1: 2012/12/22(土) 09:29:16.71 ID:/KHIYpOAO
アリアハン ルイーダの店


ルイーダ「じゃあ勇者ちゃん、この3人でいいのね?」

女勇者「はい!ありがとうございます。」

勇者「じゃあみんな頑張って魔王を倒しにいきましょう!」

女武闘家「よーし。いっちょ派手に暴れてやるぞー!」

女僧侶「き、緊張しますね。勇者様のパーティに入るなんて」

女魔法使い「大丈夫よ 、魔法使いの私が一緒なんだからさ」

僧侶「...でもまだメラくらいしかできないくせに」

魔法使い「うっ、痛いところを」

武闘家「まあまあ、私なんて魔法なんてからっきしだよ?」

勇者「そりゃああなたは打撃戦専門の武闘家だもんね~」

 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1356136156

2: 2012/12/22(土) 09:47:03.41 ID:/KHIYpOAO
女商人「(いいな~楽しそうで...商人て需要がないもんね。はぁ)」

商人「(登録はしてくれたけど実際役目がないんなら、意味ないなぁ...どうしよう)」


勇者「じゃあルイーダさん、行ってきます!」

ルイーダ「うん、気を付けて行ってきてね。」

ルイーダ「...行っちゃったね。あの子たちならやってくれるわよね。....あれ?どしたの商人ちゃん?えらい落ち込みようだけど」

商人「え?あ、いやなんでもないですよ。」

商人「あの私、別の仕事があるので、これで。失礼します~」

3: 2012/12/22(土) 10:22:36.57 ID:/KHIYpOAO
アリアハン城下町


商人「(ん~。まあ仕方ないよね、魔法も使えないし、力もあまりないし。武闘家が羨ましいな。)」


商人「(...ん?あれは?武闘家たちだ。うちの店で買い物かな)」

勇者「ええと、そうだなぁ。とりあえず薬草と毒消し草を5つずつください!あ、あとこっちの美味しそうなパン4つで」

商人父「あいよ!ちょいと待ってな。それにしてもいよいよ魔王討伐の旅に出るってか?」

武闘家「そうだよ!ここにいるのが勇者様なんだよ~おじさん。」

武闘家「あとこの子は僧侶だし、こっちのお姉さんは魔法使いなんだ。んで私は武闘家!私の拳で魔王をぶっ倒してやるんだよ」

商人父「へぇーみんな頼もしそうだよなぁ。武闘家ちゃんもいつの間にか強そうになったなぁ。」

4: 2012/12/22(土) 10:28:08.08 ID:/KHIYpOAO
僧侶「? 武闘家さんはお店の方とお知り合いなのですか?」

武闘家「うん、私の幼馴染みの商人のお父さん。」

魔法使い「ああ、さっきルイーダさんのお店で登録した商人さん?」

勇者「武闘家の幼馴染みだったんだ~」

武闘家「小さい頃からずっとね。すごく頭がいいんだ。私は腕っぷしは強いけど、頭の方はからっきしだからね、よく勉強を教わったり、昔はお説教されたりしたよ。」

商人「『昔は』じゃなくて『今も』でしょ?武闘家。」

武闘家「!?」

武闘家「商人?びっくりさせないでよ~。背後からいきなり」

5: 2012/12/22(土) 10:35:52.55 ID:/KHIYpOAO
僧侶「ああ、あなたが商人さんですか。初めまして。僧侶といいます。こっちは私の3つ上の幼馴染みの魔法使いです」

商人「僧侶さんと魔法使いさんね。はじめまして。この店の娘の商人です。」

勇者「はじめまして、勇者といいます。武闘家の幼馴染みか~いいなぁ」

商人「勇者様、はじめまして。お会いできて光栄です!あの、武闘家をよろしくお願いしますね!頭悪い子なんで、大目に見てあげてく、、」バシッ

武闘家「余計なことは言わんでよろしい」

商人「いった~い、全く相変わらずの馬鹿力ね、あなたって」

僧侶「ふふ、仲がいいですね」

勇者「そうだねー。」

6: 2012/12/22(土) 10:42:58.45 ID:/KHIYpOAO
商人父「ほらよ、パンはサービスだ。道中女の子逹とはいえ腹は空くだろうからな、持っていきな。」

武闘家「わあっ~こんなにたくさん!いいの?おじさん。」

商人「いいわよね、ね?お父さん?」

商人父「ああ。魔王を倒してきたら褒美がたくさん貰えるんだろ?そんときにでも払ってくれればさ、なんてな。」

商人「う~ん、お父さん、それはセコいなぁ...」

勇者「はは、そうだね。よし、じゃあみんな行くよっ!」

8: 2012/12/22(土) 10:58:48.70 ID:/KHIYpOAO
数日後
アリアハン城下町 商人の家


父「ただいま~。商人、店番サンキューな。」

商人「おかえりなさ~い。」フムフム

父「お?お前なに真剣な顔でやってんだ?」

商人「ん~?まあ勉強かなぁ」

父「へえ…勉強ねぇ」スッ

ひょい

商人「あ!こら!人が真面目にやってるのに!」

父「まあそう怒るなって~。なになに?《より良い町づくりとは》うんぬんかんぬん?」

商人「…経営学の本だよ。お城の図書館で借りてきたの。」

9: 2012/12/22(土) 11:04:35.00 ID:/KHIYpOAO
父「あ、この本な。俺も昔読んだぜ。このアリアハンの城下町を作った偉い商人様が書いたやつだよな」

商人「そうなんだ?でもお父さんがよくこの本読んだね~かなり難しいよこの本」

父「えっ?ま、まあそれなりにな、はっははは」タラタラ

商人「(ぜったいチラ見しただけだ...)」

父「そうだ、商人。さっき城で知り合いの兵士に聞いたんだけどな。どうやら勇者様御一行はロマリアに着いたらしいとよ」

商人「えっ?!」

10: 2012/12/22(土) 11:36:47.00 ID:/KHIYpOAO
商人「ロマリアってずっと北にあるっていう国だよね?すごいな~けっこう旅は順調なのね。」

父「武闘家ちゃんは頑張ってるかねぇ。あの子もお前と同じで片親だしな。よくお母さんも旅に出るのを許したよな」

商人「あの子のお母さんは強い人だもん。なんたってアリアハンじゃ一番強い武闘家だったんでしょ?」

父「う~ん強かったなあ、向かうところ敵なしって感じだったし」

商人「思いっきり母親を継いじゃってるな~リンは」

12: 2012/12/22(土) 11:59:15.41 ID:/KHIYpOAO
ロマリア地方 シャンパーニの塔


武闘家「とりゃあ~!!」ズババッ!
会心の一撃!

カンダタ「ぐわあぁぁ!...く、くそ、この俺様がこんな嬢ちゃん共にやられるとはな...完敗だ」ガクッ

勇者「やった!カンダタをやっつけた~!」

僧侶「ふう、やりましたね勇者様。」

魔法使い「武闘家の戦いっぷりは相変わらず凄いわねー!」

武闘家「いやいや、そんなこと、あるんですね~これがまた。なんちて」

勇者「武闘家は大物だよね~!私よりもパワーはあるし、素早いんだから困っちゃうな」

武闘家「あなたは勇者なんだもの、これからどんどん強くなるんだよ!私なんかよりね、、っと」 ふらっ

魔法使い「!? 僧侶、武闘家に回復魔法をっ!」

僧侶「うん。…ホイミッ」パァ

武闘家「あ、ごめんね。調子に乗りすぎちゃった。僧侶ありがとう。」

僧侶「いえいえ。無理のしすぎはよくないですよ」ニコッ

勇者「僧侶も魔法使いも援護ありがとね。これで王様に金の冠を返上できるねっ」

魔法使い「ええ。じゃあお城まで戻りましょうか。ルーラッ」

14: 2012/12/22(土) 12:13:19.42 ID:/KHIYpOAO
ロマリア 城下町 宿屋


勇者「ふう~疲れちゃったね。私は目がしょぼしょぼだよ」

僧侶「私もです~。」ゴシゴシ

魔法使い「王様もあんなに感謝してくれるのは有難いけど、まさか王位を譲るからと言ってきたのはびっくりよね」

僧侶「うん、ちょっとしつこかったしね。でも...」チラッ

勇者「私もいきなりそう言われても、と思ってどうしようかと困ってたら...」チラッチラッ

王?「ん~?どうしたかね?お嬢さん方。ワシの顔になにかついてるのかな?王冠が重いのう~おっとっと」

3人「あんたノリノリだな!」

15: 2012/12/22(土) 12:18:42.28 ID:/KHIYpOAO
勇者「武闘家、明日城に行って王位返上してくるんだよ?わかった?」

王?「ふぉっふぉっふぉっ、なにを言っとるのじゃ。明日は城で宴会じゃよ~」

僧侶「ふぉっふぉっふぉっ、じゃなくて武闘家さん!」

王?「まあまあ、いきり立つでない可愛いお嬢さん。これではぱふぱふできんではないか」さわっ

僧侶「ひゃ!や、やめてください、魔法使い!」キッ

王?「おうおう、こちらのお嬢さんもべっぴんさんじゃのう。そちもワシの、、」

魔法使い「ブツブツブツ(ギラの詠唱)」

王?「ごめんなさい、もうしません」しゅん

勇者「ははは...(武闘家は面白いなぁ~)」

16: 2012/12/22(土) 12:41:10.87 ID:/KHIYpOAO
アリアハン 城内 学者の部屋


学者「と、まあ様々な過程を経て、町というものができたわけだよ。」

商人「う~ん、なるほど!よくわかりました。ありがとうございました学者様」

学者「いやいや、あなたが突然、やってきて『町の作り方を教えてください!』と言った時はびっくりしましたが、熱心なあなたの目を見て負けましたよ」

商人「あ、すみませんでした。本当に突然で。ただ私、城下町の道具店の娘で将来は特になにも考えてなかったんですが、最近このアリアハンに住んでいてふと思ったんです」

17: 2012/12/22(土) 12:43:45.21 ID:/KHIYpOAO
学者「ほう、何を思ったのかな?」

商人「本当にたくさんの人が生活している『町』そのものに興味が湧いたんです。店も色んな店があり、みんなが暮らしている家も色んな家がある。」

商人「子供のための学校や公園もある。そして町にはみんなで守るべきルールなんかもあるし、それを守ることで町に暮らすみんなが笑顔でいられる。」

商人「そういうひとまとまりが『町』だと思ったんです。だから将来私が自分で『町』を作ったりできたら素敵だな、って。」

学者「ふむふむ、それは素晴らしい事ですね。私らは普段なにも考えずにこのアリアハンの町に暮らしている。だけどよく考えれば『町』というのは誰かが作り上げたもの。」

学者「それなら商人さんの将来が素晴らしいものになることを祈っていますよ。」

19: 2012/12/22(土) 13:34:10.40 ID:/KHIYpOAO
アリアハン 城下町 メレルの家


商人「お父さんただいまー!」

父「おうおかえり!どうだったよ?5日も城内に通い詰めて成果はあったか?」

商人「うん、学者先生にみっちり教えてもらったんだよ。『町』について」

父「そっかそっか、うん。お前の充実した顔でわかるぜ。よかったな。」

商人「ありがとう。…あのお父さん?」

父「ん?なんだよ。どした?」

商人「5日も朝から夜まで家空けちゃってごめんね。忙しくなかった?」

父「はぁ?ああ全然大丈夫よ。心配だったのか?」

商人「まあ、ちょっとね」エヘ

20: 2012/12/22(土) 13:38:48.73 ID:/KHIYpOAO
父「へっ、お前に心配されるようじゃ俺もまだまだってことだな、はっはっはっ!」

商人「じゃあ今夜は私が夕飯作るよ。」


その夜


商人「ごちそうさまでした!」

父「美味かったぜ、また腕あげたか?」

商人「かもね。でもまだお母さんの料理にはかなわないよね」

父「当たり前だ。母さんの料理はそれはもう至高のメニューだったからな」

商人「それはそれはごちそうさまでしたね。」べー

かさっ

商人「あれ?お父さんこれなに?手紙?」

父「おお、すまん忘れてた。お前が城に行ってる間に届いたんだ。武闘家ちゃんからだろう」

商人「あ、ほんとだ!この字はあの子のだ。って差出人の自分の名前を忘れるなんて相変わらずねぇ」

父「まったくだな。なら開けてみろよ」

商人「うん」

ビリビリ
カサッ

21: 2012/12/22(土) 13:52:41.24 ID:/KHIYpOAO
《拝系 商人お元気ですか?

商人「(いきなり字間違えてるよ...)」

勇者たちとアリアハンを旅立って1ヶ月くらいかな。今はアリアハン大陸を抜けてロマリアという国に着き、そこでロマリアの王様に盗賊に盗まれた冠を取り返すように言われたんだ、んで盗賊が潜む塔に殴り込んで盛大にやっつけたんだよ。どうだ。すごいだろ、エッヘン!

商人「(エッヘンじゃないよ!すぐに調子に乗るんだから~この感じだと、王様に感謝されたりしたら危ないなぁ。他の3人が引いてなきゃいいけどね、あはは。)」

22: 2012/12/22(土) 13:59:36.33 ID:/KHIYpOAO
イシス 城下町 宿屋


《そして私たちは旅を続け、カザーブ、アッサラームと町を進み、今はなんとイシスという砂漠の中にある城下町にいるんだぞ。砂漠の中にだぞ~すごいだろーエッヘン!

ただね、ロマリアの北西にあるほこらからポルトガっていう国に行くのに、魔法の鍵っていう鍵が必要なんだって。その魔法の鍵っていうのが今私たちがいるイシスの少し北にある、ピラミッドっていう古代人のお墓がある建物の中にあるみたいなんだよね。だから明日はみんなでピラミッドに行ってみようって話になってるんだ。

少し旅も軌道に乗って、勇者も力も強くなって魔法も使えるようになって勇者っぽくなってきたよ。僧侶は回復魔法で何度も私を治してくれて、全然怒らないし優しいんだよ~。魔法使いの攻撃魔法も強力で私も怖い目見たけど(笑)私より大人だし、頼れるんだよ。私も魔物とかなり戦って、経験も重ねて強くなったと思うんだ。

ただ少しだけホームシック気味なのかな、あなたやおじさんの事も考えると寂しくもなるし。だから手紙を書いています。もちろんお母さんにも手紙書いてるよ。だからこの手紙を読んだら、安心してね。私たちは頑張ってます。まあキメラの翼や魔法使いがルーラを覚えたりしたのでアリアハンに帰ろうと思えば帰れるんだけどね、あはは~。

では、おじさんをちゃんと手伝ってお店頑張ってね。また手紙書けたら書くね。


砂漠の国イシスより》

23: 2012/12/22(土) 14:07:18.52 ID:/KHIYpOAO
武闘家「よし、書けたぞ~。久々に手紙なんか書いたら首と肩が痛いなぁ~むうう…」

ガチャ

勇者「ふぃ~気持ち良かったー。お風呂空いたからどうぞ~。ってあれ?どうしたの?かなりお疲れですね~?」

武闘家「勇者か、うん今ね手紙を書いてたんだ。」

勇者「手紙?」

武闘家「アリアハンにいる商人とお母さん宛にね。2通分一気に書いたから疲れちゃったよ。」

勇者「へえ~じゃあはい、ホイミッ」パアッ

武闘家「てか首と肩のコリにホイミって効くわけ?」

勇者「…知らない」

24: 2012/12/22(土) 14:10:39.03 ID:/KHIYpOAO
僧侶「う~んどうなんでしょうか?ホイミはこりに効くのか…魔法使いはわかる?」

魔法使い「おそらく効きは弱いと思う。だったら私が効く湿布を作るよ。」

武闘家「へえ~自作できるんだ?魔法使いはすごいな~。ぜひ頼みます、首と肩が痛くてさぁ」ペコ

僧侶「あら?そんなに痛いのですか?どうされたんです?」

勇者「私がお風呂入ってる間、ずっと手紙を書いてたんだって。僧侶さんとお母さんに。」

魔法使い「なるほど。それで首と肩をね。」

25: 2012/12/22(土) 14:21:10.73 ID:/KHIYpOAO
僧侶「手紙ですか、素敵ですね。手紙なんてアリアハンにいるときは書く機会ないですもんね。」

武闘家「そうでしょー?私はずっと片親だし、幼馴染みの商人とはずっと一緒にいたから、なんか寂しくなっちゃってさ。」

魔法使い「そうか…僧侶とは今でもこう一緒だかあまり寂しいって感覚はないからな。」

僧侶「私たちはそうね。」

勇者「私は父が勇者だったけど、基本は城にいて兵士さんとか姫様とかが普通の友達みたいな感覚だからな~。」

武闘家「みんなも手紙書いてみるといいよ。なんか気持ちがすっきりするしね。」

魔法使い「…私も書こうかな?」

僧侶「あ、じゃあ私も!ねえ武闘家さん便箋余ってますか?」

武闘家「あるよ~!えーいじゃあ全部もってけ~ドロボーども。」

勇者「なんか武闘家、キャラ変わってない?」

27: 2012/12/22(土) 22:13:09.54 ID:/KHIYpOAO
さらに1ヶ月後
アリアハン 城内


商人「毎度ありがとうございますー!……さて今日はこのくらいで店じまいかな。今日の売上はっと....」パチパチ

兵士「商人さーん!」タッタッタッ

商人「ええと...ぶつぶつ」パチパチ

兵士「商人さーん!」

兵士「商人さんてば!」

商人「はいっ?!あ、ああごめんなさい。売上計算してて集中してたもので」

兵士「ああ、なるほどそうでしたか。今日も城内販売お疲れ様です。」

商人「いえ、そんな、皆さんのお役に立てれば私は嬉しいです。」

28: 2012/12/22(土) 22:15:28.71 ID:/KHIYpOAO
兵士「すごい反響ですよ、城内には案外お年寄りや、夜勤の方や部署によってはホントに忙しくて城下町に買い物に行けない人達が多いですからね。」

兵士「王様も最初は渋っていて良い顔をしてませんでしたが、あなたの必氏の説得と働きぶりを見て、大変喜んでましたし」

商人「王様もそんなことを...私も実行した甲斐がありました。城内の空いたスペースを借りて店を出させてもらった当初はみなさん物珍しさで見て行くだけでしたけど。」

商人「何日か経ってからちらほらと買い物をしてくれる方が増えてきて、お客さんが別の新しいお客さんを連れてきてくれました。」

兵士「僕も最初は遠くで眺めるだけでしたが、人が増えていくにつれ便利かな、と思って買わせてもらいましたよ。…あっ」

31: 2012/12/22(土) 22:21:02.50 ID:/KHIYpOAO
姫「あのう、すみません。」

兵士「ひ、姫様!」

商人「あ、姫様。どうしたんですか?」

姫「あの、もう今日はお店は閉めてしまうのですか?」

商人「はい、今日の売上を計算していたところですが。」

姫「そうですか、あの、買いたいものがあるのですが。」

兵士「姫様、そういえばお買い物は初めてでは?」

姫「は、はい。私は城下町ではおろか、自分で買い物をしたことがありません。」

商人「そうだったのですか。でしたら、今から姫様だけに特別に開店しましょう!」

姫「え?本当に?よろしいのですか?」

32: 2012/12/22(土) 22:28:18.32 ID:/KHIYpOAO
姫「ああ、よかった。忘れるところでした。これで手紙の返事が書けます。」

商人「手紙ですか。どちらの王子様に書かれるのですか?」

姫「えっ?いや違いますよ~まだ私には恋文を送るような想い人はおりません。今魔王討伐で旅立っている勇者にです。」

商人「あっ?勇者様?姫様は勇者様とお知り合いなのですか?」

姫「そうです。もう幼い頃から姉妹のような感じで。先日旅先のランシールという村から手紙を送ってくれたようで、その返信を書こうと思いまして。」

商人「そうだったんですね~、実は私の幼馴染みの武闘家も勇者様と一緒に旅しているんですよ。」

33: 2012/12/22(土) 22:31:28.52 ID:/KHIYpOAO
姫「そうなのですか!?そういえば武闘家さんという名前は勇者の手紙にもよく出ていました。とにかく面白くて強くて、本当のお姉さんみたい、と。」

商人「面白い...(ああ~大丈夫かな、あの子)」

姫「?どうしました?」

商人「い、いえ。」

姫「そういえば手紙に書いてあったのですが彼女たちは、ダーマ神殿というところで、僧侶のさんが賢者に、魔法使いさんが僧侶に転職した、とありましたよ。転職というのはすごいですよね。」

34: 2012/12/22(土) 22:35:44.24 ID:/KHIYpOAO
商人「え!僧侶さんが賢者に?(うわぁ私が子供の頃に憧れていた賢者様にかぁ、すごいな~)魔法使いさんは僧侶か、じゃあ二人とも回復魔法も攻撃魔法も両方できるようになるんですね。すごいなぁ…」

姫「ええ、さらに強くなって魔王を倒してほしいですね。」

姫「あ、こんな時間。商人さん今日は私のためにわざわざお店を...ありがとうございました。またお店お邪魔します。では。」テクテクテク

商人「あ、はい。とんでもないです。また来てくださいね~!(でも姫様、返事を書いてもあっちは移動してるだろうから出しようがないような....ま、いいか)」

35: 2012/12/22(土) 22:42:37.99 ID:/KHIYpOAO
ランシールの村 入り口


勇者「うわぁ~のどかな村だね~」

賢者(元僧侶)「そうですね。小さい村だけど、なんていうかいい雰囲気。」

武闘家「ねぇ、勇者。船旅長かったから今日はここで泊まろうよ~」

僧侶(元魔法使い)「勇者、私もそうしたいな、なんか気持ち悪くて...酔ったみたい。うう」

勇者「僧侶大丈夫?…そうだね。武闘家、彼女を連れて先に宿屋に行っていて。私は賢者と買い物に行ってくるから。」

武闘家「買い物?ああ、なにか珍しいものが売ってればいいね。頼むね~。さて、僧侶行くよ。」

僧侶「あ、あんまり早く歩かないで...ううう」

36: 2012/12/22(土) 22:45:18.29 ID:/KHIYpOAO
ランシールの村 宿屋


宿屋の旦那「はい。じゃあ4人部屋ね。突き当たって右の部屋だからね、ごゆっくり~」

武闘家「おじさんありがとう!さて、僧侶は部屋で休んでいて。」

僧侶「...あなたはどうするの?」

武闘家「暇だしちょっと散歩してくるよ。」

37: 2012/12/22(土) 22:51:14.07 ID:/KHIYpOAO
ランシールの村 宿屋 夜


勇者「ああ~夕飯美味しかったね。もう私食べれませーん!」

賢者「久しぶりにちゃんと宿屋の食事でしたもんね!」

武闘家「私もご飯5杯も食べちゃったよー」

賢者「武闘家さんは食べすぎですっば。」(^_^;)

勇者「僧侶は大丈夫?寝て良くなった?」

僧侶「うん。たいぶ。みんなごめんなさい。」

武闘家「いいって~気にしない気にしない。えへへ」

勇者「あ、私今から手紙でも書こうかなって思ってるんだけど。みんなそれぞれ自由時間ね。」

賢者「はーい」

武闘家「了解~」

僧侶「私はまだ寝てるね」

38: 2012/12/22(土) 22:55:33.38 ID:/KHIYpOAO
宿屋 ロビー


武闘家「あ、賢者こんなところにいた~」

賢者「武闘家さん?どうしたんですか?」

武闘家「勇者は真剣に手紙書いてるからちょっかい出したら追い出されちゃったよ。僧侶は寝ちゃってたから暇だし、賢者とおしゃべりでもしようかな~ってね。」

賢者「ふふ、そうですか。いいですよ。私もここで新聞読み終わったところなので。」

武闘家「新聞読んでたんだ?すごいな。なにか気になる事でもあった?」

39: 2012/12/22(土) 22:59:07.93 ID:/KHIYpOAO
賢者「う~ん、サマンオサではさらに行政が悪化していて、国王様の独裁的政治がさらに加速してるとの事で、どうなってしまったのか気になりました。」

武闘家「へぇ~。…それってなんか王様が怪しいよね。例えば魔物とかが王様に成り代わってるとか、ね?」

賢者「へ?ま、まさか~?いくらなんでも、そんなこと。」

武闘家「いや、案外そうかもよ。だってさロマリアの王様なんか王位を譲ってやるぞ、とか言ってたじゃん?」

賢者「あれは武闘家さんが悪ノリしすぎです(笑)」

40: 2012/12/22(土) 23:05:57.84 ID:/KHIYpOAO


武闘家「商人がね、小さい頃からずっと賢者様に憧れててね。」

賢者「そうなのですか。私もまさか今こうして賢者になれているのがまだ実感が薄くて。」

武闘家「だから商人は、私の仲間が賢者様になったんだよ、って知ったら喜んでくれるだろうなっ、てね。」

賢者「ホントですか?じゃあ私頑張らなくちゃ、まだまだ覚えてない魔法たくさんあるから....」

武闘家「そうだよー頑張ってもらわないとね。賢者君には」

賢者「えへへ。はい、頑張ります。」テレ

41: 2012/12/22(土) 23:08:45.80 ID:/KHIYpOAO
武闘家「まあ~それにしても、悟りの書をゲットするには苦労したしね。私が」ドヤッ

賢者「あ、たしかにそうでした!まさかあの塔の細いロープをひょいひょい渡って行ったのは目を疑いました!」

武闘家「うむ、そうだねぇ。君ら3人が腰を抜かしてへたりこんでるのを横目にこの武闘家様が颯爽と渡ってったからね」

賢者「さすが武闘家さん!って感じでした。(まあ、かなりお猿さんみたいだったけど)」

42: 2012/12/22(土) 23:13:20.95 ID:/KHIYpOAO
アリアハン 城下町 メレルの家


父「おーい!お前宛に手紙が届いたぞ。」

商人「はーい!今行くよ。(手紙?リンからだ~)」

父「ほらよ。たぶん武闘家ちゃんからだろ。開けてみな」

商人「ありがとう!」

ビリビリ
カサカサ

43: 2012/12/22(土) 23:18:19.97 ID:/KHIYpOAO
商人「(相変わらずの字間違いね、あの子...ふむふむ)」

商人「(黒胡椒ねぇ、そんな貴重なものだったんだね、知らなかったな。)」

商人「(へぇー消え去り草なんて貴重なものがねぇ。)」

商人「(エジンベアなんてだいぶ北の島国よね?最後の鍵?)」

商人「(あの子、まさか消え去り草でみんなに悪戯とかしてないよね...やりかねん)」

商人「(スーか、面白い名前ね。ふむふむ。)」

商人「(………えっ?)」

商人「(それってどういう?)」

44: 2012/12/22(土) 23:21:06.45 ID:/KHIYpOAO

ガタッ
バタバタッ
バン!
タッタッタッ

父「(あれ?あいつどうしたんだ?おとなしく手紙を読んでたと思ったら置いて出ていっちまいやがった...)」

父「どれどれ?手紙を盗み見る趣味はねぇが、一体なにが?許せ娘よ」

ガサガサ

45: 2012/12/22(土) 23:27:19.44 ID:/KHIYpOAO
《拝計 商人様
お元気ですか?手紙を書くのはちょっと久しぶりになるかな。

私たち勇者一行は、順調に旅を続けているよ。前回の手紙の続きから書くね。まずピラミッドに入って、軽く地獄を見ました。中は忍者屋敷か!ってくらいの仕掛け満載で、落とし穴、人喰い箱、魔法封じ、まんまと引っ掛かりました。ただ私たちのレベルも高かったからミイラとかを沢山倒しつつ、魔法の鍵を手にいれたよ。どんなもんだい、エッヘン!

まあその後は、私の頭じゃよくわからなかったけど、ポルトガではなぜか黒胡椒なんかを欲しがるよくわからない王様のためにバハラタで手にいれたよ。なんでもすんごい貴重なんだってね?商人は知ってた?(ちなみにまたカンダタって盗賊が悪さしてたからこらしめてあげたんだぞ、どうだ~!)

46: 2012/12/22(土) 23:30:09.02 ID:/KHIYpOAO
そうそう、あとビッグニュース!ダーマの神殿っていう転職ができる場所があるんだけど、そこで僧侶が賢者様に、魔法使いが僧侶に転職したんだ~。あなたは賢者様に憧れてたでしょ?凄いよね~。でも二人ともすごく頑張ってレベル上げてるんだ、私も見習わないとね。

その後、エジンベアって国に行ったんだけど城の入口で兵士が通せんぼして入れてくれないんだよ、田舎ものは去れ!みたいにさ。頭に来たけど、どうしても無理だからあきらめて船で北に向かってたらね、たまたま着いた小さな大陸にランシール村っていうのがあってね。そこでは旅の途中で前々から噂があった自分の体を少しの間消しちゃえる[消え去り草]が普通に道具屋さんで売ってたんだよね。これは使えるぜっ てことでもう一度エジンベアに行って入口の憎い兵士にあんなことやこんなことをして、ついでに城内の人にも……
あ、脱線しました。

47: 2012/12/22(土) 23:33:31.09 ID:/KHIYpOAO
と、まあここからが本題なんだ、よく聞いてね。あなたに関わる重要なことなんだよ。

最後の鍵を手にいれて、私達は川が入り組んだ土地にあるスーっていう村に行ったんだ。この村の人達の口調が独特でかわいいんだよね。「旅の人 よく来た あなたかわいい」とかカタコトでね。

そのスー村から東に少し離れた草原の一画にほんとに小さい集落があるんだけど。そこにいたスー出身のおじいさんが言ったんだ。「ここに新しく町を作りたい。だから知恵のある商人が1人貸して欲しい。わし手伝ってほしい。」ってね。

48: 2012/12/22(土) 23:36:33.05 ID:/KHIYpOAO
私はすぐに商人のことを思い浮かべたな。たしかあなたはそういう事も興味があるって言ってたよね。もし良ければおじいさんのお手伝いをしてくれないかな?

ただアリアハンからは遠いし、ずっと家を空けることにもなっちゃうよね。おじさんも商人のことすごく大事に思ってるからこれを聞いたらなんて言うかな。よ~く考えてみてね。勇者、賢者、僧侶にもこのこと話したら賛成してくれたよ。

49: 2012/12/22(土) 23:38:15.03 ID:/KHIYpOAO
この手紙がそちらに着く数日後には私達は一度アリアハンに戻ることになりました。まあ一度休憩も兼ねてね。私も家に戻ってお母さんの顔見たいし。(ちなみにルーラで戻ると思うよ、勇者が覚えたから使いたくてウズウズしてるんだよね)

じゃあまたアリアハンに戻ったら会ってゆっくり話そうね。長くなっちゃってスマンね。おじさんにもよろしくね。

スーの村にて 》


父「ふうむ(…なるほどな。さてあの子はどうするのかね。)」

父「(それにしても消え去り草か、俺も欲しいなぁ~。)」

50: 2012/12/22(土) 23:42:47.95 ID:/KHIYpOAO
アリアハン 城下町外れの公園


商人「はあ~……」

商人「どうしよう」

商人「(新しい町を作るか..)」

商人「(まさか武闘家からの手紙が今の私の考えている事とが一致しちゃうなんて。)」

商人「(だけどせっかく城内販売も軌道に乗ってきたところだったしな)」

商人「(家のお店の事もあるし。お父さんは寂しがるだろうなぁ)」

51: 2012/12/22(土) 23:44:17.57 ID:/KHIYpOAO
商人「(だいいち、町を最初から作るなんて私ができるのかな?)」

商人「(長くアリアハンには帰ってこれないかもしれない)」

商人「…うーん、一人で悩んでてもしょうがない。飛び出て来ちゃったし、お父さん心配してるかな。戻ろうっと!」スタッ

タッタッタッ

52: 2012/12/22(土) 23:48:37.87 ID:/KHIYpOAO
アリアハン 城下町 商人の家

ガチャ
商人「ただいまー」

「………」

商人「あれ?誰もいない?(お父さんいないな。)」

商人「…ん?奥の部屋から声が聞こえる」ソー

商人「(あ、お母さんのお仏壇の前でお父さんなにブツブツ言ってんだろ)」

53: 2012/12/22(土) 23:50:17.21 ID:/KHIYpOAO
父「母さん、もしかしたら商人のやつ、アリアハンから出ていっちまうかもしれないんだ」

父「まあ、でもあいつの大きな夢だったみたいだしな。最近はさ、お城の王様に直談判までして城内でうちの店の移動販売してたんだ。」

父「今じゃだいぶ盛況らしくてな、あいつの商人としての才能は相当だぜ?俺と母さんの娘だもんなぁ、はっはっはっ!」

54: 2012/12/22(土) 23:56:48.72 ID:/KHIYpOAO
父「あいつが8つの時に母さんは病にかかっちまって氏んじまったが、明後日にゃ18にもなるんだ。10年なんて早いもんだな。」

父「あの子は本当に素直に育ってくれたよ。口では生意気な事言ってるが、俺のことを本当に心配してくれてるんだ。」

父「あの優しさは母さんに似たんだなぁ。」

父「もし商人が今回の話を断ったりしたら、ガツンと言ってやるんだ。」

父「だから母さんも天国から俺達の娘のこと見守っててくれよな」

父「久々に好きでもねぇ酒なんて飲んじまって...ねむ....くなっち」zzz

55: 2012/12/22(土) 23:58:55.67 ID:/KHIYpOAO

メレル「(あ~あ寝ちゃった、風邪引いちゃうよ。えと、半纏をよいしょと)」ふわっ

メレル「(お父さん...ありがとう。私やるね!)」グッ

56: 2012/12/23(日) 00:05:32.85 ID:Ad90MzaAO
2日後
アリアハン 城下町 入口


…………キーン
ドサッドサッドサッドサッ

武闘家「っつ~!いてててっ」

僧侶「あ、足が、しびれて。うう~~」

賢者「いたぁ...ちゃ、着地失敗ですね~」

勇者「あいたた、ご、ごめんね。詠唱を少しミスったみたい。」

武闘家「勇者ったら、相変わらずおっちょこちょいなんだからー」

賢者「まあまあ、とりあえずルーラの役割としては果たせたし。ルーラは難しいですよ。」

僧侶「勇者、次からはルーラは私が専門でやるからね。」ジロ

勇者「はぁい...」しゅん



?「あっ!勇者様!武闘家!賢者さん!僧侶さん!」
タッタッタッ

武闘家「商人っ?!久しぶり~!元気だった?」

商人「うん。元気だったよ!」

57: 2012/12/23(日) 00:42:35.21 ID:Ad90MzaAO
数時間後
アリアハン 城下町 商人の家


ガチャ
勇者「ふう~。やっと終わったよ。王様の話がすっごく長いんだもん。」

賢者「勇者様お疲れさまですー」

僧侶「大変だったわねー、ほら勇者座って。」

勇者「ありがとっ。」

武闘家「先にいただいてます~」 ぱくぱく

商人「あ、勇者様おかえりなさい!お腹空いたでしょ?私がみんなの夕食作ったの。ささ遠慮しないで食べて食べて!」

58: 2012/12/23(日) 00:46:48.73 ID:Ad90MzaAO
勇者「うっわぁー豪勢。実はお腹ペコペコなんだよね、さっそく頂きますー!」

賢者「うん!このお肉、どうなってるの?すっごい柔らかい~」

武闘家「パクパク………」

僧侶「あ、ほんとだ。味付けも絶妙だし!商人さん、これどうやってるの?」

武闘家「むしゃむしゃ………」

商人「えへへ...企業秘密です」
武闘家「ぐい~ごくごく……」

勇者「え~教えてよ。お城のコックのより美味しいもん」

武闘家「ガツガツガツガツ!」

商人「あの?武闘家さん?」

武闘家「おかわりー!」

商人「…………はい」ガクッ

60: 2012/12/23(日) 08:36:42.66 ID:Ad90MzaAO
夕食後


武闘家「であのね、商人。この前の手紙のことなんだけど..」

商人「あ、うん。読んだよありがとね。相変わらず字間違ってるよ。」

武闘家「あ~はいはい。失礼しました。」ペコ

商人「次からは気を付けるように。」ビシッ


商人「...私やるよ」

61: 2012/12/23(日) 08:39:59.21 ID:Ad90MzaAO
武闘家「え?」

商人「おじいさんの町作りのお手伝い。私やりたい!」

武闘家「そっか...いいの?無理にじゃないんだよ」

商人「こんなチャンス、普通巡ってこないよ!私の今一番やりたいことなの」

武闘家「そっか。ありがとう。あなたならそう言ってくれると思ってた。あのおじいさん喜ぶぞ~えへへ」

62: 2012/12/23(日) 08:45:52.82 ID:Ad90MzaAO
商人「武闘家達だって魔王討伐っていうとんでもない責務があって戦ってるんだもんね。私もなにか誰かの役にたてればさ。」

