1: 2012/05/24(木) 17:27:56.75 ID:0/6Qciv60
これは鎌倉時代の話。

あるところにPという僧がいた。

P「はーマジ修行辛いわー」

P「ていうか、師匠も俺のこと呼んでなにさせるつもりだよ」

高木「お、君ィ!遅いじゃないか。待ちくたびれたぞ」

P「これは申し訳ありません」

P(てめぇがこんなクソど田舎に住んでるからだろ)

P(麓の村から歩いて五時間だぞ?)

P(いくら修行と言ってももうちょっと来やすいところでやれよ)

高木「ん?なにか言ったかね?」

P「いえいえ。なにも言ってません」

高木「そうか。それでは、早速本題に入ろうか」

3: 2012/05/24(木) 17:33:53.92 ID:0/6Qciv60
高木「いやー、実は君に頼みたい事があるんだ」

P「はあ、なんでしょうか?」

高木「他の人に言ってはいかんよ?」

P「わかりました」

P(さっさと言えよ)

高木「私には弟子がたくさんいるが、君のことを特に信頼している」

P「ありがとうございます」

高木「私の頼みを決して断らないでくれたまえ」

P「はあ……」

P(本題はまだかよ)

4: 2012/05/24(木) 17:38:34.60 ID:0/6Qciv60
高木「約束してくれるかね?」

P「約束します」

P(早く帰りてぇよ……)

高木「ありがとう!本当にありがとう!君にしか頼めないことなんだ!」

高木「律子君に頼んだら、蛆虫を見るような目で見られてしまうからな」

P「それで、頼みごととは?」

高木「うむ。妻が欲しい」

P「は?」

高木「妻が欲しいと言ったんだよ!」

P「…………」

5: 2012/05/24(木) 17:46:31.39 ID:0/6Qciv60
P「何を言ってらっしゃるんですか?」

高木「君も知っての通り私は徳の高い僧として有名だから、寄付で暮らしている」

高木「それなのに妻が欲しいなんて言うのはおこがましいと分かっている」

高木「しかし、ぶっちゃけ寂しすぎるのだ」

高木「こんな山奥で一人で氏んでくなんて嫌なのだよ」

P(なんて突っ込めばいいんだ)

高木「いや、若くてピチピチな女性じゃなくていいんだがね?」

P「氏にかけた婆さんなら嫁に来てくれるんじゃないですか?」

高木「…………」

P「師匠?」

高木「そこはその……夜の相手をして欲しいからね……」

6: 2012/05/24(木) 17:52:41.46 ID:0/6Qciv60
P(マジかよ……俺、結構この人のこと尊敬してたのに)

P(破戒僧になっちまうのかよ……)

P(でも、約束しちゃったしなぁ……)

P「…………」

高木「確かにこれはよくないことだ」

高木「しかしね、私も疲れたのだよ」

高木「朝から晩までXXXXする生活がしてみたいのだ」

P(こいつ、真顔でゲスいこと言ってんじゃねぇよ)

高木「君が悩む気持ちはよく分かる」

高木「仮にも私は師匠なのだからな」

7: 2012/05/24(木) 17:56:28.99 ID:0/6Qciv60
高木「師匠が道を踏み外しそうになってるのだから、弟子ならば止めるべきだ」

P「それはそうですが……」

高木「しかし、なにも言わずに頼みを聞いてくれ!」

高木「もちろん、ただとは言わない」

P「…………」ピクッ

高木「私の頼みごとを聞いてくれたら……」

P「聞いたら?」

高木「ここを君にやろう」

P「!?」

P「本当ですか!?」

10: 2012/05/24(木) 18:04:55.36 ID:0/6Qciv60
P(ここはクソ田舎だが、寺としてはかなり立派だ)

P(氏にかけのこいつに女を探してくるだけでここの住職になれるなんて……)

P(これはチャンスかもしれない)

P「師匠はどうなさるのですか?」

高木「私は女性とこの寺の奥で隠居生活を送る」

高木「食事さえ用意してくれれば、後は自分でやる」

高木「君もこんな破戒僧とは顔を合わせたくないだろうからな」

高木「そして、君はここの住職となってくれ」

P「…………」

P(いいことずくめじゃないか)

11: 2012/05/24(木) 18:11:17.83 ID:0/6Qciv60
P(この氏に損ないに適当な女を探すだけだ)

P(たった、それだけでこんな出世できるなんて最高だぜ!)

