1: 2013/04/19(金) 21:51:39 ID:oEocV33M
デーンデーンデーンデーンディンドン
デーンデーンデーンデーンディンドン
根暗亭シンジです 今日は馬鹿馬鹿しい話しにおつきあい願います

2: 2013/04/19(金) 21:52:32 ID:oEocV33M
分らないものだらけの世の中ですがよくできているなあと思いませんか
カタカナのトの字に一の引き方で上になったり下になったり
トの上に一を持ってくると”下”という字になって上の棒がつっかえになって
上にいる人の事が見えないんみたいなんです
逆にトの字の下に一を書くと”上”と言う字になって同じように下の事がわからないんですって

3: 2013/04/19(金) 21:54:04 ID:oEocV33M
その点”中”って字はすごいんですよ
口という字に棒が一本抜けているから上にも下にも口が利けるって事なんですって
今の偉い人はそんな事無いでしょうが昔のお殿様やお姫様くらいになると僕らみたいな
下々の事が何にもわからなかったんですよ
でもしょうがないですよね
生まれた時からそのまま大事に大事に育てられて殿様にされちゃうんですから
余計な事なんか知らなくて当然ですよね

4: 2013/04/19(金) 21:54:59 ID:oEocV33M
あるお姫様がネギの入った味噌汁をすっごく気に入ったそうです

綾波姫「これ…何?」

家来マリ「ははーネギ入り味噌汁でございますー」

綾波「なんだか…ぽかぽかする…うちでも作れるの?」

マリ「へへーおーせのままにー」

早速家来の人はお城の隅を耕してネギを植えました
出来上がって味噌汁にしてお姫様に差し上げたんです

5: 2013/04/19(金) 21:56:12 ID:oEocV33M
綾波「これ…何?」

マリ「お姫様の大好物のネギ入り味噌汁ですにゃ」

綾波「これが…?前のと何か違うと思う」

マリ「うーん、前のは城下町で買ってきた奴だったから、多分肥料に下ごいを使ってたと思いますけど今日お出ししたのはお城の隅っこで清らかーな水だけで作ったからちょっとおいしくないのかもしれませんにゃ」

綾波「そう…下ごいを掛けてないからぽかぽかしないのね」

マリ「うーん多分…」

綾波「なら少しこれに掛けてきて」

6: 2013/04/19(金) 21:58:52 ID:oEocV33M
なーんて言うんですからすごいですよね
またあるお姫様は秋のさる日に家来を15,6騎お連れだってお城から少し遠くにお出かけになりました
今の中目黒辺りまでくると馬からばっと降りて大きく伸びをした後家来の人にお声を掛けたそうです

7: 2013/04/19(金) 22:00:06 ID:oEocV33M
アスカ姫「ちょっと!バカ三太夫!」

シンジ三太夫「はい、なんでしょうか?」

アスカ「んっ!」

シンジ「へっ?」

アスカ「あんたバカぁ?こんな遠出して手え差し出してるっていったらお弁当しかないでしょう!ほらサッサと出す!」

8: 2013/04/19(金) 22:00:37 ID:oEocV33M
シンジ「え~っと、ごめんなさい」

アスカ「はぁー?まさか持ってきてないっていうの?」

シンジ「仕方ないじゃないですか!姫が急に遠足に行きたいなんて言うからお弁当作る暇なかったんですよ」

アスカ「口答えすんな!バカ三太夫!おーなーかーすーいーたー」

9: 2013/04/19(金) 22:01:17 ID:oEocV33M
なんて言っちゃって暴れだしちゃいました
人間って不思議な物でさぁどうぞってご馳走出されたらそんなに食べたくならないのに
食べられない時に限って余計に食べたくなっちゃうんですよね
しばらく暴れた後諦めたのか馬に乗って城に帰っていた時に姫が言いました

