1: 2012/07/08(日) 01:13:45.90 ID:L68OWDln0

テケテ テテ テテ テテ テッテ

千早「如月亭千早です。よろしくお願いします」

千早「金は天下の回りものとは言いますがやはりお給料日の前となると寂しくなるもの」

千早「最後の数日などどうやって過ごそうか考えてしまうほどです」

千早「しかしそんな時でもお腹は空きます」


3: 2012/07/08(日) 01:15:48.02 ID:L68OWDln0

響「う~……貴音~……お腹空いたよ~……」

貴音「響……あまりそのようなことを言わないでください……。余計空いてしまいます……」

響「お給料日前だからもうお金が全然残ってないよ……」

貴音「響……。今はどれ程持ち合わせていますか?」

響「う~んとね……300円」

貴音「私もです……」


4: 2012/07/08(日) 01:18:02.35 ID:L68OWDln0

響「合わせても600円か。これだけあればなにか食べられるかな?」

貴音「響!?あれを見てください!」

千早『そんな二人の目の前に赤い暖簾のお店が見えました』

響「ん?なになに?……ラーメン屋?」

貴音「はい」

響「ダメだよ、貴音。ラーメンの値段が700円だ。少し足りないぞ……って貴音!?」

貴音「ラーメンを一つ」

5: 2012/07/08(日) 01:20:29.55 ID:L68OWDln0

千早『四条さんは我那覇さんの話を聞かずにそのお店に入ってしまいました』

響「ちょっ!貴音……どうするのさ。お金足らないぞ」

貴音「よいのです。響。苦肉の策を使いますので」

響「苦肉の策?」

あずさ「はい。お待ちどうさま」

響「うぅ~……出てきちゃったぞ……」

貴音「時にご主人。今日は少し寒いですね」

あずさ「そうね~。少し肌寒いかしらね」

貴音「ええ」


8: 2012/07/08(日) 01:22:55.15 ID:L68OWDln0

響「なに世間話してるんだよ!」

貴音「ですがこのスープ。とても透き通っていて……ズズッ、味も申し分ないです」

響「……ゴクリ」

貴音「それにやはり決め手は麺です。コシがありハリもある……ズルズル、味もなんとも素晴らしい」

あずさ「あらあら、ありがと~」

貴音「ズルズル……ズルズル……」


10: 2012/07/08(日) 01:24:21.51 ID:L68OWDln0

響「た……貴音ぇ……」

貴音「どうしたのです?響」

響「じ、自分もお金を出したんだから自分にも分けてほしいぞ……」

貴音「ズルズル……少々お待ちください。ズルズル……もう少しです」

響「も、もう少しって!?もうそんなに残ってない!」

貴音「ふぅ……仕方ないですね。どうぞ」

響「お~……。これが貴音を唸らせたラーメン……」

12: 2012/07/08(日) 01:26:35.40 ID:L68OWDln0

響「スープは……ズズッ。お、おいしい!」

響「じゃあ麺は……って貴音!」

貴音「どうしたのです?」

響「どうしたのです?じゃないよ!麺がもう全然残ってないじゃないか!」

貴音「細かいことを気にしてはいけませんよ」

響「細かくない!うぅ……しょうがないからスープでお腹を満たそう」

響「ゴクッゴクッ……ぷはーっ!おいしかった!」


13: 2012/07/08(日) 01:28:16.71 ID:L68OWDln0

響「……で、でも貴音。どうするんだ?お金足らないぞ?」

貴音「ふふっ。見ていてください。ご主人、お会計をお願いいたします」

あずさ「は~い。ラーメン一つで700円です~」

貴音「細かくなってしまうのですがよろしいですか?」

あずさ「ええ。いいですよ」

貴音「では、100円玉で……一、二、三、四……ところでご主人。今は何時でしたか?」

あずさ「え~と、五時かしらね~」

貴音「ありがとうございます。六、七。ではこれで。行きますよ、響」

あずさ「ありがとうございました~」


14: 2012/07/08(日) 01:32:22.66 ID:L68OWDln0

千早『店を出ると我那覇さんは四条さんに尋ねます』

響「なんだ、貴音。お金持ってたんじゃないか」

貴音「いえ、私は全部で600円しか持ち合わせていませんでしたよ」