高木「頼む!後は氏ぬだけの老いぼれの頼みを聞いてくれ!」

P「わかりました。やりましょう」

高木「本当かね!君!」

P「ええ。俺はもう何も言いません」

P「妻になってくれる人を探してきましょう」

高木「ありがとう!ありがとう!」


12: 2012/05/24(木) 18:15:37.81 ID:0/6Qciv60




P(しかし、どうしようか)

P(あんな男の妻になる女なんているのか?)

P(春香なら土下座すればなってくれるかな?)

P「そうだ!いい人がいるじゃないか!」.


14: 2012/05/24(木) 18:21:30.00 ID:0/6Qciv60




小鳥「…………」

P「お願いしますよ!」

小鳥「なんで、私なんですか?」

P「だって年配の人って師匠が……」

小鳥「私はまだ30になってないですよ?」

P「ええ、知ってますけど」

P「それが何か?」

小鳥「全然年配じゃないですよ!」

P「この時代で三十はもう婆って呼ばれる年ですよ?」

小鳥「原文では40の人って書いてありますよ!」

P「チッ……アイドルよりは近いだろ?」



15: 2012/05/24(木) 18:26:53.96 ID:0/6Qciv60
小鳥「そういう問題じゃ……」

P「とにかく、お願いします!」

P「俺の出世がかかってるんです!」

P「それに、あの人はもうすぐ氏にますから」

P「氏んだら俺が結婚してあげますから、ね?」

小鳥「本当ですか!?」

P「ええ。もちろん」

小鳥「わかりました。その話受けましょう」

P(XXXXされるとは思ってないだろうな、かわいそうに)

小鳥「ピヨーッ!ついに私にも貰い手が!」




16: 2012/05/24(木) 18:31:40.68 ID:0/6Qciv60
_____それから6年後





P「あの二人どうしてんのかな?」

P「飯は食ってるから、まだ生きてるんだろうけど」

P「小鳥にはすぐ氏ぬって言ったけど、なかなかしぶといな」

P「そろそろ使い古されてガバガバになってるころかな」

P「覗きに行きたいけど、なんか行きにくいな」


18: 2012/05/24(木) 18:36:09.07 ID:0/6Qciv60
ガタッ

小鳥「グスッ……」

P「う、うわあああああああ!?」

P「ってなんだ。音無さんか」

P「久しぶりですね」

小鳥「……ヒッグ……」

P「どうして泣いてるんですか?変態プレイに耐えきれなくなったんですか?」

小鳥「ち、違います!」

P「じゃあどうして?」

小鳥「あの人がなくなったからです!」

19: 2012/05/24(木) 18:41:57.85 ID:0/6Qciv60
P「ついに氏にましたか!あの野郎!」

P「へっ、ざまあみろ!バチが当たったんだ!」

P「高僧のくせにズゴバコしやがって!」

P(もしかして、腹上氏かな?)

P(よし、クソ野郎の氏に様を拝んでやろう)

