48: 2012/04/27(金) 01:17:18.07
ダークエルフ「………」

男「店主」

店主「はいはい、ただいま…」

男「こいつをくれ」

ダークエルフ「………」

店主「はぁ…しかしこれはなかなかに気性が荒く、あまりオススメはできませんが…」

男「構わん」

店主「そうですか。わかりました。…しかし首輪だけは外さぬよう…」

男「首輪?」

店主「はい。エルフ族は身体能力こそ人間に劣りますが、強大な魔力を持ちます。ゆえにこの首輪で抑えているのですよ」

男「ふむ…わかった、覚えておく」

店主「ではお引き渡しいたします。今後ともごひいきに…」

50: 2012/04/27(金) 01:25:52.08
ゴトゴト…

ダークエルフ「………」

男「さて、君には私の使用人となってもらう」

ダークエルフ「………」

男「私が氏んだ後については自由を約束しよう。…君の種族からすればたいした年月では無いはずだ。それまでしっかりと働いてくれたまえ」

ダークエルフ「………」

男「…了承と受け取っても良いのかね?」

ダークエルフ「…そうするしかないのだろう。私は買われたのだからな」

男「物分かりは良いな。しかし、もう少し品位のある言葉遣いをしてもらいたいものだが…」

ダークエルフ「…かしこまりました」

男「結構」

51: 2012/04/27(金) 01:34:52.54
男「ここが私の屋敷だ」

ダークエルフ「………」

男「部屋はいくらでもあるから好きな所を使うと良い。…鍵はこれだ」

ダークエルフ「はい」

男「ではさっそくだが、風呂の用意を頼む。水は涌き水を屋敷内回しているから蛇口を捻れば出る。マキは北側だ」

ダークエルフ「かしこまりました」

男「…あぁ、そうだ」

ダークエルフ「………」

男「私のことは御主人様と呼べ。旦那様でも良いが…まだ私は所帯持ちでもないのでな」

ダークエルフ「かしこまりました。…御主人様」

52: 2012/04/27(金) 01:39:29.14
ダークエルフ「………」

男「済んだのか?」

ダークエルフ「はい」

男「では入ってきたまえ」

ダークエルフ「…なに?」

男「君に入れと言っているのだ。…あまり女性にこんなことは言いたくないが…ひどく臭う」

ダークエルフ「ッ!!」

男「着替えはこれを使いたま…」

バッ!