10: 2013/04/19(金) 22:02:09 ID:oEocV33M
アスカ「ねぇ三太夫、なんかいい匂いがするんだけどコレって何の匂い?」

シンジ「多分サンマだと思いますよ、近所で誰かが焼いてるんじゃないですか?」

アスカ「サンマ?そのサンマって何よ?」

シンジ「海でよく取れる長い魚ですよ」

アスカ「ふーん、アタシそのサンマって奴食べた事ないわよ」

シンジ「そりゃそうですよ、サンマは雑魚ですから姫の口には合いませんよ」

アスカ「何言ってんのよ!あれが食べれてこれが食べれないなんて贅沢言ってんじゃないわよ!
食べられる時に食べないなんて、そのサンマにも失礼よ!サッサと持ってきなさい!」

11: 2013/04/19(金) 22:02:58 ID:oEocV33M
一度言い出したら後には引きません
仕方ないから三太夫さんは匂いを頼りにあちこちの農家を探しました

シンジ「あの…ごめん下さい」

農民加持「やあ、お侍様がこんなしみったれた農家に何の用だい?」

シンジ「あの、サンマを焼いてたのってあなたですか?」

加持「あぁ失敬、もしも気に障ったのなら勘弁願いたい、今朝方スイカを売りに行った帰りに浜辺で売ってたんだが安くてな、フィアンセと
一緒に食おうと思ってね」

農民ミサト「お願~い見逃して~私お酒のつまみが無いと氏んじゃうの」

12: 2013/04/19(金) 22:03:32 ID:oEocV33M
シンジ「いえそんな咎めてるわけじゃないんです、実は僕の仕えてる姫様がサンマを食べたいといって聞かないものですから…その少し分けて頂けませんか?」

加持「欲しいってんなら別に分けてもいいけど、そっちはいいのかい?姫様にサンマなんてもの食わせたりして」

シンジ「いいんです、一度言い出すと聞かないから」

加持「了解、苦労してんだな君も」

13: 2013/04/19(金) 22:04:19 ID:oEocV33M
それでこれからまたサンマを焼くわけなんですけど備長炭とかの上で焼いたり金串に差して形よく焼く訳じゃないんですよ
農家のことですから庭先でたき火をしてそこに”おき”っていうのができるんですけど
その中に丸ごとサンマをいれちゃうんですよ
ちょっと雑ですよね
で焼きあがると真っ黒になってジュージュー言ってあちこちから小さく火が出てるんですよ
尻尾のとこなんか炭がついてたりしましてね
粗塩をパっと掛けて大根おろしを横に添えてお姫様にお出しする

14: 2013/04/19(金) 22:04:49 ID:oEocV33M
アスカ「これがサンマね、三太夫どうやって食べるの?」

シンジ「ちょっと待って下さいね」

というと手際よく骨を取ってあげる
それでお食べになったんですがそれがおいしいのおいしくないのって
それもそうですよね
焼きたての上に秋の脂のよーく乗ったサンマ
少し辛すぎるくらいのお塩にこれまた旬の大根おろし
朝からずっと馬に乗ってあちこち遊びまわったんですから
人間お腹が空いてると何を食べてもおいしいんですから

