」

少年「そんなの今だって出来る、法律なんか関係あるもんか」

少女「不良」

少年「ちがう、そうじゃないよ。僕達子供に出来なくて大人にしか出来ないことなんて…」

少年「きっと、そんなに多いわけじゃないって思うんだ」

少女「そうかな」

少年「少なくとも20歳になったらはいできます!って事なんか思いつかないかな」

少女「それはそうだけどさ…」

少年「やっぱり大切な物は日々の努力!」

少女「…」

少年「それに、今の君にできること。それが大切なんじゃない?」

少女「…ふん、つまんない」

4: 2020/11/06(金) 07:51:58.740 ID:0f3jNQbma
~~1週間後

少年「はぁ…」

少女「筋トレは?」

少年「今日は…やめとくよ」

少女「きついの?」

少年「たまには休憩も必要って事さ」

少女「筋トレって難しいね」

少年「いや、筋トレだけじゃないよ。人生って心も体も休む日が絶対に必要なんだ、人間は風船なんだよ」

少女「風船?」

少年「そ、風船。膨らめば膨らむほど大きくなるけど、膨らましすぎると破裂しちゃうでしょ。」

少年「だから息抜きは大切。自分を見つめ直す時でもあるんだ」

少女「難しい…よくわかんないや」

少年「いつかわかるよ。君はいつか大人になるんだからさ」

少女「…そうだね、所でさ。私も少し努力始めた」

少年「そうなんだ!すごいじゃん!確かに心なしか腕がすこし太く」

少女「なってない、筋トレじゃない」

少年「残念だ」

少女「なんでよ…」

少年「で、なにを始めたの?」

少女「まだ教えない。もう少し上手くなったらね」

少年「ケチだなぁ、時間は有限なんだよ?」

少女「それでもだめ。ヒントは寒くなってきたってこと」

少年「筋トレがいいね、血行が良くなって体が温ま…」

少女「うるさい」

5: 2020/11/06(金) 07:52:18.072 ID:0f3jNQbma
~~1週間後

少女「喜んでくれるかなぁ…」トボトボ

少女「あれ?来てない?」

少女「ん?」

看護師「あ?君が例の子?」

少女「え?」

看護師「手紙を預かったの、中身は分からないんだけど…字読める?」

少女「読めます…」

ぺラッ

中庭へいつも来る君へ

今日は室内で筋トレ日和だから室内ですることにするよ。

君の事だからこんな寒い日も中庭へ出そうだよね。

当たってるでしょ。

また会える日を楽しみにしてるね。

少女「なーんだ、今日は来ないんだ。つまんない」

看護師「今日…は…。ううん、来週は会えるといいね」

少女「じゃあ、これあの子に渡しといて貰えますか?」

看護師「ん?この紙袋は?」

少女「……やっぱりいいです」

看護師「え?え?」

少女「さよなら」

看護師「ちょっとー?」

少女(直接渡さないと反応見れないなぁ)

6: 2020/11/06(金) 07:52:38.820 ID:0f3jNQbma
~~1週間後

母「今日はダメよ」

少女「なんで?」

母「あなた、もうすぐ手術なのよ?こんな時に外を出歩かれると困るの」

母「それに、向こうの病棟の子と話すなんて…不吉よ」

少女「ッッ!」

少女「不吉?なんで?ママに関係ないじゃない」

母「なんてこと言うの!」

少女「私の手術なんて失敗する確率の方が高いんだよ。成功した所で大人になれるかわかんないんだよ!?」

母「だから私もパパもあなたのために!」

少女「私のためなら好きな事させてよ!これは今しか出来ないの!人生で…今だけなの!」

母「…向こうの病棟の子は手術しないのよ」

少女「どういうこと…」

母「そういうことよ、それがすべて。あなたの為にも会わない方がいいわ」

少女「わかんない」

母「好きにしなさい。あなたの人生ですもの」

7: 2020/11/06(金) 07:53:25.649 ID:0f3jNQbma
~~5分後

少女「あ、来てたんだ」

少年「うん、来ると思ってさ」

少女「あ、あの…」

少年「ん?」

少女「私、大人になれるかな」

少年「なれる」

少女「…はやいよ…答えるの」

少女「嫌なことも我慢できるかな」

少年「できる」

少女「でも、多分いっぱいあるんだよ。大人になるまで嫌なこと…これから」

少女「たくさん、たくさん、たくさん!」

少女「私はわがままだし、マイナス思考だし、何してもつまんない…」

少年「できる。君にはできる」

少女「なんでわかるの!そんなこと!」

少年「それは僕だからさ」

少女「…え?」

少年「みてよ、あんなに細かった手足が最近は少しだけ太くなったんだ。お母さんも泣くほど喜んでくれたよ」

少女「…そうだね」

少年「マッチョとまではいかなくても、僕も少しは筋肉がついたってことさ」

少女「どういうことなの…」

少年「言ったろ、筋肉は嘘つかない」

少女「!!」

少年「僕のこの筋肉は他人から見れば少ないかもしれない。でも僕には大きな希望なんだ」

少年「とても大きな意味があるんだ。例え小さい光でも、か細くても…それは光に違いない、嘘偽りない真実なんだ」

少年「そして僕が生きた証拠なんだ」

少年「もう一度言うよ、君はできる」

少女「…」

少年「君はすごい、君はがんばれる、君は輝ける!」

少女「うぅ…」

9: 2020/11/06(金) 07:54:23.137 ID:0f3jNQbma
少年「君は大人になれるよ、僕のこのありったけの筋肉に誓う」

少女「うわぁぁぁん」ギュッ

少年「うわ!急に抱きつかないでよ!」

少女「ありがとおおお」ズビビ

少年「鼻水……」

少女「これね…?」

少年「ん?」

少女「私の少しだけだけど…努力の結晶…結構苦労したんだ…」

少年「これは…」

少女「マフラー、外で筋トレって寒いでしょ!」

少年「寒い日も外でやれってこと、なかなか厳しいね」

少女「君ならできる!!…でしょ?」

少年「凄くうれしいよ、ありがとう!」

~~1週間

少女「……」

看護師「あの子は…」

少女「分かってます…」

看護師「え…」

少女「もう来ないんですよね」

看護師「…あなたがくれたマフラー…とても喜んでいたわよ」

少女「でしょうね…分かってます…」

看護師「さよならって直接言いたかって…」

少女「分かってます…でも、分かりません。分かりたくない…です」

看護師「来月の手術頑張ってね、あなたはあの子の分も生きるの。あの子の心臓があなたに移植されることが決定したの」

少女「…るよ」

看護師「え?」
少女「わたし、できるよ。なんでもできる。そう言われたんだもん!」

看護師「!!」

10: 2020/11/06(金) 07:54:40.916 ID:0f3jNQbma
~~20年後

部下「あの大企業に納品できるなんて!さすが社長ですね!」

女性「うちの編み物は世界一ですもの」

女性「覚えておいて、私はなんでもできる。」

部下「一生ついて行きます!!」

~~fin?

12: 2020/11/06(金) 07:58:51.854
なんか目がうるっとした

13: 2020/11/06(金) 08:00:14.035
感動した

引用元: 少女「なんで毎日鍛えてるの」少年「強くなるためだ」