男「さて…と。金もないし、バイトの時間まで適当にぶらついて帰りますか」

ｶｻｶｻ

男（ん？ポケットになにか…あ、今朝下駄箱に入ってた手紙か…）

男（そういや読んでなかったな…どれどれ？）

男「『放課後、体育館の裏で待ってます』か…」

男（差出人の名前もなし…紙もﾚﾎﾟｰﾄ用紙か…こりゃ完全に罠だね。いや、罰ゲームか？）

男「ま、暇だし、行ってみるか」

～体育館の裏～

男「さて…着いたのはいいが…どこにいるんだ？」ｷｮﾛｷｮﾛ

女「…お、男さん？」

男「むっ！殺気！！」ｼｭﾀ！

女　ﾋﾞｸｯ！

男「…あれ？」

女「…え？」

男「…いや、ホントにオンナのコが来てるとは思わなかった…」

女「…」

男「…罰ゲームかなんか？」

女「…アホらし！真面目に考えて損した！！」

男「は？」

女「手紙なんて書くような人だから、きっと純情なんだろうなぁって思ってたのにさ」

男「手紙？ﾁｮｯﾄﾏﾃ」

女「何このアホ！罰ゲーム？なにそれ？調子に乗ってんじゃないわよ！！」

男「まあアホなのは認めるが。それより手紙って何だよ」

女「まだ惚けんの？ほら！あんたがあたしの下駄箱に入れた手紙！！」ﾎﾟｲｯ

男「どれどれ…『放課後、体育館の裏で待ってます　男』って、バカの一つ覚えみたいに同じ文章だな」

女「もうやめてよね。こんなの…」

男「俺も同じ手紙持ってんよ」

女「…え？」

男「ほれ、俺の下駄箱に入ってた手紙。名前こそないけどな」ｶｻｯ

女「…『放課後、体育館の裏で待ってます』って…なにこれ？」

男「ほら、な？」

女「筆跡も内容もまったく同じじゃん…」

男「最初は罰ゲームだとと思ったけど、あんたのほうにも手紙が入ってたってことはつまり…俺たち…」

女「…はめられた？」

男「ピンポーン。御名答♪」

女「茶化さないで！…でも誰が？何のために？」

男「さあ？心当たりは？」

女「まったく。この学校に転校してまだそんなに経ってないし」

男「え？あんた転校生だったのか？」

女「そうよ。…まあ、クラスが違えばわかんなくて当たり前よね」

男「そう…なのか？」

女「で？あんたのほうは？」

男「あー…ないことはないな…」

女「じゃあ決まり！あんた、何とかしなさい。あたしにとばっちりが来ないようにね！！」

男「そんなこと言って、…えーっと、名前、何だっけ？」

女「女よ」

男「ああ、ありがと。女のほうこそ気付いてないだけでさ、恨みかってんじゃない？」

女「そ、そんなことは…」

男「…言い切れないところを見ると、心当たりが？」

女「ないわよ！そんなのあるわけないでしょ！！」

男「ぁゃιぃ…」ｼﾞﾄｰ

女「ちょっ！そんな小声でジト見しないでよ！！あたしが悪者みたいじゃないの！！！」

男「ま、冗談はともかく、犯人がターゲットにしてんのは俺のほうだろうな」

女「へ？」

男「だってな、女のほうの手紙には俺の名前が書いてあって、俺のほうには無い。つまり…」

女「つまり？」

男「はぁ…ちょっとは頭使えよ。オトコ側のターゲットは決まってて、オンナ側のターゲットは誰でもよかったってことじゃね？」

女「あ…」

男「ってことで、女は関係ないだろうし、帰っていいよ」

女「…あのさ」

男「ん？」

女「心当たり…あるの？」

男「ありすぎて困っる」

女「…ぷっ。だろうね。ふふっ」

男「笑える余裕があんなら大丈夫だろ。じゃあな」ﾉｼ

女「あ、ちょ！ちょっと待った！！」

男「まだなんかあんの？面倒だから早く帰りたいんだけど…」

女「あ、ごめん…なんかさ、あたしも腹が立ってきてさ。犯人にガツンと言ってやりたいんだけど…」

男「あー…あ゛ー…」

女「…なにその本気で嫌そうな返事」

男「だってさあ、実害なかったし、このまま放置するつもりだったのに…」

女「はあ？あんた、腹が立たないの？」

男「別に？腹は減るけど」

女「…じゃあさ、あたしの腹の虫が治まんないから、しばらくあたしに付き合いなさい」

男「え？そんな…いきなり付き合えだなんて//…私達、まだ出会ったばっかりなのに…//」

女「…あんたに襲われたって泣き叫びながら職員室に駆け込んでやろうか？」

男「すんません私が悪うございました」

女「分かればよろしい。じゃ、これからあたしとあんたは付き合ってることにするから」

男「え゛え゛ーっ！！」

女「…いっぺん氏んでみる？」

男「待った！これだけは反論させろ！！何で俺が女と付き合わなきゃなんねーんだ！！！」

女「このいたずらを仕掛けたヤツをあぶりだすためじゃん。はめるつもりだった二人が付き合い出したら、仕掛けた奴はトンだお間抜けさんでしょ？」

男「断る！」

女「スカートもブラウスも破いちゃおっかな～」

男「わあいうれしいなあ女さんとお付き合いできるなんてぼかぁ幸せもんだあ（棒）」

女「分かればよろしい」

男「はぁ…どうしてこうなった…」

～下校中～

ﾃｸﾃｸﾃｸ

男「…なあ」

女「ん？」

男「なんで一緒に帰ってんの？」

女「付き合ってんだから、当たり前でしょ？」

男「周りの視線が…恥ずかしいんだけど…」

女「あ、あたしも恥ずかしいわよ！//」

ﾄﾞｷﾝ！

男（真っ赤になって俯きながら上目遣いの女を可愛いと思ってしまった…）

女「…どうしたのよ？」

男「いや…こうやって見るとその…女って結構かわいいのな」

女「え！？…ば、馬鹿ぁ！！急に何言うのよ！！」ﾊﾞｼﾊﾞｼ

男「いたい、いたいって！」

？「…なんであの二人が？」

女「あ、あたしんちそこを右に曲がるんだけど」

男「や、奇遇だなー。俺んちはそこを左に曲がるんだ」

女「…いやな奴」

男「だったらさっさと帰ろうぜ？んじゃな」ﾉｼ

女「ふん！こっちこそ！！べーだ！！」

？「…」

～週末・友の教室～

隣女「…と、友さん」

友「ん？…誰？」

隣女「え？き、去年同じクラスだった隣女だけど…」

友「えーっと…ごめん、覚えてない…」

隣女「うぅ…」

友「ごめんごめん。で？なんか用？」

隣女「あ、あのさ、ちょっと聞きたいんだけど…友さんってあたしのクラスの男君と仲がいいよね？」

友「うん、小学校からの付き合いだけど？」

隣女「で、でね？その…男君ってさ…このクラスの女さんと…付き合ってるの？」

友「へ？あー…いや。そんな話は聞いたことないなぁ…」

隣女「そ、そうなの？」

友「あいつとは長い付き合いだからさ、そういうことは真っ先に言ってくるはずだけどね」

隣女「で、でも！今週はほとんど毎日一緒に帰ってたよ？」

友「え？マジ？ってか、なんで隣女さんがそんなこと知ってんの？」

隣女「え！？」ﾄﾞｷｯ

ｶﾞﾗｯ

男「友―！飯行こうぜ！」

女「あら男。今日はお昼、一緒に食べない？」

男「げっ！」

女「…ちょっとそれ、どういう意味よ」

男「油断した…今週は友が誘いに来てくれてたのに、今日は遅いから来てみたら…」

隣女　ｼﾞﾛﾘ

女（な、なんか…友さんの隣の女の子に鬼の形相で睨まれてるんだけど…）

友「おい男」

男「ん？」

友「お前に聞きたいんだけどさ…女さんと付き合ってんの？」

男「え？あ、それはだな、つまり…」

隣女「…」

友「…男、説明できそう？」

男「…あー、わりい。女、説明してやって」

女「はあ？なんであたしが？」

男「俺が説明したらほぼ100％の確立で誤解が生じるだろうから」

友「…とりあえず屋上に行こう。ほら、隣女さんも」

隣女「う、うん…」

～屋上～

友「そういうことだったのか」

隣女（よかったぁ～）ﾎｯ

女（ふーん？この子…）

男「まったく･･･いい迷惑だぜ」

女「ほ～？あたしのことかわいいって言って喜んでたくせに」

友・隣女「「え？」」

男「いやいやいやいや、ここでそれ持ち出してくるか？」

女「ちょっと何よそれ！」

隣女「でもかわいいって言ったのは…」

女「しっかりこの耳で聞きました。ねえ？」

男「はあ…めんどくせえ…」

友「…ま、まあまあ。で、犯人の目星は着いたのか？」

男「それがぜーんぜん！」

女「おいこら！あんたはもっとやる気出せ！！」ﾍﾟｼｯ

男「ってえなぁ…」

女「まあ、こうして付き合ってるフリしてたら向うから近づいてくるんじゃないかって思ってたんだけどねー」ﾁﾗｯ

隣女「！？あ、あああ、あたしじゃないですよ！！」

女「分かってるよ。あんた、分かりやす過ぎ」ｸｽｯ

隣女「あぅ…//」

友「じゃあ、そろそろ教室に戻ろうか」

男「だな。昼飯くわねーと」

女「あ、あんた達先に帰ってよ。あたしは隣女さんと話があるから」

隣女「え？」

男・友「「おう」」ﾉｼ

女「…行ったかな？」

隣女「あ、あの…」

女「…あんた、男のことが好きなんでしょ？」

隣女「…//」

女「おーおー、真っ赤になってうつむいちゃって。なんであんな奴のことが好きなの？」

隣女「なんでって…かっこよかったから…」

女「は？あいつが？…隣女さん、目医者さんに行ったほうがいいよ？」

隣女　ｷﾞﾛﾘ

女「そ、そんな睨まなくてもいいじゃん…」

隣女「女さんが失礼なことを言うからです！」

女「で、でもさ、あいつのどこがかっこいいの？」

隣女「あ、あのね…男君はあたしを助けてくれたんです…」

隣女「２ヶ月ほど前、校舎裏でいじめられてたとき…上から突然水が降ってきて…DQN女さんたちに掛かったんです」

隣女「それで、上を見上げたら男君がいて、DQN女さんたちが男君を追いかけていったんです」

女「でもさ、あんたも濡れたんじゃないの？もっといい方法で助けりゃいいのに…」

隣女「で、でも！確かにあたしも濡れたけど、そのあとDQN女さんたちに絡まれなくなったし…きっと男君が彼女達を説得してくれたんだと思うんです」

女「へぇ～、でも信じられないなぁ…」

扉の影：ｽｯ…

女「！？」

隣女「…どうしたんですか？」

女「…あんた、誰かに後をつけられたりしたことある？」

隣女「え？あ、あの…」

女「…あるんだね？」

隣女「…はい。以前、同じクラスの隣男君に告白されたことがあって…家の前で待ち伏せされたり…」

女「…これで分かったよ。放課後、またここに来てくれる？」

隣女「え？は、はい」

ｶｷｶｷ

女「それから、男にこのメモ渡して」

隣女「え？は、はい//」

女（きっと…これで解決だね）

～放課後･屋上～

男「で？連れてきたけど？」

友「男に手伝えって言われたけど…」

隣男「…これからも毎日教室で顔を合わせるのに、逃げたって無意味だろ…」

友「まあ、おとなしくついてきてくれて助かったよ。手荒な真似はしたくなかったしね」

女「じゃあ、いきなりなんだけどさ、これの手紙ってアンタが書いたんだよね？」

隣男「…」

女「で、ちょっと聞きたいんだけどさ」

女「隣男君、隣女さんのことが好きだよね？」

隣男「！？」

男「ほほう？」

女「で、隣女さんは男が好き」

隣女「…//」

男「ほうほう……はあ？」

女「男は黙ってて！だから男に彼女が出来れば隣女さんが自分のほうを向いてくれるはず」

隣女「そんな！なんで…」

隣男「だって学校一の変人だぞ！そんなのに負けて納得できるかよ！！」

女「え？」

隣男「だから！あんただったら転校生で何にも知らないからいけると思ったんだよ！！」

女「ふーん…でも、思惑は外れて、隣女さんは今まで以上に男を見るようになった。で、焦った君はあたしらの事を監視してた」

隣男「…」

女「ばっかじゃないの？こんなことして、あたしが男と付き合うって本気で思ってたの？」

隣男「…ﾁｯ」

男「…認めるなら開放するけど？」

女「え？ちょっとあんた！」

男「いいじゃん、実質被害は出てないんだしさ。それに、隣女さんのことが好きでやったことなんだろ？」

女「だからって、やっていいことと悪いことがあるでしょ！」

男「まあまあ。人を好きになったら周りなんて見えなくなってもしょーがねーだろ？だから許してやれよ」

女「でも…」

隣女「あ、あたしからもお願いします」ﾍﾟｺｯ

隣男「！？」

隣女「こ、今回のことはあたしにも責任があります。あ、あたしも一緒に謝りますから…許してあげてください」

女「…分かったわよ」

友「だってさ。もう行っていいよ」

隣男「…かっこわりぃ」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ…

男「さてっと。これで終りだな」

隣女「あ、あの！」

女「ん？なあに、隣女さん」

隣女「お、男さん！ああ、あたしと付き合ってください！」

男「ぶへっ！」

友「いきなりだね…」

男「勘弁してくれ！俺は面倒なことが嫌いなんだ！！」

隣女「好きなんです！」

男「なんで俺なの？他にもいい男がいるだろ！」

隣女「２ヶ月前、DQN女さんたちに絡まれてるあたしを、男君は救ってくれました！」

隣女「だから、あたしにとって男君は、白馬に乗った王子様なんです！」

女（ぷっ、王子様って…この子、どこまで乙女チックなの？）

隣女「だから男君！付き合ってください！！」

男「２ヶ月前？………あ、それ勘違いだわ」

隣女「…え？」

友「…」

男「それ、友がやったんだ」

隣女「え？ええっ？」

～～～～～～～回想～～～～～～～

　　男「昼飯食って日向ぼっこ。ん～！最高のひと時！！」

　　友「ははっ、お前は暢気だね…ん？」

　　男「どうした？」

　　友「いや…下のほうから女の子の声が…あ」

　　男「あー、ありゃカツアゲだな。ま、俺には関係ねーけど」

　　友「と、言いながら防火用水のバケツを持ってくるお前が好きだ」

　　男「べ、別にあんたのためじゃないんだからねっ！//」

　　友「ははっ。ツンデレ乙」

　　男「ま、俺がするのはここまでだな。あとはお前の好きなように」

　　友「うん。…せーのっ！」ｻﾊﾞｧｱｱ！

