1: 2011/02/06(日) 17:03:28.82
【#1 新入部員!!】
梓「男・・・の子?」

普段よりやや遅れて梓が部室に入ると、そこには
白のロングコートを纏った長身の男が腕組をして壁に寄りかかっていた。

海馬「ふぅん・・・」

紬「海馬君は特別枠で入学したんですって」

律「良かったな梓、後輩ができて」

梓「な、中野梓です、よろしく・・・」

後輩ができた喜びと、女子高に男子という戸惑いで、
ぎこちなくも手を差し出す梓。しかし、海馬と呼ばれる
その青年は腕組をしたまま、不機嫌そうな顔をしている。

3: 2011/02/06(日) 17:07:04.95
梓「・・・?」

海馬「結束して戦えと言うのだろう?フン…くだらん!!!」

梓「なぁ!?」カチン

いきなりの無礼に腹を立てる梓。

唯「まぁまぁ、これから長い付き合いになるんだから仲良くしないとね」

紬「お茶が入ったわ」

青年は梓からさっと目を逸らすと、席に着く。
梓も納得いかない、といった様子だが、とりあえず席に着いてお茶にすることにした。

5: 2011/02/06(日) 17:10:23.28
――――
澪「それで、海馬君は何か音楽してたのか?」

海馬「ふぅん・・・ピアノ程度はな」

紬「あら、私もピアノやっていたのよ」

律「じゃあ海馬君はキーボード?でもキーボードはムギがやってるしなぁ・・・」

海馬「ギターだ」

梓「え」

海馬「ギターだ」

7: 2011/02/06(日) 17:10:53.58
海馬は何しに来たんだ

9: 2011/02/06(日) 17:14:15.43
>>7
ギターです。

8: 2011/02/06(日) 17:13:04.34
唯「海馬君、ギターがやりたいの?」

海馬「そのために俺はここに来たのだからな」

梓「でももうギターは私と唯先輩がいるし・・・」

海馬「・・・俺にギターを諦めろというのか?」

梓「う~ん、そうは言わないけど・・・」

海馬「オレを頃すなら・・・音楽で殺せ!!」

11: 2011/02/06(日) 17:18:11.86
律「お」

梓「はぁ?」

海馬「よかろう・・・デュエルで負けた方がギターを諦める・・・それで構わないな!!」

梓「ちょっとちょっと、何言ってるの!?」

唯「演奏対決ですな!?」

唯が目を輝かせる。

梓「唯先輩!?」

12: 2011/02/06(日) 17:20:41.60
律「これはまた熱い部員が入ってきたな!」

梓「律先輩も!?」

澪「まぁ良いんじゃないか。実際に諦めるとかは抜きにして、海馬君の演奏、聞いてみたいし」

梓「澪先輩まで!!」

梓は悪ノリしだした先輩に呆れた視線を向け、次に新たな後輩へと向ける。
海馬は既に、持参していた巨大なジュラルミンケースからギターを取り出し、準備を始めていた。

梓「・・・そんな大口叩いて、知らないよ」

15: 2011/02/06(日) 17:26:52.09
梓は小さくため息をついてから、そう言った。音楽経験があるといってもピアノだけのようだし、
ギター暦も長く腕にも自身のある梓は、自分が負ける心配はない。むしろ、大口をたたいて引っ込みを
つけられなくなってしまった後輩のことを気にかけていた。

海馬「オレは音楽で氏ぬなら本望だ!」

梓(・・・ちょっと危ない人なのかなぁ・・・)

梓もギターを肩にかけ、準備を整える。

海馬「オレの先攻だ!!」

梓「はぁ・・・」

海馬は叫ぶと、ジュラルミンケースから取り出した白のギターを肩に下げ、更に叫んだ。

海馬「出でよ!『青眼』!!」

18: 2011/02/06(日) 17:30:36.34
叫びと同時に、海馬の『青眼―ブルーアイズ』が咆哮した。

梓「・・・!!」

海馬の『ブルーアイズ』からは、音楽というよりは獣の雄たけびに近い音が放たれた。
これはこれで独創的かも、と思う梓たち。しかしそれ以上に、うるさい。

アンプは最大音量に設定されているようで、唯たちも思わず耳に手を当てる。
窓ガラスも、強風が叩きつけられるかのごとくビリビリと振動している。
しかし海馬はそんなことはお構いなし、とばかりに"咆哮"を続ける。

