1: 2014/11/14(金) 18:09:52.45 ID:HDnCnpSi0

やよい『収録終わりましたー!』ウッウー!


P『よく頑張ったな、やよい』ナデナデ


やよい『えへへ、プロデューサーの手、あったかくてきもちいいです!』テレテレ


やよい『でもこうしたら、一緒に……』ギュゥ


やよい『心もぽかぽかーってしますね!』


P『おっと、やよいもあったかいなぁ』ハハ…


https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415956182

2: 2014/11/14(金) 18:10:50.26 ID:HDnCnpSi0

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3: 2014/11/14(金) 18:11:51.76 ID:HDnCnpSi0


プロデューサー。


あれから、もう三年が経つんですね。


4: 2014/11/14(金) 18:12:45.73 ID:HDnCnpSi0

プロデューサー。


私の、大好きな人。


でも、今度、結婚してしまいます。


お相手は、全国縦断ドームライブを最後に、引退を決めた、美希さん。

5: 2014/11/14(金) 18:13:49.91 ID:HDnCnpSi0

ふたりは、ずっとお付き合いしていたのを隠してて、


私も、ついこの前、“あのふたりが”って知って、びっくりしました。


でもでも、長い間、美希さんが頂点で輝いていたのも、


ちょっと納得できたかなーって。

6: 2014/11/14(金) 18:14:56.79 ID:HDnCnpSi0

「ねぇ、ハニー。今日のミキは、今まで、一番綺麗でしょ?」


「ああ、綺麗だよ、美希。すごく綺麗だ」

7: 2014/11/14(金) 18:16:01.16 ID:HDnCnpSi0

私が、もっと背が高かったら。


私が、もっと素直になれていたら。


私が、もっと近くにいたら。



私が、もっとすごいアイドルだったら。


プロデューサーの隣にいたのは、私だったのかな?

8: 2014/11/14(金) 18:16:46.69 ID:HDnCnpSi0


結局、誰にも言えなかった。


私だけが知っている、私の想い。


9: 2014/11/14(金) 18:17:22.60 ID:HDnCnpSi0


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10: 2014/11/14(金) 18:18:11.33 ID:HDnCnpSi0

P『うおお、寒いぞ、この季節は……』ブルブル


やよい『プロデューサー、それじゃあ、手を出してください』


P『ん?ハイタッチか』


やよい『違いますよぅ。こうするんですっ』ギュッ


やよい『こうすれば、あったかいですよ!』


P『ああ、なるほど。あったかいな』

11: 2014/11/14(金) 18:19:30.51 ID:HDnCnpSi0

事務所まで手を繋いで帰った時も。


きっともう、プロデューサーは美希さんと付き合っていたんですね。


私、ちょっと失礼なことしちゃったかも。

12: 2014/11/14(金) 18:20:09.36 ID:HDnCnpSi0


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13: 2014/11/14(金) 18:21:43.90 ID:HDnCnpSi0

結婚式の招待状を、プロデューサーに渡されました。


私は、ちゃんと笑顔で受け取れてたかな。

14: 2014/11/14(金) 18:22:52.36 ID:HDnCnpSi0

プロデューサー……


これからも、そばにいてください。


私を支えてくれたその手を、


私の頭をなでてくれた、その手を、


私が、いつでも暖めてあげるから……

15: 2014/11/14(金) 18:24:20.03 ID:HDnCnpSi0

分かってる。


そんなことは、言えない。


言えないから、こうなっちゃったのも。


分かってる。全部分かってる……

16: 2014/11/14(金) 18:25:14.55 ID:HDnCnpSi0


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17: 2014/11/14(金) 18:26:12.99 ID:HDnCnpSi0

P「おはよう、やよい」


私は朝早く事務所に行く。


始めは、お掃除をするためだったけど。


いつからか、プロデューサーに会えるのを楽しみにして。


P「いつもありがとな、やよい」


やよい「いえいえ!」

18: 2014/11/14(金) 18:27:03.93 ID:HDnCnpSi0

私以外のアイドルは、誰も知らない時間。


私だけの時間。


やよい「今日は寒いですねー」ギュッ


P「そうだな。風邪引かないようにしないとな」ヨシヨシ


私が唯一、プロデューサーに甘えられる時間。

19: 2014/11/14(金) 18:27:59.63 ID:HDnCnpSi0


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20: 2014/11/14(金) 18:28:39.73 ID:HDnCnpSi0