ダークエルフ「………」ツカツカ…

男「ふむ…」

54: 2012/04/27(金) 01:49:59.66
男「………」

ダークエルフ「………」

男「何をそんな所に突っ立っている?今日はもう君に用はない。自室で休め」

ダークエルフ「…何故、私を買ったのです?」

男「うむ?…まぁ、君のような種族が奴隷市場に並ぶのは珍しいからだな」

ダークエルフ「…ッ…!」

男「それに…毎日顔を合わせるならば見目麗しい方が良い」

ダークエルフ「………」

男「…そうだろう?」

ダークエルフ「…失礼します」

男「明日からしっかり働いてもらう。ゆっくり休みたまえ」

55: 2012/04/27(金) 01:54:55.01
男「朝食を頼むと言ったはずだが…」

ダークエルフ「………」

男「朝の食事は一日の活力の源だと私は考えている。…フルーツだけで十分だと思うか?」

ダークエルフ「…人間の食事など私にはわかりませんので」

男「…君、料理というものを知っているかね?」

ダークエルフ「知りません」

男「やれやれ…料理長まで解雇したのは早計だったか…」

ダークエルフ「………」

56: 2012/04/27(金) 02:01:09.99
カチャ…カチャ…

男「…君達は普段こういったものしか食べないのか?」

ダークエルフ「…他に木の実などを食べますが、そもそも人間ほど食事を必要としません」

男「ほぅ…それは良い。人間ほど食うに困ることもないだろうしな」

ダークエルフ「…御主人様は食うに困ったことがお有りで?」

男「…失言だったな。すまない」

ダークエルフ「………」

男「………」

57: 2012/04/27(金) 02:05:23.35
ダークエルフ「…この屋敷をすべてですか?」

男「いや…全ての屋敷の管理を任せるとは言ったが、必要最低限の生活空間さえ確保してもらえればそれで良い」

ダークエルフ「………」

男「掃除をしてもらっても使う宛てもないのでな」

ダークエルフ「わかりました」

男「私は書斎にいる。何かあれば呼びたまえ」

ダークエルフ「かしこまりました」

58: 2012/04/27(金) 02:13:34.26
『失礼!どなたかおりませんか!?』

ダークエルフ「……?」

使者「どなたか…おお、いるではない…」

ダークエルフ「…なんの用だ?」

使者「…お前は…エルフか?」

ダークエルフ「…なんの用だと聞いている」

使者「貴様、ロバ族の奴隷の分際で…口の聞き方に気をつけろ!」

ダークエルフ「…なんだと…?」

使者「ふん!奴隷では話にならん…他の使用人を呼んでこい」

ダークエルフ「…ッ…!」

60: 2012/04/27(金) 02:18:37.99
使者「聞こえんのか?」

ダークエルフ「………」

使者「はぁ…そんな耳をしているのに耳が遠いのか?」

ダークエルフ「…言わせておけば奴隷、奴隷と…」

男「あれは…?」

使者「…いや、人間の高尚な言葉を理解できんのか?」

ダークエルフ「誰が人間の汚い言葉なぞ理解できるか!この…!」

男「ッ…止せ!」

ダークエルフ「…うるさい!」バッ!

