764: ◆HXOW7gYdL6 2015/04/07(火) 05:06:45.10
 –––after–––





一年という時間はあっという間に過ぎる。

これがまだ小学生のころであれば長く感じていたものだが、歳を重ねるごとに
時間の経過が早く感じるようになる。

この現象はなんで起こるかという理由があるのだが、特に披露する知識でもないし、
披露する相手もいないので割愛させていただこう。

特に興味のないことを急に語り出すやつとか、間々見かけることがあるが
なぜ彼らはドン引かれているという事実に気がついていないのだろうか。

まだその話を相手が興味を示し、問うてきたのであればいい。
話のネタにもなるし、相手は知識を得られる。語るほうは知識を披露でき、一種の充足感を味わえる。

語る方は所詮自己満なのだ。自分の好きなものや、今熱中しているものについて誰でもいいから語りたくあり、伝えたいのだ。
それゆえだろうか。それが一方通行の押し売りということまでは気がつかない。
でも友達でもない奴に語られたら気持ち悪いこと極まりない。

最終的にいじめられるか、いないもの扱いされる。アナザーなら氏んでた。

だが、気持ちはわからなくもない。
友達を作りたいが話すきっかけが掴めないと困っている時、
周りがこれどういうことー、なんなのーとなっていればそこに入って解決してあげたくなる。

あわよくばお前すげーな!と称されそのまま輪に加われたらなんて考えたら、いてもたっていられない。
結果それが裏目にでることが多いのがこの世の常である。



765:
中一の俺とか。もうかわいそすぎて逆に可愛くもある。

しかし中には自分から話ふっかけておいて、興味なさげに流す奴もいるからなー。
あるいは聞いといてドン引きとかするやつなー。
たとえば目の前にいる一色いろはとかなー。

おっと、話が逸れてしまったなぁ失敬!いやぁぼっち歴が長くなると脳内会話が長引いていかんなぁ。


「終わっちゃいましたねー」

「だねぇ。なんかいろんなことがあったけど、あっという間だった気がする」


一色とガハマさんがしみじみと呟く。
そう、今日は修了式があり、おそらく今年度最後の部活中である。

別に卒業したわけでもないのに、そんな感慨耽るようなことか?と感じるが、
もう大学受験のことを考えて行動しなければならないと思うと、
あぁ終わっちゃったな……なんて思わなくもない。

それに確かにあっという間だった気もする。
これまでの誰とも深く関わることのない人生からは想像もつかないようなことが多々あったのも事実な訳で。


766:

何もない日々の繰り返しであればそう実感することもなかっただろうが、
それなりに記憶に残る出来事があったからな。

特にその……なんだ。一色と?付き合うことになったとか?
あれ、付き合うってなに?買い物とか?なんだ~てっきりカップルになったのかと思ったよ~。

なんか改めて意識してたら恥ずかしくなってきた。
わかったこの話はやめよう。ハイ!!やめやめ。


「そういえば奉仕部って春休み中も活動するんですか?」

「いやしない。絶対にしない。せっかくの休みなのに仕事する意味がわからない」

「えー普通に暇じゃないですかー?」

「なんのために休みがあるかわかってんのか?日頃溜まった鬱憤を晴らし、
 縛られた日々から解放されるための羽休めの期間なんだぞ?おとなしく家に閉じこもり、
 自分を見つめ直してもう外になんか出ないからなという気持ちを高めるために存在するのが長期休暇だ」

「なんか必氏すぎて気持ち悪いんですけど……」

一色はこいつはやばいと思ったのか如く、ガガっと椅子を引く。


767:

まったくこれだから最近の若い子は!休める時にちゃんと休みなさい!
なにこの超ホワイト企業。雇ってください。いや、お金だけ懐に入れてください。

ほんと日本人働きすぎだよなぁ。代わりに俺が休んどいてあげるか。
いや実際働きすぎなんだってまじで。

そもそも大半の人間が労働収入しかないと思っているプラス、労働しない人間はクズとでもいうかのような風潮があるのも理由の一端である。
労働者と事業主の割合が実に9:1とか。他国からしたら驚きの数字らしい。


「うわぁ……。ヒッキーがまたなんか意味のわからないこと言ってる」

「あなたの休みに対する執着と偏見は異常ね。賞賛に値するわ」

「まあな。俺は休むことにかけてエキスパートだからな」

あとサボることと、逃げること。人を怒らせるのも得意だな。
なにそれ悪役っぽい。

「もちろん皮肉で言ったのだけれど……、でもそうね。
 春休みの間は奉仕部の活動を休止するつもりよ。どうせ相談者もこないでしょうから」

「じゃあ今日が最後かー。なんか寂しいね」

「別にこれが初めてではないし、4月からは活動再開するつもりよ」

でもー、という由比ヶ浜に雪ノ下はそれに、と続ける。

「特に休み中忙しいということはないから、いつでも会えるわよ」

「ゆきのん……。じゃあ休み中いっぱい遊ぼうね!」

少し照れくさそうにしている雪ノ下に、由比ヶ浜は感激したかのような表情を浮かべ飛びつく。

もう見慣れた光景だなーこれも。いつも通り俺が置いてきぼりになるのも一緒で。
気がつけば一色まで雪乃さん!なんていって抱きついてるし。


768:

あれー?おっかしいなー。偶数だから余りは出ないはずなんだけどなー。
つーか男女比がおかしいんだよ。
なんで男子いないの?戸塚とか彩加とか。あとさいちゃんとか呼ぶべきでしょ。

