2: 2011/04/05(火) 15:27:28.16
~外宇宙、とある惑星~

刹那「ティエリア、量子ワープを」

ティエリア≪了解。行くぞ!≫




~転移先~

刹那「……ここは?」

ティエリア≪地球……のはずだが。文明レベルが著しく低下している≫

刹那「……情報が少なすぎる。ここは一度――――ぐっ!?」

ティエリア≪くぅっ……! これは、脳量子波……!?≫

刹那「いや……! 脳量子波ではない! ELSのものとも違う……! これは……人の、声……!?」

ティエリア≪どうする、刹那≫

刹那「……行こう。ここで立ち止まっているわけにはいかない」

ティエリア≪わかった。ダブルオークアンタには外壁部迷彩皮膜を施しておく≫

刹那「頼む」



3: 2011/04/05(火) 15:32:06.39


(なに……これ、何なの、これ、何なのこれ!)

 鹿目 まどかは、走っていた。ただ、走っていた。
 その行動に、明確な理由はない。
 別に、陸上競技の最中だからでも、中学生ながらにダイエットに励んでいるわけでもない。

 それでも、ただ、走っていた。
 背後から迫る危機に怯え、恐怖し、涙を流しそうになりながら、走っていた。

 何が起きているのか、まどかにはさっぱりわからない。
 変な夢を見て朝起きて、通学路で友達とふざけあって、
 学校で妙な転校生と顔を会わせて、帰りに友人と喫茶店に寄って、
 CDショップで新曲を試聴して、そこで、誰かに呼ばれて。

 呼ばれた先で、転校生――――暁美 ほむらと。
 彼女にいたぶられている、奇妙な生き物に、出会った。

 友である美樹 さやか機転により、傷ついた様子のそれを回収することに成功。
 ほむらから逃げるように、まどかは道をひた走っていはずなのだ。

4: 2011/04/05(火) 15:37:17.13

 なのに。はずなのに。
 気づけば、まどかは、別の世界に迷い込んでいた。

 蝶。馬。フェンス。花。鎖。標識。マネキン。彫像。冠。鋏。城。樹木。国旗……
 それらが図形のように組み合わさって、周囲を覆っている。
 しかしその光景も一定ではなくて、めまぐるしく様相を違えていた。

 まどかとさやかに一層の困惑を与えたそれは、
 だからと言ってやめてやることもなく、むしろ、彼女らを混乱させるのが目的であるかのように、回り続けている。

 ふと、その景色の中、影が動いた。
 実体を持った影は、そのまま歪な円形を形作って、人間のようなヒゲをはやし、二人に近づいてくる。


 ――――あれは、危険だ。
 誰にそう教えられたわけでもないのに、まどかはそう思った。
 危険なのだ、あれは。怖い。足がすくんでしまいそうになる。

 自身の常識を飛び越えたそれに、まどかはただ恐れるしかなかった。
 手元に不思議な生き物を抱えたまま肩を震わせつつ、無意識にさやかにもたれかかってしまう。
 さやかも同様らしく、触れた肩から、震えがまどかの体に伝わってきた。

5: 2011/04/05(火) 15:42:15.40

 奇妙な歌を口ずさみ――口らしき部位もないが――ながら、異形のそれが、迫る。

「じょ、冗談だよね……!? 私、悪い夢でも見てるんだよね!?」

 円を描くように、‘それ’に取り囲まれていることを確認しながら、さやかは上ずった声でまどかに問いかける。

「ねえ、まどかぁっ!」

 そんなこと、まどかにもわからない。
 それこそ、まどかも誰かに説明して欲しいところだった。
 これは、一体何なんだ。

 そのうち、‘それ’は口と目を獲得していた。
 口と言っても、粗悪なコラージュ品のようなものが上から貼り付けられているだけで、
 目と言っても、風穴のような黒々しい丸が、それらしき部分に掘り込まれているだけだったが。

 それが、人の顔に見えてしまって、まどかは更に嫌悪感を抱く。
 息を飲む。それでも、止まらない。
 距離が、十メートルを切る。
 嫌だ。嫌だ――――!

6: 2011/04/05(火) 15:47:17.04

 まどかがぎゅっと目を閉じるのに合わせ、天井の鎖が千切れた。
 それは二人を囲うように広がって、異形のそれらとの間に立ち入る。

 そして、爆ぜた。
 小規模な爆発が起きたように、赤の色が視界いっぱいに広がる。

「あ、あれ……!?」
「これは……!?」

 歪なそれらが焼き尽くされると同時、両者の背中に声がかけられた。

「危なかったわね。でも、もう大丈夫」

 反射的に、振り向く。
 目に飛び込んできたのは、女性の姿。
 ロールした金髪と、同色の瞳。まどか・さやかと同じ、見滝原(みたぎはら)中学校の制服。
 手には、黒光りする鎖と、ランプのような、卵形のアーティファクトを携えている。

 見覚えの無い人物だ。でも、さっきのあれよりかは、ずっとずっと安心できた。
 状況の飲み込めない二人をさておき、金髪の少女はこつこつと歩み寄って、まどかが抱えている生き物に目をやる。

「あら、キュゥべえを助けてくれたのね。ありがとう、その子は私の大切な友達なの」

7: 2011/04/05(火) 15:52:33.35

 落ち着いた様子の少女は――まどかが抱える生物の名前は、キュゥべえと言うらしい――そう言って口を閉じた。
 それを見て、まどかが思い出したように伝える。

「私、呼ばれたんです。頭の中に、直接この子の声が……」
「ふうん、なるほどね」

 あきらかに人間でない猫の様なそれ、キュゥべえが喋ることを何とも思っていないのか、
 わかったような口調で、少女は相槌を打ち、続けた。

「その制服、見滝原の生徒ね。二年生?」
「あ、あなたは?」

 急に現れた少女への疑念は晴れないのか、さやかが呆然としながらも問い返す。
 そう対応されることも予想の上だったのか、少女は、

「そうそう、自己紹介しないとね。でも、その前に……」

8: 2011/04/05(火) 15:57:01.85
 言葉の途中で、足を後ろに引く。
 そのまま、バレエのようにつま先で円を描き、体を回転させながら、卵型の宝石を宙へ放った。

 ステップを踏み、アーキテクチャを手に取る。
 両手を重ね、ランプのようなそれを掲げると、

「一仕事、片付けちゃっていいかしら」

 強い光が、少女を中心に放たれた。
 虹色の閃光は、世界を染めつくし、少女の衣服を変形させる。

 髪色に合わせたのだろう衣装とリボン。
 いかにも女の子らしいそのデザインは、どこか漫画やアニメのような、浮世離れした印象を抱かせる。

 少女は、いつの間にか積み上げられた有象無象の上に立っていた。
 その足元へ、復活したらしい異形共が這いずって来る。

 少女は慣れた様子で地を蹴ると、天高く飛び上がり、右腕を振るう。
 それを号令として、銀色の装飾が施された無数の銃が、彼女の背後から出現した。

 激鉄が、動く。
 文字通り引き金を引かれ、数多の銃が、弾を吐き出していく。

 地面に着弾し、炸裂。
 圧倒的な火力と殲滅力で、少女は歪なそれらを葬っていった。

 少女が、着地する。
 その時点で、それらは爆炎の中に姿を消していた。

「す、すごい……」

 まどかとさやかは、ただ感嘆の息をもらすばかりだ。

9: 2011/04/05(火) 16:02:59.17

 そこで、少女の眼前へ、一匹のそれが躍り出てくる。

 動揺もなく、少女は再び銃を向けた。
 銃口から、実弾が放たれる――――



 前に、それは弾けていた。
 風船が破裂するように、掻き消えた。

 何故か。

 そこには、一人の男が立っていた。
 その手には、拳銃を携えている。銃口からは、煙が立ち上っていた。

 金色の瞳が、マミを射抜く。
 反射的に、マスケット銃を構える。
 未知の、第三者。敵と見るのが、妥当だろう。

 互いに武器を向け合ったまま、二人は対峙する。



10: 2011/04/05(火) 16:11:25.75

マミ(男の人……!? なんで結界の中に……!)

刹那「待て。こちらに交戦の意思はない」

 グラグラッ シュウウウ

まどか「あ……戻った」

マミ「……率直に聞くわ。あなた、何者?」

刹那「…………俺は刹那・F・セイエイ。お前たちは?」

マミ「…………私は巴マミ。魔法少女よ」

刹那「魔法少女?」

マミ「……やっぱり、魔法少女じゃないみたいね。……少し待っていて、先にキュゥべえに手当てをしないと」



13: 2011/04/05(火) 18:07:54.47


キュゥべえ「……ありがとうマミ、助かったよ」

マミ「お礼はこの子たちに。私はただ通りかかっただけだから」

キュゥべえ「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ」

まどか「あなたが、私を呼んだの?」

キュゥべえ「そうだよ、鹿目 まどか。それと、美樹 さやか」

さやか「なんで、あたしたちの名前を……?」

キュゥべえ「君たちにお願いがあって来たんだ」

まどか「お、お願い……?」

キュゥべえ「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

まどか「えっ……? 魔法、少女?」

さやか「一体何の話……?」

刹那「契約……?」

マミ「そう、ね。刹那……さんにも、あなたたちにも説明をしないと」



14: 2011/04/05(火) 18:14:46.76

マミのマンション


マミ「……こんなところかしら」

まどか「魔女をやっつける、魔法少女……」

さやか「それに、ソウルジェムに願い事ねえ……」

刹那「……先ほどの魔女からは、人の声が聞こえた。その理由はわかるか?」

マミ「声……?」

キュゥべえ「何を言っているんだい? そもそも、君は一体何者なのかな」

刹那「……そうだな。次は、こちらが話すべきか」



16: 2011/04/05(火) 18:21:03.49



マミ「…………随分と、荒唐無稽な話ね」

まどか「あの……じゃあ、刹那さんは、そのELS、ってやつなんですか?」

刹那「ああ」

 パキンッ

さやか「うわっ肌が」

マミ「見る限り嘘ではなさそうだけど……まあ、魔法少女云々も同じようなものかしら」

刹那「……信じる信じないは後でいい。一つ聞きたいことがある」

キュゥべえ「さっきの、魔女の声とやらかな?」

刹那「……魔女は、何から生まれる? あれからは、脳量子波を感じる。……人間と同じ、脳量子波を」

マミ「えっ……?」

キュゥべえ「…………」

17: 2011/04/05(火) 18:21:37.82

刹那「答える気はない、か。……ついて来い。損はしないはずだ」

 スッ

さやか「えっ、ちょっと?」

キュゥべえ「……わかったよ。マミ、二人に話をしてくれるかい?」

マミ「……ええ……」



18: 2011/04/05(火) 18:22:31.82

 見滝原郊外

刹那(……このあたりか)