響「え……でもお会計は……」

貴音「あれはご主人を利用したのです」

響「どゆこと?」

貴音「そうですね。お教えいたしましょう」


16: 2012/07/08(日) 01:35:18.18 ID:L68OWDln0

貴音「まず、品物を出されたら色々と話をします」

響「どうして?」

貴音「後々ペラペラと話し出すとなにかと不信でしょう?」

響「そうなんだ」

貴音「そして出されたものを褒めるのです。そうすればご主人も気をよくするでしょう」

響「確かに」

貴音「最後が肝心です。小銭を一枚ずつ相手に渡すのです」

響「なんで?」


17: 2012/07/08(日) 01:38:23.91 ID:L68OWDln0

貴音「一枚ずつ渡している間にちょうどよいところで訪ねるのです」

貴音「今は何時でしたか。と」

貴音「すると気をよくしているご主人はちゃんと答えてくれます」

貴音「それに合わせてお金を出せばよいのです」

響「へぇ~……でもさぁ」

貴音「はい?」

響「犯罪だよね?」

貴音「……苦肉の策です」

19: 2012/07/08(日) 01:42:04.75 ID:L68OWDln0

千早『四条さんを糾弾した我那覇さんでしたが、翌月のお給料日前にまたお金が底をついてしまいます』

響「うぅ……。お腹空いたぞ……」

響「仕方ないよね……この前貴音がやってたことをやるしかないよ」

響「でも一応できるだけたくさんお金は持っていこう」

千早『我那覇さんは今ある手持ちを小銭にしてラーメン屋さんへ向かいました』


20: 2012/07/08(日) 01:45:03.63 ID:L68OWDln0

響「ら、ラーメン一つ」

美希「あふぅ……わかったの」

響「なんかドキドキするなぁ」

美希「お待たせなの」

千早『我那覇さんの前にラーメンが置かれます』
響「あ、そうだ。確かあの時貴音は……ご主人、今日は少し寒いね」

美希「寒い?ミキ的には今日は暑いって思うな」

23: 2012/07/08(日) 01:48:17.40 ID:L68OWDln0

響「え、あ、ああ。暑い。今日は暑いよね。昨日が寒かったんだな」

響「うん、まぁ食べよう。まずはこのスープ」

響「ズズッ……うん。……うん、お、おいしいぞ。独特な味で」

美希「そう?よかった」

響「そ、そうだよ。やっぱりラーメンは麺だよね。コシがあってハリが……ズルズル、うん、ないな……。ボソボソだ」

響「……でもこんな麺もありだ。うん、ありだよ」


25: 2012/07/08(日) 01:52:10.15 ID:L68OWDln0

響「うんうん、……ズルズル……おいしい……ズルズル……おい……しいぞ……ズズッ」

美希「あはっ☆ありがとっ」

響「ふぅ……それじゃあそろそろいくかな。ご主人、お会計お願い」

美希「はいは~い。ラーメン一つで700円なの」

響「細かくなって悪いんだけどいいかな?」

美希「うん、いいよ」

響「じゃあ100円で。一、二、三、四……あ、ご主人。今って何時かな?」

美希「今?二時だよ」

響「三、四、五……」

千早「あれ?多く払ってる?」

テケテ テテ テテ テテ テッテ


27: 2012/07/08(日) 02:00:35.91 ID:L68OWDln0

テケテ テケテ テケテ テッテ

春香「天海屋春香です。それでは毎度ばかばかしい噺を一席」

春香「人は氏んだら極楽へ。そう昔から言われてますよね」

春香「ですが世の中の人全てが極楽に行けるわけではありません」

春香「中にはやはり地獄へいく人もいることでしょう」

春香「しかし、地獄の沙汰も金次第という言葉もございます」


29: 2012/07/08(日) 02:05:46.04 ID:L68OWDln0

春香『昔、水瀬伊織というお金持ちの主人がおりました』

春香『この伊織、見事な経営手腕でメキメキと頭角を表し、あれよあれよという間に知らぬものはいない存在に』

春香『しかしこの伊織。不幸にも病に伏し今にもその命は尽きてしまおうとしておりました』

春香『そこで伊織はとても仲の良い高槻やよいにあることを頼みます』


32: 2012/07/08(日) 02:09:40.01 ID:L68OWDln0

伊織「やよい……いる?」