「それじゃ前言ってた花見しましょうよ花見!ね、先輩!」

「帰り道でも桜なんて見れんだろ。買い食いでもすりゃ花見の完成だ。やったな」

「いつ行きます?先輩はいつでも暇ですよね。お二人はどうですか?」

聞けよ。反応してくれないと虚しくなっちゃうだろ。
しかし実際のところ、そういう花見の仕方が増えているらしい。親父に聞いた。

買い食いてことはあれだろ?ゴミのポイ捨てとかが横行するんだろ?
やっぱ花見って地球に優しくないわー。酔っ払って通行人とかに当り散らしたりしそう。


「そうね。休日でなければ特に問題ないわ」

「ちょっとまって!えーっと……うんあたしも休日以外なら余裕あるよ!」

「では三日後とかにしますか。そうですね、詳しい場所と時間は先輩と案練るんで後日連絡ということで!」


おお、いろはすが仕切ってる。どうするどうするー?な人種だった一色が
自分から計画するとは成長し……アイエエエ!?よく考えたら俺に丸投げの可能性があるセリフだったでござる。


769:


「ねえねえゆきのん!なにもってく?あ、ハニトーもってこう!」

「そうね……せっかくだしなにかお弁当を作っていこうかしら」

「それいい!あたしもなんか作ってく!みんなで交換しようよ」

「それはやめとけ由比ヶ浜。氏人がでたらどう責任とるんだ」

「失礼だし!まだそこまで自信があるわけじゃないけど、氏ぬほどのものはできないから!」

「お弁当のほうは私がみんなの分用意するわ。だから由比ヶ浜さんはおいしいお店のお菓子などお願い出来るかしら。
 私、みんなが好むようなお店を知らないものだから」

「そっか…。任せてゆきのん!」


由比ヶ浜は自分にしかできないことを託されたかのような感激を受けているが、
さすがはゆきのん。由比ヶ浜の扱いに長けていらっしゃる。

さりげなく由比ヶ浜お手製の菓子をも回避しつつ、私には無理なことを頼む、ということで
いいフォローになっている。

由比ヶ浜が一色の方に向いたところで雪ノ下がホッと息をついてるところを俺は見なかった。いいね?


「そうだ!さいちゃんとかにも声かけようよ!」

「それいいな!ナイスアイデアだ今すぐ声かけてくる!」


こうしてはおれん!と立ち上がった俺を、先輩……という一色の圧力により席につかされる。
いろはすこわい。


770:


「でもそうですね。せっかくのお花見なわけですし、どうせならたくさん呼んじゃいましょう!」

という一色の提案に由比ヶ浜は賛成のようだが、俺と雪ノ下は難色を示す。

「あんま大勢になると収拾がつかなくなるぞ。人が多くなる分気を回したり、管理しなくちゃいけなくなるからな。そしたらお前らも疲れるだろ。あ、でも戸塚とか小町なら別な」


俺の言葉にうんうんと頷く雪ノ下であったが、最後の一言で冷ややかな目に変わった。
リアリズムそんな目で俺をみるな。

だが当然のことだろ?戸塚も小町も人でなく天使なのだから。
まてよ…小町が天使ならその血を分かつ俺は一体何者……?やべぇ超大作が書ける気がする。
このクソプロットを材木座にあげよう。


「えー。そりゃ知らない人とかだったらそうかもしれないけど、友達だったら普通に楽しくない?」

「由比ヶ浜。友達の友達は友達じゃないんだぞ」

「う、う~ん。でもそっか。そうだね!いつものメンバーのほうが気楽だし」

「それもそうですねー。人嫌いの先輩が可愛そうなんで今回は多めに見てあげます」

「ありがとよ」

なんの感謝かしらんが。


771:

「じゃあ決まりですね!あ、小町ちゃんと戸塚先輩は先輩から誘っておいてくださいね?」

「任せておけ!」

「なんか生き生きしててむかつくんですけど」


ガハハ!なんとでも言うがいい!
戸塚にメールを送る口実ができたことに感謝しよう。

……なんだ。あれ?緊張してきた。メールを送ろうとする指が震える……。
もしかして、恋!?

小町は……まあ帰ったら言えばいいな。当日に伝えても行くっていいそうだし。


「では、今日はこのくらいにしておきましょうか。もう校舎に残ってる人も少ないでしょうし」

「だねー。こんなギリギリに依頼してくる人なんていなさそうだしね」


じゃあなんで部活やったの?今日。別にいいけど。
残っていた紅茶を一息に飲み干し、それを合図にしたかのように片付けを始める。


772:

片付けが終わり、全員が部屋を出たところで鍵をかける。
次ここに来るときは受験生となっていることを思うと、憂鬱になる。

あーまた受験しなきゃいけないのかーやだなー。
でも就職したくないから進学しよー。こういう考えの大学生多いんじゃね?

そんでサークル入って合コンしてうぇーい!とかいっちゃう感じ?

仕事とか今はいいや~つって就活のときに涙を流すまで容易に想像できる。
ちゃんと今の段階から将来を考えた行動をしなければならない。

となると俺に必要な行動は決まっている。専業主夫スキルを磨くことだ。
でも今年は受験生だからなー!やりたいけど今年は無理だなー!来年がんばろ!

