1: 2013/01/14(月) 11:20:23.59 ID:iuQIBcYl0
王様「では勇者殿、魔王討伐の件たのみましたぞ」

勇者(♂)「おっけーおっけー!この俺にドーンと任せておいてください!」

王様「これは旅の資金じゃ」チャリン

勇者「あ、どうもどうも。お金なんてなくても大丈夫なんですけどねー、ははは」

勇者(うわっ、すくなっ)チラッ

王様「期待しておりますぞ。勇者殿」

勇者「大丈夫大丈夫!俺って神に選ばれし者ものですから。魔王など一捻りですよ」

王様「ははは、さすが勇者殿。その強さで毎日の鍛錬も怠らないとか」

勇者「まぁね!天賦の才があって努力もしてるからね」

王様「ここから勇者殿の走ってる姿毎日見ておりましたぞ」

勇者「あ、見られてたんですか、へへっ。毎日20キロは走ってるからね」

王様「ほほぅ!20キロも。さすが勇者殿」

勇者「まぁ、俺にかかれば余裕だから」エヘンッ

3: 2013/01/14(月) 11:21:34.36 ID:iuQIBcYl0
王様「わはは、流石ですな」

王様「ところで、勇者殿。お主ほどではないが旅の仲間も用意させてもらいましたぞ」

勇者「仲間?」

王様「ああ、酒場で待っておる」

勇者「それは色々とどうも。まぁ俺にドーンと任せておいてよ!」

王様「その調子で魔王討伐も頼みましたぞ?」

勇者「おっけーおっけー、ははは」ドンッ

勇者「じゃ、いってきまーす」スタスタ



勇者(また調子に乗っていらないことを言ってしまった……)ズーン

勇者「いやいや!勇者といえば英雄!イメージが大事!)

勇者(俺のイメージが崩れないように期待に期待にこたえないとな)

勇者(酒場に仲間がいる話だけど、最初が肝心だ)

勇者(よし、行くか)ザッ

5: 2013/01/14(月) 11:24:30.96 ID:iuQIBcYl0
―――酒場

勇者「どうも俺があの勇者です。よろしく」

魔法使い(♀)「きゃー!勇者よ!本物よー!きゃー!」キャイキャイ

戦士(♂)「おおおおー!すげー!本物だ!お、俺戦士!よろしく!」ガシッ

僧侶(♀)「……」

勇者(あ、この僧侶かわいい……美人さんだなぁ。よし、いいとこ見せないと)ドキドキ

勇者「ははは、そんなに騒がないでよ、困ったなぁ」

魔法使い「神に選ばれたんだよねー?ねっねっ!?」

勇者「まぁね!」エヘン

戦士「あ、握手!握手してもらってもいいか!?」

勇者「今日は特別だよ」ギュッ

戦士「すげー!勇者と握手しちゃったぜ俺!」

7: 2013/01/14(月) 11:28:02.32 ID:iuQIBcYl0
魔法使い「強いのよね!勇者って!」

戦士「馬鹿!何言ってんだ!当たり前だろ!なっ」

勇者「まぁ、強いかな。最強といってもいいかも」

魔法使い「目からビームが出るのよ!ビームが!」

戦士「まじかよ!すっげーどうやるんだ。こうか?」バシッ

勇者「あいたっ」

魔法使い「違うでしょ、こうよこう」バシバシッ

勇者「ちょっ、頭叩かないで」

戦士「いやいや、じゃあこうやって」グリグリッ

勇者「痛てーよ!出ないから!ビームとか!」

8: 2013/01/14(月) 11:38:12.66 ID:iuQIBcYl0
魔法使い「えーないのー?」

戦士「なんかがっかりだよなぁ」

魔法使い「ねーっ」

勇者「ま、まぁ俺も君達と同じ人間だし?ははは」

戦士「俺、勇者に憧れて努力してたんだぜ!?毎日20キロは走ってな!勇者にはかなわないだろうけど」

勇者「20キロ!?」

戦士「どうかしたか?」

勇者「え゛……あ、うん。えーっと……俺は毎日30キロは走ってたかなぁ」キョロキョロ

戦士「マジかよ!すっげー!」

僧侶「目が泳いでますね……嘘っぽい」ボソッ

勇者「え?」

僧侶「嘘みたいにお強いんですね。すごいです」ニコッ

勇者(聞き間違いかな?でも可愛い……)

9: 2013/01/14(月) 11:41:50.66 ID:iuQIBcYl0
魔法使い「ねっねっ、サイン頂戴サイン!私友達から頼まれてるの」

戦士「あ、俺も俺も!」

勇者「いやぁ、参ったなぁ、ははは」

魔法使い「えっと、弟と、叔父さんと、村人君と……」

戦士「俺は父ちゃんとじいちゃんに!」

勇者「しょうがないなぁ。特別だぞ」サラサラッ

僧侶「男ばっかですね……」ボソッ

勇者「え?」

僧侶「男らしくて素敵です!勇者様♪」ニコッ

勇者「そ、そうかなぁ、へへっ」

10: 2013/01/14(月) 11:47:16.44 ID:iuQIBcYl0
戦士「でさ!勇者ってどのくらい強いんだよ。なぁ!」

魔法使い「あ、それあたしも知りたい!」

勇者「ははは、まぁ魔王なんて片手で捻っちゃうくらい強いかなぁ」

戦士「マジかよ!魔物の王様だぞ!?」

魔法使い「すっごーい!」

キャイキャイ

僧侶「調子こいてますね……」ボソッ

勇者「え?」

僧侶「調子がよろしいんですね♪絶好調ですね」ニコッ

勇者「まぁね!魔王なんてもう素手で十分だよ素手で!」

僧侶「武器なんていらないと?」

勇者「ああ、俺にはこの鉄の拳があればいい!」

僧侶「……」イラッ

12: 2013/01/14(月) 11:54:13.05 ID:iuQIBcYl0
勇者「なーんちゃっ……」

戦士「おおおおおおおおお!勇者かっけええええ!」

魔法使い「素手でいくの!?本当に!?すっごーい!」

勇者「……て……え!?」

勇者「あ、いやっ……今のは冗だ……」

僧侶「冗談ではなく本当に素手でいいなんて、かっこいいです勇者様♪」ニコッ

勇者「あ……う……お、おう……」

魔法使い「じゃあ、この王様からの軍資金はあたしたちの装備に使っちゃっていいのね」

戦士「あ、俺剣が欲しい!剣」

僧侶「勇者様はここでお待ちください。ではみなさん買い物にいきましょう」ニコッ

魔法使い「わーい、おっかいものー」

戦士「防具は何にしようかなぁ」

スタスタ

勇者「……」ポツーン

勇者(どーしよ……丸腰って……)

14: 2013/01/14(月) 12:01:49.20 ID:iuQIBcYl0
―――草原

戦士「うおりゃあああ!結構斬れるなこの剣」ズバッ

魔法使い「火炎魔法!この杖もいい感じよ」ゴゴゥ

魔物「グオオオオオ」ダッ

僧侶「勇者様!そっちにいきましたよ!」

勇者「え?いや、あの……やっぱ武器を……」

魔物「ガアア!」バッ

勇者「え、えっと……うりゃああ!」ゴスッ

魔物「フーッフーッ!フシャー!」

戦士「おおー!やるじゃん!さすが勇者!」

魔物「グルルルル」

勇者「……」ジンジン

勇者(いっ……ってーーーーーー!手がいてえ!)

17: 2013/01/14(月) 12:06:25.78 ID:iuQIBcYl0
戦士「ふぅー。全部片付いたか」

魔法使い「勇者ってすごいねっ。まさか本当に素手で倒しちゃうなんて!」

勇者「……」ブルブル

僧侶「勇者様?どうかなさいましたか?」

勇者(ううっ……いてぇ……今声を出したら絶対うめき声か叫び声しかでねぇ……)

戦士「勇者?」

勇者「……」ビシガシグッグッ

戦士「ん?ジェスチャー?何々?あそこの岩影で?なんだ、トイレ我慢してたのか、いってこいよ」

勇者「……」ダッ

戦士「しかしほんとスゲーなぁ、勇者ってのは。魔物を殴り倒しちまうなんてな」

魔法使い「サイン貰っておいてよかったねー」

戦士「そういえば勇者って紙持ってったか?」

僧侶「あ、私が持っていきますよ」

戦士「わりいな」

僧侶「いえいえ」ニコッ

18: 2013/01/14(月) 12:11:23.46 ID:iuQIBcYl0
―――岩影

勇者「うおおおおおおおおおおおお!いてえええええええええええ」ジタバタ

勇者「手が……手がああああああああああああ」バタバタ

勇者「ふーっふーっ!これはいかん、なんとか……何とか武器を使える方向にもっていかないと俺の拳が氏んでしまう……」

勇者「何とか勇者の威厳を失わずに武器を手に入れることはできないか……」

勇者「うーん……」

僧侶「これは……」コソコソ

勇者「どうしよう……」

僧侶「どうしてやりましょう」ニヤリッ

21: 2013/01/14(月) 12:22:10.85 ID:iuQIBcYl0
魔法使い「あ、勇者が戻ってきたわ」

戦士「おせーよ。がはははは。おっきいほうか?」

勇者「違うよ!手が……」

勇者「手がどうかしたのか?」

勇者「……なんでもない」

僧侶「勇者様!先ほどの戦い素敵でした♪」ニコッ

勇者「あ……///」

僧侶「鉄の拳だなんて尊敬しちゃいます♪」

戦士「だよなー。俺の剣より硬いんじゃねーか?」

勇者「あはは。いやぁ……」テレテレ

25: 2013/01/14(月) 12:26:38.34 ID:iuQIBcYl0
僧侶「でも余り無理はしないでくださいね」

勇者「僧侶……」

僧侶「早いところ次の町に着いたほうがよさそうですね」

戦士「ああ、確かに戦い続きだったからな」

魔法使い「そうね」

僧侶「ではみなさんも疲れているようですしこちらの道で行きましょう」

戦士「おっ、そっちなら確かに近道だな」

魔法使い「夜までには着けるかも」

26: 2013/01/14(月) 12:28:49.28 ID:iuQIBcYl0
―――沼地

チャプチャプ

勇者「こっち沼地なんだけど……」

僧侶「こっちが近道なんですよ」ニコッ

魔法使い「な、なんか嫌な気配がするんだけど……」

戦士「うおっ!」サッ

リザードマン「フシャー!」

戦士「これは……リザードマン!?」

魔法使い「もしかして……ここってリザードマンの巣!?」

27: 2013/01/14(月) 12:29:29.87 ID:iuQIBcYl0
リザードマン「ぐるるるる」

戦士「って言ってる場合じゃねー!」ズバッ

リザードマン「しゃー!」ギィーン

戦士「おおおっ!」ジンジン

戦士「硬ってー!」

僧侶「リーザードマンの鱗といえば鉄の強度を誇ると言われてますからね」

戦士「マジかよ。勇者!お前も一緒に頼む!」ザッ

勇者「えっ」

32: 2013/01/14(月) 12:35:33.77 ID:iuQIBcYl0
リザードマン「ぐあうっ!」バッ

戦士「おりゃああ!」バッ

勇者「す、素手で!?こいつらを!?」

僧侶「勇者様、いまこそ鉄の拳を見せるときですよ!」

勇者「えっ……」

勇者「そ、そうだね!任せとけ!」

勇者「だあ!」ガチーン

勇者(~~~~~~~~~~~!)

戦士「どうした勇者!?」

勇者「んぐぐぐぐ」

勇者(いてえええええええええええ!硬すぎる)

僧侶「まさか痛いんですか?」ニコッ

勇者「ぐぐっ……そんなまさか……だろ?」ブルブル

34: 2013/01/14(月) 12:41:38.22 ID:iuQIBcYl0
戦士「どりゃああああああ!」ドスッ

戦士「なんとか……全力なら斬れるな。勇者!お前もはやく!」

勇者(どうする……ここで弱みを見せては俺のイメージが崩れてしまう……)

魔法使い「勇者!」

勇者(くそ!やるしかねえ!)

勇者「おおおおおおおおおおおおお!」ゴゴゴゴゴ

勇者(俺の中の全魔力を拳に集中させるんだ)

勇者「おおおおおおおおおおおおあああああああ!」ゴゴゴゴゴ

勇者「くらえええええええええええ!」

ゴゴゴーン!

