シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」【前編】
465: ◆gcWj88zLkc 2020/12/05(土) 14:01:02.45
キール「今回の事件の唯一の当事者である初号機パイロットの直接尋問を拒否したそうだな、碇三佐」

シンジ「はい。彼女の情緒はとても不安定な状態です。今ここに立つことが良策とは思えません」

委員「では聞こう、代理人碇三佐」

委員「先の事件、使徒がわれわれ人類にコンタクトを試みたのではないのかね?」

シンジ「…分かりかねます。被験者の報告からはそれを感じ取れません。イレギュラーな事件だと推定されます」

委員「彼女の記憶が正しいとすればな」

シンジ「……記憶の外的操作は認められません」

委員「エヴァのACレコーダーは作動していなかった。確認はとれまい」

委員「使徒は人間の精神、心に興味を持ったのかね?」

シンジ「それは…。使徒に心の概念があるのか、人間の思考が理解できるのか、まったく不明ですので……返答できかねます」

466: 2020/12/05(土) 14:02:07.42
委員「今回の事件には、使徒がエヴァを取り込もうとしたという新たな要素がある。これが予測されうる第13使徒以降とリンクする可能性は?」

シンジ「これまでの例から、使徒同士の組織的なつながりは否定されます」

委員「さよう。単独行動であることは明らかだ。これまではな」

シンジ「…それは、どういうことなのでしょうか?」

キール「君の質問は許されない」

シンジ「…はい」

キール「以上だ。下がりたまえ」

シンジ「はい」




キール「どう思うかね、葛城君?」

葛城「使徒は知恵を身につけ始めています。残された時間は…」

キール「後わずか、と言うことか」

467: 2020/12/05(土) 14:03:16.44
看護師「12号室のクランケ?」

看護師「例のE事件の救急でしょ?ここに入院してからずいぶん経つわね」

看護師「なかなか難しいみたいよ、あの怪我」

看護師「まだ小学生なのに」

看護師「今日もきてるんでしょ、あの子」

看護師「そうそう。週2回は必ず顔出してるのよ、妹思いのいいお兄さんよねぇ」

看護師「ほんと?今時珍しいわね、あんな男の子」

468: 2020/12/05(土) 14:04:05.38
葛城「リツコ、今日はいいのか?」

リツコ「はい。明日、綾波博士のところへ行きます。明後日は学校へ」

葛城「…学校はどうだ」

リツコ「問題ありません」

葛城「そうか…ならいい」




マヤ「起立、礼、着席!」

老教師「あ、ああ…今日の休みはいつもの赤木と、青葉か。後、今日は小池先生がお休みで、4時限目の現国が自習となります」

ミサト「青葉くん、どうかしたの?」

日向「さぁ…またどっかで路上ライブじゃないかな……あいつのことだし」

老教師「日向!」

日向「は、はい!」

老教師「後で、赤木にプリントを届けておくように」

日向「はい!」

469: 2020/12/05(土) 14:05:19.06
トウジ「とにかく、第一支部の状況は、無事なんやな!?かまわん!計算式やデータ誤差はMAGIに判断させる!」



カヲル「消滅!?確かなのか!?第2支部が」

ケンスケ「はい、すべて確認しました。消滅です」



シンジ「…なんてこと……」

トウジ「上の管理部や調査部は大騒ぎ、総務部はパニックや!」

シンジ「それで、原因は?」

レイ「未だ分からず。手がかりはこの静止衛星からの映像だけで、後は何も残ってないの」

ヒカリ「10セコンド、8、7、6、5、4、3、2、1、コンタクト」

シンジ「……ひどい」

ヒカリ「エヴァンゲリオン四号機ならびに半径89キロ以内の関連研究施設はすべて消滅しました」

レイ「数千の人間を道連れにね」

シンジ「………」

470: 2020/12/05(土) 14:06:12.30
ケンスケ「…タイムスケジュールから推測して、ドイツで修復したS2機関の搭載実験中の事故と思われます」

ヒカリ「予想される原因は、材質の強度不足から設計初期段階のミスまで、32768通りです」

シンジ「妨害工作の線も…あるか」

トウジ「せやけど爆発やなく消滅なんやろ?つまり、消えた、と」

レイ「多分、ディラックの海に飲み込まれたんでしょうね、先の初号機みたく」

シンジ「じゃあS2機関も?」

レイ「……夢は潰えたわね」

レイ「訳の分からないものを無理して使った…その報いね」

シンジ(…それはエヴァも同じだ……)

471: 2020/12/05(土) 14:07:04.81
シンジ「…残った参号機はどうするの?」

レイ「ここで引き取ることになったわ。米国政府も第1支部までは失いたくないみたいね」

シンジ「そんな。参号機と四号機はあっちが建造権を主張して強引に作ってたんじゃないか!いまさら危ないところだけうちに押し付けるなんて、虫がよすぎるよ」

レイ「あの惨劇の後じゃ誰だって弱気になるわ…」

シンジ「…それじゃあ、起動試験はどうするの?例のダミーを?」

レイ「…これから決めるわ」

472: 2020/12/05(土) 14:08:02.40
レイ「試作されたダミープラグです。赤木リツコのパーソナルが移植されています」

レイ「…ただ、人の心、魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク、擬似的なものです」

レイ「パイロットの思考の真似をする、ただの機械です」

葛城「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込み、シンクロさえすればいい」

葛城「初号機と弐号機にはデータを入れておけ」

レイ「まだ問題が残っていますが」

葛城「…エヴァが動くことが先決だ」

レイ「はい…」

473: 2020/12/05(土) 14:09:02.44
葛城「機体の運搬はUNに一任してある。週末には届くだろう」

葛城「後は君のほうでやってくれ」

レイ「はい。調整ならびに起動試験は、松代で行います」

葛城「…テストパイロットは?」

レイ「ダミープラグはまだ危険です。現候補者の中から、」

葛城「4人目を選ぶか……」

レイ「はい。一人、速やかに……コアの準備が可能な子供がいます」

葛城「…すまないな」

レイ「いいえ…」


レイ「……リツコちゃん?」

リツコ「…はい」

レイ「お疲れさま。もう上がっていいわよ」

リツコ「はい」

葛城「……」

474: 2020/12/05(土) 14:10:02.45
マヤ「起立!礼!」



ミサト「さってぇと~ご飯ご飯♪」

ミサト「…って、あら?」

マヤ「葛城さん……ずいぶん大きなお弁当ね」

ミサト「そ、そうよね、これは…」

加持「悪いな、葛城。玄関で取り違えちまったみたいだ」

ミサト「げっ」

加持「これで元通り、っと」

475: 2020/12/05(土) 14:11:02.68
女子「お弁当の交換~!?」

男子「イヤ~ンな感じ~!」


ミサト「ちっ、違うのよ!?これは…!」

女子「いいわよね~、家ではシンジさん、学校では加持くん」

女子「どっちか譲りなさいよ~!」

女子「どっちが本命なのよお!」

ミサト「やっ…やあねえ!そんなんじゃないわよ!」


日向「………」

476: 2020/12/05(土) 14:12:03.26
シンジ「どうしたの?…改まって」

レイ「松代での参号機の起動実験、テストパイロットは4人目を使うわ」

シンジ「4人目?フォースチルドレンが見つかったの?」

レイ「昨日ね」

シンジ「…マルドゥック機関からの報告は受けてないよ」

レイ「正式な書類は明日届くわ」

シンジ「それで……選ばれた子って?」

レイ「……この子よ」

シンジ「……そんな、よりによって」

レイ「候補者を集めて保護してあるのだから…仕方ないわよ」

レイ「話しづらいでしょうけど……頼むわね」

477: 2020/12/05(土) 14:13:03.31
シンジ「…加持くんや、リツコちゃんは大丈夫だと思う、エヴァに乗ることにプライドも持ってるし。でも…ミサトちゃんは…」

シンジ「加持くんやリツコちゃんとは、パイロットとして出会った、初めから戦闘員として。でも…今回は一般人…クラスメイトだ。今まで守っていた対象。それに…先の事件もある」

シンジ「一番エヴァに対する恐怖心が強いのはミサトちゃんだから……辛いんじゃないかな。誰かを巻き込むのは」


レイ「…これ以上辛い思いは、させたくない?」

シンジ「それは……もちろん」

レイ「でも、私たちにはそういう子供たちが必要なのよ、みんなで生き残るために」

シンジ「……分かってるよ」

レイ「あなたが弱気だと、全体の士気に関わるわ……頑張ってね、碇作戦部長」

シンジ「……」

シンジ「うん……」

478: 2020/12/05(土) 14:14:02.53
男子「じゃぁな~」

女子「明日ね~」


マヤ「……日向くん、これ」

日向「? プリント?」

マヤ「赤木さんのよ。先生に頼まれてたでしょ?」

日向「ああ、赤木のか。ありがとう、わざわざ」


日向「……でも女の子の家に一人でってのは、ちょっとなぁ……」

マヤ「そ!それなら私が一緒に…!」

日向「葛城さん!…これから時間ある?」

マヤ「……」

ミサト「リツコの家?いいわよ」

479: 2020/12/05(土) 14:15:03.28
ミサト「リツコ~!入るわよぉ!」

日向「い、いいの? 黙って上がって…」

ミサト「いいのよぉリツコは。防犯意識ゼロなんだから」

日向「そ、そういう問題じゃ…」

ミサト「あら?リツコ?リツコ~?いないみたいね…」

日向「なっ」

日向「なんだ、この部屋は!」

480: 2020/12/05(土) 14:15:56.75
ミサト「……勝手にイジると、さすがのリツコも怒るんじゃない?」

日向「いいや。これは……放っておけないよ。ゴミだけでも片付ける…!」

ミサト「…マメねぇ……」

日向「……イメージと違ったよ。赤木って…もっと完ペキな奴かと」

ミサト「意外と抜けてるとこあるわよ?リツコって」

日向「へぇ…」


ミサト「…あら。噂をすれば」

リツコ「……何してるの?」

日向「ごめん、勝手に片づけたよ。ごみ以外は触ってない」

日向「それと、これ。休んでた間のプリント」

リツコ「あ…」

リツコ「ありがとう…」

481: 2020/12/05(土) 14:17:15.86
ミサト「しっかし、意外だったわね~。リツコが照れるなんて。珍しいもん見たわ」

日向「えっ?真顔じゃなかった?」

ミサト「チッチッチ~よ!あの頬の赤みは照れよ、照れ!」

日向「そ、そうかな…」

ミサト「ま。私とリツコくらいの仲になんないと、分っかんないでしょおね~」

日向「…葛城さん、変わったね。なんていうか…明るくなった」

ミサト「……」

ミサト「そうかもね。シンジさんや…みんなが支えてくれて。エバにも慣れてきたし…」

ミサト「ちょっとは変われた、かな…」

日向「……」

482: 2020/12/05(土) 14:18:05.46
カヲル「街。人の作り出したパラダイスだね」

葛城「かつて楽園を追い出され、氏と隣り合わせの地上と言う世界に逃げるしかなかった人類」

葛城「そのもっとも弱い生物が、弱さゆえ手に入れた知恵で作り出した自分達の楽園だ」

カヲル「自分を氏の恐怖から守るため、自分の快楽を満足させるために自分達で作ったパラダイスか…」

カヲル「この街がまさにそれだね…自分達を守る、武装された街」

葛城「…敵だらけの外界から逃げ込んでいる臆病者の街だよ」

カヲル「臆病なほうが長生きできる。それでいいじゃないか」

カヲル「第三新東京市、ネルフの偽装迎撃要塞都市、遅れに遅れていた第7次建設も終わる。いよいよ、完成だね…」

483: 2020/12/05(土) 14:18:59.16
カヲル「四号機の事故、委員会にどう報告するつもりだい?」

葛城「原因不明だ」

カヲル「事実の通り、か……。ここにきて、大きな損失だね…」

葛城「…S2機関のデータはドイツに残っている」

葛城「ここと初号機が残っていれば、ことは成せる…」

カヲル「どうかな…委員会は血相を変えていたよ」

葛城「……」

カヲル「氏海文書にはない事件だ……ゼーレも、慌てて行動表を修正しているだろうね」

カヲル「……老人たちにはいい薬か…」

484: 2020/12/05(土) 14:20:03.55
シンジ「アスカ!」

アスカ「あら、ネルフの作戦部長様が、息を切らしてなんのご用?」

シンジ「…地下のアダムとマルドゥック機関の秘密、教えてよ。…知ってるんでしょ?」

アスカ「……何の話よ?」

シンジ「とぼけないでよ!」

アスカ「…あんたバカ?ここをどこだと思ってんのよ…まず落ち着きなさい」

シンジ「…落ち着いてられないよ…!消滅した第2支部に、移設される参号機…」

シンジ「そして都合よくフォースチルドレンが見つかる……こんなのおかしいよ。誰かが、裏で…!」

アスカ「……」

アスカ「…これだけは言えるわ。マルドゥック機関は存在しない。影で操っているのは、ネルフそのものよ」

シンジ「ネルフそのもの…葛城司令が?」

アスカ「そ。…あとは自分でやんなさいよ。コード707」

シンジ「707…ミサトちゃんの学校?」

アスカ「ったく。こっちは命懸けだってのに…べらべら喋らせてくれちゃって」

アスカ「コーヒーくらい奢んなさいよね?」

485: 2020/12/05(土) 14:21:00.98
ミサト「シンジさん…どこかしら。レイさんも携帯使えばいいのに……よりによって私に頼むなんて……」

ミサト「あれっ?加持くんと……リツコ…?」


アナウンス「第三管区の形態移行ならびに指向兵器試験は予定通り行われます。技術局3課のニシザイ博士、ニシザイ博士、至急開発2課までご連絡ください」

ミサト(……って、なんで隠れてるのよ私!!)


聞き耳を立てるミサト

486: 2020/12/05(土) 14:22:02.72
加持「せっかくここの迎撃システムが完成するのに、祝賀パーティーの一つも予定されていないとは、ネルフってお堅い組織だねぇ」

リツコ「司令がああいう人だもの……」

加持「リッちゃんはどうなのかな?」

リツコ「私にそんな権限はないわ」

加持「君の気持ちが知りたいんだよ」

リツコ「人がたくさんいるのは…苦手」

加持「どうして?」

リツコ「分からないわ」

加持「人を寄せ付けないのは……悲しい恋をしたからかな?」

リツコ「なぜそう思うの」

加持「…涙の通り道にほくろのある人は…一生泣き続ける運命にあるからさ」

加持「ま…俺なら、そんな思いはさせないが」

487: 2020/12/05(土) 14:23:02.45
ミサト「……………」


ミサト(なんだ…)


ミサト(私ばっかり本気だったのか………馬鹿みたい)



シンジ「あれ?ミサトちゃん」

ミサト「……シンジさん…」

シンジ「どうしたの?」

ミサト「あ……レイさんが…、明日からの出張の打ち合わせだって…シンジさんに」

シンジ「ああ…そっか。ありがとう」

ミサト「それじゃあ…」

シンジ「……?」

488: 2020/12/05(土) 14:24:05.08
シンジ「ミサトちゃん、どうかしたのかな…」

アスカ「あんたホントに、鈍くてバカね」

アスカ「先いってなさいよ。こっちは私が渇入れとくから」

シンジ「ちょっと、あんまり手荒なマネは…」

アスカ「するわけないでしょ。いいから、行きなさいよ」





ミサト「……」

アスカ「ちょっとー!葛城ミサトっ!」

ミサト「…?」

アスカ「時間あるでしょ?付き合いなさいよ」

489: 2020/12/05(土) 14:25:05.15
ミサト「……………」

アスカ「……ビクつくんじゃないわよ。取って食やしないわよ」

ミサト「…あの、どこ行くんですか……?」

アスカ「行けば分かるわ」

ミサト「……」





ミサト「なんですか?この、…草……?」

アスカ「ハーブよ!あんた何にも知らないのねぇ」

アスカ「シンジの作った料理に、時々乗ってるでしょ?パセリとかバジルとか」

ミサト「…シンジさんのために作ってるんですか?」

アスカ「べっつに。ただの趣味よ」

アスカ「でも…まぁそうね、あいつの料理、まあまあ悪くない味でしょ?こういうの持ってくと、喜ぶのよね…店で買ってるとバカにならないからって」

アスカ「だから!あたしはシンジに料理を作らせて、食べる!「自分のため」にやってんのよ!」

ミサト「自分の……ために」

490: 2020/12/05(土) 14:26:02.21
アスカ「あんたはどうなのよ?」

ミサト「えっ」

アスカ「なんで乗ってるのよ?エヴァに」

アスカ「違うか。乗せられてんのね…あいつの口車に」

ミサト「そんな、シンジさんは!いつも優しくしてくれてます…!」

アスカ「あんたのためじゃないわよ?あいつは誰にでも優しいの、優しい自分が好きなのよ。「自分のため」にやってんのよ、あいつも」

アスカ「誰かのために…なんて思ってるなら、今すぐエヴァを降りるのね。押しつぶされて、その内自分を無くすわよ」

ミサト「私は……!」

ミサト「今いる場所を、失いたくないんです…シンジさんや、ネルフのみんな…加持くんや、リツコ…学校の友達も」

アスカ「………」

ミサト「エバに乗るのは恐い…だけど、みんなを…居場所を失いたくないから…!だから、誰かのためじゃない!…自分自身の望みのために、乗ってるんです…!」


アスカ「…上出来ね」

ミサト「え…?」

アスカ「誰かのためにやるってのは…聞こえはいいけど、心情的には見返りを求めるものよ。自分のためにやってることなら…やり遂げれば、それで満足できる」

491: 2020/12/05(土) 14:27:01.94
アスカ「変なこと聞いて悪かったわね。…あんた向いてるわよ、エヴァのパイロットに」

ミサト「あ……」

ミサト「ありがとう、ございます…」

アスカ「バカ。お礼なんていらないのよ、こっちも「自分のために」やってんだから。あんたに潰れられたら後味悪いのよ」

ミサト「……ふふ、アスカさんって」

アスカ「なによ?」

ミサト「思ってたより、真面目ですね」

アスカ「……」

電話の音

アスカ「はい、もしもし」



アスカ「シンジからよ。今から、シンクロテストですって」

492: 2020/12/05(土) 14:28:09.47
ヒカリ「プラグ深度は3.2で固定。L.C.L.濃度は現状を維持。ハーモニクスレベルはマイナス1.2、1.5、1.6、1.8、1.9、限界指数は0.2。 データはレベル3を消去。以下はMELCHIORに保存されます」

レイ「やはり間違いないわね…。ミサトちゃんのシンクロ率、落ちてきてる」

シンジ「どういう事?」

レイ「何とも言えないわ。ただ、先の事件のとき何かがあったんでしょうね。あるいは…精神的な問題が生じたか」

シンジ(アスカ…何か変なこと言ったのかな…?)

レイ「何か思い当たる?」

シンジ「いや……これでますます、参号機のパイロットの件、話しづらくなったなと思って…」

レイ「…本人には明日、正式に通達されるわよ」

シンジ「うん…」

493: 2020/12/05(土) 14:29:02.10
マヤ「きりーつ、気を付け、礼!」


放送「2年Aクラスの日向マコト、日向マコト、至急、校長室まで」


日向「…何だ?」

青葉「なんかやったのか?お前」

日向「するわけないだろ」

ミサト「…?」




日向「日向マコト、入ります!」

レイ「……日向マコトくんね?」

494: 2020/12/05(土) 14:30:02.33
マヤ「葛城さん、ちょっと…いい?」

ミサト「?」

ミサト「いいけど…」



マヤ「ごめんね。こんなとこに呼び出して。ちょっと気になることがあって…」

ミサト「気になることって?」

マヤ「エヴァ参号機のこと」

ミサト「……エバ参号機?」

マヤ「そう。アメリカで建造中だったっていう……完成したんでしょ?」

ミサト「…知らないわ。エバ参号機なんて…」

マヤ「…隠さなきゃならない事情も分かるけど、お願い、教えて!」

ミサト「ほんとに聞いてないのよ!」

495: 2020/12/05(土) 14:31:02.79
マヤ「…じゃあ、松代の第2実験場で起動試験をやるって噂も知らないの……?」

ミサト「知らないわよ。何?松代でやるの?」

マヤ「そうらしいわ。…それでなんだけど、パイロットはまだ決まってないんでしょう?」

ミサト「分からないわよ、そんな…」

マヤ「私にやらせてほしいのよ!ねぇ、葛城さん。葛城さんからも頼んでくれない?シンジさんに。乗りたいのよ、エヴァに!赤木さんの…みんなの力になりたいの!」

ミサト「ほ、ほんとに知らないのよ…そんなこと言われても」

496: 2020/12/05(土) 14:32:03.23
マヤ「じゃあ、四号機が欠番になったって言う話も?」

ミサト「何それ?」

マヤ「……ほんとにこれも知らないのね……。第2支部ごと消滅したって、母さんのところは大騒ぎだったのに」

ミサト「消滅…?」

マヤ「…跡形も残らなかったそうよ」

ミサト「…シンジさんからは、何も聞いてない…」

マヤ「……」

マヤ「ごめんね、変なこと聞いて。…でも、羨ましかったんだ……好きな人と、支え合えるのって…」

ミサト「好きな人?」

マヤ「な!なんでもない!それじゃ…!」


ミサト「………」

497: 2020/12/05(土) 14:33:15.73
老教師「われわれはセカンドインパクトと言うこの世の地獄から再び立ち上がったのです。今、年々子供の数も減ってきています」

日向「遅れて、すいません…」

老教師「話は聞いてる。席に着きなさい。あー、これからの時代をになう君たち若い世代が…」



日向「………」

青葉「何だよ?そんなにこってり絞られたのか?」

日向「…別に。何でもない」

青葉「………?」

498: 2020/12/05(土) 14:34:02.54
放送「下校の時刻です。教室に残っている生徒は、早く帰りましょう」


青葉「なんだ、帰らないのか?」

日向「当番だからな」

青葉「サボっちゃえよ。十分綺麗だろ?」

日向「お前じゃないんだよ…」

青葉「マメだねぇ…」

日向「……」

日向「…葛城さん、変わったよな」

青葉「ん?ああ…明るくなった」

日向「……」

青葉「おいおい、どうしたんだよ?」

日向「いや……最近、パイロット同士の絆…みたいなものを感じることがあってさ」

日向「加持……あいつも、いけすかないけど、葛城さんを支えてるんだよな…」

青葉「……」

499: 2020/12/05(土) 14:35:03.42
青葉「なに弱気になってるんだよ、お前はお前だろ? そりゃ、赤木や加持みたいにはいかないさ」

青葉「お前のいいところで勝負していけよ。何を選ぶかは、葛城次第だろ?」

青葉「それに、だ」

日向「それに?」

青葉「諦めろったって、無理な話だろ?それなら無理矢理にでも、前向いて行くしかないじゃないか」

日向「……それも、そうだな…」

青葉「しっかりしろよ?」

日向「はは…まさかお前に説教される日がくるとはな」

青葉「…時々思うけど、お前って俺をなめてないか?」

日向「少しな」

青葉「おいおい」

日向「ははは」

500: 2020/12/05(土) 14:36:02.60
加持「おっ…アスカ先輩」

アスカ「加持? 今忙しいから。用があるならそこで待ってて」

加持「…相変わらず仕事、仕事か。そんな調子で、シンジさんに愛想つかされないか心配だね…」

アスカ「馬鹿。子どもが大人の問題に首突っ込んでんじゃないわよ」

加持「どれどれ…」

アスカ「こら!」

加持「…………」

加持「…これは決定事項?」

アスカ「……明日、あんたたちにも正式に通達されるわ」

加持「…この人選の根拠は?」

アスカ「…根拠かどうかは知らないけど。こいつの妹が難しい怪我してて、その優先治療が約束されたそうよ、ネルフで…」

加持「……」

アスカ「ちょっと、加持!どこ行くのよ!」

501: 2020/12/05(土) 14:37:02.79
ミサト「見返りを求めない、か……」

ミサト「私は…加持くんとどうなりたいのかしら…」




台所で奮闘するマヤ

マヤ「……、…!」



校庭で佇む日向

日向「……」




拾七話分終わり

502: 2020/12/05(土) 14:41:02.26
加持「…よっ。ずいぶん早いな」

日向「……」

加持「時間はあるんだ…ちょっと遠回りしてかないか?」

日向「……」

日向「俺は男だぞ…?」






ミサト「あの、加持くんは…?」

シンジ「ああ、なんか用事があったみたいでね。朝早く出てったよ」

ミサト「…用事って?」

シンジ「さぁ…ミサトちゃんも聞いてないの?」

ミサト「いえ…」

シンジ「そうか…昨日帰ってきてからも元気なかったし…どうかしたのかな…」

ミサト(……リツコのとこかしら…)

503: 2020/12/05(土) 14:42:02.70
ミサト「あの、」
シンジ「ところで、」

ミサト「あっ…」

シンジ「あはっ。いいよ先に」

ミサト「あの…四号機が欠番っていう噂、本当ですか?何か事故があって爆発したって」

シンジ「…うん、本当だよ。四号機はネルフ第二支部と共に消滅したんだ。S2機関の実験中に…」

ミサト「……」

シンジ「ごめんね。伝えるのが遅れて…でもここは大丈夫だよ?3体ともちゃんと動いてるし、パイロットもスタッフも優秀なんだから」

ミサト「…でも、アメリカから参号機が来るって。松代でやるって聞きました、起動実験」

シンジ「うん…ここは4日ほど留守にするけど、その間のことはアスカに頼んでるし、心配ないよ」

ミサト「でも実験は…」

シンジ「大丈夫だよ、ミサトちゃん。綾波も立ち会ってくれるんだし、それに…」

ミサト「パイロットは…?パイロットはどうなるんですか?」

シンジ「……」

504: 2020/12/05(土) 14:43:02.70
シンジ「その、パイロットなんだけど…」


チャイムの音


ミサト「あっ、私がでます」


ミサト「えっ」

マヤ「おっおはようございます!今日は、シンジさんにお願いがあって来ました……!」

シンジ「えっ、え?」

マヤ「私を……私をエヴァンゲリオン参号機の、パイロットにしてください!」

シンジ「………」

505: 2020/12/05(土) 14:44:02.09
レイ「じゃあまだミサトちゃんは知らないの?」

シンジ「なかなか言い出すきっかけがなかったんだよ…それに、最近なんだか少し暗いんだ、ミサトちゃん」

レイ「…父親役が板についてきたと思ったら、もう弱音?まだまだ先は長いのよ」

シンジ「それはそう…なんだけど…」


シンジ「それで……いつ呼ぶの?パイロット」

レイ「そうね…明日になるわ。準備もいろいろあるし」

シンジ「…日向くんが自分で言ってくれたりは、しないかな?」

レイ「……期待しないほうがいいわ。人に自慢するほど、喜んでなかったもの。入院中の妹を本部の医学部に転院させてくれっていうのが彼の出した例の条件だったのよ」

506: 2020/12/05(土) 14:45:01.83
加持「……妹さんが、入院してるそうだな」

日向「……」

加持「良くないのか?」

日向「……関係ないだろ」

加持「…あるさ。これからはパイロット同士だ」

日向「!」

日向「知ってるのか……葛城さんは?」

加持「葛城はまだ知らない。恐らくな」

507: 2020/12/05(土) 14:46:05.77
日向「……それで?降りろって言いに来たのか?悪いけど俺は…!」

加持「「覚悟はできてる」?」

日向「……! そうだよ」

加持「……」

加持「……はぁっ。どうにも……駄目だな。俺は」

日向「…?」

加持「いや……すまない。嫌味のつもりはないんだ、…ただ……」

加持「仲間が氏ぬのは見たくない…」

日向「……!」

508: 2020/12/05(土) 14:47:03.16
加持「パイロットになるかどうかは…それぞれが決めることだ。決めたんなら……俺にあれこれ言う資格はない」