来年になったら、また来年頑張るって言おう。
これぞ予定調和。だれか養ってくんないかなー。


「では、鍵返しに行きましょうか」


部長の一声でみんな職員室のほうへと歩き出す。
道中、ボリュームを抑えた声で一色が話しかけてくる。


「先輩って明日暇ですか?」

「いや忙しい。具体的には……」

「いや、そういうのいいんで。つまり暇ですよね?いつも暇な日何してるんですか」

「本読むか寝るかゲーム。あと本屋に行くとかで暇ではない」

「出かけるとしたら午前中ですか?」

「いや、午前は動きたくない。昼まで寝てるまである」


一色は唇に指を当て、ふむふむと頷いている。
あざと可愛いなちくしょう。


773:


「なんだ。なんか用事か?付き合うぞ」

というと、それが意外だったのか、ふぇ?という反応のあとに慌ててぶんぶんと手を振る。

「いえいえ!特にそういうわけではないです」

「じゃあなんで……あれじゃねえのか?花見の場所決め」

「ああ、そうですね。大丈夫です」

「あ?一緒に決めるとか言ってなかったか?」

「だから大丈夫なんですって!とりあえず明日はゆっくり寝てればいいと思いますよ!」


どうも要領を得ない。
まるで誕生日近くなって、なんか欲しいものある?と聞いてくるような。聞かれたことないけど。


「まあ、いいけどよ」

「ですです。細かい男は嫌われますよ先輩。わたしじゃなければ」

「ドヤらなければよかったのになー」


計算で動く女子ほど怖いものはない。
はたしてこの計算高い女の子は何を企んでいるのか。一応警戒しておこう。


774:

鍵の返却を済ませ、校門に差し掛かったあたりでそれぞれ別れの挨拶を告げる。


「じゃあまた花見で会おうねー!」

「ええ。また」

「また連絡いれますね~」


これにて比企谷八幡の高校2年生は終了した。正確にはまだ2年であっているのだが、もう休み明けまで学校に立ち寄ることはないであろう。
幸いにも春休みは課題もないしな。

この一年間を振り返るのはやめておこう。過去を振り返るとロクなことがない。
今年の思い出~ではなく今年の黒歴史更新である。

いろいろ恥ずかしいものや、こうすればよかったなんて考え始めたらキリがない。

なのでこれからも俺は前だけを向いて歩いておこう。


目下の悩みといえば、……一色がなにか企んでることだな。






***

823:




「………なんでいる」



朝の目覚めの一言には相応しくない言葉が思わず漏れる。今の出来事から逃避できるもんならしてみたい。
昨夜は確か、春休み初日ということで夜更かしを決め、今日昼過ぎに目覚めようと思っていた。

だがそれは寝苦しさから拒まれてしまい、頭が徐々に冴えてきたのだが、
そこで異変に気付く。寝苦しさの原因は体にかかる謎の質量。

最初は愛猫ことかまくらが寒さ故に入ってきたのかと思ったが、それにしては重いしでかい。
てことはもしかして小町か~?可愛いやつめ。でもいろいろとまずいんで起きてもらいましょうかね
と、布団を剥いで見るとそこにいたのはなんと!!生徒会長の一色いろはさんがすやすやと寝ているではありませんか!

何を言ってるかわからないと思うが以下略。

寝ぼけた脳も一気に覚醒したところで今に至る。以上。


「あー、せんぱいー。おはよーございまふ」

「おい、起きろマジで。つかなんでいんだよ」

「遊びに来ましたー」

「……なんで俺の家を知ってるのかは察しが付くからいいが、問題はなんで俺の布団に潜り込んでるかってことだ」

「驚かそうと思いまして。でも居心地よかったのでつい寝ちゃいましたー」


馬鹿じゃないのこいつ。いろんな意味で。
休み前になんか企んでるかと思ったらこういうことかよ。

ていうか冷静にしてるけど結構やばいからこの状況!さっさと体起こして!
しかし起床を促したところで動く気配がない。

引きはがそうかと思ったががっしり掴んできやがるもんだから動けない。


824:



「……お前。なんかあったのか?」

「いえ特に。……ただ人から見えないとこでくらいいちゃいちゃしたいじゃないですか」

「……いちゃいちゃとかキャラじゃないだろ」


いちゃいちゃしてる風に見せかけてただ周りに幸せアピールしてるだけみたいなキャラ。
これは結構あると思うんだが、愛し合ってる(笑)とみせかけてただ彼氏彼女いることを宣伝して、
自尊心を満たしたいだけのやつ。そういう恋人間の繋がりはそこの意見の一致だけなので喧嘩が絶えない。


「そうですか?じゃあ二人きりだと甘えてくるキャラってことで。これ結構萌えません?」

「それを宣言してなかったらドキッときたな」



まあこの状況ですでに俺の心臓はドキドキだが。むしろドンドンいってる気がする。誰だ!壁ドンしたやつ!

それにしてもこいつ完全に目覚めてるはずだが一向に動こうとしない。
置物ってレベルじゃねぇぞ!



「………だって付き合ってから先輩普通なんですもん」

「………いや。つーかわざわざ行動変える必要もないだろ。お前もそう同意してたろ」

「それとこれとは話が別ですよ!それは外の話で、せめて内ではなんか甘えてもいいじゃないですか」

「あーあれだ。俺はそういう経験が無いもんだからちょっといきなりはあれなんだよ、あれ」

「わたしだって無いですよ。だから加減がわかりません。仕方ないですねー?」



にこーっと実に可愛らしい笑顔をするもんだからなんでも許したくなっちゃうぜ!
だが許さない。ほら、節度は守らないとね?最近は世間がうるさいから。きっと。


825:



「そういうの恥ずかしくね?」

「恥ずかしいに決まってるじゃないですかー。ここに忍び込むのにどれだけ勇気を出したと思ってるんですか」

「じゃあもうどこうぜ。充分ドッキリ成功してるから」

「でもでも、恥ずかしいのがむしろドキドキしません?プラシーボ効果ってやつ?」


なにいってんだこいつ。吊り橋効果のことか?まあそれも元の意味からは違ってくるが、あながちハズレでもない。
本来不安や恐怖からくる感情を恋愛に勘違いするもんだが、羞恥によるドキドキを恋のドキドキに変えるという意味ではありだな。

