1: 2012/12/03(月) 02:02:31.47 ID:1z5tvHI00
「魔族と内通し勇者の情報を流したのは貴様だな?」

「私だけではない!!他にも魔族と内通している貴族達が居るはずだ!!なのに私だけを裁くのか!?」

「貴様を始末した後に奴らも始末する…勇者に仇なす者には氏を…」

「頼む!!妻と娘がいるんだ見逃してくれ…」

「お前も貴族ならばオレがどのような存在かは知っている筈だ……」

「やめろ、助けてくれ…」

ヒュッ

「助けゃッ」

ブシャッ…ゴロン…





「神よ、この者の魂を救いたまえ…」

 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354467751

2: 2012/12/03(月) 02:09:50.95 ID:1z5tvHI00
「我々の一族は代々勇者に仇なす者を葬ってきた、魔王が復活し世に混乱が生じた時、魔族に組する輩が必ず出てくる」

「そして、四百年の時を経てついに魔王は復活した、魔王自体の力はまだ不完全だがその求心力は凄まじい」

「魔王は瞬く間に魔族を統率した」

「魔王が復活した時、勇者もまた現れる」

「覚醒したばかりの勇者の情報は旅を開始するまでの僅かな間秘匿される、知る者は諸国の王、そして王に使える少数の貴族のみ」

「これは力を自覚したばかりの勇者を魔族に襲撃させない為だ」

「だが一部貴族が魔族へ情報を漏洩させた」

「本来であれば、我々一族にも勇者が誰なのか、どこにいるのかは旅の開始まで知らされないのだが、事態は急転し勇者の護衛、及び件の貴族暗殺が王より命じられた」

「今、勇者は壱の国の都にいる」

3: 2012/12/03(月) 02:12:13.46 ID:1z5tvHI00
「魔王復活までの四百年、やはり人も変わったのでしょうか?父上」

「魔族の甘言に惑わされる者はいつの時代にもいる、人間は目先の欲に目を奪われる」

「だが貴族は別だった」

「貴族とは元々は王宮騎士、その中でも魔族に親兄弟を殺害された者を王は貴族にしたという、だが四百年が経ち少しずつ薄れていったのだろう」

「勇者様は無事でしょうか?」

「今まだ無事としてもいつ襲撃されてもおかしくは無いだろう、だからお前が守らなければならない」

「魔王自身は力を完全に取り戻すまで自ら動く事はないだろうが、勇者様はそうはいかんからな…」

「承知しております」

「息子よ、幼さい頃から過酷な修練ばかりで父らしい事を出来ないで済まない、だが私も祖父達もそうだったのだ、分かって欲しい」

「いえ、誇りに思います、勇者様を守れるのですから」

「そうか…では旅の無事を祈る」

「では行って参ります」ガチャ

バタン…




「息子よ…すまない…神よ…どうかお許しを」

4: 2012/12/03(月) 02:21:52.30 ID:1z5tvHI00
壱の国ー都

「ここが都か…凄いな、今まで見た街とは全く違う」

早く王宮に向かわなければ…

タタタッ ドンッ

「きゃっ」ドサッ

十歳位の女の子だ、大丈夫だろうか。

「助けて!!わるい奴に追われてるの!!」

「えっ」

『どこに行った!? 早く探せ!!』

騎士?この娘を追っているのか

…!? はぁ、仕方ない。

「訳は後で聞くよ、とりあえずこのローブを羽織って」

「ありがとう、お兄ちゃん」バサッ

『こっちにはいない!! 路地裏を探せ!!』

「じゃあ、歩きながらお話ししてくれる?」

「うん…」

5: 2012/12/03(月) 02:24:15.52 ID:1z5tvHI00
「王宮でお稽古か、大変そうだね」

「本当に大変なんだよ!!朝から晩までやりたくないことばっかり…」

この年頃なら稽古より遊びたいだろう。

「でも戻らないと」

「うん…心配かけちゃうし、でも怒られるかも」

「大丈夫、僕は王宮に用がある、君に道案内して貰ったと言えば何とかなるさ、嘘にはならないし」

「そうなの!?じゃあ、行こっ!!」

6: 2012/12/03(月) 02:28:32.68 ID:1z5tvHI00
王宮ー大門前

やっと着いた…途中途中でお菓子やら何やら買わせられ、疲れたと言えばおぶり、今はどうやらはしゃぎ過ぎた様で背中で寝ている。

「着いたよ」ユサユサ

「う?ん、分かった?」ポケー

「ほら行こう」

「王宮に何用か?」

「王に謁見を、手紙はここに」

「ふむ、暫し待たれよ、して、そちらのローブの娘は…」

「ただいま…」バサッ

「姫様っ!!皆心配したのですぞ、ささっ早くこちらへ!!」

「このお兄ちゃんと一緒に入っていい?」

「もう何でも良いですから!!早く参りましょう、王が心配しておりますから」

「姫様だったのか」

「何だかあんまりビックリしてないね」

「だって手紙にあった紋章と同じ指輪をしてたから」

「実はこれパパのなんだ、カッコイイでしょ」エヘヘ

「怒られないの?」

「あっ…どうしよう?」フルフル

「それは流石に僕には庇えないよ」

7: 2012/12/03(月) 02:38:33.40 ID:1z5tvHI00
謁見の間

「いやぁ?良かった良かった!!心配したぞ?姫」ナデナデ

「指輪のこと、怒らないの?」

「そんなの無くたってパパは王だから大丈夫さ!!チンケな指輪より愛する娘の方が大事に決まってるだろう?」

チンケって…あれは王家に代々伝わる指輪のはずだが…


「何かよく分かんないけどパパかっこいい!!」キラキラ

「ハハハッ!!そうだろう、そうだろう」ニッコニコ

「してそなたは?」

「私は『守り手』で御座います」

「!!…姫、部屋に戻りなさい」ニコリ

「は?い」

「大臣よ、娘を部屋まで頼む」

「畏まりました」

「お兄ちゃん、またね」フリフリ

「またね」フリフリ

「さっ、姫こちらへ」

ガチャ

パタンッ

8: 2012/12/03(月) 02:43:31.28 ID:1z5tvHI00
「若いな、父が来るかと思ったのだが…務まるか?」

「問題ありません」

「そうか、『勇者』『魔王』そして『守り手』共に四百年振りの事、もう先代魔王の驚異を知るものはいない」

「だが着実に魔族による被害は増え人々は怯え始めている、勇者には確実に魔王を倒して貰わねばならん、その為の協力は惜しまない」

「だが知っての通り、一部貴族が魔族に情報を漏らしたのだ…済まない…」

「頭をお上げ下さい、四百年あれば諸々が変わってしまうのも仕方ない事、今は勇者様の護衛と…」

「暗殺か…辛い責務を与えてしまった…」

「いえ勇者様に仇なす者は誰であろうと氏を以て償わせるのが我々です、四百年前も…今も…」

「そうだったな…勇者は今、中庭で剣術の修練をしている、まだ幼いが…凄まじく飲み込みが早い、剣術・魔法共に旅に出ても問題無い強さだろう」

「話はしてある会ってくるがよい」

「はっ」

9: 2012/12/03(月) 02:46:06.85 ID:1z5tvHI00
貴族が暗殺されれば他の者達も『守り手』の存在を恐れ、魔族と結託などしない筈。

王が選んだ者が魔族と内通したと知れれば浅くはない痛手を負うことになる、事を公にせず秘密裏に終わらせられる。



       

10: 2012/12/03(月) 02:51:41.18 ID:1z5tvHI00
だがそれは全て勇者の為…

           ー守り手ー

    ー勇者の守護者であり穢れを背負う者ー

     
      あの青年は耐えられるだろうか?

    
    ー『勇者』が守る『人間』を頃すことをー

   
     奥底にある黒い醜さを見続けることを…








11: 2012/12/03(月) 03:09:00.90 ID:1z5tvHI00




           何よりも





     自分が『暗殺者』であるということに…








18: 2012/12/03(月) 21:28:50.27 ID:ZeNr+cZo0
王宮ー中庭


勇者「ハッ!!」ヒュッ

師範「むん」シュッ

ガギッ ギリ…ギャリ

勇者「うぅ……やっ!!」クンッ

師範「ぬっ」グラッ

勇者「ッ!!」ブンッ

師範「ぜあっ!!」シャッ

ガギンッ

勇者「んっ!!」ググッ

師範「甘い!!」ドカッ 

勇者「うわっ」ガクン

師範「ふんッ!!」シャッ

勇者「くっ」バッ

ビタッ

勇者「また、負けた…」ガックリ

師範「勇者様、魔物は正攻法では無いのです、もっと視野を広げなさい…」

勇者「はい!! ありがとうございます!!」

師範「ですが、剣を手にして数日で王家剣術指南役の儂と打ち合えるとは…」

勇者「僕は勇者だから!! でも、もっと強くなって魔王を倒さなきゃ…」
勇者とはいえ、まだ十六の子供…

架せられた運命を受け入れるのは容易な事ではない筈だ。

だがこうして、この子の瞳を見ていると成るべくして成った様に感じる。

この子ならばきっと……



師範「勇者様……そうですな、勇者様ならば必ずや魔王を…おや?」

31: 2012/12/03(月) 22:42:25.19 ID:ZeNr+cZo0
王宮ー中庭


勇者「ハッ!!」ヒュッ

師範「むん」シュッ

ガギッ ギリ…ギャリ

勇者「うぅ……やっ!!」クンッ

師範「ぬっ」グラッ

勇者「ッ!!」ブンッ

師範「ぜあっ!!」シャッ

ガギンッ

勇者「んっ!!」ググッ

師範「甘い!!」ドカッ 

勇者「うわっ」ガクン

師範「ふんッ!!」シャッ

勇者「くっ」バッ

ビタッ

勇者「また、負けた…」ガックリ

師範「勇者様、魔物は正攻法では無いのです、もっと視野を広げなさい…」

勇者「はい!! ありがとうございます!!」

師範「ですが、剣を手にして数日で王家剣術指南役の儂と打ち合えるとは…」


勇者「僕は勇者だから!! でも、もっと強くなって魔王を倒さなきゃ…」


勇者とはいえ、まだ十六の子供…

架せられた運命を受け入れるのは容易な事ではない筈だ。

だがこうして、この子の瞳を見ていると成るべくして成った様に感じる。

この子ならばきっと……



32: 2012/12/03(月) 22:44:10.67 ID:ZeNr+cZo0



師範「勇者様……そうですな、勇者様ならば必ずや魔王を…おや?」



「初めまして勇者様」ペコリ


勇者「えと、誰ですか?」


「私は守り手でございます」


師範「そうか…貴殿が…では勇者様、儂はここで失礼致します」ザッ

勇者「うん、稽古ありがとう!!」



33: 2012/12/03(月) 22:45:51.00 ID:ZeNr+cZo0



勇者「えぇと、王様が言ってた人だよね?」


「はい、お目に掛かれて光栄です」ニコッ


勇者「っ!!!!」ゾクッ


「如何しました、勇者様?」


勇者「もういいよ、嘘をつかなくて」


「……………」ズズズ


勇者「だってあなたは……いや…お前は」






勇者「人間じゃないっ!!」



「ウグルァ…」メキャメキャ



勇者「コレが……コレが魔物っ!!」ギリ


ドラゴン……直に見たことは無いけど誰だって知っている。

その強さも…


勇者「だけど…負けられない!!」ジャキ


34: 2012/12/03(月) 22:48:51.06 ID:ZeNr+cZo0


「ゴァァッ!!」ブンッ



勇者「せいっ!!」ヒュッ

ガッ ギャギャリ 

勇者「硬いっ!! ぐっ、うあッ」ググッ

バキンッ  トサッ

勇者「やっぱり稽古用の剣じゃ…」


「グウウッ」コォォ


勇者「っ!?」ダッ


「グヴァッ!!」ゴバッ


ヒュゴォォォ…!!


勇者「危なかった…はぁっはぁっ」ゴロゴロッ


「グラァッ!!」ビュン


勇者「爪が伸びたっ!!」


勇者「避けきれないっ」バッ

ザグリッ

勇者「脚がっ」ドクドク


「ヴルル」コォォ


35: 2012/12/03(月) 22:49:50.71 ID:ZeNr+cZo0

勇者「またブレスか…使うしか…無い……」

勇者「王様っ、ごめんなさいっ」


勇者「聖雷・大!!」カッ

ズズ… 

ドッ!! ギャガガガガ!!!!


「ググァァ!!ギィアアアアァァ…」シュゥゥ


勇者「はあっ、倒せた…またいっぱい壊しちゃったけど……」


『ゾンビ兵か!! 数が多い!! 固まるなっ!!』ワァァ


勇者「大門の方から!? 治癒・小」パァァァ

勇者「はっはぁっ」ガク

勇者「やっぱり魔法っは疲っれるな…ふうっ、よしっ!! 急がないと…!!」ダダッ



36: 2012/12/03(月) 22:52:29.86 ID:ZeNr+cZo0
王宮ー廊下

ドッ!! ギャガガガッ…

「何だろう?」

ダダッ

近衛兵「大変です…王宮内に魔物が!!」

「っ!? 勇者様はどこに!?」

近衛兵「中庭でドラゴンと交戦していたのを目撃した者がおりますが…」

「ドラゴン!? 他に魔物は、それに都はどうなってるんです!?」

近衛兵「突如大門付近にアンデッドが多数確認されました!!」

近衛兵「おかしな話しですが、都には魔物は出現していません」

完全に王宮のみ狙っている、目的はやはり勇者様か…

「そうですか……では大門には僕が、あなたは王に報告を!!」

近衛兵「了解しました!!」ダダッ

「情報が漏れて三日も経たぬうちに襲撃とは…流石に対応が早いな」

「急がないと…」ダッ

37: 2012/12/03(月) 22:54:06.53 ID:ZeNr+cZo0
大門

『ゾンビ兵か!! 数が多過ぎる!! 固まるな!!』

「ゲャギャア」ブンッ

騎士「しまった!!」

ガギンッ

「無事か!?」

騎士「師範殿っ!!」

師範「これ以上は好きにさせんぞ哀れな氏兵共っ!!」グッ

ズバッ

「ギエッ」

サラサラサラ

師範「土に還ったか…」

師範「皆の者!! 儂の後ろに付け、これ以上進ませる訳にはいかん!!」

『はっ!!』

師範「誰一人……誰一人とて氏なせはせんッ!!」

ザンッ ズギャッ ドッ…… 

騎士「師範共!! 前方より増援がっ!!」

師範「ふむ……儂は残る、おぬし等は王宮内へ」

騎士「流石に師範殿一人では…」

師範「ここらの氏兵はあらかた倒した、残るは前方の奴等のみ、怪我人もおる…行け」

騎士「ですが!!」

師範「行けッ!!」

師範「育てた若者が氏ぬのは見とうない…」

騎士「っ!!」

騎士「全騎士に告ぐ!! 負傷者を王宮内へ!! 」


『了解!!』ザッ

38: 2012/12/03(月) 22:56:32.27 ID:ZeNr+cZo0

師範「行ったか……おうおう…ワラワラ湧いて来よるわ、丁度ちょこちょこと斬るのに苛々していた所…」

師範「意志無き魔王の氏兵…今 楽にしてやる」スッ

師範「剣技・風の太刀…」チャキ


ドヒュッ………キィィンッ……


ドゥッッ!! ズバババババババババッッッ!!!!

『ぐぎゃぎゃギャゃギエッゃゃ』

サラサラサラ………

師範「氏者と云えども人を斬るのは気持ちの良いものでは無いな…安らかに眠れ」

師範「魔王め、王宮に直接魔物を召還するとは…勇者様の居場所は旅が始まるまで知らされぬ筈、いったい何が起きているのだ……」

39: 2012/12/03(月) 22:58:27.99 ID:ZeNr+cZo0
大門

『ゾンビ兵!! 数が多すぎる!! 固まるな!!』


『ゲギャア』

『しまった!!』

『無事か!?』

『師範殿!!』

『これ以上好きにはさせんぞ哀れな氏兵共!!』

「まずいこのままでは氏者が……っ!?」ゾクッ

何だ…今の感じは……どこにいる!?


「城壁の上っ…ローブの男、あれは魔導士か!? 此処にいるゾンビ兵共々魔法で攻撃するつもりか!!」

「くっ、魔法を放たれれば終わりだ、まず奴を潰さなければっ」ダッ

40: 2012/12/03(月) 23:01:11.06 ID:ZeNr+cZo0
城壁上

魔導士「あの爺は厄介だな…そろそろやるか」

「待たせたな」スッ

魔導士「……!? ふふっ、大事な勇者様の所へ行かなくてよいのか?『守り手』よ…」

魔導士「いや善人の皮を被った『暗殺者』…」

「オレの事などどうとでも呼ぶが良い、だが勇者様は決して負けない、そして貴様には此処で氏んで貰う」

魔導士「ハハハッ!! 最早『殺人者』の方がお似合いだな!! まあ良い、此処でお前を消せば今後楽になる」ゴッ

41: 2012/12/03(月) 23:02:08.69 ID:ZeNr+cZo0

「すぅ、はぁぁ、来い……!!」ジャキ

魔導士「ふふっ、魔氷・槍」ビュン

ドッ!! ヒュパパパパッ


「………」スッ


ギャギギギギン パラパラ…

魔導士「ふむ、全て弾くとは…面白い!!」


42: 2012/12/03(月) 23:03:29.65 ID:ZeNr+cZo0


「…………」ググッ 

「殺陣・影断ち」 フッ


魔導士「むっ!?魔炎・円!!」ゴッ

ボウッ!! メラメラ…

魔導士「(この炎では間合いには入ってこれないばず、だが忌々しい事に奴の気配も感じられん)」

魔導士「だが全方位に魔法を放てば良いことだ、つまらんな…」


「あぁ、そうだな」シャッ


魔導士「なっ!?」

ドドドッ

魔導士「ぐっ、なんだコレは…」ガクガクッ


「破魔の力を宿したナイフだ、貴様等にとっては毒だろうな、もう魔法は使えない、戦闘を楽しむなど愚かだな」


43: 2012/12/03(月) 23:04:58.93 ID:ZeNr+cZo0



魔導士「ふふっ…やはり人形如きではお前を殺せそうにないな」


やはり本体ではないか…

「聞きたいことがある」


魔人形「何だ?長くは保たんぞ」シュゥゥ

「目的は勇者殺害か?」


44: 2012/12/03(月) 23:11:30.60 ID:ZeNr+cZo0


魔人形「……ふむ…いいだろう、話した所で何の支障もない……目的は勇者殺害ではない、覚醒して間もなくドラゴンを倒したのには少々驚いたがな」

魔人形「本来の目的は、お前を抹頃する事だった」


「………」


魔人形「魔王様でもない我々の様な魔族では勇者は倒せまい…だが人間ならどうだ? 勇者は躊躇い無く人間を殺せるか? 出来んだろう、お前は出来るだろうがな」ニヤ

魔人形「そう…『守り手』であるお前を消してしまえば我々が直接手を下さずとも頃す方法など幾らでもある、人間を使ってな…」

魔人形「ふふっ、勇者は守るべき者に殺されるのだ、実に愉快な話しだろう?」

「させないさ…その為にオレがいる、『勇者』は人々にとって唯一の希望…精々策を練るがいい」シャッ

ズバッ  ゴロッ…

魔人形「コレかラ、オ前ハ誰 モ信じられズ、氏んデ いくノだ、魔族に怯え、人を疑イ、夜を怖レ氏ンで逝クノダ…」

魔人形「ハひゃハギャハハハッ!!!」

「覚悟の上だ、そんな事は分かっている」ブンッ

グシャ…

「はヒャ…ギャはヒュ………」シュゥゥ…




「あぁ………分かっているさ…」ザッ





46: 2012/12/04(火) 02:02:35.26 ID:nZbq0Klb0
大門

勇者「師範さん!! 無事ですか!?」ハァハァ

師範「勇者様、怪我人は出ましたが皆無事ですぞ」

勇者「良かった……本当に良かった」

師範「他に魔物は居ない様ですので、ひとまずは安心して良いでしょう…」

勇者「あの人は誰だろう? っ!?」ジャキ

師範「勇者様如何なさった!? あれは先程の…」

勇者「さっきの『守り手』と名乗った方は魔物でした!! 気を付けて下さい…」

師範「なんですと!?」スッ

「皆さん、ご無事ですか!?」ハァハァ

勇者「そこから動かないで下さいっ!!」

「…あなたが勇者様ですか?」

勇者「…!? なんで、分かったの?」

「それは『勇者』の『守り手』だからです…」

勇者「………師範さん、さっきの偽物からは何か嫌な感じがしたけど、この人からは感じません」

師範「ふむ…そうか」

勇者「疑ってしまってごめんなさい…」

「いえ…その様な事があったのなら当然の事です」




47: 2012/12/04(火) 02:04:42.93 ID:nZbq0Klb0



勇者「えぇと、初めまして勇者です、あなたが僕の…『勇者』の守り手…」

「はい…私は貴女の守り手、『勇者』を守護する者です」

勇者「あの、お名前は?」


困ったな…勇者様には『守り手』がどんな役目かは知らされない。

精々、旅の共の様なもの位にしか…

勇者様には、勇者様にだけは知られてはならないのだから。



「僧侶、僧侶と及び下さい…」





勇者「僧侶さんですか、よろしくお願いします」ニコッ




48: 2012/12/04(火) 02:07:14.23 ID:nZbq0Klb0




この笑顔を曇らせてはならない…

何が起きても…


僧侶「はい、よろしくお願いします勇者様」ニコッ

勇者「僕の事は勇者でいいよ、くすぐったいし、僕も僧侶って呼ぶからさ」ヘヘッ

僧侶「…分かりました、勇者」ニコッ


師範「お二方、王に報告を頼まれてくれないか、儂は少し此処に残る…」

『はい!!』 『えぇ分かりました』

僧侶「行きましょう」

勇者「言葉遣いも普通でいいよ、えっと、ほら…仲間だし!!」


勇者様と云えどもまだ子供なのだな…仲間か…


僧侶「分かったよ、勇者」

勇者「よし!! じゃあ行こう、僧侶っ」ニコッ



49: 2012/12/04(火) 02:10:02.47 ID:nZbq0Klb0
大門

師範「まだ若かろうに、あの青年『僧侶』と言ったか……」

上手く消していたが凄まじい殺気をその身に纏っていた…

いったい、どれ程の修練を積んだのだろうか?


『守り手』…魔王復活までの四百年の間も技を磨き一子相伝を貫いた一族。

儂の剣技などとは全くの別種、

殺人術…文字通り人を殺める術。

そこらの魔物も足下にも及ぶまい…

師範「折れるでないぞ…僧侶よ、心が折れればおしまいじゃ…」




52: 2012/12/04(火) 03:49:09.06 ID:nZbq0Klb0
謁見の間

王「報告ご苦労、今回の襲撃は勇者を狙ったものだろう」

勇者「王様ごめんなさい…僕のせいで大変な事に…」

王「勇者よ、そなたが謝ることなどない、幸い氏者も出なかったのだ」

王「しかし所在が知れた以上、このまま此処に留まることは……」

勇者「はい…僕はこのまま僧侶と魔王討伐の旅に出ようと思います」

王「僧侶? ……!! なる程…分かった、勇者そなたは旅の支度をせよ」

勇者「はい、では行きます…お姫さまに、お元気でとお伝え下さい、王様もお元気で!!」ニコッ

勇者「僧侶っ、行こう」

王「待て、僧侶そなたには少し話しがあるので残れ」チラッ

僧侶「はっ」コク

勇者「……?? じゃあ僕は先に支度しておくよ」

僧侶「分かった、後でまた」

勇者「うんっ」ニコッ



53: 2012/12/04(火) 03:54:23.04 ID:nZbq0Klb0
王「僧侶よ、報告を頼む」

僧侶「はい」

僧侶「狙いは勇者様でなく私でした…魔族は人間を使い勇者様を殺害しようと画策している様です」

王「……なる程、その為にまずそなたを狙ったか、勇者は心優しい純粋な子だ、どこにいてもおかしくない年頃の娘だ…魔族の手下に成り下がった人間すら斬れまい」

僧侶「それが奴等の狙いでしょう」

王「ふむ…そなたにとって辛い旅になりそうだな…」

僧侶「もとより覚悟しておりました、何より勇者様には笑っていて欲しい、あの方は希望の象徴…必ず守り抜きます」

王「勇者を頼む……」

僧侶「はっ」



54: 2012/12/04(火) 03:56:40.05 ID:nZbq0Klb0




王「それと件の貴族だが……先程の襲撃に乗じて逃亡したようだ」

僧侶「場所は?」

王「都の近くの港街に向かっている…今夜出航の船に乗る前にやらねばならん」

僧侶「お任せ下さい」ズズッ

王「」ゾクッ


先程までの勇者に対して見せた慈愛に溢れた表情など欠片も感じられん!! 

この青年の本質が掴めん…

一体、幾つの顔を持っているのだ…

勇者ならば、勇者ならばこの青年の心を癒やすことが出来るかもしれん…




55: 2012/12/04(火) 03:58:54.82 ID:nZbq0Klb0



王「僧侶よ…覚えておけ、勇者はそなたにとっても希望なのだ……」

僧侶「………」

王「…いずれ分かる」

僧侶「はい、覚えておきます」

王「それと渡す物がある、まず旅の路銀三十万ゴルと先程の襲撃で勇者が倒したドラゴンの牙と鱗そして爪だ」


王「今夜出航の船で弐の国へ行き鍛冶屋を訪ねると良い、必ずや良い武具と防具を鍛えてくれる」

僧侶「ありがとうございます、そんな大金まで…」

王「これくらいしか出来んのだ、すまない…無事を祈っているぞ」


僧侶「では、私も行きます…」

王「また何時でも来るが良い」

僧侶「はっ、では」



63: 2012/12/04(火) 21:01:58.29 ID:mzKCVqE10
王宮の一室

勇者「元々荷物は少ないし、早く済ませちゃおう」ガサゴソ

チャラッ…

勇者「あっ…これは神父様がくれたロザリオだ……みんなに、会いたいな…」ギュッ…


勇者「帰りたいっ、戦いたくないっ!!  氏にたく…ないよぉ…」グスッ

勇者「僕はっ……私は勇者なんかじゃない、弱虫で泣き虫で…何で私が勇者になったんだろう……」グスッ



僧侶「……………」




64: 2012/12/04(火) 21:03:18.90 ID:mzKCVqE10



『勇者』である前に人、

それも十六の子供……

戦いとは無縁の人生から一転し魔王討伐を任せられ、戦乱の中に放り込まれれば戸惑わない訳がない。

これから、彼女は自分が『勇者』だということを旅を通して更に実感するだろう……


オレは旅の中で彼女に与えられるだろうか?


優しさや……心の安らぎを…


真に、『守る』とは何なのだろう……

勇者「でも、泣いてちゃダメだよね……世界中の人達が待ってるんだ、悲しんでいる人達だって沢山いるんだ」ゴシゴシ

勇者「僕が、僕が守るんだ……」グッ

コンコンッ



65: 2012/12/04(火) 21:05:17.95 ID:mzKCVqE10


勇者「僧侶かな…入っていいよ」

ガチャッ

僧侶「待たせたね、準備は出来た?」

勇者「うんっ、ちょうど今終わったとこだよ」ニコッ

僧侶「じゃあ行こうか」

勇者「えっと、どこに行くの?」

僧侶「ごめんごめん、言ってなかったね…」

僧侶「まずは都を出て港町に向かう、そして今夜出航する船で弐の国へ、明日の昼には着くと思う」

僧侶「それと王様が都の外に馬車を手配してくれている、夕方には着くから港に着いたら出航まで休もう」

勇者「船かぁ…じゃあ早く港に行って休もう!! 疲れたし……」ハァ

僧侶「はははっ、そうだね」ニコッ




66: 2012/12/04(火) 21:06:08.14 ID:mzKCVqE10


王宮ー廊下


師範「おやっ、勇者様、僧侶殿も御一緒ですな」

勇者「うんっ、これから港に向かうんだ、王様が外に馬車を用意してくれてるって」

師範「もう行かれるのですか…寂しくなりますなぁ…」ショボン

勇者「すぐ魔王を倒してくるから!! また会えるよ師範さんっ」フフッ

師範「そうですな…また会える日をお待ちしております」ニコリ

勇者「じゃあ、行って来ます!!」

師範「武運長久を祈ります、お気を付けて!!」



67: 2012/12/04(火) 21:07:32.81 ID:mzKCVqE10


師範「おっと、そうじゃった…僧侶殿」チョイチョイ

僧侶「はい、何でしょう?」クルッ

師範「『勇者』としてではなく、あの子の『本当』を見てやりなさい、守る方法は幾らでもある…戦う事だけではないぞ」ボソリ

僧侶「はい…ですが私は『守り手』です、戦う他には…」

師範「『守り手』以前に人じゃろう?お主の心はそこまで冷えてはおらんよ」

僧侶「…………」



  『僧侶置いてくよ!!』オーイ



師範「お主自身にとって『勇者』とは何か、今一度考えて見ると良い、まだ若いんじゃ、悩め悩めっハッハッハ!!」

僧侶「…ありがとうございます、師範殿……オレは…オレは『勇者』を『彼女』の笑顔を守ります…では」ザッ



68: 2012/12/04(火) 21:08:37.02 ID:mzKCVqE10


師範「やはり若者はああでなくてはな…」ニコリ

まだ危うさはあるが、あの子と居れば変わる筈……

あの子もいつか心の脆さを晒す時が来るだろう、その時は頼むぞ、若者よ…



69: 2012/12/04(火) 21:12:14.74 ID:mzKCVqE10

港町

僧侶「着いたよ勇者」

勇者「う、うぅん…ごめん僧侶、少し寝てたみたい」

僧侶「馬車の運転お疲れ様」

僧侶「あんな事があったんだし仕方ないさ、早いとこ宿屋に行って出航まで休もう」

勇者「うん、そうだね」


ー宿屋ー

店主「いらっしゃい、お二人様、宿泊でよろしいですか?」

僧侶「いや、夜に出航する弐の国行きの船が来るまで休ませて頂きたい」

店主「一泊分の料金になりますが?」
僧侶「構いません」

店主「ではお二人で200ゴルになります」

僧侶「……」チャリ

店主「お部屋は二階の一番奥の部屋になります」



70: 2012/12/04(火) 21:13:14.69 ID:mzKCVqE10


宿屋ー部屋ー

勇者「やっと休めるよぉ」ボフッ

僧侶「少し寝ると良い、船が来たら起こすから」

勇者「ねぇ、僧侶は休まないの?」

僧侶「オレは大丈夫、気にしないで休んでていいから」ニコリ

勇者「そっか…あんまり無理しちゃダメだよ?」

僧侶「あぁ、分かった」

勇者「じゃあ、おやすみ」

僧侶「おやすみ…勇者」

…………………

勇者「スゥ…スゥ……」ムニャムニャ

僧侶「日も暮れた…そろそろ行くか」ガチャッ

パタン



71: 2012/12/04(火) 22:56:39.09 ID:PS/hr3up0



僧侶「貴族の情報を集めるか…」


ー酒場ー


オヤジ「いらっしゃいっ!!」

僧侶「ストリチナヤをくれ」

オヤジ「はいよ!!」コトン

僧侶「………」グイッ

僧侶「ふぅ、なあオヤジ、貴族を見なかったか? 渡す物があって探してるんだが……」コトッ

オヤジ「あんた王宮から来たのか? あんな奴に使われるなんて気の毒だな」



72: 2012/12/04(火) 22:58:49.13 ID:PS/hr3up0


僧侶「……だろ? 全く、飲まなきゃやってられんっ!!」

オヤジ「ハッハッハ!! まぁ気を落とすな、一杯サービスしてやる」コトン

僧侶「すまないな…」グイッ

オヤジ「アイツ、ウチに来て酒も飲まず散々バカにしていきやがってよぉ」

僧侶「災難だったな…それで、どこにいるか分かるかい? 早く渡さないと何を言われるか…」

オヤジ「ハハッ!! 悪い悪いっ、アイツならボロい宿屋には居られないとか言って町外れにある屋敷に行くって言ってたな」ウン



73: 2012/12/04(火) 23:02:56.12 ID:PS/hr3up0


僧侶「そうか、助かったよ…御馳走様」チャリン

オヤジ「おっ、おいおい、こんなにいらねぇよ」

僧侶「愚痴聞いてもらって気分がいいんだ、受け取ってくれよ」ニコッ

オヤジ「そうか? じゃあ遠慮なく…おい!! また来いよ、サービスすっからよ!!」ニカッ

僧侶「……あぁ、また来るよ」ガチャッ



僧侶「今行くぞ…待っていろ」ザッ



74: 2012/12/04(火) 23:07:26.91 ID:PS/hr3up0


町外れー屋敷ー


僧侶「ここか、屋敷の周囲を護衛が巡回している、5人か…」スッ

護衛兵「全く、何でオレがあんなヤツの護衛しなきゃならないんだ」

ザザッ…

護衛兵「んっ、なんだ? ッ!!」ドサリ

僧侶「済まない、少しの間寝ていてくれ」ゴソゴソ


『おい!! 誰か倒れてるぞ!!』

『なに!? 警戒しろ!! まだどこかに潜んでいる筈だ!!』



75: 2012/12/04(火) 23:11:07.88 ID:PS/hr3up0


貴族「おい!!どうなっている!?」

護衛兵「護衛が一人倒れていました、何者かに襲撃されたのかと…」

貴族「役立たずがっ!! 今すぐ馬車を用意して私を港町に連れていけ!!」


まさか…奴が追って来たのか…!! 

氏んでいれば良かったものを、魔族の屑共め、情報を差し出したと言うのにしくじりおって!!


護衛兵「分かりました!! 此方へ!! 貴族様、お乗り下さい」


貴族「分かっている!! 早く出せ!!」

護衛兵「はっ!!」



76: 2012/12/04(火) 23:31:40.80 ID:PS/hr3up0


焦らせおって…だがこのまま港に着けば逃げ切れる。


『守り手』とかいったか、捕まりさえしなければどうという事はない。


ほとぼりが冷めるまで弐の国の同胞の下に身を置けば済む話し…


王もバカではない、事を公にして私を指名手配する様なことはせんだろう。

もし知れれば王自身の失脚、いや壱の国そのものに混乱を招き諸国からの信用はガタ落ちだ。


勇者だの魔王だの興味は無い、勝手に頃し合えばいいのだ。



77: 2012/12/04(火) 23:33:27.56 ID:PS/hr3up0


貴族「…ん? まだ着かんのか!?」

護衛「……」

貴族「おいっ!! 聞いているのか!! ……っ!! 馬鹿者っ!! どこに向かっている!! 港へはこの道ではないぞ!!」

護衛兵「貴様が港に着くことはない…此処で氏ぬのだからな」バサッ

貴族「おっ、お前は!! 嫌だ、助けてくれぇっ!!」

カカカッカカカッ……カカッ…ピタ

僧侶「降りろ」チャキ

貴族「ヒィィッ!! やめてくれ!!」

僧侶「早くしろ…」ザワッ

貴族「分かった!! 分かった!!」ガクガク



78: 2012/12/04(火) 23:36:24.51 ID:PS/hr3up0


僧侶「魔族と内通し勇者の情報を漏らしたのは貴様だな?」

貴族「私だけではない!! 他にも魔族と内通している者達がいるはずだ!! なのに私だけを裁くのか!?」

僧侶「貴様を始末した後に、他の奴らも始末するさ…勇者に仇なす者には氏を…」

貴族「頼む!! 妻と娘がいるんだ見逃してくれ!!」

僧侶「貴様も貴族ならばオレがどのような存在か知っているはずだ……」スッ

貴族「やめろ……助けてくれっ」

ブンッ

「助けゃッ」

ブシャッ……ゴロッ…





僧侶「神よ…この者の魂を救いたまえ…」





86: 2012/12/05(水) 23:16:52.85 ID:syDvkU7q0

ー港町ー


事は終えた…明日の朝には貴族の亡骸が見つかるだろう。

奴は何故魔族に情報を流した?