リザードマン「ぷぎゃああ」グシャ

戦士「す、すげえ……」

魔法使い「一撃で……」

僧侶「……」ポカーン

41: 2013/01/14(月) 12:46:45.15 ID:iuQIBcYl0
戦士「ぜぃ……ぜぃ……」

魔法使い「終わったわね」

僧侶「みなさんご無事で何よりです」

勇者「~~~~~~~~~~~~!」ピョンピョン

戦士「まぁ、勇者がすごかったからなぁ」

魔法使い「ほんっと!家族に見せてあげたかったわ」

勇者「~~~~~~~~~~~~!」ピョンピョン

戦士「あれが鉄の拳ってやつかぁ、俺も使ってみたいぜ!」

魔法使い「あはは。あんたじゃ無理無理」

戦士「んなこたぁねぇよ!なぁ、勇者!」

勇者「~~~~~~~~~~~~!」ピョンピョン

戦士「おい、勇者?」

魔法使い「さっきから飛び回ってるけど何やってるのかしら?」

僧侶「ぷっ……」クスクス

勇者(痛てええええええ!手が……手があああああああああああ)ピョンピョン

47: 2013/01/14(月) 12:53:46.28 ID:iuQIBcYl0
戦士「おーい!」

勇者(や、やばっ、誤魔化さないと……)

勇者(だが、喋ったら悲鳴以外でないぞ、これは……うぐぐぐぐぐ)

勇者「……」クイクイッ

戦士「なんだ?また.ジェスチャーか?」

勇者「……」クネクネ

戦士「どっか怪我でもして喋れないのか?」

魔法使い「今度はあたしに任せて!ジェスチャーゲーム得意なの」

勇者「……」クネクネヘロヘロ

魔法使い「うんうん、なるほど」

魔法使い「勇者はこう言ってるわ『戦士の剣さばきには惚れ惚れするぜ。どうだ?今夜ベッドでお前の下の剣を俺に刺してくれないか?』」

戦士「なっ……勇者おまえ……」

53: 2013/01/14(月) 12:58:14.65 ID:iuQIBcYl0
戦士「俺……お前のこと尊敬はしているがそういう趣味はないんだ……。ごめんな」ポンッ

勇者「!?」ブンブン

戦士「ん?違うのか?」

勇者「……」コクコク

戦士「おい、魔法使い」

魔法使い「あれ?違っちゃった?あは、あはははは」

戦士「やっぱり俺に任せろ。ふむふむなるほど」

戦士「なに?あのジャンプは勝利の舞だと?」

勇者「……」クネクネ

戦士「それからちょっとトイレ行きたいのでそこの岩陰いってくるだと?」

勇者「……」コクコク

戦士「なんだ、また小便我慢してたのかよ。早く言えよ」

54: 2013/01/14(月) 12:58:53.36 ID:iuQIBcYl0
勇者「……」ダッ

僧侶「あ……」

戦士「ん?どうかしたのか?」

僧侶「えっと、その、ちょっと勇者様が心配なので私もいってきます」

戦士「また紙か?」

僧侶「違います!その……勇者様が本当に怪我してたらいけないので」

戦士「はぁ?んなわけねーじゃん、なっ?」

魔法使い「そうよ、あんなに強いのに」

僧侶「ここで待っててください」タッ

58: 2013/01/14(月) 13:06:00.03 ID:iuQIBcYl0
―――岩陰

勇者「うぎゃあああああああああああああ」ゴロゴロ

勇者「いてぇ!手がああああああ手があああああああああああ」

勇者「これは絶対つぶれてる!つぶれているううううううう」ゴロゴロ

勇者「これは氏ぬ!いや、氏なないけど氏ぬほどいてええええええええ」ゴロンゴロン

僧侶「……プッ」クスクス

勇者「はっ!」クルッ

僧侶「勇者様、やっぱり無理されてたんですね」クスクス

勇者「いや、その、これはちがくて……」オロオロ

僧侶「手、見せてください」スッ

勇者「手?なんのことかなー?あはははは、全然痛くないよ?」サッ

僧侶「へー、そうですか。へー」ツンッ

勇者「んぎゃああああああ!」ガクガク

61: 2013/01/14(月) 13:12:19.78 ID:iuQIBcYl0
僧侶「触っただけで叫んでしまうのにですか?」

勇者「あうっ」

僧侶「もう見栄を張らずに正直に言ったらどうですか?」

勇者「な、なんて?」

僧侶「僕は見栄を張って強いなんていってましたが、実はプライドばっか高い弱虫です。武器がないと何もできないのでどうか武器をこのゴミ虫めに恵んでください、とか」ニコッ

勇者「なんかかわいい顔ですごいこと言ってるんですけど!?」

僧侶「今回のことで懲りたでしょう?勇者様が見栄を張っているせいで仲間まで危険に巻き込まれるんですよ?」

勇者「ま、まさかそれを分からせるためにリザードマンの巣へ……」

僧侶「わかっていただけましたか?」

勇者「……」

67: 2013/01/14(月) 13:17:41.86 ID:iuQIBcYl0
僧侶「勇者様?」

勇者「おねがい!黙ってて!」スリスリ

僧侶「え?なんでですか?」

勇者「いや……だって俺勇者だし?かっこわるいとこなんて見せたくないじゃん?」

僧侶「……」イラッ

勇者「だから、ね?黙っててくれないかな?お願い!」

僧侶「お願いですか?」イライラッ

勇者「そう!お願い!」

僧侶「人にお願いするには頭の位置が私より高いですね?」

勇者「へ?」

70: 2013/01/14(月) 13:19:45.61 ID:iuQIBcYl0
僧侶「上から見下ろしてお願いするんですか?」

勇者「あ、ごめん。お願いします」ペコッ

僧侶「頭の位置が高いですね」

勇者「ええ?」

僧侶「もっと頭の位置が低いお願いのしかたがあるでしょう?」

勇者「それって土下座……」

僧侶「もういいです。みんなに本当のことを……」

勇者「すんませんでしたー!」ガバッ

僧侶「……で?」

勇者「調子にのってました!みんなには黙っててください!」

僧侶「どうしましょうかねー?」グリグリ

勇者「あ、あのぅ、僧侶さん?」

僧侶「なんですか?」グリグリ

勇者「な、なんで頭踏むの?」

75: 2013/01/14(月) 13:26:11.46 ID:iuQIBcYl0
僧侶「なにか文句でも?」グリグリ

勇者「いや、別に……」

勇者(僧侶の足やわらけぇ……)

勇者「でもさ、ちゃんと靴脱いで素足で踏むところが優しいよな、僧侶って」

僧侶「な、何言ってるんですか!///」グリッ

勇者「あ、照れた?」

僧侶「もう行きますよ」タッ

勇者「あ、もうちょっと踏んでもいいのに……」

勇者「あーあ、行っちゃった……」

勇者「しかし、まずいな。怪我のことばれちゃったし」

勇者「どうするか……この手じゃもう戦うのは厳しい……ん?」

勇者「あれ?治ってる?」

勇者「まさか……僧侶が……」

87: 2013/01/14(月) 13:31:37.42 ID:iuQIBcYl0
戦士「なぁ、勇者って本当に怪我してたんかなぁ?」

魔法使い「どうかしら?」

戦士「さっきはあんなこと言ったけどよ。勇者だって人間だぜ?もしかしてってこともあるだろ」

魔法使い「そうねぇ。確かに無茶しすぎてる気もするけど……」

戦士「何もなければいいけどよ。やっぱ素手ってのはきつくねーか?」

魔法使い「ちょっと聞いてみる?」

戦士「おっ、帰ってきたぜ」

勇者「おーい、ごめんごめん。お待たせ」

戦士「勇者、怪我は大丈夫だったのか?」

勇者「け、怪我!?なんのことかなぁ?」キョロキョロ

戦士「僧侶が心配してたぜ?なぁ?」

僧侶「……」

89: 2013/01/14(月) 13:36:21.32 ID:iuQIBcYl0
勇者「何言ってるんだよ。この鉄の拳を持つ俺が怪我なんてするわけないじゃないか。ははははは」

戦士「本当か?ちょっと手見せてみろ」

勇者「ほれっ、このとおり」ピンピン

戦士「おお!あれだけ殴っておいて擦り傷さえねーとか!ありえねー!」

勇者「あったりまえだよ!俺を誰だと思ってるんだ?神に選ばれた勇者だよ?はっはっは。まぁ、頼りにしてくれたまえ」ポンッ

戦士「すっげー!」

魔法使い「さすが勇者ね!」

僧侶「……」イラッ

94: 2013/01/14(月) 13:41:45.36 ID:iuQIBcYl0
―――町

魔法使い「やっと町ね」

戦士「おー、結構早く着いたな」

僧侶「だから近道だといったでしょう?」ニコッ

戦士「腹減ったぜー。なぁ、勇者」

勇者「あ、うん。どこで食べようか」

町人「勇者?」

「ねぇ、今あの人勇者って言ったわよね?」

「マジで!?おーい!勇者様がきたぞー!」

「どこどこ!?」

「色紙もってこようぜ!」

97: 2013/01/14(月) 13:44:33.26 ID:iuQIBcYl0
戦士「な、なんだ?」

魔法使い「馬鹿!あんたが勇者なんて言うから」

戦士「わりぃ」

僧侶「はぁ……まったく」

勇者「いやぁ、ばれちゃったか。照れるなぁ」テレテレ

「勇者様!魔法見せて魔法!」

「いや、ここは剣技を!勇者様」

「なんかやれー」

勇者「ははは、どうしようかなぁ」

僧侶「ふふっ、では、瓦割りなんかどうですか?」

「おおー!」

「やれやれー」

「何枚やるんだー!」

僧侶「みなさん、勇者様が瓦割をやりますよー」

勇者「ちょっ、僧侶」

100: 2013/01/14(月) 13:49:43.76 ID:iuQIBcYl0
「俺のところの瓦使ってくれ!」ガシャ

「店長、勇者様に割ってもらった勇者印の瓦って言って売れますよ!」

勇者「しかたないなぁ……」

勇者「じゃあとりあえず10枚くらい」

勇者「はぁああ……」

「どきどき」

「わくてか」

僧侶(硬化魔法!)ポゥ

勇者「とりゃあ!」ガキン

勇者「ぐっ!」グキッ

「なんだなんだ?」

「変な音がしたぞ?」

「1枚も割れてないぞー!」

106: 2013/01/14(月) 13:55:22.93 ID:iuQIBcYl0
勇者「は、はは!練習!練習だよ」

「はやく割れー!」

「勇者!」

「勇者!」

「勇者!」

僧侶「さぁ、勇者様コールが入ってますよ」ニコッ

勇者「あの……僧侶もしかしてこれって……」

僧侶「勇者様なら10枚くらい軽いでしょう?」

戦士「おい、勇者。疲れてんだから無理すんなよ」

魔法使い「そうよ。休んで回復してからでも……」

勇者「大丈夫!任せて!」

勇者(これはちょっとやそっとじゃ割れないな……)ゴンゴン

勇者(リザードマンの鱗より硬い……)

110: 2013/01/14(月) 13:58:57.32 ID:iuQIBcYl0
勇者(だが……見ていろ)

勇者「うおおおおおおおおおおおお!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

勇者(この体のすべての力を使い切ってやる!)

勇者(たとえこの後立てなくなったとしても……)

勇者「はあああああああああああああ」スィー

戦士「な、なんだあの手の動きは……」

勇者「おおおおおおおおお!」スィー

魔法使い「あの手の描いている軌跡はまさか……ペガサス!?」

勇者(ちげーよ!)

勇者「だっしゃああああああああ!」

勇者(ぶちぬけえええええええ!)

ドゴオオオオオオオン

114: 2013/01/14(月) 14:03:50.88 ID:iuQIBcYl0
「お……おおおお」

「な、なんだ?」

ビキビキビキ

「じ、地面が……」

バリバリバリバリ

「割れた!?」

「すげー!地面ごと割りやがったぞ!」

「さすが勇者様!」

ワーワーパチパチ

戦士「マジかよ……」

魔法使い「さすがだわー」

僧侶「……」

勇者(……手が地面にささって抜けない)グッグッ

121: 2013/01/14(月) 14:08:41.50 ID:iuQIBcYl0
勇者「そ、僧侶……手が……」

僧侶「ふんっ」ツーン

勇者(どうする……どうやってごまかす。手が抜けないなんて分かったらかっこ悪いイメージが……)

僧侶「はぁ……しかたないですね」

僧侶「さぁ、みなさん。おしまいですよー。もう何もありませんよー」パチパチ

「おおお!」

「意外と面白かったぞー」

「かえろっか」

「日が暮れるしな」

ゾロゾロ

勇者「ふぅ……」

124: 2013/01/14(月) 14:12:27.15 ID:iuQIBcYl0
戦士「じゃ、俺らも宿で飯でも食うか」

魔法使い「ご飯まだだったわねー。お腹すいたわぁ」

勇者「いや、あの、その……」グイグイッ

勇者(抜けない)

僧侶「勇者様はここで、夕日にお祈りをしていくそうです。ねっ?」

勇者「そ、そう!今日は神に御祈りを捧げる日なんだ。アーメン!」

戦士「そんなんあるのか?」

魔法使い「あたしの地方にはそんな風習なかったけど」

勇者「俺の地方にはあるんだよ。先に行って食べててくれ」

戦士「じゃ、先いってるぞ」

魔法使い「あら?僧侶は?」

僧侶「私も勇者様と一緒に御祈りをしていきます」ニコッ

魔法使い「あら、そう。じゃ、お先に」

スタスタ

127: 2013/01/14(月) 14:16:58.98 ID:iuQIBcYl0
勇者「ふぅー。助かったよ、僧侶」

勇者「っていうか!瓦固くしたの僧侶だろう!?」

僧侶「鉄の拳を持つ勇者様ならあのくらいがちょうどいいと思ったんです」ニコッ

勇者「かわいいけど!笑顔が可愛いけど、やめてくれない?」

僧侶「だったら言えばよかったじゃないですか。この瓦は私に硬化されていて割れませんって」

勇者「そ、そんなことを言ったら俺のイメージが……」ゴニョゴニョ

僧侶「まだそんなこと言ってるんですか」ムギュ

勇者「くっ、また頭踏まれた……手が抜けないのに」

勇者(やわらかい……いい……)