キュゥべえ「何の用かな? 僕も暇ではないんだけど」

刹那「ティエリア」

ティエリア≪ああ。いつでもいける≫

刹那「クアンタムシステムを作動させる!」

キュゥべえ「!?」

刹那「クアンタムバースト!」




19: 2011/04/05(火) 18:23:33.83

キュゥべえ「今のが、ガンダム……」

刹那「……目的は、強大なエネルギー源か」

キュゥべえ「…………」

刹那「お前の意図は知れている。そして、お前が直面している問題の解決法もある」

キュゥべえ「解決法?」

刹那「GNドライヴを用いれば、エネルギーに困窮することはないはずだ」

ティエリア≪本来、情報を外部に漏らすのは避けたいが……非常事態である以上、仕方がないか≫

刹那「その技術を、明け渡してもいい」

キュゥべえ「……僕に、何をしろっていうんだい?」

刹那「これ以上、彼女たちに関わるな。魔女を消し去り、全ての魔法少女を人間に戻せ」

キュゥべえ「ソウルジェムをいじるのは可能だけど、もう生まれた魔女まではどうにもできないな」

刹那「……魔女は俺が全て仕留める。今をもって、この世界への干渉をやめろ」

キュゥべえ「……僕が素直にそうするかは、君の出方次第だね」

刹那「……なら、話はワルプルギスの夜を打倒した後だ。そうすれば、立場は対等になる」



20: 2011/04/05(火) 18:24:27.12

~再びマミのマンション~

キュゥべえ「ただいま、マミ」

マミ「キュゥべえ。それと、刹那さんも」

刹那「ああ」

キュゥべえ「そうそう。君に、新しい仲間を紹介しようと思って」

マミ「仲間?」

刹那「……俺が、お前の魔女退治に協力させてもらう」

マミ「それって……」

刹那(条件は、魔法少女に‘同行’すること……今は、互いに相手の弱みを握っている状態。無理は出来ない)

キュゥべえ「彼は魔法少女じゃないけど、脳量子波を用いて魔女を探せるからね」

刹那「足手まといにはならない」

21: 2011/04/05(火) 18:26:33.18

マミ「でも……」

刹那「心配は不要だ」

キュゥべえ「彼の頑丈さは、僕が保証するよ。使い魔程度なら、問題なく相手できるはずさ」

マミ「…………」

刹那「……頼む」

マミ「……わかりました。丁度、鹿目さんと美樹さんにも付き合ってもらう予定だったから」

さやか「えっと……よろしく、お願いします」

マミ「一度確認した上で、判断します。……それでいいわね?」

刹那「問題はない」



22: 2011/04/05(火) 18:27:24.79

~翌日、市内のファーストフード店~

マミ「さて、それじゃあ魔法少女体験コース第一段、張り切って行ってみましょうか。……準備はいい?」

さやか「オッケーです!」

まどか「私も、大丈夫です」

刹那「ミッションの遂行に支障はない」

マミ「うん、意気込みは充分ね。それじゃあ、行きましょうか」




~市内、廃墟の元集合住宅~


マミ「……ここね。皆、気をつけて。ここから先は、本当に危険よ」

まどか「……はい」

さやか「……うん!」

刹那(結界の内部にモビルスーツは持ち込めない……生身で臨む必要があるか)



23: 2011/04/05(火) 18:29:34.49

三十分後

さやか「いやあ、魔女は強敵でしたね」

まどか「でも、二人とも凄かったです。銃と剣で、かっこよく戦ってて!」

マミ「ふふっ、ありがとう」

ティエリア≪ELSと同調し、小型ではあるがモビルスーツの武器を再現する……いい着想だな≫

刹那(ああ。……助かった、ティエリア)

ティエリア≪僕はコンタクトと調整を行っただけだ≫

マミ「刹那さんも、思った以上だし……この調子で、頑張っていきましょう」

まどか「はい!」

さやか「おー!」

刹那「了解」



24: 2011/04/05(火) 18:30:46.76

二日後、病院、魔女結界

マミ「もう何も怖くない! ティロ・フィナーレ!」

 ドンッ バスッ

シャルロッテ本体「 わ た し で す 」

マミ「えっ……」

刹那「マミ!」

ティエリア≪ちぃっ……! ――――何だ、ELSの中から!?≫

「迷惑千万!」

バシュゥッ

シャルロッテ本体「オウフ」

刹那「粒子ビーム……!?」

「真剣なる立会いに干渉をするつもりはなかったが……私は我慢弱い男だ! 動かずにはいられない!」

刹那「あの男……!」

グラハム「このグラハム・エーカーが、ブレイブで引導を渡す!」

 ド ワ ォ

さやか「……何なの、これ」

キュゥべえ「……わけがわからないよ」


25: 2011/04/05(火) 18:33:05.28

~結界外部~

グラハム「久しいな、少年。会いたかった……会いたかったぞ!」

刹那「……何故ここに」

グラハム「ELSと融合した者は、即座に氏に至るわけではない。私の脳が耐え切れなくなるより、少年が対話を果たす方が早かっただけのこと」

ティエリア≪……加えて、肉体の形成に時間がかかったようだな。だから、しばらくは出てこなかったのか≫

刹那「……そうか。今回は助かった、礼を言う」

グラハム「それには及ばんよ。……だが、そこの君。マミ、と言ったか」

マミ「私……?」

グラハム「常在戦場の心構えを忘れてはならん。戦いでは、一瞬の油断が氏を招く」

マミ「…………」

グラハム「奥の二人にも、よくよく言い聞かせておくことだ。戦いは、そう甘いものではないとな」




~見滝原郊外、隠蔽工作を施したクアンタのコクピット~

グラハム「……これで、あのキュゥべえ……いや、インキュベーターとやらの目論見は潰せたか」

刹那「……手間をかけさせた」

グラハム「何、気にすることはない。泥を被るのは、大人の役割だ」



26: 2011/04/05(火) 18:57:58.06

~見滝原市内、建設中のビル~

キュゥべえ「来てくれたんだね、杏子」

杏子「まあね。魔法少女でもないのに、魔女とやりあってる奴がいるって言うからさ。……にしては、妙な連中だけど」

キュゥべえ「僕も同意見だよ」

杏子「そんな奴らに、この場所を渡すってのも癪だし……まとめて、ぶっ潰しちゃえばいいか」




~三日後、郊外の倉庫~

まどか「まさか、さやかちゃんも魔法少女になっちゃうなんて……」

さやか「……あんなことがあった後だけど、さ……まどかも、仁美も、あたしは守りたかったから」

マミ「ごめんなさい……私が間に合っていれば、鹿目さんを危険に晒すことも、美樹さんを魔法少女にすることもなかったのに」

さやか「いえ、いいんです。……命がけで戦う羽目になっても構わない願い事を、見つけましたから」

刹那(例え魔法少女になったとしても、巴マミや美樹さやかが魔女と化す前にワルプルギスの夜を撃破すればいい……まだフォローは効く)

グラハム「……覚悟を決めたのなら、もはや何も言うまい」

さやか「……ありがとう、グラハムさん」

グラハム「礼を言われるようなことを、私はしていないさ」



29: 2011/04/05(火) 19:28:17.74


~翌日、放課後~

さやか「結界についたぞ」

マミ「これ、魔女じゃなくて使い魔の結界ね……楽に越したことはないけれど」

刹那「……目標を捕捉。一気に本丸を狙い撃つ!」

グラハム「刀の錆となれ!」

使い魔「俺は! スペシャルで! 2000回で! 模擬戦なんだよぉ!」

さやか「うわ、二人がかりでもうボコボコだ」

マミ「まあ、流石にねえ」

グラハム「幕引きさせてもらう! 肉を切らせて……!」

 キィンッ!

グラハム「なんとっ!?」

使い魔「逃げまわりゃ、氏にはしない……!」

さやか「あ、逃げた!」

グラハム「何奴!」

30: 2011/04/05(火) 19:29:14.62

杏子「ちょっとちょっと、何やってんのさ、あんたたち。見てわかんないの? あれ、魔女じゃなくて使い魔だよ」

グラハム「見ればわかる!」

杏子「だったらなおさらだよ。グリーフシード持ってるわけないじゃん」

さやか「何を……あれ放っといたら、誰かが殺されるのよ!」

杏子「だからさあ……四、五人ばかり食って魔女になるまで待てっての。そうすりゃ、ちゃんとグリーフシードも孕むんだからさ」

グラハム「出来ないな……! 私は我慢弱い!」

まどか「いや、そう言う話じゃないんじゃ……」

杏子「あんた、卵を産む前の鶏シめてどうすんのさ」

さやか「魔女に襲われる人たちを……あんた、見頃しにするって言うの!?」

杏子「あんたさ、何か、大本から勘違いしてんじゃない? 食物連鎖、って知ってる? 学校で習ったよね?」

刹那(……この子供の言は、世界を歪めるものだ……だが、彼女自身に歪みは感じられない……?)

杏子「魔女が弱い人間を食う、そしてあたしたちが魔女を食う。それが当たり前のルールでしょ? そう言う強さの順番なんだから」

さやか「あんたは……!」

31: 2011/04/05(火) 19:30:02.72

杏子「まさかとは思うけどさ。もしかして、人助けだの正義だの、その手のおちゃらけた偽善かますためにあいつと契約したわけじゃないよね?」

さやか「偽善でも……それでも、善だ!」

マミ「……私はもう、命を見捨てたりはしない。私たちは戦うわ。そうすることで、守れるものがあるのだから」

グラハム「私は、市民を守る連邦の軍人だ。ここで退くわけにはいかんな」

刹那「信じるものののために、俺は戦う。破壊するためではない、守るための戦いを成す……!」

杏子「……やれやれ。揃いも揃っておめでたい奴らだこと。……まあいいさ、遊び半分で首を突っ込まれてもむかつくし」

まどか「えっ……そんな、戦うの!?」

さやか「他に方法がないよ。……こんな安っぽい挑発に乗るわけじゃないけどさ」

杏子「全員まとめて蹴散らしてやるよ!」

さやか「なんだっていい! 奴を倒して使い魔にトドメを刺すチャンスだ! うおおおおおおおおおおお!」



32: 2011/04/05(火) 19:30:32.03

 三分後

さやか「いやあ、魔法少女は強敵でしたね」

杏子「……何故だ……何故にこうも……」

グラハム「拘束した後に三人でタコ殴りとは……武士道には反するが……」

マミ「残念だけど、もうどうしようもないみたいだったから……」

まどか「こんなの、絶対おかしいよ……」

刹那「……落ち着いたようだな。クアンタムバーストで対話を試みる」




33: 2011/04/05(火) 19:31:18.87

刹那「…………」

マミ「……まさか、そんな過去があったなんて……」

さやか「……私、こいつのこと誤解してた……」

杏子「……私は、私のために生きるんだ。一人でも……生きてやる」

マミ「あなたも……一人だったのね」

杏子「……何?」

マミ「私も……そうだったわ。事故で、家族を失った」

杏子「…………」

グラハム「不幸自慢をするわけではないが……私も、そうだ。もっとも、私は戦災孤児だが」

杏子「…………」

34: 2011/04/05(火) 19:31:55.89

刹那「……俺は、自らの手で親を殺めた。世界を、歪めてしまった。だが、今は違う……俺は世界を変えるために生きる。生きて、明日を掴む」

杏子「…………私は……」

さやか「あんたと……もう少し、話がしたいな」

杏子「…………」

刹那「……使い魔は俺が追う。後を頼む」

マミ「ごめんなさい、刹那さん。任せるわ」




35: 2011/04/05(火) 19:33:00.38

~マミ宅~


刹那(それが……何故、こうなっている?)


