1: 2021/04/02(金) 19:45:12.128 ID:PKIKo5zW0
面接官「……なるほど、よく分かりました。続いては自己PRをして下さい」

男「はい」

面接官「ではどうぞ」

男「私は宇宙人です」

面接官「は?」

男「もう一度申し上げます。私は宇宙人なのです」

面接官「からかってるのですか?」

男「私はいたって真面目です」

2: 2021/04/02(金) 19:45:51.409
言いたいことはわかる
どっちにも回答してる

4: 2021/04/02(金) 19:48:49.827 ID:PKIKo5zW0
面接官「だって……どう見てもあなたは地球人ではないですか」

男「それは私の擬態能力が大変優れているからです」

面接官「つまり、今の姿は仮の姿と?」

男「その通りです」

面接官「ではずばり聞きましょう。あなたはいったいなんという星から来たのですか?」

男「地球から50億光年離れているヒソーリ星からやってきました」

面接官「聞いたことありませんけど……」

男「その名の通り、ひっそりした惑星ですから」

男「ヒソーリ星人は擬態能力に優れており、この通り地球人にも完璧に化けることができるのです」

面接官「そうなのですか……!」

5: 2021/04/02(金) 19:51:23.406 ID:PKIKo5zW0
面接官「地球に来た目的はなんですか? まさか、侵略……?」

男「我々はそんな野蛮な種族ではありません」

男「地球に来たのはあくまでも視察……社会勉強といったところでしょうか」

男「少なくとも地球や地球人をどうこうするつもりはありません」

面接官「それを聞いて安心しました」

面接官「ところでヒソーリ星人さんは、当然地球より文明が進んでいるんですよね」

男「ええ、もちろんです」

面接官「あなたから見て、弊社はいかがでしょうか?」

男「そうですねえ……」

6: 2021/04/02(金) 19:54:12.282 ID:PKIKo5zW0
男「今のままでは間違いなく倒産するでしょうね」

面接官「と、倒産!?」

男「ええ、間違いないです」

面接官「教えて下さい! 倒産しないためには……どうすればいいのでしょう!?」

男「簡単なことです」

面接官「え?」

男「この私を採用すればいいのです」

男「そうすれば、たちまちのうちにこの会社の経営を立て直してみせましょう」

7: 2021/04/02(金) 19:57:08.128 ID:PKIKo5zW0
男「さて、どうしますか?」

面接官「……」

男「我々が正体を明かして、こんな提案をするなど滅多にありませんよ」

面接官「……分かりました」

面接官「あなたを採用しましょう!」

男「ホントですか?」

面接官「ええ、4月からよろしくお願いします」

9: 2021/04/02(金) 20:00:18.190 ID:PKIKo5zW0
……

男「やったーっ!」

男(なかなか内定を貰えず、思い切って戦略を変えてみたが……)

男(≪宇宙人作戦≫大成功!)

男(あの会社が倒産寸前? そんなわけないだろうが。潰れそうな会社なんか受けるもんか)

男(むしろ斬新な商品を次々出して、これから伸びる優良企業なのは明らかだ)

男(ウソはついてしまったが、面接にウソはつきものだし、受かっちまえばこっちのもんだ!)

男「さあ、就職まで遊ぶぞー!」

10: 2021/04/02(金) 20:03:42.454 ID:PKIKo5zW0
入社式――

社長「えー、新入社員の皆さん。おはようございます」

社長「あなた方は我が社の希望であります」

社長「一日も早く戦力となってくれることを期待します」

パチパチパチパチパチ…

男(戦力ねえ……俺としてはそこまで大層な野心はない)

男(テキトーに仕事して、お金稼いで、楽しい暮らしができればそれでいい)

男(いい上司に恵まれればいいけど……)

11: 2021/04/02(金) 20:06:15.775 ID:PKIKo5zW0
男(研修を経て、いよいよ配属が決まった)

課長「よろしく」

男「よろしくお願いします!」

課長「社会人になって分からないことだらけだろうが、分からないことはどんどん聞いてくれ」

男「はい!」

男(よかった、いい人そうだ。とりあえず上司ガチャは当たりかな)

課長「ところで――」

13: 2021/04/02(金) 20:09:34.972 ID:PKIKo5zW0
課長「君……宇宙人なんだってね?」

男「へ? 宇宙人?」

課長「ああ。君は地球人じゃなくて宇宙人なんだろう?」

男「な、なんのことですか?」

課長「人事部から回ってきた資料に……ほら。君は≪ヒソーリ星人≫だって」

男「え」

男(俺が宇宙人だって話は面接で終わったものかと……。どうしよう……?)