　　男「おおーすげーすげー。見事的中じゃん」

　　友「はっはっはー。まっかせっなさーい！」

　　男「なんかこっち見てんぞ。…あ、走り出した」

　　友「じゃ、ちょっといってくる」

　　男「『寝技の友』の本領発揮か…『百合の友』だっけ？」

　　友「両方だよ。ふっふっふ。腕がなるわ♪」ｼﾞｭﾙﾘ

　　男「相手がかわいそうに思えてくるな…にしても、お前も面倒なことに首をつっこむの好きな」

　　友「そういうわけじゃないけど、バケツを持ってくる奴が居るからね？」

　　男「ははは。ま、俺はお前のそういうおせっかいなところ、嫌いじゃないけどな」

　　友「ははっ。同じく。じゃあな」ﾉｼ

　　男「おう。くれぐれもヤりすぎるなよ」ﾉｼ

～～～～～～～～～～～～～～～～

男「…とまあ言うわけで、隣女さんを助けたのはとｍ」
隣女「で、でも！バケツを準備したのは男さんですよね？だったらやっぱりあたしは男君に助けられたんです！！」

男「いや、そうじゃなくてな？…友、お前もなんか言ってくれよ」

友「いや、こういうの苦手なんで…」

隣女「男君、あたしと付き合ってください！」

男（これは困ったぞ…めんどくさいからイヤだって言っても納得しないだろうし…あ、そうだ！）

男「隣女さん」

隣女「は、はい！」

男「俺は女のことが好きだから」

隣女「…はい？」

女「え？…あたし！？…え？…ええーっ！」

男「だから隣女さんとは付き合えません」

友「おー、そう来たか」

女　ﾊﾟｸﾊﾟｸ

隣女「で、でも！友さんに聞いたけど、男君は女さんとは付き合ってないんでしょ！！」

隣女「だったらあたし、男君のこと絶対諦めません！！」

男「んなこと言われてもなぁ…どーすりゃいーの？」

隣女「じゃあ、女さんのことが好きだって言う証拠を見せてください！でないと信じられません！！」

男「…しゃーねえ。女、ちょっと目、つぶって前髪上げて」

女「え？あ、こ、こう？」

ﾁｭｯ

女「え？…えっ？」

男「これでどう？でこチューで不満なら…」

隣女「…うぅっ…うわぁぁぁあああん！」ﾀﾀﾀﾀ…

友「おいおい…あの子、マジ泣きだったよ？」

男「ま、いいんじゃね？」

女「…なにがいいのよ…」

男「は？」

女「何であんなことしたのよ！理由を言いなさい理由を！」

男「え？だって俺達付き合ってることになってんだろ？」

女「だからそれは！真犯人をあぶりだすためで！！」

男「え？もう終わってたの？」

女「あったりまえじゃない！」

男「…まいっか」

女「よくなーい！」

男「まあまあ、そんなに怒るとせっかくのかわいい顔が台無しだぜ？」

女「なっ！あ、あんたっ！！//」

友「…喧嘩するほど仲がいいって言うやつ？」

女・男「「ちがーう！！」」

～週明け・女と友の教室～

ｶﾞﾗﾗ

女「おはよう」

ﾋｿﾋｿ　ﾋｿﾋｿ

女「？」

ﾋｿﾋｿ　ﾋｿﾋｿ

友「おはよー」

女「あ、おはよう」

ﾋｿﾋｿ　ﾋｿﾋｿ

友「…ﾁｯ」

女「どうしたの？」

友「…女さんが来たときからこんな感じだった？」

女「なにが？」

友「教室の雰囲気…」

女「…そうね、こんな感じだったよ」

友「そっか…おい！」

ﾓﾌﾞ女子「は、はい！」

友「お前ら、何話してたんだ？」

ﾓﾌﾞ女子「えっ！えっと…」

友「柔道場に来るか？」ﾆｯｺﾘ

ﾓﾌﾞ女子「いっいえ！あ…あの…」

友「早く言えよ！」

ﾓﾌﾞ女子「は、はいっ！女さんと隣のクラスの男君が付き合ってるって…」

女「はあ？」

友「…その話、誰から聞いた？」

ﾓﾌﾞ女子「え、えっと…今朝来たら何人かから…女さんと男君がその…キスしてたって…」

女「！！」

ﾓﾌﾞ女子「もっもちろん！あたしは信じてませんよ？お、女さんはきれいでかわいいし…モテそうだからその…お、男君と付き合うなんて無いと思うし…」

友「…なんでそう思うんだ？」

ﾓﾌﾞ女子「え？あ、あの…」

友「なんで女さんと男が付き合うわけがないって思うんだ？」

ﾓﾌﾞ女子「え、えっと…それは…」

チャラ男「まあまあ、熱くなんなって。男ってよ、変人で有名じゃねーか。だからじゃね？」

女「…変人？」

チャラ男「だってよぉ、友みたいなのといつも一緒にいるしよ、何考えてんのか分かんねーしな」

女「え？」

友　ﾊﾞﾝｯ！

チャラ男「おーこわっ。退散退散っと」

女「あっ…」

友「…ふん」

女「あ、あの…友さん」

友「なに？」

女「これって先週のこと…だよね？」

友「…だね」

女「どうしよう…どうやったら誤解が解けるんだろ？」

友「そうだね…おいっ！」ﾄﾞﾝ！

ｸﾗｽ一同　ﾋﾞｸｯ

友「女さんは男とは付き合ってない。噂は嘘だ。以上！」

女「え？それだけ？」

友「これ以上グダグダ言ってもどうにもならないからね。あとは流れに任せるしかないよ」

女「そんな…」

友「男にも連絡しなきゃ」

　　To：男
　　From：友
　　SUB：噂のこと
　　本文：女さんとのことが噂になってるけど、そっちはどう？

友「送信っと」Pi

男「ん？友からメールか…んー…」

　　From：男
　　SUB：Re:噂のこと
　　本文：スルー

男Pi

友「おっと返信…やっぱりね…女さん、男はスルーだって」

女「ちょっ！男のせいでしょうが！！何とかしなさいよ！！！」

友「文句は直接男に言ってよ」

女「今から言ってくる！」

友「次の休み時間にしたら？もう授業が始まるよ？」

女「もうっ！」

～昼休み～

ｶﾞﾗﾗ

男「おーい、友。めｓ」
ｶﾞｼｯ
女「あんた！休み時間ごとに逃げ回ってないで、この状況を何とかしなさい！！」

男「は？」

女「は？じゃないわよ！もう学校中に噂が広まってるじゃないの！！」

男「噂？…あー、あれか、ちゅーのことか？別にいいんじゃねーの？事実だし」

ｻﾞﾜｯ！ｼｰﾝ…

女　ﾊﾟｸﾊﾟｸ

男「女、何やってんだ？…友、飯行こうぜ」

友「…長い付き合いだけど…いまだに男が何考えてるかわかんないときがあるわ…」

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

『２年○組の男君、２年□組の女さん、今すぐ生徒指導室に来なさい。２年○組の～～～』

友「あ、ほら、お呼びだよ。二人とも行っておいで」

男「ちっ、めんどくせーな…」

女「あぅ…」ﾌﾗﾌﾗ

友「女さん、生徒指導室までたどり着けるかな…」

～生徒指導室前～

ｶﾞﾁｬｯ

友「お、どうだった？」

男「どうもこうも…でこチューしただけだって言うのにさ、同棲してることになってたんだぜ？」

友「はい？」

男「まったく…親に電話されてさ、嘘だって証明されたからよかったものの…」

女「…」ﾄﾞﾖｰﾝ…

友「…も、もしもし？女さん？」

女「…男…」

男「へ？」
ｶﾞｼｯ！
女「あんたのせいで！あたしまで親に連絡されたじゃないのよ！！電話の向うで父さん泣いちゃったじゃないの！！どうしてくれんのよ！！」

男「ど、どうって」

女「あ゛―もう！！男！あんたのせいよ！！」

友「女さん！噂は男のせいじゃないでしょーが！！」

女「男のせいでしょ！！」

友「じゃあ聞くけど、そもそも女さんが恋人のフリをしようなんて言わなきゃこんなことにならなかったんじゃないの？男はスルーするつもりだったって言ってたし」

女「そ、それは…」

友「だったら男ばっかり一方的に責めるのはおかしいんじゃない？」

女「…」

男「まあまあ。とりあえず飯にしようぜ。腹減った」

友「そうだね。女さんも一緒にいく？」

女「…いい…男…」

男「ん？」

女「やっとわかったわ、あんたが変人だって言う理由。…あんたといると碌なことがない。だからもう二度とあたしに近づかないで。お願いだから」ﾃｸﾃｸﾃｸ…

友「ちょっ、ちょっと女さん！」

男「…いいよ、友。行こうぜ」

友「う、うん…」

～数日後・帰り道～

女（まだ誰も話しかけてこない…一人ぼっち…）

女（なんであたしがこんな目にあわなきゃいけないのよ…）

女（…男のせいよ。男があたしを…男が…）

～～～～～～～～～～

　　男「なんで一緒に帰ってんの？」

　　女「付き合ってんだから、当たり前でしょ？」

　　男「周りの視線が…恥ずかしいんだけど…」

　　女「あ、あたしも恥ずかしいわよ！//」

～～～～～～～～～～

女（…馬鹿で変わった奴だったけど…）

～～～～～～～～～～

　　男「いや…こうやって見るとその…女って結構かわいいのな」

　　女「え！？…ば、馬鹿ぁ！！急に何言うのよ！！」ﾊﾞｼﾊﾞｼ

～～～～～～～～～～

女（あんなのでも…居たほうが寂しくないのかなぁ…）ﾎﾟﾛｯ

　　「ﾆｰ…」

女「…え？猫？」ｷｮﾛｷｮﾛ

　　「…ﾆｰ…」

女（どこだろう…あっ！コンビニの端っこに！！）ﾄﾃﾄﾃﾄﾃ…

子猫「…ﾆｰ…ﾆｰ…」

女「よしよし…お前、迷子なの？」ﾋｮｲ　ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

子猫「ｸﾞｰﾙﾙ…」ｸﾞｯﾀﾘ

女「…え？」

子猫　ﾊｯ…ﾊｯ…

女「ど、どうしよう…病気かも…」ｵﾛｵﾛ

～コンビニ・ATM～

男「今月は…おっし！２万５千円入ってる！！バイトがんばった甲斐があったぜ！！」

ｶﾞｰ

男「♪～…ん？あれは…女か？」

女　ｵﾛｵﾛ

男「…なにかあったのか？見に行ってｍ」

～～～～～～～～～～

　　女「だからもう二度とあたしに近づかないで」

～～～～～～～～～～

男「…帰るか」

ﾃｸﾃｸ…　ﾁﾗｯ

女　ｵﾛｵﾛ

男「あー…あ゛―！！…ったく、めんどくせーなぁ…」

ｸﾙｯ　ﾃｸﾃｸ

男「おい」

女「え？…あっ！」

男「何してんだ？」

女「この子、病気みたいなの！どうしよ！？」

男（おおぅ！そんな泣きそうな目でこっち見んな！）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

ｻｯ

女「え？」

男「…なんだよ。女が言ったんだろ？近づくなって」

女「あ…」

男「…で、だ。どうしようって言われても俺は何にも出来ないぞ？」

女「何それ、どういうこと！？この子、氏にかけてるんだよ！！」

男「…野良だろ？俺のペットじゃねーし、関係ないじゃん」

女「なっ！この薄情モノぉ！！冷血漢！！！」

男「なら女がやれよ！！」

ﾋﾞｸｯ

女「…え？」

男「なにも出来ないんなら最初から手を出すんじゃねえ！」

男「手を出したからには最後まで面倒見ろよ！どうしたらいいか分からないなんて言うんなら最初から手を出すんじゃねえ！！…期待させて裏切るなんてサイテーじゃねーか…」

女「そんな言い方しなくても…」ｸﾞｽｯ

男「女はもうその猫にかかわってるんだ。だったら自分が出来ることを考えろよ」

女「うぅ…ご…ごめんねぇ…」ｸﾞｽｯ　ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

男「…謝るだけかよ…ったく、世話の焼ける…」Pi　Pi　Pi…

男「検索っと…ほれ。ここから一番近い動物病院だ」

女「！！」

男「連れて行く気があるなら電話をかける。見頃しにするなら俺はこのまま帰る」

女「…電話…かけて…お願い…」ｸﾞｽｯ

男「…」Pi　Pi　Pi…
　　・
　　・
　　・
獣医「食あたりですね。たぶん腐ったものでも食べたんでしょう」

獣医「あと、便秘です。綿棒で優しく肛門を刺激してやってください」

女「…よかった…」

獣医「様子を見るため、入院しましょう。二日後に引き取りに来てください」

女「はい。あっ…うちマンションだから飼えない…」

男「…ちっ」

ﾊﾞﾀﾝ

女（え？…帰っちゃった？…）

女（…でもしょうがないよね…男の言うとおり、これはあたしの問題だもん）

獣医「治療費は引き取られるときでいいですよ」

女「あ、はい。お世話になりました」

ｶﾞﾁｬ

女「…あれ？」

男「はい、はい。じゃあ明々後日そっちに行きますから」Pi

女「…まだ居たんだ」

男「今帰るとこだ」

女「うん…あ、さっきはありがと…」

男「ん…」ﾉｼ

女（はぁ…治療費に子猫の飼い手に…これは大変だわ…）

～二日後・動物病院～

ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

女（治療費は父さんに借りたけど…飼い手が見つからない…）

女（…とりあえず今日は家につれて帰って…明日また探そう…）

ｶﾞﾁｬ

女「…すみませーん、子猫を引取りに来ましたー」

受付「はーい…あら？あなた…」

女「…二日前に子猫を連れて来た者ですけど…」

受付「ええ、その時の子猫ですよね？もう連れて行かれましたけど？」

女「…え？」

受付「ほら、あなたと一緒に居たオトコのコ。あの子が引き取っていきましたよ？」

女「はい？」

受付「治療費の支払いも退院手続きも全部済ませて、大分前に帰っていかれましたけど？」

女「…そ、そうですか…ありがとうございました」ﾍﾟｺｯ

ﾊﾞﾀﾝ

女（なんで男が…どういうこと？）

～その頃・友の家～

男「すまねーな、友」

友「いいっていいって。ちょうど古いのがあったからさ」

男「こういうとき頼りになるのは友だけだわ」

友「はは。そのキジトラちゃんも気に入ってくれたみたいだし、返してもらわなくてもいいからね」

男「恩に着る…友んち猫飼ってるし、猫用キャリーを貸してもらえたらって思ってきたんだけどな」

友「しっかし男も損な性格だよねぇ。治療費、高かったんじゃない？」

男「ああ、今月のバイト代のほぼ全額だぜ？…ったくこいつのせいで」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