P『やよいは…長女だったっけ?』


やよい『はい!だからいつも、誰かに頼ったり、できなかったです』


P『そうか。まあ、俺には甘えてくれよな』


P『年齢的には兄貴みたいなものだし』


やよい『プロデューサーが、私の……?』

21: 2014/11/14(金) 18:29:40.68 ID:HDnCnpSi0

やよい『じゃあ、一度だけ……お、お兄ちゃんって呼んでも?』


P『ああ、いいよ』


やよい『よ、よーし……』


やよい『ぉ、お兄ちゃん……』///


P『なんだ、やよい?』


やよい『え、わ……!私どうしよ~!』///

22: 2014/11/14(金) 18:30:18.92 ID:HDnCnpSi0

P『今日はよくがんばったな。ごほうびに……』ナデナデ


やよい『あ、あぅ……』テレテレ


P『いいこいいこ』


やよい『え、えへへ、ありがと……お兄ちゃん』///

23: 2014/11/14(金) 18:31:11.76 ID:HDnCnpSi0


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24: 2014/11/14(金) 18:32:46.72 ID:HDnCnpSi0

やよい「美希さんの、全国縦断ドームライブ、大成功でしたね」


P「ああ。最後に華々しいエンディングを迎えられてよかったよ」



やよい「……美希さんはどうして、ここで引退することにしたんですか?」


P「美希が、もう満足だって。一生分輝いたから、後は俺のためだけにキラキラするって」


やよい「わー、惚気られちゃいました」///


P「そんなんじゃないって……」

25: 2014/11/14(金) 18:34:17.79 ID:HDnCnpSi0

P「まぁ、ずっと頂点に君臨し続けたんだ。俺も十分だと思ったよ」


P「それに、美希の輝きの源が俺である限り、美希に勝てるアイドルは永遠に現れないだろうしな」


やよい「………」

26: 2014/11/14(金) 18:35:58.63 ID:HDnCnpSi0

P「わがままな妹のようだった美希も、今じゃすっかりトップアイドルになって」


P「日本中を虜にした。俺も例外じゃなかった」


やよい「…私だけのお兄ちゃんだと、思ってたのになぁ」ポツリ


P「んー?」


P「……やよいにお兄ちゃんなんて呼ばれたこともあったな」


やよい「えへへ、私、ずっとプロデューサーのこと、家族みたいだって思ってたんですよ?」


P「俺もだよ。本当に、765プロは大きな家族みたいだった」

27: 2014/11/14(金) 18:37:27.45 ID:HDnCnpSi0

家族なんて


もう、そんな関係になってしまったら、


恋愛なんて、不安定な所には戻れなくなってしまって。


これでいいんだって、


自分に言い聞かせて……


今まで抑えてきたのに。

28: 2014/11/14(金) 18:38:15.15 ID:HDnCnpSi0

関係を変えることに、私は臆病で。


美希さんは、変わることを恐れなかった。

29: 2014/11/14(金) 18:39:10.30 ID:HDnCnpSi0

ああ、馬鹿だなぁ私。


今になって、どうしてこんなに……

30: 2014/11/14(金) 18:40:11.72 ID:HDnCnpSi0


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31: 2014/11/14(金) 18:40:50.18 ID:HDnCnpSi0

教会の中はひんやりと涼しく、


外のざわめきとは別世界のように、静まりかえっていました。


どこか浮かない表情のイエス像、仰々しいステンドグラス、天井に描かれた聖人たち。


そこかしこから、「荘厳」とか「重厚」とか「神聖」といった重々しげな空気が漂っています。

32: 2014/11/14(金) 18:41:27.00 ID:HDnCnpSi0

(三年かぁ……)


