2: 2014/02/14(金) 21:02:53.70
―学校―

和子「……人の一生とは、つまるところプレゼントの応酬です」

和子「考えてもごらんなさい。私達は常に誰かから何かを貰い、誰かに何かをあげて生きています」

和子「おうちの方が作ってくれるご飯。先生方から教わる授業。
   家族や友達への親愛。ペットに与える缶詰とボール……」

さやか「……?」

和子「親と子供、主人と使用人、勤め人とお客さん、役者と観客……」

和子「空中で回るコインのように、次々と向きを変えながら……私達は、貰って贈る一生を廻り続けているのです」

杏子「…………」ムニャムニャ

和子「……しかし! しかしですね、皆さん!」バンッ

まどか「!?」ビクッ

和子「だからと言って、人の心の、人の一生の価値は!
   何を貰ったとか何を贈ったとか、そういうことには一切左右されません!」バンッ

和子「ましてや、これはゴヂバじゃないから本気じゃねーとか、手作りってちょっと重くね? とか!
   今年は14個も貰っちゃったぜーとか、俺なんかたったの10個だよとか!
   先生ー、ほら、こんなに貰っちゃったんで、食うの手伝ってくれません? とか!」

和子「たかがプレゼントでその人の価値を決めようなど! おこがましいにもほどがある! でしょう!?」

3: 2014/02/14(金) 21:03:27.43
ほむら「…………」

仁美「…………」

さやか「……は、はぁ……」
 
和子「……というわけで。あの忌々――いえ、ワクワクなバレンタインデーまで、あと一週間を切りました。
   当日は休日ですけども、一応……校則上、学校への菓子類持ち込みは禁止されています」

和子「ですので、『そういう』応酬は、どうぞ私の視界に入らな――いえ、目の届かない所で……」

 キーンコーン、カーンコーン…

和子「……あら、もう終わり?」

和子「……えー、それでは、帰りのホームルームを終わります。はい、号令ー」

中沢「きりーつ、礼ー」

 ガタンガタンガタン

全員「さよーならー」

和子「はい、さようなら」

 ガヤガヤガヤ…

4: 2014/02/14(金) 21:04:21.17
恭介「…………」ガタッ

中沢「お、上条。直帰か?」

恭介「うん。もうすぐコンクールだしね。……それじゃ」

中沢「おう、じゃーな」

仁美「…………」

さやか「飛ばしてたなぁ、もう……」

まどか「え? ……あ、さっきの先生?」

杏子「今までの鬱憤とかあんだろ、色々」

まどか「そうなの? 早乙女先生、やさしくてモテそうなのに……」

さやか「それがそうでもないんですなぁ。優しいだけじゃ駄目ってことよ」

杏子「バレンタインか……なぁ、アメリカでもやっぱりチョコとか送ってたのか?」

まどか「ううん、ほとんどカードだったよ。あと、ほんとうに安いお菓子とか……
    あ、あと、基本的には男の子の方からプレゼントするの」

5: 2014/02/14(金) 21:04:47.79
杏子「へぇーっ、いいなぁ、やっぱ貰う方が嬉しいもんな。あたしもアメリカに生まれたかった」

さやか「……何だろ、ニューヨークの下町に不良のボスとして君臨してそう」

まどか「あぁー……分かるかも」

さやか「右足だけで立って踊ったり、自動車チキンレースにのめり込んだりね」

杏子「どっちも氏ぬ奴じゃねーかコラ」

まどか「てぃひひ……あ、でも杏子ちゃん、意外と似合うかも。愛に殉じちゃう不良系」

杏子「んだよそれー、適当なこと言うなよな」ハハハ

まどか「ほんとだよー、あの時だって、魔女になったさやかちゃんと――
    …………あれ?」

さやか「ん?」

杏子「……へ?」

まどか「……あれ……? 魔女、って……そう言えば……あれ……?」

  ゴゴゴゴゴゴゴ…

さやか「!?」

杏子「な――」

6: 2014/02/14(金) 21:05:20.68
まどか「……そうだ……わたし、やらなきゃいけな――」

円環『呼ばれて飛び出てドッギャァーン! それじゃあ早速覚醒と――』ニョキッ

ほむら「せいっ!」ドガッ

円環『あぐぅっ』シュゥゥン

まどか「……あれっ?」ピタッ

ほむら「はぁ……はぁ……危なかった……」

杏子「ほ……ほむら?」

ほむら「――まどかっ!」ガシッ

まどか「ひぇっ!?」

ほむら「いい? あなたは見滝原生まれのアメリカ育ち、だいたい半年前に見滝原に帰ってきたプリティ帰国子女!
    忘れてないわね? 忘れないでね!? ドゥーユゥーリメンバー!? アンダスタァン!?」ユサユサ

まどか「わっ、分かった、分かったから! 揺らさないでほむらちゃん!」

7: 2014/02/14(金) 21:06:01.15
ほむら「それと、さっきの羽生やしたピンク髪、邪神以外の何物でもないわ。
    ほっとくと体内に取り込まれて、京都に降り立って亀と頃し合う破目になるわよ! 何言っても耳を貸さないこと!」

まどか「は、はぁ……」

ほむら「……忘れないで。あなたは、ありのままのあなたでいればいいの。そんなまどかが一番好きよ」

まどか「えっ、あ、うん」

さやか「さらっととんでもないこと言ったよコイツ」

ほむら「それと、チョコはミルクとビターとホワイト、どれが一番好きかしら」

まどか「へ? え、えーっと……ホワイトかなぁ、どっちかって言うと……」

ほむら「了解したわ、期待しててちょうだい。……それじゃあ、また明日」タタタタ

杏子「……相変わらず忙しいな、アイツ」

さやか「ホント、今度は何企んでんだか……」

まどか「…………」

8: 2014/02/14(金) 21:06:36.63
さやか「……あ、そうだ。チョコって言えばさ、まどかは誰かにあげたりするの?」

まどか「うん。パパとママと、あと友達みんなにあげようかな、って……」

さやか「ほほー……それじゃ、気になる男の子はナシ、と」

まどか「ええっ!? え、えと……まあ、うん」

杏子「さやかだって似たよーなもんだろ? 毎年毎年、知り合いにバラまくだけバラまいてさぁ」

さやか「人を節操無しみたいに言うな! ちゃーんと手作りしてるんだからね。
    人のおこぼれをムシャムシャやるだけの、どっかの誰かさんとは違うんですよーだ」

まどか「へぇー……でも、すごいよ。手作りなんて」

さやか「なーに、超カンタンだよ、あんなの。……あ、そうだ! まどか、今度の土曜にさ……」


仁美「…………」

9: 2014/02/14(金) 21:07:06.22
―夜、志筑家―

仁美「…………」ピッピッ


  To:上条恭介
  Sub:よろしければ
  ―――――――――――――
  上条君、お元気ですか?
  最近、上条君とゆっくりお話ができていなくて、
  さびしいです。
  もしお時間があれば、明日の放課後、どこかで
  お食事でもしませんか?


仁美「…………」

仁美「……えいっ」ピッ

10: 2014/02/14(金) 21:07:54.91
―上条家―

 ヴァァ―― プツッ …ファァ――ン…

恭介「……っとと……またここか」

恭介(……参ったな、そんなに難しい所でもないのに)

恭介「…………」

 ヒョロロロロロ……ピョロッ

恭介(ここも……もう少し、丁寧にやらなきゃ……)

携帯『チャーン チャンラーンチャーラー♪』

恭介「……ん?」ピッ

恭介「…………」

恭介「…………」ピッ、ピッ


  To:志筑さん
  Sub:Re:よろしければ
  ―――――――――――――
  ごめん、明日はバイオリンの先生の所で
  レッスンする予定が入ってるんだ。
  コンクールの本選が今度の14日にあるから、
  それが終わったらデート、っていうのはどうかな?


恭介(……ごめん、志筑さん……)

恭介「…………」ポチッ

恭介(……急がなくちゃ……もう、あまり日数も……)

11: 2014/02/14(金) 21:08:26.73
―翌日、通学路―

さやか「へぇーっ、恭介、そんなに切羽詰まってるんだ」

仁美「はい……やっぱり、お邪魔だったかしら……メールなんて」

さやか「ったくもう、あいつもワガママだよねぇ。こーんなに美人の彼女がいるのにさ」

仁美「そんな……それに、私の方こそワガママばっかり……」

まどか「学校でも、なんだか忙しそうだもんね……上条君」

さやか「昔っからそうなんだよねー、ナチュラル・ボーン・ヴァイオリンバカ、っていうか。
    一度熱中しちゃうと、そのことしか手につかなくなっちゃう感じ」

仁美「…………」

さやか「それに、マトモに女の子と付き合ったの、たぶん仁美とが初めてだしさ。
    女の子のキビとかキモチとか、いまいち分かってないんじゃないかな?」

杏子「だろうな。さやかはほとんど男友達だったらしいし」

さやか「うっしゃ、オモテ出ろ」

杏子「既にオモテ歩いてんじゃねーか」

12: 2014/02/14(金) 21:09:07.21
仁美「……でも、羨ましいですわ」

さやか「え?」

仁美「さやかさんと話している時の上条君、すっごくリラックスしてる気がします」

さやか「……どうかなー、気が抜けてる、って言うんじゃない? アレ。
    男子ってさ、好きな女の子の前じゃ、もう少しカッコつけると思うよ」

仁美「…………」

杏子「けどさ、外で会えないのは分かるけど……じゃあ何で、学校の中で話したりしないんだ?
   メシでも誘えばいーじゃんか」

仁美「え? ……まあ、その、それは……そうなんですけど……
   最近、ときどき凄く険しいお顔をなさってますし……無理に誘うのも、なんだか……」

さやか「ちっちっち、いけやせんぜお嬢様。あいつ、見た目通りの草食朴念仁だしさ。
    もっとグイグイ、押していかなきゃ!」

仁美「そう……ですか……いえ、でも……」

さやか「……! そうだ仁美、今日の昼休みにさ……」

13: 2014/02/14(金) 21:09:34.04
―昼休み、教室―

キーンコーン、カーンコーン…

恭介(さてと……)ガタッ

中沢「まーた1人飯かよー、上条」

恭介「仕方ないだろ、パパっと食べて音楽室に……」

中沢「お前さぁ……志筑さんはいいのかっての」

恭介「! あ、ああ……」

中沢「最近、全然一緒にメシ食ってねーじゃん」

恭介「……大丈夫だよ。コンクールが終われば、また……」

中沢「はいはい……ったく、なんでこんな奴ばっかり……」ブツブツ

さやか「恭介ー」

恭介「ん? ああ、さやか」

さやか「お昼さ、よかったらあたしらと一緒に食べない?」

中沢「!?」

恭介「え? あたしら、って……」

14: 2014/02/14(金) 21:10:22.98
さやか「えっと、あたし、まどか、杏子と……あと、仁美も」

中沢(ハーレムじゃねえかこん畜生!)