武闘家「そうだ。おじさんは、なんて言ってた?反対しなかったの?」

商人「うん、お父さんはぜひやってみろ!って、店や城内販売のことはお父さんや他の従業員人が継いでくれるんだって。」

武闘家「へぇ~。おじさんも愛する一人娘が出て行っちゃうのに、案外あっさりだねぇ。」

商人「そうだね...(ま、そんなこともないみたいだけどねー)」

武闘家「ん?なに?」

商人「なーんでもないよ」

63: 2012/12/23(日) 08:51:39.17 ID:Ad90MzaAO
武闘家「よしわかった。じゃあ私も帰るね。勇者もお城、賢者と僧侶も今日は家に泊まるって言ってたからね。」

商人「お母さんにたくさん甘えてきなよ」

武闘家「私は子供じゃないよーだ」ベー

ガチャ
クルッ
武闘家「商人。18歳のお誕生日おめでとう!じゃあね、おやすみ!」

商人「(あ、覚えててくれたんだ?)...ありがとう」ジワッ

64: 2012/12/23(日) 08:56:27.74 ID:Ad90MzaAO
翌日
アリアハン 城下町 中央広場


賢者「おはようございます~。商人さん。」

僧侶「商人さんおはよう。昨夜は楽しかったわ、ありがとう。」

武闘家「おはよー!う~ん伸びー」ぐぅー

商人「おはようございます!こちらこそ、昨夜はわざわざありがとう。」

65: 2012/12/23(日) 09:04:39.98 ID:Ad90MzaAO
賢者「そうだ。つい今しがた武闘家さんから聞いたんだけど、商人さん、昨日がお誕生日だったんですね!おめでとうございます!」ぱちぱち

商人「え?ありがとう~!昨日で18歳になりました。」テレッ

僧侶「おめでとう。じゃあ商人さんは私の一つ下ね。」

商人「あ、じゃあ僧侶さんはお姉さんですね。よろしくです。」ニコッ

武闘家「いいな~、私はまだ17だからなぁ先越された感じだ~。あれ?たしか賢者も17だっけ?」

賢者「私はまだ16なんですよ、僧侶や商人さんからすればまだまだ子供ですね。」

商人「若いなぁ。じゃあ勇者様っていくつなの?」

僧侶「たしか...勇者はまだ15歳になったばかりだって言ってたわよ」

66: 2012/12/23(日) 09:10:47.96 ID:Ad90MzaAO
商人「ま、まだ15歳で勇者様に...(だったら私なんてたいしたことないわね、頑張らないとね)」

武闘家「それにしても勇者遅いね、遅刻だぞ~ニヤニヤ」

賢者「(あの顔、なにか企んでる...)お城に住んでる人はいろいろと大変なんですよ。」

僧侶「って言ってる間にほら、来たよ。」

タッタッタッ

勇者「はぁはぁ、み、みんな~おはよう~!遅くなってごめんね。」

武闘家「まぁーたどうせ、王様と姫様と話してたんでしょ。こいつめこいつめ。」グリグリグリ

勇者「あっ、いたたたた。武闘家ごめんなさい。」しゅん

67: 2012/12/23(日) 09:23:00.28 ID:Ad90MzaAO
商人「こらっ!武闘家ったら、しょうがないでしょ、勇者様は大事な用があったんだから。」

武闘家「うっ。...はい、ごめんなさい。調子に乗りました。」しゅん

賢者「(す、すごい。武闘家さんを一発で黙らせた!)」

武闘家「勇者、ごめんね。痛かった?反省...」

勇者「ううん、遅刻した私もいけなかったしね。それにしても武闘家を一発でおとなしくさせるなんてすごいねー」

68: 2012/12/23(日) 09:32:31.02 ID:Ad90MzaAO
商人「え、いや。それほどでも。(まあこんなこと昔からだけどね、あはは)」

勇者「商人さん、改めてよろしくお願いします。」

商人「うん、こちらこそ短い間だけどよろしくね勇者、でいいかな?私のことは商人でいいよ。」

勇者「いいよ、もう仲間だもんね!ありがとう。商人。」

僧侶「よし、じゃあみんな行きましょう!」

一同「「「おー!!」」」


………………


かくして彼女たちの旅は再びはじまった。

前編 おわり

69: 2012/12/23(日) 09:52:45.53 ID:Ad90MzaAO
前編終了時点でのレベル(推定)

勇者
Lv.32
おっちょこちょい

武闘家
Lv.30
お調子者

賢者(元僧侶)
Lv.26
やさしい人

僧侶(元魔法使い)
Lv.27
頭脳明晰

商人
Lv.1
頑張り屋さん

71: 2012/12/23(日) 10:21:51.72 ID:Ad90MzaAO
各キャラプロフィール(人物設定)

勇者 15歳
肉親は父親がいたが魔王討伐の旅の途中で命を落とす。勇者として育てられていたせいか少し男の子っぽい。誰とでも分け隔てなく話ことが得意。基本おっちょこちょいで楽天家。遅刻ぐせがある。

好きな魔法はルーラだが詠唱が難しく上手くいかない。毎回詠唱直後の飛び立つ瞬間がくせになる、とのこと。

武闘家のことは面白いお姉さん。
賢者のことは優しいお姉さん。
僧侶のことは頼れるお姉さん。
とそれぞれ思ってる。

作者使用時の名前は『レナ』

72: 2012/12/23(日) 10:28:20.04 ID:Ad90MzaAO
武闘家 17歳
肉親は母のみ、幼い頃より強い武闘家だった母親を見て育つ。少しがさつだが根は優しい。かなり大食いだが太らないのが自慢。調子に乗ると羽目を外しやすい。その行動っぷりから実年齢より幼い印象を与える。

好きな道具は消え去り草。もちろん悪戯をするための必需品。苦渋を舐めたエジンベアでは武闘家×消え去り草が猛威を振るった。

作者使用時の名前は『リン』

73: 2012/12/23(日) 10:39:07.79 ID:Ad90MzaAO
賢者(元僧侶) 16歳
両親がいる。家が近い同士の魔法使いとは3つ上ながら幼馴染み。教会に所属する僧侶であるのと元々の生真面目で優しい性格から言葉使いは丁寧だが魔法使いにはタメ口。少々腹黒い。武闘家の暴れっぷりを呆れ半分、暖かい目半分くらいで見ている。

好きな魔法はメラ。賢者に転職して初めて覚えた攻撃魔法のためにかなり愛着がある様子。メラミよりついついメラを使いたくなるが自制している。

作者使用時の名前は『ローサ』

74: 2012/12/23(日) 10:47:46.33 ID:Ad90MzaAO
僧侶(元魔法使い) 19歳
両親がいる。3つ下の賢者は妹みたいなもの。レーベの高名な魔法使いの見習い。頭脳明晰で潜在魔力はかなり高い。パーティーで最年長のためか落ち着いているが、本人的には背伸びしている。かなりルーラマニア。船旅が苦手。

好きな魔法はルーラとバギマ。前者は勇者と同じ理由で好きらしい、勇者と違い詠唱は完璧。後者は魔物が風で高く舞い上がるのを見るのが快感らしい。

作者使用時の名前は『シェリス』

75: 2012/12/23(日) 10:59:13.68 ID:Ad90MzaAO
商人 18歳
肉親は父のみ、父がアリアハンでパン屋兼よろず屋を経営しており、看板娘のつもり。幼馴染みの武闘家とは姉妹のような関係。かなり頭脳明晰で商人の才能は高いが、本人に自覚はあまりない。料理の腕は高いが、それ以外はかなりズボラ。

憧れの魔法はパルプンテ。なにが起こるかまったく予測できないという効力をなにか別のことに(商売、町作り等)利用できないかと考えてる。

いちおう主人公なのだが、いまいちまだパッとしないのが作者の悩みどころ(笑)たぶん次に書く中編では彼女が完全に中心になる。

作者使用時の名前は『メレル』

82: 2013/01/05(土) 09:52:58.05 ID:LLtS6acAO
アリアハンから旅立って1日

船上

商人「オーブ?なにそれ?」

勇者「うん、なんかね。魔王を倒しにいくのに必要なアイテムみたいなんだよね。」

賢者「ええ、噂ではこの世界に6つ存在するらしいのです。」

僧侶「しかもそれぞれ色が違うらしいわね。」

武闘家「なんか面倒そうな話だよねー。」

商人「へぇ~、私は初耳だな。」

勇者達5人はアリアハンを旅立ち、船で北上していた。商人をスー東にある集落に送り届けるためだ。

83: 2013/01/05(土) 10:01:36.44 ID:LLtS6acAO
グラグラ...

勇者「ん?なんだろ?」

ズズズズズ
ズゴォォォ

賢者「!?敵ですっ!」

僧侶「商人、下がっていて」

商人「うわぁ、おっきいイカ!」

武闘家「大王イカだよ!しかも3匹も!」

大王イカが3匹あらわれた

84: 2013/01/05(土) 10:19:27.06 ID:LLtS6acAO
勇者「みんな!油断しちゃだめだよ。賢者と僧侶は魔法で!」

賢者・僧侶「了解!」

勇者「武闘家はバックアップね、海上では直接攻撃は危ない」

武闘家「わかった!商人、薬草と魔法の聖水準備よろしくね。」

商人「う、うん。わかった。(凄い、いざ戦いとなると4人とも別人ね)」

僧侶「まずは眠ってもらいます。深き眠りの底に落ちろっ!『ラリホー』」

僧侶はラリホーを唱えた。

大王イカAは眠りに落ちた
大王イカBは眠りに落ちた
大王イカCには効かなかった

賢者「よし眠らなかった奴に、燃えよ火球!『メラミ』」

大王イカCに直撃!
大王イカCをやっつけた

85: 2013/01/05(土) 10:34:54.00 ID:LLtS6acAO
勇者「よし!私もいくよ。天なる轟きよ...」ブツブツ

僧侶「あっ!勇者それはダメ」

勇者「降り注げ雷よ!『ライデイーン』」

賢者「みっ、皆さん伏せてー!」ガバァ

武闘家「うわ!やばい!商人も伏せてー!」ガバァ

商人「きゃああ~!(眩しい!)」ガバァ

ピカァ!
キィィィン!
ズシャァァァ!

勇者はライデインを唱えた
天から雷が降り注ぐ
大王イカABに直撃
大王イカを消し去った

86: 2013/01/05(土) 10:46:51.82 ID:LLtS6acAO
約2時間後
船上 船室


商人「...ん」

武闘家「あっ?起きた!」

商人「ん~?あれ?武闘家。私、どうしたんだろ?」

武闘家「大丈夫?あなたは気絶して2時間くらい寝てたんだよ。」

商人「気絶?なんで?」

先ほどの戦闘で、勇者の放った雷の魔法ライデインが、海上だったために敵だけでなく船上にいた皆にも感電被害を及ぼしたのだった。レベルの低い商人はダメージをモロに喰らったのだ。

87: 2013/01/05(土) 10:58:34.28 ID:LLtS6acAO
ガチャ

勇者「あっ!商人起きたんだ?」

武闘家「あっ!じゃないでしょ~。まったく。商人に謝りなさい。」

勇者「ご、ごめんなさい!久々の戦闘だったからつい。商人にもいいところ見せようと思って、海の上ってことも忘れて雷の魔法を...」

商人「ああ、そうだったんだ。私は突然目の前が明るくなって目が眩んだと思ったら、そのまま」

武闘家「私だって、いきなりだったから驚いたよー。感電したし、痛かったんだから。」

勇者「あ、あはは。……本当にごめんなさい」シュン

商人「いいよ。そんなに謝らないで。気にしてないし。それに...」

88: 2013/01/05(土) 11:10:07.95 ID:LLtS6acAO
武闘家「それに、なに?」

商人「みんな凄い強いんだな~って。いつもはあんなに女の子なのに、戦うとなると皆キリッとしてかっこよかったもん」

勇者「え?えへへ。かっこよかった?」ニカッ

武闘家「はい、調子に乗らない。(へへ、誉められちゃったなぁ)」ヘラヘラ

商人「あなたもね。」ジロ

商人「(みんなだって頑張ってるんだ。私も絶対頑張って町を作るんだ。)」

ガチャ

賢者「あ、商人さん起きたんですね。よかった~!心配しましたよ。」

僧侶「晩御飯ができたわよ。みんな食べましょう!」

89: 2013/01/05(土) 11:26:44.82 ID:LLtS6acAO
2日後
船上


勇者達を乗せた船は順調に進み、あと1時間ほどでスー東の集落に着くというところまで来ていた。

賢者「いよいよですね、商人さん。」

商人「うん、もう私は準備万端だよ。ちょっとドキドキするけど。」

僧侶「なんか数日だったのにあなたがいなくなると思うと寂しいわ」

勇者「そうだよね。商人には世界地図を作ってもらったり、買い物の時にうまく値切るノウハウを教わったりしたもんね」

商人「買い物の時に役立ってもらえば幸いです。」ニコッ

武闘家「商人、ありがとね。」

商人「ううん。こちらこそ。(いつもの武闘家らしくないな)」

90: 2013/01/05(土) 11:40:23.24 ID:LLtS6acAO
スー大陸 スー東の集落


船は集落の見える海岸沿いに停まった。5人は陸に降り立ち。集落に向かって歩いていく。

しばらく歩いていくと、草原の中に建つ、一軒の小さな家が見えてきた。


勇者「あ、あれだよ。あの家におじいさんが住んでるんだ。」

商人「へぇ。小さいけどきれいな家ね。見た目よりしっかりした作りがされてるなぁ。」

僧侶「じゃあ早速入ってみましょうよ?」

賢者「そうね。おじいさん元気にされてるかしら。」

勇者は玄関のドアをノックした

コンコンッ

勇者「こんにちは~!勇者です。おじいさんいますか~?」

91: 2013/01/05(土) 11:51:01.13 ID:LLtS6acAO
老人「ん?勇者か?よく来てくれた。今開ける待ってくれ」

ガチャ

勇者「おじいさん!元気だった?」

賢者「こんにちは。お久しぶりです。」

老人「おお、久しぶり。よく来てくれた。歓迎する」

武闘家「おじいちゃん!寂しくなかったー?武闘家が来たよ~」

僧侶「お元気そうでなによりね。」ペコリ

老人「皆も元気そう。ワシも嬉しい。とても寂しかった。」

商人「あ、こ、こんにちは。初めまして。」

老人「おや?この子前いなかった。.....もしや?」

92: 2013/01/05(土) 12:01:01.88 ID:LLtS6acAO
商人「あ、あの商人と申します!おじいさんと一緒に町作りをするために来ました。」

老人「おお!この子武闘家が言ってた商人か。」

武闘家「そう!若いけどすごい優秀な商才があるんだよ。」

老人「それ助かる。やっとワシの長年の夢叶う。」

商人「はい!私も町作りをしたくていろいろ勉強をしてきました。おじいさんを立派に手伝っていきます。」

老人「ありがたい。………ただ。いいのか?皆と別れ、故郷に家族いるだろうに。」

93: 2013/01/05(土) 12:15:55.34 ID:LLtS6acAO
老人「ワシのわがままで、まだあなたみたいな若者を。」

商人「はい、たしかに寂しさはあります。でも私は自分がどこまでやれるか、町を自分の手で作れるのか。やりたくて自分の意思でここに来ました。」

老人「………」

商人「だから、おじいさん。町作りを私に手伝わせてください!よろしくお願いします。」

老人「その目に秘めた強い意思、わかった。あなたに手伝ってもらいたい。よいかな勇者?」

勇者「商人の強い意思だよ。大丈夫。私達は私達で魔王を倒すっていう目的があるからね。」

老人「ではこれからよろしく頼む!」グッ

商人「はい、こちらこそ!」グッ

商人は老人と固い握手を交わした。

94: 2013/01/05(土) 12:26:54.60 ID:LLtS6acAO
夜 集落の空き家内


商人は早速、老人とこれからの町作り計画を練ることになり、老人の家で話し合いをしていた。勇者達は今日は別に経ってある空き家に泊まり、明日の早朝に旅立つことになった。

ガチャ

商人「ふうー。みんなごめんね。おじいさんと熱弁繰り広げちゃったよー」

「……………」

商人「あれ真っ暗?みんな?いないの?どこにいっ....」

パンッパンッ!

パチッ

全員「商人、お誕生日おめでとう~!!!」ジャーン

95: 2013/01/05(土) 12:47:26.22 ID:LLtS6acAO
商人「!?」

商人「びっくりした~!心臓止まるかと思ったよ。」ドキドキ

武闘家「やったぜ!ドッキリだいせいこ~う!」

賢者「ふふ、うまくいきましたね。武闘家さん!」

商人「こ、これはどうしたの?」

勇者「武闘家の発案だよ。お誕生日を迎えた商人をお祝いしたいってね、へへ。」

僧侶「商人の新しい門出も祝いたかったし、じゃあお別れの前にパーッとやろうってね!」

商人「あ、ありがとう。私のためにこんなに...グスッ...うわぁぁん」ガバッ

商人は武闘家を抱き留めた。

商人「ありがとう。武闘家。」

武闘家「そんなに泣かれると、私も...グスッ...明日から頑張ってね、私も頑張るから。」

商人「うん。私頑張るよ。絶対素晴らしい町にしてみせるよ。」

僧侶「よしよし。じゃあみんなでケーキを食べましょう~!」

賢者「そうです、ほらほら二人とも一緒に。」

商人「え?この大きいケーキはどこから?」

勇者「私がスーの村に行って、村のお菓子屋さんに頼み込んで作ってもらったんだー。」

賢者「密かに商人さんの事を話したらおじいさんが気を利かせてくれたんですよ。」

96: 2013/01/05(土) 12:59:08.90 ID:LLtS6acAO
商人「そうなんだ。(ありがとうおじいさん。)」

武闘家「よぉ~し。じゃあ、早くケーキを食べようよ!賢者、早く切り分けて~」

賢者「はいはいお待ちください。」

勇者「ねえ賢者、私はそのイチゴと板チョコがあるところね。」

武闘家「あ、ずるいぞ勇者。私がそこを食べるんだってば!」ドタバタ

商人「まったく~子供なんだから、武闘家は...」

僧侶「ふふふ、にぎやかで楽しいわね。」

商人「僧侶さん。」

僧侶「どうしたの?」

商人「武闘家の事、よろしくね。子供っぽいから。お姉さんお願いします。」

僧侶「ふふ、任されたわ。大丈夫。あなたは心配しないで町作りに勤しんでね。」

商人「うん。ありがとう。」

97: 2013/01/05(土) 13:05:15.64 ID:LLtS6acAO
その夜は、5人(途中でおじいさんも合流し)で遅くまでどんちゃん騒ぎになり、楽しい時間を過ごした。

翌朝、早朝に商人とおじいさんに見送られながら勇者達は再び旅立っていった。

そして商人はおじいさんと共に長く辛い町作りをはじめることになったのだ。

商人は町作りを達成できるのだろうか。

101: 2013/01/08(火) 13:15:06.57 ID:7u4Rz3uAO
スー東の集落 老人の家


勇者達4人が旅立って丸1日。
商人は老人と話合うために、老人の家に詰めていた。

これからこのなにもない集落をどうやって町に作り上げていくか、なにが必要か商人と老人は話し合っていた。

102: 2013/01/08(火) 13:25:46.58 ID:7u4Rz3uAO
老人「うむ、まず一番最初にしなければならないことなにかのぉ?」

商人「そうですね、やはりこの土地を開墾して整備、が一番最初じゃないでしょうか?」

老人「そうじゃの。なにより先に人住めるようにしなければな。具体的にはどうやっていく?」

商人「はい。人を雇って、ここを開発していくのがいいと思います。資金にも限界がありますが...」

老人「おぬし資金はどれほどある?ワシはこれほどある」ドン

103: 2013/01/08(火) 13:39:12.99 ID:7u4Rz3uAO
テーブルには老人が大事そうに大きな壺を置いた。中にはかなりのゴールド(以下G)が入っているようだ。

商人「す、すごい!こんなにGが。おじいさん、これは?」

老人「これワシが若い頃から働いてきてコツコツ貯めたG。今この時のために使いたい。商人、使ってくれ。」

商人「(おじいさん、本気なんだ。すごい。)」

商人「わ、わかりました!おじいさんの今までの頑張り、受け取りました。有効に使わせていただきます!」

老人の意気を感じた商人は、自分の用意してきた資金を出した。

104: 2013/01/08(火) 13:51:25.50 ID:7u4Rz3uAO
老人「おぬしもけっこう持ってきたな」

商人「はい。このケースに入っているのは私の故郷のお店で貯めた分。そしてこの封筒に入っているのは勇者達が私のために冒険資金から出してくれた分なんです」

老人「そうか、それすごい。これである程度までは進められるか?」

商人「おそらくは大丈夫だと。なにぶんおじいさんの用意してくれた分が頼もしいです。」

老人「ほっほっ。ではいよいよ夢への第一歩じゃな。ワシにできることなんでも言っていい。スーにもワシに協力してくれる大工が何人かいる。」

商人「わかりました。じゃあ早速………」

105: 2013/01/08(火) 14:06:56.50 ID:7u4Rz3uAO
老人の申し出を受け、商人は早速町作りの第一歩を踏み出した。

まずこの集落近くのスー村に老人の口添えで大工を要請した。必要最低限の家屋を建てるためだ。

故郷アリアハンにも安く仕事をしてくれる馴染みのよろず屋や庭師を手配した。これは土地の開墾や整備をしてもらうため。

そして商人自身は、まずは自分の住む家を作り、そこで自分の店を作ることにした。

106: 2013/01/08(火) 14:21:36.04 ID:7u4Rz3uAO
約2週間後
老人と商人の集落


よろず屋「よっしゃ。おおよそこんなもんかな。どうだい商人ちゃん?」

商人「ああ、お疲れさま。そうね、だいぶ綺麗になったね。初日から比べたら全然違うトコロにいるみたい!」

よろず屋「へっへー!久々の大仕事、任されたからにはこんくらいは当然よ。」

老人「よろず屋殿、ありがとう。これで町作りますます良くなってく。」

商人「ごめんね、突然お願いしちゃって。でもすごく助かったよ~、ありがとう。」

よろず屋「そんな二人してそんなに頭下げんなよ。俺だって楽しそうな話だから喜んで乗ったんだぜ。」

107: 2013/01/08(火) 14:33:23.68 ID:7u4Rz3uAO
アリアハンからよろず屋、庭師。スーからの大工らが協力して町作りの基礎を作りはじめて2週間。

最初は草木だらけの集落は小さな村レベルへと進化した。土地は整備され、商人の店をはじめ、宿屋、教会、一般家屋が数軒とどれも小さいながらも立派に建てられた。

ただ土地はまだまだ広く、空地の面積の方がだいぶ広いのだ。

そんな中で商人は自分の家兼道具屋を開業しようと、模索していた。

108: 2013/01/08(火) 14:46:42.19 ID:7u4Rz3uAO
老人「そういえば商人は店を開きたい言ってたが、どうだ?」

商人「ええ、店を開いてみたいんだけどお客さんが来てくれないと無意味だから、ここの事を知ってもらわないといけない。」

老人「たしかにそうじゃな。」

商人「だからここの宣伝をするためにを作って各地域に配ってもらおうかな、と思ってるんです。」

老人「おお、そいつはいい考え!世界中の人にここの事を知ってもらわんとな。」

商人「基礎ができたから、次の段階は『人』ね。どういう理由でもいいからここを知ってもらうのが大切です。」

109: 2013/01/08(火) 14:57:28.73 ID:7u4Rz3uAO
商人「ねえ、おじいさん。この場所を知ってもらうのに『名前』が必要です。」

老人「名前?この場所のか?」

商人「そう。ここはいずれ大きな町になるはずです。だから名無しのままじゃだめ。良い名前を付けましょう。」

老人「ふむう。そうだな。かっこいいのがええの。なにか良い名前あるか?」

商人「おじいさんが特にないのなら私が考えた名前でもいいですか?」

老人「お?なにか良い名前あるか?ワシはかまわんぞ。この町作りはおぬしに一任してる。」

商人「ええと、笑わないでくださいね。その名前は.....」

110: 2013/01/08(火) 15:49:40.52 ID:7u4Rz3uAO
ランシールの町


賢者「まさか、それにしても町の裏にこんな大きい神殿があるなんて思いませんでしたね、勇者さま。」

勇者「うーん、そうだね~。最初に来たときは全然わからなかったし。」

武闘家「私達、まんまと騙されちゃったってことだよね~。町の人も神殿のことなんにも話してくれないもんね。」

僧侶「でも無事に勇者が戻ってきて安心したわ。」

勇者達はオーブを求め、南の大陸のランシールに再び訪れていた。

112: 2013/01/08(火) 16:07:02.22 ID:7u4Rz3uAO
ランシールの神殿では勇者1人で地球のへそと呼ばれる洞窟に入り、最深部でブルーオーブを手に入れたのだった。

勇者「僧侶なんて私1人でしか行けないっとわかったらすんごい心配してたもんね。」

武闘家「『心配だわ。無事に帰ってきてね』なんて感じだったね、涙浮かべてさ。」

僧侶「あ、当たり前じゃない。一番年下の勇者がいきなり1人で行くってなったから。心配で心配で」

賢者「ふふふ、それだけ勇者さまが僧侶にとって可愛いんですよ、きっと。」

道具屋の主人「あっ!おーい勇者ちゃんたちー!」

ふと宿屋に戻ろうとした一行に、店先から道具屋の主人が声をかけた。

113: 2013/01/08(火) 16:15:37.56 ID:7u4Rz3uAO
武闘家「ん~?道具屋のおじさん、どうしたの?」

道具屋の主人「いやなに、つい最近な、チラシが配られててさ。なんでも東の大陸に新しい町ができたらしいんだよ。」

勇者「新しい町?」

賢者「あ、もしかしてそれって。」

道具屋の主人「ほら、これさ。」ヒラッ

道具屋の主人「世界を廻ってるあんたらならなにか知ってるんじゃないか?」

114: 2013/01/08(火) 16:39:09.63 ID:7u4Rz3uAO
新しい町《ホープバーク》を作っています

場所は東の大陸スー村の東側にあります(わかりやすいよう大きい看板も作りました)

ただ人が足りません。

そこで世界中からいろんな人を募集しています。

町作りをやってみたい方いませんか?

新しい土地に住んでみたい人大募集!

海辺に近く緑も多く空気も綺麗です。

宿屋を始めてみたい方も大募集!
教会の神父さまも同時募集中。
とにかく少しでも興味のある方、来てみてください!

来てくれた方には全員に特製のキメラの翼をプレゼント!

詳しくは町内の入り口にある小さな青い屋根の小屋をお尋ねください。

町の名前は 《ホープバーク》 といいます。今世の中は魔王の出現により希望を失いかけています。だからその希望を失わないよう、希望という意味を持つ言葉を使いました。みなさんがたくさん希望を持って来てくれるように願っています。

ホープバーク 商人&老人

115: 2013/01/08(火) 16:51:39.21 ID:7u4Rz3uAO
を流してから約1ヶ月

ホープバーク 青い屋根の小屋

ガチャ
商人「おじいちゃんおはよう~!」

老人「おうおはよう。昨日よく眠れたのか?」

商人「うん。大丈夫だよ、疲れでぐっすり。」

老人「昨日大変だったからな、でも流してから一月、やっと形なってくれた。」

商人「宿屋をやってくれるって人と、教会の神父さまをやってくれる人が決まってよかったね。」

老人「まったくじゃ。ここに移住したいとやってくる者けっこうな数になったしの。」

116: 2013/01/08(火) 17:13:54.97 ID:7u4Rz3uAO
町の名前を商人の発案から《ホープバーク》とし、それに伴い世界中へを流してから1ヶ月。

少しずつではあるが、を見てここを訪れる人間が増えはじめた。

大方が新しい場所に住みたいという理由でが多かったが、国内が荒れているサマンオサ、閉鎖的な国エジンベア、砂漠の土地イシス、アッサラームなどから移住してくる人もいた。

ただ宿屋の経営者(決まるまでは商人が自分の店と兼任した)と教会の神父はなかなか希望する人間がおらず、二人が頭を悩ませていたところ、昨日両方とも決まったのであった。

宿屋経営者にはポルトガで宿屋見習いをしていたという若い青年が。

教会の神父にはロマリアで城内の教会で長年働いていた年配の尼が、それぞれ決まった。

117: 2013/01/08(火) 18:21:28.60 ID:7u4Rz3uAO
商人「じゃあ今から昨日決まったお二人のところに顔出して来ようかな。」

老人「そうか、行ってきな。ワシはいつも通りここにいる。」

商人「うんおじいちゃん、よろしくお願いね。たぶん今日も住民登録とかで何人かは来ると思うよ。」

老人「あいわかった。まかせてくれ。」

ガチャ

商人は宿屋と教会に向かった。

118: 2013/01/08(火) 18:29:41.88 ID:7u4Rz3uAO
商人は小屋を出て、自分の家兼店のすぐ裏手に建てた、真新しい宿屋に向かった。

道も石畳で整備され、最初は集落だった面影は町外れに多く立つ大木数本くらいだった。

町の中心には小さい池もあり回りには申し訳程度の花壇もある。

しばらく歩いていくとその宿屋に着いた。1階立てだが、中は広く部屋数もありけっこうな人数が泊まれるよう大工と一緒に設計したものだった。

119: 2013/01/09(水) 08:32:09.57 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 宿屋


トントン

「……はーい!どうぞ~」

ガチャ

商人「おはようございます!お邪魔してもいいですか?」

宿屋の青年「あ、商人さん。おはようございます。どうぞ入ってください。」バタバタ

青年はロビーの待合スペースに椅子を用意して商人を促した。どうやら早起きしてロビーの掃除をしていたようだ。

商人「よいしょ、と。お掃除中だったんですね、忙しいところ急にごめんなさい。」

青年「ああ、いいんですよ。たまたま早起きしちゃったから掃除してただけでね。」

120: 2013/01/09(水) 08:57:31.52 ID:gcZHpXzAO
青年「昨日はありがとうございました!まさかいきなり宿屋を任せてもらえるなんて思わなかったからびっくりして。」

商人「ううん、私達こそなかなか人が来なくて困ってたから、青年さんが来てくれて大助かりです!」

青年「よかった~。僕はてっきり門前払いくらうかと思ってたからなぁ、ははは。」

商人「あの、いつから始められそうですか?食堂のコックはすでに準備できてますが。」

青年「そうだなぁ。明日には始められると思います。今日一日で準備しますよ。」

商人「明日ですね、了解しました!じゃあ青年さんのポルトガの宿屋で鍛えた手腕、楽しみにしていますね。」

青年「はい、おまかせください。精一杯やらせてもらいます。」

121: 2013/01/09(水) 09:14:00.86 ID:gcZHpXzAO
宿屋の青年に挨拶を済ませたあと商人は町外れに建てた教会に向かった。

町外れの方にはまだ空地の場所もあり、緑もまだ多く残り、一般家屋も増えてきていた。各地から移住してきた人々も新しい暮らしを満喫しているようだった。

しばらく歩くと教会のシンボルである十字架が見えてきた。宿屋同様に、大工と商人とで設計したものだ。アリアハンにある教会のデザインを踏襲しており、アリアハンの教会をそのまま小さくしたような大きさだ。

商人が教会の入り口にさしかかると、後ろからすっとんきょうな声が響いた。

122: 2013/01/09(水) 09:28:14.51 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 教会の入口


「あっら~!昨日の商人ちゃんじゃないのさ~!」

商人「へっ?(び、びっくりしたー)」

尼僧「お、は、よ、う!どうしたのよ、こんなに朝早く。」

商人「おばさん!おはようございます。ちょっと顔を出しに来てみ...あっ!」グイッ

尼僧「あ~ら~そうだったんだねぇ!じゃあほら、遠慮しないで早く入って入って!」

尼僧は商人の挨拶もよそに一気に捲し立てて、商人を教会内に引っ張っていった。

教会内は尼僧の剣幕とは真逆の雰囲気を醸し出しており、静まりかえっていた。

尼僧は商人を祭壇前の席に座らせて、お茶を持ってくると行って奥の部屋に入っていった。

123: 2013/01/09(水) 09:43:32.04 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 教会内


尼僧「はい!お待たせ~。お茶とお菓子どうぞっ!」

商人「あ、わざわざすみません。(教会内は声響くな~)」

尼僧「さっきはごめんなさいね~!町の外まで朝の散歩に行ってたのよ~!健康のためねっ。」

商人「お散歩してたんですね。町の外は大丈夫でしたか?魔物とかは出ませんでした?」

尼僧「ああ~、何匹か出てきたけど、風でぶっ飛ばしちゃったから大丈夫よ~!あっはっは。」

商人「え、風で?」

尼僧「そう、バギクロスでねバーっとね。どこまで飛んでったかな~あいつら。」

商人「…………」

尼僧「ん?あれ?昨日言わなかったかしら。私は元僧侶で魔法も全部使えるって。」

商人「言ってませんでしたよ。(なにげにとんでもない経歴のおばさんね...)」

124: 2013/01/09(水) 10:00:31.14 ID:gcZHpXzAO
尼僧「まあ、ずっとロマリアにいて、マンネリだったしね~。そんな時にたまたま城下町に出たときにここの見て、これだ!って。」

商人「そうだったんですか、でもそんな凄い経歴を持つ方が来てくれてよかった~!教会をおまかせします!」

尼僧「うん!事故で誰か氏んじゃってもいつでもザオリクかけまくってあげちゃうからね~!」

商人「あ、はははは...(飛んでるなぁ。まあでも頼もしい人でよかったな)」

商人はそそくさとお茶と菓子をたいらげ、教会をあとにした。
商人自身も店を開けようと自宅に戻ろうと町を歩いていると、一軒の家から出てきた、男に声をかけられた。

125: 2013/01/09(水) 10:20:59.12 ID:gcZHpXzAO
男「あ、商人さん。おはようさん。ちょっといいか?」

商人「おはようございます。えと、あなたはたしかイシスから来たんでしたよね?」

男「おう、そうそう。あそこは年中蒸し暑くていけねえや。それに比べてここは気候もちょうどいいやな。」

商人「それはよかったです。なにかご用ですか?」

男「ああ、俺はイシスで一時期酒場をやってたんだ。ここじゃ、飯食うのは宿屋の食堂が宿泊者以外にも使えて不便はねえが、みんなでわいわいできる酒場がない。」

商人「あっ!(たしかに、私もおじいちゃんもお酒弱いし、考えなかったな~)」

男「だからよ、町の中心にでも酒場を作ってくるねえか?マスターは俺がやるし、手伝いは嫁さんや娘がやってくれる。どうだ?」

商人「いいですね!正直、私もおじいちゃんもお酒に弱くて、思い付かなかったです。ホープバークはみんな移住者だから酒場なんて親交を深めるにはもってこいだし。」

男「なっ?だろ?じゃあ頼むよ。酒なんかのツテはあるんだ。実際の買い付けはアンタに任せるしさ。」

商人「わかりました、早速取りかかります。良いアイデアありがとう!」ダッダッダッ

126: 2013/01/09(水) 10:37:33.58 ID:gcZHpXzAO
男からの提案で、町の中心部の空いたスペースに住民が楽しめる酒場を作るという話になった。商人から相談を受けた老人もその提案を受け入れ、早速大工を呼び寄せ建設が始まった。