友（ほっときゃいいのにほっとけないんだよねぇ…ホント、お人よしなんだから）

男「あ、友」

友「ん？」

男「俺、明日学校休むわ。連絡よろしく」

友「ん、分かった。ちなみに…」

男「ああ、こいつのせいだ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

友「そっか」

男「じゃあな。おやすみ、友」ﾉｼ

友「おやすみ～」ﾉｼ

～翌朝・男の教室の前～

女　ｷｮﾛｷｮﾛ

友「…女さん、何してんの？」

女「あ、友さん」

友「ここ、男の教室だけど、誰に用なの？」

女「あ…その…」

友「まさか男に用が？そんなことないわよねえ？『近づくな！』って言い放ったんだもん。ぜーったい！そんなこと無いよねえ！！」

女「うっ…」

友「…男は大事な友達なんだ…なのにあんたはあんなひどいこと言って…許してないんだよ！」ｼﾞﾛｯ

女「…ごめんなさい…」

友「謝るなら男にだろ？……はぁ、男なら今日は休みだよ」

女「え？」

友「そろそろ教室に行かないとHR始まるよ？」

女「う、うん…」

女（昨日のこととか、今の友さんの態度とか…あたし、ひょっとして男のこと、誤解してる？）

～昼休み～

友「さーって、今日は寂しく独りご飯かぁ」

女「と、友さん…」

友「ん？なに？」ｼﾞﾛｯ

女「そんな睨まなくても…ちょっとお話したいんだけど…いいかな？」

友「こっちは話すことなんかない」ｽﾀｽﾀｽﾀ…

女「あ、ま、待って」ﾄﾃﾄﾃﾄﾃ…

～屋上～

友　ﾊﾟｸﾊﾟｸ

女「…」

友　ﾓｸﾞﾓｸﾞ　ｺﾞｯｸﾝ

女「あ、あの！」

友　ｼｰｼｰ

女「…あたし、男のこと…誤解してるのかも…」

友「何にも聞こえないねー」

女「…あたしね、転校ばっかしてたから…人を観察する癖がついちゃってるの…」

女「だ、だけどね？男って…周りのこと全然気にしない、何も考えてないで行動する変人だって思ってたけど…違うような気がしてきて…」

女「今から考えたらさ、最初に出会ったときにふざけてたのも…最初から悪戯だってわかってたからかなって…」

友「…」

女「隣女さんのときも…必要以上に傷つけたくないからあんなことしたのかもしれないって…」

友「…それで？」

女「！？…子猫のことも…突き放すようなこと言って…でも…治療費も出して引き取ってるし…」

友「んー！…さーってと、教室に戻るかな～」

女「あっ！と、友さん！！」

友「…あんたさ、早く戻らないとお弁当食べ損ねちゃうよ？」

女「あ、うん…あの！男って…多重人格者なの？」

友「は？」

女「だ、だって！やることが極端なんだもん…」

友「…ぶ…わははははは！！」

女「…そんなに笑わなくたって…」

友「っはあ。…で？」

女「え？」

友「聞きたいことがあるんだろ？」

女「あ、うん…友さんは男をどんな人だと思ってるの？」

友「…男はすごくいい奴だよ…それだけだよ」

女「は？なにそれ？全然わかんないじゃん」

友「まあまあ。男の事ちゃんと見てれば分かるよ」

女「…すっきりしないよ…」

～電車の中～

男「もうすぐ着くぞー」

子猫「ﾆｰ」

男「…怖くないからな？」

男（怖いのは俺のほうか…）

～～～～～昨夜～～～～～

　　子猫　ﾆｰ

　　男母「きゃあっ！なにこれ！？かわいい～～♪」ﾓﾌﾓﾌ

　　男「今日、病院から引き取ってきたんだ」

　　男母「…けど、うちのマンションじゃ飼えないよ？」

　　男「うん、だから明日、学校休んでその…爺ちゃんと婆ちゃんの家に…」

　　男母「…ん、わかった。いってらっしゃい」

　　男「うん…ごめん」

　　男母「いいのよ。あの人たちにとって男はかわいい孫だもん。たまには顔見せたほうがいいよ」

　　男「…か、母さん！あ、あのさ…母さんも一緒に…」

　　男母「あたしはやめとく。あの人たちの反対を押し切って結婚した手前、顔、合わせづらいからさ…」

　　男母「ま、あの人たちの目利きが正しかったんだけどねー。あいつ、ほとんど家に帰ってこなかったし、たまに帰ってきたと思ったら酒飲んで暴れるし、挙句の果てにあんたが小学校のときに結局女作ってトンズラしちゃって最後は…」

　　男「でも！…もういいだろ？母さんも十分苦労してきたんだし…親子じゃないか！！」

　　男母「…心配してくれてありがと。やさしいねー男は！あははは」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

～～～～～～～～～～

男（母さんのこと、爺ちゃんと婆ちゃんになんて言おうか…）

アナウンス『間もなく○○駅です～』

男「お、次降りるぞ」

子猫「ﾐｬﾝ」

～男の祖父母の家～

男「…こんにちは…」

婆「あらあら、いらっしゃい」

男「すみません、無理いっちゃって…」

婆「いいのよぉ…久しぶりだねぇ、３年ぶりかしら…あら、その子？」

男「あ、はい…あの、お爺さんは…？」

婆「奥で休んでるわ。朝早くからキノコ狩りに行って疲れたんですって」

男「そうですか…」

婆「ふふ。あの人ねぇ、男ちゃんに食べてもらうんだって張り切ってたからねぇ」

男「…」

ﾆｬｱ

婆「あらあら、さっそく主が子猫ちゃんを見つけたみたいねぇ」

ｶﾞﾘｶﾞﾘ

男「あ、今出すからちょっと下がって」

ﾆｬｰ

男「…ほら。主、かわいがってくれよ？」

ﾆｰ　ﾁｮｲﾁｮｲ　ﾆｬｰｵ　ｽﾀｽﾀ　ﾄﾃﾄﾃ…

婆「主、受け入れてくれたみたいね。ほら、子猫ちゃんも主についていってるわ」

男「よかった…です」

婆「さあさ、上がって？今日はゆっくりできるんでしょ？」

男「あ、はい。10時の電車に乗って帰るつもりですから」
　　・
　　・
　　・

一同「「「いただきます」」」

爺「男、一杯いけ」

男「あ、おｒ…僕はまだ…」

婆「あらあら、ダメですよお爺さん。男ちゃんはまだ高校生なんですから」

爺「心配するな。“のんあるこおるびいる”ってやつだ」

男「あ、じゃあいただきます」

婆「もう、お爺さんったら…男ちゃんがあのオトコみたいに酒飲みに…あ」

爺「あの男の話はよせ！」

男「…」

～～～～～男回想・中学の頃～～～～～

　　男「ただいま」

　　母「ﾋｯｸ…あ、男。お帰りなさい。晩御飯の用意するね」ﾄﾃﾄﾃﾄﾃ…

　　男（母さん泣いてたよね？…なんで…新聞？）ｶｻｯ

　　新聞の記事：『酔って口論、男性刺され氏亡』

　　ﾄﾝ

　　男「！？」ｸﾙｯ

　　母「…見たのね…」

　　男「…うん」

　　母「そっか…家を出てもう6年…いつか改心して戻って来るかもって思ってたけどなぁ…」

　　男「あんな奴、こうなって当たり前なんだ！母さんを泣かせた罰があたったんだ！！」

　　ﾊﾟｼｯ

　　母「あ！ごめん！…ごめんね…」

　　男「…いいよ。俺のほうこそ言いすぎたよ…ごめん…」

～～～～～～～～～～

男「…あ！このキノコのてんぷら美味しい！！」

婆・爺「「！？」」

男「お爺さん、なんていうキノコですかこれ？」

爺「あ、ああ。これは舞茸って言うんだ」

男「そうですか。お爺さんはやっぱりすごいなー」

爺「そ、そうか？ははっ」

男「あ、お爺さん、グラスが空いてますよ？はい」

爺「お、こりゃすまんな。おっとっとっと」

婆「男ちゃん…」
　　・
　　・
　　・

男「じゃあ今日は…ありがとうございました」

婆「そんな他人行儀な。男ちゃんはあたし達の大切な孫だもの。いつでも来てちょうだい。ね、お爺さん？」

爺「ああ、主も子猫も待っとるしな」

男「ありがとうございます。それと…母さんのことなんですが…」

婆・爺「「…」」

男「…もう許してやってもらえませんか？母さん、十分苦しんで、十分苦労してきました」

男「まだまだ子供の僕がこんなこと言うのも変ですが…もう…」

爺「男」

男「はい」

爺「母はきちんと務めを果たしておる。それはお前を見ればわかる」

男「…ありがとうございます」

爺「…わしらはとっくに許しておる。ただ、母も頑固者だからな…」

婆「…キッカケが必要なんだと思うよ？」

男「…」

爺「わしらと母に共通するキッカケがな」

男「そうですか…でも、お爺さんとお婆さんが母を許してくれたことが分かって…嬉しいです」

婆「…母のこと…よろしくお願いします」ﾌｶﾌﾞｶ

男「分かりました。それじゃ…」

婆「…次はいつ来るの？」

男「…子猫のこともありますので、近いうちにまた…」

婆「そう。それじゃ楽しみにしてるわ」ﾆｺｯ

男「…失礼します」ﾍﾟｺｯ

男（キッカケか…）

～次の日・登校中～

ﾃｸﾃｸ

男（はあ…昨日は疲れたなぁ…）

友「おっはよー！」ﾊﾟｼｯ

男「！…ってえなあ。お前、ちょっとは手加減しろよ…」

友「何言ってんだ、このさぼりやろうが」

男「いいだろ、別に…」

友「まあ、ね。…で、昨日はどこに行ってたんだ？」

男「…爺さんちに行ってた」

友「え？」

男「…」

友「…そっか。お疲れさん」ﾎﾟﾝ

男「ああ…サンキューな」

友「べ、べつにあんたのこと心配してるんじゃないからね！！//」

男「ははっ、ツンデレ乙。でもなぁ…」

友「ん？」

男「こう言っちゃなんだが…友がしても、ちょっとしか可愛いくないぞ？」

友「そうか？…やっぱりもっとかわいいほうがモてるのかな…」

男「んー、俺は百合じゃないから分からん」

友「それもそっか。あははは」

男「…友」

友「ん？」

男「…心配してくれてありがとな」

友「…ん」

～男の教室の前～

男「…ん？あれ？」

女「…あ」

男「…もうすぐHR始まるぞ？早く教室に戻れよ」

女「あ、うん…聞きたいことあるんだけど…」

男「ん？…あ、女さあ、俺に近づくなって言ったじゃん。なんで近づいてくる？」

女「あ…あのときは…ごめん」

男「…ま、いいけど。で？何が聞きたいって？」

女「あ、あの…子猫…引き取ってくれたんだよね？」

男「…何のことだ？うちはマンションだからペット禁止なんだけど」

女「え？…じゃ、じゃあ、子猫は？」

男「猫鍋にしました」

女「…」

男「おいしく頂きました」

女「……嘘…だね」

男「…」

女「…で、ホントはどうしたの？」

男「三味線屋に売りｔ」
女「嘘！」

ｷｰﾝｺｰﾝ…

男「お、チャイム。じゃあな」

女「あ、男！」

ｶﾞﾗﾗ　ﾋﾟｼｬ

女「…もう！」

～昼休み～

ｶﾞﾗﾗ

男「おーい友」

友「あーおとｋ」
女「男！」

男「うわっ！しつこい！！」

女「ちゃんと聞いたことに答えてよ！」

男「友！今日は一緒に食えねえ！！」ﾀﾀﾀﾀ…

女「あ！ちょっと待ちなさいよ！！」ﾄﾃﾃﾃﾃ…

友「…いってらっしゃ～い」

～放課後～

友・男　ﾃｸﾃｸ

女　ﾃｸﾃｸ

男「あー…あ゛―！もう！！」

ｸﾙｯ

男「なんで後をつける！」

女「だってまだ子猫のこと聞いてない！なんでちゃんと話してくれないの！？」

男「ちゃんと話しただろ！」

女「あんなの嘘っぱちでしょ！子猫をどうしたか、ちゃんと話してよ！あたしが拾ったんだから、どうなったかぐらいは知る権利はあるでしょ！」

男「だからそれは！」

友「はいはーい。二人ともストップ！」

友「男、もう正直に話しちゃいなよ。でないと家にまで押し掛けられるよ？」

男「わかったよ…」

女「…」

男「はぁ…子猫は俺のじいさんちに預けてきた。古参の猫にも気にいられたみたいだから大丈夫だろう」

女「そっかあ！よかったぁ！！」ﾊﾟｧｧ

友・男「「！？」」

女「そっかぁ…男、治療費まで出したのに、ちゃんと答えてくれなかったからさぁ。はぁ～よかったぁー！」

男「だったら付け回さなくてもよかったんじゃねーの？」

女「男がちゃんと答えてくれたら追いかけなかったわよ」

友「まあまあ。けど女さんも変わってるねぇ。一歩間違えたらストーカーだよ？」

男「そうだそうだ」

女「どうせあたしは変人ですよーだ」

友・男「「！？」」

女「ん？」

男「…今のはどういう意味だ？」

女「あ…なんでもないよ、あはは…」

男　ｼﾞｰ

女「…」

友「…ちょっと落ち着けるところにいこっか」

～マ○ドナルド～

友「…それで、さっきの『変人』ってどういう意味？」

女「…」

友「…男も関係あること？」

男「…」

女　ﾁﾗｯ　ｺｸｯ

友「どういうことか、話してみ？」

女「…学校で男と噂が立ったでしょ？あれから…誰も話しかけてこなくなったの…」

友「え？でも教室で話してるとこ見たよ？」

女「あれは授業に関係することだけだよ…学校の外じゃ避けられてるし…」

男「…」

女「…あ！でも！！そんなの全然平気だよ？転校ばっかしてるとさ、こんなのしょっちゅうだしね。あはは…」

男「そうなん？」

友「まあ、ね。オンナってさ、派閥を作ってまとまっちゃうから、新参は派閥の末端に入るか自分で派閥を作るしかないもんね。それができなきゃボッチかイジメしか…あっ、もしかしてイジメとかは？」