恭介「! い、いや……悪いけど、すぐにでも練習したいんだ。だから……」

さやか「いやいや、忙しいのは分かるけどさー、あんまり根詰めるのもよくないんじゃない?
    息抜きも大事でしょ? ね?」

恭介「……でも……女の子ばっかりなのに、邪魔するのも……」

中沢「なにボンクラこいてんだこのED野郎」ボソッ

さやか「ん? あ、じゃあ中沢も来る?」

中沢「!!?」

恭介「え?」

さやか「まあ確かに、ウブな恭介クンなら照れまくっちゃうかもしんないしねー?
    友達と一緒の方が気楽でしょ。こっちも賑やかな方がいいし……」

恭介「……誰がウブだよ、もう……悪いけどさ、今はそんな冗談に――」

中沢「よし、行こう上条」ガタッ

恭介「えっ……」

15: 2014/02/14(金) 21:10:49.59
さやか「さっすが中沢! 話が分かるぅ!」

中沢「いやいや、俺らもちょうど暇してたしさ! たまには大勢でってのもイイよな、なー!」

恭介「いや、なーって……」

中沢「じゃーかしい! お前なぁ、クラスの美人ヒエラルキーの頂点に立つ5人のうち4人と
   一緒にランチに洒落こめるんだぞ! しかもそのうち1人はお前の彼女! ここまで来てなんで拒むかなお前は!」ヒソヒソ

恭介「いやだから、ホントに練習しなきゃマズい――」

中沢「シャァーラップ! んなもん家帰ってからで十分だろうが! 
   どうせ家じゃあ毎日バイオリン弾いて、バイオリンと風呂入ってバイオリンと寝て、
   深夜にビブラート効かせながら弦をチュパチュパやってんだろ!」

恭介「風呂までは入ってないよ流石に」

さやか「ま、いいじゃんいいじゃん! ほら、仁美も楽しみにしてるし! ね?」

恭介「! ……志筑さんが?」

さやか「うんうん!」

恭介「……分かったよ。そこまで言うなら……」

中沢「いよっしゃぁ!」

さやか「そうこなくっちゃ! ほら、屋上だから早く行こ!」グイグイ

中沢「ホラ急げ上条! 昼休みあと30分だぞ!」グイグイ

恭介「分かった、分かったから! 引っ張んないでよ!」

恭介(……何か、いつにも増して強引だなぁ……さやか)

16: 2014/02/14(金) 21:11:17.86
―屋上―

 ガチャッ…

杏子「お、来た来た」

さやか「やっほー、お待たせ」

仁美「……!」

恭介「! あ……」

さやか「ほらほら恭介、あんたの席はあそこ!」グイグイ

恭介「はいはい……」ストッ

仁美「…………」

恭介「……あ……」

仁美「……か、上条君」

恭介「う、うん……」


さやか「……よし、フェイズ1・『隣に座らせる』まではクリア、と」ヒソヒソ

まどか「……何だかぎこちないよ……緊張してるのかな」ヒソヒソ

さやか「2人とも遠慮しすぎだよ。付き合って何日目のカップルかっての……
    ……よーし、ここからはごく自然に、場を盛り上げるのに徹さなきゃ」ヒソヒソ

まどか「フェイズ2、だね」ヒソヒソ

杏子「何でもいいからさー、とっとと食おうぜ」

中沢「あの、俺はどの辺に……」

杏子「あ? ……テキトーに座れば?」

中沢「は、はい……」ストッ

17: 2014/02/14(金) 21:11:55.97
―――――――――
―――――
―――


まどか「へぇー、中沢君、お弁当自分で作ってるんだ」

中沢「いや、作ってるってわけじゃないんだけどさ。母さんに任せとくと、全部ゆうべの残り物だから……」

杏子「いいじゃんか別に、食えるんだろ」

中沢「どうせなら唐翌揚げとかも食べたいんだよ。だからほら、冷凍の奴をこうやって……」

さやか「あぁー、だからおでんと唐翌揚げが共存してるんだ」

中沢「そうそう! だからさ、実際は残り物と冷凍の――」

さやか(……よしよし、こうやって中沢をこっちの3人で引きつけておけば、
    恭介と仁美はごく自然に2人の世界!)

さやか(恭介も仁美も、無言の食事に耐えられるほど図太くはないはず……
    あとはごく自然な流れで会話が続いてくれれば……!)

さやか(さて、2人の様子は、っと……)チラッ

18: 2014/02/14(金) 21:12:24.93
恭介「…………」モグモグモグモグ

仁美「……あ、あの、上条君?」

恭介「んぐ……」ゴクン

恭介「どうしたの、志筑さん」

仁美「いえ……その、あまり急いでお食べになると、危ないのでは……」

恭介「え? あ、うん……ゴメンね、最近ずっとこんな調子だったから……」

仁美「あ、い、いえ、こちらこそ……」

恭介「…………」モグモグ

仁美「…………」パクパク

さやか(――あっ、バカだあいつ)

さやか「……ど、どーしたの2人ともー。お通夜会場じゃないんだぞー、ここ」

さやか(……邪魔しちゃ悪いとは思ったけど……さすがにあの調子じゃあ、ね……)

恭介「……? どうした、って……別に?」モグモグ

さやか「いや、『別に』じゃなくってさ。ほら、せっかく久々に話せるんだし……ね?」

仁美「い、いいんですよさやかさん……」

19: 2014/02/14(金) 21:12:53.23
さやか「んもぅ、仁美までそんな事……ダメだぞー2人とも。
    このさやかちゃんの認めたお似合いカップルである以上、イチャラブトーク以外は認めないのだー!」

恭介「…………」ムッ

恭介「……何だよもう、見世物にするために呼んだのかい?」

さやか「え――あ、いやいやいや! ほら、2人とも最近ピリピリしてるっぽかったし?
    だからその、少しは仲直りできたらいいなー、っていうか……」

恭介「……喧嘩してるわけじゃないよ。……ホント、さやかは昔っからおせっかいだよね」

さやか「……あんたこそ、なーんか一言多いよ、もう。
    もっとさ、心にゆとりを持たなきゃ。そんなんじゃ演奏、失敗しちゃうぞー」

恭介「――!!」

  ガタッ!

さやか「っ……!?」

20: 2014/02/14(金) 21:13:19.45
恭介「…………」ワナワナ


  『――そんなに難しい所でもないのに』

  『ここも……もう少し、丁寧にやらなきゃ――』

  『急がなくちゃ……もう、あまり日数も――』


恭介「……僕だって……」

恭介「僕だって……しくじりたくてやってるんじゃない……!」

杏子(……あーあ……)

さやか「……え、あの、えっと……」

恭介「何なんだよ……人が焦ってるの知ってて、バカにしてるのか……!?
   晒しものにしたくて呼びつけたのか!?」

さやか「ち、違うんだってば、その――」

中沢(……見ないフリ食べるフリ聞こえないフリ……)

恭介「……おまけに、志筑さんまで巻き込んで……話そうが話すまいが、僕達の勝手だろ!?
   何でさやかに指図されなきゃいけないんだよ! 人の付き合い引っかき回すの、そんなに楽しいのかい!?」

さやか「――! い、いやその、さっきのはさ……!」

まどか「……ぁ……」オロオロ

21: 2014/02/14(金) 21:13:57.71
恭介「――さやかはさ、昔っからそうだよね。いっつもいっつも、自分がどうしたいかって、そればっかり……」