加持「覚悟結構。氏ぬ気でやらなきゃいけないのは事実だ…。全人類とパイロット、天秤はどうあっても人類に傾く」

加持「ただ俺個人としては……仲間に氏なれると後味が悪い」

加持「それに……葛城も悲しむしな…」

日向「……!」

加持「それだけ、言いに来たんだ」

日向「……」

日向「…分かった」


加持「…ま。ただでさえ少ないパイロットだ、これからよろしく頼むよ」

日向「ああ…」

加持「……」

加持「…治るといいな、妹さんの怪我…」

日向「……?ああ…」

509: 2020/12/05(土) 14:48:01.67
マヤ「あ~!きっと変な子だと思われたわよね?でも、居ても立ってもいられなくて……シンジさん、上に掛け合ってくれると思う??」

ミサト「どうかしらねぇ…」

マヤ「予備としてでもいいから使ってくれないかしら。やる気ならあるのになぁ…」

ミサト「……あ、」

マヤ「ちょっと葛城さん、聞いてる?」

ミサト「聞いてる聞いてる」


ミサト(加持くん…私より先に出たはずなのに…)


教室の入口、笑いあう女子と加持

510: 2020/12/05(土) 14:49:02.85
青葉「さーて、飯メシ…あれ?マコトは?」

男子「さっき出てったよ」

青葉「ふぅん……」

青葉(……)




リツコ「…日向くん」

日向「ああ……赤木か。どうしたんだ?こんなところで」

リツコ「……」

日向「……操縦のコツでも教えに来てくれたのか?…知ってるんだろ、俺が乗るって」

リツコ「ええ…」

日向「……知らないのは葛城さんだけか」

リツコ「そうなの?」

日向「たぶんな」

511: 2020/12/05(土) 14:50:02.14
日向「……赤木ってさ」

日向「……氏にそうになったことってあるか?エヴァに乗ってて」

リツコ「……」

日向「いや……ごめん、こんなこと聞いて。赤木ってパイロットになってもう長いんだろ?」

リツコ「ええ」

日向「……」

日向「加持にさ…言われたんだ、氏ぬ覚悟はしていい……でも氏ぬな、って……」

日向「無茶言うよな…赤木には分かるか?」

リツコ「……」

512: 2020/12/05(土) 14:51:01.10
リツコ「……私が、氏にそうになったとき、ミサトは泣いてたわ」

リツコ「……私は、人のために氏ねればいいと、思ってたけど……」

リツコ「その時は、ミサトを悲しませたくないと思った」

リツコ「だから、加持くんの言ってることは…分かるわ」

日向「……」

日向「はは…葛城さんはみんなに愛されてるんだな…」

リツコ「? あなたもでしょ…?」

日向「…!」

日向「その通りだ…」

日向「よろしく頼むよ、これから」




教室の窓から、マヤ

マヤ「………」

513: 2020/12/05(土) 14:52:02.09
レイ「遅れること2時間。ようやく到着ね」

シンジ「いくら慎重にって言っても限度があるよ…!こんなに待たせるなんて」

レイ「デートのときは黙って待ってたんでしょ?」

シンジ「……」





老教師「でありまして、これが世に言うセカンドインパクトであります」

老教師「私はそのころ根府川に住んでいたのですが、南極大陸の溶解に伴う水位の上昇により、今では海の底になってしまいました…」


(日向「付き合ってほしい…」)

(日向「葛城さんの支えになりたいんだ」)

日向「……」

514: 2020/12/05(土) 14:53:03.80
マヤ「ごめんね葛城さん。いつもなら加持くんと一緒に帰ってるのに…」

ミサト「い…いいのよぉあんなやつ!どうせ帰ってもいるんだから。マヤちゃんとは外でしか話せないじゃない。…それで、何?悩み事って」

マヤ「……」

ミサト「……また、エバのこと?」

マヤ「ううん、それはもういいの…」

マヤ「いいえ…よくは、ないんだけど……今日は赤木さんのことで」

ミサト「リツコのこと?」

マヤ「うん…赤木さんと、日向くんって……付き合ってるのかな…?」

ミサト「ぶっ!!」

ミサト「は!?なんて?」

マヤ「二人、付き合ってるんじゃないかって。…だって、お昼休み、とっても仲良さそうにしてたのよ?」

マヤ「…日向くん、笑ってたし…」

ミサト「……」

515: 2020/12/05(土) 14:54:02.77
マヤ「確証はないんだけど……日向くんって、赤木さんのことが好きなんじゃないかしら…」

ミサト「…う~ん」

ミサト(これは…リツコの赤面事件は伏せといたほうがいいわね…)

ミサト(それに……日向くんが好きなのはたぶん、まだ私だし……)

ミサト「大丈夫よ!日向くんが好きなのはリツコじゃないって!」

マヤ「……どうしてそう言えるの?」

ミサト「う……ちょっとガサツで、ほんのちょっとズボラなくらいがタイプらしいから。リツコじゃないわよ」

マヤ「なんでそんなこと知ってるの?」

ミサト「かっ加持くんに聞いたのよ!」

マヤ「そっかぁ……加持くんか…」

ミサト「……」

516: 2020/12/05(土) 14:55:04.02
マヤ「加持くん……家で、何か赤木さんのこと言ってない?」

ミサト「なんで?」

マヤ「だって……最近よく赤木さんに声かけてるのを見るから…」

ミサト「き…気にしすぎよぉ!同じエバのパイロットなんだし…それに、あいつは女の子なら誰彼かまわずじゃない」

マヤ「そうだけど…」

マヤ「赤木さんは、綺麗だし…何でもそつなくこなすし」

ミサト「……」

マヤ「優しいから…」

マヤ「加持くんも、本気になっちゃうんじゃないかと、思って……」

ミサト「……」

ミサト「…そうね…」

ミサト「リツコは、いい子よね…」

517: 2020/12/05(土) 14:56:02.24
ミサト「ねぇ…加持くん」

加持「なんだ?」

ミサト「………」

(マヤ「赤木さんは、綺麗だし…」)

ミサト「…さ、参号機のことって聞いてる?新しいパイロットの話とか」

加持「…さぁ、どうだかね…」

加持「なんにせよ、少ないパイロットだ。仲良くやるさ…」

ミサト「…………」

加持「……ん?」

加持「葛城…?」

518: 2020/12/05(土) 14:57:02.71
アスカ「ふーっ!さっぱりしたっ!お風呂、空いたわよ」

加持「あ……先輩」

アスカ「なによ、あんたたち…まだくっちゃべってんの?スッとろいわねぇ」

アスカ「さっさと片付けて、さっさと風呂入って、寝る!明日も早いんだから」

ミサト「か、加持くん、先に…」

アスカ「加持!あんたは最後!レディーファーストよ」

加持「へーいへい」

アスカ「ミサト!とっとと入っちゃいなさい!」

ミサト「はっはいっ!」

519: 2020/12/05(土) 14:58:02.13
ミサト「……アスカさん、もう寝ました?」

アスカ「…まだ起きてるわよ」

ミサト「………」

アスカ「…なによ。言いたいことがあんなら言いなさいよ」

ミサト「……加持くん、って…どんな子でした?向こうで…」

アスカ「加持?唐突ね……あんたあいつが気になるの?」

ミサト「気になるっていうか…最近」

アスカ「……」

ミサト「よく…分からなくて」

アスカ「……あいつはあいつよ。私の口から言ったって、それは私の中の加持でしかない。気になるんなら、自分で見つけなさいよ……あいつがあんたにとっての、何なのか」

ミサト「そう……ですよね…やっぱり」

520: 2020/12/05(土) 14:59:02.44
アスカ「それにしても…ふぅ~ん?あんたがねぇ…」

ミサト「…な、なんですか……」

アスカ「べつに。聞かれるんだったらあんたの父親のことだと思ってたから。拍子抜けしたのよ」

ミサト「……お父さんのことは…いつか、聞きます…副司令とかに」

アスカ「ゲッ……あのホ〇に関わると、ロクなことないわよ…?」

ミサト「? ホ〇?」

アスカ「いや……なんでもないわ」

ミサト「……」

ミサト「…アスカさんにとってのシンジさんって、何なんですか…?」

アスカ「……それが分かりゃあ、苦労しないわよ」

ミサト「ふふっ…同じですね」

アスカ「バーカ。こっちは腐れ縁。あんたたちなんてまだペーペーよ」

アスカ「…ほら、お喋りはおしまい。もう寝なさい」

ミサト「はーい」

521: 2020/12/05(土) 15:00:01.88
アナウンス「参号機、起動実験まで、マイナス、300分です」

アナウンス「主電源、問題なし」

アナウンス「第二アポトーシス、異常無し」

アナウンス「各部、冷却システム、順調なり」

アナウンス「左腕圧着ロック、固定終了」

レイ「了解。Bチーム作業開始」

アナウンス「エヴァ初号機とのデータリンク、問題なし」

レイ「これだと即、実戦も可能だわ」

シンジ「そう……」

レイ「…複雑そうね」

522: 2020/12/05(土) 15:01:01.57
シンジ「…この機体が納品されたら、エヴァは全部で4機になる…」

レイ「…その気になれば世界を滅ぼせる戦力ね……」

シンジ「……」

レイ「パイロットの件…ミサトちゃんには話したの?」

シンジ「実験が終わったら……話すよ」

アナウンス「フォースチルドレン、到着。第2班は、速やかにエントリー準備に入ってください」

523: 2020/12/05(土) 15:02:02.81
マヤ「ねぇ……赤木さん、お弁当、一緒に食べない?ちょっと作りすぎちゃって…」

リツコ「…いただくわ」

マヤ「良かった!お肉は苦手だって聞いてたから、お野菜中心にしたのよ」

ミサト「あのぉ~…私もいい?」

マヤ「葛城さん?…でもいつもは…」

ミサト「今日、シンジさんいなくて。お弁当…失敗しちゃったのよね」マルコゲ

リツコ「あきれた…」

マヤ「……」



マヤ「…参号機って、もう日本に到着したの?」

ミサト「うん…昨日着いたみたいよ」

マヤ「いいなぁ。誰が乗るのかしら…日向くんかな?今日休んでるし」

ミサト「まさかぁ!」

リツコ「………」

524: 2020/12/05(土) 15:03:02.52
オペレータ「エントリープラグ、固定完了。第一次、接続開始」

オペレータ「パルス送信。グラフ正常位置。リスト、1350までクリア。初期コンタクト、問題なし」

レイ「了解。作業をフェイズ2へ移行」

オペレータ「オールナーブリンク、問題なし。リスト、2550までクリア。ハーモニクス、すべて正常位置」

オペレータ「絶対境界線、突破します」


突破直後、異変。


レイ「実験中止、回路切断!」

オペレータ「だめです、体内に高エネルギー反応!」

レイ「まさか…」

レイ「使徒!?」

525: 2020/12/05(土) 15:04:02.30
ケンスケ「松代にて、爆発事故発生」

オペレータ「被害、不明!」

カヲル「救助、および第3部隊を直ちに派遣!戦自が介入する前にすべて処理するんだ」

トウジ「了解!」

ケンスケ「事故現場に未確認移動物体を発見」

トウジ「パターンオレンジ、使徒とは確認できん」

葛城「…第一種、戦闘配置」

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置!」

トウジ「地、対地戦用意!」

ヒカリ「エヴァ全機、発進!迎撃地点へ緊急配置!」

オペレータ「空輸開始は20を予定」

526: 2020/12/05(土) 15:05:01.54
ミサト「松代で事故?そんな、じゃあ、シンジさん達は!?」

リツコ「分からないわ。連絡が取れない」

ミサト「そんな、どうすれば…」

加持「……今俺らが心配したってしょうがない。無事を祈るしかない……まずは目先の問題だ」

ミサト「…でも…使徒相手に、私たちだけで…」

リツコ「今は葛城司令が、直接指揮を執っているわ」

ミサト「お父さんが?」

527: 2020/12/05(土) 15:06:01.93
ケンスケ「野辺山で映像を捉えました。主モニターに廻します」


職員「おおっ…」

カヲル「…やはりこれか」

葛城「活動停止信号を発信。エントリープラグを強制射出」

ヒカリ「だめです、停止信号およびプラグ排出コード、認識しません」

葛城「パイロットは?」

トウジ「呼吸・心拍の反応はありますが、おそらく…」

葛城「…エヴァンゲリオン参号機は現時刻をもって破棄。目標を第拾参使徒と識別する」


トウジ「しかし!」

葛城「予定通り野辺山で戦線を展開、目標を撃破しろ」

528: 2020/12/05(土) 15:07:03.23
ケンスケ「目標接近!」

トウジ「全機、地上戦用意!」

ミサト「えっ?まさか、使徒…?これが使徒なの?」

葛城「…そうだ。目標だ」

ミサト「目標って……これはエバじゃないの…」

加持「…乗っ取られたのか、使徒に……!」

ミサト「やっぱり、人が…子供が乗ってるんじゃ…!同い年の…」

加持「………っ」

加持「二人とも、下がれ!ここは俺がやる」

ミサト「加持くん!?」

加持「援護を頼む!」

加持(…足、動きを封じて、エントリープラグだけでも…!)

加持「だぁああっ!」

(アスカ「こいつの妹が、難しい怪我してて…」)

加持「くっ…!」

ミサト「加持くんッ!!」

529: 2020/12/05(土) 15:08:03.53
トウジ「エヴァ弐号機完全に沈黙!」

ヒカリ「パイロットは脱出、回収班向かいます」

ケンスケ「目標移動、零号機へ」

葛城「リツコ、近接戦闘は避け、目標を足止めしろ。今初号機をまわす」

リツコ「了解」

リツコ(乗っているのは、彼…)

照準を合わせるリツコ

突如、襲いかかる参号機

リツコ「あぁ…っ!」

ヒカリ「零号機、左腕に使徒侵入!神経節が侵されて行きます!」

葛城「左腕部切断。急げ!」

ヒカリ「しかし、神経接続を解除しないと!」

葛城「切断だ!」

ヒカリ「…はい!」

リツコ「ひっ…!」

530: 2020/12/05(土) 15:09:02.71
ヒカリ「零号機中破、パイロットは負傷」

ミサト「そんな…」

葛城「目標は進行中。後20で接触する。聞こえるな?…ミサト」

ミサト「……!」


葛城「お前がやるんだ」


ミサト「……でも」

ミサト「でも、目標って言ったって…!」



ミサト「人が乗ってるんじゃないの…?」

ミサト「同い年の子供が…!」

葛城「……」

咆哮する参号機

531: 2020/12/05(土) 15:10:03.72
ミサト「エントリープラグ…やっぱり、人が乗ってる…!」

ミサト「あっ!」

初号機を締め上げる参号機

ミサト「はっ、ぁ、う…っ!」


トウジ「生命維持に支障発生!」

ヒカリ「パイロットが危険です!」

カヲル「いけない、シンクロ率を60%にカットだ!」

葛城「待て!」

カヲル「しかし!このままではパイロットが…!」

葛城「……ミサト、なぜ戦わない」

ミサト「……!」

532: 2020/12/05(土) 15:11:02.60
ミサト「だって、だって人が乗ってるのよ、お父さん!!」

葛城「…そいつは使徒だ。われわれの敵なんだ」

ミサト「でも…そんなの、できないわよ…!…助けなきゃ…人頃しなんてできない!!」

葛城「お前が氏ぬぞ!」

ミサト「…いいわよ、人を頃すよりはいい!氏んだほうがマシよ!!」

葛城「………!」

葛城「パイロットと初号機のシンクロを全面カットしろ」

ヒカリ「カットですか?」

葛城「そうだ。回路をダミープラグに切り替えろ!」

マヤ「しかし、ダミーシステムはまだ問題も多く、…綾波博士の指示もなく!」

葛城「このままではパイロットが氏ぬ!急ぐんだ!」

ヒカリ「はい…!」

533: 2020/12/05(土) 15:12:01.83
ミサト「はぁっ、は…!」

ミサト「なに…? 何をしたの、お父さん!」


トウジ「信号、受信を確認」

ヒカリ「官制システム切り替え完了」

オペレータ「全神経、ダミーシステムへ直結完了」

オペレータ「感情素子の32.8%が不鮮明、モニターできません」

葛城「構うな…システム開放、攻撃開始」

534: 2020/12/05(土) 15:13:02.59
参号機を捩じ伏せる初号機

ヒカリ「これが、ダミープラグの力なの…?」

オペレータ「システム正常!」

オペレータ「さらにゲインがあがります!」

参号機の頭部を踏み潰し、身体を抉る

ヒカリ「ひっ!」



ミサト「やめてよ!!!!!」

ミサト「お父さん、お願い、やめてよ、こんなのやめさせて!!!!!」

ミサト「嫌…!止まってよ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれ!止まれ!」

エントリープラグが軋む

ミサト「はっ!これは…!」


ミサト「やめて!!!!嫌っ!やめてぇっ!!!!!!!!!!!!!!」



ケンスケ「エ、エヴァ参号機、あ、いえ、目標は、完全に、沈黙しました…」

535: 2020/12/05(土) 15:14:03.28
男「こっちにもいたぞーっ!生存者だ!息はある!急いで救護を廻してくれ!」

男「そうだ。レコーダーのプラグは、ペースト作業終了後、すべて、焼却処分にしろ!」


シンジ「生きてる……。…アスカ?」


男「いいから!…の封鎖を解除しろ!」


アスカ「……良かったわね、命があって」

シンジ「綾波は…?」

アスカ「…あんたよりは軽傷よ。まったく…心配させんじゃないわよ、バカシンジ」

シンジ「…はっ!…エヴァ参号機は!?」

アスカ「……使徒、として処理されたそうよ。初号機に」

シンジ「そんな……」


男「……は破棄だ!ベークライトを注入してくれ」

男「地下800mの…」

シンジ「……僕、まだミサ

536: 2020/12/05(土) 15:14:52.74
男「こっちにもいたぞーっ!生存者だ!息はある!急いで救護を廻してくれ!」

男「そうだ。レコーダーのプラグは、ペースト作業終了後、すべて、焼却処分にしろ!」


シンジ「生きてる……。…アスカ?」


男「いいから!…の封鎖を解除しろ!」


アスカ「……良かったわね、命があって」

シンジ「綾波は…?」

アスカ「…あんたよりは軽傷よ。まったく…心配させんじゃないわよ、バカシンジ」

シンジ「…はっ!…エヴァ参号機は!?」

アスカ「……使徒、として処理されたそうよ。初号機に」

シンジ「そんな……」


男「……は破棄だ!ベークライトを注入してくれ」

男「地下800mの…」

シンジ「……僕、まだミサトちゃんに何も話してない…」

537: 2020/12/05(土) 15:16:02.96
(通信)

シンジ「ミサトちゃん…?」

ミサト「シンジさん…!良かった。無事だったんですね…?」

シンジ「ごめん……ミサトちゃん、僕は……君に伝えなきゃいけなかったのに、こんなことに…」


ミサト「シンジさん…私は…私は、人を…!お父さんが、私、嫌だって、…やめてって頼んだのに…!」

シンジ「ミサトちゃん、ごめん、本当に…」

ミサト「シンジさん……?」

ヒカリ「エントリープラグ回収班より連絡。パイロットの生存を確認」


ミサト「生きてる!?」


男「了解。変形部はレーザーで切断」

男「L.C.L.の変質サンプルは最優先で…」

538: 2020/12/05(土) 15:17:02.39
シンジ「あの参号機のパイロットは…フォースチルドレンは…」


女「付着している生体部品は破棄処分、熱処理を準備!」

ミサト「え…?」



シンジ「…ミサトちゃん?…ミサトちゃん、ミサトちゃん…!ミサトちゃん!」

ミサト「嫌、」


(絶叫)


拾八話分終わり

539: 2020/12/05(土) 15:21:01.69
ヒカリ「…初号機の連動回路、カットされました」

カヲル「射出信号は?」

ヒカリ「プラグ側からロックされています。受信しません」

トウジ「聞いとるか?…ああでもせなんだら、お前がやられとったんやぞ!」


ミサト「そんなの関係ない……」


トウジ「それでも、それが事実や」

ミサト「………」


ミサト「そんなこと言って…これ以上私を怒らせないでよ…」

ミサト「初号機に残されている後185秒、これだけあれば、本部の半分は壊せる…!」

540: 2020/12/05(土) 15:22:02.17
ケンスケ「今の彼女なら、やりかねませんね」

ヒカリ「ミサトちゃん、話を聞いて!」

ヒカリ「葛城司令の判断がなければ、みんな氏んでいたかもしれないのよ!」

ミサト「関係ない、そんなの」

ヒカリ「ミサトちゃん……!」


ミサト「関係ないって言ってるでしょ……!」


ミサト「殺そうとしたのよ…!?日向くんを、初号機が……私の手が!!」




葛城「お前ではない」

ミサト「な……」

葛城「あの少年を殺そうとしたのは私だ」

ミサト「……っ」

541: 2020/12/05(土) 15:23:02.90
葛城「お前は氏を選んだ。私はダミープラグを」

葛城「初号機を動かしたのはダミープラグだ」

ミサト「……!」

ミサト「そんなの……!そんなの関係ないわよ!!乗ってたのは私でしょ!?」

葛城「お前は戦うことを放棄したんだ」

ミサト「違うわよっ!!!」

葛城「……」

葛城「L.C.L.圧縮濃度を限界まで上げろ」

ヒカリ「ええっ?」

葛城「…やってくれ。ここを破壊されては困る…」

ミサト「まだ直結回路が残っ…がはっ!」

ミサト「チクショウ…チクショウ…チクショウ…」

542: 2020/12/05(土) 15:24:02.13
作業員「ライトブレストの溶解処理、完了しました」

作業員「体液の洗浄は予定通り、30から始めます」

作業員「第6パーツは熱処理されます。エリア内の作業員は待避してください」

レイ「…もういいの?」

シンジ「仕事ができれば、問題ないよ」

シンジ「それに、休んでられないよ。こんな非常時に…」

シンジ「ミサトちゃんは…?」


レイ「…あの後、レーザーカッターで非常ハッチを切断。強制排除されたらしいわ」

シンジ「……参ったな…、今回ばかりは」

543: 2020/12/05(土) 15:25:02.22
加持「…立ち直れないかもしれないな」

リツコ「ミサト?」

加持「…ああ、葛城もだし」

加持「俺もだ…」

リツコ「…あなたの先行で、使徒との接近戦が危険と分かったんだから…無駄ではなかったわ」

加持「ははっ…優しいじゃないか。いつになく」

リツコ「そうかしら…普通よ」


加持「……葛城は、今ごろ夢の中かな?」

リツコ「夢?」

加持「ああ……悪夢じゃないといいが…」

リツコ「……」

544: 2020/12/05(土) 15:26:01.76
日向(……どこだ…ここは…妹の病院か…?なぜ俺は寝てるんだ……?)