こいつもなんだかんだ余裕ぶっこいてるけど顔真っ赤だし。俺は言わずとも真っ赤な誓い。


「あーそれは分からないでもないがな……」

「もうこれ以上悪くなることもないんですしいいじゃないですか。先輩はわたしの彼氏さんなんですよね?
 先輩が思ってる以上にわたしは先輩のことが好きなのを理解した方がいいですよー?」



え?そ、そうなの?確かに状況の悪化はしないだろうし、一応恋仲というわけですし?
うん。それなら問題ないかもな。

ほら一色だってより強くぎゅーっと抱きしめてきてるし、それを拒むのも悪いってもんだろ?ほらこんなにも可愛いじゃない。
じゃあこのまま一緒に二度寝といきま………あっぶね!洗脳されかけたぜ。それはどうかんがえてもないわ。

さすがにいろいろパンクしそうなので多少強引にでも引きはがそうかとした瞬間、自室の扉が開く。

826:


「いろはさん、お兄ちゃん起きまし―――」

「………」

「………」

「………あー!これは小町ともあろうものが気が利かず申し訳ない!いやーお兄ちゃんがそこまで進んでるとは。ではでは!」

「ちょ、おいまて小町!」


誤解を解こうと引き留めるも、無情にもドアは閉められ、無残にも残された気まずい二人。
状況が悪化することはないと思っていたが故に、その現実を目の当たりにしたことで心が折れた。


「………飯でも食いにいくか」

「………そうですね」


さすがの一色もくるものがあったのか、今度はすんなりとどいてくれる。


「じゃあ、準備すっから」

「はい、外出てますね」


ということでささっと仕度を済ませ、逃げるように家を出たのであったとさ。



827:





  * * *




特に食べるものも決まっていなかったんですけど、わたしがラーメン食べたいといったので
なりたけ食べてきましたはいおしまい。

食べた以外のことは特に何もないです。
てかラーメン食べるときにお喋りしてる人ってあんまいなくないですか?つまりはそういうです。

お食事の時間というのは交友の場でもあり、情報交換の場でもありますが、ラーメンを食べるときは別ですね。
その時の思考はどんな味がするか、どう食べようかで埋め尽くされ、視界にはそれしか映らないまであります。

必然と人々の声は聞こえなくなり意識が一極化する。
故に会話も生まれず、ラーメン食べましたということ以外語ることもないです。

そのあとにお口直しがしたかったということでたまたま見つけた屋台のクレープを購入し、
現在近場のベンチに座ってゆっくりしてるというわけでした!



「甘くておいしいですねー。先輩甘いの好きですもんね」

「そうだな」

「わたしたちみたいに甘々ですね」

「………」

「………そこで沈黙されるとやらかした感マックスなんですけど」

「じゃあ冒険すんなよ……」


828:

「あ、食べ比べしましょうよ!先輩のやつ食べてみたいです」

「いちいちやることがあざといんだが?」

「いいじゃないですかー。もしかして意識しちゃいます?キスした仲なのに?」

「おい……あんま大きな声で言うなよ。ほれ」


なんだかんだで優しい先輩はわたしの言うこと断れないんですね。
そっぽ向きつつもクレープ差し出してくるあたりがキュートです。

まあまあ先輩の気が変わらないうちにぱくっといきます。うーんおいしい。

もちろんせっかっくのシチュエーション。頬にクリームをつけておくことは忘れません。


「おまえがやるとわざとにしか見えないなそれ」

「えっ!な、何がですかー?」

「もう確定じゃねーか……。さっさと拭け」

「ぶー。せっかくなんでペロってとってください」

「………しょうがねーな」


は?え?ちょちょちょ!なんか先輩顔近づけてくるんですけど!?

冗談で言ったのにまさかこうなるとはあわわわわ。
あ、今の口に出してた方が可愛かったですかね?

先輩の思わぬ行動につい目を伏せて待っていると……こない。普通に手で拭われました。

………わたしをからかうとはいい度胸してますね。まあ先輩も照れてるようですけど。


「大胆な先輩にどきどきした気持ち返してください」

「あほか。こんな人前で出来るかよ」

「じゃあ二人のときはペロるんですか?ごめんなさいペ口リストの恋人はNGで」

「あれ?これフラれたの?」


829:


そんなわけないじゃないですかー。そんなんで嫌うんだったら最初から付き合ってませんよ。
しかしそこは冗談とわかっているので軽く流されたわけですけど。

………その手のクリームどうする気ですか?まさか舐めるんですか?


「なんか恥ずかしいんで、やっぱわたしがもらいます」

「は?ちょ、おい」


はむっと先輩の指ごと頂く。………あ、冷静に考えたらやばいです。



「………ぁぅ」

「………あほかお前は」

「だ、だって先輩がいやらしく自分の指を舐めまわすのはさすがに犯罪者なので」

「日本語おかしくね?……。普通に紙で拭くっつうの。ほれまだついてるぞ」


というとナプキンでわたしの頬を拭いてくる。あ、生理用品のほうではないですよ?
なんかわたしが子供みたいじゃないですか……。でも先輩がパパって妙にしっくり来る気がします。

しっかしこの人意外と落ち着いてるなー、顔は赤いですけど。実は経験豊富なんじゃないですかー?
………やめておこう。想像したらもやもやするんで。あ、でも妹さんで手馴れてるとか?普通に引きます。


830:



「………」

「………」

「では第一回奉仕部お花見企画会議といきましょうか」

「唐突だな。べつにいいけど」



だってこの空気に耐えられないんですもん。
思い返せば十分いちゃついた気がするので今日は満足です。

企画会議といっても場所の選定、日時選択くらいしかないですけど。
アポ取りはどうせわたしの仕事なんで。

それでは会議室、もといサイゼにでも移動しますかねー。











831:



「くぅー疲れましたー」

「言うほどそんな疲れることしてないだろ」

「疲れますよー。あそこはどう?ここは?っていう度に先輩いちゃもんつけるんですもん」

「それはすまん」


それはそれはもう大変。ここにはこういう奴らがーとか。この時期この時間だとこういう問題がーとかうるさすぎます。
人嫌いな彼氏さん持つと大変ですねー?


