2: 2012/02/05(日) 11:03:43.36

私は美樹さやか。

私は今暗闇の中にいる。

私はただその中を漂っていた。

ここはどこだろうとか、今はいつなんだろうとか、そんな疑問すら湧かない。

痛いとも痒いとも感じない。

私はただここにこうして存在するだけのもの。

一陣の風が吹き込んだ。

寒い。

私はその時初めて感覚を覚えた。

暗闇に開いた裂け目から吹き込んだ風が私を包み込み、外に連れ出そうとしている。

いやだ。とっさに私は恐怖を覚えた。

私は抵抗することもできないまま外の世界へ引きずり出された。

4: 2012/02/05(日) 11:10:45.73

気が付くと私は街灯が燈る歩道橋の上にいた。

目の前には私に泣きつくまどか。

青い顔でキュウべぇの首根っこを掴む杏子。

息を荒くしている転校生。

そして一歩離れたところから哀れみの表情で私を見つめる松葉杖の恭介がいた。

さやか「何?」

その瞬間私は自分が何をしているのか訳が分からなかった。

誰も一言も発しない。

確か私は……

さやか「何なの?」

その杏子ってやつと戦おうとしていた。

恭介に対して酷いことを言ったその杏子を叩きのめしてやろうとしていたはずだ。

恭介「さやか……」

6: 2012/02/05(日) 11:19:12.94

そこで私は全ての事情を知った。

さやか「ずっと……知ってて隠してたんだね」

QB「聞かれなかったからね」

さやか「……!」ガシャン

自宅に帰った私は自分のソウルジェムを乱雑に放り投げた。

QB「例えば、槍が体を貫通する痛みっていのうはね――」パァァァ

突然下腹部に激痛が走った。

キュウべぇは冷たい目でじっと私を見つめている。

痛みのあまり私はだんだんと気が遠くなっていった。

9: 2012/02/05(日) 11:27:00.84

気が付くとお腹の痛みはなくなっていた。

恭介「さやかぁ……」ボロボロ

恭介が涙を流しながら私の体を抱きかかえていた。

さやか「恭介……なんでここに……」

松葉杖は部屋の入り口辺りに落ちていた。

気を失っていたせいでドアをノックする音が聞こえなかったようだ。

恭介「さやかぁ、ごめんよぉ……ごめん」

恭介の手には私のソウルジェムが大事そうに握られていた。

さやか「恭介、それ……」

それは私の命そのものだ。

恭介に抱きかかえられているこの体はもう抜け殻なのだ。

11: 2012/02/05(日) 11:35:18.24

さやか「……離して」

恭介「さやか、もうお腹は大丈夫――」

さやか「いいから離してよ!」

私は恭介の体を突き飛ばした。

恭介「うわっ!」ドガッ

思った以上に恭介の体は勢い良く吹き飛ばされていった。

さやか「あっ!……」

恭介「ごめんよさやか……」

恭介「何も分かってあげられなくて。僕に何もできないで……ごめんよ」

どうして謝るのよ。

どうしてそんなに優しくしてくれるの?

私が可愛そうな人間だから?

