1: 2012/09/12(水) 23:21:17.99




―――情熱大陸


―――星井美希×765プロP





3: 2012/09/12(水) 23:25:11.52

東北エリア。とある野外ステージ。
豊かな自然に囲まれ、多くの星々が空に踊るこの場所で、
今夜は一つの星が地上に舞い降り、周囲を照らしていた。

「さあみんな!いっくよー!!ミキと一緒に、キラキラするのー!」

ランクSアイドル、星井美希。
彼女の前に、ステージの大きさや場所、観客の人数など関係ない。
星井が立つステージは、観客やスタッフ、全ての人々が『キラキラ』する場所となる。


―――『キラキラ』とはなんですか?

「…うーん。言葉じゃうまく説明できないけれど…その人が、一番輝ける時の事、かな?」

「キラキラ出来る瞬間って、人それぞれ違うんです。でも、一緒にキラキラ出来る瞬間もあるんです」

「ミキがキラキラすれば、みんな大きなキラキラになれます!
ミキを少しでも応援してくれるなら、たくさんキラキラして欲しいな、って」



5: 2012/09/12(水) 23:29:19.75
―――『キラキラ』。それは、星井美希を象徴する言葉だ。
そんな『キラキラ』した星井を、街の至る所で見かけることが出来る。

昨年度は、「アイドルアカデミー」「アイドルアルティメイト」「アイドルマスターGP」の三部門を完全制覇。
以前発売されたカバーアルバムはミリオンヒットとなり、世界13ヶ国で展開。
海外のファッションショーにもモデルとして数多く出演し、写真集は全世界で合計500万部を超える大ヒットを記録。
大学受験のために現在は活動を縮小しているものの、9月には新たな写真集の、10月にはニューシングルの発売が決定している。

今や星井美希は、日本だけではなく世界のトップを走り続けるアイドルと言える。


「美希!お疲れ様!」

「ハニー!今日のミキも、キラキラしてた?」

「んー…3曲目のステップ左右逆に切り替えただろ?ちょい右寄りになってたか」

「う…やっぱり?」

「まぁそれは次への反省。…ちゃんとキラキラしてたぞ。ファンのみんなもな」

「―――ありがと。でも、次はもっとキラキラできるように頑張るの!」


そんな星井美希をここまで導いたのが、この男。765プロPだ。

星井美希の他、天海春香や如月千早等、765プロ所属アイドルのプロデュースに携わり、
事務所の壁を越えて多くのトップアイドル達をサポートしてきた敏腕プロデューサー。
今夜星井が歌うステージを用意したのも、彼だ。

8: 2012/09/12(水) 23:33:11.53

―――今夜のライブにここを選んだ理由は?

「アイドルって番組出演やライブ、写真集やミュージッククリップなど華やかなイメージが先行しがちですが、
地方各地のエリアによって人気や支持が固められていきます。」

「今回のステージはその地方戦略の一環です。美希とキラキラしてもらおう、と思いまして。」

「…なーんて言えば聞えは良いのですけれど、ね。実際の決め手はファンの方のプレゼントですかねー」

「東北のファンの方が美希にお米を送ってくれまして、それ凄い美味しかったんです。で、『あ、ここにしよう』って。」

「そりゃもちろん、綿密に計算を重ねて営業を仕掛けていくこともありますよ!
でもこんな風にティンと来た場所に決めるのも悪くないと思います。私は。」

―――と、プロデューサーさんは仰っていますが?