「申し訳ないと思ってるなら行動で示してください。甘いモノでいいですよ」

「俺は人に奢らないって決めてるんで」

「別に甘い行動でもいいんですよ?」

「意味が解らん」


まあそれは期待してないんでいいんですけど、とりあえずお花見の時にでも。
雪乃さんも由比ヶ浜さんも承諾得ましたし、問題ないですね。

妹さんは今朝のことで連絡しづらいんで先輩に任せますけど。

あとは晴れることを願うのみですねー。予報だと晴れなんで大丈夫だと思いますけど。


832:


「それでは今日はお開きですね」

「おう。送ってくぞ」

「えへへー。では、お願いします」


といって先輩の腕に抱き着く。
もうこの手のものには慣れたのか、特に不満を言うでもなく、じゃあ行くかとだけ。

うんうん、素直な先輩はいい先輩。調教した甲斐があったってもんですよ。

どうせならこのまま遊びにでも行きたいところですが、あまり出歩くのに慣れてない先輩を連れまわすのは忍びないんで
今日のところは引き揚げます。先輩をちゃんと気遣えるわたし可愛い。今更感ありますけど。


ふと思う。先輩が卒業した後どうなってしまうのか。
おっと、それまでに別れないとは限らないとか野暮はよしてくださいよ?

少なくともわたしから離れることはそうそうないので。

ただ純粋に先輩といる時間が無くなることを懸念します。
わたしが奉仕部にお邪魔したり、生徒会の手伝いをしてもらったりという時間がなくなってしまうのがちょっと寂しいです。

ちょっと切なくなり、抱きしめる腕に力がこもる。


「どうした?」

「いえ。先輩が浮気しないか心配で」

「する相手がいないし、そもそも相手にされない」

「それもそうですね、安心しました」

「………まあなんだ。先のことなんか考えんな。お前ってそういう人間だろ?」

「失礼ですね。まあそうしときます」


なんとなく察してるんでしょうか。
すっと腕が伸びてきたかと思うと、頭をわしゃわしゃと撫でられる。

先輩って気が遣えたんですね。おかげで幾分か気が楽になりました。
先輩の手あったかい。


833:


「あ、ここまででいいですよ。先輩が遅くなると妹さんに悪いんで」

「そうか。じゃあな」

「はい。それでは」


といいつつ、二人ともその場を動かない。わたしを見送るつもりかなんなのか。
先輩わたしのこと好きすぎません?ごめんなさい顔がにやけるんで人前ではやめてください。



「なんですか先輩。寂しいんですか?ぎゅってしてあげましょうか?」

「………いらん。ほれさっさと帰れ」

「さすがに酷いですよ先輩。むかつくんでお仕置きです」


とりゃ!と声を上げ胸に飛びつく。
瞬間呻き声を漏らす先輩でしたが、数瞬のうちに腕を回してくる。


「先輩やっぱ寂しいんじゃないですかー?」

「甘やかしてるだけだ。断じて俺のためじゃない」

「じゃあ甘やかされときますね」


素直じゃない先輩のためにも。

ほんとめんどくさい人だなー。


「ではそろそろ」

「ん。またな」

「はーい。ちゃんと帰らなきゃだめですよ?」

「言われなくても。じゃあな」


そう手を振り、来た道を引き返す。
もう一度別れの挨拶をいってからわたしも帰路に戻ります。

いやー青春してるなー。先輩に言ったら鼻で笑われそうですけどね。
うん。充実してる。

次会えるのはお花見、たのしみですねー。
別に何でもない日に誘うのもいいんですけど、そこそこ距離あけてた方がどきどき感増しません?
飽きられないように慎重に、でも攻撃にでればがっつりと、でいきましょう。


それでは、おやすみなさい!








***

853:



さてさて、お花見当日ですよ?
時間に余裕もありますし、今日のスケジュールでも確認しときますかね。

場所は千葉公園。原っぱのだだ広いところか迷ったんですが、ボートにも乗れるこっちにしました。
風景的にも池や湖近くにある桜ってなんか幻想的なもの感じるじゃないですかー?

ただ先輩はだいぶ渋りましたけどね。んなの最もあれな奴らが集まりそうじゃねーかとかなんとか。
ですがまあどこも一緒ですし、先輩のいうあれなやつらに自身も含まれてますよーといったら撃沈。

実際周りのことをとやかく言う前に自分の現状把握したほうがいいです。
普通に考えて男女比おかしくありません?美少女複数侍らせてリア充氏ねとか、いいブーメランですよね。
そのブーメラン刺さってくたばれと言われてもおかしくありません。

で、集合は駅前10時となっていますが、そこからちょっと買い物したり移動時間やらなんやらで
ゆっくりできるときにはちょうどいい時間になってるんじゃないかと踏んでます。

そのあとは各々好きな事でもやって15時ころには解散でもいいし、別のとこに赴くってのでもいいですね。

個人的には先輩とボートでまったりなんてのもいいですけど、絶対拒否してくるからなー。できればって感じで。
そもそもわたしがゆったりな時間過ごすタイプじゃないですしね。