カチカチカチカチカチカチ

杏子「ゴッド、フィンガーーーーーッ!」
マミ「ツインサテライトキャノン、ティロ・フィナーレ!」
さやか「ああーっ! 私のエクシアがーっ!」
まどか「お、落ち着いてさやかちゃん。まだ私のキュベレイも体力残ってるし……」
さやか「ううううう、これだから格闘機はつらいよ……」

グラハム「早かったな、少年」

刹那「…………」

グラハム「彼女たちも、まだ子供……ゲームぐらいはする。それを通して、築かれるものもあると言うことだ」

36: 2011/04/05(火) 19:34:03.87

刹那「これもまた、対話の形の一つ……」

グラハム「いかにも。さて少年、ここにアニメのDVDBOXがあるわけだが」

刹那「…………」

グラハム「一緒にいかがかな?」

刹那「……問題は無い」

グラハム「良く言った。それでこそだ、少年!」




37: 2011/04/05(火) 19:34:33.32

~しばらくして~

マミ「あら、そろそろ夕食の時間ね。私、何か作ってくるわ」

まどか「あ、私も手伝いますっ」

さやか「じゃあ、私も……」

マミ「ううん、いいわ。キッチンに人が居すぎても困ってしまうし……」

 ちらっ

マミ(「あなたも、これで気兼ねなく話せるでしょう?」)

杏子(「……いらない気遣いってんだよ、そいつは」)

マミ(「そう? ごめんなさいね、気が利かなくて」)

杏子(「…………ありがと」)

マミ(「ええ。どういたしまして」)

まどか「マミさん?」

マミ「ごめんなさい。それじゃあ、行きましょうか」



38: 2011/04/05(火) 19:35:49.32

カチカチカチカチ

杏子「そう言や、さ」

さやか「何よ」

杏子「お前、何で魔法少女になったんだ?」

さやか「それは…………」

杏子「何だよ、私だけ話したってのにさ。……まあ、言いたくないんならいいけど」

さやか「…………の」

杏子「うん?」

さやか「そ、その……」



39: 2011/04/05(火) 19:36:52.59

杏子「ふうん……なるほどねえ」

さやか「な、何よ」

杏子「いや……何でもないさ。……って」

テレビ「ガンダムファイトォーッ!」
   「レディーッ!」
   「ゴォーッ!」

杏子「あっ! Gガンやってる!?」

グラハム「君もどうかな?」

杏子「見る見る! ほら、あんたも一緒に!」

さやか「えっ、ええっ? わっ、ちょっと、引っ張らないでよっ」



40: 2011/04/05(火) 19:38:03.56

マミ「ごはん出来たわよ。カレーだけど、食べられない人はいる?」

さやか「カレーが苦手な人なんていないだろうけど……ねえ、皆聞いてる?」

テレビ「だぁからお前は阿呆なのだぁーっ!」

杏子「…………」
グラハム「…………」
刹那「…………」
ティエリア≪…………≫
まどか「…………」
ほむら「…………」

さやか「……なんか、皆テレビに集中してるみたいですね。まどかまで……あといつの間にか転校生もいるし。不法侵入じゃないの?」

マミ「仕方が無いわ。面白いもの、Gガン。ついDVDBOX買っちゃうぐらいに」

さやか「はあ……」

マミ「後で美樹さんも見てみるといいわ、きっと気に入るはずだから。それより、今はカレーよそっちゃいましょう。手伝ってくれる?」

さやか「はいっ! おおっ、美味しそうなにおいがする!」



41: 2011/04/05(火) 19:40:16.63

 ガタッ

杏子「うまああああああああああああああいっ!」
 
さやか「うるさい。いや、おいしいけどさ」

まどか「マミさん、お料理がすごく上手なんですね。手さばきとか、慣れた感じで」

マミ「褒めてくれるのは嬉しいけど、そんなことはないわ。私なんて……」

ほむら「いえ、充分評価に値するわ。美味しい」

マミ「ありがとう。……ところで、あなたは?」

さやか「そうそう、あんた何でここにいんの?」

ほむら「……私は暁美 ほむら。実を言うと、今まで出待ちだったの」

まどか「えっ」

ほむら「なかなか入り込むタイミングがつかめなくて……」

さやか「えっ……なんか、ごめん」

ほむら「……気にしないで」

さやか「…………」

42: 2011/04/05(火) 19:41:24.69

 ガタッ

杏子「からあああああああああああああああああああああいっ!」

さやか「いやだからうるさいって」

グラハム「平和でいいことだな」

刹那「……ああ」

ティエリア≪……これは、平和と言えるのか?≫



43: 2011/04/05(火) 19:42:48.12

~食事が終わって~

テレビ「美しいな……」
   「はい……! とても美しゅうございます……!」
   「ならば……!」
   「「流派、東方不敗は!」」
   「王者の風よ!」
   「全身!」
   「系列!」
   「「天破侠乱!」」
   「「見よ! 東方は、赤く燃えている!!」」
   「…………」
   「師匠……? 師匠……! 師匠……!」


杏子「しぃぃしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

さやか「うう……師匠……ぐすっ」

ほむら「師匠……」

まどか「そんな……師匠が……」

グラハム「そうか……彼らは、拳による対話を成しえていたのだな……」

刹那「……これも、対話……」

ティエリア≪……戦いを通して、わかりあうことも出来る……≫



44: 2011/04/05(火) 19:44:50.84


テレビ「俺は、戦うことしかできない不器用な男だ。だから、こんなふうにしか言えない……
    俺は……お前が……お前が……お前が好きだ! お前が欲しいーっ! レイィィィィン!!」
   「ドモオオオオオオオオン!」


さやか「わお……」





テレビ「石!」
   「破!」
   「「ラアアブラブ! 天驚拳!!」」


さやか「ええええええええええええええ」

まどか「な、なんか……見てるこっちが恥ずかしい……」

ほむら「……いい発想」

マミ「石!」

杏子「破!」

グラハム「さあ、少年! ラアアアアブラブ!」

刹那「…………」



45: 2011/04/05(火) 19:47:46.85


テレビ「ガンダムファイトォーーッ! レディーッ!!」
   「「「「「ゴオーーーーーーッ!」」」」」

さやか「……うん、これは名作だわ。見てよかった」

まどか「面白かったね」

ほむら「……流石の今川」

杏子「終わっちまった……ああ……何かせつない……」

マミ「じゃあ次はWね」

さやか「えっ」



46: 2011/04/05(火) 19:50:36.07

テレビ「ふっ、ふふふふっ……はーっははははははははは!」

まどか「何だか、全然雰囲気が違う……」

ほむら「Gが異端なだけよ。私は好きだけど」

マミ「それにしても、初期のヒイロはキャラが安定してないわね」

杏子「そんでさ、さやか」

さやか「何?」

杏子「お前も、さっきみたいにやればいいんじゃないか? こう、お前が欲しいー! ってさ」

さやか「は、はあっ? いくら何でも、それは……」

ほむら「……そうね。試してみる価値はあるわ」

さやか「って、あんたも何よいきなり」

グラハム「思いの丈を伝えれば、何かは変わるはずだ。……かつては、私も愚直に愛を求めたものさ」

さやか「いや、グラハムさんまで……」

杏子「まあ、無理にとは言わないけどね」



47: 2011/04/05(火) 19:51:16.32

マミ宅、廊下

さやか「あ……あの、恭介? ごめんね、こんな時間に。うん、あの、あのさ、その、びっくりすると、思うんだけど」

杏子(「よし! いけ! 頑張れ!」)

まどか(ええ……!? さやかちゃん……!)

ほむら(もし上手くいけば、未来は劇的に変わるはず……)

マミ(何かすごいことになってる……案外乗せられやすいのね、美樹さん)

さやか「私……恭介のことが好き! 恭介が、欲しい!」

杏子(「いったぁーーーーーーーーーーっ!!」)

グラハム(「よく言ったさやかあああああああああ!」)