「全然オッケーです!むしろ、プロデューサーがピンときた場所なら信頼できます」

「場所があるなら、後は最高にキラキラしたステージを作り上げるだけです」


9: 2012/09/12(水) 23:37:09.51

光り輝く舞台に立ち続けるアイドルと、それを陰で支えるプロデューサー。
それぞれの責任を果たし、支え合う事で一つのステージが作り上げられていく。


「美希。ホレこれ、お前のじゃないのか?忘れ物だぞ」

「え?あ、ホントだ。ちゃんと鞄の中仕舞っておいたのに」

「そりゃそうだろ。俺が鞄から出したんだから」

「それは忘れ物って言わないの!」


だが、ここに至るまでには多くの苦難が待っていた。
アイドルとして。プロデューサーとして。そして―――人生のパートナーとして。
それら全てを乗り越え、今ふたりはトップアイドルの道を走り続けている。



10: 2012/09/12(水) 23:41:09.60



この先も続く長い道のりの中で。
Pと星井美希は、どのようなステージを作り上げていくのだろうか。



―――星井美希×765プロP
―――キラキラしたステージへ。




12: 2012/09/12(水) 23:45:15.02
都内某所。閑静なオフィス街の一角。星井とPが所属する765プロダクションは、ここにある。
時刻は日曜の早朝8時。星井はここで、雑誌のインタビューを受けていた。


【08:32 765プロダクション 応接間】

「お肌の秘訣…これと言ったケアとか、化粧品とかはあんまり使ってませんけれど」

「毎日見てくれる人とか、元気の源があれば肌は綺麗になると思います。綺麗なお肌は内側から!」

「ミキの元気の源は…もちろん、ミキを応援してくれるみんなです!一杯元気を分けてくれるの!」


事務所での取材が3本。それが終わるとスタジオでのファッション誌の撮影が待っている。
分刻みでの移動。次の仕事の確認や把握は、いつもPとの車の中だ。


「次、スタジオで撮影だ。ルージュの用のCMと、雑誌の表紙と特集が合わせて3社」

「口紅は大体イメージ掴めてるけど、雑誌はどこの出版社さん?」

「ティーン向けの雑誌が2冊。春物ファッション系と…学生向けの通信教材。後は、音楽雑誌の特集用だ」

「音楽雑誌は久々かも…撮影はミキの好きにしていいの?」

「ある程度の方向性はディレクターが持ってるようだから要相談だな。先ずファッション系のは―――」

14: 2012/09/12(水) 23:49:10.99
スタジオに到着すると、すぐに撮影スタッフとの打ち合わせ。
頼れる仕事仲間たち。しかし、かつては星井のせいで怒らせ、帰ってしまったこともあるという。

撮影開始。まずはディレクターが持つイメージ通りに。その上から、星井のイメージが重ねられていく。


【11:01 都内某所撮影スタジオ】

「ね、ハニー。ココの部分なんだけど…」

「…成る程、確かにな。んじゃ、美希がやることは?」

「うん。―――あの、ディレクター。この部分なんですが、2人分じゃなくて1人分で演出できませんか?」

「女の子ってセクシーもキュートも一緒に出せると思うから…一度ミキのイメージでやってみるので、見て頂きたいです」


撮影や演出で、思ったことがあれば何でも言う。実際にやってみせることを忘れずに。
その結果、星井のイメージをぶつけて変更していくこともあれば、当初の予定通り進むこともある。
『一人だけ先走っても、周りはついてこない』。プロデューサーから学んだことだ。

撮影が終わると、次にテレビ番組の収録が待っている。全ての収録が終わるのは夜がすっかり更けてから。
以前は、このスケジュールが何週間も続いていたという。ランクSアイドルは、多忙だ。

15: 2012/09/12(水) 23:53:12.50
そんな4月のある日。Pの携帯に一本の電話が入った。
以前から計画していた星井のドームライブの日程が、正式に決まったのだ。