日向(何だ……葛城さんじゃないか…それに、赤木…)


リツコ「なぜあんなことをしたの?」

ミサト「許せなかったのよ、お父さんが。私の気持ちを裏切ったお父さんが…」

ミサト「せっかくいい気持ちで話ができたのに、あの人は私の気持ちなんか分かってくれないんだわ」

リツコ「あなたは分かろうとしたの?お父さんの気持ちを」

ミサト「…分かろうとした」

リツコ「なぜ分かろうとしないの?」

ミサト「分かろうとしたわよ!」

リツコ「司令はあなたに氏んでほしくなかっただけよ」

ミサト「……っ」

ミサト「私は……!」


日向(…なんで喧嘩してるんだ…二人…)

545: 2020/12/05(土) 15:27:04.88
看護師「面会は特別だから、5分だけよ」

加持「はい、ありがとうございます」

日向「なんだ……お前か」

加持「悪かったな…葛城じゃなくて」

日向「いや…良かったよ。今はまともに顔を見れそうにない」

加持「……大丈夫か?」

日向「…生きてはいるみたいだな…」

加持「……」

日向「……葛城さんと、赤木がいたような気がしたんだがな…ちょうどそこに」

加持「…葛城は昨日退院したよ。リッちゃんは…何度か顔を見せてたようだが。おたくは丸三日寝てたんだ…夢でも見たんじゃないのか?」

日向「そうか…3日も……」

日向「……」

546: 2020/12/05(土) 15:28:01.10
日向「なぁ……ひとつ、頼んでいいか…?」

加持「何だ?」

日向「妹には…知らせないでくれ。俺は何でもないって…少し忙しいだけだからって…伝えてくれないか…?」

加持「……」

加持「分かった…」

547: 2020/12/05(土) 15:29:02.53
ネルフ職員「出たまえ、葛城ミサト君。総司令がお会いになる」


葛城「命令違反、エヴァの私的占有、恫喝…」

葛城「これらはすべて犯罪行為だ」

葛城「…何か言いたいことはあるか」

ミサト「……」

ミサト「私はもう、エバに乗りたくありません。…ここにもいたくありません」

葛城「どうするつもりだ」

ミサト「おじさんのところへ戻ります」

葛城「…それで逃げられると思うのか」

ミサト「……!」

葛城「…お前だけは、お前自身から逃げられない」

548: 2020/12/05(土) 15:30:04.24
葛城「お前の戦闘離脱も、同級生の怪我も、すべて事実だ。向き合わない道はない…「演じる」ことで隠すことはできても。…ミサト」

葛城「…もうここへは帰ってくるな」

ミサト「……っ!言われなくても、そうするわよ!!!」




葛城「私だ。サードチルドレンは抹消、初号機の専属パイロットはリツコをベーシックに、ダミープラグをバックアップに廻せ」




(伝言メッセージ)


マヤ「葛城さん? 大丈夫…? わたし、何て言ったらいいのか…」

マヤ「ごめんなさい。勝手なことばかり言って…乗りたいとか、羨ましいとか。私、自分が幻想を見てるんだって気づいたのよ、出ていくあなたを責められないわ……日向くんがエヴァの事故に巻き込まれたって聞いて、私…!」



オペレータ「この電話は盗聴されています。機密保持のため回線を切らせていただきました。ご協力を感謝いたします」

549: 2020/12/05(土) 15:31:02.65
シンジ「…加持くんが、悪かったって。…ミサトちゃんに」

ミサト「……みんな私に謝ってばっかり。悪いのは私なのに」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「やめてくださいよ!!いらないですよ、同情なんて…!」

シンジ「………」


ミサト「もう聞きあきたわ……私はかわいそうなんかじゃない……!」

ミサト「………」

ミサト「エバに乗ることも、ここに残ることも…」

ミサト「自分で選んだ……だから今度も、自分で出ていくんです…」

シンジ「…ミサトちゃん…」

550: 2020/12/05(土) 15:32:03.21
ミサト「…最後に、ひとつだけ教えてください。なぜ日向くんだったんですか?フォースチルドレンが」

シンジ「……第4次選抜候補者は、全てミサトちゃんのクラスメートだったんだよ……ごめん、こんな大事なことが、今まで言えなくて……」

ミサト「……全部、仕組まれてたってことですか?クラスのみんなが……」

ミサト「なんなんですか……?お父さんが……あの人がやろうとしてることは…!」

シンジ「……」

シンジ「ごめん……うまく言えないんだ。でも僕らが戦ってるのは、人類を救うためで…!……それだけは、嘘じゃ、ないから…」

ミサト「……もういいです。どうせ私には関係のなくなることですから」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「私のパスコードは破棄してください。部屋の荷物も…」

シンジ「……」

ミサト「すみません、最後までご迷惑をおかけして」

ミサト「それじゃあ……さようなら」

551: 2020/12/05(土) 15:33:02.06
警報。

放送「ただいま東海地方を中心に、非常事態宣言が発令されました。住民の皆さまは、速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返します、ただいま…」



ミサト「使徒だ…」





オペレータ「総員第一種戦闘配置、地対空迎撃戦用意」

カヲル「目標は?」

ケンスケ「現在、侵攻中です。駒ケ岳防衛線、突破されました!」

552: 2020/12/05(土) 15:34:02.37
オペレータ「第1から18番装甲まで損壊!」

トウジ「18もある特殊装甲を、一瞬で…!」

シンジ「……エヴァの地上迎撃は間に合わない!弐号機をジオフロント内に配置、本部施設の直縁に廻して!」

シンジ「加持くんには目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて!」

シンジ「零号機は?」

ヒカリ「A.T.フィールド中和地点に、配置されています」

レイ「左腕の再生がまだなのよ」

シンジ「戦闘は無理か…」

葛城「リツコは初号機で出せ」

シンジ「…!」

葛城「ダミープラグをバックアップとして用意」

シンジ「はい…!」

553: 2020/12/05(土) 15:35:02.14
オペレータ「エントリースタート」

ヒカリ「L.C.L.電荷」

レイ「A10神経、接続開始」

異変。

リツコ「うっ…だめなのね、もう…」

オペレータ「パルス逆流!」

ヒカリ「初号機、神経接続を拒絶しています!」

レイ「まさか、そんな…」

カヲル「……葛城君」

葛城「ああ…私を拒絶するつもりか」

葛城「…起動中止、リツコは零号機で出撃させろ。初号機はダミープラグで再起動」

シンジ「しかし零号機は…!」

リツコ「構いません。行きます」

シンジ「リツコちゃん…!」

リツコ(私が氏んでも代わりはいる…もう気づいて泣く人もいないわ)

554: 2020/12/05(土) 15:36:02.31
火柱が立ち上る。市街地。


ミサト(……私はもう、乗らないって決めたのよ…!)

男「君、何をしている!早くシェルターに避難しなさい!」




ケンスケ「だめです!後一撃ですべての装甲が突破されます!」

シンジ「…頑張って、加持くん…!」




加持「来たな……こちとら傷心中だってのに」

加持「ま……いいさ。スパッと勝ちどきを上げて、」

加持「英雄の凱旋といこうじゃないか……!」

555: 2020/12/05(土) 15:37:01.74
連射。

加持「このっっ!!」

加持「チッ……次!」

加持「なぜだ!? A.T.フィールドは中和しているはず…」

加持(なぜ通じない!?)

なおも撃ち込むが、通じない

加持「ははっ……笑えない冗談だ」

加持「何…っ!」


加持「がっっ」

腕を切り落とされる

加持「……っああ、あぅ……!」


加持「……でやあああっ!」


シンジ「弐号機の全神経接続カット!早く!!」

556: 2020/12/05(土) 15:38:02.56
(加持「避難訓練?……まぁ、俺たちパイロットには関係ない話だろうな」)

揺れる避難所。

ミサト「……うわっ!」

男「第8区に直撃!」

男「第6シェルターは放棄、生きてるものは第3シェルターへ急げ!」

目前に弐号機の頭部。

ミサト「……!!」



ケンスケ「弐号機大破、戦闘不能!」

シンジ「加持くんは!?」

トウジ「無事や!生きとる!」



加持「はは…」

加持「…首、ついてるよな……?」

加持「………」

557: 2020/12/05(土) 15:39:02.31
ケンスケ「使徒、移動開始!」

シンジ「初号機の状況は?」

オペレータ「ダミープラグ、搭載完了!」

ヒカリ「探査針、打ち込み終了!」

レイ「コンタクト、スタート!」

ヒカリ「了解!」

エラー音

レイ「何っ!?」

ヒカリ「パルス消失、ダミーを拒絶、だめです!エヴァ初号機、起動しません!」

レイ「ダミーを、赤木リツコを、」

カヲル「受け入れないのか…!」

葛城「……」

葛城「渚、少し、頼む…」

558: 2020/12/05(土) 15:40:01.46
男「怪我人は第6ブロックへ!」

男「無事なものは第3シェルターへ集合しろ!」

男「こっちだ!」

男「早く!」

男「急げ!」

男「早く!」

男「おい君!何をしている!氏にたいのか!」


立ち尽くすミサト


ミサト「加持くん…」



アスカ「ミサト!」

559: 2020/12/05(土) 15:41:02.86
ミサト「アスカさん…、どうしてここに…」

アスカ「それはこっちの台詞よ。何やってんのよ、サードチルドレン、葛城ミサト」

ミサト「もうパイロットじゃありません。…自分のために決めたんです」

アスカ「自分のため?聞いて呆れるわね…あんた逃げてるだけじゃないの」

ミサト「アスカさんこそ……何してるんですか」

アスカ「…アルバイトが公になったからね。戦闘配置に私の居場所はなくなったの。だからここで水を撒いてるってわけ」

ミサト「だからここで?意味が分かりません」

アスカ「分からない?何してたって同じってことよ。エヴァが負ければみんな氏ぬんだから」

ミサト「……みんな、氏ぬ…」


アスカ「そうよ。使徒がここの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びる…サードインパクトで」

アスカ「あたしはここで水を撒くことしかできない…あんたは違うでしょ?」

アスカ「使徒を止められるのは、使徒と同じ力を持つエヴァンゲリオンだけ」


ミサト「リツコっ!?ライフルも持たずに!」

560: 2020/12/05(土) 15:42:02.06
レイ「やめなさいっ!!」

葛城「リツコ!」


リツコ「A.T.フィールド、全開…!」

爆発。

ミサト「うっ!……!」



トウジ「零号機は…!」


爆煙の中から、使徒

零号機の頭部を切り落とす


シンジ「リツコちゃんっ!」

レイ「何てこと…!」

561: 2020/12/05(土) 15:43:10.35
アスカ「後悔なんて誰だってするわよ。誰だって今が一番辛いの。時間は巻き戻せない、一瞬一瞬を積み重ねたものが人の歴史なのよ」

アスカ「選択できるのは「今」だけ…」

アスカ「その一瞬で何を選択するか……少なくともそれで、未来(さき)の後悔は変えられるわ」

ミサト「……」


アスカ「あんた本当に後悔しないの?こんなところに突っ立ってて」

ミサト「………!」





ケンスケ「第三基部に、直撃!」

トウジ「最終装甲版、融解!」

シンジ「まずい、メインシャフトが丸見えだ…!」

レイ「初号機はまだなの!?」

オペレータ「ダミープラグ、拒絶」

オペレータ「だめです、反応ありません!」

562: 2020/12/05(土) 15:44:02.75
葛城「続けろ。もう一度108からやり直せ」



ミサト「乗せてください!」


ミサト「私を、私をこの……っ、初号機に乗せてください!」

葛城「……!」

ミサト「お父さん…」

葛城「…なぜ帰ってきた」

ミサト「私は…!」


ミサト「私は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、葛城ミサトです!」

563: 2020/12/05(土) 15:45:10.09
ケンスケ「目標は、メインシャフトに侵入、降下中です!」

シンジ「目的地は!?」

トウジ「そのまま、セントラルドグマへ直進!」

シンジ「ここに来る…!総員待避!急いで!」

トウジ「総員待避!繰り返す、総員待避!」


目前に迫る使徒。


シンジ「……!」

突進する初号機

シンジ「エヴァ初号機!?…ミサトちゃん!?」


ミサト「ぐ…っ!」

ミサト「ああああああっ!」

564: 2020/12/05(土) 15:46:02.48
拳を振り上げる初号機。腕を切断される

ミサト「……っ、あああああああ!」

射出リフトに使徒を追いやる。

ミサト「シンジさんっ!」

シンジ「5番射出、急いで!」

ミサト「あああああっ!」

ミサト「やあああああ!」

絶叫し使徒を撲つ。

突如、停止する

ミサト「エネルギーが切れた!?」


ヒカリ「初号機、活動限界です!予備も動きません!」

シンジ「ミサトちゃん…!」

565: 2020/12/05(土) 15:47:03.60
刻まれ、爆撃を受ける初号機。

シンジ「ミサトちゃん!!」


ミサト「動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないのよ!」


シンジ「あれは…っ」

露呈したコア。

ミサト「動け、動け、動け!動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動きなさいよ!」

ミサト「今動かなきゃ、今やらなきゃ……みんな氏んじゃうのよ…!もう…もうそんなのは、嫌なの…!」

ミサト「だから……動いてよ…っ!!」



鼓動。



覚醒する初号機。攻撃を受け止める

アスカ「……!」

566: 2020/12/05(土) 15:48:03.51
ヒカリ「エ、エヴァ、再起動…」

使徒の部品を押し当てる。腕を再生。

シンジ「すごい…」

ヒカリ「まさか…信じられません、初号機のシンクロ率が400%を超えています!」

レイ「目覚めたのね……彼女が」


咆哮する初号機。使徒を圧倒する


シンジ「使徒を……食べてる…」

レイ「S2機関を自ら取り込んでいるというの…?エヴァ初号機が…」

ヒカリ「……うぅっ!」


レイ「拘束具が…!」

トウジ「拘束具?」

レイ「そうよ…あれは装甲板ではないの。エヴァ本来の力を私たちが押え込むための、拘束具」

レイ「その呪縛が今、自らの力で解かれていく…私たちにはもう、エヴァを止めることはできない…」

567: 2020/12/05(土) 15:49:02.60
アスカ「……初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ」

アスカ「これもシナリオの内?……葛城司令殿」





カヲル「始まってしまったね…どうする?」

葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」




拾九話分終わり

568: 2020/12/05(土) 15:51:01.27
シンジ「使徒を……食べてる…」


レイ「拘束具が、今自らの力で解かれてゆく。私たちにはもう、エヴァを止める事はできない…」


アスカ「初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ?」



ゼーレ「エヴァシリーズに生まれいずる筈のないS2機関」

ゼーレ「まさかかのような手段で自ら取り込むとはな」

ゼーレ「我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ」

ゼーレ「この修正、容易ではないぞ」

ゼーレ「葛城。あの男にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね?」

キール「だがあの男でなければ、全ての計画の遂行はできなかった。葛城、何を考えている?」




カヲル「始まってしまったね…どうする?」

葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」

569: 2020/12/05(土) 15:52:20.93
ヒカリ「エヴァ両機の損傷は、ヘイフリックの限界を超えています」

レイ「時間がかかるわね。全てが戻るには」

ヒカリ「幸い、MAGIシステムは移植可能です。明日にも作業を開始します」

レイ「でも、ここはだめね」

ケンスケ「破棄決定は、もはや時間の問題だな」

レイ「そうね…とりあえずは、予備の第2発令所を使用するしかないわね」

ヒカリ「MAGIはなくとも、ですか?」

レイ「…そうね。埃を払って、午後には仕事を始めるわ」

ヒカリ「椅子はきついし、センサーは硬いし、やりづらいのよね…ここ」

ケンスケ「見慣れた第1発令所と造りは同じなんだがな」

ヒカリ「違和感あるわよね」

レイ「使えるだけでも良しとしましょう」


レイ「使えるかどうか分からないのは、初号機ね…」

570: 2020/12/05(土) 15:53:02.23
拘束された初号機

シンジ「…何か反応は?」

トウジ「内部に熱、電子、電磁波ほか、化学エネルギー反応無し。S2機関は完全に停止しとる」

シンジ「にもかかわらず、この初号機は3度も動いた…」

シンジ「目視できる状況だけじゃ、迂闊に触れないね」

トウジ「……」

トウジ「迂闊に手ェ出すと何されるか分からん。…まるでセンセを尻に敷いとる、あの女やな」

シンジ「…トウジも、人のこと言えるの?」

トウジ「なんやとっ!」

571: 2020/12/05(土) 15:54:14.56
キール「だが事態はエヴァ初号機の問題だけではない」

ゼーレ「さよう、零号機と弐号機の大破、本部施設の半壊、セントラルドグマの露呈。被害は甚大だよ」

ゼーレ「われわれがどの程度の時と金を失ったか、見当も付かん」

ゼーレ「これも、葛城の首に鈴を付けておかないからだ」

ゼーレ「鈴は付いている。ただ、鳴らなかっただけだ」

キール「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴に動いてもらおう」

572: 2020/12/05(土) 15:55:08.40
アスカ「…どーなってんのよ?この展開は」

アスカ「ゼーレにどう言い分けつけるつもり?」

カヲル「……初号機はわれわれの制御下ではなかった。これは不慮の事故だよ」

葛城「よって初号機は凍結。委員会の別命あるまでは、だ」

アスカ「あくまで演じ通すってわけね…。いいわ。でもどうするの?パイロットは取り込まれたままなのよ」

葛城「……」

573: 2020/12/05(土) 15:56:01.73
ヒカリ「やはりだめです、エントリープラグ排出信号、受け付けません」

レイ「予備と疑似信号は? 」

ヒカリ「拒絶されています。 直轄回路もつながりません」

トウジ「プラグの映像回線が繋がった。主モニターに廻す」


シンジ「……何だ、これ……!」


レイ「…これがシンクロ率400%の正体」

シンジ「そんな……!ミサトちゃんは一体…!?」

レイ「…エヴァ初号機に取り込まれてしまったのよ」

シンジ「……!」

574: 2020/12/05(土) 15:57:02.80
シンジ「……何だよそれ…どういうことなの? エヴァは対使徒用の、決戦兵器なんじゃなかったの!?」


シンジ「あの時南極で拾った……それをコピーした、人が戦うために作った兵器なんじゃ…」

レイ「ただのコピーとは違うわ。人の意思が込められているもの」

シンジ「これも誰かの意思だって言うの…?」

レイ「……あるいは、エヴァの」

シンジ「!」

シンジ「…なんだよそれ…!エヴァって何なんだよ…!」


レイ「…人の作り出した、人に近いカタチをした物体、としか言いようがないわ」


シンジ「……」

575: 2020/12/05(土) 15:58:01.92
テレビ(ラジオ)「…であり、南沙諸島の問題に対し、政府と内務省はこれを公式に否定しました」

テレビ(ラジオ)「次のニュースです。第2東京市で起きたセクトによるテロ事件から一ヶ月が過ぎた今日、新たなテロ行為に対し再発防止を第一に政府による…」


リツコ「…まだ生きてる…」



(通話)

加持「リッちゃんが無事?それは…よかった…俺は大丈夫、ああ、大したことないよ、それじゃあ」



加持「…大したことないか…」

加持「弐号機、大破…」

加持「……」

加持「…荷が重いな…」

576: 2020/12/05(土) 15:59:02.23
シンジ「ミサトちゃんのサルベージ計画?」

レイ「そう。ミサトちゃんの生命と言うべき物は、まだ存在しているわ」

シンジ「言うべき物?」

ヒカリ「ミサトちゃんの肉体は、自我境界線を失って、量子状態のまま、エントリープラグ内を漂っていると推測されます」

シンジ「つまり…ミサトちゃんは僕たちの目では確認できない状態に変化している?」

ヒカリ「そう。プラグの中のL.C.L.成分は、化学変化を起こし、現在は原始地球の海水に酷似していて…」

レイ「言うなれば、生命のスープね」

577: 2020/12/05(土) 16:00:01.13
レイ「ミサトちゃんを構成していた物質は、すべてプラグ内に保存されているし、魂と言うべき物もそこに存在している」

シンジ「……なぜそう言い切れるの?」

レイ「現に彼女の自我イメージが、プラグスーツを擬似的に実体化させているわ」

ヒカリ「つまりサルベージとは、彼の肉体を再構成して精神を定着させる作業です」

シンジ「そんな事が可能なの?僕たちの力で」

レイ「MAGIのサポートがあればね」

シンジ「……」

レイ「結果どうなるかは……やってみなくては分からないわ」

578: 2020/12/05(土) 16:01:15.88
ミサト「…なに、これ…?どこなの…?エントリープラグ?初号機の?…でも誰もいない。私もいない…」



ミサト「なに…これは…?よく分からない…」

ミサト「この人達…そう、私の知っている人たち、私を知っている人たち」


ミサト「そうか、みんな私の世界なんだ」



ミサト「これは? 私の世界のはずなのに、よく分からない、外からのイメージ、嫌なイメージ」

ミサト「そうよ、敵!」

ミサト「敵、テキ、てき、敵!使徒と呼ばれ天使の名を冠する私たちの敵!」

ミサト「エバの…そしてネルフの目標…シンジさんの両親の仇…」

ミサト「なんで私が戦うんだろう…こんな目に遭ってまで…」

(アスカ「誰かのためってのは聞こえはいいけど、心情的には見返りを求めるものよ」)

579: 2020/12/05(土) 16:02:04.84
ミサト「自分のため……自分のため?」

ミサト「私はこんなに傷ついているのに……」


ミサト「敵、テキ、てき、敵、みんな敵!私を…私たちを脅かすもの、つまり敵」

ミサト「そうよ、自分の命を……心を守って、何が悪いのよ!いいことじゃないの!」


リツコ「いい子でいたいの?」


ミサト「何よ!私と母さんを捨てたくせに!」

リツコ「あなたが逃げ出したんでしょう?」

ミサト「違う、違う、違う、違う!お父さんが捨てたのよ!日向くんを傷つけたのよ、お母さんを頃したのよ!」


リツコ「お母さんが、あなたを頃していたんじゃないの?」

ミサト「嫌……っ!」

580: 2020/12/05(土) 16:03:05.16
母「ミサト……ミサトはお母さんの味方よね…?」

母「ひどい…、ひどいわ…何も分かってないのよ、あの人は」

母「家庭より仕事を取ったのよ!愛してないんだわ、私たちのことを」

ミサト「……」

母「あなただけは、お母さんの味方よね?」

母「あなたがいてくれれば……他になにもいらないの」

母「ミサト…!」

581: 2020/12/05(土) 16:04:03.70
リツコ「だから嫌いなの?」

ミサト「そうよ……父も母も嫌い。自分だけがかわいいのよ」

リツコ「だから逃げ出したのね」

ミサト「一人になって当然よ!お父さんは私たちを愛してなかったんだから!」

リツコ「だから私を愛すの?」

ミサト「そうよ!実の子が恐いから…!他の子で誤魔化してるのよ」

リツコ「あなたは違うの?」


ミサト「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!お父さんがみんな悪いんじゃないの!あの時だって、ほんとはお父さんに嫌いだって言うつもりで…!」

582: 2020/12/05(土) 16:05:02.40
ミサト「私に…これに乗って戦えって言うの?さっきの化け物と!」

葛城「…そうだ」

ミサト「……いやよっ!そんなの……!何?なんでそうなるのよ、今更、いまさら……私を捨てたんじゃなかったの!!?」

葛城「……捨てた覚えはない」

ミサト「なぜ、私なの?」

葛城「お前にしかできないことだからだ」

ミサト「……無理よ…っ!そんなの…見たことも、聞いたこともないのに、できるわけない!」




ミサト「そう、私は何も知らなかった」

ミサト「それなのに、飛び込んだのよ」

ミサト「エバに乗ることを選んだ」


ミサト「お父さんに近づきたかったから…」

583: 2020/12/05(土) 16:06:01.86
アナウンス「現在、L.C.L.の温度は36を維持、酸素密度に問題なし」

アナウンス「放射電磁パルス異常無し。波形パターンはB」

アナウンス「各計測装置は正常に作動中」


ヒカリ「サルベージ計画の要綱、たった一ヶ月でできるなんて。さすが綾波さんね」

レイ「原案は私じゃないわ…先生が残したものに手を加えたの。10年前に実験済みのデータよ」

ヒカリ「そんなことがあったの?エヴァの開発中に?」

レイ「私が入ってすぐの出来事よ」

ヒカリ「…その時の結果は…?」

レイ「……失敗」

584: 2020/12/05(土) 16:07:04.87
ミサト「冷たい…さびしい…」

ミサト「おかしいな。…前は一人でも平気だったのに」

リツコ「サビシイってなに?」

ミサト「一人が嫌ってこと。誰かといたいってことよ」

リツコ「シアワセってなに?」

ミサト「好きってこと。心が満たされることよ」

リツコ「誰かと一緒にいれば、幸せ?」

ミサト「……分からない。お母さんといるときは…息苦しかったから」


母親の遺体の前に立つミサト


ミサト「氏を悲しめない自分がいるのよ」

ミサト「切り離されてほっとしている自分がいる」

ミサト「…でも、自分からは逃げられない」


(葛城「お前自身から逃げられない」)

585: 2020/12/05(土) 16:08:03.77
ミサト「自分のために優しくしてきたわ!」

ミサト「自分のためにいい子でいた!」

ミサト「なのに……なぜなの?」


ミサト「嬉しくないのね」

ミサト「嬉しくないわよ」

ミサト「こんな……偽物の自分…」


ミサト「自分なのか分からない自分…」

ミサト「誰か…」


ミサト「汚して!」




ミサト「めちゃくちゃにしてよ!」

586: 2020/12/05(土) 16:09:02.59
日向「意外だったな…葛城さんにこんな一面があったなんて」

シンジ「かわいいよ、ミサトちゃん」

加持「魅力的だよ」



ミサト「気持ち、いいの?」

日向「気持ちいいよ」

ミサト「気持ち、いいの?」

シンジ「気持ちいいよ」

ミサト「気持ち、いいの?」

加持「君は最高だ…」

587: 2020/12/05(土) 16:10:02.80
日向「君が必要なんだ」

シンジ「君が必要だよ」

加持「君しかいらない…君だけでいい」


リツコ「嘘ね」

ミサト「はっ」


リツコ「一時の感情に身を任せて、刹那的に自分を傷つけているだけよ。罰を与えて、誤魔化しているだけ」

ミサト「それの何がいけないのよ!私は汚れたいの!もういい子は嫌…!私はあんたじゃないのよ!!」


リツコ「私はいい子じゃないわよ?」



(加持「涙の通り道にほくろのある人は…」)

(加持「ま、俺ならそんな思いはさせないが」)

(アスカ「あたしにとってのシンジ?…それが分かりゃあ、苦労しないわよ」)

588: 2020/12/05(土) 16:11:02.13
シンジ「アスカは特別なんだ」


加持「笑った顔が見たい」



ミサト「やめて!!!やめてよ!!!!私だけを見て!」

ミサト「私だけを愛してよ…!」



日向「愛しているよ」

シンジ「愛してるよ」

加持「………」



葛城「お前の居場所はない」



ミサト「ひ…っ!」

589: 2020/12/05(土) 16:12:01.55
オペレータ「全探査針、打ち込み終了」

オペレータ「電磁波形、ゼロマイナス3で固定されています」

ヒカリ「自我境界パルス、接続完了」

レイ「了解、サルベージ、スタート」

トウジ「了解、第1信号を送信」

ケンスケ「エヴァ、信号を受信。拒絶反応無し」

ヒカリ「続けて、第2、第3信号送信開始」

オペレータ「対象カテクシス異常無し」

オペレータ「デストルドー、認められません」

レイ「了解、対象をステージ2へ移行」

シンジ「…ミサトちゃん…!」

590: 2020/12/05(土) 16:13:01.71
ミサト「はっ」

(加持「葛城!」)

ミサト「はっ!」

(シンジ「ミサトちゃん!?」)

ミサト「はっ!」

(マヤ「あら、葛城さん!」)

ミサト「はっ!」

(リツコ「ミサト!」)

ミサト「はっ!」

(日向「葛城さん」)

(青葉「葛城~!」)

(レイ「ミサトちゃん?」)

591: 2020/12/05(土) 16:14:01.75
(加持「お姫さま」)

(シンジ「ミサトちゃん…」)

(日向「葛城さん?」)

(リツコ「ミサト」)

(レイ「ミサトちゃん!」)

(マヤ「葛城さん?!」)

(青葉「葛城?」)

(加持「おい、葛城!」)

(日向「あっ、葛城さん!」)

(リツコ「ミサト」)

(シンジ「ミサトちゃん!」)

(加持「葛城!」)

(日向「葛城さん!」)

592: 2020/12/05(土) 16:15:01.65
ヒカリ「だめです、自我境界がループ上に固定されています!」

レイ「全波形域を全方位で照射してみて!」


レイ「だめね…発信信号がクライン空間に捕われている…」

シンジ「どういう事?」

レイ「つまり、失敗」

シンジ「えっ…」

レイ「干渉中止、タンジェントグラフを逆転、加算数値をゼロに戻して」

ヒカリ「はい!」

ケンスケ「Qエリアにデストルドー反応、パターンセピア」

トウジ「コアパルスに変化あり!プラス0.3を確認!」

レイ「現状維持を最優先、逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」

593: 2020/12/05(土) 16:16:01.18
ヒカリ「プラス02…0.8、変です!塞き止められません!」

レイ「これは…なぜ…帰りたくないの?ミサトちゃん…」




ミサト「分からない、分からない…私は…私は…」


シンジ「何を願うの?」

加持「何を、願う?」

日向「何を願うの?」

葛城「何を願う?」

594: 2020/12/05(土) 16:17:03.32
ヒカリ「エヴァ、信号を拒絶!」

ケンスケ「L.C.L.の自己フォーメーションが分解していきます!」

ケンスケ「プラグ内、圧力上昇!」

レイ「現作業中止、電源落として!」

ヒカリ「だめです、プラグがイクジットされます!」

溢れ出るL.C.L.