15: 2021/04/02(金) 20:12:44.150 ID:PKIKo5zW0
課長「君は……ヒソーリ星人なんだろう?」

男「え、ええ、そうです! ヒソーリ星人です!」

男(ええい、ヒソーリ星人でいくしかない!)

課長「そうか! 宇宙人が配属されるとは心強い!」

課長「ぜひ宇宙人の観点から、我が社の力になって欲しい!」

男「はいっ! 頑張ります!」

男(マジかよ……こんなはずじゃ……)

16: 2021/04/02(金) 20:15:24.499 ID:PKIKo5zW0
先輩「よぉ~、新入りクン!」

男「あ、どうも……」

先輩「オメー、宇宙人なんだって?」

男「あ、はい……一応……」

先輩「ヒューッ! 宇宙人と仕事ができるなんて光栄だぜ!」

男「僕もですよ~」

先輩「よろしくな、宇宙人!」

男「は、はいっ!」

17: 2021/04/02(金) 20:18:16.462 ID:PKIKo5zW0
OL「今日からよろしくね!」

男「よろしくお願いします」

OL「ところでさ、ヒソーリ星ってどんな星なの?」

男「え? そ、そうですねえ……とても自然が豊かで、空気がおいしくて、文明が進んでて……」

OL「海はあるの?」

男「ありますよ。地球ほど広くはないですが……」

OL「擬態ってどうやるの?」

男「そこらへんは企業秘密でして……」

OL「ケチ~!」

男(あまりヒソーリ星について聞かないで欲しい……反応に困る)

20: 2021/04/02(金) 20:21:47.499 ID:PKIKo5zW0
……

課長「うーん……」

男「どうしました?」

課長「君、宇宙人のわりにイマイチ特徴がないんだよね。あまりにも普通すぎる」

男「そうでしょうか」

課長「そうだ、語尾に“ヒソ”をつけるというのはどうだろう?」

男「いや、それはちょっと……」

男(なんか猛毒をばら撒く宇宙人みたいで嫌だ)

22: 2021/04/02(金) 20:24:37.326 ID:PKIKo5zW0
先輩「なぁなぁ、UFOとか呼べねーの?」

男「あまり目立つ行為はできないんで……」

先輩「ちぇっ、得意先までひとっ飛びできると思ったのによ」



OL「ね、ね、ね、ヒソーリ星人って、たとえばリップクリーム食べるの?」

男「食べませんよ。基本的に地球人と同じものを食べます」

OL「なんだ、つまらない。食べるとこ見たかったのに」



男(みんなして俺を宇宙人扱いして、いじってくる……めんどくさい)

男(≪宇宙人作戦≫、もしかしたら失敗だったのかも……)

27: 2021/04/02(金) 20:27:46.600 ID:PKIKo5zW0
課長「今日は男君の歓迎会をしよう!」

先輩「おっ、いいっすね!」

OL「さんせー!」

先輩「じゃあ、店は俺がとっときますよ」

OL「たっぷり歓迎してあげるからね!」

男「嬉しいです!」

男(全然嬉しくない。なぜなら……)

28: 2021/04/02(金) 20:30:15.512 ID:PKIKo5zW0
課長「乾杯!」

先輩「ウェ~イ!」

OL「イェ~イ!」

課長「よーし、ではさっそく……宇宙人ならではの一発芸をやってくれ!」

先輩「そうだそうだー!」

OL「頑張れーっ!」

男「は、はい……」

男(ほぉら来た。今までのノリから、こうなるのは分かってたからだ)

29: 2021/04/02(金) 20:33:07.498 ID:PKIKo5zW0
男「では……いきます!」

男「スペースダンス!」

ウネウネウネ… ウネウネウネ…

課長「……」

先輩「……」

OL「……」

男(ヤバイ、滑ったか!?)