仁美「か、上条君、もう――!」

恭介「僕が怪我してた時だってそうだ! 弾けもしない曲を毎日毎日……!
   どんなに歯がゆかったか知りもしない癖に!」

さやか「っ――!」

まどか「……え?」

恭介「人の気持ちなんて考えないで、自分の理想だけ押し付けて……!
   何で……何で分かってくれないんだよ……!」

さやか「…………」

仁美「上条君っ!」

恭介「!」

仁美「違うんです……さやかさんは、さやかさんはただ、私達を心配して――!」

恭介「だからって、あんな言い方……!」

仁美「私がうじうじ悩んでたから、さやかさんは……だから、さやかさんを悪く言わないでください!」

恭介「いいんだよ志筑さん、そんなに庇わなくたって! さやかが無神経なのは、前からずっと……」

さやか「ちょ、ちょっと、2人とも……!」

22: 2014/02/14(金) 21:14:24.84
仁美「ま、またそんな……! 上条君! さやかさんは、私達のためを思ってですね……!」

恭介「だから、そのやり方に問題があるって言ってるんだ!」

仁美「――上条君の方こそ、自分のことばっかりじゃないですか! 
   さやかさんの思いやりを無視して、しかもさやかさんに当たるなんて!」

恭介「なっ……! し、志筑さんまで……!」

仁美「上条君の分からず屋! さやかさんの気持ちも知らないで!」

まどか「ひ、仁美ちゃ……」

恭介「そっちこそ、さやかを買い被りすぎだよ! 
   小1の頃、僕が先生の事『お母さん』って言った時だって、さやかは――!」

仁美「何ですかそんなの! この前なんか、さやかさんは歩道橋でおばあさんを――!」

恭介「それが何だ! 小3の時なんて、僕のお尻を風呂場で――!」

仁美「そんなに昔から一緒にいるのに、ちっともさやかさんの事分かってないじゃないですか!」

恭介「そっちこそ、上辺だけ見て分かったみたいに……!」

さやか「……いや、あの……」

杏子「もう何のケンカだよコレ」

23: 2014/02/14(金) 21:14:51.71
仁美「もういいですっ! さやかさんが嫌いな上条君なんて……!」

恭介「こっ、こっちだって、さやかが嫌いな僕を嫌いな志筑さんなんか……!」

中沢「お、おい……!」

仁美「っ――! ばかばかばかっ! 上条君のばかっ! ばか大臣!」ダッ

まどか「あっ、ちょ、仁美ちゃん!? お弁当!」

さやか「恭介! あんた―― !」

恭介「…………」ムスーッ

中沢「……あ、あの……上条?」

恭介「…………」ガツガツモグモグ

恭介「…………」ゴキュッゴキュッ

恭介「……ごちそうさま」

中沢「いや、ごちそうさまじゃなくって……」

恭介「…………それじゃあ。練習あるから……」

さやか「! ちょ、ちょっと、恭介!」

恭介「…………」スタスタ

 キィ… バダン!

24: 2014/02/14(金) 21:15:20.26
まどか「…………」

中沢「……えーっと……」

杏子「……ハァ……」

さやか「…………」




さやか「……っ……」

25: 2014/02/14(金) 21:15:51.47
―放課後、校門前―

まどか「…………」

杏子「…………」モグモグ

さやか「…………」テクテク

まどか「! あ、さやかちゃん……」

さやか「まどか……あれ? 仁美は?」

まどか「あ、えっと……今日は、1人で帰るって」

さやか「……そっか」

まどか「……うん……」

さやか「…………」

杏子「……んじゃ、帰るか」

さやか「ん……」

26: 2014/02/14(金) 21:16:35.04
―通学路―

 ガシャコーン…
   ガシャコーン…

まどか「……ねぇ、さやかちゃん」

さやか「ん?」

まどか「……その、上条君って……怪我、してたの……?」

杏子「…………」

さやか「……そっか、まどかにはまだ言ってなかったよね」

さやか「……もう、結構前の話なんだけど……恭介ね、交通事故に遭ったんだ。
    たまたま歩いてた所に、スリップした車が突っ込んできて……」

まどか「…………」

さやか「命に関わるわけじゃなかったらしいけど……両足と左腕を大怪我してさ。
    特に、左手なんて神経がほとんど千切れて……。
    みんな言ってたよ。もうバイオリンは無理だろう、って」

まどか「……え? でも、今は……」

杏子「……ま、聞いとけって」

27: 2014/02/14(金) 21:17:06.64
さやか「……恭介、そのときすっごく滅入ってて……あたし、もう見てられなかった。
    ――ちょうど、そのぐらいだったかな……キュゥべえから、魔法少女の事を聞いたの」

まどか「! じゃ、じゃあ……」

さやか「……魔獣と戦うのも、人としてなくなるのも……全部、詳しく聞かされたよ。
     それから、その『見返り』……願いのことも。……主に、杏子からね」

杏子「……当たり前だろ。子供の遊びじゃないんだからさ」

さやか「あの頃の杏子、尖ってたよねぇー。
    『魔法ってのは、徹頭徹尾自分の為に使うもんなんだよ』」キリッ

杏子「うわ、やめろって! ……っあー、くそっ……」カーッ

さやか「……でも、あたしにはさ……どうしても、できなかった。
    あいつが苦しんでるのを見ながら『人として生きる』なんて……だから……」

まどか「…………」

28: 2014/02/14(金) 21:18:15.26
さやか「……恭介、そのときすっごく滅入ってて……あたし、もう見てられなかった。
    ――ちょうど、そのぐらいだったかな……キュゥべえから、魔法少女の事を聞いたの」

まどか「! じゃ、じゃあ……」

さやか「……魔獣と戦うのも、人として氏ねなくなるのも……全部、詳しく聞かされたよ。
     それから、その『見返り』……願いのことも。……主に、杏子からね」

杏子「……当たり前だろ。子供の遊びじゃないんだからさ」

さやか「あの頃の杏子、尖ってたよねぇー。
    『魔法ってのは、徹頭徹尾自分の為に使うもんなんだよ』」キリッ

杏子「うわ、やめろって! ……っあー、くそっ……」カーッ

さやか「……でも、あたしにはさ……どうしても、できなかった。
    あいつが苦しんでるのを見ながら『人として生きる』なんて……だから……」

まどか「…………」

29: 2014/02/14(金) 21:18:41.59
  ガシャコーン…  
   ガシャコーン…

杏子「……うるさいなもう、さっきから……どっかで工事でもしてんのか?」

さやか「いや、工事ってよりは……うーんと……」

まどか「あ、あの建物からじゃない?」

さやか「ん? ……あれ? あそこ廃墟じゃなかったっけ」

杏子「工場……か何かか? 悪趣味だな、しかし……えーと、看板は……」

  【ホムラ製菓 見滝原第一工場】

まどか「…………」

さやか「…………」

杏子「…………」

30: 2014/02/14(金) 21:19:08.13
  ビ――――ッ

『休憩時間よ。各員、整備作業を一旦中断し、休息を取りなさい』

  ゾロゾロゾロ…

偽街の子供達「フィー、カタコッター」

ほむ兵隊「ホムー」

ほむら「……ふぅ、作業ラインには問題なし、と……あとは原料の到着を……あら、まどか」

まどか「え、あ、うん」

ほむら「奇遇ね。今帰り?」

まどか「う、うん、はい」

ほむら「そう。寄り道せずにまっすぐ帰るのよ」

さやか「……いやあの、おい……ほむら」

ほむら「……何?」

さやか「……ここ、何?」

ほむら「何って……夢のチョコレート工場に決まってるじゃないの」

杏子「どういうことだおい……」

ほむら「1年に1度のバレンタインだもの。最高級の素材、最高級の設備、そして最高級の人員を備えた、
    究極至高のマニュファクチュアで手作りしなければ意味が無いわ」

さやか「いや、工場で手作りって……」

31: 2014/02/14(金) 21:19:42.92
ほむら「設備も人員も問題なし。あとはカリブ海のクリオロが届きさえすれば……」

  ソットーヒラーイータ ドアノームコーウーニー♪

ほむら「……失礼するわ。はい、私よ」ピッ

ほむら「どう、買付けの方は……え? 現地の武装勢力が……!?」

ほむら「ちゃんとお金は置いたんでしょう!? え? ヘロイン……ちょっと、それ完全に向こうの勘違――」

まどか「……え、えっと……じゃあ、そろそろ行こっか」

杏子「お、おぅ」

さやか「ホント、何やってんのよコイツ……」

まどか「じゃ、じゃあねー、ほむらちゃん。また明日」

ほむら「あ! またねまどか! ――とにかく、積み荷だけは氏守しなさい! ヘリは!? 
    ……え? 眼帯の手練れと二足歩行戦車? 何を馬鹿な……」

ほむら「分かったわ! 私がハインドで出る、だからそれまで何とか時間を――」

まどか(……ほむらちゃん、携帯持ってたんだ……)

32: 2014/02/14(金) 21:20:09.84
―深夜、上条家―

  バラバラバラバラ…

恭介(……うるさいな、もう。こんな夜中に)

恭介「…………」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

講師「どうしたんだね上条君……音が尖りすぎじゃないか」

恭介「す、すみません……」

講師「……疲れが溜まってるのかも知れないな。今日はもう、ゆっくり休みなさい」

恭介「い、いえ! 大丈夫ですから……」

講師「そうは言ってもなぁ……焦っても、あまり良い事は……」

恭介「お願いします……!」

講師「……それじゃあ、あと1回だけね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


恭介「…………」

33: 2014/02/14(金) 21:20:37.82

 
   『あんまり根詰めるのもよくないんじゃない?』

   『もっとさ、心にゆとりを持たなきゃ』

   『さやかさんはただ、私達を心配して――!』


恭介「…………」


   『人の気持ちなんて考えないで、自分の理想だけ押し付けて……!』

   『僕を嫌いな志筑さんなんか……!』


恭介「……っぁあ……」

恭介(何で……何であんな事っ……!)