48: 2011/04/05(火) 19:51:53.78


~再びリビング~

杏子「……どうだった?」

さやか「うん……ちょっと、整理させれてくれ、って」

まどか「さやかちゃん、えらいよ。すっごく頑張った」

さやか「……ありがとう、まどか」

マミ「上手くいくといいわね。……もうこんな時間だけど、皆、大丈夫?」

まどか「あっ、すっかり忘れてた……」

さやか「あー……どうしよう」

刹那「戻るのなら、送っていく」

杏子「戻る、かなあ……」

マミ「いっそのこと、泊まっていく?」

まどか「いや、いくらなんでも悪いですよ」

マミ「ううん、そんなことないわ。私、こう言う風に皆で集まったの、初めてだから。その、泊まっていってくれたら嬉しいなあ、なんて」

さやか「……マミさん」

49: 2011/04/05(火) 19:52:59.50

マミ「どうしても、とは言わないけど……」

杏子「……じゃあ、泊まっていこうかな」

ほむら「……なら、私も」

マミ「本当!?」

さやか「……私も、お言葉に甘えようかな。まどかはどうする?」

まどか「マミさんがいいなら」

グラハム「私も、付き合わせてもらおうか。夜間の警備も必要だろう。……少年」

刹那「了解」

マミ「皆……!」

まどか「じゃあ、私、電話してきます」

さやか「私もっ」



50: 2011/04/05(火) 19:53:37.38

マミ「全員お風呂入った?」

まどか「えっと、グラハムさんの次に入った刹那さんがさっき出たから……」

さやか「皆すませたね」

杏子「流石に、そろそろ眠い……」

ほむら「もう随分な時間よ……明日は学校もある。早く就寝するべきね」

さやか「ああ、そう言えば学校あるんだ……明日しんどいだろうなあ」

マミ「じゃあ、お布団を敷きましょうか。リビングなら、人数分も大丈夫でしょう」



51: 2011/04/05(火) 19:55:00.61


マミ「それじゃあ、電気消すわね」

まどか「おやすみなさい」

さやか「おやすみー」

杏子「おー」

 パチッ

まどか「…………」

杏子「…………」

さやか「……くっ、ふふっ、ふ、ふふふっ」

マミ「……ふふっ、く……う、ふふふっ」

杏子「ふっ、ちょっと、笑ってる奴誰だよ、ふふふっ、あはっ、はははっ」

まどか「だ、駄目……こらえない、と、ふふっ」



52: 2011/04/05(火) 19:57:30.03

~マンションの外、共用廊下~

ほむら「……これでいいかしら」

刹那「……これは」

ほむら「……今、時間は止まっているわ。誰かに聞かれる心配はない」

グラハム「時間を止めるとは……まさしく魔法だな」

ティエリア≪だが、事実のようだ。……計器類にも結果が出ている。手品や幻覚の類で、機械をごまかせるとは思えない≫

ほむら「……あなたたちのことは、調べさせてもらったわ。インキュベーターの目的については、知っていると見ていいのね」

刹那「……ああ。お前は、一体何者だ?」

ほむら「魔法少女よ。……あなたたちと、大体同じことを知っている、ね」

グラハム「インキュベーターについても、か……何故、君がそれを知り得ている?」

ほむら「私は、未来から時間を逆行してきた存在……言うとすれば、タイムトラベラー。……信じる?」

53: 2011/04/05(火) 20:00:36.79

グラハム「……目を見ればわかる。暁美ほむら……本気と見た」

刹那「インキュベーターの言うイレギュラーとは、そう言う意味か」

ほむら「それはあなたたちも同じ。……私は、いくつかの未来をこの目で見てきたわ。その中に、あなたたちの存在は一度としてなかった」

刹那「…………」

ほむら「けれど、今のところ、この世界は最も上手く行っているわ。……鹿目まどかは、魔法少女になっていない」

グラハム「…………」

ほむら「美樹さやかと志筑仁美の間にも確執は生じていないし、巴マミは生存、インキュベーターが用意した不和の種、佐倉杏子の懐柔にも成功している」

刹那「……何が言いたい」

ほむら「……このままいけば、自然、ワルプルギスの夜と対面することになるでしょう。敵は強大……そうなれば、私達の協力は必須になる」

グラハム「信頼関係を結ぼう、と言いたいのかね?」

ほむら「……信用を置けるに越したことはないわ」

グラハム「反対する理由はないな。少年、君はどうだ」

刹那「問題はない……だが、一つ聞きたいことがある」

ほむら「…………」

刹那「お前は、何故一人であろうとする」

ほむら「……私は、手を組もうと誘いに来たのだけど」

54: 2011/04/05(火) 20:02:14.52

刹那「お前の言動の端には、人を突き放すようなものが感じられる。……俺たちなら、分かり合い、手を取り合うこともできるはずだ」

ほむら「……私は、もう誰にも頼らない。そう決めたから。……今回のことも、あなたたちを頼るわけではないわ。あくまで利用するだけ」

グラハム「身持ちが堅いな。一人では、極に到達することなど出来んぞ」

ほむら「…………」

グラハム「人間には、背を預けられる友が必要だ。……君も、それは理解しているのだろう?」

ほむら「…………」

グラハム「すまない、説教をするつもりはなかったのだがね」

ほむら「……用件はこれだけ」

 ヒュンッ

グラハム「消えた……!? いや、先の時間停止とやらか。何と言う機動性だ、魔法少女……」



55: 2011/04/05(火) 20:04:25.61

~翌朝、マミのマンション、リビング~


杏子「くっ……う~、あぁ……」

マミ「起きたみたいね。おはよう、佐倉さん」

杏子「うん……? ああ、おはよう。……おっと、悪いな、寝たままじゃ布団しまえないか。……ちょっと、顔洗ってくる」

マミ「洗面所は廊下の右手側にあるからね」

杏子「はいよ」

マミ「後、朝ごはん、パンとお米とどっちがいい?」

杏子「私はどっちでもいいや。多いほうで」

マミ「了解」



56: 2011/04/05(火) 20:08:28.47

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

まどか「今更だけど、すごい人数だよね……よかったんですか、マミさん?」

マミ「構わないわ。そこまで困っているわけじゃないし、中々楽しいもの」

杏子「にしても、全員朝早いよなあ」

さやか「あんたが遅いんでしょ。こっちは学校が……そう言えば、あんた学校行ってるの?」

杏子「うんにゃ、行ってない。家も無いし」

刹那「……寝床はどうしている?」

杏子「ホテル。雨風がしのげりゃどうでも」

まどか「えっ……」

グラハム「……年頃の少女には、やや酷な環境だな」

マミ「じゃあ、いっそのことここで暮らす?」

杏子「何ぃ?」

マミ「せっかくだし、どう?」

杏子「そこまで世話になるわけにゃあいかないよ。大体、あんただってそう余裕があるわけじゃあないんだろう?」

マミ「きっとどうにかなるわ。来年になれば、アルバイトだって始められるし」

杏子「……あんた、世話焼きが過ぎるよ」

57: 2011/04/05(火) 20:10:20.72

マミ「世話焼きも何も……これは、半分以上わたしのためだから」

杏子「…………そうか。一人ぼっちは、寂しいもんな」

ほむら「…………」

グラハム「…………では、私も同席させてもらっていいかな?」

杏子「はあ? どう言う意味だよ?」

グラハム「労働力は必要だろうと思ってね。私の年齢なら、稼ぎを得ることも出来るだろう。……身元がはっきりしない以上、下手は打てないが」

マミ「でも、グラハムさんに悪いんじゃ……」

グラハム「どうと言うことはないさ。強制するつもりはないが、検討を頼みたい」

刹那(「……お前は」)

グラハム(「君を付き合わせるつもりはない。これは、私の判断だ。……彼女らが自立できれば、私も去ろう」)

杏子「……考えておくよ」

マミ「ええ。お願いね」



58: 2011/04/05(火) 20:12:17.23


~朝、通学路~


まどか「昨日はお世話になりました、マミさん」

マミ「気にしないで。……また来てね。待ってるから」

まどか「はいっ。そう言えばさやかちゃん、上條くんのことは……」

さやか「うん。まだ、連絡はないんだけどさ。必ず答えは出す、って」

ほむら「……成功を祈っているわ」

さやか「……ありがとう」

ほむら「ええ」




59: 2011/04/05(火) 20:13:21.10

同時刻、見滝原市内


杏子「…………」

刹那「…………」

杏子「…………何でついてくんのさ」

刹那「頼みがある」

杏子「頼み?」

刹那「ソウルジェムを、貸して欲しい」

杏子「ソウルジェムを? ……理由は?」

グラハム「興味以上の対象だと言うことさ」

杏子「答えになってない。……まあ、いいけど。手荒に扱うなよ」

グラハム「その対応に感謝する」

60: 2011/04/05(火) 20:15:04.53

刹那(ティエリア)

ティエリア≪ああ。解析開始………………完了。もう大丈夫だ≫

刹那「すまない、助かった」

杏子「早っ。何だよ、一体……まあいいや、それじゃあな」

グラハム「どこへ行こうと言うのかね?」

杏子「……魔女探しだよ。グリーフシードを拾いにね」

グラハム「そうか。では、行こう」

杏子「…………は?」

グラハム「私は職を探す、君は魔女を探す……目的は同じだな」

杏子「いや全然違うだろ。何ごく自然に混ざろうとしてんだ」

61: 2011/04/05(火) 20:15:34.16

刹那「……万が一、がある。加えて、マミ達は放課後まで動けない。午前中は、俺たちが行動する必要がある」

杏子「いや、俺‘たち’ってあんた……」

グラハム「嫌とは言わせんよ。フラッグファイターには意地がある」

杏子「…………ああもう、好きにしろよ」

グラハム「ふっ……好意を抱くよ」

杏子「あん?」

グラハム「あえて、もう一度言わせてもらおう。興味以上の対象だと言うことさ」

刹那(「……犯罪だな」)

グラハム(「熟知している」)

ティエリア≪なおさらまずいだろう≫



62: 2011/04/05(火) 20:19:56.57

三十分後

グラハム「……よし。教員で行くとしよう」

刹那「…………免許はあるのか」

グラハム「あるわけが無い」

刹那「…………」

ティエリア≪…………≫

杏子「……じゃあ、無理じゃないか」

グラハム「その道理、私の無理でこじ開ける!」

杏子「どうすんのさ?」

グラハム「少し待ちたまえ。……期待には応える、とだけ言っておこう」



63: 2011/04/05(火) 20:20:26.34

~十分後、路地裏~

杏子「……あ」

 てってってってっ

ねこ「…………」

杏子(ねこ……)

ねこ「…………」

 きょろきょろ

杏子(周りには、誰も居ないな……あいつらは、今たい焼き買いに行ってるし)

ねこ「…………なぁお」

杏子「……ほら、こっちおいで」

 てってってっ

ねこ「…………」

杏子(お、こっち来た……慣れてるな、こいつ)

64: 2011/04/05(火) 20:26:35.93

ねこ「…………なぁご」

 なでなで

杏子「えへへ、よしよし。なかなか利口じゃないか」

ねこ「あぁご」

杏子「ふんふんふん……♪ ねこねこにゃんこ、にゃんにゃんこ♪」

ねこ「あぁお」

杏子「にゃんにゃんにゃんこ、にゃんにゃ……」

 ガサッ

刹那「…………」

杏子「…………」

66: 2011/04/05(火) 20:27:29.48

グラハム「失礼。続けてくれたまえ」

杏子「……忘れろ」

グラハム「失礼だと言った。……気にする必要は無い、好きなだけ堪能するといい」

杏子「忘れろ」

グラハム「…………私も、猫は好

杏子「忘れろ」

グラハム「……にゃんにゃんにゃ

杏子「やめろォ!」




67: 2011/04/05(火) 20:30:01.33


翌日

さやか「ねえねえ、今日新しい先生が来る、って聞いた?」

仁美「いえ、初耳ですわ」

まどか「優しい人だといいんだけどなあ」

さやか「この後の一時間目の担当だって」

仁美「楽しみのような、そうでないような……」



68: 2011/04/05(火) 20:32:54.92

~一時間目~

キーンコーンカーンコーン ガラッ

さやか(来たっ!)

