1: 2021/04/20(火) 18:10:27.692
神『あー、テステス』

男「?」

神『私は神だ』

男「か、神様!?」

神『この声は全人類に向かって投げかけている。老若男女人種に関係なく、全員にだ』

男「マジかよ!?」

神『お前たちは常々“こいつさえいなくなれば世の中もっとよくなるのに”と思っているだろう』

神『そこでだ。全人類で投票を行い、最も票を集めた人間を消滅させてやることにした』

神『私にかかれば、どんな人間だろうと消滅できる。ささやかなプレゼントだと思ってくれ』

男「消滅……!?」

13: 2021/04/20(火) 18:13:43.860
神『投票は今から168時間後としよう』

男「168時間……24で割ると、えーと……ちょうど七日後か」

神『投票といっても、なにもお前たちがどこかに移動する必要はない』

神『投票の時間になったら、私が再びお前たちに声を届ける』

神『その時、頭の中で消したい人間を思い浮かべればそれで投票することができる』

神『なお、投票の結果は全人類に公表することとする。ではさらばだ』

男「……」

男「なんだったのは今のは……」ギュッ

男「痛い……夢じゃないってことか」

男「まぁいいや。とりあえずバイト行くか」

18: 2021/04/20(火) 18:16:14.244
男「ちわーっす!」

女「おはよう!」

男「……あのさ」

女「なに?」

男「さっき……神様からの声、聞こえた?」

女「聞こえた聞こえた! やっぱり私だけじゃなかったんだ!」

男「ってことはマジなのかあれ!」

女「店長が来たら、一応確認してみた方がいいかもね」

20: 2021/04/20(火) 18:19:40.620
店長「おはよう」

男「おはようございます」

女「おはようございます」

男「店長、神からの声って聞こえました?」

店長「ああ、さっきの……聞こえたよ。全人類投票を行うってやつだろ?」

男「店長も聞こえたんだ!」

女「どうやら夢とかじゃなさそうね」

21: 2021/04/20(火) 18:22:16.254
男「神様もひどいことするもんだ」

女「ねー」

男「なんでまた、こんな悪趣味なことするんだろう?」

店長「それこそ暇を持て余した神の遊び、といった程度のものなんだろう」

店長「プレゼントといってたし、“一番消えて欲しい奴が消えればみんな喜ぶだろ?”ぐらいのさ」

男「神様の考えることは分からねえ……」

店長「だから神様なんじゃないか?」

男「深いこといいますね店長」

26: 2021/04/20(火) 18:25:20.657
男「店長は誰に入れますか?」

店長「まだ決めてないし、そもそも決めててもいわないよ」

女「そりゃそうですよね」

店長「俺の場合、君たちに投票されないように気をつけないとな」

男「アハハッ、その手もあったか」

女「投票されたくなかったら時給高くしてください!」

店長「ただし、俺が君らのどっちかに入れる可能性もあるから気を付けるんだぞ」

男「やべっ!」

30: 2021/04/20(火) 18:28:25.661
男(家に帰ってテレビを見ると……)

TV『本日皆さまに聞こえたであろう“神の声”についてのニュースです』

TV『番組独自に行った調査によると、やはり100%の人が聞こえたと回答しており……』

TV『幻聴の類であるという可能性は低いと……』

男(このニュースで持ちきりだ)

男(神の声が全ての人間に届いてるってのも確かみたいだ)

31: 2021/04/20(火) 18:31:24.500
TV『ここで神の声に対する街のインタビューです』

TV『担任の先生に入れよっかな~、マジムカつくし!』

TV『全く信じてません。集団催眠かなにかですよ』

TV『やっぱり悪人に入れるのが一番いいんじゃないんですか?』

TV『上司に一票入れます!』

男(反応は人それぞれ……中にはまだ信じてない人もいる)