ポカンと口を開けたまま、放心したように十字架を見ていた私の背中をつつき、


「やよい、なにやってんのよ。移動しなさい」


伊織ちゃんが急かしました。

33: 2014/11/14(金) 18:42:32.26 ID:HDnCnpSi0

カラァーン……カラァーン……♪


ザワザワ……ミキチャンオメデトウ!……ホシイクン、ジツニメデタイ!……ミキミキ~キレイダネ!……



律子「まったく、あんな幸せそうな花嫁見てたら、今日までのゴタゴタも吹っ飛ぶわね」


伊織「人気絶頂で電撃引退からの結婚なんて、ホント、最後まで美希らしかったわ」


律子「どうしてあえて前途を多難にするのかしら」ハァ

34: 2014/11/14(金) 18:43:42.93 ID:HDnCnpSi0

やよい「きっと、自信のあらわれじゃないかなって」


やよい「……お二人は、きっとどんな道も進んでいけるって、信じてるんだと思います」


律子「そうかもね。あの二人は……私たちよりも、乗り越えてきたモノが多いから」


律子「だから、お互いに全幅の信頼を置いてるんでしょう」クスッ



伊織「美希の引退は、ちょっと寂しいんじゃないの?律子」


律子「その言葉、そっくりそのままアンタに返す」

35: 2014/11/14(金) 18:45:11.10 ID:HDnCnpSi0

「律子!デコちゃーん!見て見て、ミキ、綺麗でしょー!?」


「さんをつけなさい」「デコちゃんいうな」


「あはっ、ごめんなさいなのー!!」キラキラ…

36: 2014/11/14(金) 18:46:01.83 ID:HDnCnpSi0

やよい「プロデューサー、ご結婚おめでとうございます!」


やよい「衣装、とーっても似合ってます」


P「ん、ありがとう、やよい」


P「タキシードなんて、柄じゃないんだけどね」

37: 2014/11/14(金) 18:46:44.33 ID:HDnCnpSi0

やよい「美希さんと、本当に、家族になっちゃうんですね」


P「あはは、そうだな」


P「美希と結婚するって、3年前の自分に言っても、きっと信じないだろうな」ハハ…

38: 2014/11/14(金) 18:48:06.55 ID:HDnCnpSi0

P「やよいも、もう17歳か」


やよい「えへへ、高校二年生ですよ」


やよい「……プロデューサー、覚えてますか?」


やよい「まだ、プロデューサーが私の先生だったころ……」

39: 2014/11/14(金) 18:48:59.06 ID:HDnCnpSi0


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――


40: 2014/11/14(金) 18:49:58.46 ID:HDnCnpSi0

やよい『プロデューサー……じゃなくて、先生!』


やよい『信じられますか?まだ先ですけど、私、高校一年生になるんですよ』


やよい『なんだか、すごく立派になれる気がします!』


やよい『きっと背もスラーって高くなって……』


P『そんなの、やだなぁ。背の高いやよいなんて、らしくないし』


やよい『ええっ、そうですか~?』


やよい『じゃあ背は今のままでいいかも。あんまり伸びなくても……』

41: 2014/11/14(金) 18:50:48.58 ID:HDnCnpSi0


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――


42: 2014/11/14(金) 18:51:36.45 ID:HDnCnpSi0

やよい「結局、私、全然背が伸びてません」エヘヘ


やよい「亜美や真美と、どんどん差が開いて。美希さんとの差も、ちっとも縮まらなくて」


やよい「……私だけが変われなかった」ポツリ


P「……今のやよいは、十分立派になったけどな」


P「こんなに一生懸命で、前向きな女の子は俺は見たことないし、これからも恐らく」

43: 2014/11/14(金) 18:52:33.21 ID:HDnCnpSi0

やよい「でも、私にはまだ、お兄ちゃんが、先生が……」


やよい「…プロデューサーが、必要なんですよ……?」


P「ありがとな。でも、やよいにはもう、兄貴も、家庭教師も要らないさ」


P「一人でどこまでも進んでいけるほど、強くなった」


P「高校でだって、まぁまぁ成績は悪くないんだろ?」


やよい「相変わらず、“なんとか方程式”は何に役立つのか分からないですけど……」エヘヘ


P「あはは、“勉強の先生”は本職に任せておくよ」

44: 2014/11/14(金) 18:53:26.24 ID:HDnCnpSi0

P「……やよい。俺はお前のプロデューサーだ。これからもずっと」


P「いつかアイドルを引退したって、ずっとだ」ナデナデ


やよい「………ずっと」///

46: 2014/11/14(金) 18:54:12.73 ID:HDnCnpSi0

やよい「えへへ、プロデューサーの手、あったかくてきもちいいです…」


やよい「でもこうしたら、一緒に……」ギュゥ


やよい「心もぽかぽかーってしますね!」


P「おっと、やよいもあったかいなぁ」ハハ…

47: 2014/11/14(金) 18:55:04.78 ID:HDnCnpSi0

<Pサーン!