P「師匠ー!」タタッ

P「って、あれ?」

P「おかしいな。念仏あげてるときと同じ姿だ」

P「それに、ズコバコしてたにしては中はあまり汚れてない」

20: 2012/05/24(木) 18:47:43.04 ID:0/6Qciv60
小鳥「あの人は私に指一本触れませんでした」

P「え?そんなはずはない!」

P「あの人は、出世したければ俺に生贄を寄越せ、って言ったんだ!」

小鳥「私は生贄だったんですか!?」

P「まあ、それはおいといて」

P「じゃあ、一体なにしてたんですか?」

小鳥「あの人は仏の素晴らしさを私に教えてくれたのです」

小鳥「自分が氏ぬ前に一人でも多くの人に仏の教えを知ってほしいって……」

小鳥「毎日、一緒にお経を唱えていました」

小鳥「あの人はと、とても素晴らしい人だったんです……うぅ……」

21: 2012/05/24(木) 18:52:52.09 ID:0/6Qciv60
P「そんな……」

P「禁欲生活のしすぎでぶっ壊れたと思ってたのに……」

P「まさか、俺に嘘をついてまで教えを広めようとしたなんて……」

小鳥「ところで、私と結婚してくれるんですよね?」

P「くそっ!俺はなんて思い違いをしていたんだろう!」

小鳥「ねえ?聞いてます?」

P「やっぱり、あの人はやっぱり凄い人だったんだ!」

小鳥「責任取ってください!」

P「師匠!ごめんなさい!これから、俺、がんばりますから!」

小鳥「ねえってばー!」





「発心集」より

31: 2012/05/24(木) 19:39:02.42 ID:0/6Qciv60
あるところにPという盗賊の首領がいた。

P「そろそろ、秋になって寒くなってきたな」

P「金持ちを頃して服を奪うとするか」

P「どっかにいねぇかな、良さげな服着てる貴族とか……」

P「まあ、そう簡単にいったら苦労しなくて済むんだけどな」

P「ん?どっかから笛の音が……」

P「笛を吹いてるのはあいつか」

P「チッ……あんなにたくさん服を着やがって」

P「これだから貴族ってやつは」

P「女みたいに細いから、余裕だな」

33: 2012/05/24(木) 19:47:10.96 ID:0/6Qciv60
P「俺に服を盗んで下さいって言ってるようなもんだ」

P「これも、俺の日頃の行いがいいからだろうな」

P「よし、後ろから走って襲いかかろう」

真「…………」ピーヒャラー

P「…………!?」ゾクッ

P「なんだ、この感じ!?嫌な予感がする!」

P「見かけによらず、かなりの使い手ってことか……」

P「とりあえず、ストーキングして様子を見よう」


34: 2012/05/24(木) 19:56:55.17 ID:0/6Qciv60
P「……」テクテク

真「……」ピーヒャラー

P「2、300メートルぐらいついて来たが……」

P「俺のストーキングに気づいてないのか?」

P「やっぱり勘違いか」

P「あんな細くて鍛えてるはずはないからな」

P「よし、後ろからズバッと殺っちまうか」

P「……」タタタッ

真「……」クルッ

P(コイツッ!?全く動揺してない?)

P(笛の音も乱れていない!)

P(これは逆にやられる!?)

P「……」タッタッタ

38: 2012/05/24(木) 20:04:32.48 ID:0/6Qciv60
P(ついランニングしてる人の真似をしてしまったが)

P(俺はあいつに勝てないのか?)

P(いや、行ける。もう一度襲おう)

P「……氏ねッ!」

P(こいつは丸腰だ。刀で切りかかればッ……!)

真「…………」

真「……お前は何者だ?」

P(笛を……吹くのをやめた……)

P「!?」

P(か、体がう、動かないだと?)

P(なんなんだ?なんだよ?なんだよ、これ!?」)

P(女みたいな顔をしやがってるくせに!?)

真「……何の用だ?」


40: 2012/05/24(木) 20:12:24.65 ID:0/6Qciv60
P「あ、あ、足が……」

P(ど、ど、どうして立っていられないんだッ!?)

P(くそッ!こいつ俺になにをしたんだ!?)

P(……)

P(……ああ)

P(俺もここまでか……)

P「俺は……」

P「俺は……盗人です……」


42: 2012/05/24(木) 20:16:51.50 ID:0/6Qciv60
真「……お前の名前は?」

P「……Pです」

真「そうか……お前が最近世間を騒がせているPか……」

真「僕も噂は聞いている……」

真「まったく、危ない真似をするやつだ」

真「……そうだ!いいことを思いついた!」

真「お前、僕についてこい!」

P(…………とうとう俺もお縄か……)

P(短い人生だったな……)

43: 2012/05/24(木) 20:22:15.39 ID:0/6Qciv60
P「…………」トボトボ

真「…………」ピーヒャラー

P「…………」トボトボ

真「…………ピーヒャラー

P(こいつ俺が後ろにいるのに呑気に笛なんか吹きやがって……)