てなわけで5分前行動ならぬ30分前行動で集合場所に着いたわけですが、既にみなさんご到着のようです。
なーんかそんな気がしたんですけどみさん揃って何考えてるんだか。
早めにきて正解でしたね。というかどうせなら集合時間を遅らせておけばよかったとか思いますねこれ。

ただシチュエーション的には遅れた身分なのですこし駆け足で近寄っていきましょう。



「すいませーん。なんか遅くなっちゃいまして」

「ううん、こっちがちょっと早く来ちゃっただけだから大丈夫だよ!」

「ほんとはえーんだよ。集合時間遅らせりゃよかったくらいだ」

「これだからゴミいちゃんは……そこは健気さを褒めるとこだよ!」



さすが先輩気が合いますね〜。
でも早く着きすぎて困ることもないのでいいですけどね。



「む!ヒッキーだって早く着いてるじゃん」

「小町がどうせ30分前には集まるだろうからって無理やり連れてこられただけだ」

「それは言わないでおいてよお兄ちゃん」

「要らぬことを言うのが彼の存在意義なのだから仕方ないわ。諦めましょう小町さん」

「俺の存在をなんだと思ってる。戸塚を愛でることが俺の存在する意味だ」

「そこはわたしを、って言ってくださいよ先輩。まあ多少早くても問題ないので行きますか」



まあ時期が時期だし、場所取りとかしてないんで早いに越したことはないですよね。
それではちゃちゃっとれっつらごー!



854:




 * * *





「うっわー……すごい人」


なんとなく予想はしてましたけど、どこもかしこも人人人。
これはちょっと厳しいですかね。やっぱ場所取りするべきでしたか。

先輩の顔を伺うと、思った通り嫌そうな顔で満足満足。なにもいいことはない。



「ほんとすっごいねー。知り合いとかいてもおかしくないくらい」

「それありますね!小町のクラスメイトいるかなー?」

「とりあえず座れるところを探してみましょうか」



一先ず辺りを見渡しながら歩いていきますが、いい具合に桜の樹の下は空いてないですね。
まあ、わたしは花より男子……もとい団子派なんでどこでもいいですけどね。団子はもちろん先輩です⭐

どこでもといっても原っぱのど真ん中というわけにはいきませんし、なにやらスポーツしてらっしゃるかたもいますから。
邪魔にならないような場所を探さなければいけないわけですが――――



「おぉ?おーい、いろはすー」



と、なにやら聞き覚えのある声が近場から聞こえて来ます。
先輩方も気づいたのか一斉にその声がした方へと顔を向けると、声の主は例によって戸部先輩。
はい葉山先輩グループですね。


まあ誰かしらいるかと思ったわけですが、まさかドンピシャで彼らとは。
しかも葉山先輩達は桜の樹の根元に陣取っています。さすが上位カースト。これはおこぼれを預かるしか!


855:



「あ、葉山先輩たちじゃないですか!こんなところで会うなんて運命感じちゃいますね」

「ほんとだ!やっはろー、みんな」

「やぁいろは、結衣。みんなもほんと奇遇だな、こんなところで会うなんて」

「結衣ー。用事ってそいつらと花見だったんだ。なんなら一緒でもよかったじゃん」

「あははーそうかもね。でも今回は奉仕部ってことだったから」



一緒でもよかったとか言ってる三浦さんですけど、なんか雪ノ下さん睨めつけてません?
なんとなく仲の悪そうなのは伺えます。いかにも衝突しそうな性格してますもんねー二人とも。

きっと先輩のことは目にも止まってないんだろうなぁ。あとわたしも若干苦手です。



「もしかして場所ない感じー?じゃあ俺らんとこ来いって!歓迎すってなあ隼人くん」

「ああ、もしよければ。せっかく会えたんだしこっちもスペース余ってるからな」

「ほんと!?ね、ね、ゆきのん一緒しようよ」

「………まあ場所を分けてくれるというのなら、お言葉に甘えようかしら」

「ですね!先輩もいいですか?」

「別にどこだって一緒だろこの人の多さじゃ。近くにいるのが知り合いかそうでないかの違いだけだ」



つまりOKてことでいいんですよね?
どっちとも取れる反応やめて頂きたい。


ではではお言葉に甘えてご一緒させていただきましょう。


姫菜さんはここ座りなよーなんて葉山先輩の隣を促していますがもちろん先輩はスルーしてます。
これでそっちいったら引っ叩いてましたけどね!男性にも嫉妬しちゃうわたしかわいい!


でも先輩って戸塚先輩大好きですよねー………。そもそもあの方ほんとに男なの?

856:


各々自分のスペースを確保し座っていき、持って来たものを取り出していると聞き覚えのある声がかかる。



「あ、八幡!やっはろー!」

「戸塚か!?こんなとこで会うなんてやっぱ運命だな!」



と、噂をすれば影がさす。その反応の速さにイラっとくるものがなくはないです。
まあ?先輩の数少ない友人ですし多めに見てあげます。男に取られそうと焦るっていろいろまずいですよね。



「あはは、運命だね!テニス部員で息抜き兼ねて来てるんだー。でもこっちにも参加したかったなー」

「そういうことなら歓迎するぞ。ほれ座ってけ」

「じゃあちょっとだけお邪魔しよっかな」



と言って先輩の隣に女の子座りする。
はははー。大丈夫大丈夫。目覚めそうになる前に目覚めさせるんで。何を言ってるんだろう。

みなさんと挨拶が終わったところで戸塚先輩が可愛らしく首を傾けてます。あざといかわいいです。


857:



「そういえば向こうに平塚先生いたけど、もう会った?」

「まじでか」

「あ、やっぱり平塚先生だったんですね。なんか氏んだ笑顔でお酌してたんで別人だと認識してました」

「………それは見ていられないわね。目を逸らしたくなる気持ちもわかるわ」

「あははーわかっちゃうんだ。あ、なんなら先生こっちに呼ぶ?」

「こっちきたらやけ酒からの悪酔いされるぞ」

「うーん。それはちょっと小町的にポイント低いかも」



うわーなんか想像できますね……。
先生が酒癖悪いか知りませんが、絡み上戸な印象受けますよね。

まあまあ、大人の世界は置いといて乾杯といきましょう!