僧侶「そんなプライドばかり大切にしてたら本当に大切なものが守れなくなると思わないんですか」

勇者「くっ……それでも……」

僧侶「それでも?」グリグリ

勇者「それでも俺はかっこよくありたい!」クワッ

僧侶「そうですか。じゃあ、私もかっこよく立ち去ります」スッ

129: 2013/01/14(月) 14:21:06.04 ID:iuQIBcYl0
勇者「え、ちょっと僧侶」

スタスタ

勇者「ま、待って。手が地面から抜けないんだけど!」

僧侶「そうですか。ではそこで夜を明かして町の人に助けてもらうんですね」

勇者「待ってくれ!僧侶!」

僧侶「待ってくれ?僧侶?それが人に物を頼む言葉ですか?」

勇者「待ってください、僧侶さん。お願いします!助けてください」

僧侶「そうですねー。どうしましょうかねー」グリグリ

勇者「くぅ……」

133: 2013/01/14(月) 14:24:48.96 ID:iuQIBcYl0
―――翌朝

戦士「おっ、僧侶おはよう」モグモグ

魔法使い「先に朝ごはんいただいてるわよ」モグモグ

僧侶「あら?勇者様は?」

戦士「何か朝早くから買う物があるとか言って出てったぜ」

魔法使い「そうそう。朝ごはんに林檎だけ持って」

僧侶「そうですか。勇者様やっと見栄を捨てて武器を……」

戦士「はぁ?」

魔法使い「そうえいば、あんたと勇者宿に来るのずいぶん遅かったわね」

魔法使い「泥だらけだったし何かあったの?」

僧侶「いえ、もうそんなことになることはないでしょう」ニコニコ

魔法使い「?」

136: 2013/01/14(月) 14:29:06.44 ID:iuQIBcYl0
―――武器屋

武器屋「おはよう!兄ちゃん朝はやいねー!」

勇者「しっ!大声出さないで」

武器屋「?」

勇者「何でもない。武器を見せてくれ」

武器屋「あいよ!うちの店はどれでも一級品だよ。みてってくんな」

勇者「うーん」ジロジロ

勇者(どれもこれも既製品で一級とは言いがたいな)

勇者(これなんて刃こぼれしてるし、値段も安くない……)

勇者(おっ、これは……)スッ

137: 2013/01/14(月) 14:29:42.51 ID:iuQIBcYl0
武器屋「あー、兄ちゃん。それはやめておいたほうがいいよ」

武器屋「そのナイフは刃もこんなに薄くってどうせすぐ折れちまうよ」

武器屋「それより兄ちゃんならこれ!この大剣なんてどうだい!大型のモンスターでもこれなら大丈夫」

勇者(確かに大剣なら敵も楽勝だが、それじゃあ武器を使ってるのがバレちゃうじゃないか)

勇者(それにこのナイフ……このおっさん目利きがなってないな)

勇者(この薄さでこの硬さ……魔法金属のミスリルだな。これなら……)

勇者「おっちゃん!このナイフをくれ」

武器屋「へ?そんなんで大丈夫かい?」

勇者「お、俺が使うんじゃないよ。プレゼント……そう!プレゼントだよ」

武器屋「へぇ、確かに綺麗なナイフだし、女の子にはいいかもしれないけどねー」

勇者「そうそう、ちょっとひ弱な僧侶の女の子が仲間にいるんでね。護身用にさ」

143: 2013/01/14(月) 14:32:42.94 ID:iuQIBcYl0
武器屋「それはそうと兄ちゃんは武器がないみたいじゃないか。どうだい?一振り」

勇者「いや、俺にはこの鉄の拳があればいい」ニヤッ

武器屋「あれ?ひょっとしてあんた昨日の勇者じゃないかい?」

武器屋「いやぁ、見てたよ!あの地面割り。すごかったねー」

武器屋「町長があの割れ目を町の名物にしようなんて言ってたよ。はははは」

武器屋「あ、そうだ。勇者さん、なんかやって見せてよ」

勇者「なんかやれって……んーっ、そうだ!やって見せたらこのナイフまけてくれよ」

武器屋「ナイフ?あー、いいよいいいよ。さあ見せとくれ」

勇者(ナイフをマントに下に隠して……っと)

トン

144: 2013/01/14(月) 14:34:05.04 ID:iuQIBcYl0
武器屋「それは?」

勇者「林檎。俺の朝飯」

勇者「これを手刀で斬ります!」

武器屋「手刀って手で?ほんとうかい?」

勇者「よーく見てなよ」

勇者(このおっちゃんで試してやる)

勇者「はぁあああああ」スゥ

勇者(両手をフリーにして……すばやくナイフを掴み……斬ってからまた戻す……)

勇者(これを超スピードで……)

勇者「はぁ!」スパパッ

パカーン

武器屋「おおー!手で林檎が斬れた!」

勇者(よし!バレない、いける!)

149: 2013/01/14(月) 14:41:07.50 ID:iuQIBcYl0
―――荒野

戦士「勇者、買い物ってなんだったんだ?」

勇者「買い物?ああ、なんでもないよ」

戦士「なんだ、僧侶が武器でも買ってるんじゃないかっていってたんだが」

勇者「武器?俺が?ははははは。何をいってるんだい?」

勇者「俺には武器なんて必要ないよ。まぁ、見てなさい。はっはっは」

僧侶「……」

魔物「ぐるるるる」

勇者「おっ、さっそく出たな」

勇者(よしっ、さっそく試してみよう)サッ

勇者「ん?」スカスカッ

勇者「あれ?」サッサッ

勇者「あれ!?ない!?落とした!?まさか……」

151: 2013/01/14(月) 14:43:01.25 ID:iuQIBcYl0
僧侶「たぁ!」スパッ

モンスター「ギャオオオオン」バタッ

戦士「おっ、なんだ、僧侶。そのナイフ。すっげぇ斬れるじゃねーか」

魔法使い「綺麗ねぇ。向こうが透けて見えるみたい」

僧侶「えへへ///勇者様に買っていただいたんです」ペロッ

戦士「なんだ勇者。買い物ってこれかよ」

僧侶「私腕力がないので、護身用にって、ねっ。勇者様」ニコッ

勇者「え?え?」

魔法使い「ずるいー!あたしもか弱い女の子なのにぃ」

勇者「え!?でも、それ俺の……」

僧侶「俺の……なんですか?」ニコッ

勇者「あ……う……俺の……プレゼントです」ガックリ

161: 2013/01/14(月) 14:45:57.36 ID:iuQIBcYl0
勇者(手が……手が痛い……)

勇者「あの……僧侶。回復を……」

僧侶「え?さっきみなさんにしましたが?」ニコッ

勇者「いや……あの……手だけされてない……」

僧侶「え?鉄の拳に怪我でもしたんですか?」ニコニコ

勇者(怒ってる……ちゃんと武器買わなかったからか……)

勇者(これはまずい……)

勇者(なんとか……なんとかしないと……)

勇者(とりあえず手の怪我はグローブで隠してるから大丈夫だけど……)

勇者(ん?グローブ?そうか、小手のような武器なら……)

勇者(ちょうどこの先の砂漠にレアな武器があるって話を聞いたな……)

勇者「なぁ、みんな。ちょっと行きたいところがあるんだけど」

164: 2013/01/14(月) 14:47:06.31 ID:iuQIBcYl0
―――ピラミッド

ファラオ「いいか?せーの!」

ミイラ「うばー」ボコンッ

ファラオ「違う!やり直し!もう一度埋まれ」

ミイラ「えー、またっすかー?」

ファラオ「『うばー』じゃない『ウボァ』だ」

ミイラ「これ何か意味あるんすか?」

ファラオ「黙れ!様式美という言葉を知らんのか!はい、もう一回。棺の中の黄金の爪が取られて台座を降りました。さあ!」

ミイラ「うぼぁ」

ファラオ「もっと真剣に!」

ミイラ「ウボァ!」

167: 2013/01/14(月) 14:47:46.08 ID:iuQIBcYl0
ファラオ「んー、まぁいいだろう。私はそのとき『宝を奪うものに災いあれー』と言うから一斉に襲い掛かるんだぞ」

ミイラ「最初から襲えばいいのに……」

ファラオ「何か言ったか?」

ミイラ「別に……」

ドドドドドドドドッ

ファラオ「しっ!誰か来たみたいだ。みんな埋まれ埋まれ」

ミイラ「はぁ……」

172: 2013/01/14(月) 14:55:04.88 ID:iuQIBcYl0
勇者「うおおおおおおおおおおおおお!」ドドドドド

勇者「これか!超レア武器黄金の爪は!」バンッ

勇者「すげぇ……文献でしか読んだ事なかったけどこの輝き」

勇者「持ち帰ったものは誰もいないというレア中のレア……」

戦士「おーい!ちょっと待てよ。勇者」

魔法使い「はぁはぁ……早すぎ……」

僧侶「っというかはしゃぎすぎです……はぁはぁ」

勇者「見てくれよ!この黄金のつめを。これをつければ俺は……」

ミイラ(親分、もういいっすか?)

ファラオ(馬鹿!台座を降りてからだ。動くなよ。くくくっ、びっくりさせてやるからな)

ミイラ(楽しんでるっすねぇ)

173: 2013/01/14(月) 14:58:00.27 ID:iuQIBcYl0
戦士「おお!その爪なら……」

僧侶「私はその爪に勇者様の拳ほどの価値があるとは思いませんね」

勇者「え」

僧侶「戦士さんはその爪のほうが勇者様の拳より強いと思うんですか?」

戦士「え?あ、そうだなー。んー」

勇者(言うな!言わないでくれ戦士!)

戦士「勇者の拳にはやっぱかてねーだろうなー」

勇者「げ」

僧侶「でしょう?」

魔法使い「そうかしら?」

勇者「お」

勇者(いけ!魔法使い!論破してくれ!)

魔法使い「この爪はかつてこの地の王が地域を統べるのに使われたとか言われてるそうよ。さすがに勇者でも素手じゃ……」

勇者「そうだよねぇ。まぁ、そこまで言うなら仕方ないから……」

175: 2013/01/14(月) 14:59:27.46 ID:iuQIBcYl0
僧侶「では試してみてはどうですか?」

戦士「そりゃそうだ!がはははは。やっぱ単純なのが一番だぜ」

魔法使い「なるほど、それはそうね」

戦士「おしっ!勇者!ちょっとこの爪殴ってみろ」

勇者「……」

僧侶「あらあら、勇者様?もしかして怖いんですか?」

勇者「んなわけないだろう!」ザッ

勇者(えー……これって伝説の武器だろ……俺の拳が負ければ俺が酷いことになるが……この美しい武器を壊すのも嫌だ……うぐぐ……)ブルブル

戦士「どうした勇者?やめてもいいんだぜ?」

魔法使い「やっぱ勇者でも無理なものは無理よねぇ」

勇者「……」カチーン

176: 2013/01/14(月) 15:00:31.64 ID:iuQIBcYl0
勇者「こんなチンケ武器俺がぶっ壊してやらあ!」ゴゴゴゴゴゴ

ファラオ(ぶっ壊す!?なんだと!?私の宝を何だと思っておるのだ!)ボコンッ

ミイラ(ちょっ、親分。まだっすよ!)グイッ

ファラオ(こらっ、何をする)

ミイラ「まだっすから」グイグイッ

ファラオ(HA☆NA☆SE!)ブンブン

183: 2013/01/14(月) 15:07:51.13 ID:iuQIBcYl0
ミイラ(まだ台座降りてないっすよ!まだっす!)

ファラオ(そんなことを言ってる場合ではな……)

勇者「うおりゃあああああああああああ!」ガキーン

戦士「お、おおおおお!黄金の爪が……」

魔法使い「折れた!」

勇者「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!伝説の武器がああああああ!」

ファラオ「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!わしの宝があああああああ!」ボコン

ファラオ「許さん!貴様ら絶対に許さんぞおおお!末代まで呪ってくれるうううううう!」

勇者「わかる!お前の気持ち痛いほど分かるぞ!」ダクダク

僧侶(手から血が……気づかないほどショックだったんですね)

戦士「魔物!?」

魔法使い「やっぱり出たわね!行くわよ!」

ファラオ「許さんぞおおおおおおおおおおおお!」ガバァ

ミイラ「『ウボァ』ですよ!親分!『ウボァ!』」

186: 2013/01/14(月) 15:12:32.66 ID:iuQIBcYl0
―――宿屋

勇者「ほんっともう勘弁してください!」ガバッ

僧侶「土下座が板についてきましたね」グリグリッ

勇者(くぅ……また足蹴に……)

勇者「もう魔王城も目前なんだから、お願い!」

僧侶「だから自分でみんなにそう言えばいいじゃないですか」グリグリッ

勇者「それは俺のプライドが……ごにょごにょ」

僧侶「はぁ……まだ言いますか」グリグリッ

勇者「僧侶さんに言ってもらえば解決するんで。『勇者様みたいな素敵な方には剣がなんです』って言ってもらえば、『しかたないなぁ』って感じで……」

僧侶「……」イラッ

193: 2013/01/14(月) 15:14:16.84 ID:iuQIBcYl0
僧侶「僧侶『さん』?それが人に物を頼む態度ですか?」フミッ

勇者「ぐっ……顔に足が……」

勇者「そ、僧侶様……」

勇者(な、なんだこの気持ちは……)ドキドキ

僧侶(勇者様の顔に足が……なにこれ……それに僧侶様って……)ドキドキ

勇者「そ、僧侶様……この体勢だとパンツが丸見……」

僧侶「な、なに見てるんですか!///」グシッ

勇者(ふおおおお!素足の感触が!)