P(普通の貴族は俺を見た途端に逃げ出すのに……)

真「ついたぞ。お前は少しここで待っていろ」

P「ここは……」

真「ここは僕の家だ」

P(菊地真って書いてあるな……)

44: 2012/05/24(木) 20:28:37.45 ID:0/6Qciv60
真「よし、中に入れ!」

P「……はい」

真「お前!着る服がないからこんなことするのか!」

P「……は、はい。面目ないです……」

真「……そうか……」

真「お、お前にこれをやるよっ!」

P「これは……!」

P(貴族が着る服じゃないか!こんな立派なのをやすやすとくれるなんて!)

真「そ、それはぼ、ぼ、僕の服だ!!」

真「た、大切にしろよ!」

真「あと一般人を襲うのはやめろ!」

真「服に困ったらうちに来い」

真「ぼ、僕の服ならいくらでもやるからさ……」


46: 2012/05/24(木) 20:35:15.07 ID:0/6Qciv60
後に捕まったPはこの時のことをこう語る。

P「ええ、俺も貴族なら余裕でぶっ殺せるって思ってた時期がありました」

P「でも、あの人は違いましたね」

P「なんか、気迫っていうか、凄みっていうか」

P「こっちを圧倒するパワーのようなものを感じました」

P「名の知れた俺ですらこうでしたからね」

P「あの人に勝てる人間なんていないと思います」

P「しかもね、ただ強いだけじゃなくて優しい人でした」

P「あんな身分の高い人なのに、俺みたいな下々のものに服をくれるなんて」

P「正直、男として憧れちゃいましたね」

47: 2012/05/24(木) 20:42:01.70 ID:0/6Qciv60



P「う、ううぅ…….ぐすっ……ありがとうございます……」

真「バ、バカ!男が泣くんじゃない!」

P「す、すみません。つい、嬉しくて」

真「寒いのは誰だって辛いもんな……」

P「ありがとうございます…………」

真「これに懲りたら、もう人を襲うのはやめろよ?」

P「は、はい。もうしません!」

真「へへっ!それならいいんだ!」

P「本当に……本当にありがとうございました!旦那!」

真「おいッ!僕は女の子だッ!!」




「宇治拾遺物語」より


49: 2012/05/24(木) 20:45:57.62 ID:0/6Qciv60
この話のタイトルは保昌と袴垂です

有名な話なのでだいたいの人が知ってると思いますが

次も保昌の話です

52: 2012/05/24(木) 21:01:44.53 ID:0/6Qciv60
真「よし、明日は鹿狩りしよう」

雪歩「えー!かわいそうだよ!」

真「どうして?」

雪歩「だってバンビだよ?」

雪歩「あんなに目がクリクリしてて可愛い動物は他にいないよ?」

雪歩「それなのに遊びで頃しちゃうの?」

真「久しぶりに体を動かしたいなぁ」

雪歩「運動なら蹴鞠とかもあるよ?」

真「えー。でも、みんな集めちゃったし」

真「これで、鹿狩りしないなんて言ったら、文句言われちゃうよ?」


55: 2012/05/24(木) 21:12:30.88 ID:0/6Qciv60
雪歩「真ちゃん!耳を澄ませて!」

真「耳?」

?「エーン…………エーン」

雪歩「ほら、聞こえるでしょ?」

真「うん、聞こえるね。なんか、赤ちゃんの泣き声みたい」