34: 2014/02/14(金) 21:21:03.64
  バラバラバラバラ…

恭介「……っああぁぁ――! もうッ!」ガチャッ

恭介「うるさいんだよッ! こんなとこ飛ぶ――な……」

ほむら「こひゅー……こひゅー……」ピクピク

偽街A「マスター! マスタァー!」

偽街B「メディーック! メディーック!」

ほむ兵A「ホムゥ――!」オロオロ

ほむら「ふふふ……守った……カカオは……ふふふ……」

  バラバラバラバラ…

恭介「……」

恭介「…………」

恭介「…………寝よ」

35: 2014/02/14(金) 21:21:33.63
―翌日、放課後―

 キーンコーン、カーンコーン…

杏子「ふぃー、終わったーっと」

まどか「さやかちゃん、今日は掃除当番だっけ」

さやか「うん。悪いね、先に帰っちゃっててよ」

杏子「あいよ。……お、そーだまどか、タイ焼き食ってこうよ。
   最近チョコ味なんてのが出ててさ、これがまた中々……」

まどか「へーえ、それじゃ……」

仁美「……さやかさん」

さやか「ん? ……! あ、ひ、仁美……」

仁美「今日、お時間ありますか」

さやか「え? あ、うん。あと10分ぐらいしたら……どうかしたの?」

仁美「その……少し、お話したいことが……」

さやか「……?」

36: 2014/02/14(金) 21:22:23.67
―ファーストフード店―

仁美「――その、昨日はごめんなさい。色々とご迷惑を……」

さやか「え、あ、いやいや! 仁美は悪くないって! ……むしろ、あたしが……」

仁美「い、いえ! そんな……」

さやか「……ううん。やっぱり、あたしも出しゃばりすぎちゃってた。
    ……本当にごめん。あたしのせいで、ケンカなんか……」

仁美「…………」

さやか「……恭介とは、どう? あれから……」

仁美「…………」フルフル

さやか「……そっか」

仁美「……さやかさん」

さやか「ん?」

37: 2014/02/14(金) 21:22:50.65
仁美「……さやかさんは、ご存知ですか? 私が何で上条君を好きになったか……」

さやか「え――い、いや……」

仁美「……私ね、打ち込めること、というか……熱中できることが無いんです。昔から。
   お茶も踊りも、それからピアノも、全部、親から言われて続けてただけで……熱意とか本気とか、全然無くって」

さやか「…………」

仁美「習い事だけじゃありません。運動だって、勉強だって……
   そこそこ高い位置をキープできてれば、それでいい、って。
   上達してどうしようとか、知識を増やしてどうしようとか……目的なんてないまま、ただ漠然とやってるだけでした」

さやか「……仁美だけじゃないよ。中学生なんて、みんなそんなもんじゃない?」

さやか(……あたしの場合は、中の下キープすんのがやっとだけど)

仁美「――でもね、上条君は違ったんです」

さやか「……!」

38: 2014/02/14(金) 21:23:22.61
仁美「1年生の時でした。『教養』の一環だ、なんて言われて、市の音楽コンサートを見に行ったんです。
   その時初めて、上条君の演奏を聴いて……」

仁美「……私ね、泣いちゃったんです。人って、こんなに真剣になれるんだ、って。
   しかも、お顔はすごく真剣なのに、演奏はどこまでも朗らかで、楽しそうで……」

仁美「……私と同い年の子でも……こんなに、情熱を持てるんだって思ったら……
   ぐすっ……わっ、私……じぶんがっ、急に…………ううっ……」

さやか「わっ! ちょ……な、ナプキン! ほら!」

仁美「あ、ありが……ひっく……」ズビーッ

仁美「……そ、それで……その日は、家に帰ってもずーっと、上条君が頭から離れなくて……
   聞いたら、見滝原中の生徒だって言うじゃないですか。……だから、その時からずっと……」

さやか「……そっか……」

仁美「……2年に上がって、同じクラスになれた時……本当に嬉しかったんですよ?
   さやかさん達とも、お友達になれましたし」

さやか「あっはは、泣かせるねーもう」

仁美「…………」

さやか「……?」

39: 2014/02/14(金) 21:23:49.18
仁美「……本当はね。さやかさんが羨ましかったんです」

さやか「へ……?」

仁美「私の知らない上条君を、たくさん知ってるさやかさんが。
   あの事故の後なんて、毎日のようにお見舞いに行って……
   ――普通に闘ったって、勝ち目はありませんもの」

さやか「こらこら、その話はもう終わったでしょー?
    前も言ったじゃん、恭介はただの……」

仁美「…………」

さやか「……で、でもさ。よかったじゃん。結局告白して、両想いになれたわけでしょ」

仁美「……はい」

さやか「デートもたくさん行ったんだよね? 喫茶店とか、映画とかさ」

仁美「……はい。そのたびに、上条君が身近になってきて…………
   …………でも……」

さやか「……?」

仁美「……私が憧れて、好きになったのは……大好きなヴァイオリンにひたむきに打ち込む、あの上条君です。
   ……もし、もしですよ? 今の私が、上条君の重荷になってるなら……」

さやか「! ちょ、ちょっと……!」

仁美「……私に気を使って、上条君がヴァイオリンに集中できないなら……いっそ……」

さやか「まっ……だ、駄目だよ! わっ、別れるなんて、そんな……!」

40: 2014/02/14(金) 21:24:16.08
仁美「え……あ、いえ! その……何も、そう決めたわけでは……!」

さやか「ほ、本当?」

仁美「……今は、まだ。……ただ、不安なんです。
   上条君にとって、私は何なのか……それを、確かめておきたいんです」

さやか「……って、言うと」

仁美「……今度の日曜、14日に、上条君にお会いして……きちんと謝って、もう一度お話をしてみます。
   丁度、バレンタインのプレゼントもありますし」

さやか「……あれ? 14日って、確か……」

仁美「……もちろん、コンクールが終わった後にお会いするつもりですわ。
   コンクールの閉会は3時。……高速バスが見滝原に付くのは5時ごろですから」

さやか「ああ、東京の方であるんだっけ……大変だよねぇ、恭介も。
    それ、恭介には?」

仁美「いえ、これからメールでお伝えしようと……だから、さやかさんに相談したかったんです」

さやか「……そっか。……うん、大丈夫大丈夫!
    あいつさ、根っこは良い奴だから。彼女が会いたいって言ってるんだもん、ムゲに断るわけないよ」

仁美「……そう、でしょうか」

さやか「そうだって! ていうか、もし断ったら直々にシバく!
    仁美に手ぇついて謝らせるからさ、安心しなさい!」

仁美「まぁ……ふふっ」

41: 2014/02/14(金) 21:24:42.78
さやか「…………」

さやか「……恭介もさ」

仁美「?」

さやか「……昨日は、色々私が言っちゃったから、あんな風になっちゃっただけで……
    仁美が嫌いになったとか、重荷だとか……そんなの、絶対に思ってないよ」

仁美「…………」

さやか「もう一度、ちゃんと話し合えば……絶対に仲直りできるって」

仁美「……ふふっ」

さやか「……?」

仁美「不思議ですね。……さやかさんに言われると……本当に、そんな気がしてしまいます」

さやか「……そう? ……よかった」

仁美「……ありがとう。さやかさん」

さやか「うん。……上手くいくよ、きっと」

仁美「……ええ。きっと」


さやか(……そっか。そうだったんだ)

さやか(……だから、仁美は恭介を……)

さやか「…………」

42: 2014/02/14(金) 21:25:25.49
―2月14日・早朝、上条家―

TV『――ので、関東全域に渡り、夜から明日の朝にかけ、激しい降雪と強風が予想され――』

上条父「恭介、準備できてるのか?」

恭介「大丈夫だよ、ほら」

上条父「時刻表は持ったな? 財布は? 傘は? カイロも忘れるんじゃないぞ」

恭介「分かってる、分かってるって。……あのバスも、初めてじゃないんだしさ。
   それに、雪も夜からみたいだし……
   きちんと行って帰ってこれるよ。……父さんこそ、仕事頑張ってね」

上条父「スマンなぁ、急に入るもんだから……」

恭介「いいよ。母さんが見に来てくれるんでしょ?」

上条父「ああ、仕事場から直接行くってさ。 
     連絡あるかも知れんから、携帯忘れるなよ」

恭介「はいはい、持ってるって、ほら」

恭介(あ、電池残り1つか……いいや、帰ったら充電しよう)

恭介(……ん? メール来てる……)ピッ

恭介「! …………」

43: 2014/02/14(金) 21:26:03.05
上条父「どうした?」

恭介「ううん、何でも……それじゃ、行ってきます」

上条父「車に気を付けるんだぞ」

恭介「はは、何百回目かな? それ」

上条父「冗談抜きでだ」

恭介「……うん、分かってる。じゃ、行ってきます」

上条父「……頑張れよ」

恭介「……うん」

44: 2014/02/14(金) 21:26:55.70
―高速バス発着場―

恭介「…………」ピッ

恭介「……今日の6時、か」

恭介「…………」ピッピッ


  To:志筑さん
  Sub:Re:
  ―――――――――――――
  メールありがとう。
  こちらこそ、この前はゴメン。
  6時に噴水広場だね。分かったよ。
  僕もちゃんと謝りたい。
  寒くないようにして待っててね。