19: 2011/02/06(日) 17:34:49.46
ガチャ

和「ちょっと音を下げてくれないかしら」

大音量を聞きつけ、部室に和が駆け込んできた。しかし耳を塞ぐ唯たちは
彼女の存在に気づかず、当の海馬本人も、気づいていないのか、気づいていて
気づかぬフリをしているのか、"咆哮"をやめない。

和「・・・」

和は呆れ顔でアンプに近づき、ボリュームを0まで落とした。

海馬「・・・?」

ようやく海馬の手が止まり、驚いた表情で和を見て言い放つ。

海馬「何、ドラゴン族封印の壺!?」

22: 2011/02/06(日) 17:39:41.93
和「・・・誰が壷よ。熱心に演奏するのは良いけど、他の部活に迷惑にならない音量でやりなさいね」

海馬「貴様、正々堂々とオレにゲームをさせろ!」

和は呆れ顔のまま海馬を無視して、部室を出て行ってしまった。

海馬「・・・フン、興が削がれたわ・・・まぁいい中野、貴様のターンだ」

梓「・・・いいよ、私と唯先輩、海馬君の三人でギターやろう?」
梓は微笑みながら唯たちに目をやり、それを受けて唯たちも無言の笑顔で返した。

海馬「なんだと・・・貴様、逃げるというのか!!」

24: 2011/02/06(日) 17:42:56.21
梓「そうじゃないよ、腕はまだまだだけど、さっきの演奏で熱意は伝わったから。それに・・・」
そう言うと、梓は壁の時計を指さした。もう部活動も終わりの時間だ。