金、権力、地位、身の安全…

理由など幾らでもあるが、他にも何かがある気がする。


貴族が氏んだことは他の者達にも知れる。

当然『守り手』の存在にも気付くはずだ…

悪しき者達よ、己の愚かさを呪い、怯えているがいい…

魔族と手を結んだことは必ず償って貰う……


『貴族の氏』これにより魔族に加担する輩が居なくなればよいのだが。

そう簡単には行かないだろうな。

僧侶「宿屋に戻ろう…」ザッ



87: 2012/12/05(水) 23:21:26.11 ID:syDvkU7q0



宿屋ー部屋ー


勇者「すぅ…すぅ…」スピー


僧侶「まだ寝ているな、余程疲れていたのだろう…」

あの時、勇者様は泣いていた…声を掛けるべきだったのか?

慰めるべきだったのか?




88: 2012/12/05(水) 23:23:34.52 ID:syDvkU7q0


…………………


ー守る方法など幾らでもある…戦う事だけではないぞー


師範殿、やはり私には戦う他に守る術がありません…

この両の手を血で染めることになろうとも、

『勇者』の『守り手』なのだから…


ー『守り手』以前に人じゃろう? お主の心はそこまで冷えてはおらんよー

ー勇者としてでなく、あの子の『本当』を見てあげなさいー


ーお主にとって『勇者』とは何なのか今一度考えてみるといいー



89: 2012/12/05(水) 23:24:39.10 ID:syDvkU7q0


ーオレは…オレは『勇者』を『彼女』の笑顔を守りますー

これはオレの『本当』だ…

勇者の守護は我が『一族』の責務、


彼女の笑顔を守りたい…

これはオレの、『僧侶』の意志だ。

今はこれが答えでいい…『僧侶』は間違ってはいない。



90: 2012/12/05(水) 23:26:41.36 ID:syDvkU7q0


僧侶「そろそろ時間か…勇者、そろそろ船が来る」トントン

勇者「おはよう、僧侶…もう真っ暗だね」グシグシ

僧侶「おはよう、じゃあ行こうか」ニコリ

勇者「うんっ!! 僕、船に乗るのは初めてだから楽しみだな」ワクワク

ー船着き場ー


勇者「うわぁ…凄い船だね、かなり大きいよ?」

僧侶「貴族も乗るからね、部屋も多いし内装の豪華らしい、船の中にカジノや酒場もあるみたいだよ?」

勇者「凄いねっ!! 僕はもっと普通っていうか小さい船だと思っていたから……」

僧侶「確かに…こんな豪華な船に乗る機会は普通ないからね、とりあえず乗ろう」

勇者「僕…船酔い大丈夫かなぁ…」ボソッ


91: 2012/12/05(水) 23:37:00.21 ID:syDvkU7q0


船内ー客室ー

勇者「僧侶っ!!」クワッ

僧侶「どうした? そんな声出して…」

勇者「部屋が広い!!」

僧侶「はははっ、そうだね、王様がこの部屋を取ってくれたんだ、本来なら貴族じゃないと使えない部屋みたいだよ?」

勇者「いいのかな? こんな贅沢しちゃって…」

僧侶「旅の始まりだからね、王様からのお祝いみたいなものだよ、きっと」

勇者「そっかぁ、でも凄いよ? お風呂あるし、ベッドはまるでお姫様のみたい…大きいし」

勇者「でも、ベッドは一つだし寝る時は一緒でいいよね?」

僧侶「勇者は一緒で大丈夫? 何だったら乗務員に布団でも頼むけど…」



92: 2012/12/05(水) 23:37:47.90 ID:syDvkU7q0


勇者「こんな大きなベッドで眠れるなんてこの先ないよっ!? 勿体ないし一緒に寝よう? ねっ?」

僧侶「……分かった、分かったよ…あんまりはしゃぎ過ぎるなよ?」ハァ

勇者「はいはい、分かってますよ」

僧侶「せっかく豪華な船に乗ったんだし、船内を見て回ろうか?」

勇者「うんっ!!」ニコッ

僧侶「はしゃいで迷子にならないように手でも繋ごうか?」

勇者「僕はそんなに子供じゃないよ!! 全く…」

僧侶「ははっ、じゃあカジノにでも行こうか」

勇者「無駄遣いはダメだよ?」ジッ

僧侶「見学するだけさ、賭けはしないよ」

勇者「ならいいよ」ニコリ



93: 2012/12/05(水) 23:39:11.06 ID:syDvkU7q0


船内ーカジノー

ガヤガヤガヤ…

『あぁっ負けたぁ!! チクショー!! もうひと勝負!!』

勇者「人多いね、あんなの楽しいのかな? お金が勿体無い……」

僧侶「まぁ、確かに…何かないかな? 子供用のクレーンゲームとか…」

勇者「僧侶……怒るよ?」ギラ

僧侶「ごめんごめんっ、ん…?」



94: 2012/12/05(水) 23:40:08.58 ID:syDvkU7q0


『この八個のコップ!! この中の一つにコインを入れます、そして私がコップをシャッフル!! どのコップに玉が入っているか見破った方には……なんと』


『この太陽の指輪と、月の指輪を差し上げましょう!!』

『ただし、外れた場合は二万ゴル頂きます』

『今のところ37名が挑戦しましたが誰も見破った方はおりません、さぁ他に挑戦する方は!?』



95: 2012/12/05(水) 23:41:10.29 ID:syDvkU7q0


僧侶「勇者、ちょっと見てみようか」

勇者「うん…いいけど……やるの?」

僧侶「いや、景品の指輪が気になるだけ」

勇者「ふぅん…見るだけだよ?」

僧侶「うん、見るだけ見るだけ」

勇者「全く…僧侶の方が子供だよ」ボソッ


96: 2012/12/05(水) 23:42:37.13 ID:syDvkU7q0


ディーラー「おっ、挑戦かい?」ニコッ

僧侶「その前に景品の指輪が見たいんだ、それから決めるよ」

ディーラー「あぁ、いいよ」カチャカチャ…

勇者「僧侶っ!!」

僧侶「見るだけだってば、大丈夫だよ」

ディーラー「はい、コレだよ」スッ

勇者「わぁっ…凄く綺麗……こんなの見たこと無いよ…」

ディーラー「だろう? 何せコレはこの世に一つしか無い指輪だからね、そんじょそこらの物とは比べる事すら失礼な品さ…」

ディーラー「この指輪は二つで一つ…作られたのは何百年も昔らしいけど輝きが失われた事は無い」



97: 2012/12/05(水) 23:43:43.42 ID:syDvkU7q0


僧侶「何故、そんな物をあなたが?」

ディーラー「……さぁ、何故だろうねぇ」ニコッ

僧侶「…………」

勇者「僧侶、指輪は見たしもう行こうよ?」クイッ

僧侶「……ディーラー、挑戦させてくれ」



98: 2012/12/05(水) 23:44:53.74 ID:syDvkU7q0


ザワザワザワザワ

『バカだなアイツ 当たりっこねぇよ どうせ指輪もガラクタだろ』


勇者「僧侶っ!! 挑戦しないって言ったでしょ!!」

ディーラー「いいのかい? そちらのお嬢さんは乗り気じゃないみたいが…」チラッ

僧侶「あぁ、やるよ……勇者…頼む、やらせてくれないか?」

勇者「……分かった、一回だけだよ?」

僧侶「大丈夫、一回で済むから…」

ディーラー「…………」

僧侶「ディーラー、始めてくれ…」



99: 2012/12/05(水) 23:47:44.22 ID:syDvkU7q0


ディーラー「分かった…じゃあ、いくよ」 パッ

スッ スッスッスッスッ シャッ  

僧侶「………」カッ

シャシャ シャッ シャシャシャシャシャ ピタッ… 


『お前見えたか? 見えたら指輪貰ってるよ… まぁ無理だろ 分かる訳ないって』

勇者「こんなの分かりっこ無いよ……やめようって言ったのに…」

ディーラー「さぁ、どれかな?」ニコッ

僧侶「コレだ…」スッ

ディーラー「いいのかい?」

僧侶「あぁ…開けてくれ」

ディーラー「…………」バッ



100: 2012/12/05(水) 23:48:55.69 ID:syDvkU7q0


ディーラー「おめでとう、当たりだよ…約束通り指輪をあげよう」ニコッ


勇者「……? 何だろうこの感じ…」ピクッ


『当てやがった!! すげぇ!! やるな兄さん!!』ワァァァッ


ディーラー「はいどうぞ、大切にしてくれよ?」スッ

僧侶「あぁ、約束するよ…」スッ



101: 2012/12/05(水) 23:59:07.18 ID:syDvkU7q0


僧侶「勇者、部屋に戻ろうか? 勇者?」

勇者「……えっ!? あっ、うん」

僧侶「どうかした?」

勇者「ううん、何でもないよ…僧侶は凄いね!! 当てちゃうなんて」ニコッ

僧侶「運が良かったんだよ…じゃあ、戻ろうか」ニコリ

勇者「そうだねっ」

勇者「…………」クルッ


ディーラー「………」ニコリ フリフリ



109: 2012/12/06(木) 07:39:01.43

船内ー客室ー

勇者「はぁ気持ちよかった、僧侶も入ってきたら?」ゴシゴシ

僧侶「あぁ、そうするよ」

勇者「僕、ちょっと甲板に行ってくるよ、今日は星空みたいだし…」

僧侶「分かった、気を付けるんだよ」ニコッ

勇者「うん、大丈夫 じゃあ、行ってくるね」

勇者「あと、僧侶も疲れてるんだから早く休みなよ?」

僧侶「あぁ、ありがとう勇者…」

パタン



110: 2012/12/06(木) 07:44:59.12


僧侶「あのディーラー……」


奴は確かにコップにコインを入れシャッフルしたがコップを開ける時にコインをはじき、手に隠し持っていた筈…

なのに中にはコインがあった…見間違えた筈はないのだが。


それに奴はオレの何を見ていた? 

まるで心の内を見透かされている様な感じがした…


しかし、この『太陽の指輪』と『月の指輪』は紛れもない本物。

四百年前、先代勇者様が所持していた指輪だ。

一族の文献にある挿絵と同じ、忘れる訳がない。

だが文献には先代魔王との戦いとの後で紛失したと記されていた筈…

それが何故こんなところに?

魔王復活と同様にこの指輪に何か意味があるのか?…


……………………


考えてばかりでは仕方無い、風呂に入るか……

今日は色んな事があり過ぎた。




僧侶「流石に疲れたな」



111: 2012/12/06(木) 07:47:20.84

ー甲板ー

勇者「あんまり、っていうか僕以外に人がいないじゃないかな」キョロキョロ 

勇者「でも、凄く綺麗な星空だなぁ、後で僧侶も呼ぼうかな?」

勇者「……これから始まるんだ、勇者として…魔王討伐の旅が」

「こんばんは、お嬢さん」

勇者「誰!?」バッ

「さっき会ったじゃないですか」ニコリ

勇者「あぁ、カジノの…えっと、指輪をくれた人ですよね? 僕に何か?」

「いえ、貴方を近くで見たかったので」 スゥッ…



113: 2012/12/06(木) 20:00:48.40 ID:vblPc0eF0



勇者「身体が透けてる…人間じゃないの? でも魔物みたいな嫌な感じはしない…」


「信じてくれないかも知れませんが私は先程の僧侶さんに渡した指輪の意志、精霊とでも思って下さい」ニコリ


勇者「指輪の精霊? 信じてもいいよ…けど、何故僕の前に現れたの?」


精霊「お話しておかなければならない事があるのです、今から四百年前…先代の勇者様と魔王の戦いの時、私は生まれました」


精霊「勇者様は凛々しく、そして優しかった…少し泣き虫でしたが」フフッ


精霊「先代勇者様も守り手と共に旅をしました、勇者様は強かった……ですが魔王の力はそれを遥かに超えていたのです」


勇者「じゃあ、どうやって魔王を倒したの?」




114: 2012/12/06(木) 20:03:32.51 ID:vblPc0eF0



精霊「魔王に対抗する術はたった一つ、絆の力です……私を生み出した方は、その『絆の力』を何とか形に出来ないかと考えました」


精霊「そうして生み出されたのが、月の指輪と太陽の指輪です」


精霊「指輪を身に付けた者同士の絆が…心の結び付きが強ければ強い程、身に付けた者の力は増大します」


精霊「先代勇者様はそれにより魔王を倒し、私は役目を終え眠りについていましたが…魔王は復活し、指輪の意志も目覚めた…」


精霊「だから私はこうして勇者様の前に現れたのです、現在の『勇者』と『守り手』を見極める為に…」


勇者「そうなんだ…僕達を認めてくれたの? 僕と僧侶を…」



精霊「えぇ、回り道をするかも知れませんがあなた方ならばきっと成し遂げられる筈です」ニコリ


勇者「そっか…良かったぁ」ニコッ



115: 2012/12/06(木) 20:04:49.78 ID:vblPc0eF0


精霊「それと勇者様…『守り手』は『勇者』としてではなく『貴女』を見ています……『貴女』を守ろうとしています」


勇者「…!!……本当?」ポロポロ


精霊「えぇ本当ですとも、だから焦らずとも良いのです…」


精霊「僧侶を信じなさい、そして旅の中で見つけるのです…偽り無き絆を…」パァァァッ


勇者「うんっ、ありがとう…」ゴシゴシ


ー僕はまだ僧侶の事を知らない、でも…信じようー



116: 2012/12/06(木) 20:05:34.89 ID:vblPc0eF0



『勇者』としてじゃなく『僕』を見てくれている僧侶を…


『おーい、勇者ーっ』


勇者「あっ、僧侶……」クルッ


ーたった一人の『僕』の守護者をー




勇者「ねぇ僧侶、星が綺麗だから一緒に見よう?」ニコッ



117: 2012/12/06(木) 20:07:37.23 ID:vblPc0eF0

ー???ー

「魔王様、お身体の具合は如何ですか?」


「まずまずだ……まだ完全に身体が馴染んではおらん」


「四百年…!! 四百年経ち、やっと我が寄り代に相応しい身体を手に入れた、だが力は不完全…忌々しい勇者と守り手めが…奴等はこの手で葬らねばならん!!」ゴッ


ガガッ ドッ!! ビリビリビリ…


「くっ!!」ゾワッ


凄まじいっ…これでもまだ不完全だどいうのか!?

最早、今の状態でも勇者、守り手共に楽に殺せるのでは無いのか? 


「奴等を侮るな…」

「……!!」


「四百年前、我の力は勇者など遥かに凌駕しておった、だが負けたのだ…!! 何があったのかは分からん、だが奴等と対峙した時………この我が恐怖を感じたのだ…」


「あの時の勇者の瞳の輝き、今でも覚えている……恐怖と、そして美しさすら感じた、癪だがな……」


「勇者に対しては万全を期さねば成らん…そして四百年前の屈辱を晴らし」




「……我が、世を支配する」ドッ




118: 2012/12/06(木) 20:21:27.44 ID:vblPc0eF0

壱の国ー 謁見の間ー

師範「して王よ、儂に何の話しで御座いましょう」

王「師範、急な話しだが……新たに貴族になって貰いたい」

師範「儂が貴族に!? 何故?」

王「師範、今から話す事は他言無用で頼む」

師範「……承知致しました」



119: 2012/12/06(木) 20:26:00.71 ID:vblPc0eF0



王「今日、王宮が襲撃されたのは貴族が勇者の情報を魔族に流したからなのだ」


師範「何ですと!?」


王「私が選んだ者だ…民に知れれば只では済まない」


王「そして『守り手』、いや僧侶の役目は勇者の護衛と、勇者に仇なす『人間』の……暗殺なのだ」


師範「まさかっ!?……」



王「…僧侶は貴族を暗頃する、魔族に加担する者を増やさん為の抑止力にもなる…そして師範、そなたには貴族が抜けた穴を埋めて欲しいのだ」


師範「……承知、しました…ですが若者が背負うにはあまりに重すぎる役目…『守り手』の存在は知っておりましたが、しかし暗殺など…」


王「私とて辛い…貴族の本質を見抜けなかった、私が至らなかったのだ」ギリッ



120: 2012/12/06(木) 20:27:48.10 ID:vblPc0eF0


王「あの時……僧侶が娘を連れて此処に来た時の僧侶の笑顔は実に朗らかだった、平時であれば心優しき青年であったろうに」ツゥッ


師範「……!! 王よ…僧侶は大丈夫じゃよ…」


王「……何故言い切れる?」


師範「僧侶には勇者が、いえ…守るべき者が居るのです、あの子が側に居る限り僧侶は決して折れますまい…」


師範「そして『勇者』を守る『守り手』としてで無く、己の意志であの子を守る…さすれば『絆』が生まれ、僧侶は掛け替えのない物を手に入れるでしょう」


王「絆…か、絶対の信頼と互いに己の全てを捧げる覚悟がなければ生まれはしない、今の世では最も希少で尊いものかもしれん」




師範「そうですな…ですが、あの二人ならば…と儂は思うのです」ニコリ




121: 2012/12/06(木) 20:30:06.37 ID:vblPc0eF0

船内ー客室ー


僧侶「指輪の精霊か…先代勇者様が持っていた物だし不思議ではないな…」

勇者「ねぇ…僧侶?」


僧侶「ん? どうした?」


勇者「今じゃなくて良い…でもいつか僧侶の事を教えて欲しい」


僧侶「……っ!! 勇者、オレは…」


勇者「焦らなくていいんだよ? 少しずつ、お互いを知っていこう? その為の旅でもあるんだって、僕は思うから…」ニコリ


僧侶「勇者……… すぅ、はぁぁ」


勇者「どうしたの?」




122: 2012/12/06(木) 20:37:06.98 ID:vblPc0eF0



僧侶「今から言う言葉を、『僧侶』の言葉を信じて聞いてくれ…」


勇者「……うん」コクリ


僧侶「オレは、オレは貴女を守る…何があっても、必ず貴女を守ると誓う…」


僧侶「今は言えない、けれど『守り手』としての自分の姿を貴女に晒す時が必ず来るだろう……その時は、どうか分かって欲しい……我々一族の、先祖達の思いを……」


勇者「うんっ、いいよ……」ニコッ…グスン


…キラッ…キラキラキラッ……


勇者「僧侶、ありがとうっ…」グスングスンッ

僧侶「………………」ギュッ

勇者「…ん………ありがとう」 ギュッ



……………………



勇者「もう大丈夫だよ?」グシグシ

僧侶「そうか…」スッ

勇者「何か泣いて疲れちゃった」ヘヘッ

僧侶「ははっ、じゃあそろそろ寝ようか」ニコリ

勇者「…うんっ」ニコッ





127: 2012/12/06(木) 23:07:58.05 ID:vblPc0eF0

ー客室ー

勇者「僧侶、朝だよ起きて」ユサユサ

僧侶「んっ、おはよう…」

勇者「お風呂入ってきたら?」

僧侶「そうするよ…」シパシパ

…………………

僧侶「ふぅ、さっぱりした」ガシガシ

勇者「天気崩れなくて良かったね、このままなら昼前には着きそう」



128: 2012/12/06(木) 23:11:15.78 ID:vblPc0eF0

僧侶「勇者、指輪について話しがあるんだが…」

勇者「どうしたの?」

僧侶「無くすと本当に笑えない事態になるから身に付けないか?」

勇者「うん、そうだね」

僧侶「じゃあ、勇者には太陽の指輪を、オレは月の指輪を…」スッ

勇者「分かった、でも大きいから落ちてく…!?」ビクッ



129: 2012/12/06(木) 23:14:47.98 ID:vblPc0eF0


僧侶「どうした?」

勇者「ピッタリになっちゃった…凄いや、僧侶はどう?」

僧侶「今はめてみる…おっ? 本当だ…何で出来てるんだろう」

勇者「でも本当に綺麗だね?」ニコッ

僧侶「あぁ…そうだな」ニコッ


ビダンッッッ!! ガッ!!  ドゴンッ!!!


勇者「何っ、今の!?」

僧侶「甲板に行こう!! 魔物かも知れない!!」

ダダッ…




130: 2012/12/06(木) 23:17:33.78 ID:vblPc0eF0
ー甲板ー

『グルォォォアアアアッ!!!』

『皆さん、船内に非難して下さい 落ち着いて!!』

『キャァァ!! 助けてくれぇっ!! 


勇者「何で魔物が、僕が乗ってる事はことは知られてない筈なのに!!」

僧侶「勇者!! 考えていても仕方無い、絡みついている触手を何とかしないと船が沈むぞ!!」

勇者「っ!! 分かった!! 早く触手を切断しよう!!」

僧侶「絡みついている触手はオレが斬る、勇者は船を囲んでいる触手に魔法を放ってくれ!!」ダッ

勇者「分かった!! 甲板にはもう人は居ない…よしっ!!」

勇者「聖雷・大車輪!!」カッ

ドッ!! ブゥゥン… ズギャギギャ!!!

僧侶「凄いな…周囲全ての触手が無くなった、後は絡みついているヤツだけか…」

「殺陣・影断ち」ヒュッ

「殺技・裂き太刀」グッ

ダンッ!! ズシャギャシャギャシャシャシャ


僧侶「もう無いな…」

タタタッ

勇者「僧侶っ!! 大丈夫?」

僧侶「あぁ大丈夫だよ」ニコッ




131: 2012/12/06(木) 23:19:19.99 ID:vblPc0eF0


僧侶「でもまだ本体が出てこないな…」

勇者「うん、注意しないと…」

ゴゴゴゴゴッ!!!

『来るっ!!!』


『ヴルガァァァァ!!!』


132: 2012/12/06(木) 23:20:41.84 ID:vblPc0eF0

僧侶「何だアレはっ!! まるで身体全体が口のようだ!!」

勇者「触手はそのための物だったんだ」ゾクッ

僧侶「勇者は魔法を放ち続けろ!! オレが触手から守る!!」

勇者「分かった!!」

『グルォギギャアアア』ブンッ ブンッ

僧侶「数がっ多いっ!!」ジャキン

ジャキ ズバッ ズパンッ ガッ

勇者「聖氷・大槍!!」カッ

ヒョウゥ ギチッガャチ… ドギュ!!!!

ドズン!!!!

『イギャルァアアアア』ズブズブ

バッシャァァ…  サァァァァッ

僧侶「助かったよ、ありがとう勇者」ハァ

勇者「僧侶が触手から守ってくれたからだよ……あれっ?」ムム



133: 2012/12/06(木) 23:24:20.52 ID:vblPc0eF0


僧侶「どうした?」

勇者「何か前より魔法の威力が上がってる…あんなにデカいのを一回で倒せたし、それに魔法使った後は凄く疲れるはずなのに……」

勇者「指輪のお陰かな?」

僧侶「あぁ、確か『絆』が力になるんだったか?」

勇者「うんっ、指輪の精霊はそう言ってたね」ニコッ

僧侶「まぁ、言われてみれば、あれだけ動いて疲れてないからな…」ウン

僧侶「…でも……」

勇者「ん? どうしたの?」

僧侶「いや、ビービー泣いて、あやして貰った挙げ句…手を繋いで寝る事で魔法の威力が上がるってどうなんだ?…」

勇者「ッッッ!!!!」カァァッ

ゲシッゲシッゲシッ!! ドカッ!!

勇者「このっ!! このっ!!」ブンッ

僧侶「痛い痛い!! 分かった!! もう絶対言わないから!!」

勇者「本当にっ!?」ハァハァッ

僧侶「あぁ言わないっ!!」

勇者「昨日はあんなに優しかったのに…また子供扱いしてっ!!」



136: 2012/12/07(金) 19:40:41.04 ID:z7Kug8Em0

地震、怖かったですね。

ちょっとしたら投下します。

139: 2012/12/07(金) 20:28:14.85 ID:z7Kug8Em0

ー甲板ー

船長「本当に助かりました、乗客の皆様も無事です…本当に、何と御礼を言ったら良いか」ウゥッ

勇者「皆さん無事で良かったです、船は大丈夫ですか?」

船長「えぇ、問題はありません、予定通りに着くはずです」

僧侶「そうですか、ては私達は客室へ戻ります」


……………………


ー客室ー

勇者「もうすぐ弐の国の港に着くね」

僧侶「あぁ、港から都までは結構距離があるから途中の街や村に泊まる事になる」

勇者「そっか、やっと旅の始まりだね…」

僧侶「なぁ、勇者…」

勇者「うん?」

僧侶「辛い時は言ってくれ、オレも勇者の知らない所は沢山あるんだ…不安な時、怖い時、悲しい時、いつでもオレに言って欲しい」

勇者「うん、分かった…ありがとう僧侶」ニコッ


140: 2012/12/07(金) 20:29:53.03 ID:z7Kug8Em0


僧侶「着いたみたいだな、行こう」

勇者「僧侶、荷物大丈夫? と言うか何を持ってるの?」

僧侶「ん? あぁ、これは勇者が倒したドラゴンの爪や牙さ…都の加治屋で武器、防具を作って貰えと王様が…」

勇者「武器かぁ、僕は一応王宮騎士用の剣があるけど…」

僧侶「まぁ、丈夫な武器があれば買い変える必要も無くなる、それに折角王様が気を利かせてくれたんだから」

勇者「そっか、そうだね…じゃあ行こう僧侶」



141: 2012/12/07(金) 20:33:57.16 ID:z7Kug8Em0


弐の国ー港ー


よしっ!! 行こうか ザッ

『おーい!! ちょと待ってくれ!!』

勇者「んっ、何だろう?……うわっ!?」

ガヤガヤガヤ…

『ありがとう!! 君達のお陰で助かったよ!! まるで勇者様だ!! 気を付けて行くんだよっ!! 達者でなっ!!』ワァァァッ


「はいっ、皆さんもお元気で!!」 ザッ



142: 2012/12/07(金) 20:34:47.42 ID:z7Kug8Em0


『礼儀正しいいい娘だったな… ああ今時珍しい しかも可愛いし… あの青年も素敵だったわ、旦那と取り替えたいくらい 』


『本当に勇者様だったりしてな? ああいう御方が勇者様なら大丈夫さ あぁ、そうだな』



143: 2012/12/07(金) 20:36:55.86 ID:z7Kug8Em0


ー平原ー


僧侶「皆喜んでたな、勇者」

勇者「うん、でも魔王を倒せばもっと沢山の人達が笑顔になれる」 グッ

僧侶「………」

勇者「僧侶? どうしたの?」

僧侶「あっ、いや…そうだな」 ニコリ…

勇者「……?」

ザッザッザッ…

僧侶「この山を越えれば村がある、日が沈むまでに着ければいいが山には魔物もいる、野宿も覚悟しないとな…」

勇者「そうだね、気を付けて行こう」

僧侶「あぁ、あと魔法はあまり使わない方がいい、指輪の加護があるとはいえ負担はあるみたいだから」

勇者「そうだね、分かったよ」 ニコッ


144: 2012/12/07(金) 20:42:57.94 ID:z7Kug8Em0


弐の国ー山中ー


ザンッ ズバッ ギャン…


勇者「魔物…多いね、まだ山頂まであるのに…もうすぐ日が沈んじゃうよ」グゥゥゥ

僧侶「そう言えば今日の朝食は食べてなかったな、あの魔物のお陰で…」

僧侶「よしっ、ここらで少し休もうパンならあるから」スッ

勇者「ありがとう僧侶、今日は野宿決定かぁ…仕方無いよね、夜は危険だし」ハァ


僧侶「ああ、魔物の方が夜目が利くからな…それを食べたら少し進もう、川でもあれば良いんだけど」

………………

山林ー川付近ー


僧侶「ここらで野宿しよう、川も見つかった、これで水浴びも出来る」

勇者「身体べとべとだよ…あれから魔物は少なくなったけど安心は出来ないね」

僧侶「あぁ、交代で見張りながら、仮眠を取ろう…勇者、これに火を点けてくれ」

勇者「分かった、 聖炎・小」ボウッ


パチッパチパチパチッ…


勇者「僧侶は魔法使えないの?」 

僧侶「治癒魔法と後は主に体術・剣術とかかな…」

勇者「僧侶なのに?」 フフッ

僧侶「ははっ、僧侶なのにな」 ニコッ

……………

僧侶「ふうっ、さっぱりした」 ゴシゴシ

僧侶「勇者も水浴びして来たら?」

勇者「うんっ、じゃあ行ってくる、すぐ戻るよ」タタッ



145: 2012/12/07(金) 20:49:08.65 ID:z7Kug8Em0


ガサガサッ

僧侶「誰だっ!!」

「…………」 ダッ

ビュン シャッ

僧侶「くっ、早いっ!!」 ジャキ


ギャ ギリリリッ…


僧侶「殺陣・影断ち」 シュン

「…………」 シュン

僧侶「なっ…!?」


「……殺技・針雨…」


ダンッ!! ザシュシュシュッッ

ガギャガギキンッッ…


「………」


こいつ…何故我々一族の技を使える!? 今は父上と私以外に使えない筈…

僧侶「貴様は何者だ? 答えろ!!」

「……………」


勇者「僧侶っ!!」 ダッ


僧侶「っ!? ダメだ勇者っ!! 来るなっ!!」



146: 2012/12/07(金) 20:51:12.64 ID:z7Kug8Em0


「…………」 シュン

「…殺技・裂き太刀……」 グッ

ダンッ!! 


僧侶「くそっ!! 勇者っ!!」 ダッ シュン

ズバッ!!! ブシャッ…


147: 2012/12/07(金) 20:52:54.06 ID:z7Kug8Em0


僧侶「大っ丈夫…か? 勇者…?」 ニコリ

勇者「えっ……僧侶っ? ねぇ? 僧侶? 僧侶っ!!!」

「…………」ズズズッ

勇者「ぁぁぁっ…… お前はっ!! お前は許さないっ!!!!」 ゴゴゴゴッ



勇者「神雷・極雷槍!!」 カッ

ズズンッ!!


ドッッ!! ズギャッッ!! ジャギギャギャギャ!!!!



148: 2012/12/07(金) 20:54:58.46 ID:z7Kug8Em0


勇者「治癒・大っ」 パァァァ

僧侶「はっはぁっ」ドクドクッ シュゥゥ ピタ…

勇者「僧侶!! 僧侶しっかりして!!」

僧侶「グッ…ッハァ、はぁはぁはあっ…勇っ者ありがとう」

勇者「大丈夫!?」

僧侶「あぁ傷は塞がったよ、でも血が出すぎたな」クラッ

僧侶「大丈夫、寝れば良くなるよ」 ニコリ…

僧侶「ごめん勇者…君に、人を殺めさせてしまった……」

勇者「っ!! いいんだ…僧侶が無事ならっ……あなたを守れるなら…ぼ……私もあなたを守からっ!!」 グスンッ

僧侶「…!! 勇者…ありがとう」ポロッ

勇者「僧侶は休んで」 ニコリ…

勇者「私が見張りをするから…っ!?」ゾクッ



149: 2012/12/07(金) 20:56:37.30 ID:z7Kug8Em0


「…………」ザッ

勇者「なっ!? まだ生きてるなんて…」

「守り手よ……示したな…付いて来い」

勇者「付いて来いだって!? お前が僧侶を傷付けたのに馬鹿な事言うなっ!!」

「守り手よ、来るのだ」

僧侶「………いいだろう、勇者…頼む」

勇者「僧侶っ!! 正気なの!? 殺されそうになったんだよ!?」


150: 2012/12/07(金) 20:58:03.42 ID:z7Kug8Em0


僧侶「大丈夫だよ、何かを感じるんだ…上手く言えないけど、何か…」

勇者「分かった、僧侶を信じる…」

「来い、こっちだ…」 ザッ

僧侶「行こう……っ!?」フラッ

勇者「全く…私がおぶるから捕まって」ハァ

僧侶「ごめん…」 ガシッ

勇者「よいしょっと」グイッ

勇者「じゃあ行くよ」 ザッ


151: 2012/12/07(金) 21:02:15.69 ID:z7Kug8Em0

ー山小屋ー

「ここだ、入れ」ガチャ

僧侶「勇者済まないな、おぶって貰って…」

勇者「いいよ、そんなに重く無いし…ねぇ、僧侶を休ませたいんだけど?」

「……そこのを使え、それと勇者…お前には外して貰いたい」

勇者「そんなの聞けるわけ無いでしょ!! いきなり僧侶を襲っておいて、付いて来いとか、お前は外せとか!!」



152: 2012/12/07(金) 21:06:48.44 ID:z7Kug8Em0


僧侶「勇者、もう大丈夫だよ…それに、何かあればすぐに呼ぶから」コク

勇者「分かった…」ガチャ

パタン

……………

僧侶「それで、何の目的であんな事を? それに、あの技を何故使える?」

「話すより見せた方が早い…付いて来い」ギギィッ

僧侶「地下室? つっ!!」グラッ

「……掴まれ」グイッ

僧侶「えっ? ああ…」ガシッ



153: 2012/12/07(金) 21:13:43.33 ID:z7Kug8Em0


ー地下室ー


僧侶「これは…!?」

「先代の『守り手』の武具だ…」

僧侶「何だと…!?」

「信じられんか?」

僧侶「当たり前だ!! こんな山小屋に四百年も前の武具が埃一つ被らず置いてあるのを信じられるか?」

「まぁそうだな…ならばこれを見ろ」

僧侶「これは…我々一族の紋章、どの武具にも刺繍が入っている…」

「信じたか?」



154: 2012/12/07(金) 21:15:51.97 ID:z7Kug8Em0


僧侶「……あぁ信じよう」

「お前が付けている指輪、月の指輪だな? 精霊には会ったか?」

僧侶「………勇者が会ったと言っていた」

「そうか、オレも奴と同じ類だ…先代の守り手の武具のな、だから技を使えた」

僧侶「お前が、精霊?」

「そうだ、お前を襲ったのはこれを持つに値する者かを見極める為」

僧侶「ならば何故、勇者を狙った!!」

「必要だったからだ、真に『守り手』たる者なのかどうか…確かめるにはな」

僧侶「守り手たるもの勇者を守って当然だろう、確かめるまでも無い」



158: 2012/12/07(金) 22:24:27.96 ID:z7Kug8Em0


「違う、オレが確かめたのはお前達の『絆』だ、守り手の真実を隠している割には信頼されているな」

僧侶「っ!? 隠してなどない、今はまだ…」

「ならば、いつ打ち明ける? 明日か? 十年後か? いつなら言える?」

僧侶「黙れっ…」

「先代は打ち明けた」

僧侶「っ!!」

「己がやって来た事、どんな理由があったとしても、人を殺めてしまった事、その全てを…」

僧侶「オレは…」

「己を背負った業を打ち明けろ、それをせず何が絆か、それとも勇者に怖れられるのが怖いか?」



159: 2012/12/07(金) 22:24:55.95 ID:z7Kug8Em0


「違う、オレが確かめたのはお前達の『絆』だ、守り手の真実を隠している割には信頼されているな」

僧侶「っ!? 隠してなどない、今はまだ…」

「ならば、いつ打ち明ける? 明日か? 十年後か? いつなら言える?」

僧侶「黙れっ…」

「先代は打ち明けた」

僧侶「っ!!」

「己がやって来た事、どんな理由があったとしても、人を殺めてしまった事、その全てを…」

僧侶「オレは…」

「己を背負った業を打ち明けろ、それをせず何が絆か、それとも勇者に怖れられるのが怖いか?」



160: 2012/12/07(金) 22:26:34.52 ID:z7Kug8Em0


僧侶「………」

「お前が先刻、命を懸けて守った者はその程度の人間か?」

僧侶「違う!! オレは確かに怖れているさ、彼女はまだ幼い…だが優しく清い心の持ち主だ、それ故に傷付けるのが」

「それはお前の理屈だ、勇者はお前になんと言った?」

僧侶「………」



161: 2012/12/07(金) 22:29:24.59 ID:z7Kug8Em0


ーーーーーーーーー


勇者「今じゃなくて良い…でもいつか僧侶の事を教えて欲しい」


勇者「焦らなくていいんだよ? 少しずつ、お互いを知っていこう? その為の旅でもあるんだって、僕は思うから…」ニコリ


ーーーーーーーーー



162: 2012/12/07(金) 22:31:34.53 ID:z7Kug8Em0


僧侶「伝えるよ…勇者に全てを…」

「覚悟は決まったか?」

僧侶「ああ…」

「ならば受け取れ、先代守り手の意志と彼の武具を…」

僧侶「一族の刺繍が入った隠密衣装…白地に赤か…それに、胸当て、脛当てにブーツ、片手直剣…後は篭手?」



163: 2012/12/07(金) 22:33:12.76 ID:z7Kug8Em0


「その篭手を付けて腕を軽く振ってみろ…」

僧侶「……」スッ

ジャキンッ!!!