「はい。…では、その日程で。はい。…よろしくお願いいたします」ガチャ

「ドームライブ決定!これでようやく細かい調整に入れるか…」

「ついにこの季節が来たって感じですよ。…やっべ、ワクワクしてきた」


「美希!8月のドームライブ、日程決まったぞ。予定通り8月の11と12だ」

「合点承知なの!今度のライブも頑張るよ!」

「勉強の方も怠るなよ。…それで、ちょいやってみたい事があるんだが」

「あ、もうテーマとか決まってるんだね。…どんなこと?」

「ちょい演出重視になるけど…今回のコンセプトは、『リバース』だ」


Pから提示された『リバース』。この短いフレーズが、今回のライブのキーワードだ。

17: 2012/09/12(水) 23:58:10.93

予定されているドームライブは前後半合わせて約3時間。それが二日に渡って行われる。
衆目の中にその身を晒し、踊り、唄い続けることは。決して簡単なことではない。
本番まで後4ヶ月。『星井美希』のステージは、もう始まっている。

【06:32 都内某所自然公園】

「はっ、はっ、はっ…ふぅ。…あ、おはようございます」

「ちょっと走ってました。ライブまでに体力つけなきゃいけませんし」

―――いつもこうして走ってるんですか?

「時々ですけれど、高校行くまで1時間くらい…かな?本当は、もうちょっと時間取りたいんですけれどね」

「今回のライブ案、凄く面白そうなんです。だからミキも頑張らないと、って!」


22: 2012/09/13(木) 00:01:09.77

そんな星井も、制服に身を包めば17歳の高校生。来年の冬には大学受験も控えている。


「おはようなの~」

「おっはよ、ミキミキ!週テスどこまでやった?」

「んとね、長文と例文集は押さえたよ。文法は予習と被ってたし大丈夫かなーって」

「すごっ!よくそんな時間あるねー。昨日も仕事だったんじゃない?」

「ふふん、やる気の問題なの。出来るって思えば、簡単な事なの」

「流石だね~。あ、ならお金貸して?」

「すずちゃんはこの前の3000円早く返して!」


24: 2012/09/13(木) 00:05:09.84

「大学祭の手作り感と、その中でみんなが頑張ってる雰囲気が凄く大好きなんです!
 これまでは招待される側だったので、今度は作る側になりたいな、って」

「けど、指定校とかAOだとなんか受験した気がしないので…。それで一般で受ける事にしました」


―――スケジュール面で辛い部分があるのでは?


「うーん…時間が足りないかな?って思う事はありますけれど」

「好きな物のために、ミキが決めた事だから。『辛い』って思った事はないです」


アイドルに恋に勉強に。目の前の事に対して、星井は常に全力だ。

26: 2012/09/13(木) 00:09:12.29

スケジュール管理や、テレビ局や出版社への営業。プロダクションの事務作業に後輩プロデューサーの育成。
プロモーション活動やオーディションのサポート。さらに、レッスンの実技指導。
アイドルの陰に隠れがちなプロデューサーの業務は、実に多岐に渡る。

ある日の仕事終わり。Pは一人、オフィス街へと車を走らせていた。


【20:01 961プロダクション本社 B2F レッスンスタジオ】

「おはようございます」

「フン。来たか、へっぽこプロデューサー」

「黒井社長、本日もお世話になります。あと…先日はどうもありがとうございました」

「前置きはいらん。準備は出来ているからさっさとしろ。2時間後には時間を取ってもらうぞ」

「分かりました。今回も頼らさせて頂きます」


彼は週2回、アイドル候補生たちのサポートを条件に、ここでトレーナーライセンス取得のための勉強を積んでいる。
多くのアイドル達を見て肥えた眼も、実際に自分がやってみるとなると話は別。
歌もダンスも経験がない彼にとって、トレーナーライセンスの取得はかなりの難易度だ。


27: 2012/09/13(木) 00:13:10.76


「その子に合ったダンスや歌、魅せ方があるのに、俺自身のせいでそれを提示出来ない事があって。それが凄い悔しくて」

「それがライセンスを取ろうとした切っ掛けです。実際に勉強してみると、かなり役立つ部分もあります。使えるかどうかは、別として」


―――なぜ、961プロなんですか?