12: 2012/02/05(日) 11:45:24.83

さやか「分かったでしょ?」

さやか「今の私はもう人間じゃないの」

さやか「恭介のことだって殺そうと思ったら、簡単に殺せちゃうんだよ?」

恭介「さやか……」

さやか「もう私に近づかないで」

恭介「嫌だよ……今のさやかを放っておけない」

さやか「同情なんてしてほしくない」

さやか「私はもう恭介とは別の世界にいるの」

さやか「だってもう私氏んでるんだもん」

14: 2012/02/05(日) 11:57:22.78

僕は上条恭介。

僕はさやかの家を後にした。

さやかが魔法少女になったという話を鹿目さんから聞いて、最初は信じられなかった。

しかし今日何もかも信じざるを得なくなった。

急に家を訪ねてきた鹿目さんに連れられてあの歩道橋に行くと、そこには魔法少女姿のさやかがいた。

にわかには信じられなかった。

しかしこれで納得がいく節もある。

それは僕の腕が突然完治したことだ。

 奇跡も、魔法もあるんだよ

さやかが言ったあの言葉は、そういうことだったのだ。

今更になってようやく分かった。

そしてそんなさやかに対して僕は何もできなかった。

僕はつくづく馬鹿な男だ。

16: 2012/02/05(日) 12:04:04.59

松葉杖を付いて学校に復帰すると、志筑さんから告白された。

恭介「その……ありがとう、志筑さん」

恭介「でも……気持ちは嬉しいんだけど……」

仁美「そうですか……。分かりました」

仁美「いいんですの。最初から失敗に終わるんじゃないかと、私も思っていましたから」

恭介「ごめん……。ちょっと僕の友達が大変なんだ」

恭介「今はその友達の力になってあげたい」

恭介「だから、僕だけそういう恋とかっていうのは――」

仁美「さやかさんのことですわね」

恭介「え?……どうして……」

17: 2012/02/05(日) 12:14:56.39

仁美「私も乙女ですもの。そのくらい分かりますわ」

仁美「どうか、さやかさんの力になってあげてください」

仁美「私にとっても大切なお友達ですわ。泣かせたりしたら許しませんわよ」

恭介「うん。さやかには今まで守ってもらってばっかりだった」

恭介「おかしいよね。男が女の子に守ってもらうなんて。ハハッ」

恭介「今度は僕がさやかを守ってあげたいんだ」

仁美「それはきっとさやかさんも喜びますわ」

恭介「そ、そうかな?」

18: 2012/02/05(日) 12:26:15.70

さやかは次第に学校に来なくなっていった。

風邪や怠慢ではない。これは確実に魔法少女と関係のあることだ。

鹿目さんもしきりにさやかのことを心配していた。

さやかから何か聞いていないか確認しても、お互いに何も知らされていなかった。

~~~

私は鹿目まどか。

あれからさやかちゃんの様子は明らかに以前の明るい様子とは違っていた。

まどか「あの……上条君」

恭介「鹿目さん……さやかのことかい?」

まどか「うん。何か聞いてないかなって」

21: 2012/02/05(日) 12:37:36.28

恭介「いいや。メールしても電話しても返事がないんだ」

恭介「鹿目さんは?」

まどか「ううん。私も何も」

まどか「今日さやかちゃんの家に行ってみようと思うんだけど」

恭介「僕もそう思っていたんだ。放課後に行ってみよう」

学校が終わると、上条君と共にさやかちゃんの家に向った。

上条君はさやかちゃんのことをどう思っているんだろうかと、隣を歩きながら考えた。

さやかちゃんは仁美ちゃんから「恋の宣戦布告」を受けたらしい。

私は玄関で泣き崩れるさやかちゃんを受け止めた。

それが数日前のことだった。

仁美ちゃんはあれから上条君に告白したのだろうか。

23: 2012/02/05(日) 12:56:01.20

本人に確認してみたい気持ちもあるが、プライバシーに入り込むようで気がひけた。

それにもし上条君がさやかちゃんではなく、仁美ちゃんを選んでいたらと思うと怖かった。

考えているうちに目的地に到着した。

エントランスのインターホンで家族に確認してみると、昨日は家に帰らなかったらしい。

まどか「うそ、大変!」

恭介「探さないと!」

まどか「でも、上条君は松葉杖じゃあ……」

恭介「僕は大丈夫だよ。でも鹿目さんの足手まといになっちゃいそうだから、別々に探そう」

まどか「本当に大丈夫?」

恭介「うん。見つかったら連絡して」

まどか「分かった。無理そうだったら帰った方がいいよ?さやかちゃんのことは私が探すから」

恭介「僕も男だ。そんなにやわじゃないよ」

27: 2012/02/05(日) 13:10:05.66