海馬「決闘者として、なんと愚かな行為だ・・・」

つぶやく海馬をよそに、帰り支度をしながら梓が海馬を諭す。

梓「ほら、海馬君も帰る支度して」

海馬「ふぅん・・・だが中野、いずれにしてもオレたち2人の決闘は まだ終わってはいない・・・」

27: 2011/02/06(日) 18:00:49.28
――――

【#2 整頓!!】
澪「というわけで、大掃除をします!」

ふとしたことから、部室が私物まみれになっていたことが露呈したけいおん部は、
大掃除をすることになった。

唯・律「えぇ~・・・」

澪「だらしない声出すな。後輩の方がちゃんとしているじゃないか」

やる気のない唯と律をよそに、梓は後片付けを始めていた。

海馬「中野め、早速始めるか・・・しばし、観戦させて貰おう・・・」

28: 2011/02/06(日) 18:05:25.41
梓「ほらほら、海馬君もやるの」

不機嫌そうな顔をして、海馬も渋々片付けを始める。

梓「・・・海馬君、それ、降ろしたら?」

ギターを肩にかけながら作業をする海馬に、梓が呆れ顔で声をかける。

海馬「相手がどんな手で来ようが、オレはどんな時であろうと青眼と共に闘う!」

梓「はいはい・・・」

そんな二人のやりとりを見て、ムギがつぶやく。

紬「何だか梓ちゃん、大人になったわね」

澪「そうだな、すっかり先輩だな」

32: 2011/02/06(日) 18:16:46.26
唯「見て見て~なんか出てきた~」

倉庫から大きなケースを抱えながら、唯が出てくる。

律「おぉ!高そうなケース!」

ケースを開けると、そこには古びたギターが納まっていた。

梓「・・・ギター?」

律「なんだ、もっと面白いもんだと思ったのにな~」

そう言うと、唯・律・海馬は興味なさ気にケースから離れる。

梓「けいおん部なんだから少しは興味持ちましょうよ!?」

海馬「オレは最先端テクノロジーにおける高性能チップには興味があるが…
千年を経た石板のかけらには何の興味も無いんでね…」 

47: 2011/02/06(日) 19:05:39.96
ガチャ

さわ子「あら懐かしいわね、ここにあったのか~」

梓「先生・・・ひょっとしてこれ、先生のですか?」

さわ子「そうよ、それはあまり使ってなかったけどね」

唯「私物はみんな持って帰ることになったので、さわちゃんも、はい!」

さわ子「えぇ~・・・もう最近弾く時間もないし、お店に売って部費の足しにしてちょうだい」

唯「え!いいの?」

律「っていうか押し付けられてるし・・・」

海馬「オレはこれで失礼する・・・」

唯「え?海馬君は行かないの?」

海馬「オレはM&Wの次世代機の開発で多忙を極める身なのでね!」

48: 2011/02/06(日) 19:07:43.09
――――――
唯「うぅ、カビ臭い・・・ひどい~!私ばっかり~!」

例のケースを重そうに持ちながら、唯が文句を言った。

律「ジャンケン三連敗はお前の責任だろ~」

唯の少し先を歩きながら、律が言った。
けいおん部メンバーはさわ子のギターを売却するため、楽器店を目指していた。

紬「唯ちゃんご苦労様、そろそろ時間よ」

49: 2011/02/06(日) 19:10:15.50