「最初は仕事と並行して自分でやってました。そしたら、2回ほど体調崩してぶっ倒れまして」

「2回目ともなると、流石に怒られたんです。『何で相談してくれないんだ!』、って。特に美希」

「そしたら、社長が黒井社長に連絡を取ってくれたんです。効率良過ぎて笑っちゃいました。『961プロすげぇ!』」

「Jupiterやフェアリーに携わる事も出来ましたし…社長と黒井社長には感謝してます。けど…まだまだこれからです」


『プロデューサーの力が、アイドルの人気を左右する』。
それが彼の持論であり、同時にアイドル達を育てる自分への責任でもあると、Pは語る。



28: 2012/09/13(木) 00:17:23.52

6月。本番まで2ヶ月前。
ステージのキーアイテムが、765プロの事務所に届いた。


「装着完了なの!ハニー、どうかな?」

「…マジで4年前みたいだな。流石に大人っぽくなってるけど」

「これ凄いよ。どんなに激しく踊っても外れないの。地毛も色違うのに全っ然目立たないし」

「で、外す時も一発だろ?最近のウィッグ凄いな」

「…今のミキが伸ばして染めると、こんな感じになるんだね。ちょっと新鮮かも…」

「ほれ、ちゃんと起きたか?おにぎりなくても仕事頑張るんだぞ」

「心配御無用なの。もう朝はちゃんと起きれるし、おにぎりは自分でつくれるもん」

「金髪毛虫は降りてこなかったか」


腰まで届く、輝く金色の髪。星井がデビューした当時の髪型だ。
『Reverse×Rebirth』。二日間、ドームに新旧の星井が舞い降りる。


29: 2012/09/13(木) 00:21:07.01

今から4年前。事務所裏の小さな公園で、二人は初めて出会った。
中学生離れしたビジュアル、人並み以上にこなせる歌とダンス。
程なくデビューするものの、成功するために努力した経験がなく、
頑張ることが分からなかった星井に、当時2組のアイドルを育て上げたPも手を焼いた。

そうやって進むうち、星井自身に『アイドル』という言葉が重く圧し掛かってきたのである。


「凄く…『アイドル』が怖い時期があったんです。先が見えなくて、何も分からなくて…」

「なんでミキはここまでこれたんだろう。この先どんなアイドルになればいいんだろう。そんな事ばっかり考えてました」

「今考えれば当然ですよね。甘えてばっかりで、何一つ自分から向き合ってなかった。
そんな状態で、『アイドルが何か』なんて分かるはずないのに」

「でもある時…適当で色々悩んで前に進めない、こんなミキでも信じてくれている人達の事に気付けたんです。
ファンのみんなや、事務所の人達。同じアイドルのみんなや…プロデューサー」

「その人達のために変わりたい。その人達のためにトップアイドルになりたいって。そう、初めて思いました」


大切な人達のために、変わりたい。トップアイドルになりたい。
初めて明確な『目標』を持った星井は、瞬く間にトップアイドルへの道を駆け上がっていく。
これまで星井を支え、導いてきたPを置き去りにするほどに。

32: 2012/09/13(木) 00:25:49.52

そして、星井美希最大の転機となったスキャンダルが発覚する。
かつての日高舞を思わせる恋愛騒動。ランクA昇格直後と言う事もあり、連日報道は荒れに荒れた。


「いや、ホントに酷かったですあの時は。プライベートなんて言葉存在しませんでしたし」

「アイドルランクまで下がって…俺のせいで美希がアイドルを続けられなくなるんじゃないか、それだけが不安でした」

「丁度その時、担当の変更についての話が出ていたので、そのまま俺が美希から外れて、否定すれば比較的丸く収まったんでしょうけれど」

「けど、改めて2人でトップアイドルになると誓ったんです。2人で頂点に立って、キラキラし続けるために」

「その為に俺もやれることをやろうと思いました。まぁ…ぶっ倒れちゃいましたけれど、ね」


トップアイドルになる。その為に2人はもう一度手を取り合い、再びステージの上へ舞い戻った。
取り巻く好奇の目を捩じ伏せ、ステージの中で応援してくれるファンを引き戻し、
それら全てを背負い、トップへの道を駆け上がっていく。
その結果、星井は遂に前人未到となる冬の三冠を成し遂げたのだ。