「よっしゃ!じゃあ改めて乾杯すんべ。えー本日はお日柄も良く」

「では葉山先輩!乾杯の音頭お願いします」

「え?はは、そうだな。……じゃあ、一年間お疲れ様、乾杯」



同時にみんな乾杯!と一言。まあみんなというのは語弊がありますが。
具体的にはえ、ちょ、とか言って出遅れた戸部先輩。


以外にも先輩も雪乃さんも小さく乾杯してましたね。


そして雪乃さんが取り出したのはバスケットにサンドイッチが詰められたもの。
なんとなく重箱とか出てきそうイメージありましたけど、さすがになかったですね。


小町ちゃんはおかずとなる物を担当し、わたしと結衣さんは食後のデザート。
あ、手作りする余裕はなかったので市販ですよ?
先輩はお茶持ってきたんじゃないですか?

858:



「うわっうわっこれ超おいしいですね」


「おいひー。さすがゆきのん!」


「それはよかったわ。小町さんのもほんとに良く出来てるわ」


「いや〜それほどでも〜。お兄ちゃんどう?どう?」


「いつもどおりうまいぞ」


「わかってないなーお兄ちゃん。そこはいつもよりおいしいくらい言わなきゃ」


「舌がとろけてしまいそうになるほど濃厚なこの肉汁。俺でなきゃ見逃しちゃうね」


「なにいってんのお兄ちゃん」


「ほんとおいしい!でも僕までいただいちゃってよかったのかな?」


「いいに決まってんだろ戸塚!お前は奉仕部の仲間だからな」


「ちょっと先輩。わたしと対応違いすぎじゃないですか?」



わたしのほうが部室利用率高いのに!いや、それがダメなのかな。
いや、あれですね!先輩ツンデレだからそういうことなんですね!つまりどういうことだってばよ。


しかしこれは本格的にちょうきょ……説教しなければいけませんね。

………胃袋掴めとか言いますし、わたしも手料理食べさしたりとか?
別に作れないことはないですけど、雪乃さんと比べられるとなー。


彼女の手作りお弁当なんてありがちなシチュ先輩が喜ぶかどうかって話ですよ。
うん、やめやめー。めんどくさいですしね!


となると、斬新なこと考えなければ。
うーんメシマズなんて誰も得しませんし、斬新でもなんでもないですよね。

あ!わたしの強みってあざとさじゃないですかー?みんなの見てる前であーんしてあげましょう!

859:



「てことで、先輩。あーん」

「え?なにが?……つーか前にも断ったろ」

「あの時と今じゃ、関係が違うじゃないですか!食べてくれなきゃ顔に突っ込みますよ」

「うおっ!まじでやめろ。あー、一色さん?もしかしてなんか怒ってらっしゃる?」

「怒ってないです。でもこれを口に入れないと怒ります。激おこぷんぷん丸です」

「………わーったよ。ん、…これでいいだろ」



……おー。まさか本当に食べてくれるとは。
餌付けしてるみたいで気分がいいですね。



「わっ、ヒッキーが素直だ」

「公道でイチャつくのはやめてもらえるかしら比企谷くん」

「これのどこがイチャついてんだ。本人からしたら迷惑行為だぞ」

「それはあなたが決めることではないわ。周りがそうだと感じたらそうなのよ。客観的に物事を見れなければ大義を見失うわ」

「なんか急に大それた話になってるぞ。つーか–––」

「先輩わたしにもしてくださいよー」

「ん。……つーか客観視くらいできるっつーの。逆にあのくだりを長引かせてたほうが周りから鬱陶しく思われるだろ」

「………ナチュラルにイチャつかれるのはさすがにくるものがあるわね」

「あははー、なんか夫婦?的なーなんて……うー」



んふふー、これは悪くない気分です。
でも注目浴びるのは居心地わるいですね。やっぱ次からは人目は避けましょうか。


葉山先輩なんかと付き合ってるのであればガンガン見せつけていくスタイルだったでしょうが、
先輩ですからねー。見せつける意味ないですもん。
いや、わたしのモノなので見せたくないです!今のいろは的にポイント超高い!


秘匿することに価値が有る。ロマン感じますよね!







860:




「んじゃー食後の運動といくべ!バドするっしょバド!」


飯アタイムが終わり、ゆっくりとお茶した後に戸部先輩が一声。
食後の運動は大事ですからね。


あ、バドってバドミントンのことですよ?バトルドームの略ではないです。
でも超エキサイティンできなくはないですね。


で、そのラケットは見たところ4本あるようです。
元々葉山先輩たちは4人で来てたので丁度ですね。


みたところこちらにも話しを振ってるので交代しながらやることを提案してるみたいです。



「いいねーやろやろ!ゆきのん組も!」

「え、私は別にやりたいとは……。小町さんどうかしら」

「やりますやります!でも、雪乃さんとも組みたいかなー」

「………わかったわ。それなら少しだけ」

「お?お?雪ノ下さんやる感じ?じゃあダブルスっしょー。あ、海老名さん俺と–––」

「姫菜、あーしと組むっしょ?……雪ノ下さんには絶対負けねぇーし」

「いいよ〜。ごめんね戸部っち」



あーあー、ガチバトル始まりますかね。
みんなで楽しくワイワイな感じで提案されたはずですが、親の仇を見るかのような視線を交わしてますよ。


提案者の戸部先輩なんか、いつの間にか審判的な役押し付けられてますし、
祭り事か好きなのか、小町ちゃんは実況みたいなこと始めてます。


まースポーツを通して仲良くなればいいんじゃないですか?ジャンプみたいに(適当)