女　ﾌﾙﾌﾙ

友「まだそこまでは行ってないか…うーん…じゃあさ」

女「？」

友「…この３人でグループ作っちゃおっか？」

女・男「「え？」」

友「どうかな？」

女「ちょ、ちょっと！友さんはともかく、なんでこんなやつと一緒にいないといけないのよ！」

友「みんな変人だしいいじゃん♪」

男「…」

女「ちょっと男！あんたも黙ってないで、なんか言いなさいよ！！」

男「…とりあえず、赤外線いっとく？」

女「はぁ？」

男「まあ、面倒なことは置いといて、何かあったら電話する相手が居てもいいだろ？」

友「だってさ。ほら、女さんもケータイ出して」

女「え？あ、こ、これ」

友「ちょっと貸して？…はいこれで送信っと」ﾋﾟｯ

女「…受け取ったよ」

友「…おっけー。じゃあ、次は男ね」

男「…友、頼むわ」

友「ん、ケータイ貸して…女さん、行くよ」ﾋﾟｯ

女「…はい…これでOK？」

友「…おっけー。はい、男」

男「ん」

友「これで何かあっても何とかなるでしょ」

男「だな」

友「…じゃあ」

女「あ…ひとつ聞いてもいい？」

友「ん？なにかな？」

女「…友さんはなんで男といっしょに居るの？」

友「友でいいよ。…男、話してもいいかな？」

男「…友の好きなように」

友「じゃあ…男とは小学校5年からの付き合いなんだ」

友「当時ね、好きな子が居てさ…水泳の時間に嘘ついて見学して」

友「みんなが泳いでる間にその子のパンティー、盗んじゃったんだ」

女「え？パンティーってまさか…女の子の？」

友「そ。で、先に教室で待ってたらみんなが大騒ぎしながら戻ってきて…」

友「持ち物検査をするって言うから、とっさに近くの机の中に押し込んだんだ。それが男の机でさ…」

友「で、当然問題になるよね？男の机からパンティーが出てきて…」

友「男、職員室に連れていかれてさ、その日は結局教室には戻ってこなかったんだ…」

女（うわあ…）

友「で、次の日、教室で男に謝ったんだけどさ、何にも言ってくれなくて…HRの時に言おうとしたら男に止められて…」

男「だって友がそんなことした理由が分からなかったからな。まずは理由を教えてくれって友に言って…」

友「で、理科準備室に二人で行って、理由を男に言ったんだ。そしたら男、なんて言ったと思う？」

女「…わかんない…」

友「パンツも買えないくらい貧乏なのかと思ったって」

女「ぷっ！あははは。なにそれ～？」

友「笑っちゃうよねぇ。実際二人とも笑っちゃったんだけどさ。そしたら男が自分のことを話してくれてさ…」

女「え？」

友　ﾁﾗｯ

男「いいよ」

友「ん…男んち、小２年の時に親父さんがオンナ作って離婚したんだ。で、その時にさ…」

友「友達の親がね…男んちは変わってるから、もう一緒に遊んじゃだめだって…」

友「それで男、友達居なくなっちゃったんだって」

女「…」

友「だから、今更みんなに嫌われたところで全然平気だからって、友が嫌われるより全然いいじゃんって」

女「…」

男「…そしたら友が恐ろしいくらいに怒ってさ」

友「当たり前じゃん。男、何も悪いことしてないんだよ？そんなの理不尽じゃん」

女「…わかる」

友・男「「え？」」

女「うちも転勤族でしょっちゅう転校してたでしょ？それで都会に引っ越した時にね、田舎者だからって理由で近所の人から…」

友・男「「…」」

女「あ、ごめんね？話、続けて？」

男「あ、ああ」

友「…で、怒ってるあたしに男が言ったんだ。“友も僕から離れたほうがいい”ってさ」

女「…」

友「男さ、自分は他の人とは違うらしいからって…だから友も一緒にいると変わり者だって思われるからってさ…」

友「その時思ったんだ。男は自分のことより人のことを優先する、いいやつなんだってね」

友「…だからさ、あたしは男に友達にしてもらったんだ。あたしも変わってるから、友達にしてほしいってね」

女「そうなんだ…」

友「あたし、男と友達になってすごく良かったって思ってるよ」

友「中学の時に百合だってことがバレたときも、他の友達はみんないなくなっちゃったけどさ、男だけは変わらずに友達でいてくれたし…ね？」

男「だって俺の友達は友しかいないから、しょーがねーじゃん？」

友「ぬかせ！あははは」

女（…あたし、男のこと誤解してのかも…）

～金曜・夜～

女「キャベツと人参と玉ねぎと…お父さん、ジャガイモとってきて」

女父「はいはい」

女「あとは…」

女父「…」

女「ん？どうしたの？」

女父「あ、いや…買い物をしてる姿がお母さんに似てきたなって…」

女「そう？」

女父「ああ。母さんが氏んで、お前をちゃんと育てられるか心配だったけど…お父さんは嬉しい！」ｸﾞｽｯ

女「また？もうそれ聞き飽きたよ…」

めるめるめるめる…

女「あ、メール」Pi

　　To：女
　　From：男
　　SUB：子猫
　　本文：見たいか？

女「え？そ、そりゃあ…」

　　From：女
　　SUB：Re:子猫
　　本文：見たいよ！

女「…送信！」

めるめるめるめる…

　　To：女
　　From：男
　　SUB：明日行く
　　本文：いっしょに行くなら明日○時に駅前に集合

女「明日？…お父さんちょっと」

女父「ん？どうした？」

女「明日ね、友達といっしょに子猫を見に行きたいんだけど…いいかな？」

女父「ああ、いいよ。行ってきなさい…ちなみに友達っていうのはこの間子猫を連れて行った男って言う子？」

女「う、うん…」

女父「そうか！」ﾊﾟｧｧ

女「え？」

女父「いやあ、女ももうお年頃だもんな！彼氏ぐらいできて当然だよな！！」

女「ち、ちがうし！彼氏じゃないし！！」

女父「照れるな照れるな♪よーし、明日はおめかししなきゃな！それから手作り弁当で彼氏のハートをガッチリつかむんだ！！」

女「聞いてないよ、この人…」

女（あれ？そう言えば男子と二人でお出かけって初めてじゃない？…え？なんでドキドキしてるの？）

～翌日・駅前～

男（もう３０分も過ぎてる…なんかあったか？…あ）

女「ごめーん、おまたせー！」

男「遅いぞ！もう３０分も…あれ？」

女「ん？どうしたの？」

男「あ、いや…女…だよな？」

女「はあ？何言ってんの？あたしに決まってるじゃん」

男　ｼﾞｰ

女「な、なによ…」

男「…うん、やっぱり女だ。すっげー可愛いから分からなかったよ」

女「！？ば、ばかあ！！//」ﾍﾟｼﾍﾟｼ

男「痛い、痛いって」

女「恥ずかしくなるようなこと言うからよ！」

男「ははは。と言いながら写メ！」ｶｼｬ

女「ちょっと！何してるのよ！！」

男「友に送ってやろうと思ってな。ははは」

女「そう言えば…なんで友を誘わなかったの？」

男「ああ、あいつは今日も部活なんだ。昨日ボヤいてた」

女「そっか」

男「はは。さ、行こうぜ。荷物かしなよ」

女「あ、ありがとう…」

女（さりげなく優しいんだ…）

～電車の中～

男　ﾁﾗｯ

女「…なに？」

男「いや、今日の女、すっげー可愛い。どうしたんだ？」

女「もう言うな！恥ずかしいってば！！//」

男「化粧か？…けどしてるようには見えないな」

女「化粧はしてないって。髪型と服装変えただけじゃん」

男「なるほど、そのポニテのせいか」

ｶﾞﾀﾝｯ！

女「あっ！」ｸﾞﾗｯ　ﾄﾞﾝ

男「はうあ！」

男（こ…股間に女の手が直撃…！）

女「あ！ごめん！！」

男「そ…そんなに触りたいなら言えよ。こんな手荒なのはもうやめてくれ…」

女「わ、ワザとじゃないから！//」

男「うぅ…」

女「…ごめんね？」

男（うおお！困った顔で謝る女が可愛い！！）

男「だ、大丈夫だって。はは…」

女「…体、震えてるよ？ホントに大丈夫？」ｻｽｻｽ

男「大丈夫。もうすぐ治まるって…」
　　・
　　・
　　・

アナウンス『間もなく○○駅です～』

男「お、次だ。荷物かして」

女「うん」

～○○駅前～

男「ここから歩いて１５分ぐらいのところだから」

女「はーい」

ｷｮﾛｷｮﾛ

男「はは、田舎だろ？」

女「ううん、思ったより建物が多いね」

男「そりゃあな。人が住んでるんだから」

女「そっかー、そうだよね」
　　・
　　・
　　・

女（大分歩いたけど…古い家並みと田んぼと畑と林がチラホラ…）

男「ここだ」

女「あ、うん」

ｶﾞﾗﾗ

男「こんにちわー」

婆「はーい。あらあら、いらっしゃい」

女（あ、優しそうなお婆さんだ…）

男「すみません、今日は…」

婆「いいのよ、遠慮しなくても。…あら？そちらのお譲さんは？」

女「あ、は、初めまして。私、女です」ﾍﾟｺｯ

婆「あらあら、いらっしゃい。可愛らしいお譲さんねぇ。…おや、その荷物は？」

女「あ、これ…着くのはお昼過ぎになるって聞いてたから…男と食べようと思って…お弁当です」

婆「あらあら、しっかりしたお譲さんだねぇ」

女「い、いえ、そんな…」

男「…お婆さん、子猫は…」

婆「ああ、今縁側で主と日向ぼっこしてるわよ」

男「分かりました。…女、行こうぜ」

女「あ、うん。お邪魔します…」

爺「男、来たのか？」

男「あ、はい。お爺さん」

女（わっ！怖そうなお爺さん…）

爺「そうか。今日はゆっくりできるのか？」

男「あ、今日は女も一緒なので８時の電車に乗って帰るつもりです」

爺「そうか。ま、とにかく上がった上がった。…おや？」

女「は、初めまして。女です」ﾍﾟｺｯ

爺「これはこれは…」

男「女、ちょっと待ってて。仏壇に手を合わせてくるから」

女「あ、あたしも」

男「へ？なんで？」

女「あ、こういうのは礼儀だってお父さんが言ってたから」

男「そうなのか？…まいっか」

女・男　ﾅﾑﾅﾑﾅﾑ…

爺「…ほう？」

男「…じゃ、縁側に行くぞ」

女「うん」

爺「お譲さん」

女「は、はい！」

爺「男のこと、よろしくお願いします…」ﾌｶﾌﾞｶ

女「い、いえ！こちらこそよろしくお願いします」ﾌｶﾌﾞｶ

男「ちょ！二人とも！！違うって！！」

女「何が？」ｷｮﾄﾝ

男「何がって…はぁ…もう疲れたよ…」

爺「猫だったな？ほら、あそこで寛いでるぞ」

女「あ、ホントだ！」ﾄﾃﾃﾃ

主　ﾌｷﾞｬｱ！

女「ひっ！」

男「あー、言い忘れてたけどな、主は初対面の人間には警戒するから、むやみに手を出さないほうがいいぞ？」

女「先に言ってよー！」

男「まあまあ。子猫を連れてくるからちょっと待ってな」

男「主、子猫、借りるぞ？」ﾋｮｲ

主　ﾅｰｵ

男「ほら、女」

子猫　ﾐｰ

女「ん、ありがとう…前に見たときより毛艶が良くなってるね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