シンジ「ミサトちゃん!!!」





ミサト「はっ…」

ミサト「ここは…」


ミサト「エバの中よ」

ミサト「エバの中?私はまたエバに乗ったの…?どうして…」

595: 2020/12/05(土) 16:18:01.61
シンジ「もうエヴァには乗らないの…?」

ミサト「破棄してください。パスコードも、部屋の荷物も…」

アスカ「でもあんたは乗った。エヴァンゲリオン初号機に」

ミサト「はっ!」

アスカ「一瞬一瞬の積み重ねなのよ、人の歴史は」

シンジ「僕らは人を守るのが仕事で…君もその一人なのに」

アスカ「後悔しないの?そんなとこに突っ立ってて」

シンジ「僕たち大人を……恨んでくれてかまわない」

アスカ「あんた逃げてるだけじゃないの」

シンジ「ごめんね……勝手な大人ばかりで」

アスカ「サードチルドレン!」

シンジ「この先…立ち向かえない現実があったとしても……君自身のことは、嫌いにならないでほしい」


ミサト「……シンジさん!」

596: 2020/12/05(土) 16:19:03.01
シンジ「う…っ、う、ぅ……!」

シンジ「何が科学だよ……!…人一人、助けられなくて…!」

シンジ「返してよ…!ミサトちゃんを…!」

シンジ「返してよ…っ」




ミサト「匂い…人の匂い…」

ミサト「シンジさん…?」

ミサト「リツコ…?」

ミサト「いや、違う…」

ミサト「そうだ、お母さんの匂い…」



母「……ふふ、可愛いわね、きっと世界で一番、可愛い子よ…」

葛城「ああ…そうだな」


ミサト「お母さん…」

597: 2020/12/05(土) 16:20:04.95
母「抱いてあげて?」

葛城「…抱き方が分からない」

母「こうするの…ほら」

母「優しく…」

母「支えてあげるのよ」

母「あなたにもできるわ」

母「ほら…」

葛城「……」


ミサト「……お父さん」


パシャッ


シンジ「…!」

シンジ「…ミサトちゃん!」

598: 2020/12/05(土) 16:21:03.40
カーラジオ「そりゃ分かるんだけど、オーラルステージの…心理学者が…つまり、母親といつまでも一緒にいたがる… 」



レイ「初号機の修復、明後日には完了するわ」

シンジ「結局、めでたしめでたしか…。科学…人間は不滅なのかもしれないね、神様の力まで利用しちゃうんだから…」

レイ「…どうかしらね…。委員会では凍結案も出ているそうよ」

シンジ「不安要素が大きすぎるって?今さらだよ…やめるんなら初めから手を出すべきじゃなかったんだ」

レイ「……」

シンジ「人造人間、エヴァンゲリオン……ミサトちゃんが助かったのも、エヴァの意思かな?それとも、人の力?」

レイ「少なくとも……私の力じゃないわ、あなたの存在が大きかったんじゃないかしら。彼女の深層心理において」

シンジ「僕が?」

レイ「人は傍らの存在に温もりを感じるものよ。それにあなたは…愛を持って彼女に接してる。影響がなかったとは思えないわ」

シンジ「そうかな…?なんだか綾波にそう言われると、照れるな…」

レイ「素直な感想よ。感謝してるの、あなたにも…ミサトちゃんにも」

シンジ「綾波……」

599: 2020/12/05(土) 16:22:03.83
レイ「一杯奢らせてくれない? サルベージ成功のお祝いに」

シンジ「あ…」

レイ「?」

シンジ「…ごめん!今日は、…約束があって」

レイ「そう… 」



シンジ「それじゃ…!」





レイ「……あれだけ泣いていたのに」

レイ「ミサトちゃんが無事だと分かったら、今度はアスカのところか…」

レイ「……」

レイ「忙しい人ね…」

600: 2020/12/05(土) 16:23:01.51
アスカ「あいつは今ごろ、いやらしい女だって軽蔑してるわね。きっと…」

シンジ「誰…っ、あいつって…」

アスカ「…馬鹿ね。さすがにあいつに同情するわよ…」

シンジ「…あ、アスカ、もう…っ」

アスカ「だーめ。あんたまだ言ってないでしょ?」

シンジ「…言えないよ…!こんな、ところで…っ」

アスカ「あたしには言わせたクセに」

アスカ「人類補完計画…人を滅ぼすアダム…あんたの知らないこと、ほらぁ…聞き出しなさいよ、それが仕事でしょ?」

シンジ「アスカ…っ、言わないでよ。信じるから。僕はアスカを信じるって、決めたから…」

アスカ「……」

シンジ「……もう危険な橋を渡るのはやめてよ…アスカ」

601: 2020/12/05(土) 16:24:02.05
シンジ「まだやめてなかったんだ…たばこ」

アスカ「だったら何?もうお小言はウンザリよ、耳にタコ」

シンジ「体に悪いのに…」

アスカ「……こういう事のあとにしか吸わないんだから、セーフよ」

アスカ「それともなぁに?シンちゃん、物足りなかったのかな?」

シンジ「あ、アスカ…!」

アスカ「……。…あんたってホンットに、昔っからこういうとこは…」

アスカ「……んっ」

602: 2020/12/05(土) 16:25:02.63
ベッドが軋む音


シンジ「!」

シンジ「ちょっ…!アスカ…!」

アスカ「…あによ?こっちイジられんのも、好きなくせに…」

シンジ「やめてよ……変なもの入れないでよ」

シンジ「……? なに、これ」


アスカ「プレゼントよ、8年ぶりの」

シンジ「?」

アスカ「最後かもしれないから。…大事にしまっときなさいよ」





弐拾話分終わり

603: 2020/12/05(土) 16:26:07.30
続きは明日

604: 2020/12/06(日) 15:01:02.20
シンジ(留守番電話)「はい、ただいま留守にしています。発信音の後にメッセージをどうぞ」

アスカ「最後の仕事か…」

アスカ「まるで血の赤ね」




シンジ「拉致された!?副指令が?」

諜報部員「今より2時間前です。西の第8管区を最後に、消息を絶っています」

シンジ「うちの署内で…!?消えようがないじゃないか」

諜報部員「身内に内報、および先導したものがいます。その人物に裏をかかれました」

シンジ「身内に内報……?…まさか!」

諜報部員「惣流・アスカ・ラングレー。この事件の首謀者と目される人物です」

シンジ「………!」

諜報部員「首謀者とあなたの過去の経歴を考えると…致し方ない処置かと思われます。作戦課長を疑うのは、同じ職場の人間として心苦しいのですが…」

シンジ「いいよ…。それが諜報部の仕事だもの…」

諜報部員「ご協力感謝します。お連れしろ!」

605: 2020/12/06(日) 15:02:01.61
カヲル「……お久しぶりです、キール議長。ずいぶんと手荒な歓迎ですね」

キール「非礼を詫びる必要はない。君とゆっくり話をするためには、当然の処置だ」

カヲル「相変わらずですね……僕の都合はおかまい無しですか?」

ゼーレ「議題としている問題が急務なのでね。やむなくの処置だ」

ゼーレ「分かってくれたまえ」

カヲル「やれやれ…委員会ではなく、ゼーレのお出ましとは」

ゼーレ「われわれは、新たな神を作るつもりはないのだ!」

ゼーレ「ご協力を願いますよ、渚先生」

カヲル「……」

カヲル(渚先生、か…)

606: 2020/12/06(日) 15:03:01.87
学生「先生!渚先生!」

カヲル「ん?ああ、君たちか」

学生「これからどないです?鴨川でビールでも」

カヲル「またかい?学生の本分は勉学じゃなかったのかな」

学生「そない言わんと。リョウコらが先生と一緒なら行くゆうとりますんや」

学生「教授もたまには顔出せゆうてはりましたで」

カヲル「……ああ、分かったよ」

607: 2020/12/06(日) 15:04:02.85
教授「たまにはこうして外で飲むのも良かろう」

カヲル「えぇ…まぁ…」

教授「…君は優秀だが、人の付き合いというものを軽く見ているのがいかんな」

カヲル「恐れ入ります」

教授「ところで渚君、生物工学部の葛城という生徒を知っているかね?」

カヲル「? いいえ、存じませんが」

教授「成績はいいのだがね…色々と悪い噂を耳にする。君のことも嗅ぎ回っているようだ」

カヲル「僕のことを?」

教授「おそらく…君の後ろにある組織にくみいろうという魂胆だろう。気を付けたまえ」

カヲル「……」

カヲル「肝に銘じておきます」

608: 2020/12/06(日) 15:05:02.07
ゼーレ「S2機関を自ら搭載し、絶対的存在を手にしたエヴァンゲリオン初号機!」

ゼーレ「われわれには具象化された神は不要なのだよ」

キール「神を作ってはいかん」

ゼーレ「まして、あの男に神を手渡すわけにはいかんよ!」

ゼーレ「葛城。あの男、信用に足る人物かな?」

609: 2020/12/06(日) 15:06:01.51
論文に没頭するカヲル

カヲル「……おっと」

カヲル「すっかり時間を忘れていたな…」

カヲル「……」

カヲル「…この時間なら、学食も空いてるか…」




葛城「B定を」

カヲル「B定食を」

葛城・カヲル「………」

おばさん「すみませんねぇ、B定こちらの学生さんで終わりなんですよ」

カヲル「そうですか……ではA定食を」

おばさん「すみません」

葛城「………」

610: 2020/12/06(日) 15:07:02.08
葛城「あの……取り替えましょうか?」

カヲル「え?」

葛城「迷っていたんです。だから…どちらでもよくて」

カヲル「ああ……定食のことか。気にしなくていいよ、僕もそんなに拘って決めたわけではないんだ」

葛城「そうですか……それじゃあ…」

カヲル「……おや、君は…」

葛城「?」

カヲル「その資料、生物工学部の子かい?」

葛城「はい、まぁ…」

カヲル「では、僕の講義は?」

葛城「…取っています」

カヲル「ちょうどよかった。意見を聞かせてくれないかな」

葛城「…自分のですか…?」

カヲル「そう。論文で行き詰まっててね、新しい風を入れたいんだ」

カヲル「君、名前は?」

611: 2020/12/06(日) 15:08:06.78
カヲル「そう…彼の第一印象は、不思議な男だった…」

カヲル「影のあるようにも見えるが…どこか人を惹き付ける」

カヲル「言葉少なで、人と距離を置きたがるために…誤解されることも多いが、少なくとも僕の目には善人に見えた」




カヲル「そしてあの時はこの国に季節、四季があった」

612: 2020/12/06(日) 15:09:02.56
カヲル「いいことじゃないか。…パートナーの存在は人生をより良いものにしてくれるよ」

葛城「…しかし」

カヲル「何か問題が?」

葛城「彼女を……幸せにできる自信がありません」

カヲル「……」

カヲル「…ふふ、葛城君。そういうことは直接本人に聞くべきだよ」

葛城「?」

カヲル「自信があるとか、ないとかは関係ないんだ。人を変えるのはいつだって変わりたいという人自身の意思だからね」

葛城「…人自身の、意思…」

カヲル「彼女が君を愛しているならば、彼女自身が君の隣を選ぶだろう。それが幸せの道だからね」

葛城「……」

カヲル「そして君自身が選ぶ、幸せの道でもある」

613: 2020/12/06(日) 15:10:01.62
カヲル「…彼らは籍を入れた」

カヲル「その直後だった」


カヲル「セカンドインパクト。20世紀最後の年に、あの悲劇は起こった」

カヲル「そして、21世紀最初の年は、地獄しかなかった…他に語る言葉を持たない年だ」

614: 2020/12/06(日) 15:11:01.88
2年後、南極調査船内


カヲル「これがかつての氷の大陸とはね。見る影もない…」

カヲル「…君があの日、帰国していなかったらと思うと…ゾッとするよ、葛城君」

葛城「…自分は、難を逃れましたが……多くのものを失いました」

カヲル「そうだね…その通りだ」

カヲル「何も取り戻せはしないが…少しでも情報を得ないと。二の舞だけは御免だからね」

葛城「……先生」スッ

カヲル「? …なんだい?」

葛城「…これを。妻からあなたへ渡すように言われています」

カヲル「これは、奥さんと…息子さんの写真かい?」

葛城「…娘です」

カヲル「なぜ僕に?」

葛城「…妻は、よく溢しています…自分たちより渚教授が大切なのか?と」

カヲル「はは…それは…一度怒られに行かなくてはね」

615: 2020/12/06(日) 15:12:01.78
カヲル「…最近、ゼーレについて良くない噂を耳にするよ。…力で、理事会を押さえ込んだとか」

葛城「………」

カヲル「たしかに、口利きをしたのは僕だが。情報はすべて入れるという約束じゃなかったかな?」

葛城「……すみません」

カヲル「……まぁ、いいさ…こんな時代だ。綺麗なだけの組織では生きていけないだろう」

葛城「…おっしゃる通りです。今回のセカンドインパクトの正式調査、これも…ゼーレの人間だけで調査隊を組めば、いろいろと面倒な事になります」

カヲル「僕たちはそのための間に合わせというわけか…」

葛城「…気を悪くされましたか…?」

カヲル「いいよ。……他ならぬ君の頼みだ」

葛城「…ありがとうございます」

616: 2020/12/06(日) 15:13:02.53
暗闇で膝を抱えるシンジ


シンジ「暗いとこは、まだ駄目だな…いやな事ばかり思い出す…」






カヲル「……彼は?」

男「例の調査団ただ一人の生き残りです。名は、碇シンジ」

カヲル「碇?碇博士のご子息か…!」

男「はい、もう2年近くも口を開いていません」

カヲル「なんて…むごい…」

男「ええ…それだけの地獄を見たのです。体の傷は治っても、心の傷はそう簡単には治りませんよ」

カヲル「……」

カヲル「……あとは本人の生きる意思の問題か…」


カヲル「…こちらの調査結果も、簡単には出せそうにないな。この光の巨人…謎だらけだよ」

617: 2020/12/06(日) 15:14:05.03
カヲル「その後国連は、セカンドインパクトは大質量隕石の落下によるものと正式発表した」

カヲル「だが、僕の目から見れば、それは…あからさまに情報操作をされたものだった」

カヲル「その裏にはゼーレ、そして、キール議長の姿が見え隠れしていた」

カヲル「疑いたくなかった。葛城君を。彼の背中は、僕が押したのだから…」

カヲル「だが衝動は抑えきれず…」

カヲル「僕は、あの事件の闇の真相を探った」

618: 2020/12/06(日) 15:15:01.37
カヲル「なぜ巨人の存在を隠すんだい?…セカンドインパクトを知っていたんじゃないのか、君らは。その日、あれが起こる事を…!」

葛城「……」

カヲル「君は運良く事件の前日に引き揚げた……では、全ての資料を一緒に引き揚げたのも、幸運の内かい?」

葛城「……」

カヲル「…君の資産、いろいろと調べさせてもらったよ。子供の養育にお金はかかるだろうが、個人で持つには額が多すぎる」

葛城「……」

カヲル「……何か言ってくれ…!このままでは…セカンドインパクトの裏に潜む、君たちゼーレと、氏海文書を公表することになる。あれを起こした人間たちを、許すわけにはいかない」

葛城「……お怒りはごもっともです。ですが…お別れの前に、お目にかけたいものがあります」

619: 2020/12/06(日) 15:16:02.51
カヲル「随分潜るんだね…」

葛城「心配ですか?」

カヲル「得体が知れないからね」



カヲル「これは…!」

葛城「われわれではない、誰かが残した空間です。89%は埋まっていますが…」

カヲル「もとはきれいな球状の地底空間か…」

葛城「…あれが、人類がもてる全てを費やしている施設です」



ナオコ「あら、渚先生」

カヲル「赤木君……君もなのか」

ナオコ「ええ、ここは目指すべき生体コンピュータの基礎理論を模索する、ベストな所ですのよ」

カヲル「これは…」

ナオコ「MAGIと名づけるつもりですわ」

カヲル「MAGI?東方より来たりし三賢者か…見せたいものというのは、これかい?」

ナオコ「いいえ、こちらです」

620: 2020/12/06(日) 15:17:01.87
カヲル「これは…まさか、あの巨人を…!?」

ナオコ「あの物体をわれわれゲヒルンではアダムと呼んでいます。が、これは違います。オリジナルのものではありません」

カヲル「では…」

ナオコ「そうです。アダムより人の造りしもの、エヴァです」

カヲル「エヴァ…!」

葛城「われわれのアダム再生計画、通称E計画の雛形たる、エヴァ零号機です」

カヲル「神のプロトタイプか…!」

葛城「…先生、力を貸していただけませんか。…人類の、新たな歴史のために」

カヲル「……」

621: 2020/12/06(日) 15:18:02.95
レイ「……」

ヒカリ「綾波さん?」

レイ「あぁ、ごめんなさい、リツコちゃんの再テスト、急ぎましょう」

ヒカリ「今日……碇くん、見かけないわね」

レイ「…そうね」





レイ「碇くん?」

シンジ「うん。碇シンジっていうんだ…よろしく」

(手紙)

レイ「先生、先日碇くんと言う子と知り合いました」

レイ「他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度先生の名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼だけは私に対しても屈託がありません」

レイ「彼は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になっていたそうです。そのせいか…今も言葉少なですが、どこか優しさを感じます。彼の一挙一動から、心の内側が暖かくなるような、何かを…。これがロジックじゃないということでしょうか?」

ナオコ「レイちゃん、あなたにもとうとう春がきたんですね。こっちは相変わらず、地下に潜りっぱなしの男日照りです。支給のお弁当にも飽きました」

ナオコ「上では第二遷都計画による第三新東京市の計画に着工したようです」

622: 2020/12/06(日) 15:19:01.95
レイ「このところ碇くんが大学に来ないので、理由を問い詰めたら、呆れてしまいました。ずっと彼女とアパートで寝ていたそうです」

レイ「飽きもせず、一週間もだらだらと。彼の意外な一面を知った感じです」

レイ「今日紹介されました。可愛い子ですが、気性が荒く、私はどうも好きになれません」



ナオコ「恋に嫉妬…、順調ね。勉強以外でもあなたの成長が見られて嬉しく思います。たくさん悩んでください。大丈夫、あなたは気づいてないでしょうけど、周りの男の子はみんなあなたを気にしています。あなたがその気になれば、きっと碇くんをあなただけのものにすることもできるはず…」

ナオコ「…駄目ね、恋愛観を押し付けるのは。あなたの思う通りにやってみてください。決して後悔のないように。あなたのことを娘のように思っています。いつでも相談してください」


ナオコ「……」


ナオコ「…娘か…」


机の上、碇調査隊の写真

623: 2020/12/06(日) 15:20:01.77
電話中の葛城

葛城「ああ、分かった……手続きは明日、お互いの弁護士を通してやろう」

葛城「ああ……それじゃあ」

カヲル「……」

カヲル「…これで良かったのかい」

葛城「彼女が決めたことです…自分はそばにいてやれなかった」

カヲル「しかし…」

葛城「…先生、幸せの道ですよ。彼女の道は、きっとまたどこかに続いている…」

カヲル「………」





レイ「先生、MAGIの基礎理論、完成おめでとうございます。そのお祝いと言うわけでもないのですが、私のゲヒルンへの正式入所が内定しました」

レイ「来月から、E計画勤務となります」

ナオコ「レイちゃん、おめでとう。これであなたも一人前ですね。優秀な助手を持てて嬉しく思います」

ナオコ「私もあなたに伝えたいことがあるのだけど…それは研究所で。きっと驚きますよ」

624: 2020/12/06(日) 15:21:05.28
零号機、機動実験日

オペレータ「L.C.L.変化、圧力、プラス0.2」

オペレータ「送信部にデストルドー反応無し」

オペレータ「疑似回路、安定しています」



カヲル「なぜ、実験に零号機を?」

ナオコ「そのことですが、われわれは考えを改めました。初号機だけでは使徒には勝てない…」

カヲル「それは…」

ナオコ「使徒との戦闘は必ず厳しいものになります。そのためには…この子にも動いてもらわないと」

傍らの子どもを見つめるナオコ

ナオコの視線を追うカヲル


カヲル「……その子は…?」

レイ「赤木先生のお子さんです」

625: 2020/12/06(日) 15:22:01.55
カヲル「赤木君の…?」

ナオコ「リツコといいますのよ」

ナオコ「ほら、リッちゃん。ご挨拶して?」

リツコ「…こんにちは」

カヲル「こんにちは」


カヲル「…どういうことだい?君は独身のはずでは?」

ナオコ「あら。今時分、父親がいないことなんてそう珍しくはないでしょう?」

カヲル「それは…そうだが、今日は…」

ナオコ「大丈夫です。ちゃんと言って聞かせますから。ねっ?リッちゃん」

リツコ「はい」

カヲル「赤木君……君の実験なんだよ?」

ナオコ「だからこそですよ。この子には明るい未来を見せておきたいんです」

レイ「先生…」

626: 2020/12/06(日) 15:23:01.90
ナオコ「レイちゃん…葛城所長に、渚先生も」

ナオコ「…私に、もしものことがあったときは…その時は娘を頼みます」

リツコ「ママ…」

ナオコ「大丈夫よ。…必ず帰ってくるから」





レイ「それが先生の最後の言葉でした。イレギュラーな事件は、先生をこの世から消し去ってしまった…」

レイ「先生の右腕となって、先生を支える…」

レイ「そんな願いとは裏腹に。私だけではない…いったい誰が組織の頭脳を失うことを望んだでしょうか。ゲヒルンは一時騒然としました」

レイ「ただ…葛城所長だけは、平静を保っているように見えました」

627: 2020/12/06(日) 15:24:01.56
内線「所長、弁護士の方からお電話ですが。お繋ぎしますか」

葛城「繋いでくれ」

葛城「……」

葛城「…!」





レイ「何をおっしゃっているんですか…!先の事件で先生を失ったばかりなのに…、あまりに危険すぎます!」

葛城「時間がないんだ、どいてくれ…!」

レイ「あっ…!…渚教授、教授からも言ってください!」

カヲル「……」

レイ「教授!」

628: 2020/12/06(日) 15:25:07.06
葛城「本当にいいんだな?」

妻「いいわ…あの子といられるなら…」

葛城「……」

妻「それに…今度は、あなたの仕事場だもの…」

妻「きっともう、寂しくない…」

葛城「…!」

葛城「すまない…」




レイ「そして…「無事に」事件を起こすことに成功した葛城所長は、姿を消した」

629: 2020/12/06(日) 15:26:03.35
カヲル「…ずいぶんと長かったじゃないか。赤木君もいない、所長の君もいないでは、ここは回らないよ」

葛城「…分かっている」

カヲル「…それで?話はつけてきたのかい」

葛城「ああ…今日から新たな計画を推奨する」

カヲル「始めるのか…あれを」

葛城「連中はもう止まらない。我々も止まるつもりはない…」

カヲル「…かつて誰もが為し得なかった神への道」

カヲル「人類補完計画か…」

630: 2020/12/06(日) 15:27:01.79
ゲヒルン本部

レイ「おはようございます」

リツコ「おはようございます」

葛城「ああ、おはよう」

レイ「所長…今日は面会の日では?」

葛城「いいんだ…私に会う資格はない」

葛城「……リツコ。調子はどうだ?」

リツコ「…げんき、です…」

葛城「そうか…」

レイ「………」




カヲル「赤木リツコに関する全ファイルが、抹消済み?どういう事だ…」

レイ「その件については、私からお話しします」

631: 2020/12/06(日) 15:28:09.64

(ナオコ「MAGI-CASPER、MAGI-BALTHASAR、MAGI-MELCHIOR。MAGIは三人の私。科学者としての私、母親としての私、女としての私」)


レイ「その3つがせめぎあっている…」

レイ「3人の先生か…。後は電源を入れるだけね」



レイ「あら…リツコちゃん、どうしたの?」

リツコ「…ママは迷子なの…?」

レイ「……!」

リツコ「どこにもいないの…ママはどこへ行ったの」

レイ「……リツコちゃん。私も、ずっと前にママがいなくなって…ママを探してたの」


リツコ「…あやなみ博士も?」

レイ「そう。ママは見つからなかったけど…赤木先生…あなたのお母さんと出会えたわ。私のママの代わりになってくれたのよ」

リツコ「ママが…?」

632: 2020/12/06(日) 15:29:02.61
レイ「そうよ。リツコちゃん、あなたのママは本当に素晴らしい人だったの…姿は見えなくても、今もこの場所を支えてる。科学の礎となって、隅々にまで存在しているのよ」

リツコ「……いるのに、会えないの」

レイ「リツコちゃん…。今はまだ分からないかもしれないけど、必ずお母さんの存在を感じるときがくるわ…」

レイ「……それまで、私がママの代わりじゃ、ダメかな…?」

リツコ「……」

リツコ「…いい。……ママは、ママひとりだから」

リツコ「会えるまで…まつ」

レイ「そう……」

レイ「そうね……先生は、ひとりよね…」

リツコ「……」

633: 2020/12/06(日) 15:30:02.63
リツコ「泣いてるの…?」

レイ「え……?」

リツコ「……だいじょうぶ、だいじょうぶ」

レイの手を撫でるリツコ

レイ「リツコちゃん…」

リツコ「泣いてるとき、ママがこうしてくれると、悲しくなくなるのよ」

(ナオコ「大丈夫よ、あなたなら…」)

レイ「リツコちゃん…!」

リツコ「だいじょうぶ…だいじょうぶ、」

レイ「うっ…う、う…っ」

リツコ「…だいじょうぶ」



カヲル「……」

634: 2020/12/06(日) 15:31:03.75
カヲル「キールローレンツを議長とする人類補完委員会は、調査組織であるゲヒルンを即日解体。全計画の遂行組織として特務機関ネルフを結成した」