使者「うお!?」

63: 2012/04/27(金) 02:27:53.85
ダークエルフ「………」

使者「…あまり躾が行き届いてはいないようですな」

男「最近、買ったばかりでな…すまないことをしたな…これは詫びだ。取っておきたまえ」

使者「いえ、まぁ…それでは仕方ありませんな。…あぁ、そうでした。これはいつもの物です」

男「ご苦労。次はこういうことのないよう気をつけさせよう」

使者「しかし、エルフはなかなか強情と聞きます。僭越ですが、こんな野蛮な使用人はさっさと売り払い、新しい使用人を雇うべきかと…」

男「忠告、痛み入る…」

使者「こんなものは檻で買うくらいが調度良いのですよ。それでは私はこれで…」

男「うむ」

65: 2012/04/27(金) 02:41:42.26
ダークエルフ「くそ…!こんな首輪さえなければ…!」

男「…八つ裂きにでもしていたのか?」

ダークエルフ「当たり前だ!あんな侮辱…!」

男「…君はもう少し人間の世界での自分の立場というものを理解したまえ」

ダークエルフ「ッ…!」

男「私にだけ従っていれば良いという問題ではないのだよ。人間社会で生活するならそれに従う必要があるのだ」

ダークエルフ「…一時的なものだ。お前が氏ねば私は森に帰る!」

男「今は人間の中で生きていかねばならんだろう?」

ダークエルフ「…ッ…」

男「対外的には君は私…つまり人間の奴隷なのだ。それを忘れてはいけない」

ダークエルフ「………」

68: 2012/04/27(金) 02:51:17.77
男「まぁ、屋敷内においては君の人権は尊重される。あまり卑下することはない」

ダークエルフ「…感謝するとでも言えば良いのか?」

男「そんなことは私は望んでいないよ。…君は使用人としてここにいるのだから感謝の気持ちがあるとするなら行動で示してもらいたい」

ダークエルフ「………」

男「…例えば主に対する言葉遣いとかはどうだろうかね?」

ダークエルフ「…以後気をつけます」

男「結構。…それと書斎まで水を一杯頼む」

ダークエルフ「…はい、かしこまりました」

70: 2012/04/27(金) 03:05:28.12
男「…他の使用人?」

ダークエルフ「はい。この屋敷には私以外に何故誰もいないのですか?」

男「それは解雇したからに決まっているだろう?」

ダークエルフ「…解雇?」

男「私は隠棲することにしたのだよ。だから必要最低限のもの以外は全て手放した」

ダークエルフ「使用人は必要では?」

男「…だから君を買ったのだ」

ダークエルフ「………」

男「君は期待以上によくやってくれている。問題はない」

ダークエルフ「…そうですか」

72: 2012/04/27(金) 03:08:32.65
ダークエルフ「お食事の準備が整いました」

男「…時間が正確なのは良いのだが…またフルーツの盛り合わせか?」

ダークエルフ「…胡桃もあります」

男「…前言を撤回しよう。食事以外はよくやっている、だ」

ダークエルフ「………」

男「材料だけを運んでもらえば十分と思っていたが、今度からは調理品もいくつか持ってきてもらうとするか…」

ダークエルフ「それがよろしいかと」

男「………」

74: 2012/04/27(金) 03:14:08.54
女「今日の分でございます」

ダークエルフ「…ありがとう」

女「………」

ダークエルフ「私が珍しい?」

女「あ、いや…そういうわけでは…き、今日のメニューはビーフシチューと川魚のムニエル、それとパンも…」

ダークエルフ「隠さなくても平気よ。人間からどう見られるかはわかっているつもりだもの」

女「あ…」

ダークエルフ「鍋は明日、運んでもらったときに返すわ。それじゃ…」

女「は、はい…」

77: 2012/04/27(金) 03:20:39.07
男「ちょっと良いかな?」

ダークエルフ「…なにか?」

男「少し外に出ようと思うのだ。…いつも書斎に篭っていてはカビが生えてしまうからな」

ダークエルフ「そうですか。お気をつけて…」

男「いや、君にもついて来てもらいたいのだよ」

ダークエルフ「…私もですか?」

男「草木については君の方が詳しいだろう?図鑑だけではやはりよくわからんしな…」

ダークエルフ「…わかりました。すぐに準備いたします」

男「うむ」

78: 2012/04/27(金) 03:33:12.43
男「…少し奥に入るだけでもずいぶんと様子が変わるものだな」

ダークエルフ「…今の人間の町は森を切り取って作ったようなものですから」

男「………」

ダークエルフ「昔はもっと南にまで森は続いていました。…あの辺りまででしょうか」

男「なるほど…これほど削り取れば君達と人間との間に軋轢が生じるのも無理はないな」

ダークエルフ「…少し違います」

男「……?」

ダークエルフ「…いえ」

男「ふむ…」

79: 2012/04/27(金) 03:39:52.59
ダークエルフ「…これは胡桃ですね」

男「ほう。確かに図鑑の通りだが…いくぶん樹皮が違うな…」

ダークエルフ「いくつか種類がありますから…ちなみに、前に出した胡桃はこの辺りで取りました」

男「…取った…?」

ダークエルフ「はい、このように」

男「………」

ダークエルフ「どうかしましたか?」

男「それでは拾い食いではないか…?」

80: 2012/04/27(金) 03:45:31.54
ダークエルフ「…御主人様、食べ物が天から降ってくるとでも思っているのですか?」

男「…私とてそこまで無知ではないよ。しかし畑ならともかく、このような山林に落ちた物を食べると思うとな…」

ダークエルフ「…それを無知というのですよ」

男「うぬ…!」

ダークエルフ「…私達からすればこのようなものを食べられることすら幸せなのです」

男「…そ、そうだったな…すまない」

ダークエルフ「………」

82: 2012/04/27(金) 03:52:38.01
男「はぁはぁ…」