僧侶「ゆ、勇者様……」ドキドキ

勇者「そ、僧侶……」ドキドキ

僧侶「わ、私の足を舐め……」

勇者「は……」ペロッ……

198: 2013/01/14(月) 15:17:09.43 ID:iuQIBcYl0
ドンドンドン

戦士「おーい!勇者いるかー?開けるぞー?」

勇者「どわああああああああああああああああああ!」ガバァ

僧侶「きゃああああああああああああああああああ!」サッ

勇者「」

僧侶「」

戦士「なんだ、いるのかよ。お、僧侶も一緒か。なんだお前ら固まっちまって」

勇者「ナンデモナイヨ」

僧侶「ソウデスヨ」

202: 2013/01/14(月) 15:20:18.37 ID:iuQIBcYl0
勇者(なんかやばかった……あのままだったら何か大切なものを失うところだった……)ドキドキ

僧侶(私ったらなんてはしたない事を……でもあの気持ちは……)ドキドキ

戦士「喋り方変だぞ。それになんだよ、お前、そのポーズは」

勇者「え、これはビックリして……じゃなくて勝利のダンス……そう!勝利のダンスの練習をしてたんだよ!」アセアセ

僧侶「そうです!いよいよ魔王城ですからね」ダラダラ

戦士「なんだ、水くせえなぁ。俺にも教えてくれよ」

勇者「あ、ああ」

207: 2013/01/14(月) 15:24:20.49 ID:iuQIBcYl0
―――魔王城

勇者「はぁ……はぁ……やっと魔王の間か……」ボタボタ

戦士「やっぱここの魔物はつええな……城を守ってるだけあるぜ」

魔法使い「もう魔法力もからっぽよ……でもいまさら引き返すわけにもいかないわね」

僧侶「はぁ……はぁ……思ったより魔物は少なかったですけどね」

戦士「勇者、怪我大丈夫かよ」

勇者「怪我?ははは、何をいってるんだよ。これは赤い汗だよ」ダラダラ

僧侶「またこの人は……。でももう私の法力も尽きて……」フラフラ

勇者「いくぞ!」

ギギィ

魔王「来たか……」ガタッ

213: 2013/01/14(月) 15:28:11.67 ID:iuQIBcYl0
戦士「あれが……」

魔法使い「魔王……」

僧侶「なんて魔力……見てるだけで震えが……」フルフル

勇者「安心しろ!」

僧侶「勇者様?」

勇者「魔王!お前はこの勇者が倒す!」ダラダラ

僧侶「ダメかも……」

魔王「貴様が勇者か。ここまで来たというここは城の魔物たちは全滅か……数千もの数を倒してくるとはさすがと言っておこう」

勇者「いや、そんなにはいなかったが……」

魔王「くくくっ、謙虚もほどほどにしておかないと嫌味というものだぞ。っといことは我が側近も貴様らの手にかかったということか……そうか……」

217: 2013/01/14(月) 15:31:19.98 ID:iuQIBcYl0
勇者「いや、知らないが……」

魔王「残るは私一人か……だが、この魔王!亡き同胞たちに代わり貴様らを八つ裂きにしてくれる!」ゴゴゴゴゴゴッ

勇者「くっ、この迫力……汗が目に入るぜ」ボタボタッ

魔王「汗?どう見ても血だろう、貴様怪我をしているのか?よく見ると後ろのやつらもか?」

勇者「そ、それがどうした!さっさと来い!」ダラダラ

魔王「貴様らのような半氏のやつらを相手をしたとあっては我が一族の恥だ!」

魔王「よし!回復してやろう!」パァァ

勇者「なっ……怪我が消えた」

戦士「おっ、力がわいてきた」

魔法使い「魔力まで回復したわ」

229: 2013/01/14(月) 15:35:22.35 ID:iuQIBcYl0
魔王「さぁ、全力でかかって……んん?」ギロッ

勇者「な、なんだよ……」

魔王「貴様!勇者、まさか丸腰か!?」

勇者「だ、だからなんだよ……」

魔王「貴様私を愚弄しておるのか!素手でこの魔王に歯向かおうなどと!」

勇者「だって……」チラッ

僧侶「……」

魔王「素手の勇者を倒したなどとあっては歴代魔王の名折れだ!」

勇者「じゃあどうしろと」

魔王「ふんっ、好きな武器をえらぶがよい」バッ

ズラァァアア

237: 2013/01/14(月) 15:39:04.58 ID:iuQIBcYl0
勇者「なっ!?」

勇者(あ、あれはかつての伝説の勇者とともに失われたと言われる光の剣か!?)

勇者(待て!その隣にあるの……あれドラゴンスレイヤーじゃないのか!?マジ!?)

勇者(いや、待て待て!向こうにあるあれってオリハルコンじゃね!?めっちゃ欲しい!)ダラダラッ

僧侶「勇者様、よだれたれてますよ」

勇者「おっと」グイッ

勇者「ほ、本当にどれでもいいの?うそじゃないよね?」チラッ

魔王「さっさと選べ!」

勇者「じゃあ……えっと……」

戦士「てめぇ!魔王!勇者を愚弄してんのはてめぇのほうじゃねーか!」

勇者「ちょっ!」

魔法使い「そうよ!あんたなんか勇者の拳の餌食になるがいいわ」

勇者「魔法使いまで!」

242: 2013/01/14(月) 15:43:54.83 ID:iuQIBcYl0
魔王「なんだと?」

戦士「さぁ、勇者!こんなやつやっちまおうぜ!」ジャキン

魔法使い「いきましょ!」ゴゴゴッ

勇者「そ、ソウダヨ。オマエナンカスデデジュウブンダヨ」ダラダラ

僧侶「泣きながら言わなくても……」

魔王「ぬうう、あくまでも私を愚弄するか!ならばこちらも武器などいらんわ!」ガランッ

魔王「さぁ!これで素手同士だ!なんのハンデもない!かかってくるがいい!」

僧侶(勇者様にあわせて武器を捨てた?この魔王……もしかして……)

253: 2013/01/14(月) 15:50:39.95 ID:iuQIBcYl0
僧侶「いいえ、まだフェアじゃありません」

魔王「何?怪我も回復させた!武器も捨てた!どこがフェアじゃないと言うのだ」

僧侶「実は勇者様は……重大なハンデをかかえているんです!」

勇者・戦士・魔法使い「な、なんだってー!?」

魔王「ハンデだと?」

僧侶「怪我が回復した?勇者様の怪我はあの程度の回復魔法では癒えません」

僧侶「数々の魔物たちから受けた呪いで、勇者様の体はもうボロボロなんです」

戦士「マジかよ……勇者そんな体で……」

勇者「え」

261: 2013/01/14(月) 15:54:06.34 ID:iuQIBcYl0
僧侶「武器を持てないのも呪いのせいです。勇者様は武器を持ったら氏んでしまう体なんです」