唯「次は負けないぞ~」

海馬「そのまやかしのガラス細工の自信を粉々にしてやる」

何だかんだと文句を言いつつも、同行していた海馬。

海馬「消えろ、ザコ共! ゴッドハンド・クラッs」

澪「なぁ、これなんだけど・・・」

海馬の叫びを遮って、澪はメンバーにチラシを見せる。

律「棚・・・?」

澪「こんなの部室に置けないかな、一つあれば色々整理できると思うんだ」

50: 2011/02/06(日) 19:13:24.14
――――――
律「え~と、家具売り場は・・・」

澪の提案した棚を購入するため、唯たちはホームセンターを訪れていた。

紬「ここがホームセンター?」

目を輝かせるムギ。

紬「便利グッズが色々あるのよね!?一度来たいって思ってたの、行きましょう!!」

唯「あ、私も~!!」

そう言うと、唯とムギは店の奥へと足を進める。

海馬「フッ・・・大会最初の決闘は、やはり琴吹が制したか・・・
オレもこうしては、おれんな・・・バトル・シティに繰り出すぞ!!!」

海馬も小走りで二人を追いかける。

律「ちょ・・・ギター・・・」

51: 2011/02/06(日) 19:15:19.03
――――――
律「くそー・・・あそこから四連敗するとは・・・」

ホームセンターを後にした唯たちは、楽器店へ到着していた。
あの後、ジャンケンで徹底的に負けた律は楽器店まで一人で
ギターケースを運ぶはめになっていた。

唯「勝利のチョキ!」

海馬「ワハハハハハ」 

店員「お待たせ致しました。このギター、50万円で買い取らせていただきます」

唯・律・澪・梓「ご、50万円!?」

52: 2011/02/06(日) 19:17:17.69
――――――
律「肉厚っ!!」

唯「スペシャルバーガーだよ?」

律「バーガーの話じゃねぇ!」

楽器店で50万円を手にした唯たちは、行きつけのファーストフード店に
寄り道していた。

梓「でも、いいんですかねぇ皆でもらっちゃって・・・50万円なんて大金・・・」

律「仕方ないだろーさわちゃんが部費にしろって言ったんだから。
ほら、6人で分ければ1人8万・・・」

梓「・・・そういえば私、欲しいエフェクターがあったんですよねぇ~」

唯「・・・あずにゃん陥落」

興味なさ気にポテトを食べる海馬に、律が札束を向ける。

律「ほら海馬君も、8万だぞ~」

海馬「こんなカードオレは三十六枚持っているよ…」

53: 2011/02/06(日) 19:19:21.36
――――――
翌日、唯たちは届いた棚を部室に設置し、大掃除の続きをしていた。

さわ子「やっほー!!」

一同「ギクッ」

さわ子「これが昨日買った棚ね?へぇー良いじゃない」

律「ソー」

さわ子「どうしたの?人が話しかけてるのに・・・」

律「さ、さわちゃん!来てたんだー、気づかなかった!」

白々しい目つきで、律が応える。

さわ子「もう・・・で、昨日のギター、いくらで売れたの?」

一同「!!」

さわ子「・・・?売りに行ったんでしょう?昨日」

梓「え、えーと・・・」

律「い、一万円・・・」

56: 2011/02/06(日) 19:21:48.78
澪(り、りつ~!?)