僧侶「刃が…!? これは?」

「先代が、ある者に頼み設計した暗殺用の特殊武器…篭手にしか見えんから誰も怪しまん」

「先代は暗殺の際、必ずその衣装と武器を身につけた、正に『守り手』の証し…そして、穢れを背負い、勇者を守護する者の象徴だ」

「『守り手』の証しと象徴…」

「誇りを持て僧侶、『僧侶』も『守り手』も、どちらもお前…」スゥッ

僧侶「ああ、もう迷わない……」




164: 2012/12/07(金) 22:39:51.38 ID:z7Kug8Em0


「後一つ、魔王は世界の向こう側にいる…辿り着くには鍵が必要だ、賢者を探せ……奴なら知っている、真の絆無くして魔王は倒せん…心しておけ」パァァァ

僧侶「あぁ、分かっている…」グッ

僧侶「…行くか…勇者が待ってる」ザッ


165: 2012/12/07(金) 22:48:24.81 ID:z7Kug8Em0

ー山小屋ー

勇者「そっか、あの人も精霊だったんだ…僧侶を襲ったのは許せ無いけど」ムカッ

僧侶「いやぁ、あの時の勇者は怖かったな」

勇者「当たり前でしょ!! 怒ってたんだから、それより身体はどう?」

僧侶「横になってるから楽だよ、朝には良くなってると思う…」ニコリ



166: 2012/12/07(金) 22:51:19.15 ID:z7Kug8Em0


勇者「良かった…その刺繍の入った衣装と武器防具一式が先代の守り手、僧侶のご先祖様が使っていた物なんだね…何か雰囲気があるね…」

僧侶「ああ、着るのには勇気がいりそうだ……後、もう先延ばしにはしない」

勇者「ん? 僧侶どうしたの?」キョトン

僧侶「勇者、もう隠しはしない、全てを話すよ…」

勇者「いいの? 私は待てるよ…」

僧侶「いや覚悟を決めた、だから精霊は先代の衣装と武器防具をオレに託したんだ…だから……」

勇者「………」



僧侶「あの時、船で言えかった事、『守り手』の真実を話す…」



175: 2012/12/08(土) 22:18:20.46 ID:fAp4YZXZ0


勇者「勇者に仇なす者の暗殺と勇者の守護…」

僧侶「ああ、それが我が一族の使命、これが『守り手』の真実だ」

勇者「…………」ポロポロ

僧侶「済まない勇者…」

勇者「大丈夫、私も覚悟してたから」グイッ

僧侶「そうか…」

勇者「頃す以外の方法は無かったの?」

僧侶「他に無かったんだ、言葉で解決出来るなら四百年前に守り手は存在しなかったさ」



176: 2012/12/08(土) 22:19:41.34 ID:fAp4YZXZ0


勇者「辛く…ないの?」

僧侶「それでも……それでもオレしかいない…この手が血で染まろうと魔族と結託する悪しき者を裁く」


僧侶「これが守り手の信念であり掟」


勇者「私には分かんないよ、そこまでしなきゃならないなんて」

僧侶「勇者、人は皆が綺麗な心を持ってるわけじゃない…現にオレは一人の貴族を頃した……」

勇者「そんなっ…」

僧侶「その貴族は魔族に情報を流した、だからあの時王宮に魔物が現れたんだ」

勇者「何で!? 皆は魔王を倒して欲しいんじゃないの? なのに何で…」
僧侶「理由なら幾らでもある、共通しているのは欲望や野心…だから魔族につけ込まれる」

勇者「………」

僧侶「勇者、オレは『守り手』以前に君自身を守る『僧侶』だ…無理に認めてくれなくてもいい、それでもオレは一族の意志を貫く…」


勇者「私は……」



177: 2012/12/08(土) 22:20:55.95 ID:fAp4YZXZ0




ーオレは、オレは貴女を守る…何があっても、必ず貴女を守ると誓うー




ー今は言えない、けれど『守り手』としての自分の姿を貴女に晒す時が必ず来るだろう……その時は、どうか分かって欲しい……我々一族の、先祖達の思いをー




178: 2012/12/08(土) 22:22:44.61 ID:fAp4YZXZ0


勇者「私は、『僧侶』を信じてる…『私』を見てくれたあなたを信じてる…」

勇者「でも、これ以上僧侶に人を殺めて欲しくない、私も…辛いから…」

僧侶「………」

勇者「だから…どれだけ時間が掛かっても魔王を倒さなきゃ、旅が終わったら全てが良くなるよ」ニコ…

勇者「きっと…僧侶が誰も傷付ける事の無い世界に…」

僧侶「ありがとう……勇者」



181: 2012/12/08(土) 22:28:20.07 ID:fAp4YZXZ0


弐の国ー王城ー

「協力すれば私が王になれるんだな」

「えぇ約束します、協力して頂ければ貴方が王になれるでしょう」ニコリ


「策はあるのか?」

「勿論です、貴方に面倒は掛けません…では、頼みます」

「良いだろう」


…………………


ー???ー



「醜い、いつの世も人間は変わらんな…だが我はそんな命は下してはない、王宮の件もお前が指示したのだな?」

「申し訳御座いません、ですが四百年前魔王様が勇者に敗れてから復活までの四百年間…ずっと悔いておりました、また勇者に敗れてしまうと思うと…私は……」

「もうよい…お前は四百年前も今も良く尽くしている、永らく待たせたな…御苦労だった」

「魔王様っ……勿体無い御言葉に御座います…」

「だが、我を信じよ…必ずや勇者も醜い人間共も塵一つ残さず消し去って見せよう」

「はい、信じております…魔王様」



182: 2012/12/09(日) 00:19:53.02 ID:Kqq4uWp50

ー山小屋ー

僧侶「おはよう、勇者」ニコ

勇者「うぅん…おはよう……あっ、身体はどう?」

僧侶「大分楽になった、もう大丈夫だよ」ニコリ

勇者「良かった、じゃあ出発しよう? それに精霊が言っていた『鍵』と賢者を探さないと」

僧侶「だが何処に居るのかまでは……だから情報が必要だな…まずは都を目指そう」ザッ

……………

ー山道ー

勇者「やっと山を越えられるね」

僧侶「あぁ、昨日の襲撃には参っ」


『キャアアア!!』




183: 2012/12/09(日) 00:20:46.35 ID:Kqq4uWp50


僧侶・勇者「っ!!」ダッ

娘「お母さん!! お母さん!!」

母「うぅっ、逃げなさい…娘!!」

『ガァァァァッ』ブンッ

娘「誰かっ!!」ギュッ…

ズギャンッ!!  ドシンッ… 

娘「っ??」

勇者「大丈夫っ!?」

娘「お母さんが、お母さんが…」

母「はぁっ…うぅぅ」

僧侶「怪我をっ… 治癒・中」パァァァ

娘「傷が…お母さん、大丈夫!?」

母「えぇ、娘…無事で良かったわ」フラッ パタン

勇者「出血が酷かったんだ…私がおぶるから、僧侶は娘さんを」

僧侶「分かった、娘さんお家まで案内してくれるかい?」

娘「はいっ!!」


………………


村ー民家ー

勇者「傷は塞がってるから、2・3日安静にしてれば良くなると思う」

娘「ありがとうございます、本当に助かりました…」

僧侶「いや、無事で良かったよ」ニコ

娘「あの…勇者様、ですか?」

勇者「えっ、なぜ知ってるの?」

娘「昨日、村の宿に泊まった方が、魔物に襲われた船を勇者様が救ったんだっ!! って…何度も話していたので」

娘「それに背格好や髪型が聞いた話しの勇者様とそっくりで…しかも絵まで描いていったんですよ? 下手でしたけど…」

僧侶「情報は回るのが早いな、まあ隠していた訳では無いし」

勇者「そうだけど、ちょっとむずかゆいね」ヘヘッ



184: 2012/12/09(日) 00:21:38.35 ID:Kqq4uWp50


母「うっ…」パッ

娘「お母さん、平気?」タタッ

母「えぇ、旅の方危ない所をありがとう御座いました」ペコ

娘「お母さん、この人勇者様なんだよ?」

母「まぁ、では昨日の方のお話しは本当だったのね…まさか勇者様にお会いできるなんて」

勇者「勇者様なんて、勇者でいいですよ?」

母「優しい方なんですね…瞳が真っ直ぐで、そちらの方は? 勇者様の旦那様?」

僧侶「あっ、いや…オレ達はそういうのでは無いです」

母「でも揃いの指輪をしてらっしゃるし……お二人共お似合いですので」ニコリ

勇者「いやっ、あのっ」カァァッ

コンコン…

「入って宜しいかな?」

娘「はい、どうぞ」

ガチャ


185: 2012/12/09(日) 00:24:23.13 ID:Kqq4uWp50

村長「村の者を救っていただきありがとう御座います、勇者様」ペコ

村長「大したもてなしは出来ませんが村の宿を取っております、少しばかりでも御礼をさせて下さい」

僧侶「いや、私達は都へ行かなければならないので…それに、そこまで気を使って頂かなくても…」

勇者「僧侶、少しだけ休んで行こうよ…もうすぐお昼だしご飯だけでもご馳走になろう?」

僧侶「……そうだな、少し休んでも夕方には都の手前の町に着くだろうから」

村長「それは良かった、宿の準備は出来ておりますので僅かばかりでもお休み下さい」ニコリ

村長「では、失礼します」ガチャ

パタン


186: 2012/12/09(日) 00:25:22.58 ID:Kqq4uWp50

勇者「んじゃ、宿に行こっか僧侶」

娘「あのっ勇者様、ちょっとお願いがあるんです」

勇者「どうしたの?」

娘「さっき、魔物が出た所為で山菜が採れなくて…勇者様に着いて来て欲しいんです」

母「娘っ、勇者様すいません…いきなりこんな…」

勇者「大丈夫ですよ」ニコッ

勇者「んじゃ、宿に荷物置いたら来るから少し待ってて、僧侶良い?」

僧侶「いいけど…オレも着いて行こうか?」

勇者「ううん、僧侶は休んでて」ニコ

娘「良いんですか?」

勇者「勿論っ、娘さんが一人で行って魔物が出たりしたら大変だから」

母「すみません勇者様、ご迷惑惑をお掛けして…」

勇者「全然大丈夫ですよ」

勇者「んじゃ宿に行こう僧侶」

僧侶「そうだな」ニコリ



187: 2012/12/09(日) 00:26:22.26 ID:Kqq4uWp50

ー村の宿ー

僧侶「ご飯…美味しかったな、けど量が多かった……」ウプッ

勇者「半端じゃなかったね、山菜の天ぷらが美味しかったけど」ケプッ

勇者「そろそろ娘さんのとこに行ってくるよ」

僧侶「気を付けていくんだぞ?」

勇者「大丈夫、早めに来るから」ガチャ

パタン



188: 2012/12/09(日) 00:27:29.84 ID:Kqq4uWp50


ーーーーーーー

賢者と鍵…か、それに世界の向こう側とは何だ? 

そんな事は文献には記されてはいなかった…それも賢者が全てを知ってる…か。

ーーーーーーー

コンコンッ


僧侶「はい、どうぞ」

ガチャ

村長「僧侶様、勇者様は何処へ?」

僧侶「勇者なら先程の娘さんと山菜取りに行きましたが、何か?」

村長「いえ、お二人にお頼みしたい事があったのですが…」

僧侶「オレで良ければ聞きますが…」

村長「はい、実は村の近くの洞窟に魔物が住み着いてしまって困っとるのです……被害にあった者もいます、出来れば退治していただきたいのです…」

僧侶「…良いですよ、ご飯もご馳走になりましたから、それくらいなら」ニコリ

村長「引き受けて下さるのですか!! 良かった…」ホッ

僧侶「では今行ってきますね」

村長「ありがとう御座います、僧侶様」ペコリ


189: 2012/12/09(日) 00:29:05.08 ID:Kqq4uWp50


ー洞窟ー

僧侶「ゴブリンか、まず大丈夫だろう」


ーーーーーー


ズシャ ズバッ ガギャン……


僧侶「ふうっ、結構時間が掛かったな……そろそろ勇者も戻ってる頃だろうし村へ戻ろう」

『キラキラッ…』

僧侶「んっ? 指輪が光ってる……」

『僧侶様ー!!』

僧侶「この声は娘か?」

娘「村がっ!! 勇者様がっ!!」

僧侶「…っ!? 何があった!?」



190: 2012/12/09(日) 00:32:45.91 ID:Kqq4uWp50


ー数刻前ー村ー

勇者「いっぱい取れたね」ニコッ

娘「はい!! ありがとうございました」

勇者「僧侶待ってるから宿に戻るね」

娘「行くときは言って下さいね、見送りますから」ニコッ

勇者「うんっ!!」


ー宿ー


勇者「あれ、僧侶がいない…何処行ったのかな?」

女将さん「あぁ、僧侶様なら洞窟に出掛けたよ、村長さんが魔物退治頼んだみたいでねぇ」

勇者「全く…まだ身体は完全に良くなって無いのに……」ハァ

女将さん「ありゃ、イイ男だねっ!!頼まれてすぐ行っちまったよ」

勇者「ふふっ…」


『勇者様、勇者様はおらんか!!』





191: 2012/12/09(日) 00:34:14.90 ID:Kqq4uWp50


兵士が沢山いる…なんだろう?


勇者「何ですか?」

兵士「城に御同行願いたい!!」

勇者「良いですけど…僧侶が来てからでも」

兵士「いえ、勇者様だけで宜しいのです」

勇者「何故急に…」

団長「いいから来い、僧侶とかいうのが来ると厄介だからな」

勇者「何を言ってるの?」

団長「ちっ、面倒だ…今すぐ着いてこないなら、この村焼き払って村人も皆頃しにする」ボソッ

勇者「なっ!?」

団長「騒ぐな…来るよな?」

勇者「分かった」コクッ

娘「勇者様ぁっ!!」

勇者「お城に行かなきゃならないみたい、僧侶に伝えて置いて?」ニコッ

娘「分かりました!!」


ガラガラガラ…


192: 2012/12/09(日) 00:35:09.30 ID:Kqq4uWp50


団長「行ったか………やれ」

兵士「はっ!!」


『何をっ!! うぎゃあ!! 助けてくれ 止めろぉ!!』


ボウッ!! メラメラメラメラ…


村長「娘!! 僧侶様に伝えるのだ!! 勇者様はきっと脅されておったのだ…」


『一人残らず殺せの命令何でな』


村長「貴様等それでも国を守る兵士か!! 娘っ!!早く行きなさい」

娘「っ!!」ダダダッ



193: 2012/12/09(日) 01:02:37.11 ID:Kqq4uWp50


ー洞窟ー

僧侶「そんな…」

娘「僧侶様っ……勇者様を…」パタン

僧侶「背中に矢がっ!! ……っ!?」ハッ

僧侶「息が……」

僧侶「っ!! 許さん……」ギリッ


ーーーーー


ー 村・焼け跡 ー

僧侶「神よ罪無き者達の魂を救たまえ」


ガラッ!! ドカッ ズリズリッ……


僧侶「あった……先代よ、今こそ使わせて貰います」バサッ


ガチャ スチャッ  ヒュッ… ジャキッ


僧侶「よし…問題なく動く」グッ




    ー奴らは決して許されぬ事をしたのだー




僧侶「覚悟しておけ外道共……『守り手』として、貴様等を頃す!!!」







   ー殺された罪なき者の痛み、思い知るがいいー






200: 2012/12/09(日) 12:36:37.01 ID:VBzuhSS00


ー勇者ー

16歳・女性。

黒髪ショート・元々はロングだったがバッサリ切った。

身長162?。 胸は…普通、スレンダー。

綺麗・可愛いで言えば可愛い、愛嬌のある顔立ちで人当たりも良い。

好き嫌い無し。 

トンボが苦手、昔赤トンボに耳を噛まれたらしい。

ーーー

魔王に唯一対抗出来る者。

世界と人々を救う者。

魔王復活により突如勇者の力に目覚めた。

彼女の使う魔法は一般魔法とは異なり、聖魔法と呼ばれる。

神の力の一端を行使しているのでは無いかと思われる。

剣術・魔法なら、かなり魔法寄り。

剣術は人間相手なら強いが魔物と戦うのはまだ慣れていない。

ーーー

女性の勇者では頼り無いのでは? 少しでも男っぽく…と思い、

『僕』と言うようになったが、勇者としてでなく自分自身を見てくれる僧侶と出会い『私』に戻っていった。



201: 2012/12/09(日) 12:41:06.48 ID:VBzuhSS00


ー僧侶ー


21歳 男性。

髪は赤茶、茶色寄り。

少し癖っ毛で髪は少し長め、時々結っている。

身長176? 引き締まった身体で細身。

顔立ちは爽やかで穏やかに見える。

ピクルスが大好き、砂糖が入った酢の物は大嫌い。

犬が苦手、訓練中追い回された為だとか。

ーーー

勇者に仇なす者を葬る者。

そして、勇者を守護する者

『守り手』の一族に生まれ、幼い頃から修練に励む。

母は幼い頃に病気で亡くす。

守り手一族は、魔王復活までの四百年の間も修練を続けていた。

勇者に仇なす者は躊躇い無く頃す。

その為、四百年前は守り手と言うより暗殺者としての方が名が通っていた。

主に短剣・片手剣を使うが特殊な武器の扱いも出来る。

魔法は治癒のみで、隠密体術・殺人術が主である。

ーーーー

勇者を守護し仇なす者を葬るのが使命であり一族の掟。

だが勇者が守ろうとしている『人』を殺さねばならない事に悩み始める。

だが彼女の優しさに触れ、変わり始めていき…ついに勇者に打ち明けた。

そして『勇者』も『彼女自身』も守ると誓った。




203: 2012/12/09(日) 20:55:40.32 ID:ONnM736o0

ー王城ー

団長「ほら降りろ、勇者様」

勇者「何が目的でこんな事をするの?」

団長「まぁいい、世間知らずのガキに教えてやる…お前が居なくなって得をする奴もいるんだよ、ガキには分からんだろうがな」

勇者「っ!! 魔王は、魔王は誰が倒すの!! 苦しんでいる人達を誰がっ」

ガンッ  バタッ……

団長「そんなのは知ったこったゃねぇんだよ!! 魔王だろうが勇者様だろうがなっ」

団長「おいっ!! このガキを運べ…五月蠅くてかなわねぇ」

兵士「はっ!!」グイッ

ーーーー

勇者「うっ…うぅ…」ズキッ

「目が覚めたか」

勇者「お前は誰だ…?」



204: 2012/12/09(日) 20:57:28.16 ID:ONnM736o0



「儂は、弐の国の大臣…始めまして勇者様」

勇者「お前っ、何故こんな…王様は何をして…まさかっ!?」

大臣「いやいや、王は所用で都におられるよ…まぁ、この城に帰って来る事は無い」

大臣「悪漢にでも殺されてな」ニヤニヤ

勇者「大臣っ……!!」

大臣「まぁ勇者様にもこれから氏んで貰いますが…おいっ、魔導師」

魔導師「はい、此処に…」

勇者「魔族っ!! 何故ここに!?」

大臣「呆れる程に純粋だな……儂は魔族と手を組んだのだよ、勇者を差し出せば王になれると言うんでな」

大臣「それに我が国だけは残してくれるそうだ」

勇者「大臣…お前はそんな言葉を信じたのか!?」

大臣「あの、あの若僧が…儂の方が国の為に尽くしていると言うのにっ…奴は血筋だけで王になったのだ!!」

大臣「儂の方が、儂の方が王に相応しいっ!!」

凄まじい嫉妬と憎悪だ!! 正常な判断が出来てない…

魔族はそこにつけ込んで増幅させたんだ、奥底にあった、王に対する嫉妬と憎悪を…


魔導師「………」ニヤッ


武器は勿論、それに魔法も使えない……どうしたら良いんだ。

それに僧侶は無事なの…?

『キラキラキラッ……』

指輪が!?

そっか…そうだね、僧侶は必ず来るっ!!

少しでも時間を…



205: 2012/12/09(日) 21:01:06.93 ID:ONnM736o0

ー城への道ー


僧侶「村に一頭だけ馬が残っていて助かった、都は越えた!! このまま一気に城までっ!!」カカッ カカッ

僧侶「もう日も落ちたな、……!! あの馬車…何か様子がおかしい…」

王「何のつもりだ貴様等、気でも触れたか?」

『いいや、オレ達は正常さ コレが任務なんでな 』


反逆兵「次期王の命令なんだよ…あんたには此処で氏んで貰う」ジャキッ

王「次期王だと? まさか…大臣か?」

黒幕は大臣か……兵士は三人… スッ…



206: 2012/12/09(日) 21:03:04.38 ID:ONnM736o0


反逆兵「流石に察しが良いな、おいっお前ら、さっさと片付けるぞ…」

ドサドサッ……

反逆兵「おいっ」クルッ

反逆兵「なっ!? 誰だ!! 出てこいっ!!」

「これは裁きだ…貴様等には躊躇い無く刃を突き立てられる、氏ね…」

ジャキッ ザグッ……

反逆兵「ぐッあッ!! …!? 白 い 氏に 神 かッ…」

ブシャッ!! ドサ…

王「……お前は?」

「私は『守り手』、勇者の守護者」

王「そうか、お前が…何にせよ助かった、礼を言う」

「いえ、それより急がねば…勇者が城に連れ去られ、一つの村が壊滅…村人は反逆兵により虐殺されました…」

王「なにっ!? 大臣、奴は何を…守り手よオレも城へ行く、頼まれてくれるか…?」

「王よ、今の城は危険です…恐らく魔族も関与している筈」

王「いや、策はある…それにオレは王だ、見届けなければならない」


覚悟ある者の瞳…


「……承知しました」

王「ならば一度都に戻るぞ」



207: 2012/12/09(日) 21:17:06.48 ID:ONnM736o0

ー王城ー

勇者「大臣、お前は魔族に騙さてる」

大臣「ひゃはは、そんな事ある訳が無い、儂が騙されるなどない」

ダメだ、もうこの人は壊れてしまっている。

大臣「なあ魔術師?」

魔術師「ええ、勿論ですとも大臣は賢い御方です」ニヤ

大臣「そうだろう!! ひゃひひ儂が王なのだ、儂が儂が儂が儂が…」ブツブツ

勇者「……」ゾクッ


勇者「大臣っ!! 村は!! 村の人は無事なんだろうなっ!!」



   「あの村の奴らなら…」


    ー勇者は此処で初めてー


    「皆頃しにしたぞ?」


  ー『人』の醜さを知る事になるー





208: 2012/12/09(日) 21:19:49.34 ID:ONnM736o0


勇者「そんなっ!! そんなっ……うっ…うわぁぁぁぁ!!!! お前は!! お前は人間じゃないっ」

勇者「人を…!! 守るべき人達を何だと思ってるッ!!」

大臣「何を言う? 王が自分の物をどうしようと問題無いだろう、この国は全て儂の物なのだから…ひゃひッ」 

狂っているっ!! 僧侶、私は甘かったんだ…こんな、こんな『化け物』に話が通じる訳が無いっ……


僧侶っ……




209: 2012/12/09(日) 21:23:39.00 ID:ONnM736o0

ー城門ー

反逆兵「あの大臣はイカれてる…協力した報酬貰ったら早いとことんずらするか」


ガラガラガラ……


反逆兵「んっ、そうか今日は商人が来る日だったな…止まれっ、荷を確認する」

商人「ええ、ご苦労様です」


ゴソゴソッ…  んっ? グッ!!……


商人「済んだか?」


「はい、王よ…城へ入りましょう…」


王「そうだな…」



210: 2012/12/09(日) 21:26:20.15 ID:ONnM736o0

ー王城ー

『大変です、城内に侵入者が!!』

僧侶が来てくれたんだ…でも兵士は沢山いる、僧侶がここを見つけられるかも分からない……私はもう

大臣「魔術師よ侵入者を始末しろ、勇者は儂が頃す…ひゃひひ」

魔術師「……」

魔術師「はい、畏まりました…大臣、あなたは本当に素晴らしい方ですね」ニコッ

ガチャ パタン…

大臣「ひゃひッ、さて頃すか…儂は王だ、王王だオウ王だからな、ふひゃっ」ニヤニヤ

チャキッ


ダメだ、殺されるっ…



211: 2012/12/09(日) 21:29:15.97 ID:ONnM736o0

ー王城ー

魔術師「侵入者は?」

『おぉ、魔術師 ヤツはあちらです 中々手強くて手間取っておりました』

ギィン ギャリ!! ザンッ

魔術師「魔炎・射弾」

ドッドッドッ!!

「ぐっ!!」

魔術師「其処までだ守り手よ」

「くくっ」

魔術師「………!? まさかっ!!」


王「一国の王たる者、国を守る為、民を守る為ならばこの身を投げ出すなど造作ない、『人』を舐めるなよ…化け物が…」フラッ


魔術師「チィッ!! 小賢しい」ギリッ

ドンッ!! ガラガラッ!!!! 


魔術師「爆発っ!?」


王「人は蘇りはしないが、城など建て直せば済む、化け物…お前は其処でじっとしていろ」ニヤッ



212: 2012/12/09(日) 21:51:56.75 ID:ONnM736o0

ー王城ー

ドンッ!! ガラガラッ!!

大臣「ひゃひッ、なんじゃなんじゃ? ばくはつかぁ? まぁ良いゆうシャをコロ殺せば儂が王だぁ」

バリンッ!! 

大臣「なんじゃァ?」

勇者「僧侶っ!! 危ないっ!!」

ザシュッ!! 

団長「やっぱ陽動だったか…」

「貴様が、貴様が団長か……」ボソッ ユラッ

団長「コッチに来てせい」

スッ…ジャキンッ ザクッ!!

団長「きゃッ」ドサッ


僧侶「勇者…今、助けるからな」

大臣「ダれダァ? いだイな王にナニかヨうか?」


「人を捨て…罪無き者を頃した愚か者よ…」


「貴様の罪は氏を以てしても決して許されはしない!!」ダッ


大臣「ナにぃ? わシはイイだい王ダぞぉ!!」ブンッ


僧侶「殺技・紅吹雪…」ググッ

ダンッ!!

ジャキッ!!  ザギャッ!! ズシャシャシャシャシャッ!!

大臣「ゲギャッ わ シハ 王に 」

ブッシャァァァッ!! ボタボタボタッ…


僧侶「眠れ、偽りの王よ………地獄でな…」



216: 2012/12/09(日) 23:31:29.74 ID:ONnM736o0

ー王城ー

僧侶「勇者っ!! 大丈夫か?」

勇者「私、怖かった…怖かったよぉ」ポロポロ

僧侶「………」ギュッ

勇者「村の人が、みんながっ!!」ギュウゥ

僧侶「……分かってる、今は此処から出よう…今、手錠を外すから」カチャ

勇者「…………」フラッ バタッ…

僧侶「勇者っ!! ショックが大き過ぎたんだ…それに自分の所為だとも思っているんだろう……」ギリッ

僧侶「とにかく城を出て都へ行かないとっ!! 今見つかるのはまずい」ガシッ

ダダッ!!


ーーーーーーーーー


弐の国都ー宿ー


兵士「僧侶様、王が城へお呼びです」

勇者「すぅ…すぅ…」

僧侶「分かりました、すぐに支度します」

兵士「勇者様は…まだ……」

僧侶「大丈夫です、彼女ならきっと…大丈っ夫ですっから」ポロッ


……っ!! 大臣の氏体を見た時どんなに残忍な奴かと思っていた……


でもこの方は違う…こんな慈愛に満ちた目を出来る方が只の残忍な殺人者である訳がない……


兵士「行きましょう、僧侶様…」





この方は、確かに『守り手』なのだ。




217: 2012/12/09(日) 23:39:19.60 ID:ONnM736o0

ー王城ー

王「来たか守り手、今回は助かった…無論お前は勇者の為にやったんだろうが、結果反乱分子も一掃できた…」

王「例を言う」スッ…

僧侶「頭を上げて下さい、今回の事は私が勇者から目を離さなければ起きなかったのですから」

王「過ぎた事だ、後々ああなっていたよ…それと城に居た魔族だが、姿を消した様だ」

王「それより勇者はまだ…」

僧侶「ええ、眠ったままです…目覚めても心の傷は癒えません」

王「それは、どうしようもないな」

僧侶「……えっ?」

王「幾らお前が心配しようと勇者自身が己の力で乗り越えるしかない」

僧侶「………」

僧侶「一つ願いが御座います…」

王「何だ言ってみろ」

僧侶「滅びた村の者達の埋葬と墓を建てて欲しいのです」

王「そうか、そうだな…分かった、すぐに取り掛からせよう」

王「それと僧侶、お前は賢者を探しているのだったな」

僧侶「ええ、そうです」

王「オレの友人が知っているかもしれん」

「あんまり持ち上げるんじゃねぇよバカ!! 分かりませんでした、何て事になったらウチの会社の信用が落ちるだろうがアホ!!」

僧侶「あの、そちらの方は?」

王「コイツがオレの友人のバカ、もとい、女商人だ…クソが、ボソッ」

女商人「聞こえてんだよバカ、自分でボソッ、とか言ってんじゃねぇよ」

王「こんな奴だが忌々しい事に商才があってな、商会の会長をやってるんだ、神は優し過ぎるとは思わんか? 守り手?」

僧侶「えっ?」

女商人「おい、ウチの大砲で城壊すぞこの野郎…」

王「下らない話しはこの辺にして、都にあるソイツの商会に行き情報を集めて来い、そんなバカでも役に立つかもしれんからな」ウン

女商人「後で大砲持って来っからな覚悟しとけよ…」

女商人「おい、守り手!! 行くぞ!!」

僧侶「あっ、はいっ!!」ダッ




220: 2012/12/10(月) 01:40:59.12 ID:RK3UYzxZ0

都ー女傑商会ー

僧侶「凄い名前ですね」

女商人「だろっ!? 女舐めんなよって理由で付けた名前なんだよ…あと敬語止めろ痒いから」

僧侶「分かったよ、女商人…で賢者の情報はどうやって?」

女商人「それなら大丈夫だ、女傑商会の仲間は世界各地に居るからな…2・3日待てば分かる筈だ」

僧侶「それじゃあ、オレは宿に戻る…それとオレの事は僧侶でいい」

女商人「おう、宜しくな僧侶、あとな…その…」

僧侶「どうした?」

女商人「アイツはアイツなりに、お前を励まそうとしてんだ、分かってやってくれ」ポリポリ

僧侶「ああ、女商人と王のやり取り見てたら元気出たよ、ありがとう」

女商人「そっか……勇者はお前を待ってる、引き留めて悪かった」

僧侶「いや、助かったよ…じゃあまたな」ガチャ

パタン

ーーーーー


都ー宿ー

勇者「うぅん……外…真っ暗だ」

僧侶「くぅ…くぅ…」

勇者「僧侶、側に居てくれてたんだ」フフッ

勇者「僧侶のあんな顔、初めて見たな…」


ーーーーー


「人を捨て…罪無き者を頃した愚か者よ…」


「貴様の罪は氏を以てしても決して許されはしない!!」ダッ


大臣「ナにぃ? わシはイイだい王ダぞぉ!!」ブンッ

僧侶「殺技・朱吹雪…」ググッ

ジャキッ!! ザクッ!! ザシュッザシャシャシャッ!!

大臣「わ シハ 王ッ 」

ブッシャァァァッ!! ボタボタボタッ…



僧侶「偽りの王よ、眠れ…地獄でな……」


221: 2012/12/10(月) 02:14:46.49 ID:RK3UYzxZ0


勇者「あれが『守り手』の僧侶…あんなに凄絶な光景だったのに怖くなかったな……」

何より、守るという意志と決意を感じた…着ていた御先祖様の衣装も、まるでずっと前から着てたみたいに似合ってた……

僧侶「うっ、うぅっ」ギュッ

勇者「あっ…そうだよね、僧侶も辛いよね」ギュッ

勇者「寝よう、そして明日は村に花を供えに行こう…お休み、僧侶…」

ーーーーー

ー宿ー

勇者「僧侶っ、起きて」ユサユサ

僧侶「うんっ?……!?」

僧侶「勇者っ!! 目が覚めたのか…良かった…大丈夫、なのか?」

勇者「辛いよ、でもね…幾ら考えても悪い人の考えなんて分からないって事が分かったよ」

勇者「確かに大臣の様に魔に魅入られた人もいる、でもそれも真実だし…認めなきゃならないんだ」

僧侶「…勇者……」

勇者「ねぇ、村に行こう…手を合わせたいんだ……」

ーーーーー


ー村跡地ー

勇者「どうか安らかに眠って下さい…それと私は諦めない、もうこんな事させないから…」

僧侶「…………」

強くなった…気高くなった。

変わって行くんだな、僧侶もオレも……

隣に立つ者として、彼女の守護者としてオレも進んで行かなければ。


勇者「じゃあ、行きます…また、必ず来ますから……」

パァァァッ…  ブワッ!!

僧侶「勇者、見てみろ」

勇者「えっ?」クルッ

勇者「……!? 花が…咲いてる」

僧侶「綺麗だな」ニコッ

勇者「うんっ、そうだね」ニコリ

僧侶「……都に、戻ろう……」

勇者「そうだね……」

ー勇者様っ!! 負けないでねっ!!ー

勇者「うんっ」ザッ



234: 2012/12/11(火) 00:40:47.78 ID:eUI0DWCY0

何故こんな目に……俺が魔族だからか? 魔族だから殺されるのか?

人間が魔族の住む此の地に攻め込んできたから数日が経った。

最初は何とか防げたが敵は数が多い、それに統率がとれてる。

個人の力は魔族の方が上だが戦略もクソもない…

そして数多くの魔族が氏んだ、父さんも母さんも俺を守って氏んだ…

魔族は生きてちゃいけないのか?

殺されるのを待つだけなのか?

嫌だ、俺は生きたい…氏にたくない。

戦おう、戦わなければ氏ぬ…このままでは皆氏んでしまう。


           ー人間共ー


         ー皆…頃してやるー





235: 2012/12/11(火) 00:43:10.75 ID:eUI0DWCY0

ーーーーー

ー野営地ー

「本当に戦うのか? しかもたった二人でか?」

「戦える大人達は皆氏んだ、もう俺達しかいない、この村も次攻められれば終わりだ」

「まぁ、そうだな…で? どうするんだよ?」

「今から奴等がいる野営地を襲撃する、何度打てるか分からないが魔力が尽きるまで打ちまくる、お前は奴等の中で魔法を使える人間を殺せ」

「お前の魔力が切れたところなんて見たことねぇよ、全く…魔法の才能がある奴は羨ましいね…オレには剣しか使えないからな」

「いや、お前には補って余りある素早さと力がある…お前は茂みに隠れてろ、俺が魔法を打ち始めたら奴等の背後から攻めろ…頼むぞ」

「おうっ、任せとけ」スッ…

「父と母、そして殺された魔族の痛み…思い知れ人間共」

「闇雷・槍雷」ズッ

ビカッ!! ズドッズギャギャン……

『魔族の襲撃だ!! 魔法の数が多いぞ 敵は複数か!!』

『魔法隊!! 防御壁を張れ!!』

「させるかよ」ニヤッ

ダッ!! ズバババババハッ!!