やよい「うん。いるよ、伊織ちゃん」

伊織「私はもうだめみたい……自分の体だからよくわかるわ」

やよい「なに言ってるの!伊織ちゃん!これからも一緒に頑張ろ!」

伊織「ありがと……やよい。でもこれは仕方のないことなの……」

伊織「そこで一つ。やよいにお願いしたいの……」

やよい「なに?私にできることならやるよ」

伊織「ふふっ……そう言ってくれると思ったわ」


33: 2012/07/08(日) 02:16:14.86 ID:L68OWDln0

伊織「私が氏んだら……たぶん地獄へ行くと思うの」

やよい「えっ!?どうして!?伊織ちゃんは地獄へ行くようなことしてないよ!」

伊織「ここまで大きな会社にするにはね……いろんな人を不幸にしなきゃいけないのよ……」

伊織「私たちが笑っていたその裏で、何人もの人が苦しんだの」

伊織「だから人を苦しめた私は……地獄へ行くのよ」

やよい「そんな……」

伊織「でもやっぱり私も怖いのよ……地獄が」

伊織「だからやよい。お願い。私が氏んだら棺の中に三千万円ほど入れて欲しいの」

やよい「ど……どうして?」


35: 2012/07/08(日) 02:20:58.35 ID:L68OWDln0

伊織「地獄の沙汰も金次第って言うじゃない……?だからもしもの時のためによ……」

やよい「………」

伊織「私も半ば無駄だって思ってるわ……。だけどもしも本当だったらと思うと……怖いのよ……」

やよい「………」

伊織「お願い……やよい」

やよい「うっう~……わかりました……」

伊織「ありがとう……やよい……やっぱり……あなたは……私の……」

やよい「……伊織ちゃん?」

やよい「伊織ちゃん……起きてよ……」

やよい「伊織ちゃん!伊織ちゃん!」


38: 2012/07/08(日) 02:29:39.94 ID:L68OWDln0

春香『伊織が眠るように息を引き取り、すぐさまお葬式の準備となります』

春香『やよいは伊織に言われた通り。伊織の用意していた三千万円を棺の中へ入れようとしました』

春香『しかし、それを見ていた周りの人たち。なにをしているのかと大騒ぎです』

小鳥「やよいちゃん!?なにやってるの!?」

やよい「伊織ちゃんが言ってたんです。氏んだら三千万円を一緒に棺に入れてくれって……」

小鳥「で……でも……だけど……法律とかよくわからないけどお金を燃やすのは不味いんじゃないかしら?」

やよい「でも伊織ちゃんが……」

小鳥「わかったわ。私が本物のお金そっくりの偽物を用意するからそれを入れましょう。そうすれば大丈夫だと思うから」

春香『お金を燃やすのを疑問に思っていたやよいは二つ返事で了承しました』

春香『こうして偽物の三千万円を一緒に入れ、伊織の葬儀は終わりました。当の伊織はそんなことは知りません』


39: 2012/07/08(日) 02:33:27.22 ID:L68OWDln0

伊織「ここが地獄なのかしら……いくら歩いても何もないわ」

伊織「三途の川ってどこにあるのかしら……」

伊織「あら、あんなところに人がいるじゃない。あの人に聞きましょう」

伊織「すみません」

雪歩「は、はい!」

伊織「あ……そんなに驚かなくても……」

雪歩「ごめんなさい!ごめんなさい!私、ビックリしちゃって」

伊織「謝らなくてもいいわ。それでちょっと訪ねたいんだけど」

雪歩「はい?」

伊織「三途の川ってどこにあるのかしら?」


42: 2012/07/08(日) 02:41:11.62 ID:L68OWDln0

雪歩「三途の川?と言うとあなたはこれから地獄へ?」

伊織「ええ、そうよ。あなたも地獄へ行くの?」

雪歩「いえ、私は三年ほど地獄で労働をさせられていました。ですが昨日、遂に罪が償われまして」

伊織「おめでとう。それとちょうどよかったわ。その……地獄ってやっぱり怖いところなの?」

雪歩「そうですねぇ。私みたいなちんちくりんな一文無しは強制労働が強いられますぅ」

雪歩「ですけれど、見たところあなたは中々にお金を持っているみたいじゃないですか」

伊織「ええ。多少は持ち合わせてるわ。でもなんで?」

雪歩「今、地獄は財政難で大変なんです。針の山は全てがお金に換えられ跡地に遊園地が、血の池地獄は水に入れ換えられてボートで賑わうスポットに」

伊織「なんか凄いわね……」