恭介「…………」ピッ

45: 2014/02/14(金) 21:27:22.53
―午後、鹿目家―

  ピンポーン…

まどか『はーい』

さやか「あ、まどか? あたしだけど」

まどか『あ、さやかちゃん。上がって上がって! チョコ、ちゃんと冷えてたよ』

さやか「お、そう? よかったよかった、教えた甲斐があるってもんよ。
    それじゃ、おじゃましまーす」ガチャッ

46: 2014/02/14(金) 21:27:51.14
―リビング―

知久「いらっしゃい、さやかちゃん。あの生チョコ、冷蔵庫で良かったよね?」

さやか「こんにちは、パパさん! いやぁ、昨日はありがとうございました。わざわざ手伝ってもらっちゃって」

知久「ははは、何だか僕も久々にさ……」

さやか「やっぱり、ママさんにプレゼントですか?」

知久「ん~? ……んふふふふ……」

まどか「ほら、さやかちゃん。これこれ」トサッ

さやか「おーし、じゃ、こっからは角切りとトリュフだ!」

まどか「おーっ!」

47: 2014/02/14(金) 21:28:21.59
―1時間後―

さやか「ふぃーっ、できたできた」

まどか「ココアパウダーって凄いね。かけるだけで一気にそれっぽく……」

さやか「ホントホント。……じゃあ、約束通りこれは山分け、と……」

まどか「うん。ありがとう、さやかちゃん。すっごくおいしそうだよ」

さやか「なーに、親友の女子力アップも女の子の務めだからね」

まどか「あはは」

 ヒュオォォォ…

まどか「風、結構出てきたね」

さやか「うん。雪はまだ降ってないみたいだけど」

まどか「夜から大雪だっけ」

さやか「らしいね、予報では」

まどか「……一応、見とこうかな。天気」ピッ

48: 2014/02/14(金) 21:28:47.15
TV『ビュォォォォォォォ!!』

2人「……!?」

TV『――以上、宇都宮支局でした。 変わりまして、茨城県水戸市の映像です。現場の悠木さん?』

TV『はい、ここ水戸でも、ご覧の通り、先程から強い吹雪が――』ビュォォォォ

まどか「うわー……予報よりだいぶ早いよ、これ」

さやか「……なんか変じゃない? こっちはまだ全然……」

TV『――続いて、東京・新宿区の映像です。斎藤さん?』

TV『はい、えー、東京の新宿です。数分前から雪が降り始め、現在は風速9メートル毎秒にまで強まっています』

TV『また、降雪による各種交通機関の運転見合わせ、渋滞も――』

さやか「――!」

さやか「まさか……」ピッピッピッ

  プルルルルッ プルルルルッ…

49: 2014/02/14(金) 21:29:13.87
―東京、高速バス車内―

恭介「…………」

運転手『えー、お客様にお知らせいたします。このバスは現在、積雪と人身事故の影響により――』

恭介(……3位、か)

恭介(……結構、頑張ったと思ったんだけどな)

恭介「…………」

  ブーン、ブーン、ブーン…

恭介「? ……さやかか」ピッ

恭介「……もしもし、さやか? 悪いけど、今バスの中だからさ……」

さやか『バス!? 恭介、今どのあたり!?』

恭介「え? っと……もうすぐ練馬のICだけど。
   雪のせいで、何か事故があったみたいでさ。なかなか進まなくて……」

さやか『っ……』

50: 2014/02/14(金) 21:29:42.08
恭介「……コンクールが終わったと思ったら、急に降り始めるんだもん。
   ……参ったよ、本当に。せっかく今日……」

さやか『恭介っ!』

恭介「っ! な、何?」

さやか『いい!? 早まんないで、誰にもメール送らないで!
    今日は行けそうにない、なんて仁美に言ってみなさい! ゼッタイに承知しないからね!』

恭介「なっ……!? な、何でさやかが――」

さやか『そのまま待ってて! いい!? 絶対に会わせてあげるから!』

恭介「――!? え……」

 プツッ! ツー ツー ツー…

51: 2014/02/14(金) 21:30:11.35
―鹿目家―

さやか「…………」

  『……ただ、不安なんです。
   上条君にとって、私は何なのか……』

さやか(……そうだよ……)

さやか(これがダメなら……もう、後が……)

まどか「……さ、さやかちゃん……?」

さやか「……ねえ、まどか」

まどか「え?」

さやか「この家ってさ、噴水公園まで、そんなにかからないよね」

まどか「えっと、うん……歩いて10分もしない、と思うけど」

さやか「……こういうこと言っちゃうの、どうかと思うんだけどさ」

さやか「チョコ作りのお礼ってことで……ひとつ、頼まれてくれないかな」

まどか「……?」

52: 2014/02/14(金) 21:30:42.44
―繁華街―

 チャーラララーチャララーチャララー♪

仁美「あら……さやかさん?」ピッ

仁美「もしもし……え? 今ですか?」

仁美「ええ、時間までちょっと買い物でも、と……雪もまだ少ないですし」

仁美「……え? ええと……」

仁美「はい、私はその、嬉しいんですけど……でも、まどかさんにご迷惑では……」

仁美「――あ、まどかさ……いえ、しかし……いいんですの? ほんとうに……」

仁美「いえ、私としては、そうしていただけるなら……ええ、すみません……ありがとうございます」

仁美「はい、それでは今から……いえ、ありがとうございます、本当……」

 ピッ…

仁美「……さやかさんったら。秘密のつもりでしたのに」フフッ

53: 2014/02/14(金) 21:31:08.55
―鹿目家―

まどか「――うん、待ってるね。ばいばーい」ピッ

さやか「……ゴメンね、まどか。何か……利用するみたいになっちゃって」

まどか「何言ってるの、仁美ちゃんと上条君のためなんでしょ?
    わたしだって友達だもん」

さやか「……ほんっといい子だねぇーまどかは! よしよしよーし」ワシャワシャ

まどか「やん、もうっ……それで、えっと……6時ちょっと前になったら、仁美ちゃんを連れて公園だよね?」

さやか「うん。いつ雪が酷くなるか分からないのに、仁美を外で待たせられないし……お願い」

まどか「……ねぇ、上条君のこと、やっぱり言った方が……」

さやか「……大丈夫。絶対に時間には間に合わせるから」

まどか「でも、どうやって……今、東京で止まっちゃってるんでしょ?」

さやか「…………」キュィィン

まどか(! ソウルジェム……?)

さやか「……マミさん、いっつも言ってるでしょ? 奇跡を起こすのが、魔法少女なんだって」

まどか「――! で、でも……」

さやか「……それに、スピードには結構自信あるんだよ? 魔法でちょちょっと強化すれば……
    その辺の車なんて、メじゃないんだから」

まどか「……え?」

54: 2014/02/14(金) 21:31:37.96
さやか「筋肉痛も魔法で治せるし……ホント、今回ばかりは自分に感謝、ってね」

まどか「いやあの……さやかちゃん?」

さやか「ん?」

まどか「……まさか……走るの? 東京まで?」

さやか「…………」

まどか「いや……いやいやいや、えぇぇえぇぇぇ……!?」

さやか「……杏子のやつが探しに来たらさ、ジョギングに出たって言っといて」

まどか「いやちょっと、ねぇ! いくら何でも……ええぇぇ!?」

さやか「……仁美のこと、よろしくね」ダッ

55: 2014/02/14(金) 21:32:04.47
 ガチャン! ダダダダダダダ…

さやか「――変っ! 身!」

 キュィィィン パァァァーン

さやか「…………」スゥ

さやか「……ううぉぉおおおおぉおおぉおおお!! きょぉぉおぉすけぇぇぇええぇえぇっ!!」

  ダダダダダダダダ…

まどか「さやかちゃん!? さやかちゃぁん!? 待ってよ、ちょっとぉ!?」

知久「まどか? 何かすっごい声のさやかちゃんが……」

まどか「ぱ、パパ! あのね、これから仁美ちゃんが来るから!
    ちょっとお菓子買ってくるね!」ダッ

知久「え? いや、えっと……」

まどか「ああもう、なんでさやかちゃんはいっつも……!」タタタタッ

56: 2014/02/14(金) 21:33:01.44
―ホムラ製菓・第一工場―

ほむら「…………」スッ スッ スッ

ほむら「…………」カポッ

ほむら「…………」シュルルルル

ほむら「…………」キュッキュッ

ほむら「…………」ペタッ

ほむら「……ふぅ……よし、完成!」

偽街の子供達「イェァァァー!」

ほむ兵隊「ホムゥー!」

ほむら「ふふふ……できた、できたわ、できてしまったわ……
    カリブ海産クリオロ種のファインカカオ100%、究極にして至高のホワイトチョコ……」

ほむら「リボン型ハート型ネコ型花型、その他全25種類のプリティフォルム!」

ほむら「ケースはブラウンベースの高級感あふれる特別仕様!」

ほむら「リボンは赤・紫・ピンクの色鮮やかなトリコロール! 当然手触りも最高級!」

ほむら「そしてそのリボンを引き締める、まどか専用ブランドの証・ほむほむシールメタリックバージョン!」

ほむら「……完璧だわ……どんな王侯貴族だろうと、これほどのチョコを受け取ったことはないはずよ」

58: 2014/02/14(金) 21:33:59.16
ほむら「あとは直接渡すだけ……ロマンティックな場所での逢瀬、そしておもむろに差し出される箱……」

ほむら「花の丘で視線を交わす私とまどか、予想外のプレゼントに顔を赤らめ、おずおずと手を伸ばすまどか……」

ほむら「シルクのようなまどかの指が、箱を持つ私の手に触れ、絡んで……」

ほむら「んんんんん―――!!!」ジタバタジタバタ

偽街の子供達「…………」

ほむ兵隊「…………」

ほむら「……さて、と。そうと決まればさっそくまどかを――」スッ

ほむら「…………」

ほむら(…………しまった……)

ほむら(……まどかの番号……全然知らないじゃない……!)

59: 2014/02/14(金) 21:34:29.42
  ピンポーン…

ほむら(家に直接押しかけて……ダメよ、2人きりになれなきゃ意味が……!)

ほむら(ああそれなら、家に行って直接アドレスを……何よそれ、本末転倒じゃないの!)

ほむら(じゃあもういっそ、美樹さやか辺りから聞き出して……いえ、あの子が素直に教えるとも思えないし……)

  ピンポーン…

ほむら(ああもう、何なのよこんな時に!)ダッダッダ

  ガチャッ!