梓(それは欲張り過ぎではありませんか!?)

さわ子「やっぱそんなもんか~」

一同「ホッ」

さわ子「じゃ、買取証明書出して」

一同「!?」

さわ子「部費に計上するんだから、当然でしょ?」

海馬「く・・・」

律「え、え~と、それは・・・」

海馬「オレは引き下がらない! ブルーアイズの攻撃、滅びのバーストストリーム!!!」

58: 2011/02/06(日) 19:23:40.65
海馬はそう叫ぶと、ずっと肩から提げていたギターをアンプにつなぎ、咆哮させる。
当然音量は最大に設定されている。

一同「!?」

その音量に思わず耳を塞ぐ一同。さわ子は少しイラついた表情で、アンプに近寄る。

海馬「同じ手は通用せん! 出でよ、トラップ・マスター!!!」

アンプの音量をいじるさわ子だが、ツマミが回らない。
よく見ると、接着剤のようなものでツマミが固定されている。

さわ子「・・・」

海馬「フフフフフ・・・、オレの勝利は揺ぎ無い・・・」

勝利の悦に浸る海馬をよそに、さわ子はアンプの電源を引き抜き、海馬の咆哮が止まる。

海馬「」

61: 2011/02/06(日) 19:26:51.19
――――――
さわ子「うそ!?50万にもなったの!?すごいじゃない!!」

驚くさわ子の前で、土下座の姿勢を保つメンバーたち。
しかし海馬だけは腕を組み、不機嫌そうな表情で壁にもたれかかっていた。

律「ごめんなせぇ!!あまりの金額の多さにオラ、気が動転してしまって・・・」

梓「心が汚いですね」

澪「昔からこうなんだ」

海馬「貧しい決闘者めが…」

律「お前らにだけは言われたくねぇ!!」

その後、1つだけ好きなものを買ってよいということになり、
すっぽんもどきのトンちゃんを買ってもらうけいおん部なのであった。

63: 2011/02/06(日) 19:30:08.53
――――

【#5 お留守番!!】
純「あ!!幻のゴールデンチョコパン!!」

海馬「幻のレアカードだと!!」

昼休み、梓、純、憂、海馬の四人は購買に昼食を買いに来ていた。
この日、3年生は修学旅行で学校にいない。

憂「あ、お姉ちゃんだ」

テンションの高い二人を無視して、憂が携帯に目をやる。

梓「どうしたの?」

憂「教室にお弁当箱忘れたから、家に持って帰ってって」

65: 2011/02/06(日) 19:32:27.36
――――
憂「・・・ごめんくださ~い」

誰もいない唯たちの教室を訪れる憂たち。

純「ねぇねぇ澪先輩の席は?」

梓「確か、ここだったかな」

純「へぇ~・・・」

澪の席に腰を下ろすと、澪の机から、紙がはみ出ているのを見つける。

純「・・・"引け"?」

梓「あ、だめだよ勝手に・・・」

手を伸ばす純を、梓が制止する。

海馬「ドロー!!」

66: 2011/02/06(日) 19:34:40.81
横から海馬が割って入り、紙を引く。そこには落書きが描かれていた。

純「・・・何これ」

海馬「・・・秋山、このカードに我々の決闘を穢す侮辱の意味が込められているのなら、オレは貴様を許さん!」

あさっての方向に向かって怒りに震える海馬をよそに、憂は姉の唯の席に着席する。

憂「お姉ちゃんの机だ・・・」

幸せそうな憂の表情に、梓も純も、思わず笑顔になる。

梓「何か、嬉しそうだね」

純「でも、そんなにお姉ちゃん好きで、寂しくないの?明後日まで帰ってこないんだよ?」

憂「・・・!」

67: 2011/02/06(日) 19:37:13.18
今その事実に気づいたのか、思わず憂の目に涙が溜まる。

純「あ、ごめんごめん!!今日遊びに行ってあげるから!何なら泊まってあげるから!」

海馬「今でもお前らの友情ごっこには……むしずが走るわ!!」 

鋭い視線を3人に向け、海馬がつぶやく。

梓「海馬君は行かないの?」

海馬「当然だ!!オレはM&Wの次世代機の開発で多忙を極める身なのでね!」 

69: 2011/02/06(日) 19:40:13.67
――――
ピンポーン

純「ごめんくださーい」

夕方、約束通り純は平沢家を訪れた。

憂「入って~」

家の中から憂の声が聞こえ、純が扉を開けると、
案の定と言うか、腕組をしたあの男の姿があった。

海馬「鈴木、あれからこの城に辿り着いたのか? フッ、流石だと言っておく」

純「・・・やっぱり海馬君も来てんじゃん」

海馬「鈴木、これから貴様に血も凍る恐怖の決闘を体感させてやる・・・」

70: 2011/02/06(日) 19:43:19.17
もはや会話の噛み合っていない二人のもとに、憂が駆け寄る。

憂「ごめんね~、お料理で手が離せなくて」

純「憂、お邪魔しま~す。はい、これ」

そう言うと純は、大きな紙箱に入ったドーナツを憂に差し出す。

憂「わぁ、ありがとう!!そうだ!」

食卓へ案内される純と海馬。とはいえ、海馬は先に来ていたので、
すでに食卓の様子は知っている。

純「すごい!!これ憂が作ったの?」

71: 2011/02/06(日) 19:46:11.93
憂「4人だから多めに作ったの。足りなかったらチラシ寿司とピザもあるから」

純「い、いや大丈夫」

あまりの料理の多さに、純は自分の持参したドーナツにありつけるか、不安になった。

海馬「…このケースのカードを好きなだけ使い貴様のぬるい食卓を強化するがいい」

そう言いながら、ジュラルミンケースを運び蓋を開ける海馬。そこには大量のサンドイッチが
敷き詰められていた。

憂「わぁ、海馬君もありがとう!!」

純(ドーナツ遠のいた・・・)

72: 2011/02/06(日) 19:50:09.88
――――
海馬「見るがいい、中野… 出でよ、オベリスク!!!」

憂「よく寝てるね~」

梓「寝言なんか言っちゃって」

ソファーに横たわる海馬を見ながら、微笑む憂たち。あの後梓も訪れ、
夕食をとった後、真っ先に海馬が眠りについてしまった。
普段、非常識な言動を振りまく海馬だが、さすがに寝る場所はわきまえており、
「憂たちと同じ部屋に寝る」ということはしなかった。