34: 2012/09/13(木) 00:30:01.52
星井とPはこの日、ライブが行われるドームに居た。
本番を想定して仮組みされたステージで、本番と同じ3時間の練習が確保できたのだ。
だがその練習時間の大半を、ステージから客席を眺める事に費やしていた。その視線の先には、Pの姿。

本番では、5万を超える視線が星井に注がれる。その全てを、星井は逃さない。
如何なる場所に観客がいようと、カメラが構えていようと、その全てにジャストアピールを決める。

しかし時としてそれは、舞台とステージ構成との戦いにもなる。


「バルコニースタンド側、メインステージに立つとほとんど見えなくなっちゃう…」

「モニターでカバーしていくしかないな。あとは…集中的に花道を使う時間を作るか…」

「前半は本当にファンと作る感じでどう?切り替えは後半で、そこから魅せるの」

「…やってみるか。全体通して体力勝負になるが、やれるか?」

「任せて。どんな曲でも、最後まで踊り切ってみせるから」

「じゃ、『オーバーマスター』と『Day of the future』入れ替え。切り替えは後半3曲目で」

「…MCも多めに入れなきゃ。ファンの人達が疲れちゃう…」

「どこで一息入れるか、だな」


全16曲中、半分以上がダンスイメージの曲に変更。ドームライブを数多く経験してきた星井でも、体力的にかなり厳しい構成だ。
加えてファンが最後まで参加できるよう、MCのタイミングも計らなければならない。
本番まで、後1ヶ月。限られた時間での練習が続く。

35: 2012/09/13(木) 00:37:14.38
本番1週間前。ステージのレッスンも調整も、いよいよ佳境を迎えていた。

「はぁっ…はぁっ…っ…は…ぁ」

「まだ一息つくには早いぞ、美希!後2曲。クライマックスが残ってる!」

「分かってる…の!」

「外野スタンドに対しては最後だ、アピール怠らない様に…歌に集中し過ぎだ!メリハリ付けて、もっと腕大きく使ってけ!」


「…ちょっと疲れ溜ってるか。明日から練習量減らして調整して…と」

―――まだ、仕事ですか?

「当然。タイムラインやら借用書やら確認しなきゃいけません。物販の在庫も気になりますし」

「…美希の調子もいいですし、これならピークを本番にぶつけられそうです」


「『あなたが好きだからよ あなたが好きだからよ』…うん」

「この曲、どんな風に歌うか迷っちゃいます。レコーディングではデートの服悩む感じで歌ったんだけど…」

「今回は…2人のうち、どっちの方がタイプなのか迫っちゃおうかな、って」

「折角ライブでは初お披露目なんだから、このステージに合わせて歌ってみたいなーって思ってます」


別々の形でステージに思いを馳せながら、夜が更けていく。明日もレッスンだ。

36: 2012/09/13(木) 00:42:04.84

8月11日。ライブ当日、開場2時間前。星井美希にとって、約1年ぶりとなるドームライブ。
既にライブの前売り券・当日券は共に完売。周辺の物販スペースに形成される長蛇の列。
多くのファンが、開場を待ちわびていた。


「あああああああああ~♪」

「よし、いい調子だ。音程上げて」

「うん。…あああああああああ~♪」

「腹使ってない。もう一回だ。」

「はいなの」

38: 2012/09/13(木) 00:45:09.82

「おー、すっごい人数。黒山の人だかり、っていうんですかね?こういうの」

―――いよいよ本番ですね?

「ええ、楽しみです。色々練習してきても、本番のステージってやっぱ違いますから」

「あ、スタッフさんも是非楽しんでいってください。…最高のステージ、お見せしますので」



「いち、に、さん。いち、に、さん。―――うん、バッチリなの!」

―――本番前ですが、落ち着いていますね?