魔法使い「そうだったの……勇者」

勇者「え」

僧侶「それに勇者様の右腕は、もう氏んだも同然の状態で……使い物にならないんです」

魔王「そうか。だが、それで同情を買おうというのであればとんだ茶番だな」

魔王「ふんっ!」ボギンッ

魔王「ぐぐっ……どうだ……右腕を折った。これで対等であろう!さぁ!かかってくるがいい!」

僧侶「まだ対等ではありませんよ……勇者様の耐えている苦しみはそんなものではないんです」

魔王「なんだ、まだあるのか。言ってみろ」

僧侶「勇者様は、両手両足に骨折12箇所で、内臓破裂で、目も耳もやられてますし、喘息で、胃潰瘍で、心臓病で、リュウマチで……」

勇者「お、おい僧侶さん……?」

269: 2013/01/14(月) 15:59:12.75 ID:iuQIBcYl0
僧侶「水虫で、魚の目で、陰菌で、さかむけで、痔で、わきがで……」

勇者「ちょっと!本当やめて!僧侶さん!」

魔王「ふんっ!ならば対等のハンデをくれてやるわ!」ドスッ

魔王「うぐぐっ……」

戦士「なんだあいつ……自分の体を刺したぞ……」

魔法使い「うわぁ……痛そう……」

僧侶「見栄っぱりで、馬鹿で、スケベで、変態で、マゾで、どうしようもない豚で……」

勇者「あの!もう悪口しか言ってないよ!?」

282: 2013/01/14(月) 16:03:35.68 ID:iuQIBcYl0
―――数時間後

魔王「がはぁ……」ボタッ

魔王「どう……ぐはぁ……だ……これ……で……対等であろう」ヨロヨロ

僧侶「そうですね……そのくらいなら対等ですね」

戦士「なんか今にも氏にそうだな……」

勇者「俺は精神的に今にも氏にそうだ……」ガクッ

魔王「この様な状態で……ぐほぁ……ここまで……来たとは……さすが勇者」フラフラッ

魔王「さぁ……こいっ!」ガクッ

僧侶「さぁ、勇者様、どうぞ」ニコッ

魔王「ごふっ」フラフラ

勇者「いや……さすがに罪悪感が……」

287: 2013/01/14(月) 16:09:22.56 ID:iuQIBcYl0
僧侶「対等なんですからいいんですよ、さぁ」ニコッ

勇者「え、えーっと、じゃあ……勇者パンチ」ポコッ

魔王「ほげぇ!」バタッ

魔王「」

戦士「勝った!勝ったぞおおおおおおおおおおおおお!」

魔法使い「あたしたち世界を救ったのね!戦士!」ギュッ

僧侶「これで世界に平和が訪れますね」ギュッ

戦士「おまえらのおかげだぜ!」バンバンッ

魔法使い「ちょっと、叩かないでよ。痛いじゃない。ふふふっ」キャッキャッ

勇者「ま、まぁいいか……ひゃっほー!みんなー」ダッ

戦士「ちょっと待て!勇者」

魔法使い「いや!こっちこないで!」

勇者「え」

戦士「確かに俺はお前のこと尊敬している。だが近づくな!」

293: 2013/01/14(月) 16:14:29.48 ID:iuQIBcYl0
魔法使い「別に勇者のこと嫌いって訳じゃないのよ?でも……ねぇ?」

戦士「なぁ?俺水虫はちょっと……うつったら嫌だしよ」

魔法使い「あたし臭いのとか汚いのダメなの。ごめんね、勇者」

勇者「え」

戦士「お前がそんな状態だって知らなくてよ。やっぱお前すげぇわ。そんななのに魔王倒しちまうなんてよ」

魔法使い「本当ね。言ってくれればよかったのに。あ、でもこっち来ないでね」

勇者「え」

僧侶「さぁ、みなさん!王国に凱旋しましょう!」タッ

戦士「がはははは!みんな喜んでくれるだろうなー。楽しみだぜ」

魔法使い「ごっほうびごっほうびーうれしいなぁー」

戦士「それ目当てかよ!がははははは。あ、勇者、悪いけど10m以内に近づくなよ?」

魔法使い「さぁ、いざ凱旋!あ、勇者こっち来ないでくれない?」

勇者「え」

301: 2013/01/14(月) 16:18:29.09 ID:iuQIBcYl0
―――魔界

魔王「ふぅ……やっと魔界についたぞ」フヨフヨ

魔王「おのれ勇者め……魂だけになってしまった」フヨフヨ

魔王「だが次は見ていろ……必ず勝つ!側近たちの無念を……んっ?」フヨフヨ

魔王「向こうのほうで声が……」

側近(♀)「あははははははははは」

「側近様、もう一回!もう一回見ましょう」

側近「好きですねー。じゃ、ぽちっと」

『ほげぇ!』

「ぶはははははははー。ひぃーひぃー腹がよじれるぅー。あのクールな魔王様が『ほげぇ』って」

側近「あはははははははは。何度見ても面白いですねー」

306: 2013/01/14(月) 16:22:52.61 ID:iuQIBcYl0
魔王「何をやっておる」

「何って、魔王様の最後の録画映像で笑って……魔王様!?あわわわわ」

側近「あ、魔王様。意外と早かったですね。一緒に見ますか?使い魔に撮影させた魔王様の貴重な映像」ピッ

『ほげぇ!』

側近「あはははははは」

魔王「お前たち、なぜ肉体があるのだ。無事だったのか?」

側近「あ、私たちは勇者が城に来るって聞いて速攻逃げましたから」

魔王「なんだと!?」

側近「いやぁ、あれの勇者は化け物ですよぉ。あんなのと戦ってもみんな無駄氏にするだけですからね」

「ほんと助かりました、側近様のおかげですわ」

「部下を思いやるその心。惚れますわぁ」

「ほんとほんと、できる上司は違いますなぁ」

ワイワイ

309: 2013/01/14(月) 16:26:38.86 ID:iuQIBcYl0
側近「あんなのと渡り合えるのは魔王様くらいですよ。あはははは」

魔王「ふんっ、まぁ良い。よく無事でいたな」ポンッ

側近「怒らないんですか?」

魔王「怒る?なんのことだ」

側近「もぅ、からかいがいがないなぁ」

魔王「そんなことより側近!新しい肉体を用意せい」

側近「いいですけど、作ったばかりの肉体であの勇者に勝てますか?」

魔王「ふんっ、たとえどのような状況でも私が負けることなどありえんわ!」

側近「ちょっと前に負けたくせに」

316: 2013/01/14(月) 16:31:52.51 ID:iuQIBcYl0
魔王「何を言う!私が負けを認めておらんうちは負けではないわ」

側近「あはは、相変わらずですねぇ」

側近「でも相手の状況くらい見ておいたほうがいいんじゃないですか?」

魔王「なに?」

側近「実は魔王様の面白映像をとったあと使い魔に勇者たちをつけさせてるんです。見ます?」

魔王「やるではないか、よし、映せ」

側近「では、どうぞ」ポチッ

『ほげぇ』

魔王「……」

側近「あははははははははは」バンバンッ

322: 2013/01/14(月) 16:37:02.76 ID:iuQIBcYl0
魔王「これは私の最後の映像だろう。貴様いい加減にせんか」

側近「間違えちゃいました。てへっ」ペロッ

側近「じゃ、今度こそ」

ジジー

魔王「なんだ、あそこは……勇者と……僧侶か?随分派手な建物の中にはいっていくな」

側近「人間の町の宿じゃないですか?」

魔王「部屋の中も派手だな。人間のセンスは分からんな」

魔王「む……なんだあれは?勇者が首輪をつけられてるぞ」

魔王「しかも僧侶に踏みつけられて……」

側近「なんか楽しそうですね」

魔王「なっ……なんだ、あんなことをするのか」

側近「おっ、おおっ!これはすごい!」

魔王「あんなものがあそこに入るのか」

側近「なんということでしょう」

330: 2013/01/14(月) 16:41:03.34 ID:iuQIBcYl0
黒龍「何をやっとんじゃ、お主らは」ドシンッ

魔王「な、お前は黒龍!?貴様は私の魔力で封印しておったはず……」

黒龍「ぐはははははは!魂だけとなったお主に封印を維持するだけの魔力はなかろう」ブオオ

魔王「熱い!息を吹きかけるな」

「ぎゃああああああああ!体が燃えるー」ゴロゴロ

黒龍「なんじゃ、最近の魔物はあの程度で燃えるのか。情けない」

側近「あははー。面目ないー私の部下です。でも久しぶりですねー黒龍さん」

黒龍「まったくじゃ。懐かしいのう、お主らと魔界の覇権を争ったあの頃が」

側近「結局私ら魔王様に負けちゃいましたもんねー、あはは」

魔王「なんだ、復讐にでもきたか。いいだろう!相手になるぞ」

336: 2013/01/14(月) 16:45:21.24 ID:iuQIBcYl0
黒龍「それもよいが、なんだ。面白そうなことになっておるではないか」

魔王「面白い?」

黒龍「魔王!お主ほどの男が勇者に負けたとはな。ぐはははは」

魔王「負けておらん!これから倒しにいくのだ」

黒龍「よし!ならばわしもついていこう」

側近「あ、じゃあ私もー。おやつはいくらまでですか?」

魔王「こいつらは……」

341: 2013/01/14(月) 16:50:45.43 ID:iuQIBcYl0
―――魔王城

魔王「ふぅ、やっと戻ってきた。しかし、この新しい肉体はどうも慣れんな」

側近「人間界にいくんですから、人間仕様にしておかないと勇者のところまでいけませんよ」

側近「私も人間の姿になってきました。ほらっ、翼も見えないでしょう?」

黒龍「ぬぅ……」ズンッ

魔王「黒龍、お前ちょっと人間にしてはでかくないか?」

黒龍「元が大きいからのぅ。これが限界じゃ、これ以上小さいとはち切れてしまうわ」ギチギチ

側近「しかし、これはまぁ、派手に壊されましたねー」

魔王「私の魔王城が……」

黒龍「勝者がすべてを奪う。当然の結果じゃな」

側近「あはははは。ぼろっぼろですね」

魔王「ここを拠点にするのは無理か。まぁ、よい。人間の町へいくぞ」

側近「たしか勇者は王国に戻ってるはずですね」

黒龍「ぐはは。人間の町など何百年ぶりじゃ。楽しみだわい」

343: 2013/01/14(月) 16:55:52.24 ID:iuQIBcYl0
―――王国

「ねぇ、あれって勇者様一行じゃない?」

「まぁ、本当!?」

「魔王を倒したんだってな」

「すごい!世界を平和に導いた方ね」

「でも勇者様って水虫らしいわよ」

「ああ、そうそう。ほかにも一杯病気持ってるって聞いたよ」

「ママー、勇者様のサインほしいー」

「めっ!ばっちいから近づいちゃいけません!」

勇者「くっ……屈辱」ガックリ

345: 2013/01/14(月) 16:58:34.59 ID:iuQIBcYl0
戦士「おっ、王城が見えてきたぜ」

魔法使い「ごっほうび♪ごっほうびー♪」

勇者「僧侶……いい加減誤解をといてくれない?」

僧侶「誤解?なんのことですか?」ニコッ

門番「勇者様が凱旋したぞー!」

兵「準備しろ準備。はやくアレ持って来い」ガラガラッ

勇者「おっ、歓迎されてる!?やっぱ王様ならわかってくれたか……?」

349: 2013/01/14(月) 17:05:04.42 ID:iuQIBcYl0
―――謁見の間

王様「よくぞ魔王を倒した!あっぱれじゃ」

戦士「あざーっす。がはははは」

魔法使い「ま、あたしらにかかれば当然よ」

僧侶「ありがとうございます」

勇者「あのー、王様……?」

王様「おお、勇者殿もご苦労じゃったな」

勇者「なんで俺だけ檻の中なんですか?それもこんなに離れて……」

王様「あとで出してやるから我慢してくれ。わしも昔水虫には悩まされてのぅ」

勇者「なっ」

王様「もう、水虫はこりごりじゃわい」

勇者「どうしてこうなったー!!」

僧侶(ふふっ……ちょっと可哀想ですね。まぁ、もうちょっと反省したら許してあげますか)

353: 2013/01/14(月) 17:09:35.06 ID:iuQIBcYl0
―――王国

魔王「勇者どこだー!」

側近「こんな大きな町でそんなに簡単に見つからないでしょう」

黒龍「ならばこの町を破滅させてしまえばよいではないか。びっくりして飛び出してくるじゃろう。どれ、わしのブレスで……」

魔王「やめい!」バシッ

黒龍「なんじゃ、だめなのか」

魔王「いずれ私が支配する町だ。傷つけることは許さん」

側近「あはははははー」

「ねぇ、あの一番前の人かっこよくない?」

「超イケてるよねー」

「あの後ろの人背たかぁい。かっこいー」

「声かけてみようよ」

「えー、でもぉ。あんな綺麗な子がいっしょだしー」

357: 2013/01/14(月) 17:13:06.98 ID:iuQIBcYl0
魔王「なんだ?ジロジロ見られているが……まさかバレたか?」

黒龍「わしの滲み出る魔力が見破られてしまったか」

側近「いえ、あれは興味もってるだけみたいですよー」

魔王「興味?」

側近「惚れられちゃってるんじゃないですか?いやぁ、やりますねー魔王様」ツンツン

魔王「なに?平均的な人間の顔にしてきたはずだが……」ペタペタ

側近「人は平均的な顔をかっこいいと思うみたいですからねー」

魔王「まぁ、魔王とバレていないのではあればいいわ。ゆくぞ」スタスタッ

358: 2013/01/14(月) 17:17:23.25 ID:iuQIBcYl0
魔王「見つからんな。お前の使い魔はどうしたのだ?」

側近「あー、休暇中です」

魔王「休暇だと!?」

側近「休暇もなしに働かせられませんよー。上司として」

黒龍「そりゃそうじゃ、たまには休みも大事じゃぞ」

魔王「むぅ……では今日はもう休むか」

側近「宿屋ですか?お金あるんです?」

魔王「あ」

側近「なんだ。無一文なんですかー。魔王様ともあろう方が」ケラケラ

魔王「笑うな。魔王城の金品はすべて奪われていたのだから仕方なかろう」

側近「仕方ないですねー。じゃあ、私がなんとかします」

魔王「金をもっておるのか?」

側近「いえ、そこの道具屋で何か売りましょう。お金になりそうなものがあるですよー」

361: 2013/01/14(月) 17:21:25.41 ID:iuQIBcYl0
道具屋「いらっしゃ……おおっ、これは美しいお嬢さん。隣のイケメンは彼かい?」

側近「そんなんじゃないですよー。無一文のヒモです」

魔王「おい」

側近「これを売りたいんですけど」トンッ

道具屋「ん?なんだいこれは?水晶玉かい?」

側近「いかがですか?」

道具屋「うーん、まぁ、綺麗だけどそれほど貴重ってわけでもないいねぇ」

道具屋「500ってところ……ん?地鳴りが……地震?」

ドドドドドドドドドドドドッ

勇者「おおおおおおおおおおおおお!こ、これはああああああああ」ガシッ

道具屋「ちょっ、あんたそれお客さんのだから」

勇者「なに?これ売ろうとしてんの?マジ?いくら?」

367: 2013/01/14(月) 17:24:23.87 ID:iuQIBcYl0
側近「500って言われました」

勇者「500!?で、でもこれってこのあふれ出る魔力……これあれじゃないか?文献でしかよんだことないが遠目に見ただけで超激レアアイテムって分かった」

側近「あれ?」

勇者「これドラゴンオーブじゃない!?」

黒龍「なっ」ゴソゴソッ

黒龍「ない!懐に入れておったのに!」

勇者「かつて龍の神が作ったといわれる秘法じゃないか!?使い方次第では世界が滅ぶっていう……」

側近「へぇー、そんなすごいものだったんですねー」

勇者「これ売るの?俺なら5000万は出すよ!売ってくれ!」

371: 2013/01/14(月) 17:29:43.82 ID:iuQIBcYl0
道具屋「ちょ、ちょっと待っておくれよお兄さん。このお嬢さんは私に売るって……」