真「あれは何なの?」

雪歩「あれが鹿の鳴き声だよ!」

真「あれが!?」

真「鹿ってあんな声で鳴くんだ……」

真「知らなかった……」

57: 2012/05/24(木) 21:21:46.60 ID:0/6Qciv60
雪歩「ああ、美希が赤ちゃんだった頃を思い出すなぁ」

雪歩「あの頃の美希は可愛かったな……」

真「確かにこんな声で鳴かれたら、かわいそうかもね」

真「でも、ここまで来て鹿狩りやめたら僕の評判落ちちゃうし……」

真「そうだ!雪歩が和歌を詠めば良いんだよ!」

雪歩「和歌?」

真「平安時代は和歌がうまけりゃどうにでもなる時代なんだよ!」

真「雪歩がやってる役の人は女流歌人として有名だったからね!」

雪歩「でも、私は和歌なんて詠めないよぅ……」

真「大丈夫!詠んだフリすればいいだけだから」




58: 2012/05/24(木) 21:27:17.45 ID:0/6Qciv60
真「じゃあ、僕に合わせてね」

雪歩「う……うん……」

真「ごほん。おいっ!雪歩ッ!」

雪歩「は、はい!」

真「女のくせに男がやることに口を出すなッ!」

雪歩「ひっ!す、す、すみません!」

雪歩(あれ、さっき真ちゃん、自分が女だって主張してなかったっけ?)

真「鹿がかわいそうとか、わけわかんないことを言いやがって」

真「まったく、これだから女は……」

雪歩「すみません……」


60: 2012/05/24(木) 21:34:32.25 ID:0/6Qciv60
真「おい!歌を詠め!」

雪歩「へ?」

真「もし、感動的な歌が詠めたら明日の鹿狩りはやめてやる!」

真「皆の者!それでいいか!?」

モブA「おおー!あの雪歩様の歌が聞けるのか」

モブB「さぞかし、凄い歌をお詠みになられるのだろうな!」

雪歩「」

61: 2012/05/24(木) 21:45:35.59 ID:0/6Qciv60
雪歩「…………」

雪歩(大丈夫だよね?)

雪歩(歌番組見たく口パクでいいんだよね?)

雪歩「ことわりやいかでか鹿の鳴かざらむ今宵ばかりの命と思へば」

モブA「凄い!さすがだ!」

モブB「鹿の哀しさが伝わってくるぞ!」

雪歩(真ちゃん。どうなの?この歌?)ヒソヒソ

真(僕に聞かないでよ……)

真(でも、モブの人たちに受けてるからいいんじゃないの?)

真「オホン!なんと素晴らしい歌だろうか!」


62: 2012/05/24(木) 21:49:27.74 ID:0/6Qciv60
真「こんな歌を詠まれては明日の鹿狩りはやめるしかないな!皆のもの、良いか!?」

モブ「おー!」





スタッフ「お疲れさまでしたー!」

真「お疲れさまでした!」

雪歩「お、お疲れさまでした……」

雪歩「はあ……この仕事、次来たら断ろう……」

真「えー、雪歩には平安時代とかが似合ってると思うけどなー」

雪歩「わ、私はちんちくりんだけどおかめじゃない!……と、思うよ?」

66: 2012/05/24(木) 21:59:57.39 ID:0/6Qciv60
真「違う、違う。外見的なことじゃないよ」

雪歩「じゃあ、どうして?」

真「雪歩の趣味は詩だからね!」

真「きっと平安時代ならモテモテだよ」

雪歩「あははは……そうだね……」

雪歩(真ちゃんには見せられないよ……)