~~~

私は暁美ほむら。

美樹さやかが今大変な状態になっている。

彼女がまどかの苦悩の種となっていることは毎回のことだった。

早くなんとかしなくてはならない。

できれば助けたいが、いざとなったら私がこの手で片を付けなければならないだろう。

さやか「なんで私なんかを助けてくれるわけ?」

案の定さやかは私の提案を受け入れてはくれなかった。

ほむら「どうしてなの?私はあなたを助けたいだけ」

さやか「私なんとなく分かっちゃうんだよねぇ……あんたが嘘ついてるの」

さやか「あんた、口では私を助けたいとか言っておきなが、心の中では全然別のこと考えてる」

28: 2012/02/05(日) 13:19:07.08

ほむら「そうやって……あなたはまどかを苦しめるのね」

さやか「……まどかは関係ないでしょ」

ほむら「いいえ、何もかもあの子のためよ」

さやか「どうしてあんたがまどかのために……」

ほむら「私の大切な人だからよ」

ほむら「そしてあなたはまどかの大切な人なの。癪に障るけど」

ほむら「これはあなたのためでもあるのよ」

ほむら「あなたがこの世に絶望を振り撒く前に、私がこの手で頃してあげる……」

恭介「うおりゃぁあああ!」ドシン

ほむら「ぐはぁ!」

30: 2012/02/05(日) 13:33:25.51

不覚にも後ろからの不意打ちを食らった。

さやか「恭介!」

恭介「こいつめ!さやかに何をする気だ!」

ほむら「どきなさい!今はあなたの相手をしている暇はないの」

恭介「どかないぞ!さやかは僕が守る!」

ほむら「仕方ないわね。一般人には手を出したくないのだけれど」ジャキッ

私は時間を停止し、上条恭介の体を突き飛ばした。

怪我はするかもしれないが、これくらいはすれば彼も驚いて引き下がるだろう。

恭介「うわあ!」ズザァー

32: 2012/02/05(日) 13:37:31.67

さやか「恭介!」

さやか「転校生!恭介に手を出すなんて!許せない!」

さやか「私を倒せるもんなら倒してみなさい!」

ほむら「やめなさいさやか。今のあなたではあっという間に魔力を限界まで使い切るわ」

さやか「そんなこと言って――ってあれ?変身できない?」

ほむら「!?」

さやか「私のソウルジェムが……ない……!」

38: 2012/02/05(日) 14:10:25.98

ほむら「まさか!」

魔女「ゴオオオオオ」

さやか「魔女!?」

ほむら「もう!こんなときに!」

恭介「うわ!なんだこれ!景色が変わっていく!」

さやか「戦うしかない!」

ほむら「馬鹿!あなた変身できないんでしょ!」

39: 2012/02/05(日) 14:29:53.40

さやか「あんたの力は借りない!」

ほむら「馬鹿!あなたもその男も氏ぬわよ!」

さやか「馬鹿馬鹿言うな転校生!」

ほむら「ここは私に任せなさい!」

使い魔「シャシャシャシャシャッ」

さやか「使い魔が来るよ!」

ほむら「あなたはその男がはぐれないように捕まえていなさい!」

 ダンッ、ダンッ、ダンッ!

使い魔「ヤラレター」

さやか「恭介!私の手に捕まって!離さないで!」

恭介「さやか!これが魔女……?」

41: 2012/02/05(日) 14:45:32.67

使い魔「シャシャシャシャシャッ」

ほむら「くっ、どんどん湧いてくるわね」ジャキッ

ほむら「時間を止めて一気に!」

 ババババババ!

 カシャッ

使い魔「ギャー!」ドババババ

恭介「すごい……あの数を一気に……!」

さやか「転校生危ない!後ろ!」

42: 2012/02/05(日) 14:51:44.94

使い魔がまだ一匹残っていた。

使い魔の攻撃によって私は10メートルも吹き飛ばされた。

時間を止めようとしたが、腕の盾が外れていた。

ほむら「どこ!どこにいったの?」

盾を探している間に使い間たちがぞろぞろと集まり始めた。

さやか「何やってんのよあいつ!」

恭介「だめだ!行くなさやか!」

さやか「こんな使い魔、私が倒してやる!」

ほむら「さやか!やめなさい!」

46: 2012/02/05(日) 15:17:37.81

 ドババババババ!