リビングを後にして、梓たちも、憂の部屋で布団につく。

梓「はぁ・・・いいなぁ、修学旅行」

憂「明日、どっか行こうか」

梓「うん・・・」

73: 2011/02/06(日) 19:53:08.45
――――
梓「何でバッティングセンターなの・・・ひゃっ!」

純「だって野球漫画だったから、やってみたくなったんだ・・・うわ!」

翌日、梓たちはバッティングセンターに来ていた。

純「こんなの当たるわけないよ・・・私、UFOキャッチャーやってくるね」
そういうと、純は室内のUFOキャッチャーへ向かってしまった。

梓「海馬君もやってみなよ?」

バッティングセンターに到着してから、ずっと腕組をして壁に寄りかかる
海馬を気にして、梓が話しかける。

海馬「・・・この海馬瀬人 ゲームを挑まれて背を向ける事はできん」

ようやく壁から背を離し、梓の立つホームへと歩み寄る。

74: 2011/02/06(日) 19:56:01.52
梓「はいはい。ほら、バット」

海馬「中野、お前の気持ちは受け取っておく・・・ だが、オレは自分のカードを信じる!」

そう言いながら、差し出されたバットを無視してジュラルミンケースを開ける海馬。
中からギターを取り出し、ホームに立つ海馬を見て、呆れ顔で梓が忠告する。

梓「ギター、壊れちゃうよ」

海馬「フン・・・ 負け犬風情に心配されるいわれは無い」

ホームに立ち、ブルーアイズを構える海馬。飛来するボールを見据え、
どこか満足げな表情で叫ぶ。

海馬「ブルーアイズよ、敵を蹴散らせ!! バーストストリーム!!!」

海馬のブルーアイズから放たれた一条の光が、"ホームラン"と描かれた的を貫いた。

79: 2011/02/06(日) 20:46:57.74
――――

【#27 最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)】
海馬「・・・どうした中野、落ち着かん様子だな」

部室で二人きりの梓と海馬。
ずっとうつむき無言でいる梓に、珍しく海馬から話しかける。

梓「海馬君、大事な話があるんだけど・・・」

意を決して、梓が顔を上げる。

海馬「・・・?」

梓「海馬君も知ってると思うけど・・・」

80: 2011/02/06(日) 20:49:24.19
梓「新歓ライブでもし新しい部員が入らなかったら、けいおん部は廃部になるの」

海馬「・・・」

海馬がけいおん部に入部してから月日がたち、ついに唯たちは卒業。
残された梓と海馬は、新歓ライブに向けてミーティングをしていたのだった。

梓「万一、の話だけど・・・あと二人、部員が入らなかったら・・・」

海馬「フン、闘う理由や信念ならどんなに弱い決闘者の胸にも秘められてるだろうさ・・・」

海馬「重要なのは、それに押し潰されるか、それを守り抜けるかだ」

81: 2011/02/06(日) 20:52:10.22
梓「だから、万一の話・・・。でもあり得る話だから、そういうことも考えておかないと」

昔の自分なら、こんなことを口にしただろうか。本心は、例えどんな結果になろうと
けいおん部を廃部にすることだけは避けたい。だが部長となった今、わがままを言うだけでなく
現実に目を向けて物事を判断しなければならない。梓は複雑な心境だった。

海馬「ふぅん・・・決闘を始める前から及び腰とは、貴様らしくもない」

梓「・・・海馬君も、心の準備しておいて。一応、念のためね」

暗い表情でつぶやく梓。海馬の目を見て言うことはできなかった。

82: 2011/02/06(日) 20:54:57.05
海馬「・・・」ガタッ

海馬は立ち上がり、梓の肩を掴む。

海馬「立ち上がれ、中野! 貴様は、ここで終わるような決闘者ではない!!!」

梓「・・・」

海馬「貴様は、オレが認めた誇り高き決闘者! オレの前で無様な敗北を喫するなど、断じて許さん!!!」

梓「・・・」

海馬「貴様にも見えるはずだ、見果てぬ先まで続くオレ達の闘いのロード! お前はここで立ち止まるのか?」

梓「ごめん・・・」

海馬「・・・!」

84: 2011/02/06(日) 20:57:20.09
その謝罪の言葉は、弱気な発言に対するものではないことは海馬にもわかった。
万一、一応、念のため・・・そんな言葉で飾っても、梓の大きな不安は海馬に伝わってしまう。

海馬「・・・フン」

海馬は梓の肩から手を離すと、ジュラルミンケースを持って部室の扉を開ける。

海馬「今日はこれで失礼するよ・・・オレはM&Wの次世代機の開発で多忙を極める身なのでね!」 

そういい残して、部室の扉は閉められた。

梓(・・・何であんなこと言っちゃったんだろ)

85: 2011/02/06(日) 21:00:28.08
――――
梓(あれから海馬君、部活来なくなっちゃったな・・・)

件の言い合いから数日経ち、ついに新歓ライブの時間が訪れた。

講堂のステージには梓一人だけが立っていた。幕が上がれば、新歓ライブは始まってしまう。

自分のせいで、海馬は辞めてしまったのだろうか。だとすると、けいおん部を廃部に追い込まない
ためにはあと3人の入部が必要だ。
―しかし、こんな気持ちのまま部活を続けることができるだろうか。