ダークエルフ「………」

男「す、少し休もう…私はもう歩けん…」

ダークエルフ「…もうですか?」

男「…ふー…言っただろう?書斎に篭りきりだと。…君の歩くペースは早過ぎる」

ダークエルフ「それは申し分ないことを…」

男「…本当にそう思っているのかね?」

ダークエルフ「……?」

男「…森に入った途端に強気ではないか。以前、君の人権は尊重すると言ったが、それは使用人としての責務を…」

ダークエルフ「…しっ…!」

男「ん?…どうかしたのか?」

84: 2012/04/27(金) 03:59:47.85
ダークエルフ「………」

男「………」

ザワザワ…

男「…何もないではないか?」

ダークエルフ「………」

男「おい、ダークエルフ?」

ダークエルフ「…そのようですね。ではそろそろ帰りましょう」

男「…まだ私はろくに休んではいないの…」

ダークエルフ「…氏にたくなければ早くここから離れろ」

男「なに?」

ダークエルフ「この辺りはエルフの里に近いらしい…私達がうろちょろしていては目障りだとさ」

男「…エルフ…」

87: 2012/04/27(金) 04:09:42.30
男「………」

ダークエルフ「………」

男「ひとつ聞きたいのだが…」

ダークエルフ「…はい」

男「先程は何故逃げなかったのだ?エルフは君の…同族ではないのか?」

ダークエルフ「…違います」

男「違う?しかし…」

ダークエルフ「肌を見ればわかるでしょうが…私はダークエルフです」

男「…普通のエルフではないのか?」

ダークエルフ「………」

89: 2012/04/27(金) 04:19:43.62
ダークエルフ「…エルフ族とダークエルフ族は元はひとつの種であったと聞きます」

男「………」

ダークエルフ「いつの頃から、私のようなダークエルフが生まれたのかは定かではありませんが…」

男「………」

ダークエルフ「…エルフ族にとってダークエルフとは汚点とも言える存在なのです」

男「それは何故だ?」

ダークエルフ「肌の色が気に入らないのでしょう。黒は闇を現し、それはエルフの敵ですからね」

男「エルフも人間も似たようなものなのだな…」

ダークエルフ「……?」

91: 2012/04/27(金) 04:40:41.22
男「君も奴隷市場にならんだ人間を見ただろう?」

ダークエルフ「………」

男「あの場に並ぶ者と買う者との差異はほとんど肌の色の違いしかない」

ダークエルフ「………」

男「…そういった部分が同じと思っただけだ」

ダークエルフ「…くだらないですね。どちらも」

男「………」

ダークエルフ「そうは思いませんか?」

男「…やはり森の中では気が大きくなるのだな。私がその問いには応えられないと知っているだろう?」

ダークエルフ「…あら?そうでしたか?」

男「…君ね」

ダークエルフ「…ふふふ」

136: 2012/04/27(金) 12:49:44.27
男「…はぁ…はぁ…」

ダークエルフ「…お加減はいかがです?」

男「…絶好調だ。君が三人に増えて見える…得なことだよ」

ダークエルフ「………」

男「…まぁ…少々ピントが合わないのが残念と言えば残…ゴホッ!」

ダークエルフ「…まさかあれだけの運動で体調を損なわれるとは…ずいぶんとひ弱な方ですね」

男「…歩くペースが早過ぎるから休もうとは言ったのだがね…?」

ダークエルフ「………」

男「…もう寝る。下がってくれ」

ダークエルフ「…はい」

141: 2012/04/27(金) 13:04:31.50
ダークエルフ「………」ゴリゴリ…

男「…何をしている?私は下がれと言ったはずだが…」

ダークエルフ「薬草を煎じてさしあげます。…少しは楽になるでしょう」ゴリゴリ…

男「………」

ダークエルフ「………」ゴリゴリ…

男「…君に私へそこまで尽くす義理はないと思うのだが…どういう風の吹きまわしかな?」

ダークエルフ「…待遇はどうあれ、住居と食べ物を頂けることには感謝していますから」カチャカチャ…

男「………」

ダークエルフ「どうぞ」

男「…この薬…苦くはないのかね?」

ダークエルフ「苦いですよ。…とても」

男「…う…む」

144: 2012/04/27(金) 13:10:28.60
ダークエルフ「もうよろしいのですか?」

男「ベッドに横になっていても面白くないからな。ずいぶん楽になった…君の薬草とやらが効いたのだろう」

ダークエルフ「………」

男「…しかし次はあまり苦くないものを頼む。体は良くなったが、舌がまだ痺れたままだ…」

ダークエルフ「では体力をつけることです。病にかからなければ薬は必要ありませんからね」

男「…そうだな」

ダークエルフ「そういえばいつもの荷が届いておりました。後でお運びします」

男「そうか…すまない。では頼む」

ダークエルフ「はい」

146: 2012/04/27(金) 13:17:08.47
男「………」ガサガサ…コトッ…

ビン

男「これももうあまり効かんな…」

男「………」



ダークエルフ「お出かけですか?」

男「少し街の方へ出てくる。留守を頼むよ」

ダークエルフ「…わかりました」

男「何か欲しいものがあるなら言いたまえ。私の気分次第で土産を買ってこよう」

ダークエルフ「そうですね…では…」

男「うむ?」

148: 2012/04/27(金) 13:21:03.29
ダークエルフ「自由、というのはいかがでしょうか?」

男「………」

ダークエルフ「………」

男「…残念だが、それは無理というものだ。君は…私のものなのだから」

ダークエルフ「…でしょうね」

男「聞いたのは私だが、あまり困らせるような願いはやめてもらいたい」

ダークエルフ「…かしこまりました」

男「では行ってくる」

ダークエルフ「はい。…お気をつけて」

150: 2012/04/27(金) 13:35:36.97
『…呼んで頂ければこちらから出向きましたのに…』