30: 2021/04/02(金) 20:36:32.089 ID:PKIKo5zW0
課長「ハハハ、いいじゃないか」

先輩「おもしれぇ!」

OL「最高!」

男「あ、ありがとうございます!」

課長「じゃあ次はヒソーリ星のギャグをやってもらおうか?」

男「ギャ、ギャグですか……」

先輩「ギャーグ! ギャーグ!」

OL「ギャーグ! ギャーグ!」

男「えぇと……じゃあ……。ヒソーリ星に伝わる小噺を……」

31: 2021/04/02(金) 20:39:23.541 ID:PKIKo5zW0
課長「ハッハッハ、ヒソーリ星のギャグなんかやらなくていいよ」

男「え?」

課長「だって君はヒソーリ星人なんかじゃなく地球人なんだろう?」

男「え……え?」

先輩「なんだ課長、もうバラしちゃうんですか」

OL「まあ、しょうがないよ。これ以上からかうのは可哀想だもん」

男「え……?」

課長「我々はね、君が地球人だということは最初から知っていたんだよ」

33: 2021/04/02(金) 20:42:21.992 ID:PKIKo5zW0
男「つまり、知ってた上で俺を宇宙人扱いしてたわけですか……人が悪い」

男「ん、ってことはあの面接官さんも……」

課長「もちろん、君のウソを見抜いていた。その上で君を採用したんだよ」

男「そうだったんですか……」

課長「君はなかなか見どころがある」

課長「お詫びもかねて、我々の正体を明かそうじゃないか」

男「正体?」

35: 2021/04/02(金) 20:45:16.123 ID:PKIKo5zW0
課長「私はジョーシ星人だ」グニャリ

男「え!?」

先輩「俺はチャラ星人」グニャリ

男「ええ!?」

OL「私はオエル星人」グニャリ

男「えええええ!?」

男「こ、これはいったい……!?」

課長「ハッハッハ、驚いたかね。我々はみなこの地球にとっては異星人……宇宙人なんだ」

36: 2021/04/02(金) 20:48:33.406 ID:PKIKo5zW0
課長「実は我が社は、地球にやってきてる宇宙人の受け皿となるための会社でね」

課長「君以外は全員、どこかしらの宇宙人なのだよ」

男「そうだったんですか……。しかし、よく宇宙人だけを採用できますね」

課長「面接官の彼、彼はミヌーク星人でね。生物の正体を見抜く能力に長けている」

課長「つまり、君が地球人だということは最初から見抜かれていたわけだ」

課長「しかし、今年は方針を少し変えて、一人ぐらい地球人を採用しようということになってね」

課長「それが君だったというわけさ」

課長「おそらく、面接の場で“自分は宇宙人”といってのけた度胸が評価されたんだろう」

男「な、なるほど……」

37: 2021/04/02(金) 20:51:34.660 ID:PKIKo5zW0
課長「さて、どうする?」

男「え?」

課長「我々はいうまでもなく友好的な宇宙人の集まりだが……」

課長「もし、宇宙人だらけの職場で働くのが不安ならば、普通の職場を紹介することもできる」

課長「この会社の社長ももちろん宇宙人だが、それぐらいの人脈は持っているからね」

男「……」

男「そりゃもちろん、この会社で働きますよ!」

男「職場の人が宇宙人だってぐらいで辞めちゃうほど、俺は臆病じゃありません!」

課長「そうか……嬉しいぞ!」

先輩「これからもよろしく頼むぜ! 地球人!」

OL「一緒に仕事しようね!」

男「はいっ!」

38: 2021/04/02(金) 20:54:16.390 ID:PKIKo5zW0
……

……

男「ウイ~、飲み過ぎた……」

男「それにしても、驚いたなぁ……」

男「まさか……宇宙人だらけの会社に就職しちゃったなんて……」

男「それと……驚いたことが……もう一つ……」

39: 2021/04/02(金) 20:56:19.506 ID:PKIKo5zW0
男「まさか、ミヌーク星人でさえ俺の正体に気づかなかったとはね……」

男「俺のヒソーリ星人としての擬態の腕も、それだけ上がったってことか」グニャリ








40: 2021/04/02(金) 20:56:59.594
お後がよろしいようで

41: 2021/04/02(金) 21:03:22.818
登場人物全員地球人じゃないとは

引用元: 面接官「自己PRをして下さい」男「私は宇宙人です」