爺「ああ、飯もよく食べるようになったし、主が毛づくろいやらなんやら、いろいろ面倒見てくれてるみたいだしな」

女「そうなんですね。ありがとう、主」

主　ｺﾞﾛﾝ

男「…縁側に座ろうぜ」

女「うん」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

男「…」

女　ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

男（女、やっぱ可愛いよな…しかし･･･不思議だな。こうして二人で縁側に座ってるって…）

主　ﾅｰｵ

男「ん？主も撫でてほしいのか？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

主　ﾋﾟｮﾝ！　ﾉｿﾉｿ…

子猫　ﾐｰ　ﾋﾟｮﾝ　ﾄﾃﾄﾃﾄﾃ…

女「あ…」

男「…散歩に行ったんだろ」

女「そっか…子猫ちゃん、ここでの生活に馴染んでるんだね…」

男「…俺達も散歩するか？」

女「そうだね」

男「よし！」

ｸﾞｩｩ～

女「…ぷっ」

男「そういや昼飯まだだったな」

女「あ、お弁当…」

男「そういやなんで弁当なんだ？」

女「お父さんが作っていけってうるさいから…」

男「そっか…じゃあ、散歩の途中で食おうぜ」

女「うん！」

～近くの神社～

女「はあ…はあ…まだぁ？」

男「もうすぐそこだって。ほら、手、出して」

女「はあ…はあ…」

男「ほら、着いたよ」

女「はあ…はあ…うわぁ…結構大きな神社だね」

男「ああ、ここに来るのは…２回目だな」

女「へぇ…」

男「…中学の時にさ、ちょっと荒れてな…で、爺さんちに家出してきたときにさ、主の後をついてったらここに来たんだ」

女「そなんだ…」ｷｮﾛｷｮﾛ

男「…なにやってんだ？」

女「あ、主達がいないかなって…」

男「はは。まだ子猫が小さいからここまではこないと思うぞ？」

女「そっか…残念」

男「…女、ちょっと振り返ってみ？」

女「どれ？…うわあ！すごい！！町中が見えるよ！！」

男「ああ、前にここに来たときにこの景色を見てさ、いろんな人が生活してるんだなって思って…そしたら急に母さんの顔が浮かんでさ…」

女「…」

男「ま、それだけなんだけどな」

女「ちょっと！続きがあるのかって思って待ってたのに！」

男「あははは。ごめんごめん。…ここで昼飯にしないか？」

女「うん、いいよ。あ、荷物かして」

男「はい」

女「んーと、はいこれ」

男「お、サンキューな」

女･男「「いただきます」」

ﾊﾟｶｯ

男「おー！すげーな！！これ、女が作ったのか？」

女「そうだよ。お口に合うかな？」

男「ﾓｸﾞﾓｸﾞ…ん！すげーうまい！！」

女「ほ、ほんと？」

男「ああ、びっくりだな。女がこんなに料理がうまいなんてさ」

女「ちょっと。それどういう意味？」

男「いや、今の女は見た目もかわいいし、生活感？って言うのがないから、イメージ的にな？」

女「これでも家事全般できますよーだ。…うち、お母さんが小さいころに氏んじゃったからさ…」

男「あ…ごめん」

女「ううん、いいの」

男「でも、冗談抜きでいい嫁さんになれるよ。うん」

女「…え？そうかな？えへへ…」
　　・
　　・
　　・

男「…そろそろ戻るか？」

女「そうだね、子猫ちゃん、帰ってきてるかな？」

男「ははっ、荷物かして」

女「はい、お願い」

男「階段、足元気をつけろよ？」

女「子供じゃないですよーだ。…あっ！」ｽﾞﾙｯ

男「やべっ！」ｶﾞｼｯ

女・男「「…」」

男「…大丈夫か？」

女「う、うん…ありがと」

男（ん？この柔らかいものは…）ﾓﾐﾓﾐ

女「！？きゃああ！！！」ﾄﾞﾝｯ

男「…え？」ｸﾞﾗｯ

女「あ」

男「…うわああああぁぁぁぁ…」ｺﾞﾛｺﾞﾛｺﾞﾛ…

女「…えっとぉ…と、とりあえず階段降りなきゃ」

～祖父母の家～

男「いてて…」

婆「はい、これでおしまい」

女「ご、ごめんね？あたしが落ちそうになったのを助けてくれたのに、突き飛ばしちゃって…」

婆「大丈夫よぉ。擦り傷とうち身だけだからすぐに治るわよ」ﾆｺｯ

男「…すみません、お婆さん」

婆「いいのいいの。あ、そうだ」

婆「晩御飯の支度の途中なんだけど、食べるわよね？」

男「え？いえ…今日は女が居るから早めに…」
女「あ、いただけるんですか？いいんですか？」

婆「いいわよ。食事はにぎやかなほうが楽しいし。ね？」

女「うわあ、ありがとうございます」ﾍﾟｺｯ

男「おい、女…」

女「せっかく準備してくれてるのに、断るほうが失礼だよ。ね？」ﾆｺｯ

男（くそっ、女かがわいく見えちまう！しかもさっきの手の感触…あ、いかん…）

ｺﾞﾛﾝ

女「どうしたの？」

男「ちょっと寝る」

女「そっか。じゃあ、あたし、お婆さんのお手伝いしてくるね」ﾄﾀﾀﾀ

男（おい倅よ！今のうちに静まれ！！）
　　・
　　・
　　・

女「男ぉ、御飯できたよー」

男　ｚｚｚ…

女「あ、寝ちゃってる…」

女（やっぱり男はいいやつだなぁ）

女「…さっきはありがと」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

男「ん…ｚｚｚ…」

女（よく寝てるなぁ…あ、そうだ）

ｽｯ

女（助けてくれたんだし…お礼…ほっぺに…）

男　ｺﾞﾛﾝ

女「ん！」

男　ｚｚｚ…

女（ど…どうしよ…唇にしちゃった…//）ﾄﾞｷﾄﾞｷ…

男　ｚｚｚ…

女（…ま、しょうがない…か）

男「…ん…ん？…女か？」

ﾄﾞｷｯ

女「う、うん…//」

男「…？どうした？顔真っ赤だぞ？」

女「な、なんでもない！あ、御飯できたよ！！」

男「お、そうか」ﾋｮｺ

女（ばれて…ないみたい…）ﾎｯ

～帰りの電車～

男「遅くなったな。悪かった」

女「ううん、楽しかったよ？」ﾆｺｯ

男「そうか？あんな田舎のどこが楽しかったんだ？」

女「…あたしね、しょっちゅう転校しててさ、こんな風に誰かと出かけることなんてなかったの」

女「だからね、今日は誘ってもらえてすごく嬉しかったんだよ？もう、ドキドキして寝られないくらい！」

男「ははは。なんだそりゃ？遠足前日の子供か？」

女「あははは。そうかもね。遠足自体、行ったことないんだけどね」

男「そっか…」

女「…ね！また連れてってよ！もう一度あの神社にも行ってみたいし。ね？」

男「…もう突き飛ばさないって約束するんならな」

女「うん！ありがとう、男♪」ﾆｺｯ

男（…やっぱ可愛いなぁ…なんか胸もドキドキするし…）

女（男、やっぱり優しい…）

ｷﾞｭｯ

男「へ？」

女「駅に着いたら起してね？」

ｺﾃﾝ

女「…ｽｩ…ｽｩ…」

男（早っ！しかも女のいい匂いが！ヤバいヤバい！倅よ静まれい！）

～週明け・学校～

女「でね？みんなで晩御飯を食べて、帰ったの」

友「いいなぁ…まだ男のお爺さんちに行ったことない…」

女「あははは。また機会があったらいっしょに行こうよ。ね？」

友「そだね」

友（女さん、すごく楽しそうに話してた…何かあったのかも…）

友「女さん」

女「なあに？」ﾆｺｯ

友（あー…、いい顔してる…野暮なことはしないでおこう）

友「ううん、なんでもない」

女「そう？変な友。あ、そうだ！」

友「なに？」

女「友、あたしのこと、女さんって呼ぶのやめようよ。ね？」

女「今度からは女って呼び捨てでいいから」ﾆｺｯ

友「…そうだね。ありがと」ﾆｺｯ

～昼休み～

ｶﾞﾗﾗ

男「おーい、飯にしようぜー」

友「…ぷ…あはははは！！！何それ～！！！包帯と絆創膏だらけじゃん！！」

女　ｸｽｯ

男「何って…しょーがねーじゃん、怪我してんだし…」

男「てか女まで笑うことないだろ！？お前のせいなんだし」

女ごめんごめん。友が笑うからつられちゃって…ぷ」

友「まあまあ、名誉の負傷じゃん。堂々としてなよ。な？」

男「ったく…屋上行こうぜ？」

女・友「「はーい」」

～屋上～

一同「「「いただきまーす」」」

男「お、女の弁当のミートボール、旨そうじゃん」

女「あ、食べる？はい」

男「お、さんきゅー。ん…うん、うまい。代わりにこの焼きそばパンを一口あげよう」

女「あ、ありがとう」

友（いい雰囲気だね…やっぱりなんかあったんじゃない？）

男「ん？友、どうしたんだ？」

友「ん？いや、なんでも？」

女「そう？あ、男、それからさ～～～」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

男「そうか？ま、女がそう言うなら～～～」ｸｼｬｯ

友（あの二人…明らかにスキンシップが増えてるわ…ふむふむ）
　　・
　　・
　　・

男「さて、そろそろ教室に戻るか」

女「あ、もうこんな時間？早いよねー」

友「…さ、戻ろう」

～教室～

友「あ、女、ちょっとちょっと」

女「なあに？」

友『女、男のこと好きなんじゃない？』ｺｿｺｿ

女　ﾄﾞｷﾝ！

友『さっきさ、すごくいい雰囲気だったじゃん。休みの間に何があったか知らないけどさ』ｺｿｺｿ

女「え？や！あの…」

友「いいじゃん。男はいい奴だもん。あたしの親友だけあってね♪」

女「あぅ…//」

友「なんなら仲介しよっか？」

女「ちょ！ちょっとまって！！」

友「なんでよ。心配だってーの？」

女「ちがっ…違うこともないか…」

友「信用無いのね…」

女「そ、そうじゃなくて！友は信用してます！！」

友「じゃあ何が心配なの？」

女「う、うん…まだ自分でも分かんないんだ…ホントに男のことが好きなのか…」

友「へ？」

女「そ、それにね？お、男の気持ちが…」

友「あー…うん。わかった。そっちは男に聞いとくわ」

女「え？いやあのっ！」

友「女はさ、その気持ちがホントなのか、ちゃんと整理してなよ」

女「あぅ…//」

友「ま、泥舟に乗った気分で待ってなって！あははは」

女（泥舟って…沈むだけじゃん…）

～夜～

ぴろぴろぴろ…

男「ん？…友からか」Pi

男「もしもし？」

友『あ、男？寝てた？』

男「いや、勉強してたけど。なんかあったか？」

友『いや、聞きたいことがあってな』

男「聞きたいこと？スリーサイズか？」

友『そんなもんどうでもいいわ。あのさ、女のこと、どう思ってる？』

男「どうって…可愛いとは思うけど…」

友『それだけ？』

男「ああ、あとは結構天然だったり…」

友『ホント―に、それだけ？』

男「…」

友『…聞きたいこと、わかるよね？』

男「ああ…どうしても答えなきゃだめか？」

友『…男、これはあんただけの話じゃない。女も悩んでるんだよ？』

男「女が？」

友『そう。だから真面目に答えてよ』

男「…女ってさ、かわいいよな？家事もできるし…天然のとこもあるけどさ」

友『うん』

男「…俺はイケメンでもないし、変人って言われてて、いいとこ無しじゃん？だからさ…自身がないんだ」

友『自信？』

男「だってさ、俺なんかよりい男はいくらでもいるだろ？だから…」

友『こらっ！』

男「な、なんだよ、いきなり大声出すなよ。びっくりするじゃねーか…」

友『情けないこと言うからだよ！男、あんたにはいいところがちゃんとある！』

友『確かに顔はイケメンじゃないし、バカみたいなこともするけど、まじめで優しいし、やる時はちゃんとやってくれる、困ったときには頼りいなるいいオトコだよ！！』

男「…」

友『…ホントにもう！あたしが百合じゃなかったらほっとかないよ？』

男「…友」

友『あんまりグダグダ言ってると愛想尽かすよ？もっと自信を持ちなって。な？』

男「…ああ」

友『じゃあ、いいね？あんたは十分いい男なんだから、自信を持つんだよ？じゃあね。おやすみ―』

ﾌﾟｰｯ　ﾌﾟｰｯ　ﾌﾟｰｯ　

男「…ありがとう、友」

～数日後・学校～

女「次は…数学…と」ｺﾞｿｺﾞｿ

同男「女さん、今日もかわいいねぇ♪」

女「え？あ、あの！いえ…//」

同男「どう？今日の帰りにさ、俺らとつきあわね？」

女「え？ええー？」

同男「ホントは二人っきりがいいんだけどさぁ、いきなり二人っきりだと引いちゃうでしょ？」

女「あ、あの…」

同男「ま、今日言ってすぐにってのは無理だよね。だから都合のいい時があったら教えてよ。ね？」

女「…」

同男「じゃ、待ってるからね～♪」ﾉｼ

友（男に電話…いや、やめとこう…これは二人が接近するチャンかもしれない…）

～放課後～

男「おまたー…どうした？」

女「え？」

男「なんか暗いぞ？何かあったのか？」

ﾄﾞｷｯ

女「う、ううん、なんでもないよ？」ﾆｺｯ

男（無理してるな…作り笑いがﾋｸﾋｸしてる…よし！）

男「女、ちょっと付き合ってくれっか？」

ﾄﾞｷｯ

女「え？そ、そんな！！いきなり付き合ってくれだなんて…//」

男「はあ？…いやいや！そうじゃないから！！ゲーセンに一緒に行こうっていう話だから！！」

女「…え？げーせん？…あ、ゲーセンね！あはははは。いいよ」

男（女…一体どうしたんだ？）

～ゲーセン～

男「…しゃあ！拓海ブッチしたぜ！」

女「すごーい！運転上手じゃん！！」

男「はっはっは。まっかせっなさーい！」
　　・
　　・
　　・
女「…あー！またダメだー！！」

男「あ、あの…女さん？もうやめたほうが…」

女「だってあの人形、可愛いじゃん！絶対持って帰りたいもん！！」

男「わかったわかった。とってやるから代わってみ？」

女「いけー！やれー！！」

男「うるさいっての！」
　　・
　　・
　　・

女「あー、疲れたー♪」

男「はは。女も楽しんでくれたようで。ほれ、ジュース」

女「…えへへ、ありがと」

男「いえいえどういたしまして…あ、そうだ。これ…」

女「え？なに？…あ」

男「お婆さんがケータイ買った記念に送ってきたんだ。子猫と主の写真」

女「…大分大きくなったね。足のソックスもはっきりしてきたし」

男「ああ…」

女「どうしたの？」

男「あ、いや…あのとき女が子猫を助けなかったらさ、今こうやって話してることもなかったのかな…ってな？」

女「そうだね…」