ほむら「何回言えば分かるのよ! 土地の権利所なら、ちゃんとこっちに――」

まどか「え、あっ……ご、ごめん……」

ほむら「」

60: 2014/02/14(金) 21:34:58.06
―関越自動車道―

 ブロロロロ…

ショウさん「おい、後ろ来てるか」

ホスト「いえ、もう県境を越えたっすからね。雪もヤバいし……」

ショウさん「はぁーあ、んでこんな日に限って……」

ホスト「上手くいくといいっすね、雲隠れ。……あ、これじゃ雪隠れか」

ショウさん「っせーな、これでも大分人数減らしたんだぜ」

ホスト「女の子に頭下げるショウさん、初めて見ましたよ」

ショウさん「……ま、それでも間に合わなくって、こうやって逃げてるわけだけどな」

ホスト「ショウさんの場合、貰えるのチョコだけじゃなさそーですもんね」

ショウさん「……パンチか?」

ホスト「包丁……」

ショウさん「止めろっての! 洒落になら――」

  「――ぉぉぉぉおおおお――」

61: 2014/02/14(金) 21:35:25.61
ショウさん「……?」

ホスト「――!? しょ、ショウさんッ! 後ろ! あれ!」

ショウさん「何…… !?」

さやか「うううぅぅぅぉおおおおおぉぉおおおぉぉおおぉお!!」ダダダダダ

2人「ぎゃぁああぁぁぁぁああぁあぁ!!?」

さやか「でえぁぁあぁりゃああぁぁぁぁぁっ!!」ビュンッ

  ダダダダダダダ…

ホスト「と、通り過ぎ……よかった、追手じゃねぇ……」

ショウさん「う、嘘だろ……こっちは時速40キロで……」

  ツルッ!

さやか「あっ――」

2人「あ……」

62: 2014/02/14(金) 21:35:55.23
 
  ボギッメシャッゴテンッツルツルツルベシャッ!

ホスト「ひっ……」

ショウさん「お、おい……ちょっと止めるぞ!」キキーッ!

ホスト「は、はい!」

  バダン! タッタッタ…

ショウさん「おいアンタ、大丈――」

さやか「――」ムクッ

ホスト「ひぃぃぃっ!」

さやか「ったた……か……回復回復……」キュワーン

ショウさん「……!?」

さやか「はぁ、はぁ……せりゃぁあぁあぁぁぁああぁぁあっ!」バッ

  ダダダダダダダ…ツルッ! ペシャッ 
      …ダダダダダ…

ホスト「……」

ショウさん「……こええ……」

63: 2014/02/14(金) 21:36:32.79
さやか「はぁ、はぁ、はぁ……」ダダダダダ

  ビュォォォォォォ…

さやか(み、見滝原を出たら……急に……このぉっ……!)

枝「」ヒューン

さやか「あだっ!」ベキッ

さやか「~~~っ……」


   『上手くいくよ、きっと』

   『……ええ、きっと』


さやか(……あたしが……)


   『そうだ仁美、今日の昼休みにさ……』

   『そんなんじゃ演奏、失敗しちゃうぞー』


さやか(……あたしが……始めたんだもん……)

さやか(なら……あたしが、あたしが何とか……!)チャキッ

64: 2014/02/14(金) 21:37:06.24
看板「」ヒューン

さやか「でりゃぁ!」スパッ

タイヤ「」ヒューン

さやか「うりゃぁっ!」ズバッ

標識「」ヒューン

さやか「どりゃああっ!」スカッ

さやか「――! やばっ――」

  グシャッ!

さやか「ぁああっ!」

さやか「ぐ……ぅぅう……」



  「……全く、なんて姿なの? 美樹さやか」

65: 2014/02/14(金) 21:37:35.38
さやか「! ほ……」

ほむら「――っくしゅん!」ブルッ

さやか「…………」

ほむら「……治癒にも強化にも限界はあるわ。そんな調子じゃ、いつ壊れるか……」

さやか「なに……よ……邪魔しに来たの……?」

ほむら「……まどかに頼まれたのよ。あなたがあんまり無茶するなら止めて……手伝ってあげてほしい、って」

さやか「……ふぅ、ん……」

ほむら「どれだけまどかが心配してると思うの? 馬鹿なことは止めて、とっとと戻りなさい」

ほむら「……おまけに、そのゴタゴタで結局渡しそびれたし……ああ、もう……」ブツブツ

さやか「…………」キュワーン

ほむら「! ちょっと……!」

さやか「まどかはともかくさ……あんたに借りなんて、そうそう作れないよ」

ほむら「……そう。じゃあこっちも、あなたが倒れるまでをゆっくり見物させてもらうわ」

さやか「……どうぞ、ご勝手にっ!」ダッ

  ダダダダダ…

ほむら「……まったく……」バサッバサッ

  ビュオオオオ…

さやか「負けるかぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

66: 2014/02/14(金) 21:38:22.36
―高速バス車内―

恭介「…………」

恭介(……5時、か)

恭介(……やっぱり電話しよう。さやかはああ言ってたけど、でも……)

  ガタンッ! ガタンッガタンッ!
 
恭介「……?」

子供「! ママ、おっ、おばけ……おばけ!」

母親「はいはい、雪女とか? 怖いわねー……って――」



さやか「…………」ガタンガタンッ



母親「ひぇぁあぁぁっ!?」

恭介「――!? え……えっ!?」

67: 2014/02/14(金) 21:38:48.34
さやか「――けて……――けて――ださ――」ガンガンガン

運転手「あぁぁあぁはいはいはいはい!! 開けます開けます開けますからっ!」

  プシューッ…

さやか「恭介ええぇぇえぇ……!」ダッダッダ

恭介「さっ、ささ、さやか……!? 何でこんな……ていうか、そのカッコ――」

さやか「いいから、ほらっ!」グイッ

恭介「うわっ!?」

さやか「ちゃんと掴まった!? ほら、首のとこでちゃんと組んで!」

恭介「えぇ!? い、いやいや、ちょっと……!」

子供「おんぶー」

母親「こ、コラっ!」ペシッ

68: 2014/02/14(金) 21:39:24.76
さやか「運転手さん!」

運転手「は、ハイっ!?」

さやか「今何時!?」

運転手「えっ!? っと……ごっ、5時3分でありますっ、ハイ!」

さやか(……見滝原を出たのが大体4時前……
    滑ったり転んだりのロスを除けば、何とか……!)

さやか「恭介! 鞄とバイオリン、ちゃんと持ってる!?」

恭介「持ってる! 持ってるから、ねぇ! 一体何が――」

さやか「っし……んじゃ、行くよっ!」ダッ!

恭介「うぇあぁぁあぁぁっ!!?」

  ダッダッダッダッダ…

運転手「…………」ポカーン

子供「……ママー? なにあれ」

母親「――青春よ」

子供「は?」

69: 2014/02/14(金) 21:39:51.55
―見滝原、鹿目家―

仁美「げんっきーにいっちに♪ おっはよーさん♪」

タツヤ「あー!」

仁美「ふふっ……」

まどか「あ、仁美ちゃん。よかったらチョコ食べない?」

仁美「えっ……い、いけませんわまどかさん、私には上条君が……」

まどか「いやいや……昨日、さやかちゃんと一緒に作ったんだけどね……」

まどか「…………」チラッ

まどか(……5時、40分……)

まどか(大丈夫かな……さやかちゃん……)

70: 2014/02/14(金) 21:40:20.52
―関越自動車道―

  ビュゴオオオオ…

さやか「はっ、はっ、はっ……」タタタタタッ

さやか「き……恭、介……寒くない? 大丈夫……?」

恭介「さやかこそ……めちゃくちゃ冷たくなってるじゃないか!
   僕はもういいから! このマント、さやかが使ってよ!」

さやか「は……はは……あったかい、でしょ……それ……」

恭介「いいから! ちょっと待って、カイロがまだ確か……」ゴソゴソ

さやか「いい、よ……恭介が使って……」

恭介「でも……!」

さやか「……ねぇ、恭介……今、どのあたりか分かる……?」

恭介「え? えっと、この辺は……」

ほむら『……標識を見る限り、花園のICを過ぎた辺りよ』

さやか「……便利だよね……あたしも羽が……欲しかっ……ぐぅっ!」ヨロッ

恭介「さ、さやかっ!」バッ

さやか「! 恭介……降りちゃ……」

71: 2014/02/14(金) 21:41:12.05
恭介「もういい……もういいよ! 魔法だか何だか全然分かんないけど、これ以上走ったら……!」

さやか「……大丈夫、だってば……治せるから、ほら……」

恭介「っ……さっきからそればっかり……! じゃあなんで、こんなにフラフラなんだよ!」

さやか「! ……ぁ……」

さやか(……あれ……回復のペースが……)

ほむら『……無理もないわ。あんなに回復魔法を連発したんだもの』

恭介「ねぇ……もういいんだ、僕のことは!
   志筑さんには、僕からちゃんと連絡する!」

恭介「それにほら、だんだん渋滞も減ってきたし……!
   誰か親切な人に乗せてもらおうよ! 見滝原ナンバーのさ! それで……」

さやか「……恭介……」

恭介「……さやかが、僕と志筑さんのために頑張ってくれた。それだけでもう十分だよ!
   必ず仲直りする! デートにも毎週行く! さやかが怒りだすぐらいにラブラブになる! だから……!」

さやか「……ほ、んと……だね……」ヨロッ

恭介「さやかっ……!」

72: 2014/02/14(金) 21:41:40.01
ほむら『――彼の判断に従った方が、賢明だと思うわよ』

さやか「……乗って……恭……介……」

恭介「……何で……何でそこまで……!」

ほむら『……もう止めなさい。あなたが倒れでもしたら、まどかに何て言えばいいのよ。
    それ以上はもう、ただのエゴだわ!』

さやか「――!」



さやか(…………ああ……)

さやか(……そっか……そう、だったんだ……)