男「まぁ、少し事情があってな。…それに私はまだこれだけ動けると、お前に誇示もしたかったのだよ」

『…あまり無理をしないことです』

男「………」

『男様が思っている以上に容態は進行しております』

男「…そうか」

『しばらくすれば動くことも出来なくなりましょう…』

男「それはいつ頃になる?」

『そこまではわかりませんが…そう遠いことではないでしょうな…』

男「………」

152: 2012/04/27(金) 13:41:20.30
男「………」

ダークエルフ「お帰りなさいませ」

男「うむ。…何か変わったことはあったか?」

ダークエルフ「いえ、特には…」

男「そうか…ご苦労だった」

ダークエルフ「………」

男「………」

ダークエルフ「…何か?」

男「…いや、なんでもない。おっと、そうだ…」ガサ…

ダークエルフ「…これは…カフス?」

男「気分次第で土産を買ってくると言っただろう?」

153: 2012/04/27(金) 13:49:33.61
男「何を買ってくれば良いか良くわからなかったのだが…ふとその長い耳を思い出してな」

ダークエルフ「…安易ですね」

男「私もそう思うよ。…いらないならば捨ててくれて…」

ダークエルフ「……?」

男「どうした?」

ダークエルフ「…何か…魔力が込められているようですね…?」

男「…そうなのか?露店商から買ったのだが…私にはよくわからん」

ダークエルフ「首輪さえなければ判別も可能なのですが…」

男「不安ならば捨てれば良い。はした金だ」

ダークエルフ「…いえ、いただきます。ありがとうございます」

男「………」

154: 2012/04/27(金) 13:56:32.17
ダークエルフ「おはようございます」

男「ん…うむ…」

ダークエルフ「…朝食の用意が出来ております」キラッ…

男「…付けてくれたのか」

ダークエルフ「…せっかくなので…」

男「…よく似合っている」

ダークエルフ「…ありがとうございます」

男「…では冷めないうちに朝食をいただくとしよう。今日のメニューはなんだね?」

ダークエルフ「はい。ベーコンと焼き卵、サラダ…」

157: 2012/04/27(金) 14:15:41.68
女「本日の分でございます」

ダークエルフ「ありがとう」

女「ずいぶんこちらには慣れたようですね?」

ダークエルフ「えぇ、おかげ様で」

女「………」

ダークエルフ「…どうかしたの?」

女「あ、いえ…その耳…」

ダークエルフ「耳?…あぁ、これは御主人様から頂いたの…」

女「え?耳を?」

ダークエルフ「……?」

159: 2012/04/27(金) 14:26:09.89
ダークエルフ「………」ピコピコ…

女「うわぁ…!すごい…!」

ダークエルフ「…これで満足かしら?」

女「はい!やっぱり伊達じゃないんですね!その耳!」

ダークエルフ「…人間ってよくわからないわ…」

女「はぁ…うさぎみたいでかわいいです…」

ダークエルフ「…う、うさぎ…?」

女「あ、いや…け、けなしてるわけじゃないですよ!?かわいいなぁ…って思っただけで…」

ダークエルフ「………」

女「ご、ごめんなさい…」

ダークエルフ「………」ピコピコ…

女「…あっ…//」キュン…

ダークエルフ「…本当…よくわからないわ…」

160: 2012/04/27(金) 14:34:53.56
ダークエルフ「………」ピコピコ…

男「…なんのつもりだね?」

ダークエルフ「…いえ、別になんでもありません」

男「ふむ?…ところで…」

ダークエルフ「はい?」

男「ここの生活にはずいぶん慣れたとは思うが…体調の方はどうだ?そろそろ疲れも溜まってきているだろう?」

ダークエルフ「…ちょっと歩かれただけで寝込む御主人様に心配されるほど私は貧弱ではありませんが?」

男「…なかなか言うね、君…」

163: 2012/04/27(金) 14:45:14.81
ダークエルフ「しかし…急にどうしたのですか?」

男「いやなに…少し気になっただけだよ。使用人の体調管理も私の仕事であることを思い出しただけだ」

ダークエルフ「………」

男「隠棲しているとはいえ、それなりに君には仕事を頼んでいるからね…」

ダークエルフ「…ならばもう少し人数を雇えばよろしいかと」

男「…なかなかいないのだよ。君のような……」

ダークエルフ「…私のような?」

男「君のような…美しい女性はね」

ダークエルフ「………」

165: 2012/04/27(金) 15:01:54.07
男「………」ペラッ…

ダークエルフ「紅茶をお持ちしました」

男「…すまないな。もう少しで読み終わるから少し待っていてくれ」

ダークエルフ「かしこまりました」

男「………」

ダークエルフ「………」

男「…少し良いかね?」ペラッ…

ダークエルフ「はい?」

男「…君は魔術には詳しいのか?」

ダークエルフ「魔術…?そんなものに興味がおありで?」

男「…なにもない所から火を生み出せればいつでも何処でも暖かい紅茶が飲める…とは思わんか?」

169: 2012/04/27(金) 15:26:29.77
ダークエルフ「…思いません。魔術はそう軽々しく扱うべきものではありません」

男「なるほど…では諦めよう」パタン…

ダークエルフ「………」

男「待たせたね、紅茶を頼む」

ダークエルフ「…人間が魔術などに関わるとろくなことがありませんよ?」コポコポ…

男「…承知しているよ」

ダークエルフ「なに?」

男「承知した、と言ったのだ。…それよりなにとはなんだ、なにとは?」

ダークエルフ「…失礼しました…」

男「結構」

170: 2012/04/27(金) 15:33:31.05
男「ご苦労だった。…下がって休め」

ダークエルフ「…はい」



ダークエルフ「………」

ダークエルフ「…ッ……」フラッ…

ダークエルフ「くそ…なんだ…このけだるさは…?」

男『…体調の方はどうだ?そろそろ疲れも溜まってきているだろう?』

ダークエルフ「………」