男「まったく…子猫に感謝だな」ﾌｯ

ﾄﾞｷﾝ！

男「ん？どうした？」

女「う、ううん？なんでもないよ？」ﾆｺｯ

女（やっと分かった…）

女（悩むことなかったんだ）

女（男と一緒だとこんなに楽しいんだもん）

女（あたし、やっぱりこの人が好きなんだな…）

～帰り道～

女「はぁ～、楽しかったぁ♪」

男「はは、そりゃよかった。さっきは元気がないから心配してたんだぞ？」

女「ん…実はさ…」

男「お？真面目な話か？」

女「うん…今日さ、同男君がいっしょに帰らないかって誘ってくれて…で、どうしようか迷ってたんだけどさ」

男「…いいじゃん、一緒に帰ればさ」

女「え？」

男「女みたいにかわいいオンナが、彼氏もいないってのは勿体無いって」

女「なんで？なんでそんなこと言うのよ！」

男「同男ならイケメンだしさ」

女「だから！」

男「俺なんかといるより、よっぽどいいんじゃね？」

女「違うってば！！」

男「なに怒ってんだ？」

女「だって！！」

男「なんだよ」

女「…だって…あたしはお、男が…好きなんだもん…」

男「！？」

女「…好きに…なっちゃったんだもん…」

女・男「「……………」」

男「…なあ、女」

女「はい…」

男「…お前と一緒に居るとき、俺はふざけてばっかりだよな」

女「うん…」

男「で、結局言い合いになってさ」

女　ｸﾞｽｯ

男「いつもそんななのにさ…どこがいいわけ？」

女「…あたし…こんなに言いたいこといえる人って…初めてなの…」

女「…だってしょっちゅう転校してたから…仲良くなっても上辺だけだったりしてさ…」

男「…」

女「男はさ…最初から…ちゃんと自分の意見をあたしにぶつけてきたじゃん…」

男「…」

女「それに…男は優しいし…」

男「そんなことない」

女「ううん…初めて会ったときから…あたしを気遣ってさ…」

女「子猫の時だって…メアド交換した時だって…階段から落ちそうになった時だって…」

女「…いつも男が気を使ってさ…助けてくれたじゃん…」

女「初めてなんだよ？…こんなに優しくされたのはさ…」

男「…」

女「…だからだよ…」

女「…だから一緒に居たいって…ずっと居たいって…」

男「…あー…あ゛―！」ﾎﾞﾘﾎﾞﾘ

女「…ゴメン…迷惑だよね…」

男「そうじゃなくてな…あーもー！」

ｸﾞｲ

女「え？ん！」

ﾁｭｯ

男「俺も女が好きだ！…これでいいか？」

女「…う」

男「う？」

女「うわぁああああん！！！」

男「な、なんだ！だめなのか！？」

女「そうじゃない！ﾋｯｸ…そうじゃないの…うれしいの！！」

男「そ、そうか！」

女「ｸﾞｽｯ…ありがとう、男」

男「俺のほうこそ、ありがとう」

～その夜～

友『そっか！やったな！！』

男「ああ、友にも心配かけたな」

友『まったくだよ。ま、これであたしも肩の荷が下りたわ』

男「…すまなかった、友」

友『いいっていいって。二人とも大事な友達じゃん。ね？』

男「ああ、そうだな」

友『じゃあ、そろそろ切るよ？明日は朝連があるからさ』

男「ありがとな。おやすみ」

友『おやすみ～』Pi

男「…さて、と」

Pi Pi Pi…

男「…あ、もしもし？女？いや、なんでもないんだけど～～～」
　　・
　　・
　　・

～２ヶ月後～

ｶﾞﾗﾗ

女「男ー、一緒に帰ろ？」

男「あ、わるい。バイトなんだ」

女「ええー！？またあ？」

男「ああ、ごめんな？またバイトが休みの時にいっしょに帰ろう？な？」

女「…うん、わかった！バイト、頑張ってね？」

男「ああ、じゃあな」ﾉｼ

女「…いってらっしゃい…」ﾉｼ

友「…あ、女、男は？」

女「あ、友…バイトに行っちゃった…」

友「はあ？」

女「…男、頑張ってるから…応援しなきゃね！」ﾆｺｯ

友「女…作り笑いが痛々しいよ。何やってんよ男は！せっかく女が迎えに来てるって言うのに…あんたたち、最近ちゃんと話してる？」

女「う、うん…夜になったらケータイで話してるよ？」

友「…今日はさ、部活が休みだからいっしょに帰ろ？」

女「…うん！」

～帰り道～

友「ったく、男の奴…女を一人っきりで帰らせようなんて…」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

女「いいの、男は男で頑張ってくれてるし」

友「何をがんばってるのさ」

女「例えば…流行りの服とかコーディネートとかを雑誌で研究したり…それでバイトを増やして服を買うんだって…」

友「はあ？」

女「あ、あとね？鞄の中が見えた時にさ、デートプランとかプレゼントとかの雑誌が見えたこともあるし…」

友「はあ…女さ、我慢するのもいいけど、もっと気持ちを出したほうがいいと思うよ？」

女「で、でも…男、あたしのために頑張ってくれてるんだし…あたしが我がまま言うのはずるいと思うんだ…」

友「でもっ！」

女「いいの、あたし、待ってるからさ」ﾆｺｯ

友「女…」

友（こういう場合、どうしたらいいんだろ…）

～夜～

てるてるてるてる…

男「お、友から電話？…もしもし？」

友『おとこぉ！！！』

男「おわっ！声でかすぎ！落ち着け。な？」

友『落ち着いてるわ！あんた、今日も女を一人で帰そうとしてたよね！』

男「あ、ああ。今日もバイトだったから」

友『あんたねえ！バイトと女、どっちが大切なのよ！！』

男「そりゃあ、女だけど…」

友『だったら！なんで女に寂しい思いさせてんのよ！！』

男「…え？」

友『あんたが雑誌とかでかっこいい男になろうとしてるのはわかるよ？でもね、女をほったらかしにしてるなんて…何考えてんのか答えなさい！！』

男「…」

友『…どうした』

男「…あのさ…」

友『おう！』

男「…俺さ、変人だって言われてるじゃん？」

友『…お、おう』

男「だからさ、このままだと女まで変人扱いされるじゃん？」

友『…ぉぅ…』

男「だからさ、誰が見てもいいオトコに見られるように頑張ってるんだ」

友『…』

男「雑誌を見てさ、服を買ったり、おしゃれな店に二人で行くのも金がかかるじゃん？」

友『…うん』

男「服だけでも結構金がかかるんだぜ？バイトもさ、今までやってたシフトじゃ全然金が足りねーんだもん…」

男「だからさ、女には悪いんだけど、もう少し我慢してほしいんだ…」

友『…男の考えてることは分かった。でもさ、好きな者同士、一緒に居るのがあたりまえだと思うよ？』

男「だからさ、この先ずっと一緒に居るために、今頑張ってるんじゃん」

友『あ…』

男「じゃあな。今日もバイトで疲れてるんだ。おやすみ、友」

友「…」

友（この二人…何かが根本からずれてる…その何かが分かれば…）

～数日後・友の家の夕食時～

友（いくら考えても分からない…どうすればあの二人を…）

友父「あ、母さん。そろそろ秋物の服、準備しといて」

友母「そうねぇ、着れそうな服、見ておくわ。それだけじゃ足りないと思うから週末にでも一緒に買いに行きましょ♪」

友父「ありがと、母さん♪」

友母「どういたしまして」

友（お父さん…お母さんに頼りっぱなし…）

友母「あ、お父さん」

友父「ん？」

友母「ちょっとこれ見て？」

友父「なんだ？」

友母「ゲルマニウム美顔ローラー。の品でね、半額なの♪」

友父「…￥5,000円か。いいんじゃない？」

友母「ありがとー、お父さん！お酌するわね♪」

友父「おーっとっとっとっと」

友（お母さん…お父さんのゴキゲンとって…ん？）

友父「じゃあ母さんも♪」

友母「じゃあ、遠慮なく。おーっとっとっとっと」

友「…」

友母・友父「「かんぱーい！」」

友「…」

友母「うふふ。…あら？友、どうしたの？」

友「…そっか」

友父「え？」

友「…これだ！！」

友母・友父　ﾋﾞｸｯ

～翌日・マ○ドナルド～

友「二人とも、今日は急に呼び出してごめんね？」

男「まあ、友が大事な話があるって言うからな」

女「うん。なんか切羽詰まった感じだったしね」

友「うん…ごめんね？ところでさ、あんたたち、最近二人でデートした？」

男「いや、バイトが忙しくてな」

女「うん…あ！でも、昨日は一緒に本屋に行ったよ？」

友「本屋？」

男「ああ、学校帰りにな。ファッション雑誌を買おうと思ってさ」

友「…で、そのあとは？」

男「バイトに行ったけど？」

友「女は？」

女「あたしは晩御飯の買い物して帰ったよ？」

友「晩御飯の？」

女「うん。…あ、友には言ってなかったっけ？うち、父子家庭なんだ」

友「やっぱりそうか…あのさ、これからお節介な話をするよ？」

友「たぶん腹が立つことも言うかもしれない。それでも最後まで、我慢して聞いてほしい」

男「…友がそこまで言うって言うんなら…うん」

女「…分かった」

友「ありがと…それじゃあ、まず、男と女の今の状態はさ、あたしから見ても異常なんだ」

男「いきなりだな」

友「あんまり余計なことは言いたくないからね。で、その原因をあたしなりに考えてみたんだけどさ…」

友「二人とも、考え過ぎなんだよ」

男「考えすぎ？」

友「そう。二人とも、相手のことをね」

男「なんでだよ。好きな相手のことを思いやって、何が悪いんだよ」

女「うん、あたしもそう思う」

友「黙って聞いて。さっきあたしは考え過ぎだって言ったけど、男は“思いやって”って言ったよね？そこがまず問題なんだ」

友「あたしが思うにさ、二人とも力が入りすぎてるんだと思う。自分ががんばらなきゃってさ。もっと自然体でないと長続きしないよ？」

女・男「「！？」」

友「…女はさ、自然体の男を好きになった。違う？」

女「…うん」

男「男もそうでしょ？普段から言いたいことを言い合える女を好きになった」

男「…そうだな」

友「おっけー。じゃあ今の二人はどう？お互いがお互いを好きになったときと比べてさ？」

女・男「「…」」

友「…男、女はさ、前の自然体の男が好きだったんだ。だから無理していいオトコになる必要はないんだよ」

友「だってさ、女が惚れた時点で男はもういいオトコだったんだからさ」

男「けど、それじゃあ俺は変人のままじゃねーか！それじゃ女がかわいそうだろ！！」

友「ほほう？“いいオトコになる”ことを理由に女をほったらかしにしてるやつが、よく言うね？」

男「ぐっ…」

友「…男、それって本末転倒じゃない？よく考えて」

男「…」

友「さて、次は女だよ」

女「は、はい！」

友「女、あんたはもっと自分の気持ちを男に伝えたほうがいいよ」

女「え？でも…」

友「なに？」

女「…男はあたしのために色々頑張ってくれてるんだから…それを邪魔したくないじゃん…」

友「…女、それってさ、全然男のためになってないよ？」

女「え？」

友「そんなに我慢してるとさ、男のほうが女と距離をとっちゃうよ？」

女「！？」

友「最悪、別れちゃうかもしれない…それでもいいの？」

女「…」

友「…これは言い辛いことなんだけどさ…二人とも、ドラマや小説・漫画の読み過ぎなんじゃない？」

女・男「「え？」」

友「実際の恋愛ってさ、もっと泥臭いもんなんだ。ドラマや小説に書かれてる恋愛ストーリーなんてさ、ただのおとぎ話みたいなもんなんだよ？」

友「そんなおとぎ話を理想の恋愛と勘違いしたら、うまくいくわけないでしょ？」

男「…そんなことよく言うな。友だって恋愛なんかしたことないくせに！」

友「言えるさ。あたしはずっと両親を見てきたからね」

女・男「「！！」」

友「…気分を害するだろうから、ホントは言いたくなかったんだけど…二人とも、身近に同性の大人が居なかったからそうなったんじゃないかな？」

女・男「「…」」

友「…あたしはね、ずっと両親を見てきたから、恋愛をして結婚して…って言うのも、ある程度はわかるよ？」

友「うちのお父さん、服や靴を選ぶときはさ、お母さんに相談してる。男、なんでか分かる？」

男「いや…」

友「…それはね、お父さんは、お母さんがかっこいいと思うオトコになろうとしてるからだよ？」

男「！」

友「…思うんだけどさ、男がかっこいいオトコになろうとしていることは間違いじゃないんだ。だけどさ、それって誰にとってかっこいいことが前提なの？」

男「それは…女がかっこいいと思うオトコになろうと…」

友「だったらさ、雑誌なんかじゃなくて、女の意見を真っ先に聞くべきじゃない？」

男「…」

友「それから女」

女「は、はい！」

友「女はさ、男に何をしてほしい？」

女「…え？」

友「あたしのお母さんさ、何か欲しい時とかどこか行きたい時って、お父さんにおねだりするんだよ」

友「まったく…いい年をした大人がだよ？娘の前でさ、恥ずかしげもなく甘えた声出してビール注いだりなんかしてさ…」

女「…」

友「女はさ、男が自分のために頑張ってるんだから我慢してるって言ってたけどさ、そんなことしたって男は不安になるだけだよ？」

女「え？そんな…」

男「…」

友「男にしてみたらさ、女が何にも言わないから、自分のやってることがいいのかどうか、判断できないと思う」

友「そしてなにをしたら女が喜ぶのか分からなくなって…男は女と距離を置くようになるよ？」

友「…だからさ、女はもっと男に自分が思ってることを言って甘えなきゃ。ね？」

女「…でも、どうやって…」

友「さっき言ったでしょ？服を一緒に選んだり、行きたいところがあったら甘えてみたり…そう言うことだよ」

女「…わかった」

男「…確かに、そうやって女が甘えてくれたほうが、俺も女が何考えてるか分かって動きやすいもんな」

友「よかったぁ！！分かってくれたんだ！！」

友「…で、まだ言いたいことがあるんだけど…続けていいかな？」

女・男　ｺｸｯ

友「じゃあ…と言っても、言いたいことはあと少しなんだけどね」

友「男、あんたは女を泣かせない努力をしなさい。そして女、あんたは男に甘える強さを持ちなさい」

男「泣かせない努力…」

女「甘える強さ…」

友「そう。もしそれができないんならさ、二人で協力すればいいんだよ。黙っていても気持ちは伝わらない。だからさ、言いたいことは言おうよ。そしてお互いに納得するまで話し合えばいいじゃん。ね？」