『うぎゃああ!! なんだ!! なにか居るぞ!!』

『魔法隊がやられた!! マズい!! 退けっ!!』

「逃がさん、焼き尽くしてやる」

「闇魔・這炎」ズッ

ゴッ!! ズズズズズズズッ!!

『炎がっ!! 炎が這ってくるっ!! 』

ゴォォォォッ!!!

ーーーーー

「おうっ、やったな!!」

「ああ、だが一時だけだ」

「これからどうする? 流石に二人じゃキツいぜ?」

「集めよう…共に戦う者を、奴等に怨みを持たない者はいない」

「そうだな…じゃあ、行くか? 仲間探しに?」ニッ

「ああ、行こう」ザッ



236: 2012/12/11(火) 00:45:20.13 ID:eUI0DWCY0

「うっ…うぁぁ」

「大丈夫か? 何があった?」

「おい、どうした?」

「子供が倒れてる…人間共の襲撃から逃れたんだ」

「じゃあ、こいつ以外は」

「もう氏んだだろうな」

「お 母さん…お兄…ちゃん」

「治癒・小」パァァァッ

「おい、どうするつもりだ?」

「連れて行く」ガシッ

「そんなガキ足手まといにしかならないぞ? 良いのか?」

「見つけてしまったんだから仕方ない、俺が背負えば問題無いだろ? 人間が出たら頼むぞ」

「ちっ、分かったよ」

「助けてくれてありがとう」

「いや、お前の運が良かっただけだ、後は好きにしろ」

「行く所は無いです、私の住んでた村は無くなりした…父も母も兄も氏にました、人間に殺されて」

「お前はどうしたい? 人間と戦うか? 着いてくるか?」

「おっ、おいおい…そんなガキほっとけよ、戦えるわけねぇ」

「行きます、あなた達に着いて行きます」

「あぁもう!! 勝手にしろっ」

「俺達は人間と戦う為に仲間を探してる、生き残りは少ないだろうが俺達だけでは流石に無理がある」

「仲間…戦えば人間を追い出せるんですか?」

「さあな、だが大人達は氏に…残っているのは若い奴かお前の様な子供しかいないだろう」

「3日歩いて見つけたのがこんなガキ一人だからなぁ、オレらみたいな奴なんて生きてんのか?」

「それでも探す、そして此処から奴等を追い出す、そしていずれは」

「なんだよ?」

「今は良い、まず仲間探しが先だ」

「へいへい、分かりましたよ」

「そろそろ行くぞ、おい…来るのは良いが氏ぬなよ」

「ありがとう…ございます」

「ったく、オレは面倒みねぇからな」


237: 2012/12/11(火) 00:47:02.90 ID:eUI0DWCY0


「なあ、結構仲間集まったな、そろそろやるか?」

「ああ、良い頃合いだろう」

「全く大したもんだ、今や立派な指導者だな」

「魔族に足りないのは統率力、人間と魔族の大人達の戦いが教えてくれた、人間は統率された数の力がある」

「荒くれ揃いの連中をよくまとめ上げたもんだ」

「これで準備は整った、後はあの砦を攻めるのみ」

「奴等は見捨てられたんだろうな、あれから増援もない」

「やっと、此処まで来た…あれを落とせば此処に人間はいなくなる、行くぞ」

「おうっ!!」


『魔族が来ました!! 本国から増援は!? 畜生ッ!! 俺達は見捨てられたんだ!!』

「皆…氏んでいった魔族の恨みを晴らせ」


『オオオォオオオォ!!』



「意外に粘るなあいつ等」

「俺が行く、皆を呼び戻せ」

「だから最初からお前がやれば早いって言っただろうが」

「皆も人間を頃したかったろうからな、父、母を失った子供達だ…親兄弟を頃した人間を頃す事で少しでも気持ちが晴れればいいだろう?」

「お前もじゃねぇのかよ?」

「そうかもな、皆引き返したな…行ってくる」ザッ



238: 2012/12/11(火) 00:50:43.05 ID:eUI0DWCY0


『退いたぞ!? いや、魔族が一人向かって来ます!! なにぃ?』

「愚かで醜い人間共!! お前等は全員頃す!!」

『あいつバカか? 一人で砦が落とせる訳が』


「闇炎・獄」ズッ


ドッ!! ゴォォォォ!! ボォォォォッ!!

『ギアァァ!! 火が火がァッ!!』


「痛みを知れ…人間共」



「おうっ、お疲れさんっ!!」

「そうでもない、それより怪我をしている者がいないか見てきてくれ」

「仕方ねぇなあ、後で祝杯を挙げ酔うぜ!!」

「ああ、そうだな」

「終わりましたか?」

「お前か…随分成長したな」

「あなたのお陰です、あの時出逢え無かったら…私はここには居ませんから」
「そうか…だが、まだ人間との戦いは終わりでは無い」

「どういう事ですか?」

「皆を呼べ、それからだ」

ーーーーー

「皆揃ったか?」

「はい、揃いました」

「今度は何すんだ? ここに人間はもういないぜ?」

「それを今から話す」



239: 2012/12/11(火) 00:52:30.74 ID:eUI0DWCY0


「皆ご苦労だった!! 俺達は人間に勝利した!! だが奴等はまたやってくる!!」

「ならば!! ならば此方から攻める!!」


ザワザワザワ……


「奴等人間がいる限り、俺達に平穏はやって来ない!!」


「奴等を…人間を滅ぼすのだ!! 魔族の為、氏んでいった者達の為に!!」


『そうだ…奴等がいるから… 人間を滅ぼせ!! 人間を滅ぼせ!!』


「そして俺は、『人間』の恐怖と脅威の象徴として、これより」







「魔王と名乗る!!!!」


『ワァァァァァっ!!!魔王様ァァァァァァ!!!!』



240: 2012/12/11(火) 00:59:16.20 ID:eUI0DWCY0

魔王「我は滅びない、世界から人間を滅ぼし魔族の平穏を手に入れるまで」

魔王「貴様等人間は醜い!! 我は見てきたのだ!! その醜さを」

勇者「魔王…私は『人』を守る為に戦った…お前は『魔族』を守る為に」

魔王「貴様等人間が我々の暮らしを愚かな欲望で壊さなければ、こうはならなかった」

魔王「偽りの正義だ、しかし我々の真実など歴史の闇に葬られる…だが!! 何年何百年掛かろうと必ず蘇り人間を滅ぼす」

「これが我の誓い…だ」サァァァァ

ーーーーー

「魔王様?」

魔王「ん、ああ…少し眠っていた様だ」

「魔王様の寝顔を見れるなんて」

魔王「懐かしい夢を見た…夢の中のお前は、まだ幼かったな」

「私、これでも結構成長したんですよ?」

魔王「そうだな……魔女よ…少し一人にしてくれ」

魔女「……はい、畏まりました」ヒュッ

ーーーーー


魔王「魔族を守る為、か…」




241: 2012/12/11(火) 01:18:44.49 ID:eUI0DWCY0

弐の国ー都ー

ー宿ー

勇者「ねぇ僧侶、そう言えば壱の国の王様から貰った荷物があったよね?」

僧侶「あっ!! そうだった、加治屋に行かないと…」

勇者「んじゃ行こうか? あんまりじっとしてたくないし…」

僧侶「そうだな…んじゃ、行くか!!」ニコリ

勇者「うんっ」ニコッ

ー加治屋ー

職人「おお、話なら聞いてるよ!! 嬢ちゃん、丈夫な武器防具作っから安心してくれ!!」

勇者「お願いしますっ」ニコッ

職人「任せとけ!! 時間は掛かるが、それだけの価値がある物になるからよ!!」ニカッ

僧侶「では、宜しくお願いします、行こうか勇者」

勇者「うん、夕ご飯食べよう?」ニコッ

僧侶「そうだな」ニコ

ーーーーー

勇者「女傑商会かぁ、その女商人さんが調べてくれるの?」

僧侶「ああ、2・3日待ってくれと言われたよ…良い機会だし休める時に休んでおこう」

僧侶「それに弐の王には改めてお礼を言わないと」

勇者「うん?」キョトン

僧侶「勇者を助ける時、王にも協力して貰ったんだ…それに混乱の最中に城から逃げる手伝いと宿の手配までしてくれたんだ」

僧侶「後…村人達の埋葬と墓を建ててくれると約束してくれた」

勇者「そう…だったんだ…」

僧侶「でも、もう夜だし明日行こう」

勇者「うん……そうだね」

勇者「ねぇ、僧侶?」

僧侶「どうした?」

勇者「私を助けてくれてありがとう」ギュッ

僧侶「本当に、本当に無事で良かった…」ギュウッ

勇者「私は大丈夫…だから僧侶、一緒に歩んで行こう?」

僧侶「ああ…」


247: 2012/12/12(水) 22:30:29.08 ID:7N02LwcC0


ー王城ー

王「よく来たな勇者」

勇者「初めまして王様、村の事…ありがとうございます」

王「礼はいい、お前には辛い思いをさせた、大臣の異変には気付いていたが…魔族絡みだとは思わなかった」

勇者「いえ、いずれは知るべき痛みだったんだと…思いましたから」

王「そうか…勇者、人は弱い…確かに心の醜い者達もいるだろう、それは魔王を倒しても無くなりはしない」

王「だが、当然救われる者達もいる…我が国の民、そして全ての者達に希望を与えてくれ」

勇者「はいっ!!」

王「偉ぶった事は言ったものの格好が付かないな、急がせてはいるんだが城が穴だらけだ…」

僧侶「すいません…」

王「ははっ、あの時のお前の必氏さは凄まじかったな…王に陽動を頼むなど並みの奴なら出来んぞ?」

王「まあ、オレも城へ行くと言った以上覚悟はしていたが一部ではあるが城を爆破するとはな」

勇者「王様にそんな事頼んだの!? 爆破!?」

僧侶「いやっ、あの時はっ」

王「はははっ!! いいさ、そうそう出来る体験では無いしな、僧侶…お前には感謝している」



248: 2012/12/12(水) 22:31:49.47 ID:7N02LwcC0


僧侶「いえ、そんな…」

王「ところで女商人は何と?」

僧侶「2・3日には、と言っていました、それに鍛冶屋に武器防具を頼んでいるので暫くは都にいます」

王「そうか、暇なら女商人の所に行ってやれ、ああ見えて寂しがり屋だからな」

僧侶「……はい」

勇者「王様とはどんな?」

王「只の腐れ縁さ、父同士仲が良かったのもあるがな」

王「…まあいい、良い機会だ都もじっくり見てくれ」

勇者「はいっ!! 僧侶、行こう?」

僧侶「では王よ、私達はこれで」ザッ


ーーーーー


ー都ー


勇者「こうやって僧侶と歩くのは初めてだね?」

僧侶「そうだな…旅に出る前から魔物に襲撃されたり大変だったな」

勇者「うん…そうだね」

僧侶「なあ…勇者は王宮に行くまでどんな暮らしをしてたんだ?」

勇者「そう言えば話して無かったね、私の故郷は小さな村で、家は牧場で毎日父さん母さんの手伝いをしてたんだ」

勇者「それで村に熊が下りて来て…隣のお家の子が襲われそうになった時、急に熊に雷が落ちて…」

勇者「それから暫くしたら王宮の兵士が迎えに来たんだ…父さん母さんは泣いてたけど…最後は村の人達全員笑顔で見送ってくれた」ニコ…

僧侶「勇者の故郷か…旅が終わったら行ってみたいな、きっと良いところなんだろう」

勇者「うん、皆いい人だよ…神父さんは泣きながら御守りくれたし」

僧侶「ははっ、温かい人達だな」

勇者「ふふっ、僧侶が来たら家で作った牛乳飲ませてあげるよ、凄く美味しいよ」

僧侶「楽しみにしてるよ」ニコリ


249: 2012/12/12(水) 22:34:31.64 ID:7N02LwcC0

ー女傑商会ー

女商人「ほぉ、お前が勇者か…ちっこいなぁ」ワシワシ

勇者「うわっ、僧侶っ女商人さんって」

僧侶「そんな感じの人だ…多分、誰に対しても」

女商人「ところで何で来たんだ?」

勇者「女商人さんは寂しがり屋だからって、王様が」

女商人「あの野郎…今度張り倒す、あっ…そうだ鍛冶屋の爺さんが僧侶に話があるってよ」

僧侶「オレに? 頼んだのは勇者の武器防具なはずなのに」

女商人「訳は詳しく聞いてないから何とも言えねぇけど、日が落ちる前に行ってやれよ?」

僧侶「じゃあ、すぐ行ってこよう…勇者は女商人と居てくれ」

勇者「分かった」

女商人「勇者、ヒマだし私が都案内してやるよ、美味い店知ってるからさ」ニカッ

勇者「ありがとうございます!!」

僧侶「じゃあ、頼むよ」

女商人「おうっ!! 爺さんによろしくな」

勇者「行ってらっしゃい、僧侶」

僧侶「ああ、じゃあ後でな」


ーーーーー

ー鍛冶屋ー

職人「おぉ、来たか」

僧侶「私に何か? 頼んだのは勇者の物ですが…」

職人「あんたの身に付けてる篭手を見せて欲しい、見たときビビっときてな」

僧侶「………」スッ

ジャキンッ!!


職人「おぉ!! やはりか!!」

僧侶「私の先祖が使っていた物です、知っているのですか!?」

職人「いや、儂も鍛冶屋は長い事やっててな…そういった、暗殺武器の様な物も考えてはいたんだ」

僧侶「………」

職人「その発想の中にそれと同じ物があってな…」ゴソゴソ

職人「これがそうだ」ガチャ

僧侶「かなり…いや、酷似している」

職人「今日呼んだのはあんたに渡そうと思ったからだ」

僧侶「……何故ですか?」

職人「こういった物は持つべきで無い奴に渡ると無闇やたらに人を頃しかねない、だが…あんたならば、と思った」

職人「武器は人を傷付ける物、命を終わらせる物…正しかろうが何だろうが、武器を使えば人は氏ぬ」

僧侶「では、なぜ?」

職人「……儂はずっと考えていた、武器を客に渡した時ありがとうと言われると、上手くは言えないが人頃しの道具を造り続ける事が………」

僧侶「職人さん……」

250: 2012/12/12(水) 22:36:48.69 ID:7N02LwcC0


職人「とにかくこれは、あんたにやる…何かの縁だろうからな」

職人「刃は儂が持つ中で最高の鉱石を使っている…篭手もそこらの剣なら容易く防げる強度だ、安心してくれ」

職人「長い間仕舞い込んでいたが手入れは済んでいる、受け取れ…あんたには役立つだろう」

僧侶「……何故、そう思うんです?」

職人「只の感だよ…そして守るべき者の為に武器を振るう男だと思った…」

僧侶「………」スッ

スチャ… ヒュッ ジャキッジャキン!!


職人「やはりあんたが持つべきだ、違和感が無い…ソイツも喜ぶだろう」

僧侶「有り難く使わせて貰います…守る為、守るべき者の為に」

職人「……」ニコ

職人「あっ!! そうだそうだ!! 後、嬢ちゃんのも出来てるぞ、ドラゴンの牙なんぞ滅多にお目に掛かれないから熱が入ってしまってな!!」

職人「牙からは剣、爪からは短剣、短剣には破魔の力を付加してある、鱗からは鎧と盾だ…」

職人「鎧・盾共に薄く軽いが強度は保証する、嬢ちゃんには丁度良い筈だ…色が派手なんで気になるなら服の下に着ると良い…それと牙は手間が掛かったが…今や白銀の剣の様だろう?」

僧侶「ありがとうございます!! こんなに早く仕上げて頂いて」

職人「いやいや!! こんなに気持ち良く武器を作ったのは久々だ、ありがとよ!! 嬢ちゃんによろしくな!!」

僧侶「はい!! では」ガチャ

パタン

職人「若いな…ふふっ、あっ!! 金貰うの忘れてた!! まあ…いいか」ニカッ

ーーーーー

勇者「美味しかったぁ、ありがとうございます!!」

女商人「ははっ、良かった良かった!!」

女商人「ところで勇者? その…あのな?」

勇者「どうしたんですか?」

女商人「私はこういうの慣れて無いから、上手く言えないけどよ…前向いて生きろよ、お前が笑ってりゃ村の奴らも笑ってくれる」

勇者「優しいんですね」ニコッ

女商人「あぁ、痒いっ!! 恥ずかしくなってきた!! 慣れない事はするもんじゃねぇな」ガリガリ

勇者「ふふっ」

女商人「ふっ、じゃあ飯も食ったし戻るか、お前も宿に戻れ僧侶の奴もそろそろ終わったろ」

勇者「そうですね、今日はありがとう」

女商人「あぁ忘れてた、敬語は止めろ…後、女商人でいいから」

勇者「じゃあ、ありがとう女商人!! またねっ!!」

女商人「おうっ!! 賢者の事が分かったら呼ぶから」

勇者「分かった」ニコッ

タタタッ…

女商人「あんな小せぇのが勇者だもんな…私も頑張らねぇとな」グッ


251: 2012/12/12(水) 22:39:38.60 ID:7N02LwcC0

ー宿ー

僧侶「お帰り勇者、楽しかったか?」

勇者「ただいま、凄く楽しかったよ!! ご飯美味しかったなぁ」

僧侶「へぇ、今度オレも行ってみたいな」

勇者「じゃあ、明日一緒に行こう」ニコッ

僧侶「ああ、それと勇者、職人さんからこれを」トサッ

勇者「わぁっ!! もう出来たんだ? あれ? 僧侶、その篭手は?」

僧侶「ああ、職人さんが昔作った物らしい…店頭に出さず仕舞い込んでたらしいけどオレにくれたんだ」

勇者「そっか、私のは…鎧・盾と剣」スッ

スラッ キラリ…

勇者「凄い綺麗な剣だね、鎧は…ちょっと派手だけど」

僧侶「薄いから服の下に着れるって」

勇者「うん、そうします」ウン…

僧侶「あっ!!」

勇者「わっ!? どうしたの!?」

僧侶「お金払うの忘れた」

勇者「……明日、払いに行かなきゃね? 僧侶」ゴッ

僧侶「…ごめん」


ー翌日ー

勇者「ダメだよ、お金はちゃんと払わないと」

僧侶「ごめん…でも三万ゴルとは、思ったよりかなり安かったな」

勇者「まけてくれたんだよ、きっと」

僧侶「だよな、助かったよ…じゃあ、昨日勇者が行った店にでも」

女商人「よっ!! 待たせたな!!」

僧侶「女商人…分かったのか!?」

女商人「ああ、さっき情報が入った…来てくれ」


252: 2012/12/12(水) 22:46:38.67 ID:7N02LwcC0

ー女傑商会ー


僧侶「場所は?」

女商人「伍の国、現地では神の山と呼ばれている」

勇者「神の山… 」

女商人「だが…条件があってな」

僧侶「なんだ?」

女商人「賢者は勇者一人で来て欲しいと言っているんだ」

勇者「……分かった、私は大丈夫だよ」

僧侶「………」

離れるのは危険だが伍の国はエルフの女王が統治している、閉鎖的だが平和だと聞くし…まず安全だろう。


僧侶「ならオレは此処で待つよ」

女商人「僧侶、そうも行かないんだ…」

勇者「どういう事?」

女商人「本格的に魔族が動き出した、士の国が侵攻されているとアイツから連絡が来たんだ」

勇者「なら私も…」

女商人「ダメだ…賢者は明日に伍の国に入らなければ協力しないと言っていた」

勇者「そんなっ!!」

僧侶「まるで事態を把握して言っている感じだな…だが、そう言っているなら仕方ない、士の国にはオレが行く」

勇者「ダメだよ!! 私も行く!!」

僧侶「勇者っ!!」

勇者「っ!!」ビクッ

僧侶「魔族に動きがある以上放っては置けない…それに、いつ魔王自身が魔物・魔族を率いて侵攻してくるかわからない…」


僧侶「オレが士の国へいる間、勇者は賢者から魔王の情報と『鍵』の在処を聞いて欲しい、そして世界の向こう側について……今は行く術すら分からない」

勇者「そう…だよね…」

僧侶「暫く離れる事になるが、事が終わったら此処に戻る…勇者もそうしてくれ」

勇者「……………」

女商人「出発は明日!! 私はこれから準備に取り掛かる、今日は休んでくれ!!」

254: 2012/12/12(水) 22:48:32.11 ID:7N02LwcC0

ー宿ー

勇者「………」

僧侶「勇者…賢者にも何か考えがあるんだろう」

勇者「でも!! 魔族や魔物に襲われてる人達を見捨てるなんて嫌だよ!! 私、勇者なのに…」グスッ

勇者「それに、僧侶一人だけで行くなんて……嫌だよ」ポロポロ

僧侶「なあ勇者?」

勇者「うぅ……なに?」

僧侶「オレは君が『勇者』ならそれでいい、誰も君を責めはしない…士の国はオレに任せろ」

勇者「…っ!! 分かった」グシグシ

僧侶「もう遅い、明日に備えて寝よう」

勇者「うん…ねぇ、僧侶? 一緒に寝て良い?」

僧侶「……ああ、いいよ」

勇者「ありがとう」ゴソゴソ

勇者「暖かい……気を付けてね、僧侶…絶対帰って来てね」ギュッ

僧侶「必ず帰ってくる、オレは君の守り手だから」ナデ

勇者「うんっ…うん」ポロ



255: 2012/12/12(水) 22:57:10.99 ID:7N02LwcC0

ー女傑商会ー

女商人「よしっ、来たな!!」

女商人「まず各自の移動手段を話す、船は港に準備してある、僧侶は私の部下が、勇者は私が連れて行く」

僧侶「分かった、オレはもう行く…女商人、勇者を頼む」

女商人「おうっ!! 任せとけ!! 僧侶、さっさと帰って来いよ!!」

僧侶「……ああ、分かってる」

勇者「僧侶っ!! 行ってらっしゃい!!」ニコリ

僧侶「ああ、行ってくる!!」ニコッ

ガチャ  パタン…


256: 2012/12/12(水) 22:59:40.55 ID:7N02LwcC0

ー港ー

部下「あなたが僧侶さんですね、会長から聞いています…此方へ」

僧侶「分かった」

部下「士の国へはそう遠く無いので、夜には到着します」

僧侶「その方が安全だろうな、宜しく頼む」

部下「はいっ!! では出発します!!」


ーーーーー

ー女傑商会ー

勇者「よし!! 私は私の出来る事をやらないと!!」

女商人「なぁ? お前ってさ」

勇者「ん? なに、女商人?」

女商人「えっとだな…その、お前は僧侶に惚れてんのか?」

勇者「うん」

女商人「……っ!? 随分あっさり認めるなぁ、びっくりした…でも、いい男だな…あいつ」

勇者「へへっ」

女商人「ふふっ、全く……んじゃっ!! 私らも行くかっ!!」


257: 2012/12/12(水) 23:08:52.01 ID:7N02LwcC0
>>253 

2ですね。 薬指無かったら流石に勇者とかも引くかなぁと…

衣装は某伝説のアサシンの物で、肩当てなどは最強のアサシンの物ですね。

自分も1のアサシンブレードの生々しさは好きです、覚悟のいる武器なので。

少し休憩してから書きます。

258: 2012/12/12(水) 23:43:32.18 ID:7N02LwcC0

船ー甲板ー

部下「僧侶さん、そのローブは? まさか…氏に装束?」

僧侶「いや、これはオレの先祖が着ていた物だ、戦地に行く事になった時コレが一番合っているかと思って」

部下「なる程、もう少しで着きますので」

僧侶「分かった…」

部下「僧侶さん?」

僧侶「はい?」

部下「弐の国の大臣の話し、聞きました…僧侶さんの事も」

僧侶「そうか…」

部下「凄く怖くて寡黙な人かと思ってました、それにとてもお強いんでしょう……けど柔らかくて優しい方ですね」

僧侶「そうかな? 多分、変わったんだと思う…ほんの少しだけど……」

部下「大事な人がいるんですね」ニコ

僧侶「ああ、その人の為なら…」ズズ…

部下「どうしました?」

僧侶「いや、何でもないよ…」


ーーーーー


部下「僧侶さん、着きました…」

僧侶「分かった、此処からは小船で行く…」

部下「お気を付けて、ご武運を…」

僧侶「ああ、帰ったら女商人に宜しくな」

ギコッギコッ……

ーーーーー

ー士の国ー

僧侶「着いたな、もうすっかり夜か…向こうに村が見える、行こう…」ザッ


259: 2012/12/13(木) 00:02:42.95 ID:tUZqWT8q0

ー村ー

僧侶「酷い…皆、氏んでいる」ピクッ

僧侶「誰だ?」チャキッ


「待て…オレは人間だ」

僧侶「何故此処にいる? 名は?」

「助けに来たんだ…遅かったけど、名は剣士だ…あんたは?」

僧侶「オレは僧侶だ、魔族を止めに来た」

剣士「僧侶? もしかして守り手か?」

僧侶「何故知っている?」

剣士「この前爺ちゃんに聞いたんだ、名前もそうけど、風貌と気配が聞かされた物と似てるからそうかなと思った」

僧侶「師範さんの孫…どうして士の国に?」

剣士「単純に武者修行…のつもりだったんだけどな、何時の間にか魔物が」

『グルル ゲギャギャ グヴァ』

剣士「こんな風に湧いて来て…」

剣士「剣技・雷一閃」ギン


ギャン!! ズッバァァァ!!

『ギィィアアア……』シュゥゥ…


剣士「…僧侶、オレも連れて行ってくれないか?」

僧侶「………」

剣士「これ以上こんな光景を見るのは嫌なんだ」

僧侶「分かった…行こう」

剣士「ありがとう…… 村の皆、遅れてごめん…」ギリッ

僧侶「…っ!!」

剣士「よしっ!! この先にまだ無事な町があるから、そこへ行こう」

気丈な子だ…年も勇者と変わらない。

僧侶「分かった」ザッ

何故士の国が狙われたか分からない…少しでも情報が欲しい。

それに、オレもこれ以上魔族の好きにはさせたくはない…


261: 2012/12/13(木) 01:03:49.41 ID:tUZqWT8q0

ー町ー

町長「村は…どうじゃった?」

剣士「ダメだったよ…」

老人「そうか…都も心配じゃな…ところで其方の方は?」

剣士「この人は僧侶、この国を助けに来てくれたんだ」

町長「そうでしたか…この町は比較的安全です、剣士も僧侶さんもお疲れでしょう、宿で休んで下さい…」

僧侶「ありがとうございます」


宿ー深夜ー


剣士「すぅ…すぅ」

僧侶「…………」

僧侶「そろそろ行くか…」スッ

町長「都へ行かれるので?」

僧侶「…!? 町長さん…えぇ、もう発ちます…剣士には町を守ってくれと伝えて下さい」

町長「置いて行かれるのですか?」

僧侶「はい、剣士…いや、彼女は強いですが脆い、私と共に行った後この町が滅ぶ様な事があれば…彼女は耐えられないでしょう」

町長「…そうですか、剣士には伝えておきます……僧侶さん、家の馬をお使い下さい」

僧侶「ありがとうございます…では」ザッ





町長「彼に神の御加護を…」ギュッ


265: 2012/12/13(木) 21:09:44.10 ID:y6+XiQLs0

都ー門ー

門番「誰だ貴様!! こんな夜更けに都に何の用だ!?」

僧侶「弐の国の王の命できた、名は僧侶…勇者様の守り手だ」

門番「勇者の守り手? 肝心の勇者様は来てないのか?」

僧侶「勇者様は伍の国に居る賢者に会いに行っている、私だけだ」

門番「魔族・魔物に侵攻されてるってのに助けに来てくれないのかよ、けっ…何が勇者だ」

僧侶「黙れ…」

門番「な、なんだよ?」ビクッ

僧侶「オレが魔族・魔物全て殺せば問題無いだろう」

門番「っ!!」ゾクッ

コイツ、何て目をしやがる…

今、話しているだけで刃を突き付けられている様だ。

門番「入れ…都には城から騎士達が来てくれてる」

僧侶「そうか、分かった」ザッ



門番「守り手? あれじゃあ、まるで…」


266: 2012/12/13(木) 21:11:32.27 ID:y6+XiQLs0

ー都ー

僧侶「建物は壊れているが人は無事な様だ騎士達は…」

「なあ、あんたが僧侶かい?」

僧侶「そうだ、貴方は騎士か?」

騎士「やはり、他の騎士は教会にいる、着いて来てくれ…そこで話そう」

僧侶「分かった」

  ー教会ー

騎士長「弐の国からの使者だそうだな、勇者の守り手とか言ったか?」

僧侶「そうだ、力になりたい」

騎士長「はははっ!! 守り手!? 笑わせてくれる…お前に何が出来る?」

僧侶「………」スッ

ジャキッ!!

騎士長「なっ!? 何をする!?」

僧侶「オレは貴様より多く魔物を殺せる…それと、我が一族を笑うな…次は頃すぞ」

騎士長「分かった、分かった!!」

僧侶「……ところで城から来たと聞いたが王は無事なのか?」

騎士「いや、王も都にいる…城を捨て皆で都に来たんだ」

僧侶「最初から城を狙っていたのか? 城には何が…」

「それは私から話しましょう、守り手殿、騎士長の非礼を許して欲しい…」

僧侶「貴方は?」

「私は士の国の大臣…弐の国を救ったのは守り手殿と聞いております、よもや勇者様を抹頃しようとするとは…」

僧侶「いや、そういった輩は四百年前の戦いの際にも居ました…いつの世も同じです」

大臣「人の欲、野心は無くなりはせんでしょうな……」

僧侶「ところで狙われた理由は?」

大臣「はい…おそらく城の地下に安置してあった召喚石を狙ったのかと思われます…」

僧侶「召喚石…」



267: 2012/12/13(木) 21:13:08.47 ID:y6+XiQLs0


大臣「魔物を召喚し意のままに操る…らしいのですが、伝説に過ぎない物だと王も気にしてはおりませでした」

大臣「ですが不吉な物に変わりはありませんので…何代か前の王は破壊を試みたらしいのですが、叶わなかったようです」

大臣「捨てるわけにも魔族に渡れば危険だと以降は地下に…ですが魔物が異常発生したとなれば力は本物かと」

僧侶「…何としても、その召喚石を奪取しなければ」

ガチャ!!

『魔物が、魔物が現れました!!』

大臣「都は障壁に囲まれている、門以外からは侵入出来ない筈だが何故!?」

『鳥類系の魔物が上空より魔物を投下しています!! 魔物が統率されているような感があります…』

大臣「召喚石の力は本物か…」

僧侶「魔物を操作している魔族も都に来ているかも知れません…私は行きます」

大臣「お頼みします僧侶殿……騎士長!!」

騎士長「はっ!!」

大臣「騎士達を率いて民を守れ!! 戦闘班と救助班に別れ行動しろ!! 上空の魔物は魔法隊で撃ち落とすのだ!!」

騎士長「了解致しました!! 皆!! 行くぞ!!」

『はっ!!』


騎士長「僧侶…先程は済まなかったな…」

僧侶「過ぎた事だ…騎士長、今は互いに力を尽くそう」

騎士長「ああ、俺達は魔物を退ける…僧侶は召喚石を持つ魔族を探してくれ」

僧侶「分かった…」ザッ


268: 2012/12/13(木) 21:15:41.62 ID:y6+XiQLs0

『ゴアァァ!! グガァァ!!』

僧侶「やはり多いな…」ドッ

ザシザシュ!!

『ギャガァァァァ……』シュゥゥ

僧侶「急がねば…」ダッ

ーーーーー

『グルアァァァ!!』

騎士長「ドラゴンまで…やるしかないな」チャキッ

騎士長「魔法隊!! 撃て!!」


『魔雷!! 魔氷!! 魔炎!!』

ズギャア!! ヒョウ…パキパキッ!! ゴォォォ!!


『ヴルルルルル……』


騎士長「ダメか…皆退け!! 俺が時間を稼ぐ!!」


『……ッ!! はっ!! 皆!! 退くぞ!!』ダッ



269: 2012/12/13(木) 21:17:18.94 ID:y6+XiQLs0

騎士長「くそったれが…氏にたくねぇなぁ…」グッ

『ガァァァァ!!』ブンッ

ギャリッ!! ギリリッ!!


騎士長「ぐっ!!」ググッ


ドッゴォォッ!!

騎士長「ガッはぁっ!!」ドサッ


『グルルルル…』コォォォ

騎士長「ちっ…くしょうが…」ハァハァ


「剣技・風の太刀!!」ギンッ

ヒュウウウ… ズッバァァァ!!


『ゴアァァッ!!』ガクン

ブシャッ!!


「爺ちゃんみたいには行かないか…」

270: 2012/12/13(木) 21:25:53.18 ID:y6+XiQLs0


『ヴルガァァァ!!』ヒュッ


「爪伸びんのか!!」チャキッ

ザウッ!! ギャン!!

『ガァァァッ!!』


「危ねぇ…早く仕留めないと、他の人達も助けなきゃ」ググッ


「剣技・雷光の太刀!!」ズッ


ドッ!! ギャギャリリリッッ!!!

「こっの野郎ぉぉぉっ!!」


ドギャッ!! ズッバァァァッ!!


『…グルアッ……』ピシッ


ズルッ……ドサッ!!



271: 2012/12/13(木) 21:43:59.87 ID:y6+XiQLs0


「やった!!」

騎士長「おい嬢ちゃん…たすかっ…たぜ…」


「嬢ちゃんじゃない!! 剣士だ!! …っ!?」

剣士「怪我が酷いっ…!! オレは魔法使えないんだ……魔法使える人を」

騎士長「いや…俺ぁもうダメだ…身体の中が滅茶苦茶さ…」ハァハァ

剣士「そんなっ…」ジワッ

騎士長「なぁ嬢ちゃん」

剣士「……なに?」ポロポロ

騎士長「都の人達と騎士達の手助けを頼む…それ と 」

剣士「うんっ…うんっ…」グスグスッ

騎士長「奴らを…魔物を…やっつけてくれ…」ニカッ

剣士「……」グシグシ

剣士「分かった!! オレに任せろっ!! 全部やっつけるから!!」ニカッ

騎士長「おうっ、たのっむぜ……」ガクン

剣士「…………」ギリッ

ダダッ!!


272: 2012/12/13(木) 21:45:50.48 ID:y6+XiQLs0

魔導師「弐の国ではしくじったが、この召喚石さえあれば人間なんぞ操らずとも良い…」ニヤッ

魔導師「魔物を率いるなど魔王にしか出来ない身技…奴もコレを使っていたのか…? しかし気分が良い」


魔導師「おい、魔導士!!」

「師よ、ここに…」

魔導師「守り手が来ている、お前が片付けろ…召喚した魔物は魔族ならば操れる、お前には魔人形があるが魔物も使え」

「はい、畏まりました」スウッ

魔導師「まずはこの国を落とす」ニヤリ



273: 2012/12/13(木) 21:51:13.27 ID:y6+XiQLs0

ー時計台付近ー


ザシュ!! ザクッ!!…

僧侶「倒しても倒しても…全く厄介だな…」

僧侶「魔族はどこに…」

ズズン…ズズン!!

僧侶「ゴーレムか!!」

『オオォォォ!!』ブンッ


僧侶「殺陣・影断ち」シュッ

ズガン!!

動きは遅いから避けれはするが…

僧侶「殺技・針雨」ダッ

ガギガギガギンッ!!

攻撃が通らない…

『オォアアアア!!』ブンッ


僧侶「くっ…」シュッ

ズガンッ!! ズガンッ!!