ダークエルフ「…そんな…はずは…」

171: 2012/04/27(金) 15:43:45.27
男「ダークエルフ?夕飯はまだかね?」

男「…いないのか?…ん?」

ダークエルフ「………」

男「ダークエルフ!?」



男「やはり無理だったか…」

ダークエルフ「………」

男「………」

ダークエルフ「…う…?」

男「…気が付いたかね?」

ダークエルフ「……?」

172: 2012/04/27(金) 15:51:14.80
ダークエルフ「私は…一体…?」

男「…廊下に倒れていたのだよ」

ダークエルフ「そうか…」

男「君の部屋に勝手に入るのは失礼かとも思ったのだが…私のベッドに寝かせるよりは良いと思ってな」

ダークエルフ「…申し訳ありません。ご迷惑を…」

男「…いや、それは違う」

ダークエルフ「……?」

男「君が倒れたのは私のせいなのだからな…」

ダークエルフ「…どういうことです?」

174: 2012/04/27(金) 16:04:13.01
男「これだよ」チャリ…

ダークエルフ「カフス…?」

男「…君は以前、このカフスには魔力が込められていると言ったな?」

ダークエルフ「………」

男「その効果とは吸魔と魔力送還だ。つまり君は魔力不足を起こして倒れたのだ…私の手によってな」

ダークエルフ「………」

男「…すまないことをしたと思っている」

ダークエルフ「…何故…?」

男「………」

ダークエルフ「何故そんな真似をした!?答えろ!」

男「………」

176: 2012/04/27(金) 16:24:33.64
ダークエルフ「………」

男「………」

ダークエルフ「…結局お前も他の人間どもと同じだったというわけか…」

男「…否定はしない。いや…私に否定などは出来ないだろう。…その通りだ」

ダークエルフ「…ははっ…」

男「………」

ダークエルフ「ははは…何が御主人様だ?後々、自由にしてくれるならばと仕えて見ればこの様…」

ダークエルフ「…馬鹿馬鹿しい…」

男「…ダークエルフ…」

178: 2012/04/27(金) 16:28:46.26
ダークエルフ「…出て行け。今すぐにだ」

男「………」

男「…屋敷内ではこれまで通り好きにしてくれていい。…それと今後、私の言に従う必要もない」

ダークエルフ「………」

男「…ゆっくり休んでくれ」

バタン…

ダークエルフ「………」

チャリ…

ダークエルフ「……くそ…!」

180: 2012/04/27(金) 16:41:03.60
女「毎度どうもでございま…」

男「ああ、すまないね」

女「お、男様!?」

男「…何を驚く必要がある?この屋敷の主は私だぞ?」

女「それはそうですが…このようなことを主自らとは…」

男「ダークエルフが少々、体調を崩してね…」

女「そうなんですか?心配ですね…あ、男様も大変ですね?」

男「自業自得とはいえ、ついでのように言われたくはないのだが…」

女「も、申し訳ありません…!」

男「…冗談だよ。真面目だね、君も…そういえば君はダークエルフとは親しいのか?」

女「はぁ?親しいかどうかはわかりませんが、毎朝の仕入れで二言三言くらいはお話しますけど…」

男「ふむ…」

181: 2012/04/27(金) 16:46:04.07
コンコン…

ダークエルフ「………」

『私です、女です。ダークエルフさん、いますか?』

ダークエルフ「…女?…いや、人間など…」

『お加減が悪いと聞いたのでお見舞いに…』

ダークエルフ「………」

『ダークエルフさーん?』

ダークエルフ「………」

『ダークエルフさん…』

ダークエルフ「………」

『…ダークエルフさぁん…』

ダークエルフ「…えぇい!しつこいな!」ガバッ!

182: 2012/04/27(金) 16:55:51.88
女「元気そうでよかったです」

ダークエルフ「…結局…引き入れてしまった…」

女「大丈夫ですか?何か欲しいものでも…」

ダークエルフ「…大丈夫よ。すぐに良くなるから心配しないで」

女「あ、そういえば今朝は男様が裏口に立ってまして…私すごくびっくりしたんですよ!」

ダークエルフ「………」



女「すみません、お見舞いなのに長々と…お邪魔しました」

ダークエルフ「そう思うなら来なくてよかったのに…」

女「そ、そういうこと言うんですか?ひどい…」

ダークエルフ「…人間よりマシよ」

女「…え?」

185: 2012/04/27(金) 17:11:20.46


ダークエルフ「………」

ダークエルフ『忘れものよ?』

女『あ、それはお見舞いの品です。渡すの忘れちゃった…』

ダークエルフ『お見舞いの品…』

女『元気が出そうなのを片っ端から持って来ました!それを食べて早く良くなって下さいね!』

ダークエルフ「………」ゴソゴソ…

肉肉肉
肉肉 肉肉肉
肉肉肉肉肉

ダークエルフ「…肉ばっかりじゃ…?」

ビン

ダークエルフ「これは…?」

187: 2012/04/27(金) 17:21:17.59
コロン…

ダークエルフ「…魔結晶…しかもかなりの高純度だな…」

ダークエルフ「確かに失った魔力を補填するにはうってつけだが…何故こんなものをあの子が…」



男「…うお!?」ドガシャ!

男「…くっ…動け!動かんか…!」

男「ふー…もう脚も上がらん…」

男「………」

188: 2012/04/27(金) 17:27:07.08
女「おはようございますー」

ダークエルフ「………」

女「あ!もう良くなかったんですか!?さすが霜降りは違いますねぇ!」

ダークエルフ「…ちょっと聞きたいんだけど…これを何処で手に入れたの?」

女「え?…そのビンですか?」

ダークエルフ「正確にはその中身だけれど…」

女「中身は知りませんが…ビンは男様から頂きましたよ?」

ダークエルフ「…なんだと?本当か!それは!?」

女「え?えぇ!?」

189: 2012/04/27(金) 17:32:34.79
ダァン!