「古本説話集」より

69: 2012/05/24(木) 22:11:00.63 ID:0/6Qciv60
美希「なんなの?この手紙?」

美希「なになに、歌合があるから来い、って書いてあるの」

美希「美希はこんなの行きたくないな」

美希「P!お前美希の代わりに行ってくるの!」

P「恐れながら、私のようなな身分の低い者が参加を許されるようなものではないのです」

P「それに最近良からぬ噂が立っておりますゆえ、参加されたほうがよろしいかと」

美希「噂ってなに?」

P「……」

美希「早く言えなの!」

P「それは……美希様が卑怯な手を使ってるのでは、という噂です」

72: 2012/05/24(木) 22:44:50.82 ID:0/6Qciv60
美希「卑怯な手って?」

P「雪歩様が美希様の代わりに歌を詠んでいるということです」

美希「そんなわけないの!」

美希「お母様の歌より美希の歌のほうが凄いの!」

美希「そんなこと言うやつはきっと美希の才能をひがんでるだけなの!!」

美希「誰なの!?そんなこと言ってるのは!?」

P「はあ、噂でございますからわかりかねます」

P「しかし、今回はおそらく良い機会になります」

P「今回の歌合で美希様のセンスを見せつければよろしいのです」

美希「あ、そういえば、今はお母様は丹後に行ってしまってるの」

74: 2012/05/24(木) 22:46:13.37 ID:0/6Qciv60
P「ええ、ですから、歌合で皆が納得する歌を詠めばそんな噂も消えるでしょう」

美希「わかったの!美希の凄さを皆に見せつけてやるの!」



黒井「おやおや、萩原雪歩の娘の美希じゃないか」

黒井「母親同伴じゃないのによく出てこれたな?」

美希「ふん!」

黒井「さては、丹後の母親に使者でも送って聞いてるのか?」

黒井「どうだ?使者は帰って来たか?」

美希「美希はそんなことしないの!」

黒井「ふっ、低レベルな歌でも詠んで評判を下げればいい」

黒井「親が優秀でも娘には才能がないことを皆に知らしめるだけだがな」

75: 2012/05/24(木) 22:50:02.75 ID:0/6Qciv60
美希「……」

黒井「どうした?正論すぎて言い返せないか?」

黒井「それとも、歌どころか言葉も満足に話せないのかね?」

美希「……大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天橋立」

黒井「……!」

黒井「こ、こいつ!」


黒井(なんて歌を詠むんだッ!?)

78: 2012/05/24(木) 23:01:51.25 ID:0/6Qciv60
黒井(行く野と生野、文と踏みを掛けているッ!?)

黒井(しかも、踏みは天橋立の橋との縁語だ)

美希(説明うざいの)

黒井(まさか、この一瞬でここまでの歌を詠むとはッ!?)

黒井(やはり天才か……)

黒井(しかしッ!詠まれっぱなしでは負ける!)

黒井(でも、これに釣り合うレベルの歌を詠めるのか?)

黒井(間に合う?……否……無理……氏……ぬ)

黒井「き、今日のところはこれぐらいにしておいてやる」

黒井「次会う時までに腕を磨いておくのだな」

美希「負け犬の遠吠えなの」

黒井「くっ」

79: 2012/05/24(木) 23:16:51.45 ID:0/6Qciv60
P「これをきっかけに美希様は歌人として認められた」

P「しかし、美希様の戦いはこれからだ!」

美希「なんなの?この打ち切り漫画みたいなの」

P「オチが思いつかなかったんだ」

美希「えー!こんなのってないの!」

P「思いつかなかったんだから仕方がない」

P「小式部内侍は20代という若さで亡くなったと言われている」

P「それなのに、上の歌のような優れた歌を残していることから、早熟の天才だったということが分かるな」

P「ところで、美希は小式部内侍の氏因を知っているか?」

80: 2012/05/24(木) 23:20:27.31 ID:0/6Qciv60

美希「美希はそんなの知らないの」

P「正解は子供を産み落として亡くなったんだ」

美希「…………それってもしかしてオチと掛けてるつもりなの?」

P「…………」

美希「…………」

P「…………」

美希「…………」

P「とっ、というわけでまた来週!さようなら!」

美希「はあ……ハニーにはがっかりなの」




「古今著聞集」より

82: 2012/05/24(木) 23:29:24.40 ID:0/6Qciv60
小式部内侍の話も有名ですよね
この人は和泉式部の娘ですけど保昌の娘じゃないんですね