「どんなステージになるか凄く楽しみなんです!それに…プロデューサーがいれば、怖いものなんてありません」

「スタッフさんも楽しんでいってくださいね。ミキと一緒に、キラキラしよ?」



39: 2012/09/13(木) 00:49:31.65
「いよいよだぞ、美希」

「うん」

「コンディション」

「バッチリオッケーなの!」

「一曲目」

「『THE IDOL M@STER』!」

「衣装」

「チェック完了!」

「ウィッグ」

「しっかり隠れてるよ!」

「最後に、笑顔」

「あはっ☆」

「にかっ」

「ハニーも完璧なの!」

「よし…!!」

40: 2012/09/13(木) 00:53:16.15

「行って来い、美希!ステージでファンが…キラキラが、お前を待ってる!」

「バッチリ決めるの!しっかり見ててね?ハニー!」

「3!」

「2!」

「1!」

『トップアイドル!!』



『みんなー!!いっくのー!!』




金の流星が歓声に迎えられ、『THE IDOL M@STER』が流れ出す。
シンセサイザーの音楽が開場に響き渡り、星井美希のステージがいま幕を開けた。




41: 2012/09/13(木) 00:57:47.22

First stage『Shining beauty』。
このステージは、星井美希の少女としての魅力、恋する少女を前面に押し出したステージとなる。

OP後に流れるのは、『ふるふるフューチャー☆』と『すいみん不足』。
可愛らしさと楽しさを押し出したナンバーでデビューした当時の星井を再現し、
続く『きゅんっ!ヴァンパイアガール』、『ね~え?』で、ファンと共にステージを盛り上げていく。
星井のダンスに合わせカラフルなサイリウムが揺れ、星井の投げかけにファンは大きく応える。
ステージ全体が、一つの歌を作り上げているようだ。

MCを挟み、『ショッキングな彼』、『オーバーマスター』と、花道を全面に使ったダンサンブルなナンバーな曲が続く。
前半のステージも終盤に差し掛かるころ、会場のボルテージは既に最高潮へと達していた。


「みんなー!キラキラしてるー?」

「でもね、まだミキは半分目を閉じてるの!走り続けるために、もっとキラキラしたいの!」

「だからみんな!ミキを目覚めさせて!―――行くよ!『READY!!』」

最高潮のボルテージを維持したまま『READY!!』を歌いあげ、前半のステージの幕が下りる。
インターバルは30分。すぐに衣装替えとセットの変更・チェックが行われる。
舞台裏は、常に慌ただしく動いていた。



42: 2012/09/13(木) 01:01:33.27

後半のステージが幕を開ける。星井の金の髪はそのままに。
流れる曲は―――『CHANGE!!!!』。


Second Stage『Reverse×Rebirth』。
華やかな衣装とステージが煌めく前半とは対照的な、シンプルなセットと衣装。
前半と比べ視覚的に控えめになったにも関わらず、星井は持ち前の歌唱力と表現力でステージを瞬く間に演出していく。
『CHANGE!!!!』、『真紅』と、前半同様のアップテンポなナンバーが並ぶ。一度休憩を挟んだドームは、再び熱狂の渦へ巻き込まれていった。

そうして2曲目が終わり、客席のボルテージが再び最高潮に達しようかという頃。
ゆっくりと照明が落ち、ドームが暗闇に包まれた。いよいよ、このライブのメインがお披露目だ。


しかし…演出にしては長めのライトダウンと沈黙に、一瞬にして静まり返った客席が少しずつざわめき始める。
徐々に広がる不安と喧騒。そんな中、ドームの中央に小さな星が掲げられた。