カヲル「そしてわれわれは、そのまま籍をネルフへと移した。二人の女性の魂を宿した、エヴァ零号機、初号機と共に…」





監禁を解かれるカヲル

カヲル「君か…」

アスカ「ご無沙汰ね。少し痩せたんじゃない?」

カヲル「…さすがに老体には堪えるよ」

アスカ「外の見張りには、眠ってもらってるから。逃げるんなら今よ」

カヲル「分からないな……僕を拐っておいて、また助けるのかい」

アスカ「こっちにも色々と都合があんのよ。どうやらゼーレや委員会より、ネルフのほうが真実に近いみたいだし」

アスカ「私はそれが知りたいだけよ」

カヲル「真実か…しかし、この行動は君の…」

アスカ「もとより、覚悟の上よ」

635: 2020/12/06(日) 15:32:02.03
諜報部員「ご協力、ありがとうございました」

シンジ「……もういいの?」

諜報部員「はい、問題は解決しましたから」

シンジ「そう…」

シンジ「……彼女は?」

諜報部員「存じません」

636: 2020/12/06(日) 15:33:01.23
諜報部員「ご協力、ありがとうございました」

シンジ「……もういいの?」

諜報部員「はい、問題は解決しましたから」

シンジ「そう…」

シンジ「……彼女は?」

諜報部員「存じません」






アスカ「遅かったじゃないの。…さっさと済ませなさいよ」


響く銃声

637: 2020/12/06(日) 15:34:01.83
シンジ「ただいま…」

ミサト「……」

シンジ「……!」


留守電の再生音


アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」


アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」

638: 2020/12/06(日) 15:35:03.44
アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」


電話「午後、0時、2分、です」

シンジ「………うっ」

シンジ「うっ、く……アスカ…!どうして…」

ミサト「……」



ミサト「その時私は、シンジさんから逃げる事しかできなかった。他には何もできない、大人になったつもりでいても…大切な人を支えることもできない、子どもなんだと…私は分かった」



弐拾壱話分終わり

639: 2020/12/06(日) 15:41:01.80
「兄ちゃん!」


「任せろ…ここで待ってろ」


「言え!コソ泥め」



「……坊主。仲間の居場所を言え。そうすれば…」




「加地リョウジくん、ですね?」



「605号室の患者。あなた知らないの?」

「…お兄さんがよくお見舞いに来られてますよね。それが?」

「もう長くはないでしょう……衰弱しきってる」




「……おれのせいだ」

640: 2020/12/06(日) 15:42:01.94
「民間から?信用できるのかね」

「ですがコアとのシンクロ率は基準値を上回っています」

「…連中か。まったく得体の知れない…」

「気味が悪いよ」


「無理はしてないかな?君の心のケアも私の仕事の内だ」

「必要ない。必要のあるやつはみんな氏んだ…」

「俺は生きるんだ 俺が頃した分も…」



「我々も誇らしいよ」

(「お前すげぇな」)

「頑張ってね」

(「頼むぞー!」)


「俺が必要なんだ…」

「………」

641: 2020/12/06(日) 15:43:02.75
レイ「聞こえる?加持くん。シンクロ率が低下してるわ。いつも通り、余計な事は考えずに…」

加持「ああ……分かってる」


ヒカリ「シンクロ率8も低下…加持くん、最近調子悪いですね」

レイ「ええ…困ったわね…この余裕のない時に。やはりリツコちゃんの零号機を優先させましょう、今は同時に修理できるだけのゆとりはない」

アナウンス「弐号機左腕のマイトーシス作業は数値目標をクリア」

アナウンス「ネクローシスは、現在0.05%未満」

アナウンス「アポトーシス作業、問題ありません」

アナウンス「零号機の形態形成システムは、現状を維持」

アナウンス「各レセプターを第2シグナルへ接続してください」



シンジ(…あのアダムより生まれし物、エヴァシリーズ…)

シンジ(セカンドインパクトを引き起こした原因たるものまで流用しなければ…僕たちは使徒に勝てない)

シンジ(逆に…生きるためには、自分たちを滅ぼそうとしたものをも利用する)

シンジ「それが人間なんだ……」


トウジ「センセ!」

642: 2020/12/06(日) 15:44:02.97
シンジ「……エヴァ13号機までの建造開始?世界七個所で?」

トウジ「上海経由の情報や。ソースに信頼は置ける」

シンジ「…なぜこの時期に量産を急ぐの?」

トウジ「……エヴァを過去に2機失い、現在は2機も大破…。第2次整備に向けて予備戦力の増強を急いどるんやないか?」

シンジ「どうだろう…ここにしてもドイツで建造中の5・6号機のパーツを廻してもらってるから…。最近、ずいぶんお金が動くね」

トウジ「ここに来て予算倍増やからな。それだけ上も、せっぱ詰まっとる、って事やろ」

シンジ「……委員会も焦ってるんだ…」

トウジ「…ほなら、今までみたいな単独やなく、使徒の複数同時展開のケースを設定した…?」

シンジ「そうかもしれない…でも、非公式に行う理由がないよ。何か別の目的があるんだ…」

643: 2020/12/06(日) 15:45:05.01
シンジ「あ……煮付け、どうだったかな? いやっ、失敗したってわけじゃないけど。今日味見してなくて」

加持「すごく旨かったよ。いつも通り、な?」

ミサト「……うん」

シンジ「…あ、よかった……」


シンジ「……」

電話がなる

ミサト「あ、」

シンジ「あっ、いいよいいよ。僕が出るから」

644: 2020/12/06(日) 15:46:02.71
加持「先輩かな?最近ご無沙汰みたいだし、ここいらで…」

シンジ「……」

ミサト「ごっ、ごちそうさま!あたし、部屋に…」

シンジ「……加持くん」

ミサト「!」

加持「うん?」

シンジ「電話だよ…お母さんから、国際電話」ニコ

ミサト(………ぅ…、)


ミサト(シンジさん……)


加持「はいはい。母さんね…」

加持「(外国語)」

645: 2020/12/06(日) 15:47:02.69
ミサト(…浮いている。加持くんの明るい声だけ…)

ミサト(違う。浮いているのは私。シンジさんも加持くんもいつも通りにしようとしてくれてる。情けないのは私…)

ミサト(私の知っている加持くん、知らない加持くん…)

ミサト(家族と話す彼。…家族? 相手がお母さんなのに)

ミサト「……嬉しくないのね」

加持「ん? 何か言ったか」

ミサト「ううん、電話、終わったの?」

加持「ああ」

ミサト「…お母さん?」

加持「向こうでのね。血は繋がってないが、ずいぶん良くしてもらってる。たまに恋しくなるよ」

ミサト「嘘ばっかり…」

加持「……なんでそう思う?」

ミサト「分かるわよ」

加持「……」

646: 2020/12/06(日) 15:48:01.73
ヒカリ「シンクログラフ、-12.8。起動指数ギリギリです」

レイ「……昨日より更に落ちてる」

シンジ「ごめん、綾波。最近気を遣わせることが多くて…疲れてるんだよ」

レイ「シンクロ率は表層的な身体の不調に左右されない。気のほうでしょうね…問題があるのは。ただしもっと深層の部分…」

レイ「…変更もやむを得ないわ、弐号機のコア…」

レイ「加持くん。上がっていいわよ」

647: 2020/12/06(日) 15:49:02.24
アナウンス「第8動力システムの復旧作業は、本日18:00より再会の予定です」

レイ「酷く傷ついてるみたいね……彼の心」

アナウンス「第1発令所処理問題に関する定例会議は、定刻より行われます」

シンジ「昔のことは…もういいみたいに話してたのに。どうしたんだろう、加持くん…」


レイ「……暴かないことと、治すことは違うわ」


アナウンス「総務担当者は第2会議室にお集まりください」

シンジ「離れたほうがいいんだろうか……彼らにとって負担なら…」


レイ「…あなたもよ」

シンジ「え…?」


レイ「顔色が悪いわ…ここのところずっと」

シンジ「……」

シンジ「……ごめん、もう少し考えてみる」

648: 2020/12/06(日) 15:50:01.91
加持「ウッ……」(吐瀉)

加持「………」


加持「……すまない、みんな…」





エレベーター前。

アナウンス「第7環状ルートは現在事故のため閉鎖中です。迂回ルートは12号線を利用してください」


加持「おっと、」

加持「調子はどうだい?って…俺が聞くことじゃないか」

リツコ「……」

加持「はは…」

649: 2020/12/06(日) 15:51:02.72
リツコ「あなたは悪いみたいね、調子…」

加持「まぁね。スランプってやつかな? 望むところだよ」

リツコ「何か悩みごと」

加持「……なんで、そう思う…」

リツコ「元気がないみたい、あなたも、ミサトも…」


リツコ「エヴァは………いえ」

加持「なんだよ、気になるじゃないか」

リツコ「エヴァには心がある」

加持「何?」

リツコ「心があるから…心を開かなければ、動かないわ」

加持「……馬鹿な。あれは俺たちが動かして…」

リツコ「分かっているはずよ」

650: 2020/12/06(日) 15:52:01.70
加持「………リッちゃん、君は…」

加持「…ウッ」

口許をおさえる加持

リツコ「大丈夫、」

加持「大丈夫、大丈夫だ……すまない、」

加持「……聞こえないんだ。昔は聞こえていた声が…」

加持「自分の声が煩くて…」

リツコ「……」

リツコ「聞こえるはずよ」

加持「……!はは…厳しいな」

リツコ「……」

651: 2020/12/06(日) 15:53:07.24
加持「そんな顔で見ないでくれ……泣きたくなってくる」

リツコ「……、」

リツコ「いけないの」

加持「……ッ」

リツコ「泣いてはいけないの?」


リツコ「あっ、」

リツコに抱きすがる加持。

抱き返そうとするリツコの手が回る前に加持が体を離す

加持「すまない。……また」

閉じるエレベーター

リツコ「………」



加持「ないさ…そんな資格はない」

加持「……」

652: 2020/12/06(日) 15:54:05.17
青葉「葛城、今日も来ないな。赤木はいつもの事として…」

マヤ「それに加持くんも…。日向くんもまだ退院できないみたいだし」

青葉「…学校どころじゃないんだな、今や」




アナウンス「エヴァ弐号機のシグナル、問題なし」

アナウンス「VAの接合および融合は正常。増殖範囲は予定通りです」


加持「さぞ憎んでいるだろう……俺を」

加持(お前のせいで氏んだ、お前が頃した)

加持「お前は俺の誇り…生きる意味」

弐号機 (沈黙)

加持「………もう誤魔化しはきかないな」

(沈黙)

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦用意!」

加持「…お出ましか」

653: 2020/12/06(日) 15:55:01.64
ケンスケ「使徒を映像で確認、最大望遠です!」

トウジ「衛星軌道から動かん」

ケンスケ「ここからは、一定距離を保っています」

シンジ「ということは、降下接近の機会をうかがっているのか、その必要もなくここを破壊できるのか…」

トウジ「こりゃ迂闊には動けんな」

シンジ「…どの道目標がこちらの射程距離内にまで近づいてくれないと、どうにもならない。エヴァには衛星軌道の敵は、迎撃できない…」

シンジ「リツコちゃんは?」

ヒカリ「零号機共に順調。行けます!」

シンジ「了解、零号機発進、超長距離射撃用意、弐号機、加持くんはバックアップとして…」

加持「待ってくれ」

シンジ「加持くん」

加持「射撃は俺が。」

リツコ「……」

加持「………シンジさん。最後にチャンスをくれ」

シンジ「……分かった…」

654: 2020/12/06(日) 15:56:04.89
トウジ「…ええのか」

レイ「本人がそう言うのなら。…覚悟があるのはありがたいわ」

シンジ「……」

ヒカリ「そんな……これまで、ってことなの…」

レイ「失敗したときは。…弐号機パイロットの変換、考えておかなくてはね」

ヒカリ「…ええ…」

トウジ「初号機は?出さんのか」

シンジ「凍結なんだよ、葛城司令の絶対命令で」

シンジ(…無理ないか、あんな事の後じゃ…)


待機する初号機、ミサト。

ミサト(……加持くん…!)

655: 2020/12/06(日) 15:57:01.97
加持「これで駄目なら、所詮俺はそれまでの男…」

加持「……よくやったさ。もういいだろう」


ケンスケ「目標、未だ射程距離外です」

加持「…………」


加持「来る…!」



天から光線が注ぐ。



加持「……!」



シンジ「これは…!敵の指向性兵器…?」

ケンスケ「いや、熱エネルギー反応無し」

ヒカリ「心理グラフが乱れています、精神汚染が始まります!」

レイ「使徒が心理攻撃…まさか、使徒に人の心が理解できるの…?」

656: 2020/12/06(日) 15:58:01.96
加持「…ッグ!アアアアッ!」


オペレータ「陽電子消滅」

ケンスケ「だめです、射程距離外です!」

ライフルを乱射する弐号機

ケンスケ「弐号機、ライフル残弾ゼロ!」

シンジ「光線の分析は!?」

トウジ「可視波長のエネルギー波!A.T.フィールドに近いが、詳細は不明!」

レイ「加持くんは」

ヒカリ「危険です、精神汚染、Yに突入しました!」

657: 2020/12/06(日) 15:58:57.06
加持「っぐ、ぅ…ア……!」


加持「…め、ろ…」

加持「やめろ…ッ」


加持(!)


加持「やめろ!」


加持「駄目だ、そこは…嫌だ!!!」


加持「ぐ…ッ」


加持「…やめろ、それは…!」

加持「暴かないでくれ、」

加持「それだけは」



加持「俺を見るな!!!!」

658: 2020/12/06(日) 16:00:01.87
シンジ「加持くん!!」


ヒカリ「心理グラフ限界!」

レイ「精神回路がズタズタにされている…これ以上の過負荷は危険過ぎる」

シンジ「加持くん!戻って!!」


加持「うっ、う、ウッ……」


シンジ「加持くん!!加持くん!命令だ、撤退して!」


加持「……ォ、ア……」


シンジ「加持くん!!!」

659: 2020/12/06(日) 16:01:02.09
オペレータ「加速器、同調スタート」

オペレータ「電圧上昇中、加圧域へ」

オペレータ「強制収束機、作動」

オペレータ「地球自転および重力誤差、修正0.03」

オペレータ「薬室内、圧力最大」

トウジ「最終安全装置、解除!全て、発射位置!」


リツコ「くっ…!」

弾道は使徒を捕らえるが、A.T.フィールドに阻まれ、分散する

660: 2020/12/06(日) 16:02:01.96
ケンスケ「だめです!この遠距離で、A.T.フィールドを貫くには、エネルギーがまるで足りません!」

トウジ「すでに最大出力や、これ以上はない…!」

ヒカリ「弐号機、心理グラフシグナル微弱!」

レイ「L.C.L.の精神防壁は」

ヒカリ「だめです、触媒の効果もありません!」

レイ「生命維持を最優先、エヴァからの逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」


レイ(…この光は、まるで…加持くんの精神波長を探っているみたい……まさか、使徒は人の心を知ろうとしているの?)

661: 2020/12/06(日) 16:03:07.21
加持(泣いている……)

加持(泣いているのは誰だ?俺か…)

加持(弟か……)



加持「どうしたんだ?男の子だろう…泣いてちゃだめだ」

加持「泣いてたって誰も助けちゃくれない。自分で何とかするんだ。でもお前は…」

加持「俺が守るから。待ってろ。食い物をとってくる」



加持「……どうした?泣いてちゃ分からないだろう…」


加持「はっ」



加持「泣かないんだ。氏人は泣かない」


加持「俺が頃した…氏ぬはずだった俺が」

662: 2020/12/06(日) 16:04:02.76
加持「俺の…身体だけが大きくなる。仲間たちを置き去りにして」

加持「大きくなりたかったはずだ…その権利があった、」


加持(俺が置いてきた)



加持「……氏人じゃない」


加持「これは俺だ…」


膝を抱えている加持。

663: 2020/12/06(日) 16:05:03.36
オペレータ「弐号機、活動停止!生命維持に問題発生!」

ヒカリ「パイロット、危険域に入ります!」

ケンスケ「目標、変化無し、相対距離、依然変わらず!」

トウジ「零号機の射程距離内に移動する可能性は、0.02%」

シンジ(零号機を空輸、空中から狙撃するか…?いいや駄目だ、接近中に撃たれたら、おしまいだ…)

ミサト「……!」

ミサト「私が初号機で出ます!」

カヲル「いけない、目標はパイロットの精神を侵蝕するタイプだ」

葛城「今、初号機を侵蝕される事態は、避けねばならない」

ミサト「やられません!」

葛城「確証がない」

ミサト「でも、このままじゃ加持くんが!」

664: 2020/12/06(日) 16:06:04.55
葛城「……」

葛城「構わん。リツコ、ドグマを降りて、槍を使え」

カヲル「ロンギヌスの槍を…?葛城君、それは…」

葛城「A.T.フィールドの届かぬ衛星軌道の目標を倒すには、それしかない。急げ!」

シンジ「しかし!アダムとエヴァの接触は、サードインパクトを引き起こす可能性があります!あまりに危険です、葛城司令、やめてください!」

葛城「……」

シンジ「……!」

シンジ(なぜ…危険はないのか…?セカンドインパクトは使徒の接触が原因ではない…?)


アナウンス「セントラルドグマ10番から15番までを開放、第6マルボルジェ、零号機、通過。続いて、16番から20番、開放」


シンジ(嘘…欺瞞だったんだ。そんな事でサードインパクトは起こらない……だったら、セカンドインパクトの原因は…?)

665: 2020/12/06(日) 16:07:02.79
カヲル「…早計なんじゃないかい」

葛城「抵抗手段はひとつではない」

カヲル「しかし…」

葛城「…渚。時計の針は止まってはくれないんだ」

カヲル「……」

葛城「今セカンドを失うわけにはいかない」

カヲル「老人たちが黙っていないよ」

葛城「ゼーレが動く前にすべて済ませる」

カヲル「かと言って、ロンギヌスの槍をゼーレの許可なく使うのは面倒だ」

葛城「理由が存在すればいい」


カヲル「…そううまく丸めこまれてくれるかな」


槍を引き抜く零号機

リツコ「……」

666: 2020/12/06(日) 16:08:01.77
トウジ「弐号機のパイロットの脳波、0.06に低下!」

ヒカリ「生命維持、限界点です!」

ケンスケ「零号機、二番を通過、地上に出ます!」


シンジ「……!」

シンジ「あれが、ロンギヌスの槍…!」

ケンスケ「零号機、投擲体制!」

トウジ「目標確認、誤差修正よし」

ヒカリ「カウントダウン入ります、10秒前、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」


リツコ「…、……っ!」

投擲。

667: 2020/12/06(日) 16:09:03.01
ケンスケ「目標、消滅!」

ヒカリ「エヴァ弐号機、開放されます」

カヲル「ロンギヌスの槍は…」

トウジ「第一宇宙速度を突破、現在、月軌道に移行中」

カヲル「回収は不可能に近いな…」

トウジ「…今のところは。あの質量を持って帰る手段はない」





ヒカリ「弐号機健在、グラフ正常位置」

ケンスケ「機体回収は、2番ケイジへ」

オペレータ「第67番ルートを使用してください」


シンジ「加持くんは?」

トウジ「パイロットの生存は確認。汚染による防疫隔離は解除されとる」

シンジ「……そう」

668: 2020/12/06(日) 16:10:02.42
回収される弐号機

加持「………」


ミサト「良かった、加持くん。本当に…」

加持「……ああ…」

ミサト「…加持くん…?」


加持「悪い。少し…休ませてくれ」


ミサト「……」





加持「…これは俺だ」

加持「氏人じゃない……」



弐拾弐話分終わり

669: 2020/12/06(日) 16:11:01.71
アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」

アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」

アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」

アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」

アスカ「……」

アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」




シンジ「…鳴らない電話、か…」




ミサト(シンジさん、今日も部屋から出てこない…)

ミサト(……加持くんも…)

ミサト「…今日も帰らない気かしら…」

670: 2020/12/06(日) 16:12:02.30
加持(学校にも行かず、家にも帰らず、ずっと…)


「んっ………ねーえ、」

「うん?」

「寝よっか?」

「…お望みとあらば」

「ふふっ」

携帯のバイブ音

「ごめんね…私、邪魔かな?」

「そんなことないさ。こうやって俺を置いてくれてる」

「…それだけ?」

「どうかな…」

「…あっ…」


加持(……ここに俺はいない)

加持(いるのは誰でもいい、誰か…)

671: 2020/12/06(日) 16:13:02.11
(通話)

レイ「そう…いなくなったの、あの子…」

レイ「そうね……猫ってそういうところ、あるもの…」

レイ「でもまだ分からないじゃない。いつもの場所は探したの?…うん、うん…」

レイ「分かったわ…時間ができたら一度帰るから…。それじゃ、また」



レイ「……そう、あの子が…」

レイ(…嫌な予感がする…)

672: 2020/12/06(日) 16:14:01.93
ゼーレ「ロンギヌスの槍……回収はわれらの手では不可能だよ」

ゼーレ「なぜ使用した」

ゼーレ「エヴァシリーズ。まだ予定には揃っていないのだぞ」

葛城「使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です」

ゼーレ「やむを得ないか。言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ」

ゼーレ「最近の君の行動には、目に余るものがあるな」


葛城「…渚、審議中だぞ」

葛城「……分かった」

葛城「使徒が現在接近中です。続きはまた後ほど」


ゼーレ「その時君の席が残っていたらな」

キール「葛城、ゼーレを裏切る気か?」

673: 2020/12/06(日) 16:15:02.64
車を走らせるシンジ

シンジ「後15分でそっちに着く。零号機を32番から地上に射出、弐号機はバックアップに廻して」

シンジ「そう……初号機は葛城司令の指示に。僕の権限じゃ凍結解除はできない」

シンジ「……!」

シンジ「使徒を肉眼で確認、か…」



オペレータ「零号機発進、迎撃位置へ!」

トウジ「弐号機は現在位置で待機!」

葛城「いや…発進だ」

トウジ「司令…!」

葛城「必要があるときにいなかったでは遅い。発進だ」

トウジ「…了解」

674: 2020/12/06(日) 16:16:02.01
オペレータ「エヴァ弐号機、発進準備!」


加持(また乗っている…どうして?)

加持(誇りであるはずのエヴァ。自分であるはずの身体…)


ヒカリ「弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ」


加持(発進…なんのため?)


ケンスケ「目標接近、強羅絶対防衛線を通過」


加持(俺のため…人類のためか どっちだったか…)

加持(……)

675: 2020/12/06(日) 16:17:01.81
ケンスケ「目標は、大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています」

トウジ「目標のA.T.フィールドは依然健在」


レイ「遅いわ」

シンジ「ごめん、状況は!」

ケンスケ「膠着状態が続いています」

トウジ「パターン青からオレンジへ、周期的に変化しとる!」

シンジ「どういう事…!」

ヒカリ「MAGIは回答不能を提示しています!」

ケンスケ「答えを導くには、データ不足か」

レイ「ただあの形が固定形態でない事は確かだわ」

シンジ「先に手は出せないか…」

676: 2020/12/06(日) 16:18:01.65
シンジ「リツコちゃん、しばらく様子を見よう」

リツコ「…いえ、来る……!」


変形する使徒


シンジ「リツコちゃん!応戦して!」

トウジ「間に合わん…!」

応戦する零号機。

ライフルを撃ち込むが、効かない

リツコ「……!」

ケンスケ「目標、零号機と物理的接触!」

シンジ「零号機のA.T.フィールドは?!」

ヒカリ「展開中、しかし、使徒に侵蝕されています!」

レイ「使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と…!」


リツコ「……っ、う……っ!」

677: 2020/12/06(日) 16:19:02.11
ヒカリ「危険です!零号機の生体部品が侵されて行きます!」

シンジ「エヴァ弐号機、発進、リツコちゃんの救出と援護を!」

ヒカリ「目標、さらに侵蝕!」

レイ「危険よ…!すでに5%以上が生体融合されている」



シンジ「加持くん!後300接近したらA.T.フィールド最大で、パレットガンを目標後部に撃ち込んで!」

シンジ「エヴァ弐号機、リフトオフ!」


シンジ「…加持くん…!どうしたの、加持くんは…?!」

ヒカリ「だめです、シンクロ率が二桁を切ってます!」

シンジ「まずい…!」



加持「動かない…」


加持「氏体だ。氏体は俺……」




シンジ「駄目だ!このままじゃ餌食にされる」

シンジ「戻して!早く!」

678: 2020/12/06(日) 16:20:04.42
リツコ「誰…?」

リツコ「私。エヴァの中の私」

リツコ「いいえ、あなたは私じゃない…」

リツコ「あなたは誰?…使徒?私たちが使徒と呼んでいるヒト…?」

使徒「私を抱いて。私とひとつにならない?」

リツコ「嫌よ。あなたとは繋がりたくない」

使徒「そう。でもだめ、もう遅いわ」

使徒「あなたを抱いてあげる。抱き返してあげる…私の心を分けてあげるわ」

使徒「温かいでしょう、ほら、心がポカポカする…」

リツコ「温かい…?違うわ、寂しいのね」

使徒「サビシイ?分からないわ」

リツコ「寂しいから隙間を埋めようとするの」

リツコ「隙間が埋まったら、心も埋まった気がするから…」

リツコ「それを、寂しい、というのよ」

使徒「それはあなたの心よ。悲しみに満ち満ちている。あなた自身の心よ」

679: 2020/12/06(日) 16:21:03.49
リツコ「私の心…?」

リツコ「……あ、」

リツコ「泣いているのは、私…」


変容し膨れ上がる零号機


シンジ「リツコちゃんっ!」




葛城「…初号機の凍結を現時刻をもって解除、直ちに出撃させろ」

シンジ「え…」

葛城「出撃だ」

シンジ「…はい!」




加持「……声なんてない」

加持「…氏人は口を利かないんだ…」

680: 2020/12/06(日) 16:22:01.89
シンジ「A.T.フィールド展開、リツコちゃんの救出急いで!」


ミサト「はい!」



リツコ「…ミサト…!」


シンジ「ミサトちゃんっ!!」

使徒が初号機を襲う

シンジ「プログナイフで応戦してっ!」

ミサト「はっ!」

悲鳴を上げる使徒

リツコ「これは、私の心…!」

リツコ「ミサトを…?」

リツコ「だめ…っ!」

681: 2020/12/06(日) 16:23:02.41
ヒカリ「A.T.フィールド反転、一気に侵蝕されます!」

レイ「まさか、使徒を……!」

シンジ「駄目だリツコちゃんっ!機体は捨てて、逃げて!」

リツコ「いいえ……私がいなくなったらA.T.フィールドが消えてしまう…!」

レイ「……!」

シンジ「リツコちゃん!!」

ヒカリ「コアが潰れます、臨界突破!」



リツコ「!」

走馬灯。人々の温かな笑顔

682: 2020/12/06(日) 16:24:01.53
光の輪を宿す零号機

消滅。辺りが光に包まれる


ミサト「……、…」



ケンスケ「目標、消失…」

シンジ「……現時刻をもって、作戦を…終了します。第一種警戒態勢へ移行」

トウジ「了解、状況イ工口ーへ、速やかに移行」

シンジ「零号機は……?」

ヒカリ「エントリープラグの射出は、確認されていません…」

シンジ「…生存者の確認と救出、急いで」

レイ「……」

683: 2020/12/06(日) 16:25:03.02
男「綾波博士…」

男「レベルCの…は、南西方向に広がっています」

レイ「…この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分してください」

男「了解」

男「作業、急げ!」

レイ「……」

684: 2020/12/06(日) 16:26:01.60
ゼーレ「ついに第16の使徒までを倒した」

ゼーレ「これで、ゼーレの氏海文書に記載されている使徒は、後一つ」

キール「約束の時は近い。その道のりは長く、犠牲も大きかったな」

ゼーレ「左様。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」

ゼーレ「葛城の解任には十分すぎる理由だな」

ゼーレ「渚を無事に返した意味の分からぬ男でもあるまい」

ゼーレ「新たな人柱が必要ですな、葛城に対する」

キール「そして事実を知るものが必要だ」




レイ「……」

机の上。ゲヒルン時代の写真

685: 2020/12/06(日) 16:27:01.31
シンジ「ミサトちゃん、入るよ…」


ミサト「……シンジさん。涙、出ないんです……どうしてだろう とても悲しいのに…」


ミサト「…もう嫌、もう忘れたい…シンジさん」

ミサト「忘れさせて…」


シンジの手に自分の手を重ね、身体を預けるミサト

シンジ「っ、」


シンジ「……ミサトちゃん…!」

ミサトの肩を押し身体を離すシンジ

シンジ「ミサトちゃん…自分を捨てちゃ駄目だ」

シンジ「…僕には何もできないよ。ごめん……」


ミサト「……」

686: 2020/12/06(日) 16:28:06.68
ミサト(アスカさんのことがあるから?違うわね。私がいけないんだわ…)