ならば…

僧侶「剛殺技・拳槌」ダッ

タンッ… 「頭部を…砕くッ!!」

ズッ!! ドッゴォォッ!!

『…………』グラッ

ガラガラガラ……

 ブシュッ…

僧侶「っ!! 治癒・小…」パァァァ

魔導士「久しぶりだな、守り手…ゴーレムを素手で倒すとは…」スッ



274: 2012/12/13(木) 21:52:59.63 ID:y6+XiQLs0

僧侶「壱の国に居た、魔導士か…」


魔導士「ふふっ、早速だが此処で氏んで貰う」ゴゴ…

ザザザザサ……

『オォアアアア グルルルル』

僧侶「貴様が召喚石を持っているのか?」

魔導士「ふふっ、さぁどうだろうな」ニヤリ

僧侶「倒せば分かるか…」チャキッ

魔導士「ふふっ、やってみろ」



275: 2012/12/13(木) 21:56:11.06 ID:y6+XiQLs0

ー教会前ー

『固まるな!! 散れ!! 魔法隊、怪我人を頼む!!』

『大丈夫か? 教会に避難させるんだ民の安全を確保しろ!!』


大臣「このままでは都も民も…僧侶殿…」

「大臣!! なにしょぼくれてやがる、今が踏ん張り所だろうが!! 騎士にだけ戦わせてちゃ王家の名が廃る、オレも出る!!」

大臣「若様!! 行ってはなりません!!」

王子「ばっか野郎!! 誰かがやらなきゃダメなんだ…コソコソ隠れたまま氏んでたまるか!! 親父に言っとけ、根性無しってな!!」ザッ


ザザザザサ

『グルルル ギギャッ ヴゥゥ』

王子「魔物共、出やがったな…」チャキッ

王子「魔氷・大槍!!」カッ

ドスドスドスッ!!

『ギィィアアア…』シュゥゥ

王子「騎士達!! 大丈夫か!?」

『若!! 何故此処に!?』

王子「助けに来たに決まってんだろ!! 直ちに残った民を避難させろ!! そして教会は何としても氏守するんだ!!」

『若… 皆、行くぞ!! 教会を守れ!! 民を守るんだ!!』



276: 2012/12/13(木) 21:57:14.11 ID:y6+XiQLs0

ーーーーー

剣士「倒しても次から次に湧いてくる…どうしたら…」

『誰かぁぁ!!』

剣士「っ!!」ダッ

「ゴオァァァッ!!」

子供「神様っ!!」ギュッ

ズバンッ!!

剣士「大丈夫か!?」

子供「ありがとう…お姉ちゃん」グスッ

剣士「オレがあそこの教会まで連れて行く!! 父さん母さんは?」

子供「教会に行く時はぐれちゃった」ヒッグ

剣士「そうか、オレの背に掴まれ…教会に行けば会えるから」ニコ…

子供「…うんっ」グスッグスッ


277: 2012/12/13(木) 21:59:00.85 ID:y6+XiQLs0

ー教会前ー

剣士「此処まで来れば大丈夫だ」ハァハァッ

タタタッ…

父「娘!! 良かった!!」

母「良かった、良かった…」ポロポロ

娘「お姉ちゃん、ありがとうっ」ニコ

剣士「良かったな!!」ニコッ

王子「何処の誰かは知らねぇが、民を助けてくれてありがとな!!」

剣士「オレは剣士、お前は?」

王子「この国の王子だ!! 教会前の魔物は殆ど倒した、数が減ってるみたいだ」

剣士「それより白いローブ来た兄ちゃん知らないか!? 探してんだけど見つからないんだ…」

王子「オレは見てねぇな…」

娘「私、時計台の方に走って行くの見たよ?」

剣士「本当か!? 早く行かないと!!」

王子「オレも行く!! 一人じゃ危ねぇぞ!?」

剣士「ダメだ!! また此処に魔物が現れるかも分からない…それと、騎士長が氏んだ…」

王子「っ!! 騎士長が……分かったオレは此処に残る、剣士…気を付けて行けよ!!」

剣士「分かってる!!」ダッ


278: 2012/12/13(木) 22:00:00.45 ID:y6+XiQLs0

ー時計台付近ー

魔導士「しぶといな…」

ザシュ ガギンッ!! グサッ!!

『ギャアァァ…』シュゥゥ

僧侶「ハァッ…ハッ…」

『魔炎・矢』

ドッドッ!!

僧侶「グッ…」ブシュッ…

僧侶「治癒・中…」ハァハァッ

ザンッ!!

『ゲギャ……』 バラバラ…

魔導士「ふふっ、流石にそれだけの魔人形と魔物に囲まれれば此方まで来れまい」

ギィン ギャリリッ!! ズキャ!!


僧侶「くそっ!!」


279: 2012/12/13(木) 22:24:32.85 ID:y6+XiQLs0

ー時計台ー

僧侶「このまでは……」ハァッハァッ

「僧侶!! 伏せろ!!」

僧侶「剣士か!?」バッ

剣士「剣技・風の太刀!!」ゴッ

ヒュゥゥゥ… ズババババババ!!


『ギィィィアアア…』シュゥゥ…


剣士「僧侶!! 行けっ!!」

魔導士「なっ!?」

僧侶「氏ぬのは貴様の方だ…魔導士」ダンッ

 ジャキッ!!

魔導士「くっ!! 魔炎・円!!」 カッ

ゴォォォォッ!!

僧侶「……………」ボッ

魔導士「ヒッ…く、来るなぁ!!」バッ

僧侶「貴様は『この手』で頃す!!」


 ザシュッ!!


魔導士「この、殺人…者が…」

僧侶「違う、オレは『守り手』だ……永久に眠れ」

サァァァッ……



292: 2012/12/14(金) 19:16:31.77 ID:ICPOHjnO0

数刻前ー伍の国ー

女商人「私はここまでだ…賢者はお前一人だけと言っていたからな」

勇者「ううん、ありがとう女商人…まず女王様に挨拶してから神の山に行くよ」

女商人「分かった、私は此処で待ってるからな…気を付けて行けよ!!」

勇者「うんっ!! 行ってくる!!」ザッ

ーーーーー

伍の国ー城ー


エルフ「勇者様ですね、女王から話しは聞いております、此方へ…」

勇者「はい、お願いします」

ー謁見の間ー

女王「勇者様、初めてまして…女王と申します」スッ

凄く綺麗…髪は銀色で、何か不思議な雰囲気だ…

女王「勇者様? どうなされました?」

勇者「あ、はいっ!! 初めてまして女王様」

女王「ふふっ…弐の王の言う通り、純真なお方ですね」ニコッ

勇者「あ、ありがとうございます、女王様は凄く綺麗ですね…見惚れてしまいました」

女王「ふふふっ、本当に真っ直ぐなお方…勇者様、私の下へ来たのは神の山へ行くためでしたね」

勇者「はい、賢者様は神の山へ私一人で来いと」

女王「守り手殿が居ないのはそういう事でしたか…」



293: 2012/12/14(金) 19:18:12.23 ID:ICPOHjnO0

勇者「守り手…僧侶は魔族侵攻を止める為に士の国へ行っています」

女王「勇者様、申し訳ありません…魔族が本格的に動き出した以上、兵を割くわけにはいかないのです」

勇者「そんなっ!! 謝らなくて良いです…僧侶が、私の守り手が必ず魔族を倒しますから」ニコッ

女王「……!! 信頼、していらっしゃるのですね」

勇者「はい」

迷い無き瞳…

この子は強い、きっと大事な人がいるのでしょう。

女王「……話が外れましたね、エルフに馬車を用意させ神の山までお連れします」

勇者「ありがとうございます」

女王「勇者様、賢者様に会った時…辛くとも真実と向き合わなければなりません」

勇者「……? はい、分かりました!! では行って来ます」

女王「はい、お気を付けて」ニコッ

パタン……



女王「勇者様、心を強く持つのですよ……」

ーーーーー

ー神の山ー

エルフ「勇者様、着きました」

勇者「エルフさん、此処までありがとうございました」ペコッ

エルフ「いえ、そんな…それより直に日が落ちます、お気を付けて」

勇者「はい、行って来ます」ザッ

294: 2012/12/14(金) 19:19:32.27 ID:ICPOHjnO0


ーーーーー


勇者「もう、日が落ちて真っ暗だ…けど今日のうちに行かないとダメなんだよね」ザッ

魔物が出ないから進むのは早いけど、賢者様はどこに居るんだろう…


ーーー

ザッザッザッ

あれは…賢者様の家かな?

  コンコンッ

「どうぞ、お入りなさい」

 ガチャッ

勇者「初めまして勇者です、あなたが賢者様ですか?」

「ええ、私が賢者です」ニコリ

勇者「魔王の事、鍵の事、そして世界の向こう側について…聞かなければならない事が沢山あります」

賢者「ふむ、その前に四百年前の話しをしなければなりません…魔王と勇者の戦いの真実を…」

勇者「……分かりました」

賢者「まず戦の切っ掛けは人間が魔族の地へ侵攻したからです、侵攻した国は消滅しました」

賢者「魔族の地へ侵攻した軍は全滅…後に一人の魔族が『魔王』と名乗り人間との全面戦争に突入しました」


295: 2012/12/14(金) 19:21:29.53 ID:ICPOHjnO0

勇者「…そんなっ?」

賢者「醜い野心、自分達以外の種を無くし人間だけの世にしようとした…その結果が先の大戦です……此の、伍の国が閉鎖的なのも四百年前に人間から弾圧された過去があるからなのです」

賢者「勇者、貴方が守らんとする『人間』は貴方が思う程、美しくは無い…四百年前の勇者はその、『人間』の責任を全て負わされ、魔王と戦う事を余儀無くされました」

賢者「魔王は魔族を守る為に人間を、勇者は人々を守る為に魔族を…これが誰も知らぬ埋もれた歴史、そして四百年前の戦いの真実…」 

勇者「………………」

賢者「それでも人間の為に戦えますか?」

勇者「それでも私が戦いを止める理由にはなりません…『勇者』として人を守りたい気持ちは勿論あります、だけど……『私』にも守りたい人がいますから…」

賢者「守り手を愛しているのですね?」

勇者「…!! はい、愛してます!!」

賢者「なら、もう一つ伝えなければなりません」


296: 2012/12/14(金) 19:31:59.88 ID:ICPOHjnO0

賢者「四百年前の魔王との決戦の際、守り手は氏んだ、勇者を守って…」

勇者「……っ!!」

賢者「……………」ツー

勇者「っ!? まさか……貴方は…」

賢者「私は…四百年前の勇者……貴方と同じ『守り手』を愛した女…」

勇者「何故…」

賢者「生きていられるのか? ですか? 私は人間とも精霊とも言える存在…生きても氏んでもいない」

賢者「伝えなければならなかった、私から貴方に四百年前の戦いの真実を…」

勇者「守り手は代々一人…じゃあ、僧侶は…」

賢者「私の子孫…になりますね」

勇者「私に一人で来いと言ったのは僧侶に会いたくないから、ですか?」

賢者「分からない……でも不思議なものね、四百年も生きているのにあの人の顔だけは忘れられないのだから」

勇者「……………」


297: 2012/12/14(金) 19:35:02.59 ID:ICPOHjnO0

賢者「話しを戻しましょう…魔王は先程言った通り、魔族を守る為に立ち上がった一人の魔族です」

賢者「魔王は特別な存在です、圧倒的な力もそうですが、魔族は皆尊敬し慕っていました…人間の侵略から魔族を守った救世主なのですから」

魔王「ですが先日の弐の国に現れた魔族は魔王に忠実では無い様です…その魔族は召喚石と呼ばれる物を使い今まさに士の国を侵略しています」

勇者「…………」ググッ

勇者「では、向こう側とはなんですか?」

賢者「魔王が居る場所と言うより魔王自身が作り出した空間です、通じる場所は魔族の地にあります…魔族の地に入る為には鍵が必要です」

勇者「でも魔族の地なんて聞いたことが…」

賢者「それは魔王が敗れた直後、魔力を放ち魔族の地を覆ったのです、残された魔族を守る為に…探し出すには『鍵』である真実の羅針盤…これを使えば辿り着けるでしょう」スッ

賢者「魔族の地へ行き『扉』を見つければ魔王の下に辿り着ける…『勇者』であれば開くでしょう」

勇者「ありがとうござっ」グラッ


ゴゴゴゴゴゴ…!!!


賢者「まさかっ!! 魔王っ!? 場所は士の国…!? 勇者、今から魔法で士の国へ跳びます私の手を!!」バッ

勇者「は、はいっ!!」ギュッ


298: 2012/12/14(金) 19:37:18.17 ID:ICPOHjnO0

ー勇者到着前ー

僧侶「剣士、何故来たんだ? 訳は町長さんに伝えた筈だ…」

剣士「その町長さんに頼まれてきたんだ、着いて行きなさいって…都が落ちれば町も滅ぶから頼む、僧侶さん一人では…とか言ってたから」

僧侶「そうか、だが助かった…あのままでは氏んでいた、ありがとう剣士」

剣士「っ!? 礼なんていいって!!」

僧侶「無いな…」ゴソゴソ

剣士「なにが?」

僧侶「魔物を召喚し操る石だ…」

剣士「それを持ってる奴のせいで、こんなに魔物が…そいつをやっつけないと終わらないのか」

僧侶「だが、一体何処に…」

剣士「教会、僧侶を狙っていたみたいだし…見通せる場所じゃないのか?」

僧侶「だが、時計台以外に高い建物は…見張り塔くらいか」

剣士「行こう、行かなきゃ分からない…」

僧侶「そうだな…剣士」

剣士「どうした?」

僧侶「頼むぞ…」ニコッ

剣士「…!! ああ、任せろ!!」ニカッ

タタタッ…


299: 2012/12/14(金) 19:39:07.66 ID:ICPOHjnO0

ー見張り塔ー

剣士「魔物がいない、違ったのか?」

僧侶「いや、用心しろ…」


『オアアァァァッ!!』ギャンッ

ドッ!! ガガガッ!!

僧侶「大丈夫か!?」

剣士「ああ、出やがったな」

僧侶「やはり此処にいるのか…?」


『グォアアアア!!』

剣士「僧侶は見張り塔の上へ行け!! オレはコイツを何とかする!!」

僧侶「分かった、此処は任せた」

剣士「おうっ、早くぶっ倒して戻って来い!!」

僧侶「ああ、任せろ…」ダッ


『グガァァァ!!』ヒュンヒュン

剣士「腕四本・剣四本か…器用だな」ジャキッ


『ガッ!!』ブンッ

ギギンッ!! ギャリリッ!!

剣士「早い!! けど…剣技・氷牙の太刀!!」ズッ


ドッ!! ギャリッ!!

止められるのは分かってる、こっからだ…


パキンッ!! グッ…ズバッ!!

『グアァッ!!』ブシャッ


剣士「まず、腕一本…」ジャキッ


300: 2012/12/14(金) 19:40:37.30 ID:ICPOHjnO0

「来たか守り手…弐の国では会わなかったな、私は魔術師…弟子は氏んだか」

僧侶「弐の国での勇者抹殺は、貴様が仕組んだ事か?」

魔導師「お前によって阻止されたがな…あの大臣は…くくっ」ニヤニヤ

ザヒュッ!!

魔導師「危ないな…折角会えたんだ、そう急くなよ」

僧侶「黙れ…貴様の様な奴と話す事は無い」

魔導師「くくっ」ニヤニヤ

僧侶「貴様は勇者を傷付けた、彼女の優しい心までも…氏を以て償え、魔導師!!」ズズッ

魔導師「済まない…これ以上付き合ってらないんだ」バッ

僧侶「………」ダッ

魔導師「なっ!?」ビョゥゥ

僧侶「大方、見張り塔に誘き出し教会を襲うつもりなのだろうが…貴様は召喚石に魔力を割いている」ヒュウウウ 

魔導師「くっ、魔物よ!! 来い!!」


『ギャアギャァ!!』バサッ…

  タンッ  トサッ

僧侶「移動魔法は使えず、魔物に乗るしか移動手段はない…」


だが、全てはコイツの推測!!

なのに、何の確証も無いのにコイツは…

躊躇い無く飛び降りたっ!!


魔導師「暗殺者風情が…」ゴゴゴッ


301: 2012/12/14(金) 19:42:40.94 ID:ICPOHjnO0

剣士「ぐっ!!」ハァッハァ


『ググガァ!!』ビョウッ

ザシュ!! ギャギギャ!!


剣士「重いっ!!」ググッ

  ギィンッ!!……トサッ


剣士「っ!! 弾かれた!!」


『ウオァァァ!!』ゴウッ


       ー『嬢ちゃん…』ー


拾うには遠すぎる…いや、ある…剣はあるっ!! 

斬り落とした、この魔物の剣が!!


剣士「………」バッ 「剣技…」ガシッ


    ー『魔物を…やっつけてくれ…』ー


「浄炎の太刀!!」ダッ


ズギャッ!! ギィンッ!!

剣士「剣ごとっ!!燃え尽きろッ!!」ググッ


ザンッ!! ゴォォォォォッ!!

『ウギィアアアア…』シュゥゥ……


剣士「やっつけたよ……騎士長」グッ


302: 2012/12/14(金) 19:52:44.81 ID:ICPOHjnO0

ーーーーー

僧侶「貴様は逃がさん」ジャキ

魔導師「いいだろう…魔物よ、降ろせ」

『ギャアギャァ!!』ビョゥゥ

 スタッ…  タンッ…

魔導師「教会に居る奴等を頃し、お前の苦痛に歪んだ顔を見ようと思ったが、お前を頃した後で奴等も皆頃しだ」ニヤ


僧侶「屑め……貴様を頃すのに何の躊躇いも無い」スッ


ゴゴゴゴゴゴ!!!


魔導師「な、何だ、この強大な魔力は!?」


「『守り手』の言う通り、貴様は屑だ魔導師…四百年前の戦いの際にも貴様の様な下卑た魔族はいたがな…忌々しい」


魔導師「まさかまさかまさか」ガクガク


「氏ぬがいい…闇雷・千雷」ズズ…

ズォォッ… ゴゴゴ…


僧侶「ッ!! 殺陣・影断ち!!」シャッ


ビガッ!! ズギャギャギャギャッ!!!

魔導師「魔…おッ!! ギャアアアアッ!!」


僧侶「何だ、あの凄まじい魔力は…」ハァッハァッ


「誇り無き魔族は要らん…」


僧侶「貴様が魔王…なのか?」


「ああ、如何にも我が名は魔王…貴様ら人間の脅威と恐怖の象徴…」ゴゴゴ

307: 2012/12/15(土) 09:28:20.01 ID:xHAHqzya0

僧侶「魔王……」

魔王「召喚石か…確か魔女に与えた物だったな」スッ

僧侶「…何故、同族を頃した? 魔族は人間を殺せれば方法など問わないのでは無いのか?」

魔王「勘違いしているな、我の目的は人間を頃す事では無い…人間と言う『一つの種』を滅ぼし、魔族の世にする事だ…」

僧侶「…なっ!?」

魔王「エルフしかり他種族を滅ぼし、世を我が物にしようとした醜い『人間』を滅ぼすのだ…我は魔族を『守る為』に戦う」

僧侶「なにっ!?」

魔王「信じようが信じまいが関係ない、我の記憶を『見せて』やろう…」カッ

308: 2012/12/15(土) 09:29:41.72 ID:xHAHqzya0
ーーーーー

何故こんな目に……俺が魔族だからか? 魔族だから殺されるのか?

人間が魔族の住む此の地に攻め込んできたから数日が経った。

最初は何とか防げたが敵は数が多い、それに統率がとれてる。

個人の力は魔族の方が上だが戦略もクソもない…

そして数多くの魔族が氏んだ、父さんも母さんも俺を守って氏んだ…

魔族は生きてちゃいけないのか?

殺されるのを待つだけなのか?

嫌だ、俺は生きたい…氏にたくない。

戦おう、戦わなければ氏ぬ…このままでは皆氏んでしまう。


         ー醜い人間共ー


        ー皆…頃してやるー

ーーーーー


「皆ご苦労だった!! 俺達は人間に勝利した!! だが奴等はまたやってくる!!」

「ならば!! ならば此方から攻める!!」


ザワザワザワ……


「奴等人間がいる限り、俺達に平穏はやって来ない!!」


「奴等を…人間を滅ぼすのだ!! 魔族の為、氏んでいった者達の為に!!」


『そうだ…奴等がいるから… 人間を滅ぼせ!! 人間を滅ぼせ!!』


「そして俺は、『人間』の恐怖と脅威の象徴として、これより」





「魔王と名乗る!!!!」

ーーーーー

309: 2012/12/15(土) 09:31:58.28 ID:xHAHqzya0

僧侶「ぐっ!!」ズキッ

僧侶「今のが魔王の記憶…」ハァッハァッ

魔王「まるで其処にいる様な感覚だっただろう? それが真実だ…」

魔王「そして、『俺』が魔王になった理由だ!!」ゴッ

僧侶「ッ!! 真実だとしても…貴様の考えを認める訳にはいかない!!」ジャキッ

魔王「まあ良い、四百年前…俺は守り手と勇者に敗れた…奴等には『何か』があった、守り手よ…此処で氏ね」ゴッ


310: 2012/12/15(土) 09:36:56.65 ID:xHAHqzya0


『キラキラキラッ』

僧侶「魔王…此処で氏ぬは貴様だ」ダッ

魔王「闇炎・這炎」ズズ…

ドッ!! ゴォォォォォッ!!!

僧侶「殺陣・翔」ダンッ

このまま…

僧侶「殺技・落葉!!」ズッ

ゴッ!! ザンッ!!!

魔王「その装束、背格好、業も全て四百年前の奴と瓜二つ…」

僧侶「……」ジャキッ

魔王「その瞳も…だが一つ違うのは、側に守る者無く氏ぬ事か…」

僧侶「なにっ…!?」

魔王「禍雷・絶槍」ズズ…

ドッ!!


「神雷・極雷槍!!」カッ

ドッ!!


ゴッ……ズギャッ!! ギャリギギギッッ!!!

シュゥゥ……


「僧侶っ!!」

僧侶「勇者か!! 何故!?」

勇者「後で話す!! 今は…」グッ

僧侶「そうだな…」ジャキッ

魔王「勇者か…仕方ない此処で共に……ッ!? お前は…何故だ!! 何故「お前』が此処にいるっ!!」

「魔王……今の私は違う、今の私は賢者…」

魔王「精霊化…お前、人を捨てたのか!!」


311: 2012/12/15(土) 09:42:18.02 ID:xHAHqzya0

賢者「『私』の役目はまだ終わってはいないから…」ゴッ

魔王「………………」

魔王「魔女…」

魔女「此処に…」スッ

魔王「『故郷』に戻り戦の準備をする、行くぞ…」

魔女「はい、魔王様…」

シュンッ……


僧侶「退いた…」

勇者「僧侶っ!! 大丈夫!?」

僧侶「ああ、大丈夫だよ」ニコッ

賢者「……………」

ーーーーー

『勇者!! 大丈夫か!?』

『ええ、私は大丈夫』ニコッ

『良かった、んじゃ行くか』ニコッ

ーーーーー

『勇者!! その子を頼む…』ニコリ…

『そんな…待って…いや、いやぁぁぁぁぁぁっ!!』

ーーーーー

勇者「この人が賢者様だよ」

僧侶「助かりました…貴方がいなければ私は…? 賢者様?」

賢者「……!! 貴方が守り手ね?」

僧侶「はい、『勇者』そして『彼女』の守り手です」

あの人と同じ…当たり前か、私とあの人の子孫なんだから。

「僧侶ぉ!!」タタッ

僧侶「剣士!! 無事で良かった」ニコリ

剣士「ヘヘッ、余裕だよ余裕!!」ニカッ

僧侶「剣士、彼女が勇者だ…そして隣にいるのが賢者様」

剣士「勇者ぁ? 何かちっちゃいなぁ…」

勇者「あんまり変わんないのに…」

剣士「賢者…様は色々デカいな…」ウン…

賢者「ふふっ、面白い子ね」

剣士「なあ勇者、教会に王子がいるんだ報告しに行こうぜ!!」

勇者「………」チラッ

賢者「行って来なさい」コクッ

勇者「分かった、一緒に行こう」

剣士「おうっ!!」

タタタッ……


312: 2012/12/15(土) 09:49:27.09 ID:xHAHqzya0

ー御先祖様と僧侶ー

賢者「…………………」

僧侶「………………」



賢者「私、まどろっこしいの好きじゃないの…だから話すわ」

僧侶「えっ?」

「私は四百年前の勇者で魔王を倒した、けど魔王の『魂』の意志は消えてはいなかった、私はそれを危惧して半精霊化して今まで過ごしてきた…そして貴方は四百年前の守り手と私の子孫よ」

僧侶「えっ? あの?」

賢者「なに!? もう一度話す!?」

僧侶「いや、いいです…」

賢者「なら良し」

僧侶「でも、旅の途中で…」

賢者「悪い!? してなかったらアンタ存在して無いのよ!!」

僧侶「ありがとうございます!!」

賢者「言っとくけど手を出したのは、私よ……」

僧侶「いや、そこら辺は別に……」

賢者「あの子が好きなんでしょ?」

僧侶「……はい」

賢者「あん?」

僧侶「好きです!!」

賢者「全く…あの人は私を守って氏んだ…アンタは氏んじゃ駄目よ、先祖なのに今まで放っといた私が言えた事では無いけどね……」

賢者「あの子を守って、あの子と生きて行きなさい……」

僧侶「はいっ!!」


319: 2012/12/17(月) 00:48:21.49 ID:wtTyl0sP0

ー教会ー

王子「おっ!! 剣士!!」

剣士「何とか終わった、こっちは勇者だ!!」ニコッ

王子「勇者!? 来てたのか…」

勇者「話すと長くなるんですが…」

王子「堅苦しい喋り方しなくていい、オレの事は王子でいいから」ニカッ

勇者「分かった、私は伍の国に居たの…賢者様に会う為に、だけど話の途中で……」

王子「どうした…?」

剣士「勇者?」

勇者「話しの途中でこの都に魔王が現れたのを感知した賢者様と移動魔法で此処に来たの……」

王子「何だと!? なら、さっきの地鳴りは…」

勇者「魔王の力の影響だと思う」

剣士「でも、オレが行った時には居なかったぞ?」

勇者「魔王は戦争の準備をする為に魔族の地へ行ったの…」

剣士「戦争!? この都で起きた事が世界中で起きるのか!?」

王子「クソッ!! でも冷静にならねぇと…オレは親父に伝えてくる…」

320: 2012/12/17(月) 00:52:15.98 ID:wtTyl0sP0

勇者「………」ギリッ

剣士「なあ、勇者?」

勇者「うん?」

剣士「大丈夫!! やっつければいいだけだ」ニカッ

勇者「…!! うんっ、そうだね!!」ニコッ

 タタタッ

僧侶「勇者、剣士」

勇者「僧侶、話しは…出来た?」

僧侶「ああ、話した…全てを聞いたよ」

勇者「そっか」ニコリ

僧侶「それより、賢者様が呼んでる…行こう」

剣士「オレも行っていいか? 報告済ませたし、後は王様達が何とかすんだろ?」

僧侶「……分かった、剣士も来てくれ」

剣士「よっしゃ!! じゃあ行こうぜ!!」

勇者「いいの?」

僧侶「賢者様の判断に任せるさ」


『おーい!!』


王子「もう行くのか!?」

勇者「うん、賢者様が呼んでるから」

王子「そうか…あっ!! あんたが僧侶だな!? 助かった…ありがとな!!」

僧侶「いや、魔王は戦争の準備をすると言っていた…急がないと」

王子「そうだな…親父は各国の王で話し合うと言ってたよ」

僧侶「そうか、なら…オレ達はオレ達がやれる事をする」

剣士「んじゃ、またな王子!!」

勇者「行こう、僧侶、剣士」ザッ





王子「オレも気張らねぇとな!!」グッ



321: 2012/12/17(月) 00:55:22.38 ID:wtTyl0sP0

ーーーーー

賢者「来ましたか、では一旦私の家に移動します」

剣士「待ってくれ……頼みがあるんだ」

賢者「どうしました?」

剣士「騎士長を教会に運んで欲しいんだ……」

賢者「……分かりました、私がやります」パァァァ

シュン

賢者「この方ですね?」

剣士「うん…騎士長を頼む」ポロ

賢者「………」シュバッ


ー教会ー

シュバッ


大臣「むっ!!」バッ

「彼を弔って手厚く弔って欲しい…そう、剣士が言っておりました」スッ

大臣「……っ!! どなたかは存じませんが…ありがとうございます」ギュッ

大臣「民と部下を守り氏んだと聞いた…騎士長、惜しい男を亡くした……」ツー

「勇者達は魔族の地に行く事になるでしょう、王にそう伝えて下さい」

大臣「ところで貴方は?」

「申し遅れました、私は賢者…勇者を導く者」

大臣「賢者様でおられましたか…必ずお伝えします…」

賢者「では…」バシュッ

大臣「我々には何が出来る? 騎士長よ…」グッ

ーーーーー

バシュッ

賢者「済みました、さあ行きましょう」

剣士「オレも…着いて行きたい」

賢者「何故です? 用は済んだのでは?」

剣士「騎士長と約束したから、それに戦う『覚悟』が出来たんだ…」ギュッ

僧侶「…いいでしょう、ではまず私の家へ戻り今度の事を話しましょう」

剣士「分かった」コク

勇者・僧侶「分かりました」コク


バシュッ


322: 2012/12/17(月) 01:02:19.74 ID:wtTyl0sP0

ーーーーー

ー魔族の地ー

魔王「皆!! 待たせたな、俺は…」

『魔王様!! 我々は待っておりました!! 顔を上げて下さい!!』

「けっ、なにしけた面してやがる」バシッ 

魔王「…永らく待たせた、魔剣士」

魔剣士「まあ、待ってた奴もいればオレみたいに寝てた奴もいるからな、気にすんな…」

魔剣士「これからどうする? すぐ攻めるか?」

魔王「いや、万全を期す為暫く時間が掛かる…少し待ってくれ」

魔剣士「ははっ、待つのは皆慣れてるから大丈夫だろうよ」チラッ


『ワァァァァ!! 魔王様ぁぁ!!』


魔王「…………」ググッ


魔王「俺はっ!! 魔王はっ!!」


       『………………………』


魔王「魔族の為…守る為……この戦いに勝利すると誓う!!」


      
『オオオオォォォッ!!』


ーーーーー

魔王「この戦いで全て終わらせる…」

魔女「魔王様、私に何か出来る事は御座いませんか?」スッ

魔王「ならば人間に言伝を頼む、そうだな……1ヶ月…1ヶ月後に戦争を開始する」

魔女「畏まりました魔王様、勇者は…」

魔王「無論俺がやる、奴は俺にしか倒せない…そして俺を倒せるのは勇者だけだ、守り手を殺せなかったのは痛いが……それに『賢者』、奴には何か策がある筈…」


勇者の前に、問題は賢者だ…愛する者を俺に殺されて尚、聖霊化して生き続けたのだ。


俺が葬るのが道理…



323: 2012/12/17(月) 01:04:32.42 ID:wtTyl0sP0

神の山ー賢者の家ー

剣士「真実の羅針盤で魔族の地に行って、『扉』を見つけるのか…」

僧侶「その『扉』は『勇者』であれば開く…」

賢者「ですが、魔王自ら魔族・魔物を率いて此方に攻めてくる可能性も十分ある…」

勇者「では、どうしたら?」

賢者「万が一の為…私が残ります、魔王を倒すまでは行かないまでも策はあります」

賢者「それに『魔王』は『勇者』、そして『絆の力』でしか倒せない…分かりますね?」

勇者「はい、分かっています」

賢者「剣士には二人を『扉』が見つかるまで無事に行き届けて欲しいのです、無事見つかっても『扉』は魔族によって守られているでしょう、貴方はそれを打ち倒し二人に道を作らねばなりません」

剣士「よし、分かった!!」

勇者「賢者様っ!! 待って下さい!! それじゃまるで…」

僧侶「……………」

賢者「剣士は『覚悟』があると言った、勇者…貴方には魔王を倒す『覚悟』がありますか? 例え何があっても……」

勇者「でもっ!!」

僧侶「勇者、剣士は勇者を…オレ達を信じてるんだ、剣士は剣士に…勇者には勇者に出来る事をしなければならない」

僧侶「勿論オレもだ……だから例え何があろうと互いを信じるしか無い、それもまた、一つの『絆』なんだと思う」

剣士「勇者、オレは大丈夫だ!!」ニコッ

324: 2012/12/17(月) 01:05:50.13 ID:wtTyl0sP0

勇者「僧侶…剣士…分かったよ、必ず魔王を倒して皆で戻って来よう」ニコリ

賢者「………私は少しやる事があります、勇者達は船で弐の国へ戻りなさい」

勇者「分かりました…僧侶、剣士、行こう、女商人が待ってるから」

僧侶「ああ、分かった」

剣士「んじゃ、行こうぜ!!」

ガチャ パタン……



賢者「あの子達、特に勇者と僧侶には私の時の様な思いは絶対にさせない…どうか私に力を……」ギュッ

ーーーーー

女商人「来たか!! 何で僧侶も? それに、そっちのちっこいのは?」

「ちっちゃくない!! オレは剣士だ!!」

女商人「はははっ!! 剣士か、よろしくな!! 疲れてんだろ? とりあえず乗れ」

僧侶「分かった、じゃあ少し休ませて貰う」

勇者「そうだね」

剣士「オレも眠たくなってきた…」

女商人「各自空いてる船室で休んでくれ、じゃあ弐の国へ戻る!!」

325: 2012/12/17(月) 01:07:54.70 ID:wtTyl0sP0

ー???ー

「起きろ…」

僧侶「うっ、誰だ…」

「オレは先代の守り手、僧侶…お前の先祖だ」

僧侶「先代…ここは?」

先代「お前の心の深層…オレは思念が実体化した存在」

僧侶「ですが、一体どうやって?」

先代「勇者…いや、今は賢者か…」

僧侶「賢者様が…?」

先代「そうだとは思うが…まあいい、オレはお前に伝えなければならない事がある」

僧侶「……話して下さい」

先代「お前は氏ぬ、魔王から勇者を守ってな…」

僧侶「先代も勇者を守って氏んだと聞きました…何か関係が?」

先代「指輪だ…その月の指輪と太陽の指輪の力は『絆』だけではない」

僧侶「他にも何かがあると?」

先代「ある、命の行き着く先『守り手』の本懐…『自己犠牲』それが勇者を守り、魔王を倒す最期の手段」

僧侶「オレが氏んだ時、オレの勇者に対する『愛』『信頼』そして未来への『希望』全てが、『力』となり月の指輪を通じ太陽の指輪へ流れ込んだ」

先代「そして、勇者はその力を解き放ち魔王を倒した…」

僧侶「オレが氏なねば魔王は倒せないと?」

先代「指輪が『そう』出来ている様だった、作った錬金術師も想定外だったろう『絆』の先の『自己犠牲』など…それ程までに魔王は強い」

先代「オレや勇者よりも『信念』が強かったのかもしれん、魔族を守るという信念が…あの時のオレ達には『人間』が招いた魔族との闘争を『勇者』に背負わせるという事に疑問を感じていた…」