まどか(どんな人かな……)

グラハム「諸君、朝の挨拶、即ちおはようと言う言葉を、謹んで贈らせてもらおう」

まどか「…………えっ?」

さやか「…………は?」

ほむら「…………」

女子生徒1「おー、イケメン!」

女子生徒2「外人? 金髪だけど……」

女子生徒3「英語の人じゃないのにね」

グラハム「おっと、自己紹介がまだだったな。私の名はグラハム・エーカー。御覧の通り、軍人だ」

 ガラッ

メガネ刹那「……教師だ」

さやか「えっ」

まどか「えっ」

69: 2011/04/05(火) 20:36:10.34

女子生徒2「もう一人来た!」

女子生徒1「こっちもイケメン! そしてメガネ!」

女子生徒3「褐色……中東の人かな」

メガネ刹那「……隣の男と同じく、数学の授業を受け持つことになった刹那・F・セイエイだ」

女子生徒2「せ、刹那・F……?」

女子生徒3「すごい名前だねえ」

女子生徒1「赤フレームメガネ! 赤! 赤枠! レッドフレーム!」

女子生徒2「……あんた何でそんなメガネに食いついてんの?」

男子生徒L「ガーベラストレートォォォォォォ!」

男子生徒S「うわっ! 何だよ、いきなり教室で木刀なんか振り回して……また戦争がしたいのか、あんたは!」

男子生徒D「見えた! 真剣、白刃取り!」

男子生徒L「うおっ、見切りやがった!?」

さやか「……もう何がなんだか」

グラハム「まあいい。授業を始めるぞ」

まどか「全くよくないと思うんですけど……」



70: 2011/04/05(火) 20:39:21.18

十分後

グラハム「式から出たこの数を代入して――――」

さやか(授業は至って普通だ……)

まどか(普通でいいはずなんだけどなあ……)

 キュピーン

男子生徒A「む……この感じ。邪気が来たか!」

さやか「と思ったら、何急に?」

男子生徒K「この粘つくような感じ……強い悪意を感じる」

さやか「はっ?」

男子生徒J「こりゃ、ちょっとヤバいんじゃない?」

さやか「えっ?」

71: 2011/04/05(火) 20:41:47.77

だ~んだだ~ん! だんだんだんだ~んだだ~ん!

 ガラッ

喧嘩番長「武力介入!」

さやか「うわっまた何か出てきた」

ほむら「学ラン……?」

杏子「あれは……喧嘩番長だ!」

喧嘩番長「はいなァ」

さやか「喧嘩番長……? と言うかあんた何でここに」

グラハム「私が呼んだ」

さやか「いや何やってんですか先生」

杏子「なっ、何だよ、あたしがいちゃ悪いって言うのかよ?」

さやか「悪いよ。もろ部外者でしょあんた」

杏子「…………」

まどか「ダメだよさやかちゃん。そんな寂しいこと言っちゃ」

さやか「あっ……ごめん」

杏子「……うん……」

72: 2011/04/05(火) 20:44:18.04

女子生徒T「ガロード……」

喧嘩番長「仲がよろしくていいなあ! ええ!? お二人さんよぉ!」

ティエリア≪……刹那。あの人間から、ソウルジェムと同じ反応を検出した≫

刹那(……魔法少女だと言うのか?)

ティエリア≪可能性はある。インキュベーターが派遣した、刺客かもしれない≫

刹那(……鹿目まどかや彼女の周囲の人間を窮地に追い込み、契約に持ち込ませる算段か)

ティエリア≪そうと見ていいだろう≫

喧嘩番長「俺は喧嘩番長……喧嘩番長は喧嘩の中だけで生きる男……愛だの、恋だの、デリケートに好きしてだの!」

マミ「えっ」

さやか「……マミさん? 何でここに」

マミ「新しい先生に呼ばれて……いや、まさか新しい先生がグラハムさんだったとは思わなかったけど」

さやか「いや今授業中なんじゃ……」

グラハム「その道理、私の無理でこじ開けさせてもらった」

さやか「本当に何やってんですか先生」

73: 2011/04/05(火) 20:47:15.67

男子生徒G「ともかく……喧嘩番長とか言うお前、何しに来たんだよ!? ティファが怖がってるだろ!」

女子生徒T「ガロード……」

喧嘩番長「仲がよろしくていいなあ! ええ!? お二人さんよぉ!」

ティエリア≪……刹那。あの人間から、ソウルジェムと同じ反応を検出した≫

刹那(……魔法少女だと言うのか?)

ティエリア≪可能性はある。インキュベーターが派遣した、刺客かもしれない≫

刹那(……鹿目まどかや彼女の周囲の人間を窮地に追い込み、契約に持ち込ませる算段か)

ティエリア≪そうと見ていいだろう≫

喧嘩番長「俺は喧嘩番長……喧嘩番長は喧嘩の中だけで生きる男……愛だの、恋だの、デリケートに好きしてだの!」

マミ「えっ」

さやか「……マミさん? 何でここに」

マミ「新しい先生に呼ばれて……いや、まさか新しい先生がグラハムさんだったとは思わなかったけど」

さやか「いや今授業中なんじゃ……」

グラハム「その道理、私の無理でこじ開けさせてもらった」

さやか「本当に何やってんですか先生」

74: 2011/04/05(火) 20:49:57.81

喧嘩番長「とにかくだ! 俺はそこいらの連中の色恋沙汰を見ると、虫唾が走るんだよ!」

男子生徒D「つまりは何だ、俺たちにファイトを申し込みに来たのか?」

喧嘩番長「おうおう、その通りよ! 結構じゃねえか」

メガネ刹那「この人数を相手に……氏ぬ気か?」

喧嘩番長「俺は生きるぜ! 他人の生き血を啜ってでもな!」

男子生徒01「……ターゲット、確認……任務了解。障害を排除する」

男子生徒05「あいつに正義はない……! 正義は俺が決める!」

男子生徒02「っておいおい、お前ら、本気でやるつもりかよ? 部外者と喧嘩なんざ出来るのか?」

男子生徒01「お前には出来ない。俺には出来る」

男子生徒02「……へいへい。私が悪ぅございました」

喧嘩番長「まずは、一番に名乗り出たお前からだァ!」

男子生徒D「ガンダムファイトォッ! レディーッ、ゴォーッ!」



76: 2011/04/05(火) 20:54:50.07

 -THE TIME OF RETRIBUTION-
 -BATTLE 1-
 -DECIDE THE DESTINY-

喧嘩番長「イっちまえよォ!」

男子生徒D「俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ! ばぁぁぁぁぁくねつ! ゴッド!」

喧嘩番長「反射と思考の――――」

男子生徒D「フィンガァーッ!!」

喧嘩番長「融ごぼォァッ!?」

杏子「ガンダムファイト国際条約第一条!」

マミ「頭部を破壊された者は、失格となる!」

ほむら(……洒落になっていない)

男子生徒D「ヒィィートォッ! エンドォッ!」

 -FATAL K.O.-



77: 2011/04/05(火) 20:58:09.71

喧嘩番長「な、何だ……この、理不尽な強さは……」

男子生徒D「お前の拳には、魂がこもっていない。そんな強さは、うわべだけのものに過ぎん」

喧嘩番長「何だとォ……?」

男子生徒D「心の強さが、己の強さだ。心と力が揃ってこそ、人は真に強くなれる」

男子生徒K「……思いだけでも、力だけでも、駄目なんだ」

まどか(心の強さが、己の強さ……)

男子生徒R「これで言い訳つくだろ、帰っちまえ!」

男子生徒B「そもそも、ここは学校なんだ! 勉強する気の無い奴は……ここから、出て行けぇーっ!」

喧嘩番長「おぐぅっ!?」



78: 2011/04/05(火) 20:59:53.60

~放課後、教室~

さやか(なんかすごい疲れた……)

恭介「……さやか」

さやか「あっ……! 恭介……」

恭介「……今から、いいかな? 話したいことがあるんだ」

さやか「えっ……! う、うん!」



79: 2011/04/05(火) 21:02:07.86

~数分後、再び教室~

まどか「あ、さやかちゃん。どこか行ってたの?」

さやか「ごめん、待たせちゃった?」

まどか「ううん、気にしないで。……何か、いいことあった?」

さやか「えっ? ……そう、見える?」

杏子「なんか、やけにニヤついてるけど」

さやか「えっと……って、あんたまだいたんだ。怒られなかったの?」

杏子「許可取ってるからね。しかし、いやに嬉しそうじゃないか」

グラハム「……瞳の意思が強くなった。恋のせいかな?」

さやか「!」

まどか「それって、もしかして」

さやか「ああ……いや、うん……その」

82: 2011/04/05(火) 21:07:32.16

杏子「……なるほど」

グラハム「そうか。この私、グラハム・エーカーが、君を祝福しよう」

 ごそごそ

杏子「……食うかい?」

さやか「これ……」

杏子「あたしの‘奢り’だ」

さやか「……ありがと。お礼は言っとく」

刹那(そうか……彼女は、対話を成し遂げたのか)

ティエリア≪そのようだな……今は、ただ祝っておこう≫

刹那(ああ)