43: 2012/07/08(日) 02:45:56.13 ID:L68OWDln0

雪歩「閻魔様との謁見でお金を握らせれば刑期の減少があるようですよ。ところでいくらくらい持っているんですか?」

伊織「三千万円ほどね」

雪歩「さ、三千……はぅ」

伊織「ちょっ!?ちょっと!いきなり倒れないでよ!」

雪歩「あ……ごめんなさい。でもそれだけあれば極楽へ行くこともできると思いますよ」

伊織「そうなんだ。ありがとう。で、三途の川はどこ?」

雪歩「あ、はい。三途の川はあっちの方にまっすぐ行けばあります」


44: 2012/07/08(日) 02:51:51.19 ID:L68OWDln0

春香『雪歩に言われた方向へ進むとすぐに三途の川着きました』

春香『そして伊織は三途の川を渡り、遂に閻魔様との謁見です』

亜美「おほん。亜美が閻魔である」

真美「真美も閻魔である」

亜美「え~と……罪人水瀬伊織。お前は生前自分の会社を大きくするために多くの人を犠牲にした」

真美「そこで罪人水瀬伊織には三年間の強制労働の刑に処す……って言いたいけどさ~……」

亜美「最近地獄でお金が足らなくなってきちゃってさ~」

真美「いおりんなんかお金持ってそうじゃん?」

伊織 (いおりん……?)

45: 2012/07/08(日) 02:58:46.41 ID:L68OWDln0

真美「だから~真美たちにお金くれたら」

亜美「刑を軽くしてあげてもいいよ?」

伊織「一つ聞きたいんだけどなんでこんな事態になったの?」

亜美「いや~……亜美たちもよくわからないんだよね」

真美「遊園地とか色々作ってたらなくなっちった」

伊織(明らかにそれが原因よ……)

亜美「で、いおりんはいくらくらい持ってるの?」

伊織「ざっと三千万円くらいかしら」

真美「さ……三千万……っ!?」

亜美「な、なにやってるのみんな!早くいおりんに座布団!それから100%のオレンジジュースを!」

春香『その場にいた地獄のトップ集団は目を光らせて伊織を労い、伊織は晴れて極楽へ行くことになりました』

47: 2012/07/08(日) 03:04:32.42 ID:L68OWDln0

春香『伊織が極楽へ行ったあと、地獄ではまとまった金ができて財政難も解消されました』

春香『これを不思議に思ったのは極楽の神様。今まで財政難だった地獄が急に活気づいたのですから当然と言えば当然です』

律子「これは調べる必要があるわね」

春香『眼鏡にスーツを着用で見た目はまさに税務署員。早速地獄へと視察に行きました』

律子「この数日ですごい変わり様ね」


49: 2012/07/08(日) 03:11:12.43 ID:L68OWDln0

春香『神様がキパキと視察をこなしていくと前から羽振りの良さそうな鬼がやってきました』

真「やぁ、お美しいお嬢さん。よろしければボクとお茶でもしませんか?」

春香『なんと鬼は神様にナンパを始めました。鬱陶しく思った神様でしたが地獄の変わり様を調べるためにお茶に同行しました』

真「いきなり声をかけちゃってごめんね。でも君みたいな可愛いお嬢さんを放っておくのも失礼だから」

律子「そうですか」

春香『鬼の話を適当に流しお茶の時間はすぐに終わりました』

春香『しかしそこは神様。お会計の時を見逃しませんでした』


50: 2012/07/08(日) 03:18:15.07 ID:L68OWDln0

律子「このお金、偽物ですよね」

真「え?」

春香『ここからの対応は早かった。極楽の神様たちは瞬く間に偽札の出所を見つけ出し閻魔大王ほか地獄のトップ集団を次々と極楽の拘置所へ連れていきました』

春香『ですから今、地獄には人をいたぶるような鬼はいません』

春香「そう。今、地獄には鬼がいないんです」

春香「ですから皆さん!氏ぬなら今ですよ今!」

春香「お後がよろしいようで」

テケテ テケテ テケテ テッテ


52: 2012/07/08(日) 03:20:15.47 ID:L68OWDln0
これで終わりです

はしょってるのはごめん。聞いた分を思い出して書いてるから
本来がどの程度かとかわからないので勘弁

56: 2012/07/08(日) 03:39:22.32

引用元: 春香「プロデューサーさん!落語ですよ!落語!」