やよい「あぅ……」ウツムキ


P「…そろそろ戻らないと。やよい、慌ただしくてすまないな」パッ


やよい「いえ、私こそ、急にすいませんでしたっ!」ガルーン

48: 2014/11/14(金) 18:56:04.01 ID:HDnCnpSi0

やよい「プロデューサー!約束ですよっ!」


P「なんだ、やよい?」



やよい「ちゃんと幸せにならないと、めっ!…です!!」ニコッ

49: 2014/11/14(金) 18:57:23.49 ID:HDnCnpSi0


だって、私の大好きな人だから――――


50: 2014/11/14(金) 18:58:04.42 ID:HDnCnpSi0

私は最後まで、プロデューサーの“特別な何か”にはなれなかった。


本当はずっと分かっていた。


気付かないふりをしていた。


高校生になったら、大人になったら、全部変わるような気がしていた。

51: 2014/11/14(金) 18:58:47.05 ID:HDnCnpSi0

プロデューサーはとても優しくて


いつも私の話に合わせて


私の頭をなでてくれるけど


本当は私を見てなんかいない

52: 2014/11/14(金) 18:59:30.64 ID:HDnCnpSi0

プロデューサーは、私のずっと……



ずっと向こうにいる美希さんを見ている。



この先もずっと、私を見てくれることはない。

53: 2014/11/14(金) 19:00:07.89 ID:HDnCnpSi0


その日、私は、ただただ、14歳に戻ったように泣いた。


54: 2014/11/14(金) 19:01:29.87 ID:HDnCnpSi0

やよい「浩三、たまには一緒に寝よー」


浩三「Zzz……」スピー


やよい「ねぇ、明日は何時に起きようか」


やよい「うーん……」


やよい「朝のお掃除はもう、頑張らなくていいもんね……」


…それでも、早起きしちゃうんだろうなぁ

55: 2014/11/14(金) 19:02:27.84 ID:HDnCnpSi0

やよい「そっか……もう、朝にぎゅっとしたりとか、ウチでもやしパーティとか、ダメなんだ」


やよい「お仕事とかで、ばったり二人きりになったりしたら」


やよい「変な顔したりしないで、ちゃんと普通にしなきゃね」


やよい「プロデューサーはきっと、何もなかったようにしてくれるから……」


やよい「プロデューサーは優しいから……」

56: 2014/11/14(金) 19:03:13.62 ID:HDnCnpSi0

やよい「私も……」ウルッ


やよい「……グスッ…っ…」

57: 2014/11/14(金) 19:04:25.96 ID:HDnCnpSi0

やよい「ぷろでゅぅざぁっ……っ…」



喉の奥が熱くなって、情けないけど泣けてきた。



やよい「私の、はじめての好きな人なんだ」



うるんだ視界のなかで、弟の寝顔がぼやけて消えた。



やよい「はじめてできた好きな人なんだ!」



惨めだと笑われても。



私には今、頭をなでてくれたプロデューサーが、この世で一番、尊い。

58: 2014/11/14(金) 19:05:20.65 ID:HDnCnpSi0

やよい「ねぇ、浩三、終わっちゃったんだ」ポロポロ



やよい「終わっちゃった」



やよい「終わっちゃった……っ」グスッ



やよい「終わっちゃったよ……っ……」

59: 2014/11/14(金) 19:05:56.76 ID:HDnCnpSi0

それでも私は、



明日も明後日もその先も、



プロデューサーが好き。



やっぱりどうしようもなく、プロデューサーのことが好き。

60: 2014/11/14(金) 19:06:57.86 ID:HDnCnpSi0



プロデューサーのことがずっと



ずっと好きです



61: 2014/11/14(金) 19:07:46.55 ID:HDnCnpSi0

おしまいです。

読んで下さった方々、ありがとうございました。

62: 2014/11/14(金) 19:09:13.81
おつ
このヤロー味噌汁がしょっぱくなっちまったじゃねぇかどうしてくれる

68: 2014/11/14(金) 20:28:43.57
いいSSだった、掛け値なしに。

引用元: 高槻やよい「暖めてあげるからそばにいて」