ミサト「ペンペン、おいで…」

ペンペン「……」

ミサト「……最低だ、私って…」






ネルフ地下、3号分室

散乱した書物。倒された机


カヲル「……綾波博士か…」

カヲル「…愛する者を失った今…彼女の心は深い絶望の底だろう」

葛城「……」

カヲル「……話してはやらないのかい」

葛城「彼女が望んだのは…ここで生きた赤木リツコの未来だ」

カヲル「……」

カヲル「希望の依り代とはならないか…」

687: 2020/12/06(日) 16:29:05.79
シンジ「はい…もしもし………えっ…!」

シンジ「ミサトちゃん!」



アナウンス「第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください」




ミサト「リツコ!」

リツコ「……」

688: 2020/12/06(日) 16:30:01.74
ミサト「ばか、バカァ!心配したじゃないのよ…!」

ミサト「良かった。本当に良かった…」ギュ

リツコ「……」

ミサト「…あ、ごめん…まだ体キツいわよね」

リツコ「……」

ミサト「他は誰も来てないの?薄情ねえ みんな忙しいのかしら…」

リツコ「……」

ミサト「……まだ、ちゃんとお礼言ってなかったわね」

ミサト「ありがとう、助けてくれて」

リツコ「…何が」

ミサト「……何が、って…零号機を捨ててまで助けてくれたじゃない」

リツコ「私が?」

ミサト「そうよ!……覚えてないの…?」

リツコ「…いいえ、知らないの」

リツコ「多分私は二人目だと思うから」

689: 2020/12/06(日) 16:31:03.33
リツコの部屋。

リツコ「……」

眼鏡を手に取るリツコ

リツコ「これが、涙…?初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。私、泣いてるの?…なぜ、泣いてるの…?」





葛城「そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい」

カヲル「赤木リツコが生きていると分かれば、議長らが黙っていないだろうね」

葛城「………」


カヲル「それで……彼女を代わりにか。つくづく君は…敵を作る」

カヲル「だが恨んではくれないだろうね」

葛城「……」

690: 2020/12/06(日) 16:32:01.80
キール「われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ」

レイ「私は何の屈辱も感じていません」

ゼーレ「気の強い女性だ。葛城がそばに置きたがるのも分かる」

ゼーレ「聞けば…君は自ら名乗り出たそうじゃないか。代理人として」

ゼーレ「零号機パイロットの尋問を拒否…では、君なら応えてくれるのかね?」


レイ「私で……代わりになるのなら」

691: 2020/12/06(日) 16:33:01.70
アスカ「あんたが欲しがっていた真実の一部よ」


アスカ「他に36の手段を講じてあんたに送ってるけど、そっちはたぶん駄目ね」

アスカ「確実なのはこのカプセルだけ」

アスカ「これは私のすべてよ。あんたに託す。好きにしなさい」

アスカ「パスコードは私たちの最初の思い出」

アスカ「それじゃ、しっかりやんなさいよ」




シンジ「鳴らない電話を待つのはもうやめだ…」

シンジ「アスカの心は無駄にしない…」

692: 2020/12/06(日) 16:34:02.25
ゼーレ「良いのか?綾波博士の処置」

ゼーレ「渚とは違う。彼女は返した方が得策だ」

ゼーレ「さよう…まだ利用価値はある」

ゼーレ「いま少し役に立ってもらうか。われわれ人類の未来のために…」

ゼーレ「エヴァンゲリオン、すでに八体まで用意されつつある」

ゼーレ「残るは後四体か」

キール「第3新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる」

キール「完成を急がせろ」

キール「約束の時は、その日となる」

693: 2020/12/06(日) 16:35:01.68
ミサト「はい、もしもし」

レイ「そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られる」

ミサト「レイさん……」




ターミナルドグマ入り口。カードキーを差し込むレイ

レイ「……、…!」

シンジ「無駄だよ。僕のパスがないと」

レイ「……そう…アスカの仕業ね」

シンジ「綾波博士。…ここの秘密、見せてもらうよ」

レイ「…いいわ。ただしこの子も一緒に…」

ミサト「……」

シンジ「…分かった」

694: 2020/12/06(日) 16:36:02.24
ミサト「……まるでリツコの部屋…」

レイ「…彼女の部屋よ。生まれ育ったところ」

ミサト「ここが?」

レイ「そうよ、一人目のね」

ミサト「…、……!」


レイ「リツコちゃんの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っていたのでしょうね…」

シンジ「何を……!言ってるんだ、綾波…!目的の場所はここじゃない!」

レイ「…分かっているわ」

695: 2020/12/06(日) 16:37:02.08
ミサト「エバ…?」

レイ「その失敗作…。10年前に破棄されたの」

ミサト「…エバーの墓場…」

レイ「……そうね」


レイ「あなたのお母さんが消えたところでもあるわ」


レイ「あなたも見ているはずよ…あなたのお母さんが、魂を亡くした姿を…」

ミサト「……!」

シンジ「…、綾波!」


レイ「……こっちよ」

シンジ「……」


レイ「あなたが知りたかった真実…」



レイ「……」

696: 2020/12/06(日) 16:38:02.01
ミサト「赤木…リツコ…?」

ミサト「……!!」

シンジ「まさか、ダミープラグの…!」

レイ「そう、ダミーシステムのコアとなるもの……その生産工場よ」

シンジ「これが…?」

レイ「ここにあるのはダミー。そして赤木リツコのためのただのパーツに過ぎない」

レイ「……人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たったの。それが15年前…」

レイ「せっかく拾った神様も消えてしまった」

レイ「……でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム」

レイ「そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ…」

ミサト「ヒト…人間なんですか…?」

レイ「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの」

レイ「みんな、サルベージされたものなのよ」

697: 2020/12/06(日) 16:39:13.57
レイ「魂が入ったのは赤木リツコ、一人だけだった……あの子にしか魂は生まれなかったの。ガフの部屋は空っぽになっていたのよ」

レイ「ここに並ぶ赤木リツコと同じ物には魂がない。ただの入れ物なのよ」

レイ「だから壊すの」

レイ「怖いから…」


リツコたち「……」


シンジ「……! やめるんだ、綾波!そんなことしたら…!」


レイ「したら、何…?入れ物が壊れるだけよ。この中には何もないの。ただ人の形をしたもの…」


レイ「……これ以上ない生命に対する侮辱よ…」


レイ「代わりはいくらでもいる。…そんなことはもう、言わせないわ…」

レイ「あの子が優しいんじゃない、私が愚かだった……」

698: 2020/12/06(日) 16:40:15.45
レイ「…私たちのために氏んだあの子は、もういないの」


レイ「…初めから、こんなもの……っ、作るべきじゃなかったのよ…!」


レイ「うっ、うぅ…うっ…」

ミサト「……」

シンジ「綾波…」




シンジ(エヴァに取り憑かれたヒトの悲劇……)

シンジ(僕も…同じか…)




弐拾参話分終わり

699: 2020/12/06(日) 16:41:01.90
「リョウジ、お手柄だな!」

「ちょろいさ、こんなもん」

「よくやったな加持くん」

「当然です。それが俺の役目」

「フルスコアだ。その調子で頼むよ」


(リョウジ!)

(加持くん)

(兄ちゃん!)

700: 2020/12/06(日) 16:42:01.76
病室


(沈黙)


古い倉庫


(沈黙)


仲間に駆け寄る加持

抱き上げる。血が滴っている


加持「はっ」

701: 2020/12/06(日) 16:43:01.63
廃墟のバスタブ

加持「分かったんだ。俺は誰も守っちゃいない。守りたかったものはもういない。置いてきた……」


諜報課員「加持リョウジだな」




トウジ「諜報二課から。セカンドチルドレンを無事保護したそうや」

シンジ「……そう。ずいぶん…遅かったね」

トウジ「いけ好かん奴らや。地味な嫌がらせしくさって…」

シンジ「……」

シンジ(……そして今日、加持くんの代わりのフィフス到着…話が出来過ぎてる、これもシナリオ通りか…)





ミサト(ダミープラグ…赤木リツコ…魂の入れ物?父はいったい何をしているの…?)

過去の記憶。病室の母。安らかな寝顔

ミサト(何をしたの…!)

702: 2020/12/06(日) 16:44:04.21
レイ「葛城司令…」

葛城「……」

レイ「猫が…氏んだんです。家で飼っていた……。とても可愛がっていたのに。突然、もう二度と会えなくなるんですね」


葛城「……君には、辛い役割を負わせた…」

レイ「いいえ…いいえ。私が望んだんです。後悔はありません」

葛城「……赤木リツコの容態は」

レイ「落ち着いています。記憶に…混濁は見られますが……」


レイ「……う…っ」

泣き崩れるレイ

703: 2020/12/06(日) 16:45:02.16
レイ「……あの子をよろしく、と…!そう言われた日に破壊すべきだった!」

レイ「彼女は人間なんです!…代えのきく人形じゃない」


葛城「……すまない」


(ナオコ「…所長。お話があります」)


葛城「いつか君には真実を話す」

葛城「もう少しだけ……耐えてくれ」


閉まるドア

レイ「…う…っ、先生……」

レイ「教えてください…」

704: 2020/12/06(日) 16:46:01.94
(通話)

カヲル「…そうだ、拘束だ。形式上のものでいい。…誰にも知られるな」

カヲル「ああ、頼んだよ」


葛城「……」

カヲル「…名目は破壊行為への懲罰…。不満だったかい?」

葛城「……いや」

葛城「そのほうが安全だろう…」

705: 2020/12/06(日) 16:47:02.83
ミサト(どこに行ったんだろう…加持くん…)

ミサト(でも会ってどうするんだろう…リツコの話でもする…?)


ミサト(日向くんも青葉くんも…みんな家を失って他のところへ行ってしまった。友達は…友達と呼べる人はいなくなってしまった…誰も…)


ミサト(……リツコには会えない…その勇気がない。どんな顔をすればいいのか、分からない。加持くん、シンジさん、お母さん…私はどうすれば…どうしたらいいの…?)




マリ「しっあわせは~あるいてこ~ない」

マリ「だ~からあるいていっくんだねぇ~」

ミサト(…なに、この子…)

マリ「歌はいいよねぇ」

706: 2020/12/06(日) 16:48:02.42
ミサト「……」

マリ「いいよね?」

ミサト「……」

ミサト「…私に言ってる?」

マリ「君しかいないジャン!」

ミサト「あぁ、そうね…まぁ…」

ミサト(なんなのこの子…)

マリ「……辛いから明るく歌うの。面白い文化だよね。せつな~くてあったかくてさぁ…」


マリ「君はどう思う?葛城…ミサトちゃん」


ミサト「なんで、私の名前…」

マリ「なっんででしょ~~~?」

707: 2020/12/06(日) 16:49:07.59
ミサト「……まさか、あなた。新しいパイロット?」

マリ「そ。真希波マリ。よろしくねん♪」

ミサト「……」

マリ「…あっ!ちょっとー!」

マリ「待ちなってば」



(加持「最後のチャンスをくれ」)

ミサト(……)

708: 2020/12/06(日) 16:50:10.39
トウジ「フィフスチルドレン…到着したそうや」

シンジ「真希波マリ…過去の経歴は抹消済み。リツコちゃんと同じ…」

トウジ「……ここが気になるな。生年月日、セカンドインパクトと同日…」

シンジ「…委員会が直接送ってきた子どもなんだ、必ず何かある…」

トウジ「マルドゥックの報告書も、フィフスの件は非公開になっとる。せやから……ちーとばかし、諜報部のデータに割り込んだ」

シンジ「なっ…、トウジ、そんな危ないこと…!」

トウジ「お小言はあとや。確かに危ない橋やったが…その甲斐はあった」

トウジ「…綾波レイの居場所」

シンジ「……!」


トウジ「フィフスのシンクロテスト。どないする」

シンジ「…小細工してもしょうがない…。見せてもらおう。彼女の実力がどの程度のものなのか…」

709: 2020/12/06(日) 16:51:05.48
カヲル「…後、0コンマ3下げて」

ヒカリ「はい」

カヲル「……」

カヲル「このデータに間違いは…?」

トウジ「全ての計測システムは、正常に作動しとります」

ヒカリ「MAGIによるデータ誤差、認められません」

カヲル「……まさか、コアの変換も無しに弐号機とシンクロするとはね…」

ヒカリ「しかし、信じられません!…いえ、システム上、ありえないです…」


シンジ「それでも…事実なんだ。事実をまず受け止めてから、原因を探ってみて」

710: 2020/12/06(日) 16:52:01.79
マリ「君がリリスの器?」

リツコ「私は……赤木リツコ」

マリ「ん~。やっぱ似た匂い…」

リツコ「……あなたは?」

マリ「私? ヒ・ミ・ツ」

リツコ「……」




カヲル「…フィフスが赤木リツコと接触したそうだよ」

葛城「…そうか」

カヲル「今、フィフスのデータをMAGIが全力を挙げて当たっている」あらっている



シンジ「にもかかわらず、未だ正体不明。何者なんだ…?あの子は…」


シンジ「ミサトちゃんも未だ戻らず、か……ダメだな…」

シンジ「……父親役が…聞いて呆れるよ…」

711: 2020/12/06(日) 16:53:02.75
ヒカリ「現在、セントラルドグマは開放中。移動ルートは3番を使用してください」



マリ「おっまたー♪」

ミサト「…待ってないわよ。……ついて来ないで!」

マリ「な~んでさぁ。仲良くしよ~よ~」

腕を回そうとするマリ。振り払うミサト

マリ「……」

ミサト「……」

マリ「つれないにゃ~…なんで?」

ミサト「……」

ミサト「…知らない子だもの…」

マリ「……ふぅ~ん?」


ミサト「……ついて来ないでよ」

マリ「あたしもそっちに用があるの~」

712: 2020/12/06(日) 16:54:05.84
マリ「…なんか、悩みごと?」

ミサト「……」

マリ「私でよかったら、聞くよ~?」

ミサト「……」

マリ「……加持くんのことかな~」

ミサト「…っ」

マリ「それとも、赤木リツコ?」

ミサト「なんで…っ」

(加持「俺は手を取ってもらえて嬉しかったよ…」)



ミサト「……あんたには、関係ないでしょ…!」


シャワールームを出るミサト

マリ「……」

マリ「…なるほど。繊細だねぇ」

713: 2020/12/06(日) 16:55:01.64
マリ「ちゃんと乾かさないと、風邪引いちゃうよ?」

ミサト「…ついて来ないでって、言ってるでしょ」

マリ「…心配しなくても加持くんの居場所とったりしないよー」

ミサト「……、いいかげんに…っ」

ミサトの口に人差し指を立てるマリ

マリ「続きはさっ、私の部屋で話そーよ」

マリ「一人だと退屈なんだよね」

マリ「ほらっ!早く早く~」


促すマリ。立ち尽くすミサト

ミサト(……)

714: 2020/12/06(日) 16:56:02.92
ゼーレ「ネルフ。われらゼーレの実行機関として結成されし組織」

ゼーレ「われらのシナリオを実践するために用意されたモノ」

ゼーレ「だが、今は一個人の占有機関と成り果てている」

ゼーレ「さよう。われらの手に取り戻さねばならん」

ゼーレ「約束の日の前に」

キール「ネルフとエヴァシリーズを本来の姿にしておかねばならん。葛城、ゼーレへの背任、その責任は取ってもらうぞ」




初号機のケージ。

葛城「われわれに与えられた時間は残り少ない…」

葛城「希望であるロンギヌスの槍は手を離れた」

葛城「まもなく最後の使徒が現れる。今はそれを消すことだ」


葛城「……信じている」

葛城「…お前も、そうだろう…」

715: 2020/12/06(日) 16:57:01.54
リツコ「私は…なぜここにいるの」

リツコ「なぜまた生きているの」

リツコ「何のために」

リツコ「誰のために…」


リツコ「フィフスチルドレン…」

リツコ「…あの子から、私と同じものを感じた…」

リツコ「なぜ…?」

716: 2020/12/06(日) 16:58:01.72
シンジ「ここが街外れで良かった…。ペンペンが巻き込まれずに済んで…」

シンジ「…でも、この次の保証はないんだ…だから、明日からは伊吹さんちのお世話になるんだよ…」

シンジ「…しばらく、お別れだね…」

ペンペン「クワァッ」

シンジ「ペンペン……」ギュ…

717: 2020/12/06(日) 16:59:02.54
ミサト「……こういうのって、普通お客が上なんじゃないの…?」

マリ「知らない子だも~ん」

ミサト「……」

マリ「…それで、居づらくなって逃げ出してきたんだ?」

ミサト「あんたが無理やり誘ったんでしょ」

マリ「そりゃあ、君の中に逃げたいって気持ちがあったからデショ」

ミサト「……」

マリ「…図星?」

ミサト「知らないわよっ。もう寝る」

マリ「え~」

718: 2020/12/06(日) 17:00:01.62
マリ「……」

マリ「とりゃっ」

ミサト「ちょっ…!自分のとこで寝なさいよ…!」

マリ「ん~?寒いから。ここで寝る」

ミサト「…パーソナルスペースってもんがあるでしょっ」

マリ「い~じゃんい~じゃん~。袖振り合うも多生の縁、って言うし」

ミサト「意味分かんないわよ、もう」

ミサト「だったら、私は上に…」

マリ「うにゃっ!」

ミサト「!、ちょっと…!」

マリ「い~じゃん。あったかくて、やわらかいし…」

マリ「あたしも柔らかいっしょ?うりうり~」

ミサト「ちょっと……、もう…」

719: 2020/12/06(日) 17:01:05.76
マリ「お? 大人しくなった」

ミサト「……馬鹿らしくなっただけよ。まともに取り合うのが」

ミサト「……はぁ…」

マリ「ん~…ぬくぬく」

ミサト「……」


ミサト(誰かと寝るなんて、いつぶりかしら…)


ミサト(生温かい…人の呼吸、落ち着かない…)

ミサト(いや、落ち着くの…?誰かの体温)


ミサト(鼓動……)


ミサト(……)


ミサト「……おかぁ、…さん…」

マリ「……」

720: 2020/12/06(日) 17:02:02.07
シンジ「どうだった、あの子のデータ」

トウジ「これや。イインチョに借りた」

シンジ「これは…!」

トウジ「…公表できんのも納得や、こんなもん…」

シンジ「理論上ありえない…エヴァとのシンクロ率を自由に設定できるなんて」

シンジ「それも、自分の意志で…!」

トウジ「謎やな…探れば探るほど」


シンジ「……もう、正攻法ではいかないか…」

721: 2020/12/06(日) 17:03:02.20
レイ「……よく来られたわね」


シンジ「…聞きたいことがあるんだ」

レイ「…ここでの会話は録音されるわ」

シンジ「構わないよ。あの子の…フィフスの正体は何なの?」

レイ「……」

レイ「……おそらく、最後のシ者…」

722: 2020/12/06(日) 17:04:01.89
マリ「さ…行くよ、アダムの分身。そしてリリンの僕…」


空中に踏み出すマリ。



トウジ「エヴァ弐号機、起動!」

シンジ「そんな…!? 加持くんは!」

ケンスケ「303病室です。確認済みです!」

シンジ「じゃあいったい誰が…!」

ヒカリ「無人です、弐号機にエントリープラグは挿入されていません!」

シンジ(誰もいない?フィフスじゃないのか……!?)

トウジ「セントラルドグマに、A.T.フィールドの発生を確認!」

シンジ「弐号機!?」

トウジ「…いや、パターン青!間違いない!使徒や」

シンジ「使徒……!」

シンジ「あの子どもが…!」

723: 2020/12/06(日) 17:05:02.91
オペレータ「目標は第4層を通過、なおも降下中!」

ケンスケ「だめです、リニアの電源は切れません!」

オペレータ「目標は第5層を通過!」

カヲル「セントラルドグマの全隔壁を緊急閉鎖!少しでも時間を稼ぐんだ!」

アナウンス「マルボルジェ全層緊急閉鎖、総員退去、総員退去!」

カヲル「……まさか、ゼーレが直接送り込んでくるとはね…」

葛城「連中は予定を一つ繰り上げるつもりだ。われわれの手で…」

724: 2020/12/06(日) 17:06:01.46
ゼーレ 02「最後の使徒がセントラルドグマに侵入した。現在降下中だ」

ゼーレ「予定通りだな」

キール「葛城。君はよき友人であり、志を共にする仲間であり、理解ある協力者だった。これが最後の仕事だ。初号機による遂行を願うぞ」





ケンスケ「装甲隔壁は、エヴァ弐号機により突破されています!」

トウジ「目標は、第2コキュートスを通過!」

葛城「……!」

葛城「エヴァ初号機に追撃させろ」

シンジ「はい!」

葛城「…いかなる方法をもってしても、目標のターミナルドグマ侵入を阻止するんだ」

725: 2020/12/06(日) 17:07:03.18
シンジ(……使徒はなぜ、弐号機を…!)


カヲル「まさか…弐号機との融合を果たすつもりなのか」

葛城「あるいは破滅を導くためか…」





ミサト「あの子が、使徒……?」

ミサト「…嘘よ。だってあの子は…」

シンジ「本当なんだ。ミサトちゃん」

シンジ「出撃の準備を」

ミサト「……」

シンジ「ミサトちゃん…!」

726: 2020/12/06(日) 17:08:02.10
マリ「おっそいな~」

マリ「…ちょっとからかいすぎちゃった、かな」



オペレータ「エヴァ初号機、ルート2を降下!目標を追撃中!」


(マリ「加持くんの居場所とったりしないよー」)