勇者「黙れ!この目利きもできない三流道具屋が!水晶玉とか言ってただろう」

道具屋「ぐぬぬ」

側近「よし!じゃあ高いねをつけたほうに売ります!」

黒龍「売らんわ!」ゴンッ

側近「あいたっ」

黒龍「勝手に人の懐から盗みおって……これはわしのものじゃ。誰にも渡さん」

勇者「そんなぁ……」ショボーン

魔王「勇者……ついに見つけたぞ……」

勇者「え?あんた誰?どこかであったけ?」

374: 2013/01/14(月) 17:33:38.38 ID:iuQIBcYl0
魔王「この私こそまお……むぐぐ」

側近「ちょっと、魔王様」ギュッ

魔王「何をする、側近」

側近「ここは私にお任せを」

魔王「なに?」

側近「私にもちょっといいところ見させてくださいよー。これでも淫魔なんですよ、勇者を魅了魔法でメロメロにして……むふふ」

魔王「何を言う、勇者は私が……むぐぐ」

黒龍「まぁよいではないか、やらせてみろ面白い。ぐははははは」

側近「ねぇ、勇者様ですよねぇ」

勇者「そうだけど……」

側近「私勇者様の大ファンなんですぅ、握手してくださいー」キラキラッ

勇者「なっ……まだこの町に俺のファンがいたとは……ううっ」ギュッ

側近「何泣いてるんですかぁ?ほらっ、私の目を見てください」パァァ

勇者「目?あ……あ……」

377: 2013/01/14(月) 17:38:31.25 ID:iuQIBcYl0
側近「じゃあ、そこのホテルまでいきましょうかー」ギュッ

勇者「あ……はい……」フラフラッ

黒龍「側近の魅了魔法は強力じゃからのぅ。術中にはいってはもう逆らえまいて」

側近「さぁ、ホテルへ……」

勇者「……」フラフラ

僧侶「勇者様?何をなさってるんですか?」イラッ

勇者「……」チラッ

勇者「……」

勇者「僧侶!?」

僧侶「何こんなに可愛い女の子とホテルなんて入ろうとしてるんですか?」ニコッ

勇者「え?ええ!?あれ?なんで俺ホテルの前に……ち、違うんだ、僧侶」

僧侶「僧侶?呼び捨てですか?」

勇者「僧侶様!違うんです!」ガバッ

僧侶「そろそろ町の人への誤解をといてあげてもいいかと思ってましたけど……おしおきが必要なようですね」ガシッ

勇者「ああああああああああ」ズルズルッ

383: 2013/01/14(月) 17:45:36.63 ID:iuQIBcYl0
側近「失敗しちゃいましたー」

魔王「さすがは勇者。私の見込んだ男だ。魅了の魔法程度では堕ちんか。ふはははは」

側近「んー、なんかあの僧侶には私と同じ匂いがしますねぇ」

側近「あー、でも今夜の宿代の確保が途中でした!黒龍さん、はやくドラゴンオーブを」

黒龍「やらんといっておろうが!宿代くらいわしが出すわ!これはやらん!」

側近「おー、ふとっぱらー」

魔王「あれ?っというか……勇者は!?また勇者を見失ってしまったぞ!?」

側近「あはははは。また探せば良いじゃないですか」

387: 2013/01/14(月) 17:48:40.25 ID:iuQIBcYl0
―――数日後

側近「あった、ありましたよ!魔王様!」

魔王「勇者を見つけたか!?」

側近「ここ!ここのお店美味しいって雑誌に書いてあったんですよー。食べていきましょう」

カランカラン

「いらっしゃいませー」

魔王「そんなことより勇者を探せ!」カランカラン

黒龍「そんなことを言ってお主も入ってきておるではないか」

魔王「……腹は減るから仕方がない」ドスンッ

側近「えっとー、このミートパイと鴨のローストとスープと……」

黒龍「まったく人の金だと思って好き放題頼みおって……」

魔王「はぁー……こんなことならあの時戦っておけばよかった……」

391: 2013/01/14(月) 17:53:50.58 ID:iuQIBcYl0
黒龍「もう勇者などほうっておけばよいではないか」

魔王「なんだと?」

黒龍「もともとお主の目的は世界制服であろう?ならばこの国を支配してしまえばよいではないか。勇者など関係になしに」

魔王「勇者を倒さずして何が世界征服だ!そんなことは……」

黒龍「ほれっ、あそこに王城が見えるであろう?あそこを襲って王を倒してしまえばそれで終わりではないか」

魔王「だが……」

黒龍「ええい、ぐだぐだとこだわりおって。もう面倒じゃわい!見ておれ!」ガラッ

黒龍「がおおおお」ゴゴゴゴゴゴゴ

魔王「まさかここから火炎弾を!?」

黒龍「ブオオオオオオオオ!」ドーン

392: 2013/01/14(月) 17:58:42.23 ID:iuQIBcYl0
―――王城

王様「良くぞ来た。戦士、魔法使い」

戦士「なんすか?いったい」

魔法使い「そうよ。もうご褒美はもらったから呼ばれる理由ないんだけど」

王様「まぁ、そう言うな。おぬしらに頼みがあってな」

戦士「頼み?」

王様「もちろん成功した際には褒美もあるぞ」

魔法使い「本当!?なになに?」

王様「どうも最近民衆に不満がたまっておるようでな。謀反をたくらんでる輩も多数いると聞き及んでおる」

戦士「だって税金たっけーからな」

魔法使い「なんか新聞に王様が賄賂もらいまくってるって書いてあったわよ」

王様「な、何を言う!わしはなにもしておらんぞ!賄賂で政策なんて決めていない」

戦士「そんなこといってねーんだけど」

397: 2013/01/14(月) 18:00:38.29 ID:iuQIBcYl0
王様「ごほんっ!まぁ、それはそれとして置いておいて」

王様「どうだ?お前達わしの護衛につかんか?」

戦士「護衛?」

王様「わしを守ると同時に謀反を企むやつらを一掃してくれればいい。魔王を倒したほどのお前達だからな。報酬ははずむぞ」

魔法使い「魔王倒したのは勇者なんだけどねぇ。勇者は?」

王様「あんな全身病原菌みたいなの使えるか!」

魔法使い「そりゃそっか。じゃあ僧侶は?」

王様「断りよった。こんないい話はないんじゃがな」

戦士「んー、どうする魔法使い?」

魔法使い「そうねぇ……」

ゴゴゴゴゴッ

戦士「なんだ?下から何か飛んで……ちょっ!魔法使い逃げろ!」ガシッ

魔法使い「きゃっ!」

ドゴオオオオオオオオオン!

王様「ぬおーーーーーーーー!」

400: 2013/01/14(月) 18:05:23.22 ID:iuQIBcYl0
―――数日後

側近「あははははは。見てください魔王様。先日のアレ新聞に載ってますよ。あ、コーヒー来ましたよ」

黒龍「人間界のコーヒーはぬるいのぅ」ズズー

魔王「どれ、見せてみろ。なになに?『王様謎の爆発により氏亡。殺害容疑で戦士と魔法使い逮捕』?」

側近「いやぁ、よかったですねー。目撃者がいなくて。ハムエッグもらいー」パクッ

黒龍「よいものか!お主らとともに逃げてしまったせいでわしの手柄が台無しじゃ。ってわしのハムエッグに何をする!」

側近「早いもの価値ですよー」パクパク

魔王「何が手柄だ。王城を攻めるのに天守閣を直接狙うなど卑怯千万!」

黒龍「ならばお主のゆで卵をもらうぞ」ヒョイパクッ

側近「あー!私のゆで卵返してくださいよー」ガタッ

405: 2013/01/14(月) 18:10:06.25 ID:iuQIBcYl0
魔王「城を攻めるにしても正面から正々堂々と攻めるべきだ」

黒龍「金を払っておるのはわしじゃろうが。」

側近「かっちーん!あー、そういうこと言うんですかー。小さいですねー」

黒龍「なんじゃと!おい、ウェイター!ハムエッグ追加じゃ」

魔王「貴様ら話を聞かんか!」バンッ

黒龍「お主のゆで卵ならもうわしの胃の中じゃぞ?」

側近「ハムエッグはもう私がいただいちゃいましたよ?」

魔王「朝食の話などしとらん!この間城を襲った件だ」

黒龍「だが、この国の王を仕留めたのはわしなのだからわしが次の王になればよいのではないか?」

407: 2013/01/14(月) 18:13:27.61 ID:iuQIBcYl0
側近「新聞には王には子供がいなかったみたいで次の王は選挙で決めるとか書いてありますよ」

魔王「選挙?なんだそれは」

側近「多数決で決めるんですって」

魔王「多数同士で戦闘して決めるのか?」

側近「いえ、投票と言ってたくさん人気のある人が次の王になるんですよ」

魔王「なんだと!?強くなくて何が王だ!」

側近「まぁまぁ。あ、ハムエッグもらいー」パクッ

黒龍「またか!この小娘が!もう知らん!お主達などと一緒におれるか!わしはわしで勝手にやるぞ」カランカランッ

412: 2013/01/14(月) 18:17:28.09 ID:iuQIBcYl0
側近「あー、もう。魔王様が大声出すから」

魔王「むっ?外の様子が騒がしいな」

ザワザワ

「よろしくおねがいします。清き一票をよろしくおねがいします」

側近「あ、噂をすれば。あれが選挙演説って言って王になったら何をしたいかみんなに知ってもらうんですよ」

魔王「次の王候補だと?どれどれ」

勇者「どうもどうも。勇者です。あなたの勇者をよろしくおねがいします」

魔王「ぶーっ!」

側近「ちょっとー!魔王様コーヒー吹かないでくださいよ、汚い」

416: 2013/01/14(月) 18:21:11.54 ID:iuQIBcYl0
勇者「水虫じゃない勇者、足の臭くない勇者、痔じゃない勇者をどうぞよろしくおねがいします」

勇者(なんとか……なんとか汚名を返上しないと……)

勇者「綺麗な勇者、汚くない勇者、次の王様にはあの魔王を倒した勇者をどうぞよろしく」

「勇者様だ」

「でも汚いって噂があるわよ」

「酷いこというなよ。体は汚くたって心は汚くないだろ」

「そうね、あの魔王を倒したって言うし……」

勇者(これは……いけるか!?)

魔王「貴様!今の話は本当か!勇者!」ザッ

勇者「え」

勇者「あ、握手ですか?どうもどうも。投票用紙には勇者と書いてくださいね」ニコッ

バシッ

魔王「ヘラヘラしてるんじゃない!今の話は本当かと聞いておるのだ!」

勇者「今の話?」

魔王「なんの病気でもないという話だ」

418: 2013/01/14(月) 18:24:08.40 ID:iuQIBcYl0
勇者「ええ、ええ。本当ですよ、お兄さん。綺麗で健康な勇者をどうぞよろしく」ニコッ

魔王「この嘘つきがあああああああ!」カッ

勇者「え?なんで!?」

魔王「貴様水虫とか言っていたのもうそであったのか!」

勇者「ええ!水虫なんてありませんよ」

魔王「貴様に合わせてフェアに戦ってやったというのに!この外道の卑怯者が!許さん!」

勇者「え?え?なんでそんなこと言われるの!?あんた誰?」

魔王「私は魔王!この世界を制するものだ!」

「なんなんだ?」

「新しい王様立候補者か?」

「マオ・ウー?イケメンだなー」

「いやーん、かっこいい!マオ様ー!」

「あの勇者に挑むとは命知らずなやつだなー」

「やれやれー!やっちまえー」

423: 2013/01/14(月) 18:28:30.63 ID:iuQIBcYl0
勇者「え、なにこの雰囲気」

魔王「貴様!いますぐこの場で立ち会えい!」バッ

勇者「えーっと……何を言ってるのかなぁ?はははは。あんたも王様に立候補してるの?」

魔王「王様だと?私こそ王の中の王だ!貴様のような卑怯者が王になろうなど片腹痛いわ。かかってこい!」

勇者「いやぁ、暴力は良くないよ。暴力は、ね?僕はこの世界を平和に導こうと……」

「なんだなんだ、勇者にげるのかー」

「なさけなーい」

「マオ様がんばってー!」

勇者(くっ……だがここで暴力など使っては俺の評判が……勝てるけどね!我慢我慢……)

勇者「ここは平和的に政策で争おうじゃない、ね?」ニコッ

426: 2013/01/14(月) 18:31:02.55 ID:iuQIBcYl0
魔王「何を軟弱なことを!私がこの数日この国でぐうたらしていたとでも思うのか!」

魔王「なんだ、この国は!官僚が賄賂を受け取り、国を疲弊させ、人間達が人間達を飢えさせ氏なせておったぞ!」

勇者「いや、それは、前の王様が……」

魔王「その王の直属で討伐に来たのが貴様だろうが!これが私と争って手に入れた平和だとでもいうのか!」

勇者「あの……その……」

「マオ様がんばれー」

「勇者ってそういえば王様の手下だったなー」

「あの王様ひどかったものなぁ」

「でもさすがに勇者様にはかなわないだろ」

「やっぱ力がないとねー」

勇者「あー、もう!わかった、相手してやる」スッ

勇者(まぁ、怪我しないように手を抜いて、握手でもして励ましてやろう。お前の勇気は認めるって感じで……)

430: 2013/01/14(月) 18:34:34.87 ID:iuQIBcYl0
魔王「ではゆくぞ!」ゴゴゴゴゴゴゴッ

勇者「なっ……!?」

魔王「はぁ!」ドゴォ

勇者「!?」

ガラガラガシャーン

勇者「」ピクピクッ

「……すげぇ」

「……勇者様を……倒した?」

「あの兄ちゃん顔と口だけじゃねぇのか……」

魔王「勇者!真剣勝負で手を抜くとは何事……うおっ!?」

「すっげえええええええええええええ」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

431: 2013/01/14(月) 18:35:05.23 ID:iuQIBcYl0
「兄ちゃん!俺あんた応援するよ」バシバシッ

魔王「な、なんだ。触るな」

「マオ様ー!素敵!」

「マオ様ー!」

「マオ様ー!」

ワイワイワイワイ

側近「あははははははー」ケラケラ

魔王「こら、側近、見てないで何とか言え」

434: 2013/01/14(月) 18:37:35.13 ID:iuQIBcYl0
―――王城

魔王「勇者の居場所は分かったか?」

側近「そんなことより王様になったんだから仕事しないと」

魔王「人気だけでついた王座なんぞに興味はないわ」

側近「でも人間の王様に選ばれたんですよー」

魔王「まったく!まぁよい。どちらにしろ人間を支配してやるつもりであったのだからな。それより勇者だ。やつとの決着がついておらん」

側近「情報によると酒場で愚痴ってたとか、道端で倒れてたとか、木陰で泣いてたとかいろいろありましたけど、結局行方不明になっちゃいましたねー。氏んだんじゃないですか?あはは」ケラケラ

魔王「やつがそんなに簡単に氏ぬたまか、捜索を続けろ」

側近「あと、なんか地下牢から『俺は無実だー』とか『あたしは関係ないのにー』とか言う声が聞こえるんですけど」

魔王「放っておけ。私には関係ない。それよりも勇者をだな……」

442: 2013/01/14(月) 18:41:17.41 ID:iuQIBcYl0
大臣「あ、あのぅ……」

魔王「ん?」

大臣「マオ様、ご機嫌麗しゅう」

魔王「こいつ誰だ?」

側近「この国の大臣じゃないですか?」

大臣「先代の王様には大変お世話になっておりました。それでマオ様の決められた政策についてなんですが……」

魔王「なんだ?文句でもあるのか」

大臣「あのぅ……賄賂や献金の禁止や税金の大幅削減などちょっと無理が多いのではないかと……その……諸侯からも不満の声が……」

魔王「ふんっ、何を馬鹿な。この国は私の支配下に入ったのだ。この国のすべては私のもの。人間一人についても同じだ。私のものを傷つけることは許さん」

大臣「いえ、今までこれで誰も困ってなど……」

444: 2013/01/14(月) 18:43:25.32 ID:iuQIBcYl0
魔王「重税につぐ重税、しかも賄賂なしでは意見を言えぬ政策をしておいて何を言う!私の国民が氏んでゆくではないか!貴様、この国の氏亡率を知らんのか!」

大臣「しかし……」

魔王「それから貴様も大臣はクビだ。お前のようなものに任せてはおけん」

大臣「そ、そんな!それじゃあ私はどうやって生きていけば……」

魔王「安心しろ。貴様も私の大事な国民だ。貴様にふさわしい仕事を与えてやる。そうだな、皿洗いからはじめてみるのはどうだ?」

大臣「な……な……なんですって……」

魔王「肉体労働でその肥え太ったからだを引き締めるが良い!」

大臣「そ、そんなことをして!貴族諸侯がだまっていませんぞ!」

魔王「なんだ?反逆か?望むところよ!すべて返り討ちにしてくれる!」

魔王「支配してやるぞ!人間どもよ!ふはははははははは!」

446: 2013/01/14(月) 18:44:40.75
マオ様めちゃめちゃ良いやつワロタ

449: 2013/01/14(月) 18:46:48.08 ID:iuQIBcYl0
―――貴族領

貴族「この私を差し置いて、爵位もない若造が王だと。許せんなぁ?」

召使「おっしゃるとおりでございます」

貴族「しかもこの私の領地の税金まで下げろと言って来ておる。何様のつもりだ」

召使「王様ではないかと……」

貴族「何か言ったか?」ゲシッ

召使「いえ……」

貴族「私の領土は私のもの。たとえ王であろうと口出しはさせぬ」

召使「あの、旦那様」

貴族「何だ」

召使「先ほど、豪族の方が見えてお待ちですが……」

貴族「なんだと!?早くそれをいわんか!このグズが!」ゲシッ

召使「もうしわけございません……」

貴族「どうせ、商売がうまく進むよう賄賂を持ってきたんだろう」

貴族「豪族は金を持ってるからな。せいぜい搾り取ってやるわ」

452: 2013/01/14(月) 18:49:07.48 ID:iuQIBcYl0
貴族「これはよくいらっしゃいました。豪族さん。どうです?良い煙草が入ったのですが、一服」