33: 2021/04/20(火) 18:34:27.345
TV『おっと、ここで速報です』

男「?」

TV『総理が緊急記者会見を開く模様です』

男「総理が?」

TV『さっそく現場から中継を繋ぎます』

男「なんだなんだ?」

35: 2021/04/20(火) 18:37:20.537
記者会見――

パシャッ パシャシャッ

総理『えー、国民の皆様、こんばんは。総理です』

総理『このたび、聞こえた神の声についてですが、皆さま決してパニックにならぬよう……』

男「……」

男(なにをいうかと思えば、当たり障りのない会見だな)

総理『最後に一つ申し上げます』

男「ん?」

36: 2021/04/20(火) 18:40:16.990
総理『あの、どうか私には入れないで頂きたい!』

総理『たしかに至らぬ点もあると思いますが、私はまだ消えたくない!』

総理『どうか、どうか……お願いします!』

総理『頼むから私に入れないでくれぇぇぇ! この通りだぁぁぁ!』

男「……情けねえ」

男(とはいえ、有名人ほど一位になりやすい投票ってのはたしかだからな。気持ちは分かる)

38: 2021/04/20(火) 18:43:16.763
その後もテレビや動画サイトで――

コメンテーター『私は辛口コメントばかりしてきましたが、決して本心じゃありません!』


アーティスト『反社会的な歌ばかり歌いましたが、投票しないで下さい!』


芸人『俺に投票しないで下さい! ホンマ頼みます! まだ子供小さいんです!』




男(嫌われてると自覚してる有名人が、こぞって命乞いし始めたな)

42: 2021/04/20(火) 18:49:58.175
バイト先――

男「面白いよな。やっぱみんな命は惜しいんだな」

女「不謹慎よ。消えたくないってのは当然の想いじゃない」

男「ごめん、失言だった」

店長「しかし、滑稽ではあるな。彼らが選ばれる可能性なんてないに等しいんだし」

男「どういうことです?」

店長「考えてみな。なにしろ全世界投票だ。日本でだけ有名な人が選ばれる可能性は少ない」

店長「もし仮に日本中から嫌われてる人間がいたとしても、得票数はせいぜい1億ちょい」

店長「そんなんじゃ、おそらくベスト10にも入れないだろう」

男「まあ、たしかに」

女「そりゃそうですよね」

46: 2021/04/20(火) 18:52:07.383
男「店長は、どこの誰が一位になると思いますか?」

店長「俺の予想じゃ、どこぞの大国のトップとか、あるいはテロ組織の首領が選ばれるんじゃないかな」

男「結局そういう人達ですか」

女「今頃候補の人達は気が気じゃないでしょうね」

店長「ってわけだ。この投票は我ら庶民にはなんら関係ない。気楽に過ごそうじゃないか」

店長「さぁ、仕事仕事!」

男「はいっ!」

女「あ、お客さん来た。いらっしゃいませー」

49: 2021/04/20(火) 18:55:13.683
男(店長の言う通りだ……)

男(今回の件、全人類に投票権があるから、一見みんなに関係あるように見えるけど)

男(実際にはなーんも関係ない)

男(身近なことであるように見えて、遠い世界の話なのだ)

男(いつもやってる普通の選挙だって、俺がどの候補者に入れようと全く影響はない。それと同じだ)

男(神の声から3~4日も経つと、俺は投票のことなどすっかりどうでもよくなっていた)

50: 2021/04/20(火) 18:57:34.082
男(バイトして――)

男「いらっしゃいませー!」



男(メシ食って――)

男「このトンカツ弁当うめぇ~!」パクパク



男(寝て――)