使い魔たちが何者かの攻撃によって一掃された。

ほむら「他に誰かいるわ!」

さやか「一体誰!?」

まどか「さやかちゃん!ほむらちゃん!大丈夫!?」

さやか「まどか!」

恐れていたことが起こった。

まどか「みんな下がってて!」

その姿はあまりにも眩しかった。

生き生きとしたその表情は、初めて私を魔女から救ってくれたあのまどかだった。

さやか「まどか!あんた契約して……」

魔法少女となったまどかはあっという間に使い魔と魔女を倒してしまった。

48: 2012/02/05(日) 15:36:29.97

~~~

私は美樹さやか。

見滝原に巨大な嵐が近づいてきている。

住民は皆体育館に避難しに来ていた。

私は人間に戻った。

代わりに大切な友達が魔法少女になった。

QB「もうすぐ戦いが始まるよ」

さやか「そうだね」

QB「まどかたちが心配かい?」

さやか「心配になるに決まってる」

51: 2012/02/05(日) 15:49:57.97

QB「君がその気になってくれれば、もう一度願い事を叶えてあげることもできるよ」

QB「そうしたら、君は友達を守る力を手に入れられる」

さやか「それはダメ」

さやか「そんなことしたら、私はまどかを裏切ったことになる」

QB「まどかがこの戦いで氏に行くとしても、君は黙ってここで見ているのかい?」

さやか「まどかは負けないよ。ほむらも一緒だし」

QB「確かにそうかもしれない」

QB「今のまどかはワルプルギスの夜でさえ倒してしまうほどの力がある」

QB「でもその先はどうかな?」

53: 2012/02/05(日) 16:00:36.51

さやか「その先?」

QB「いくらまどかでも、ワルプルギスの夜を倒すには全力でかかるはずだ」

QB「倒せたとしてもソウルジェムの濁りは限界だろう」

QB「濁りが限界に達したソウルジェムはどうなると思う?」

さやか「どうなるって……」

恭介「さやか!」

さやか「恭介……」

恭介「キュウべぇと話してるのか?」

さやか「うん……」

恭介「そんなやつの言うことなんか聞くな」

さやか「でも……」

56: 2012/02/05(日) 16:16:36.54

QB「限界まで汚れを溜め込んだソウルジェムはグリーフシードに変化し、魔女を生む」

さやか「え……!」

QB「まどかほどの力の持ち主が魔女となったら、今度こそ誰にも止めることができないだろうね」

さやか「それって……本当なの?」

恭介「さやか!そいつの言うことに耳を貸しちゃダメだ!」

QB「僕は嘘はつかないって分かってるだろ?」

さやか「……それってまどかたちは知ってるの?」

QB「まどかにもほむらにも僕は伝えていないよ」

恭介「さやか!キュウべぇは何て言ってるんだ!?」

恭介「さやか!」

さやか「ごめん恭介。私行かないと」

恭介「行くな!」

61: 2012/02/05(日) 16:31:58.62

さやか「でも……私やっぱり友達を放っておけない!」

さやか「このことをまどかに知らせないと!」

恭介「僕も君を放っておけない」

恭介「君が行くなら僕も一緒に行く」

大きな嵐だった。

その強風の最中で、私たちはまどかとほむらの姿を見つけ出すことはできなかった。

私たちにはその嵐の中心に近づくことすらできなかった。

洪水が町を襲い、水が引き始める頃には、空を覆っていた雲も隙間が見え始めた。

私たちはやっと二人を見つけた。

63: 2012/02/05(日) 16:40:14.94

ほむらが水の中に横たわるまどかにしがみ付いていた。

私がすぐ横まで近づいても、まるで気づかずにほむらはしくしくと泣き続けた。

恭介「鹿目さん……まさか、こんなことになるなんて」

さやか「まどか……嘘でしょ……」

私がまどかの遺体に触れようとすると、ほむらが突然動いて銃を向けてきた。

ほむら「離れなさい!」

さやか「ちょっと!私だよ!落ち着いて!」

ほむら「これが落ち着いていられるもんですか」

ほむらは目に涙をいっぱいに溜め、銃を握る手も震えていた。

さやか「まどかは……いったいどうしたの?」

ほむら「まどかは私が頃したわ」

さやか「嘘……そんなわけないじゃん……」

66: 2012/02/05(日) 16:47:53.27

ほむら「本当のことよ」

さやか「だって……だってあんたまどかのこと大好きだったじゃん……」

さやか「ほむらぁ……」ポロポロ

ほむら「それ以上近づかないで!」ガチャ

ほむら「私はあなたに怒っているのよ」

ほむら「憎くて憎くて、今すぐ頃してやりたいという衝動を必氏で抑えているの」

ほむら「それ以上近づいてきたら、その衝動を抑えきれる自信がないわ」

さやか「私は分かってるよ!ほむらはまどかを救ってあげたんだよね?」

さやか「まどかが魔女になる前に……」

ほむら「あなた、そのことを知って……」

67: 2012/02/05(日) 16:52:39.94

さやか「ごめんね……。あんたたちにばっかり大変な思いさせちゃって」

さやか「私だけずるいよね……」

私は泣き崩れて地面に手を着いた。

恭介「さやか!しっかりして!」

ほむら「泣いて謝っても、私はあなたを許すつもりはないわ」

さやか「そうだよね……こんな私、もう生きててもしょうがないもんね……」

恭介「何を言っているんださやか!」

さやか「いいよ……その銃で私を撃ちなよ」

さやか「前はそうしようとしてたじゃん。私がまだ魔法少女の頃はさぁ……」

ほむら「……」カチャッ

恭介「やめてくれ!お願いだ暁美さん!」

69: 2012/02/05(日) 16:57:32.28

恭介「さやかは僕を救ってくれたんだ!どうかお願いだから、さやかを殺さないでくれ!」

ほむら「美樹さやか。何をしても私の気持ちは変わらないわ」

ほむら「それにここであなたを頃して楽にしてあげるつもりはないわ」

さやか「それじゃあ、私はいったいどうすれば……」

ほむら「生きるのよ」

73: 2012/02/05(日) 17:06:35.18

ほむら「生き続けなさい。その坊やとこの世界で」

ほむら「まどかはいつもあなたのことばかり考えていたわ。本当に羨ましいほどに」

ほむら「あの子があなたを救うために願い、そして氏んでいったことをその胸に刻み込んで一生忘れないことよ」

ほむら「それとその坊やを逃がさないように一生捕まえておくことね」

さやか「私は忘れないよ……」

さやか「ほむらのことだって、私ずっと忘れないよ!」

さやか「だって私のこと助けてくれたもん」ボロボロ

さやか「ほむらがいなきゃ私も恭介も氏んでたもん!」

さやか「だからまどかのことも、ほむらのことも一生忘れたりなんかしない!」

さやか「……ほむら?……どこに行ったの?」

75: 2012/02/05(日) 17:14:29.26

ふと顔を上げるとほむらの姿が消えていた。

恭介「分からない……。突然目の前からいなくなったよ」

さやか「ほむら……このままどこかに行ったりしないよね……?」

嵐は去った。水も引いた。

非難していたお陰で学校のみんなも無事だった。

ただそこには私の二人の友達だけが欠けている。

その後ほむらの姿を見ることは二度となかった。

私は許されないままに、受けた憎しみを一生胸の内に残したままとなるのだ。