ほむら「……おめでとう」

さやか「……ありがとう、‘ほむら’」

ほむら「……!」

グラハム「だが、もしそうだとしたら、彼と一緒に下校すべきではないかな?」

さやか「そうしようとは思ったんだけど……返事もらったら、こう、いてもたってもいられなくなって……」

83: 2011/04/05(火) 21:10:10.09

杏子「逃げてきた、ってわけだ」

さやか「に、逃げるって……! ……まあ、間違っちゃいないけどさ。それに、いざ顔を会わせても恥ずかしくってろくに話せないし」

まどか「そっかぁ。ふふっ、さやかちゃん、かわいいなあ」

さやか「茶化さないでよ、もう」

グラハム「……平和、だな」

メガネ刹那「……ああ。しかし、何故俺までお前の仕事に付き合う必要が――――」

グラハム「さあ、少年。教師の職務はまだあるぞ。職員室に赴くとしよう」

メガネ刹那「…………」



84: 2011/04/05(火) 21:11:41.95

~しばらく後、マミ宅~


杏子「まあ、そう言うわけさ」

マミ「へえ……テレパシーである程度は聞いていたけど、ねえ。せっかくだし、何かお祝いをするべきかしら」

グラハム「魅力的な提案だな。その旨を良しとする」

 シュンッ

ほむら「…………失礼」

杏子「うひゃっ!? ……何だよ、いきなり入ってくるな! びっくりするじゃないか!」

ほむら「失礼だと言った。……話がある」

マミ「話?」

グラハム「言ってみたまえ。さあ、さらけ出すと良い……君と言う存在を、その全てを!」



85: 2011/04/05(火) 21:13:38.28

マミ「……ワルプルギスの夜……」

ほむら「今までの魔女とは格が違う。そして、‘倒せば魔法少女の力を失う’ことになるわ」

杏子「…………」

ほむら「……心構えを、しておいて」

マミ「…………」

グラハム「……そう悲観するな」

刹那「ああ。始める前から諦めていては、何も生まれない」

ほむら「……美樹さやかには、私から伝えておく。それじゃあ」

マミ「……待って」

ほむら「…………」

マミ「もう少し、話を聞かせてもらえるかしら」

ほむら「…………」



86: 2011/04/05(火) 21:15:00.85


~数時間後~

ほむら「……ガンダムを生産したなら、宇宙に上がる前にGP01を経由してデンドロビウムを開発するべきね。一年戦争なら単騎駆け出来るわ」

杏子「トロピカルドムからリック・ディアスを作って、Zを設計した方がいいんじゃないか?」

グラハム「最終目標はνガンダムだ……NT用モビルアーマーも手に入れなければなるまい」

刹那「後々のことを考えると、ジェガンを育成する必要もある」

マミ「どうするか絞らないと、経験値が厳しくなるわね。これ、初代だし」

ほむら「……後腐れなくじゃんけんで決めましょう。最初はぐー、じゃんけん」

 ぽいっ


87: 2011/04/05(火) 21:16:25.32

ほむら「じゃあGP03ルートね。完成したら、次はF91とV2を目指す」

グラハム「口惜しさは残るが……」

マミ「決定したことだし、さくっと行きましょう。……実は、まだ一度もクリアしたことないんだけどね」

杏子「無印はやたら難しいからな。すぐに詰むし」

刹那「だが、不可能ではないはずだ」

マミ「ええ。……やりましょう、一日クリアを」



88: 2011/04/05(火) 21:17:44.15

杏子「……? おい、そこ核ミサイルの範囲内」

マミ「えっ?」

ボーン

マミ「……私の……エックスが…………嘘だと言ってよ……」

ほむら「私達は何度でもやり直せる……ロードしましょう」

マミ「ごめんなさい……」



89: 2011/04/05(火) 21:18:13.20

~更に数時間後~

杏子「何も考えずに撃て!」

ほむら「あなたに、力を……」

グラハム「もはや、サザビーは電子レンジに入れられたダイナマイト……逃げ場はない!」

刹那「狙い撃て、マミ!」

マミ「ツインサテライトキャノン、いっけぇー!」

 ゴウッ ボボボッ

ほむら「……いった……!」

杏子「勝った……!」

マミ「やったああああああああああああ!」

グラハム「最大の賛辞、天晴れである!」

刹那「俺たちの……勝利だ……!」

90: 2011/04/05(火) 21:20:31.25

マミ「やったのね……私たち、みんなで……!」

 パチパチパチパチ

ほむら「おめでとう」

 パチパチパチパチ

杏子「おめでとう」

 パチパチパチパチ

グラハム「君に祝福を」

 パチパチパチパチ

刹那「おめでとう」

 パチパチパチパチ

マミ「ありがとう……ありがとう……!」




91: 2011/04/05(火) 21:20:59.07

ほむら「……ワルプルギスの夜についての話をしに来たのに、何故Gジェネ(初代)をプレイしていたのかしら」

杏子「成り行きってやつだ」

ほむら「……あなたも、何故巴マミの家に?」

杏子「……成り行きってやつだ」

ほむら「……そう」

マミ「じゃあ結構な時間だし、晩ごはんにしましょうか。何か食べたいものはある?」

杏子「オムライスがいい」

マミ「皆、オムライスでいい?」

ほむら「ええ」

刹那「問題はない」

グラハム「その旨を良しとする」

マミ「なら、決定ね。少し待っていて」

ほむら「……私も手伝うわ」

マミ「ありがとう、暁美さん」



92: 2011/04/05(火) 21:22:06.03

グラハム「……彼女も、馴染んでいるようで何よりだな」

杏子「……ああ。にしても、まさかあいつもあたしも、この中に入ることになるとは思わなかったけど」

刹那「人間は、生きている限り変わっていける。……お前も、変革を成し遂げたんだ」

杏子「……えっと、ありがとう?」

刹那「ああ」



93: 2011/04/05(火) 21:26:33.71


「「「「ごちそうさまでした」」」」

マミ「おそまつさまでした」

ほむら「……手間をかけさせたわね」

マミ「気にしないで。やりたいからやっているんだもの」

杏子「……あんたも、本当に世話焼きだよな」

マミ「褒め言葉として受け取っておくわ。……それにしても、まさか二人が先生になっていたなんて……あの後私のクラスにも来たけど……」

杏子「ああ、気づいたらガンダムウォーしてたからな。もうわけがわからん」

94: 2011/04/05(火) 21:28:09.18

~回想~

御大将「闘争本能の赴くままに!」

変態兄弟「我らの世界に栄光あれ!」

メガネ刹那「……どうにかして、この紛争を止めなければ……!」

男子生徒Y「おい、ガンダムウォーしろよ」

御大将「持ってるわきゃねえええええええだろおおおおおおおおおおお!!」

 ガラッ

男子生徒G「ガンダム、売るよ!」

メガネ刹那「……自分のクラスに戻れ、二年生」

~回想終了~

95: 2011/04/05(火) 21:31:01.28

グラハム「このような経緯があったのだがな」

杏子「生徒に乗せられるなよ教師。ってか学校でカードゲームすんな」

マミ「いいじゃない。楽しかったし」

刹那(……彼女は受験を控えているはずだが)

(ロックオン「大丈夫だ、問題ない」)

刹那「!?」

マミ「刹那さん?」

刹那「いや……何でもない」




103: 2011/04/06(水) 19:45:38.26

~そんなこんなで一週間後~

まどか「……いよいよ、今日、だね」

さやか「ワルプルギスの夜か……正直、ちょっと不安」

杏子「何だよ、らしくないじゃんか。……やる前から負けてどうすんのさ」

マミ「気持ちはわかるけれど……」

グラハム「だとしても、ここで退くわけにはいかん。この戦いは、人類が生きるための戦いだ……!」

刹那「俺たちが、俺たちの意思で戦うんだ……未来を切り開くために」

ほむら「……行きましょう」



104: 2011/04/06(水) 19:49:41.97

~結界内部~

ほむら「予想通り……まだ完全には目覚めていないようね。結界に収まっているうちに、決着を着けないと」

さやか「……これでもまだ寝起きだって言うの? ……何だか、すごい嫌な感じがする」

まどか「……やっぱり、私が魔法少女に……」

ほむら「それは駄目。……あなたはここで待っていて。……‘杏子’、お願い」

杏子「はいよっ」

 ザッ パキン

まどか「あ……」

ほむら「……確認するわ。結界は張っている? ……防壁は完全?」

杏子「ああ。少しは信頼しなよ」

ほむら「……了解。あなたを信じるわ」

杏子「おうさ」

105: 2011/04/06(水) 19:55:40.84

グラハム「準備は万端……行くぞ!」

マミ「はい!」

さやか「うん!」

ほむら「ええ!」

杏子「ああ!」

刹那「俺たちが……破壊する!」




107: 2011/04/06(水) 20:00:48.11

 粒子ビームが、結界を覆う灰色の空を切り裂き、ワルプルギスの夜へ迫る。
 真っ直ぐに飛んだ弾丸は、その巨躯に直撃。
 爆発を巻き起こし、敵手をその一撃の下に葬り去る。


 ……はず、だった。
 しかし、変わらず。GNソードVの射撃を受けてもなお、最強最大の魔女は悠然とそびえている。
 
 硬い。分厚い装甲が、攻撃を阻んでいるのだ。
 火力においては抜きん出ているモビルスーツの兵装を用いてこれなのだ、魔法少女の武器でもってしても、そう簡単に貫けるものではあるまい。
 マミのマスケット銃も、さやかの剣も、杏子の槍も、ほむらの重火器も。その一つとして、充分な成果を挙げられていない。

 その上、相手は物言わぬ仏像ではないのだ。

 反撃とばかりに、ワルプルギスの夜の体から、閃光が迸る。
 血の様に赤い、真紅の色。擬似太陽炉の粒子を、思い出させた。

 記憶の中のビーム兵器に等しい弾速のそれが、襲い来る。

108: 2011/04/06(水) 20:04:39.40

 避ける、防ぐ、流す。
 各々の方法でやり過ごす中、不意に、鈍い音がした。
 遅れて上がる、苦悶の声。
 引かれて振り向けば、被弾したのは杏子。結界を張り、多少なりとも消耗したことが災いした。

「杏子!」

 グラハムの叫びが、結界の中にこだまする。
 しかし、魔女は情など持ち合わせていない。

 宙へ投げ出された杏子へ、追撃。数は、先の二倍に昇っている。
 まずい。咄嗟に刹那は飛び出し、


 かけて、動きを止める。
 杏子を、見失ったのだ。視界から、忽然と消えうせた彼女は、今、どこに?