そんな間も少しずつではあるが、各地からの移住者が増えていた。商人の店も最初こそマイペースに経営できていたが、店自体より町全体についての仕事が増えてきておりなかなか自分の店についてはおざなりになってしまっていた。

そして、約1ヶ月が経ったある日

127: 2013/01/09(水) 10:52:34.16 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 青い屋根の小屋


商人「ふぅ。やっと終わったぁ~」

老人「やれやれお疲れさま。どれ休憩にするか。」

商人「まったく、書類が増えて増えて困ったな。住んでくれる人が増えて嬉しいけど、私達の仕事が増えちゃうね。」

老人「ま、仕方ない。それが町作るということ。気楽にやればいい。」

商人「ん~まあそうだね(仕方ないか...)」

コンコンッ

商人「?はーいどうぞ~(誰かな?また移住申込みかな)」

ガチャ

128: 2013/01/09(水) 11:04:43.46 ID:gcZHpXzAO
「こんにちは~!」

商人「あっ!勇者?」

勇者「商人~!久しぶりだね!元気だった?」

賢者「商人さんっ。」

商人「賢者も。相変わらず可愛らしいな~。みんなこそ元気?」

勇者「うん!元気元気。」

商人「?あれ、武闘家と僧侶は?」

賢者「お二人は今、宿屋に部屋を取りに行ってるんです。」

勇者「それにしても、商人はすごいね~!こんなに大きい町になっちゃうなんてさ。」

賢者「ホントですね。《ホープバーク》なんて名前も素敵です!」キラキラ

129: 2013/01/09(水) 11:15:51.31 ID:gcZHpXzAO
商人「ありがとう。そういえばみんなはどこでここの事知ったの?」

勇者「ああ、ランシールでねブルーオーブを手に入れた時に道具屋のおじさんがを見せてくれたんだよ。」

賢者「あのもよかったです、あれは商人さんの手作り?」

商人「そうなんだ。オーブも手に入れたんだー凄いね!は私とおじいちゃんの競作なんだ。」

突然の勇者達の訪問を受け、商人は老人に詫びを入れ、武闘家と僧侶が待つ、宿屋へと勇者、賢者と向かった。

130: 2013/01/09(水) 11:26:29.33 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 宿屋 ロビー


武闘家「あ!商人、久しぶり!元気だった~?」

僧侶「しばらくぶりね、こんなに立派な町になっててびっくりよ。」

商人「二人とも会いに来てくれてありがとう!私も元気でやってるよ。」

勇者「たまたま、スーの村に立ち寄る用事があったからね。も見てたし、じゃあ行っちゃおうかって感じでね。」

武闘家「オーブもいくつかゲットしたからね、小休憩も兼ねてさ、えへへ~。」

青年「商人さんて、勇者様たちのお知り合いなんですね。何気に凄いんだなぁ。」

商人「え?」

131: 2013/01/09(水) 11:38:08.07 ID:gcZHpXzAO
宿屋の主人となった青年は、ロマリアの宿屋で見習いとして働いていた当時、宿屋に勇者達一行が泊まりにきたという。

その時に、若い見習いの青年に対して悪戯をした武闘家のことを強く印象に残しており、そのため先ほど武闘家が宿屋に来た時に驚いたという。

勇者達は今日はここで一泊し、翌朝再び旅立つらしい。

旅の途中で彼女らはランシールでブルーオーブ、テドンという呪われた村でグリーンオーブ、ジパングでパープルオーブ、ホープバークのはるか南にある海賊の屋敷でレッドオーブをそれぞれ手に入れていた。

残すはイ工口ーオーブ、シルバーオーブの2つである。

133: 2013/01/09(水) 11:54:15.76 ID:gcZHpXzAO
商人「じゃあ、あとオーブは2つだけなんだ?」

僧侶「そうなんだけど、まったくと言っていいほど情報がないのよねー。」

賢者「商人さんは職業柄いろんな方と接するでしょうから、なにかご存知ないかなと思って。」

商人「シルバーオーブにイ工口ーオーブかぁ、う~ん今のところ私の耳にも入ったことがないんだよねぇ。」

武闘家「そっかー残念。」ガクン

勇者「まあ気を落とさないで~そのうち見つかるって!」

商人「力になれずにごめんね。なにか情報が入ったら知らせるよ。」

商人「ねえ、武闘家。ちょっとちょっと」ヒソヒソ

武闘家「ん?なになに?」コソコソ

商人「ねぇ、あなた青年さんにどんな悪戯したわけ?」

武闘家「う...そ、それは。」

商人「言いなさい!」ズイ

武闘家「あ、あの。王様のふりをして『おぬしはクビじゃあ!』ってやりました...」

商人「....はぁ。まったくもう。もうしないこと、いいわね。」

武闘家「はい、もうしません」

134: 2013/01/09(水) 12:06:07.64 ID:gcZHpXzAO
翌朝
ホープバーク 町の入口


勇者「では、行ってきます!」

賢者「短かったけど良い休息を取れました。宿屋の方によろしくお伝えください。」

商人「うん、わかった伝えておくよ。みんなこそ来てくれてありがとね。」

武闘家「私も楽しかったよ~、久しぶりに商人の顔も見れたし、おじいちゃんも元気そうだし、宿屋の食事は美味しかったし、教会のおばちゃんはパワフルだし、空気はおいしいし、」

僧侶「多いな!」

商人「じゃあ体に気をつけて、みんな頑張ってねー!私ももっともっと頑張って、大きな立派な町にするからさ。」

勇者「うん、また遊びにくるね。じゃあ!またね~!」

再び、勇者達は旅立っていった。

135: 2013/01/09(水) 12:20:10.52 ID:gcZHpXzAO
勇者達が旅立って、数日。ホープバークの住民待望の酒場が完成した。酒場だけでなく、ステージや小さなカジノなども設置してちょっとしたアミューズメント施設としてスタートした。

酒場は大いに賑わい、移住民がほとんどのホープバークでは住民同士の親交の場として、連日連夜大盛況となった。

酒場のおかげもあり、住民だけでなく、外からの観光客もたくさん訪れることも多くなった。おまけ程度につけたカジノも辺境の地にカジノがある、という珍しさもあり、口コミで広まっていった。

しかし、酒場による利益があまりにも大きくなったせいか、町の長である商人と住民との間で意見が食い違うという事態が起こりはじめていた.....

138: 2013/01/09(水) 16:07:05.96 ID:gcZHpXzAO
町に酒場ができて4ヶ月
ホープバーク 町長の家


商人「だいぶ、住民も観光客もだいぶ増えてきたし、また増税したいところよね。」

老人「……ふむ。またかの。」

商人「なにか不満がありますか?これからも町の発展のためにはお金は必要ですよ。」

老人「おぬしが酒場が出来てから町長として就任して4ヶ月ほど。自分の店いいのか閉めて。」

商人「最初はやれるかとは思ったけど、忙しくて無理ってわかったのよ。私が町長として専念できる方がいいと思うけど。」

老人「……そうじゃの。」

139: 2013/01/09(水) 16:08:31.80 ID:gcZHpXzAO
ガチャ

兵士「失礼します、町長。お客様がいらしていますが。」

商人「客?わかりました。通してください。」

老人「商人、ワシは小屋戻るぞ。ではの。」

商人「ええ、引き続きお願いしますね。」

老人は客人として見えた、商人風の男とすれ違った。軽く会釈をしたが、その口元には小さく笑みが見えた。老人はふと胸騒ぎを覚えた。

140: 2013/01/09(水) 16:10:30.40 ID:gcZHpXzAO
商人風の男「いやぁ~はじめまして!ワタクシ、世界中を商売しながら旅して回っている者です。風の噂で耳にしたこのホープバークを作ったという商人様にお会いしたく来させていただいた次第です。」

商人「はい、それはありがとうございます。ごゆっくりしていってください。」

商人風の男「はい。ぜひとも。商人さま、いや町長さまに良いお話がありまして、いかがでしょうか?」

商人「良い話?それは商売の話ですか?」

商人風の男「ええ、まさにそうです。」

商人「兵士さん、あなたは席を外していてくれますか?」

兵士「え、わかりました。失礼します。」ササッ


商人「それでどんな話なんですか?」

商人風の男「これです。」サッ

141: 2013/01/09(水) 16:13:44.99 ID:gcZHpXzAO
男は掌に1つ小さく黒光りする四角いものを乗せて、商人に見せた。かすかに甘い香りがする。

商人「これは、たしか。チョコレートというものでは?」

商人風の男「おお、ご名答!そうです。よくご存知でいらっしゃる!」

商人「以前、私の仲間が遠方の国で食べたと言っていたので、そのことかと。」

商人風の男「なかなかに高級な菓子でして、ロマリア、ポルトガ地方で作られているものです。」

商人「へぇ~、すごく美味しそうですね。そしてこのチョコレートをなぜ?」

商人風の男「そこです。なんでもこの町にある酒場の中のカジノは、大盛況のようですな。」

商人「ええ、おかげさまで。辺境の町にあるカジノ、という珍しさが受けているようです。」

142: 2013/01/09(水) 16:14:58.21 ID:gcZHpXzAO
商人風の男「そのカジノで楽しむ皆さんにお菓子として提供するのです。」

商人「カジノのお客様限定で、ということですか?」

商人風の男「ええ、高級感のある菓子ですから、カジノで楽しむ裕福な方々に受けるのではと思いましてね。」

商人「なるほど...(上手くいけばさらに利益を上げられるかもしれないわね)」

商人「ただ、高級なものでは安定した仕入れができますか?」

商人風の男「その事はご心配なく!私の息のかかっている業者がポルトガ近辺にございます。」

商人「そうですか。では早速契約をさせてください!きっと大きな話題にもなるでしょう。」

商人風の男「あ、ありがとうございます!さすがにお若いのにお目が高いですな~。」ニヤッ

143: 2013/01/09(水) 16:15:58.86 ID:gcZHpXzAO
町長となった商人は、旅の商人という男から高級菓子であるチョコレートを仕入れることを決めた。老人はこの件はよい顔をせずに反対したが、商人の強い説得で容認した。

数日後、カジノ限定でのみこの高級菓子チョコレートが客に出されはじめた。するとその美味なる香りと甘さと味が客の間で話題となり、口コミにより世界中に拡大した。

町長の思惑通り、カジノが産み出す利益はさらに増えていく。ただやはりそれに比例するように、一般町民からは反発が起きるようになっていた。

144: 2013/01/09(水) 16:19:13.35 ID:gcZHpXzAO
カジノにチョコレートが出されるようになって2ヶ月

ホープバーク 町長の家


町長「ねえ、これは一体なんなの?こんなに投書が来てるのはなぜ?」

兵士「連日、表の投書箱に意見が入れられているようです。」

『カジノができてから、町の雰囲気が悪くなった』

『毎日観光客がひっきりなしで、のんびり過ごせない』

『カジノで利益が上がってるはずなのに、我々の税金負担が増えるのはなぜ?』

『カジノを閉鎖してほしい 酒場だけでいい』

『町長は私達一般民を大切にしてくれない』

『夜になると町の隅で男たちがたむろしていて物騒だ』

『チョコレートの味が落ちた』

町長「………なんで?私は町を大きくしたいだけなのに。」

老人「商人よ、この最後の投書はどういう意味なんだ?」

町長「ん?チョコレートの味が落ちた?どういうことなのかな...」

町長「っ!?まさか...」ガバッ

老人「どうした?」

町長「ちょっとカジノに行ってきます。確かめたいことがあるから!」

145: 2013/01/09(水) 16:21:09.10 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 酒場内

ドンッ

町長「ごめん!誰かいる?」

マスター「あ?まだ昼間だぞ。誰かと思えば、町長さんじゃねえか。」

町長「マスター、お久しぶりです。あの、下のカジノは...」

マスター「ああ、まだじゃないか。カジノはここより遅くからだから今は誰もいないだろうさ。それよりもさ、もっと税金を下げてはもらえないか?俺たちはギリギリの生活なんだぜ?」

町長「...それはできない相談、です。」プイ

タッタッタッ

マスター「ふう、前はあんな女の子じゃなかったのにな。この町はそろそろ危ないな...」

町長は酒場を通り、奥にあるカジノに通じる階段を下りていった。

146: 2013/01/09(水) 16:24:54.20 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 町長の家


老人「あいつ大丈夫だろうか。ワシ心配」

宿屋の青年「大丈夫ですよ。おじいさん。ただ彼女は忙しすぎるだけですよ。」

老人「最初はあんな風にお金に執着するようなやつじゃない。もっと柔軟なやつだった。」

青年「う~ん。僕ら一般民から徴収する税金が高すぎるのはたしかです。」

青年「僕の宿屋も最近はカジノに来るお客さんが泊まることがほとんどです。宿泊費も高騰してるのもあるとは思うけど。」

老人「ううむ、そろそろワシ達で商人にはっきり言った方あいつのためだな。」

コンコンッ

兵士「失礼します。老師どの、町長さま宛にお手紙が届きました。」スッ

老人「手紙?どれ。これは?」

青年「誰からなんですか?」

老人「これはおそらく商人の....」

147: 2013/01/09(水) 16:26:07.11 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク カジノ内


カジノ内は静まりかえっていた、まだ誰1人いないようだ。町長は1人、暗い中カジノ内を歩いていた。

カジノ内はこの建物ができた直後に入ったきり一度も来ていなかった。そんな暇がなかったからだ。

コイン購入カウンターの裏にバックヤードに繋がるドアがあるのを見つけ恐る恐る入っていく。

町長「ここかな?なんだか乱雑に書類が散らばってるわね。」

町長「どこかに、どこかにあるはず。」

町長「ん?この箱。あの時のチョコレートの箱に似てる...でも、なにか違う。」

町長「あっ、これは。」ペリッ

町長「やっぱり....騙されたのねわたし。」

148: 2013/01/09(水) 16:27:05.35 ID:gcZHpXzAO
町長がカジノのバックヤードで見つけた、チョコレートの箱はニセモノだったのだ。箱にプリントされていたチョコレートのブランドのロゴが違うのである。

一見しただけではわからないが、ニセのロゴの上からホンモノのロゴのシールが貼られているのだ。

実際に客に出すときは中身のチョコレートだけを別の容器で出すので誰も気が付かなかったのだ。ただ味だけはホンモノとニセモノでは歴然の差があり、それに違和感を持った客が投書したのだろう。

149: 2013/01/09(水) 16:29:12.27 ID:gcZHpXzAO
町長「いったいいつから、ニセモノに入れ変わったんだろう?」

町長「どこかに仕入れの帳簿がないかしら。」


町長「....どこにもないわね。仕方ない、一度引き上げよう。」

町長「あの男、許せない。ちくしょう、ちくしょう...」グスッ


町長はカジノから引き上げて、家に戻った。

150: 2013/01/09(水) 16:32:09.01 ID:gcZHpXzAO
ホープバーク 町長の家


ガチャ

老人「おお、心配したんだぞ。大丈夫だったか?」

町長「………………」

青年「どうしたの?おじいさんとあなたの事心配してたんですよ。」

町長「…………りにして。」

青年「え?」

町長「ごめん、ひとりにして。二人は出ていって、お願い。」

老人「おい、なに言ってるんだ。お前に手紙が来て...」

町長「いいから!お願い。」



青年「....おじいさん、行きましょう。」

老人「むう……」

町長「……………」

バタン



《そしてこの日の夜中 この町で革命が起こった》

151: 2013/01/10(木) 01:41:26.17 ID:UhTBKY0AO
続きはまた日中に投下していきます。ついに革命が起きて商人はどうなるのか。お楽しみに。

153: 2013/01/10(木) 10:13:11.29 ID:UhTBKY0AO
革命発生から1週間

ホープバーク 入口


僧侶「ねえ、なにか変な感じがしない?」

武闘家「え?なにが?」

賢者「……そうね、僧侶の言う通りで町の雰囲気がなにか変ね。勇者さまはなにか感じません?」

勇者「う~ん。なんかどんよりしてるよね。人は多いんだけど。」

武闘家「じゃああそこにいる兵士さんに聞いてみようか~。あのうすみません!」

兵士「ん?観光客か?悪いことは言わん、今この町は革命が起きてな、町を統べる者がいないのだ。」

勇者「えっ!?」

僧侶「か、革命ですって?」

154: 2013/01/10(木) 10:31:02.07 ID:UhTBKY0AO
賢者「一体なぜ?革命なんてそう起こることじゃないですよ!」

兵士「うむ...私も少し前に雇われてここに来たので詳しい事はわからないんだが...すまない。」

武闘家「…………」

勇者「わかりました。どうしようか、おじいさんも小屋にいないし...」

賢者「…そうだ。宿屋の青年さんならなにか知ってるかもしれませんよ!」

僧侶「そうね、行きましょう!」

勇者達は急いで宿屋に向かった。

155: 2013/01/10(木) 10:40:21.64 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 宿屋


ガチャ!

勇者「お兄さん、いませんかー?」

青年「!?あ、勇者さん!」

僧侶「よかった、いてくれたみたいね。」ホッ

青年「皆さん、来てくれたんですね!助けてください、彼女が!商人さんがっ!」

賢者「えっ?」

武闘家「商人が!?どうしたの?ねえ!ねえってば!」


青年「今は町外れの牢屋に投獄されています....」

156: 2013/01/10(木) 10:53:10.22 ID:UhTBKY0AO
勇者達がホープバークを訪れた7日前の夜中、町では革命が起きた。

町の一部の住民が結託して、夜中に町長である商人の家と、老人の小屋を襲撃したのだった。当時、商人は眠りに入っていなかったが、襲撃を寸前まで気付けずに数名の男に捕らえられた、なぜかまったく抵抗はしなかったようだ。

そのまま、町外れに商人自身が作った牢屋に入れられたのだ。

老人は小屋で寝ていたが、襲撃を受け、かなりな抵抗をしたようだが、屈強な男たちには敵わず、そのまま気絶してしまった。

157: 2013/01/10(木) 11:10:30.84 ID:UhTBKY0AO
翌朝、革命を起こした男達のリーダーが町全体に対し、声明を出した。

『我々はこんな抑圧された生活に耐えることはできない!』

『カジノをたしなむ富裕層ばかり優遇し、一般民である我々に高い税を課し、苦しめた町長は投獄した!』

『しかも町長は密かに莫大になった利益を自分のものとし、隠していたのだ!断じて許されるべきではない!』

『町の皆。これからは自由な生活が待っている!この私が新たな町長となり皆を先導していこうと思う!』

町の住民は、男の声明を聞き、一斉に賛同した。たった数時間で商人と老人が一から作り上げた町が終わりを告げたのだった。

158: 2013/01/10(木) 11:29:51.46 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 町外れの牢屋


見張り「ん?なんだお前らは。あの女に面会か?」

勇者「そうです。商人に合わせてください!」

見張り「だめだな。あんな犯罪者に簡単に合わせるわけにはいかねぇな。」

武闘家「なんだと!?私の親友をそんな風に言うと許さない!」ガバッ

賢者「ぶ、武闘家さん。落ち着いて。暴力はだめですよ。」

武闘家「くっ、だけど賢者。」

見張り「くっくっく、出直しな。」

僧侶「………」スッ

見張り「ん?なんだ姉ちゃん、やんのか?」

159: 2013/01/10(木) 11:44:05.74 ID:UhTBKY0AO
僧侶「これで面会させてくれないかしら?」スッ

見張り「あ?これっぽっちじゃ足りねえなぁ。」

僧侶「じゃあこれでどう?」スッ

見張り「だからこれっぽっちじゃ足りねえと何度もいわ...あっ!」ダラダラ

ブツブツブツブツ

僧侶「私を怒らせないで、氏にたい?ザキをプレゼントしてあげようか?」ヒソヒソ

賢者「(あ、まさか僧侶ったら...)」

見張り「あ、ああ。そ、そこの階段を下におりな。」ガクガク

僧侶「そう、ありがとう。みんな行きましょう。」ニコ

武闘家「う、うん。(こわ...)」

賢者「またやっちゃった...」

勇者「よし行こう。」

160: 2013/01/10(木) 11:57:06.87 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 商人収監の牢屋


勇者達は牢屋の前に来た。目の前の冷たい牢屋の中には、商人がいた。膝を抱え座っている姿は以前の商人とは別人に見えた。目は虚ろ、頬はこけており真っ先に声をかけようとした武闘家を躊躇させた。

足音に気が付いた商人が顔を上げると、目の前に懐かしい顔ぶれが並んでいた。


商人「あ、みんな。きてくれたの?」

161: 2013/01/10(木) 12:13:23.51 ID:UhTBKY0AO
武闘家「商人………」

商人「ごめん、なさい。みんながきてくれたのに、わたしが、こんなことに、なって」

勇者「驚いたよ、こんな事になっていて。」

賢者「私達が来なかった間に革命なんて...」

商人「わ、たしのせいなんだ、ぜんぶ。わたしがいいきぶんに、なってまちのみんなを、くるしめたから」

僧侶「ねえ!商人。ちゃんと食べ物はもらってるの?体が弱ってるわ。」

商人「う、ん。いちおうね。でも、わるいこと、したから、しかたないね」

賢者「(商人さん、あちこちに傷が...傷だけでも)僧侶。」

僧侶「(わかってる。)」

賢者・僧侶『ベホマ!』パァー

162: 2013/01/10(木) 12:31:45.04 ID:UhTBKY0AO
商人の体にある傷がすべて治った。

商人「あ、きずが。ふたりともありがとね。」ニコ

勇者「食べるもの食べなきゃダメだよ、氏んじゃうよ!」

商人「あまり、たべた、くないよ。はんせいしなきゃ、わたし。」

武闘家「………グズ」ヒクヒク

賢者「武闘家さん?(泣いてる?)」

僧侶「本人が食べる気がないのはよくないわ。なんとかしないと....」

商人「お、じいちゃん、にもあやまらなきゃ。つらく、あたったりしたから」

163: 2013/01/10(木) 12:41:08.65 ID:UhTBKY0AO
賢者「!そうだ。おじいさんは今どこにいるんでしょうか?」

勇者「小屋にはいなかったよね。」

僧侶「青年さんに聞いてみましょう!知ってるかもしれない。」

勇者「よし。ひとまずすぐに行こう!ホラ、武闘家泣いてないで行くよっ!」

武闘家「………グイ」コクッ

賢者「商人さん、待っていてくださいね。すぐに戻ってきます。」

商人「あり、がとう、みんな。」

164: 2013/01/10(木) 12:59:38.96 ID:UhTBKY0AO
スーの村 老人の家


牢屋を出たあと、宿屋の青年に聞いたところ老人は革命後に、故郷のスーに療養のために戻ったという。

勇者「おじいさん、大丈夫?良くなった?」

老人「皆久しぶり、体はなんとか大丈夫じゃよ。」

僧侶「無理しちゃだめよ。歳なんだし。」

老人「ふん。まだまだ若いモンには負けん。」

賢者「あの、おじいさんは商人さんが今、町の牢屋にいることは....」

老人「あ、ああ。知っとるよ。すごく心配。あいつも少しやりすぎてしまった。」

武闘家「あの子、食べ物をほとんど口にしないままなんだよ!あのままだと弱くなって氏んじゃうよ...」

老人「なに?そこまで弱くなってるか?まずいの。」


165: 2013/01/10(木) 13:10:53.76 ID:UhTBKY0AO
僧侶「だからおじいさんや青年さんが会えばと思ったんだけど、おじいさんがまだ動けないしね。」

老人「おお、あの宿屋の青年でもダメか?」

賢者「青年さんは自分のことを責めていました。もっと自分が力を貸せていれば、と。」

勇者「今は商人に合わせる顔がないって言ってたね。」

老人「それはワシも同じ。商人にもっとしっかり言ってやるべきだった。」

武闘家「おじいちゃん...」

老人「あの青年は、もしかすると商人の事を好いているのかもしれんな。」

僧侶「青年さんが?商人さんを?」

166: 2013/01/10(木) 13:30:08.78 ID:UhTBKY0AO
老人「ただのジジイの想像だがの。あの青年の商人を見る目が、商人が徐々にに変わっていく度に悲しそうになっていた。」

勇者「そう、なんだ。だったら余計に商人を助けなくちゃ。」

賢者「ええ。なんとかしないと。あまりにも商人さんが痛々しくて。」グス

老人「そうじゃのう………あ!そういえば!」

武闘家「おじいちゃん、どしたの?」

老人「大切な事忘れとった!商人にな、手紙届いてたんじゃ!」

勇者「手紙?いつ?」

老人「あの革命が起きた日じゃよ!手紙が来た時はあいついなかったからワシが預かってた。」

老人「そのあとあいつが戻ってきた時は1人にしてくれって突っぱねたから渡せなかったんじゃよ!」

僧侶「そうだったのね。でその手紙は誰からなの?」

老人「あいつの父親じゃよ。」

167: 2013/01/10(木) 13:41:35.26 ID:UhTBKY0AO
武闘家「!?(おじさんが?)」

老人「ちょっと待っとれよ。たしかここに....」ガサゴソ

老人「おお、あったあった。こいつがそ....」

ヒュン
バシッ

武闘家「ありがとう!おじいちゃん!もらっていくね~!」

老人「うお!い、いつの間に?」

武闘家「ほらほら、みんな早く町に戻るよ!早くしないと置いてくぞ~!」

賢者「あ、待ってくださいよ~!」タッタッ

僧侶「急に元気になったわね、あの子。」タッタッ

勇者「じゃあおじいさん。ありがとね、また!」タッタッ

バタン

168: 2013/01/10(木) 13:50:20.11 ID:UhTBKY0AO



武闘家「(これで絶対大丈夫!商人の目を覚ましてくれるはず)」

武闘家「(おじさん、ありがとう)」

武闘家「(今行くよ。待っててね商人!)」


169: 2013/01/10(木) 14:06:23.53 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 商人収監の牢屋


商人「あ、れ?みんなもどって、きたの?」

武闘家「うん!商人に渡したいものがあって急いで来たんだ。」

商人「わた、したい、もの?わたしに?」

武闘家「そう。ほら、渡すからちゃんと受けとるんだぞ。」スッ

商人「う、ん」カサッ

商人「これ、はなんだ、ろう?てが、み?」カサカサ

武闘家「うん、手紙だよ。あなたのお父さんからのね。」

商人「お、とうさん?」バサ


商人は父親からの手紙をゆっくり読み始めた。

170: 2013/01/10(木) 14:17:39.42 ID:UhTBKY0AO
拝啓 商人さま

お元気ですか?
私は元気でやっています。

んーやっぱりだめだ。堅すぎるな。娘に出す手紙じゃねえな。すまんな、もう一度。あ~ゴホン

商人よ、元気でやってるか?
親父は元気でやってるぞ。

お前がアリアハンを発ってどれくらいになるだろうな?なんか随分経ってるような気がするけどな。そんなこと考えるのは俺が歳くったって事かな。

こちらはなにも問題なくやれてるよ。店の皆も時折、お前の事を話題にしてるぞ。ちゃんとやれてるか、とか。風邪引いてないか、とか。どうなんだ?

171: 2013/01/10(木) 14:33:42.66 ID:UhTBKY0AO
それはそうと、アリアハンにもお前がもうひとりのじいさんと作ってる町のが届いたぞ。《ホープバーク》か、自分の名前を付けたりしないのはお前らしいよな。あの宣伝文句もよかったと思うな、つい読みふけっちまった。

よろず屋と庭師にも協力要請したんだってな。よろず屋の兄ちゃんが言ってたよ。「娘さんは立派にやってた。親父さんは心配しすぎだ」って、はっはっは。でもな親としても鼻が高いぜ。

ただな、気をつけてほしいのはな、町作りに限らずな、なんでもそうだが、なにかを始める時は最初はなんでもかんでも意気込んで頑張っちまうだろ?それはいいんだ、お前もそうだろう。

ただある程度、成果が出てくると人間ってのは油断や慢心が顔を見せる。これが怖いんだ。俺もそうだったからよくわかる。

172: 2013/01/10(木) 14:51:30.08 ID:UhTBKY0AO
お前にはそうなってほしくないんだ。一度その深みにはまるとなかなか脱け出せないからな。自分が正しいと思い込んで、周りが見えなくなっちまう。他人を思いやることもできず、信頼を失う。こんなに恐ろしいことはないぞ。

そうなる前に、心を落ち着けて、最初のころの気持ちを思い出すんだ。よくお偉いさんが言うだろ?『初心忘れべからず』ってな。常にそれを心がけてりゃ心配することはないぜ。

とまあ、長々と説教みたくなったな、すまん。

あと改めて18歳おめでとう。いつかお前と酒を呑めたらいいな。武闘家ちゃんたちも世界中回って頑張ってるんだ、お前もほどほどに頑張れよ。

じゃあこの辺でペンを置くとするか。誤字脱字はないとは思うが、あったらスルーしてくれ。では、体に気をつけて、ちゃんとメシ食べて、たっぷり寝てやってくれ。

追伸:じいさんとかにはセクハラされたりしてないか?男には気をつけるよーにな。


アリアハンより 父

173: 2013/01/10(木) 15:15:59.40 ID:UhTBKY0AO
商人「……………」カサ

武闘家「読んだ?どうだった?」

商人「……とう。」

武闘家「ん?」

商人「……ありがとう。お父さん。えっぐえっぐ、ぐすん」

商人「武闘家、手紙ありがとう!うわあぁぁん~」

武闘家「えへへ!どういたしまして~。」パアッ

勇者「よかったね。」

僧侶「うんうん、父は強しね。」

賢者「ぐすっ、ううう。商人さんよがっだ、よがっだです~」ポロポロ


商人は自分をとりもどした。

174: 2013/01/10(木) 15:27:33.58 ID:UhTBKY0AO
その後、商人は食欲を取り戻し、勇者達の差し入れをペ口リと平らげた。商人は町作りを始めた頃のまっすぐな瞳に戻り、いつもの柔らかな物腰に戻っていた。

しかし勇者達は牢屋の鍵を手に入れていた最後の鍵で開けたが、商人は出ることを拒み、牢屋に残ると決意した。まだここで反省しなければならないこと、町の皆に謝って受け入れてもらえるまでは精一杯に努力すると勇者達に約束をした。

175: 2013/01/10(木) 15:49:05.40 ID:UhTBKY0AO
商人「あっ!そうだ!あなた達が来たら渡そうと思ってたんだけど。」

勇者「なにをくれるの?」

商人「オーブよ、オーブ!イ工口ーオーブ!」

賢者「え~っ!?しょ、商人さんが持ってるんですか?」

商人「うん、いつだったかな~。この町に旅のキャラバン隊が来たことがあったんだけど、滞在中の寝床とか食事を提供したら、お礼にってキラキラした黄色い玉をもらったんだよね。」

武闘家「それだー!商人グッジョブ!」グッ

商人「もしもの時を考えて私の家の庭に埋めてあるんだ。掘り出して持っていってね。」

僧侶「やったわね。これで全部のオーブが集まったことになる。」

勇者「苦労した甲斐があったよね~!よっしレイアムランドに行って伝説の鳥を復活させよう!」

商人「こんな私でもみんなのお役に立てたかな?...よかった。」

176: 2013/01/10(木) 16:01:27.64 ID:UhTBKY0AO
勇者「ありがとう商人、私達のために。」

武闘家「そうそう、あのね商人。あとで宿屋の兄ちゃんが顔出しに来るってさ」ニコニコ

商人「青年さんが?そっか嬉しいな、彼にもすっごく迷惑かけたし謝らなきゃ。怒ってるんだろうな...」

賢者「ふふふ、怒るどころか優しくしてくれますよ、きっと。」ニコッ

商人「え?なんで?」

僧侶「まあまあ細かいことはいいから、ね。」

武闘家「(案外鈍いんだな。)」

177: 2013/01/10(木) 16:06:30.64 ID:UhTBKY0AO
勇者達は商人の家の庭に埋められていたイ工口ーオーブを無事掘り出して、その足で再び旅立っていった。

そしてさらに1ヶ月あまりが過ぎた。

178: 2013/01/10(木) 16:23:19.09 ID:UhTBKY0AO
革命発生より約40日

ホープバーク 教会の裏の畑


商人「よいしょっ!」ザクッ

商人「よいしょっ!」ザクッ

商人「ふう~、こんな感じかな~。だいぶいい感じになってきたね。」

尼僧「商人ちゃ~ん!そろそろお茶にしましょう!こっちへどうぞ!」

商人「あ、おばさんありがとうございます!」

尼僧「お疲れさま~!まあ~若いから仕事が早くて助かるわぁ~!」

商人「いえいえ。今の私にできることを精一杯やるだけですから。」

尼僧「ふ~ん、頑張ってるんだね。えらいえらい!」ジー

商人「な、なんですか?じーっと見つめて。なにか顔に付いてます?」

尼僧「そうじゃないのよ~!あの頃の商人ちゃんと顔が全然違ってるな~と思ってねぇ。」

179: 2013/01/10(木) 16:35:10.30 ID:UhTBKY0AO
商人「え、顔ですか?」

尼僧「アナタが町長をしていた時と比べて、よ。あの頃のアナタはなにかにとり憑かれたような険しい顔だったからね。」

商人「そうですよね...あの頃は自分を完全に見失ってたような気がします。とにかく利益になるためになんでもしようとしていました。」

尼僧「私はアナタが革命で牢屋に入れられちゃった時は心配もしたけど、安心もしたのよね」

商人「安心?」

尼僧「そう、あのまま革命も起きずにいたらアナタは今どうなってるんだろう、って考えたらよかったんじゃないかってね~」

商人「そうですね、私も考えるとすごい怖いですね。」

尼僧「でしょう?だからアナタが釈放されて、町の皆のために働くって言ってたのを聞いて。強い子だね~!って感心しちゃった!」

180: 2013/01/10(木) 16:43:54.88 ID:UhTBKY0AO
商人「私も牢屋から釈放された時に、あの革命を起こした人たちがすでに町から追放されていたのはびっくりしました。」

尼僧「あの男達がいい事を言っていたのは最初だけさ。完全に詐欺まがいの奴らだったわね!」

商人「カジノを完全に私物化しようとしていたそうですね。税金も私の頃のさらに倍以上を町の皆さんから取っていたとも聞きました。」

尼僧「とんでもない奴らよね。結局、アナタの資産をただ横取りして追放されたけど。」

商人「…………」

181: 2013/01/10(木) 16:51:17.55 ID:UhTBKY0AO
尼僧「あの時に町のみんなの先頭にたってあいつらを追放しようと、頑張ってたのが、おじいさんと青年くんね。」

商人「もう私はあの二人には一生頭が上がりません。本当に感謝してもしきれないくらいに。」

尼僧「そうよ~!感謝しないとねぇ。あっ、この後は青年くんのところでお手伝いでしょ?」

商人「はい、しっかり働いてきます!」ニコ

182: 2013/01/10(木) 17:06:44.56 ID:UhTBKY0AO
商人が牢屋から釈放されてから2週間。商人はこれまでの愚行を町の皆に詫びると共に、毎日町のいたるところで仕事を請け負い、働くことで失った信用を再び得ようと必氏だった。

日に日に、その商人の誠実な仕事ぶりを見て、町民からも以前のように、話掛けられるようになり、その度に嬉しさで涙を流した。

商人のあと、ホープバークを仕切っていた男達はすぐに馬脚を現し、さらなる重税を課したり、カジノを私物化するなどやりたい放題だった。

そんな中、スーより戻った老人と宿屋の青年が先頭になり、男達を追放することに成功した。その時に商人の蓄えていた資産を半分持ち去られてしまったが。

この資産は商人が町長時代の利益分を密かに蓄えていたもので、本来は不正だが、商人の意思により町のために使用されることとなり事なきを得ていた。

183: 2013/01/10(木) 17:15:02.85 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 宿屋


ガチャ!
商人「はあ、はあ。遅くなっちゃってごめんなさい!」

青年「ああ、商人さんお疲れさま。来てくれてありがとう。」

商人「今日はなにをすればいいですか?」

青年「ええとね~じゃあ各部屋のお掃除を頼むかな。僕も一緒にやるから。」

商人「わかりました!じゃあ私、着替えてきますね。」タッタッタ

青年「うん、じゃあ僕は先に始めてるね。」ニコ

184: 2013/01/10(木) 17:26:50.98 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 宿屋 客室


商人「ええと、こことここかな、汚れがまだ残ってる。」キュッキュッ

青年「商人さんは手際がいいな。僕は掃除ってのはどうも苦手で。いつもはお手伝いさんがいるんだけど、今日は風邪引いちゃったみたいでね。」

商人「そんな~、普通ですよ。私は料理は好きだけど掃除は苦手な方です。」ニコ

青年「へぇ。商人さん、料理得意なんですか?」

商人「いつかな、勇者達4人にも振る舞いましたよ!大絶賛でしたよ、えへ。」

青年「いいなぁ。僕も商人さんの手料理食べたいな~、なんて。ははは。」チラッ

185: 2013/01/10(木) 17:38:04.74 ID:UhTBKY0AO
商人「へ?そんなんでよければいつでも言ってください。作りに来ますよ!」

青年「えっ?ほ、ほんとに。」

商人「はい、青年さんには感謝しきれないくらいなんだから。そのくらいのお返しはさせてもらわないとね。」

青年「(はぁ~そういう意味でか...)」ガクッ

商人「? あっ、青年さん!水溢れてるよー!」

青年「へ?うわっあ!」

バシャー!