女・男「「…」」

友「…どうかな？」

男「…そうだな。女、寂しい思いさせて悪かった…ごめん」

女「ううん、あたしのほうこそ…男に気持ちを伝えなくてごめんなさい」

友「…よし！じゃあ男！！改めて女に告白しなさい！！」

男「え？…ええーっ！！」

友「女に寂しい思いをさせた罰です！…これぐらいで済んでありがたく思いなさいよ？」

男「…わかったよ…女？」

女「は、はい！」

男「…俺はお前が好きだ！」

女「あ、あたしも！…男が好きです！！」

友「やれやれだわ…」

男「…女、好きになってくれてありがとう」

女「…うん」

男「けど…本当にこんな俺でいいのか？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

女「………………やだ！！」

男「…へ？」

女「だ、だから！」

女「あ、あたしが！…男をいいオトコにするんだもん！！」

男「お、おう！頼むぞ？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

女「…うん！だから…ずっと一緒にいようね？」

男「ああ、ずっと一緒だ」

友「やれやれ…手のかかる二人だわ…」

男「友…」

友「ん？」

男「ありがとな」

女「ありがとう、友」

友「…ん」

【エピローグ】

～３年後～

女「よっと…座席確保！あ、お茶とってこなきゃ」

ﾓﾌﾞ男「あ、女さーん。ここ空いてるよ。一緒に食べようよー」

女「あははー、いつも誘ってくれてありがとー。でも先客が居るから、またいつかね♪」

ﾀﾀﾀﾀ…

友「おまたせー、いやー、あの教授、時間が来てもなかなか終わってくれなくてさ」

女「あたしもさっき来たところだよ。今お茶とって来たところなんだ」

友「そうなんだ。じゃ、あたしも食べ物とって来るから、女はここで席番してて」

女「はーい」

後輩女「あ、あの…女さん、ご一緒しても…いいですか？」

女「あ、いいよ」

後輩女「ありがとうございますー♪」

女「いえいえ…あの」

後輩女「はい？」

女「ごめん…どこかで会ったことあったっけ？」

後輩女「直接お話しするのは初めてですよ」

女「そなんだ…じゃあｓ」
友「おまたせーって、あれ？」

後輩女「あ！友さん！！」

友「えっとぉ…誰？」

後輩女「あ、後輩女です。よろしくお願いします！」ﾍﾟｺｯ

友「あ、ああ…」

女「え？友の知り合いじゃないの？」

友「あれ？女の知り合いじゃ…」

後輩女「あ、すみません。あたし…友さんに憧れてて…」

友「…はい？」

女「…つかぬことを伺いますが…友がその…アレだと知ってて？」

後輩女「はい！だからその…」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

友「…女、こういう場合、どうしたらいいと思う？」

女「うーん、受け入れるか、拒否するか、はっきりしたほうがいいんじゃない？」

友「え？そんなこと言われても…うーん…」

後輩女「あたしじゃ…ダメですか？」ｳﾙｳﾙ

友「あ、いや、そうじゃないけど…だってまだあんたのこと良く知らないし…」

後輩女「だ、だから！お互いよく知るために勇気を出してこうやって…」

友「う、うん。気持ちは分かった。とりあえず…食べようよ。ね？」

後輩女「はい！」

女「友、モてるね～」ﾆﾔﾆﾔ

友「ば、バカ！！//」

男「遅くなった、わるいわるい。教授に荷物運びやらされてさ…何やってんだ？」

友「！な、なんでもないって！あはは…」

後輩女「あははは♪」

男「…女、どうなってるんだ？」

女「さあ？あははは」
　　・
　　・
　　・

～帰り道～

男「ぶわはははは！！！」

友「男！笑いすぎ！！」

男「あー…わるいわるい。そっかー、友に彼女か」

友「い、いや、まだ付き合うって決めたわけじゃないけど…」

男「いーんじゃね？なあ、女？」

女「そうだね、良かったじゃん」

友「…いいのだろうか…」

男「あ、そうだ。女、どこの店に行くんだっけ？」

女「とりあえずはユ○クロに行ってみようよ。そこで男に合う服がなかったらショッピングモールの専門店街にいこ♪」

男「で、そのあとは映画か？」

女「うん！」

友「…あんたら、ホント馬鹿ップルだねぇ…」

男「なんだよ、友がそうしろって言ったんじゃん」

友「いや、そうだけどさ…」

女「ふふっ、今、すごく幸せだよ♪ありがと、友」

友「あー…いや…」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ…

男「友も一緒に来るか？」

友「遠慮しとくわ。最近忙しくてさ、道着やらなんやら、洗濯物がいっぱい溜まってて…一人暮らしは辛いね！」

女「だから遠慮せずに持ってくればいいのに」

男「そうだぞ？俺達のアパートまで持ってこいよ。二人分洗うのも３人分洗うのも変わりないもんな」

女「男、それ、あたしの台詞なんだけど？」ｼﾞﾄｰ

男「えっと…ごめんなさい」

女「よろしい」

友「はは、もしどうにもならないようなら持っていくわ。じゃあな」ﾉｼ

女・男「「また明日―」」ﾉｼﾉｼ

男「…二人っきりになったし、二人乗りしていくか？」

　　--いつも相手を思い遣っていた

女「え？いいの？」

　　--相手のために出来ることを考えていた

男「何遠慮してんだよ」

　　--したいことがあっても相手のために我慢していた

女「だってさ、いつもは疲れるから嫌だって…」

　　--いつしかそれがあたりまえだと思っていた

男「たまにはいいかなと思ってさ」

　　--相手が言わないのに自分が言うのは我儘だと思っていた

女「…うん！」

　　--だけど

男「しっかり掴まれよ？」

　　--言わなきゃ伝わらないこと

女「…密着させて何する気？」ｸｽｸｽ

　　--傍にいないとダメなこと

男「な！なにもしないって！！」

　　--大事な人に甘えることた

女「はいはい。…乗ったよ」

　　--大事な人とずっと触れあっていること

男「…なあ」

　　--大事な人に相談すること

女「どうしたの？」

　　--そうやって一緒にすることが大切なんだと知った

男「…女、いいたことがあるんだ」

　　--それが恋愛だと知った

女「なあに？」

　　--だから…


男「女に出会えてよかった」

女「…あたしも♪」


～END～

これで終わりです
このような駄文に付き合っていただき、ありがとうございます

>>188-189　ありがとうございます
今回は”付き合いだしたら終わりじゃないよね？”って言うのを書こうと思ったんですが
難しいですね…

乙！おもしろかった(´；ω；｀)

>>1です
ちょこっとおまけwww

>>178から

～放課後・校門～

男「あ、女。ごめんごめん」

女「いいの。待ってる時間も楽しいよ？」ﾆｺｯ

男（お、女の破壊力が増してる！平常心平常心…）

男「そっか、じゃ、帰るか？」

女「うん！」

ﾃｸﾃｸﾃｸ…

女　ﾁﾗｯ　ﾁﾗｯ

男（女、さっきからこっちをちらちら見てるな…）

男「…なに？」

女「あ！うん…ないでもない」

男「いいたいことがあったら、遠慮なく言ってくれよ？」

女「う、うん。じゃあ…手」

男「分かった」

ｷﾞｭｯ

女「あ」

男「これでいいか？」ﾆｺｯ

女「うん！ありがとう、男！！」

男「はは。可愛いな、女は」

女「ば、バカぁ…//」

女（まだぎこちないけど…甘えるのって照れくさくって、でも嬉しい！ありがとう、男）

～デート中～

男（そろそろ30分か…そろそろ…あ）

女「あ、男ー」ﾀﾀﾀﾀ

男（おおう！今日もかわいいじゃねーか！！）

女「お待たせー…」

男「おそいぞ。…どうした？」

女「ううん…男、その服…」

男「ん？ああ、雑誌に載ってたのを参考にしたんだけど…」

女「…うん、いい服なのはわかるよ？」

男「…変か？」

女「そ、そんなことない…かな？」

男「…変…か。ごめんな？」

女「ううん、そんなことないよ！あはは…」

男「…女、正直に言ってくれ。俺はお前がかっこいいと思うオトコになりたい。だから…な？」

女…うん。正直に言うとね、男にはあんまり…」

男「そっか…」

女「…ねえ、ユ○クロいかない？」

男「へ？今日は女の服を見にいくんだろ？」

女「あたしの服も見るよ？でも、その前に男の服を見に行こうよ。ね？」

男「…いいのか？」

女「全然平気だよ」ﾆｺｯ

男「そっか…ありがとな、女。やっぱ女を好きになってよかったよ」ﾆｶｯ

女「ばっ！バカっ！！//」

男（やっぱりいいオンナだ、女は。俺は幸せもんだな♪）


～【イチャイチャ編１】END～

【おまけ２】

エピローグの後

～学食～

女「…」

男「…どうした？」

女「え？」

男「いや、ボーっとしてたから…」

女「あ、考え事してたの」

男「そっか。それならいいんだけどさ…最近、なんかボーっとしてることが多いぞ？」

女「ごめんごめん、気をつけるよ」ﾆｺｯ

男「気になることがあるんだったら話してくれよ。仮にも俺は彼氏なんだしさ」

女「男は仮じゃないよ？本物の彼氏だもん」ｷﾞｭｯ

ﾄﾞｷｯ

男「そ、そうか？」

女「…男、将来のことって考えたこと…ある？」

男「将来のこと？」

女「そう。…どう？」

男「どうって…子供はオトコとオンナの二人は欲しいな～とか？」

女「飛躍しすぎだよ」ｸｽｯ

男「じゃあ…結婚式には爺さんと婆さんを呼んで母さんと和解させたい…とか？」

女「それも大事だけど、そうじゃなくてさ…男は卒業したら、どんな仕事をしたいの？」

男「…へ？」

女「…あたしは弁護士になりたい。男は？」

男「え？…その…ごめん、正直そこまで考えてなかった…」

男「まだ２回生だし、来年になってから考えようと思ってたからさ…」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