ミサト「……!」

ミサト「馬鹿にして…!」

ミサト「汚させやしない、加持くんの、弐号機を…!」

727: 2020/12/06(日) 17:09:01.87
ケンスケ「初号機、第4層に到達、目標と接触します」



ミサト「…いた!」

マリ「おっそ~い。待ちくたびれたよ」


ミサト「マリ…ッ!」

マリ「あー。はじめて!名前呼んでくれたね」

ミサト「ふざけんじゃ、ないわよ…っ!」


にらみ合い、掴みあう弐号機と初号機


マリ「今さら向き合ったって。許してあげないよ!誰でもよかったくせに」

ミサト「…! じゃあ、あんたはどうして…ッ」

ミサト「私に近付いたのよっ!」

プログナイフで斬りかかる

728: 2020/12/06(日) 17:10:01.86
弾かれる

ミサト「うっ」

マリ「無駄だよ」

マリ「弐号機は今、誰とも会いたくないって。」


ミサト「これは…!A.T.フィールド…!?」


マリ「驚くこたないじゃん。誰だって持ってる。A.T.フィールドは心の壁」

ミサト「心の壁…!?」

マリ「そう。こうやって、土足で上がることだって…!」

ミサト「グッ」

マリ「できる!」

ミサト「アアアッ」

729: 2020/12/06(日) 17:11:02.17
オペレータ「エヴァ両機、最下層に到達」

オペレータ「目標、ターミナルドグマまで、後20」


シンジ「……く…っ!」

シンジ「……初号機の信号が消えて、もう一度変化があったときは…」

トウジ「分かっとる。その時は…ここを自爆させるんやな」

シンジ「…トウジ、僕は…!」

トウジ「このワシがセンセ一人置いていくわけないやろ。氏ぬときは一緒や」

ケンスケ「はは。俺はできれば氏にたくないかな」

トウジ「アホ!何をウジウジ言うとんのや。ちゃんとタマンキついとんのか!?」

ヒカリ「ちょっと!やめなさいよ、こんなときに…」

トウジ「もとより覚悟の上や!…ついて行くで」


シンジ「……ありがとう、みんな…!」

730: 2020/12/06(日) 17:12:01.79
マリ「…ヒトの宿命か…。いじけてたって何にも楽しいことないのに…」

ミサト「…なんなのよ…!」

マリ「遺伝子レベルでの欲求に対する疑問…ヒトの限界だよ…」





シンジ「いったい、これは…!」

トウジ「これまでにない強力なA.T.フィールド…!」

ケンスケ「光波、電磁波、粒子も遮断しています!何もモニターできません」

シンジ「結界…!?」

ヒカリ「目標およびエヴァ弐号機、初号機、共にロスト、パイロットとの連絡も取れません!」

731: 2020/12/06(日) 17:13:01.72
最深部に落下する両機


ミサト「んっ…!う、うぅ…っ!」

ミサト「待ちなさい、よ…っ!」

弐号機に足を掴まれる

ミサト「!」

マリ「……」

マリ「諦めちゃいなよ」

ミサト「……!」

マリ「もう無理だって」

ミサト「無理じゃない……!」




ケンスケ「最終安全装置、解除!」

トウジ「ヘヴンズドアが、開く…!」

シンジ「……!」

シンジ「たどり着いたのか、使徒が…!」

732: 2020/12/06(日) 17:14:01.70
シンジ「みんな…」

トウジ「……」


猛攻。


ミサト「……ぁああああっ!」


弐号機に掴みかかる初号機


ミサト「はっ!」


シンジ「…状況は!」

トウジ「A.T.フィールドや!」

ケンスケ「ターミナルドグマの結界周辺に先と同等のA.T.フィールドが発生」

ヒカリ「結界の中へ侵入していきます!」

シンジ「まさか、新たな使徒…!」

ケンスケ「だめです、確認できません!…いえ、し、消失しました!」

シンジ「消えた?!使徒が?!」

733: 2020/12/06(日) 17:15:02.65
マリ「…おまたせ。アダム…ようやく会えたね…」

マリ「……!」

マリ「違う、これは…!」

マリ「…なるほど。」

マリ「リリンの狙いはこれか…」


横たわる弐号機。


マリ「悔しいなあ……」


初号機の手がマリを捕らえる


マリ「……あとちょっとで勝てると思ったのに。」


ミサト「あんた…っ!なんで、こんなこと…!」


マリ「生きることに……理由なんていらない。ただ生きていたいじゃん?」


マリ「生み落とせば次が待ってる。できるからやればいい。そうやって繰り返し、生命は巡ってきた…」

マリ「疑問なんて…持ってるみたいだからサ、面白くって。もうちょっと見ていたかったけど…」

734: 2020/12/06(日) 17:16:02.62
マリ「でももう終わり。今回は生命に懐疑的なほうが生き残る」

ミサト「…なに、言ってんのよ…」


マリ「…ま。それも面白いか…」


ミサト「わけ、分かんないわよ…!どうしろって言うのよ、私に…!」



マリ「受け取ってよ、リリンの代表として」

ミサト「……」

マリ「私のキモチ」


ミサト「…!」



ミサト「なによ…なんなのよ、ずっと!最初から…」

ミサト「勝手なことばっかり言わないでよ、あたし、あたしは…!」

735: 2020/12/06(日) 17:17:02.13
マリ「知ってるよ?」


ミサト「!」

マリ「最初から好きじゃなかった…気に入らなかった。だよね?」


ミサト「…ッ」

マリ「頃しなよ。そうすれば君たちの世界はそのまま」


マリ「…このまま氏んで、心に残るのも悪くない……」

ミサト「……」

マリ「…悪かったね。パーソナルスペース汚しちゃって」

ミサト「……、」

ミサト「馬鹿…!」

736: 2020/12/06(日) 17:19:08.81
洗浄される初号機

葛城「……」

リツコ「……」





ミサト「あの子は…」

ミサト「マリは……使徒じゃなかった」

ミサト「温もりがあったもの…」

ミサト「好きじゃなかった…でも、嫌いでもなかった…」

ミサト「……何も違わなかった。私たちは…っ」

737: 2020/12/06(日) 17:20:01.74
シンジ「……彼女は氏を望んだんだ。ミサトちゃん、君は生を…」


ミサト「違う!」

ミサト「違う、違う、違う違う!私は逃げただけ…!」

ミサト「何も選びたくなかった…だから、あの子の言うことを聞いた…そのほうが、自分が傷つかないもの」

ミサト「嘘ばっかり…知ってるなんて、ぜんぶ嘘…!」

ミサト「あの子も生きたかったんだわ……」

シンジ「……」


扉を閉めるシンジ

布団に踞るミサト

ミサト「……寒い…」




弐拾四話分終わり

743: 2020/12/07(月) 22:01:02.24
第一脳神経外科。


ミサト「……」

アナウンス「東棟の第2、第3区画は本日18時より閉鎖されます。引き継ぎ作業は本日16時30分までに終了してください」


ミサト「加持くん…、ねぇ」

ミサト「起きてよ……こわいの。シンジさんも、リツコも、みんな…!」

ミサト「どうして平気なの…?あんな…!」

ミサト「……起きて…起きてよ…!分かって、私を見てよ…!」

ミサト「おかしいって、言ってよ…!こんなの変だって…!」


(マリ「…悪かったね」)

(ミサト「馬鹿!」)

(シンジ「彼女は氏を望んだんだ」)

(ミサト「違う!」)

(ミサト「寒い…」)

744: 2020/12/07(月) 22:02:02.02
ミサト「……もう分からないの。他人も、自分も…」

ミサト「…ねぇ。加持くん…!加持くん…」

ミサト「起きて、また…いつもみたいに、好きって、言っ……」

加持の上に泣き崩れるミサト

ミサト「うっ、う…っ」


ミサト「う…っ、加持くん…」



ミサト「私を助けてよ…!」

745: 2020/12/07(月) 22:03:05.83
加持。夢の中。

「大勢で行くと目立つ」

「大丈夫さ…うまくやるよ」


「こいつらか、最近この辺を荒らしてる」

「殺せ。どうせ足もつかない」

「やめろ…」

「やめろ?やめろって?坊主…」


「やめてやってもいい。…仲間の居場所を吐きな」

「そうすりゃ助けてやる」

「……あ、」


加持「……あぁ……っ」

ミサト「加持くん…?加持くん!」

746: 2020/12/07(月) 22:04:02.25
加持「あ、ああああっ!」

ミサト「…や、ぁ!」

ミサト「か…加持く、離し…!」

(「仲間の居場所を言え」)

加持「……ろ…してやる…!」


加持「頃してやる、頃してやる、頃してやる、頃してやる…っ!」

ミサト「い…い、や…」

ミサト「だれかあっ」

加持の身体から計器が外れる。電子音。

747: 2020/12/07(月) 22:05:02.31
看護師「…何をしてるの!」

看護師「先生!」

医師「鎮静剤だ、」

医師「押さえろ!興奮している」

加持「うぅ、あぁ…!」

加持「……っあああッ!」

看護師「…っ、落ち着いて!ここは病院よ」

加持「ふーっ、ふーっ……」

加持「……、……」

加持「…」



ミサト「………」

看護師「大丈夫?怪我はない?」

748: 2020/12/07(月) 22:06:02.14
ヒカリ「本部施設の出入りが全面禁止…?」

トウジ「解せんな。第一種警戒態勢のままっちゅうのも…」

ヒカリ「最後の使徒だったんでしょう?あの子が…」

ケンスケ「ああ。全ての使徒は消えたはずだよ」

トウジ「なんや。ほんならめでたしめでたし、ってことなんか?」

ヒカリ「じゃあここは…エヴァはどうなるの?綾波さんも今いないのに…」

ケンスケ「……ネルフは、組織解体されると思う。俺たちがどうなるかは…見当もつかないよ」

トウジ「補完計画の発動まで、自分らで粘るしかないか」





シンジ「…出来損ないの群体として既に行き詰まった人類を完全な単体としての生物へ人工進化させる補完計画。理想の世界、か…。」

シンジ「そのために委員会はまだ使うつもりなんだ…」

シンジ「アダムやネルフではなく、あのエヴァを」


シンジ「アスカの予想通り…」

749: 2020/12/07(月) 22:07:02.02
キール「約束を違えたな……葛城」

ゼーレ 02「我らに背き 滅びを拒むとは」

ゼーレ 05「滅びの宿命は新生の喜びでもある」

ゼーレ 04「神も人も全ての生命が氏を以てやがて一つになる為に」

キール「だがロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完は出来ぬ」

キール「それが可能なのはリリスの分身たるエヴァ初号機のみ」

キール「速やかな遂行を願うぞ…」


葛城「氏は何も生みません」


キール「氏は君達に与えよう」


カヲル「人は生きていこうとする所にその存在がある」

カヲル「それが自らエヴァに残った彼女の…いや」

カヲル「彼女たちの願いだからね」

750: 2020/12/07(月) 22:08:02.79
夜。

目を覚ますリツコ

リツコ「……」


目を閉じるミサト

ミサト「……」



明け方。

キーを叩くシンジ

シンジ「…これが…セカンドインパクトの真意…」

シンジ「はっ」

シンジ「気付かれた…!」

シンジ「…いや、違う…!」

シンジ「始まったのか…」

シンジ(始まってしまった。こんなにも早く…)

751: 2020/12/07(月) 22:09:01.86
葛城「……結局、最後まで頼ることになってしまった」

葛城「…行ってくれるか」

リツコ「……」コクン…





警告音。

オペレータ「第6ネット、音信不通」

カヲル「左は青の非常通信に切り替えろ。衛星を開いても構わない…そうだ。右の状況は?」

オペレータ「外部との全ネット、情報回線が一方的に遮断されています!」

カヲル「目的はMAGIか…」

752: 2020/12/07(月) 22:10:02.28
ケンスケ「全ての外部端末からデータ侵入。MAGIへのハッキングを目指しています!」

カヲル「やはりか…侵入者は松代のMAGI2号かい?」

ケンスケ「いえ、少なくともMAGIタイプ5」

ケンスケ「ドイツと中国、アメリカからの侵入が確認できます!」

カヲル「…ゼーレは総力を挙げているな…彼我兵力差は1対5…分が悪い…」

オペレータ「第4防壁、突破されました」

トウジ「主データベース閉鎖…駄目や、進行をカットできん!」

ヒカリ「更に外郭部へ侵入、予備回路も阻止不能です!」

カヲル「まずいな…MAGIの占拠は本部のそれと同義だ…」

753: 2020/12/07(月) 22:11:04.65
アナウンス「総員、第一種警戒態勢。繰り返す。総員、第一種警戒態勢。D級勤務者は可及的速やかに所定の配置に付いてください」



レイ「解ってる…、MAGIの自律防衛でしょう…」

諜報員「はい、詳しくは第2発令所の洞木二尉からどうぞ」

レイ「ここもいよいよね…。最後の敵は人か…」




アナウンス「現在、第一種警戒態勢が発令されています」

(通話)

シンジ「状況は!」

トウジ「今しがた、第2東京からA-801が出た」

シンジ「801?」

トウジ「特務機関ネルフの特例による法的保護の破棄」

トウジ「及び、指揮権の日本国政府への委譲…最後通告やな。ああ、そうや。今MAGIがハッキングを受けとる…かなり押されとる」

ヒカリ「碇くん?洞木よ。今、綾波さんがプロテクトの作業に入ってくれてる」

ヒカリ「あ…!」

シンジ「綾波が…?」

754: 2020/12/07(月) 22:12:02.79
レイ「……先生、私。待てませんよ、もう…」

レイ「疲れました……そっちへ行ってもいいですか…?」


レイ「…駄目ね、私…弱気になってる。こんなことじゃ先生に叱られてしまうわ」

レイ「先生……」




オペレータ「強羅地上回線、復旧率0.2%に上昇」

オペレータ「第3ケーブル、箱根の予備回線、依然不通」

シンジ「後、どれくらい…?」

トウジ「ギリギリ間に合いそうや…綾波博士様様やな」

シンジ(MAGIへの侵入だけ……それで済むはずがない。おそらく……!)

755: 2020/12/07(月) 22:13:02.62
カヲル「MAGIは前哨戦に過ぎない。彼らの狙いは本部施設、及び残るエヴァ2体の直接占拠だ」

葛城「ああ。リリス、そしてアダムさえ我らにある」

カヲル「老人達が焦るわけだ……」


ヒカリ「MAGIへのハッキングが停止しました」

アナウンス「フリーズ、フリーズ、フリーズ、フリーズ…」

ヒカリ「Bダナン形防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です」




レイ「先生……今度は一緒ですよ…」

756: 2020/12/07(月) 22:14:01.79
ゼーレ 09「葛城はMAGIに対し、第666プロテクトを掛けた。この突破は容易ではない」

ゼーレ 07「MAGIの接収は中止せざるを得ないな」

キール「出来うるだけ穏便に進めたかったのだが、致し方あるまい。本部施設の直接占拠を行う」


山道に蠢く影。


隊員「始めよう」

隊員「予定通りだ」

757: 2020/12/07(月) 22:15:02.39
被弾するネルフ本部。


オペレータ「第8から17までのレーダーサイト、沈黙」

ケンスケ「特科大隊、強羅防衛線より侵攻してきます」

トウジ「御殿場方面からも二個大隊が接近中」


カヲル「…最後の敵が人とはね」

葛城「…総員、第一種戦闘配置」

ヒカリ「戦闘配置…?相手は使徒じゃないのに…同じ人間なのに…」

トウジ「…敵さん、そうは思うてくれんようやな」

758: 2020/12/07(月) 22:16:02.10
ネルフ本部ゲート前

職員「…、……」

職員「う、……!」

開放されるゲート

警報。

職員「おいどうした!おい!」

職員「なんだ?」

職員「南のハブステーションです」

着弾。


オペレータ「台ヶ丘トンネル使用不能」

オペレータ「西5番搬入路にて火災発生」

オペレータ「侵入部隊は第1層に突入しました!」

759: 2020/12/07(月) 22:17:06.39
シンジ「西館の部隊は…陽動だ」

シンジ「本命がエヴァの占拠なら、パイロットを狙うはず…至急ミサトちゃんを初号機に退避させて!」

トウジ「了解」

シンジ「加持くんは」

ケンスケ「303号病室」

シンジ「…そのまま弐号機に乗せて。あそこだと確実に見つかる…!エヴァの中のほうが安全だ」

ヒカリ「…了解、パイロットへの投薬を中断、発進準備!」

シンジ「加持くん収容後、エヴァ弐号機は地底湖に隠して」

シンジ「…すぐに見付かるけど、ケージよりマシだ…!リツコちゃんは?」

ケンスケ「所在不明。位置を確認できない」

シンジ「こんなときに…!捕捉急いで!」




迷いなく進むリツコ。その手にはアダム

リツコ「……」

760: 2020/12/07(月) 22:18:02.40
トウジ「弐号機射出!8番ルートから水深70に固定」

シンジ「続いて初号機発進!ジオフロント内に配置して」

ケンスケ「駄目だ…!パイロットがまだ…!」

シンジ「そんな、」

シンジ「ミサトちゃん…!」


アナウンス「セントラルドグマ第2層までの全隔壁を閉鎖します。非戦闘員は第87経路にて待避してください」


ケンスケ「地下、第3隔壁破壊。第2層に侵入されました」

カヲル「戦自約一個師団の投入か…占拠は時間の問題だね…」

葛城「……渚先生、後を頼みます」

カヲル「…解っているよ。彼女に伝えてくれ、すまなかったと」

葛城「……」

761: 2020/12/07(月) 22:19:03.24
侵攻、破壊。

オペレータ「第2グループ、応答なし」

オペレータ「77電算室、連絡不能」

ケンスケ「52番のリニアレール、爆破されました!」

トウジ「なんて奴らや…、使徒のがよっぽど可愛いげがあったな」

シンジ「無理ないよ。今までとは相手が違う。人を頃すなんて…!」



瀕氏の同僚を運ぶ職員

職員「っっん、っっん…!」

銃撃。


隊員「赤のケーブルから優先して切断…」


火炎放射機。

職員「あぁぁ…」

762: 2020/12/07(月) 22:20:05.46
オペレータ「第3層Bブロックに侵入者!防御できません!」


ケンスケ「Fブロックからもです!メインバイパスを挟撃されました」

シンジ「第3層まで破棄します。戦闘員は下がって」

シンジ「803区間までの全通路とパイプにベークライト注入」

ケンスケ「ベークライト注入!」


アナウンス「第703管区、ベークライト注入を開始。完了まであと30。第730管区、ベークライト注入を開始。完了まであと20」


シンジ「これで、少しは…」

トウジ「センセ!…ルート47が寸断されてグループ3が足止め食っとる。このままやと、葛城ミサトが」

シンジ「……、」

シンジ「…非戦闘員の白兵戦は極力避けて。向こうはプロだ。ドグマまで後退不可能なら投降した方がいい…!」


シンジ「…ごめん、ここは任せる」

トウジ「…シンジ、…」

シンジ「大丈夫。…氏なないよ」

763: 2020/12/07(月) 22:21:02.68
無線「二子山はもういい、長尾峠に回れ」

戦闘団長「以外と手間取るな…」

隊員「我々に楽な仕事はありませんよ」




トウジ「……まったく。無茶しよるわ。こっちは本格的な対人要撃システムもないっちゅーのに…」

ケンスケ「だな。精々テロ止まりだ」

トウジ「…戦自が本気出したら、この施設なんてイチコロなんやないか?」

ケンスケ「イチコロなんてもんじゃないさ。骨も残らないと思うね」

トウジ「アホ!嘘でもそんなことないて、言わんかい!」

764: 2020/12/07(月) 22:22:02.24
爆撃。

トウジ「が……っ!」

トウジ「……!!」


トウジ「イインチョ!」

ケンスケ「ロック外して!」

ヒカリ「嫌……私…鉄砲なんて撃てない…!」

ケンスケ「訓練で何度も撃ったろ…!」

ヒカリ「その時は…!その時は人なんて、いなかったもの…!」

トウジ「…く…っ、」

トウジ「委員長!伏せとれ!」

765: 2020/12/07(月) 22:23:07.06
無線「第2層は完全に制圧。送れ」

無線「第2発令所、MAGIオリジナルは未だ確保できず。左翼下層フロアにて交戦中」

無線「5thマルボルジェは熱冷却装置に入れ」


無線「エヴァパイロットは発見次第射殺」

無線「非戦闘員への無条件発砲も許可する」

無線「柳原隊、新庄隊、速やかに下層に突入」


隊員「サード発見。これより排除する」

隊員「悪く思うなよ…!」


銃声。倒れる隊員


ミサト「……!」

葛城「立つんだ…ミサト」

766: 2020/12/07(月) 22:24:06.86
倒れた隊員の無線を聞くシンジ

無線「紫の方は確保しました。ベークライトの注入も問題ありません」

無線「赤い奴は既に射出された模様。目下移送ルートを調査中」

シンジ「ミサトちゃんと初号機の物理的接触を断とうとしている…。ミサトちゃん、無事なのか…!でもどうやって…」


無線「ファーストは未だ発見できず」

シンジ「……うかうかしてられない。どっち道初号機までのルートを確保しなきゃ…」


(通話)

シンジ「トウジ、聞こえる?」

767: 2020/12/07(月) 22:25:01.94
ミサト「たすけて…加持くん、助けてよ…」


葛城「……セカンドは弐号機の中だ」

葛城「ミサト。お前もすぐに…」

ミサト「やめてよ…!」

ミサト「もう、嫌なの…!もう誰も頃したくない!行きたくない!」

ミサト「もう嫌……なんでなのよ」


葛城「……すまなかった」

ミサト「………!」

ミサト「なに…よ、なん…今さら!何なのよ!」

ミサト「こんなところに呼んで!ずっと来てくれなかったのに、急に、エバーに乗せて、私から奪って、また…!」

768: 2020/12/07(月) 22:26:02.15
カヲル「構わない!ここよりもターミナルドグマの分断を優先させるんだ」

トウジ「あちこち爆破されとるのに、やはし此処には手を出さんか…」

ケンスケ「一気に片を付けたい所だろうが、下にはMAGIのオリジナルがあるからね…」

トウジ「はん。できるだけ無傷で…ちゅうわけか」

ケンスケ「ただ、対BC兵器装備は少ない。使用されたらヤバイよ…」

トウジ「N2兵器もな…」


爆発。激しい揺れ。


ケンスケ「あ~、言わんこっちゃない…」

トウジ「奴ら加減ってもんを知らんのか!」

カヲル「無茶をする…」

さらに降り注ぐ

ヒカリ「ねぇ、どうしてそんなにエヴァが欲しいの!」

769: 2020/12/07(月) 22:27:02.31
葛城「奴らは……ゼーレはサードインパクトを起こすつもりだ。使徒ではなくエヴァシリーズを使って…」

葛城「15年前のセカンドインパクトは、人間に仕組まれたものだ」

葛城「だがそれは、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元する事によって被害を最小限に食い止める為のものだった…」

葛城「…ミサト、われわれ人間も、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使徒だ。他の使徒達は別の可能性だった…。人の形を捨てた人類の」


葛城「……私は16年前、この事実を知った。ゼーレにおもねることで計画を絶つ気でいた。だが…それも失敗だ」

葛城「人間同士で争う形となってしまった…」

ミサト「……」



葛城「……生き残るにはエヴァシリーズを全て消滅させるしかない。ミサト…」


葛城「それが叶わなくても、お前なら…」

ミサト「……?」

葛城「…いや。来るんだ」

770: 2020/12/07(月) 22:28:01.69
首相「電話が通じなくなったな」

秘書官「はい、3分前に弾道弾の爆発を確認しております」

首相「ネルフが裏で進行させていた人類補完計画。人間全てを消し去るサードインパクトの誘発が目的だったとは…とんでもない話だ」

秘書官「自らを憎むことのできる生物は人間くらいのものでしょう」

首相「さて、残りはネルフ本部施設の後始末か」

秘書官「ドイツか中国に再開発を委託されますか?」

首相「買い叩かれるのがオチだ。20年は風地だな。旧東京と同じくね」

771: 2020/12/07(月) 22:29:02.30
無線「表層部の熱は退きました。高圧蒸気も問題ありません」

無線「全部隊の初期配置完了」

隊員「現在、ドグマ3層と紫の奴は制圧下にあります」

戦闘団長「赤い奴は?」

隊員「地底湖の水深70にて発見、専属パイロットの生氏は不明です」




加持(………、)

加持(生きてる…)

加持(…また、夢の中か…?)

加持(…うっ、)

加持(何が起きてる…?)

加持(いたい…痛い、身体が…)

加持(殴られている、強い、力で…)

加持(上から…)

772: 2020/12/07(月) 22:30:01.89
「兄ちゃん」

「リョウジー!」

「兄ちゃん」

「リョウジ」

「兄ちゃん」

「リョウジ」

「兄ちゃん!」

「リョウジー!」

「兄ちゃん……」


加持「はっ…」


(「教えろ…」)

(「仲間の居場所を吐け」)

773: 2020/12/07(月) 22:31:03.05
爆雷。


加持「氏ぬのか…?俺は…」

(「仲間の居場所を言えば…」)


加持「氏ぬのは俺、氏ぬのは俺…?氏ぬのは俺…。氏ぬのは俺、氏ぬのは俺…!氏ぬのは俺、氏ぬのは俺、氏ぬのは俺、氏ぬのは俺、氏ぬのは俺…」


(「兄ちゃん……」)

774: 2020/12/07(月) 22:32:02.09
(「もうここは出よう」)

加持「氏ぬべきなのは俺、」

(「俺たちは自由なんだ」)

加持「あの時氏ぬはずだったのは俺」

(「軍の倉庫を見つけた」)

加持「俺が氏んでさえいれば、」

(「これで当分は…」)

加持「みんなは助かった…」

(「あっこら、はは」)

加持「氏ぬのは俺」

(「兄ちゃん!」)



(「加持くん」)

加持「氏ぬのは俺……一人だ!」

閃光。

775: 2020/12/07(月) 22:33:01.93
隊員「こっ、これは!?」

隊員「やったか!?」



護衛艦を押し上げ、現れる弐号機

戦自の攻撃を蹴散らしていく



加持「……大切だった」

操縦桿を握る加持

加持「大切だ…!」


空を翔る。




車内。

ヒカリ(無線)「エヴァ弐号機起動!加持くんは無事です。生きてます!」

ミサト「加持くんが……!」

776: 2020/12/07(月) 22:34:03.81
隊員「ケーブルだ!やつの電源ケーブル、そこに集中すればいい!」

爆撃。

加持「……チイッ!」

加持「アンビリカルケーブルが、無かろうと……ッ!」

加持「こちとら1万2千枚の特殊装甲と!」


加持「A.T.フィールドがある…!」


攻撃機を凪ぎ払う


加持「うぉぉぉぉぉ…っ!」




キール「忌むべき存在のエヴァ。またも我らの妨げとなるか…やはり毒は、同じ毒を以て征すべきだな」


輸送機からエヴァシリーズが投下される


加持「エヴァシリーズ…!完成していたのか」


カヲル「S2機関搭載型を9体全機投入とは…大げさすぎるな。ここで起こすつもりか…!」

降り立つエヴァシリーズ

777: 2020/12/07(月) 22:35:03.86
無線。電話越しに。

シンジ「司令…!よかった、ミサトちゃんは無事なんですか!」

葛城「無事だ」

シンジ「そのまま非常用のルート20へ向かってください」

葛城「電源は」

トウジ「三重に確保しとります。3分以内に乗り込めば第7ケージに直行できます」

葛城「分かった。……セカンドに繋げるか」

トウジ「どうぞ」

葛城「…エヴァシリーズは必ず殲滅させるんだ。初号機もすぐに上げる」

葛城「それまで耐えてくれ」

778: 2020/12/07(月) 22:39:13.80
加持「必ず殲滅、ね…。司令も、病み上がりに軽く言ってくれる」

加持「…残り3分半で9つ。一匹につき20秒か……ははっ」

加持「望むところだ…!」



加持「うお、お…!」

9号機の頭を潰し、背骨を折る



加持「Erst!」

779: 2020/12/07(月) 22:40:02.24
ルート20。

葛城「……ここだ」

銃撃。逃れる葛城、ミサト。


隊員「逃がしたか」

隊員「目標は射殺出来ず。追撃の是非を問う」

無線「追撃不要。そこは爆破予定である。至急戻れ」

隊員「了解」

780: 2020/12/07(月) 22:41:13.30
ミサト「え……?」

葛城「……っ…、」

ミサト「ちょっと…!」

葛城「電源は……生きている」

葛城「行って初号機に乗るんだ」

ミサト「……お父さんは…!?」

葛城「……」

ミサト「ねぇ……!」

葛城「……ミサト」

何かを手に握り込ませる

葛城「 」

扉が閉まる

手のひら。血のついた十字架

ミサト「う……っ」

ミサト「くぅ…、っ、う、う…っ」

781: 2020/12/07(月) 22:42:12.19
加持「だああああっ」

11号機を地底湖に沈める

加持「あああ…っ!」

11号機の頭にプログナイフを突き刺し沈黙させる

加持「これで4つ…っ!」


加持「次ッ!」


加持「でやあああああッ!」


プログナイフが砕ける

加持「チイッ!」


弐号機の顔面を掴まれる

加持「ウッ」


加持「…ゥオアアアッ!」

782: 2020/12/07(月) 22:43:02.94
ターミナルドグマに辿り着くリツコ


リツコ「……」

リツコ「……!」


レイ「……待っていたわ。司令は一緒じゃないのね…」

レイ「嘘ばっかり。結局……真実なんて教えてくれなかった」

レイ「……でももういいの…」カチャ…


リツコに銃口を向けるレイ


レイ「……あなたはトリガーとなる。だったら頃すのが確実……」

リツコ「……」

783: 2020/12/07(月) 22:44:02.03
レイ「ずっとあなたを守ってきたつもりだった。先生と自分を重ねて。…それをあなたが重荷に感じていたのも知ってる…」