青年「やっちゃったなぁ...」

商人「あはは、気を落とさないで。またやり直せばいいんだから、ほらほら。」せっせせっせ

青年「ありがとう(やっぱり商人さん可愛いな...)」

186: 2013/01/10(木) 17:57:37.09 ID:UhTBKY0AO
ホープバーク 宿屋 ロビー


青年「商人さん、今日はありがとう。助かったよ!はい、これどうぞ。」

商人「力になれて私も嬉しいです。わあ、ジュースですか、ありがとう。いただきますー。」ゴクゴク

青年「そうだ、商人さん。少し相談があるんだけど、」

商人「いいですよ、どうしたんですか?」

青年「実はおじいさんから、この町の町長にならないか。と言われているんですが。」

商人「!?」ゴクゴク

187: 2013/01/10(木) 18:05:32.01 ID:UhTBKY0AO
商人「青年さんが?町長に?」

青年「はい。お前ならしっかりとやれる。大丈夫だ!と。どうですか?」

商人「いいじゃないですか!まさに青年さんなら新しい町長にピッタリだよ!」

青年「そうかなぁ。あまり自信がないんだけどな。」

商人「ううん、適任だと思うな。青年さんは真面目だし、優しいし、町民とも仲がいいし。」

商人「なにより、町民の先頭に立って、みんなをまとめていたんでしょ。町のみんなも大賛成だと思いますよ。」

188: 2013/01/10(木) 18:13:57.95 ID:UhTBKY0AO
青年「商人さんにそう言ってもらえると自信が出てきますよ。なにしろ初代町長で一から町を作った人だし。」

商人「ううん、私なんか。途中で失敗しちゃってるんだからだめ。私も青年さんが町長になったらすっごく嬉しいもの!」ニコ

青年「よかった、商人さんに聞いてみて。自分でもじっくり考えてみるよ。」

青年「(よし、なんかやれそうな気がしてきたぞ。)」

商人「あ、じゃあ私はそろそろ帰りますね!ジュースごちそうさま~!営業頑張ってたくださいね!」

青年「はい。またいつでも来てくださいね。お疲れさまでしたー!」

ガチャ
バタン

196: 2013/01/11(金) 11:05:46.89 ID:UF4lwD7AO
ホープバーク 老人の小屋


コンコン
ガチャ

商人「こんばんはー。おじいちゃんいる?」

老人「おう、商人か。どうしたもう夜だぞ。」

商人「ううん、なんとなくおじいちゃんの顔が見たくてね。あれ?夕御飯は食べたの?」

老人「今からじゃ、なにか適当に作ろうかと思っとった。」

商人「そっか。……ねえ、私も夕御飯今からなんだけど私が作ろうか?」

老人「お前が?そういえば料理得意と言ってたな。」

商人「うん!じゃあ決まりね!」

197: 2013/01/11(金) 11:20:11.27 ID:UF4lwD7AO
食事後


商人「ごちそうさまでした~!」

老人「ふむう、みんな絶品だったわい。馳走になったな。ありがとう商人。」

商人「うふふふ、どういたしまして。全部食べてくれてありがとね。」

老人「おぬしは、故郷に父親がいるんだったな。この前の手紙もあったが。」

商人「そうだよ。パン屋兼道具屋をやってるんだ。」

老人「母親は、おらんのか?」

商人「うん、まだ私が子供の頃に流行り病で氏んじゃった。だから料理は私の役目だから得意になったんだよ。」

老人「そうだったか...」

198: 2013/01/11(金) 11:37:21.11 ID:UF4lwD7AO
商人「そういえば、おじいちゃんはスーに家族はいないの?」

老人「ワシは今の今までずっと独り。遠い親戚に商人より上くらいの男の子いるが、行方知れずなんじゃよ」

商人「そうなのね...寂しくないの?」

老人「何十年も独りだったからな。もう慣れたよ。それにの、今はお前が孫みたいなものだと思ってるから、寂しくないわい。」

商人「え?孫?わ、私が?」

老人「ワシにもし孫がおればお前みたいなかわいいおなごなんだろうのう、ほっほっ。」

商人「か、かわいいだなんて。照れるよ、おじいちゃん。」カァ

199: 2013/01/11(金) 11:57:06.42 ID:UF4lwD7AO
老人「ほっほっ、なに照れてる?お前らしくない。」

商人「んー。でもありがとう。でも私もおじいちゃんっていなかったから、ほんとのおじいちゃんみたいに思うよ、えへへ。」

老人「そうかそうか、嬉しいのう。」ポロ

商人「(おじいちゃん泣いてる?)」

老人「お前が、町長になって牢屋に入れられるまで、ずっとヒヤヒヤしとったぞ。心配させおって....」ポロポロ

商人「あ、………本当にごめんなさい。おじいちゃんは私の事をずっと心配してくれてたのに、気が付かないで。」

商人「ううん、気が付いていたはずなのに、目先の事ばかりにとらわれてて気が付かないフリをしてたのね。」

老人「ズズ..でも....いい。もう過ぎたこと。今こうしてお前と話ができるだけで満足だよ。」

200: 2013/01/11(金) 12:03:38.72 ID:UF4lwD7AO
商人「おじいちゃん。肩叩きしてあげるよ!」

老人「ん?そうか。ではお言葉に甘えようかの。」

商人「はいはい、じゃあ失礼しますよ~。」

とんとんとん

とんとんとん

とんとんとん

………………


商人の一日が終わった。

201: 2013/01/11(金) 12:39:25.90 ID:UF4lwD7AO
それから2週間後


世界中に嬉しいニュースが駆け巡った。

勇者達一行が、ネグロゴンドの奥にある城にて、魔王バラモスを倒したという。ついに世界に平和が訪れることになった。

それとまったく時を同じくして、商人の町ホープバークでも新しいなにかが始まろうとしていたのだ。

202: 2013/01/11(金) 12:53:31.88 ID:UF4lwD7AO
ホープバーク 入口


勇者「いや~やっと着いたね!船旅はのどかでいいや。」

僧侶「………んぐ」ジロ

勇者「あ、ごめんね僧侶。」

賢者「魔王を倒しても、船には弱いよね、大丈夫?」

武闘家「商人は元気にしてるかな~?早く行ってみよー。」

僧侶「それもだけど、ど、どこかで少し休ませて...」グタッ

勇者「よし。じゃあとりあえず宿屋に行こうか。」

203: 2013/01/11(金) 13:02:13.32 ID:UF4lwD7AO
ホープバーク 宿屋


賢者「着きましたね。あれっ?」

武闘家「賢者、どうしたの~?」

賢者「ドアに張り紙が....『本日休業いたします。ご用の方は町長の家においでください』ですって。」

勇者「お休みなんだー。じゃ仕方ないね。僧侶大丈夫?」

僧侶「ええ、だいぶマシになってきたから大丈夫よ。」

武闘家「なら、とりあえず町長さんの家に行ってみよか。」

賢者「そうですね。」テクテク

204: 2013/01/11(金) 13:35:56.54 ID:UF4lwD7AO
ホープバーク 町長の家


商人「では、青年さん。あなたを今日付けでホープバークの新しい町長に任命します。」

青年「はい!一生懸命頑張らせていただきます。」

老人「うむ。お前なら立派な町長なれる。ワシが保証する!」

商人「青年さん、頑張ってね!この町をもっと良くしていってね。」

ガチャ

勇者「失礼しまーす。ってあれ?商人だ~!」

商人「えっ?勇者じゃない?どうしてここに。」

勇者「アリアハンに戻って、王様に世界中の皆に直接知らせてきなさいって言われてね」

賢者「こんにちは!みなさん、お元気ですか?」

僧侶「あら、みんな揃ってるのね。」

武闘家「我ら魔王バラモスをやっつけた勇者ご一行だぞ~!」ドヤッ

商人「みんな!無事だったのね?よかった~、魔王討伐お疲れさま!」

205: 2013/01/11(金) 13:46:49.16 ID:UF4lwD7AO
青年「みなさん!お帰りなさい。わざわざ来ていただいて、町長としてお礼申し上げます。」ペコリ

勇者「え。町長って、青年さんが町長さんになったんですか?」

老人「そうじゃよ。今日からまたこのホープバーク新しく始まる。とても嬉しいこと。」

武闘家「町長さんか~青年くん、凄いね!カッコイイ~!」ピーピー

賢者「この度は就任おめでとうございます。頑張ってくださいね!」

僧侶「そう。これからはおじいさんと商人が青年さんは支えていくのね。」

商人「あ、あの、そのことなんだけどね。実は...」

206: 2013/01/11(金) 16:13:46.79 ID:UF4lwD7AO
商人「私はもうこの町を出ようと思うんだ。」

青年「……………」

老人「……………」

武闘家「町を出る?」

賢者「ど、どうしてですか?」

僧侶「あなたはもう罪人ではないのよ。町のみんなからも許してもらって認められてるんでしょう?」

商人「うん。私もたくさん反省して、町のみんなのために働こうと一生懸命やってきた。だけど。」

勇者「…………」

商人「このホープバークという町には、立派な町長がいる。私の役割はすでに終わっているの。」

207: 2013/01/11(金) 16:28:41.35 ID:UF4lwD7AO
商人「1年にも満たない時間だったけど、たくさん勉強をさせてもらった町作りに感謝しています。」

武闘家「商人....いっぱい考えたんだね。えらいよ。」

商人「これからは青年さんとおじいちゃんとで素晴らしい町に発展させていってくれると信じてます。」

老人「お前がいなくなるのはあまりにも寂しいが、お前の決めた事、ワシは止めないよ。」

青年「僕も寂しいけどこれまで商人さんが必氏に作ってくれたこの町をしっかり受け継いでいきます!」

商人「二人とも後はよろしくお願いね。勇者、私は一旦アリアハンに帰るね、そこで今後なにができるか考えてみるつもりよ。」

勇者「そっかぁ、よくわかったよ。私達もまだいくつか回らないといけない国や町があるから。」

208: 2013/01/11(金) 16:39:57.79 ID:UF4lwD7AO
賢者「じゃあ商人さんもひとまずお疲れさまですね。アリアハンでまた会いましょうね。」

僧侶「また、あなたのお店の美味しいパンが食べたいものね。」

商人「そうだね、また遊びにきてね。パンもサービスしちゃうよ。」

武闘家「おじさんとも久々に会えるね!いっぱい甘えてあげなよね、へへへ」

商人「私は子供じゃありませんよー。べー、だ。」プイ


商人「ねえ勇者。もし機会があればだけど、私をまた仲間にしてくれる?」

勇者「もちろん!大歓迎さ!」

商人「...ありがとう。」ニコッ

209: 2013/01/11(金) 16:48:09.52 ID:UF4lwD7AO
世界に平和が訪れた。そんな中、ホープバークていう町が新たな道を歩んでいくことになった。町作りに携わった商人は、新しい町長の誕生を見届けて自らは町を去った。

勇者達一行も各地を回り、魔王討伐と世界平和の実現を報告し、故郷アリアハンに戻っていった。


しかし、まだ目に見えぬ新たな闇が刻一刻と確実に迫っているのを誰も知らなかった。


中編 おわり

211: 2013/01/11(金) 16:54:32.73 ID:UF4lwD7AO
中編終了時における各キャラのレベル


勇者♀
Lv.40

武闘家♀
Lv.41

賢者(元僧侶)♀
Lv.37

僧侶(元魔法使い)♀
Lv.39

商人♀
Lv.7

223: 2013/01/15(火) 13:43:36.44 ID:bu3sJRWAO
勇者達が魔王バラモスを倒して数日が経った。

世界各地を回り、魔王討伐の報告を済ませた勇者達は再びアリアハンに戻ってきたのだった。

自らが作った町《ホープバーク》を離れ、故郷に帰って父親の店を手伝っていた商人の耳にも勇者達帰還の知らせが入った。

224: 2013/01/15(火) 13:54:01.13 ID:bu3sJRWAO
アリアハン 商人の家


父親「さぁてと~そろそろ昼飯にするかな。」

商人「はーい!じゃあお父さん、手洗ってきて。私が昼ごはんの準備するからー」

父親「おう!じゃあお前らも休憩してきていいぞ。」

従業員「はーい、お昼いただいてきます!」

従業員「お疲れさまでした~!」

商人「ええと、ご飯は炊けてるかなぁ?」セカセカ

225: 2013/01/15(火) 14:04:33.26 ID:bu3sJRWAO
アリアハン 商人の家 キッチン


商人「はい、ごちそうさまでした。美味しかったです、と。」

父親「同じく、美味しかったです、と。しばらくいないうちにまだ腕を上げたか?商人どの。」

商人「どういたしまして。あっちじゃすべて自炊だったし、お世話になった人にも振る舞ったりしてたからねー、えへへ。」

父親「ま、お前も短い間でずいぶんなんていうかな~、その~、大人っぽくなったってのかね。」チラッ

商人「なにそれ?そうかなぁ。たしかにいろいろ大変で何年もいたみたいな感じだけどさ。勉強もいろいろできたし、よかったのよ、今思えば。」

226: 2013/01/15(火) 14:18:27.98 ID:bu3sJRWAO
父親「苦労したんだな。いい経験したと思うぜ、俺は。またいつかその経験が役に立つことがあろうさ。」

商人「そうだね。あ、勇者達は今、城内で宴に参加してる頃だよね、きっと。」

父親「そうだったな。どんちゃん騒ぎになってんじゃねえか?まさかあの嬢ちゃん達が魔王を倒してくるなんてな、あの時は冗談半分かと思ったがなぁ。」

商人「あの4人も本当に頑張ったんだろうな。私も少しだけだったけどパーティーに入れてもらって嬉しかったなー。」

父親「お!そういやお前も勇者ご一行の一員だったんだな~!それを利用して利益をあげられ....」

商人「ません!」ビシッ

父親「は、はは。すまんすまん、冗談だって。な?はっはっはっ!」

商人「………(目は本気だったわね...)」ジー

227: 2013/01/15(火) 14:29:13.55 ID:bu3sJRWAO
商人「お父さん、そろそろ午後の準備しましょう。」カタッ

父親「もうこんな時間か。よし、午後もがっつり働きますかー。」

バタンッ

従業員「だっ、旦那さん!お嬢さん!大変ですっ!!」ハアハア

父親「あん?」

商人「どうしたの?血相変えて?」

従業員「お、お城で....」ゼイゼイ

商人「落ち着いて!」

従業員「兵士たちがいきなり雷に撃たれて氏んだって!それに大魔王ってのが現れたって!」

父親「なんだってー!?」

229: 2013/01/15(火) 14:48:00.48 ID:bu3sJRWAO
それより30分ほど前

アリアハン 城内 王の間


アリアハン王「ゴホン!よくぞ帰ってきた勇者とその仲間たちよ!魔王バラモスを倒した汝らの働き見事であった。」

勇者「ありがとうございます!世界の皆も大変喜んでくれて、私と仲間達も嬉しく思います。」ベコリ

王「そうかそうか。世界に平和が戻り、世界中の人々が安心して暮らすことができる世の中になったのだな。」

大臣「この後は、盛大に宴を開く予定なのだが、ぜひ勇者殿とお仲間にも出ていただきたい!」

武闘家「うたげ?やったね!美味しいものがたっくさん出るよね、賢者?」

賢者「シーッ。武闘家さん、静かに。」ヒソヒソ

武闘家「あ、ごめん。でも出るよね?」ヒソヒソ

賢者「おそらくは。(相変わらず食いしん坊なんだから武闘家さんたら)」ヒソヒソ

230: 2013/01/15(火) 14:58:30.80 ID:bu3sJRWAO
勇者「ありがとうございます。ただ私達も旅の疲れがありますゆえ、今からではなく夜にでも時間を改め、開いていただけるようにお願いできませんか?」

王「ふむ、そうであったな。では夜までゆっくり休んでもらい、その後宴を開こう。では大臣そのようにな。」

大臣「ははっ。」

武闘家「えー?夜になってからなの?」

僧侶「バカ、声が大きいわよ武闘家。」ヒソヒソ

武闘家「あ、ごめんなさい。つい。」シュン

僧侶「(それにしても勇者ってこんなにビシッとしゃべれるなんて、感心ね。)」

231: 2013/01/15(火) 15:09:57.49 ID:bu3sJRWAO
王「では、めでたい宴は夜に行うとして。兵士たちによる勇者達の成果を讃える演奏だけでも披露させてくれ。では兵士たちよここへ!」

兵士たち「ははっ!」ズラズラ

賢者「すごい。私達のために?」

勇者「サマになっててかっこいいね!」

武闘家「私はお腹空いたよぉ。」

僧侶「はいはい、もう少し我慢ね。」

兵士たちの管弦楽器による演奏が始まった。壮大なメロディーに乗り、勇者達も夢心地で聞き入っていた。

しかし次の瞬間!王の間に激しい雷撃が降り注いだ!

ピカッ!
ドシャアアァァ!!!

232: 2013/01/15(火) 15:19:46.73 ID:bu3sJRWAO
ほんの刹那の一瞬だった。
降り注ぐ強烈な雷は演奏をしていた兵士たちを容赦なく撃ち抜いた。声を出す間もなく焼き殺され絶命したのだった。

数秒、その場にいた勇者達4人はなにが起きたのか、理解ができなかったが、目の前の惨状を見て我に帰った。

すぐさま、勇者のザオラル、賢者、僧侶のザオリクで兵士たちの蘇生を試みるが、効き目がまったくなかった。

王と王妃、大臣は腰を抜かしてしまい、放心状態だ。そんな時、どこからともなく暗くよどんだ声が聞こえてきた。

233: 2013/01/15(火) 15:31:35.73 ID:bu3sJRWAO
「くっくっく。」

勇者「誰だ!?どこにいるんだ?」

「わはははは!喜びの一時に驚かせたようだな?」

武闘家「ちくしょう!罪もない兵士さんたちを、許さない。出てこいって言ってんだー!!」

「威勢がいいな小娘。こんな人間どもにバラモスがやられるとはな...」

賢者「(な!なんて深く暗い声!?)」

「我が名はゾーマ。闇の世界を支配するもの。」

僧侶「(ゾーマ?闇の世界?なんのこと?)」

「このワシがいる限り、やがてこの世界も闇に閉ざされるであろう。」


234: 2013/01/15(火) 15:37:11.59 ID:bu3sJRWAO
「さあ、苦しみ、悩むがよい。そなたらの苦しみはワシの喜び。」

「命ある者すべてを我が生け贄とし、絶望で世界を覆いつくしてやろう!」


「我が名はゾーマ。すべてを滅ぼすもの。そなたらが我が生け贄となる日を楽しみにしておるぞ。わははははー」


邪悪な声は聞こえなくなった。

235: 2013/01/15(火) 15:52:53.22 ID:bu3sJRWAO
勇者「ゾーマ.....一体これはどうなってるんだろう。」

賢者「あ、足が。すくんで。ああっ」ヘタ

武闘家「賢者、大丈夫?それにしてもゾーマって?」

僧侶「初めて聞く名前よ。話の感じからバラモスはゾーマってやつの部下にすぎなかったっとことね....」

勇者「私達があれだけ倒すのに苦労したバラモスよりずっとずっと強いのね。」

賢者「バラモスが魔王なら、あのゾーマってやつは大魔王というところでしょうか?」

武闘家「大魔王でも魔王でもいいよ。とにかくゾーマを倒さないとまた世界が危ないってわけでしょ。」

勇者「そうだね。休んでるヒマはない!すぐに行かなきゃ!」

236: 2013/01/15(火) 17:27:24.63 ID:bu3sJRWAO
突然の大魔王ゾーマの出現により事態は急変してしまった。正気を取り戻したアリアハン王はゾーマの存在を口外しないように厳しく城内の人間に勧告した。

城下町には一部の噂が流れるだけにとどまり、混乱を招くことはなかったが、その邪悪なる空気を察する聖職者も少なからずいた。

世界はまだゾーマの存在を知らないがこのままではいずれゾーマの言う通り人間すべてを生け贄にし、世界を恐怖で覆うつもりだろう。

勇者達4人はすぐにゾーマのいる場所の手掛かりを探しにアリアハンを出て、以前訪れた、竜の女王の城にラーミヤの背に乗り向かっていった。

237: 2013/01/15(火) 17:53:07.70 ID:bu3sJRWAO
商人は城内で起こったことの詳細は結局わからずじまいだった。ただ城下町では噂が飛び交う程度で、勇者達を心配しながらも、店の手伝いで忙しい日々を送っていた。

ただ、これまで商売事や町作りのことで頭がいっぱいだった彼女の心境の変化が現れたのもここ数日のことであった。

242: 2013/01/16(水) 09:36:47.28 ID:Mk1jx2gAO
アリアハン ルイーダの店


商人「ルイーダさん、こんにちは!」

ルイーダ「ああ、誰かと思えば商人ちゃんじゃない。お久しぶりね。」ニコ

商人「あのう、今お仕事お忙しいですか?ちょっと聞きたいことがあって。」

ルイーダ「聞きたいこと?いいわよ。別に今はヒマだしね。」

商人「ほんとですか?ありがとう、ルイーダさん。」

ルイーダ「じゃあそっちのテーブルで話をしようかしら。今、紅茶入れるから座って待ってて。」

商人「わかりました。」ガタ

243: 2013/01/16(水) 09:50:13.10 ID:Mk1jx2gAO



ルイーダ「なるほどね、転職を考えてるんだ?」

商人「はい。勇者達がなにやらわからないけど大変そうじゃないですか。」

ルイーダ「私も詳しくは知らないんだけど、魔王バラモスよりも強大な大魔王ってのが勇者達に宣戦布告してきたって話よ。たぶんあの子達が出ていったのはそれに関係してるわ、たぶんね。」

商人「大魔王....そんな強そうなやつが。だから私になにができるかわからないけど、勇者達の力になりたいんです!」

ルイーダ「わかったわ。じゃあ商人ちゃんはどの職に転職をしたいの?」

244: 2013/01/16(水) 10:08:17.98 ID:Mk1jx2gAO
商人「勇者達も魔物もかなりレベルが上がってるみたいだし、武闘家や戦士がいいかな、とも思ってるんですが、魔法も使えるとさらにいいかな。」

ルイーダ「そうね、どの職も長所短所があるから悩みどころよね...あ、そういえば。」

商人「?」

ルイーダ「少し前に勇者ちゃん達がアリアハンに来た時に、私のところにも顔出してくれたんだけどさ。私に武闘家ちゃんがぼそっと漏らしてたのよね。」

商人「武闘家が?なんて言ってたんですか?」

ルイーダ「えと、たしか。『私ねルイーダさん、だんだん足手まといになってる気がするの。』って言ってたわ。それだけだったけど。」

246: 2013/01/16(水) 10:24:06.45 ID:Mk1jx2gAO
商人「足手まとい?あの子がそんな事言ってたんですか?」

ルイーダ「え、うん。まああの時は少しだけお酒も入ってたみたいだし、気にしてなかったけれどねぇ。」

商人「(あの子がそんなことを愚痴るなんて、なかったな。)」

ルイーダ「旅の道中になにか思うころがあったのかしらね。」

商人「まあ、あの子のことだから心配ないとは思うけど。」

ルイーダ「そうね。ああ、話が脱線しちゃったわね。転職の話だったわね。」

マスター「おおいルイーダちゃん。すまんがあんたにお客が来てるぜ。」

ルイーダ「あ。お客?ごめんね商人ちゃん。ちゃんと話できなくて。このダーマ神殿のパンフレットをあげるわ。これに詳しく転職について書かれてるからよく読んでみてね~。」

商人「私の方こそ突然ごめんなさい。パンフレットありがとう!紅茶もご馳走さまでした。」

247: 2013/01/16(水) 10:47:44.34 ID:Mk1jx2gAO
それから1週間後
アレフガルドの世界
ラダトームの城下町


町娘「まあ、あなた達、表の世界からいらしたんですの?」

勇者「そうです、まだここの世界のことがサッパリなんだけど。」

町娘「この世界は闇の世界アレフガルドよ、大魔王ゾーマに掌握されているわ。」

賢者「闇の世界...あのずっと暗いままなのですか?」

町娘「そう。ゾーマに光が奪われてからはずっと夜よ。たまらないわ。」

武闘家「じゃあそのゾーマってのを倒しちゃえばいいんだよね?」

町娘「無理よ。バラモス程度をやっと倒したくらいじゃあお話にならないと思うけど、お嬢さん?」

武闘家「く、くそっ。バカにして。」

僧侶「(...たしかにバラモス倒すのににあれだけ苦労したのに、大魔王なんて。)」

勇者「でもなにがあっても大魔王ゾーマを倒さなくちゃいけないんだ!」

町娘「ま、あなた達の意気込みだけは認めるわよ。せいぜい頑張ってね~。」スタスタ

248: 2013/01/16(水) 10:58:18.62 ID:Mk1jx2gAO
勇者達はアリアハンでのゾーマ出現から、すぐに竜の女王の城に向かい、闇の世界と表世界を繋ぐ《ギアガの大穴》の情報を得ると、すぐにバラモス城の東に現れたその大穴に飛び込んだ。

すると降り立った場所は闇が支配する世界アレフガルドだった。勇者達は近くに見つけたラダトームという城下町に訪れていたのだ。町と城の人々は希望を失い、ゾーマを恐れていた。

勇者達はしばらくラダトーム周辺で情報を集め、かつ魔物と戦いレベルを上げようと奮戦していた。

249: 2013/01/16(水) 11:28:51.89 ID:Mk1jx2gAO
ラダトーム周辺の森


モゾモゾ

賢者「なにか来ます!」

勇者「な、なにこれ?地面から手がたくさん出てるよ~。」

マドハンドが8体あらわれた

武闘家「とにかく先手必勝だよ!えりゃあ~!」ダッ

ズババッ!

武闘家の攻撃
マドハンドAにダメージ。
マドハンドAをやっつけた
マドハンドBは仲間を呼んだ
だいまじんがあらわれた

僧侶「な!なんてデカさなの?」

勇者「半端ないね、こんなの。よし、喰らえー!」ダッ

ガキィ!

勇者の攻撃
だいまじんに小ダメージ
マドハンドCは仲間を呼んだ
だいまじんBがあらわれた

賢者「これじゃキリがない。」

250: 2013/01/16(水) 11:45:17.77 ID:Mk1jx2gAO
武闘家「とにかく倒さなきゃ。うりゃあ~!」ダッ

ズババッ!

武闘家の攻撃
マドハンドBにダメージ
マドハンドBをやっつけた
マドハンドDは仲間を呼んだ
だいまじんCがあらわれた

僧侶「ダメよ武闘家!あいつは倒すたびにだいまじんを呼ぶわ。私にまかせて!」

僧侶はヒャダインを唱えた
氷の刃が魔物を襲う
マドハンド全匹にダメージ
マドハンドをやっつけた

勇者「僧侶ナイス!あとはこいつらだけだ。」

賢者「武闘家さん、危ない!」
武闘家「!!よっと。」

だいまじんAの攻撃
武闘家はひらりとかわした

武闘家「へっへーだ。スキだらけだ。くらえ~!」ヒュン

ズドン!!

武闘家の攻撃
だいまじんAにダメージ
だいまじんCの攻撃
痛恨の一撃!

ズドン!

武闘家「うわあぁぁぁ~!」バタッ

勇者「武闘家ぁ~!!」

251: 2013/01/16(水) 12:03:48.88 ID:Mk1jx2gAO
武闘家「ぐあぁ!ちくしょう!」ハァハァ

勇者「起き上がっちゃだめ!じっとしてて。んー」ブツブツ

勇者はベホイミを唱えた
武闘家のキズが回復した

武闘家「サンキュー、勇者。迷惑かけてごめん。」

勇者「うん、気にしない気にしない。」ニコッ


賢者「ここは補助魔法で、僧侶いくよ!」ブツブツ

僧侶「了解!」ブツブツ

賢者はルカナンを唱えた
僧侶はマヌーサを唱えた
だいまじん達の守備力を下げた
だいまじん達は幻に包まれた

勇者「よしっ!今度こそー!」ダッ

賢者「精霊達よっ、勇者さまに力をっ!」ブツブツ

賢者はバイキルトを唱えた
勇者の攻撃力が倍増した
勇者の攻撃
だいまじんAに大ダメージ
だいまじんAをやっつけた

252: 2013/01/16(水) 12:16:41.99 ID:Mk1jx2gAO
勇者「よっし!やったね!」

だいまじんBの攻撃
攻撃は当たらない
だいまじんCの攻撃
攻撃は当たらない

僧侶「効いてるわね。このスキに。もう一度いくよ、賢者!」ブツブツ

賢者「わかってる。」ブツブツ

僧侶はベギラゴンを唱えた
賢者はバギクロスを唱えた
炎が風の力で威力を増した
だいまじん達を焼き付くした
魔物達をやっつけた

賢者「やりましたねっ!勇者さま!」

僧侶「でも、かなり危なかったわね。」

勇者「やったね、かなりこっちの魔物は手強いよね。おーい武闘家、大丈夫~?」ブンブン


武闘家「大丈夫だよ。………(みんなすごいなぁ...でも私は)」

255: 2013/01/16(水) 12:54:20.59 ID:Mk1jx2gAO
その後、勇者達はアレフガルド世界の魔物の強さに手こずりながらも、レベルを少しずつ上げつつ、旅を続けていった。

砂漠の町ドムドーラ、城壁の町メルキド、温泉の町マイラ、そしてリムルダールにたどり着いた。

しかし、勇者達も不慣れな闇の世界での戦闘漬けの日々に疲れの色を隠せなかった。特に武闘家は仲間と距離をとり、独りでいることが多くなっていた。

この事態を重くみた僧侶の提案で一度、表世界に戻り、お互いに休息を取ろうという事になった。全員賛成し、リムルダールからアリアハンに戻った。

256: 2013/01/16(水) 13:27:26.26 ID:Mk1jx2gAO
アリアハン 武闘家の家


商人「大魔王ゾーマ。そうだったんだ、お城でそんなことがあったんだね。」

武闘家「大変だったんだぞ~、兵士さん達は全員殺されちゃったし、蘇生魔法も効かないし。」

商人「え?ザオリクが効かなかったの?事故氏なら効果があるはずなのにね。」

武闘家の母親「きっとそれは、ゾーマとかいうやつの闇の力が強すぎて聖魔法の効果が消されるからよ。」

武闘家「へえ~さっすがお母さん!なんでも知ってるね。」

商人「おばさんは魔法にも詳しいんですね。さすが勇者パーティーの紅一点。」

母親「元よ元。昔のことだもん。あの頃は私も若かったのよ~。なんちゃってね!」

商人「(う~ん、おばさんと武闘家、相変わらずソックリよね。)」

武闘家「うん?商人どーしたの?」

商人「ううん、なんでもないよ。」

257: 2013/01/16(水) 13:36:50.50 ID:Mk1jx2gAO
商人「ねえ、武闘家。私に大切な用ってなんなの?わざわざ家に呼んでまで。」

武闘家「あっ、うん。あのね。」

商人「そうだ、私もあなたに聞きたいことがあったんだ。」

武闘家「なに?」

商人「この前、ルイーダさんに聞いたんだけど、あなたが愚痴ってたこと。自分は足手まといだとかなんとか、っての。」

武闘家「…………」

商人「.....そのことと関係することなのね?」

武闘家「…………うん。」

商人「いいよ。話してみて。」ニコ

258: 2013/01/16(水) 13:54:46.61 ID:Mk1jx2gAO
武闘家「率直に言うよ。私は勇者パーティーを抜けるよ。」

商人「!!」

武闘家「私が今のパーティーにいたら、みんな氏んじゃうかもしれないから。」

商人「なんでそんなことを?逆じゃない?あなたがいなきゃ戦力が足りなくなる。攻撃の要はあなたよ。」

武闘家「そんなことはわかってるんだ。ただ闇の世界じゃ魔物もすんごくズル賢くて強い。私がただバカみたいに暴れてればいいわけじゃないんだよ。」

武闘家「闇の世界では私が足を引っ張ってて戦いが上手くいかないんだよ!私にはこの先、旅を続けて魔物と戦い続けるなんてできないよ。」

商人「そんな、ここまでせっかく強くなったのに。もったいないよ。」

武闘家「それにね、私は頭弱いから魔法も使えないし。旅の最初は魔法なんか使えなくても、って思ってたけど、今は使えなきゃだめかな、って思うんだ。」


259: 2013/01/16(水) 14:15:55.11 ID:Mk1jx2gAO
商人「(この子のこんな目、初めて見る。本気なのね)」

商人「あなたはパーティーを抜けたあとどうするの?」

武闘家「………旅に出ようかなと思うんだ。私バカだった。一人で思うがまま動いて、迷惑かけて。そんな自分を見つめ直したいんだ。」

商人「一人で?大丈夫なの。」

武闘家「心配しないで、強さだけなら私は世界の誰にも負けないもん!」

商人「まあ、たしかにそうね。じゃあ3人はこのこと知ってるの?」

武闘家「アリアハンに戻ってきてすぐにここで3人に話をしたんだよ。最初私が切り出した時は全員びっくりして目が腐った氏体みたくなってたけどね~」

商人「腐った氏体....(目が飛び出すくらいびっくりしたってわけね)」

260: 2013/01/16(水) 14:33:37.95 ID:Mk1jx2gAO
武闘家「賢者なんかは途中からポロポロ大泣きしちゃうんだもん。僧侶も少し泣いてたかな。」

武闘家「必氏に引き留めてくれたのは嬉しかったけど、もう心に決めてたからね。勇者はなにも言わずに頷いてくれてたな。」

商人「そうなんだ。お互いが辛いけど大きい決断をしたんだね。」

武闘家「そうだよ。別れ際に勇者が言ってくれたんだよ。

勇者『私達と武闘家はこれからもずっとずっと仲間だし友達だからね!』

ってね。もう私も堪えてたのにそれ聞いたらもうダメだったよ。ほらもう思い出すだけで...」ポロ

母「(向こうのキッチンから顔を覗かせて)まったくね~ずっと泣きっぱなしで私にもわんわん泣きついてきたのよ~。」

武闘家「おっ!お母さん!」カァー

商人「ふふふ。勇者いいこと言うよねー。泣かせようとしたんじゃない?」ニヤニヤ

261: 2013/01/16(水) 14:48:23.53 ID:Mk1jx2gAO
商人「じゃあさ、勇者達は3人でこれから旅するの?」

武闘家「なんかね、賢者も僧侶も今のままでは闇の世界では厳しくなるからって転職したいって言ってたよー。」

商人「そうなの?何に転職するの2人は。」

武闘家「たしか、賢者は武闘家になりたいって、私の抜けた穴を埋めたいってさ。僧侶は戦士になるみたいだよ。」

商人「へえ~思いきった転職をするのね。あ、でも。」

商人「(なるほど。2人とも全部の魔法を覚えた状態で転職すれば魔力とかは半分になるけど魔法は使えるってわけね)」

商人「(そうすれば魔法を使える素早い武闘家と魔法を使える攻撃力が高い戦士になれる。)」

武闘家「あとね4人目はもう決まってるって勇者が言ってたよ。」

262: 2013/01/16(水) 15:01:20.81 ID:Mk1jx2gAO
商人「え、そうなんだ!誰なの?(強い人がなるんだろうな~私なんてだめだろうし)」

武闘家「…………ちょい待ってて」ゴソゴソ

スッ

武闘家はあるものを商人の目の前に出した

商人「なに?なんの本?」

商人「さ・と・り・の・しょ?(悟りの書?)」

母「(コーヒーを商人に差し出しながら)ああ~、それがあるとダーマ神殿で賢者になれるのよっ。」

商人「ん?え!賢者?」

武闘家「商人、あなたが勇者パーティーに入って賢者になるんだよ!」ニッコリ

商人「……………う、」

商人「うそおぉぉぉ~!?」ドタ

263: 2013/01/16(水) 15:25:24.46 ID:Mk1jx2gAO
ダーマ神殿 転職の間


大神官「では、賢者はどの職業に就きたいと申すか?」

賢者「わ、私は武闘家になりたく思います。よろしくお願いいたします!」

大神官「ではもう一人、僧侶はどの職業に就きたいと申すか?」

僧侶「私は戦士に。」

大神官「あいわかった。転職すると再びレベル1からの厳しい修行となるが承知の上か?」

賢者「はい。心得ております。」

僧侶「耐えてみせるわ。」

大神官「では2人の意思は受け取った!おお神よ!この2人が新しい職業に就くことをお許しください!!」スッ

パアッーーー!