女「もう、しょうがないなぁ」ｸｽｯ

女「あたしはさ、最初から弁護士になるつもりで法学部にいったんだけど、男は文学部でしょ？だから教員免許を取って先生になるんだと思ってたんだけどなぁ」ﾁﾗｯ

男「ま、まあ、そのつもりではいたけどさ…」

男（言えない…法学部が無理だったから友と同じ文学部を受けたなんて…）

女「そっか。じゃあ、これからいろいろと考えなきゃね」ﾆｺｯ

男（うっ…その笑顔…罪悪感が…）

男「い、いろいろって？」

女「今一緒に暮らしてるよね？で、家事は殆んどあたしがしてるじゃない？」

男「うん」

女「でね？あたしが司法試験に合格したらさ、司法修習があってその後はどこかの弁護士事務所に就職するとするじゃない？」

男「うんうん」

女「ここで質問です！そのとき男は何をしてるでしょう？」

男「え？そりゃあ…仕事してると思うけど？」

女「んー、半分正解…かな？」

女「あのね、順調に行けばその頃男は先生になってると思う」

男「う、うん」

女「だからね、二人とも仕事をしてて、いつ結婚する？いつ子供を作る？」

男「…」

女「つまりね、二人の将来について、真剣に考えなきゃいけないときが来てるんじゃないかって思うの」

男「だから、俺は女と結婚して…」

女「結婚するまでにやらなきゃいけないことがあるでしょ？」

男「し、就職とか？」

女「就職するまでにすることは？」

男「…無事卒業すること？」

女「そう。あたしも男と結婚したいよ？だからさ、二人で協力して将来のこと考えようよ。ね？」

男「お、おう」

ｷｰﾝｺｰﾝ…

女「あ、午後の講義があるから、また後でね？」

男「ああ、俺はもうちょっと休んだらバイトに行ってくるわ」

女「はーい、じゃあ」ﾉｼ

男「おう」ﾉｼ

ﾀﾀﾀﾀ…

男（将来のこと…か。真面目に考えたことなかったなぁ…）

男「…はあ」

友「…何盛大にため息ついてんの？」

男「あ、友…と後輩女さん」

後輩女「あたしはついでですか！？…いいですけどね」ｲｼﾞｲｼﾞ

友「あー、拗ねない拗ねない。男がカフェオレ奢ってくれるから。な？」

男「え？俺持ち！？」

後輩女「ごちそうさま～♪あ、お姉さまも飲みますよね♪」

友「あ、あたしはいいわ。さっき飲んだから」

後輩女「じゃあ半分こしましょ。ね♪」

友「はいはい」

男「…おまえらなぁ…」

友「まあまあ。で？何があったんだ？」

男「あ、ああ…実はさ～～～」

【説明中】

友「…あんた、ホントに考えてなかったん？」

男「いや、おぼろげながら考えてはいたけど…」

後輩女「うわぁ…」

男「なんで引く！」

友「あのさ、男ももう二十歳じゃん？だったらさ、そろそろ将来設計しないとやばいと思うよ？」

男「…だったら、友はどう考えてんだよ。自分の将来をさ」

友「あたしは今さ、家庭教師やってんじゃん？それってさ、塾講師になるための下準備なんだよ？」

男「へ？」

友「あ、もちろん教員免許も取るよ。でもさ、いまは教師になるにしても空き待ちのところが多いじゃん？」

友「だからさ、塾講師は教師になれないときのための保険のつもりなんだ」

後輩女「さすがお姉さま♪」ﾑｷﾞｭ

友「これこれ。人前でおっOい押し付けるのはやめなさい」

後輩女「はーい」

男（…やべーよ…俺、ホントに何も考えてないじゃん…）

友「男はさ、どうするつもりだったの？」

男「へ？…いや、まあ…教員免許を取って、そのまま教師になるつもりだったんだけど…さっきの友の話で、教師になれない可能性もなることを初めて認識したわ」

友「はぁ…そんなとこだろうねぇ」

男「面目ない」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

友「じゃあさ、男はこれからどうするつもり？」

男「どうとは？」

友「…女はさ、男に弁護士になるために頑張るって言ったんだよね？じゃあ、男は？」

男「え、えっと…」

友「…はぁ、やっぱバカップルを長くやりすぎた後遺症かなぁ…昔の男ならもっといろんなこと考えてたじゃん」

男「う…」

後輩女「…お姉さま、私、向こうでカフェオレ飲んでますね」

友「あ、うん」

ﾄﾃﾃﾃ…

友「…後輩女、気を回し過ぎだって」ｸｽｯ

男「…いい子だな」

友「あげないよ？」

男「いいよ、俺は女一筋だから」

友「…そういう台詞を吐くんなら、これからあたしが話すこと、最後までちゃんと聞きなよ？」

男「ん」

友「…あのさ、弁護士になるのってすごい大変なんだ。それは男もわかるよね？」

男「うん」

友「で、なったらなったで、精神的にも肉体的にも辛いと思うよ？だってさ、人の揉め事ばっか扱うんだもん」

男「そう…だな」

友「でさ、そんなときに男が教師になれてなくて無職って言うのはどうよ？」

男「うっ…」

友「…女さ、家庭的じゃん？家事とか男にやらせたことないんじゃない？」

男「…うん」

友「だからさ、仕事をしながらでも家事をこなそうとするんじゃないかな？それって休む暇ないよね？」

友「仕事で精神的にも肉体的にも疲れて、家に帰ってきたら無職の夫が家事もせずにゴロゴロ…」

男「うぅ…」

友「これじゃあ女、病気になっちゃうよ？それでいいの？」

男「い、いやだぁ！！！」

友「しっ！声がでかい！！…だからさ、男も真剣に考えなよ」

友「…女がそうならないようにするためには、どうしたらいいかをさ」

男「…そうだな、今の話だと教師は人余りでなれない可能性が高いし…」

男「そうなると塾の講師もそういう連中が集中するだろうから難しいだろう」

友「うん。そうだね」

男「女のほうも仕事のストレスで家事が負担になりそうだと…」

友「きっとね」

男「…とりあえず家事は今から女に教えてもらおう。あとは就職…か」

友「…うん。あたしも人事じゃないけどね」

男「…といってもいまさら他の進路は…」

友「…あのさ」

男「ん？」

友「男さ、他の売りを身につけたらいいんじゃない？」

男「へ？」

友「男は教師になるつもりだったんでしょ？だったら教員免許は取ったほうがいいし、教師になるのが本筋だと思うけどさ」

男「うん…」

友「…塾の講師も視野に入れとけばいいと思うし」

友「でもさ、塾の講師って人気商売じゃん？決して安定した収入って訳じゃないでしょ？」

男「そうなのか？」

友「うん。だからさ、えーっと…あ、あったあった」ｶﾞｻｶﾞｻ

友「んーっと、あ、これこれ。男、これ、頑張ってみなよ」

男「ん？どれどれ？…なっ！ちょっ！！おまっ！！無理だって！！！」

友「大丈夫だって。男、いざとなったらすっごい頑張るじゃん」

友「C判定だったこの大学に入るためにすごく頑張ったじゃん」

友「だからさ、もう一度がんばんなよ、あのときみたいにさ」

男「無理無理、無理だって！」

友「やる前から諦めんな！」ﾄﾞﾝ！

ﾋﾞｸｯ

友「…あのさ、これは女のためにもなるんだよ？」

男「女のため？」

友「そ。男がここまで考えてくれてるって、頑張ってるって分かったら女も安心すると思うんだ」

友「だからさ、女のために頑張ってみなよ。な？」

男「女の…」

友「…どう？」

男「…わかった。やるよ」

友「そう！それでこそ男だ！！あははは」ﾊﾞﾝﾊﾞﾝ

男「痛い、痛いって。手加減しろよ…」

友「あはは。ゴメンゴメン」

男「まあ、教師になれりゃあ無駄になるんだけどな」

友「いいじゃん。それはそれで計画通りなんだからさ。これはあくまでもバックアップ。でしょ？」

男「バックアップにしてはハードルが高いんですが…」

友「まあまあ」

男「なにが“まあまあ”だよ、まったく…」

友「…けど、いいよね、あんた達…」

男「ん？」

友「あ、いや。よくニュースなんかでDVとかあるじゃん？」

男「ああ、あるな」

友「そういうのってさ、ちゃんと甘えたり甘えさせたりって言うのが出来てないんじゃないかなーってさ」

男「…」

友「…男も女も、最初の頃はそれが出来てなかったもんね」

男「友のおかげだよ。感謝してる」

友「やめなよ、お尻がかゆくなる。ホント、今のあんた達、かんっぺきにバカップルだもんね」

男「あはは。…なあ、友」

友「ん？」

男「俺さ、今の自分、嫌いじゃないぞ？」

友「ん…」

男「こんなこと言うと、お前はまたバカップルって言うだろうけど」

男「…俺、どうしても欲しいものってそんなに無いって思うんだ」

友「ん？どういうこと？」

男「例えば、車はないと生活できないから、どうしても欲しいものとするだろ？だから計画的に貯金して買うだろ？」

友「ふんふん」

男「で、新しいパソコンがほしいと思うだろ？で、貯金してお金も溜まったと」

男「でも、まだ今のパソコンでも十分やりたいことは出来てる」

友「ふんふん」

男「そういうときにさ、女に何か欲しいものがあったりするだろ？そうするとそっちに金を回してしまうのな」

友「…」

男「それで女が喜ぶと、俺もなんていうか…ほんわかしちまうのな//」

男「俺にとって一番欲しいのは、女の笑顔かもな…」

友「うわぁあああ！！！むず痒～！！！！」ﾎﾞﾘﾎﾞﾘ

男「なっ！言ってるほうはメチャクチャ恥ずかしいんだぞ！！」

友「…男、あんた女にベタ惚れだねぇ。このこのぉ」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

男「痛いって」

～夜・女と男のアパート～

ｶﾞ ｶﾞﾁｬ

男「ただいま」

女「あ、おかえりなさーい。お風呂にする？食事にする？それとも…あ・た・し？」

男「あ、うん。女」

女「え？…じゃあシャワー浴びてくる…//」

男「そうじゃねーって！」

女「ちがうの？」

男「ちょっと話がある。ここに座って」

女「…はい」ﾁｮｺﾝ

男「…なぜに膝の上？」

女（だって男、珍しく真面目な顔して話があるって言うから…怖いんだもん…）

女「嬉しくないの？」

男「いや、嬉しいけど…そっちに座って向かい合わせに…」

女「うん…」

男「じゃあ…」

女「…」

男「…」

女「…なあに？」

男「ちょっ、ちょっとまって。今話す順番考えてるから」

女「う、うん」

男「…よし！女」

女「は、はい！」

男「…いや、話し辛いからもっと力抜いてさ。リラックスして」

女「うん、えっと…どんな話なの？」

男「ああ、俺達の将来についてなんだけどさ」

女　ﾋﾞｸｯ

男「俺達…ちゃんと将来を考えたほうがいいんじゃないかな？」

女　ｳﾙｳﾙ…

男「いろいろあるけど、まずはさ、俺一人でも家事をこなせるように、女に教えて欲しいんだ」

女「…いやあああ！！！」

男「お、女？落ち着け！落ち着けって！！」

女「なんで？なんでそんなこというの？今更独り暮らしするなんてどうして！？」

男「は？…あ゛ー！なんでそうなる！！」

女「え？だって…」ｷｮﾄﾝ

男「あのなぁ、家事を覚えるのはお前の代わりにするためなの！」

女「…へ？」

男「女、弁護士になるとするだろ？そうすっとさ、帰ってくる時間も不規則になるだろ？仕事もなれないうちは精神的にも来るもんがあるだろうしな」

女「…」

男「だから、俺も家事が出来るようになってれば、女が疲れてる時とかに代わりにできるだろ？」

女「あ…」

男「そうやって分担しようよ。な？」

女「…うん！でも…大丈夫？」

男「大丈夫だって。女のほうこそ、だまって無理したりするんじゃないぞ？」

女「うん…ありがと、男…」ｳﾙｯ

男「それから、俺の就職のことなんだけどな…」

女「え？男は学校の先生になるんでしょ？」

男「うん、そのつもりで教員免許も取るけど…友と話したんだけどな、いま、先生も余ってるらしくてさ」

女「…え？」

男「それで、教師になれなかったら…友は塾の講師も考えてるって言ってた」

男「俺もそうしようかと思ったんだけどさ、教師になれない連中が殺到しそうだろ？」

女「うん…」

男「で、だ。…俺、司法書士の試験を受けようと思う」

女「…へ？」

男「法律の勉強は女が教えてくれるだろ？」

女「それは…うん…」

男「まあ、教師になれたらそっちに行くんだけどな。司法書士の準備も今から始めようと思うんだ」

男「司法書士だったらさ、女と一緒に仕事をすることもあるかもしれないだろ？」

女「…」ﾎﾟﾛｯ

男「え？なんで？…俺、なんか悪いことしたか？」ｱｾｱｾ

女「ｸﾞｽｯ…ちがうの…嬉しいの…男がこんなに…真剣に考えてくれてたなんて…思ってなかったから…」

男「そ、そうか？」

女「うん…ﾋｯｸ…だって、今日のお昼の感じじゃ…」

男「あー、うん。ゴメン」

女「…ｸﾞｽｯ…あたし、やっぱり男が大好き！」ｷﾞｭｰ

男「痛いって。俺も女が大好きだよ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

～４年後～

男「…よっし！かんせーい！」

男「シャンパンも冷えてるし、ケーキも買ってきたし、風呂も沸かしたし…こんなもんかな？」

男（女、もう駅についたって連絡があったし、友たちもじきに来るって連絡あったし…あ、座るとこ準備しないと）

ｺﾞｿｺﾞｿ

男「うん…これでいいか」

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

男「あ、今開けるよ」

ｶﾞ　ｶﾞﾁｬ

女「ただいまー！ん！」ﾁｭｯ

男「ん！…っぷはぁ！おかえり」

女「司法修習終わったー！疲れたぞー！！ごはん食べるー！！お風呂入るー！！」

男「はは。どっちも出来てんぞ」

女「え？マジ？うそ！？」

男「嘘ついてどうする。びっくりさせようと思ってな、黙ってたんだ」

女「そうなんだ。どれどれ？…うわあ…」

男「どうだ？自分ではいい出来だと思うんだけどな」

女「…すごい御馳走だよ！男、ありがとー！！」ﾀﾞｷｯ

男「うぉっ！急に抱きついたら危ないだろ！！」

女「いいの！」ｷﾞｭｰ

男「はは。でな、これ…司法修習も終わったことだし…安物なんだけど…」

ｷﾗｯ

女「…え？これ…婚約指輪？」

男「小学校教師の安月給じゃこれぐらいしか買えなかったんだけど…つけてくれるか？」

女「う゛ん…う゛ん！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

ｶﾞﾁｬ

友「おじゃまー！…あれ？女、泣いてんのか？」

後輩女「あー！サイテーですぅ！！」

男「違うし！…いや、違わないけど違うし！！」

友「おとこぉー！」ﾊﾞｯ！

男「やめてー！袈裟固めはやめてー！！」

後輩女「いけー！やれー！！」

女「ちょっと！みんな！違うの！！あたしが泣いてたのはこれ！！」

ｷﾗｯ

友・後輩女「「…へ？」」

友「…女、それって…婚約指輪？」

女「そう！だから嬉しくって…ｸﾞｽｯ」

友「そ、そうだったんだあ！やったね、女！！」

後輩女「おめでとうございます！」

友「あ、男、ゴメン。早とちりしちゃって。ははは…」

男「ったく…いいけどさ」

友「まあまあ。婚約おめでとー！！」

女「ｸﾞｽｯ…ありがと…」

男「…ありがとな」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

後輩女「おー！男さんが素直にお礼を言ってるー！！」

男「そりゃあ、な。友には今までいろいろ世話になったし…」

友「あははは。今日は男が御馳走作ってくれてるし、派手に行こうぜ！」

後輩女「おー！！」

女・男「「お、お手柔らかにお願いします…」」

ｷｭｯ

男「…どうした？」

女「ううん、なんかね、すごく幸せで…こうやって捕まってないと飛ばされそうなの」

男「そりゃ大変だ。しっかり捕まえとかなきゃ」ｷﾞｭｯ

女「ふふ。男、ちょっと痛い」

男「あ、ゴメンゴメン。これでいいか？」

女「うん、ありがと。…男」

男「なｎ…ん！」ﾁｭｯ

女「…ぷはぁ！」

友・後輩女「「そこだー！押し倒せー！！」」

男「やかましいわ！」

女「あはは。…ねえ、男」

男「ん？」

女「男を選んでよかった♪」

男「…俺も」ｷﾞｭｯ

～【後日談】END～

おつ

長さがちょうどいいわ
面白い
乙