豪族「煙草は吸わん。気を使う必要はない」

秘書「そうですよー。あ、私秘書です」

貴族(なんだ?この偉そうな豪族は……金で爵位を買った成り上がり風情が……)

豪族「ところで、貴殿。先ごろ王が変わったことは聞いたか」

貴族「ええ、まったく賄賂をなくし、税金を下げろなんて馬鹿なことを言ってますよ」

豪族「不満があるなら戦えばよかろう。武力を持ってな」

貴族「なるほど、今日はそういう話でしたか。商売上手でいらっしゃる。武器を売りに来たわけですな」

豪族「そんなところだ」

貴族「これは、ここだけの話ですぞ?」

豪族「ああ」

貴族「今回の王の即位に周辺諸侯は快く思っていない。武力による蜂起も考えて作戦を練っているところなのです」

豪族「それはちょうど良かった」

貴族「豪族さんは本当に商売上手ですな。機を見る目がある。どのような商品をお持ちで?」

豪族「それは……」

456: 2013/01/14(月) 18:54:21.24 ID:iuQIBcYl0
ガシャーン

召使「こら!入るな!帰れ帰れ!」

少女「おねがいです!領主様に会わせてください!」

バタバタッ

豪族「なにやら騒がしいな」

貴族「まったく、なんなんでしょうね。少々お待ちを」バタッ

貴族「何をやっている!」

召使「このガキが突然屋敷に入ってきまして……ほらっ!さっさと出て行け!」グイッ

少女「あ!領主様!お願いです!畑を!畑を返してください!」ガバッ

貴族「あぁ?畑を返せですって?」ズカズカ

458: 2013/01/14(月) 18:54:54.82 ID:iuQIBcYl0
少女「畑がなくなったら私達……生きていけません!」

貴族「それは、お前が……」ゲシッ

少女「キャッ!」ドタッ

貴族「税金を!」ゲシゲシッ

少女「ああ……」

貴族「納めないからでしょうが!」ゲシゲシッ

少女「でも……お母さん病気だし……弟も小さいんです……税金を払ったら生きていけません」

貴族「あー、もう、これだから平民は……」

貴族「だったら生きなきゃいいでしょう?召使!処分してしまいなさい!」

召使「しょ、処分って……」

貴族「生きる価値のない人間など不要です。頃してしまいなさい」

462: 2013/01/14(月) 18:57:48.84 ID:iuQIBcYl0
召使「で、でもそこまでしなくても……」

貴族「あなたも必要ない人間ですか?」ギロッ

召使「で、でも……」

貴族「もういい!私が手本を見せてあげましょう」

貴族「どれ、首の骨をポキっと折ってさしあげましょうか?」ザッ

少女「や、やめ……」

貴族「ははははは!せいぜい泣き喚き……ぶげらっ!」ダーン

豪族「そこまでにしておけ」

秘書「あー、だめですよー。これからこの女の子が手篭めにされていやーんな展開になるところなのに」

豪族「お前な……」

467: 2013/01/14(月) 18:59:48.32 ID:iuQIBcYl0
貴族「な、な……何をする!商品を売りたいのではなかったのか!豪族!」

豪族「ああ、売りに来たぞ?取っておきの商品をな……」

貴族「こんなことをされて誰が買うか」

豪族「買わないなら買わせるさ。私は喧嘩を売りに来たのだ」

貴族「へ?」

豪族「そして喜べ。商品はこの魔王様だ!」

側近「あーあ。かっこつけちゃって」

貴族「マオ王?新しい王の!?なぜこんなところに……」

魔王「どうも私の命令が聞けぬ不届き者がおると聞いてな。身分を隠して視察にきたのだ」

469: 2013/01/14(月) 19:03:31.34 ID:iuQIBcYl0
魔王「さぁ、武力蜂起がしたいのであろう?かかってくるがよい」

貴族「ま、まさか!?国軍をつれてきたのか!?」

魔王「貴様などを相手にするのにそのような者をつれてくるわけがなかろう」

貴族「では……マオ王一人で……?」

魔王「当然だ!」

側近「あ、私もいますよー秘書です。キリッ」

貴族「は、はははははは……ひゃははははははー」

貴族「一人で来ただと!?これは飛んで火にいるってやつですね」

貴族「であええええええええ!賊が侵入したぞ!」ピー

私兵団長「貴族様!お呼びですか!」

477: 2013/01/14(月) 19:10:06.84 ID:iuQIBcYl0
貴族「ああ、賊だ!あいつを頃してしまえ!」

私兵団長「はっ!お前達取り囲むぞ!」

私兵「サー!イエッサー!」ザッ

ザザザザザッ

側近「んー、50人はいますねー」

魔王「ほぅ?この者たちは強いのか?」

貴族「いずれも百戦錬磨の猛者たちよ!マオ王は行方不明になったということにしておこう。ひゃはははははー」

魔王「面白い!かかってこい!」

私兵団長「突撃ー!」

カッ

480: 2013/01/14(月) 19:11:43.39 ID:iuQIBcYl0
私兵団長「ばたんきゅー」

貴族「馬鹿な……私の私兵がこんなに簡単に……」

魔王「この程度か、つまらん」

少女「ううっ……」

魔王「おっと、そうであった。我が国民を傷つけるなど許さんからな」

貴族「た、助け……」

魔王「どれ、怪我を見せてみよ。回復魔法!」パァァ

少女「え……あれ?痛くなくなった……」

魔王「畑も自由にするがよい。だが、勘違いするなよ!私の支配地であるからな!」

少女「あ、ありがとう」

483: 2013/01/14(月) 19:13:23.05 ID:iuQIBcYl0
魔王「ふんっ、当然だ。貴様は私のものだからな」

少女「え///」ポッ

少女「マオ……様?」

魔王「なんだ」

少女「私……マオ様のものになる!」

魔王「ふん、貴様などまだ幼くて役に立たんわ!大きくなったら来るが良い。ふはははははは」

少女「は、はい!」

側近「あちゃー。魔王様、そんなこと方々で言ってたらそのうち刺されますよ」

484: 2013/01/14(月) 19:17:39.09 ID:iuQIBcYl0
貴族「い、今のうちに逃げ……」

魔王「おっと待て」

貴族「こ、殺さないで……」

魔王「我が国民を誰が頃したりするものか。貴様のその腐った性根!腹黒さ、気に入ったぞ」

魔王「我が手足として馬車馬のように働かせてやるからありがたく思うが良い」

側近「あはっ、また皿洗いがふえちゃいましたねー」ケラケラ

貴族「え」

魔王「ふはははははは!」

489: 2013/01/14(月) 19:20:36.24 ID:iuQIBcYl0
―――王城

魔王「ふぅ、貴族どもの支配も終わったな」

側近「なんか最近魔王様いいことばっかしてません?」

魔王「何を言う!悪の王たるこの魔王様が善行などつむものか!」

側近「でも、なんか国民の支持がうなぎのぼりみたいですよ」

魔王「くくくっ、愚民どもめ。我が野望を知らずにのんきなものだ」

側近「野望?」

魔王「経済が活性化して、国政の予算もかなり確保できた」

側近「で?」

魔王「そのあまった金で私の家を修復してやる!どうだ!悪だろう!」

側近「しょぼ!家って魔王城ですか?」

493: 2013/01/14(月) 19:24:54.05 ID:iuQIBcYl0
魔王「そうだ!人間達にあらされ住めなくなってしまったのだから当然人間達に直させる!」

側近「まだ気にしてたんですかー」

魔王「このような真っ白な城は私の趣味ではない。ああ、懐かしいな……」

魔王「あの暗くて禍々しい概観、悲鳴のよく響く廊下、ごつごつとした装飾品……」

魔王「夏はマグマのように暑く、冬は北極のように寒いあの環境……すべてが懐かしい」

側近「そんなコンセプトだったんですか、あの城」

魔王「魔王城を復活させるのだ!」

側近「ところで魔王様、もう勇者のこと忘れちゃってませんか?」

499: 2013/01/14(月) 19:29:36.19 ID:iuQIBcYl0
―――数ヵ月後


匠「これはマオ様よくお越しくださいました」

魔王「ん?誰だ?」

側近「魔王城のリフォームを依頼した匠ですよー。その道のプロって話ですよ」

匠「この度は私の全力をこの城につぎ込みました」

魔王「ほぅ、それは期待できるな」

匠「マオ様のご希望通りに仕上げております」

魔王「おお、楽しみだ」ワクテカ

匠「ではご説明しましょう!魔王城大改造!劇的ビフォーアフターを!」バッ

509: 2013/01/14(月) 19:35:24.10 ID:iuQIBcYl0
魔王「な……な……」

匠「いままで悪魔の城として恐れられていた魔王城。それが、この匠の手にかかればこの通り」

匠「まず真っ黒で統一され、暗いイメージであった塀に注目する匠」

匠「もっと明るくできないか。そう考えた匠により大変身。壁一面をショッキングピンクに大改造」

匠「遠くからでもひと目で分かる我が家。方向音痴のあなたでも大安心」

匠「そしてごつごつとした概観に不満を覚えるひとのために電飾で飾りつけ。電飾で作った文字は世界平和を願い『LOVE』の文字を採用」

匠「悪の象徴から愛の象徴と言える城に」

匠「そしておまけで壁に『ご休憩』『ご宿泊』の文字も追加しました。んーっ、決まってるぅ」

匠「そして70室はあるという部屋のすべてに回転ベッドを完備」

匠「オブジェには秘宝館からお借りした秘宝の数々を展示する徹底振り」

匠「若い恋人達からはこんな家なら毎日でもお邪魔したいといわれる事間違いなし!」

517: 2013/01/14(月) 19:40:18.94 ID:iuQIBcYl0
匠「いかがですか?マオ様?」ニヤッ

魔王「なんじゃあこりゃああああああああ!」

側近「あはははははははー」ケラケラ

魔王「匠!貴様正気か!」

匠「どうです?いいでしょう?みてください。正面の門にはハートマークをいれ、駐車場には目隠しをしてるんですよ」ニヤッ

魔王「国民の大事な税金でなんてもの作っておるのだ!」

匠「ってそっち!?」

魔王「税金でこんなものを作ったとあっては国民に申し訳がたたん……」ガクッ

匠?「く、くそ!いい王様しやがって……このやろう」

魔王「なに?」

匠?「まぁいいや。へっ!ざまぁみやがれ!」

魔王「なんのことだ?」

匠?「このフードの下の顔を忘れたか!」バッ

527: 2013/01/14(月) 19:45:07.84 ID:iuQIBcYl0
魔王「お前は……勇者!?」

勇者「そう!おまえのせいでとっても……とぉおおおおおっても!可哀想なことになった勇者だ!」

魔王「お、おお!勇者!勇者ではないか!探しておったぞ!」バシバシッ

側近「忘れてませんでした?」

勇者「ちょっ!喜ぶな!叩くな!」

勇者「お前のせいでな……俺は汚名も返上できず……イケメンにやられるヘタレとして扱われてな……ううっ」ゴシゴシッ

魔王「よし!決着つけるか!」ワクテカ

勇者「聞けよ!」

魔王「貴様の流儀に合わせて素手で勝負だ!行くぞ!」ザッ

勇者「だからとりあえず俺がなんで怒ってるか聞けって!」

531: 2013/01/14(月) 19:50:08.54 ID:iuQIBcYl0
魔王「今度は手を抜くなよ、勇者。ほれほれっ、かかってこい」ワクテカ

勇者「あー!もういい!ぶっころしてやる!」ジャキッ

魔王「なっ、剣だと?」

勇者「魔王討伐の報奨金の全部を使って買ったこの光の剣の錆になりやがれ!」

魔王「貴様!素手の相手に剣を使おうというのか」

勇者「そんなこともう知らん!」

魔王「しかも買ったとはどういことだ。魔王城の財宝はお前が持って行ったのではないのか」

勇者「そんなもんあの王様に接収されちゃったよ!この剣は買い戻したんだ!」

魔王「貴様……かなり可哀想なやつだな……」

勇者「お前が可哀想とか言うなあああああ!」ズバンッ

魔王「おっと!」

ズガアアアアアアアアアアアアン

538: 2013/01/14(月) 19:55:27.58 ID:iuQIBcYl0
―――丘の上

側近「おおっと勇者の一撃で地面が吹き飛びましたよー」

僧侶「魔王討伐のときにあのくらいやってくれたら楽でしたのに……あ、ケーキ買ってきたんです。食べます?」

側近「あー、この店のケーキ好きなんですよー。私はスイーツ買ってきました」

僧侶「その店も美味しいですよね」パクッ

僧侶「んーっ、幸せ」パクパク

側近「ねーっ」パクパク

僧侶「しかし、まーあの二人もよくやりますね。あ、勇者様危ない!うしろうしろ!」

側近「魔王様は戦い大好きですからねー、あはははは」ケラケラ

僧侶「しかしなんだって王様と勇者様戦わせたりしてるんです?」

側近「私はただ面白いからですよー。あなたこそどうなんです?」

僧侶「勇者様ったら私に黙ってどこかに雲隠れしちゃったんですよ」

僧侶「これはお仕置きしないといけませんよね。あんなに心配させて……もう……氏んじゃったかと思いました」ブツブツ

549: 2013/01/14(月) 20:00:24.90 ID:iuQIBcYl0
側近「嫉妬ですか?勇者のこと好きなんですかー?」ニヤニヤ

僧侶「べ、別にそういうわけじゃ……///」プイッ

側近「あははー照れてる照れてる」ツンツン

僧侶「からかわないでください」

側近「私は魔王様のこと好きですけどねー」

僧侶「え?」

側近「でも全然私に興味ないみたいなんですよねー」

側近「王座争って戦ってたときも魔王様だけには私の魅了魔法が効きませんでしたし、はぁ……」

ズイッ

黒龍「わしにだって魅了は効かなかったであろう?側近」

559: 2013/01/14(月) 20:05:53.95 ID:iuQIBcYl0
側近「黒龍さんは魅了魔法を使う隙さえ与えてくれなかっただけでしょ……っていつから?」