15: 2013/04/19(金) 22:05:26 ID:oEocV33M
アスカ「おかわり!」

と言って皿を出すと三太夫さんが急いで骨を取る

アスカ「もう一匹持ってきなさい、早くして!」

なんて言っているうちにあっという間に農家の方の分までペ口リと5,6匹平らげてしまいました

アスカ「ふうーまあまあだったわね」

16: 2013/04/19(金) 22:05:57 ID:oEocV33M
シンジ「あのー姫…」

アスカ「ん?なーに三太夫?」

シンジ「今日サンマを食べた事秘密にしてもらえませんか?」

アスカ「なんでよ?」

シンジ「重役の方の耳に入ったら今日ついて行った全員が罰せられて最悪切腹しないといけなくなって…」

アスカ「ったく、しょうがないわね、黙っといてやるわよ」

17: 2013/04/19(金) 22:06:46 ID:oEocV33M
こうしてお姫様は御一行を連れてご機嫌にお城に帰りました
でも姫様はサンマの事が頭から離れません
寝ても覚めてもサンマの事どころか
夢の中でまでサンマを見る始末です
もう一度サンマが食べたいと
それもそうなんです
お姫様や殿様の焼き魚といいますと殆どが尾頭付きの鯛だったそうです
ですが焼きたてなんて食べられません
毒見役って人が居てその人が端っこをちょこっと食べて2時間待つんです
2時間待って体に何もなかったらやっと姫は食べられるんです
その冷えた鯛が毎日ですから

18: 2013/04/19(金) 22:07:21 ID:oEocV33M
アスカ「もう一度目黒に行ってサンマが食べたいなあ」

アスカ「ちょっとー、バカ三太夫」

シンジ「なんですか?姫」

アスカ「目黒っていい所だったわね」 

シンジ「そうですね、紅葉が進んでてとてもきれいでしたね」

アスカ「紅葉なんてどうでもいいのよ、あの時食べたまあまあの魚よ」

19: 2013/04/19(金) 22:07:59 ID:oEocV33M
シンジ「ちょ、姫様そのことは秘密に」

アスカ「あら、そうだったわね、それにしてもサンマまた食べたいなあ」

なんて時々言うもんですからみんな困っちゃいました
そのうちご親戚のお屋敷におよばれしましてね
昼ごろになると御料理番が出てきて

20: 2013/04/19(金) 22:08:38 ID:oEocV33M
料理番冬月「本日のお食事は何なりとご注文を」

この時とばかりに姫様は

アスカ「アタシ、サンマでいいわ」

冬月「は?」

アスカ「サンマよ!サンマ!いいわね」

冬月「は、はあ…」

21: 2013/04/19(金) 22:09:14 ID:oEocV33M
料理人ゲンドウ「姫君は何を所望された?」

冬月「サンマだ」

ゲンドウ「冬月先生、私をからかっているんですか?」

冬月「俺だって聞き間違いだと思ったけど確かにサンマって言ったんだ」

ゲンドウ「問題だな」

冬月「あぁ」

22: 2013/04/19(金) 22:09:52 ID:oEocV33M
武家屋敷のお台所ですからサンマなんてあるわけありません
さっそく早馬を使いに出してサンマを取り寄せ
困ったのはこれからです
どうやって料理して出せばいいか料理番は色々考えました

23: 2013/04/19(金) 22:10:38 ID:oEocV33M
まずは三枚におろしました
皮を毟りまして脂が強いのでこの脂がお体に障るかもしれないと一度蒸しました
脂をすっかりとしぼりました
小骨があるからといってピンセットで一本一本骨を取っていったんですが
形が崩れてなんだかぐずぐずになっちゃいました
このままではお出しできないというので餡かけにしちゃいました
お椀にいれましてね恐れながらと差し出しました

24: 2013/04/19(金) 22:11:14 ID:oEocV33M
お姫様は待ちに待ったサンマです
あの黒くてジュージュー言ってる長い魚が出てくると思ったら
お椀が一つ出てきました
おかしいなっと思いましたが蓋を取って
匂いを嗅いでみるとかすかにサンマの匂いがしました
待ち焦がれていたサンマだと一箸つけると
これが本当にまずい 今まで食べた何よりもまずいったらありゃしない
それはそうでしょう一番おいしい脂をほとんど絞って捨てちゃったんですから
出し殻みたいなもので生臭いだけですもん

25: 2013/04/19(金) 22:11:52 ID:oEocV33M
アスカ「………これ…何」

冬月「サンマでございます」

アスカ「嘘?これがサンマ?これどこから取り寄せたの?」

冬月「房州の魚市でございます」

アスカ「房州?あんたバカぁ!サンマは目黒って決まってんのよ」

おあとがよろしいようで

引用元: 【新世紀】目黒のサンマ【エヴァ落語】