43: 2012/09/13(木) 01:05:21.83


「―――ずっと、怖い光が遠くで見ていたの。すごく強くて、ミキを飲み込もうとする光」

「でも、大切な人が勇気をくれたの。目を見開いて、前へ歩き出す力を」

「ミキはね、初めて自分から歩き出したの。怖い光に向かって、その人を追いかけて」

「そうして光を抜けた先には…。凄く綺麗な、光の海が待ってたんだよ」


星井のMCが流れるにつれ、ざわめく客席が徐々に静まり返る。
再び静寂に包まれた中に流れる、アカペラでの『Squall』。その歌声に合わせて、中央の浮島が少しずつ照らされてゆく。

金から茶へと生まれ変わった星井を出迎えたのは、幾千のフレッシュグリーンが瞬く星の海だった。



45: 2012/09/13(木) 01:09:48.47

スローテンポにアレンジされた、星井の声のみで紡がれる『マリオネットの心』。
再び光に包まれたステージに舞い降りた『relations』。
大切な人との思いを込め、客席へと届けられる『思い出をありがとう』。
そして、今日から明日へと繋げて行く『Day of the future』。

全てを出し切り、メインステージに立つ星井を、割れんばかりの大歓声が迎え入れる。
彼女たちが望む最高の『キラキラ』が、そこには存在していた。


「みんな、ありがとー!ミキ…キラキラしてたかな?」

「でも、ミキはまだまだ止まらないよ!もっともっと前へ進んで、いっぱいたくさんキラキラするの!!」

「今日はこれでおしまいだけれど…最後にこの曲で、みんなのキラキラをミキに届けて!」

「それじゃあ行くよ!!―――『Colorful Days』!!」


46: 2012/09/13(木) 01:14:36.94

「お疲れ、美希!」

「ハニー!今日もミキ、キラキラしてた?」

「ああ、100点満点だ!さっきの切り替えも流石だった!」

「ううん、全部ハニーのお蔭なの!ミキだけじゃここまでできなかったよ」

「俺は…美希に必要な物を届けただけだ。ステージを作ったのは美希だよ」

「あはっ☆ …でもまだ、最後の仕上げが残ってるね?」

「ああ。音響も照明も今度は大丈夫だ。思いっきりブチかませ!」

「待ってて、ハニー!すぐ戻るから!!」


客席から鳴りやむ事のないアンコールの雨の中へ、星井は戻っていく。
ドームライブ初日は、こうして幕を閉じた。


47: 2012/09/13(木) 01:17:50.41

ドーム2日目終了後。ライブ終了後の楽屋を訪ねてみた。

「…しー」

「すぅ…くぅ…」

「挨拶回り終わったら寝ちゃいました。…大分疲れてたんでしょうね」

「今日はもう寝かせてやってください。明日、登校日みたいなので」

「あ、お宝映像ですよこれ。ランクSアイドルの寝顔!」

―――初日、ライブ中に何かあったのですか?

「…ライブ中、おかしな点とかありました?」

―――いえ、素晴らしいステージでした。

「なら、それでいいんですよ。何が起きたとか、そういうのはどうでもいいんです」

「最高のステージをお届けして、みんなが楽しんで、俺も美希も笑えれば…それが、一番ですから。」

「何時如何なる状況でも、どんなステージでも。星井美希は最高のパフォーマンスとキラキラをお約束します。…なんてね」



48: 2012/09/13(木) 01:21:29.44

翌日。Pは仕事へ、星井は学校へと向かっていく。
アイドルとプロデューサー。それぞれの責任を果たしお互いを支え合いながら、一つのステージが完成されていく。
このライブでは、彼女らの深い絆も垣間見る事が出来た。
未だ先の見えない長い道のり。二人はこれからも、全力で走っていくのだろう。


最後に、二人にそれぞれ聞いてみた。

―――あなたにとって、『アイドル』とは、なんですか?
―――あなたにとって、『プロデューサー』とは、なんですか?