黒龍「何やら魔王城のまわりで魔力がざわついておったからの」

黒龍「おっ、うまそうなものを食っておるのぅ。どれっ」ヒョイパクパクパク

僧侶「あー!全部ケーキ食べた!」

側近「何してるんですかー。女子会に入ってくるなんてもう」

黒龍「ぐはははは。ハムエッグの恨みじゃ」

側近「まだ覚えてたんですかー、しつこいなぁ」

黒龍「どれ、わしもここで見物させてくれい。おっ、魔王が押されておるぞ」

側近「え!?」クルッ

黒龍「冗談じゃ。ぐははははは」

僧侶「ケーキが……」シュン

黒龍「泣くな泣くな。差し入れを持ってきてやったぞ。ほれっ、食うが良い」ドンッ

僧侶「なんですか?これ」

黒龍「肉じゃ。うまいぞ、ほれっ、食え食え」バクバクッ

僧侶「女子会で肉って……」

563: 2013/01/14(月) 20:11:35.14 ID:iuQIBcYl0
黒龍「ところでお主らこんなところで何をしておるんじゃ。そんな仲じゃったのか?」

側近「ケーキ屋さんで知り合ったんですよ、ねーっ」

僧侶「ねーっ」

キャッキャ

側近「それでお互い協力してこの場を作ったんですよー」

黒龍「確かにこれは見ものだの」

黒龍「おっ、また魔王があぶないぞ」

側近「あはは、そんな同じ手に何度もひっかかりませんよ」

僧侶「いえ、本当ですよ。押されてます」

側近「え、魔王様!?」クルッ

566: 2013/01/14(月) 20:15:43.66 ID:iuQIBcYl0
僧侶「これで終わりでしょうか。やっぱあの細身の王様が不利なんじゃないですか?」

黒龍「確かにあの肉体は大して強くないのぅ」

側近「いえ、それでも魔王様は負けませんよ」

僧侶「でも……」

側近「力が弱くても魔王様は勇者にはないものを持ってますから」

黒龍「じゃろうなぁ、あやつはなぁ。それでわしは負けたようなものじゃ」

僧侶「何を持ってるって言うんですか」

側近「魔王様は負けませんよ。何度倒れても必ず向かっていく『鉄の意志』を持っていますから」

573: 2013/01/14(月) 20:21:10.10 ID:iuQIBcYl0
魔王「ぜい……ぜい……どうした。鉄の拳とやらは使わんのか」

勇者「うらああ!とどめだ!魔人斬り!」ズバッ

魔王「甘いわ!」バシッ

勇者「はぁ……はぁ……白羽取りだと……何なんだよお前は……その強さは……」

魔王「私は絶対に負けん!食らえ!奥義!暗黒吸魂輪掌破!」バギーン

勇者「ぎゃああああああああああ!俺の光の剣が折れた!折れたあああああ!」

魔王「ど、どうだ……ぜぃぜぃ……もう素手で戦うしかあるまい」

勇者「全財産をつぎ込んだ剣がああああああああ」ボタボタ

魔王「泣くな!みみっちい!」

578: 2013/01/14(月) 20:26:12.68 ID:iuQIBcYl0
勇者「許さない……許さないぞ……マオ王!」ジャッ

魔王「なっ、まだ剣を持っておるのか」

勇者「このいわく付きの魔剣を使うことになるとはな……」

魔王「なに……呪いでもあるのか!?」

勇者「これはな……この俺が50年ローンの呪縛を受けたいわくのある魔剣……マサムネだ!」

魔王「そんないわくは嫌だな……」

勇者「黙れ!借金の恨みを思いしれ!」ギィン

魔王「くっ……」ビリビリッ

勇者「そろそろ腕がしびれてきたか?」ズバッ

魔王「おおおおおおおお!」ガシッ

勇者「なっ……口で受け……」

バキーン

勇者「NOOOOOOOOOOOOO!また折りやがったあああああああ」ガックリ

魔王「ぺっ……いい加減に素手でむかってこんか」

583: 2013/01/14(月) 20:31:19.32 ID:iuQIBcYl0
勇者「俺のレアアイテムが……ううっならば虎の子のこの剣で……」ジャッ

魔王「まだ剣を持っておるのか……」

勇者「これは3代前の魔王を討伐したといわれる雷神の……」

魔王「とう!」バキーンッ

勇者「ぎゃああああああああ!」

魔王「いい加減にしろ!」

勇者「解説くらいさせてくれ……ううっ、これも30年ローンだったのに……」ブルブル

590: 2013/01/14(月) 20:35:46.61 ID:iuQIBcYl0
勇者「許さん……」

魔王「おお、やっとやる気になったか!」

勇者「許さんぞおおおおおおお!爆裂魔法!」ドゴオオオオン!

魔王「むっ?どこに向かって魔法を撃っておる……」

ガラガラガラガラ

魔王「なっ……魔王城が……」

勇者「お前の大事な城もつぶれてしまえー!爆裂爆裂!」ドガーンドガーン

魔王「やめんかー!」ガシッ

勇者「お前こんなピンクの城嫌だとかいってただろう!」

魔王「いいからやめろ」

勇者「うっさい!ばーかばーか!爆裂爆裂!」ドカーンドカーン

596: 2013/01/14(月) 20:41:10.78 ID:iuQIBcYl0
―――丘の上

僧侶「ああ……城が崩れちゃいましたね、残念です」

側近「あはははははー」

黒龍「二人ともなかなかやるのぅ」

僧侶「あ、今度は取っ組み合いになった」

側近「うーん、腕力じゃ魔王様がふりかなー、あはははは」

僧侶「あなた好きな相手がやられそうなのに良く笑ってられますね」

側近「だから魔王様は私なんかに興味ないんですってばー」

黒龍「側近、お主何か勘違いしておらんか?」

側近「はぁ?何がですか?」ケラケラ

黒龍「魔王がお主を嫌いじゃから魅了の魔法が効かなかったと思っておるのか?」

側近「だってそうでしょ?鉄の意志で私の魅了を破ったんですよー」

黒龍「いや、お主の魅了は最強じゃ。誰もやぶれはせんわ」

側近「じゃあ、なんでです?」

607: 2013/01/14(月) 20:45:55.75 ID:iuQIBcYl0
黒龍「昔魔王と戦ったとき言っておったぞ。すごく強い女に惚れたとな、絶対に次は勝って側に置いてやるとな」

側近「それって……」

黒龍「最初から自分のことが好きな相手に魅了魔法を使っても効果があるかの?側近」

側近「あ……」

黒龍「惚れた女というのはお主のことじゃろ?だから側近にしたんじゃろう?わしは封印しおったくせに」

側近「でも……そんな……まさか……」

僧侶「あ、今度こそ王様負けそうですよ」

側近「魔王様!」バサッ

ヒュー

僧侶「飛んでいっちゃいました……っていうかあの翼は?」キョトン

黒龍「ぐはははははは」

618: 2013/01/14(月) 20:51:30.49 ID:iuQIBcYl0
―――魔王城跡

魔王「ぐぅ……もう体が……」ガクガクッ

勇者「はぁはぁ……これで終わりだ!食らえ!極大雷撃魔法!」ゴゴゴゴゴッ

魔王「おおおおおおお!動け……我が肉体よ……」ガクガクッ

側近「魔王様!」バッ

ヒュー

勇者「おおおおおおお!」ドガガーン

勇者「っていない!?んっ?あれ誰だ?」チラッ

ヒューン

勇者「おいこら!にげるな!」

勇者「って……行ってしまった……」ポツーン

629: 2013/01/14(月) 20:57:05.03 ID:iuQIBcYl0
―――丘の上

僧侶「なんかあの子王様を掴んでどっかに飛んで行っちゃいましたけど……」

黒龍「しばらく帰ってはこまい。二人で何百年でもイチャイチャしておるがいいわ。ぐはははははは」

戦士「王様ー、いつまで待ってればいいんすか?」スタスタ

僧侶「戦士!?」

魔法使い「あ、僧侶じゃーん。おひさー」フリフリ

僧侶「魔法使いまで!二人ともどうしてここに?王頃しの罪で地下牢に捕まっていたんじゃ?」

戦士「俺たちは無実だっての!」

魔法使い「そうよ!それをこの王様に助けもらったの」

僧侶「王様?」

黒龍「そう、わしよ!ぐはははは。人間の国を落とすなど簡単なことであったわ」

黒龍「魔王のやつは魔王城だの勇者だのにうつつを抜かしておったからの」

黒龍「わしが支配してやったわい」

635: 2013/01/14(月) 21:00:30.57 ID:iuQIBcYl0
戦士「命の恩人だからな!どこまでもついていきますぜ!王様!」

魔法使い「じゃ、私は王妃の座でも狙っちゃおうかなー」キャッキャ

黒龍(っというかこいつらが捕まったのはわしのせいなんじゃがな。黙っておこう)

黒龍「さて、行くか!次は北方の国を支配してやる」

戦士「うぃっす!」

魔法使い「王様、一生ついて行きます!」

645: 2013/01/14(月) 21:06:17.13 ID:iuQIBcYl0
―――魔王城跡

勇者「俺は……勝ったのか……?」ポツーン

勇者「いや、あいつは女の子に助けてもらってどこかへ飛んでいった……」

勇者「これは逆に俺の負けなんじゃないのか……」

勇者「名声も失った……財産も失った……」

勇者「はぁ……」バタッ

勇者「もうだめだ……氏にたい……」

勇者「ああ……僧侶の言うこと聞いておけばよかったなぁ」

僧侶「本当にそう思っていますか?」スッ

勇者「ああ……僧侶の幻が……幻でもかわいいなぁ……」

グリグリッ

勇者「むぎゅ」

僧侶「……」グリグリッ

勇者「この心地よい足の感触は……僧侶?」

656: 2013/01/14(月) 21:14:58.70 ID:iuQIBcYl0
僧侶「足の感触で人を判断しないでください!」フミッ

勇者「うぐぐっ……あの……僧侶さん、俺今すっごい疲れてるんですけど」

僧侶「でも勇者様はそんな状態でもこうされるのが好きでしたよね」グリグリッ

勇者「まぁ……好きだけど全部」

僧侶「……」

勇者「僧侶……」

僧侶「なんですか?」

勇者「意地張ってごめんなさい」

僧侶「それだけですか?」

勇者「心配させてごめん……」

僧侶「よろしい」ニコッ

664: 2013/01/14(月) 21:21:44.77 ID:iuQIBcYl0
―――魔界上空

側近「うっ……うっ……魔王様魔王様魔王様」ギュッ

魔王「貴様、何をする離せ!まだ勇者との決着はついておらんぞ!」

ヒュー

側近「魔王様ぁ」ポタポタッ

魔王「……泣いて……おるのか?普段ヘラヘラしておるばかりのお前がどうした」

側近「ううっ……ぐすっ……魔王様ぁ」

魔王「なんだ、言ってみろ」

側近「魔王様魔王様ぁ」ギュッ

魔王「いいから何があった。勇者のことなどあとでよいから言ってみろ」

671: 2013/01/14(月) 21:28:29.21 ID:iuQIBcYl0
側近「魔王様好きです///」

魔王「なっ……」

側近「魔王様……」ジー

魔王「むぅ……しかし世界征服をせねば……」

側近「……」ジー

魔王「ああ!わかったわかった!」

魔王「い、一度しか言わんからな///」

魔王「本当は世界征服などどうでもよかった……」

魔王「私にはお前がいればそれでいい」



おしまい

673: 2013/01/14(月) 21:29:19.26
??

674: 2013/01/14(月) 21:29:19.27
あれ僧侶と勇者のラブラブエンドは?

676: 2013/01/14(月) 21:29:23.94
ちょっと投げやりになってませんかねぇ

678: 2013/01/14(月) 21:30:03.70
スレタイとはいったい

689: 2013/01/14(月) 21:33:42.01
面白かった

721: 2013/01/14(月) 22:04:34.48 ID:iuQIBcYl0
最後まで見ていただいた方いましたらありがとうございました。

それでは!

引用元: 勇者「俺にはこの鉄の拳があればいい!」ドヤァ 僧侶「……」イラッ