ダークエルフ「男!貴様…」

ダークエルフ「…いない?」

ダークエルフ「くそ…!」



ダァン!

ダークエルフ「男!」

ダークエルフ「…ちっ…!」

ダァン!

ダークエルフ「…ここにもいないか…!」

ダークエルフ「何処へ行ったのだ、あいつは!?」

196: 2012/04/27(金) 17:50:20.34
ダークエルフ「はぁ…はぁ…」

男「………」

ダークエルフ「…こんな所にいたのか…!」

男「…よくこの場所がわかったな」

ダークエルフ「屋敷の外でここ以外を知らなかっただけだ!」

男「ふむ…ならよく来たというべきか?」

ダークエルフ「…どこまでも私を小馬鹿にして…!」

男「それはすまなかったな…」

ダークエルフ「貴様…!」

198: 2012/04/27(金) 18:04:15.48
ダークエルフ「これはなんのつもりだ!?」

コロン…

男「魔結晶か…」

ダークエルフ「何故貴様がこんなものを持っている?何故私に送った?」

男「………」

ダークエルフ「…餌に釣られて素直に従う私を見て楽しんでいたような奴が何故…!」

男「…それは半分正しいが半分間違いというものだよ」

ダークエルフ「なんだと…?」

男「確かに私は君を見て楽しんではいたが…それ自体は私の目的ではない。単なる副産物だ」

ダークエルフ「…副産物だと…!?」

202: 2012/04/27(金) 18:29:54.14
男「私が欲したのは君自身…正確には種族特有の高い魔力だ」

ダークエルフ「…魔力?」

男「そうだ。私は慢性的な魔力不足を抱えていてね。…その石ころで補っていたのだが…それももう限界に近づいていたのだよ」

ダークエルフ「魔力が枯渇するなど…馬鹿な…」

男「君だって首輪で制限された状態だったとはいえ、魔力を失って気を失っただろう?」

ダークエルフ「それは貴様が私から魔力を奪ったからだろうが!」

男「そうだな…私が君から魔力を補填したから君は倒れた。…ああなることは予測出来たのだが…すまなかったな」

ダークエルフ「なにをいまさら…!」

205: 2012/04/27(金) 18:43:39.78
男「許してくれとは言わん。ただ君への懺悔の気持ちは本心だ。それだけは信じてほしい」

ダークエルフ「謝るくらいなら最初からするな!そうすれば私はこんな…こんな…!」

男「…君に私の気持ちは理解出来ないだろう」

男「…自由に動かない体…慢性的ゆえ魔力が安定せず、ダメージを受け少しずつ機能を失って行く手足…」

ダークエルフ「………」

男「最終的にはただ呼吸するだけの存在となり、それもじきに止まる。そんな最後は向かえたくなかった」

ダークエルフ「………」

206: 2012/04/27(金) 18:48:09.09
ご飯

212: 2012/04/27(金) 19:08:36.89
男「君を見つけた時はまさに女神に出会ったような気分だった。…だが、手に入れると今度は不安が襲ってきた」

男「いつ私の手元から消えてなくなるか…とね。今思えば素直に君に頼むべきだったのだ」

ダークエルフ「………」

男「しかし、その可能性は私が潰してしまった。女神は私自身が手放したのだ」

ダークエルフ「…その通りだな」

男「…相変わらず手厳しい」

ダークエルフ「お前が軟弱だからだ」

男「ははは…違いない」

214: 2012/04/27(金) 19:26:24.07
ダークエルフ「…諦めるつもりでここに来たのか?」

男「…そうしても良いとは思った」

ダークエルフ「何故だ?姑息な手を使ってまで自由を欲したのだろう?」

男「それこそ副産物だよ」

ダークエルフ「……?」

男「君と過ごした時間は短かったが…私は充実した毎日を送れた。ムッとしながらも私のためにあれこれ働く君は実にかわいらしかった」

ダークエルフ「…的を得ていないが…」

男「…無為に過ごすことほど無意味なことはないということだ」

ダークエルフ「………」

225: 2012/04/27(金) 20:05:06.89
男「そのことに気が付いた時、私は今のまま消えることを選んだ…」

男「…つもりだったのだがね。…今、君との会話がどうしようもなく楽しいのだ…」

男「…後悔と愚痴、懺悔…それだけの内容なのだがね…まったく情けない」

ダークエルフ「………」

男「…しかしまぁ…いつまでもこうしているわけにもいかんな…」

男「…我、汝を縛るその戒めを解き放たん…」

パキッ…

ダークエルフ「首輪が…?」

男「少し早いが…これまでの報酬だ」

ダークエルフ「………」

男「行け。何処へなりとも」

228: 2012/04/27(金) 20:13:48.53
ダークエルフ「…お前はどうする?」

男「君が持ってきた魔結晶がある。屋敷までは帰れるだろう」

ダークエルフ「その後は?」

男「………」

ダークエルフ「…まぁ良い。私にはもう関係のないことだ」

男「今度は捕まらんようにな?」

ダークエルフ「…うるさい」タッ!