光が2人を包み込むように降りてくる。


賢者は武闘家に転職した
僧侶は戦士に転職した

264: 2013/01/16(水) 15:41:15.29 ID:Mk1jx2gAO
武闘家が勇者パーティーを離脱してから、わずかに数日、商人の勇者パーティー加入と、賢者僧侶がそれぞれ戦力アップを目指し武闘家と戦士に転職するという事態になった。

武闘家は旅人となり自分を見つめ直す旅に出た。各地を巡り、商人の町ホープバークにも行くとのことだ。その時に商人が勇者パーティーに加わったことを伝えたいと意気込んでいた。

勇者は武闘家と戦士を連れ、ダーマ北にそびえるガルナの塔に向かい、ひたすら修行に励んだ。メタルスライムやスカイドラゴンとひたすら戦闘を重ね、レベルを上げていった。

約3日ほどである程度まで実力をつけた。そしてアリアハンに商人を迎えに戻った。

265: 2013/01/16(水) 15:57:26.21 ID:Mk1jx2gAO
アリアハン ルイーダの店


ルイーダ「じゃあ勇者ちゃん、この人でいいのね?」

勇者「はい!ありがとうございます。」

戦士「気分も新たに、大魔王ゾーマを倒しにいくわよ。」

武闘家「ええ!強くなった私達ならもうアレフガルドも怖くないわね。ね?勇者さま。」

勇者「その通り!大魔王ゾーマ、待ってなよー。倒しに行ってやるからね!」

戦士「商人も頑張って早く賢者になれるといいわね。協力するから。」

武闘家「そうですよぉ!元賢者の私もいろいろと教えることが出来ますし、頑張りましょうね。」ニコ

勇者「ん?商人どうしたの、黙りこくっちゃって。お腹でも痛いの?」


商人「………なんとなく、き、緊張しちゃって。私が勇者パーティーに入れるなんて思わなかったし。」カタカタ

勇者「な~んだ?そんなことか~。」ホッ

266: 2013/01/16(水) 16:08:31.63 ID:Mk1jx2gAO
勇者「私はてっきりこのパーティーが嫌なのかと思ってたよ~。」

商人「そんなことないよ!私もみんなのこと大好きだもの。これからずっと前から憧れだった賢者になるんだと思ったら緊張して....」

武闘家「元武闘家さんも自信を持って商人さんを推してくれたし、あの人の思いを全員で受け継ぎましょう。」

戦士「そうね。最後までやり遂げなきゃね。商人あなたが再び仲間になって心強いわ、ありがとう。」

商人「武闘家。戦士。ありがとう。」

商人「勇者。私を選んでくれて本当にありがとう。みんなで大魔王ゾーマを倒しましょう。」

4人はかたく握手をした。

267: 2013/01/16(水) 16:19:02.45 ID:Mk1jx2gAO
商人「あ、ルイーダさん。いろいろありがとう。頑張ってきます。」

ルイーダ「ふふ、どういたしまして。お父さんには挨拶してきたの?」

商人「ええ、また寂しがってたけど、しっかり昨日は父親孝行してきましたよ。(もうあの時みたいな失敗はしない、絶対に!)」

勇者「じゃあ、とりあえずダーマに向けて行くとしよっか。当面は商人を賢者にするための修行だけど。」

商人「お手柔らかにお願いします。」ペコ

戦士「じゃあ行きましょう。」ブツブツ


戦士はルーラを唱えた
勇者達は飛び立って行った

268: 2013/01/16(水) 16:27:01.04 ID:Mk1jx2gAO
ここまでの各キャラのおさらい

勇者♀
Lv.42

武闘家♀(僧侶→賢者)
Lv.30

戦士♀(魔法使い→僧侶)
Lv.29

商人♀(→賢者の予定)
Lv.7

旅人♀(武闘家→離脱中)
Lv.1


272: 2013/01/17(木) 08:56:38.20 ID:k1dSpsyAO
ダーマ神殿 宿屋


勇者「みんな~お疲れ~。とりあえず今日はこのくらいにしておこうか。」

戦士「なかなかハードだったわね。ふう。」

武闘家「もうすっかり暗くなっちゃいましたからね~。商人さんはどうでしたか?」

商人「かなり疲れちゃったな~。本格的な戦闘って初めてだったし。でもみんなが一生懸命教えてくれたからよかった。」

勇者「スリリングでしょ?かなりね。」

商人「うん、こんな世界もあるんだな、って思ったよ~。」

戦士「今日だけで商人のレベルはどれくらい上がったかしらね?」

武闘家「見ていた感じだと、あと2日くらいで転職可能なレベルになると思うな。」

273: 2013/01/17(木) 09:17:12.34 ID:k1dSpsyAO
商人「そっか、じゃあ私明日も頑張るよ!」グッ

武闘家「無理せずやっていきましょうね、商人さん。」ニコ

勇者「明日はね、短剣じゃなくて剣やムチの使い方を教えながらやるからね。」

商人「剣か、なんか怖そうだよね、私扱えるようになるかな。」

戦士「大丈夫よ。私も剣はちょっと前までは握ったこともなかったけど、勇者が上手く教えてくれたから今ではこの通りよ」シャン

商人「おお~、かっこいい!元魔法使いと元僧侶の人とは思えないなぁ。」パチパチ

戦士「う。露骨に褒められると照れるわね...」カァ

勇者「う~ん、それにしても...」

274: 2013/01/17(木) 09:38:21.65 ID:k1dSpsyAO
武闘家「どうしたんですか、勇者さま?」

勇者「いや、寒そうだな~と思ってさ。」

商人「寒そう?なんのこと?」

勇者「戦士の格好がさ。」

戦士「は?あ、ああこの格好ね。私も最初なんでこんなに露出が多いのかと思ったけどね。慣れれば寒くないわよ。」

勇者「あ、そうなんだ。寒くなきゃいいんだ~。うんうん。」

商人「(ていうか、寒そうというか、目のやり場に困るなぁ)」ドキドキ

武闘家「それより……お腹少し出てるわよ。」ボソッ

戦士「なっ!仕方ないでしょ!戦士になるまで魔法使いも僧侶もずっと衣服で覆ってたからよ。そんなに激しく動く職業じゃないし。」

275: 2013/01/17(木) 09:56:16.10 ID:k1dSpsyAO
武闘家「だからって油断してたんでしょ?みっともない。」

戦士「言ったわねー!だったらあんただって賢者の時はあんなミニスカートみたいなの履いても肝心な出してる足はふっといから見られたもんじゃなかったわよ!」

武闘家「そっ、それは。しょうがないじゃないの!私だってあんな短いの履くなんて思わなかったんだから~。私のはこれから細くキレイになるのよ。」

戦士「ふん、負け惜しみね。あんたみたいなお子様にはムリムリ、私の方がぜんぜんこれからスリムになっていくのよー!」

商人「ふ、2人とも?ケンカはやめようよ、ね?ね?」オロオロ

武闘家「商人さんは口を挟まないでください。」

戦士「私達のことは放っておいて。この子と決着つけないと腹の虫がおさまらないわ。」

商人「は!はい!(こわいよぉ~)」

勇者「おーい、商人。」チョイチョイ

商人「あれ?勇者?」キョロキョロ

276: 2013/01/17(木) 10:09:36.96 ID:k1dSpsyAO
勇者「こっちこっち。あの2人はしばらく放っておきなよ。」

商人「だ、だけど。」

勇者「今までもたま~にああなっちゃうんだよねぇ。」

商人「そうなんだ。大丈夫なの?すっごい剣幕なんだけど...」

勇者「まあ、しばらくすれば嘘みたいに仲良し姉妹みたいに元に戻っちゃうよ。幼馴染みだから仕方ないね。」

商人「あんなに普段穏やかで優しい2人なのに、いきなり勃発してびっくりしちゃったよ。」

勇者「だって武闘家(現旅人)が仲裁に入ろうとしてもあっさり弾かれちゃってたし、ははは。」

商人「あの子でも止められなかったんだ...まあそりゃ私じゃムリね。」

勇者「ストレス発散みたいなものなのかなぁ。私は慣れたから遠くでケンカ見てるのも面白いけど、へへへ。」

277: 2013/01/17(木) 10:22:05.04 ID:k1dSpsyAO
商人「ふうん。勇者もストレスは溜まったりするの?」

勇者「私は特にないなぁ、まあ見ての通りこんな性格だし、男の子っぽいとも言われるけど。」

商人「勇者はやんちゃな感じだもんね。(基本、あの子と勇者は似てるし。)」

勇者「やんちゃともよく言われるなぁ。まあ私はたまに独りでボーっとしてることが気持ちいいんだよね。」

商人「…………」

勇者「そうだ!まだ時間も浅いし、一緒に散歩にでも行こうよ!」

商人「散歩?いいけど、どこへ?ここには町ないし。」

勇者「空だよ!お・そ・ら!」

商人「へっ?」

278: 2013/01/17(木) 10:39:11.50 ID:k1dSpsyAO
勇者「ラーミア~!我が元へ来たれり!」

勇者「ピィーーー!」

勇者は口笛を吹いた

商人「え?ほんとに来るの?ラーミアって伝説の鳥なんでしょ?」

勇者「まあまあ。すぐに来てくれるよ~。あ、ほら来たよ!」

勇者が指差す方から、白く大きい鳥が羽を羽ばたかせながら近づいてくるのが見えた。あっという間に勇者と商人の目の前に舞い降りた。

勇者「ごめんね~ラーミア。急に呼び出しちゃって。私の新しい仲間を紹介したくてさ。」

ラーミア「クケェーーー!!」

勇者「おーよしよし、いい子だね。ラーミア、この人が商人さんだよ。」

ラーミア「クゥーーーン!!」

商人「お、おっきいね~!この鳥が伝説の鳥。あ、よろしくねラーミア。」ペコリ

279: 2013/01/17(木) 10:48:55.61 ID:k1dSpsyAO
勇者「よし!じゃあラーミア。悪いんだけど私達を背中に乗せて飛んでくれない?」

ラーミア「クケッー!」コクリ

勇者「ありがとう!じゃあ商人、ラーミアの背中に乗って。さあさあ。」

商人「う、うん。落ちないかなぁ?」

勇者「大丈夫だよ、ラーミアは優しいからしっかり守ってくれるよ。」

商人「わかった。じゃあ失礼しまーす。」ガサッ

勇者「オーケー!そんじゃ夜の空中散歩といきますかー!ラーミアお願い!」

ラーミア「ククゥーーーー!!」バサバサァ

ラーミアは勇者と商人を背中に乗せて暗い空高く舞い上がった

280: 2013/01/17(木) 11:07:48.33 ID:k1dSpsyAO
上空 ラーミアの背中


商人「うわぁ~たかーい!気持ちいい~!」

勇者「えへへー、どうでございますかお客様。ラーミアの乗り心地と眺めのほどは?」

商人「もう、『すご~い!』しか言葉にできませーん!感激だよ!」

勇者「それはなによりだね~!あ、あそこの光は多分、ホープバークじゃない、商人?」

商人「あ!ほんとだっ!(私の愛する町ホープバーク...)上から見るとこういう風に見えるのねー。町の灯りがほんとにキレイね。」

勇者「また少し大きくなったんじゃないのかな?おじいさんとか青年くん元気かなぁ?」

商人「みんな元気でやってるよ、きっと。」

勇者「そうだね。よーしじゃあ次はロマリアあたりに行ってみようかー。ラーミア、お願いね。」

ラーミア「クケッー!」コクリ


281: 2013/01/17(木) 11:33:44.42 ID:k1dSpsyAO
ノアニール村 村の入口


旅人「ふう~やっとノアニールに着いた。すっかり夜だよ~、まあ今日は野宿は回避できたからよしとしよ。」

旅人「さて、と。宿屋に行こ行こ。………んー首がこったな。?なんだろあれ?」

旅人は上空になにかがいるのを察知した。よく目を凝らしてみると見覚えのある影であることを認めた。

旅人「(あれって、ラーミア?こんな夜になんで?)」

旅人「(そっか、きっと勇者が商人をラーミアに紹介するとかって口実で散歩してんだな~。)」

旅人「(商人は賢者になるため頑張ってるかな。)」

旅人「(勇者はみんなを引っ張ってくれてるかな。)」

旅人「(武闘家と戦士はまた宿でケンカしたりしてないかな。)」

旅人「(私ももっと成長しなきゃーね。)」

旅人は頭をかしげながら宿屋に向かって歩いていった。

282: 2013/01/17(木) 11:48:18.46 ID:k1dSpsyAO
ダーマ神殿 入口


勇者「ラーミア、長いこと飛び回らせちゃってごめんね。ありがとう!またね。」

ラーミア「クカァーーー!」バサァ

商人「私も背中に乗せてくれて楽しかったよ~!今夜はほんとにありがとね、ラーミア。」

ラーミアは空高く舞い上がり、自分の住み処に帰っていった。ふとラーミアの飛び立ったあとの空からなにかが落ちてきて商人の手のひらに乗った。

商人「これってラーミアの羽よね。すごくキレイだな~。」

勇者「ラーミアからの贈り物だね、それは。商人のこと友達だよ。って意味じゃないかな。」

商人「そっか~、嬉しいな。意外と恥ずかしがり屋さんなんだね。」ニコッ

勇者「さ~てと、眠くなってきたし、宿に戻って寝ようか。」

商人「あ、そういえば、戦士と武闘家は大丈夫かな....」

勇者「………すっかり忘れてた」

285: 2013/01/18(金) 14:49:22.26 ID:ZpUqATVAO
ダーマ神殿 宿屋


ガチャ

勇者・商人「ただいま~。」

武闘家「あ、勇者さま商人さんお帰りなさい!....あのう、ごめんなさい。」シュン

戦士「私も...ごめんなさい。つい熱くなっちゃって。」シュン

勇者「ああ~別に今にはじまったことじゃないじゃない。気にしない気にしない。」

武闘家「しょ、商人さんもびっくりしちゃいましたよね?止めてくれようとしたのに、私ったらひどいことを。」

商人「勇者から聞いたよ。2人は幼馴染みなんだからそのくらいはいいんじゃないのかな。私も気にしてないもの。」ニコ

戦士「商人、ありがとう。そういえば2人こそどこに行ってたのよ?」

勇者「えっ、あ、あの外をね散歩してきたんだ。ねえ商人?」

商人「あ。そうそう、夜のダーマって素敵だったよね~。なんて、ははは。」アセアセ

戦士「?」

勇者「まあ、もう遅いし、寝よう寝よう。明日も頑張るぞー!」

武闘家「(ヘンな勇者さま。ふふ。)」

286: 2013/01/18(金) 14:50:54.99 ID:ZpUqATVAO
勇者達は翌日、翌々日と、商人のレベル上げをダーマ周辺で行った。

商人は慣れない剣やムチを使っての攻撃や盾での防御の仕方も次第に慣れてゆき、パーティーメンバーとしても戦えるほどに成長した。

約3日間で商人のレベルは転職可能のところまで上がっていたのだった。

明日はいよいよ商人の賢者への転職を控えているため、4人は少し早めに眠りについた。

287: 2013/01/18(金) 14:54:30.89 ID:ZpUqATVAO
ダーマ神殿 宿屋


商人「(明日に備えて早めに寝ようってなったけど...私が眠れないよ~)」ゴソゴソ

商人「(みんなすっかり寝ちゃってるもんなぁ。勇者はずっと付きっきりで教えてくれたし疲れたよね。)」

商人「(私も最初はどうなるかと思ったけど、剣や盾の扱いも体が覚えてくれたし。)」

商人「(魔物に対する恐怖もだいぶ消えたのもよかったかな。かなりな回数戦ったし。)」

288: 2013/01/18(金) 14:56:21.61 ID:ZpUqATVAO
商人「(あとは明日。………私、賢者になるんだな。小さい頃から憧れてた賢者さまに。)」

商人「(大丈夫。やれる。私はもう絶対に道を外すことはしない。それに...)」

商人「(信頼できる仲間がいる。影から支えてくれる人もいる。あとは私次第だ。)」グッ


商人「(...なーんて気合い入れたら、眠くなっちゃった。おやすみ~みんな.....)」


商人は眠りについた

289: 2013/01/18(金) 14:57:23.08 ID:ZpUqATVAO
翌日
ダーマ神殿 転職の間 入口


商人「じゃあ私行ってきます!賢者になって戻ってくるよ。」

戦士「うん、緊張しないでリラックスしてね。悟りの書は持った?」

商人「大丈夫。持ったよ。」

武闘家「いよいよですね。以前、旅人さんから聞きました、商人さんは賢者に憧れていた、と。その夢が叶うんですね。」

商人「たしかに賢者さまも夢だったけど、その次の夢がもっと大事だよ。」

武闘家「と、いうと?」

商人「みんなで大魔王ゾーマを倒して世界を平和にしなくちゃね。……まだ私は新米だけど。」

290: 2013/01/18(金) 15:01:37.72 ID:ZpUqATVAO
武闘家「!」

勇者「そうだね。賢者は通過点、ここからがまたスタートだよね、みんな!」

武闘家「そうですね。」

商人「みんな。新米賢者になってくるから待っててね!」スタスタ
戦士「行ってらっしゃい。」



商人が扉を開けて、転職の間に入っていく姿を勇者達3人は目に焼きつけた。

291: 2013/01/18(金) 15:05:21.14 ID:ZpUqATVAO
ダーマ神殿 転職の間


商人は外で待つ勇者達と別れ、祭壇で待つ、大神官の元にゆっくりと歩み出た。

大神官「ふむ、そなたは転職を希望される者か?名を。」

商人「はい。商人と申します。」

大神官「では、商人はどの職業に就きたいと申すか?」

商人は悟りの書を大神官に差し出した。

商人「私は賢者になりたいと願いここに来ました、その願いをお叶えください。」

大神官「悟りの書とな...また再び目にしようとはな。もしや先日、賢者から武闘家に転職した者の仲間か?」

292: 2013/01/18(金) 15:08:17.99 ID:ZpUqATVAO

商人「その通りです。彼女はすでに立派な武闘家になりました。」

大神官「ふむ。よほどの理由がありそうじゃの。そなたのその目にとてつもない強く固い意志を感じる。」大神官「あいわかった。転職すると再びレベル1からの厳しい修行となるが承知の上か?」

商人「はい。すべて。」

大神官「そなたの意志受け取った。おお神よ!この者が新しい職業に就くことをお許しください!!」スッ

パアッーーー

大神官が杖を天に掲げると光が降りてきた。

商人をその光が包み込んでゆく。

商人「(商人の私、今までありがとう。)」


商人は賢者に転職した。

293: 2013/01/18(金) 15:09:48.28 ID:ZpUqATVAO
ダーマ神殿 転職の間 入口


勇者「商人まだかなぁ~。」

武闘家「私の時も時間はかかりましたからね。」

戦士「ええ、とにかく待ってましょう。」


ズズズズズ
ドーン

勇者「あっ。お、終わったみたいだよ。」ドキドキ

294: 2013/01/18(金) 15:13:48.18 ID:ZpUqATVAO
勇者達の前に賢者が姿をあらわした。


賢者「みんな、ただいま!」

戦士「おかえりなさい。しょうに、じゃなかった、賢者。」

武闘家「わあ~!かっこいいです!賢者さま!見違えました。」キラキラ

賢者「あ、そ、そうかなぁ?なんかまだ全然実感がわかないんだけどね。ヘンじゃないかな?」

勇者「ヘンなんかじゃないよ~!うん、すんごくかっこいい。さっきまでの商人じゃないみたい。」

戦士「そりゃそうでしょ、勇者。もう商人じゃなくて賢者になったんだから。」

勇者「あ、それもそうだね。へっへっへっ。」ニヤニヤ

武闘家「おめでとうございます、賢者さま。」

賢者「ありがとう。無事に賢者になれました。みんな、これからもよろしくお願いします。」ペコリ

295: 2013/01/18(金) 15:18:11.98 ID:ZpUqATVAO
商人が転職し賢者となり、勇者達は再びダーマ周辺及びガルナの塔にて新米賢者のレベル上げを行っていた。

賢者になったことで、魔法も覚えるため、勇者ではなく魔法のエキスパート、武闘家(元僧侶)と戦士(元魔法使い)が付きっきりでサポートをした。

急なレベルアップと沢山の魔法を一気に覚えるために、賢者の疲れ方は尋常ではなく、まだ魔力も微量なのも影響してか、体力的にも精神的にも辛かった。

296: 2013/01/18(金) 15:19:21.12 ID:ZpUqATVAO
しかし心配する3人をよそに賢者は泣き言ひとつ漏らさずに修行をこなしていった。

元々の賢さの高さもあり、コツを掴むと魔法も次々に使いこなしていき、戦士と武闘家を驚かせた。

約1週間、修行の日と休養の日とを上手く分けた。

修行の日はひたすら戦闘。休養の日は体を休めながら魔法の書物で勉強をし、武器防具の手入れなどをした。

結果、賢者はぐんぐん強くなっていったのだった。


そしてある日。

297: 2013/01/18(金) 15:23:28.44 ID:ZpUqATVAO
ガルナの塔 周辺


賢者「最終テスト?」

戦士「そうよ。賢者の力を確かめさせてもらいたいの。」

武闘家「賢者さまのこれまでの修行の成果を出してくださいね。」

賢者「うん、わかった。なにをすればいいの?」

勇者「今から1時間、フィールドで出てきた魔物をずっと倒し続けていけばいいんだよ。」ニコッ

賢者「へ?な~んだ。なら簡単だね。今までと同じじゃないの。」ホッ


戦士「...1人でね。」

賢者「はい?」

298: 2013/01/18(金) 15:24:53.32 ID:ZpUqATVAO


武闘家「私達はなにもしません。賢者さまお1人でですよ。」

賢者「!!!(わっ、私だけで?)」アセアセ

勇者「だーいじょーぶだって!自信を持って!あんなに沢山修行したんだから。」


賢者「で、でも...」


賢者「(弱気になったら負け。だったら修行のすべてを出しきるだけだ。)」


賢者「わかった。やってみる!」

300: 2013/01/18(金) 16:22:35.39 ID:ZpUqATVAO
ガルナの塔 南の森


賢者「いつでも出てこい魔物どもー!(って虚勢を張ってるけどいざとなると怖いなぁ)」

ガサガサッ

賢者「!?(来た!)」

幻術師があらわれた
スライムつむりがあらわれた

賢者「(幻術師、こいつはその名の通り、こちらに幻術をかけてくる。それを先に防がないと危ない。それなら。)」ブツブツ

賢者「汝の言葉は心に届かぬ『マホトーン!』」

賢者はマホトーンを唱えた
幻術師の魔法を封じた
スライムつむりの魔法を封じた

賢者「よし、うまくいったね!」

301: 2013/01/18(金) 16:23:39.94 ID:ZpUqATVAO


スライムつむりの攻撃
賢者は小ダメージを受けた
幻術師はメダパニを唱えた
...しかし魔法は封じられている

賢者「このスキに。ええい!」バシュ

賢者の攻撃
幻術師とスライムつむりにダメージ
魔物たちをやっつけた

賢者「やった!魔物達をやっつけた~。」グッ

302: 2013/01/18(金) 16:25:54.31 ID:ZpUqATVAO


ドスドス...
パタパタパタ...

賢者「え、今度はなに?」キョロキョロ

キラーエイプがあらわれた
しびれあげはがあらわれた

賢者「(この場合、麻痺状態が一番危険ね。あの猿のパワーも嫌だけど先にあの蝶を!)」ブツブツ

賢者「燃えよ火球『メラミーッ!』」ボゥ!

賢者はメラミを唱えた
しびれあげはを焼き尽くした
しびれあげはをやっつけた
キラーエイプの攻撃

ズガァ!

賢者はダメージを受けた

303: 2013/01/18(金) 16:26:43.45 ID:ZpUqATVAO


賢者「くぅっ。大きいだけあってまともに喰らうと痛いな。ならこいつにも!」ブツブツ

賢者「再び焼き尽くせ『メラミー!』」ボゥ!

賢者はメラミを唱えた
キラーエイプを焼き尽くした
キラーエイプをやっつけた

賢者「ふう。なんとかなったわね~。」


304: 2013/01/18(金) 16:30:09.40 ID:ZpUqATVAO


賢者「(んーそうか。さっきの場合メラミじゃなくてイオラの方がよかったのね。)」

賢者「(1人だから考えながら戦わないといけないな。)」テクテク

賢者「(そうだ、いちおう今のうちに回復しておいた方がいいかな)」ブツブツ

賢者「光よ我の傷を癒せ『ベホイミ』」パァー

賢者はベホイミを唱えた
賢者の傷が治り全快した

賢者「(よし、これでよしっ、と。)」ニコ

賢者「次はなにが出てくるかな~?」


賢者は次から次にあらわれる魔物たちを、会得した魔法と剣技を駆使し倒していった。

残り時間をわずか残して、勇者達が待つガルナの塔の近くに戻ってきた。

塔が見え、賢者が少し気を抜いたその時だった。

305: 2013/01/18(金) 16:32:31.96 ID:ZpUqATVAO
賢者「(あ、塔が見えた!あと少しね。)」

賢者はその時、ふと上空に気配を感じた。
同時に後方から近づいてくるものの気配も感じた。

賢者「なっ?なに?」キョロキョロ

ドドドドド!
ドドドドド!
シャアーー!

マッドオックスABCDがあらわれた
スカイドラゴンがあらわれた

賢者「(しまった!こんなに沢山。しかもマッドオックス。あとスカイドラゴンなんてかなりヤバい!)」

賢者「(いちいち考えてる暇はない。とにかく先に...)」

マッドオックスAはギラを唱えた
マッドオックスBはギラを唱えた

賢者「くっ!先手をっ!なら盾で...」サッ

306: 2013/01/18(金) 16:37:00.26 ID:ZpUqATVAO

賢者にギラのダメージ
賢者にギラのダメージ

賢者「(防ぎきれない!)うわぁぁぁーー!」ドシャア!

賢者「いつつつつ、(とにかく回復より先に、補助を)」ブツブツ

賢者「守りを堅めよ『スカラ!』」
賢者「光よ壁と成り跳ね返せ『マホカンタ!』」

賢者はスカラを唱えた
賢者の守備力が大幅に上がった
賢者はマホカンタを唱えた
賢者の前に光の壁があらわれた

マッドオックスCの攻撃
マッドオックスDはギラを唱えた
スカイドラゴンの攻撃

賢者「(よかった間に合った!)」スッ


307: 2013/01/18(金) 16:39:38.79 ID:ZpUqATVAO

賢者は小ダメージを受けた
ギラは光の壁で跳ね返った
マッドオックスDにダメージ
賢者はダメージを受けた

賢者「(さすがスカイドラゴンね、防御を上げてもこの威力、危なかった。)」

賢者「(先にマッドオックス達を倒さないと。よし。)」ブツブツ

賢者「霊達よ、集いて砕けよっ!『イオラー!』」ズドドドン

マッドオックス達は爆発に巻き込まれた
マッドオックス達をやっつけた
スカイドラゴンにもダメージ

スカイドラゴンは口から燃えさかる火炎を吐き出した

賢者「!!(炎?だったら相頃してやる!)」ブツブツ


308: 2013/01/18(金) 16:43:55.36 ID:ZpUqATVAO

賢者「氷の精霊よ吹き荒れろ!『ヒャダイーン!』」ピキーン

賢者はヒャダインを唱えた
スカイドラゴンの炎と賢者の氷が激しくぶつかる
炎と氷は相頃し合い消え去った

スカイドラゴンは賢者を見失っている

賢者「ドラゴン!私はこっちよー!くらえー!」シャキン

賢者はスカイドラゴンの真後ろに回り込んだ
賢者の攻撃

ズシャアアァァー!!

スカイドラゴンを真っ二つにした
スカイドラゴンをやっつけた


賢者「や、やったー!やっつけた!あ、危なかった...」フラッ

賢者「(う、急に意識が...)」バタッ


賢者は気を失った

309: 2013/01/18(金) 17:13:31.77 ID:ZpUqATVAO
バララタの町 宿屋


賢者「zzzzzzz」スースー

武闘家「賢者さま、まだ起きませんね。」

戦士「よほど疲労してたようね。魔力もほぼカラに近かった上に、かなりダメージも受けてたみたいだし。」

勇者「塔の上からスカイドラゴンが飛び立ったいった時はさすがに危ないかなって思ったけど....」

武闘家「ちゃんと倒しましたからね。あそこでフバーハを使って1ターン置くより強行策に出たことが...」

戦士「結果的にスカイドラゴンの視覚的スキを生んでの攻撃だったっというわけね。最後の剣での一撃も完璧だった。」

勇者「うん。これは文句なしの最終テスト合格だね!」ブイ

戦士と武闘家も寝ている賢者に、おめでとうの拍手を送った。

ぱちぱちぱちぱち

賢者「…………ん?」ムク

賢者「なに?みんなして拍手なんかして、どーしたの???」ポケー

勇者「合格で~す!おめでとさん!賢者。」

戦士「あなたはさっきの最終テスト、合格したのよ。」

武闘家「やりましたね!凄かったですよ、賢者さまの戦いぶり。」
賢者「へっ?」ボケー



賢者はあまりの疲れと眠気で理解できなかった。

313: 2013/01/18(金) 18:38:31.52 ID:ZpUqATVAO
ここまでの各キャラのレベルと遍歴


勇者♀
転職なし
Lv.44
おてんばなおっちょこちょい


武闘家♀
僧侶→賢者→武闘家
Lv.35
おせっかいながんばり屋


戦士♀
魔法使い→僧侶→戦士
Lv.34
抜け目がない切れ者


賢者♀
商人→賢者
Lv.27
頭脳明晰な苦労人


旅人♀
武闘家→パーティーから離脱
Lv.9
すばしっこいお調子者

316: 2013/01/21(月) 09:44:46.32 ID:NIgkV68AO
それから約1週間後

アレフガルド
リムルダールの町


勇者「おじさん。こんにちはー!」

町の男「あれ?あなたたちは。しばらく見ないと思ったけど。」

武闘家「先日は貴重な悟りの書を譲っていただいてありがとうございました。」

戦士「おかげで仲間が一人賢者になることができました。」

町の男「おお、そうでしたか。それはお役に立てたようでよかった。」

賢者「初めまして、私が転職できたのもおじさんのおかげです。感謝します。」ペコリ

町の男「いえいえ、感謝なんて...いいんですよ。それでこの世界が救われるのなら安いものです。」

317: 2013/01/21(月) 10:10:21.85 ID:NIgkV68AO
賢者「私、この世界は初めて来て驚いたんですが。勇者達の言うようにずっと暗いままなんでしょうか?」

町の男「そうです。ゾーマがアレフガルドに現れてからはずっと暗いまま、朝はきません。」

武闘家「前回、ラナルータを唱えてみたのですが、効果がありませんでした。これはやはり...」

戦士「...ゾーマの仕業というわけよね。大魔王ゾーマ、か。」

町の男「世界中の人間は希望をすっかり失っています...勇者さま、皆を、世界を、大魔王から救ってください。」ペコ

勇者「うん。まかせて、おじさん。絶対に大魔王ゾーマを倒してみせるから!」

戦・武・賢「(…………)」コクッ

町の男「おねがいします。」

318: 2013/01/21(月) 10:36:46.95 ID:NIgkV68AO
リムルダールの町 宿屋


勇者「今のとこ、私達が手に入れたのはこの太陽の石と雨雲の杖、あとこの妖精の笛...」

戦士「ルビスさまというこの世界を創造した精霊を復活させないといけないのよね。」

賢者「勇者。マイラっていう町の道具屋にオリハルコンを預けてるんでしょ?そろそろ行かないと。」

勇者「あ、そうだった~。まだまだやらないといけないことが沢山あるなぁ。」

武闘家「そうですね~。一刻も早くゾーマを倒したいところですけど。今のままでは進めませんし。」

勇者「じゃあいっそのこと、二手に別れて動こうか?その方が楽だし早いよ。」

戦士「戦力は半減するけど...たしかにその方が良さそうね。全員ルーラも使えるしなにかあればここに戻れば大丈夫かな。」

319: 2013/01/21(月) 10:49:45.51 ID:NIgkV68AO
リムルダールにて作戦会議を開いた勇者達は、二手に別れて行動することになった。

ドムドーラで偶然見つけた伝説の鉱石オリハルコンを預け、剣を打ってもらっているため受け取りにマイラの道具屋に行くのは勇者と賢者。

ゾーマにより封印されていた精霊ルビスを復活させるために、そのマイラの西にそびえ立つ塔に行くのは武闘家と戦士。

それぞれ、宿屋で休んだあと目的地に向かっていった。


320: 2013/01/21(月) 11:06:57.12 ID:NIgkV68AO
マイラの町 道具屋


勇者「こんにちは~。この前、剣をお願いした勇者といいますが。」ヒョイ

道具屋の主人「ああ!勇者さん。ちょうどいいタイミングでしたね、つい先刻出来上がりましたよ!ほらっこの通り!」ギラッ

賢者「(この光!...すごい力を感じる!)」

勇者「わあ~!あの青い石っころがこんなカッコイイ剣になっちゃうなんてすっごいなー!」ジロジロ

賢者「い、石っころ...(オリハルコンっていうのはものすごい貴重なのになぁ)」ガクッ

主人「ほら、勇者さん。持ってごらんよ。手に馴染むといいけど。」スッ

カチャ

勇者は主人から出来上がったばかりの剣を受け取った


321: 2013/01/21(月) 11:19:39.34 ID:NIgkV68AO
勇者「ん!」

勇者「(………なんだろこの剣。力が湧いてくる。手にもこんなにしっくりくるなんて。)」

賢者「大丈夫?勇者?どうしたの。」

勇者「え。あ、ああ大丈夫だよ。なんか手にした瞬間に全身に力が湧いてきたんだ。」

主人「そうだろ?私も打っている時に何度も不思議な力を感じてね。こんな硬い石なのに作業がサクサクだったよ。」

賢者「……ねぇ、勇者。ちょっと私にもその剣見せてくれない?」

勇者「いいよー。はいどうぞ。」カチャ

賢者は勇者から剣を受け取り、剣をじっくりと見定めた。

322: 2013/01/21(月) 11:33:13.60 ID:NIgkV68AO
賢者「わっ。」ビクッ

賢者「(ほんとだ。手にした瞬間に力が湧いてくる感覚...あと僅かに感じる魔力はおそらく...)」

賢者「はい勇者、返すね。」スッ

勇者「ありがとう。なにかわかったの?」

賢者「うん。たぶんこの剣はあなただけしか使いこなせない、勇者のための剣。」

勇者「私だけの、剣?」

賢者「勇者以外でももちろん持つことはできるけど、その秘められた力を最大限に発揮できるのはあなただけだよ。」

主人「へえ~。あなたは武器にお詳しいんですね。」

賢者「あ、まあ。つい最近までは商人でしたから私。武器や道具の鑑定が得意なんです。」

323: 2013/01/21(月) 11:49:30.61 ID:NIgkV68AO
主人「商人さんだったのかい?なるほど、合点がいきます。」

賢者「ああ、あと勇者。その剣には魔力が込められているみたい。あなたの魔力を込めて降るとなにかしらの魔法と同じ効果が出るはずよ....ってここじゃダメーー!」

勇者「じゃあ。え~いっ!!へっ?」ブンッ

ビュウ~~~
シュゴゴゴーーー!