男「ぐぅ、ぐぅ、ぐぅ……」

53: 2021/04/20(火) 19:00:16.436
男「いよいよ明日の今頃が投票かー」

女「そうだね」

男「どうする? 誰に入れるか決めた?」

女「ううん、決めてない」

男「俺も。どうせ誰に入れたって結果は変わらないし」

女「とはいえ、人を消す票を誰かに入れるのはちょっと気が引けるね」

男「そこでなんだけど……」

女「?」

55: 2021/04/20(火) 19:03:29.570
男「俺らは二人で、お互いに入れ合わないか?」

男「当人の知らないところで一票を投じるのは陰口叩いてるみたいでちょっと嫌だけど」

男「こうやって予告して入れれば、罪悪感も薄れるしさ。どうせお互い消滅することもないし」

女「それいい!」

男「じゃ、俺らはお互いに一票を入れ合うということで!」

女「うん!」

58: 2021/04/20(火) 19:06:25.174
……

……

神『168時間が経過した。これより投票タイムに入る』

神『皆の者、“消したい人間”に投票するがいい』

男「よし……!」

男(俺の一票はバイト先の……“女”だ)

男(おっ、投票できた感覚がある。あっけないもんだな。今頃あっちも俺に入れてるかな)

59: 2021/04/20(火) 19:09:19.934
神『全人類の投票が終わり、集計も済んだ』

神『投票数は78億1605万3844票だ』

神『これより結果発表に移る』

男「……」ゴクッ

男(俺は全く関係ないとはいえ、緊張するな……。果たしてどこの誰が消えることになるのか……)

神『順位はこの通りだ』

62: 2021/04/20(火) 19:12:23.025
一位 男 7,816,053,843

二位 女 1



男「……え?」

神「というわけだ。78億1605万3843票を獲得したおぬしをこれより消滅させる」

男「はぁ!?」

男「ちょ、ちょっと!? ちょっと待って下さい!?」

神「なんだ」

65: 2021/04/20(火) 19:15:52.996
男「どうして俺なんです!? なんで俺!?」

神「皆から“消えて欲しい”と思われたからだろう」

男「なんで!? 理由が知りたい!」

神「理由? さぁな。そんなもの人それぞれだろう」

男「そんなんじゃ納得できない! だって俺しがないフリーターですよ!? 何一つ悪いことしてないし!」

男「俺以外の老若男女全人類から消えて欲しいと思われる心当たりがまるでありません!」

神「他人から嫌われるというのは案外そういうものではないのか」

男「そりゃ嫌ってる人もいるでしょうけど……全人類はおかしい! 俺、海外に行ったこともないし!」

男「全世界で俺を知ってる人間なんて、1%にも満たないはずだ!」

神「“はず”といわれても、知られてるんだから仕方なかろう」

男「仕方なくないですよ!」

神「じゃあ仮に投票した者全員から理由を聞いたところで、お前は納得できるのか? 納得して消滅できるのか?」

男「それは……」

神「まあ仮に納得するとしても、そんな面倒なことはせんがな。この結果が全てだ」

神「では、消滅させてやろう。さらばだ」

男「待っ――」シュンッ

67: 2021/04/20(火) 19:18:21.734
男のかーちゃんとーちゃんも息子に入れてるのかよ

68: 2021/04/20(火) 19:18:47.132
神「全人類よ、たった今得票数一位の者を消滅させた」



ワアァァァァァ……!

日本でも―― やったぁぁぁぁぁ!

アメリカでも―― ブラボォォォォォ!

中国でも―― 太好了!

ロシアでも―― ハラショォォォォォ!

全ての土地で――

ウオォォォ…… ウォォォォ…… ウオォォォォ……



全世界が歓喜に包まれた。






71: 2021/04/20(火) 19:20:26.600
えぇ…

77: 2021/04/20(火) 19:27:21.725

世にもの理不尽系を見た気分だ

78: 2021/04/20(火) 19:29:07.245
これ神主催のドッキリ企画だろ

79: 2021/04/20(火) 19:30:18.943
酷い

80: 2021/04/20(火) 19:31:11.412
なぜ全人類に俺が知られてたのか知りたい

引用元: 神「全人類で投票を行い、最も票を集めた人間を消滅させてやろう」