52: 2012/09/13(木) 01:25:56.64

「…あ、そっち聞くのか。てっきり、『プロデューサーとは何か?』って聞かれるかと思ったんだけど」

「…でも…アイドル、か」

「―――これまでたくさんのアイドルと出会って、一緒に頑張ってきました」

「一緒に笑って、一緒に泣いて。色々な事を教えて、教えられて…」

「そうやって一緒に歩きだしていくと…そいつらの事、他人なんて思えなくなるんですよ。
たくさんの時間を一緒に過ごしてきたあいつ等がいない自分なんて…もう想像できません」



「ミキのプロデューサーはハニーだけど…プロデューサー、かぁ」

「プロデューサーは、ミキの世界を広げてくれた人なんです。
プロデューサーがいなかったら…きっと、こんな風にアイドルにもなれて無かったかもしれません」

「たくさん一緒に頑張って、一番近くで支えていてくれて、元気をくれる人。
そして、アイドルがアイドルになる為に、ファンのみんなと同じくらい大切な人」

「だから…もうプロデューサーって他人だけど他人じゃないんです。
アイドルにならなかった、プロデューサーに会えなかったミキなんて、今じゃもう考えられないから」



53: 2012/09/13(木) 01:28:43.44



「俺にとって『アイドル』とは、『もう一人の自分』ですかね」


「だから…ミキにとっての『プロデューサー』は、『もう一人の自分』、かな?」



情熱大陸 P×星井美希 キラキラのステージへ


提供・制作 ブーブーエスTV





54: 2012/09/13(木) 01:31:03.30

過去の放送                                          20××年9月12日放送


8月11日。
ランクSアイドル『星井美希』の約1年ぶりとなるドームライブの初日、5万を超える観衆が会場を埋め尽くした。
金と茶の二人の星井美希の共演。その輝くビジュアルと歌声、ステージの演出は大歓声を持って迎えられたが、
その裏には星井の並々ならぬ努力と、それを陰で支える彼女の『プロデューサー』の存在があった。
過密スケジュールの中限られた時間で進められる準備。ついに本番を迎えたステージで何が起きたのか。
アイドルとプロデューサー、それぞれがもつ責任を果たしながら、二人三脚で一つのステージを作り上げてゆく様子に密着した。


プロフィール:星井美希
199○年生まれ。現役高校3年生。
14歳の時に765プロダクションからスカウトを受け、アイドルデビューを果たす。
『シャイニングアイドル賞新人部門』、『全日本フォトグラフ大賞』を始めとした数々の賞を受賞し、
16歳の時に『アイドルアルティメイト』『アイドルアカデミー』『アイドルマスターGP』の三冠を果たす。
大学受験を控えているものの、全国でのライブやTVドラマの出演を中心に活動を続けている。
今尚トップを走り続けるランクSアイドルの17歳。


プロフィール:765プロP
198×年生まれ。
大学卒業後、765プロダクション現会長を務める高木順一郎からスカウトを受け、
現在の765プロダクションに就職し、プロデューサーとして活動を開始。
『天海春香』『如月千早』等数々のトップアイドルを世に輩出するだけでなく、
事務所の壁を越え様々なアイドルのプロデュースに携わってきた。2年前、星井美希との熱愛が発覚し話題となる。
一部トレーナーとしての資格も有し、アイドルを公私にわたってサポートする25歳。


55: 2012/09/13(木) 01:37:24.26
はい、以上でお終いです。途中の支援感謝いたします。

アイマスの世界でもランクが高くなったらこういうドキュメンタリーとかあるんじゃないかな?
とか思って『情熱大陸』借りてやってみました。いつもの覚醒美希さんとPで。
けど、やっぱり映像作品を文章化するのって難しいですね。…本来密着してるのは一人ですし。
この手の奴が増えればいいなーとも思います。

そんなわけで、夜分遅くまでお付き合いいただきありがとうございました。

56: 2012/09/13(木) 01:38:08.77
おつ

引用元: P「美希の『情熱大陸』!」美希「ハニーも一緒なの!」