勇者はおもわず剣を振りかざした。
すると、剣から大きな竜巻が巻き起こった。

ドガンズッドーン!
ドガガガガガ!!

巻き起こった竜巻は建物を破壊し、消えていった。

賢者「.....あちゃ~」ガックリ

勇者「あ、あははー!また私ったらやっちゃったね~。」ガックリ

主人「……………」ガックリ

324: 2013/01/21(月) 12:08:02.32 ID:NIgkV68AO



勇者「あ、あのおじさん。ごめんなさい!お店こんなにしちゃって。」

賢者「私も不注意でした。本当にすみませんでした!」

主人「………いいんですよ。私の打った剣が勇者さん達の力になってくれれば。私も元鍛治屋として嬉しい限りですし、はは。」

勇者・賢者「本当にごめんなさい。」ペコペコ


二人は剣を打ってくれたお礼と店を半壊させたお詫びにと、持っているゴールド全部を主人に渡し、店を出た。

ふと店を出る直前に主人が賢者の元にかけより耳打ちした。

主人「最近、なにやら表世界から来たっていう商人風の男が各地で怪しい商売をして廻ってるって噂があります。あなたも元商人ならなにか知ってるかと思ったんですが。」

325: 2013/01/21(月) 12:51:05.07 ID:NIgkV68AO
勇者と賢者はマイラで勇者だけの最強の剣《王者の剣》を手に入れた。

その足で、マイラの西の島に立つルビスの塔に武闘家と戦士に加勢するため向かった。

勇者「賢者。さっきおじさんに耳打ちされてたけどなんだったの?」

賢者「ん?別に大したことないよ。商売人同士のちょっとした情報交換ってやつかな。」

勇者「ふ~ん。商人は賢者になってもああいう風に鑑定とかできんだねー。すごいね~。」

賢者「ふふ、そんなことないよ。ただの癖みたいなものだから。」

賢者「さて、武闘家と戦士に早く加勢しに行かないとねっ!」タッタッタ

勇者「りょ~うかい!」タッタッタ


賢者「(商人風の男か.....ま、さかね...)」

326: 2013/01/21(月) 13:16:33.26 ID:NIgkV68AO
ラダトームの町 宿屋


勇者「んじゃあその精霊ルビスさまっていう人がこの世界を作った人なんだ?」

戦士「ええ、彼女自身の口から聞いたから。本当にキレイな人だったわね。」

勇者「すんごいんだね~、世界作りなんてったら町作りも真っ青だね、賢者。」

賢者「いやいや、勇者。私のと比べられてもスケールが違いすぎて困るんだけどね。それより武闘家、それが...」

武闘家「はい、これがルビスさまから渡された《聖なるお守り》というものです。」

キラッ

勇者「キレイだねー。これがあればゾーマの城に行くことができるんだよね?」

戦士「おそらくね。それは勇者が持っておいて、それが一番いいわ。」

327: 2013/01/21(月) 13:36:37.52 ID:NIgkV68AO
武闘家「そうですね、これは勇者さまにお渡ししておきますね。」ニコ

勇者「うん、わかった。しっかり持ってるよ。」チャキ

賢者「じゃああとはゾーマを倒しに行くだけってことになるの?」

戦士「そうなるかな、必要なアイテムもないし。武器も防具も最強のものが揃っているしね。」

武闘家「勇者さまの最強の剣も今日揃ったことですし。」

勇者「いよいよだ。ここまで短いようで長かったね。近いうちにゾーマの城に突入するよ!」

武闘家「はい!みんなで力を合わせて絶対にゾーマを倒してやりましょうね!」

戦士「そうね。これで最後の戦いになるのね。すべてをぶつけて戦う。」

賢者「....私も頑張るわ。」

勇者「(賢者?)」

328: 2013/01/21(月) 14:03:40.84 ID:NIgkV68AO
翌日1日は完全休養の日とし、各自好きなことをして過ごすことにした。

勇者はとにかく1日ずっとボ~っとしていたいと。

武闘家は新聞を読みたいのと趣味の読者のためラダトーム城の図書館に。

戦士はこれまでの疲れを癒すのと、体の冷えのためマイラの温泉に。

それぞれ向かっていった。

一方、賢者はちょっと用事があると、3人よりも早くラダトームの町を出ていった。

329: 2013/01/21(月) 14:22:42.13 ID:NIgkV68AO
ドムドーラの町 牧場


牧場主「商人風の男だぁ?」

賢者「はい。この町でそういう男を見たりしていませんか?」

牧場主「う~ん、俺は毎日町に出荷や買い出しがあるから行くけどよ、そういったやつは見かけねぇな。」

賢者「そうですか...すみませんお仕事中に。」

牧場主「構わねえよ。どうせ、仕事してたって世界が終わっちまえば関係ねぇしな、ヘン。」

賢者「……………」

賢者「(ここもダメかぁ。単なる噂なのかな、やっぱり。)」


女の子「ねぇねぇ、そこの髪の赤いお姉ちゃん!」

賢者「え?(女の子?)」

女の子「私知ってるよ、商人さんみたいな格好した男のひと。」

賢者「!?」

330: 2013/01/21(月) 14:40:03.27 ID:NIgkV68AO
賢者「えっ?あなたその男を知ってるの?」ガバッ

女の子「うん、私ここの娘なんだけどちょっと前にお父さんに付いて町に行った時にお姉ちゃんが言ってたみたいな商人さんの格好をしたひとに話かけられたんだー。」

賢者「そ、その男はなんて言ってたかわかるかな?」

女の子「うんっとね~『お嬢ちゃんは大魔王が怖いかな?ずっと怖いのは嫌だよね?そんな時はこれを食べれば怖い気分を消してくれるんだよ』って。」

賢者「これを食べれば、って。なにかもらったの?」

女の子「うん、ちょっと待ってね。お姉ちゃんにも見せてあげるから。」ゴソゴソ

女の子「あったあった。これだよ。」サッ

少女は小さい手提げかばんから包み紙に包まれた、小さく黒光りするものを出して手の平に乗せた。

331: 2013/01/21(月) 14:52:13.14 ID:NIgkV68AO
賢者「あ!これは...やっぱり。」

女の子「お姉ちゃんこれ知ってるの?甘くて美味しいんだよ~。食べると私、嬉しいキモチになるし。」

賢者「あのさ、1つお姉ちゃんにもくれないかな?だめ?」

女の子「いいよ!お姉ちゃんかわいいから1つあげるね!はいっ。」サッ

賢者「ありがとう、お嬢さん。」ナデナデ

賢者「わざわざ呼び止めて教えてくれてありがとう。」ニコ

女の子「えへへへ。どういたしまして。じゃあね~お姉ちゃん。」バイバイ


賢者「(形はあの時の物と同じようだけど.....引っ掛かるのは)」

賢者「(食べると怖い気分を消してくれる....)」

333: 2013/01/21(月) 15:04:20.76 ID:NIgkV68AO
賢者「(子供相手だからか、単なる言葉のあや、かわからないけど。)」

賢者「(調べてみた方がいいね)」

賢者「(こういう使い方ができるかわからないけど、やってみよう)」ブツブツ


賢者は少女にもらった黒光りするものをグッとにぎりしめて、集中した。

賢者「(万物の神よ、我の手中の物の正体を示せ『インパス』)」

賢者はインパスを唱えた
賢者は握っている手を開いた
その物は赤く光っている

賢者「なんてこと....これはおそらく。」

賢者「(なにかしらの薬物が入ってる。)」

334: 2013/01/21(月) 15:17:46.39 ID:NIgkV68AO
賢者「言葉巧みに、子供になんてものを!許せない。」

賢者「(そうだ。さっきの女の子はどこに?あのまま食べ続けたら危ない!)」キョロキョロ

賢者は暗い中、あたりを見回した。すると牧場の柵の近くで馬と遊ぶ少女を見つけ、すぐに駆け寄った。

賢者「お嬢ちゃん!さっきの甘いのはいくつもらったの?誰かにあげたりした?」ガシッ

女の子「えっ?まだ一箱分あるよ。あげてないけど、あのひとは『お父さんやお母さんにも勧めてあげてね』って、言ってたよ。」

賢者「そう、それならよかった。いい?お姉ちゃんの言うことをよく聞いて。ね?」

女の子「う、うん。怖いよお姉ちゃん....」ウルウル

335: 2013/01/21(月) 15:31:33.75 ID:NIgkV68AO
賢者「あ、怖がらせちゃってごめんね。でもとっても大事なことよ。」ニコ

女の子「うん、わかったよ。」

賢者「今、私やあなたのいるアレフガルドっていう世界はゾーマっていう大魔王のせいでみんなが希望を無くしているの。」

賢者「私はその大魔王を倒すために遠いところからやってきた勇者さまの仲間なの。」

女の子「ゆうしゃ?じゃああの悪者をやっつけてくれるの?」

賢者「そう。だからもうこんな暗いままの世界ともお別れできるんだよ。」

女の子「ほんとに?じゃあ町のお外にも遊びにいけるようになるの?」

賢者「うん、もちろん。」ニコ

賢者「だからあなたがもらったっていうそのお菓子は私達が悪者をやっつけるまで我慢できる?」

賢者「だって大魔王が怖いからってそのお菓子に頼るなんてヘンでしょ?」

336: 2013/01/21(月) 15:41:16.84 ID:NIgkV68AO
女の子「そうだね。美味しいから食べたいけど...我慢する。」

賢者「うん、エライエライ!」ヨシヨシ

女の子「じゃあそうなるまでお姉ちゃんが預かってて。それなら私も大丈夫だから、えへへ。」スッ

賢者「ありがとう。じゃあお姉ちゃんがしっかり預かるから、悪者を倒したら真っ先にあなたに返しにくるね。」

女の子「絶対だよー。お姉ちゃんも頑張ってね、応援してるから。」

賢者「うふふ、ありがとう。いい子ね。」

女の子「ねえ、お姉ちゃんはなんていうの?」

賢者「あ、私?勇者の仲間の賢者だよ、よろしくね。」ニコッ


337: 2013/01/21(月) 15:55:50.05 ID:NIgkV68AO
賢者はラダトームを出たあと、ルーラでマイラ、リムルダール、ドムドーラと巡りついにマイラの道具屋の主人が行っていた商人風の男の手がかりを掴んだ。

ドムドーラの牧場に住む少女がその男から、薬物入りのチョコレートをもらっていたのだ。

少女は数個を食べただけで、特に症状めいたものは見られないうえ、そのチョコレートを賢者に手渡したため心配はしなくてもよかったが、どこで小さな被害が出ているかわからない。

子供を利用し、徐々に大人にゆっくりと被害を広めていく卑怯なやり方に賢者は怒りを覚えた。

賢者はまだ唯一行っていない町、絶望に包まれたメルキドに向かった。

338: 2013/01/21(月) 16:12:57.94 ID:NIgkV68AO
メルキドの町


賢者「……………なにか町の雰囲気がおかしい。」キョロキョロ

賢者「(明らかにこの前に来た時と違う、この町全体を覆う重い気は。)」

よたよた

町の男「あ、あんた。町の外からきた人か?へへへへ」

賢者「はい。そうですが。あの、ここは城塞都市メルキドですよね?」

町の男「ん~そんなことはどうでもいいんだ。あんたアレ持ってないか?」

賢者「アレ?とは。(この人、目の焦点があってない!)」

町の男「だーかーら!なんつったかな、ちょこらーと?とかいう甘い菓子だよ。」

賢者「!?」

賢者「(まさかと思ったけど...この町がターゲットだったのね)」

町の男「姉ちゃん、早く出せって言ってんだろうがぁ~!」バッ

339: 2013/01/21(月) 16:26:07.65 ID:NIgkV68AO
賢者「くっ!?」ブツブツ

賢者「(深き眠りの底に落ちろ)『ラリホー!』」フワァ

男が突然襲いかかってきた
賢者はラリホーを唱えた
男はその場で眠り込んだ

賢者「ふう~びっくりした。」

賢者「(まさか襲いかかってくるなんて、かなりな禁断症状が出ているみたい。)」

賢者「(この町はただでさえ、他の町よりずっと住民が絶望しているのに、そんな心のスキに入り込んでこんなことを。)」

賢者「(あの男、いるかもしれない。探してみよう。)」ブツブツ

賢者「光よ我の姿を消したまえ『レムオル』」パァー

賢者はレムオルを唱えた
賢者の姿が見えなくなった

賢者「(これで余計なことに巻き込まれずにすむぞ、よし行こう。)」テクテク

340: 2013/01/21(月) 16:57:03.47 ID:NIgkV68AO
メルキドの町 王の間


メルキド王「おぬしか、この町の者達の心に付け入り怪しげな食べ物をバラ蒔いていたのは。」

商人風の男「怪しげな者とは心外ですなぁ、王様。私はただ、町の皆さんに喜んでいただければと思い、タダで商品を配っているだけですよ?ふふふ。」

王「タダで配っている?しかし今、町の者はその食べ物を欲している。それでも貴様はタダでと言えるか?」

商人風の男「くっくっく。さぁてどうするんでしょうねぇ。私もすべてサービスしてしまっては商売にならないのでねぇ。」

王「いたずらに人々の心を操作してなにが楽しいのじゃ?ただでさえこの世界は今、ゾーマの恐怖によって支配されているのじゃぞ。」

商人風の男「すべては金のため、自分のため、他はどうなってもかまわない。くっくっく。」

341: 2013/01/21(月) 17:13:39.23 ID:NIgkV68AO
王「ぐっ、なんて輩じゃ。して貴様の目的はなんなのだ?」

商人風の男「私はこの町を拠点にアレフガルド全土で商売がしたいのですよ。すでにこの町は私の意のままです。」

王「商売じゃと?貴様も人間だろう、ゾーマの恐ろしさがわからんのか?貴様も魔物に殺されかねんのだぞ。」

商人風の男「ふふふ、私はそんな者は怖くはありませんよ。私が殺されるなどということはありませんね、くっくっく。」

王「貴様は一体、まさか....?魔物と手を。」

商人風の男「くだらないおしゃべりはそこまでに願いましょうか。王様。」

商人風の男「私は今まで人を騙して騙して生きてきました。その度に、騙す者が強者、騙される者が弱者だと信じてきた。」

商人風の男「私はずっと強者のまま生きるのです。だから王様、あなたはそれを邪魔するのならここで消えてもらいます。」ジャキ

342: 2013/01/21(月) 17:39:47.53 ID:NIgkV68AO
王「な、なにを。」

商人風の男「この町は私のものです。だからすみません、氏んでください王様。」ギリギリ

バシュ!
バシュ!
バシュ!

男は構えたクロスボウをメルキド王に向けて発射した。
放たれた矢が王に向かって飛んでいく。


「氷よ!壁となれ!『ヒャダルコッ!』」


パキパキパキッ!
ピッキーン!!

ドスッ ドスッ ドスッ

王の目の前に突然分厚い氷の壁が出来上がった。放たれた矢は3本ともに氷の壁に刺さった。


商人風の男「な、なにぃ!?一体何が起きたぁ!?」キョロキョロ


賢者「お久しぶりね!商人さんっ!」バンッ!

347: 2013/01/21(月) 20:45:46.30 ID:EQGdzcCs0
商人風の男「久しぶり、だと?一体あなたは…」

男の問いかけを無視して賢者は王に駆け寄った。

タッタッタッ

賢者「王様!大丈夫でしたか?お怪我は?」

王「た、助かったわい…そなたはたしか。勇者どのの、お仲間の方。」

賢者「はい。その男を探していたところ、このメルキドの異様な雰囲気が気になって。」


商人風の男「一体あなたは誰だと聞いているのです!」

賢者「私は商人の町ホープバークの初代町長をしていた商人です。」

商人風の男「ホープバーク?というと、ああ、あの老人と若い女商人とが一緒に立ち上げた...
その赤い髪。覚えてますよ。あのお嬢さんでしたか。くっくっく。」

賢者「そう。あなたにまんまと騙されちゃったけどね。」

商人風の男「そのあなたがなぜ今こんなところに?町を追放でもされましたかねぇ。」

348: 2013/01/21(月) 21:02:28.35 ID:EQGdzcCs0
賢者「たしかに、私はその後クーデターを起こされて投獄された。でも追放なんてされていない。」

商人風の男「ほう。それは幸いでしたね。ただそのクーデターもね私が仕組んだんですよ。」

賢者「な?なんですって!?(あれは仕組まれていたの?)」

商人風の男「私が金で雇った男達でねぇ。巧みにあの町に潜入させてたというわけですよ。くっくっく。」

賢者「……ふう。……まああの時のことは今はいいの。騙された私も悪かったしね。
ただあなたが今やっていることは許せない!」

商人風の男「許せない?ふ、まあそうでしょうな。ただこれが私の唯一の正義なのですよ!」

賢者「このアレフガルドに来て、ある町であなたの噂を聞いた。
賢者になっても商人だったあの時のことだけは頭から消すことはできなかった。」

商人風の男「ワケあって今はあの勇者さまご一行というわけですか。ご立派に賢者さまになられて。」

賢者「ふざけないで。ドムドーラの女の子に言葉巧みにあんな危ないチョコを食べさせるなんて。」

商人風の男「!?なに。あのチョコの秘密を知っているのか?」キッ

349: 2013/01/21(月) 21:22:51.79 ID:EQGdzcCs0
賢者「詳しくはわからないけど、魔法で危険なものかどうかだけは判断がつく。賢者をナメないことね。」

賢者「あの中には毒か薬物が入っているんでしょ?しかもゆっくり効くようにごく微量に。」

商人風の男「チッ!まさかこいつに気が付く野郎がいたとはな。ああ、そうさ!最初はなんともないが
何個も食べれば知らずのうちに禁断症状が出てくる。そうなれば俺の思うツボさ。」

賢者「この町の皆の大半に禁断症状が出てる。この絶望の町メルキドをターゲットにしたのね?」

商人風の男「そこまでお見通しとはね。この町の人間は強い絶望感に苛まれてる。
そこに付け入り、甘い話をもちかけてやれば軽くコロっとさ、くっくっく。」


賢者「王様。この世界では犯罪者は捕まるとどうなるのですか?」ヒソヒソ

王「うむ。ラダトーム城内の牢獄に入れられるのが通例じゃが……」ヒソヒソ

商人風の男「なにをヒソヒソ話をしている?まさか俺を捕まえようなんて考えてるのかい?」

賢者「ええ。そのまさかよ。あなたを拘束します!」サッ

350: 2013/01/21(月) 21:51:41.23 ID:EQGdzcCs0
商人風の男「拘束だと?ふざけるなぁ!!」バッ

賢者「(あれは?爆弾石?)」

商人風の男「貴様らまとめてぶっ飛ばしてやるわ、食らえ!!」ビュン

王「ひいぃぃぃ~~!!」

賢者「王様!伏せてっ!!(間に合うか!)」ブツブツ

賢者「聖なる光よ、我らを包め『フバーハ!』」パアァァー


男が投げた3つの爆弾石が賢者と王の目の前に転がり、直後爆発を起こした。

ドッゴーーーーン!!!
ズドーーーーーーン!!

パラパラ カラン.....



王「く、むうう。ワシはぶ、無事なのか?」キョロキョロ

賢者「……………」

王「け!賢者どの!?大丈夫か?」

351: 2013/01/21(月) 22:13:27.06 ID:EQGdzcCs0
賢者「んん...くう。お、王様はご無事ですか?」ハァハァ

王「ワシは大丈夫じゃ、賢者どのが庇ってくださったのでな。それより賢者どのが....」

賢者「私もなんとか大丈夫です...フバーハのおかげで致命傷は避けましたから。」ブツブツ

賢者「我らの傷を癒せ『ベホマラー』」パァ

賢者はベホマラーを唱えた
王と賢者の傷が治ってゆく

王「お。おおお、傷が治ってゆく。」

賢者「けっこう危なかったなぁ。それよりもあいつはどこに?逃げたの?」キョロキョロ



メルキドの町 郊外


商人風の男「はぁはぁ。俺まで巻き込まれるところだった……」

商人風の男「だけどあいつら、爆発をモロに食らったな。ありゃあ氏んだな、へへへ。」

商人風の男「(一度どこかに隠れてほとぼりが冷めるまでは大人しくしているか。)」

賢者「待ちなさい!あなたは逃げられない!」

352: 2013/01/21(月) 22:30:34.02 ID:EQGdzcCs0

商人風の男「なっ!貴様!あの爆発をモロに食らって生きてるだと?」

賢者「不意打ちで危なかったけどね。氏ぬかと思ったよ。」

商人風の男「普通の人間である俺じゃああんたにゃ敵わないようだな。」

賢者「もう無理だよ。観念しなさい!」キッ

商人風の男「人間ならなあぁ!」ピィーーーー!「来い!魔物たちよっ!!」

男は口笛を吹いた。
遠くより魔物が大量に押し寄せた。

賢者「なんですって!?あなたまさか、魔物と手を組んだっていうの?」

商人風の男「その通り!俺は魔物と契約したのだ。はっはっは!」

商人風の男「大魔王ゾーマの城で待っているぞ。そいつらを全部倒せたらの話だがなぁ!」

男はドラゴンの背に乗り、立ち去っていった。

賢者「ま、待てぇ!(数が多すぎる!いくらなんでもこの数は…)」

353: 2013/01/21(月) 22:57:36.86 ID:EQGdzcCs0
魔王の影ABCDEがあらわれた
マクロベータABCDEがあらわれた
メイジキメラABCがあらわれた
ラゴンヌABCDがあらわれた
サタンパピーABCDがあらわれた
マドハンドABCDEFGHIJKがあらわれた
ヒドラABCがあらわれた

賢者「ただ、逃げることもできないみたいね。やってやる!」ブツブツ

賢者「炎の精霊よ!猛り狂え!『ベギラゴーン!!!』」
賢者「風の精霊よ!刃となりて切り裂け!『バギクローース!!!』」

賢者はベギラゴンとバギクロスを唱えた。
炎が風に乗り勢いが何倍にもなり魔物達を襲う。

ドゴオォォォォ~~~~!!!
ビュオォォォ~~~~!!!

魔王の影ABを焼き尽くした
マクロベータADEを焼き尽くした
メイジキメラABCを焼き尽くした
ラゴンヌADを焼き尽くした
サタンパピーCDを焼き尽くした
マドハンドABCDEを焼き尽くした
ヒドラCを焼き尽くした

賢者「はぁはぁ。戦士と武闘家に教わった合体呪文はスゴイわね。でも.....」



354: 2013/01/21(月) 23:20:39.64 ID:EQGdzcCs0



賢者「も、う魔力が尽き、ちゃった、みたい…(ここまでかな私。)」バタッ

賢者はその場に倒れこんだ。
残った魔物達がじわりじわりと賢者に近づく
賢者が動かないのを確認すると魔物達は一気に賢者に襲い掛かった


その時、勇敢なる詠唱の叫び声が響いた


「天なる轟よー!裁きの雷となり降り注げーっ!!」

『ギ ガ デイィーーーーーン!!!』ピカァ!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!
ドッシャアァァァァーーー!!
バチバチバチ!!!
シュウゥゥゥ~~~

魔物達全頭が豪雷により一瞬で焼け氏んだ。


勇者「賢者!大丈夫?ダメだよ無理しちゃあ~~」ペシペシ

賢者「………ん。ううん。………」スゥ

勇者「(よかった。ただ魔力の使いすぎと体力の消耗が激しいだけだね。)」

勇者「とりあえず。ラダトームに戻らなきゃね。」ブツブツ

勇者「天よ繋がれ!『ルーラ!』」

勇者は賢者を背負い、ルーラを唱えた




357: 2013/01/22(火) 08:48:43.66 ID:gwBFKx6AO
賢者がメルキドの町に着くとほぼ同時刻

マイラの町 温泉


戦士「きぃもちイイ~!生き返るわ~。」チャプ

戦士「こんなのいつぶりかしら?まだ勇者達と旅に出る前か。」

戦士「早いなぁ、もう少しでこの旅も終わる...」

戦士「(生きて帰れればだけど、ねぇ。)」ブクブクブク

戦士はふと自分の両腕を見た。
戦いでついたと思われる深目の傷が無数にあった。

戦士「(あ、こんなところに傷が。)」

戦士「はぁ~」

戦士「(戦士になってから体も強くなったけど、傷が増えたわね。仕方ないか。)」

358: 2013/01/22(火) 09:07:28.51 ID:gwBFKx6AO
戦士「(アリアハンに帰ったら、どうしようかな。それかレーベの師匠のところでまた働こうか。)」

女番頭「お客さま~。お湯加減はいかがですか~?」ヒョイ

戦士「きゃあ!びっくりした。女将さんか~(覗きかと思った)」ドキドキ

女番頭「ああ、ごめんなさいね。ついいつもの癖で。」

戦士「湯加減、ちょうどよくて最高ですよ。こんな温泉は滅多にないかな。」

女番頭「そうですか、よかった~。お客さまは今日はどちらから?」

戦士「あ....あの上の世界からなんです。」

女番頭「え?上の世界から?じゃあお客さまはもしや、勇者さま?」

359: 2013/01/22(火) 09:26:50.64 ID:gwBFKx6AO
戦士「え、ええまあ。私は勇者の仲間です。」

女番頭「ホントッ?きゃー!最近噂になってて凄いんですよ。」

戦士「私達がですか?(案外有名人なんだな私達。)」

女番頭「ええ、それはもう!このアレフガルドを救う『希望の勇者』って。」

戦士「希望の勇者...そんな噂が。」

戦士「(悪い気はしないけど、なんか恥ずかしいわよね。)」

女番頭「その勇者さまのお仲間さんがこの温泉に来てくれるなんて~。」

女番頭「よ~し、見てなさいよ。隣の温泉の年増女将め、このことを上手く利用して、
ここをもっと宣伝して.....」ブツブツ

戦士「(………商魂逞しいわね。賢者もたまにああなるし。)」

360: 2013/01/22(火) 09:36:43.26 ID:gwBFKx6AO

戦士は温泉をたっぷり満喫したあと、温泉宿の食事処で食事をこれまた満喫していた。

食事時というのもあり、食事処はけっこうな人で賑わっていた。

戦士が運ばれてきた食事を食べている時にふと近くの席から男達の話し声が聞こえてきた。

361: 2013/01/22(火) 09:50:44.79 ID:gwBFKx6AO
マイラの町 温泉宿食事処


男A「なあ、それよりも知ってるかよ?」

男B「あん?なんのこった?」

男A「町外れに住んでる男Cのさ様子がおかしいんだよ。」

男B「あいつの様子のおかしいは今に始まったこっちゃねーだろが。」

男A「いや、そういうことじゃなくてな、ラリってる感じで。」

男B「おい、それって。なにかヤバい薬でもやってんじゃ?」ヒソヒソ

男A「なんでも近所のガキにもらった食い物を食べはじめてかららしい。」

男B「ガキの食い物?ホントか。それか魔物かなんかが関わってたりするんじゃねぇのか。」


362: 2013/01/22(火) 10:05:20.70 ID:gwBFKx6AO

男A「ん。まああいつはゾーマがここを支配してから特にやる気
をなくしちまったというか、塞ぎ込んでたしなぁ。」

男B「だな。あ~あ、早く噂の勇者さまってのがゾーマを倒してくれないもんかね。」

男A「ムリに決まってんだろ?なんでも勇者以下、全員20にもいかない女の子だっていうぜ。」

男B「ああん?じゃあさすがにムリだよな、そんな色気もねぇようなお子様達にゃあよ。」

男A「ちげえねえ、はっはっはっ~!その辺で転んで『いったぁ~い』なんて言ってるのがオチだな。」


プッツン


ガタンッ!

363: 2013/01/22(火) 10:25:55.94 ID:gwBFKx6AO

戦士「あんた達、さっきから人が黙って聞いてると思って。」キラッ

男A「うわっ!なんだよいきなり!ヒィッ!」

戦士は右手に持った剣を男Aの喉元に突き付けた。

男B「なんだ?この女!やんのか、オラァ?」

戦士「やめたほうがいいわよ、私を怒らせたあんた達が悪い。」ブツブツ

戦士は左手を男Bに向けて広げ、何やら魔法を唱えようとしている。

男B「な、何の真似だ?そんなんで俺が怖じけずくとでも...」

ボッ!!
戦士の左手にメラミの炎が浮かんだ。

戦士「あんたの顔面をこの炎でめちゃくちゃにしてあげてもいいのよ。」

男B「ひっ!や、やめろぉ。いや、やめてください!」ガタガタ

364: 2013/01/22(火) 10:37:00.62 ID:gwBFKx6AO
戦士「撤回しなさい。」

男達「はい?」フルフル

戦士「私はバカにされてもいっこうに構わない。でも私の仲間をバカにするのは許さないわ。」

男達「は、はい。本当にずびまぜんでじた……」ポロポロ

戦士「わかってもらえて嬉しいわ」ニカッ

男達「ひいぃぃぃ~~!」ダダダッ
男達は一目散に逃げ去った


………シーン………


戦士「あっ!」

戦士「(やっちゃった!)」アセ

戦士「ご、ごめんなさーい。あの、ごちそうさまでした~!」ササッ

戦士も一目散に立ち去った。

366: 2013/01/22(火) 10:53:46.15 ID:gwBFKx6AO
マイラの町 町中の公園


戦士「はああ~、またやっちゃった。」ボソボソ

戦士「(よかった。今回は私だけで。)」


戦士「(でもあの男達が最初に言ってた話、気になるわね。)」

戦士「(こっちの世界でもそんなヤバいものが出回ってるなんてね。)」

戦士「(そういえば師匠が言ってたわね、『薬物は魔物の手によって精製する方が容易じゃ』)って。」

戦士「ま、いいか。とりあえずゾーマを倒してからよね。」

戦士「もう少し、町を散策してみようかしら。」テクテク


戦士は再び、町中に歩いていった。

367: 2013/01/22(火) 11:26:00.61 ID:gwBFKx6AO
こちらも賢者がメルキドの町に着くのとほぼ同時刻

ラダトームの城 図書館


武闘家「あの、新聞閲覧させていただいて助かりました。ありがとうございます。」ペコリ

司書「いえいえ。いろいろとこちらの世界のことはわかったかしら?」

武闘家「はい。アレフガルドもそれぞれの大陸でいろんなことが起きてるんですねー。」

司書「ラダトームも今の王様が王座に就く前はね、まったく違う家系の王様だったのよ。」

武闘家「え?あの王様は今の家系では初代なんですか。知らなかったなぁ。」フムフム

司書「ふふふ、あなたって好奇心旺盛なのね。」

武闘家「私は『知る』って凄いことだと思うんです。
本から得る知識って頭に染み込むから忘れないですし。」

司書「そうよね。私も本が好きだからこの仕事をしてるんだけどさ。日々発見があるわ。」

司書「ただ、以前はここも沢山の人で賑わっていたんだけど、すっかり今は...見ての通り。」

368: 2013/01/22(火) 11:42:15.08 ID:gwBFKx6AO
司書が言う通り、アレフガルド最大の規模を誇るこの図書館も今や人がほとんどいないのだ。

武闘家「………ゾーマのせいですね。私以外には数人がいるだけです。」

司書「そう。あいつのせいで、みんなの楽しみが奪われてしまった。」

武闘家「司書さん....」

司書「勉強をしにくる人、読書をしにくる人、寝にくる人、
のんびりしにくる人、みんな来なくなった。」

武闘家「私も大好きな空間である図書館が、こんな景色なのは悲しいです。」

司書「だからあのゾーマが憎くてたまらない。武闘家さん、
押し付けちゃうのは心苦しいけどゾーマを絶対に倒してね。」

武闘家「まかせてください!明日、私達はゾーマの城に乗り込むつもりです。」

369: 2013/01/22(火) 11:52:34.51 ID:gwBFKx6AO
司書「そっか。氏んじゃだめだよ。またあなたとここで話がしたいわ。」

武闘家「私もです!えへへ。」ニコッ

司書「じゃあ、私はちょっとお昼を食べてくるわね。」

武闘家「あ、私も外に行って食べてきますね。また後でお邪魔します。」ペコ

武闘家「(こっちの人は暗くてもお昼の時間がわかるんだな。慣れちゃったのかな闇に...)」


武闘家は人がいなくなった図書館を出て、町中に向かった。

370: 2013/01/22(火) 12:15:38.17 ID:gwBFKx6AO
ラダトームの町 宿屋の食堂


店員「いらっしゃーい。」

武闘家「1人分ランチお願いしま~す。」ビッ

店員「はい。ランチひとつねー。」

武闘家「(まだみんな帰ってないみたい。私だけか、少し寂しいなぁ。)」

武闘家「(勇者さまも賢者さまもどこに行ったかわからないし。戦士と温泉に行けばよかったかなぁ。)」

店員「は~い、お茶をどうぞ。」トン

武闘家「ありがとうございます。頂きます。」ズズ

武闘家「(あったかくて美味しい~!あ~やっぱり温泉にしとけば....ん?)」ジー

武闘家「(なんだろ、あれ?)」

武闘家がふと目をやった掲示板にずいぶん目立つ紙が貼ってあった。

目を凝らしても見えないので立ち上がって掲示板のところまで行こうとしたがちょうどランチが運ばれてきた。

371: 2013/01/22(火) 12:25:07.83 ID:gwBFKx6AO

店員「はい、お待たせしましたー。特製ランチです。」トン

武闘家「あ、すみません。ありがとう。」

武闘家「(食べ終わったら見に行ってみるかな。)」

武闘家「では。いただきま~す!」ペコ

ぱく
モグモグ
ぱくぱく
モグモグ

武闘家「(………イマイチ。賢者さまの食事がたまには食べたいなぁ。)」

ズズズズ
ごくっ

武闘家「(……スープも微妙ね。賢者さまの野菜スープ美味しかったな~)」


武闘家は心の中でも文句を言いながらランチを食した。

372: 2013/01/22(火) 12:47:30.06 ID:gwBFKx6AO

武闘家「(まあまあだったけど)ごちそうさまでした!」ペコ

武闘家は掲示板に近寄っていった。大きい掲示板に1枚だけ貼ってある紙をまじまじと見てみた。


《不審者の情報求む》

近頃、ここラダトームのみならずドムドーラなど各地で
商人を騙った不審者の目撃情報が寄せられています。

不審者の男は主に子供を狙い、話かけてはお菓子をあげる
という怪しい行動をしています。子供がいる親御さんは特に
注意を払ってください。

男の特徴は背丈は約180ほど
年齢は不明(20歳~40歳?)
頭に白いダーバンを巻き
いかにも商人という衣服を着て
いるが上から黒いロングコートを羽織っている。
顔は穏やかだが、絶えず口元に笑みを浮かべている

以上の特徴を持った男をもし見かけたらすぐに連絡を!