和泉式部は恋多き女性だったみたいです
親王と恋愛して親に勘当されたりとか
俺はあまり詳しく無いので興味がある方はwikiでも見て下さい

83: 2012/05/24(木) 23:37:47.60 ID:0/6Qciv60
やよい「おはようございますー!」

美希「やよい、おはようなの」

やよい「うっうー!おはようございます!」

やよい「あれー?美希さんはなにを読んでるんですか?」

美希「これ?これは徒然草なの」

やよい「あ、私でも聞いたことあります!」

やよい「徒然草って、どんな話なんですかー?」

美希「一言で言うなら落書きかな?」

美希「授業中にノートとかに書く落書きが一番近いかも」

やよい「えっ……そ、そうなんですか?」


85: 2012/05/24(木) 23:44:58.88 ID:0/6Qciv60
美希「そんな感じなの」

やよい「でも、美希さんが昔の本を読むなんて知りませんでした!」

美希「うん、なんか教育テレビの変な番組に出された時に読んでみたら以外と面白いことに気づいたの」

やよい「面白いんですか!?すごいです……」

美希「美希だって、今まで古文の時間はお昼寝してたから読めないの」

美希「でも、この本は現代語で書いてあるから誰でも読めるの」

やよい「あ、そうなんですか……」

やよい「今はどんな話を読んでるんですか?」

美希「今?」

やよい「はい」


88: 2012/05/24(木) 23:53:45.64 ID:0/6Qciv60
美希「今は名前の話なの」

やよい「名前?」

美希「そう。やよいはキラキラネームって知ってる?」

やよい「あっ、知ってますー!光宙とかですよね?」

美希「そうなの」

美希「この徒然草が書かれたのは鎌倉時代なんだけど、作者は同じようなことを書いてるの」

やよい「なんて、書いてるんですか?」

89: 2012/05/25(金) 00:07:27.71 ID:ERsFFGUd0
美希「昔の人はわかりやすい名前をつけた」

美希「今の奴らは人の名前にも難しい漢字を使う」

美希「カッコつけたがるやつはバカ丸出しだ」

美希「って感じなの」

やよい「すごいです!そんな大昔からキラキラネームはあったんですね!」

美希「いつの時代にも、変にカッコつけたがる人間はいるってことなのかな?」

美希「やよいみたいにシンプルなのが一番なの!」

やよい「うっうー!ありがとうございます!」

やよい「私もお母さんになったら、赤ちゃんに普通の名前をつけてあげます!」

美希「…………」

やよい「あ、あれ?美希さんどうしたんですか?」


92: 2012/05/25(金) 00:12:55.09 ID:ERsFFGUd0
やよい「なんか急に黙っちゃいましたけど……」

やよい「眉間に皺がよってますよ?」

美希「言いにくいの……」

やよい「な、何がですか?」

美希「やよいには無理かもしれないの」

やよい「ど、どうしてそんなこと言うんですか!?」

やよい「私はちゃんとした名前をつけられます!」

美希「だって……」

美希「ポシェットにべろちょろなんて名前をつけるセンスは、子供に光宙ってつけるのと同レベルなの」

やよい「………………」








「徒然草」より

93: 2012/05/25(金) 00:14:13.35
oh…

100: 2012/05/25(金) 00:33:18.48 ID:ERsFFGUd0
P「なんか、最近アイドルたちが古文の勉強してるのを見かけるな」

P「あの番組の仕事をとって来たのがこんな影響を及ぼすとは思わなかった」

P「美希でさえアイドルの活動だけじゃなくて、勉強もしっかりやるようになったからな」

P「実にいいことだ」

P「……事務所で勉強するのはいいが教科書おいてくなよ」パラパラ

P「お、懐かしいな仁和寺の法師の話がのってる」

あずさ「あれ、プロデューサーさんはなにを読んでるんですか?」

P「ああ、アイドルの誰かが忘れてった教科書です」

あずさ「あらあら~懐かしいですね~」

P「あずささんは古文は好きでしたか?」




102: 2012/05/25(金) 00:44:41.48 ID:ERsFFGUd0
あずさ「はい、結構好きでしたよ」

あずさ「国語でも現代文は難しい話が多いですけど、古文や漢文は読み物としても面白かったです」

P「確かにそうですね……俺は、特にこの仁和寺の法師の話とか印象に残ってますね」

あずさ「どんな話でしたっけ?」

P「仁和寺の法師が年を取るまで石清水に行ったことがなかったんですよ」

P「それで、一生に一度は行ってみたいって思って行くことにするんです」