~~~

私はさやか。

私は今暗闇の中にいる。

78: 2012/02/05(日) 17:18:29.20

私はただその中を漂っていた。

ここはどこだろうとか、今はいつなんだろうとか、そんな疑問すら湧かない。

痛いとも痒いとも感じない。

私はただここにこうして存在するだけのもの。

一陣の風が吹き込んだ。

まどか「起きろ~!」バサァッ

さやか「うぎゃあああ!」

80: 2012/02/05(日) 17:25:54.49

私は上条さやか。

さやか「うおぉ……朝はまだ冷えるなぁ~」

まどか「も~、いつまでも寝てるとまたパパに怒られるよ!」

さやか「昨日はママずっと曲書いてたから遅かったんだよ~」

まどか「さあ、ふとんから出る!」

私は簡単に身支度を済ませ、髪もセットしないまま一階に降りた。

ピアノで昨日書いた曲を弾いていると、エプロン姿の恭介が顔を出した。

恭介「おおっ、いい音が聞こえてくると思ったら、ママ起きたんだね」

85: 2012/02/05(日) 17:34:35.66

さやか「いや~、昨日はちょっと頑張りすぎちゃって」

恭介「曲できたんだね」

さやか「うん!『まどかとほむら』バージョンえ~っといくつだっけ?」

恭介「あっはっは。もう数え切れないよ。100くらいじゃないかな?」

さやか「はい、パパの分これね。ヴァイオリンも結構変えてみたんだ」

恭介「ふむふむ。大分変わってるね。これは弾くのが楽しみだ」

さやか「お~い!子供たち集合~!」

まどか「はーい!」

さやか「……って、あんた相方はどうしたのよ?」

87: 2012/02/05(日) 17:42:20.87

ほむら「ふぁ~い」トボトボ

さやか「こらほむら!寝坊だぞ!」

ほむら「ごめんなふぁ~い」ゴシゴシ

まどか「ほむらちゃんは、ママ似だから」ティヒ

さやか「それじゃあ上条家が揃ったところで、一曲やりますよ~」

まどか「ええ~、朝ごはんは~?」

さやか「そんなのあとあと!はい、歌のパートも変わってるからね!楽譜確認して!」

ほむら「この曲もう飽きた~」

88: 2012/02/05(日) 17:47:37.95

恭介「ほらほら、せっかくママがお前たちの曲を作ってくれたんだぞ」

さやか「あんたらはうちのツインボーカルなんだから!」

そう、この曲はまどかとほむらという私たちの娘のための曲だ。

そして私の大切な友達の曲でもある。

私は一生をかけてこの曲を作り上げることを決めた。

今はまだ発展途上にあるけど、いつかはあの二人に相応しい曲に仕上げるつもりだ。

それが私の一生をかけての償いでもある。

さやか「準備はいい?行きますよ~、さんはい!」

おわり

90: 2012/02/05(日) 17:51:02.64
さやかを幸せにするために書いたが、そのための犠牲は大きかった

91: 2012/02/05(日) 17:51:05.34
乙乙乙

92: 2012/02/05(日) 17:51:27.31
良かった
乙だ

98: 2012/02/05(日) 18:14:59.27
さやかの本当の幸せはやっぱ上条と添い遂げることだよねって再確認、乙

引用元: さやか「真っ暗くらやみの中」