73: 2014/02/14(金) 21:42:20.62
さやか「……恭介……」

恭介「な、何……?」

さやか「……この前さ、恭介、言ってたよね。
    あたし、結局……自分のことしか、考えてないって……」

恭介「――! あ……ご、ごめん! あの時は本当――」

さやか「いいよ……それね、たぶん……正解だから」

恭介「――え?」

さやか「……あたしさ、昔っから……友達が悩んでたり、誰かが苦しんでたり……
    そういうのを見るのが、すっごくイヤだったんだ……」

さやか「だから、そういうのを見ちゃうと……何て言うんだろ、『正しく』したくなるの……
    悩みを晴らして、悪い奴をやっつけて……それで、ぜんぶ元通りに……」

さやか「……今の、これだって……仁美と恭介がケンカしてるの……もう、見てられなくなっちゃって……」

恭介「…………」

74: 2014/02/14(金) 21:42:58.02
さやか「――でも、さ。……よく考えたら……それって別に、誰かのためにやってるわけじゃない……
    ただ、自分がイヤに思うから……見えないように、変えようとしてるだけ……」

さやか「……誰かのためなんて言っておきながらさ。結局は全部、自分のためだもん。
    ……笑っちゃうよね、ホント……」

恭介「……違う、違うよ。だって……!」

さやか「……あーあ……やっと分かっちゃった。
    あたしって、ほんとバカで……わがままで……」

ほむら「…………」

75: 2014/02/14(金) 21:43:42.97
さやか「……でも、ね……」

恭介「え……?」

さやか「……だから、こそ……自分で決めたことだけは……何があっても、やり遂げたいの……」

さやか「仁美と恭介を仲直りさせるのも……恭介を……仁美の所に、連れて帰るのも……!」

さやか「あたしが、あたしと決めた……『約束』……
    それが守れないなら、あたしは……もう、『あたし』なんかじゃない……!」

さやか「――あたしは……『あたし』でいたいんだっ……!」



ほむら「――――!」

76: 2014/02/14(金) 21:44:32.66


  『――約束するわ! 絶対にあなたを救ってみせる……!』

  『……たった一つだけ最後に残った、道しるべ』

  『お願いだから、あなたを私に守らせて……』



ほむら「…………」

さやか「うっ……」バタッ

恭介「さやかぁっ! 無理して長々喋るから……!」

さやか(……何、だろ……体の中から……凍ってくみたいな……)

さやか「恭……介……」

恭介「さやか……さやかっ! ダメだっ! 起きてよさやかぁ!」ユサユサ

さやか(――ける……もん、か……)

さやか(こんな――ことで……)

さやか(…………負ける……もんか……)

恭介「さやかぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!」

77: 2014/02/14(金) 21:45:06.42
ほむら「…………」バサッバサッ

恭介「!? え……あ、暁美……さん……?」

ほむら「……本当に……どこまで愚かなの……」

ほむら「…………」スッ

恭介(……け、携帯……?)

ほむら「…………」ピッ

  プルルルルッ… プルルルルッ…

78: 2014/02/14(金) 21:45:46.00
――
―――――
―――――――――

恭介『あ、さやか! 見にきてくれたんだ』

恭介『どうだった? ……ホント!? よかったぁ……』

恭介『うん、2位……でもさ、次はゼッタイに1位だから!』

恭介『え? パーティー? うん、行く行く! さやかのおかあさんのカレー、すっごくおいしいもん――』

79: 2014/02/14(金) 21:46:12.11
――
―――――
―――――――――

恭介『さやかってさ、中学はやっぱり見滝原中?』

恭介『え? あ、うん……いや、父さんがね、向こうの音楽学校の付属に行っても、いいんじゃないかって……』

恭介『――え? そりゃぁ……僕だって、さやか達とまだ遊びたいよ。……でも……』

恭介『……そっか。そうだよね。……うん。もうちょっと、話し合ってみる』

恭介『あ、そうだ! この前のコンクール見てくれた? これでとうとう3連覇――』

80: 2014/02/14(金) 21:47:03.90
――
―――――
―――――――――

恭介『……あ、さやか』

恭介『え? ……ああ、この前の……まあ、うん。1位だったけど……』

恭介『――僕は、あれが1位の演奏だとは思えないよ。張りが無いし、途中で一回間違っちゃったし』

恭介『……はは、ありがとう。……でも、いいんだ。分かってるから』

恭介『……さやかって、いっつもそんな感想じゃないか』

恭介『……ゴメン、そろそろレッスンなんだ。……それじゃ――』

81: 2014/02/14(金) 21:47:33.52
――
―――――
―――――――――

恭介『…………』

恭介『……さやか。……そのCD……悪いけど、持って帰ってくれないかな……』

恭介『――言われたんだよ。もう、治らないって……』

恭介『……バイオリンを弾けない僕なんか……僕なんか、もう……!』

恭介『……ごめん……1人になりたいんだ……』

恭介『……それと、もう来てくれなくても大丈夫だよ。さやかだって、色々忙しいよね――』

82: 2014/02/14(金) 21:48:00.71
――
―――――
―――――――――

恭介『! あ、さやか!』

恭介『ごめんね、退院したら、まっさきに言おうと思ってたのに……』

恭介『え? あ、うん……いや、その、それでさ。ちょっと、相談が……』

恭介『……さやかって、その……今まで、告白とかされたことある?』

恭介『え!? い、いやいや! ちょっと! 何で知ってるの!? 志筑さんだって……』

恭介『そっか……うん、それでさ。こんなこと、初めてだったから……どうしたらいいのかな、って……』

恭介『……? さやか? どうしたの、さやか――』

83: 2014/02/14(金) 21:48:43.94
――
―――――
―――――――――

恭介『あ、もしもし、さやか?』

恭介『……うん。お付き合いすることにしたんだ。さやかが相談に乗ってくれたおかげだよ』

恭介『――志筑さんって、とってもいい子だよ。僕の演奏のこと、あんなに……』

恭介『……さやかも、いい人が見つかるといいね』

恭介『え? よ、余裕ぶるって……ち、違うってば! もう!』

恭介『ああもう! 何だよアツアツーって! 小学生じゃないんだから――』

   『……アツアツ……』

   『……あっ、熱っ――』

84: 2014/02/14(金) 21:49:14.05
―ヘリ機内―

さやか「――熱うううぅううぅぅっ!!?」ガバッ

恭介「! さ、さやかっ!」

さやか「……あ、あれ? 恭介……」

恭介「よ、よかった……さやかっ、さやかぁっ……」ポロポロ

さやか「え!? ちょ、ちょっと恭介!」

ほむら「……命拾いしたわね、美樹さやか」

さやか「! ほ、ほむら……」

ほむら「雪でソウルジェムが冷えて、凍氏寸前だったのよ。
    ……彼がカイロでジェムを温めなければ、今頃……」

恭介「うっ……ううぅ……」

さやか「……ごめん、恭介。……やっぱり、迷惑かけちゃったね」

恭介「さやか……さやかっ……!」ギュッ

さやか「――!」


さやか「……あはは、何やってんのよ、もう。仁美に怒られちゃうよ」

85: 2014/02/14(金) 21:49:46.90

  バラバラバラバラ…

さやか「……ところでさ。ここは?」

恭介「……暁美さんがヘリを呼んでくれたんだ。凄かったよ、電話してから1分も経たないで……」

さやか「え……!?」

ほむら「…………」

さやか「……その、ほむら……」

ほむら「……とやかく言われる筋合いは無いわ。私はただ、まどかのためを思っただけ。
    ――今回限りよ。愚直なあなたに情けをかけるのは」

さやか「……はいはい」

86: 2014/02/14(金) 21:50:18.13
ほむら「……それに……」

さやか「……?」

ほむら「…………自分のエゴを肯定するなら、何が何でも貫いてみせなさい。
    そうでなければ……ただの自己満足だから」

さやか「…………」

ほむら「……どうしたのよ」

さやか「いや……何か、今日のほむら……」

ほむら「……本当、どうかしてるわね」

さやか「ううん。……ありがと」

ほむら「…………」

87: 2014/02/14(金) 21:51:06.11
恭介「…………」

さやか「……ねぇ、恭介。ちょっと訊いてもいい?」

恭介「え?」

さやか「……恭介はさ、どうしてバイオリンを弾いてるの?」

恭介「…………」

恭介「……昔はね、父さん達に褒められるのが嬉しかったから。
   でも、だんだん……周りがいくら褒めてくれても、ちっとも嬉しくなくなっちゃって」

さやか「…………」

恭介「……だから、それからは自分のために弾くことにしたんだ。
   満足できる演奏ができたら嬉しいし……もちろん、苦しいこともたくさんあるけど」

ほむら「…………」

88: 2014/02/14(金) 21:51:34.80
恭介「――でもね。思い出したんだ」

恭介「志筑さんに告白されたとき……こう言われたんだよ。
   『上条君の演奏のおかげで、救われたんです』って」

恭介「それ、聞いちゃってさ……なんだか、こういうのもいいな、って思って。
   ……やっぱり、僕は……誰かのために弾いていたい」

恭介「僕の演奏を聴いて、笑ったり、泣いたり……
   そんな人たちのために弾こうって……今なら、素直にそう思えるんだ」

さやか「……そっか」

恭介「……ありがとう」

さやか「え?」

恭介「……さやかのおかげで、僕も気付けた気がする」

さやか「……あはは、買い被らないでってば」

89: 2014/02/14(金) 21:52:02.89
恭介「……志筑さん、怒ってるだろうなぁ……こんなに待たせちゃって」

さやか「……大丈夫だよ。仁美も分かってくれるって」

恭介「ううん。……やっぱり、僕がちゃんとやらなきゃ」

ほむら「……? 何言ってるの、まだ6時にもなってないわよ」

恭介「……え?」

ほむら「時計、見てみなさい」

恭介「……ご、55分……? まだ……?」

ほむら「……あと3分もしないで見滝原に着くわ。まあ、寄り道したいって言うなら別だけど」

さやか「ど、どんだけ速いのよ、このヘリ……」

ほむら「色々弄ってあるのよ。……それに、見滝原では雪も少ないし」

90: 2014/02/14(金) 21:52:53.34
さやか「……そう言えば、他の所じゃあんなに降ってたのに……
    あーあ、関東全部で雪が止まってたらな……」