男「………」

230: 2012/04/27(金) 20:18:23.48
ザー…ザー…

女「雨ですか…ダークエルフさん、外に飛び出して行ったきりですけど…大丈夫かな…」



男「………」

ダークエルフ「………」

男「…森に帰ったのではないのか?」

ダークエルフ「…お前こそ何故まだこんな所にいる?」

男「………」

ダークエルフ「………」

234: 2012/04/27(金) 20:29:30.15
男「………」

ダークエルフ「…帰らないのか?」

男「何処へだね?」

ダークエルフ「屋敷に」

男「あぁ、雨が降って来たからな。雨宿り中なのだよ。…君は?」

ダークエルフ「…奇遇だな。私も雨宿りだ」

男「………」

ダークエルフ「………」

男「…帰ってきて欲しい…とはわがままなのだろうな」

ダークエルフ「…手放したのはお前だろう?」

男「それはそうなのだが…」

ダークエルフ「………」

241: 2012/04/27(金) 20:44:56.00
ダークエルフ「…女々しい男だ。主という名目がなければ私に何も言えんのか?」

男「…ぐっ…!」

ダークエルフ「はぁ…」

男「しかしな…先程あれだけ情けない姿を晒しておいて、なんとか最後に格好を付けたというのに…」グチグチ…

ダークエルフ「私が今どんな状況にあると思う?」

男「…雨宿りか?」

ダークエルフ「…馬鹿か?貴様?」

男「…うぐっ…!」

ダークエルフ「私はこれから一人で生きて行かなければならん」

男「………」

244: 2012/04/27(金) 21:01:30.57
ダークエルフ「しかし、近場の森にはエルフ。町には人間。正直、心許ない…」

男「なら私の屋敷をやろう。おそらく私にはもう必要な…」

ダークエルフ「…違う」

男「…ではどうしろと言うのだ?」

ダークエルフ「私を雇えと言うのだ」

男「なに…?」

ダークエルフ「もう一度…使用人としてな」

男「…ダークエルフ…」

ダークエルフ「そもそも最初の約束からして『お前の氏』をもって私は自由になるはずだっただろう?」

男「………」

ダークエルフ「…まだお前には息があるではないか」

247: 2012/04/27(金) 21:13:26.55
男「…良いのか?」

ダークエルフ「今の状況で野に放たれるよりはマシだ」

男「………」

ダークエルフ「お前には私が必要なのだろう?私にもお前が必要なのだ…少しだけな」

男「…ありがとう」

ダークエルフ「…そう思うなら厚遇するのだな。でなければ出て行く」

男「肝に命じる」

252: 2012/04/27(金) 21:32:40.03
女「おはようございます。本日のお届けものでございます」

ダークエルフ「ありがとう」

女「…あれ?首輪みたいなの外したんですか?」

ダークエルフ「えぇ、必要無くなったから。…御主人様?」

男「…ん?」

ダークエルフ「荷物が重いので運んで頂けますか?」

男「馬鹿を言うな。…使用人は君だろう?しっかり職務を果たしたまえ」

ダークエルフ「…主に戻った途端に強気になりましたね」

256: 2012/04/27(金) 21:45:39.74
男「私は君を雇っているのだから当然だ。そもそも…」

ダークエルフ「…まぁ女々しいよりはよろしいかと存じます。ふふふ…」

男「…ぐっ…!」

女「…女々しい、ですか」

ダークエルフ「えぇ、実はこの間…」

男「ま、待ちたまえ!」

ダークエルフ「…はい?」

男「…君、少し意地が悪くなったんじゃないかね?」

ダークエルフ「…さぁ?」

男「…前言を撤回しよう。君は女神ではなく悪魔だったようだな…チクチクといつまで私を責め立て…」

ダークエルフ「…実はあの後、胡桃の木がある林で御主人様を見つけて…」

男「あ!だから待ちたまえと…!」

ダークエルフ「はい?…うふふ」

終わり

257: 2012/04/27(金) 21:46:37.76
携帯でさーせんした

258: 2012/04/27(金) 21:46:51.01
乙!おもしろかった!

259: 2012/04/27(金) 21:47:51.10
賞賛汁 乙

261: 2012/04/27(金) 21:48:22.20

引用元: ダークエルフ「私を買うだと?」