ラダトーム城 警備隊 まで

373: 2013/01/22(火) 13:00:11.43 ID:gwBFKx6AO

武闘家「なんなのこれ?」


店員「ああ~、それね。なんでもアレフガルドの各町に出没してるみたいなんだよな。」

武闘家「そうなんですか。このラダトームでも目撃されているんですか、この男。」

店員「みたいだね。ここに書いてあるように子供に話かけていたって話さ。」

武闘家「気味が悪いですね....」

店員「どこかで店を出すわけじゃなく、こんなことして。コイツ何考えてんだろねぇ。」

武闘家「(怪しいやつ………)」

店員「あんた達、勇者一行が取っ捕まえてくれよ。ゾーマ倒すついでにさ。」

374: 2013/01/22(火) 13:15:39.64 ID:gwBFKx6AO
武闘家「へっ?私達がですか?」パチクリ

店員「あんたらかなり強いだろ。俺、この前、たまたま町の外に
用事があって出た時にキメラの集団をバッタバッタと倒すあんたらを見たんだよ。」

武闘家「あ、私達が戦ってるの見たんですか?恥ずかしいな。」

店員「あんたも身なりは小さい武闘家だけど、キメラより早い動きで攻撃も凄かったからな。」

店員「と思ったら、いきなり炎の魔法とか使ってたからな。この子らならゾーマ倒してくれるかもって思ったわけよ。」

武闘家「(へぇ。私達って案外見られてるんだなぁ。)」

武闘家「じゃあ期待していてください。きっとゾーマを倒しますから。」

店員「おう、頼りにしてるぜ。」


375: 2013/01/22(火) 13:32:30.81 ID:gwBFKx6AO
ラダトームの町 宿屋 武闘家と戦士の部屋


武闘家「長かった旅ももう終わりか~。」ボソ

武闘家「大魔王ゾーマ...倒せるかな私達に。」

武闘家「(みんなの前じゃ強がってるけど、ホントは不安だらけだし。)」

武闘家「(でもここまで来たら、当たって砕けろ、かなぁ。)」

武闘家「(もしアリアハンに帰ったらどうしよう?)」

武闘家「(僧侶に再再々転職して教会に戻るか。)」

武闘家「(このままで旅人さんのお母さんがやってる武術道場で働かせてもらうのもいいかも。)」

武闘家「(そうだ!司書さんにも相談してみよっかな。さて図書館に戻ろう。)」ダッ

バタン


武闘家は再び図書館に遊びにいった。

376: 2013/01/22(火) 13:51:51.95 ID:gwBFKx6AO
一方こちらは賢者がメルキドに着く2時間ほど前

ルビスの塔 最上階


勇者「あ~やっぱりここは気持ちいいや~。風がそよいで、ボーっとするには持ってこいだね。」

勇者「よっこらせ、と」ゴロン

勇者「戦士は温泉ゆっくり楽しんでるかな。温泉に入って美味しいご飯を食べて、たまらんねー。」

勇者「武闘家は読書家だから、今頃図書館で目をキラキラさせてるんだろうな~。私は読書は苦手だけどねぇ。」


勇者「賢者....はどこに行ったのかな?昨日の賢者の顔、暗かった。なにか考えてる顔してたし....」

勇者「(マイラで道具屋のおじさんから話しかけられてから、明らかに賢者は。)」


377: 2013/01/22(火) 14:05:32.56 ID:gwBFKx6AO
勇者「頭が良くて慎重派の賢者のことだから、大丈夫だとは思うけど...」

勇者「なにか引っかかる。それになんだろう?この胸騒ぎは。」グッ

勇者「でも、私も眠~くなってきたなー。ふわ~あ。」ゴシゴシ

勇者「(みんなのおかげでここまで来た。明日は力合わせて頑張ろう.....)」スゥ

勇者「すーすー」

勇者「zzzzzzzzz~~」


勇者はあまりの心地良さに眠ってしまった。


378: 2013/01/22(火) 14:22:08.18 ID:gwBFKx6AO
それから2時間後

ルビスの塔 最上階


勇者「…………う、う~ん。」

勇者「ふぁあ~。寝ちゃったみたい。どのくらい寝たかな。」カパッ

勇者は懐中時計を取り出した、勇者の父親の形見の懐中時計は鈍く光っている。
時計を見ると長針が2時間分程度進んでいた。

勇者「2時間も寝ちゃったのか私。」

ドクン!

勇者「!?」グッ

勇者「(な、何?今の鼓動。)」

ふと勇者は自分の胸のあたりを見た。
すると首から提げていた聖なるお守りが光っていた。

勇者「お守りが光ってる?これはどうなってるわけ?」カチャ

勇者は聖なるお守りを握り締めた。
すると勇者の頭の中に声が聞こえてきた。

379: 2013/01/22(火) 14:31:29.41 ID:gwBFKx6AO
『勇者よ。定めの勇者よ。』

『はじめまして、私はルビス。精霊ルビス。』

「あ、あなたが精霊ルビスさま?」

「私はゆ、勇者です。ルビスさまがどうして?」

『危機を告げるためです。』

『今、このアレフガルドでなにかが起きようとしています。』

「危機?どこでですか。ゾーマの城ですか?」

『いいえ。また魔物のそれとは違うようです。』


『これは、人間。にわかに信じたくはありませんが。』

380: 2013/01/22(火) 14:43:18.20 ID:gwBFKx6AO
「人間って、私達と同じ人間ですか?」

『そのようです。それに...』

『あなたの仲間がそこにいます。』

「!?」

「きっと賢者だ!!私の胸騒ぎの正体はこれだったんだ!!」

『勇者よ、助けに行っておあげなさい。』

「ルビスさま!場所はわかりませんか?」

『南の地、としかわかりませんが。』

「(南?メルキドの方か!)」

「ルビスさま、ありがとう!すぐに行きます!」

『頼みましたよ。勇者よ。』


勇者は目を明け、握り締めていた手を広げた。

381: 2013/01/22(火) 14:48:41.22 ID:gwBFKx6AO

勇者「(よくわからないけど、賢者が危ない。)」

勇者「(2人に声をかけからじゃ遅いよね。私が行く!)」

勇者「(無事でいて、賢者。今行くよ。)」ブツブツ

勇者「『ルーラッ!』」ヒューン


勇者はルーラを唱えた。

382: 2013/01/22(火) 15:11:33.56 ID:gwBFKx6AO
メルキドの町 入口

キーーン!
スタッ

勇者「とりあえずメルキドの入口に来たけど、なんなのこの空気は....」

勇者「ん?しかも町の人が眠らされてる?」

勇者「(賢者の仕業?だったらなぜこんなことを?)」

勇者「これほどの広範囲にラリホーを分散させるとなるとかなりの魔翌力を使ってるはずだ。」

ヒュー


勇者が賢者を探そうとして町に入ったその時、
風の音が勇者の耳に入った。
ふと町とは逆の方角を振り向くと少し遠くで竜巻の欠片を見た。

勇者「あれは!?」

勇者「(賢者のバギクロスだ。)」

勇者「あっちだ!」ダッ


勇者は賢者がいるであろう場所に向けて全力で走った。

383: 2013/01/22(火) 15:28:40.21 ID:gwBFKx6AO
メルキド 近くの平原


勇者「(賢者!)」ダッ

勇者「(あれは!魔物!)」

ピタッ
ガササッ

勇者は平原を見渡せる巨大樹の枝の上に隠れた。

勇者「な!魔物があんなに!」

勇者「(それでも賢者が数を減らしたんだろうけど...)」

勇者「(あんなに一斉にに魔物が出るなんておかしい!誰かが手引きしたとしか。)」

勇者「(それより賢者はどこに?)」キョロキョロ

勇者が魔物達の多さに驚く直後に賢者の姿を探した。

すると剣を片手に、うつ伏せで倒れている賢者を見つけた。

衣服は汚れ、ところどころボロボロになっている。手や足にも血が滲んでいた。

384: 2013/01/22(火) 15:41:24.38 ID:gwBFKx6AO

賢者は倒れたまま動かない。

するとそれを認めたのか遠巻きに様子を見ていた
魔物達が一斉に賢者に飛びかかった。

勇者「(まずい!)」


勇者「(くそッ!こうなったら!)」バシュッ!

勇者「うおぉぉぉー!」

勇者「天なる轟きよー!」

勇者「裁きの雷となり、降り注げーっ!!」

『ギ ガ デイィーーーーーン!!!!』

ピカァ!


勇者は天高くジャンプし、詠唱した。

勇者はギガデインを唱えた!

390: 2013/01/22(火) 17:34:18.59 ID:gwBFKx6AO
上(表)の世界
ホープバーク 町長の家


旅人「お久しぶりだねー2人とも!」

町長「おや?あなたは。どこかで見たことが...」

老人「その声、しゃべり方。」

旅人「ふっふっふ。」

町長「ああ!武闘家さんじゃないですか?」

老人「むう。そうじゃそうじゃ、武闘家じゃないか!」

旅人「やっとわかったか~。まあ、たしかにこんな旅人の服じゃあわからないよね。」

町長「あの緑色の武闘着のイメージが強かったんで、わからなかったなー。」

老人「そういえばお前だけか?」

旅人「そうだよ。ちょいワケありってやつだよ。」チッチッ

391: 2013/01/22(火) 17:43:26.80 ID:gwBFKx6AO
旅人は今はホープバークの町長を務める青年と老人に、商人がここを離れてから、今までについてすべてを話した。


商人が自分の代わりに勇者パーティーに入ったこと。

さらに商人が賢者に転職したこと。同じく転職した仲間達のこと

自分は今、1人で世界中を旅していること

大魔王ゾーマ出現により下の世界アレフガルドが存在したこと

そして大魔王を倒すために勇者達がアレフガルドにいること


町長と老人は旅人の話を真剣に耳を傾けていた。

392: 2013/01/22(火) 17:53:58.46 ID:gwBFKx6AO
旅人「と、まあこんな感じかなー。」

老人「大魔王などというやついたか。勇者達も休まる暇ないのう。」

町長「商人さんが勇者パーティーに。しかも賢者になっていたなんて....びっくりしました。」

旅人「青年くんてば、私や勇者達のことよりも商人のことばかりだねーへへへ~。」

町長「え。い、いや。そういうことじゃなくて、た、ただ僕は、商人さんが心配で。」アタフタ

旅人「(わっかりやすいなー青年くんは。)」ニヤニヤ

町長「武闘家さん。なんですかそのにやけ顔は。」

旅人「なーんでもありません。」


393: 2013/01/22(火) 18:04:30.83 ID:gwBFKx6AO
老人「ところでお前はこれから?まだ旅を続けるか?」

旅人「もうホープバークが最後に来た町だよ。とりあえずここが終着点みたいなんだけど....」

町長「…………行くんですね、アレフガルドに。」

老人「なっ?そうなのか武闘家?」

旅人「うん。」コクッ

旅人「私自身、この世界中を廻ったんだけど、なにか満たされない気持ちなんだ。」

旅人「自分を見つめ直したら、わかったんだ。」

旅人「私は勇者達と一緒に戦いたい、ってね。私は私にしかできないことがあるかもしれない。」

394: 2013/01/22(火) 18:21:24.85 ID:gwBFKx6AO

旅人「あとね、勇者達の忘れ物を届けにいかないといけないんだなー。」

町長「忘れ物?」

老人「なんじゃなそれは?」

ゴソゴソ

旅人「これでーす。」キラッ

町長「水晶玉ですか?ただの玉じゃなさそうだけど。」

老人「なにかとんでもない力秘められてるとか。」

旅人「そうなんだよね。詳しくは言えないけど、なぜか私がパーティー
から抜けた時に私の道具袋に入っててそのままだったんだ~。」

旅人「(てか、なんで誰も気がつかないんだろうね~)」

旅人「(竜の女王の形見みたいなものだし。)」

旅人「(勇者も真性のおっちょこちょいだもんねぇ。)」

395: 2013/01/22(火) 18:33:13.13 ID:gwBFKx6AO
旅人は旅を終わらせ、再び勇者達に合うためにアレフガルドに向かうのだった。

あとホープバークから旅立つ際に町長から手紙を託された。


町長「武闘家さん、すみませんがこれを商人さんに渡してくれませんか?」スッ

旅人「なに、手紙?」

旅人「ねえねえ、青年くん。これはアレなのかな、いわゆる~まさかの~」ヘラヘラ

町長「茶化さないでくださいよ、武闘家さん。そのまさかです!」キッパリ

旅人「おお~男らしいね。青年くんは商人のこと好きなんだもんね!」

町長「僕の思いを書いてます。よろしくお願いします。」ペコ

旅人「わかった!必ず渡すから。」

396: 2013/01/22(火) 18:35:54.48 ID:gwBFKx6AO



旅人はギアガの大穴めざして、町を出ていった。



無事に旅人は勇者達に合流できるのか。

一方、勇者達は……………







402: 2013/01/23(水) 08:23:42.98 ID:rAj2E+bAO
ラダトームの町 宿屋


『……さま』

賢者「…………ん」ピク

『けんじゃさま!』

賢者「…………ん。ううん。」モゾ

賢者「はっ!?」ガバッ

賢者「わ、私。どうして...」

武闘家「賢者さまっ!よかったぁ~」ヘタ

賢者「武闘家...私は一体。魔物たちと戦って...」

勇者「気を失ってたんだよ、賢者。」ツカツカ

賢者「勇者。まさかあなたが助け」

パンッ!

部屋にかわいた音が響いた

403: 2013/01/23(水) 08:37:23.03 ID:rAj2E+bAO
武闘家「あっ!ゆ、勇者さま...」

賢者「ゆうしゃ?」

勇者「バカッ!すっごく心配したんだよ!私が行かなかったら賢者氏んでたんだぞ!」

勇者「私は今日、ずっと胸騒ぎがしてた。理由はわからなかったけど。でも昨日の賢者の浮かない顔がずっと心の中で引っ掛かってた。」

勇者「起きてからあなたは何も言わずにそそくさと先に出てった。私も賢者は修行を沢山積んで強くなったから大丈夫かなって思ってたんだよ。」

勇者「でもまさか戦いの場に行ったなんて思わなかった。メルキドに着いて倒れたあなたを見た瞬間、背筋が凍ったみたいに心臓がバクバクしたよ!」

404: 2013/01/23(水) 08:54:06.88 ID:rAj2E+bAO
賢者「……………」

勇者「私達は単なる友達なんかじゃない!お互いに命を懸けて魔王を倒すために支え合って頑張ってきた仲間でしょ!」

勇者「私に、ううん武闘家や戦士でも構わない。どうして一言も相談してくれなかったの!」

勇者「私は勇者だ。魔王を倒す使命を背負ってる。だけど1人じゃ怖くてなんにもできないよ!だからみんなが一緒にいてくれて本当に嬉しかった。」

勇者「みんながいてくれたおかげで私はここまで来れた。そんな大切な仲間を絶対に氏なせたくないよぉ。」グズ

武闘家「(勇者さま...)」グス

勇者「なのに....私....えっぐ、うう、うわぁぁん」ポロポロ

405: 2013/01/23(水) 09:09:18.36 ID:rAj2E+bAO
賢者「(私はなんてバカなんだ...1人で勝手にしょいこんで、心配してくれてた勇者を....)」

賢者「(あの時となんら変わらないじゃない。くそっ。)」

勇者「………でも。」グス

賢者「?」

勇者「賢者が無事でよかったぁ、ほんとにほんとによかった。」ニコッ

賢者「あっ。勇者っ!」ダッ

ガシッ

賢者「心配してくれてありがとう!助けてくれてありがとう!ごめんね勇者!」ポロポロ

勇者「へへへ。どういたしまして。」

賢者は勇者を抱きしめた。
武闘家は涙をこぼした。

406: 2013/01/23(水) 09:27:10.81 ID:rAj2E+bAO

ガチャ!

戦士「ただいまー!温泉最高だったわよーみんな。」

戦士「お肌なんてこんなにツルツルに....ってあれ?どうしたの?勇者と賢者で抱き合っちゃって?」

武闘家「………バカ。せっかくの感動のシーンなのに。」ジロリ

戦士「え?バカ?なんのシーン?」ポカン

勇者「おかえり~戦士。お風呂よかったみたいだね!ほんとだ、肌ツルツルだね~、
触らせて触らせて~!ほら賢者も触ってごらんよ。」プニプニプニプニ

戦士「あ、こら。必要以上に触らないっ!」

賢者「うん!触る~(ありがとね勇者。)」


407: 2013/01/23(水) 09:36:49.10 ID:rAj2E+bAO
勇者は賢者を背負い、ラダトームに帰ってくると、ちょうど図書館から忘れ物を取りに戻ってきた武闘家と鉢合わせた。

すぐに賢者を宿屋のベッドに寝かせ、魔力回復のため魔法の聖水を飲ませながら2人で回復魔法を施したのだった。


戦士がマイラから戻り、バカと言ったか言わないかで武闘家と一触即発になるも、勇者と賢者の仲裁により事なきを得た。

そして間を置いた後、賢者が今日の出来事を話し始めた。


408: 2013/01/23(水) 09:57:15.45 ID:rAj2E+bAO

武闘家「そ、そんなことがあったなんて。私全然...」

戦士「なんか私だけバカみたいにくつろいでたワケね。」

武闘家「本当にバカだからでしょ...」ボソ

戦士「なんですってぇ...」

勇者「はいはい、や~め。」ギロッ
賢者「(あ、ははは。)」


武闘家「あの、賢者さんがホープバークにいた時に会ったという男と今日会った男は同一人物なのですか?」

賢者「そうだよ、見間違うことなんてないよ。」

武闘家「その男は背が高く、いかにも商人風の格好なのに黒いロングコートを着ていますか?」


409: 2013/01/23(水) 10:17:50.67 ID:rAj2E+bAO

賢者「そうだけど。武闘家、その男を知ってるの?」

武闘家「いえ、私はこの宿屋の食堂の掲示板に不審者に注意を促す貼り紙をしてあったのを見たんです。」

勇者「そうなんだ。えらく異様に目立つ格好だよね、そいつ。」

賢者「あの男、各地で怪しい動きをしてるみたいね。メルキド以外じゃ被害は出てないみたいだけど....」

戦士「いや、賢者の言う被害はマイラでも出てるかもしれないわ。」

賢者「え?マイラで?」

戦士「私がある男から聞いた話だと、その男の知り合いが最近
薬物でもやってるんじゃないかってくらいおかしくなってるそうよ。」

武闘家「怖いですね、それは。」

戦士「近所の子供からなにやら菓子をもらって、それを食べるようになってかららしいわ。」

410: 2013/01/23(水) 10:31:37.74 ID:rAj2E+bAO

賢者「やっぱり。子供を巧みにそそのかしてチョコを渡していたんだ。」

勇者「チョコ?それってチョコレートのこと?」

賢者「そう。勇者達がポルトガで食べたことがあるって言ってたあれのこと。」

武闘家「すごく甘くて美味しかったですよねぇ~。また食べたいです私。」

戦士「私はあれ、苦手。甘いのダメなんだ。」

賢者「(あ!そうだ。)」ガタ

ガサゴソ

勇者「どうしたの賢者?」

賢者「(あった!)」サッ

賢者はチョコレートが入った箱を取り出した。

411: 2013/01/23(水) 10:50:27.61 ID:rAj2E+bAO

武闘家「あ。チョコレートじゃないですかー!賢者さまが持ってたなんて。」ダラ

賢者「だーめ。これは私がドムドーラの女の子から預かってるの。しかもチョコの中には何かしらの薬物が入ってる。」

武闘家「へっ?こ、この中にですか!」ゾク

賢者「インパスで視てみたら赤く光ったからね。戦士、どう思う?」

戦士「間違いないと思う。インパスは人間が編み出した魔法。故に人間に悪影響を及ばすものに反応して赤く光るのよ。」

賢者「そんなものを子供達に食べさせて、それを見て取り上げた親や大人が食べる。」

戦士「知らず知らずに禁断症状が出はじめるってわけね。それを利用して人々を意のままに。」

勇者「絶対に許すわけにはいかないね、その男。」

賢者「ただ...」

412: 2013/01/23(水) 11:08:04.64 ID:rAj2E+bAO

武闘家「ただ?」

賢者「あの男、あろうことか魔物と契約したみたい。現にドラゴンの背に乗っていたし。」

賢者「『ゾーマの城で待っているぞ』って言ってた。」

戦士「なんですって!!」バッ

勇者「私が賢者の所に着く、ほんの少し前だね。あれほどの数の魔物を呼び寄せるのはたぶん...」

武闘家「かなりの位の、もしかするとゾーマ直属の配下クラスの魔物と契約したのではないでしょうか?」

戦士「その可能性はかなり高そうね、厄介な話だわ。」

賢者「……………(それでも)」

賢者「それでもやるしかないよね。どのみちゾーマを倒さないと世界が滅んでしまう。」


413: 2013/01/23(水) 11:28:13.68 ID:rAj2E+bAO

勇者「そうだね。私達の使命を果たす時がやっと来たんだ。みんな!やってやろう!」

武闘家「はい。最後の戦いになるんですね。私もすべての力を出して戦います!」

戦士「もうここまで来て後悔はないわ。ゾーマを倒して世界に平和を取り戻す。」

賢者「失敗だらけだったけど、それを糧に私は振り向いたりはしない。私の今をすべてを賭ける。」

賢者「(旅人...あなたは今どこにいるのかな?ゾーマを倒してあなたに会いに行くからね。)」
賢者「(おじいちゃん、青年さん...生きて、今度は胸を張って町に行くよ。)」

賢者「(お父さん...何度も家を開けてごめんね。これが終わったらちゃんと帰るから。)」



勇者達は明日の最終決戦に向け眠りについたのだった。

414: 2013/01/23(水) 11:39:40.08 ID:rAj2E+bAO
翌日

勇者達はまだ町が寝静まっている時間に町を出て、リムルダール南にある聖なるほこらに行った。

そこで太陽の石と雨雲の杖とが合わさることで作られる虹の雫を手に入れた。

リムルダール最西端の海岸で虹の雫を垂らし、出来た橋を渡り、ついにゾーマの城にたどり着いた。

闇の力が一段と強く感じられるが、4人は臆することなく城内に入っていった。

415: 2013/01/23(水) 12:36:11.72 ID:rAj2E+bAO
ゾーマの城 入口


ギィー
バタン!

勇者「中は明るいみたいだね。空気は半端なく重いけどさ。」

戦士「案外見た目は普通の城みたいだけど、油断しちゃだめよみんな。」

武闘家「了解。」

賢者「後ろはまかせて!」

バルログA『キシシシシシ。貴様らニンゲンか?何しに来たんダ?』

勇者「ん~と。ゾーマを倒しにね。あんたが道案内でもしてくれるの?」

バルログB『ゾーマさまを?キシシシ、愚かな。貴様らニンゲンにそんなこと...オ』

バシュ!
ズバッ!

戦士の攻撃
武闘家の攻撃
バルログAを真っ二つにした
バルログBを一突きした
魔物達をやっつけた

勇者「魔物のくせに口が達者だね。嫌われるよ。」

武闘家「先手。取らせてもらいました。」

戦士「雑魚ね。」スッ

賢者「先制攻撃、すごいわ二人とも。」

416: 2013/01/23(水) 12:48:52.69 ID:rAj2E+bAO

勇者達はそれまで付けた実力をいかんなく発揮し、次々と現れる魔物達を倒していった。

武闘家が持ち前の素早さで爪の武器を振りかざし先制すると。

賢者がルカナンやバイキルト、マヌーサといった魔法で補助役に徹し。

勇者と戦士が各々の最強の剣で魔物にとどめを刺す。

時折、攻撃魔法も使い、戦いを優位に進めていった。


しかし、下に降りる階段がどこにもない。勇者達は一番奥の王座の間を調べていた。

417: 2013/01/23(水) 13:05:56.00 ID:rAj2E+bAO
ゾーマの城 1階 王座の間


勇者「おかしいなぁ。この部屋が一番奥なのに階段ひとつないなんて...」

賢者「他の間も全部見たけどね、ここもないのかな。」

武闘家「困りましたね。全部見れそうなところは見ましたけど。」

戦士「玉座の回りはバリア張ってあるしね。危ないわ。」

賢者「(バリア?まさか。)」ダダッ

賢者「ねえ、戦士。ここのバリアなんとかならない?」

戦士「え?ちょっと待ってて。」ブツブツ

戦士「聖なる光よ我らを包め『トラマナ』」パァ

賢者「ありがとう。もしかしたら玉座の後ろあたりに...」サワサワ

418: 2013/01/23(水) 13:09:18.02 ID:rAj2E+bAO
ガチャ

玉座の裏に階段があらわれた。

勇者「おお~!賢者ナイス!」

武闘家「なんでわかったんですか?」

賢者「企業秘密です。えへへ。」ニコ

戦士「じゃあ早く降りましょう。」

勇者「うん。行こう行こう!」

ザッザッザ

419: 2013/01/23(水) 13:20:49.14 ID:rAj2E+bAO

城を次々に下に降っていくたびに闇を伴った空気が濃くなり、
人間である勇者達は息苦しさを感じている反面。

魔物達は強さが増し、数も増える一方になっていく。

そんな状況にも4人は助け合い、魔物を倒してさらに進んでいく。
ふと勇者達の前にそれまでにない巨大な扉が立ち塞がる。

420: 2013/01/23(水) 13:46:13.50 ID:rAj2E+bAO
ゾーマの城 地下3階


賢者「大きい扉...今までにないくらいの憔気を感じるね。」

戦士「そうね。みんな用意はいい?」

武闘家「大丈夫よ、戦士。」

勇者「よく開けるよ」グッ

ガゴン
ゴゴゴゴゴゴ

賢者「あっ!!」

巨大な扉を開けると、そこには紫のローブを纏った魔物アークマージが3匹こちらを見据え立っていた。

『くっくっく。よく来ましたねぇ、商人いや、賢者さま。』

そしてアークマージの後ろにある大きく悪趣味な装飾を施された
椅子に黒いロングコートを羽織った人間の男がひとり座っていた。

賢者「私はあなたを許せないっ!」キッ

421: 2013/01/23(水) 14:09:33.07 ID:rAj2E+bAO

武闘家「こ、この男が?あの張り紙にあった男なの?」

戦士「こいつが、メルキドの人々を薬物中毒に追い詰めた...」

勇者「おい、お前!どうやって魔物達に取り入った?」

人間の男「こちらは威勢のいい娘さんだ。まあ私のことより目の前のアークマージを倒した方がよいのでは?くっくっく。」

賢者「勇者、先にアークマージを倒そう!来る!」ササッ

武闘家「私にまかせてください!えいっ!」バシュ

ズババッ!

武闘家の先制攻撃
アークマージAに大ダメージ
アークマージAをやっつけた

戦士「私も行くわっ!でぇい!」シャ

ザシュウ!
戦士の攻撃
アークマージCに大ダメージ
アークマージCをやっつけた

422: 2013/01/23(水) 14:23:44.71 ID:rAj2E+bAO
勇者「よっし!まず2匹!」

アークマージBはザオリクを唱えた
アークマージAが蘇った
アークマージAはザオリクを唱えた
アークマージCが蘇った
アークマージCはイオナズンを唱えた

賢者「そっ、そんな!(魔物がザオリクなんて)」

武闘家「きゃあああ~!!」

戦士「しまったぁ!!」

ズドドドドドド
ドッカーーーン!!

人間の男「おやおや~、一瞬油断したら脆いんですねぇ、はっはっは!」

勇者「くっ、あんな至近距離からイオナズンを。」ググ

戦士「ゆ、油断したわね。」

武闘家「……………う。」

賢者「ぶ、武闘家!(いけない!)」ブツブツ

賢者「傷をすべて癒せ『ベホマ!』」パァー

賢者はベホマを唱えた
武闘家の傷がすべて治った

423: 2013/01/23(水) 14:38:33.79 ID:rAj2E+bAO
武闘家「は。傷が。みなさん!」ブツブツ

武闘家「我らの傷を癒せ『ベホマラー』」パァー

武闘家はベホマラーを唱えた
勇者、賢者、戦士の傷が治った

勇者「武闘家ありがと!戦士行くよ!」

戦士「コクッ(武闘家、賢者頼むね)」パチ

武闘家「(戦士。わかった。)」ブツブツ

賢者「(よし、それなら!)」ブツブツ

勇・戦「「くらえ~~!」」

ズバッ!
バシュッ!

勇者の攻撃
戦士の攻撃
アークマージAに大ダメージ
アークマージBに大ダメージ
アークマージABをやっつけた

戦士「今よっ!」


424: 2013/01/23(水) 14:55:24.58 ID:rAj2E+bAO
武闘家「汝の言葉は...」

賢者「...心に届かぬ!」

武・賢『マホトーン!』シュー

武闘家はマホトーンを唱えた
アークマージCの魔法を一部封じ込めた
賢者はマホトーンを唱えた
アークマージCの魔法を完全に封じ込めた
アークマージCは魔法を唱えられない

賢者「やったね武闘家!」グッ

武闘家「二重掛けが効きましたね!」


勇者「よし、最強の剣の威力見せてやる!ええい!」ブゥン

勇者は王者の剣を振りかざした
剣からあらわれた巨大な竜巻がアークマージCを巻き込んで切り裂いた
アークマージCをやっつけた


人間の男「なにぃ?ふふふ。やりますねぇ。流石は勇者さまだ。」

425: 2013/01/23(水) 15:09:29.59 ID:rAj2E+bAO

戦士「あとはあんただけね。チャキ」

人間の男「なるほど。私の力ではあなた達には敵わないようだ。」

賢者「ずいぶん気弱なことを言うのね。昨日のあなたと違って。」

人間の男「勇者さま。先ほどのあなたの質問にお答えしましょう。」

勇者「…………」

人間の男「私はこれまで人を騙して騙して騙して続けてきた。」

人間の男「簡単なことです。飽きてしまったんですよ。」

武闘家「飽きた?どういう意味ですか?」

人間の男「言葉の通りです。人の次は魔物しかないでしょう?」

人間の男「魔物も知能の高い者ならば言葉を話すし理解もできる。」

426: 2013/01/23(水) 15:24:32.55 ID:rAj2E+bAO

賢者「あなたの得意な口で魔物も騙したってことなの?」

人間の男「上の世界の魔物は知性が弱い、そんな時に勇者さま
がギアガの大穴から下の闇の世界に入ったという話を耳にしましてね。」

人間の男「闇の世界の魔物ならと思い、私も密かに降り立ったわけです。」

人間の男「魔物は危険な存在ですが単純な分、一度騙せればこちらの思うツボ。」

勇者「あんた。とことん騙してばかりで、性根が腐ってるよ。」

人間の男「褒め言葉と受け取りましょう。くっくっく。」

人間の男「先ほどあなた達が倒したアークマージは魔力から劇物を精製するのが得意でねぇ。」

人間の男「それをチョコに入れ、見返りとして魔物にも提供し、ついでにこの世界に住む人間にも提供してやる。」

427: 2013/01/23(水) 15:44:45.65 ID:rAj2E+bAO

人間の男「人間でも的確に効いてくれたが、魔物には悪い意味で相性が合ってねぇ。好都合でしたよ。」

勇者「そうか!だからあんな数の魔物を。」

人間の男「まあゾーマはなにも興味を示してもくれなかったがね。」

人間の男「しかし、困った。この世界のすべてを騙してしまった…………こうなればもうやるべきことは一つしかない。」スッ

武闘家「やるべきこと?」


人間の男「貴様らを頃して、ゾーマをも頃し、私が世界の支配者となるのだァーー!!」

勇者「な、なんだって!?」


男の叫びとともに、それに呼応するように男の体が変化していく。
コートの下から覗く体は肌色から青色に変色し、膨れあがる。

428: 2013/01/23(水) 16:03:07.71 ID:rAj2E+bAO

頭には禍々しく大きなツノが生え、口にはキバが生え、背には翼が生えていく。

人間?の男「フハハハハー!!私が最強になるのだ!貴様らなぞすぐに消し去ってやるわ!!」グググ

魔物の男「まだまだぁー!もっともっと大きくなるぞぉー!これが魔物の力なのだぁー!」ググ

魔物の男「見ろ!人間どもよー!これで俺はさいきょ、うの」ピタ

魔物の男「な、なんだ?変化が止まった、だと?」


魔物の変化が途中でピタリと止まった。


賢者「あなたがずっと自分の話をしてて、あまりにスキだらけだったからね。」

武闘家「念のために戦士に魔封陣を張ってもらっていたんです。」

魔物の男「な、に?魔封陣だとぉ?」キッ


429: 2013/01/23(水) 16:19:36.63 ID:rAj2E+bAO
魔物が目を下げると、そこには魔物を中心に紋様が浮かぶ円い魔封陣が描かれていた。

等間隔で勇者達が立ち、それぞれが魔力を注いでいる。

戦士は全神経を集中させて魔封陣を張り続けている。

魔物「ぐう、そんなバカなぁ!こんな魔封陣なぞ。うおおおお!」ピクピク

魔物「(動けぬ!)」

戦士「ムダよ。なにをしたってこの魔封陣を解くことは不可能。」

勇者「戦士は元魔法使いだよ。魔封陣のエキスパートだからねっ。」

魔物「貴様らが、俺を『騙した』だと...」

賢者「そう。以前、騙されたお返しよ!醜い姿になった自分を悔いなさい!」

430: 2013/01/23(水) 16:35:38.13 ID:rAj2E+bAO

魔物「ぐうう、ぬおおお。」ピクピク

戦士「賢者。どうするの?魔物ならこのまま消し去ることもできるわよ。」

魔物「な。た、助けてくれ。頼む、消すのはやめてくれ~!悪かった、俺が悪かったよ。」

賢者「…………あなた反省できる?もう二度と人や魔物でも騙さないって神に誓って言える?」

勇者「賢者!なにを言ってるの?そいつはすでに魔物になってるんだよ。いくら口で言ったって信じられるもんかっ!」

賢者「魔物になっても少し前までは人間だった。だったら姿形は魔物でも更正してくれれば。」

武闘家「賢者さま....」

魔物「あ、ありがてぇ。反省するよ。もう二度とバカなことはしねえからよ。な?な?」

賢者「戦士、ごめんね。魔封陣を解いてくれる?みんな魔力を止めて。」

431: 2013/01/23(水) 16:54:06.33 ID:rAj2E+bAO

戦士「わかったわ。解!」シュウ

魔物の動きを封じていた魔封陣が解けた。床の紋様が消えた。

魔物「ぐっは、はあはあ。解けたようだな。」

賢者「私達はすぐにゾーマを倒しに行かなきゃならない。あなたはすぐにここから出ていた方がいいよ。」

魔物「わ、わかった。」ハァハァ


賢者「みんな。すぐに行こう。」ニコッ

戦士「そうね。魔力を回復しながら行きましょう。私も久々だったから解いたらふらふらよ。」

勇者「あ、武闘家、魔法の聖水か祈りの指輪持ってる?魔力けっこう使っちゃったからさぁ。」

武闘家「ありますよ。魔封陣は直接の術者もですが、魔力を提供するサポート役も魔力の消費が半端ないですからね。」

勇者達は魔物の横を通りぬけ、回廊にある階段を目指し歩いてゆく。

魔物「(へっへっへ。今の魔封陣とやらで奴らの魔力はカラか。だったら今の体でも)」

432: 2013/01/23(水) 17:07:00.49 ID:rAj2E+bAO

魔物「はっはっは~!ここまでコケにされておとなしく引き下がれるかー!!人間どもがぁ~!」

ドスドスドス!