P「でも、麓にある石清水の一部だけに参拝して、石清水そのものには行かないで帰って来ちゃうって話です」

あずさ「……へー」

103: 2012/05/25(金) 00:50:02.19 ID:ERsFFGUd0
P「あれ、あずささんどうしたんですか?」

あずさ「この話ってよく迷子になる私を馬鹿にしてるんですか?」

P「いやいや、そんなことあるわけないじゃないですか」

P「あと、笑顔で額に青筋立てるのやめて下さい」

P「マジで怖いです……」

あずさ「あらあら~」

P「でも、あずささんの迷子とこの話はなにも関係ないですよ」

P「だから、安心して下さい」

あずさ「そ、そうかしら~」

105: 2012/05/25(金) 00:55:30.69 ID:ERsFFGUd0
P「ええ、そうです」

P「だって、あずささんなら麓にすらたどり着けませんから」

P「あははははははははははは」

あずさ「うふふふふふふふふふ」

P「…………」

あずさ「………怒りますよ?」

P「……………ごめんなさい」







「徒然草」より

107: 2012/05/25(金) 01:10:58.85 ID:ERsFFGUd0
亜美「あーるーひーとー」

真美「ゆーみーをーいーるーこーとー」

春香「あ、徒然草だ!懐かしいー!」

千早「同じ話を私も中学のときにやったわね……」

亜美「結局、これってなんの話なの?」

真美「日本語みたいだけど、さっぱりわかん無いんだよねー」

亜美「はるるん!教ーえーてーよー!」

真美「おーねーがーいーしーまーすー」

春香「えーっと……ち、千早ちゃん?」

春香「これってどんな話だったっけ?」


109: 2012/05/25(金) 01:21:06.18 ID:ERsFFGUd0
千早「簡単に言うと、二回目があると思うなってことね」

真美「つまり……どういうことだってばよ……」

千早「……一つのことに集中しなさいってことかしら?」

真美「なるほどー。なんとなく分かったかも」

亜美「でも、それってどうしてなの?」

千早「レッスンとライブに例えたらわかるかしら」

千早「レッスンなら失敗してもやり直せるでしょ?」

真美「そうだね」

千早「でも、ライブは一回で終わりよね?」

亜美「うん」






110: 2012/05/25(金) 01:30:30.31 ID:ERsFFGUd0
千早「一回に全力を出すライブのほうがレッスンより良い出来なのは当たり前」

千早「普段からライブみたいに全力を出しなさいということよ」

真美「すごいね!さすが千早お姉ちゃん!」

亜美「亜美もなんか感動したよ!」

千早「でも、あなた達には無理でしょうね」

春香「そんないきなりダメ出ししなくてもいいんじゃないの!?」

春香「せっかくいい事言ったのに!」


千早「だってあなた達は双子だから」

千早「常に二本の矢みたいなものだもの」

千早「お互いを頼りにしているうちはまだまだね」

千早(よしっ!決まったわ!)

111: 2012/05/25(金) 01:33:53.25 ID:ERsFFGUd0
真美「な、なんだってー!」

亜美「ぐぬぬ……」

春香「千早ちゃん……なにもそこまで言わなくても……」

亜美「亜美達はダメなのかな……」

真美「双子だからダメだなんて……」

春香(二人とも傷ついてる……)

春香(マジで壁、空気読めよ……年下いじめてんじゃねぇよ……)

113: 2012/05/25(金) 01:38:16.64 ID:ERsFFGUd0
亜美「千早お姉ちゃんのバカ!もう知らない!」

亜美「泣いて謝っても許してあげないから!」

亜美「ね!真美?」

真美「……」

真美「……千早お姉ちゃんを許してあげよう?亜美?」

亜美「どうして?あんなひどいこと言われたのに……」

真美「きっと亜美達が羨ましいんだよ」


114: 2012/05/25(金) 01:48:14.65 ID:ERsFFGUd0
真美「真美達にはまだ後があるけど、千早お姉ちゃんはもう年齢的に後が無いんだから」

亜美「後がないってどういうこと?」

真美「千早お姉ちゃんの胸はもうあれで成長が終わりだから、大きくなる可能性がある真美達が羨ましいってことだよ!」

亜美「……」

亜美「…………ああ、なるほどね……」

春香(二人の千早ちゃんを見る目が生温かい)

春香(千早ちゃんが余りにも惨めで私まで泣きそうだよ……)





千早「…………………くっ」





P「SSというものをしてみん」終わり

115: 2012/05/25(金) 01:49:36.24

国文科出身とか?

116: 2012/05/25(金) 01:50:00.18

引用元: P「SSといふものをしてみん」