梓(・・・たぶん、無理だな)

生徒「次はけいおん部による演奏です」

ついに、幕が上がってしまった。

梓は簡素な挨拶を済ませ、まずは一曲、演奏を終わらせた。
そして、曲間のMCで、自らの決心を発表することにした。

86: 2011/02/06(日) 21:02:47.44
梓「みなさん、今日はけいおん部の演奏を聴いてくださってありがとうございます。
せっかく聞いて頂いたのもなんですが、けいおん部は本日をもって・・・」

バラバラバラバラ・・・

屋外から、何かが近づいてくる音を耳にした。同時に、講堂内に何故か風が吹き始める。

客「何?この風・・・」

バラバラバラバラ・・・

音がどんどん大きくなる。

思わず音の主に目をやると、講堂二階の窓の外に、こちらへ近づくヘリコプターの姿を見た。

講堂が静まり返り、ふとステージの照明も落ちる。講堂は闇に包まれ、客席からどよめきが
聞こえ始めた。

梓は今の状況が理解できず、きょろきょろとあたりを見回す。
すると、ステージの上、梓の隣にスポットライトが照らされ、天井から海馬瀬人がワイヤーに
掴まりながら、降りてきた。

海馬「1ターンのバトルを制したぐらいで浮かれるとは・・・、だから至上最弱の決闘者だと言うんだ」

88: 2011/02/06(日) 21:06:33.40
梓「・・・海馬君!?」

驚きのあまり、声を失う梓。今日まで部活を無断で休んでいた彼が突如現れたこと。
そして相変わらず非常識な登場の仕方に。

海馬「まさか、こうしてオレが 再びここに姿を現すなど思いもしなかった様だな!」

梓「・・・いなくなったと思ったら急にあらわれて、どういうつもり?」

そこがステージの上ということも忘れ、目に涙を溜めながら、海馬を睨む梓。

海馬「勝利の方程式は、3枚の青眼の白竜を引いた時完成する。
狙いはブルーアイズ3体融合、強靭、無敵、最強・・・」

そう言いながら、普段よりも一層巨大なジュラルミンケースの蓋を開ける海馬。

海馬「わははははどうだあぁぁぁ!!見よ!中野!これぞ史上最強にして華麗なる究極殺りく兵器の姿だ!」

マイクなしに講堂に響き渡るほどの大声で、海馬は叫んだ。
その肩には、ダブルネックならぬトリプルネックのギターがかけられている。

なんとなく、梓は海馬の優しさに触れた気がした。あのトリプルネックのギターと
梓のギター。合わせて4本のギター(ネック)があるから、廃部はない、という意図に取れる。

89: 2011/02/06(日) 21:08:15.74
梓「・・・バカ」

目に涙を溜めながら、優しい笑顔でつぶやく梓。
そんな梓から目を逸らし、海馬は観客へむけて叫んだ。

海馬「これからが本番だ。貴様ら・・・、この海馬瀬人の実力を思い知らせてやる。 戦闘開始!!」

生徒「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

奇抜な登場の仕方に、奇抜なロングコート。そして奇抜な楽器を手にする海馬を目にして、
講堂は一気にヒートアップする。

生徒「KAIBA!! KAIBA!!」

海馬「中野、行くしかあるまい! 全力で奴等を叩き潰す!!」

梓「うん!!」

最強の竜の咆哮が、ライブの再開を告げた。

――――fin

92: 2011/02/06(日) 21:14:11.92
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

キャラの設定がおかしかったり、途中投げ出したりして
すみませんでした。

また懲りずに、「これクロスする意味あるのか」SSを
書くことがあるかと思いますが、そのときはよろしくお願いします。

95: 2011/02/06(日) 21:14:44.18

次回作も期待してる

96: 2011/02/06(日) 21:16:10.34
楽しめた!

引用元: 唯「新入部員の海馬瀬人君だよ!!」