僧侶「先代……オレは氏にません、勇者と共に生きると賢者様…いや、偉大なる『先祖』に誓ったのですから」

先代「そうか…オレは『此処』でお前を見守ろう、もう一人の『先祖』として」パァァァ





僧侶「オレは…オレは生きる!! 勇者と共に!!」ググッ

326: 2012/12/17(月) 01:10:41.40 ID:wtTyl0sP0

ーーーーー

『オレは…オレは生きる!! 勇者と共に!!』


先代「聞いたか? 勇者?」フッ

勇者「はいっ、はいっ…」グスッ

先代「指輪で繋がっているのだから分かりそうなものだが…意外と抜けてるな」

しかし、勇者は本当に昔のアイツと似ているな。

泣き虫で…優しくて、『守り手』では無く個人として守ると言った僧侶の気持ちが良く分かる…

勇者「どうかしました?」グスッ

先代「いや、昔の賢者と似ていたからな…」

勇者「そうなんですか? 以外だなぁ……賢者様は物腰が柔らかくて、話す言葉は真っ直ぐで、綺麗だし…」

先代「アイツがか!?」

勇者「えっ? そうですけど?」

先代「随分変わったんだな…信じられん」

勇者「あのですね…えっと……」

先代「何だ? 言ってみろ」

勇者「魔王を倒してから僧侶の御先祖様が生まれたって言う事は……その…旅の途中に」

バシュッ

勇者「あれっ?」

ーーーーー

剣士「勇者、着いたぞ!!」ユサユサ

勇者「うっ、うぅん……」シパシパ

剣士「ぶつぶつ言っていたけど…夢でも見たか?」

勇者「えっ、いや!! 何でもないよ!!」カァッ

剣士「オレ達のやる事は決まったんだ、今はとりあえず休もうぜ」ニカッ

勇者「そうだね」ニコッ


327: 2012/12/17(月) 01:17:21.50 ID:wtTyl0sP0

弐の国ー女傑商会ー

女商人「話しは船で僧侶から聞いた、私は今から城に行ってバカに伝えてくる…もう日も暮れた、皆は宿で休め…やる事は決まってるみてぇだからな」

僧侶「ああ、そうするよ…王への報告は任せる、じゃあ宿に行くか」

剣士「なぁ僧侶、勇者ぁ、腹減ったから何か食べに行こうぜ…」グゥ

勇者「そうだね、女商人またね!!」

女商人「おう!! またな!!」

ーーーーー

剣士「美味しかったぁ!!」

勇者「前に女商人と行った店なんだ、僧侶はどうだった?」

僧侶「美味しかったよ、久しぶりだな…あんなに食べたの」

勇者「ふふっ、良かった」ニコッ

剣士「じゃあ、宿行くか?」

僧侶「そうだな、早めに休もう…賢者様から連絡が来るかも分からない」

勇者「うん、そうだね」

ーーーーー

弐の国ー城ー

王「ついに魔王が…近いうちに諸国王で戦略会議があるだろうな」

女商人「私に何かやれる事はねぇか?」

王「まず武器が欲しいな、魔族はともかく魔物なら大砲で蹴散らせる筈だ」

女商人「ありったけくれてやる…金は『終わったら』寄越せ…」

王「ああ、後…」

女商人「なんだよ?」

王「その、あれだ…オレの様な素晴らしい人間でなければ、お前の様な奴を支える事は出来んだろう?」

女商人「何が言い 」

王「金ならある、オレと結婚しろ」

女商人「…!! バカッ!!」

女商人「お前の物は全部……全部、私の物だって…ちいせぇ頃から言ってんだろ!! もっと早く寄越せよ!! バッカ野郎!!」ポロ

王「悪かった、待たせたな……女商人」


328: 2012/12/17(月) 01:21:31.77 ID:wtTyl0sP0

ー宿ー

ー勇者と剣士と僧侶ー


勇者「剣士は怖くないの?」

剣士「……怖い…けど、人を守る為に体を張った奴がいたんだ…その人と約束したんだ、魔物をやっつけて皆を守るって」

勇者「その人が騎士長さんなの?」

剣士「うん……皆を、約束を守るには、魔王を倒すしかない…でも自分じゃ倒せない……なら勇者に協力して少しでも早く戦いを終わらせるのがオレに出来る事なのかなって、そう思うんだ…」

勇者「剣士……」

剣士「それに、あの時…オレの中の『強さ』が変わったんだ」

剣士「僧侶を見た時にも感じた……勝つとか、倒すとかじゃないんだなって…オレが剣を振るう意味が変わったんだ」

勇者「剣士」

剣士「ん? どうした?」

勇者「絶対……絶対、皆で帰ろう!!」スッ

剣士「…!! おうっ!!」ガシッ

ーーーーー

勇者「すう…すぅ…」

剣士「勇者、疲れてんだな…何か眠れねぇ…少し外に出よう」

ガチャ パタン

329: 2012/12/17(月) 01:26:34.27 ID:wtTyl0sP0
ーーーーー

僧侶「……………」

剣士「僧侶も眠れないのか?」

僧侶「んっ? ああ、疲れてる筈なんだけどな」

剣士「怖いのか?」

僧侶「ああ、怖い…」

剣士「僧侶も怖いのか…あんな戦い方見たから怖くないのかと思ってた」

僧侶「守る為にはどんな事でもやらなきゃならい時がある…」

剣士「僧侶はさ……人を…頃した事あるだろ?」

僧侶「ああ…分かるのか?」

剣士「武者修行中、色んな奴見たからな…でも僧侶は何か…違うんだ、優しい感じがする」

僧侶「そんな事は無いさ…」

剣士「ううん、爺ちゃんが言ってたんだ…本当に、本当に強い人は優しいって」

剣士「僧侶の事、誉めてたぞ…ああいう強さを求めなさいって」

僧侶「師範殿がそんな事を……オレはそんな…」

剣士「仕方ねぇなあ、怖がりの僧侶はこの剣士が守ってやるよ」ニコッ

僧侶「ありがとう…剣士」ニコ…

剣士「おうっ!! 後、僧侶はもっと笑った方が良いな」ウン


彼女は強いな…


自分の役目が一番危険かもしれないのに…


いや、守ってみせる…誰一人欠ける事なく笑える様に…



333: 2012/12/17(月) 20:24:31.51 ID:wtTyl0sP0


「父よ、これで全ての修行を終えました」

「うむ、分かっているとは思うがこれよりお前は一族を背負わなければならない」


「未だ小さな争いは無くならない…それに、何やら大きな動きもある様だ、それを未然に防ぎ首謀者を抹殺せよ」

「……では行きます」

「これを持って行け、一族に伝わる装束だ、そしてこれより僧侶と名乗れ」スッ

「僧侶…はい、畏まりました」

ーーーーー

参の国ー王都ー

「此処にオレの協力者がいるとの話しだったが、名は錬金術師だったか」

娘「止めて下さい!!」

貴族「オレは貴族だ命令が聞けないのか? ん?」

僧侶「なあ、ここの貴族はあんなのばかりなのか?」

男「あ? ああ、アイツは気に入った女を強引に連れて行くんだ…でも誰も文句は言えないんだ……」

僧侶「そうか、なら仕方ないな」ザッ

男「おっ、おいアンタ何を」

僧侶「おい、その子の手を離せ」

貴族「貴族に逆らう」

僧侶「逆らうとどうなるってんだよっ!!」ゴッ



334: 2012/12/17(月) 20:27:04.80 ID:wtTyl0sP0


貴族「此の場で首を斬り落としてやる!! 平民が!!」ジャキッ

僧侶「殺技・砕突」ガッ

   トンッ…ドッゴォ!!

貴族「ぐぉえぇぇ」ガクン

僧侶「殺技・駒脚」ヒュッ

  ドガンッ!!

貴族「げっはぁっ」ベシャッ

僧侶「次は無い…」ゴッ

貴族「ヒィィッ!!」

僧侶「おいクズ、何人の女を傷付けた? お前は殴られようが蹴られようが文句言えない事をしたんだ…」

ダダダッ

兵士「おい、貴様何をしている!?」

僧侶「コイツを殴った、見れば分かるだろ?」

兵士「その方は貴族だぞ!! お前っ」

僧侶「貴族なら何しても良いのか!? 兵士さん、アンタ結婚してるな?」

兵士「だから何だと言うんだ!?」

僧侶「愛する妻がこの貴族に辱めを受けたらアンタは耐えられるか!? 貴族だから仕方ないと、そう言えるのか!!」


   民衆『…………………………』


僧侶「大事にする物を間違えるな、オレを捕らえたければ捕らえろ」スッ

兵士「……行け、今はそんな気にはならん」

僧侶「……こいつはオレが王の下へ連れて行く、必ず罪を償って貰う」ザッ

娘「あ、あの…ありがとうございました!!」

僧侶「いや、礼は良い…」

335: 2012/12/17(月) 20:29:05.98 ID:wtTyl0sP0


貴族「こっちは城じゃ」

僧侶「当たり前だ…城になど向かってない、お前は此処で氏ぬ」ジャキッ

貴族「や、やめてくれ…」

  ザンッ!!

貴族「ぎぃやぁぁぁ!!」ブシャッ

僧侶「玉を斬り落としたらもう出来んだろ…同じ男として同情するが、その位の痛みで済んで良かったな」ザッ


ー錬金術師と僧侶ー

僧侶「ここか…」

  コンコン

「どうぞ、お入り下さい」

ガチャ

僧侶「初めまして、オレは僧侶だ」

「僕は錬金術師だよろしく」ニコ

僧侶「ところで陸の国が起こそうとしている事について教えてくれ、その為に来たんだ」

錬金術師「そうだったね、陸の国は新大陸を見つけたらしい」

僧侶「新大陸だって!?」

錬金術師「ああ、歴史的発見だよ…でも、そこには魔族と呼ばれる新たな種族がいたんだ」

僧侶「それで?」

錬金術師「もう分かる筈だ、侵略しようとしているのさ」

僧侶「そんな大それた事が起きていたとは…何故お前はそんな情報を?」

錬金術師「陸の王は強欲でね、今は不老不氏がお望みらしい」

僧侶「なる程、それで…」

錬金術師「聞きたく無い事も聞かされるけどね…でも、今回の件は見過ごせない…只でさえエルフ差別とか問題になってるんだ、他種族を滅ぼすなんて許されはしない」

僧侶「そうだな…だが、陸の王にそれだけ気に入られてるのに何故この国に?」

錬金術師「逃げて来たのさ、それに君の一族の話しを聞いた時、陸の王を止められるのは君しかいないと思ってね」

僧侶「此の国の王には話したのか?」

錬金術師「いや、話してないよ…例え話しても無駄さ、陸の国の軍事力は他国より優れている…全ての国が協力しても五分だろう」

僧侶「……城塞への先入は簡単だが武器の規制が厳しいだろう、剣や短剣は…」

錬金術師「没収されるか有無を言わさず投獄だろうね…」

僧侶「何か無いか? 持っていても違和感は無く怪しまれない…そんな都合の良い武器が」

錬金術師「そうだね……ふむふむ…あるよ」

僧侶「どこに?」


336: 2012/12/17(月) 20:32:38.82 ID:wtTyl0sP0

錬金術師「今から僕が作る、明日まで待ってくれ必ず君の望みの物を…」

僧侶「頼む、オレは宿で休むよ」

錬金術師「あぁ、そう言えば参の王が君に頼みたい事があるみたいだよ…ある貴族の振る舞いが目に余るって」

僧侶「貴族? ああ、それなら玉を斬り落としてやった」

錬金術師「……仕事が早いね」

僧侶「王の頼みなど知らなかった…偶然だよ、今頃は王の耳に届いているだろうし行く必要は無いな」

錬金術師「ははっ、君は凄いな」

僧侶「何がだ? 父にはいつも怒られたよ…冷静に行動しろと」

錬金術師「人を傷付けたのは誉められた事では無いにしろ、救われた人もいるんだ…君の『心』は間違っちゃいないさ」

僧侶「お前は不思議な奴だな錬金術師…」

錬金術師「まあ良く言われるよ、君は宿で休め…すぐに取り掛からないと明日に間に合わない」

僧侶「分かった…では明日のいつ来れば?」

錬金術師「昼には出来る」

僧侶「では、明日の昼に来るよ」

錬金術師「ああ、じゃあまた」

僧侶「ああ、またな」


翌日ー昼ー


僧侶「食事はあまり美味しく無かったな…さて行くか」ザッ



錬金術師「やあ、もう出来てるし調整も済んだよ」

僧侶「見せてくれ」

「これだ、着けてくれ」

僧侶「籠手? これが武器か?」

錬金術師「いや違う、肘を伸ばし手首を外側に向けて軽く振ってくれ…間違っても内側に拳を握ったりするなよ」

僧侶「……? 分かった」スッ

  ジャキッ!!

錬金術師「どうだい?」

僧侶「気に入った…凄い発想だな」

錬金術師「刃は出すと固定される、もう一度同じ動作をすると…」

 ガシュ…

僧侶「なる程……これなら」

錬金術師「喜んでる所申し訳無いが眠いんだ…もう行ってくれないか?」

僧侶「ははっ、分かった、ありがとう錬金術師」

ガチャ  パタン…


『陸の国が新大陸へ発見した!! だが現地の魔族に和平を持ち掛けた使者が殺された!! 陸の国は和平を諦め戦うそうだ!! 我々人間を守る為…』


僧侶「陸の国が情報を公開したのか!? 真実は捏造され、侵略は始まってしまった…」


337: 2012/12/17(月) 20:47:55.70 ID:wtTyl0sP0

ーーーーー

数ヶ月後ー陸の国ー

僧侶「覚悟しろ陸の王…」

陸の王「儂を頃しても侵略は止まらんぞ」

僧侶「いや、国は混乱し進軍・援軍くらいなら暫くは抑えられる…貴様は間違っている…エルフ迫害、魔族虐殺…世界は人間だけの物ではない」

  ジャキッ!!

陸の王「暗殺者…他種族がいなくなれば平和になるのだ、考え直せ…」

僧侶「愚かな…人間同士の争いさえ無くならないと言うのに……」

   ザシュッ!!

陸の王「グハッ……愚か者ッ が…」

僧侶「愚か者は貴様だ、眠れ…」


ー更に数ヶ月後ー


ー参の国ー


『魔族が攻めてきた!! 我々人間を滅ぼそうとしている!! 陸の国は魔族の侵攻で滅んでしまった!!』

『諸国王は協力し魔族との戦争開始を宣言した!!』



僧侶「戦争は止まらなかった、随一の軍事力を持つ陸の国が滅んだのだ…幾ら協力した所で勝ち目は無い」

兵士「僧侶様、国王がお呼びです…」

僧侶「何か策があるのか…今行く」

ー謁見の間ー

王「良く来てくれた、今日は魔族との戦争の事で頼みがあるのだ」

僧侶「頼み?」

王「遂に魔王を倒せる者が見つかったのだ…特別な力を持っている、我々が知っている魔法とは別種の力だ…その者はまだ年端の行かぬ少女、お前には少女の護衛を頼みたい」

僧侶「……いいでしょう」

王「やってくれるか!! 今後はその少女、いや『勇者』を守護するのだ」

僧侶「で、その勇者はどこに?」

王「城の外だ、馬車を用意してある…早速魔王討伐に行って欲しい」

僧侶「………その前に一つ良いか?」

王「む、なんじゃ?」

僧侶「一人の少女にそんな事を強いるなど…お前等は愚かだな…」

王「なんだと!?」

僧侶「黙れ!! 魔王は倒す!! 約束しよう!! だがオレは『勇者は守る』がお前等を守る為じゃあ無い」

僧侶「これからオレは『勇者』の『守り手』だ!!」ゴッ

 ガチャ…  バタン!!

「っ!!」 タタタッ……

僧侶「今の娘は…?」



338: 2012/12/17(月) 20:49:27.19 ID:wtTyl0sP0

ー更に時は進みー

伍の国ー宿ー

勇者「どこ行くの?」

僧侶「ん? 散歩だよ…」

勇者「こんな夜更けに? アンタ時々居なくなるよね…」

僧侶「良いから、早く寝ろ」

勇者「私に何か隠してるでしょ?」

僧侶「隠してない、魔物との連戦で疲れてるだろ? 寝ろ…」

勇者「答えてよ!! アンタは私に何も教えてくれない!! いつも子供扱いして、私は勇者なんだよ? 私の『守り手』なんでしょ!?」

僧侶「なら見るか? オレが人を頃す様を…」

勇者「……え? な、何を言ってるの?」

僧侶「今からオレはエルフを奴隷として売り捌いている商人を頃しに行く」

勇者「………」ギュッ

僧侶「オレは話した、理解しろとは言わない…しなくていい」

僧侶「寝てろ、じゃあな」ザッ

勇者「…………私は」

339: 2012/12/17(月) 20:51:37.63 ID:wtTyl0sP0

ーーーーー

僧侶「随分良い所に住んでるな?」

商人「ヒッ!! どこから入った!?

僧侶「見張りが居たんでな、壁を登って来たのさ」

商人「お、お前、暗殺者か!?」

僧侶「お前にとってはな…エルフを奴隷として扱い、売り物にするとは…救いがたいクズだな…」

商人「オレだけじゃない!!」

僧侶「お前以外の者は皆、何者かに殺されたぞ、残りはお前だけだ」

商人「そ、そんな…助けてくれ!!」

僧侶「皆、そう言って氏んだそうだ…」

  ジャキッ!!

商人「たすきゃ」

  グサッ!!

僧侶「これで、奴隷商売する輩は居なくなるだろう…」スッ

『何だこのガキ!? おいガキを止めろ!!』

  ガチャ!!

勇者「僧侶!!」ポロ

僧侶「バカ!! 何故来た!!」

勇者「だって、だって」グスッ

『商人さんが氏んでる!! 最近出てる暗殺者はコイツか!!』


僧侶「仕方ない…」チャキ

 ズバッ ザクッ 

『上へ急げ!! 侵入者だ!!』

勇者「うっ、うぅっ」グスッ

僧侶「っ!! 来い!!」ガシッ

僧侶「ちゃんと捕まってろよ!!」バッ

 ビョウゥゥゥ… ガサッ…

『どこに行った!! 探せ!!』


340: 2012/12/17(月) 20:52:46.76 ID:wtTyl0sP0

僧侶「動くなよ…」ギュッ

勇者「なッんで人ッを殺ッすの?」ギュッ

僧侶「……お前には出来ないからさ」

勇者「なにを?」

僧侶「悪を見過ごす事だ…そしてお前は、どんな悪人だろうと頃す事は出来ない」

勇者「…………」グスッグスッ

僧侶「泣くな…」ナデ

僧侶「もう行ったな…宿に戻るぞ」ガサ

勇者「…………」グスッグスッ

僧侶「はぁ……」グイッ ヒョイッ

ザッザッザッ……

勇者「私……何にも知らなかったんだ、アンタと王様の話しを盗み聞きした時から……」

僧侶「もう一つ話す事がある」

勇者「……なに?」

僧侶「この戦争は人間から仕掛けた…魔族は自分達を守る為に戦っている、勇者…お前はそいつ等の尻拭いの為に使われてる」

勇者「そ、そんなのウソだよ!! だって、みんな魔族から攻めて来たって」

僧侶「それが嘘だ…どちらを信じるかはお前次第だがな」

勇者「もう、もう、分かんないよ…」グスッ

僧侶「泣くな…オレがいる、オレはお前を守る…それだけは信じろ」

勇者「うん、分かった」グスッ

僧侶「泣き虫だな、お前は…」

341: 2012/12/17(月) 20:54:14.66 ID:wtTyl0sP0

ーーーーーー


錬金術師「やあ、久しぶりだね…何の用だい?」

僧侶「魔王を倒したい、力を底上げする様な都合の良い物を作ってくれ」

錬金術師「むちゃくちゃだなぁ、君は…まぁ良いよ、5日で作ろう」

僧侶「お前は凄いな…お前が魔王を倒してくれれば楽なんだが」

錬金術師「それは、君達にしか出来ないさ…君が勇者だね」

勇者「そうだけど、何?」

錬金術師「ふむ、君は僧侶を愛してるね?」

勇者「はぁっ!? な、なにを」カァッ

錬金術師「その反応で十分だ、よしっ今から取り掛かる…もう行ってくれ」


342: 2012/12/17(月) 21:17:21.98 ID:wtTyl0sP0
ー宿ー

僧侶「錬金術師から物を受け取ったら魔族の地へ行く」

勇者「アイツ信頼していいの?」

僧侶「この籠手を一晩で作った奴だ信頼出来る、お前は早く寝ろ」

勇者「あ、アンタはさ…その」

僧侶「お前の事なら…」

勇者「な、なによ?」

僧侶「いや、お前を愛してる」

勇者「うっ、え、あのっ」カァッ

勇者「そ、僧侶!!」ガバッ

僧侶「なんだ?」

勇者「わ、私もアンタを愛してる!!」クワッ

僧侶「そうか、分かったから…退いてくれ」

勇者「や、嫌だ…アンタの子供が欲しい!!」

僧侶「お前、頭大丈夫か?」ナデ

勇者「うん、大丈夫…」テレッ

勇者「じゃなくて!!」クワッ

僧侶「はぁ、今じゃなくても良いだろ? 全部終わってか」

勇者「うるさいな!! いいでしょ!!」

僧侶「分かった、分かった…」

勇者「じ、じゃあ、するよ?」ギュッ

僧侶「ああ」ギュッ


ー5日後ー


僧侶「絆を力に変える指輪か…」

勇者「綺麗な指輪…」

錬金術師「気に入ってくれたみたいだね、僕の仕事は此処までだ、後は君達に任せるよ」

僧侶「済まないな、礼を言う」

勇者「ありがとう、ございました」

錬金術師「ふぅん、変わったね? 何かあったのかな? ふふっ」

勇者「僧侶!! 行こう!!」カァッ

僧侶「じゃあ、またな錬金術師」ザッ



錬金術師「ああ、また会おう…」



343: 2012/12/17(月) 21:23:50.50 ID:wtTyl0sP0

勇者「いよいよだね」

僧侶「ああ、これが終われば全てが良くなる、そしたら三人で暮らそう」

勇者「うん…」ジワッ

僧侶「泣くな」ナデ…

勇者「大丈夫だよ、じゃあ行こう?」ニコッ

僧侶「……ああ」

ーーーーー

魔王「お前達が勇者と守り手か…」ズズズ…

勇者「魔王、此処で終わらせる!!」ゴゴッ

僧侶「勇者、お前は魔法を…オレは接近戦で行く」


344: 2012/12/17(月) 21:29:03.72 ID:wtTyl0sP0


僧侶「殺技・血桜」タンッ

ヒュッ… ズギギャギャ!!

魔王「ぐっ…だが負けられん、魔族を守る為に!! 勇者!!貴様に『覚悟』はあるか!?」

勇者「…ッ!!」

僧侶「勇者!! 揺れるな!! 気持ちを強く持て!!」

魔王「己の戦う意味に疑問を持つ者に負ける訳がない!! 氏ねッ!!」

魔王「禍炎・葬」ズズ…

僧侶「勇者っ!!」バッ

ドッ!! ゴォォアアアア!!!

僧侶「グッハァッ!!」

彼女だけは、彼女だけは…

オレの全てをくれてやる、月の指輪よ…

彼女に…力を与えてくれ……

  『キラッ…パァァァッ!!』

勇者「僧侶……? 僧侶ッ!! 僧侶ぉぉぉ!!!!」

魔王「守り手は氏んだ、勇者!! 残るはお前だけだ!!」

345: 2012/12/17(月) 21:34:05.36 ID:wtTyl0sP0

戦う意味とか、そんなのはもういい…

私は…魔王を倒すっ!!


勇者「魔王ォォォォォッ!!」カッ

『ギランッ!!』

勇者「神炎・迦具土!!」ゴッ


魔王「こ、これはっ!! 何ッだこの力は!! ぐぅッ!!」

勇者「滅びろッ!! 魔王ッ!!」ググッ


魔王「グッ、うおぉぉぉぉ…」


ズッ!! ゴッバァァァァァ!!!

ザァァァァァ……

魔王「我は滅びない、世界から人間を滅ぼし魔族の平穏を手に入れるまで」

魔王「貴様等人間は醜い!! 我は見てきたのだ!! その醜さを」

勇者「魔王…私は『人』を守る為に戦った…お前は『魔族』を守る為に」

魔王「貴様等人間が我々の暮らしを愚かな欲望で壊さなければ、こうはならなかった」

魔王「偽りの正義だ、しかし我々の真実など歴史の闇に葬られる…だが!! 何年何百年掛かろうと必ず蘇り人間を滅ぼす」


「これが我の誓い…だ」サァァァァ

ーーーーー

勇者「僧侶…ごめん…ごめんね」グスッ

僧侶「お前が無事ならいい…さ」

勇者「うっ、うぅっ」グスッグスッ

僧侶「勇者!! その子を…頼む…」ニコ…

勇者「いや……待って、いやぁぁぁぁぁ!!」


346: 2012/12/17(月) 21:48:22.22 ID:wtTyl0sP0

ー宿ー

僧侶「これは、先代と賢者様の記憶…先代は本当に賢者様を愛していたんだな…魔王の『信念』、オレ達の『信念』どちらも間違ってはいない」

僧侶「『大事な者』の為に、己の全てを全てを懸けて戦わなければ負ける…『覚悟』か…」

ーーーーー

ー戦略会議ー壱の国ー

壱の王「それでは戦略会議を始めます、諸国王…及びエルフの女王よ、遠方から来て戴き有り難う御座います」

弐の王「武器の手配は出来ています、魔族はともかく大型の魔物でも問題はないかと」

参の王「では、民の避難はどうしましょう?」

女王「都と城に避難させる準備は整っています、勇者様が魔王を打ち倒すまで各国籠城になるかと」

王子「父の代理で来た王子だ…です、勇者達と魔王が入れ違いになった場合勇者達はどうする…んですか?」

賢者「その為に私が残ります」

ズズズ…

賢者「何か来るっ!!」バッ

バシュッ!!

魔女「魔王様から言伝を頼まれました、魔王様は1ヶ月後に戦争を開始する…と」

『1ヶ月後… だが鵜呑みにする訳には』

魔女「信じるか否かはお任せします」

賢者「信じるわ」

『なっ!? 賢者様っ?』

魔女「……」

賢者「魔王に伝えて、『勇者』はあの時の『私』とは違うと…」

魔女「……用事は済みました…では1ヶ月後に」

バシュッ!!

賢者「諸国王及び、女王様…民の命を最優先に考え準備を、私は勇者達に伝えて来ます」

バシュッ!!

壱の王「では、準備に取り掛かりましょう、1ヶ月時間があるとはいえ時間が惜しい…」

弐の王「国と民の為、協力しなければならないでしょう」

参の王「エルフの女王よ…」

女王「……何でしょう?」

参の王「四百年前…いや、それは関係無い」

女王「……………」

参の王「『人』として、誠に申し訳無かった!!」

女王「…っ!! 何故…」

弐の王「女王よ済まない、皆切り出せずにいた…四百年前とは言えど差別・迫害、許される事では無い…戦争の際に協力して欲しいとは虫のいい話し…」

壱の王「忘れてはならないと、そう思ったのです…」

王子「女王様!! よろしくな!!」ニカッ

未来を創る者。

士の王が彼を代理にしたのは…

ふふっ、そういう事でしたか。

女王「ふふふっ…ええ、よろしくお願いします、諸国王達よ…『共に』参りましょう」

371: 2012/12/18(火) 21:03:58.92 ID:K/8Rad+e0

弐の国

ー宿ー

バシュッ!!

勇者「賢者様!! 何かあったんですか?」

剣士「ふわぁぁ、勇者どうしたぁ?」

賢者「勇者、僧侶を呼んできなさい」 勇者「はい!!」タタッ

ーーーーー

賢者「三人揃ったわね…戦略会議中に魔王の使者から1ヶ月後に開戦すると告げられた…」

賢者「1ヶ月の間、三人にはやって貰う事があるわ」

勇者「何をすれば?」

賢者「まあ、簡単な話し修行ね」 剣士「修行?」

賢者「勇者は私と、剣士は師範殿と、僧侶は…」

僧侶「どうしました?」

賢者「僧侶は先代と…」

僧侶「……分かりました」

賢者「まず剣士、壱の国へ送るわ」 剣士「爺ちゃんとかぁ、よし!!」

バシュッ!!

372: 2012/12/18(火) 21:06:07.06 ID:K/8Rad+e0

ーーーーー

王宮ー中庭ー

バシュッ

師範「誰だ!! 剣士っ!? 貴女は?」

賢者「私は賢者と申します、時間がありません…訳は剣士から聞いて下さい」

師範「うむ、分かった」

バシュッ

剣士「爺ちゃん、オレは勇者を助ける為に魔族の地に着いて行くんだ」

師範「…………」

剣士「だから守れる強さが欲しい、1ヶ月しか無いんだ…でも、強くなりたい」

師範「見ない内に変わったな…全ては分からんが、思いは分かった」


剣士「ありがとう爺ちゃん」


師範「場所を移す、流石に王宮ではまずいじゃろ」

ー平原ー

師範「此処なら良いじゃろ」


師範「では…参る……」ズオッ

やっぱり爺ちゃんは強い、肌で分かる。

師範「剣技・雷突」シュン

早いッ!! 剣士「雷一閃!!」ブンッ

ズギャギャギャ…!! 師範「双牙…」ガッ

剣士「くっ!!」タンッ

ザザンッ!!  剣士「危ねぇ!!」ハアッハアッ

師範「距離を取り過ぎじゃ…風の太刀」チャキッ

キィィィン……ドッ!!!

範囲が広い!! どうすれば…

そうだ……!!  剣士「風の太刀!!」チャキッ

キィィィン… ドッ!!

シン……  師範「ふむ…『此処』まで来たのか…」

剣士「爺ちゃん?」

師範「『教える』気でいたが…それではいかんな…」ズズズ

剣士「……うっ!!」ブルッ

師範「剣士、『斬る』…」

剣士「爺ちゃん……『覚悟』は出来てる」ジャキッ


373: 2012/12/18(火) 21:07:30.68 ID:K/8Rad+e0

弐の国ー宿ー

賢者「僧侶と勇者は私と神の山へ行きましょう」

『分かりました』

バシュッ!!

ー神の山ー

賢者「王達は協力し魔族侵攻の対策を考え準備を始めています…ですが終わらせるのは貴方達の役目、勇者には私が持てる全てを教えます」

勇者「……はい!!」

賢者「僧侶はこの先の祠へ…そこに行けば分かります」

僧侶「はい、では行ってきます…」ザッ

賢者「……………」

374: 2012/12/18(火) 21:09:53.12 ID:K/8Rad+e0

ーーーーー

ー祠ー

僧侶「此処に…先代が?」

先代「来たな…僧侶」ザッ 僧侶「……先代!!」

先代「話しはいい…来い」ジャキ   僧侶「……はい」ジャキ


『殺陣・影断ち』ヒュッ


ギャン!! ギャリリッ!! 

先代「遅い…殺技・落葉」ブンッ

ドギャッ!!


僧侶「ぐっ、重ッい…」ギリリ  先代「………」パッ

僧侶「剣を手放したっ!?」フラッ  先代「殺技・響掌」タンッ

スッ……ピタッ ズドッ!!  

僧侶「……っガッ」


全身に電撃が走った様な感覚ッ!!

変幻自在…全てが必殺、これが先代!!


先代「氏ぬぞ? 勇者と生きるなど夢のまた夢だな…」

僧侶「ッ!! 殺技・紅桜…」ダッ  先代「………」スッ

ガシィッ!!

先代「突き刺す前に止められる」  僧侶「…翔脚!!」ギュン

これなら届くッ!!  

先代「殺陣・翔」ブワッ グイッ

僧侶「なっ!?」  先代「落ちろ…殺技・雷」

ブンッ!! ドッガァァァ……

スタッ…


先代「立て…『守り手』」



375: 2012/12/18(火) 21:10:44.80 ID:K/8Rad+e0

ー魔族の地ー

魔王「『勇者』は違う…か、真実を知って尚、戦う覚悟があるのだな」

魔女「魔王様…」

魔王「どうした?」

魔女「いえ…私は此処で失礼します」

シュンッ…

魔王「………?」

魔剣士「おい、皆が呼んでるぞ」

魔王「ああ、今行く」ザッ


376: 2012/12/18(火) 21:16:49.54 ID:K/8Rad+e0

神の山ー山頂ー


勇者「ハァッ…ハッ…」

賢者「今日はこの辺で終わり、私は剣士の所に行ってくるわ、あの子は治癒魔法使えないし」

勇者「分かりッました」ハァッハァッ

賢者「少し休んでから私の家に戻りなさい」

バシュッ

勇者「賢者様は強い…あれ位強く成らないと魔王は倒せないんだ……」

シュンッ…

勇者「ん? 賢者様?」クルッ


「魔雷・連弾」カッ

ドッ!! ガガガガ!!  勇者「くっ!! 魔族!?」

魔族「勇者、お前を殺せば…魔王様を倒せる者は居なくなる……」


賢者様との特訓で魔力が殆ど残って無い…

大きいのを一発打てば無くなる!!


魔族「闇炎・這炎!!」ゴッ


ズズズ…ゴォオオオオッ!!

迷ってられないっ!!  勇者「神氷・針柱」カッ


パキパキッ… キンッ!!ザンッザン…

魔族「くっ!!」ヒュン

防がれた…あの魔法は本来、魔王様しか使えない…

でも、まだ魔力は残ってる!!


勇者「避けられた…」ハァッハァッ  魔族「魔氷・大槍!!」

377: 2012/12/18(火) 21:20:47.17 ID:K/8Rad+e0

ー先代が氏んで技を伝える者は居ないの筈なのにー

ー何故、技は途絶えなかったんですか?ー


ーふふっ、それはねー


勇者「影断ち!!」シュン

魔族「なっ!?」


勇者「行けるッ!!」スチャ

魔族「魔雷・千槍!!」

ズザザザザッ!!

勇者「ガハッ…ッ!! 翔!!」ブワッ


魔族「なっ!? 止まらない…!! くっ、魔炎・」


ー私が教えたからよー


勇者「落葉!!」ブンッ

ビョゥゥ… ザンッ!!!  

魔族「うっ!! グハッ…」ドサッ


勇者「で、出来た…」ハァッハァッ



378: 2012/12/18(火) 21:22:50.97 ID:K/8Rad+e0


魔族「魔王様…」

勇者「………何故」

魔族「私は魔王様を愛してる、あの方は一度勇者に負けた、もう魔王様が居なくなるのは私には耐えられない」

勇者「……あなたは?」

魔族「…私は魔女、魔王様に命を救われた、魔王様にならこの命を捧げてもいい……」

勇者「…私は、魔王を倒すよ」

魔女「勇者だから?」

勇者「違う、愛する人と生きる為」

魔女「……!! 確かにあの時の『勇者』とは違う、『人間』を守る事に疑問を持って戦っていたあの時とは…」

勇者「この戦いは、どちらも正しいし間違ってる…だから決めたの、我が侭でも何と言われようと」

勇者「私は『大事な人』の為に戦う!!」

魔女「そう…もし貴方が、もし貴方の様な人間がいれば四百年前の侵略行為も…あの方が魔王と名乗る事も無かったかもしれない……」

勇者「賢者様に聞いたよ、最初に仕掛けたのは人間だって、でも賢者様は『背負って』戦った…」

魔女「この闘争が終われば、片方の種族は滅びる…私は此処までね」サラサラ

勇者「っ!? 治」バッ

魔女「やめなさい、何も変わらない…人間と魔族は相容れる事は無い」

勇者「……」スッ

パァァァッ

魔女「魔力……何を?」

勇者「私の魔力は魔族は毒かもしれない、でも足しにはなる…せめて、貴方の愛する人の手の中で…『氏んで』」クルッ

魔女「……ありがとう」ググッ

シュンッ…


勇者「…………」ポロ

379: 2012/12/18(火) 21:23:48.97 ID:K/8Rad+e0

壱の国ー平原ー

剣士「雷光の太刀!!」

ダンッ!! 師範「ぬん!!」ガッ

ガギギキギッ!!

剣士「おりゃあああ!!」ググッ  師範「流水」フッ

ジャリィィッ!!

師範「砕の太刀…」ズズ

ダンッ!!  剣士「ッ!!」ジャキッ

ガッ!! ギャギンッ!!