 周囲を一瞥すると、赤い影が見つかる。
 同時、長い黒髪が、風にたなびいた。

 ほむらだ。彼女が、時間を止めて救助したのだろう。

109: 2011/04/06(水) 20:09:30.60

 行き場を失った攻撃の光は、刹那たちへ進路を変更した。
 文字通り光速で、敵対者の息の根を止めるべく直進してくる。

 いくら時間停止があるとは言え、連続で使用しては魔翌力を浪費してしまう。
 ならば、ここは自らがフォローに入るべきだ。
 そう決めると、刹那は前に躍り出て、仲間へ指示を飛ばす。

「俺の後ろに着け!」

 素直に、皆が飛んでくる。
 範囲を確認すると、刹那はGNフィールドを起動。
 球体の防壁を発生させ、背の友軍を守り抜く。
 ぶつかりあい、光線とGNフィールドが互いの身を削り合う。

「ちょっと、あんた、大丈夫!?」
「……ああ。まだ、動ける」

 激突の甲高い音に混じって聞こえる、焦燥を隠せないさやかの声と、やや覇気に欠ける杏子の声。

110: 2011/04/06(水) 20:13:12.59

「いかんな……このまま各個撃破されては、手詰まりになりかねん」

 グラハムも、次の一手を探りかねているようだ。
 いつもの余裕が、感じられない。

 そうだ、どうにかしなければなるまい。
 このままでは、ジリ貧だ。
 手も足も出ずに、ただ追い込まれてくびり殺されるだけ。

 ならば。

「……私達二人で、戦況に埒を開ける。少年、いけるな?」

 グラハムも、同じ結論に行き着いたようだ。
 頷き、肯定で返すと、刹那はGNフィールドの出力を調整、余剰エネルギーをGNドライヴに回す。

「私と少年の援護を頼む。あれに、風穴を開けてみせよう」

 策がある。
 そう気づいた皆は、無言を返答として、了承の意を示した。
 この一撃に、全てをかけるしかない。
 そう、わかっているのだ。

111: 2011/04/06(水) 20:18:49.96

「……火線が途切れた瞬間に出る。タイミングを」
≪了解……予測時間を算出。……残り五、四……≫

 ターミナルユニットのティエリアが、演算を開始する。
 奇策は二度も使えない、チャンスは一度きりだ。

≪三、二、一 ――――今だ!≫

 カウントに同調し、GNフィールドをカット。
 弾かれたように、駆ける。
 向かうは、敵の本丸。至近距離から、全力の一発を叩き込むのだ。
 後方の仲間達も、同じように散開して、ワルプルギスの夜へ向かう。

 向こうも、ただしてやられるばかりではない。
 迎撃とばかりに、弾幕を張る。

 それらを、二人は最低限の動作でいなす。
 刹那も、グラハムも、エースパイロットだ。そう簡単に当たるものではない。

112: 2011/04/06(水) 20:23:13.62

 それでも、ケタが違う。
 ワルプルギスの夜に近づけば近づくほど、その拒否は色濃くなっていく。

 だが。彼らには、仲間がいる。
 刹那を狙うそれを、さやかが切り裂き、ほむらが弾く。
 グラハムを追い回すそれを、マミが打ち落とし、杏子が逸らす。

 止まらない。止められる、わけがない。
 絆の力を得た二人が、突き抜ける。いよいよ、ワルプルギスの夜へ肉薄したのだ。

「少年!」
「了解!」

 合図は、それだけで事足りる。
 ダブルオークアンタが、ブレイブが、淡い赤に染まった。
 GNドライヴから、粒子が噴出する。

「「トランザム!!」」

 高濃度圧縮粒子を開放するトランザムには、機体の持つ殲滅力を限界まで引き上げる効果がある。
 それは即ち、敵機を仕留めるための技を放つと言うことだ。

 ブレイブの、GNビームサーベルが。
 ダブルオークアンタの、GNソードVが。
 赤き衣を刀身にまとい、その切れ味を発揮する。

「禍根を、断つ!」
「目標を、駆逐する!」

 一瞬で、二撃。
 ワルプルギスの夜の巨体に、斬撃の傷跡が刻み込まれた。


113: 2011/04/06(水) 20:26:34.91

 しかし。

 しかし、それだけだ。
 傷がついた、だけ。ワルプルギスの夜は、身じろぎ一つしない。
 海に角砂糖を溶かすようなものだ。質量が、力量が、技量が、違いすぎる。

 それが、目覚めのきっかけとなったのか。
 懸命に攻撃を続ける二人が、吹き飛ばされる。

 ワルプルギスの夜が、真の力を解放したのだ。
 その、余波だけで。空が、怯えた。世界が、震えた。

 ソウルジェムにその波を受ける魔法少女の影響は、大きい。
 ほむらの、さやかの、マミの、杏子の鼓動が、一際強くなる。

 喉が渇く。冷や汗が止まらない。
 あれは、危険だ。
 頭でもそれは理解できたし、何より、体が、動物的な本能が、そう警鐘を鳴らし続けている。
 今になってようやく、彼女らは自身の行為が無謀であったと悟った。

114: 2011/04/06(水) 20:30:19.18

 ――――勝てない。勝てっこ、ない。
 あんなものに。あんな、化物に。
 どうやって、抗えと言うのか。
 どうやって、勝ちを掴めと言うのか。

 無理だ。そんな方法など、ない。

 心が、暗くなる。灰色に、埋め尽くされる。

 ああ、これが――――




 ――――絶望。



115: 2011/04/06(水) 20:33:35.10

 背中から、空中に浮かぶビルへ叩きつけられる。
 ダメ押しとばかりに、鳩尾に鉄骨が突き刺さった。

 こひゅ、と、間抜けな音がした。
 空気が抜けた音だろうか。

 ――――肺が、潰れたか。
 そう冷静に判断していても、ほむらの頭は全く回っていない。
 咳き込みながら、顔を上げる。
 目に入るのは、荘厳なまでの威容を誇る魔女と、


 叩きのめされる、仲間の姿。

 さやかが、切り裂かれる。
 マミが、殴り飛ばされる。
 杏子が、踏み潰される。
 刹那が、噛み砕かれる。
 グラハムが、刺し貫かれる。

 相手が血反吐を吐き、涙すら流しても、魔女はその暴虐を止めない。
 人形で遊ぶ子供のように、残酷さすら感じさせないほどに呆気なく、ワルプルギスの夜は彼らを蹂躙する。

116: 2011/04/06(水) 20:36:37.56

 ほむらを含め。全員まとめて、放り投げられた。
 派手に空を舞って、地面に打ち付けられる。

 そのまま。

 誰も。
 誰も、立てない。
 神に等しいその力の前に、成す術なく倒れ伏す。

 ほむらの脳に、諦観の念が浮かぶ。
 ああ。やはり、駄目なのか。
 まどかを、魔女にする他ないのか?
 親友を、見頃しにするしかないのか?

117: 2011/04/06(水) 20:39:15.50

「……駄目、なの……?」

 知らず、声に出ていた。
 答えは、もう出ている。しかし、応えは、ない。
 ごぷっ、と、口の隙間から血が吹き出る。
 臓器もいくつか、出て来そうだった。

「未来は……決まっているの……?」

 答えは、とっくに決まっていた。しかし、誰も、応えられない。
 そうだ、彼女の仲間は皆、今なお氏のふちに瀕している。
 応えられる、わけもない。

「運命は……変えられないの……?」

 答えは、わかりきっている。誰も、応えては、くれない。
 軋む首を動かして、遠くのまどかを、見やる。
 彼女は、泣き崩れていた。
 膝をつき、ただ嗚咽を繰り返している。

「神の作った……絶望の運命のままに……踊らされるだけなの……?」



「……未来を作るのは、運命ではない……!」

 応えが、あった。
 息を、飲む。
 地面に伏していた刹那が、瀕氏の体をひきずって尚、立ち上がろうとしていた。

118: 2011/04/06(水) 20:42:11.50

「この世界に、神はいない……! 未来を切り開くのは……俺たちの、意思だ……!」

 息も、絶え絶えだ。
 とても、何かを出来るようには見えない。

 それでも。
 彼の目には、揺るがぬ意思があった。
 金色の瞳は、ただ敵を――――その先にある未来を、真っ直ぐに見据えている。

「よく言った、少年……!」

 もう一人、立ち上がった。
 グラハムだ。己の胆力で膝の震えを押し頃し、敵と向かい合っている。

「私たちはまだ生きている……! これは、氏ではない! だからこそ、生きるために戦う……! それが、希望だ!」

 そうだ。彼らは、まだ生きている。生きているのだ。
 勝機は、ない。だが、まだ希望はある。命のともし火は、今も尚消えていない。
 それが、彼らの希望。決して消えることのない、可能性。その希望は、絶望をも凌駕する。
 だから、彼らは、示なければならない。世界は、こんなにも簡単だと言うことを!

120: 2011/04/06(水) 20:46:23.41

 その、希望の光を。
 彼らの声を、糧として。
 仲間も、立ち上がる。

「そう、よね……もう、私は一人ぼっちじゃない……!
 これ以上、孤独を生み出させはしない……! そのために、仲間と一緒に戦うのなら……何も怖くない!」

 マミが、立ち上がる。

「ようやく、上手くいったのに……! ここで諦めちゃ、意味ないよね……!
 希望と絶望は、差し引きゼロなんかじゃないんだ……! 愛と勇気が勝つストーリーを……! 奇跡を、見せてやろうよ!」

 さやかが、立ち上がる。

「神様なんか、いない……! けど、もしこの世界に神がいるのだとしたら……それは、人間なんだ……!
 人間だけが、神を持つ……! 今を超える力……! 『可能性』と言う、内なる神を!」

 杏子が、立ち上がる。

121: 2011/04/06(水) 20:47:26.85

 何度、挫折しようとも。
 何度、打ちのめされようとも。

 彼らは、立ち上がる。
 自らの持つ、希望を信じて。
 絶望に支配されることなく、未来へと続く、明日を勝ち取るために。

 彼らの、背に。
 強い衝動を、ほむらは覚えた。

 ゆっくりと。しかし、確かに、立ち上がる。
 自らが望む場所へ――――仲間の下へと、歩く。

 彼女と交わした約束を、忘れずに。
 押し寄せる心の闇を振り払い、進む。

 無くした未来を、取り戻すために。
 止まらない思いを乗せ、閉ざされた扉を――――未来へと続く扉を、開け放つのだ。

「ごめんなさい……時間を取らせたわ」

 もう何があっても、挫けない。
 彼女は――――暁美ほむらは、不撓の心を手に入れた。

 ほむらが、五人と肩を並べる。
 皆の表情に、不安の影は無い。仲間を、信じている。人を信じる心があれば、恐れるものは何もない。

122: 2011/04/06(水) 20:48:39.80

 その一行に、並ぶ影が一つ。
 鹿目まどかである。

「まどか……!?」

 馬鹿な。ほむらの目が、驚愕に見開かれた。
 何故、彼女がここに。杏子の結界が解けたのはわかるが、自らの足で赴く理由は何だ。

「ほむらちゃん……ごめん。でも私、じっとしていられなくて」
「今すぐ戻って! ここに居たって、犬氏するだけよ!」
「それでも……ただ見ているだけなんて、出来ないよ。……私は、信じる。自分が成すべきと思ったことを」