レイ「……もう、終わりにしましょう。家族ごっこは終わり」

リツコ「……」

リツコ「…あなたは私を撃てない」

レイ「……!」

レイ「……そうね。でももう遅い。さっきMAGIのプログラムを変えてきたわ」

レイ「一緒に氏にましょう…先生も……あなたのお母さんも一緒に」カチ…

レイ「……」

レイ「……!、なぜ……!」

レイ「は…っ」



レイ「BALTHASARが……!」

レイ「う……っ、」


レイ「……なぜなの!母としての先生がそう望むならいったい、私は…!」

784: 2020/12/07(月) 22:45:14.60
トウジ「どうなっとるんや外は!」

ヒカリ「活動限界まで1分を切ってる!このままじゃ加持くんが…!」


シンジ「ミサトちゃん、急いで……!」




加持「葛城は、せめて葛城だけは」


加持「守ってみせる…!」


加持「アアアアアッ!」



加持の声が鳴り響いている。第7ケージ。


ミサト「……いや…!」

ミサト「もう失うのはイヤ…!」

ミサト「どうしてなの…ッ」

785: 2020/12/07(月) 22:46:20.62
埋もれている初号機。

ミサト「こんなときにッ!」

ミサト「動けないで何が世界の希望よ」


加持「だああああっ」


ミサト「動いてよ…!」

ミサト「私の初号機なら、動いて…!」


壁が軋む。

ミサトに手を伸べる初号機


ミサト「アッ……」

ミサト「……!」

ミサト「まさか…!」


初号機「………」


ミサト「お母さん…?」






25話分終わり

786: 2020/12/07(月) 23:01:02.29
肩を貫かれ、よろめく。

加持「…ッグ…!」

右腕を引き裂かれる。

加持「ォア…!」

加持「…………!」

加持「ダアアアアッ!!!」


なぎ倒して後ずさる

加持「……ハァ、ハァ…!」


加持「………、」

加持「ここまでか…!」

787: 2020/12/07(月) 23:02:01.67
ヒカリ「内部電源終了…っ!予備電源に切り替わります、活動限界です…!」


シンジ「加持くん…!」


加持「……はぁ、は……」

加持(………よく、やった…)


加持「へへ…」

加持「…よく、ここまでもったな…」

加持「ありがとう」

788: 2020/12/07(月) 23:03:01.85
加持「俺もすぐに行くよ」

加持「…今度は、一緒に…」

目を閉じる加持。

刃が迫る。


大きな影。

初号機が飛びかかる

ヒカリ「……!」

ヒカリ「エヴァ初号機、起動!」

789: 2020/12/07(月) 23:04:03.59
加持「葛城……!?」


ミサト「……ごめん、遅れちゃって」


加持「………、」

加持「……締まらないな…」


残った機体をなぎ倒していく初号機

加持「………」

790: 2020/12/07(月) 23:05:02.60
レイ「…欠けた心の補完」

レイ「不要な身体を捨てて、全ての魂をひとつにする…それが人類補完計画の全容」

レイ「…なぜ先生は、あなたを行かせようとするの…!」


レイ「復讐のためだったと言うの…?すべて、私を育てたことも…」

リツコ「…違うわ」

リツコ「確かに母さんは、セカンドインパクトで愛する人を失った」



リツコ「でもこれは、私が決めたこと…」

レイ「……!」

791: 2020/12/07(月) 23:06:02.36
ミサト「…加持くん、腕、大丈夫…?」

加持「…どってことないさ、これくらい…」


加持「…葛城、俺のことは気にするな」

加持「いや…しないでくれ」

ミサト(…………、)


加持「俺は弟たちを身代わりにして生き残った」

加持「悔いることも恐れていた…でも今は分かる」

加持「俺が悪かったんだ」

加持「もうこれ以上、俺は……!」


ミサト「加持くんのせいじゃない」

加持「……、」

792: 2020/12/07(月) 23:07:16.34
ミサト「大人が悪いのよ……いえ、セカンドインパクトが。あれが世界を変えてしまった。加持くんたちを苦しめた…」

ミサト「背負う人が違っただけ。あなたを身代りにしても…しなくても、必ず誰かが背負うことになるのよ」

加持「葛城…」

ミサト「………」

ミサト「生きろ、と…言われたの、お父さんに」


ミサト「そう望まれたの…。だから生きるの。私も望んでる。加持くん、あなたに」

ミサト「生きていてほしい、って…」


ミサト「……絶対に生き残るのよ。生き残って、それでも氏にたかったら、その時氏ねばいい…!」


ミサト「今、氏に急ぐような真似したら…!一生許さないから…!」



加持「……、…」

加持「敵わないな…」

793: 2020/12/07(月) 23:08:06.50
ヒカリ「エヴァシリーズ、すべて沈黙!」

トウジ「ィヨッシャー!」

ヒカリ「ミサトちゃん!加持くんを安全な所へ運んで」

ミサト「はい!」


加持「………」

加持「葛城、………帰ったら」

ミサト「?」

加持「あの時の続きをしよう」

ミサト「……、!」

ミサト「バカ…!」

794: 2020/12/07(月) 23:09:07.02
ヒカリ「……待って」

ヒカリ「…なに、これ……」


加持「!」

加持「葛城、後ろ…!」


シンジ「倒したはずのエヴァシリーズが…!?」


飛び立つエヴァシリーズ

狙いすまされる。乱れ打ち。

加持「ッグ、」

ミサト「加持くん!」

795: 2020/12/07(月) 23:10:02.35
対抗するミサト


ミサト「ああああっ!」


ミサト「うぐ…っ!」

腹部を貫かれる

加持「葛城!」

ミサト「…ぅああああああっ!」

加持「……っ」

引き抜いて突き刺す

ミサト「あああああっ!」

加持「葛城……っ」

ミサト「…ぁあああぁ!」

796: 2020/12/07(月) 23:11:05.57
ミサト(加持くんは)

ミサト(私が守る、絶対に)

ミサト(話したいことが沢山あるのよ)

ミサト(自分で決めたの)


ミサト(……お父さん、お母さん…!)

ミサト(私が決めたのよ、守りたいと、思ったの)


ミサト「ぐ…っ!」


ミサト(力を貸して…!)


光が天を貫く。

光の羽を纏い、初号機が立ち上がる


隊員「エヴァンゲリオン初号機…!」

隊員「まさに悪魔か…」



加持「葛城…!」

797: 2020/12/07(月) 23:12:03.99
隊員「大気圏外より高速接近中の物体あり!」

隊員「なんだと…!」



カヲル「ロンギヌスの槍…!」



加持「ロンギヌスの槍…!?」


シンジ「ミサトちゃん!」


ミサト「ッア……!」

飛来した槍が初号機の喉元に止まる

798: 2020/12/07(月) 23:13:02.21
キール「遂に我らの願いが始まる」

ゼーレ 04「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に還った」

ゼーレ 02「葛城の娘を乗せたままだが」

キール「神が時を選んだのだ」

ゼーレ 03「方舟の行き先は決まっている」

ゼーレ 09「いささか数が足りぬが、やむを得まい」

ゼーレ(全員)「エヴァシリーズを本来の姿に」


全員「我ら人類に福音をもたらす真の姿に」

全員「等しき氏と祈りを以て、人々を真の姿に」

キール「それは魂の安らぎでもある」


キール「では、儀式を始めよう」

799: 2020/12/07(月) 23:14:06.52
エヴァシリーズが初号機を空へと運ぶ

トウジ「エヴァ初号機が拘引されていく…!」

ケンスケ「高度12000!更に上昇中!」


カヲル「ゼーレめ、初号機を依り代とするつもりか…」


ミサト「…………!」


キール「エヴァ初号機に聖痕が刻まれた」

ゼーレ(全員)「今こそ中心の樹の復活を」


キール「我らが僕、エヴァシリーズは皆この時の為に」

光を放つエヴァシリーズ

ケンスケ「エヴァシリーズ、S2機関を開放!」

トウジ「次元測定値が反転、-を示しとる!…観測不能!数値化できん!」

カヲル「…アンチA.T.フィールドか…」

空に図象が浮かび上がる

ヒカリ「全ての現象が15年前と酷似している…じゃあこれってやっぱり、サードインパクトの前兆なの…!?」

800: 2020/12/07(月) 23:15:14.86
隊員「S2機関、臨界!」

隊員「これ以上は、もう…」


戦闘団長「作戦は、失敗だったな…」


辺り一帯が赤く染まる。爆発。


ケンスケ「直撃です!地上堆積層が融解!」

トウジ「第2波が本部周辺を掘削中……外郭部が露呈していく…!」

カヲル「まだ物理的な衝撃波だ。アブソーバーを最大にすれば耐えられる!」




ゼーレ 08「悠久の時を示す」

ゼーレ 09「赤き土の禊を以て」

ゼーレ 11「まずはジオフロントを」

キール「真の姿に」




カヲル「……人類の、生命の源たるリリスの卵…黒き月…今更、その殻の中へと還る事は望まない……」

カヲル「だが、それも…リリス次第か…」

801: 2020/12/07(月) 23:17:02.21
遠くで響く爆音。


レイ「終わらせると言うの?この世界を…」

リツコ「……そうじゃない」

リツコ「……手に」


リツコ「触れたいと思ったの」

リツコ「だから掴みにいく」


レイ「そんな……!」


リツコ「さよなら……母さん」

レイ「…、……!」


レイ「リ……!」

802: 2020/12/07(月) 23:18:02.22
ケンスケ「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!」

トウジ「A.T.フィールドを確認!分析パターン青!」

ヒカリ「まさか、使徒!?」

トウジ「いや、違う…人! 人間…!」


上昇していくリリス。ネルフメンバーの目の前を通り過ぎていく


地中から現れる白い手。

ヒカリ「ひっ…!」


(ヒカリの悲鳴)

803: 2020/12/07(月) 23:19:02.44
ミサト「なんなの、これ…」



ミサト「どうなったの…!加持くんは、みんなは…!」

ミサト「はっ」


巨大化したリリス。

ミサト「リツコ…!」


マリ「知らない子だも~ん」

ミサト「マリ……!?」

マリ「………」

ミサト「いや…!」

マリ「…」

ミサト「嫌…っ!」

804: 2020/12/07(月) 23:20:03.32
ケンスケ「エヴァシリーズのA.T.フィールドが共鳴!」

トウジ「さらに、増幅しています!」

カヲル「…赤木リツコと同化を始めたか」


(ミサトの悲鳴)


ケンスケ「心理グラフ、シグナルダウン!」

トウジ「デストルドーが形而化されていく…!」

カヲル「…これ以上はパイロットの自我が持たない…」



ゼーレ「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

キール「三度の報いの時が、今」

805: 2020/12/07(月) 23:22:01.69
ミサト(はっ)


ミサト(ここは、どこ)


ミサト(私はどうなったの…)



マリ「こーっちだよーっ」

ミサト(…あれ。私……)

リツコ「こっちよ」

ミサト「あ…」

加持「遅れるぞ?」

806: 2020/12/07(月) 23:23:01.54
ケンスケ「ソレノイドグラフ反転!自我境界が弱体化していきます!」

ケンスケ「A.T.フィールドもパターンレッドへ!」


コアに槍が刺さり、初号機との同化が始まる


カヲル「使徒の持つ生命の実と、人の持つ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった…」

カヲル「そして今や生命の胎芽たる生命の樹へと還元している。この先にサードインパクトの無から人を救う方舟となるのか…人を滅ぼす悪魔となるのか」

カヲル「未来は子どもらの手に委ねられた……」


ヒカリ「ねえ!私たち、正しいわよね?」

ケンスケ「分かるもんか」


生命の樹となる初号機。

807: 2020/12/07(月) 23:24:01.93
ミサト(ここはどこ、)

ミサト(私は…?)


ミサト(なんだろう…とても、重い…)


リツコ(それは私たちが負った柵)

リツコ(託された望みなのよ)




マリ(重いなら、捨てれば?)

リツコ(とても重い)

ミサト(だけど、必要……)

808: 2020/12/07(月) 23:25:01.74
ミサト「リツコ?」

リツコ「はっ」

ミサト「リツコ……どうしたのよ、早く乗っちゃいましょ」

アナウンス「列車が発車します 黄色い線の内側までお下がりください」

リツコ「私は……」


(リツコ「代わりはいる…」)

(リツコ「もう気づいて泣く人もいないわ…」)


リツコ「……なぜ戻ってきたの」



リツコ「ミサト…」

809: 2020/12/07(月) 23:26:01.52
ミサト「さ~ねん」

ミサト「忘れちゃったわ」

ミサト「…きっと、そうしたかったから。」


リツコ「自分勝手ね」

ミサト「自分を頃しているよりかはいいわ」


ミサト「……」


リツコ「……私にはできない」


リツコ「私は捨てても平気」

リツコ「でも、私の体は…」

810: 2020/12/07(月) 23:27:01.85
ミサト「……」

ミサト「嫌になったら、捨てればいい」

リツコ「また欲しくなったら?」

ミサト「また拾えばいいのよ」


リツコ「……もう手が届かなかったら?」

ミサト「届く範囲で探すのよ」

リツコ「忘れられなかったら?」

ミサト「……」

811: 2020/12/07(月) 23:28:06.81
(ミサト「加持くんっ」)

リツコ「あなたは怖くないの?一度関わりを持ったら…」

ミサト「手を離すのが怖い?」

リツコ「……」

ミサト「簡単よ、リツコ」

ミサト「嫌になったら、離せばいいのよ」



(リフレインする意識)



リツコ「嫌になったら…?」

(葛城「リツコ」)

(レイ「リツコちゃん」)

812: 2020/12/07(月) 23:29:02.28
不幸な人を見たくないのよ

私がいないと不幸になる人


幸福が誰かの存在に依存していることが


リツコ「嫌だった、ずっと……」


ミサト「自分がかわいいのね」

リツコ「そうよ」



リツコ「私のせいにしてほしくないの。それだけ」

813: 2020/12/07(月) 23:30:03.23
「それ」無しでは生きられない人の

「それ」になりたくないのよ


私で何かを埋め合わせようとしている


捨てきれない人の

捨てられないものになりたくないのよ

私なしでは可哀想になってしまう人たち

私を縛る人たち


リツコ「煩わしいのよ!」

リツコ「優しさと保身を一緒にしないで!」

リツコ「自分がどうあるかなんて、」

リツコ「そんなもののために、私を使わないでよ!」

814: 2020/12/07(月) 23:31:02.22
トウジ「パイロットの反応が限りなく0に近づいていく…!」

ケンスケ「エヴァシリーズ及びジオフロント、E層を通過。なおも上昇中」


アナウンス「現在、高度、22万キロ。F層に突入」


トウジ「エヴァシリーズ全機健在!」

ケンスケ「リリスよりのアンチA.T.フィールドさらに拡大、物質化されます」


巨大化したリリスがジオフロントを抱く


トウジ「アンチA.T.フィールド臨界点を突破!」

ケンスケ「駄目です!このままでは固体生命の形が維持できません!」

リリスが羽を広げる

カヲル「…ガフの部屋が開く。世界の始まりと終局の扉が遂に開いてしまうか…」

815: 2020/12/07(月) 23:32:02.15
リツコ「愛しさが私を満たしていく…空しさが私を埋めていく……そうか…心地よかったのね、私…」

リツコ「誰かの心に蓋をするのが…」



ネルフメンバーの周囲に現れるリツコ(リリス)


カヲル「……シンジくん…」

カヲル「すまない。僕は…」

カヲル「あの時彼女をとめるべきだった…。彼女にその覚悟があっても、君にはないと…分かっていたはずなのに…彼女をとめられなかった」

微笑むシンジ(リリス)


カヲル「シンジくん、君は…」

カヲル「幸せになれたのかい」


融ける

816: 2020/12/07(月) 23:33:13.09
トウジ「あ、あぁ…!」

ヒカリ(リリス)がトウジにキスをする

融ける


ケンスケ「ひ、ひぃ……っ!」

大量のリツコ(リリス)がケンスケに迫る

融ける


ヒカリ「…A.T.フィールドが、みんなのA.T.フィールドが消えていく。これが答えなの。私が求めていた……はっ!」

トウジ(リリス)がヒカリを抱き締める


ヒカリ「鈴原……私、わたし……っ!」


融ける

817: 2020/12/07(月) 23:34:06.95
レイ「碇くん……?」

微笑むシンジ(リリス)

レイ「いいえ。私の中のあなたなのね…こんなときまで」


レイ「私も嘘つきね…」


手を握る

融ける



アスカとシンジ

シンジ「アスカ……!」

シンジ「……僕たち、これで良かったよね…?」




キール「始まりと終わりは同じところにある。良い。全てはこれで良い」

818: 2020/12/07(月) 23:36:01.90
葛城とその妻


「……君か」

「ようやく会えたな…」

「……」

「…会わせる顔も、ないが…」



「…バカね」

「あなたはよくやったわよ…」

「分かるわ…」

「ずっと、側にいたんだもの…」

819: 2020/12/07(月) 23:37:01.98
「これが…」

「生命の理に背いた…報いか」



「ええ…でも、これで終わりじゃない」

「あなたと私の子どもが、私たちの分まで未来を紡いでくれる」



「……」

「本来なら…私が望むはずだった…人との共存を」

「だが、私は逃げてばかりだった…君からも、仲間からも」

「結果…巻き込むまいとして遠ざけた我が子に、全てを託す形となってしまった」

「……」

820: 2020/12/07(月) 23:38:02.07
「私に望みはない」

「今際の際に、何を望むか分からない。私の幸せの道は過去にしかない」


「信じている……」

「あの子らの、望む力を」



「……」

「ええ…」

821: 2020/12/07(月) 23:39:01.97
自らのコアを貫くエヴァシリーズ

光の群れがリリスの手に向かう

リリスの額に生じた亀裂

初号機が取り込まれていく


(シンジ「…買い換えどきかな……」)


リツコ「大切なものは二度と帰ってこない」

大切なものが何もないから、どこででも生きていけると思った

(本当に?)

疲れるの、人を好きになるのって。

構ってもらえないと悲しいから

失うと心が欠けるから

だからもう一人になって、

一人のままで生きようと思ったのよ



ミサト「馬っ鹿ねぇ」

ミサト「そんなこと考えてたの?」

822: 2020/12/07(月) 23:40:01.59
マリ「だからなるだけ遠ざけて?」

加持「そう。縁のない場所に自分を追いやる」

マリ「自分がかわいーんだ」

加持「悪いか?」

マリ「いんやー。自然なことじゃない?」

マリ「誰だって自分が一番かわいいでしょ」

(リフレイン)

リツコ「…心が、落ち着かないのよ」

弱い人間が傷ついているのを見ると

脆い人間が俯いているのを見ると

健常で、笑っている人だけを見ていたいのよ

それは人間の一面にすぎない

私は人間が苦手なのよ

ひどく憂鬱になるの、見てると…

823: 2020/12/07(月) 23:41:01.83
加持「これ以上誰かに自分の存在を脅かされたくないんだ」

べき、べきじゃないの姿をこれ以上増やしたくない

俺は天の邪鬼だからな

愛せない存在を、わざわざ生むことはない

傷つけると分かっていて関わるのは暴力だ

溺愛したって、それが相手の重荷にならないとも言えないんだ



ミサト「意地でも幸せになって、そうなるために生まれてきたことにするのよ」



加持「意味なんてないさ。ただ欲しいものを欲すだけ…」

リツコ「そうすれば…」


リツコ「私は幸せになれるの?」

ミサト「あなたが望むのよ」

加持「きみが望めばね」

824: 2020/12/07(月) 23:43:03.35
電車が揺れている


リツコ「……」

ミサト「…ね、この戦いが終わったらさ、みんなで旅行しない?」

リツコ「旅行?」

ミサト「そ。青葉くんとかマヤちゃんとか、ほかのみんなも誘ってさ」

リツコ「……」


ミサト「お金はネ、なんとかなるわよ。なんたって私たち、世界を救うスーパーチルドレンなんだから」

リツコ「……」

ミサト「ね!」

リツコ「……温泉」

ミサト「ん?」

リツコ「温泉、私はあのとき一緒じゃなかったから」

ミサト「…それじゃあ、決まりね」

825: 2020/12/07(月) 23:44:02.30
リツコ「……」

リツコ「欲しいものは、別にいい。私はいらないものの話がしたいの」

リツコ「捨て方が分からないのよ」

ミサト「……手を離せばいいんじゃないの?」

リツコ「繋がれていたら?向こうが離さなかったらどうするの?」

ミサト「どっかに逃げ込むことね…今は無理でも。大人になれば…」


電車が止まる



ミサト「でも、寂しいわね。解放されることでしか幸せを得られないなんて」

リツコ「そうね。でも」

リツコ「私にはそれが一歩なの」

826: 2020/12/07(月) 23:45:19.21
ミサト「……リツコ」


ミサト「…行きましょう、一緒に」

手をのべるミサト

リツコ「……、」


リツコ「……そう、手を…。」

ミサト「……」


リツコ「あの時はじめて…」


(ミサト「馬鹿…!」)

(加持「すまない…また」)


リツコ「…引き留めたいと思った」

827: 2020/12/07(月) 23:47:01.56
ミサト「それでいいのよリツコ」

ミサト「掴みたいときに掴んで、嫌になったら離せばいいのよ」


リツコ「我儘ね…」


ミサト「我儘でいい」

ミサト「我儘でいてほしいと思うときがあるのよ」


リツコ「それは少し……分かる気がする」

リツコ「私に自由を望む人たち」

リツコ「私を愛する人たち…」


血を噴き出すリリス

828: 2020/12/07(月) 23:49:01.80
(水滴が落ちる音)

あたりが真っ白になっている

リツコ(……)



リツコ「他人の存在を今一度願えば、再び心の壁が全ての人々を引き離すわ。また、他人の恐怖が始まるのよ」

ミサト「分かってる。……それでいいのよ」


ミサト「私はきっと逃げ出しても良かった……でも、逃げたところにも良いことはなかった。だって私がいないもの。誰もいないのと、同じだもの」

829: 2020/12/07(月) 23:50:01.24
マリ「再びA.T.フィールドが君や他人を傷付けても良いの?」

ミサト「構わない。でも、私の心の中にいるあなたたちは何?」

リツコ「可能性なのよ。分かり合えるのか、諦めるのか……どちらにも伸びる道のひとつなの」

マリ「過去の痼。分かり合えないという形の」


ミサト「…でもそれは見せ掛けのもの。自分勝手な思い込み。希望だってそう。ずっと続くはずない……」


ミサト「後悔と自己嫌悪の繰り返し。でも…その度に、前に進めた気がするから…」



ミサト「もう一度望むわ。会いたいと。」

ミサト「……たとえ分かり合えなくても」

ミサト「それを確かめに行く」


倒れるリリス

人々の魂が解放されていく

830: 2020/12/07(月) 23:52:02.28
マリ「現実は知らないところに。夢は現実の中に」

リツコ「そして、真実は心の中にある」

マリ「人の心が自分自身の形を作り出しているからね」

リツコ「そして新たなイメージがその人の心も体も変えていくわ。イメージが、想像する力が、自分たちの未来を、時の流れを作り出しているもの」

マリ「ただ人は、自分自身の意思で動かなければ何も変わらない」

リツコ「だから、見失った自分は自分の力で取り戻すのよ。たとえ自分の言葉を失っても、他人の言葉に取り込まれても」

槍が消滅する

リツコ「……自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もが人の形に戻れるわ」

831: 2020/12/07(月) 23:54:02.08
父と母

「…生きろ」

「生きなさい」



ミサトとシンジ

「生態系が戻ってる?」

「うん…少しずつだけど。本当は、夏だけじゃなくて…四季があったんだけどね」

「冬、とか?」

「そう。ミサトちゃんは雪って知ってる?」

「ええ、見たことは、ないですけど」

「…見せてあげたいな。本当に綺麗なんだ、秋も、春も…」

832: 2020/12/07(月) 23:55:01.67
ミサトとリツコ


ミサトがリツコを抱き締めている

ミサト「…大丈夫」

リツコ「……」

ミサト「そう…」

ミサト「もういいのね」


リツコ「ええ」




「……待ってる」

「また、あなたが」

「あなたたちが……還ってくるのを」

833: 2020/12/08(火) 00:00:02.12
○○年。居酒屋


一同「ハッピバースデェーイディーア」

一同「ミサト~~~~」

一同「ヒューヒュー」



加持「……あっちの席やけに賑やかだな」

男「誕生会だろォ。加持オイ!俺の話聞いてるかァ?」

加持「飲みすぎだぞ、お前…」

834: 2020/12/08(火) 00:01:01.96
一同「ハッピバースデェートゥーユー!」

一同「イエーッ」

ミサト「ふーっ、ちょっち、休憩…っと」

加持「…いいのかい?主役がいなくなって」

ミサト「いーのいーの、みんな騒ぎたいだけなんだから!」

ミサト「……あれ、あなた…どっかで会ったことある?」

加持「……あったら、忘れたりしないさ。こんな美人のこと」

ミサト「ブーッ、ちょっともぉ、やめてよ!」

男「おいっ、リョウジずりーぞ!」

ミサト「キザーッ!」

ミサト「……ねぇっ、一緒に呑みましょーよ!」

男「呑もう呑もう!」

加持「……はは」

ミサト「ったくもー!あいつまだ来てないのォ?!」

ミサト「んっとに仕事の虫ね~」

835: 2020/12/08(火) 00:02:02.19
一同「カンパ~イ」

ミサト「プッッッ……」

ミサト「…………ハァァァ~~~~~!」

女「ミサトォ!」

男「ペース早すぎだよ」

ミサト「こォの一杯のために生きてるようなもんよねェ~」

加持「……この一杯のために生きてる、か」

ミサト「そォよお?ヤ~なことがあったって、楽しいことがあれば明日も頑張れる!」

ミサト「でしょ?」


加持(……!)

836: 2020/12/08(火) 00:03:01.95
女「ま~たミサトォ!」

女「知らない子にお酒あげてるー」

ミサト「いいじゃないのよォ!今日くらい」

ミサト「サービスサービス♪」トクトクトク…

加持「……はは」

加持「頂くよ」

ミサト「そーぉこなくっちゃ!」

加持「………」

837: 2020/12/08(火) 00:04:01.74
「葛城さん…ッ、俺と…!」

「おーっとぉ!これは3度目のォー?!」

「……ごめんッ!」

「ダメだったァーッ」

「ギャハハ」





一同「カンパ~~~~イ」

加持「……、…」


加持「頑張ろう……明日も」





THE END

838: 2020/12/08(火) 00:05:22.38
以上です

839: 2020/12/08(火) 01:39:22.73

原作知らんが面白かった

840: 2020/12/08(火) 07:11:41.33
原作知らないのによく最後まで付き合ってくれたな…!
ありがとう

引用元: シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」