剣士「くっ……」ググッ

ビキッ!! 剣士「剣がッ折れるッ」

スバァッ!! 剣士「うぐっ!!」ブシャ

師範「……………」

バシュ!!

「治癒・中」パァァァッ

380: 2012/12/18(火) 21:25:59.89 ID:K/8Rad+e0

剣士「賢者…」

賢者「修行中に氏ぬ何て笑えないわよ」

師範「済まぬ賢者殿、真剣の稽古でなければ伝わらんのだ」

賢者「それは良いです、ですが治癒魔法を使える人を呼ばないと」

師範「魔法は使えずとも、気を練れば多少の傷ならば塞げる、じゃが…」

賢者「なんです?」

師範「このバカ孫は剣技の修練ばかりで気の練り方を怠ってまして」

賢者「剣士!!!」

剣士「っ!! はい!!」ビックゥ

賢者「人を守なら、まず自分の身を守る術を身に付けなさい!! 分かった!?」

剣士「はい!! 分かりました!!」

賢者「よし」

師範「賢者殿、有り難う御座います」

賢者「いえいえ…!!」ピクッ

師範「どうなされた!?」

賢者「勇者が…!! 私は戻ります!」

バシュッ


382: 2012/12/18(火) 21:30:29.89 ID:K/8Rad+e0

ー魔族の地ー

魔王「各国一斉に攻めるのでは無く、一国ずつ…確実に行く、エルフの国は最後だ」

魔剣士「分かった、ん?」

シュンッ

魔女「魔王…様」ハァッハァッ 

魔王「っ!? 魔剣士…外してくれ」

魔剣士「……分かった」ザッ

魔王「魔女…勇者に、挑んだのか?」

魔女「はい、申し訳御座いません」ギュッ

魔王「もう良い…」ギュッ

魔女「勇者が…魔力を分けて」

魔王「ああ、感じる…」 

383: 2012/12/18(火) 21:31:12.72 ID:K/8Rad+e0

魔女「私は、あの頃から…貴男が魔王と名乗る前より…」

魔王「………」

魔女「貴男を…愛しています」ポロ

魔王「魔女…」グッ 

魔女「戦争など無く、そのままの貴男と出会えていれば…良かったのに…」グスッ

魔王「ああ…そうだな…」ナデ

魔女「魔王様、生きて…貴男だけは生きて下さい…」

魔王「………」ツー  

魔女「ふふっ、魔王様も涙を…流すのですね……」ニコ…

魔王「その様だな…」グイッ 

魔女「そろ…そろわたし…は」パァァァ

魔王「…っ!! 魔女…」

魔女「は…い」サラ…

魔王「俺も…お前を愛している」ニコリ

魔女「っ……はいっ」ニコッ

サァァァァァ………

魔王「魔女……うぅっ!!」ググッ



魔王「ウオォォォォォォォァアッ!!!」



384: 2012/12/18(火) 21:34:16.12 ID:K/8Rad+e0

今更ながらスマホから打ってまして改行が難しいです。

見やすくなったでしょうか?

戦闘の時は見難いなぁ、と思ってました。

何度も張り直ししてごめんなさい。

すいませんでした!!

390: 2012/12/20(木) 00:21:29.89 ID:IsPbjfU+0


ー神の山ー

バシュッ!!

賢者「勇者!! 無事!?」

勇者「……はい」グスッ

賢者「この魔力…魔女が来たのね?」

勇者「はい、魔女は魔王を『守る為』に来ました…魔女は…魔王を愛していました」グスッ

賢者「……そう」

賢者「勇者、私の家に戻りましょう…今日はゆっくり休みなさい」

勇者「はい、分かりました」グシグシ


391: 2012/12/20(木) 00:24:27.48 ID:IsPbjfU+0

ー祠ー

僧侶「はぁっ…はっ…」グッ

先代「四度は氏んだな…」

僧侶「ッ!! 殺技・翔牙!!」タンッ  先代「影断ち」シュンッ

僧侶「なっ!?」シュ

先代「遅い…血桜」タンッ

ドッ!! ザシュッ!! ザギャギャギャ!!

僧侶「ガフッ!!」ブッシャア…

先代「此処はお前の心の深層と繋ぐ場所…氏にはしないが痛みはある、今日は此処までだ…」

僧侶「はい、ありがとうございました」フラッ

ザッザッ……


ブシュッ…ポタッポタッ

先代「…流石に無傷は無理か」


392: 2012/12/20(木) 00:26:56.24 ID:IsPbjfU+0

ー賢者の家ー

僧侶「只今戻りました…」ハァッハァッ

賢者「ふふっ、かなりやられた様ね」

僧侶「ええ、技のキレから何もかも先代が上です、指輪の援助があると驕っていた様です」

僧侶「ところで勇者は?」

賢者「私との特訓の直後に魔族に襲撃を受けた…撃退はしたのだけど疲れて寝てるわ」

僧侶「襲撃…単独で、ですか?」

賢者「ええ、襲撃して来た魔族は戦略会議に現れた魔女だった様ね…」

僧侶「一体何故…」


393: 2012/12/20(木) 00:28:39.42 ID:IsPbjfU+0

賢者「魔王と勇者の戦いを防ぐ為、魔女は魔王を愛していたと勇者が言っていたわ……」

僧侶「………」

賢者「幾ら考えても答えは出ないわ」

賢者「魔女は『愛する者』の為に戦った、そして勇者も…」

僧侶「……!!」

賢者「シャキッとしなさい僧侶…貴方は『誰』を守るの? 『誰』を愛しているの? それははっきりしてるでしょう?」

僧侶「はい、その思いだけは『揺れ』ません」ググッ

賢者「…!! そう、私は少し外に出るわ、食事の準備は出来てる…あなた達だけで食べなさい」

僧侶「分かりました」

賢者「すぐ戻るから…」

ガチャ パタン…

394: 2012/12/20(木) 00:30:30.07 ID:IsPbjfU+0

勇者「うぅん…あっ、僧侶…」

僧侶「悪い、起こしたか?」

勇者「大丈夫だよ、あの…」

僧侶「賢者様に聞いたよ…勇者、辛かったな」ギュッ

勇者「うぅっ…」ギュッ

勇者「私と魔女には通じる想いがある、ただ立場が違うだけ」グスッ

僧侶「なあ、勇者…今まで一度も言わなかったな…」パッ

勇者「ん? なに、僧侶?」

僧侶「勇者……君を、愛してる」

勇者「……!! はいっ…私も、あなたを愛してますっ…」ポロ

395: 2012/12/20(木) 00:33:16.52 ID:IsPbjfU+0

ーーーーー

賢者「『揺れません』…か」

『揺れるな勇者!! 気をしっかり持て!!』

賢者「私こそシャキッとしないとね…」

それよりあの二人、人の家でやらかしてんじゃないでしょうね…

まあ、勇者には無理か…


賢者「さて、戻らないと…」ザッ

ーーーーー

勇者「お帰りなさい、賢者様」ニコッ

賢者「まだ食べてなかったの?」

僧侶「ええ、すぐ戻ると言っていたので、待っていました」ニコリ

賢者「ふふっ、ありがとう…じゃあ、皆で食べましょう」ニコッ



ー勇者、僧侶、今この時を大切にしなさい…

396: 2012/12/20(木) 00:35:08.37 ID:IsPbjfU+0

ー爺ちゃんと孫ー

師範「勇者様に何が…」

剣士「……爺ちゃん!!」

師範「なんじゃ!?」

剣士「分からない事考えても仕方ない!! 今、やれる事をしよう、勇者は絶対大丈夫だ!!」

師範「そうだな……じゃが!! 賢者殿も言っておったが、まず自分の身の守り方から覚えろ」

剣士「分かった、確か下腹に力入れて呼吸するんだっけ? それから溜めた力を傷付いた部分に流すイメージで傷を塞ぐ…」

師範「分かっとるなら初めからやらんか馬鹿たれ!!」

397: 2012/12/20(木) 00:36:22.45 ID:IsPbjfU+0

剣士「だって戦闘中に意識す」

師範「だってじゃない!! はい、と言え馬鹿者!!」

剣士「はい、爺ちゃんはうるさいなぁ」

ガンッ!!  剣士「痛っ!!」

師範「全くお前は…今日はこれで終いじゃ、明日から呼吸を意識しながら剣を振れ」

剣士「えぇ…っ!! はい…」

師範「王都に戻るぞ」

剣士「家に帰るの? 母さんはいる?」

師範「いるじゃろ、久々に顔見せてやれ」ニコリ

剣士「おうっ!!」ニカッ

398: 2012/12/20(木) 00:37:52.16 ID:IsPbjfU+0

ーーーーー

剣士「ただいま!!」

母「剣士!! お帰りなさい」ギュッ

剣士「へへっ、ただいま」グゥゥ

母「お話はご飯食べてから聞くわ、父様もお帰りなさい」ニコリ

師範「うむ、儂も腹が減った」

母「はいはい、今準備しますから」

ーーー

母「そう、勇者様と…」

剣士「うん…」

母「剣士が決めたなら良いわ、でも必ず帰って来なさい」

剣士「分かった」

母「何度も話したけれど、あの人は魔族から部下を守る為に氏んだ」

母「人を守るのは尊い事だけれど氏んでは駄目よ…」ポロ

剣士「大丈夫だよ、必ず生きて帰ってくるから…それに、旅立つのはまだ先だから」ギュッ

母「ふふっ、一緒に寝るのは久しぶりね…おやすみ、剣士」ナデ

剣士「おやすみ、母さん」ギュッ

399: 2012/12/20(木) 00:47:08.21 ID:IsPbjfU+0

ー魔族の地ー

魔王「魔女は勇者に敗れた」

魔剣士「そうか……アイツはちっちぇ頃からお前に懐いてたな…」

魔王「ああ…そうだな」

魔剣士「なんだ? らしくねぇなぁ」

魔王「俺を何だと思ってるんだ? 魔王と名乗っているが、お前と同じ魔族だぞ?」

魔剣士「ははっ、お前のそういう所見た事ないからな」

魔王「俺は…魔女を愛している」

魔剣士「っ!!…そう…か…」

魔王「この闘争に勝てば、魔族の皆が何にも怯える事無く笑いあえる…特に魔女には笑って欲しかった……」

魔剣士「オレは…何も言えねぇよ、ただ勝たなきゃならねぇな」

魔王「そうだな……」


400: 2012/12/20(木) 00:48:56.91 ID:IsPbjfU+0

タタタッ!!

魔族「魔王様!!」

魔王「どうした?」

魔族「闇神官を見たとの情報が入りました…」

魔剣士「奴は四百年前に魔王が処刑した筈だ、見間違いじゃあねぇのか?」

魔王「何処で見た?」

魔族「陸の国です…」

魔王「奴が生きているとして、何故滅びた陸の国に? 魔物しか居ない筈だ…」

闇神官ー四百年前に同胞の亡骸を使いおぞましい実験を繰り返し、さらに人間も実験台にした異常者…

それを知った俺はすぐに奴を処刑した、我々は魔族の平和の為に戦っているのだ、確かに人間は憎いがそんな事を許す訳には行かなかった。

例え人間であろうと氏者は冒涜してはならない。

401: 2012/12/20(木) 00:51:57.12 ID:IsPbjfU+0

魔剣士「どうする?」

魔王「奴を監視し」

闇神官「その必要は無いぞ、魔王」

魔剣士「てめぇ、生きてやがったのか!?」

魔王「何を企んでいる? 答えろ」

闇神官「ついに人間を滅ぼす兵器を創り出したのだよ」

魔王「それで?」

闇神官「1ヶ月後に戦争を始めるのだろう? 協力させて欲しい」

魔王「……いいだろう、だがこれ以降は此の地に足を踏み入れるな、四百年前の罪は許されない、何をしてもだ」

闇神官「まあ良い、人間さえ殺せれば良いからな…」

ザッザッ……

魔剣士「良いのか?」

魔王「いや、監視はさせる…頼むぞ」

魔族「畏まりました…」スッ


402: 2012/12/20(木) 00:57:59.39 ID:IsPbjfU+0

十日後

ー伍の国ー

弐の王「各国に武器の輸出は済みました」

女王「弐の王よ、助かります…城壁・障壁の強化も終われば、侵攻を暫く防ぐ事は出来るでしょう」

壱の王「民の避難経路の準備も整った」

参の王「我々は民を守り、後は勇者様が魔王を倒すのみ」

王子「必ずやってくれるさ!! 情けない所は見せられねぇな……」グッ

女王「皆、信じましょう…それに準備はやり過ぎて悪い事はありませんから」

弐の王「そうだな、我々が民を守れなければ本末転倒」

参の王「勇者様に顔向け出来んからな」

403: 2012/12/20(木) 01:00:16.63 ID:IsPbjfU+0

壱の王「まだ早いですが……」

諸王・女王『…………?』

壱の王「戦いなど無くとも情報交換・物資援助な」

王子「壱の王様っ!! 堅苦しいぜ!! 簡単に言えば皆仲良くしようって事だろ?」

『……!!』

壱の王「……!? はははっ!! そうだな、その通りだ!!」

参の王「ははっ、立場ばかり考えて大事な物を忘れていた…」

女王「ふふふっ、我々は駄目ですね…こんな時だからこそ、素直にならねばならないのに……」

弐の王「そうだな……言い方は悪いが国や政治の事など関係無く、王としてでは無く会いたい」

王子「オレはさ、正直嫌な王様もいるかと思ってた……でも、皆いい人だな!! 女王様はすっげぇ綺麗だし…代理になれて良かったぜ!!」ニカッ

弐の王「お前は凄いな、バカッぽいが…」

王子「バカじゃねぇよ!!」

女王「ふふっ、ありがとう…士の王子」ニコリ

王子「………」ポォーッ

女王「どうしました?」キョトン

王子「んっ? いやっ、何でも無い…です」カァッ


404: 2012/12/20(木) 01:05:08.40 ID:IsPbjfU+0

ー祠ー

先代「拳槌」ゴッ  僧侶「影断ち」シュン

僧侶「双拳」タンッ

ドッゴォッ!! 先代「ぐっ…」ミシッ

僧侶「裂き太刀!!」ジャキ

ガギィッ!! 先代「まだ甘い」ググッ

僧侶「……っ!!」パッ

剣を手放した…ちゃんと学んでいるな…

先代「………」スゥ

僧侶「旋脚!!」バッ  先代「翔・落葉」ブンッ

ズッバァッ!! 僧侶「ガッハァ」ブシュッ

先代「大分良くなったな…」

僧侶「いえ、まだです…」

先代「焦るな…今日は此処までだ」

僧侶「はい、ありがとうございました」

ザッザッ…

先代「もうすぐ追い付かれるな…終わった後も修練してるのだろう、それに瞳の強さが前とは違う……」


405: 2012/12/20(木) 01:06:44.58 ID:IsPbjfU+0

ーーーーー

ー賢者の家ー

勇者「お帰りなさい」ニコリ

僧侶「ただいま」ニコッ

賢者「二人共、話があるわ…座って頂戴」

僧侶「分かりました、何でしょう?」

賢者「前にも言ったけど、魔王自身が攻めて来た場合の話よ」

勇者「賢者様が残ると言ってましたが」

賢者「まずコレを…」チャリ

僧侶「首飾り…?」

賢者「私が此方で魔王と戦い…そして、もし私が敗れたら…あなた達を呼び戻す」

勇者「その為の首飾りですか?」

賢者「そうよ、でも魔王が攻めて来なければ各国を守護するわ」

僧侶「分かりました」

賢者「それと、急で悪いけど今から二人には私と戦って貰うわ」

『……!!』

賢者「着いて来なさい…」


406: 2012/12/20(木) 01:13:18.84 ID:IsPbjfU+0

神の山ー山頂ー

賢者「来なさい…」ゴッ

僧侶「勇者、魔法で援護をオレは接近して攻撃する!!」

勇者「分かった!!」


僧侶「影断ち・双拳!!」タンッ 賢者「……影断ち」シュンッ

やはり賢者様が技を伝えたのか…

賢者「精霊術・鳳炎」カッ

ボウッ!! グォォォォッ!!

勇者「聖氷・凍壁!!」カッ

パキパキッ…ズドンッ!!

僧侶「翔・落葉」ダッ 賢者「翔脚」ダン

スドッ!! 僧侶「ぐっ…」


勇者「殺技・千突!!」ジャキッ

ジャギャギギギギン!!

賢者「くっ…翔」バッ 僧侶「翔・拳槌」ゴッ

ドッゴォッ!! 賢者「ぐっ!!」ズサッ

賢者「聖氷・千柱」カッ

パキパキッ ザンザンッ!!

勇者・僧侶「…っ翔!!」バッ

賢者「翔・円刃」ブゥン…

ドギャッ!!

ドサドサッ…

407: 2012/12/20(木) 01:15:31.74 ID:IsPbjfU+0

勇者・僧侶「ハァッハァッ」ググッ

賢者「此処まで!!」

『はい!!』

賢者「連携は良いわね、やっぱり必要なのは個人の力ね…」

僧侶「勇者も使えるなんて驚いたな…」

勇者「賢者様がね、せっかく良い剣持ってるんだからって教えてくれたの」

勇者「まだ全然だけど使える様にはなってきたよ」ニコッ

僧侶「凄いな…勇者、がんばろうな」ニコッ

賢者「じゃあ、戻って晩ご飯にしましょう」

勇者・僧侶「はい」

ザッザッ……


413: 2012/12/20(木) 21:04:11.78 ID:74aUOq2O0

壱の国ー平原ー

剣士「すぅぅ…はぁぁぁ…」ググッ

剣士「雷一閃」ダッ

師範「流水」スゥ…

ここから…

剣士「双牙!!」ゴッ

ザンッザンッ!!   師範「ぐっ…むん!!」シュゥゥ

師範「乱れ風刃」スッ

ビョウッ!!  剣士「風の太刀」ズッ

ドウッ!!

流石に全部は消せないか…

ジャギャ!! ザザンッ!!

剣士「……っ!! フッ!!」シュゥゥ

師範「呼吸も大分安定してきたな」

414: 2012/12/20(木) 21:05:39.74 ID:74aUOq2O0

剣士「でも、まだ足りない」ググッ

師範「焦りは隙を生む…心は穏やかに保て……」

剣士「……うん、分かったよ」スゥ

師範「うむ、それで良い…もう少し続けるか?」

剣士「うん」スチャ

師範「構えんでいい、離れて見ておれ…」ゴウッ

剣士「……っ!!」タッ

師範「剣技・羅刹の太刀」ザッ

ズンッ!! ゴッバァッ!!!

剣士「ッ!! 爺ちゃんの辺り一帯が抉れてる…すげぇ」

師範「周り全てが『敵』ならば使える技じゃ…氏地に赴く者の技、出来れば使う機会が無いことを願う……」

剣士「爺ちゃん…」

師範「………今日はこれで終いじゃ、帰って休もう…母が待っとるぞ」ニコリ

剣士「うんっ!!」ニコッ


415: 2012/12/20(木) 21:10:25.91 ID:74aUOq2O0

ー五日後ー

神の山ー山頂ー

勇者「聖炎・連槍」カッ

賢者「精霊術・地霊の護壁」カッ

ドッドッドッ!!

よしっ、これなら…

勇者「翔!! 神雷・極雷槍」カッ

賢者「考えたわね…」

ズズン…ドッゴォォォォッ!!

勇者「…………」スタッ

賢者「旋脚」シュッ  勇者「影断ち」

魔法に頼りがちだったのも克服したわね…

416: 2012/12/20(木) 21:12:56.70 ID:74aUOq2O0


勇者「聖剣・雷爪!!」ダンッ

何より勇者は短期間で…

聖魔法と剣技の複合技を生み出した。


ジャギィィィッ!! 賢者「くっ!!」ググッ

勇者「ぐぅぅっ!!」ググッ

ガギャ!! ゴォッ!!

勇者「弾かれた…やっぱりまだ慣れないな…」

賢者「いえ、今のは良かったわよ、後はやはり慣れるまで続ける事ね」

勇者「はいっ!!」

賢者「威力・速さ共に申し分無いわ、あなたに殺陣・殺技を教えて正解だった、魔法の練度も上がってる」

勇者「それが無ければ思い付きませんでした、これなら前衛でも戦えます」

賢者「ふふっ、そうね…さあ、そろそろ戻りましょう」

勇者「はいっ!! 僧侶はどうなったかな…」


417: 2012/12/20(木) 21:16:01.72 ID:74aUOq2O0

ー祠ー

先代「千突」ドッ   僧侶「雨弾き」チャキ

ギャギギギギ!!

僧侶「円刃」ブゥン

ギィィィンッ!! 先代「ふっ!!」ググッ

先代「影断ち・風当て」タンッ

スッ……ズンッ!!  僧侶「ぐはっ!!」ググッ

僧侶「影断ち・三日月!!」ジャキ

ザウンッ!! 先代「ぐあっ!!」

僧侶「響双掌!!」タンッ

トンッ…ドッズンッ!!!

先代「ガッハァッ!!」ガクン

418: 2012/12/20(木) 21:21:00.69 ID:74aUOq2O0

僧侶「ハァッハァッ…」フラッ

先代「……見事だった」ググッ

僧侶「やっと此処まで…」ハァッハァッ

先代「だが…」ゴウッ

僧侶「っ!?」ゾワッ

先代「絶葬」スッ

ズッ!!……ザギャッ!!

僧侶「………ガッ…」ブシッ

ブッシャァァッ!!

今、何度突かれた? 気付けば目の前…

残像すら…見えなかった……

先代「これがオレの全てだ…ガフッ…やはり負担が大きいな…」ガクン

僧侶「ハァッ…ハァッ」ググッ

僧侶「絶ッ……葬…」スッ

先代「……!!」

シュッ!!…ザギャアッ!!

先代「……ウグッ…」ブシュッ

ブッシャァァッ!!

先代「ぐっ!!」ドサッ

僧侶「……や…った」バタッ


419: 2012/12/20(木) 21:38:15.21 ID:74aUOq2O0

ー賢者の家ー

僧侶「ううっ…」

勇者「僧侶!! 大丈夫?」

僧侶「ああ、でも…やっと先代に届いたよ」

勇者「何時まで待っても帰って来ないから心配したんだよ?」

僧侶「ごめん、勇者…」

勇者「無理は駄目だよ? 賢者様も焦るのは駄目だって言ってたし…」

僧侶「ああ、そうだな…」

賢者「でも僧侶、あの人…先代と引き分けたのよ、素直に喜んで良いのよ」ニコリ

僧侶「……はいっ」ニコ

勇者「私も頑張らないとな…」

賢者「でも、ひとまず今日は休みなさい」

『はいっ』


勇者・僧侶・それに剣士、この子達なら必ず…


420: 2012/12/20(木) 21:41:27.99 ID:74aUOq2O0

ー魔族の地ー

魔王「闇神官に不審な点はあるか?」

魔族「いえ、今のところは目立った動きはありません…協力的です」

魔剣士「ところで、兵器とやらは何だ?」

魔族「魔力を集め射出する大砲のようです、射程が長く城壁を崩すのに重宝するかと…すでに数百台受け取りました」

魔王「その大砲は調べたか?」

魔族「はい、問題は見つかりませんでした」

魔剣士「まあ、放っといて良いんじゃねぇか?」

魔王「……いや、引き続き監視を頼む」

魔族「はっ、承知しました」

ザッ


421: 2012/12/20(木) 21:42:35.82 ID:74aUOq2O0

魔剣士「何ならオレが斬るか?」

魔王「そうだな、戦が始まれば動き出すかも知れん…また四百年前の様な事をすれば処刑する」

魔剣士「あの時、お前が処刑したのは奴じゃなく複製か何かか?」

魔王「それが濃厚だろうな…だが、何故…四百年後の今になって現れたのかは監視役に調べて貰う他無い」 

魔剣士「まあ、今は目先の戦に集中しねぇとな、お前も出るのか?」

魔王「賢者次第だ…勇者は此の地に来るだろう、その前に奴を葬り、その後で勇者と守り手を倒す…」

魔剣士「勇者・賢者共に此方に来た場合は?」

魔王「勇者はお前に足止めしてもらう、他の者では無理だ…」

魔剣士「分かった…出来ればればオレが氏ぬ前に賢者を片付けてくれよ? まあ、氏ぬ気はねぇがな」

魔王「もう誰も氏なせはしない、大丈夫だ」

魔剣士「何があっても、お前だけは生きなきゃならねぇぞ」

魔王「…!! ああ、分かった」ググッ


422: 2012/12/20(木) 21:45:42.12 ID:74aUOq2O0

ー開戦三日前ー

ー伍の国ー

女王「各国、全ての準備が整いましたね」

弐の王「後は細かい部分を確認し穴が無いようにしなければ」

参の王「やり過ぎて悪い事にはならないでしょう」

王子「ところでよ……弐の王様は結婚するんだろ?」

弐の王「おい…誰に聞いた?」

王子「えっ? そこの姉ちゃんが嬉しいそーな顔で、ニッコニコしながら言ってきたぜ?」

女商人「余計な事言うな!!」

ゴッ!! 王子「痛った!!」

423: 2012/12/20(木) 21:47:42.68 ID:74aUOq2O0

弐の王「気持ち悪い…」

女商人「うっせぇハゲ!!」

弐の王「禿げてない、医者に眼を調べて貰ったらどうだ、んっ?」

女商人「この野郎っ……」フルフル

壱の王「ははっ、めでたいですな!! 式はいつですかな?」

弐の王「この戦が終われば直ぐに」

女王「ふふっ、では皆で行きましょう」ニコリ

参の王「ええ、そうですね」ニコ

王子「まだ痛ってぇよ…」サスサス


424: 2012/12/20(木) 21:50:21.79 ID:74aUOq2O0


ー賢者の家ー

剣士「皆、久しぶりだな!!」ニカッ

僧侶「そうだな」ニコリ

賢者「修行は終わりよ、皆好きなように過ごしなさい…それと剣士にもこれを」チャリ

剣士「首飾り?」

勇者「もしもの為に賢者様が用意したの、私達を呼び戻すのに必要なんだって」

剣士「何か分んねぇけど、分かった」ウン

勇者「まあいいや、それより行きたい所があるの…」

僧侶「どこに行くんだ?」

勇者「弐の国の村に行きたい…戦いが始まる前に手を合わせたい…」

剣士「……オレも士の国の村に行きたいな…あと騎士長の墓にも」

賢者「なら私が連れて行くわ…僧侶は?」

僧侶「父上に、父上に挨拶を…」

賢者「…分かったわ、じゃあ弐の国から行きましょう」

バシュッ


425: 2012/12/20(木) 21:51:19.41 ID:74aUOq2O0

弐の国ー村跡ー

僧侶「ちゃんと墓が建ってある、戦争の準備で忙しい筈なのに…約束を守ってくれたんだな」

勇者「…………」スッ

必ず誰も傷付かない世界にします。

例え理想論と言われようと…

剣士「…………」スッ

此処でも同じ事が……

安らかに眠って下さい…

勇者「賢者様、もう大丈夫です」

賢者「……そう、じゃあ次は士の国ね」

バシュッ


426: 2012/12/20(木) 21:52:35.73 ID:74aUOq2O0

士の国ー村ー

剣士「あっ…町長さん!!」

町長「おお、剣士か僧侶さんも…そちらは勇者様ですかな?」

勇者「はい、あの時は来れず…すみませんでした」

町長「いえ、都に現れた魔王が退いただけでも良かった…それに、亡くなった者は此の村の者達だけです…士の王があれから直ぐに埋葬し墓を建てて下さいました」

剣士「そっか…」

僧侶「戦が始まれば沢山の人が傷付く…そうなる前に魔王を倒さなければ」

町長「そう願っています…えぇ、其方の方は?」

賢者「賢者と申します、私も力を尽くしますので」

剣士「オレも頑張るから、安心して待っててくれ!!」ニカッ

町長「ああ、応援しているよ」ニコリ

剣士「賢者様、騎士長の墓は城にある筈だから、城へ頼む…」

賢者「ええ、分かったわ…では町長さん、私達はこれで」

バシュッ

町長「皆様、お頼みします…」ギュッ


427: 2012/12/20(木) 21:54:35.02 ID:74aUOq2O0

ー士の城ー

大臣「お久しぶりです皆さん、どうして此処に?」

剣士「騎士長に手を合わせたいんだ、オレ一人で行かせてくれ」

勇者・僧侶「分かった」

大臣「では此方へ…」

ー騎士長の墓ー

剣士「騎士長、オレ強くなったよ」

守る強さを教えてくれたのは騎士長なんだ、出来れば生きて会いたかったな…

戦いが終わったら、また来るよ。


ー嬢ちゃん…氏んじゃあ駄目だぜー


剣士「…!! おうっ!!」

ザッ…


賢者「最後は僧侶の家ね…行くわよ」

僧侶「お願いします…」

428: 2012/12/20(木) 21:55:56.68 ID:74aUOq2O0

バシュッ

父「むっ、僧侶……」

僧侶「父上…戦の前に挨拶に来ました」

賢者「私と剣士は宿に泊まるわ、勇者、あなたは一緒に居なさい」

勇者「はい」

賢者「剣士、行くわよ」

剣士「ん? 分かった、じゃあ明日な!!」

ガチャ パタン……

429: 2012/12/20(木) 21:56:44.26 ID:74aUOq2O0

ーーーーー

父「あの方が我々の…」

僧侶「はい、私も驚きました」

父「僧侶、お前は勇者様を愛していると言ったな…」

勇者「…………」

僧侶「はい、愛しています…彼女と共に生きたい、だから私は戦えます」

父「そうか…それと僧侶、一族の務めとはいえ人を殺めるのは辛かっただろう、済まなかった…」

僧侶「いえ、いいのです…」

父「勇者様」

勇者「は、はいっ」

父「どうか、また二人で此処に来て下さい…それと今日は我が家でお休み下さい」

勇者「ひゃい、ありがとうございます」

父「では、私は自室へ戻ります」

ガチャン……


430: 2012/12/20(木) 21:58:28.91 ID:74aUOq2O0

ー町の宿ー

剣士「なんでオレ達は宿なんだ?」

賢者「剣士はまだ子供ね、胸は大きいのに…」

剣士「胸は関係無いだろ!? それに、子供じゃない!!」

賢者「そうね、じゃあもう寝ましょ?」

剣士「おうっ、じゃあお休み!!」



やっぱり子供ね…

431: 2012/12/20(木) 21:59:49.42 ID:74aUOq2O0

ーーーーー

ー僧侶の部屋ー


僧侶「じゃあ、寝ようか?」

勇者「えっ? うんっ」

僧侶の部屋綺麗だなぁ、

いつか私も此処に住むのかな…

僧侶「どうした?」

勇者「な、んでもない!!」カァッ

僧侶「ん? じゃあ、お休み」

勇者「……………」

何か、私はこのままじゃダメな気がする…

432: 2012/12/20(木) 22:01:14.25 ID:74aUOq2O0

勇者「僧侶!!」ガバッ

僧侶「ゆ、勇者? どうした?」

まさか……

勇者「僧侶の子供が欲しい!!」クワッ

台詞まで同じか…

僧侶「勇者、大丈夫?」ナデ

勇者「うん、大丈夫…へへっ」テレッ

勇者「じゃないよ!!」クワッ

ダメだった…

僧侶「分かったよ、勇者……」ギュッ

勇者「……うん」ギュッ

433: 2012/12/20(木) 22:02:23.53 ID:74aUOq2O0

ーーーーー

ー翌日ー

賢者「…………」

僧侶「な、何ですか?」

賢者「まさかあんた達が…」

僧侶「っ!! 何で…」

賢者「雰囲気よ、雰囲気…で、どっちから?」

僧侶「……アンタの子供が欲しい」ボソッ

賢者「なっ!? 何で知ってんの!!」

僧侶「夢で見たんです、先代の過去を…」

賢者「忘れろ…」

僧侶「私はアンタを愛してる」ボソッ

賢者「おいコラ」

僧侶「すみません…」

賢者「で、どっちから?」

434: 2012/12/20(木) 22:03:53.82 ID:74aUOq2O0

僧侶「まだ聞く」

賢者「答えろ」

僧侶「……………」

僧侶「賢者様と同じでしたよ!! 行動も言動も!!」

賢者「へぇ、あの子も見かけに寄らずやるわね…」

僧侶「嫌だ、アンタの子供が欲しい」ボソッ

賢者「……………」

ドガッ!! 僧侶「痛った!! でも謝りませんよ!!」

勇者「うぅ…」カァッ

剣士「どうした?」

勇者「なな、なんでもないよ!!」

剣士「その、賢者様がオレを子供だって言うからさ…その…聞いたんだよ、そしたら二人は子供をつ」

勇者「剣士、違うよ」ニコ…

剣士「わ、分かった」ゾクッ


435: 2012/12/20(木) 22:12:48.62 ID:74aUOq2O0

剣士「それより勇者は家族と会わなくて良かったのか?」

勇者「うん、泣いちゃいそうだから…終わったら笑顔で会うんだ…」

剣士「そっか、絶対勝とうぜ!!」ニカッ

勇者「うん!!」ニコッ

僧侶「ごめんなさい…」

賢者「もう二度と言うなよ…」

僧侶「…………」

賢者「…………………」

ドガッ!! 僧侶「分かりました!!」

440: 2012/12/21(金) 02:09:37.66 ID:4IshQt3v0

弐の国ー港ー

ー開戦ー

賢者「じゃあ、勇者達は船で魔族の地へ……気を付けて行くのよ」

勇者「はいっ!!」ニコッ

僧侶「行って来ます、賢者様も御無事で…」

賢者「私は大丈夫よ」ニコ…

剣士「じゃあ、行って来る!!」ニカッ

賢者「ええ、待ってるわ」ニコリ




賢者「さて、どう出る魔王…」

441: 2012/12/21(金) 02:11:02.58 ID:4IshQt3v0

ーーーーー

魔王「賢者は弐の国にいる、出撃はまだだ…俺が賢者を倒したら、お前が軍を率いて出撃してくれ」

魔剣士「お前、一人でいいのか?」

魔王「ああ、任せておけ…すぐ戻る」

魔剣士「分かった、待ってるからな…」

魔王「俺が戻る前に勇者が来たら頼むぞ」

魔剣士「おうっ!! 『またな』!!」

魔王「ああ、『またな』」

ブンッ…

魔剣士「負けんなよ、魔王…」

442: 2012/12/21(金) 02:14:53.93 ID:4IshQt3v0

ー弐の国ー

女商人「来やがった!!」

弐の王「数は!?」

女商人「それが、一人だけなんだ…何考えてんだアイツは…」

弐の王「まさか……魔王かっ!?」 

バシュッ!!

女商人「賢者っ!!」

賢者「私が、行きます…」

弐の王「……分かった、頼む…」

女商人「なんで魔王が…」

賢者「恐らく私を倒す為でしょう」

女商人「戻って来いよ……」

賢者「……大丈夫です、もし私が敗れても直ぐに勇者達が来ますから」

弐の王「賢者……」

バシュッ!!


443: 2012/12/21(金) 02:16:05.56 ID:4IshQt3v0

ーーーーー

魔王「来たか、賢者…お前は俺が葬る」ズズ

賢者「魔王……」ゴォッ

魔王「禍雷・大雷」ズズ

賢者「影断ち・千突」ジャキ

スギャギャギャッ!!  魔王「むっ!?」

魔王「あの時とは違うか…」

賢者「精霊術・鳳炎」カッ

ボウッ!! グオォォォォ!!

魔王「闇地・崩」ズズ

ドッ!! ゴゴゴッ…ゴアァァァッ!!

ズッ!! ガァァァッ……


444: 2012/12/21(金) 02:17:48.54 ID:4IshQt3v0

魔王「ふむ…ならば」ジャキ

賢者「……剣!?」

魔王「滅剣・炎魔!!」ズォッ

賢者「精霊剣・水精!!」キンッ

ガギャンッ!!! ドウッ!!