 まどかの背に、白い影が閃いた。
 ――――インキュベーター。

 まさか。彼女は、魔法少女になるつもりなのか。
 そんなことをしては、本末転倒だ。

「まどか……!」
「ほむらちゃん……私は」
≪……刹那、僕に策がある。彼女を止めろ≫

 脳量子波を通し、ティエリアの声が響く。
 反射的に、刹那はまどかへ静止の手を差し伸べた。

「刹那さん……!」
「待て」

 低い声。
 まどかの動きを止めるには、充分だった。

123: 2011/04/06(水) 20:50:43.57
 その隙に、ティエリアが説明を始める。

≪時間と、魔法少女……そして、鹿目まどかの力が必要だ≫
(しかし、それでは……)
≪彼女を魔法少女にするわけではない。……おそらく、他に方法はない≫
(……了解。頼む)

 ティエリアの提案を、刹那は飲んだ。
 相手は、ワルプルギスの夜。下手な小細工は、通用しない。ここは、ティエリアが編み出した妙案に賭けるほかない。

≪……時間を稼がねばならない。ここは――――≫
「……話は聞かせてもらった」

 グラハムが、刹那へ声をかける。
 今では、彼もELS。ティエリアのメッセージも、受け取れると言う寸法なのだろう。

「その任、私が勤めよう」
「……一人でやるつもりか?」
「魔法少女と、少年が必要なのだろう? ならば、残るのは私だけになるな」

 口元を歪めて、グラハムが一歩進み出る。

「行け、少年!」
「…………!」
「未来への水先案内人は、このグラハム・エーカーが引き受けた!」

 ブレイブが、空中を舞う。
 対し、飛んできた虫をあしらうかのように、ワルプルギスの夜から、幾重にも閃光が射出される。

124: 2011/04/06(水) 21:01:13.90

 だが、当たらない。機体を自在に操り、グラハムは生き延びる。
 氏と隣り合わせの、舞踊。その光景は、壮麗ですらあった。

 刹那は、あえて視線を転じる。
 ただ、眺めているだけではだめだ。
 未来への切符は、未だ白紙。

「……まどか。戦う意思があるのなら、協力しろ」

 ほむらが、刹那を睨みつける。
 誤解ではあるが、それを解くのは後だ。

 まどかが、頷いた。
 反撃の、時間だ。




125: 2011/04/06(水) 21:03:30.53


 数十分とも、数時間とも、永遠とも思える、その時間。

 グラハム・エーカーは、命の灯を強風に晒しながらも、未だ健在であった。

 脳内では、既にアラートは鳴りっぱなしだ。
 安全を優先するのなら、ここは逃げろ、と本能は告げている。
 理性的な思考も尚、撤退の選択を推奨していた。

 しかし。
 しかし、後には退けぬ。

 ここで彼が逃げ去っては、多くの命が失われることだろう。
 多くの声が、途絶えてしまうことだろう。

 ならば、退けぬ。
 グラハム・エーカーと言う男は、芯まで市民を守る軍人であった。

 迫る灼熱を、GNビームサーベルで切り伏せる。
 追跡してくる光を、GNビームライフル、ドレイクハウリングで撃ち落とす。

 それを、幾度となく繰り返す。
 この絶望が、希望に変わることを信じて。

 ただ、生きるために。生き抜くために。

126: 2011/04/06(水) 21:07:17.07

 そのグラハムの背に、いくつもの閃光が襲い掛かる。
 背中は、人体の氏角。さしもの彼でもっても、カバーしきれない範囲だ。

 振り返る。
 だが、遅い。間に合わない。

 グラハムの命が、尽きる――――




 ことは、ない。
 グラハムに迫る閃光が、飲み込まれる。

「この光……! 待ちかねたぞ、少年!」

 駆け抜けたのは――――粒子ビームの、光。



127: 2011/04/06(水) 21:09:50.04

 時間が、止まった世界。

≪GNドライヴ、マッチングクリア。続いて、バイパスを作成する≫
「まどか、手を」
「……うん」

 刹那が、まどかの手を取る。
 その手を通じて、魔翌力と魔翌力が干渉しあい、結びついていく。

 グラハムを除いた六人が、手を繋いでいた。
 肉体の接触による、魔翌力回線の形成である。

≪同調、完了……いつでもいける≫
「了解。……ほむら、タイミングは譲渡する」
「……任せて」

 ほむらが、頷きを一つ。
 ここで、流れを食い止めるのだ。

 時間を、停止。
 それから、皆で手をつないだまま、ゆっくりと、歩く。
 射程の範囲内へ、ワルプルギスの夜を収めて。

「……行って!」

 時間の停止を、解除した。

128: 2011/04/06(水) 21:11:37.82

「トランザム!!」

 同時、ダブルオークアンタが真の力を解き放つ。
 GN粒子が、舞う。
 GNソードVに、GNソードビットが装着された。
 形作られるのは、巨大なライフル――――GNバスターライフルだ。
 魔翌力が、あふれ出す。

 時間が動き出した直後、ワルプルギスの夜から、過去最高の光が放たれた。
 一撃で、諸共吹き飛ばそうと言うのか。

 だが。
 刹那たちが負ける道理は、ない。

 GNバスターライフルの銃口が、ワルプルギスの夜へ向けられた。

「未来を……切り開く!」
「私達の意志で!」

 奔流する、魔翌力と粒子。

129: 2011/04/06(水) 21:13:40.30

 ソウルジェムを解析し、魔法少女の力を共用のエネルギーとして変換、更にまどかの持つ芳醇な魔翌力を利用している。
 魔法少女四人と、二基のGNドライヴ。そして、最高の素質を持つ少女の力を込めた、渾身の一撃。

 進行方向は同じ。
 故に、かち合う。
 光と光が、激突する。

 だが、負けない。
 希望は、絶望に屈しない。

 勝ったのは、粒子ビーム。
 ワルプルギスの夜を、丸ごと光に包む。


◆ ◆ ◆

130: 2011/04/06(水) 21:15:55.14

~翌朝、通学路~

さやか「おはよう、まどか」

まどか「さやかちゃん、おはよう」

さやか「そうそう、体、大丈夫? あたしは何ともないけど」

まどか「うん。これと言って、変わったところはない、かな。……さやかちゃんは?」

さやか「ああ、ソウルジェムね。……なくなっちゃった。何だか、傷の治りも遅いし」

まどか「じゃあ、やっぱり」

さやか「魔法少女じゃ、なくなっちゃったみたい」

まどか「……そっか」

さやか「いやいや、まどかが落ち込んでどうすんの。別に、元に戻っただけだって。もう魔女は出ない、って刹那さんもほむらも言ってたし」

まどか「そう言えば……刹那さん、帰っちゃったんだよね」

131: 2011/04/06(水) 21:17:46.15

さやか「……寂しくなるけど、さ。これから、出会いはたくさんあるって。希望を持っていこうよ」

まどか「……希望」

さやか「そう。あの二人が教えてくれた希望を胸に、ね。……あー、こう改めて言うと恥ずかしいな」

まどか「……ありがとう、さやかちゃん」

さやか「感謝されるようなこと、してないよ。……さ、行こう。仁美も、ほむらも、マミさんも待ってる」

まどか「うん!」

さやか「さあ、出発! ……って、お? 仁美も来たみたいね。おはよ、仁美」

まどか(刹那さんは、いなくなってしまったけど……私は、二人に教えられたことがあります)

仁美「おはようございます」

まどか「おはよう、仁美ちゃん」

さやか「あんたにしちゃ遅かったけど、何かあったの?」

132: 2011/04/06(水) 21:19:23.49

まどか(未来を切り開くのは、自分の意思だってこと……それは、強い思いを持って、未来に進むと言うこと)

仁美「いえ、通学路の途中で猫を見つけたものですから……」

まどか(何もとりえがない私だけど……それでも、歩みを止めなければ、変われるはずだから。それが、未来を描くことだから)

さやか「いや、猫って……確かに猫はかわいいけどさ」

仁美「でしょう?」

まどか(力だけじゃない……心を強く持つことが、本当の強さだから)

さやか「っておや、あれは……」

仁美「あら、暁美さんですね」

133: 2011/04/06(水) 21:20:46.43

ほむら「……おはよう」

まどか(だから……私は、未来に希望を持って、生きていきます)

さやか「おはよう、ほむら」

仁美「おはようございます」

まどか「おはよう、ほむらちゃん!」



134: 2011/04/06(水) 21:23:39.13

~学校、まどかのクラス、SHR~

和子「今日は皆さんに、転校生を紹介します」

まどか「転校生?」

さやか「ほむらに続いて二人目かあ……珍しいこともあるもんだね」

和子「じゃあ、いらっしゃい」

 ガラッ

杏子「…………」

まどか「えっ」

さやか「えっ」

ほむら「…………」

和子「はあい、それじゃあ自己紹介いってみよう」

杏子「……佐倉杏子だ、よろしく」



135: 2011/04/06(水) 21:25:37.35

~SHR終了後、一時間目前~

まどか「杏子ちゃん、なんでここに!?」

杏子「声が大きいって。……まあ、成り行きってやつかな」

さやか「成り行きねえ……にしても、書類とか手続きとかどうしたの?」

杏子「でかい声じゃ言えないけど……刹那が、色々偽造したんだってさ」

さやか「…………」

杏子「帰る前に、プレゼントだと。……まあ、あたしも学校に来たかったわけじゃないが、恩を仇で返すってのも気が引けたし」

まどか「そうなんだ。じゃあ、杏子ちゃん、今日からクラスメイトだね!」

さやか「よろしく、杏子」

ほむら「……よろしく」

杏子「ああ。……よろしくな」



136: 2011/04/06(水) 21:27:01.97

~一時間目~

女子生徒1「先生、来ないねー」

女子生徒2「授業忘れてるんじゃないの?」

まどか「そう言えば、杏子ちゃん」

杏子「うん?」

まどか「今は、どこに住んでるの?」

杏子「…………マミの家」

さやか「えっ……初耳なんだけど」

杏子「まあ、色々あったのさ」

ほむら「なら、二人で暮らしているのかしら」

杏子「うんにゃ」

137: 2011/04/06(水) 21:29:57.04

まどか「それって……?」

杏子「三人いるよ」




ガラッ

グラハム「諸君、朝の挨拶、即ちおはようと言う言葉を、謹んで贈らせてもらおう」

まどか「えっ」

さやか「えっ」

ほむら「えっ」



 おしまい

138: 2011/04/06(水) 21:34:28.93
これでおしまいです

せっかく最後まで書いたのでどこかに投下しようとは思っていたのですが、
今考えてみたら全くクロスしてないですねこれ

次はもっと推敲しようと思います
読んでくれてありがとうございました

139: 2011/04/06(水) 21:36:26.58

140: 2011/04/06(水) 21:40:55.68
乙乙

141: 2011/04/06(水) 21:42:24.49
乙なんだよ!

引用元: 刹那「魔法少女?」まどか「ガンダム?」