861:



「葉山先輩、いいんですかー?あれ止めなくて」

「んー、まあ大丈夫だろ。二人ともその辺は弁えてると思うし。……なにか起きる前には止めるよ」



あはは、と困った笑みをこぼし、自分も近くで見てくるために席を立つ。
まあ葉山先輩がいれば万事解決ですね。この安心感は最強です。


しかし、ふーむ。いい具合に二人きりですねー。



「先輩はいかないんですか?」

「お前こそ行かないのか」

「先輩が行くなら行きますよ」

「………まあ向こうの修羅場が終わったら行くかな」



と言って、桜の木に寄りかかり本を読み始める。
なるほど。それは賛成ですね。しかし自由な人だなー。


………いいこと思いつきました!


と、一旦立ち上がり先輩の方へ移動する。
足を開いてください、というわたしの言いつけを聞き素直に足を開く。


もちろんすることは一つ!その間に座ることです!



「えい」

「あ、おい」

「まあまあ、いいじゃないですか」

「……まあいいか」



お?お?今日の先輩デレまくりですねどうしました?
これは会う日を減らす作戦がうまく決まりましたかね。


しかしそこを煽っては、立ち上がりそうなので黙っときます。
大人しく先輩に背を預けましょう。……これすごく落ち着きます。

862:


わたしを寄り掛からせつつ、本を読むために前に出した腕は、さながらわたしを抱きしめているかのようです。
そのまま腕を折り込んでくれればあすなろ抱きになるんですけどねー。



「今日晴れてよかったですねー」

「そうだな」

「風が心地よいです」

「……過ごしやすくて助かる」

「桜の花言葉を知ってますか?」

「いや、知らん」

「わたしも知りません」

「しらねぇのかよ……。完全に知ってる風だったじゃねーか」

「別にどうでもよくないですかー?」

「話し振っといて何言ってんのこの子」



わたしがくすくすと笑うと、先輩もまたにひるな笑みを浮かべる。
なんだか穏やかな時間が流れてますねー。


思い返せばこういう経験なんて初めてなんじゃないでしょうか。
いつもアクティブに行動してましたし、可愛いわたしを振りまいていたわけですし。


静かな時間と、気を使わなくて済む間柄って最高です。
先輩と出会ってからいろんなこと経験しましたねー。これからもいっぱいあるんでしょうか?


ふぅ……少し眠くなってきましたねー。居心地が良すぎるのも問題ですね。


863:



「えへへーせんぱーい」

「どうした?」

「なんかふわふわしてきました」

「そりゃあれだ。巷で噂のふわふわタイムってやつだ」

「そんなのあるんですか?」

「いや、知らん」



なんですかそれーというと少し笑って間が空く。
すると真剣なようでどこか柔らかい声が聞こえてきます。



「ありがとな、いろは」

「………へ?」

「なんでもない。そろそろ向こう行くか」

「今名前で呼んでくれましたよね?もう一回!というかずっとで」

「いやなんでもないし。そろそろいくしー」

「ぶーどきませんー」

「おい」

「……もう少しだけこうしてたいじゃないですか」

「……少しだけな」

「……はい」



そう告げるとわたしは目を瞑り、先輩に体重を預けます。
先輩はわたしのこと大好きですからねー。抵抗もなく身を委ねられます。


864:



「せんぱい、ありがとうございます」

「なにが」

「いろいろと、ですよ。というか、先輩のさっきのこそなにがって話ですよ」

「まあ、いろいろだ」

「そうですか」



それからまた二人とも言葉がなくなる。
しかしそれは不快なものでなく、どこか安心できるような静寂でした。


形容するならまさにそよ風といった風が吹き、それに散らされていく桜がどこか幻想的な風景になる。
近くに感じる先輩の匂いと温もりに、文字通り包まれて、とても心地よいです。



………先輩に魅せられた本物に、わたしは辿りつけたのでしょうか?きっとそうだと思います。
だってわたしがこんだけ気を許してるんですもん。もう先輩逃がしませんから。

進学したら学生生活内ではお別れですが、まあ?先輩ぼっちだし?
進学先でそんな滅多なことにはならないと思いますけど、奉仕部の人たちのような滅多な出会いがないとは言い切れません。

でも、なんとなく先輩は裏切れない人だと思うんで、そこは心配ないんですけどね。
しかしわたしが嫉妬しないかは別です!わたしこう見えて嫉妬深いですからねー?

万が一間違いをおこせば、もぅマヂ無理。 リスカしょ……状態ですからね。ヤンデレの才能あるっぽい。


だから大好きな先輩へ。
これからもずっと、よろしくお願いしますからねー?










* 〜 Happy End 〜 *


865:
くぅ~疲

ここまで読んでくれた人たちサンクス
初SSを言い訳にするつもりはないけど大分見苦しかったとこ含め、次回作はもっとしっかり作っていくわ

どうせなら1000埋めたかったけどもう書くこともないんでこのスレは終わりかなってのと
もしアフター書きたくなったら別スレで台本形式で書いてくわ

もちろん予定は未定

じゃあの!

870:

引用元: いろは「わたし、葉山先輩のことが…」葉山「…俺は彼の代わりにはなれない」