魔王「はっ!!」グッ

ズバァッ!!  賢者「うっ!!」ググッ

賢者「ハァッ…ハァ」シュゥゥ

魔王「精霊化…厄介だな、だが氏なない訳では無いだろう?」

賢者「くっ……」

あの時、魔王は剣技など使わなかった…

魔王も強くなっている。

私一人では太刀打ち出来ないか…

でも、全ての力を放てば…行ける!!

445: 2012/12/21(金) 02:19:43.63 ID:4IshQt3v0

賢者「神術・」ゴゴゴ

魔王「…っ!? まさか……お前、最初から!!」

シュンッ…

賢者「誰!?」  魔王「誰だ!!!」

『魔人間が族にあギャアア!!私の人許さササなイコロしサれた』

『憎ニクいタス誰ケラ許しテい』

魔王「なんだ、アレは……」

賢者「魔族じゃない…何なの…」

『ウタ許ガタらル奴がてイナケり』

『ギャヤメテアア!ギィヤァ!!!』

446: 2012/12/21(金) 02:21:38.51 ID:4IshQt3v0

ー数刻前ー

陸の国・跡ー洞窟ー


闇神官「…長かった、だがコレで全てが……」

闇神官「人間も魔族も全てが私に平伏すのだ…」

闇神官「人間と魔族の憎悪を『壷』に溜め続け、四百年待った」スッ

闇神官「もう十分だろう…この力を私に移せば魔王だろうが勇者だろうが、私を傷付ける事は叶わない…」

ズオォォォォッ……

闇神官「素晴らしい……さあ私に力を!!」

ズルルルルル……

闇神官「むっ!? 何だ!? おぅっ…げぎぃあぁ…」


「うぉがぁぁ!!!」

ミジミジッ…メキャッ!!

『グガァァァァッ!!』


447: 2012/12/21(金) 02:22:48.31 ID:4IshQt3v0

魔族「な…何だアレは? 魔族でも魔物でも無い」

身体は大きくは無い、だが凄まじい力を感じる…魔力では無い……

『破壊』その物が目的のような…

何より不気味なのは身体中に浮き上がり蠢く、苦悶の表情を露わにした人面相…

此の洞窟自体、灯りが無く暗いと言うのにその暗闇の中でさえ浮き上がる程の闇…

凄まじい負の圧力を感じる…


魔族「魔王様に伝えな…」ブシュッ

魔族「な…が…魔…王さ」ドサッ


448: 2012/12/21(金) 02:26:09.85 ID:4IshQt3v0

『ディィギオオォォ私オレあなた許さなころされ魔ゾクがイナいいなクエヶ』



『人間魔族居さえな助けけ戦は争てれば事にはこんな魔族人め間め許さ許さないない』



『あ頃してギャアア!!お前の人間共ダ人は殺され許さない恨むたぞるさア彼ギだぎゃああ…』

シュン…

449: 2012/12/21(金) 02:28:18.03 ID:4IshQt3v0

『魔族は滅びろ』ズルル…

ゴッバァァァッ!!

魔王「狙いは俺か?」

賢者「精霊術・地霊の護壁」カッ

魔王「賢者ッ!?」

ビシッ!! ビシビシビキッ!!

賢者「受け切れない…」ググッ

魔王「闇地・獄門」ズズ…

ゴゴゴ…ズドンッ!!ズドンッ!!

賢者「魔王、『アレ』はなに!?」

魔王「恐らく闇神官だ…少しだけ奴の魔力を感じる、だが魔族では無い…もっと大きな…」

『人間は頃す』スッ

450: 2012/12/21(金) 02:30:20.52 ID:4IshQt3v0

賢者「城を狙うつもり!?」

魔王「……滅剣・氷獄」ズズ…

ザシュッ!!…バキバキバキッ!!

魔王「効かん訳では無いらしい」

『魔は族許しササ無い』グルリ

魔王「なっ!?」

ギョガァァッ!!  魔王「くっ!!」ググッ

ドズンッ!! 魔王「ガッハッァ…」

賢者「自我が無い? 見境なく破壊するだけ…あの魔王すら……」

このままでは、人間どころか全てが…

451: 2012/12/21(金) 02:33:21.06 ID:4IshQt3v0

賢者「……ッ!! 魔王!! 下がりなさい!!」

魔王「ちっ…」シュン

『マドゥルルキャアアアッ!!』

ビリビリビリ……

魔王「一体何なんだ…闇神官では無いのか、奴が操っているのか?」

『キャアアアッ!!まぞくは許しかな』

賢者「……………」

勇者・僧侶・剣士、後は頼むわよ…

賢者「影断ち」シュン

『勇者ガァァァ許しさなさジィ』

魔王「賢者…何を?」

賢者「このままじゃ、人間も魔族も全てが滅びる!! コイツは全ての憎悪その物、言わば『化身』よ…魔王!! アンタも『守りたい』のなら後は『頼む』わよ!!」

魔王「何を言って!?」

賢者「転移!!」カッ

化身『助け魔族が人間ワタシメ氏ねナニヲシタの』

バシュッ!!


452: 2012/12/21(金) 02:35:05.35 ID:4IshQt3v0

ー陸の国・跡ー

バシュッ!!

賢者「ここなら…」

もし、これで倒せなければ…

『全ての者達』が協力しなければ倒せない。

でも、やるしかない!!

化身『魔族が滅べば平和になる』

グオォォォォ!!

賢者「くっ!!」シュゥゥ

まず勇者達を首飾りの力で弐の国へ呼び戻す…

453: 2012/12/21(金) 02:36:43.04 ID:4IshQt3v0

賢者「転移」カッ

これで、大丈夫…後は、

賢者「神術・十握の剣!!」カッ

ズッギャギギリャ!!!

化身『ナキャアアアッナ助けギィ頃すナ』

駄目…だった…で…も

賢者「神術・天ノ岩戸」カッ

ドズンッ!!ズドンッ!!ガンッ!!

これ…で暫く…は…

賢者「あなた…いま、いく…わ」

サァァァァァッ………


459: 2012/12/21(金) 23:58:07.29

ー弐の国ー

弐の王「何だあの化け物は…そして賢者は奴と消えた、一体何が起きたんだ」

女商人「賢者が城を守ってくれたのは間違いない…けど、まだ魔王が残ってる」

弐の王「いや、魔王に動きはない…それは有り難いんだが…何故だ?」

ーーーーー

魔王「………………」

憎悪の『化身』…

人間・魔族見境なく頃すつもりか?

そして賢者は俺に『頼む』と言った。

シュン…

魔剣士「魔王ッ!! 無事か!?」

魔王「ああ、だが…」

魔剣士「さっき闇神官を監視してた奴が氏に体で戻って来てな、仲間に転移で飛ばして貰った」

魔王「……話してくれ」

魔剣士「闇神官の奴は四百年前から、氏んでいった魔族・人間の怒りや憎しみ…負の念を『壷』とやらに集めていた」

魔剣士「その強大な憎悪を力に変え、自分に取り込もうとして……」

魔王「己の力にしようとしたが、呑み込まれたのか…」

魔剣士「そうだ、賢者は?」

魔王「……奴はもう」


460: 2012/12/22(土) 00:01:14.78 ID:mdQHJOsV0

バシュッ!!

勇者「ッ!! 魔王!!」ジャキ

剣士「お前が…」ジャキ

僧侶「待てっ!! 勇者!! 剣士!!」

剣士「雷光の太刀!!」ダンッ

魔剣士「ちっ…めんどくせぇな」ジャキ

ガッギャァッ!! 剣士「この野郎ぉ!!」

魔剣士「ぐっ!! オラァッ!!」ググッ

ギャギンッ!!  剣士「くっ!! 弾かれた…」

461: 2012/12/22(土) 00:03:02.28 ID:mdQHJOsV0

魔王「……………」

魔剣士「馬鹿力が…」ビリビリッ

僧侶「やめろっ!!!」ゴッ

剣士「っ!!」ビクッ

勇者「でも!! 賢者様が!!」

僧侶「落ち着け!! 魔王が賢者様を倒したとしたら…何故、無傷で城が残っている!?」

僧侶「何かが、『何か』があったんだ、魔王…賢者様に何があった?」

魔王「教えてやる、だが条件がある」

勇者「……なに?」 

魔王「何も言わず俺に着いて来い、其処で話す…」

僧侶「いいだろう」

勇者「……分かった」

剣士「分かんねぇ、けど…分かった」

魔王「行くぞ……転移」ゴッ

ブンッ…

462: 2012/12/22(土) 00:06:11.34 ID:mdQHJOsV0

ー陸の国・跡ー

ブンッ…

魔王「此処だな……見ろ」

勇者「あれは、何かを封じ込めて…っ!!」ゾワッ

ドンッ!!ゴガンッ!!ドガッ!!

剣士「あの中には、『何』が居るんだ?」

魔王「人間・魔族、恨み怒りの化身…賢者は、そう言っていた」

僧侶「憎悪の化身…」

魔王「元々は闇神官という魔族が、四百年間…『壷』に溜めた負の力を我が物にしようとしていたらしいが、力に呑まれ魔族でも魔物でもない…本当の化け物になった…」

勇者「じゃあ、賢者様は…化身を封じて……」ポロポロ

魔王「完全に封じた訳ではない、ほんの一時だ…明日になれば封印は破られるだろう…」

463: 2012/12/22(土) 00:07:34.17 ID:mdQHJOsV0

剣士「じゃあ、どうすりゃ良いんだよ…賢者様でも倒せなかったのに」

魔剣士「魔王、お前でも無理か?」

魔王「一人では無理だ………勇者」

勇者「…なに?」グシグシ

魔王「賢者は、俺に『頼む』と言った…『守りたい』なら、とも…」

勇者「賢者様…でも私は勇者、だから」

僧侶「勇者、もう答えは出てる」

勇者「………うん」

剣士「…そうだな」

魔剣士「どうする? 『人間』よ」

僧侶「魔王、協力してくれ…」

魔王「………」

464: 2012/12/22(土) 00:08:17.00 ID:mdQHJOsV0

僧侶「四百年前、魔族に戦を仕掛けたのは我々人間だという事は知っている…それは『人間』の罪だ…済まない」
魔王「何を今更…消えはしない、我々魔族の痛みと苦しみは…」

勇者「それは人間も同じだよ…皆が戦を望んだ訳じゃないのだから」

魔剣士「まあ、そりゃそうだ…だが互いに戦い、傷付いた『歴史』は変わらねぇ」

僧侶「いや、『今』から変える事は出来る…幾ら言葉を重ねても、納得出来る答えなど見つかりはしないし、忘れる事も出来ないだろう」

魔王「ならば、どうする?」

465: 2012/12/22(土) 00:09:17.14 ID:mdQHJOsV0

剣士「話そうぜ…例え気休めにしかならないとしても、全ての人に四百年前の大戦の『真実』をさ」

勇者「分かり合えなくても、『伝える』事は出来る、四百年前の戦とは違う……『今』、人間・魔族が何を守る為に戦おうとしているのかを…」

魔剣士「……魔王、コイツ等は嘘は言ってねぇ、どうする?」


ー生きて、貴男だけは生きて下さいー


魔王「いいだろう、なら…今から諸国王を魔族の地に呼ぶ、人間の『覚悟』見せて貰おう…」


466: 2012/12/22(土) 00:12:50.42 ID:mdQHJOsV0
ー魔族の地ー

弐の王「俄には信じれん…我々が魔族の地に居る事もそうだが、理解が追いつかないな…」

参の王「我々が信じて疑わなかった『人間』の正義が偽りだったとはな」

壱の王「だが、僧侶の見た先代の記憶、そして魔王が語ったものは一致している…」

壱の王「陸の国は魔族から人間を守る為に滅びたと聞いていた…だが、その陸の国が侵略行為を働いていたとは」

女王「…………………」

王子「どうした…女王様?」

魔王「知っているのだ、エルフの女王は…人間の醜さをな」

勇者「えっ?」

僧侶「四百年前、エルフは…」


467: 2012/12/22(土) 00:14:25.23 ID:mdQHJOsV0

女王「私が話します…」

女王「我々エルフは四百年前、人間によって奴隷にされる筈でした」

剣士「『筈』って?」

女王「それは先代の守り手様が奴隷商人を葬った為…皆は恐れ、以降エルフを奴隷にしようとする輩は居なくなったからです…」

女王「魔族達の中にも我々を救ってくれた者がいました…人間が魔族侵略を仕掛けた事も…幼い頃から聞かされていましたから」

王子「女王様…あの、魔王」

魔王「…何だ士の王子」

王子「オレは、全部魔族が始めた事だと思ってた…」

魔王「だろうな…」

王子「魔王、士の王の代理として、『今』を生きる者として言うよ…済まなかった!!」

諸国王『……!!!』

王子「人々に真実を伝え信じて貰うには途轍もない時間が掛かる、伝えたとしても過去に魔族に家族を殺された者達は信じないだろう…でも、オレは伝える!! 氏ぬまでずっと!!」

女王「士の王子……」

飾りではない、何処までも真っ直ぐな言葉…

468: 2012/12/22(土) 00:17:25.60 ID:mdQHJOsV0

王子「共に戦う事も、大した援助も出来ない、でも!! 勇者達と協力して化身を倒してくれ!!」

魔剣士「ほぉ…物怖じしてねぇな、素直なガキはすげぇな…」

魔王「士の王子…」

王子「な、なんだ?」

魔王「いいだろう、お前の様な『人間』は初めて見た…その言葉、決して忘れはしない」

王子「お、おうっ!!」

我々が同じ事を言っても魔王には届かなかったでしょう、

でもこの子の意志は魔王の心に届いた!!



469: 2012/12/22(土) 00:19:56.62 ID:mdQHJOsV0

魔王「勇者…お前達も人間の為だけで無く、我々の為にも化身と戦ってくれるか?」

勇者「賢者様はきっと、コレに託したんだと思う…魔王、共に化身を倒そう」

僧侶「そうだな…」

剣士「後の事は化身をやっつけたら皆で考えようぜ!!」

魔剣士「ハハッ!! そうだな!!」

魔王「勇者・僧侶・剣士、礼を言う」

勇者・僧侶・剣士「……!!」

諸国王『っ!?』

魔剣士「魔王……」

魔王「では今日は休め、明日…化身と戦う、諸国王・女王も休んで行ってくれ…明日、部下に城へ送らせる」

470: 2012/12/22(土) 00:21:29.48 ID:mdQHJOsV0

ーーーーー

魔王「誰だ?」

僧侶「夜更けに済まない…」

魔王「守り手か…何だ?」

僧侶「……明日は、頼む」

魔王「ああ…分かってる、俺は生きねばならない…魔女との約束だからな」

僧侶「お前は…愛していたのか?」

魔王「ああ、愛している」

僧侶「……必ず、勝とう」スッ

魔王「妙な気分だ…だが悪くは無いな」

スッ…ガシッ!!

『明日、必ず化身を倒す…!!』


471: 2012/12/22(土) 00:23:04.41 ID:mdQHJOsV0

ー翌日ー

魔剣士「魔王!! 連絡が入った…そろそろ結界が破られる…」

魔王「分かった、魔剣士…行くぞ!!」

魔剣士「おうっ!!」

僧侶「魔王……頼む」

魔王「ああ…皆、行こう」

勇者・剣士「うん、行こう!!」

魔王「転移」

ブンッ…


472: 2012/12/22(土) 00:24:33.37 ID:mdQHJOsV0

ー陸の国・跡ー

ドゴン!! ガギャン!! ドズン!!

ドッゴォォォッ!!

僧侶「出たな…化身!!」

化身『魔族がイナけれはば魔月』シュッ

魔王「闇地・獄門」ズズ  勇者「聖氷・凍壁」カッ

ドズン!!ドズン!! パキパキ…ズガン!!

ズガァァァッ!! 勇者「くっ、僧侶、剣士!!」

魔王「魔剣士!! 行け!!」


剣士「乱れ風!!」チャキ

ドヒュヒュッ!! ズッバァァァァ!!

魔剣士「豪雷剣」ダン

カッ!! ドズッギャリリリィィ!!

473: 2012/12/22(土) 00:27:12.15 ID:mdQHJOsV0

化身『キャアアア!!』

魔剣士「かってぇな…」

剣士「でも効いてる!! 僧侶!!」

僧侶「影断ち・双響掌!!」タンッ

スッ…トンッ……ドッゴォォォッ!!

化身『きるルル…怨雷』

ゾリリ…ゴッシャアアアア!!

魔王「転移!!」カッ

ブンッ… 僧侶「済まない、助かった…」

勇者「僧侶…良かった、魔王!!」

魔王「分かった、皆時間を稼いでくれ!!」

魔剣士「おうっ!! 焔刃」ダンッ

剣士「よっし!! 連双牙!!」ダンッ

ザウッ!! ジャギンッ!! ズザザザザザッ!!

僧侶「千突!!」タンッ

ジャギャギャギャギャッ!!

化身『なんで私が俺がぎゅりら!!』ガクン

474: 2012/12/22(土) 00:29:31.53 ID:mdQHJOsV0

僧侶「勇者!! 魔王!!」

勇者・魔王「合成魔法・天閻の業火」カッ

チリッチリッ…ゴッ!! ボォオオオオオッ!!

化身『ギィリャキィィヤアア!!』ガクガク

魔剣士「流石に今のは効いたか」

僧侶「もう一度今の流れで行くぞ!!」

剣士「分かった!! 風の太刀!!」

化身『コワくネレナイよ魔族が』シュッ

ビュンッ!!

魔剣士「腕が伸びやがった!!」

僧侶「勇者っ!! 影断ち!!」シュッ

ゾブッ!!……僧侶「ガッハッ…」ダラン

勇者「え? 僧侶? うっ…いやぁぁっ!!」

475: 2012/12/22(土) 00:32:46.82 ID:mdQHJOsV0

魔王「くっ!! 転い…なっ!?」

シュルルル…ズブズブ……僧侶「呑…み込…む…つ」

ゾブンッ……

勇者「僧侶を…返せッ!!」ダンッ

剣士「ダメだ!! 勇者!!」

魔王「転移!!」

ブンッ…勇者「なんで? 止めないで!!」

魔剣士「バカ野郎!! お前が氏んだら元も子もねぇだろうが!!」

勇者「……ッ!!」

ーキラキラキラッー 勇者「良かった…生き…てる…!! 僧侶…」ポロ

魔王「勇者!! 行けるか!!」

勇者「大丈夫!! 行ける!!」グシグシ


480: 2012/12/22(土) 18:19:58.83 ID:QN30rmzM0


僧侶「ぐっ、治…癒・大」パァァァ

此処は…化身の内部か? あれは…!!

『オォォォォ……』

凄まじい…四百年、此だけの者達が恨み、憎み氏んで行ったのか。

ーキラキラキラッー

指輪が輝いている…完全に取り込まれ無かったのは指輪の加護か?


それより、まず『此処』から出なければ…

ガッシィッ!! 僧侶「なにっ!?」

481: 2012/12/22(土) 18:21:06.00 ID:QN30rmzM0

『儂が王になる筈だった、この殺人者が…』

僧侶「弐の大臣!! 魔導士…オレが頃した者達…化身に取り込まれたのか」

言い訳はしない、オレがやった事だ…

今、オレ達が戦っているのは戦の犠牲者、誰かを守り氏んだ者、家族、愛する者を失った者達の『憎悪』。

だが、それだけは無い!!

己の欲望の為に人を、魔族を頃し、尚も己の罪を認める事無く牙を剥く亡者!!

僧侶「氏して尚、醜いままだな…オレは貴様等に恨まれて当然かもしれん、だが貴様等は許されざる者…故に化身に捕らわれた」

僧侶「化身の力は憎悪だけではない、穢れた欲望…醜い心」ジャキ

ズッバァァァァ!!

『ギャアアアア……』シュゥゥ


僧侶「蘇りはしないのか…ならば」スッ

『オオォォォォ……』ズルル


僧侶「全て、倒す…!!」ジャキ


482: 2012/12/22(土) 18:22:23.81 ID:QN30rmzM0

ーーーーー

化身『罪を償え魔族…』ゴゴ

ズルズル……ドバッ!!

剣士「…!! 身体から魔物が!!」

魔剣士「クソがッ!! 化身だけでも厄介だってのに!!」

勇者「神氷・千槍」カッ

魔王「禍氷・針牢」ズズ

パキパキッ…ジャギンッ!! ガッゴォォ!!

シュウウウ……

化身『人間よ滅びよ』ゴゴ

ズルズル…ドバッ!!

魔剣士「ダメだ!! これじゃ近づけけねぇ!!」

勇者「このままじゃ何時まで経っても化身に届かない…」

剣士「爺ちゃん……仕方ないよな」ダッ

魔剣士「お、おいっ!!」

剣士「勇者・魔王!! オレが魔物を何とかするっ!! そしたら、さっきの魔法を使うんだ!!」

魔王「分かった…」

勇者「そんなっ!! 剣士、ダメだよ!!」

483: 2012/12/22(土) 18:23:36.57 ID:QN30rmzM0

剣士「オレは大丈夫!! 勇者・魔王!! 頼むぜ!!」ニカッ

ー氏地に赴く者の技ー

剣士「羅刹の太刀!!」ダンッ

ズンッ!! ゴッシャアアアア!!!

シュウウウ……

剣士「やれっ!!!」

勇者「うぅっ!!」ググッ

剣士「勇者ッ!!! 打てっ!!」

魔王「俺達が負ければ、全てが滅ぶ!! 勇者、お前は何を守る!!」


ー守る強さに気付いたんだー


勇者「…くっ!! ああああっ!!」

魔王・勇者「合成魔法・天魔の砕雷!!」

カッ!! ドッジャギャギャッ!!

化身『ァギャッルルゥ』グラッ

ドサッ…

484: 2012/12/22(土) 18:25:21.94 ID:QN30rmzM0

魔剣士「おい、バカ野郎!! 大丈夫か!!」ダッ

剣士「ガフッ…あ、れ生き…てる?」ハァッハァッ

魔剣士「喋るなッ!! 勇者!!」

勇者「よ、良かった…」タタッ

勇者「治癒・大」パァァァ

剣士「あっ、首…飾り…そっか、賢者様」ハァッハァッ

勇者「剣士…大丈夫!?」

剣士「首飾りが光ったんだ…オレを包んでくれた」

勇者「そっか…きっと賢者様が…」

魔王「ッ!? 転移!!」

ブンッ…!!

化身『許し許し罪は災火』

ボォオオオオオッ!!

魔剣士「まだ生きてやがる…」

勇者「魔王、助かったよ」

剣士「魔剣士、もう大丈夫だ…降ろしてくれ」クラッ

魔剣士「お前は此処で休め…」トサッ

剣士「そうも、行かないだろ?」ググッ

勇者「どうすれば…」

魔王「いや、かなり効いている…それに剣士が斬った化身の腕は戻っていない、治癒は出来ない様だ」

魔剣士「なら、全員で斬りまくれば」

勇者「弱ってる今なら行ける!!」

魔王「だが、守り手は……」

勇者「大丈夫!! 僧侶は大丈夫だよ…!!」

魔王「……よし、ならば…行くぞ!!」

485: 2012/12/22(土) 18:26:37.86 ID:QN30rmzM0

ーーーーー

僧侶「ハァッ…ハァッ…」

キリがない…四百年だ、四百年捕らわれた亡霊達…

『オオォォォォ……』

出口も無い…だが此処の亡霊達を減らせば化身は弱体化する筈だ。

だが、倒しても倒しても現れる…

サギャッ!! 僧侶「ぐっ!!」

『オオォォォォ……』

ドンッ!! ガスッ!! ズドッ!!

僧侶「ガッハァッ!!」ガクン

マズい…避けきれない…

486: 2012/12/22(土) 18:30:15.77 ID:QN30rmzM0

パァァァァッ!!

僧侶「指輪が…」

賢者「立ちなさい、僧侶」

先代「立て、僧侶」

僧侶「賢者様、先代!! 何故!?」

賢者「指輪は繋ぐ物…僧侶、私達とあなたは魂で繋がってる…」

賢者「長くは具現化出来ない…行くわよ」

先代「勇者達も無事だ、行くぞ…」

僧侶「分かりました!!」

487: 2012/12/22(土) 18:31:23.30 ID:QN30rmzM0

ーーーーー

勇者「精霊剣・御霆」ダッ

ドンッ!! ザッギャァァァ!!

化身「ギィリャッ!!」

ブッシャアアア…

化身「勇者がイナケ凶ケレ爪」ズズ

ジャキッ!! ブンッ!!

魔剣士「オラッ!!」

ギャリリリッ!! 魔剣士「ぐっ!!」

魔王「滅剣・焔」ゴゴ

ズッバァァァァ!! ゴォッ!!

剣士「浄炎の太刀・双牙!!」

ザザシュッ!! ボウッ!!ゴォォッ!!

化身「ユう者ぁ許さしん」

魔剣士「まだ氏なねぇのか!?」

化身『思い知るれ…怨鎖』ゴゴ

ギャンッ!! ギュルルリッ!!

勇者「速いッ!!」


488: 2012/12/22(土) 18:32:22.52 ID:QN30rmzM0

ドチャッ!! 魔王「ガッハァッ!!」

魔剣士「魔王!!」

剣士「くっ!! 氷牙の太刀!!」

ズッバァァァァ!! パキンッ!!

剣士「勇者ッ!! 魔王を!!」

魔王「ガッガフッ!!」

ドサッ……

勇者「治癒・大!!」パァァァ

魔王「グフッ…ハァッガフッ」

勇者「傷が塞がらない…!!」

魔王「アレはそ…うい…うモノら…しい」ググッ

勇者「そんな…治癒・大」パァァァ

魔王「無駄だ…勇者、守り手に言ってくれ『頼む』と…」

勇者「魔王ッ!!」

魔王「転…移!!」

ブンッ…

化身『魔王許キャさん』ゴゴ

魔王「化身…くれてやる、俺の命を…」


489: 2012/12/22(土) 18:34:21.42 ID:QN30rmzM0

化身『怨鎖ギィリャ怨怨鎖』ゴゴ

ギャンッ!! ギュルルリッ!!

魔剣士「クソッ!!」ダッ

ブッシャアアアッ!!

魔王「魔…剣士…」

魔剣士「ゴフッ…今だ…や…れ」

魔王「ああ…」


ー魔女済まない…出来れば、来世でー


魔王「煉獄…」ボウッ

カッ!! ズズ……ゴォォォオオッ!!

勇者「魔王……魔剣士」

剣士「勇者ッ!! まだ化身は生きてる!!」

勇者「そんなッ!?」

化身『はゃ焔助くりり怨鎖』グチグチッ

ギャンッ!! ギュルルリッ!!


ギャギャギャ!! 剣士「くっ!!」ググッ


490: 2012/12/22(土) 18:35:48.14 ID:QN30rmzM0

ーーーーー

ズッバァァァァ!! ドッゴォォォ……

賢者「……っ!!」

僧侶「どうしました!?」

賢者「魔王と魔剣士が…」

僧侶「くっ!!」

先代「僧侶!! 焦るな!!」

僧侶「でも早く出ないと!!」

賢者「どうやって!?」

僧侶「それはっ……」

賢者「……私の力でも此処から出す事は出来ないわ、出来たら最初からしてる……」

491: 2012/12/22(土) 18:37:33.35 ID:QN30rmzM0

ーーーーー

勇者「剣士!!」

剣士「大丈夫だ!! 何とか剣で防げた!!」

勇者「なら…影断ち!!」

化身『えおまかゅざルルゥ…』ガクン

行ける!!

勇者「神剣・叢雲!!」

カッ!! ザッギャァァァ!!

化身『………がり許さが』ゴゴ

勇者「なっ!?」

剣士「勇者、離れろ!!」


492: 2012/12/22(土) 18:38:33.65 ID:QN30rmzM0

ーーーーー

カッ!! ズッバァァァァ!!

サァァァァ…

光が見える!!

僧侶「勇者か!!」

賢者「僧侶、今なら出れる!!」


先代「行け、『守り手』!!」


493: 2012/12/22(土) 18:40:58.31 ID:QN30rmzM0

化身『人人ギャ禍津…穢れ火』

ドバッ!!

僧侶「うおおぉぉぉあ!!」

ズッバァァァァ!!

剣士「僧侶!!」

僧侶「魔王、魔剣士…済まない」

勇者「僧侶……」

化身『さつ、人者りてがあああ』


僧侶「化身……殺技・絶葬」


化身『かっかかかかしひはっ』

ブッシャアアアッ!!

化身『オオォォォォオオォォォォ』ピシッ


ブワァァァァ……ザァァァァァ………


494: 2012/12/22(土) 18:43:57.24 ID:QN30rmzM0

ーーーー

ーーーーーー

ーーーーーーーーー

「ご飯出来たわよ」

子供「その後は?」

「後で母さんに聞きなさい」ニコ

子供「父さん、勇者様は勝ったの?」

「ああ、勇者様は勝ったよ、悪い奴を倒したんだ」

子供「すっごいなぁ…」

「僧侶、娘、ご飯冷めるわよ?」

「ああ今行くよ、勇者」


495: 2012/12/22(土) 18:44:34.52 ID:QN30rmzM0

ーーーーーー

「やめろ、その子を虐めるな」

「うっせぇんだよ!!」

「闇炎・細矢」

ビュン!!

「ひぃぃ、コイツ魔法打ちやがった!!」

タタタッ…

「おい、大丈夫か?」

「………私達、会った事ある?」

「いや……お前、名前は?」

「私は……」


496: 2012/12/22(土) 18:47:36.72 ID:QN30rmzM0




          ー終わりー

497: 2012/12/22(土) 18:51:55.20 ID:QN30rmzM0


何かグダグダなかんじですが

本気で書きました、頑張ったつもりです!!

自分が書いた物を読んでくれる人がいるっていうのは

とても嬉しかったです。


ありがとうございました!!

498: 2012/12/22(土) 19:16:49.93


楽しかった

502: 2012/12/22(土) 20:56:24.49 ID:QN30rmzM0

ー勇者と剣士ー


剣士「勇者はさぁ…僧侶が好きなんだよな?」


勇者「えっ!? うん…」


剣士「ふぅん…僧侶なぁ…」


勇者「な、なに?」


剣士「オレも好きだけどな!!」


勇者「えっ、剣士が!! 本当に!?」


剣士「だって、こう…ビシッ!!って感じで…な?」


勇者「何か分からなくもないけど…」


剣士「三人で結婚とか出来ねぇのかな…」


503: 2012/12/22(土) 20:57:30.73 ID:QN30rmzM0


勇者「無理じゃないかな?」


剣士「このままじゃダメだ!!」


勇者「……剣士?」


剣士「僧侶んとこに行ってくる!!」スッ


ガッシィッ!!


勇者「明日は早いから、ね?」グイッ


剣士「分かったよ……」スッ


勇者「ふぅ…良かった………」パッ


剣士「と、見せかけて」ダッ


勇者「ちょっ!! オイ!!」ダッ


504: 2012/12/22(土) 21:04:00.06 ID:QN30rmzM0

ー藁ダイブー


剣士「何でしなかったんだ?」 


僧侶「えっ? 何を?」


剣士「イーグルダイブ・藁ダイブ」


僧侶「正直な話しさ…」


剣士「うん」


僧侶「藁じゃ衝撃吸収無理だろ…」


剣士「…………」



505: 2012/12/22(土) 21:09:47.99 ID:QN30rmzM0

ー続・藁ダイブー


僧侶「賢者様、何ですか?」


賢者「飛べ」


僧侶「えっ?」


賢者「ここから飛べ」


僧侶「嫌です……」


賢者「………………」


僧侶「………………………」


ドンッ!!  僧侶「危なっ!!」


僧侶「お前、バカじゃねぇの!?」


賢者「……………」



506: 2012/12/22(土) 21:18:45.52 ID:QN30rmzM0

ー続・続・藁ダイブー


僧侶「よしっ!!」ググッ


剣士「おぉ、遂にやるのか!?」


僧侶「ああ、下には勇者が待機してるから怪我しても大丈夫だ!!」


剣士「準備万端だな!!」


僧侶「…よし……っ!!」タンッ


勇者「ねぇ僧侶、まだ飛ばないの?」ヒョコ


剣士「…………………」


515: 2012/12/23(日) 01:42:02.58 ID:Qe+Y4/UM0

ーーー

ーーーーー

ーーーーーーー

こうして魔王は勇者と協力して化身を倒し、

聖なる王と呼ばれる様になったのでした…

おしまい。


「この魔王ってのは強いんだろうなぁ」

「まあ、そうだろうな」

「魔剣士の方がオレは好きだな、オレも魔法使えねぇし…」

「お前は誰よりも速いし、力も強い…確かに魔剣士に似てるな」

「けっ、魔王様の生まれ変わりだ!! とか言われてる奴から言われてもなぁ…」

「周りが言ってるだけだ、俺は俺だ」


516: 2012/12/23(日) 01:44:07.63 ID:Qe+Y4/UM0


タタタッ…

「なになに? また魔王様の話し?」


「こいつは魔剣士が好きらしい」


「私は絶っ対、魔王様の方がいい!!」


「魔王なんて魔剣士がいなけりゃ独りぼっちだったんだぞ!?」


「魔剣士なんていなくても魔女が魔王様を支えるもん」


「魔剣士は魔王復活まで寝てたらしいしな、魔女は待ってたらしいが…」


「幾ら友達でも四百年も待てるかよ…」


「魔女は魔王様が好きだっんたんだよ、きっと…」


「でも、どちらも氏んだ…結ばれなかった」



517: 2012/12/23(日) 01:46:34.74 ID:Qe+Y4/UM0

「…………………」


「でも、この二人は必ず結ばれるよ」


「何で、そんな事分かるんだよ?」


「じゃないと悲しいでしょ?」


「そうだな…でも……」


「なんだ?」


「でも、二人は幸せだったはずだ…魔王も魔女を愛していたと伝えられてるからな」


「いいなぁ…私も魔王様みたいな人と結ばれたい」


「……あっ!! 用事あったからオレは帰るわ、『またな』!!」


「ああ、『またな』」


518: 2012/12/23(日) 01:47:47.51 ID:Qe+Y4/UM0

「ねぇ?」


「どうした?」


「魔王様と魔女ごっこしようよ」キラキラ


「……分かった、何ページだったかな…」


「116ページ」


「よく覚えてるな、お前…」


「いいから早く」


「分かった分かった…えぇと」


「本借して、じゃあここから…いくよ?」


519: 2012/12/23(日) 01:49:29.18 ID:Qe+Y4/UM0

「私は…貴男が魔王と名乗る前より…」


「…………」


「貴男を…愛しています」ポロ


「魔女…」グッ


「戦争など無く、そのままの貴男と出会えていれば…良かったのに」グスッ


「ああ…そうだな…」ナデ


「魔王様…生きて…貴男だけは生きて下さい…」


「…………」ツー


「ふふっ、魔王様も…涙を…流すのですね……」


「その様だな…」グイッ


「魔王様…そろ…そろわたし……は」


「…っ!! 魔女…」


「は…い」


「俺も…お前を愛している」ニコリ


「っ……はいっ」ニコ…


520: 2012/12/23(日) 01:53:44.13 ID:Qe+Y4/UM0


「ん、涙が…止まらない」ツー


「……ねぇ?」


「な、なんだ?」グシグシ


「大好き」ニコッ


「ああ、俺もだ…」ニコリ




遠い未来の後日談


521: 2012/12/23(日) 02:04:26.86 ID:Qe+Y4/UM0

魔王と魔女には幸せになって欲しかった!!

番外編とかダイブとか、直後の話しとかも書きたいです。

書き溜めれたら投下します、今日は此処までです。

いやぁ、乙と言って貰えるのは本当に嬉しいです。 

ss挑戦して良かった…

ありがとうございます!!

523: 2012/12/23(日) 11:03:29.30
乙でした

引用元: 勇者「あなたはいつでもそうやって…」