ほむら「しょうがないでしょう、私の力は見滝原限定だもの」

さやか「――薄々思ってはいたけど、やっぱりか」

ほむら「大雪なんて、まどかが迷惑するだけだわ」

さやか「はいはい……あ、そうだ。まどかに連絡……」ゴソゴソ

恭介「……?」

さやか「……あっちゃー……携帯……」

恭介「あ、じゃあ僕の……あっ」 

  【充電してください】

恭介「……やっぱり、朝充電しとけば……」

さやか「……ねぇー、ほむらー」

ほむら「……情けはあれきりだって言ったでしょう」

さやか「ちぇー、いいじゃんちょっとぐらい。まどかに電話するだけなのに……」

ほむら「…………」

ほむら「…………!!」ピーン

91: 2014/02/14(金) 21:53:37.74
―見滝原、公園―

仁美「…………」

まどか「仁美ちゃーん!」

仁美「あ、まどかさん……お電話は、もう?」

まどか「うん、さやかちゃんから……上条君、もうすぐ来るって」

仁美「そうですか……!」ホッ

まどか(でも、何だか……電話の向こう、うるさかったなぁ……こう、バラバラって……)

  バラバラバラ…

まどか(そうそう、こんな感じに……え?)

仁美「あ、ヘリコプター……珍しいですわね、こんなに近くを……」

  タッタッタッタ…

仁美「――! あ……」

恭介「志筑さんっ!」

仁美「か……上条、く……」

まどか(……ふふっ……)

まどか「……じゃあね、仁美ちゃん。また明日」タッタッタ

仁美「あ! は、はい! あの……色々ありがとうございました!」

まどか「……」ニコッ

92: 2014/02/14(金) 21:54:03.95
―公園出口―

まどか(……がんばってね、仁美ちゃん)

  アアー♪ ツガルカーイキョーォー♪ フーユゲー…

まどか「? もしもし……」ピッ

まどか「……え? ほむらちゃん……?」

93: 2014/02/14(金) 21:54:35.93
―公園―

恭介「…………え、と……」

仁美「……あの、その……」

恭介「……志筑さん」

仁美「そ、その……上条君……」

恭介「……この前は……本当にごめん。僕、色々上手くいってなくって、つい……!」

仁美「そ、そんな! 私だって、あの時は酷い事……」

恭介「いやいや、僕だって……」

仁美「いえいえ! 私の方も!」

恭介「いや本当! 完全に僕が悪かったから……!」

仁美「違います! 私がカッとなったせいで!」

恭介「いや、だからさぁ……!」

仁美「ああもう! はい、これっ!」スッ

94: 2014/02/14(金) 21:55:10.06
恭介「…………え?」

仁美「……バレンタインですもの……
   お詫びと、その、えっと……あっ、愛、を……ええと……」

恭介「…………」

仁美「……あ、あの……もしかして、その、甘い物は……」

恭介「~~~っ!」ギュッ

仁美「ひゃっ!」

恭介「……ありがとう……ありがとう、志筑さん……!」

仁美「……上条、くん……」

恭介「……僕ね。ずっと不安だったんだ。小さいころからバイオリンばっかりで、
   女の子と付き合ったことなんて一回もなかったし……」

恭介「……気が付いたら、何かっていうとバイオリンで……
   ちゃんと、彼氏らしくできてるのかなって……でも……でも、やっと……!」

仁美「上条君……上条……くん……!」ギューッ

95: 2014/02/14(金) 21:55:36.84
恭介「……ねぇ、志筑さん」

仁美「……?」

恭介「……僕からも、プレゼントがあるんだ。……受け取ってくれるかな?」

仁美「! は、はいっ……!」

恭介「……ありがとう。それじゃぁ……」スッ

仁美「……! ひ……弾いて、いただけるんですか……?」

恭介「――志筑さん、前にさ……僕の演奏に感動したって、そう言ってくれたよね?」

仁美「!」

恭介「……何でかな。『感動した』なんて、今まで散々言われてたのに……
   志筑さんに褒めてもらったとき、すっごく嬉しかったんだ」

仁美「あ……あ……」

恭介「……これからも、僕を聴いていてほしい。……いいかな……?」

仁美「……はいっ……よっ、喜んで……!」

恭介「…………」ニコッ

恭介「……それじゃあ、聴いてください。……エルガーで――」

96: 2014/02/14(金) 21:56:08.43
―物陰―

さやか「…………」スッ

ほむら「……まどかは?」

さやか「ちゃんと送ってきたよ」

ほむら「……そう」


 ~~♪
          ~~♪


さやか「……『愛の挨拶』……」

ほむら「……よく知ってるわね」

さやか「伊達に幼馴染み、やってないからね」

ほむら「…………」

さやか「…………」

97: 2014/02/14(金) 21:57:07.51

    ~~♪
           ~~♪


さやか「……ねぇ、ほむら」

ほむら「…………」

さやか「……本当はね。
    ……あたしも、ちょっとだけ好きだったんだ」

ほむら「…………」

ほむら「……知ってたわ」

さやか「…………そっか……」


 ~~♪
        ~~♪


さやか「……あーあ……」

さやか「……お似合いだよね、本当に……」

98: 2014/02/14(金) 21:57:38.35
―翌日、学校―

和子「……21世紀を迎え、我々の文明はますます物質化を強めています」ニコニコ

和子「目に見えないものが後回しにされ、お金や物がモノを言う……
   そんな時代になっていると、誰もが口を酸っぱくして言っているわけですね」ニコニコ

まどか「…………」

和子「偉い人たちは言います! 物が心になりかわっている!
   思いやりやいたわりは消え失せ、ただの物質の応酬だけが人間関係のメインになっていると!」ニコニコ

杏子「……ぐーっ……」

和子「――ですが、私はそれが本当だとは思いません」

和子「いつの時代も、物には贈り手がつきものです。
   物とは、心の代わりになるモノではありません。心を表現するためのモノなのです!」ニコニコ

和子「たとえ既製品でも、愛を込めて贈ったならば……
   どんな手作りにも劣らない、最高のプレゼントになるんですよ!」ニコニコ

ほむら(渡せたのね……)

まどか(渡せたんだ……)

杏子(渡せたんだな……)

99: 2014/02/14(金) 21:58:04.85
―放課後、教室―

まどか「よいしょ、っと……」

ほむら「まどか、手伝うわよ」

まどか「あ、ほむらちゃん。いいよ、もう終わっちゃったし。
    ……そうだ。昨日はチョコありがとう。すっごくおいしかったよ」

ほむら「そ、そう? 良かったわ……」

まどか「パパもママもすっごく喜んでたよ。こんなおいしいチョコ、はじめてだって」

ほむら「……そう」

ほむら(……一応、全部まどか用だったんだけど……)

100: 2014/02/14(金) 21:58:31.29
まどか「……えっと、それでね……」ゴソゴソ

ほむら「え? …………!!!」

まどか「これ、この前さやかちゃんと作ったの……その、よかったら……」

ほむら「…………」

まどか「……? ほむらちゃん?」

ほむら「っっ~~~!」ブワッ

まどか「!?」

ほむら「あ……ありがとう……ありがとう、まどか……
    私……わたし、もう、氏んでもいい……!!」

まどか「え、ええぇ……?」

ほむら「ぐすっ……ありがとう……神棚に飾って硬化テクタイトに入れて、
    未来永劫聖遺物として家宝にするわ……!」

まどか「いやあの、ちゃんと食べてね?」

101: 2014/02/14(金) 21:59:11.34
まどか「…………」

ほむら「……? まどか?」

まどか「……さやかちゃん、大丈夫かな」

ほむら「……色々無茶をしすぎたツケよ。ジェムが冷えれば風邪にもなるわ。
    おまけに、まどかに掃除当番なんて……」

まどか「ううん、これぐらい……さやかちゃん、昨日はすっごく頑張ったんだもん」

ほむら「……はぁ……」

まどか「お見舞い、行こうかな……」

ほむら「……止めときなさい」

まどか「大丈夫だよ、マスクはちゃんと……」

ほむら「――違うのよ。その……」

まどか「え?」

102: 2014/02/14(金) 21:59:49.18
―美樹家・さやかの部屋―

仁美「はい、上条君。あーん」ニコニコ

恭介「あーん……うぅーん、おいしい!」デレデレ

仁美「まだまだありますわよー。ほら、今度は煮リンゴです♪」

さやか「……あんたら……よくもまあ病人の前で……」ゲホゲホ

恭介「そういう約束だったじゃないか。ほら、仲直りしてデートして、さやかの前でイチャイチャラブラブ……」

仁美「やだもう、上条君ったら……」ポッ

103: 2014/02/14(金) 22:00:19.26
さやか「……ムズくない? マスク付けたまま『あーん』って……」

仁美「ふふふ、さやかさんもおひとつどうぞ? はい、あーん」

恭介「おいしいよーさやか。ほら、あーん」

さやか「……はいはい、あーん」パクッ

さやか「…………」モグモグ



さやか「……あーぁー……」

さやか「……甘いなぁ、もう……」




おわり

106: 2014/02/14(金) 22:02:43.61
乙乙

引用元: さやか「仁美と恭介、愛のメロディ」