魔物「今の貴様らは魔力がカラっきしだろう?だったらここでみんなまとめてくたばってしまえ~!!」

勇者「ま、まずいよ!体がフラフラだ。」ググ

戦士「(魔力回復が間に合わない!)」

武闘家「く、くそぉ!」ジャキ

バッ

勇者「け、賢者?」

フラフラの3人の前に賢者が立ち塞がった。

賢者「やっぱりダメだね私ったら。また騙されちゃった。」ニコッ

武闘家「賢者さま!!」

433: 2013/01/23(水) 17:32:56.30 ID:rAj2E+bAO

魔物「なんだ?また騙されて悔しいか~?商人さんよぉ!ヒャッハッハッハー!」

賢者「………は………じゃだ」ボソッ

魔物「聞こえねえなぁ~~!!くたばれぇぇええ!!」バシュッ

賢者「今の私は賢者だ!!」ブツブツ

賢者「炎の精霊よ!」

ゴウッ

賢者「暴れ狂えー!」

ゴオオオォ

戦士「(りょ、両手の炎が頭上で繋がってアーチ状に!)」

賢者『ベギラゴーーン!!』


賢者はベギラゴンを唱えた

434: 2013/01/23(水) 17:56:12.95 ID:rAj2E+bAO
魔物「な、なにぃ!?」

ベギラゴンの激しい炎が空中で身動きが取れない魔物を襲う。

ゴオオオォォォ!!

魔物「ぐわぁぁあああ~!!」

ドォン

魔物は床に落ちたが虫の息だ。

魔物「お、お、な、ぜだ?貴様も魔力が、カラのは、ずだ」

賢者「はぁはぁ、私は賢者だって言ったでしょ?」

賢者「戦士も武闘家も元は僧侶や魔法使いだけど、今の職になる時に
魔力量は半減。レベルが上がっても増えないの。」

賢者「そして勇者、彼女は元々の魔力量は多くない。」チラッ

賢者「今のパーティーじゃ私が一番魔力を残してたってわけ。」ハァハァ

魔物「さい、ごのさい、ごで騙された、ってことか。」


435: 2013/01/23(水) 18:01:10.91 ID:rAj2E+bAO

賢者「違うよ。」

賢者「あなたが勝手に勘違いしただけ。」

賢者「私は誰かを騙したくなんかないもの。」ニコッ

魔物「へ、そう、かもな。ぐふっ!」ガクッ


賢者は魔物をたおした

賢者はレベルが上がった
イオナズンを覚えた

436: 2013/01/23(水) 18:06:13.05 ID:rAj2E+bAO
今日はここまでかな。
夜投下できればしますが。
自分で書いていて、なにやら
某「ド○ゴンボー○」みたいな感じになっちゃいましたが。

いかがだったでしょうか?

書いていてつい熱が入りました(笑)

443: 2013/01/24(木) 09:56:48.94 ID:vJL3bhQAO
ゾーマの城 地下4階 廊下

タッタッタ

勇者「みんな魔力の回復はどう?」

賢者「私はとりあえずフル近くまで戻ったよ。そこまで減ってなかったし。」

武闘家「私もなんとか、7割方戻りました。」

戦士「魔法の聖水も終わってしまったわ、私はまだ半分も戻ってない。」

勇者「祈りの指輪もあと1つしかないからね、次使ったら壊れるかもだし。」

戦士「まあいいわ。私は今は戦士だから直接攻撃する。補助程度なら問題ないから。」

武闘家「消費の多い攻撃魔法は賢者さまに一任します。私もとにかく相手を叩くことに専念します。」

賢者「みんな。ありがとう。私も3人を精一杯サポートするからね!」

444: 2013/01/24(木) 10:10:52.93 ID:vJL3bhQAO
戦士「ねえ、賢者。ちょっといい?」ヒソヒソ

賢者「どうしたの?」

戦士「あなたがさっき放ったベギラゴンだけど。」

戦士「あの形での発動は威力も通常のベギラゴンとは桁違いだけど体にかかる負担もとても大きい。」

賢者「……たしかに。体力魔力は回復しても体中がギシギシ言ってるみたいだもの。」

戦士「でしょう。今はもう撃たない方がいいわ。」

賢者「うん。わかった。」コクッ


タッタッタ

勇者「あっ!見て。あそこに階段があるよ!」ビッ

武闘家「早く行きましょう!」


445: 2013/01/24(木) 10:21:15.13 ID:vJL3bhQAO
長い廊下の先に階段を見つけた勇者達はその階段を慎重に降りていく。

するとまったく明かりがなく、フロアの広さもわからないくらいであった。

暗いままに少しずつ前に進むと、突然正面にあるいくつかのたいまつが燃え始め、勇者達の視界を開いた。

そしてその勇者達の前に、奥からゆっくりと歩み寄ってくる影があった。

その大きな影は他ならぬ大魔王ゾーマであった。

446: 2013/01/24(木) 10:43:11.01 ID:vJL3bhQAO
ゾーマの城 最深部 ゾーマの間


ゾーマ「よく来たな人間どもよ。まさか本当にここまで来れる人間がいたとはな。」

勇者「お前が大魔王ゾーマか!」

ゾーマ「いかにも。アリアハンでは声だけで失礼した。お初にお目にかかる。」

武闘家「(……これが大魔王。な、なんて威圧感。)」フル

勇者「私は勇者だ。お前を滅ぼしにきた!覚悟しろ!」チャキ

ゾーマ「まあ、そういきり立つな勇者よ。ワシを倒したくばまずは我が配下どもを倒してからだ。」

戦士「ま、まだ魔物がいるっていうの?」

ゾーマ「ワシは奥の玉座で待っておるぞ。わははははは!」クルッ
勇者「(スキあり!)」バッ

賢者「!?」

賢者「勇者っ!焦ったらダメ!」

勇者「ゾーマ!後ろを取ったりぃ~!」

『甘いわ。』

ガァン!

キングヒドラがあらわれた
勇者の攻撃はキングヒドラに弾かれた

448: 2013/01/24(木) 10:58:45.37 ID:vJL3bhQAO
勇者「くっ!なんて堅いの!」

賢者「勇者、落ちついて!まずはこいつからよ。」ブツブツ

キングヒドラ「生意気な人間どもよ。灰となれぃ!」ゴォ

キングヒドラは激しい炎を吐いた

賢者「聖なる光よ我らを包め『フバーハ』!」パアー

賢者はフバーハを唱えた
賢者達の前には光のカーテンがかかる

光のカーテンは炎の威力を半減させた
勇者達は小ダメージを受けた

戦士「助かったわ賢者。こちらの番ね。でぇやぁぁ~!」バッ

ズバァ!

戦士の攻撃
キングヒドラにダメージ


450: 2013/01/24(木) 11:18:32.16 ID:vJL3bhQAO
キングヒドラ「この程度か?攻撃とはこうするのだ!フン!」ビュオ

キングヒドラの攻撃
戦士に小ダメージしか与えない

キングヒドラ「なんだと?」

武闘家「『スクルト』成功です。」スッ

勇者達の守備力が上がっている

勇者「今、あんたにもルカニがかかってるよ!」

賢者「(『ルカニ』も成功っと)」

キングヒドラの守備力が大幅に下がった

キングヒドラ「ぐっ。いつの間に!こしゃくなぁ!」


勇者「もらったあー!!」ヒュン

戦士「やああぁぁ~!!」ダッ

バシュ!!

勇者と戦士の同時攻撃
キングヒドラの息の根を止めた

451: 2013/01/24(木) 11:41:30.19 ID:vJL3bhQAO
ゾーマ「ほう。なかなかやるようだな。」

ゾーマ「では次だ。ゆけぃ、バラモスブロスよ!」ブゥン

武闘家「バラモスですって!?生きていたの?」

バラモスブロスがあらわれた

ブロス「お前達がネクロゴンドで倒したバラモスはいわば我の兄弟。仇は取らせてもらうぞ!」

勇者「なら、あんたなんてもう怖くないよ!」

戦士「私達もあれからずっと強くなってんのよ!」

ブロス「なにぃ?バカにするのも大概にしろぉ!『イオナズーン』!」

賢者「来る!みんなここは耐えてー!」グッ

ブロス「耐えられるかなぁ!『メラゾーマ』!」

勇者「連続魔法!?」グッ

ブロス「さらにおまけだー!『バギクロス』!」

戦士「さ、三連発もっ!?」ググッ


452: 2013/01/24(木) 11:57:04.14 ID:vJL3bhQAO
バラモスブロスはイオナズン、メラゾーマ、バギクロスを唱えた
最大魔法が荒れ狂い、勇者達に大ダメージを与える

賢者「きゃああ~~!!」


カンッ カンッ カンッ


ブロス「ぐえっへっへっへ。見たか、まともに食らいおったわ。ん?」

ブロスが放った魔法が光の壁に弾かれ、ブロスの元に帰ってくる。

ドゴオォォォーン!!

ブロス「ギャアアアァ~~!」ドス

ブロス「な、なぜだ?どうなっている。我の魔法はやつらに当たったはず。」

戦士「ぐ、けっこう危ないわね....でも」

賢者「わ、私達3人は囮よ。」

ブロス「囮だと?……まさか!(もう1人がいない。)」キョロキョロ

453: 2013/01/24(木) 12:08:36.36 ID:vJL3bhQAO
武闘家「私はこっちだ!バラモスブロスッ!」

勇者「武闘家~!いっけえー!」

武闘家は武器の爪を天井から抜き、バラモスブロス向けて落下した。

ブロス「(こいつだけマホカンタで魔法を跳ね返し、爆風で目眩まししたスキに我の頭上を!?)」

ズドドドドド!!

ブロス「ぐぎゃあああ~!ゾッ、ゾーマさまぁぁ~~!!」

武闘家の空中からの攻撃
会心の一撃!
バラモスブロスを真っ二つにした


ドタン!

武闘家「いつつつ。や、やった。やりましたよ勇者さまっ!」グッ

454: 2013/01/24(木) 12:20:30.63 ID:vJL3bhQAO
賢者「やったね武闘家。すごかったよ。」

戦士「さっきのあなた最高にかっこよかったわ。」ニヤッ

武闘家「ありがとう!賢者さま。戦士。」テレ

勇者「照れてるとこ悪いけど、回復おねがいー。」ハアハア

武闘家「あわわ。今すぐに!」ブツブツ



ゾーマ「むうう。ブロスをもこうもたやすく倒すとは。まあよい。」

ゾーマ「出でよ、バラモスゾンビよ。」ビリビリビリ

バラモスゾンビがあらわれた

勇者「よし!あいつも一気に倒してケリをつけるぞっ!」

455: 2013/01/24(木) 12:29:33.20 ID:vJL3bhQAO
バラモスゾンビ「……………」
ズドン。

戦士「ぐっはぁ、うあぁ~!」
ズシャーー

バラモスゾンビの攻撃
戦士は大ダメージを受けた

賢者「戦士っ!」ダッ

戦士「うう、とんでもないパワーよ、あのゾンビ野郎。」

賢者「大丈夫?ひどい傷...」ブツブツ



勇者「戦士があんなに。武闘家!」

武闘家「はい!」ブツブツ

武闘家「我らの守りを堅めよ『スクルト』」パァ

勇者達の守備力が上がった


456: 2013/01/24(木) 12:40:38.16 ID:vJL3bhQAO
戦士「あのパワー。スクルト一度じゃ意味ないわ。私と賢者もよ。」ブツブツ

賢者「わかった!」ブツブツ

戦・賢「「我らの守りを堅めよ『スクルト』!!」」パアー

戦士と賢者はスクルトを唱えた
勇者達の守備力が限界まで上昇した。

バラモスゾンビの攻撃

ドスッ

賢者「ううっ(それでもかなり痛い)」

賢者はダメージを受けた

賢者「みんなー!とにかく攻撃しまくるのよ!私はもう一度かける。」ブツブツ

勇・戦・武『了解!』

457: 2013/01/24(木) 12:50:14.12 ID:vJL3bhQAO
賢者「汝の守りを崩せ『ルカニ』」シュゥー

バラモスゾンビの守備力を大幅に下げた


戦士の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ
勇者の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ
武闘家の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ

バラモスゾンビの攻撃
勇者はダメージを受けた
武闘家はダメージを受けた

戦士「キリがないわね、なんて体力なの?」


賢者「戦士ー!構えて!魔法をかけるよ!二人も攻撃の手を緩めちゃだめ!」ブツブツ

武闘家「わかりました!行きます!」バッ

勇者「こうなったら私も!」ブツブツ

458: 2013/01/24(木) 12:59:05.94 ID:vJL3bhQAO

勇者「天なる轟きよ!雷となり貫けー!『ライデイーン』!」ピカッ

賢者「精霊よ戦士に力をっ!『バイキルト』!」パァー


勇者はライデインを唱えた
雷が天井を貫きバラモスゾンビに直撃した

武闘家の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ

賢者はバイキルトを唱えた
戦士の攻撃力が上がった

戦士「力がっ!よし、うりゃあああ~!!」

ザシュ!

戦士の攻撃
バラモスゾンビは粉々になり消滅した。

459: 2013/01/24(木) 13:13:41.92 ID:vJL3bhQAO

勇者達は次々と襲いかかる、ゾーマの配下、キングヒドラ、バラモスブロス、バラモスゾンビを倒した。

勇者と賢者の魔法で体力を回復した4人は奥の玉座に鎮座しているゾーマを見据えた。

ゾーマは勇者達を冷たい目で見おろしていた。
勇者は仲間達と目を合わせると、ゆっくりうなずいて向き直り、玉座に向けて歩きはじめた。



最後の戦いがはじまろうとしていた.....

460: 2013/01/24(木) 13:23:02.67 ID:vJL3bhQAO
ゾーマの城 最深部 ゾーマの玉座前


勇者「お前の配下はすべて倒した。今度こそお前の番だ。大魔王ゾーマ!」

ゾーマ「よくぞ我が配下を倒した。しかし勇者よ!なにゆえもがき生きるのか。」

勇者「なんだと?」

ゾーマ「滅びこそ我がよろこび 氏にゆく者こそ美しい。」

賢者「(なんてことを...)」タラ


ゾーマ「さあ我が腕の中で行き絶えるがよい!!」バンッ


勇者「みんなぁー!いくぞー!!!」ジャキ


大魔王ゾーマがあらわれた

461: 2013/01/24(木) 13:45:26.19 ID:vJL3bhQAO

勇者「とにかく攻めるしかない!賢者はサポートを。戦士と武闘家は私と一緒に攻撃だよ!」

賢者「わかった、まかせて!」ブツブツ

武闘家「まずは私が行きます!やあぁぁ~!」ヒュン

ザシュ!

武闘家の攻撃
しかしゾーマにダメージをほとんど与えられない

武闘家「え?手応えがない。」

ゾーマ「ふはは。どうしたワシは痛くもかゆくもないぞ。」

賢者「(どういうこと?とにかく)」

賢者「我らの守りを堅めよ『スクルト』」パァー

勇者達の守備力が上がった

戦士「ならば私が。この剣を受けてみろーー!ゾーマ!」バンッ

462: 2013/01/24(木) 13:56:35.25 ID:vJL3bhQAO

バシッ

戦士の攻撃
しかしゾーマにダメージをほとんど与えられない

戦士「そんなっ!」

勇者「(どうなってるんだ?)」

ゾーマ「もう終わりか。ならばこちらもいかせてもらうぞ!かあああぁぁー!」シュゴー

ゾーマは輝く息を吐いた
氏ぬほど冷たい猛吹雪が勇者達を襲う

勇者「賢者っ!」クルッ

賢者「わかってる!」ブツブツ

賢者「聖なる光よ我らを守れ『フバーハ』!」パァー

賢者はフバーハを唱えた
勇者達の前に光のカーテンがあらわれた

ゾーマ「そんな貧弱なガードなど効かぬわぁ!」


463: 2013/01/24(木) 14:13:06.79 ID:vJL3bhQAO

バリバリバリ!

賢者「な、なんて威力なの!フバーハが破られるなんて!きゃああ~~!」ズバッ

武闘家「うわあーーー!!」

戦士「盾も役に立たない!」

勇者「ぐあぁ~~!!」

勇者達は最大ダメージを受けた

ゾーマ「わはははは!たいしたことはないな。闇の力を見くびらないことだな。」

武闘家「(はあ、はあ、おそらくルカニもあいつには効かない。)」

勇者「普通の攻撃は効かないの?なら魔法でやるしかない。」ブツブツ

戦士「このために魔力を残しておいてよかったわね。いくわよ!」ブツブツ

賢者「あいつは氷属性なの?なら炎で押し切るまでね!」ブツブツ

武闘家「せめて魔法は効いてくれなきゃ困ります!」ブツブツ


ゾーマ「来い!愚かな人間どもよ!」

464: 2013/01/24(木) 14:35:12.74 ID:vJL3bhQAO
勇者「天なる轟きよ!邪悪なる者に裁きの雷を!『ギガデイーン』!」

戦士「炎の精霊よ!我の元へ集え!『ベギラゴン』!」

武闘家「風の精霊よ!竜巻となり切り裂け!『バギクロス』!」


勇者はギガデインを唱えた
戦士はベギラゴンを唱えた
武闘家はバギクロスを唱えた

ピシャーーー!!
ゴオオオオーー!!
ヒュウウウ~~!!

3人の魔法がゾーマに直撃した

ゾーマ「ぬうううん!なかなかの威力。だがワシには効かぬわ!」バシュ

ゾーマにダメージを与えた

勇者「ちょっとしか、効いてない!?そ、そんな!」ヘタ

賢者「(ゾーマのやつ油断した!今だ!)」

賢者「精霊達よ!集いて弾けよ!『イオナズン』!」

賢者はイオナズンを唱えた

465: 2013/01/24(木) 14:45:18.38 ID:vJL3bhQAO

ゾーマ「姑息な手を。お返ししてやるわ。『マホカンタ』」

ゾーマの前に光の壁があらわれた
イオナズンを跳ね返した

賢者「え!マホカンタ?しまった!」バッ

武闘家「賢者さまーー!!」

ドッカーン!!
賢者の眼前でイオナズンが爆発した。



勇者「なんてやつ....こっちの攻撃が全然効かないなんて。」ゼイゼイ

戦士「さすがに打つ手がないわね....」ハッーハッ

武闘家「賢者さま大丈夫ですか?『ベホマ』!」パァ

賢者「あ、ありがとう武闘家。でも。これじゃあ。」


466: 2013/01/24(木) 14:59:47.84 ID:vJL3bhQAO

ゾーマ「ん?どうした。もう終わりか?絶望とはこういうことを言うのだ。」


勇者「ち、くしょう。どうすれば。」

武闘家「ここまででしょうか。私達...」

戦士「……………」

賢者「(正直どうしたらいいのかわからない。………でも。)」

賢者「あきらめるワケにはいかない!絶対に!」ググ


ゾーマ「ほう。まだこの期に及んで諦めぬか。その気概はほめてやろう。」

ゾーマ「だが、諦めようが諦めまいとしょせん同じことよ。」

ゾーマ「貴様らのことはワシが後世に語り継いでやろう。さらばだ!!!」

勇者「くそーーー!!」

賢者「(ここまでなの!?みんなごめん!)」



『待てぇぇ!!!!』

玉座の間に力強い声が響いた。

467: 2013/01/24(木) 15:17:10.36 ID:vJL3bhQAO

?「賢者の石よ!仲間の傷を癒せ!」バッ

パァーー!

光が勇者達に降り注ぎ、全員の傷が治った。


ゾーマ「誰だ?貴様?人間か。」

?「勇者、まだ諦めちゃだめだよ!あなたはまだ生きてるでしょ。」

?「戦士、見違えちゃったよ。かっこいいね。ちょいセクシーだし。」

?「武闘家、逞しくなっちゃってー!もう私より強そうじゃん!」

?「賢者、、頑張ったね。賢者姿がかっこいいよね!幼馴染みとして自慢だね!えへへ!」

勇者「あ、まさかその声は...」
戦士「来てくれたんだね。」

武闘家「あ、ああ!」ウルウル

賢者「武闘家ぁ!!!」


以前、パーティーから離脱した元武闘家があらわれた

468: 2013/01/24(木) 15:31:25.79 ID:vJL3bhQAO

?「へっへー!来ちゃった。またみんなで戦いたくてさ。」

?「私も旅人をしながら修行したんだ。みんなの力になれるようにね。」ブツブツ

?「聖なる光よ。みんなを守れ『フバーハ』」パァー

勇者達の前に光のカーテンがあらわれた

賢者「フバーハ?まさかあなた。僧侶に?」

僧侶「ピンポーン!大当たり!」

勇者「僧侶に?すごいじゃん、魔法を使えるようになったんだね。」

僧侶「旅をしながら一生懸命ね。今わたしができるのはこれかなって。」

武闘家「また会えてよかったですぅ。僧侶さぁん~!」ホロポロ

僧侶「おーよしよし。泣かない泣かない。」

戦士「おかえりなさい。僧侶。」

僧侶「ただいま。えへへ。」

469: 2013/01/24(木) 15:40:00.16 ID:vJL3bhQAO
賢者「あなたも頑張ってたんだね。よく来てくれたね、危なかったもん。」

僧侶「うん。ギリギリセーフね。あと....」クル


ゾーマ「感動の再会というやつか。だが人間が1人来ようが何も変わらぬ!」

僧侶「果たしてそっかなぁ。」

ゾーマ「なに?」

僧侶「強がっていられんのも今のうちさ!ハッ!」シュン

ゾーマ「速い!」キョロキョロ

僧侶「光の玉だー!受けてみろー!」

僧侶は光の玉でゾーマを照らした。


470: 2013/01/24(木) 15:53:08.37 ID:vJL3bhQAO

ピカーーーーーー!!
光の玉が辺りをすべて明るく照らした。

勇者「うっ、眩しい!」

賢者「目が!くらんで。」


ゾーマ「こっ!この光はぁ~!まさか!ぬわああああ~!」ギュン

ゾーマ「き、貴様がなぜこの玉を!信じられぬ。」ギュン

ゾーマが光に照らされ、ゾーマの体を覆っていた闇の衣をはぎ取った。
ゾーマのマホカンタが解けた。


僧侶「よしやったぜ!大成功~!」グッ

僧侶「勇者!あとは頼むよ!ゾーマはこれで弱体化したよ。」

ゾーマ「おのれ小娘ぇ!貴様から葬ってやるわ!があああぁぁーー!」シュゴー

471: 2013/01/24(木) 16:04:24.40 ID:vJL3bhQAO

ゾーマは輝く息を吐いた。

僧侶「なんの!」バシッ

僧侶「やああああ!」グググ

ゾーマ「なに!?フバーハごときにワシの息が効かぬとは。」

賢者「今ならゾーマに勝てる!みんな、一気に攻撃よ!」

武闘家「戦士、お願い!」パチ

戦士「(了解よ)」ブツブツ

戦士「精霊よ!武闘家に力を『バイキルト』!」パァ

戦士はバイキルトを唱えた
武闘家の攻撃力が上がった

武闘家「でやぁぁぁーー!」

ズドドドーン!

ゾーマ「ぐぉあああ!」ブシュウ

武闘家の攻撃
会心の一撃
ゾーマに極大ダメージを与えた

賢者「勇者ー!行って~!」ブツブツ

472: 2013/01/24(木) 16:18:36.19 ID:vJL3bhQAO

賢者「地の精霊よ、我らを乗せよ『ピオリム』」ヒュン

賢者はピオリムを唱えた
全員の素早さが上がった

ゾーマ「ぬうう。ちょこまかと。氏ねい勇者!」ブン

ゾーマの攻撃
勇者はゾーマの攻撃を避けた

勇者「ゾーマ!がら空きだぞー!食らえー!王者の剣!」グォ

ズシャアアアア!!

ゾーマ「ぬあああああ!あ、あ、人間めぇぇ!」ガク

勇者の攻撃
会心の一撃
ゾーマに極大ダメージを与えた

ゾーマ「こ、凍りつけぇ!!『マヒャド』!!」ピキーン

賢者「!?」

賢者「戦士!武闘家!いくよ!」ブツブツ

473: 2013/01/24(木) 16:29:57.96 ID:vJL3bhQAO

武闘家「はい!」ブツブツ

戦士「わかったわ!」ブツブツ


賢・武・戦「燃えさかれ火球よー!!」

『『『メラゾーマ』』』

ズゴオオオオオオオ!!

3人の指先から発したメラゾーマが合体し、ゾーマのマヒャドを一瞬で消し去り、ゾーマに向かい飛んでいく。

ゾーマ「ワシのマヒャドが消され....う、うぎゃああぁぁー!」




ドサッ………

474: 2013/01/24(木) 16:49:21.54 ID:vJL3bhQAO

勇者「や、やったの?」ハァハァ

僧侶「メラゾーマ3つ分って凄まじいねぇ。」

武闘家「そういえば私、メラゾーマは初めて使いました。」

賢者「あ、そうなの?って私も初めてかも、あはは。」

戦士「よくまあ、息が合ったわね...」


ゾーマ「ぐ、まさかな。ワシが人間などにやられるとは。」ピク

勇者「私もまさか倒せるとは思わなかった。でも人間を甘く見た報いだ。」


ゾーマ「くっ、ふふふ。勇者よ…。よくぞワシを倒した。」


ゾーマ「だが光あるかぎり闇も またある…。」


ゾーマ「ワシには見えるのだ。再び何者かが闇から現れよう。」


勇者「………」ブツブツ


ゾーマ「だが、その時はお前は年老いていきて....」


ピカッ!
ビシャアアアーー!


ゾーマ「ぐはぁあああ!!」バタッ


勇者「あんたの負け惜しみなんて聞きたくないよ。眠ってくれ、大魔王ゾーマ。」

大魔王ゾーマをたおした

戦士「相変わらず容赦ないわね.....」

475: 2013/01/24(木) 17:02:44.14 ID:vJL3bhQAO

勇者「さーて。なんとか大魔王も倒せたことだし。」

勇者「帰ろっかー!!」

全員「うん!!」


僧侶「それにしてもさ、勇者。なんであなたって、光の玉とか賢者の石とか忘れてるわけ?」

勇者「へ?」

僧侶「私の道具袋に入ってたんですけどねぇ。」イライラ

勇者「あ、あはははは!忘れちゃった。」

僧・武・戦・賢「はあ~...」


賢者「じゃあとにかく地上に出て、ラダトームに戻ろう。ね。」

武闘家「そうですね。早くみなさんに報告しないと。」


戦士「急がなくてもよさそうよ。」

勇者「えっ?」

476: 2013/01/24(木) 17:15:44.79 ID:vJL3bhQAO

戦士は勇者のライデインやギガデインで天井に開いた穴を見上げていた。

すると、暗いはずの空から明るい日射しが覗いていたのだ。

ゾーマを倒したことによりアレフガルドにかかっていた呪いが解けたのだ。


僧侶「ほんとだ~!明るくなってる!よかったね~!」ニコニコ

勇者「これでみんな喜んでくれるね。胸を張って帰ろう!」

武闘家「よかったよぉ。本当によかったよぉ。ひぐっひぐっ」

戦士「また泣くー!嬉しいのはわかるけど。みっともないわよ。」

賢者「(これで終わるのか、私の旅も....今はそれでいいよね)」


勇者達はラダトームに戻った

480: 2013/01/24(木) 17:53:59.97 ID:vJL3bhQAO
エピローグ


勇者達が大魔王ゾーマを倒して3ヶ月が過ぎた。アレフガルドにも朝が来るようになり、人々も活気を取り戻しつつあった。

ロトの称号を得た勇者は、しばらくはラダトーム城にてその栄誉を称えられ、外出もできない状態だった。

そんな状況に嫌気がさした勇者はある時、城を抜け出し流浪の旅人となった。

上の世界と下の世界を自由に行き来し、時には仲間に会いに行くなど気ままな生活を送っていた。

481: 2013/01/24(木) 18:07:12.29 ID:vJL3bhQAO

大魔王を倒した勇者の仲間達は各々、故郷に帰るもの、新天地で暮らすもの、様々であった。

武闘家は元々の読書好きが高じて、ラダトーム城の図書館にて
司書になるため先輩司書の指導のもと、勉強をしているという。
彼女曰く「戦いよりも落ち着いて読書をした方が性に合ってる」とのことだ。

戦士は自分の故郷であるレーベの村にて、年老いた師匠に代わり
魔法教室を開業したようだ。彼女曰く「戦士の格好じゃ風邪引いちゃう」とのこと。

482: 2013/01/24(木) 18:31:43.50 ID:vJL3bhQAO

一方、僧侶はあっさりと武闘家に戻り、アリアハンの自分の母
が師範をつとめる武術道場で師範代として乱暴な活躍をしていた。
彼女曰く「1人旅は一生したくない。1人じゃつまらないしね」と話した。


そして賢者。彼女は悩みに悩んで賢者ではなく再び商人
になることを選んだ。自分が作り上げたホープバークにて自分
の道具屋を開業したのだ。

ホープバークの町民は商人の復帰を心から歓迎した。
彼女は本当の意味でホープバークの仲間になったのだった。



そんなある日、勇者はホープバークに立ち寄った。

483: 2013/01/24(木) 21:50:19.97 ID:IBwmxln70
ホープバーク 商人の店


商人「ふむふむ~。ポルトガの物価が急騰ねー。どこもかしこも不況なのは変わらないのねぇ。」

商人「とりあえずここは不況の煽りは受けていないみたいだけど。」ブツブツ


勇者「よっ!商人儲かってる~?」ヒョイ

商人「うわ!びっくりした!なんだ、勇者か~。」

勇者「なんだ、はないでしょ。人がちょくちょく来てあげてるのに。」

商人「ふふふ、ごめんごめん。で、今日はどうしたの?」

勇者「は?…………ブツブツ(ギラの詠唱)」

商人「え、あ!ああ!そうか。チョコね、チョコ。」アセアセ

勇者「今。素で忘れてたよね?」ジロ

商人「あはは。ごめん。」シュン




484: 2013/01/24(木) 22:06:43.33 ID:IBwmxln70

商人「なにせここのところ、世界中から色んな商品を仕入れてるからその整理に追われててね~。」ゴソゴソ

勇者「そうだよね。商人忙しいもんね。賢者やってた時より忙しいんじゃない?」

商人「うん、そうかもね。ええと、あったあった!はい。」トン

商人はカウンターに小さいダンボール箱を置いた。

勇者「これね。たしかにお預かりします、っと。」

商人「どう?前回の時もあの子喜んでくれてた?」

勇者「うん、そりゃもう大喜びでさ。あの子、『お姉ちゃん、届けてくれたお礼だよ。』って
私にも一箱丸々くれたんだよ。」

商人「そっか.....喜んでくれてるんだ。よかった。」

勇者「いいの?毎回毎回。あのチョコはポルトガの高いチョコなんでしょ?」

商人「まあね。あの子には感謝してるんだ。あの時にあの子が私に声をかけてくれなか
ったら、あの男のことを追うことができなかっただろうしね。」

勇者「……………」

商人「でなければ賢者としての私はそこで終わってたかもしれなかったから。」


485: 2013/01/24(木) 22:17:25.12 ID:IBwmxln70

勇者「そうそう。この前レーベに行った時にね魔法使いがね、ふと思い出してたように
言ってたんだけどさ。」

商人「なになに?」

勇者「ゾーマの城でさ玉座の裏の階段を商人が見つけたじゃない。なんでわかったのかな~って。」

商人「ああ~あれね。大したことないんだけど。」

商人「私がここでイ工口ーオーブをさ家の庭に隠してたんだけど、あれね本当は町長の家のあの椅子の裏に
隠そうと思ってたんだよ。

商人「なんか隠すにはちょうどいいかなって。ただおじいちゃんや青年さんいたしムリだったから。」

勇者「ああー!そういうことなんだ。自分の経験上ってことか。納得。」

商人「ぜんぜん企業秘密じゃないよねぇ、えへへ。」


487: 2013/01/24(木) 22:28:52.10 ID:IBwmxln70

商人「僧侶もさ、今は司書さんとしてがんばってるんでしょ?」

勇者「まだ、司書のタマゴみたいだけどねぇ。」

勇者「あ、そうだ。なんかね次の休みの日にここに来たいって言ってたよ。」

商人「あ!そうなの?嬉しいなぁ楽しみー。」ワクワク

勇者「なんでも『商人さんの手作り野菜スープが食べたいんです~』だって。」

商人「ふ~んじゃあ腕によりをかけて作らなきゃね。案外大食いだよね僧侶。」

勇者「あれで太らないんだもん、羨ましいったらないない!」

商人「同感!あはは~。」

488: 2013/01/24(木) 22:40:44.19 ID:IBwmxln70

商人「そうだ!勇者。聞いてよ。武闘家が最近やたら暇だ暇だって言って遊びに来るんだよ。」

勇者「え、いいことじゃないの?」

商人「良くないよ!だって毎晩だよ!」

勇者「え?毎晩?それはまた極端な....」

商人「夕飯食べに来たよーって。私の家は食堂じゃないってのに。」

勇者「たぶん、武闘家は寂しいんじゃないの?幼馴染が離れて暮らしてるから。」

商人「そういうもんなのかなぁ。」

勇者「あれ?そういえばどうやって来てるの?毎晩。ルーラ使えないよね?」

商人「はぁ...レーベに行って魔法使いに、無理やり教えてもらったんだって。」

勇者「あ、そうなんだ、はは....」

489: 2013/01/24(木) 22:57:18.15 ID:IBwmxln70

勇者「あ、ねえ商人~~。」ニヤニヤ

商人「な、なによ、その怪しい目つきは。」

勇者「青年くんとはどうなったのさ?」ウリウリ

商人「え!あ、ああ。あの、まあまあよ。」タジタジ

勇者「なにそれ、まあまあって。」ニタニタ

商人「ま、まあ、たまにだけど一緒にご飯食べに行ったりとかはするかなぁ。」

勇者「思いっきりデートじゃない!パチパチパチパチ!」

商人「わーー!声が大きいよ勇者。恥ずかしいよ。」

勇者「でもよかったね。なんか商人が嬉しそうにしてるの見ると私も嬉しいもん。」

商人「あ、ありがとね。私も勇者と仲間になれて嬉しいよ。」

勇者「う~~。もう旅は終わったんだから『友達』ってのがいいかなぁ。」

商人「私達は『仲間』で『友達』ってやつかな。これからも、ね。」

勇者「そうだね。………ってそろそろ行かなくちゃ。ごめんね長話して。」

商人「ううん。来てくれてありがとう。じゃあチョコのお届けお願いね。」ニコッ

勇者「りょうか~い!じゃあ商人、青年くんとお幸せにね~」ニヤニヤ

商人「ブツブツブツブツ(イオラの詠唱)」ムッ

勇者「あははー!ごめんごめん。それじゃーね商人!!」バイバイ


商人「(ありがとう。)」

490: 2013/01/24(木) 23:04:54.30 ID:IBwmxln70

勇者は商人に託されたチョコレートの箱を大事に抱えて
店をあとにした。すると前から見慣れた老人と青年が歩いてきた。
勇者は軽く二人と挨拶し、別れた。

二人が商人の店に入っていくと商人の明るい元気な声が町に響いた。



「いらっしゃいませーーー!!!」


ホープバークは今日も平和だった





おしまい

491: 2013/01/24(木) 23:12:43.64 ID:IBwmxln70
物語終了時の各キャラのレベルと職業
(レベルは最終の一つ前の職業でのレベル)


【勇者♀】
転職歴なし
Lv.50

【武闘家♀】
武闘家→僧侶→武闘家
Lv.30

【司書♀】
僧侶→賢者→武闘家→司書(書類上では僧侶登録)
Lv.44

【魔法使い♀】
魔法使い→僧侶→戦士→魔法使い
Lv.43

【商人♀】
商人→賢者→商人
Lv.38


492: 2013/01/24(木) 23:15:47.67 ID:IBwmxln70
みなさま。ようやく書き終えることができました!
根気良く読んでくれた方、本当にありがとうございました!

初めてのSSでしたが、楽しく書くことができました。
次回作の構想は特にないですが、希望があれば書いてください。
(スピンオフはアリかな?)

では。

496: 2013/01/25(金) 00:15:16.47

アレフガルドで仲間と町を作るのかと思ってた。

引用元: 女商人「やっと私の出番ね」ルイーダ「あ、登録しただけよ」女商人「えっ?」